(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702923
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】質量流量コントローラ
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-201833(P2017-201833)
(22)【出願日】2017年10月18日
(62)【分割の表示】特願2016-136282(P2016-136282)の分割
【原出願日】2013年1月9日
(65)【公開番号】特開2018-10696(P2018-10696A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2017年11月13日
【審判番号】不服2019-13684(P2019-13684/J1)
【審判請求日】2019年10月11日
(31)【優先権主張番号】13/354,988
(32)【優先日】2012年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592053963
【氏名又は名称】エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディング,ジュンファ
【合議体】
【審判長】
見目 省二
【審判官】
青木 良憲
【審判官】
大山 健
(56)【参考文献】
【文献】
特開平3−211601(JP,A)
【文献】
特開平3−166611(JP,A)
【文献】
特開2004−246826(JP,A)
【文献】
米国特許第7826986(US,B2)
【文献】
特開平9−280913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体工程のための単一の制御弁を持つ主流路を画定する、質量流量コントローラであって、
前記主流路を画定する導管を含み、吸気口と排気口とを有するブロックと、
前記主流路に沿って配置され、質量流量コントローラを通るガスの質量流量を、工程の実行中に実時間で測定し、前記質量流量コントローラを通る測定された流量を表す第1の流量測定信号を生成するように機能する第1の流量計と、
前記主流路に沿って配置され、前記質量流量コントローラを通るガスの質量流量を、工程の実行中に実時間で測定し、前記質量流量コントローラを通る測定された流量を表す第2の流量測定信号を生成するように機能する第2の流量計であって、前記第1の流量計と同時に質量流量を測定する第2の流量計と、
システムコントローラであって、前記第1の流量計と前記第2の流量計とのそれぞれによって生成された前記第1の流量測定信号と前記第2の流量測定信号とを受信し、前記第1の流量測定信号および前記第2の流量測定信号から選ばれた1つに基づいて制御信号を生成し、前記第1の流量測定信号および前記第2の流量測定信号のもう1つは選ばれた流量測定信号を検証するために当該システムコントローラによって使用され、前記第1の流量測定信号と前記第2の流量測定信号の差が所定の閾値を超えた場合を示すアラーム信号を提供するように機能するシステムコントローラと、
を含み、
前記第1の流量計は熱質量流量計であり、前記第2の流量計は温度センサを含む差圧流量計であり、
前記制御弁は、前記主流路に沿って前記第1の流量計と前記第2の流量計との間に配置され、前記第1の流量計は前記制御弁の上流に配置され、前記第2の流量計は前記制御弁の下流に配置され、前記第1の流量計と前記第2の流量計とのそれぞれによって生成された前記第1の流量測定信号と前記第2の流量測定信号との両方を受信する前記システムコントローラによって提供された前記制御信号に応じて、前記質量流量コントローラを通るガスの質量流量を制御するように機能し、
前記システムコントローラは、
(i)前記第1および前記第2の流量計によって生成された2つの信号を受信し、これらの信号のうち1つを前記制御弁のための前記制御信号のために用いるように機能する流量制御部と、
(ii)前記第1および前記第2の流量計によってそれぞれ生成された前記第1および前記第2の流量測定信号を受信し、前記第1および前記第2の流量計のそれぞれから受信した前記第1および前記第2の流量測定信号の差を示す差信号を出力信号として生成するように機能する比較器と、
(iii)前記差信号を所定の閾値と比較し、前記差信号が前記所定の閾値を超えた場合にアラーム信号を生成するように機能する閾値検出器と
を含む、
質量流量コントローラ。
【請求項2】
前記制御信号は、前記熱質量流量計によって測定された流量の関数として生成される、請求項1に記載の質量流量コントローラ。
【請求項3】
前記制御信号は、前記差圧流量計によって測定された流量の関数として生成される、請求項1に記載の質量流量コントローラ。
【請求項4】
前記閾値はユーザ設定である、請求項1に記載の質量流量コントローラ。
【請求項5】
前記閾値は工場設定である、請求項1に記載の質量流量コントローラ。
【請求項6】
前記閾値は、ガスを送るために前記質量流量コントローラを使用する工程の質量流量における許容差の関数として設定される、請求項1に記載の質量流量コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2012年1月20日に出願された米国特許出願第13/354,988号の優先権を米国特許法第119条の下で主張するものであり、その内容は参照として全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、概して質量流量コントローラ(Mass Flow Controller:MFC)に関し、特にMFCを通る流量を実時間で監視するシステムおよび方法に関する。本明細書においては、「ガス」と「蒸気」が異なるものと見なされる場合、用語「ガス」は用語「蒸気」を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
質量流量コントローラ(Mass Flow Controller:MFC)は、ガスの流量を測定し、制御する機器である。MFCは通常、半導体の製造工程において、ガス流量の制御に使用される。半導体の製造工程においては、高収率の半導体製品を生産するために、真空チャンバーなどの半導体ツールへのガス流量を慎重に制御する必要がある。MFCは通常、特定の種類のガスを、特定の流量範囲において制御するように設計し、較正されている。MFCは、任意の設定値に基づいて流量を制御する。任意の設定値は通常、ユーザまたは半導体ツールそれ自体などの外部機器によって、予め定められている。MFCは、アナログまたはデジタルのどちらであってもよい。MFCは、一般的には入口ガスの圧力範囲で使用されるように設計されており、低圧MFCおよび高圧MFCが利用できる。すべてのMFCは、1つの吸気口と、複数の排気口と、質量流量センサおよび比例制御弁を含む質量流量計とを有する。システムコントローラは、フィードバック制御システムの一部として使用される。フィードバック制御システムは、設定値によって定められた流量と質量流量センサによって検知された測定流量との比較関数である制御信号を、制御弁に送る。したがってフィードバック制御システムは、測定流量が設定値によって定められた流量に維持されるように制御弁を操作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−246826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる制御システムは、MFCが一定の誤差内で較正されていることを前提とする。一般的にMFCは、較正誤差内であるかどうか検査するために、質量流量検証器などの機器によってオフラインで検査される。質量流量検証器は、流量を検査するために使用される。オフライン検査は非常に正確ではあるが、(実時間での)工程の実施中にMFCが較正範囲外となり、工程が完了するまで検知されない可能性があるという問題を常に抱える。これはしばしば半導体製品の収率を下げる可能性があり、また、製品の全収率損失という完全な失敗さえ招く可能性がある。こうなると費用がかかり、明らかに望ましくない。工程を実施しつつ、実時間でMFCの較正設定を継続的に検査するための機器および方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
質量流量コントローラは、質量流量コントローラを通る質量流量を測定するように構成され、配置された第1の流量計と、質量流量コントローラを通る質量流量を測定するように構成され、配置された第2の流量計と、流量計のうちの1つによって測定された流量の関数として生成された制御信号に応じて、質量流量コントローラを通る質量流量を制御するように構成され、配置された制御弁と、制御信号を生成し、第1の流量計によって測定された質量流量と第2の流量計によって測定された質量流量の差が閾値を超えた場合に指示を行うように構成され、配置されたシステムコントローラと、を含む。
【0007】
これらは、その他の構成要素、ステップ、特徴、目的、利益、および利点と同様に、以下の例示実施の形態の詳細な説明および添付図面を精査すれば明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る質量流量コントローラは、工程を実施しつつ、実時間でMFCの較正設定を継続的に検査することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、MFCを通る流量を制御し、MFCの精度を実時間で監視するように構成され、配置されたMFCの簡略ブロック図である。
【
図2】
図2は、本明細書に記載される教示を採用したMFCの実施の形態を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1および
図2に関連して説明されているようなMFCが較正誤差外となった場合に、それを指示する信号を生成する構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態について説明する。追加で、または代わりに、その他の実施の形態を使用してもよい。自明または不要な詳細は、スペース節約のために、またはより効果的な提示のために、省略している場合がある。反対に、いくつかの実施の形態は開示されている詳細を全く使用せずに実施することができる。
【0011】
図面は、例示実施の形態を開示している。図面は、すべての実施の形態を表しているのではない。追加で、または代わりに、その他の実施の形態を使用してもよい。自明または不要な詳細は、スペース節約のために、またはより効果的な例示のために、省略している場合がある。反対に、開示されている詳細を全く使用せずに実施できる実施の形態もあるかもしれない。同じ符号が異なる図面に含まれる場合、同一または同様の構成要素またはステップを表す。
【0012】
図1を参照すると、例示質量流量コントローラ10は、MFCを通る流量を制御し、MFCの精度を実時間で監視するように構成され、配置される。図に示すように、コントローラ10は、2つの流量計12および14を含む。流量計12および14はそれぞれ別々に、MFCを通るガス流量の測定値を示す信号を生成する。2つの流量計の出力はシステムコントローラ16へ送られる。コントローラ16は、2つの流量計12および14から受信した2つの信号を処理し、流量計のうちの1つによって測定された流量および設定値に基づいて比例制御弁18へ制御信号を送り、2つの流量計によって測定された流量の差が所定の閾値を超えたと判断された場合に指示(「アラーム」)信号を送る。
【0013】
20に概して示されるMFCのより詳細な例示実施の形態を、
図2に示す。MFC20は、MFCを通る流量を制御し、MFCの精度を実時間で監視するように構成され、配置される。図に示すように、ブロック28の吸気口32でガスが受け入れられる。ブロック28は、MFCを通って排気口60へと続く主流路34を画定する導管を含む。第1の流量計30は、熱質量流量計として示されている。熱質量流量計は一般的に、熱質量流量センサ36を含む。熱質量流量センサ36は通常、ブロック28を通るガス流の主流路34のバイパスに設けられたバイパス素子38を含む。U字型の毛管40の両端部はそれぞれ、バイパス素子38の上流側端部および下流側端部において、主経路に接続されている。1または複数の抵抗素子42(2つであることが最も一般的である)が、温度測定結果に基づいて、毛管を通る流量を測定するために、本例においては、2つの抵抗素子の抵抗差の関数として使用される。この関数はまた、質量流量の尺度である、流体の検知温度の差の関数でもある。バイパス素子38は、毛管40の両端部の間にあるバイパス素子38を通るガス流が、層流であるよう保証するように設計されている。層流を維持することによって、毛管を通るガス流量測定値の、主流路34を通る流量に対する割合は、正確なパーセンテージとなる。したがって、毛管40を通る検知流量は、MFC20を通る流量および排気口60を出る流量の正確な尺度となる。検知流量を示すデータは、システムコントローラ16へ送られる。
【0014】
第2の流量計50は、差圧流量計として示されている。チョーク流れ状態用に、流量計50は、流量制限器52(例えば、臨界流ノズルまたはオリフィス)と、温度センサ54と、流量制限器52より上流の主流路34を流れるガスの温度および圧力を測定するように配置された上流圧センサ56とを含む。検知温度および検知圧力を示すデータは、システムコントローラへ送られ、第2の流量計50を通る質量流量を決定するために、これらの検知された測定結果の関数として使用される。非チョーク流れ状態用には、第2の、または下流圧センサ58が、流量制限器52の下流に設けられる。検知温度、上流圧、および下流圧を示すデータは、システムコントローラ16へ送られ、第2の流量計50を通る質量流量を決定するために、検知された測定結果の関数として使用される。(チョーク状態、非チョーク状態両方の実施の形態における)第2の流量計50によって提供された第2の測定結果は、第1の流量計30によって提供された測定結果とは無関係である。
【0015】
図3を参照すると、システムコントローラ16は、MFCを通る同じ流れに対して2つの流量測定結果を提供するように、流量計70および72の出力を処理する。図に示すように、流量計70は流量制御部74に設けられ、流量制御部74は比例制御弁18に制御信号を印加する。比較器76は、2つの流量計70および72によって提供された、検知された流量測定結果を示すデータを比較し、2つの測定結果の差の関数であって、2つの測定結果の差を示す出力信号を与えるために設けられる。この出力信号は、閾値検出器78によって、(閾値設定80によって提供される)ある閾値と比較される。比較器76の出力信号が閾値を超える(2つの流量計が異なる流量測定結果を出しており、2つの測定結果の差が所定の閾値を超える)場合、閾値検出器はアラームまたは指示信号を送って、少なくとも1つの流量計が不正確であり、MFCをオフラインにしてさらに検査する必要があることをユーザに知らせる。なお、80の閾値設定の値は、工場でのMFCの初期設定時に設定、またはユーザがプログラムするなど、様々な方法のうちのいずれかによって設定できる。閾値は、ガスを送るためにコントローラを使用する特定の工程の質量流量における許容差の関数として、設定できる。したがって、いくつかの工程では、他よりも大きい流量誤差を許容できる。
【0016】
図2の第1および第2の流量計をそれぞれ熱質量流量計および差圧流量計として説明してきたが、それらは、意図されるMFC20の用途に応じて、コリオリ流量計、磁気式流量計、または超音波流量計など、その他の種類の流量計であってもよい。第1の流量計の種類は、第2の流量計の種類とは違うことが望ましいが、2つの流量計は同じ種類のものであってもよい。例えば、両方の流量計が、熱質量流量計か差圧流量計のどちらかであってもよい。また、第1の流量計30は制御弁18の上流に位置し、第2の流量計は制御弁18の下流に位置しているが、これら2つの流量計の位置は、MFCの主流路34に沿った場所であれば何処でもよい。例えば、制御弁18の上流または下流に、両方の流量計があってもよい。
【0017】
図3に示されるように、第1の流量計70からの測定結果は、MFCの流量出力を制御するために流量制御部74において使用され、第2の流量計72からの測定結果は、実時間でMFCの精度を検証するために使用されるが、第2の流量計72からの測定結果を、MFCの流量出力を制御するために流量制御部74において使用することもでき、第1の流量計70からの測定結果を、流量検証に使用することもできる。
【0018】
上記で説明した構成要素、ステップ、特徴、目的、利益、および利点は単に例示である。それらのいずれも、また、それらに関する説明も、保護の範囲を何等限定するものではない。多数のその他の実施の形態についても検討される。これらは、構成要素、ステップ、特徴、目的、利益、および利点が、より少ない数であったり、追加されていたり、異なるものである実施の形態を含む。これらはまた、構成要素の配置やステップの順番が異なる実施の形態も含む。
【0019】
別段の記述がない限り、後続の請求項も含め本明細書に記載されるすべての測定結果、数値、定格、位置、大きさ、寸法、およびその他の仕様は、概算であり、精密ではない。それらは、関連する機能や、関連する技術分野における慣習と調和する、妥当な範囲を有するように意図されたものである。
【0020】
本開示において引用されたすべての記事、特許公報、特許出願、およびその他の公表文献は、参照により本明細書に援用される。
【0021】
「〜するための手段」という語句は、請求項において使用された場合、上記で説明した該当する構成および材料、ならびに、その同等物を含むことを意図するものであり、そのように解釈されるべきである。同様に、「〜するステップ」という語句は、請求項において使用された場合、上記で説明した該当する技術、およびその同等物を含むことを意図するものであり、そのように解釈されるべきである。これらの語句が請求項に記載されていない場合も、請求項が、該当する構成、材料、もしくは動作、またはそれらの同等物のいずれかに制限を受けることを意図するものではなく、また、そのように解釈されるべきではない。
【0022】
上記で説明または例示したいずれの内容も、それが請求項に記載されているかどうかに拘わらず、構成要素、ステップ、特徴、目的、利益、利点、またはそれらの同等物のいずれかが公衆に献呈されることを意図するものではなく、また、そのように解釈されるべきではない。
【0023】
保護の範囲は、後続の請求項によってのみ限定される。保護の範囲は、本明細書および後の出願経過を鑑みて解釈される際、請求項において使用される言語の通常の意味と一致する程度の広さであり、また、すべての構造上および機能上の同等物を網羅することを意図するものであり、また、そのように解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0024】
10 質量流量コントローラ
12,14 流量計
16 システムコントローラ
18 制御弁
20 MFC
28 ブロック
30,70 第1の流量計
32 吸気口
34 主流路
36 熱質量流量センサ
38 バイパス素子
40 毛管
42 抵抗素子
50,72 第2の流量計
52,74 流量制限器
54 温度センサ
56 上流圧センサ
58 下流センサ
60 排気口
76 比較器
78 閾値検出器
80 閾値設定