(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
a)繊度が3dtex〜17dtexの粗短繊維および繊度が0.3dtex〜2.9dtexの微細短繊維を骨格繊維として含む、少なくとも1つの開孔性支持層、ならびに
b)1μm〜30μmの範囲にある平均孔径を有する微多孔性発泡層を含む、前記開孔性支持層上に配置された流層、
を含む、
250Ns/m3〜5000Ns/m3の流れ抵抗を有する吸音テキスタイル複合材。
前記骨格繊維として使用される微細短繊維および粗短繊維が、互いに独立に、20mm〜80mmの短繊維長を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の吸音テキスタイル複合材。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この課題は、
a)繊度が3dtex〜17dtexの粗短繊維および繊度が0.3dtex〜2.9dtexの微細短繊維を骨格繊維(Gerustfaser(uはウムラウト付))として含む、少なくとも1つの開孔性支持層、ならびに
b)微多孔性発泡層を含む、支持層上に配置された流層、
を含む吸音テキスタイル複合材によって解決され、
ただし、吸音テキスタイル複合材の流れ抵抗は、250Ns/m
3〜5000Ns/m
3である。
【0010】
驚くべきことに、本発明によるテキスタイル複合材を用いると、従来技術の前記の不利点を回避できることが見出された。さらに、前記の構造のテキスタイル複合材は、自動車産業にとって重要な、800Hz〜2000Hzの周波数範囲において、抜群の吸音特性を示すことが見出された。
【0011】
本発明により一機構に確定することはしないが、見出された驚くべきことに高い吸音率は、流層と組み合わせた、支持層の微細繊維と粗繊維との間の相乗相互作用に起因するものと推定される。つまり、支持層中における、繊度が0.3dtex〜2.9dtexの微細短繊維および繊度が3dtex〜17dtexの粗短繊維という特別な選択が、それ自体が音波を吸収できる、吸音に特に適切な骨格構造の形成を可能にすると推定される。なぜなら、微細短繊維と粗短繊維との適切な選択によって、支持層に高い圧縮性および高い復元能力を供与することが可能になり、それにより、支持層上の流層が最適に振動できるため、「可撓性プレートアブゾーバ」の動作原理により、特に効果的に音響エネルギーを吸収できる。
【0012】
その上、開孔性支持層と微多孔性流層との組合せが、テキスタイル複合材の音響特性の簡単かつ意図的な調整および可変性を可能にする。さらに、本発明によるテキスタイル複合材は、高い圧縮性および優れた復元能力を伴うと同時にわずかな目付け量で製造可能であることが見出された。つまり、テキスタイル複合材は、本発明の好ましい一実施形態において、70%〜100%、さらに好ましくは75%〜100%、特に80%〜100%の圧縮率、および/または70%〜100%、さらに好ましくは75%〜100%、特に80%〜100%の復元能力を有する。それにより、テキスタイル複合材は、容易に圧縮可能であり、そのため同時にきわめて良好に、与えられた設置スペースに収まるが、なぜなら、優れた復元能力により、きわめて良好に、設置スペースにおいて再びぱっと開き得るからである。そのため、困難な形状および異なる厚さ寸法を有する設置スペースにおいても、取り付けが可能になる。
【0013】
支持層は、基本的に、織物、ニット布、編物、および/または不織布であり得る。本発明によると好ましくは、支持層が、DIN EN ISO 9092に基づく不織布である。
【0014】
支持層の粗短繊維の繊維繊度は、3dtex〜17dtexである。好ましい一実施形態では、繊維繊度が、3dtex〜12dtex、特に3dtex〜9dtexである。粗短繊維が、テキスタイル複合材に対して、必要な構造を与えることにより、組み込まれた状態でも、テキスタイル複合材の寸法安定性が維持される。
【0015】
本発明の好ましい一実施形態では、支持層が粗短繊維を、それぞれ支持層の総重量に対して、5重量%〜90重量%、さらに好ましくは10重量%〜90重量%、さらに好ましくは20重量%〜90重量%、さらに好ましくは30重量%〜90重量%、40重量%〜90重量%、さらに好ましくは50重量%〜90重量%、特に60重量%〜90重量%の分率で含有する。
【0016】
支持層が、さらなる繊維としてバインダ繊維を含有する限り、粗短繊維の分率は、それぞれ支持層の総重量に対して、好ましくは5重量%〜85重量%、さらに好ましくは10重量%〜85重量%、さらに好ましくは20重量%〜80重量%、特に30重量%〜75重量%である。
【0017】
支持層が、さらなる繊維としてバインダ繊維を含有しない限り、粗短繊維の分率は、それぞれ支持層の総重量に対して、好ましくは10重量%〜90重量%、さらに好ましくは20重量%〜90重量%、さらに好ましくは30重量%〜90重量%、さらに好ましくは40重量%〜90重量%、さらに好ましくは50重量%〜90重量%、さらに好ましくは60重量%〜90重量%、特に70重量%〜90重量%である。
【0018】
本発明によるテキスタイル複合材の支持層の微細短繊維の繊維繊度は、0.3dtex〜2.9dtexである。好ましい一実施形態では、微細短繊維の繊維繊度が、0.5dtex〜2.9dtex、さらに好ましくは0.5dtex〜2.5dtex、特に0.5dtex〜2.0dtexである。支持層中での微細短繊維の使用により、支持層の内部表面積が増大し、この層中でも、音響エネルギーを熱エネルギーに変換できる。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態では、支持層が微細短繊維を、それぞれ支持層の総重量に対して、10重量%〜90重量%、さらに好ましくは10重量%〜80重量%、さらに好ましくは10重量%〜70重量%、さらに好ましくは10重量%〜60重量%、10重量%〜50重量%、より好ましくは10重量%〜40重量%、特に10重量%〜30重量%の分率で含有する。
【0020】
本発明によると、骨格繊維は短繊維である。場合によっては支持層中に含有されているバインダ繊維とは異なり、骨格繊維は、溶融状態では存在しないか、または非実質的にしか溶融状態で存在しない。短繊維は、理論上は無限の長さを有するフィラメントとは異なり、一定の長さを有する。本発明によると好ましくは、骨格繊維として使用される微細短繊維および粗短繊維が、互いに独立に、20mm〜80mm、さらに好ましくは25mm〜80mm、特に30mm〜80mmの短繊維長を有する。骨格繊維としては、天然繊維、合成繊維、またはそれらの混合物を使用できる。好ましくは、合成繊維を使用する。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態では、骨格繊維として使用される微細短繊維および粗短繊維が、互いに独立に、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ビスコース、ポリアミド、特にポリアミド6およびポリアミド6.6、好ましくはポリオレフィン、とりわけ好ましくはポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも1つのポリマー、それらの混合物および/またはコポリマーを含有する。好ましくは、骨格繊維が、少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%、特に97重量%超の分率で、その少なくとも1つのポリマーを含有する。
【0022】
本発明の特に好ましい一実施形態では、骨格繊維が、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つのポリマー、それらの混合物またはコポリマーを有する。本発明の特に好ましい一実施形態では、骨格繊維が、特にポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル繊維である。その利点は、ポリエチレンテレフタレートの自己消火性の燃焼挙動であり、それはまた、自動車部門でのテキスタイル複合材の使用にとって重要である。
【0023】
微細短繊維および粗短繊維の他に、支持層は、さらなる繊維を含有してもよい。本発明によると好ましくは、支持層が、少なくとも部分的に溶融したバインダ繊維をさらなる繊維として含有する。バインダ繊維としては、少なくとも部分的に熱溶融性である限り、この目的に使用される通常の繊維を使用できる。バインダ繊維は、単一種繊維(einheitliche Faser)であるか、さらには多成分繊維であってもよい。
【0024】
本発明によると特に適切なバインダ繊維は、その結合成分が、結合される骨格繊維の融点を下回る融点を有する繊維、好ましくは少なくとも5℃、例えば5℃〜300℃、さらに好ましくは5℃〜250℃、さらに好ましくは5℃〜200℃、および/または好ましくは少なくとも10℃、例えば10℃〜300℃、さらに好ましくは10℃〜250℃、さらに好ましくは10℃〜200℃、および/または好ましくは少なくとも15℃、例えば15℃〜300℃、さらに好ましくは15℃〜250℃、さらに好ましくは15℃〜200℃、および/または好ましくは少なくとも20℃、例えば20℃〜300℃、さらに好ましくは20℃〜250℃、さらに好ましくは20℃〜200℃、および/または好ましくは少なくとも25℃、例えば25℃〜300℃、さらに好ましくは25℃〜250℃、さらに好ましくは25℃〜200℃だけ、結合される骨格繊維の融点を下回る融点を有する繊維である。
さらに好ましくは、バインダ繊維が、その結合成分が、250℃未満、さらに好ましくは70〜235℃、さらに好ましくは125〜225℃、特に好ましくは150〜225℃の融点を有する繊維である。
【0025】
適切なバインダ繊維は、特に、熱可塑性ポリエステルおよび/またはコポリエステル、特にポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、特にポリプロピレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ならびにそれらのコポリマーおよび混合物を含有する繊維、および/またはそれらのポリマーからなる繊維である。
【0026】
本発明によると特に適切なバインダ繊維は、多成分繊維、好ましくは二成分繊維、特に芯鞘繊維である。芯鞘繊維は、異なる軟化温度および/または融点を有する少なくとも2つの繊維ポリマーを含有する。好ましくは、芯鞘繊維が、それら2つの繊維ポリマーからなる。その際、低い方の軟化温度および/または融点を有する成分が繊維表面(鞘)に見出され、高い方の軟化温度および/または融点を有する成分が芯に見出される。
【0027】
芯鞘繊維の場合、結合機能は、繊維の表面に配置されている材料によって果たされ得る。鞘には非常に様々な材料を使用できる。鞘に好ましい材料は、本発明によると、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、コポリアミド、および/またはコポリエステルでもある。芯にも同様に非常に様々な材料を使用できる。芯に好ましい材料は、本発明によると、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、および/またはポリエチレンナフタレート、および/またはポリオレフィンである。
【0028】
芯鞘バインダ繊維の使用は、本発明によると好ましいが、なぜなら、その結果、不織布中で、結合剤成分の特に均質な分配が達成できるからである。
【0029】
支持層が、少なくとも部分的に溶融したバインダ繊維を含有する限り、支持層は、好ましくは、それぞれ支持層の総重量に対して、10重量%〜50重量%、さらに好ましくは10重量%〜40重量%、特に10重量%〜30重量%の分率でバインダ繊維を含有する繊維混合物を起点に製造される。
【0030】
本発明のさらなる好ましい一実施形態では、結合成分の分率が、それぞれ支持層の総重量に対して、5重量%超、例えば5重量%〜50重量%である。
【0031】
本発明によると好ましくは、支持層が、少なくとも部分的に溶融したバインダ繊維によって、結合および固化(verfestigen)されている。好ましくは、部分的に溶融したバインダ繊維が、機械的負荷なしに、例えば連続炉により溶融されている。その利点は、不織布が高体積で製造され得ることであり、機械的作用によって体積を失わないことである。本発明のさらなる好ましい一実施形態では、支持層中での空気の、繊維に対する体積比が、50:1〜250:1、さらに好ましくは100:1〜225:1、特に125:1〜200:1である。
【0032】
本発明のさらなる一実施形態では、支持層が、好ましくはバインダ繊維による固化に加えて、バインダ結合されている。バインダとしては、ポリアクリレート、ポリスチレン、エチレンポリ酢酸ビニル(Polyvinylacetatethylene)、ポリウレタン、ならびにそれらの混合物およびコポリマーを使用できる。
【0033】
本発明によると好ましくは、支持層が、非常に軽度に固化されているため、吸音テキスタイル複合材を、軽やかにドレープかつ圧縮でき、それゆえ、非常に様々な設置スペースにおいて使用できる。
【0034】
流層とは、本発明によると、特に200Ns/m
3超、例えば200Ns/m
3〜5000Ns/m
3、さらに好ましくは250Ns/m
3〜5000Ns/m
3、さらに好ましくは350Ns/m
3〜5000Ns/m
3、特に450Ns/m
3〜5000Ns/m
3の比流れ抵抗を有する微多孔性層と理解される。支持層に流層を付与する利点は、支持層の吸音特性を改善できることである。それにより、支持層の目付け量をわずかに保つことができるにもかかわらず、抜群の音響特性を有する製品が得られる。流層の流れ抵抗の調整は、当業者には公知の方法で、孔寸法または密度の適切な調整により実現可能である。
【0035】
本発明によると、流層は、微多孔性発泡層を有する。その際、微多孔性発泡層とは、100μm未満の平均孔径を有する気泡性構造と理解される。
【0036】
微多孔性発泡層を使用する利点は、多数の細孔により、発泡層において、音響エネルギーが特に良好に吸収され得る非常に大きな内部表面積が提供されるという事実である。それに応じて、微多孔性発泡層は、好ましくは1μm〜30μm、好ましくは1μm〜25μm、特に1μm〜20μmの平均孔径を有する。
【0037】
好ましくは、微多孔性発泡層が開孔性である。開孔性とは、セル壁が少なくとも部分的には閉鎖していないため音響エネルギーが発泡層の内部でも吸収され得ると理解される。
【0038】
微多孔性発泡層は、非常に様々な起泡性材料から製造できる。特に適切であると判明したのは、微多孔性発泡層が、酢酸ビニルコポリマーおよび/またはポリアクリレートおよび/またはポリウレタンを含有する場合である。その際、微多孔性発泡層は、前記のポリマーを、好ましくは90重量%超、さらに好ましくは95重量%超、さらに好ましくは97重量%超の分率で含有する。特に、微多孔性発泡層は、前記ポリマーの1つまたは複数からなり、ただし、通常の添加剤を含有してもよい。
【0039】
発泡層は、従来の方法で、ポリマー分散液またはポリマーエマルジョンの起泡により、例えば機械的泡立てにより製造でき、通常の塗布法、例えば、展延塗装法により塗布できる。
【0040】
酢酸ビニルコポリマーを使用する利点は、簡単かつ低価格で製造できることである。酢酸ビニルコポリマーを使用して製造した発泡層は、さらに、特に低い黄変傾向を有する。その上、発泡層は、特に低い収縮を示す。
【0041】
好ましい酢酸ビニルコポリマーは、エチレン酢酸ビニルコポリマーである。このコポリマーは、例えば、乳化重合によって製造できる。それゆえ、本発明によると好ましくは、酢酸ビニルコポリマーが、水性酢酸ビニルエマルジョンおよび/または酢酸ビニル分散液を起点に、特に、65〜98重量%の酢酸ビニルを含有するエチレン酢酸ビニルエマルジョンおよび/またはエチレン酢酸ビニル分散液を起点に製造されている。エチレン酢酸ビニルエマルジョンおよび/またはエチレン酢酸ビニル分散液は、それぞれモノマーの総重量に対して、好ましくは65〜98重量%の酢酸ビニルおよび2〜30重量%のエチレン、好ましくは75〜95重量%の酢酸ビニルおよび5〜25重量%のエチレンを水性媒体中に含有する。
【0042】
場合によっては、酢酸ビニルエマルジョンおよび/または酢酸ビニル分散液が、さらに、それぞれモノマーの総重量に対して、最高10重量%、好ましくは0.1〜10重量%の更なるコモノマーを含有してもよい。
【0043】
酢酸ビニルエマルジョンおよび/または酢酸ビニル分散液に適切な更なるコモノマーは、例えば、プロピオン酸ビニル、ラウリル酸ビニルといった、カルボン酸残基中に3〜12個のC原子を有するビニルエステル、8〜11個のC原子を有するアルファ分岐カルボン酸のビニルエステルの群からのようなコモノマーである。1〜15個のC原子を有する非分岐または分岐アルコールのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノルボルニルアクリレートも適切である。塩化ビニルといったハロゲン化ビニルも適切である。
【0044】
エチレン性不飽和モノカルボン酸およびエチレン性不飽和ジカルボン酸、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、およびマレイン酸;エチレン性不飽和カルボン酸アミドおよびエチレン性不飽和カルボン酸ニトリル、好ましくは、アクリルアミドおよびアクリロニトリル;フマル酸およびマレイン酸のモノエステルおよびジエステル、例えば、ジエチルエステルおよびジイソプロピルエステル、ならびに無水マレイン酸、エチレン性不飽和スルホン酸またはそれらの塩、好ましくはビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸も適切な更なるコモノマーである。
【0045】
さらなる例は、プレ架橋性コモノマー、例えば、多価エチレン性不飽和コモノマー、例を挙げると、アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジアリル、アリルメタクリレートもしくはトリアリルシアヌレート、または後架橋性コモノマー、例を挙げると、アクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド(NMMA)、N−メチロールアリルカルバメート、イソブトキシエーテルといったアルキルエーテル、またはN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、およびN−メチロールアリルカルバメートのエステルである。ヒドロキシ基またはカルボキシ基を有するモノマー、例えば、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルおよびアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、またはヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ならびに1,3−ジカルボニル化合物、例えば、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピルメタ−ポリアクリレート、およびアセト酢酸アリルエステルである。
【0046】
その際、モノマー選択は、好ましくは、酢酸ビニルコポリマー、特にエチレン酢酸ビニルコポリマーが、−20℃〜+20℃、好ましくは−20℃〜+0℃、さらに好ましくは−20℃〜−10℃のガラス転移温度Tgを有するように行う。
【0047】
ポリマーのガラス転移温度Tgは、公知の方法により、DSC(示差走査熱量分析、DIN EN ISO 11357)を用いて測定可能である。
【0048】
とりわけ好ましくは、Celanese Emulsions社の市販名Vinamul(登録商標)Elite 25の酢酸ビニルコポリマーを使用する。
【0049】
好ましいポリアクリレートはポリブチルアクリレートであり、以下では短くブチルアクリレートとも呼ぶ。ブチルアクリレートも同じく、乳化重合によって製造できる。それゆえ、好ましくは、ポリアクリレートが、ポリアクリレートエマルジョンおよび/またはポリアクリレート分散液を起点に、特に、好ましくは少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも60重量%のn−ブチルアクリレートまたはn−ブチルメタクリレート(短くn−ブチル(メタ)アクリレート)を含有するブチルアクリレートエマルジョンおよび/またはブチルアクリレート分散液を起点に製造されている。好ましいのは、n−ブチルアクリレートである。
【0050】
前記のブチルアクリレートの他に、ポリアクリレートエマルジョンおよび/またはポリアクリレート分散液は、好ましくはC1〜C20のアルキル(メタ)アクリレート、最高20個のC原子を有するカルボン酸のビニルエステル、最高20個のC原子を有するビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和ニトリル、ハロゲン化ビニル、1〜10個のC原子を有するアルコールのビニルエーテル、2〜8個のC原子および1つもしくは2つの二重結合を有する脂肪族炭化水素、またはこれらのモノマーの混合物から選択される更なるコモノマーを含有してもよい。名指しで挙げたいのは、例えば、C1〜C10のアルキル残基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0051】
特に好ましいコモノマーは、後架橋性コモノマー、例えば、アクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド(NMMA)、N−メチロールアリルカルバメート、イソブトキシエーテルといったアルキルエーテル、またはN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、およびN−メチロールアリルカルバメートのエステルである。
【0052】
その際、モノマー選択は、好ましくは、ポリアクリレート、特にブチルアクリレートが、<−25℃、例えば−50℃〜−25℃、好ましくは−45℃〜−25℃、さらに好ましくは−40℃〜−25℃のガラス転移温度Tgを有するように行う。
【0053】
とりわけ好ましくは、Archroma社の市販名Appretan(登録商標)N92100のポリアクリレートを使用する。
【0054】
発泡層には、さらに、非常に様々なポリウレタンを使用できる。本発明によると好ましいのは、脂肪族ポリウレタンであるが、なぜなら、脂肪族ポリウレタンはわずかな黄変傾向しか有さないからである。特に好ましいのは、ポリエステルポリウレタンである。同じく特に好ましいのは、水性ポリマー分散液から製造されたポリウレタンである。本発明によると特に好ましくは、ポリウレタンの製造を、
I.
a)少なくとも1つの脂肪族または芳香族の多価イソシアネート、
b)ジオール(そのうち、ジオール(b)の総量に対してb1)10〜100mol%は500〜5000の分子量を有し、ジオール(b)の総量に対してb2)0〜90mol%は60〜500g/molの分子量を有する)、
c)少なくとも1つのイソシアネート基または少なくとも1つのイソシアネート基反応性基を有する上に少なくとも1つの親水基または潜在性親水基を担持する(それにより、ポリウレタンの水分散性がもたらされる)、モノマー(a)、(b)とは異なるモノマーの、溶媒存在下でのポリウレタンへの変換、および
II.続いて行う、水中でのポリウレタンの分散によって行う。
【0055】
特に好ましいのは、全イソシアネート基が1つの脂肪族鎖に結合している脂肪族イソシアネートである。本発明によると好ましい脂肪族イソシアネートは、4〜12個の炭素原子を含む。好ましい脂肪族イソシアネートは、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(1,6−ジイソシアナトヘキサン)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートのエステル、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、またはテトラメチルヘキサンジイソシアネートであり、特に好ましいのは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0056】
本発明によると好ましい芳香族イソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、フェニルイソシアネート、ジフェニルメタン系イソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、アンカルボジイミド化された(ancarbodiimidisiert)トリイソプロピルフェニレンジイソシアネートである。
【0057】
ジオール(b)としては、主に、数平均分子量(Mn)がおよそ500〜5000、好ましくはおよそ700〜3000g/mol、特に好ましくは800〜2500g/molである高分子量ジオール(b1)が考慮に値する。
【0058】
ジオール(b1)は、本発明によると、ポリエステルポリオールである。ジオール(b)としては、ジオール(b1)の他にさらに、分子量がおよそ50〜500、好ましくは60〜200g/molである低分子量ジオール(b2)を使用してもよい。
【0059】
モノマー(b2)としては、特に、ポリエステルポリオールの製造用に挙げた短鎖アルカンジオールの構成成分、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,1−ジメチルエタン−1,2−ジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、1,2−、1,3−、または1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキサン)イソプロピリデン、テトラメチルシクロブタンジオール、1,2−、1,3−、または1,4−シクロヘキサンジオール、シクロオクタンジオール、ノルボルナンジオール、ピナンジオール、デカリンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−オクタン−1,3−ジオール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールS、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールを使用し、ただし、2〜12個のC原子を有しC原子数が偶数である非分岐ジオール、ならびにペンタンジオール−1,5およびネオペンチルグリコールが好ましい。
【0060】
ポリウレタンの水分散性を達成するためには、ポリウレタンが、成分(a)および(b)の他に、好ましくは、成分(a)および(b)とは異なる、少なくとも1つのイソシアネート基または少なくとも1つのイソシアネート基反応性基およびさらに少なくとも1つの親水基または親水基に変換可能な基を担持するモノマー(c)から構成されている。以下の本文では、「親水基または潜在性親水基」という用語を、「(潜在性)親水基」と短縮する。(潜在性)親水基は、ポリマー主鎖の構成に利用されるモノマーの官能基よりも実質的にゆっくりとイソシアネートと反応する。(潜在性)親水基は、非イオン性もしくは好ましくはイオン性、つまり陽イオン性もしくは陰イオン性の親水基、または潜在性イオン性親水基であり得て、特に好ましくは陰イオン性親水基または潜在性陰イオン性親水基であり得る。
【0061】
非イオン性親水基として考慮に値するのは、例えば、好ましくは5〜100個、好ましくは10〜80個のエチレンオキシド繰り返し単位からなる混合または純粋ポリエチレングリコールエーテルである。ポリエチレングリコールエーテルは、プロピレンオキシド単位も含有し得る。その場合、プロピレンオキシド単位の含有量は、混合ポリエチレングリコールエーテルに対して、50重量%、好ましくは30重量%を超えない。
【0062】
その際、モノマー選択は、好ましくは、ポリウレタン、特に脂肪族ポリウレタンが、0℃〜−65℃、好ましくは−60℃〜−20℃、さらに好ましくは−55℃〜−30℃のガラス転移温度Tgを有するように行う。
適切なポリウレタンは、例えば、参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2016/169752号パンフレットに記載されている。
【0063】
とりわけ好ましくは、CHT R.BEITLICH GMBHの市販名Tubicoat PUSのポリウレタンを使用する。
【0064】
本発明によるテキスタイル複合材は、支持層と発泡層とのみからなってもよい。しかしながら、同じく可能であるのは、テキスタイル複合材が、さらなる層、特に少なくとも1つの、流層上に配置された被覆層を有することである。その際、被覆層は、好ましくは流層の、支持層に面していない側に配置されている。その利点は、流層を、損傷からより好適に保護できることである。特に適切であると判明したのは、被覆層としての溶融紡糸不織布の使用である。好ましくは、被覆層の目付け量が、25g/m
2未満、例えば12g/m
2〜17g/m
2である。同じく好ましくは、被覆層が、熱可塑性フィラメント、特にポリプロピレンフィラメントからなる。
【0065】
支持層、流層、および場合によっては存在する被覆層は、非常に様々な方法で互いに接合可能である。つまり、層が、粘着材料によって互いに貼り付けられていることが可能である。本発明の好ましい一実施形態では、流層との接合が、発泡層を支持層上に直接起泡させることによって行われる。これにより、支持層と流層との間に明確な相境界が認識できないテキスタイル複合材を得ることができる。これにより、支持層と流層との境界領域において密度勾配を調整することが可能になり、それは音響特性に対して有利に作用する。その上、付加的な接着層を省略でき、それも同じく音響特性に対して有利に作用する。
【0066】
本発明によると、テキスタイル複合材は、250Ns/m
3〜5000Ns/m
3、さらに好ましくは350Ns/m
3〜5000Ns/m
3、さらに好ましくは450Ns/m
3〜5000Ns/m
3、特に550Ns/m
3〜5000Ns/m
3の流れ抵抗を有する。テキスタイル複合材の流れ抵抗は、支持層の流れ抵抗と流層の流れ抵抗とから構成される。その際、通常は、流層が、流れ抵抗のために明らかに高い寄与部分の貢献をする。それゆえ、所望の流れ抵抗を有する適切な流層の選択により、簡単な方法で、流れ抵抗の調整を行うことができる。
【0067】
本発明によるテキスタイル複合材により、それぞれ1000HzにおいてDIN EN ISO 10534−1に準拠して測定して、例えば、30%〜100%、さらに好ましくは40%〜100%、さらに好ましくは50%〜100%という抜群の吸音率が達成可能である。この高い吸音率は、当業者には驚くべきであったが、なぜなら、その吸音率は、流層および支持層の吸音率の、それ自体として単独で測定した場合の合計よりも高いからである。
【0068】
テキスタイル複合材の目付け量は、好ましくは50g/m
2〜350g/m
2、さらに好ましくは100g/m
2〜300g/m
2、特に150g/m
2〜250g/m
2である。この目付け量の場合、軽重量のテキスタイル複合材を提供できることが有利であり、それによりまた、自動車では、重量軽減により、排気を下げることができる。
【0069】
テキスタイル複合材の厚さは、好ましくは5mm〜35mm、さらに好ましくは10mm〜30mm、特に15mm〜25mmである。少なくとも10mmの厚さでは、テキスタイル複合材単独ですでに、壁までの大きい距離が生じるため、中間周波数の中間長の音波および低周波数の長い音波も、テキスタイル複合材内で吸収され得ることが有利である。
【0070】
本発明のもう1つの主題は、次のステップ
a)繊度が3dtex〜17dtexの粗短繊維および繊度が0.3dtex〜2.9dtexの微細短繊維を骨格繊維として含む、少なくとも1つの開孔性支持層の準備および/または製造、
b)微多孔性発泡層を含む流層の準備および/または製造、
c)支持層上での流層の配置、
d)支持層と流層との結合
を含む、本発明による、250Ns/m
3〜5000Ns/m
3の流れ抵抗を有するテキスタイル複合材の製造方法である。
【0071】
本発明のさらなる好ましい一実施形態では、流層との接合が、支持層上で直接に発泡層が形成されることによって行われる。それゆえ、本発明のもう1つの主題は、次のステップ
a’)繊度が3dtex〜17dtexの粗短繊維および繊度が0.3dtex〜2.9dtexの微細短繊維を骨格繊維として含む、少なくとも1つの開孔性支持層の準備および/または製造、
b’)流層が形成される、支持層上での微多孔性発泡層の形成、
を含む、本発明による、250Ns/m
3〜5000Ns/m
3の流れ抵抗を有するテキスタイル複合材の製造方法である。
【0072】
少なくとも1つの開孔性支持層の準備および/または製造は、当業者には公知の製造プロセス、例えば、乾式短繊維不織布用の製造プロセスによって行われ得る。本発明により適切な、支持層用の製造方法は、例えば、梳綿法、ならびにエアレイ法およびエアレイド法といった空気力学的方法である。伝統的な梳綿法では、通常は、ワーカー/ターナーローラを利用して、短繊維を単一繊維にほぐし、ウェブとして置く。続いて、このウェブを、例えばクロスラッパーを介してより合わせて、一層または複数層の不織布を形成する。ランダム配向の繊維構成を有する不織布を製造する場合、特に、空気力学的方法が適切である。ランダム配向は有利であるが、なぜなら、それにより、低密度であると同時にかさばった、圧縮弾性の不織布を獲得できるからである。バインダ繊維を使用する場合、そのバインダ繊維を、例えば連続炉中で融点まで加熱することで不織布の固化に利用する。熱的固化は、支持層と流層との結合前および/または結合後に行ってもよい。さらには、その他の非接触式固化法、例えば、バインダ塗布も可能である。特に好ましくは、機械的固化法を使わずに不織布を固化するが、なぜなら、これにより、支持層のかさ高さが損なわれないからである。
【0073】
発泡層は、従来の方法で、ポリマー分散液またはポリマーエマルジョンの起泡によって、例えば機械的泡立てにより製造でき、通常の塗布方法、例えば、中間支持体(Zwischentrager(aはウムラウト付))を介して塗布できる。
【0074】
支持層と流層との結合は、当業者に公知の方法で、例えば、ホットメルト接着剤または感圧接着剤を用いて行うことができる。しかしながら、好ましくは、付加的な接着剤がなくても支持層と結合できるように十分に粘着性である発泡層を使用する。
【0075】
本発明の好ましい一実施形態では、流層を、支持層上および/または被覆層上で直接に形成させる。これは、例えば、それぞれの層上への直接起泡によってもたらされ得る。この実施形態では、支持層/被覆層と流層との間の明確な相境界の形成の回避が可能であることが有利である。これにより、支持層/被覆層と流層との境界領域における物質勾配の調整が可能になり、それはそれで、音響特性に対して有利に作用する。その上、付加的な接着層を省略でき、それも同じく音響特性に対して有利に作用する。
【0076】
流層を保護するために、任意選択で、前記のように被覆層を付与してもよい。これは、特に、傷みやすい発泡体の場合に有利である。
【0077】
本発明によるテキスタイル複合材は、自動車部門での吸音用に、例えば、車内空間用の音響部品として、および特に自動車のライニング部品での吸音芯材として抜群に適切である。
【実施例】
【0078】
以下では、複数の例を手がかりに本発明をより詳細に説明する。
【0079】
本発明によるテキスタイル複合材(例1)
1.7dtexで繊維長が38mmの微細PET短繊維、および繊度が3.3dtexで繊維長が64mmの粗PET短繊維、および4.4dtexで繊維長が51mmのPET/Co−PET二成分繊維からなる、目付け量が200g/m
2で厚さが21mmの短繊維不織布を準備する。短繊維不織布は、熱結合同様にバインダ結合もされている。その短繊維不織布上に、目付け量が17g/m
2、厚さが0.1mm、および平均孔径が11.1μmの微多孔性ポリウレタン発泡層を塗布する。
【0080】
比較例2:最適化されていない支持層を有する流層
繊度が28dtexの粗PET短繊維、および10dtexのPET/Co−PET二成分繊維からなる、目付け量が300g/m
2で厚さが20mmの短繊維不織布を準備する。その短繊維不織布上に、目付け量が17g/m
2、厚さが0.1mm、および平均孔径が11.1μmの微多孔性ポリウレタン発泡層を塗布する。
【0081】
例1および比較例2に対して、支持層の流れ抵抗および流層の流れ抵抗を互いに独立に、ならびに組み合わせてDIN EN 29053に準拠して測定した。
【0082】
流層は微多孔性発泡層であり、単独では十分な強度を有さないため、本発明による微多孔性PU発泡層を、それ自体は非常にわずかな流れ抵抗、すなわち23Ns/m
3を有するため流れ抵抗の測定にはできるだけ影響を及ぼさないものの測定は保証できる軽量紡糸不織布上に塗布した。
【0083】
【表1】
【0084】
高い流れ抵抗は、ほぼ流層によってしか達成されず、支持層は、流れ抵抗の調整にほぼ影響を及ぼさないことが分かる。さらに、例1および比較例2の総流れ抵抗が類似範囲にあることが分かる。
【0085】
比較例3:3M Thinsulate(TAI3027)
65重量%が微細ポリプロピレンメルトブロー繊維および35重量%が粗PET短繊維からなる、目付け量が330g/m
2で厚さが21mmの短繊維不織布を準備する。さらに、その短繊維不織布の片側上には、100重量%のポリプロピレンからなる被覆層が存在する。
【0086】
例4:
0.6dtexの微細PET短繊維50重量%、および繊度が4.4dtexの粗PET短繊維50重量%からなる、目付け量が200g/m
2で厚さが10mmの短繊維不織布を準備する。
【0087】
例5:
0.6dtexの微細PET短繊維80重量%、および繊度が4.4dtexの粗PET短繊維20重量%からなる、目付け量が200g/m
2で厚さが10mmの短繊維不織布を準備する。
【0088】
例1、比較例2および3の吸音率を、DIN EN ISO 10534−1、第1部に準拠して測定した。結果を
図1に示す。
例1は、自動車産業にとって重要な、800Hz〜2000Hzの周波数範囲において抜群の吸音特性を示すことが分かる。1000Hzでは、50%の吸音率が達成され、これは驚くべきことに高い。つまり、比較例2の場合、1000Hzにおいて単に24%という値が測定され、比較例3の場合、1000Hzにおいて25%という値しか測定されなかった。全体として、およそ800Hz〜2500Hzの周波数範囲において、本発明によるテキスタイル複合材では、例1の目付け量は比較例2および3と比べて低いにもかかわらず、驚くべきことに高い吸音率が認められる。
【0089】
多孔性アブゾーバの吸収能は、壁までの距離と組み合わせて、流れ抵抗により調整することが公知である。壁までの距離はどの例でも等しく選択されているため、結果に影響を及ぼし得ない。例1および比較例2を観察すると、例1および比較例2の総流れ抵抗は非常に似ているため(前記第3項を参照)、このパラメータが、吸音率の予期されなかった改善の原因ではあり得ない。
【0090】
本発明により一機構に確定することはしないが、驚くべきことに高いこの吸音率は、流層と組み合わせた、支持層の微細繊維と粗繊維との間の相乗相互作用に起因するものと推定される。つまり、支持層中における、繊度が0.3dtex〜2.9dtexの微細短繊維および繊度が3dtex〜17dtexの粗短繊維という特別な選択が、それ自体が音波を吸収できる、吸音に特に適切な骨格構造の形成を可能にすると推定される。なぜなら、微細短繊維と粗短繊維との適切な選択によって、支持層に高い圧縮性および高い復元能力を供与することが可能になり、それにより、支持層が、音波によって最適に振動するよう刺激されるため、特に効果的に音響エネルギーを吸収できる。
【0091】
その際、本発明によるテキスタイル複合材は、可撓性プレートアブゾーバのように作用する。プレートアブゾーバは、ちょうど所望の周波数範囲へと調整できる高効率のアブゾーバである。振動質量は、フィルムまたは薄板の質量によって実現される。本発明によるテキスタイル複合材の場合、振動質量は、流層によって実現される。共振系のスプリングは、プレートアブゾーバではたいていの場合、フィルムまたはプレートと後壁との間のエアクッションのスプリングである。本発明によるテキスタイル複合材では、支持層がスプリングとして機能する。そのため、本発明によるテキスタイル複合材に関しては、好ましくは次の構造、すなわち流層−支持層−壁を選択する。すると、正確に定義された、支持層の非常に良好な圧縮特性および再回復特性により、流層が、支持層上で最適に振動できることから、スプリング体積、つまり支持層内において、さらに内部損失が生じる。
【0092】
これは、まとめると、本発明による、高い圧縮性および高い復元能力を有する特殊な支持層の選択により、多孔性アブゾーバとしての流層の動作原理が、支持層内での付加的ダンピング(Zusatzbedampfung(2つ目のaはウムラウト付))により拡張され、それにより、吸音率が、特に、自動車製造業者にとって重要な、800Hz〜2000Hzの周波数範囲において、多孔性アブゾーバおよび可撓性プレートアブゾーバの動作原理の相互作用により上昇し得るということを意味する。
【0093】
前記の音響動作原理の驚くべき相乗効果は、
図2および
図3の比較によっても証明される。
【0094】
図2では、まず、例で使用した単一層のみを観察する。具体的には、本発明による例1および比較例2中で使用した流層の、インピーダンス管中での吸音率(DIN EN ISO 10534)を、本発明による例1中で使用した支持層ならびに比較例2中で使用した支持層と比較する。すでに流れ抵抗を測定した場合と同様に、インピーダンス管での測定用にも、試験を行えるようにするために、微多孔性発泡層を軽量紡糸不織布上に塗布する。支持層はおよそ比較可能な吸音率を有する一方で、流層はそれより高い吸音率を有することが分かる。つまり、例1に由来する支持層は、1000Hzにおいておよそ11%の吸音率を示し、比較例2に由来する支持層はおよそ8%の吸音率を、そして流層はおよそ17%の吸音率を示す。
【0095】
図3では、例1によるテキスタイル複合材、比較例2、および単離流層のインピーダンス管中での吸音率(DIN EN ISO 10534)を比較する。本発明による例1が、単離流層および比較例2よりも明らかに高い吸音率を有することが分かる。つまり、本発明による例1は、1000Hzにおいておよそ50%の吸音率を示し、比較例2はおよそ24%の吸音率を、そして流層はおよそ17%の吸音率を示す。
【0096】
本発明による例1に対して算出された値は、驚くべきことに高い。つまり、個々の層の吸音率は、近似的に互いに加算することができると前提できた。それによると、比較例2の場合、8%[支持層]+17%[流層]=25%となり、24%という測定値に非常に類似する。したがって、支持層と流層との間で相乗効果は認識できない。それに対して、例1に関しては、計算上、11%[支持層]+17%[流層]=28%という吸音率がもたらされる。しかしながら、測定されたのは50%という値であり、それは、計算値を22%上回り、おそらく、前記の、流層と支持層との間の相乗効果および支持層の特別な骨格構造に起因する。
【0097】
図4では、例4と例5の、インピーダンス管中での吸音率(DIN EN ISO 10534)の比較を示す。例4(微細繊維分率が80重量%)が、1000Hzにおいて例5(微細繊維分率が50重量%)よりも高い吸音率を有することが分かる。
【0098】
本発明により使用したパラメータの測定には、次の測定方法を使用する。
【0099】
[目付け量を測定するための不織布用試験方法]
ISO 9073−1に準拠、ただし測定サンプルの面積は100mmx100mmである。
【0100】
[厚さを測定するための不織布用試験方法]
DIN EN ISO 9073−2、方法BおよびCに準拠。
【0101】
[繊維繊度の測定]
DIN 53810(紡糸繊維の繊度−用語および測定原理)に準拠して、顕微鏡、および繊維径を算出するための対応するソフトウェアを使用。全部で>20本の単一繊維から4つの顕微鏡標本を準備する。顕微鏡標本ごとに、はさみでおよそ2〜3mmの長さに繊維をカットして、解剖針を使ってスライドグラス上に載せる。続いて、対応するソフトウェアを利用して、繊維径をμmで算出して平均を出す。繊維径の平均値は、続いて、次の数式を手がかりに繊維繊度Ttに換算できる。
【0102】
【数1】
【0103】
[発泡層の孔径分布の測定]
微多孔性発泡層の孔径分布は、ASTM E 1294(1989)に準拠して測定する。
試験データ:
試験装置:PMI.01.01
試験片数:3
試験片サイズ:直径21mm
試験片厚さ:1mm
試験液:Galden HT230
作用時間:>1分
試験温度:22℃
【0104】
[短繊維長の測定]
既存の繊維サンプルから10個の繊維束を選択し、10個の繊維束のそれぞれから、ピンセットを使って単一繊維を取り出し、繊維の一方の自由端を2つの留め金のうちの1つに固定し、第2の繊維端を残りの留め金に固定することにより、10本の単一繊維の繊維長を算出する。ハンドル車を回して、繊維をまっすぐになるまで伸ばす。繊維の長さは、測定装置のスケールから読み取り、mmでメモする。記録したすべての結果の平均値が短繊維長を示す。
【0105】
【数2】
【0106】
[融点の測定]
DIN EN ISO 11357−3、示差走査熱量分析(DSC)−第3部:融点および結晶化温度ならびに融解エンタルピーおよび結晶化エンタルピーの測定に準拠、ただし、加熱速度は、10K/分を用いる。
【0107】
[圧縮性の測定]
DIN 53885(テキスタイルおよびテキスタイル製品の圧縮性の測定)に準拠し、ただし、圧縮性の測定は、規格で記載される装置とは異なる試験装置を用いて行う。つまり、寸法が100mmx100mmの測定サンプル、長さスケールがmmの測定ボード、寸法が120mmx120mmの金属板、および直径が55mmで質量が1キログラムのシリンダ形状のおもりを準備する。
【0108】
測定サンプルの厚さを、測定前に非負荷状態において測定ボードを使って測定する。この値が、初期厚さd
0(mm)である。非負荷状態での初期厚さを測定した後、次のステップにおいて、金属板(100g)を測定サンプル上に置き、中央に配置する。続いて、シリンダ形状のおもりを、測定板の円形マーキング上に置くことにより、測定サンプルにおよそ1.1kgの負荷をかける。測定サンプルの絶対圧縮性は、次の数式を手がかりに算出され、それは負荷状態での厚さに対する初期厚さの差異を記載する。
【0109】
【数3】
【0110】
相対圧縮率Kr(%)
【0111】
【数4】
【0112】
[復元能力の測定]
DIN EN ISO 1856(軟弾性高分子発泡体−圧縮永久ひずみの測定)に準拠。測定装置としては、章「圧縮性の測定」ですでに記載したのと同じ構成を利用する。復元能力の測定では、一定時間にわたる、一定温度での圧縮ひずみおよび指定した回復時間の後に、材料の初期厚さと最終厚さとの差異を算出する。
【0113】
測定サンプルの厚さを、測定前に非負荷状態において測定ボードを使って測定する。この値が、初期厚さd
0(mm)である。非負荷状態での初期厚さを測定した後、次のステップにおいて、金属板(100g)を測定サンプル上に置き、中央に配置する。続いて、シリンダ形状のおもりを、測定板の円形マーキング上に置くことにより、24時間にわたり室温(23℃+/−2℃)において測定サンプルにおよそ1.1kgの負荷をかける。24時間の負荷後に、測定サンプルからおもりと金属板とを取り除き、測定サンプルの厚さを、30分の回復時間後に改めて測定し、圧縮永久ひずみを、次のように算定する。
【0114】
【数5】
【0115】
圧縮永久ひずみから、次の数式を手がかりに、材料の復元能力を計算する。
【0116】
【数6】
【0117】
[空気:繊維の体積比の測定]
繊維に対する空気の体積比は、材料がどれだけ多孔性であるかの情報を与える。つまり、繊維と比べて空気の分率が高い場合、材料は、高い多孔性を有すると前提できる。体積比、V
空気対V
繊維は、次のように算出できる。それには、次の数式を手がかりに、まず試験片の体積を計算する。
【0118】
【数7】
試験片の体積を算定した後に、次のステップにおいて、不織布中に含有されている繊維の体積を、次の数式を手がかりに算出する。
【0119】
【数8】
【0120】
ただし、好ましくは、ポリマーのポリエチレンテレフタレート製の短繊維が支持層中で使用され、それゆえ、およそ1.38g/cm
3の繊維密度を前提できる。繊維体積を計算した後、さらなるステップにおいて、次の数式を手がかりに空気体積を算定できる。
【0121】
【数9】
【0122】
試験片の空気体積と繊維体積とを算定したら、それらの2つの体積値を互いに対比させることができる。
【0123】
[流れ抵抗を測定するための試験方法]
DIN EN 29053、方法A(空気正流法)に準拠、ただし、サンプル有効径は100mmであり、空気圧は1000mbarに相応する。
【0124】
[インピーダンス管中での吸音率およびインピーダンスを測定するための試験方法]
DIN EN ISO 10534−1、第1部:定在波比による方法(ISO 10534−1:2001−10)に準拠、ただし、管長Aは100cmおよび管断面Aは77cm
2に相応し、管長Bは30cmおよび管断面Bは6.6m
2である。テキスタイル複合材および支持層の試験片を、直接に残響壁(schallharte Wand)に当てがって測定する。流層は、残響壁に対して20mmの距離で測定する。