特許第6702933号(P6702933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702933
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】車両用ウインド装置の断熱構造
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/60 20060101AFI20200525BHJP
   B60S 1/02 20060101ALI20200525BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B60S1/60 Z
   B60S1/02 Z
   F16L59/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-254738(P2017-254738)
(22)【出願日】2017年12月28日
(65)【公開番号】特開2019-119321(P2019-119321A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2018年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】綛谷 泰基
(72)【発明者】
【氏名】新海 竜一
(72)【発明者】
【氏名】永井 利和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達規
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−185896(JP,A)
【文献】 特開2010−021031(JP,A)
【文献】 特開2002−305157(JP,A)
【文献】 特開2003−100426(JP,A)
【文献】 特開2007−292199(JP,A)
【文献】 特開2016−121804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00− 1/60
F16L 59/00−59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウインドよりも車内側に配置される装置本体に設けられたヒータと、
前記ウインドと前記ヒータとの間に設けられ、前記ヒータから熱を受けることにより前記ウインドに輻射熱を及ぼす被加熱部材と、
前記ヒータの前記被加熱部材と反対側の面に設けられた断熱層と、
を備え、
前記断熱層は、複数の断熱材が積層されて形成されており、
複数の前記断熱材のうち、前記ヒータに近い側の前記断熱材は、前記ヒータから遠い側の前記断熱材よりも耐熱性が高く、前記ヒータから遠い側の前記断熱材は、前記ヒータに近い側の前記断熱材よりも熱伝導率が低く、
前記被加熱部材は、前記ヒータが重なる被加熱部を備えており、
前記断熱層の外形は、前記被加熱部と同じ形状であり、
前記ヒータのケーブル接続部分は、前記ヒータの前記被加熱部に重なる部分よりも前記ヒータの面方向外側に位置している、車両用ウインド装置の断熱構造。
【請求項2】
前記断熱層は、2枚の前記断熱材が積層されて形成されている、請求項1に記載の車両用ウインド装置の断熱構造。
【請求項3】
前記ヒータから遠い側の前記断熱材をポリオレフィン発泡材とし、
前記ヒータに近い側の前記断熱材をポリウレタン発泡材とした、請求項1又は請求項2に記載の車両用ウインド装置の断熱構造。
【請求項4】
前記被加熱部材の前記ウインド側の面に不織布が配置されている、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用ウインド装置の断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ウインド装置の断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントウインドの車内側に撮影装置を設けることがある。この撮影装置は、例えばプリクラッシュセーフティシステムの一部として利用されている。
【0003】
ところで、例えば、車両の外気温が低い場合に車内で暖房を使用すると、フロントウインド内面に結露が生じることがある。また、外気温度が低い場合には、フロントウインドの外面に、氷や霜が付着することがある。この状態では、撮影装置が十分に機能しないため、フロントウインドにおいて撮影装置で用いる光束が透過する部分をヒータの熱で暖めて、結露、霜、及び氷等を消失させている。
【0004】
特許文献1に開示されている車両用撮影装置では、フロントウインドとヒータとの間に被加熱部材を配置し、この被加熱部材でヒータの熱を受けて輻射熱としてフロントウインドの光束透過部を暖めている。また、ヒータの裏面には、1枚の断熱材が貼り付けられている。この断熱材の断熱効果によって、ヒータの裏面から逃げる熱が抑制されて、被加熱部材を介したヒータによる光束透過部の暖め効果が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−185896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されたヒータの断熱技術では、1枚の断熱材でヒータを断熱しているため、断熱性能を向上させるためには、厚みを増加する必要がある。しかし、撮影装置内のスペースを考慮すると、断熱材の厚みを増加させることは難しい。一方、断熱材をより断熱性の高い材料で形成した場合、厚みの増加を抑えつつ断熱性能を確保できるが、ヒータから直接伝わる熱に対して十分な耐熱性能を確保できない虞がある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、ウインドを暖めるヒータの裏面に断熱層が設けられる構成において、断熱層の厚みの増加を抑えつつ、耐熱性能と断熱性能を確保可能な車両用ウインド装置の断熱構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様の車両用ウインド装置の断熱構造は、車両のウインドよりも車内側に配置される装置本体に設けられたヒータと、前記ウインドと前記ヒータとの間に設けられ、前記ヒータから熱を受けることにより前記ウインドに輻射熱を及ぼす被加熱部材と、前記ヒータの前記被加熱部材と反対側の面に設けられた断熱層と、を備え、前記断熱層は、複数の断熱材が積層されて形成されており、複数の前記断熱材のうち、前記ヒータに近い側の前記断熱材は、前記ヒータから遠い側の前記断熱材よりも耐熱性が高く、前記ヒータから遠い側の前記断熱材は、前記ヒータに近い側の前記断熱材よりも熱伝導率が低い。
【0009】
第1態様の車両用ウインド装置の断熱構造では、ヒータから熱を受けた被加熱部材から輻射熱が放たれてウインドが暖められる。これにより、ウインドに、結露が生じたり、霜及び氷等が付着したりしていても、これらを消失させることができる。
【0010】
また、上記断熱構造では、ヒータの被加熱部材と反対側の面に複数の断熱材が積層されて形成された断熱層を設け、ヒータに近い側の断熱材の耐熱性をヒータから遠い側の断熱材よりも高くし、ヒータから遠い側の断熱材の熱伝導率をヒータに近い側の断熱材よりも低くしている、言い換えると、断熱性能を高くしている。このため、断熱層のヒータに近い側の断熱材ではヒータからの熱による不具合が生じにくく、ヒータから遠い側の断熱材では十分な断熱性能を確保することができる。よって、上記断熱構造によれば、断熱層を単一の断熱材で形成するものと比べて、断熱層の厚みの増加を抑えつつ、耐熱性能と断熱性能を確保することができる。
【0011】
本発明の第2態様の車両用ウインド装置の断熱構造は、第1態様の車両用ウインド装置の断熱構造において、前記断熱層は、2枚の前記断熱材が積層されて形成されている。
【0012】
第2態様の車両用ウインド装置の断熱構造では、2枚の断熱材が積層されて断熱層が形成されているため、断熱層の厚みの増加を抑えることができる。
【0013】
本発明の第3態様の車両用ウインド装置の断熱構造は、第1態様又は第2態様の車両用ウインド装置の断熱構造において、前記ヒータから遠い側の前記断熱材をポリオレフィン発泡材とし、前記ヒータに近い側の前記断熱材をポリウレタン発泡材としている。
【0014】
第3態様の車両用ウインド装置の断熱構造では、ヒータから遠い側の断熱材を断熱性が高いポリオレフィン発泡材とし、ヒータに近い側の断熱材を耐熱性が高いポリウレタン発泡材としていることから、断熱層の厚みの増加を抑えつつ、耐熱性能と断熱性能を効果的に確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ウインドを暖めるヒータの裏面に断熱層が設けられる構成において、断熱層の厚みの増加を抑えつつ、耐熱性能と断熱性能を確保可能な車両用ウインド装置の断熱構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る車両用ウインド装置の側面図である。
図2】実施形態の遮光加熱ユニットの分解斜視図である。
図3】実施形態の遮光加熱ユニットを下方から見た下面図である。
図4】車両用ウインド装置の断熱構造を示す、断熱層の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施形態に係る車両用ウインド装置の断熱構造を図1図4を用いて説明する。
【0018】
図1図4に示されるように、本実施形態の車両用ウインド装置の断熱構造S(以下、適宜「断熱構造S」と記載する。)は、車両に用いられる車両用ウインド装置20(以下、適宜「ウインド装置20」と記載する。)が備えるヒータ42の断熱構造である。なお、図中において、矢印Uで示すのは車両上方であり、矢印Fで示すのは車両前方であり、矢印Wで示すのは車両幅方向である。
【0019】
図1に示されるように、ウインド装置20は、撮影機能を有する装置であり、車両のプリクラッシュセーフティシステムの一部として利用される。
【0020】
ウインド装置20は、車両のフロントウインド10よりも車内側でかつ車両上側に配置される装置本体22を備えている。なお、フロントウインド10は、透光性材料(例えば、ガラス、樹脂など)によって形成されている。また、フロントウインド10の内面(車内側の面)10Aには、遮光シート12が貼り付けられている。この遮光シート12には、後述する反射光束が透過する部分に光透過孔12Aが形成されている。なお、本発明は上記構成に限定されず、フロントウインド10の内面10Aに遮光シート12が貼り付けられない構成であってもよい。
【0021】
図1に示されるように、装置本体22は、カメラユニット24、遮光加熱ユニット26、カバー28を備えている。
【0022】
カメラユニット24は、ハウジング30と、撮像部32と、を備えている。このハウジング30は、樹脂材料で形成されており、上部に撮像部32が取り付けられている。また、ハウジング30の撮像部32よりも車両前側の上面には、平面視略台形状の遮光フード装着用の凹部34が設けられている。
【0023】
撮像部32は、レンズ36と、レンズ36の直後に位置する撮像素子38と、を備えている。撮像素子38は、カメラユニット24の前方に位置する障害物によって後方へ反射され且つレンズ36を透過した自然光である反射光束(撮影光速)を受光する。撮像部32に入射する反射光束の大きさ(断面形状)は、撮像部32のレンズ36の画角によって規定される。なお、反射光束の大きさは、後述する遮光加熱ユニット26の被加熱部40Aの表面と干渉しない大きさとされている。
【0024】
図1及び図2に示されるように、遮光加熱ユニット26は、遮光フード40、ヒータ42、両面テープ44、ヒューズモジュール46、断熱層48及びケーブルモジュール50を備えている。
【0025】
図2に示されるように、遮光フード40は、硬質樹脂材料の一体成形品である。この遮光フード40は、正面視で等脚台形状の板状体である被加熱部40Aと、被加熱部40Aの左右両側縁部から上方に延びる一対の側壁部40Bと、を備えている。この遮光フード40は、フロントウインド10に対して対向して配置される。なお、本実施形態の遮光フード40は、本発明における被加熱部材の一例である。また、本実施形態では、遮光フード40の表面に不織布(例えば、フェルト)が配置されている。
【0026】
ヒータ42は、被加熱部40Aに対応する形状とされた面状ヒータである。このヒータ42は、導電性に優れる金属(例えば、黄銅、ステンレス鋼)によって構成されている。また、ヒータ42の裏面(被加熱部40Aと反対側の面)には、ヒータ42に対応した形状の図示しない絶縁シートが貼り付けられている。この絶縁シートの材料としては、例えば、ポリイミドを用いてもよい。
【0027】
ヒータ42の上面には、ヒータ42を覆うようにして両面テープ44が貼り付けられている。この両面テープ44を介して、ヒータ42と被加熱部40Aとが接着されている。この両面テープ44は、絶縁性を有する樹脂材料によって構成されている(例えば、テープ状のポリイミドの両面にシリコン系粘着剤を付与したテープ)。
【0028】
ヒューズモジュール46は、両面テープ54、ヒューズ52及び二本のリード線58、60を備えている。両面テープ54は、絶縁性を有する樹脂材料によって構成されている(例えば、両面テープ44と同じ材料)。また、ヒューズ52は、円筒状の絶縁ケースと、絶縁ケース内に固定された導電性を有する可溶金属と、を有している。ヒューズ52の絶縁ケースは、両面テープ54の上面の略中央部に貼りつけられている。二本のリード線58、60は、両面テープ54の上面に貼りつけられている。二本のリード線58、60の一端は、それぞれヒューズ52の絶縁ケース内に位置しており、可溶金属の両端にそれぞれ接続されている。一方、二本のリード線58、60の他端はいずれも、両面テープ54の外周側に延出している。
【0029】
図4に示されるように、断熱層48は、ヒータ42の下面に設けられている。具体的には、断熱層48は、図示しない絶縁シートを介してヒータ42に接触している。この断熱層48の外形は、被加熱部40Aと同じ形状とされている。このため、ヒータ42の裏面全体が断熱層48によって覆われている。
【0030】
また、断熱層48は、樹脂材料で形成された複数(本実施形態では2枚)の断熱材62、64が積層されて形成されている。
【0031】
ヒータ42に近い側に配置された断熱材62は、ヒータ42から遠い側に配置された断熱材64よりも耐熱性が高くされている。
【0032】
一方、ヒータ42から遠い側に配置された断熱材64は、ヒータ42に近い側に配置された断熱材62よりも熱伝導率が低く(言い換えると断熱性が高く)されている。
【0033】
断熱材62の材料としては、例えば、ポリウレタン発泡材を用いることが好ましい。一方、断熱材64の材料としては、例えば、ポリオレフィン発泡を用いることが好ましい。
【0034】
また、本実施形態では、断熱材62の厚みT1が断熱材64の厚みT2よりも厚くされている。
【0035】
なお、断熱材62及び断熱材64が積層されて形成された断熱層48は、全体として絶縁性を有している。
【0036】
ケーブルモジュール50は、ヒータ42に接続されて、ヒータ42に電力を供給するように構成されている。
【0037】
なお、本実施形態の断熱構造Sは、上記のヒータ42、遮光フード40及び断熱層48とで構成されている。
【0038】
次に、本実施形態のウインド装置20の動作について説明する。
撮像部32の撮像素子38は、ウインド装置20を搭載した車両の前方に位置する障害物(例えば、別の車両)によって後方へ反射され且つフロントウインド10、遮光シート12の光透過孔12A及びレンズ36を透過した反射光速を撮像する。さらに撮像部32は、全ての撮像データを図示しない制御装置に、一定時間が経過するごとに送信するようになっている。仮に車両の前進走行中に制御装置が「撮像データの被写体が障害物ではない」又は「撮像素子38から障害物までの距離が、接近判定データが表す距離より長い」と判定した場合は、車両はそのまま前進走行を続行する。なお、制御装置による撮像データの被写体の種別判定は、例えば周知のパターンマッチング法を用いて実行可能である。
【0039】
一方、車両の前進走行中に制御装置が「現在の車速が所定の範囲内にあり」、さらに「撮像データの被写体が障害物であり、且つ、撮像素子38から障害物までの距離が、接近判定データが表す距離より短い」と判定した場合は、制御装置が車両のブレーキアクチュエータに信号を送る。これにより、ブレーキアクチュエータが動作するので、運転者がブレーキペダルを踏まない場合であっても各ブレーキ装置が車輪に制動力を及ぼす。その結果、車両の速度が低下し、場合によっては車両が停止する。
【0040】
ところで、車両の外気の温度が低い場合に車両内で暖房を使用すると、フロントウインド10に結露が発生することがある。また、外気温度が低い場合にはフロントウインド10に氷や霜が付着することがある。この場合、撮像素子38が不鮮明な被写体像を撮像したり、或いは、障害物を撮像できなくなったりするおそれがある。
【0041】
ここで、本実施形態では、ウインド装置20がヒータ42と被加熱部40Aを備えているため、外気温が所定以下の温度の場合には、制御装置によってヒータ42に電力が供給され、ヒータ42が発熱する。
【0042】
ヒータ42から発せられる熱を受けて被加熱部40Aからは輻射熱がフロントウインド10に向けて放たれてフロントウインド10が暖められる。これにより、フロントウインド10の結露、霜及び氷等を消失させることができる。
【0043】
次に、本実施形態の断熱構造Sの作用効果について説明する。
断熱構造Sでは、ヒータ42の裏面42Aに断熱材62、64が積層されて形成された断熱層48を設け、ヒータ42に近い側の断熱材62の耐熱性をヒータ42から遠い側の断熱材64よりも高くし、ヒータ42から遠い側の断熱材64の熱伝導率をヒータ42に近い側の断熱材62よりも低くしている、言い換えると、断熱性能を高くしている。このため、断熱材62ではヒータ42からの熱による不具合が生じにくく、断熱材64では十分な断熱性能を確保することができる。よって、断熱構造Sによれば、断熱層48を単一の断熱材で形成するものと比べて、断熱層48の厚みの増加を抑えつつ、耐熱性能と断熱性能を確保することができる。このように、断熱層48の厚みの増加を抑えることができるため、車室内に配置されるため搭載スペースに制限のあるウインド装置20の内部にも設置することができる。
【0044】
また、断熱層48によってヒータ42の裏面側から熱が逃げるのが抑制されるため、ヒータ42から被加熱部40Aへ伝わる熱量が増える。これにより、フロントウインド10の加熱効率が向上する。これにより、ヒータ42の出力を過剰に上昇させなくても、フロントウインド10を迅速かつ低損失で加熱できるため、撮像素子38への熱入力の増加を抑えることができる。
【0045】
また、断熱構造Sでは、2枚の断熱材62、64が積層されて断熱層48が形成されているため、断熱層48の厚みの増加を抑えることができる。
【0046】
さらに、断熱構造Sでは、ヒータ42から遠い側の断熱材64を断熱性が高いポリオレフィン発泡材とし、ヒータ42に近い側の断熱材62を耐熱性が高いポリウレタン発泡材としていることから、断熱層48の厚みの増加を抑えつつ、耐熱性能と断熱性能を効果的に確保することができる。
【0047】
前述の実施形態では、断熱層48を2枚の断熱材で構成したが、本発明はこの構成に限定されず、断熱層48を3枚以上の断熱材で構成してもよい。
【0048】
また、前述の実施形態では、ウインド装置20をフロントウインドの車内側に配置する構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、ウインド装置をリアウインドの車内側に配置してもよいし、ドアウインドの車内側に配置してもよい。
【0049】
次に、本実施形態の断熱層に用いる断熱材の好適な組み合わせについて実験した。
実験では、同一のヒータに表1に示す各種の断熱層を貼り付け、ヒータの表面温度と断熱材の表面温度をそれぞれ測定した。なお、評価における合格基準は、ヒータ表面温度120℃到達時の断熱材の撮像素子側の表面温度が75℃以下とした。
【0050】
試験条件:10℃環境下
ヒータへの通電:13.6Vで常時通電
温度測定点:ヒータと遮光フードとの間
温度ヒューズの仕様:アキシャル44K φ1.65±0.1 143±3℃、絶縁チューブなし、リード線は元長配線69mmでヒータ上に配置、感熱部の方向は平行(2本の間)
【0051】
LZ2000:ポリオレフィン発泡シート:(株)イノアックコーポレーション
GS072:ポリオレフィン発泡シート:(株)イノアックコーポレーション
TR32:ポリウレタン発泡シート:(株)ロジャースイノアック
ハマガスフォーム:アルミ箔とシリコン発泡体の積層品:浜松ガスケット(株)
838R:アルミガラスクロス粘着テープ:(株)寺岡製作所
【0052】
【表1】
【0053】
表1から分かるように、実施例1〜3は、断熱層を同じ断熱材を2枚積層した比較例2、3と比べて、ヒータ表面温度120度到達時における断熱材表面温度から分かるように、断熱性能が大幅に向上していることが分かる。また、実施例1〜3は、断熱層を異なる断熱材を2枚積層した比較例1と比べても、断熱性能が大幅に向上していることが分かる。特に実施例1における断熱性能は顕著に上昇していることが分かる。
【0054】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
10 フロントウインド
20 ウインド装置(車両用ウインド装置)
40 遮光フード(被加熱部材)
42 ヒータ
42A 裏面
48 断熱層
62 断熱材(ヒータに近い側の断熱材)
64 断熱材(ヒータから遠い側の断熱材)
S 断熱構造
図1
図2
図3
図4