特許第6702953号(P6702953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6702953表面効果組成物のための非フッ素化モノマー及び非フッ素化ポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702953
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】表面効果組成物のための非フッ素化モノマー及び非フッ素化ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/36 20060101AFI20200525BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20200525BHJP
   C07D 307/20 20060101ALI20200525BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C08F20/36
   C09D133/14
   C07D307/20
   D06M15/263
【請求項の数】11
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2017-516730(P2017-516730)
(86)(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公表番号】特表2017-538793(P2017-538793A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】US2015048806
(87)【国際公開番号】WO2016048642
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2018年7月13日
(31)【優先権主張番号】62/055,920
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クリストファー スウォーレン
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド オロンデ ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】タチアナ ハイジンスカヤ
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−273217(JP,A)
【文献】 特開昭59−082344(JP,A)
【文献】 特開平01−115967(JP,A)
【文献】 特開2014−009188(JP,A)
【文献】 特開昭55−056109(JP,A)
【文献】 特開平10−324717(JP,A)
【文献】 特開昭56−034773(JP,A)
【文献】 特開昭62−081410(JP,A)
【文献】 国際公開第00/040662(WO,A1)
【文献】 特表2017−534590(JP,A)
【文献】 特開平03−296514(JP,A)
【文献】 特開平07−330847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
D06M13/00− 15/715
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物であって、
【化1】
式中、
3は、H又はC1〜C4アルキル基から選択され;
Yは、O、置換アリーレン基、又は非置換アリーレン基から選択され;
Aは、直鎖又は分岐鎖のC1〜C10アルキレン基であり;
wは、0又は1であり;
vは、0又は1であり;
yは、1であり
w+yは、1又は2であり;wが0の場合、Yは、置換又は非置換のアリーレン基であり;YがOの場合、vが1であることを条件とし;
Xは、式(IIa)、(IIb)、又は(IIc)から選択され:
【化2】
式中、各Rは、独立的に、式(I)のC=Oに対する直接結合、−H、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;
XXは、水素原子またはROCH2(CHOR)p−であり、
各nは、独立的に、0〜20であり;
各mは、独立的に、0〜20であり;
m+nは、0よりも大きく;
各R1は、独立的に、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり;
各R2は、独立的に、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい6〜30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はこれらの混合物であり、 rは、1〜3であり;
pは、独立的に、0〜2から選択され;
rが3のとき、XXは水素原子であることを条件とし;
但し、Xが式(IIa)である場合、1つのRは、式(I)のC=Oに対する直接結合であり;少なくとも1つのRは、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;
各R4は、独立して、式(I)のC=Oに対する直接結合、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの組み合わせ、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、あるいは−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;
が式(IIb)である場合、1つのR又はR4は、式(I)のC=Oに対する直接結合であり;少なくとも1つのR又はR4は、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの組み合わせ、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、あるいは−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であることを条件とし;
各R19は、式(I)のC=Oに対する直接結合、−H、−C(O)R1、又は−CH2C[CH2OR]3であり、
Xが式(IIc)である場合、1つのR19又はRは、式(I)のC=Oに対する直接結合であり;少なくとも1つのR19又はRは、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であることを条件とする、
化合物。
【請求項2】
Xは、式(IIa’)である式(IIa)から選択され:
【化3】
式中、Rは、独立的に、C=Oに対する直接結合、−H、−R1、又は−C(O)R1にさらに限定される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xは、式(IIa’)である式(IIa)から選択され:
【化4】
式中、Rは、独立的に、C=Oに対する直接結合、−H、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1にさらに限定される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Xが式(IIb)から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
(a)式(III)から選択される化合物:
【化5】
と、(b)式(IVa)、(IVb)、又は(IVc)から選択される、少なくとも1つの化合物と、を反応させることを含む、化合物を調製する方法であって;
式中、Yは、O、置換アリーレン基、又は非置換アリーレン基から選択され;
Aは、直鎖又は分岐鎖のC1〜C10アルキレン基であり;
3は、H又はC1〜C4アルキル基から選択され;
wは、0又は1であり;
vは、0又は1であり;
yは、1であり;
Zは−NCOであり;
w+yは、1又は2であり;wが0の場合、Yは、置換又は非置換のアリーレン基であり;YがOの場合、vが1であることを条件とし;
【化6】
式中、各R5は、独立的に、−H、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;
XXは、水素原子またはR5OCH2(CHOR5p−であり、
各nは、独立的に、0〜20であり;
各mは、独立的に、0〜20であり;
m+nは、0よりも大きく;
各R1は、独立的に、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり;
各R2は、独立的に、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの混合物であり、
rは、1〜3であり;
pは、独立的に、0〜2から選択され;
rが3のとき、XXは水素原子であることを条件とし;
式(IVa)の化合物が使用される場合、少なくとも1つのR5は、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であることを条件とし;
各R6は、独立的に、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい10〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの組み合わせ、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、あるいは−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;
式(IVb)の化合物が使用される場合、少なくとも1つのR5又はR6は、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの組み合わせ、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、あるいは−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であることを条件とし;
各R7は、−H、−C(O)R1、又は−CH2C[CH2OR53であり、
式(IVc)の化合物が使用される場合、少なくとも1つのR7又はR5は、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であるとこを条件とする、
方法。
【請求項6】
ポリマー化合物であって、式(V)の繰り返し単位を含み:
【化7】
式中、
3は、H又はC1〜C4アルキル基から選択され;
xは、1〜200の整数であり;
Yは、O、置換アリーレン基、又は非置換アリーレン基から選択され;
Aは、直鎖又は分岐鎖のC1〜C10アルキレン基であり;
wは、0又は1であり;
vは、0又は1であり;
yは、1であり;
w+yは、少なくとも1であり;wが0の場合、Yは、置換又は非置換のアリーレン基であり;YがOの場合、vが1であることを条件とし;
Xは、式(IIa)、(IIb)、又は(IIc)から選択され:
【化8】
式中、各Rは、独立的に、式(I)のC=Oに対する直接結合、−H、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;
XXは、水素原子またはROCH2(CHOR)p−であり、
各nは、独立的に、0〜20であり;
各mは、独立的に、0〜20であり;
m+nは、0よりも大きく;
各R1は、独立的に、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり;
各R2は、独立的に、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの混合物であり、
rは、1〜3であり;
pは、独立的に、0〜2から選択され;
rが3のとき、XXは水素原子であることを条件とし;
但し、Xが式(IIa)である場合、1つのRは、式(I)のC=Oに対する直接結合であり;少なくとも1つのRは、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;
各R4は、独立して、式(I)のC=Oに対する直接結合、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの組み合わせ、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、あるいは−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;
が式(IIb)である場合、1つのR又はR4は、式(I)のC=Oに対する直接結合であり;少なくとも1つのR又はR4は、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの組み合わせ、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、あるいは−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であることを条件とし;
各R19は、式(I)のC=Oに対する直接結合、−H、−C(O)R1、又は−CH2C[CH2OR]3であり、
Xが式(IIc)である場合、1つのR19又はRは、式(I)のC=Oに対する直接結合であり;少なくとも1つのR19又はRは、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であることを条件とする、
ポリマー化合物。
【請求項7】
Xは、式(IIa’)
【化9】
である式(IIa)から選択される、請求項6に記載のポリマー化合物。
【請求項8】
直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素、直鎖若しくは分岐鎖のフルオロカーボン、エーテル、アルコール、無水物、オキシアルキレン、エステル、ホルメート、カルボン酸、カルバメート、ウレア、アミン、アミド、スルホネート、スルホン酸、スルホンアミド、ハロゲン化物、飽和若しくは不飽和の環状炭化水素、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、又はこれらの混合物から選択される官能基を有するエチレン性不飽和モノマーに由来する少なくとも1つの繰り返し単位をさらに含む、請求項6に記載のポリマー化合物。
【請求項9】
直鎖又は分岐鎖のアルキル(メタ)アクリレート、アミノ(メタ)アクリレート及びジアミノ(メタ)アクリレート、任意選択的にO、CH2、CH2CH2、又はSO2NHによって中断されてもよい直鎖又は分岐鎖のフルオロアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシル化(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、塩化ビニル又は塩化ビニリデン、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ヒドロキシアルキレン(メタ)アクリレート、ウレタン又はウレア(メタ)アクリレート、N−メチロイル(メタ)アクリルアミド、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを含む(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、クロロメチル−置換スチレン、エチレンジオールジ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS)、及び無水マレイン酸から選択されるエチレン性不飽和モノマーに由来する少なくとも1つの繰り返し単位をさらに含む、請求項6に記載のポリマー化合物。
【請求項10】
請求項6に記載のポリマー化合物を基材表面に塗布することを含む、繊維基材を処理する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法に従って処理される基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖アルコールから誘導される非フッ素化ポリマー、これらから作られるポリマー及びコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
各種組成物が、撥水性及び任意選択的に汚れ除去性を布地基材に提供するための処理剤として有用であることは知られている。多くのこのような処理剤は、フッ素化ポリマー及びコポリマー、又は非フッ素化ポリマー及びコポリマーである。非フッ素化合物は、主に、ポリアクリレート系又はウレタン系コポリマーである。
【0003】
フッ素化コポリマーは、水及び油に対する良好な撥液性を提供する。非フッ素化撥水剤を生成する様々な試みがなされてきた。非フッ素化コポリマーは、撥水性及び任意選択的に汚れ除去性を布地に提供することが知られているが、フッ素化相当物よりも効果が弱い。
【0004】
Franchinaらは、米国特許第7,344,758号において、フッ素系化学撥液剤と共に使用するためのアクリル系ポリマー増量剤組成物を開示し、これは、フッ素化されていてもよく、フッ素化されていなくてもよい。これらのポリマー増量剤組成物をフッ素化剤と合わせ、フッ素化処理剤の表面効果を向上させる。
【0005】
Mooreは、米国特許第6,864,312号において、耐湿性を提供するポリウレタンポリマーを開示している。Mooreは、ポリウレタンポリマー粒子分散体を特許請求しており、ここで、ポリウレタンポリマーは、ポリイソシアネート及びポリオールを含む処方から調製した、イソシアネート末端プレポリマーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,344,758号
【特許文献2】米国特許第6,864,312号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
布地に撥水性と、任意選択的に汚れ除去性をもたらし、その性能の結果がフッ素化処理剤に匹敵する、非フッ素化組成物の必要性が存在する。生物系由来であり得る非フッ素化組成物も望ましい。本発明はこれらの必要性を満たす。
【0008】
一実施形態において、本発明は、式(I)の化合物である:
【0009】
【化1】
式中、R3は、H又はC1〜C4アルキル基から選択され;Yは、O、置換アリーレン基、又は非置換アリーレン基から選択され;Aは、直鎖又は分岐鎖のC1〜C10アルキレン基であり;wは、0又は1であり;vは、0又は1であり;yは、0又は1であり;w+yは、1又は2であり;wが0の場合、Yは、置換又は非置換のアリーレン基であり;YがOの場合、vが1であることを条件とし;Xは、少なくとも1つの−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1、又はこれらの混合物で置換されている、環状又は非環状の糖アルコールの残基であり、環状又は非環状の糖アルコールは、糖、還元糖、アミノ糖、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され、式中、各nは、独立的に、0〜20であり;各mは、独立的に、0〜20であり;m+nは、0よりも大きく;各R1は、独立的に、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、各R2は、独立的に、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい6〜30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はこれらの混合物である。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、化合物を調製する方法に関し、この方法は、(a)式(III)から選択される化合物:
【0011】
【化2】
と、(b)少なくとも1つの−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1、又はこれらの混合物で置換されている、少なくとも1つの環状又は非環状の糖アルコールと、を反応させることを含み;式中、Yは、O、置換アリーレン基、又は非置換アリーレン基から選択され;Aは、直鎖又は分岐鎖のC1〜C10アルキレン基であり;R3は、H又はC1〜C4アルキル基から選択され;wは、0又は1であり;vは、0又は1であり;yは、0又は1であり;yが0の場合、Zは、ハロゲン化物、−OC(O)CR3=CH2、−OH、又は−NH2から選択され、yが1の場合、Zは−NCOであり;w+yは、1又は2であり;wが0の場合、Yは、置換又は非置換のアリーレン基であり;YがOの場合、vが1であることを条件とし;環状又は非環状の糖アルコールは、糖、還元糖、アミノ糖、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され;式中、各nは、独立的に、0〜20であり;各mは、独立的に、0〜20であり;m+nは、0よりも大きく;各R1は、独立的に、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、各R2は、独立的に、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの混合物である。
【0012】
第3の実施形態において、本発明は、式(V)の繰り返し単位を含むポリマー化合物である:
【0013】
【化3】
式中、R3は、H又はC1〜C4アルキル基から選択され;xは、1〜200の整数であり;Yは、O、置換アリーレン基、又は非置換アリーレン基から選択され;Aは、直鎖又は分岐鎖のC1〜C10アルキレン基であり;wは、0又は1であり;vは、0又は1であり;yは、0又は1であり;w+yは、少なくとも1であり;wが0の場合、Yは、置換又は非置換のアリーレン基であり;YがOの場合、vが1であることを条件とし;Xは、少なくとも1つの−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1、又はこれらの混合物で置換されている、環状又は非環状の糖アルコールの残基であり;環状又は非環状の糖アルコールは、糖、還元糖、アミノ糖、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され;式中、各nは、独立的に、0〜20であり;各mは、独立的に、0〜20であり;m+nは、0よりも大きく;各R1は、独立的に、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、各R2は、独立的に、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの混合物である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で、全ての商標は大文字で指定されている。
【0015】
本発明は、布地に対し、耐久性のある撥水性と、任意選択的に汚れ除去性を付与するのに有用な非フッ素化エチレン性不飽和モノマー及び水性非フッ素化有機ポリマー組成物を含み、このモノマーは、糖アルコールから誘導される。これらの非フッ素化化合物は、布地に対し、耐久性の高い撥水性と、任意選択的に汚れ除去性をもたらし、いくつかのフッ素化撥水性化合物に匹敵する。
【0016】
一実施形態において、本発明は、式(I)の化合物である:
【0017】
【化4】
式中、R3は、H又はC1〜C4アルキル基から選択され;Yは、O、置換アリーレン基、又は非置換アリーレン基から選択され;Aは、直鎖又は分岐鎖のC1〜C10アルキレン基であり;wは、0又は1であり;vは、0又は1であり;yは、0又は1であり;w+yは、1又は2であり;wが0の場合、Yは、置換又は非置換のアリーレン基であり;YがOの場合、vが1であることを条件とし;Xは、少なくとも1つの−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1、又はこれらの混合物で置換されている、環状又は非環状の糖アルコールの残基であり;環状又は非環状の糖アルコールは、糖、還元糖、アミノ糖、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され、各nは、独立的に、0〜20であり;各mは、独立的に、0〜20であり;m+nは、0よりも大きく;各R1は、独立的に、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり:各R2は、独立的に、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの混合物である。用語「環状又は非環状の糖アルコールの残基」は、本明細書では、1つ以上のH原子がヒドロキシル基−OHから除去された際の、環状又は非環状の糖アルコールの分子構造であると定義される。式(I)において、C=Oに対するXの結合は、エステル官能基(y=0)又はウレタン官能基(y=1)を形成する。
【0018】
エステル官能基又はウレタン官能基は、任意の適切な方法によって作られてもよく、この方法には、カルボン酸、ハロゲン化アシル、アミド、イソシアネート、ジイソシアネート、又はポリイソシアネート官能基を有するエチレン性不飽和モノマーと、少なくとも1つの−R1;−C(O)R1;−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2;−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CHO)mC(O)R1;又はこれらの混合物で置換されている、環状又は非環状の糖アルコールと、を反応させることを含む。本発明は、さらに、化合物を調製する方法に関し、この方法は、(a)式(III)から選択される化合物:
【0019】
【化5】
と、(b)少なくとも1つの−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1、又はこれらの混合物で置換されている、少なくとも1つの環状又は非環状の糖アルコールと、を反応させることを含み;式中、Yは、O、置換アリーレン基、又は非置換アリーレン基から選択され;Aは、直鎖又は分岐鎖のC1〜C10アルキレン基であり;R3は、H又はC1〜C4アルキル基から選択され;wは、0又は1であり;vは、0又は1であり;yは、0又は1であり;yが0のとき、Zは、ハロゲン化物、−OC(O)CR3=CH2、−OH、又は−NH2から選択され、yが1のとき、Zは−NCOであり;w+yは、1又は2であり;wが0の場合、Yは、置換又は非置換のアリーレン基であり;YがOの場合、vが1であることを条件とし;環状又は非環状の糖アルコールは、糖、還元糖、アミノ糖、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され;式中、各nは、独立的に、0〜20であり;各mは、独立的に、0〜20であり;m+nは、0よりも大きく;各R1は、独立的に、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、各R2は、独立的に、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの混合物である。
【0020】
環状又は非環状の糖アルコールは、糖、還元糖、アミノ糖、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され、少なくとも1つの−R1;−C(O)R1;−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2;−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1;又はこれらの混合物で置換されている。このような置換によって、モノマー及びポリマー分子に対し、疎水特性がもたらされる。一実施形態において、環状又は非環状の糖アルコールは、少なくとも2つの−R1;−C(O)R1;−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2;−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1;又はこれらの混合物で置換されており、別の実施形態において、環状又は非環状の糖アルコールは、少なくとも3つの−R1;−C(O)R1;−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2;−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1;又はこれらの混合物で置換されている。このような糖アルコールの例としては、限定されないが、アルドース及びケトース、例えば、テトロース、ペントース、ヘキソース及びヘプトースから誘導される化合物が挙げられる。具体例としては、グルコース、グリセルアルデヒド、エリトロース、アラビノース、リボース、アラビノース、アロース、アルトロース、マンノース、キシロース、リキソース、グロース、ガラクトース、タロース、フルクトース、リブロース、マンノヘプツロース、セドヘプツロース、トレオース、エリスリトール、トレイトール、グルコピラノース、マンノピラノース、タロピラノース、アロピラノース、アルトロピラノース、イドピラノース、グロピラノース、グルシトール、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ボレミトール、グルコン酸、グリセリン酸、キシロン酸、ガラクタル酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸ラクトン、グリセリン酸ラクトン、キシロン酸ラクトン、グルコサミン、ガラクトサミン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
環状又は非環状の糖アルコールは、少なくとも1つの−R1;−C(O)R1;−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2;又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1で、脂肪酸を用いたエステル化を含む任意の方法によって置換されて、ヒドロキシ官能性置換糖アルコールを生成する。一実施形態において、環状又は非環状の糖アルコールの脂肪酸置換は、融点が少なくとも−59℃である。別の実施形態において、環状又は非環状の糖アルコールの脂肪酸置換は、融点が少なくとも0℃であり、第3の実施形態において、環状又は非環状の糖アルコールの脂肪酸置換は、融点が少なくとも40℃である。適切な脂肪酸としては、限定されないが、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、オレイン酸、エルカ酸、及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、R1は、11〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、別の実施形態において、R1は、17〜21個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。一実施形態において、R2は、12〜30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、別の実施形態において、R2は、18〜30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、別の実施形態において、R2は、18〜22個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0022】
一実施形態において、Xは、式(IIa)、(IIb)、又は(IIc)から選択され:
【0023】
【化6】
式中、各Rは、独立的に、式(I)のC=Oに対する直接結合、−H、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;n及びmは、上述のように定義され;m+nは、0よりも大きく;rは、1〜3であり;aは、0又は1であり;pは、独立的に、0〜2から選択され;rが3のとき、aは0であることを条件とし;各R1及びR2は、上述のように定義され;Xが式(IIa)である場合、1つのRは、式(I)のC=Oに対する直接結合であり;少なくとも1つのRは、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であることを条件とし;各R4は、独立的に、式(I)のC=Oに対する直接結合;−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい10〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの組み合わせ、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;Xが式(IIb)である場合、1つのR又はR4は、式(I)のC=Oに対する直接結合であり;少なくとも1つのR又はR4は、少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの組み合わせ、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であることを条件とし;各R19は、式(I)のC=Oに対する直接結合、−H、−C(O)R1、又は−CH2C[CH2OR]3であり、Xが式(IIc)である場合、1つのR19又はRは、式(I)のC=Oに対する直接結合であり;少なくとも1つのR19又はRは、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であることを条件とする。式(IIa)、(IIb)、又は(IIc)において、−(CH2CH2O)−は、オキシエチレン基(EO)を表し、−(CH(CH3)CH2O)−は、オキシプロピレン基(PO)を表す。これら化合物は、EO基のみ、PO基のみ、又はこれらの混合物を含有し得る。これら化合物は、例えば、PEG−PPG−PEG(ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール)と表記されるトリブロックコポリマーとしても存在し得る。この場合、Xは、化合物(b)によって作られ、置換される少なくとも1つの環状又は非環状の糖アルコールは、式(IVa)、(IVb)、又は(IVc)から選択され:
【0024】
【化7】
式中、各R5は、独立的に、−H、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;n及びmは、上述のように定義され;m+nは、0よりも大きく;rは、1〜3であり;aは、0又は1であり;pは、独立的に、0〜2から選択され;rが3のとき、aは0であることを条件とし;各R1及びR2は、上述のように定義され;式(IVa)の化合物が使用される場合、少なくとも1つのR5は、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であることを条件とし;各R6は、独立的に、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい10〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの組み合わせ、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、あるいは−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;式(IVb)の化合物が使用される場合、少なくとも1つのR5又はR6は、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの組み合わせ、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、あるいは−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり;各R7は、−H、−C(O)R1又は−CH2C[CH2OR53でああることを条件とし、但し、式(IVc)の化合物が使用される場合、少なくとも1つのR7又はR5は、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であることを条件とする。
【0025】
Xが式(IIa)である場合、1,4−ソルビタンエステル、2,5−ソルビタンエステル、及び3,6−ソルビタンエステルを含め、任意の適切な置換還元糖アルコール(b)を使用してもよい。一実施形態において、Xは、式(IIa’)である式(IIa)から選択され:
【0026】
【化8】
式中、Rは、独立的に、C=Oに対する直接結合、−H、−R1、又は−C(O)R1にさらに限定される。1つの実施形態では、少なくとも1つのRは、−C(O)R1又はR1である。Rのうち少なくとも1つが−Hであり、Rのうち少なくとも1つが、−C(O)R1から選択される、式(IIa’)の残基を形成するために使用される化合物(b)は、一般的にアルキルソルビタンとして知られている。これらソルビタンは、−C(O)R1で一置換、二置換、又は三置換されていてもよい。市販のソルビタン(例えば、SPAN)は、各RがHのソルビタン(非置換)から、各Rが−C(O)R1(式中、R1は、9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基である)であるソルビタン(完全に置換されている)ものまで、種々のソルビタンの混合物、並びにこれらの種々の置換体の混合物を含むことが知られている。また、市販のソルビタンは、ソルビトール、イソソルビド、又は他の中間体若しくは副生成物の量を含んでもよい。
【0027】
一実施形態において、少なくとも1つのRは、−C(O)R1であり、R1は、9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。これらの残基を形成するために使用される好ましい化合物(b)としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、及びこれらの混合物から誘導される一置換、二置換、及び三置換のソルビタンが挙げられる。Xを形成するために使用される特に好ましい化合物としては、一置換、二置換、及び三置換のソルビタンステアレート又はソルビタンベヘニンが挙げられる。
【0028】
任意選択的に、R1は、少なくとも1つの不飽和結合を含む9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。少なくとも1つのRが−C(O)R1から選択され、R1が、少なくとも1つの不飽和結合を含む、式(IIa’)の残基を形成するために使用される化合物(b)の例としては、限定されないが、ソルビタントリオレエート(即ち、R1が−C714CH=CHC817である)が挙げられる。他の例としては、パルミトレイン酸、リノール酸(lineolic acid)、アラキドン酸、及びエルカ酸から誘導される、一置換、二置換、及び三置換ソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
一実施形態において、式(IIa’)のXが使用され、Rは、独立的に、C=Oに対する直接結合、−H、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1にさらに限定される。この実施形態において、少なくとも1つのRは、独立的に、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1である。少なくとも1つのRが、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり、式中、各mが独立して0〜20であり、各nが独立して0〜20であり、n+mが0よりも大きい、式(IIa’)のXを形成する化合物(b)は、ポリソルベートとして知られており、TWEENの商標名で市販されている。これらポリソルベートは、アルキル基R1又はR2で、一置換、二置換、又は三置換されていてもよい。市販のポリソルベートは、各R2がHのポリソルベート(非置換)から、各R1が9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であるポリソルベート(完全に置換されている)ものまでの種々のソルビタンの混合物;及びこれら種々の置換体の混合物を含有することが知られている。式(IIa’)のXを形成するために使用される化合物の例としては、ポリソルベートトリステアレート及びポリソルベートモノステアレートのようなポリソルベートが挙げられる。m+nが0よりも大きく、R1が少なくとも1つの不飽和結合を含む、式(IIa’)のXを形成するために使用される化合物(b)の例としては、限定されないが、ポリソルベートトリオレエート(R1がC714CH=CHC817である)が挙げられ、ポリソルベート80の名称で市販されている。試薬は、R、R1、及びR2が様々な値を有する化合物の混合物を含んでもよく、また、R1が少なくとも1つの不飽和結合を含む化合物と、R1が完全に飽和している化合物との混合物を含んでもよい。一態様において、R2はHであり、mは、正の整数である。
【0030】
一実施形態において、Xは、式(IIb)から選択される。式(IIb)のXを形成するために使用される化合物(b)は、クエン酸アルキルとして知られている。これらのクエン酸エステルは、アルキル基で一置換、二置換、又は三置換された化合物として存在していてもよい。市販のクエン酸エステルは、R及び各R4が−Hであるクエン酸エステル並びにクエン酸から、各R4が任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい10〜30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であるクエン酸エステルまでの種々の混合物、及びこれら種々の置換体の混合物を含むことが知られている。種々の値のR1、R2、及びR4を有するクエン酸エステルの混合物を使用してもよく、R1が少なくとも1つの不飽和結合を含む化合物と、R1が完全に飽和の化合物との混合物を含んでいてもよい。クエン酸アルキルは、m+nが0よりも大きく、R4は、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2;又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であるものも市販されており、R及び各R2がHであるものから、各R1及び/又はR2が任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい5〜30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であるものまで、種々の置換体で存在している。式(IIb)のXを形成するために使用される化合物の例としては、限定されないが、クエン酸トリアルキルが挙げられる。
【0031】
一実施形態において、Xは、式(IIc)から選択される。式(IIc)のXを形成するために使用される化合物(b)は、ペンタエリスリオールエステルとして知られる。これらのペンタエリスリオールエステルは、アルキル基で一置換、二置換、又は三置換されたものとして存在していてもよい。式(IIc)のXを形成するために使用される好ましい化合物は、ジペンタエリスリオールエステルであり、R19は、−CH2C[CH2OR]3である。市販のペンタエリスリオールエステルは、R19及び各Rが−Hであるペンタエリスリオールエステルから、各Rが−C(O)R1であり、R1が、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であるペンタエリスリオールエステルのまでの様々なペンタエリスリオールエステルの混合物、並びにこれらの様々な置換体の混合物を含有することが知られている。また、ペンタエリスリオールエステルは、Rの鎖長が異なる混合物を有する化合物、又はR1が少なくとも1つの不飽和結合を含む化合物と、R1が完全に飽和した化合物との、混合物を含有してもよい。
【0032】
式(IIa)、(IIb)、及び(IIc)の残基Xは、全て生物系由来であってもよい。用語「生物系由来」とは、材料の少なくとも10%を、植物、他の草木、及び獣脂等の非原油源から作製できることを意味する。一実施形態において、Xは、約10%〜100%生物系由来である。一実施形態において、Xは、約35%〜100%生物系由来である。別の実施形態において、Xは、約50%〜100%生物系由来である。一実施形態において、Xは、約75%〜100%生物系由来である。一実施形態において、Xは、100%生物系由来である。Xを形成するために使用される置換糖アルコール化合物の平均OH値は、0〜約230の範囲であってもよい。一実施形態において、平均OH値は、約10〜約175であり、別の実施形態において、平均OH値は、約25〜約140である。
【0033】
一実施形態において、式(I)は、wが1であり、yが0であるように選択される。このような化合物は、少なくとも1つのR1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1で置換されている少なくとも1つの環状又は非環状の糖アルコールである化合物(b)と、式(III)の化合物(a)と、を反応させることによって形成することができ、ここで、wは1であり、yは0であり、Zは、ハロゲン化物、−OC(O)CR3=CH2、−OH、又は−NH2から選択される。例えば、アルコール化合物(b)を、溶媒中、トリエチルアミンと合わせ、その後、塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルを徐々に加えてもよい。固体を、典型的には濾過によって除去し、有機溶媒で洗浄し、その後、通常は抽出によって精製し、水洗し、濃縮し、減圧下で乾燥させる。別の方法において、本発明の化合物は、酸触媒(例えば、トルエンスルホン酸)及び溶媒(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、又はトルエン)の存在下、アクリルアミド又はアクリル酸、メタクリル酸又はクロロアクリル酸と反応させることによって、置換糖アルコール(b)から調製することができる。有機層を水で洗浄し、単離し、次いで、典型的には減圧蒸留によって精製する。任意選択的に、開始剤、例えば、4−メトキシフェノールを合成中又は合成後に加えてもよい。
【0034】
別の実施形態において、式(I)は、wが1であり、yが1であり、YがOであるように選択される。このような化合物は、化合物(b)と、式(III)の化合物(a)と、を反応させることによって形成することができ、ここで、wは1であり、yは1であり、YはOであり、Zは−NCOである。この式を満たす任意のイソシアネート化合物を使用してもよく、本発明の化合物を、従来のウレタン合成技術を用いて合成してもよい。さらなる一実施形態において、式(I)は、wが0であり、yが1であり、Yが置換又は非置換のアリーレン基であるように選択される。このような化合物は、化合物(b)と、式(III)の化合物(a)と、を反応させることによって形成されてもよく、ここで、wは0であり、yは1であり、Yは置換又は非置換のアリーレン基であり、Zは−NCOである。この式を満たす任意のイソシアネート化合物を使用してもよく、限定されないが、置換又は非置換のスチレンイソシアネートを含む。本発明の化合物を、従来のウレタン合成技術を用いて合成してもよい。例えば、イソシアネート化合物(a)を、有機溶媒中、置換糖アルコール化合物(a)及び触媒と合わせ、溶液試験が活性イソシアネート基に不活性になるまで攪拌しつつ加熱し、集めてもよい。
【0035】
一実施形態において、本発明は、式(I)の化合物の混合物に関する。本明細書に記載される本発明の化合物に加え、これらの組成物は、市販のソルビタン、ポリソルベート、クエン酸アルキル、又はペンタエリスリトールから存在するさらなる化合物も含んでいてもよい。これらの化合物は、完全に非置換から完全に置換されたものまでと、その間の種々の置換体の種々の置換糖アルコールの混合物として存在してもよく、任意選択的に、9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基は、少なくとも1つの不飽和結合を含む。
【0036】
別の態様において、本発明は、式(V)の繰り返し単位を含むポリマー化合物に関し:
【0037】
【化9】
式中、R3は、H又はC1〜C4アルキル基から選択され;xは、1〜200の整数であり;Yは、O、置換アリーレン基、又は非置換アリーレン基から選択され;Aは直鎖又は分岐鎖のC1〜C10アルキレン基であり;wは、0又は1であり;vは、0又は1であり;yは、0又は1であり;w+yは、少なくとも1であり;wが0の場合、Yは、置換又は非置換のアリーレン基であり;YがOの場合、vが1であることを条件とし;Xは、少なくとも1つの−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1、又はこれらの混合物で置換されている環状又は非環状の糖アルコールの残基であり;環状又は非環状の糖アルコールは、糖、還元糖、アミノ糖、アルドン酸、又はアルドン酸ラクトンから選択され;式中、各nは、独立的に、0〜20であり;各mは、独立的に、0〜20であり;m+nは、0よりも大きく;各R1は、独立的に、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい9〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり;各R2は、独立的に、−H、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含んでもよい6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はこれらの混合物である。ポリマー化合物を含む組成物は、水性分散物又は水性エマルションの形態であってもよく、有機溶媒から選択される溶媒をさらに含んでいてもよい。ポリマー化合物は、ホモポリマー又はコポリマーの形態であってもよく、完全にフッ素化されていなくてもよく、又は1つ以上のフッ素化モノマーとの共重合によって部分的にフッ素化されていてもよい。ポリマー化合物は、数平均分子量が5000〜200,000であってもよい。一実施形態において、このポリマーは、数平均分子量が50,000〜200,000である。
【0038】
ポリマー化合物がコポリマーである場合、ポリマーは、直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素、直鎖若しくは分岐鎖のフルオロカーボン、エーテル、アルコール、無水物、オキシアルキレン、エステル、ホルメート、カルボン酸、カルバメート、尿素、アミン、アミド、スルホネート、スルホン酸、スルホンアミド、ハロゲン化物、飽和若しくは不飽和の環状炭化水素、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、又はこれらの混合物から選択される官能基を有するエチレン性不飽和モノマーに由来する少なくとも1つの繰り返し単位をさらに含む。
【0039】
エチレン性不飽和モノマーは、上述の官能基を有するエチレン性不飽和結合を有する任意のモノマーであってもよく、限定されないが、直鎖又は分岐鎖の(メタ)アクリル酸アルキル、アミノ(メタ)アクリレート及びジアミノ(メタ)アクリレート、任意選択的にO、CH2、CH2CH2、又はSO2NHによって中断されてもよい直鎖又は分岐鎖のフルオロアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシル化(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、塩化ビニル又は塩化ビニリデン、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ヒドロキシアルキレン(メタ)アクリレート、ウレタン又はウレア(メタ)アクリレート、N−メチロイル(メタ)アクリルアミド、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを含む(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、クロロメチル−置換スチレン、エチレンジオールジ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS)、及び無水マレイン酸が挙げられる。適切なモノマーとしては、上に列挙したものだけではなく、繊維基材のための疎水性ポリマーに有用であることが示されている他のエチレン性不飽和モノマーも挙げられる。
【0040】
フルオロアルキル官能基を組み込むために使用される具体的なフッ素化エチレン性不飽和モノマーとしては、限定されないが、RfCH2CH2OC(O)CR3=CH2、RfSO2NHCH2CH2OC(O)CR3=CH2、RfCH2CH2SCH2CH2OC(O)CR3=CH2、RfCH2CH2CF2CF2CH2CH2OC(O)CR3=CH2、RfCH2CH2(CF2CF2CH2CH22OC(O)CR3=CH2、RfCH2CF2CH2CH2OC(O)CR3=CH2、RfCH2CF2CH2CF2CH2CH2OC(O)CR3=CH2、RfOCF2CF2CH2CH2OC(O)CR3=CH2、RfCH2OCH2CH2OC(O)CR3=CH2、RfCHFCH2CH2OH、RfCH2O(CH26OC(O)CR3=CH2、(CF32CFCH2CH2OC(O)CR3=CH2、(CF32CFCH2CH2CH2OC(O)CR3=CH2、RfCH2CH2SO2NHCH2CH2OC(O)CR3=CH2、RfCH2CH2SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)CR3=CH2、RfCH2CH2SO2N(CH2CH3)CH2CH2OC(O)CR3=CH2、R−(CF(CF3)CF2O)yCH2OC(O)CR3=CH2、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CH2OC(O)CR3=CH2、又はRfCH2OC24CH2OCH2CH2OC(O)CR3=CH2が挙げられ、Rfは、C1〜C20の直鎖若しくは分岐鎖のフルオロアルキル、又はCH2=CH−COO−C24−N(CH3)−SO2−C24−C613、2−[メチル[(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)スルホニル]アミノ]エチルアクリレート、2−[メチル[(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)スルホニル]アミノ]エチルメタクリレート、あるいは2−[[(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)スルホニル]アミノ]エチルメタクリレートである。一実施形態において、Rfは、C2〜C6ペルフルオロアルキルである。
【0041】
ポリマーは、当業者に知られている任意の手段によって合成することができる。例えば、1種以上のモノマーが溶媒系(例えば、イソプロピルアルコール及び/又はメチルイソブチルケトン)中で重合開始剤と接触し、この混合物を、開始剤の活性化温度まで加熱し、重合を進行させる。次いで、ポリマー混合物を水性物質と接触させ、例えば蒸留によって有機溶媒を除去する。最終生成物は、水性分散物又は水性エマルションである。
【0042】
コモノマーが式(VIa)又は式(VIb)から選択される場合、
CH2=C(R9)C(O)Q(CH2q(CHR9iNR1011 (VIa)
CH2=C(R9)NR1213 (VIb)
又はこれらの混合物を使用し、式中、R9は、独立的に、H又はCH3から選択され;R10及びR11は、それぞれ独立的に、C1〜C4アルキル、ヒドロキシエチル、又はベンジルであるか;又はR10及びR11は、窒素原子と共に、モルホリン環、ピロリジン環、又はピペリジン環を形成し;R12及びR13は、それぞれ独立的に、H又はC1〜C4アルキルから選択され;Qは、−O−又は−NR14−であり、R14は、H又はC1〜C4アルキルであり;iは、0〜4であり、qは、1〜4であり、このとき、R10及びR11に結合する窒素は、約0%〜100%が塩化していてもよく、四級化していてもよく、又はアミンオキシドとして存在していてもよい。この実施形態のコポリマーは、当業者に知られている任意の手段によって合成することができる。コポリマーは、任意選択的に、当業者に知られている従来の技術によって、部分的又は完全に塩化又は四級化していてもよい。一態様において、塩化又は四級化の程度は、約50%〜約100%である。好ましくは、モノマーを溶媒系(例えば、イソプロピルアルコール及びメチルイソブチルケトン)中で合わせ、この混合物を、開始剤の活性化温度まで加熱し、モノマー混合物に開始剤をゆっくりと入れ、共重合を進行させることによってコポリマーを合成する。次いで、ポリマー混合物を水性塩化溶液(例えば、酢酸溶液)と接触させてもよく、有機溶媒を、好ましくは蒸留によって除去する。最終生成物は、水性エマルションである。
【0043】
また、上記手順のいずれか又はその全てに対する多くの変更を用いて、反応条件を最適化させ、最大収率、生産性、又は生成物の質を得ることができることは、当業者にとって明らかであろう。ポリマーが、式(V)の繰り返し単位と、フッ素化モノマー、式(VIa)、(VIb)、及び/又は(VIc)からの繰り返し単位とを含む場合、繰り返し単位(V)は、約15〜70モル%を占め、フッ素化繰り返し単位は、約0〜20モル%を占め、(VIa)又は(VIb)からの繰り返し単位は、10〜60モル%を占め、式(VIc)からの繰り返し単位は、約5〜25モル%を占め、繰り返し単位の合計は100%に等しい。一実施形態において、繰り返し単位(V)は、約20〜55モル%を占め、フッ素化繰り返し単位からの繰り返し単位は、約0〜15重量%を占め、(VIa)又は(VIb)からの繰り返し単位は、20〜45モル%を占め、式(VIc)からの繰り返し単位は、約10〜20モル%を占め、繰り返し単位の合計は100%に等しい。一実施形態において、フッ素化繰り返し単位が存在しない場合、式(V)の繰り返し単位は、一態様において、ポリマーの40〜100モル%を占め、別の態様において、ポリマーの40〜70モル%を占め、さらなる態様において、40〜60モル%を占める。
【0044】
得られるポリマーは、撥水性と、任意選択的に汚れ除去性能を含む表面効果を繊維基材にもたらすのに有用である。一実施形態において、本発明は、本発明のポリマーを基材表面に塗布することを含む、繊維基材を処理する方法である。上のポリマー組成物を、任意の適切な方法によって、基材と接触させる。このような方法としては、吸尽、発泡、フレックスニップ、ニップ、パッド、キスロール、ベック、かせ、ウインス、液噴射、オーバーフローフラッド、ロール、はけ塗り、ローラー、スプレー、ディッピング、浸漬などによる塗布が挙げられるが、これらに限定されない。また、組成物を、ベック染色工程、連続染色工程又は糸条への塗布(thread-line application)を使用して接触させる。
【0045】
本発明のポリマーは、基材にそのまま塗布されるか、又は他の任意選択的な布地仕上げ剤又は表面処理剤と組み合わせて塗布される。このような任意の付加成分としては、付加的な表面効果を得るための処理剤若しくは仕上げ剤、又はこのような剤若しくは仕上げ剤と共に一般に使用される添加剤が挙げられる。このような付加成分は、アイロンがけ不要、アイロンがけ容易性、収縮制御、しわ防止性、パーマネントプレス、湿気制御、柔軟性、強度、スリップ防止、静電防止、伝線防止、毛玉防止、汚れ除去性、防汚性、汚れ除去、撥水性、臭気抑制、抗菌性、日焼け防止、洗濯可能性、及び類似した効果などの表面効果を提供する、化合物又は組成物を含む。このような成分は、フッ素化されていてもよく、又はフッ素化されていなくてもよい。1種又は2種以上のこのような処理剤又は仕上げ剤が、本発明の組成物の前に、後に、あるいは本発明の組成物と同時に、基材に塗布される。例えば、繊維基材に関して、合成織物又は綿織物が処理される場合、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能な、ALKANOL 6112などの、湿潤剤の使用が望ましい場合がある。綿繊維又は綿混紡繊維が処理される場合、Omnova Solutions(Chester,SC)から入手可能なPERMAFRESH EFCなどの、しわ防止樹脂を使用することができる。
【0046】
また、このような処理剤又は仕上げ剤と共に一般に使用されるその他の添加剤が、任意選択的に存在し、このような添加剤としては、界面活性剤、pH調整剤、架橋剤、湿潤剤、ろう増量剤、及び当業者に既知のその他の添加剤などがある。好適な界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、N−酸化物、及び両性の界面活性剤が挙げられる。このような添加剤の例としては、加工助剤、発泡剤、潤滑剤、汚れ防止剤などが挙げられる。組成物は、製造施設、小売業者の所在地で、若しくは設置及び使用に先立って、又は消費者の所在地で適用される。
【0047】
任意選択的に、ブロックイソシアネートを本発明の組成物と共に添加して、さらに耐久性を高める(即ち、混合組成物として)。本発明で使用する好適なブロックイソシアネートの一例は、Huntsman Corp(Salt Lake City,UT)から入手可能なPHOBOL XANである。他の市販のブロックイソシアネートも、本明細書で使用するのに好適である。ブロックイソシアネートを添加する望ましさは、コポリマーの具体的な用途に依存する。本明細書で想定される用途の大部分については、鎖又は結合と基材との間に十分な架橋を得るために存在する必要がない。ブレンドイソシアネートとして添加する場合、最大約20重量%の量を添加する。
【0048】
所与の基材のための最適な処理は、(1)本発明の化合物又は組成物の特性、(2)基材表面の特性、(3)表面に塗布される本発明の化合物又は組成物の量、(4)表面上に塗布される本発明の化合物又は組成物の塗布方法、及び多くのその他の要因に依存する。いくつかの本発明の化合物又は組成物は、多くの異なる基材上でよく機能し、撥水性がある。本発明の化合物から調製した分散体は、一般に、吹付け塗り、ディッピング、パディング、又はその他の周知の方法によって繊維基材に塗布される。例えばスクイズロールによって過剰な液体を除去した後、処理済み繊維基材を乾燥させ、次に、少なくとも30秒間、典型的には、約60秒〜約240秒、例えば、約100℃〜約190℃に加熱することによって硬化させる。このような硬化は、撥油性、撥水性、及び防汚性、並びに撥性の耐久性を高める。これら硬化条件が一般的であるが、一部の市販の装置は、その特有の設計特徴のため、この範囲外で作動してもよい。
【0049】
別の実施形態において、本発明は、繊維基材と上述のポリマーとを接触させることによって処理される繊維基材である。適切な基材としては、繊維、糸、布、混紡布地、布地、不織布、紙、革、及びカーペットが挙げられる。これらは、綿、セルロース、ウール、シルク、レーヨン、ナイロン、アラミド、アセテート、アクリル、黄麻、サイザル麻、海草、コイア、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリアラミド、又はこれらの混紡物を含む、天然繊維又は合成繊維から作製される。「混紡布地」とは、2種類以上の繊維で作られた布地を意味する。典型的には、これらの混紡物は、少なくとも1種類の天然繊維と少なくとも1種類の合成繊維との組み合わせであるが、また、2種又は3種以上の天然繊維の混紡物、又は2種類又は3種類以上の合成繊維の混紡物を含むことができる。不織布基材としては、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能な、SONTARAなどのスパンレース不織布、及びスパンボンド−メルトブロー−スパンボンド不織布が挙げられる。本発明の処理済み基材は、優れた撥水性、及び任意選択的に、汚れ除去性を有する。
【0050】
本発明の処理済み基材は、衣類、防護服、カーペット、室内装飾品、家具、及びその他の使用などの多様な用途及び製品において有益である。上記の優れた表面特性は、表面清浄度を維持するのに役立ち、したがって、より長期間の使用を可能にする。
【0051】
試験方法及び材料
全ての溶媒及び試薬は、特に指示がない限り、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入し、供給された状態のまま使用した。メチルイソブチルケトン(MIBK)及びポリ(エチレングリコール)メタクリレートMW=360(7−EOメタクリレート)は、両方ともSigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手可能である。
【0052】
NUJOLは、38℃でのSaybolt粘度が360/390sであり、15℃での比重が0.880/0.900g/cm3であり、Plough,Inc.(Kenilworth,NJ)から入手可能な鉱油である。
【0053】
ソルビタントリステアレートは、Croda(East Yorkshire,England)又はDuPont Nutrition & Health(Copenhagen,Denmark)から市販されている。ソルビタントリオレエートは、Croda(East Yorkshire,England)から入手可能である。
【0054】
2−メチル−2−プロペン酸,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルエステル(62−FMA)及び2−プロペン酸、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルエステル(62−FA)は、DuPont Chemicals and Fluoroproducts(Wilmington,DE)から市販されている。
【0055】
N−(イソブトキシメチル)メタアクリルアミドは、Polysciences,Inc.(Warrington,PA)から入手した。
【0056】
BLEMMER PE−350、PP−500、及びPME−400は、それぞれ、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メタクリレート、及びポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートであり、NOF Corporation(Tokyo,Japan)から入手可能である。
【0057】
CHEMIDEX Sは、アルカノールアミド界面活性剤であり、Lubrizol(Wickliffe,Ohio)から入手可能である。
【0058】
PHOBOL XANは、Huntsman Corp.(Salt Lake City,UT)から入手した。
【0059】
ETHAL LA−4は、Ethox Chemicals(Buffalo,NY)から入手可能なラウレス−4界面活性剤である。
【0060】
STEPOSOL SB−Wは、Stepan(Northfield,Illinois)から入手可能な大豆メチルエステル界面活性剤である。
【0061】
ARMEEN DM−18Dは、Akzo−Nobel(Bridgewater,NJ)から入手した。
【0062】
BRIJ L4は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手可能なポリエチレングリコールドデシルエーテルである。
【0063】
以下の試験方法及び材料を、本明細書の実施例で使用した。
【0064】
試験法1−布地の処理
この試験で処理した布地は、SDL Atlas Textile Testing Solutions(Rock Hill,South Carolina 29732)から入手可能な100重量%のカーキ色の綿ツイル、及びL.Michael OY(Finland)から入手可能な100重量%の赤色ポリエステル布地であった。従来のパッド浴(浸漬)プロセスを用い、種々のエマルションポリマーの水性分散物を用い、布地を処理した。調製した濃い分散物を脱イオン水で希釈し、浴中に60g/L又は100g/Lの生成物を含むパッド浴を得た。綿布地の処理には、湿潤剤INVADINE PBN及び触媒添加した架橋剤KNITTEX 7636(全てHuntsman(Salt Lake City,UT)から入手可能)も、それぞれ5g/L及び30g/Lで浴中に入れた。布地を浴中でパディングし、過剰の液体を圧搾ローラーによって除去した。含浸量は、綿基材に対して約95%であった。「含浸量」とは、布地の乾燥重量に基づく、布地に塗布されたエマルジョンポリマー及び添加剤の浴溶液の重量である。
【0065】
布地を約165℃で3分間硬化させ、処理及び硬化後、少なくとも15時間「静置」した。
【0066】
ポリエステル布地の処理のために、湿潤剤INVADINE PBN(Huntsman,Charlotte,NC,USAから入手可能)及び20%酢酸も、それぞれ5g/L及び1g/Lで浴中に入れた。布地を浴中でパディングし、過剰の液体を圧搾ローラーによって除去した。含浸量は、ポリエステル基材に対して約55%であった。「含浸量」とは、布地の乾燥重量に基づく、布地に塗布されたエマルジョンポリマー及び添加剤の浴溶液の重量である。布地を約160℃で2分間硬化させ、処理及び硬化後、約15〜約18時間「静置」した。
【0067】
試験方法2−水滴下
処理済み基材の撥水性を、デュポン(DuPont)実験室用方法に従って、テフロングローバル仕様及び品質管理試験情報パケット(Teflon Global Specifications and Quality Control Tests information packet)に概説されるように測定した。試験は、水性液体による濡れに対する、処理済み基材の耐性を測定する。様々な表面張力の水・アルコール混合物の滴を布地の上に置き、表面の濡れの広がりを目視で測定する。本試験は、水性汚れ防止性の目安を提供する。撥水性評点が高いほど耐性は良好であり、仕上げられた基材は、水系物質によって着色される。標準試験液の組成を下表1に示す。試験液がぎりぎり合格することに関して、表1の数値から1/2を引くことによって、0.5の増分の評点が決定される。
【0068】
【表1】
【0069】
試験方法3−撥油性
処理した布地サンプルについて、AATCC標準試験法118の改変法によって、撥油性を試験し、試験は以下のように行った。布地サンプルをポリマーの水性分散物で処理し、これを試験前に23℃+相対湿度65%で最低15時間かけ、平衡状態にした。次いで、以下の表2で特定する一連の有機液を布地サンプルに滴下した。最も小さな番号の試験液(撥液性の評点1)から初め、1滴(直径約5mm又は体積0.05mL)を、少なくとも5mm離れた3箇所それぞれに置いた。この液滴を30秒間観察した。この期間の終わりに、3滴のうち2滴が、まだ球形のままであり、液滴の周囲にウィッキングが存在しない場合、次に大きな番号の液体を3滴、隣接部位に置き、同様に30秒間観察した。いずれかの試験液が、3滴のうち2滴で球形から半球形を保つことができないか、又は濡れ現象若しくはウィッキングが起こるまで、この手順を続けた。
【0070】
布地の撥油性の評点は、3滴のうち2滴が球形から半球形を保っており、ウィッキングが30秒間起こらなかった最も大きな番号の試験液であった。評点の0.5の増加は、次の液の合格境界について表2の数から2分の1を引くことによって決定された。評点の数字が大きいほど、撥液性が高いことを示す。撥油性試験液の組成を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
試験方法4−スプレー試験
処理済み基材の動的撥水性を、繊維化学染色協会(American Association of Textile Chemists and Colorists)(AATCC)TM−22に従って測定した。サンプルを、公開基準を参照して目視で採点し、100の評点は、水の浸透又は表面付着がないことを示す。評点90は、浸透がなく、ランダムな貼り付き又は濡れ現象がわずかにあることを示す。値が低いほど、濡れ現象及び浸透が多くなることを示す。試験方法2の動的撥水性試験は、要件の厳しい現実的な撥水性の試験である。
【0073】
試験方法5−汚れ除去性
本試験は、家庭での洗濯中に、油っぽい汚れを除去する布地の能力を測定する。
【0074】
処理済み布地を平面上に置く。点眼器を使用して、マゾーラ(MAZOLA)コーン油5滴又は鉱油(0.2mL)を、布地上に置き、油1滴を形成した。一片のグラシン紙を用いて油滴と分離しつつ、ある重量(2.27kg(5lb))を油滴の上に置く。重りを所定位置に60秒間置いた。60秒後、重りとグラシン紙を除去する。次に、全自動洗濯機の「高」を使用して、12分間、AATCC 1993年標準的基準洗剤WOB12(AATCC 1993 Standard Reference Detergent WOB12)又は粒状洗剤(100g)で、布地サンプルを洗浄した。次に、布地を「高」で45〜50分、乾燥させた。次に、布地について、残留物汚れを1〜5で評価し、1は、最も多い残留物汚れが残留したものであり、5は、汚れの残留が可視でないものとした。以下の実施例において、コーン油の汚れ除去性の評点は、用語「コーン油」によって示され、鉱油の汚れ除去性の評点は、用語「鉱油」によって示される。
【0075】
本発明の化合物及び組成物の例は、種々の反応性エチレン性不飽和モノマー及び種々の置換糖アルコール、又はこれらの混合物から作られてもよい。本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0076】
比較例A
未処理の布地サンプルを、上の試験方法に従って試験した。綿布地及びポリエステル布地は、両方とも水滴下の評点が0であり、油滴下の評点が0であり、スプレーの評点が0であった。
【実施例】
【0077】
実施例1:ソルビタントリステアレートメタクリレート(M1)の合成
CH2=C(CH3)−C(O)−STS、ここで、STSは、ソルビタントリステアレートの残基である。
乾燥した1L丸底4ッ口フラスコに、熱電対、メカニカルスターラー、窒素投入口、凝縮器、及び気体出口を取り付けた。このフラスコに、ソルビタントリステアレート(100g、OH値76、162.57mmol)、ジクロロメタン(300g)、及びトリエチルアミン(17.82g、176.11mmol)を投入した。この溶液に、シリンジによって塩化メタクリロイル(15.79mL、162.57mmol)をゆっくりと加えた。このフラスコを箔で絶縁した。反応混合物を窒素下、室温で48時間攪拌し、その時点で200mLのエーテルを加えた。トリエチルアンモニウムクロリドを濾過によって除去した。有機層を5重量%の酢酸溶液(250mL)で洗浄し、水層をジクロロメタンで抽出し、有機層を飽和NaHCO3溶液で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過した。0.01gのp−メトキシフェノール重合開始剤を加え、ロータリーエバポレーションによって、加熱することなく有機溶媒を除去した。生成物は、室温で淡黄色固体であった。
【0078】
実施例2:ソルビタントリステアレートウレタンメタクリレート(M2)の合成
CH2=C(CH3)−C(O)OCH2CH2NHC(O)−STS、ここで、STSは、ソルビタントリステアレートの残基である。
乾燥した4ッ口の500mL丸底フラスコに、熱電対、メカニカルスターラー、窒素投入口、凝縮器、及び気体出口を取り付けた。このフラスコに、2−イソシアナトエチルメタクリレート(25.0g、161.13mmol)、MIBK(141.44g)、及び0.50重量% FeCl3のMIBK溶液(2.5g)を投入した。この混合物を60℃まで加熱し、このフラスコにソルビタントリステアレート(118.94g、OH値76)を加えた。次いで、温度を80℃まで上げ、一晩攪拌した。24時間後、1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン(0.05g)を加え、反応混合物を80℃でさらに24時間攪拌した。試験した溶液がイソシアネートに不活性である場合、これをミルクフィルタで濾過し、集めた。
【0079】
実施例3:ソルビタントリステアレートウレタンスチレンモノマー(M3)の合成
CH2=CH−(C64)−C(CH32−NHC(O)−STS、ここで、STSは、ソルビタントリステアレートの残基である。
乾燥した4ッ口の500mL丸底フラスコに、熱電対、メカニカルスターラー、窒素投入口、凝縮器、及び気体出口を取り付けた。このフラスコに、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(36.0g、178.8mmol)、MIBK(168g)、0.50重量% FeCl3のMIBK溶液(6.0g)、及び1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン(0.1g)を投入した。混合物を60℃まで加熱した。このフラスコにソルビタントリステアレート(132.04g、178.8mmol)を加えた。次いで、温度を80℃まで上げ、一晩攪拌した。試験した溶液がイソシアネートに不活性である場合、45℃まで冷却し、ミルクフィルタで濾過し、集めた。
【0080】
実施例4:ソルビタントリオレエートメタクリレート(M4)の合成
CH2=C(CH3)−C(O)−STO、ここで、STOは、ソルビタントリオレエートの残基である。
乾燥した250gの丸底フラスコに、ソルビタントリオレエート(50.0g、0.0522mol)、ジクロロメタン(50mL)、及びトリエチルアミン(14.6mL)を投入した。混合物を氷浴で0℃まで冷却した。この溶液に塩化メタクリロイル(5.1mL、0.0522mol)をゆっくりと加え、反応混合物を窒素下、室温で一晩攪拌した。次いで、第2の塩化メタクリロイル(5.1mL、0.0522mol)を加え、反応混合物を室温でさらに24時間攪拌し、水(100mL)を加えた。層分離させ、水層をジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を飽和Na2CO3及び水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。
【0081】
実施例5〜10
4ッ口の500mL丸底フラスコに、ガラス栓、熱電対、メカニカルスターラー、窒素投入口、凝縮器、及び気体出口を取り付けた。このフラスコに、表3のモノマーとMIBKを投入した(モノマーを約50重量%まで希釈するため)。この溶液に窒素を10分間流し、60℃まで加熱した。VAZO 67開始剤を加え、反応混合物を70℃まで加熱し、一晩攪拌した。
【0082】
別個のフラスコの中で、熱い脱イオン水を表3に従って界面活性剤と合わせ、70℃まで加熱した。次いで、この反応フラスコに界面活性剤溶液を加え、75℃で30分間攪拌した。実施例5の場合、分散物を21MPa(6000psi)で4回均質化した。実施例6〜10の場合、分散物を音波処理した。有機溶媒をロータリーエバポレーションによって除去した。最終生成物をソックフィルタで濾過し、20%固形分に希釈した。分散物を、パッド浴200gあたりポリマー3.6gに相当する固形分20%、90g/Lで10g/LのPHOBOL XANと共に布地サンプルに塗布し、上の試験方法に従って試験した。
【0083】
【表3】
【0084】
実施例5〜10のポリマー化合物は、存在するコモノマーにかかわらず、水滴下及びスプレーの評価方法によって良好な撥水性を示した。
【0085】
実施例11
4ッ口の500mL丸底フラスコに、滴下漏斗、熱電対、メカニカルスターラー、窒素投入口、凝縮器、及び気体出口を取り付けた。このフラスコに、ソルビタントリオレエートメタクリレート(53.5g、30重量%)及び125gのMIBKを投入した。この溶液に窒素を10分間流し、65℃まで加熱した。この溶液にVAZO 67(3.2g)を加え、反応混合物を80℃まで加熱し、一晩攪拌した。
【0086】
別個のフラスコの中で、水(150g)、ARMEEN DM−18D(3.53g)、酢酸(2.22g)、TERGITOL TMN 10(1.77g)及びジプロピレングリコール(16.05g)を70℃まで加熱した。水/界面活性剤の分散物をこのフラスコに加え、70℃で30分間攪拌した。次いで、この分散物を28MPa(4000psi)で4回均質化した。蒸留によってMIBKを除去した。最終生成物をソックフィルタ−によって濾過した。生成物は、17%の固形物を含有していた。分散物を、パッド浴200gあたりポリマー3.6gに相当する固形分20%、90g/Lで5g/LのPHOBOL XANと共に布地サンプルに塗布し、上の試験方法に従って試験した。
【0087】
【表4】
【0088】
実施例11は、トリオレエート置換官能基を有するポリマーも、撥水性をもたらすのに効果的であることを示す。
【0089】
実施例12
ソルビタントリステアレート25.0gを用いたスケールで、ソルビタントリステアレートウレタンメタクリレートを上述のように調製した。反応が終了した直後に、反応混合物を60℃まで冷却し、0.90gのVAZO 67を加えた。反応物を80℃で一晩攪拌した。温かいDI水(114g)、ARMEEN 18D(1.49g)、TERGITOL TMN−10(1.14g)、酢酸(1.12g)、及びトリプロピレングリコール(14.6g)をこの混合物に加え、70℃で30分間攪拌した。30分後、混合物を音波処理した。蒸留によってMIBKを除去し、生成物をソックフィルタ−によって濾過し、固形分が20.0%になるまで希釈した。分散物を、パッド浴200gあたりポリマー3.6gに相当する固形分20%、90g/Lで布地サンプルに塗布し、上の試験方法に従って試験した。
【0090】
実施例13
異なる界面活性剤系を使用した以外は、ソルビタントリステアレート62.43gを用いたスケールで実施例12を繰り返した。温かいDI水(284g)、ARMEEN 18D(2.82g)、ジアセチン(13.76g)、酢酸(1.76g)、STEPOSOL SB−W(1.06g)、及びBRIJ L4(1.41g)をこの混合物に加え、70℃で30分間攪拌した。30分後、混合物を41MPa(6000psi)で4回均質化した。蒸留によってMIBKを除去し、生成物をソックフィルタ−によって濾過し、固形分が20.0%になるまで希釈した。分散物を、パッド浴200gあたりポリマー3.6gに相当する固形分20%、90g/Lで布地サンプルに塗布し、上の試験方法に従って試験した。
【0091】
【表5】
【0092】
実施例12〜13は、ウレタン官能基を有するポリマーも、撥水性をもたらすのに効果的であることを示す。
【0093】
実施例14〜19
反応混合物を80℃で一晩加熱したこと、パッド浴にPHOBOL XANを用いなかったことを除き、表6に列挙した試薬を用い、35重量%のモノマー、30重量%のMIBK、35重量%のイソプロピルアルコール共溶媒を用いて、実施例5を繰り返した。
【0094】
【表6】
【0095】
実施例14〜19は、ソルビタントリステアレートウレタンメタクリレートに基づく数種類の異なるコポリマーが、撥水性と、汚れ除去特性を綿基材にもたらす能力を示す。
【0096】
実施例20〜22
表7に列挙した試薬を用いて施例14を繰り返した。
【0097】
【表7】
【0098】
実施例20〜22は、疎水性に改質されたスチレン化合物に由来する本発明のポリマーも、撥水性をもたらすのに効果的であることを示す。
【0099】
実施例23〜26
7−EOメタクリレート、N−イソ−ブトキシメチルメタアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びドデシルメルカプタンのストック溶液を、表8の量に従って、MIBK中、50重量%で調製した。30mLバイアル中、さらなるモノマーとMIBKをストック溶液及び開始剤と合わせた。バイアルに蓋をし、窒素ラインを接続した。ほとんどの反応をMIBK中、固形分25〜40%で行う。反応物を一晩かけて80℃まで加熱した。塩化ビニリデンが存在した場合、反応混合物を50℃まで加熱し、その後、温度をゆっくりと80℃まで上げ(15分ごとに10℃ずつ)、一晩攪拌した。試料をMIBKで固形分10%になるまで希釈し、布地に塗布し、上の試験方法に従って試験した。
【0100】
【表8】
【0101】
実施例23〜26は、本発明のポリマー組成物を、撥水性及び撥油性の両方をもたらすように変えることを示す。部分フッ素化した実施例について、優れた撥油性が観察された。
【0102】
実施例27〜30
表9に列挙した量に従って、30mLバイアルにモノマーと開始剤を加えた。バイアルに蓋をし、窒素ラインを接続した。反応混合物を80℃まで加熱し、一晩攪拌した。試料をMIBKで固形分10%になるまで希釈し、布地に塗布し、上の試験方法に従って試験した。
【0103】
【表9】
【0104】
実施例27〜30は、本発明のポリマー組成物を、撥水性及び撥油性の両方をもたらすように変えることを示す。
【0105】
実施例31〜34
表10の試薬を用いて実施例27を繰り返した。
【0106】
【表10】
【0107】
実施例31〜34は、本発明のポリマー組成物を、撥水性及び撥油性の両方をもたらすように変えることを示す。
【0108】
実施例35〜40
表11の試薬を用いて実施例27を繰り返した。
【0109】
【表11】
【0110】
実施例35〜40は、本発明の非フッ素化ポリマー組成物及び部分フッ素化ポリマー組成物の優れた撥水性能を示す。
【0111】
実施例41〜46
表12に列挙した試薬を用いて実施例27を繰り返した。
【0112】
【表12】
【0113】
実施例41〜46は、本発明の非フッ素化ポリマー組成物及び部分フッ素化ポリマー組成物の優れた撥水性能を示す。この場合、汚れ除去特性は、フッ素化モノマーを添加することによって促進される。
【0114】
実施例47〜52
500mLの4ッ口丸底フラスコに、熱電対、メカニカルスターラー、窒素投入口、凝縮器、及び気体出口を取り付けた。このフラスコに、表14のモノマー、MIBK(25〜40重量%溶液を調製するためのもの)、tert−ブチルアルコール(44.17g)を投入した。実施例44の場合、MIBKを使用せず、tert−ブチルアルコールは85.73gであった。混合物を80℃で加熱し、VAZO 67(0.19g)を加えた。反応物を一晩攪拌した。次いで、別のVAZO 67(0.19g)を加え、反応物を80℃で一晩攪拌した。このフラスコに温かい(65℃)DI水及びクロロ酢酸ナトリウム(11.17g)を加え、混合物を82℃で2.5時間攪拌した。次いで、有機溶媒をロータリーエバポレーションによって除去した。生成物をソックフィルタ−によって濾過し、固形分が20%になるまで希釈した。分散物を、パッド浴200gあたりポリマー3.6gに相当する固形分20%、90g/Lで布地サンプルに塗布し、上の試験方法に従って試験した。
【0115】
【表13】
【0116】
実施例47〜52は、本発明の非フッ素化ポリマー組成物及び部分フッ素化ポリマー組成物の綿に対する撥水性能を示す。
【0117】
本発明の化合物、組成物、方法、及び基材は、優れた撥水性及び任意選択的に汚れ除去性を、処理済み基材に提供するために有用である。表面特性は、上に定義したような非フッ素化有機ポリマー又は部分フッ素化有機ポリマーを用いて得られる。非フッ素化有機ポリマー又は部分フッ素化有機ポリマーを使用すると、従来の非フッ素化撥水剤と比較して、優れた撥水性及び耐久性のある撥水性をもたらし、市販のフッ素化撥水剤に匹敵することがわかった。