特許第6702957号(P6702957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6702957タバコ植物における腋芽成長の遺伝的制御法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702957
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】タバコ植物における腋芽成長の遺伝的制御法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/82 20060101AFI20200525BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20200525BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20200525BHJP
【FI】
   C12N15/82 122Z
   A01H1/00 AZNA
   A01H5/00 A
【請求項の数】19
【全頁数】83
(21)【出願番号】特願2017-519319(P2017-519319)
(86)(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公表番号】特表2017-534271(P2017-534271A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】US2015054247
(87)【国際公開番号】WO2016057515
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】62/060,473
(32)【優先日】2014年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516017499
【氏名又は名称】アルトリア クライアント サービシーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】クジチプディ チェンガルラヤン
(72)【発明者】
【氏名】シェン イエンシン
(72)【発明者】
【氏名】シュー トンメイ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ジェシー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジェモ
【審査官】 金田 康平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0249518(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00−15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS・WPI(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種核酸配列に機能的に連結された腋芽特異的プロモーターをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子を含むタバコ植物であって、前記腋芽特異的プロモーターが、SEQ ID NO: 113〜118からなる群より選択される核酸配列と少なくとも90%同一な核酸配列を含む、前記タバコ植物
【請求項2】
前記腋芽特異的プロモーターが、SEQ ID NO: 113〜118からなる群より選択される核酸配列と少なくとも95%同一な核酸配列を含む、請求項1に記載のタバコ植物。
【請求項3】
前記腋芽特異的プロモーターが、SEQ ID NO: 113〜118からなる群より選択される核酸配列と100%同一な核酸配列を含む、請求項1に記載のタバコ植物。
【請求項4】
前記異種核酸配列が、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、および81からなる群より選択される、請求項1に記載のタバコ植物。
【請求項5】
前記異種核酸配列が、SEQ ID NO: 79と少なくとも90%の配列同一性を含む、請求項1に記載のタバコ植物。
【請求項6】
前記異種核酸配列が、SEQ ID NO: 79と少なくとも95%の配列同一性を含む、請求項1に記載のタバコ植物。
【請求項7】
前記異種核酸配列が、SEQ ID NO: 79と100%の配列同一性を含む、請求項1に記載のタバコ植物。
【請求項8】
前記タバコ植物が、前記組換え核酸分子を欠失している対照タバコ植物と比較して、摘心後に低下した腋芽成長を含む、請求項1に記載のタバコ植物。
【請求項9】
請求項1に記載のタバコ植物に由来する、乾燥タバコ葉。
【請求項10】
請求項に記載の乾燥タバコ葉からつくられる、タバコ製品。
【請求項11】
無煙タバコ製品、タバコ由来のニコチン製品、シガリロ、非通気式リセスフィルターシガレット、通気式リセスフィルターシガレット、葉巻、嗅ぎタバコ、パイプタバコ、葉巻タバコ、紙巻タバコ、噛みタバコ、葉タバコ、刻みタバコ、カットタバコ、ロングカット湿性無煙タバコ、およびスヌースからなる群より選択される、請求項10に記載のタバコ製品。
【請求項12】
異種核酸配列に機能的に連結された、SEQ ID NO: 113〜118からなる群より選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むプロモーターを含む組換え核酸分子。
【請求項13】
前記プロモーターが、SEQ ID NO: 113〜118からなる群より選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項12に記載の組換え核酸分子。
【請求項14】
前記プロモーターが、SEQ ID NO: 113〜118からなる群より選択される配列と100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項12に記載の組換え核酸分子。
【請求項15】
前記異種核酸配列が、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、および81からなる群より選択される、請求項12に記載の組換え核酸分子。
【請求項16】
前記異種核酸配列が、SEQ ID NO: 79と少なくとも90%の配列同一性を含む、請求項12に記載の組換え核酸分子。
【請求項17】
前記異種核酸配列が、SEQ ID NO: 79と少なくとも95%の配列同一性を含む、請求項12に記載の組換え核酸分子。
【請求項18】
前記異種核酸配列が、SEQ ID NO: 79と100%の配列同一性を含む、請求項12に記載の組換え核酸分子。
【請求項19】
(a)請求項12に記載の組換え核酸分子をタバコ細胞に提供する工程、
(b)工程(a)のタバコ細胞からタバコ植物を再生させる工程
を含む、タバコ植物を生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、一般に、タバコ植物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
タバコは、非常に強い頂芽優勢を示す植物種である。茎頂分裂組織からの分子シグナルは、腋芽成長を効果的に阻害するホルモン環境を媒介する。頂端分裂組織の除去(「摘心」としても公知)によって、そのシグナルは失われ、それによって腋芽からの新しいシュート(または「吸枝」)の形成を可能にする。吸枝成長は、生産量および葉質の低下をもたらす。吸枝は、用手除去によっておよび化学薬品の適用を通して制御されている。マレイン酸ヒドラジド(MH)およびフルメトラリンは、腋芽成長(吸枝形成)を阻害するために、摘心された植物に対して日常的に使用される。しかしながら、吸枝を制御するための作業および化学薬剤は、多額の費用がかかる。従来の育種、突然変異育種、およびトランスジェニックアプローチによるタバコにおける腋芽成長の制御は、数十年間にわたる主要な目標であるが、現在までに、遺伝的アプローチを通した阻害は成功していない。それゆえ、腋芽成長の制限されたまたは腋芽成長のないタバコ形質の開発は、化学薬剤の使用の低下をもたらし、かつ、タバコの生産に伴う費用および作業を低下させるだろう。
【発明の概要】
【0003】
概要
腋芽成長の形成に関与する多数のヌクレオチドおよびポリペプチド配列を本明細書に記載する。そのような配列を使用する方法も記載する。本明細書に記載する方法は、摘心後に低下した腋芽成長を示すタバコ植物が産生されることを可能にする。
【0004】
一つの局面において、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77に示される核酸の1つまたは複数において突然変異を有する植物を含む、タバコ雑種、品種、系統、または栽培品種が提供される。幾つかの態様において、該植物は、該突然変異を欠く植物に比べて低下した腋芽成長を示し、かつ、それについて該植物を選択することができる。
【0005】
一つの局面において、タバコ雑種、品種、系統、または栽培品種のいずれかによって産生された種子が提供され、種子は、1つまたは複数の核酸において突然変異を含む。
【0006】
別の局面において、タバコ植物を作出する方法が提供される。そのような方法は、一般に、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)細胞において突然変異誘発を誘発して、突然変異誘発細胞を産生する工程;突然変異誘発細胞から1つまたは複数の植物を得る工程;およびSEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77に示される配列を有する核酸の1つまたは複数において突然変異を含む植物の少なくとも一つを同定する工程を含む。そのような方法は、該突然変異を欠く植物に比べて低下した腋芽成長を示す植物の少なくとも一つを同定する工程をさらに含むことができる。
【0007】
幾つかの態様において、突然変異誘発は、化学的突然変異誘発物質または電離放射線を使用して誘発される。代表的な化学的突然変異誘発物質は、非限定的に、亜硝酸、アジ化ナトリウム、アクリジンオレンジ、臭化エチジウム、およびエチルメタンスルホナート(EMS)を含む。代表的な電離放射線は、非限定的に、X線、ガンマ線、高速中性子照射、およびUV照射を含む。幾つかの態様において、突然変異誘発は、TALENを使用して誘発される。幾つかの態様において、突然変異誘発は、ジンクフィンガー技術を使用して誘発される。
【0008】
別の局面において、タバコ植物を産生するための方法が提供される。そのような方法は、一般に、第一のタバコ系統の少なくとも一つの植物と第二のタバコ系統の少なくとも一つの植物とを交雑させる工程、および突然変異を有する後代タバコ植物を選択する工程を含む。典型的には、第一のタバコ系統の植物は、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77に示される配列を有する1つまたは複数の核酸において突然変異を有する。幾つかの態様において、そのような方法は、該突然変異を欠く植物に比べて低下した腋芽成長を示す後代タバコ植物を選択する工程をさらに含むことができる。
【0009】
さらに別の局面において、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77に示される配列を有する1つまたは複数の核酸において突然変異を有するタバコ植物由来の乾葉を含むタバコ製品が提供される。幾つかの態様において、該タバコ植物は、該突然変異を欠く植物由来の葉に比べて低下した腋芽成長を示す。幾つかの態様において、該タバコ植物は、該突然変異を欠く植物由来の葉に比べて低下したMH残留量を示す。
【0010】
なお別の局面において、タバコ製品を生産する方法が提供される。そのような方法は、典型的には、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77に示される配列を有する1つまたは複数の核酸において突然変異を有するタバコ植物由来の乾葉を提供する工程;および該乾葉を使用してタバコ製品を製造する工程を含む。幾つかの態様において、該タバコ植物は、該突然変異を欠く植物由来の乾葉に比べて低下した腋芽成長を示す。
【0011】
本明細書において使用されるように、突然変異は、点突然変異、挿入、欠失、および置換であることができる。
【0012】
一つの局面において、少なくとも25ヌクレオチド長およびSEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81に示される配列に対して少なくとも91%の配列同一性を有する核酸分子を有する植物発現ベクターを含むトランスジェニックタバコ植物が提供される。幾つかの態様において、該核酸分子は、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81に示される配列に対して少なくとも91%の配列同一性を有する。幾つかの態様において、該核酸分子の発現は、該核酸分子を発現しないタバコ植物に比べて低下した腋芽成長を示す植物をもたらす。
【0013】
別の局面において、本明細書に記載されるトランスジェニックタバコ植物のいずれかによって産生された、発現ベクターを含む種子が提供される。
【0014】
別の局面において、ストリンジェントな条件下で、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81に示される核酸配列にハイブリダイズする少なくとも25ヌクレオチド長の異種核酸分子を含むトランスジェニックタバコ植物が提供される。幾つかの態様において、該異種核酸分子は、ストリンジェントな条件下で、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81に示される核酸配列にハイブリダイズする。幾つかの態様において、該異種核酸分子の発現は、該核酸分子を発現しないタバコ植物に比べて低下した腋芽成長を示す植物をもたらす。
【0015】
幾つかの局面において、本明細書に記載されるトランスジェニックタバコ植物のいずれかによって産生された、異種核酸分子を含む種子が提供される。
【0016】
さらに別の局面において、トランスジェニック植物を作出する方法が提供される。そのような方法は、典型的には、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77に示される核酸配列からの発現を阻害する二本鎖RNA分子をコードする導入遺伝子を発現させる工程を含み、ここで、該二本鎖RNA分子は、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77に示される配列に対して91%以上の配列同一性を有する少なくとも25の連続したヌクレオチドを含む。幾つかの態様において、ここで、該導入遺伝子の発現は、該導入遺伝子を発現しない植物に比べて低下した腋芽成長を示す植物をもたらす。
【0017】
別の局面において、本明細書に記載されるトランスジェニックタバコ植物のいずれか由来の乾葉を含むタバコ製品が提供される。
【0018】
さらに別の局面において、タバコ製品を生産する方法であって、本明細書に記載されるトランスジェニックタバコ植物のいずれか由来の乾葉を提供する工程;および該乾葉を使用してタバコ製品を製造する工程を含む、方法が提供される。
【0019】
なお別の局面において、タバコ植物における腋芽成長を低下させる方法が提供される。そのような方法は、一般に、プロモーターに機能的に連結された異種核酸分子をタバコ細胞内に導入して、トランスジェニックタバコ細胞を産生する工程、および該トランスジェニックタバコ細胞からトランスジェニックタバコ植物を再生させる工程を含む。典型的には、該異種核酸分子は、少なくとも25ヌクレオチド長を含み、かつ、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81に示される核酸配列に対して少なくとも91%の配列同一性を有する。そのようなトランスジェニックタバコ植物は、低下した腋芽成長を示す。幾つかの態様において、異種核酸分子は、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81に示されるとおりの核酸配列に対して少なくとも91%の配列同一性を有する。幾つかの態様において、該核酸分子の発現は、該核酸分子を発現しないタバコ植物に比べて低下した腋芽成長を示す植物をもたらす。そのような方法は、さらに、該異種核酸分子を発現しないタバコ植物に比べて低下した腋芽成長を示すトランスジェニックタバコ植物の少なくとも一つを選択する工程を含むことができる。
【0020】
一つの態様において、核酸は、センス配向にある。幾つかの態様において、核酸は、アンチセンス配向にある。幾つかの態様において、核酸分子は、粒子衝突(particle bombardment)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換、マイクロインジェクション、ポリエチレングリコール媒介形質転換、リポソーム媒介DNA取り込み、またはエレクトロポレーションを使用して、タバコ細胞内に導入される。幾つかの態様において、タバコ植物は、バーレー種(Burley type)、ダーク種(dark type)、黄色種(flue-cured type)、メリーランド種(Maryland type)、またはオリエンタル種(Oriental type)である。幾つかの態様において、タバコ植物は、BU 64、CC 101、CC 200、CC 13、CC 27、CC 33、CC 35、CC 37、CC 65、CC 67、CC 301、CC 400、CC 500、CC 600、CC 700、CC 800、CC 900、CC 1063、Coker 176、Coker 319、Coker 371 Gold、Coker 48、CU 263、DF911、Galpao タバコ、GL 26H、GL 338、GL 350、GL 395、GL 600、GL 737、GL 939、GL 973、GF 157、GF 318、RJR 901、HB 04P、K 149、K 326、K 346、K 358、K394、K 399、K 730、NC 196、NC 37NF、NC 471、NC 55、NC 92、NC2326、NC 95、NC 925、PVH 1118、PVH 1452、PVH 2110、PVH 2254、PVH 2275、VA 116、VA 119、KDH 959、KT 200、KT204LC、KY 10、KY 14、KY 160、KY 17、KY 171、KY 907、KY907LC、KTY14 x L8 LC、Little Crittenden、McNair 373、McNair 944、msKY 14xL8、Narrow Leaf Madole、NC 100、NC 102、NC 2000、NC 291、NC 297、NC 299、NC 3、NC 4、NC 5、NC 6、NC7、NC 606、NC 71、NC 72、NC 810、NC BH 129、NC 2002、Neal Smith Madole、OXFORD 207、‘Perique’タバコ、PVH03、PVH09、PVH19、PVH50、PVH51、R 610、R 630、R 7-11、R 7-12、RG 17、RG 81、RG H51、RGH 4、RGH 51、RS 1410、Speight 168、Speight 172、Speight 179、Speight 210、Speight 220、Speight 225、Speight 227、Speight 234、Speight G-28、Speight G-70、Speight H-6、Speight H20、Speight NF3、TI 1406、TI 1269、TN 86、TN86LC、TN 90、TN90LC、TN 97、TN97LC、TN D94、TN D950、TR (Tom Rosson) Madole、VA 309、またはVA359からなる群より選択される品種である。
【0021】
[本発明1001]
SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、および77からなる群より選択される配列を有する1つまたは複数の核酸において突然変異を有する植物を含む、タバコ雑種、品種、系統、または栽培品種。
[本発明1002]
前記植物が、突然変異を欠く植物に比べて低下した腋芽成長を示す、本発明1001のタバコ雑種、品種、系統、または栽培品種。
[本発明1003]
前記1つまたは複数の核酸において突然変異を含む、本発明1001のタバコ雑種、品種、系統、または栽培品種によって産生された種子。
[本発明1004]
ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)細胞において突然変異誘発を誘発して、突然変異誘発細胞を産生する工程;
該突然変異誘発細胞から1つまたは複数の植物を得る工程;および
SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、および77からなる群より選択される配列を有する1つまたは複数の核酸において突然変異を含む植物の少なくとも一つを同定する工程
を含む、タバコ植物を作出する方法。
[本発明1005]
突然変異を欠く植物に比べて低下した腋芽成長を示す植物の少なくとも一つを同定する工程をさらに含む、本発明1004の方法。
[本発明1006]
突然変異誘発が化学的突然変異誘発物質または電離放射線を使用して誘発される、本発明1004の方法。
[本発明1007]
化学的突然変異誘発物質が、亜硝酸、アジ化ナトリウム、アクリジンオレンジ、臭化エチジウム、およびエチルメタンスルホナート(EMS)からなる群より選択される、本発明1006の方法。
[本発明1008]
電離放射線が、X線、ガンマ線、高速中性子照射、およびUV照射からなる群より選択される、本発明1006の方法。
[本発明1009]
突然変異誘発がTALENを使用して誘発される、本発明1004の方法。
[本発明1010]
突然変異誘発がジンクフィンガー技術を使用して誘発される、本発明1004の方法。
[本発明1011]
第一のタバコ系統の少なくとも一つの植物と第二のタバコ系統の少なくとも一つの植物とを交雑させる工程であって、該第一のタバコ系統の植物が、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、および77からなる群より選択される配列を有する1つまたは複数の核酸において突然変異を有する、工程;および
該突然変異を有する後代タバコ植物を選択する工程
を含む、タバコ植物を産生するための方法。
[本発明1012]
突然変異を欠く植物に比べて低下した腋芽成長を示す後代タバコ植物を選択する工程をさらに含む、本発明1011の方法。
[本発明1013]
SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、および77からなる群より選択される配列を有する1つまたは複数の核酸において突然変異を有するタバコ植物由来の乾葉を含む、タバコ製品。
[本発明1014]
タバコ植物が、突然変異を欠く植物由来の葉に比べて低下した腋芽成長を示す、本発明1013のタバコ製品。
[本発明1015]
前記タバコ植物が、突然変異を欠く植物由来の葉に比べて低下したMH残留量を示す、本発明1013のタバコ製品。
[本発明1016]
SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、および77からなる群より選択される配列を有する1つまたは複数の核酸において突然変異を有するタバコ植物由来の乾葉を提供する工程;および
該乾葉を使用してタバコ製品を製造する工程
を含む、タバコ製品を生産する方法。
[本発明1017]
前記タバコ植物が、突然変異を欠く植物由来の乾葉に比べて低下した腋芽成長を示す、本発明1016の方法。
[本発明1018]
突然変異が、点突然変異、挿入、欠失、および置換からなる群より選択される、本発明1001〜1017のいずれかの方法。
[本発明1019]
SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、および81からなる群より選択される配列に対して少なくとも91%の配列同一性を有する少なくとも25ヌクレオチド長の核酸分子を含む植物発現ベクターを含むトランスジェニックタバコ植物。
[本発明1020]
核酸分子が、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、および81からなる群より選択される配列に対して少なくとも91%の配列同一性を有する、本発明1019のトランスジェニックタバコ植物。
[本発明1021]
前記核酸分子の発現が、該核酸分子を発現しないタバコ植物に比べて低下した腋芽成長を示す植物をもたらす、本発明1019のトランスジェニックタバコ植物。
[本発明1022]
前記発現ベクターを含む、本発明1019のトランスジェニックタバコ植物によって産生された種子。
[本発明1023]
少なくとも25ヌクレオチド長の異種核酸分子を含むトランスジェニックタバコ植物であって、該核酸分子が、ストリンジェントな条件下で、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、および81からなる群より選択される核酸配列にハイブリダイズする、トランスジェニックタバコ植物。
[本発明1024]
異種核酸分子が、ストリンジェントな条件下で、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、および81からなる群より選択される核酸配列にハイブリダイズする、本発明1023のトランスジェニックタバコ植物。
[本発明1025]
前記異種核酸分子の発現が、該核酸分子を発現しないタバコ植物に比べて低下した腋芽成長を示す植物をもたらす、本発明1023のトランスジェニックタバコ植物。
[本発明1026]
前記異種核酸分子を含む、本発明1023のトランスジェニックタバコ植物によって産生された種子。
[本発明1027]
トランスジェニック植物を作出する方法であって、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、および77からなる群より選択される核酸配列からの発現を阻害する二本鎖RNA分子をコードする導入遺伝子を発現させる工程を含み、ここで、該二本鎖RNA分子が、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、および77からなる群より選択される配列に対して91%以上の配列同一性を有する少なくとも25の連続したヌクレオチドを含む、方法。
[本発明1028]
前記導入遺伝子の発現が、該導入遺伝子を発現しない植物に比べて低下した腋芽成長を示す植物をもたらす、本発明1027の方法。
[本発明1029]
本発明1019〜1021または1023〜1025のいずれかのトランスジェニックタバコ植物由来の乾葉を含む、タバコ製品。
[本発明1030]
本発明1019〜1021または1023〜1025のいずれかのトランスジェニックタバコ植物由来の乾葉を提供する工程;および
該乾葉を使用してタバコ製品を製造する工程
を含む、タバコ製品を生産する方法。
[本発明1031]
タバコ植物における腋芽成長を低下させる方法であって、プロモーターに機能的に連結された異種核酸分子をタバコ細胞内に導入してトランスジェニックタバコ細胞を産生する工程、および該トランスジェニックタバコ細胞からトランスジェニックタバコ植物を再生させる工程を含み、該異種核酸分子が、少なくとも25ヌクレオチド長を含みかつSEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、および81からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも91%の配列同一性を有し、該トランスジェニックタバコ植物が低下した腋芽成長を示す、方法。
[本発明1032]
前記異種核酸分子が、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、および81からなる群より選択される核酸配列に対して少なくとも91%の配列同一性を有する、本発明1031の方法。
[本発明1033]
前記核酸分子の発現が、該核酸分子を発現しないタバコ植物に比べて低下した腋芽成長を示す植物をもたらす、本発明1031の方法。
[本発明1034]
前記異種核酸分子を発現しないタバコ植物に比べて低下した腋芽成長を示すトランスジェニックタバコ植物の少なくとも一つを選択する工程をさらに含む、本発明1031の方法。
[本発明1035]
前記核酸がセンス配向にある、本発明1031の方法。
[本発明1036]
前記核酸がアンチセンス配向にある、本発明1031の方法。
[本発明1037]
前記核酸分子が、粒子衝突(particle bombardment)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換、マイクロインジェクション、ポリエチレングリコール媒介形質転換、リポソーム媒介DNA取り込み、またはエレクトロポレーションを使用してタバコ細胞に導入される、本発明1027または1031の方法。
[本発明1038]
タバコ植物が、バーレー種(Burley type)、ダーク種(dark type)、黄色種(flue-cured type)、メリーランド種(Maryland type)、およびオリエンタル種(Oriental type)からなる群より選択される、本発明1027または1031の方法。
[本発明1039]
タバコ植物が、BU 64、CC 101、CC 200、CC 13、CC 27、CC 33、CC 35、CC 37、CC 65、CC 67、CC 301、CC 400、CC 500、CC 600、CC 700、CC 800、CC 900、CC 1063、Coker 176、Coker 319、Coker 371 Gold、Coker 48、CU 263、DF911、Galpao タバコ、GL 26H、GL 338、GL 350、GL 395、GL 600、GL 737、GL 939、GL 973、GF 157、GF 318、RJR 901、HB 04P、K 149、K 326、K 346、K 358、K394、K 399、K 730、NC 196、NC 37NF、NC 471、NC 55、NC 92、NC2326、NC 95、NC 925、PVH 1118、PVH 1452、PVH 2110、PVH 2254、PVH 2275、VA 116、VA 119、KDH 959、KT 200、KT204LC、KY 10、KY 14、KY 160、KY 17、KY 171、KY 907、KY907LC、KTY14 x L8 LC、Little Crittenden、McNair 373、McNair 944、msKY 14xL8、Narrow Leaf Madole、NC 100、NC 102、NC 2000、NC 291、NC 297、NC 299、NC 3、NC 4、NC 5、NC 6、NC7、NC 606、NC 71、NC 72、NC 810、NC BH 129、NC 2002、Neal Smith Madole、OXFORD 207、‘Perique’タバコ、PVH03、PVH09、PVH19、PVH50、PVH51、R 610、R 630、R 7-11、R 7-12、RG 17、RG 81、RG H51、RGH 4、RGH 51、RS 1410、Speight 168、Speight 172、Speight 179、Speight 210、Speight 220、Speight 225、Speight 227、Speight 234、Speight G-28、Speight G-70、Speight H-6、Speight H20、Speight NF3、TI 1406、TI 1269、TN 86、TN86LC、TN 90、TN90LC、TN 97、TN97LC、TN D94、TN D950、TR (Tom Rosson) Madole、VA 309、またはVA359からなる群より選択される品種である、本発明1027または1031の方法。
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本方法および組成物が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を、本方法および組成物の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。加えて、材料、方法、および実施例は、単なる例示であって、限定することを意図したものではない。本明細書において言及する全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によってその全体が組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】リアルタイムPCR解析を使用した、SEQ ID NO: 2の遺伝子発現の検証を示すグラフである。AB0:摘心前の腋芽;AB2:摘心の2時間後の腋芽;AB6:摘心の6時間後の腋芽;AB12:摘心の12時間後の腋芽;AB48:摘心の48時間後の腋芽;AB72:摘心の72時間後の腋芽;RT0:摘心前の根;RT24:摘心の24時間後の根;YL0:摘心前の若葉;YL24:摘心の24時間後の若葉;ML:成葉;MID 中脈;SK0:摘心前の茎;SK24:摘心の24時間後の茎;SAM:茎頂分裂組織およびSCL:老化葉。
図1B】リアルタイムPCR解析を使用した、SEQ ID NO: 19の遺伝子発現の検証を示すグラフである。AB0:摘心前の腋芽;AB2:摘心の2時間後の腋芽;AB6:摘心の6時間後の腋芽;AB12:摘心の12時間後の腋芽;AB48:摘心の48時間後の腋芽;AB72:摘心の72時間後の腋芽;RT0:摘心前の根;RT24:摘心の24時間後の根;YL0:摘心前の若葉;YL24:摘心の24時間後の若葉;ML:成葉;MID 中脈;SK0:摘心前の茎;SK24:摘心の24時間後の茎;SAM:茎頂分裂組織およびSCL:老化葉。
図1C】リアルタイムPCR解析を使用した、SEQ ID NO: 29の遺伝子発現の検証を示すグラフである。AB0:摘心前の腋芽;AB2:摘心の2時間後の腋芽;AB6:摘心の6時間後の腋芽;AB12:摘心の12時間後の腋芽;AB48:摘心の48時間後の腋芽;AB72:摘心の72時間後の腋芽;RT0:摘心前の根;RT24:摘心の24時間後の根;YL0:摘心前の若葉;YL24:摘心の24時間後の若葉;ML:成葉;MID 中脈;SK0:摘心前の茎;SK24:摘心の24時間後の茎;SAM:茎頂分裂組織およびSCL:老化葉。
図1D】リアルタイムPCR解析を使用した、SEQ ID NO: 35の遺伝子発現の検証を示すグラフである。AB0:摘心前の腋芽;AB2:摘心の2時間後の腋芽;AB6:摘心の6時間後の腋芽;AB12:摘心の12時間後の腋芽;AB48:摘心の48時間後の腋芽;AB72:摘心の72時間後の腋芽;RT0:摘心前の根;RT24:摘心の24時間後の根;YL0:摘心前の若葉;YL24:摘心の24時間後の若葉;ML:成葉;MID 中脈;SK0:摘心前の茎;SK24:摘心の24時間後の茎;SAM:茎頂分裂組織およびSCL:老化葉。
図1E】リアルタイムPCR解析を使用した、SEQ ID NO: 37の遺伝子発現の検証を示すグラフである。AB0:摘心前の腋芽;AB2:摘心の2時間後の腋芽;AB6:摘心の6時間後の腋芽;AB12:摘心の12時間後の腋芽;AB48:摘心の48時間後の腋芽;AB72:摘心の72時間後の腋芽;RT0:摘心前の根;RT24:摘心の24時間後の根;YL0:摘心前の若葉;YL24:摘心の24時間後の若葉;ML:成葉;MID 中脈;SK0:摘心前の茎;SK24:摘心の24時間後の茎;SAM:茎頂分裂組織およびSCL:老化葉。
図1F】リアルタイムPCR解析を使用した、SEQ ID NO: 45の遺伝子発現の検証を示すグラフである。AB0:摘心前の腋芽;AB2:摘心の2時間後の腋芽;AB6:摘心の6時間後の腋芽;AB12:摘心の12時間後の腋芽;AB48:摘心の48時間後の腋芽;AB72:摘心の72時間後の腋芽;RT0:摘心前の根;RT24:摘心の24時間後の根;YL0:摘心前の若葉;YL24:摘心の24時間後の若葉;ML:成葉;MID 中脈;SK0:摘心前の茎;SK24:摘心の24時間後の茎;SAM:茎頂分裂組織およびSCL:老化葉。
図2】アグロバクテリウム形質転換ベクターp45-2-7のマップの概略図である。
図3A-1】種々の核酸アラインメント(SEQ ID NO: 1、13、33、35、37、および55、上から下)を示す。
図3A-2】種々の核酸アラインメント(SEQ ID NO: 1、13、33、35、37、および55、上から下)を示す。
図3A-3】種々の核酸アラインメント(SEQ ID NO: 1、13、33、35、37、および55、上から下)を示す。
図3B】種々のタンパク質アラインメント(SEQ ID NO: 2、14、34、36、38、および56、上から下)を示す。
図4A】摘心前の野生型タバコ植物(左)およびRNA構築物#1で形質転換されたタバコ植物(SEQ ID NO: 29;右)の写真である。
図4B】摘心後の表示時間での野生型植物(上)およびRNA構築物#1で形質転換された植物(下)の写真である。
図4C】野生型植物(左)およびRNA構築物#1で形質転換された植物(右)から産生されたT1世代を示す写真である。
図5A】腋生分裂組織特異的プロモーターP1(SEQ ID NO: 31に示される配列由来のプロモーター)およびプロモーターP7(SEQ ID NO: 32)からの発現のGUS染色を示す。
図5B】摘心前(0時間)および摘心後(24時間、48時間および144時間)のプロモーターP1(P1:GUS発現ベクター)からの発現のGUS染色を示す。
図6A】0時間(上)および摘心の一週間後(下)の野生型植物(左)と比較したトランスジェニック系統(RNAi_1(SEQ ID NO: 83 BRANCHタバコ相同体に対する);右)についてのT0世代の表現型を示す写真である。
図6B】0時間(上)および摘心の一週間後(下)の野生型植物(左)と比較したトランスジェニック系統(RNAi_7(SEQ ID NO: 86 BRANCHタバコ相同体に対する);右)についてのT0世代の表現型を示す写真である。
図6C】摘心の二週間後の野生型植物(左上および左下)と比較したT1トランスジェニック植物(RNAi_1;右上、右下)の表現型を示す写真である。
図6D】RNAi_1植物の腋枝の新鮮重が野生型植物の新鮮重の2倍であったことを示すグラフであり、このことは、タバコにおけるBRANCH1相同体のサイレンシングが増強された芽伸長をもたらしたことを示している。
図7】Aは、アラビドプシス(Arabidopsis)BRANCH1核酸の過剰発現が、摘心後一週間以内(下)に野生型植物(左)に比べて低下した芽伸長(右)を導くことを示す写真である。Bは、アラビドプシスBRANCH1核酸の過剰発現が、野生型植物(左)に比べて植物成長全体に影響を及ぼす(右)ことを示す写真である。
図8】SEQ ID NO: 11に示される核酸配列の過剰発現が、摘心後に増強された芽伸長(右)を導くことを示す写真である。その表現型は、0時間(上)および摘心の一週間後(下)での野生型植物(左)と比較した一つのトランスジェニック系統についての典型例である。
図9】三種の異なるトランスジェニック系統におけるRNAi_CET2の過剰発現が、吸枝成長をダウンレギュレートしかつ低下した芽伸長をもたらしたことを示す写真である(近接撮影、上;植物全体、下)。摘心の一週間後の野生型植物(左)と比較したRNAi_ CET2にトランスジェニックな三種の系統の表現型を示す。
図10】RNAi_26の発現が野生型植物(左上)に比べて吸枝成長を低下させた(近接撮影、右上;植物全体、下)ことを示す、摘心の7日後に撮影された写真である。
図11】SEQ ID NO: 116に示される配列を有するプロモーターの制御下でのGUSの分裂組織特異的発現を示す写真である。標識されているとおり:実生においてSAMの非存在下では発現は観察されなかった;実生においてSAMの存在下では、青色を見ることができる;摘心前に腋芽において弱い発現が見られた;摘心の3日後に強い発現が観察された;摘心後5日以内にGUS発現は次第に消えていった;摘心の7日後にGUS発現は消えた。
図12】SEQ ID NO: 117に示される配列を有するプロモーターの制御下でのGUSの腋芽特異的発現を示す写真である。標識されているとおり:実生においてSAMの非存在下では発現は観察されなかった;腋芽においてSAMの存在下ではGUS発現が観察された;成熟植物では、基部および脇芽においてGUS発現が観察された;花芽においてGUS発現は観察されなかった;摘心前および摘心の15日後までに腋芽において強いGUS発現が観察された。
図13】P1プロモーターの制御下での分裂組織特異的GUS発現を示す写真である。GUS発現は観察されるが、摘心後にダウンレギュレートされる(0時間)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本出願は、吸枝成長のないまたは吸枝成長の低下したタバコを産生するためのアプローチを記載する。例えば、本明細書は、腋芽発生にとって重要である遺伝子を発見するための腋芽成長遺伝子プロファイリング;腋芽成長および/もしくは吸枝抑制遺伝子のアップレギュレーション;腋芽および/もしくは吸枝活性化因子遺伝子のダウンレギュレーション;ならびに吸枝成長の調節成分のモジュレーション;または腋芽特異的プロモーターを使用した腋芽における細胞死メカニズムの始動もしくは誘発を含む。
【0024】
この開示は、腋芽成長およびその調節に関与する、N. タバカム(N. tabacum)、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)およびバチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)由来のポリペプチドをコードする核酸の発見に基づくものである。そのような核酸、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81、およびそれによってコードされたポリペプチド、SEQ ID NO: 2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、または82が、本明細書において記載および特徴付けられる。この発見に基づいて、そのような核酸配列の発現のレベルおよび/またはそのようなポリペプチドの機能を、ニコチアナ(Nicotiana)種、具体的には、例えばN. タバカムにおいてモジュレートすることができる。ポリペプチド機能および/または遺伝子発現をモジュレートすることは、改善された腋芽成長の制御を可能にすることができる。
【0025】
核酸およびポリペプチド
核酸(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81を参照のこと)が本明細書において提供される。本明細書において使用されるように、核酸は、DNAおよびRNAを含むことができ、かつ、1つまたは複数のヌクレオチド類似体または骨格修飾を含有する核酸を含む。核酸は、通常その意図する用途に依存して、一本鎖または二本鎖であることができる。本明細書において提供される核酸は、ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO: 2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、または82を参照のこと)をコードする。
【0026】
また、それぞれ、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81、およびSEQ ID NO: 2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、または82とは異なる核酸およびポリペプチドも提供される。SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81、およびSEQ ID NO: 2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、または54とは配列が異なる核酸およびポリペプチドは、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81、およびSEQ ID NO: 2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、または82に対して、それぞれ、少なくとも50%の配列同一性(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有することができる。
【0027】
配列同一性パーセントを計算するには、二つの配列をアラインさせ、そして、その二つの配列間のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の完全な一致の数を決定する。その完全な一致の数をアラインした領域の長さ(すなわち、アラインしたヌクレオチドまたはアミノ酸残基の数)で割って、100を掛けると、配列同一性パーセント値に至る。アラインされる領域の長さは、一方または両方の配列の一部分から最も短い配列の全長サイズまでであることができることが理解されよう。また、単一の配列を一つよりも多い他の配列とアラインすることができ、したがって、その単一の領域がそれぞれのアラインされた領域に対して異なる配列同一性パーセント値を有することができることも理解されるであろう。
【0028】
配列同一性パーセントを決定するための二つ以上の配列のアラインメントは、コンピュータプログラムClustalWおよびデフォルトパラメータを使用して実施することができ、これは核酸またはポリペプチド配列のアラインメントをそれらの全体の長さにわたって行うことを可能にする(グローバルアライメント)。Chenna et al., 2003, Nucleic Acids Res., 31(13):3497-500。ClustalWは、クエリー(query)配列と1つまたは複数のサブジェクト配列との間の最良の一致を計算して、同一性、類似性および相違を決定することができるようにそれらをアラインする。配列アラインメントを最大にするために、クエリー配列、サブジェクト配列、または両方に1つまたは複数の残基のギャップを挿入することができる。核酸配列の高速ペアワイズアラインメントのために、デフォルトパラメータを使用することができる(すなわち、ワードサイズ:2;ウィンドウサイズ:4;スコアリング法:パーセンテージ;トップ対角線の数:4;およびギャップペナルティ:5);多重核酸配列のアラインメントのために、以下のパラメータを使用することができる:ギャップ開始ペナルティ:10.0;ギャップ伸長ペナルティ:5.0;およびウエイトトランジション:イエス(yes)。ポリペプチド配列の高速ペアワイズアラインメントのために、以下のパラメータを使用することができる:ワードサイズ:1;ウィンドウサイズ:5;スコアリング法:パーセンテージ;トップ対角線の数:5;およびギャップペナルティ:3。ポリペプチド配列の多重アラインメントのために、以下のパラメータを使用することができる:ウエイトマトリックス:ブロッサム(blosum);ギャップ開始ペナルティ:10.0;ギャップ伸長ペナルティ:0.05;親水性ギャップ:オン;親水性残基:Gly、Pro、Ser、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、およびLys;ならびに残基特異的ギャップペナルティ:オン(on)。ClustalWは、例えば、ワールド・ワイド・ウェブ上のBaylor College of Medicine Search LauncherのウェブサイトまたはEuropean Bioinformatics Instituteのウェブサイトで実行することができる。
【0029】
変化を、核酸分子(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81)に導入して、それによって、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列(例えば、SEQ ID NO: 2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、または82)の変化を導くことができる。例えば、変化を、突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、PCR媒介突然変異誘発、クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復配列(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)(CRISPR)突然変異誘発)を使用してまたはそのような変化を有する核酸分子を化学的に合成することによって、核酸コード配列に導入することができる。そのような核酸変化は、1つまたは複数のアミノ酸残基に保存的および/または非保存的アミノ酸置換を導くことができる。「保存的アミノ酸置換」は、一つのアミノ酸残基が類似の側鎖を有する異なるアミノ酸残基に置き換わっているものであり(例えば、アミノ酸置換のための度数分布表を提供する、Dayhoff et al. (1978, in Atlas of Protein Sequence and Structure, 5(Suppl. 3):345-352)を参照のこと)、そして、非保存的置換は、あるアミノ酸残基が類似の側鎖を有さないアミノ酸残基に置き換わっているものである。
【0030】
本明細書において使用されるように、「単離された」核酸分子は、その単離された核酸分子が由来する生物のゲノム中の核酸の一端または両端に天然に隣接する配列を含有しない核酸分子(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ消化によって産生されたcDNAまたはゲノムDNAフラグメント)である。そのような単離された核酸分子は、一般に、操作の利便性のためまたは融合核酸分子を生成するために、ベクター(例えば、クローニングベクター、または発現ベクター)に導入されるが、これについては以下で詳細に説明する。加えて、単離された核酸分子は、組換え核酸分子のような遺伝子操作された核酸分子または合成核酸分子を含むことができる。
【0031】
本明細書において使用されるように、「精製された」ポリペプチドは、ポリペプチドに天然に付随する細胞成分から分離または精製されているポリペプチドである。典型的には、ポリペプチドが天然に関連するポリペプチドおよび天然に存在する分子を乾燥重量で少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%)含有しない場合に、そのポリペプチドは「精製された」と見なされる。化学的に合成されたポリペプチドは、もともと、それに天然に付随する成分から分離されているので、合成ポリペプチドは「精製された」ものである。
【0032】
核酸は、当技術分野において日常的な技術を使用して単離することができる。例えば、核酸は、非限定的に、組換え核酸技術、および/またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む任意の方法を使用して単離することができる。一般的なPCR技術は、例えば、PCR Primer: A Laboratory Manual, Dieffenbach & Dveksler, Eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995に記載されている。組換え核酸技術は、例えば、核酸を単離するために使用することができる制限酵素消化およびライゲーションを含む。単離された核酸はまた、単一の核酸分子または一連のオリゴヌクレオチドのいずれかとして、化学的に合成することもできる。
【0033】
ポリペプチドは、DEAEイオン交換、ゲル濾過、およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのような公知の方法によって、天然の供給源(例えば、生物学的試料)から精製することができる。ポリペプチドはまた、例えば、発現ベクター中の核酸を発現させることによって精製することもできる。加えて、精製されたポリペプチドは、化学合成によって得ることができる。ポリペプチドの純度の程度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析を使用して測定することができる。
【0034】
また、核酸(例えば、ポリペプチドをコードする核酸)を含有するベクターも提供される。発現ベクターを含むベクターは、市販されているか、または当技術分野において日常的な組換えDNA技術によって調製することができる。核酸を含有するベクターは、そのような核酸に機能的に連結された発現エレメントを有することができ、さらに、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)をコードする配列のような配列を含むことができる。核酸を含有するベクターは、キメラまたは融合ポリペプチド(すなわち、ポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかであることができる異種ポリペプチドに機能的に連結されたポリペプチド)をコードすることができる。代表的な異種ポリペプチドは、コードされたポリペプチドの精製において使用できるもの(例えば、6xHisタグ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST))であるポリペプチドである。
【0035】
発現エレメントは、核酸コード配列の発現を指令および調節する核酸配列を含む。発現エレメントの一例は、プロモーター配列である。発現エレメントはまた、イントロン、エンハンサー配列、応答エレメント、または核酸の発現をモジュレートする誘導可能なエレメントを含むことができる。発現エレメントは、細菌、酵母、昆虫、哺乳動物、またはウイルス起源のものであってよく、そして、ベクターは、異なる起源由来のエレメントの組み合わせを含むことができる。本明細書において使用されるように、機能的に連結されたとは、プロモーターまたは他の発現エレメントが核酸の発現を指令または調節するように該核酸に対してベクター中に位置付けられる(例えば、インフレーム)ことを意味する。
【0036】
追加的にまたは代替的に、ベクターは、核酸(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81)のゲノムへの相同組換えを指令する配列を含むことができる。核酸のゲノムへの相同組換えを指令することができる代表的な配列は、当技術分野において公知であり、TALEN配列(例えば、Cermak et al., 2011, Nuc. Acids Res., 39:e82)、CRISPR配列(Jiang et al., 2013, Nuc. Acids Res., 41:e188)、またはジンクフィンガーヌクレアーゼ(Guo et al., 2010, J. Mol. Biol., 400:96)を含む。
【0037】
本明細書に記載されるとおりのベクターを、宿主細胞に導入することができる。本明細書において使用されるように、「宿主細胞」は、核酸が導入される特定の細胞を指し、かつ、ベクターを保有するそのような細胞の後代も含む。宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であり得る。例えば、核酸は、大腸菌(E. coli)のような細菌細胞中で、または昆虫細胞、酵母もしくは哺乳動物細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞のような)中で発現させることができる。他の好適な宿主細胞は、当業者に公知であり、植物細胞を含む。インビボおよびインビトロの両方で核酸を宿主細胞に導入するための多くの方法は、当業者に周知であり、非限定的に、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレングリコール(PEG)形質転換、熱ショック、リポフェクション、マイクロインジェクション、およびウイルス媒介核酸導入を含む。
【0038】
核酸は、幾つもの増幅技術(例えば、PCR Primer: A Laboratory Manual, 1995, Dieffenbach & Dveksler, Eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY;ならびに米国特許第4,683,195号;第4,683,202号;第4,800,159号;および第4,965,188号を参照のこと)を適切なオリゴヌクレオチド(例えば、プライマー)対と共に使用して検出することができる。オリジナルのPCRに対して多数の改変が開発されており、核酸を検出するために使用することができる。
【0039】
核酸はまた、ハイブリダイゼーションを使用して検出することができる。核酸間のハイブリダイゼーションは、Sambrookら(1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; セクション7.37-7.57, 9.47-9.57, 11.7-11.8 および 11.45-11.57)に詳細に説明されている。Sambrookらは、約100ヌクレオチド未満のオリゴヌクレオチドプローブに好適なサザンブロット条件を開示している(セクション11.45-11.46)。100ヌクレオチド長未満の配列と第二の配列との間のTmは、セクション11.46に提供されている式を使用して計算することができる。Sambrookらは、約100ヌクレオチドを超えるオリゴヌクレオチドプローブのためのサザンブロット条件を追加で開示している(セクション9.47-9.54を参照のこと)。100ヌクレオチド長を超える配列と第二の配列との間のTmは、Sambrookらのセクション9.50-9.51に提供されている式を使用して計算することができる。
【0040】
核酸を含有する膜がプレハイブリダイズおよびハイブリダイズされる条件、ならびに核酸を含有する膜が過剰の非特異的に結合したプローブを除去するために洗浄される条件は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに重要な役割を果たすことができる。そのようなハイブリダイゼーションおよび洗浄は、必要に応じて、中程度または高度のストリンジェンシー条件下で実施することができる。例えば、洗浄条件は、洗浄液中の塩濃度を減少させることによって、および/または洗浄が実施される温度を上昇させることによって、よりストリンジェントにすることができる。単なる例として、高ストリンジェンシー条件は、典型的には、0.2×SSC中65℃での膜の洗浄を含む。
【0041】
加えて、ハイブリダイゼーションの量の読み取りは、例えば、標識オリゴヌクレオチドプローブの特異的活性によって、プローブがハイブリダイズされているテンプレート核酸上のプローブ結合部位の数によって、およびオートラジオグラフィーまたは他の検出媒体の露光量によって影響を受けることができる。当業者には、固定化された標的核酸へのプローブ核酸分子のハイブリダイゼーションを調べるために、幾つものハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を使用することができるが、標的核酸へのプローブのハイブリダイゼーションを同一のハイブリダイゼーション、洗浄および露光条件下で調べることがより重要であることが容易に理解されよう。好ましくは、標的核酸は、同じ膜上にある。
【0042】
ある核酸へのハイブリダイゼーションが別の核酸へのハイブリダイゼーションよりも少なくとも5倍(例えば、少なくとも6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、または100倍)高い場合、核酸分子は、別の核酸にではなく、ある核酸にハイブリダイズすると見なされる。ハイブリダイゼーションの量は、膜上で直接的に、またはオートラジオグラフから、例えばPhosphorImagerまたはDensitometer(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)を使用して定量化することができる。
【0043】
ポリペプチドは、抗体を使用して検出することができる。抗体を使用してポリペプチドを検出するための技術は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光を含む。抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであることができる。ポリペプチドに特異的結合親和性を有する抗体は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。抗体は、当技術分野において公知の方法を使用して、マイクロタイタープレートのような固相支持体に付着させることができる。ポリペプチドの存在下では、抗体-ポリペプチド複合体が形成される。
【0044】
検出(例えば、増幅産物、ハイブリダイゼーション複合体、またはポリペプチドの検出)は、通常、検出可能な標識を使用して達成される。用語「標識」は、直接標識ならびに間接標識の使用を包含することが意図される。検出可能な標識は、酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質を含む。
【0045】
低下した腋芽成長を有する植物および作出方法
本明細書に記載される1つまたは複数の核酸(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77)において突然変異を有する、タバコ雑種、品種、系統、または栽培品種が提供される。本明細書に記載されるように、核酸(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77)の1つまたは複数において突然変異を有する植物の茎は、低下した腋芽成長を示すことができる(例えば、該突然変異を欠く植物の茎と比較して)。幾つかの場合には、該突然変異を有する核酸は、内因性核酸であることができ;幾つかの場合には、該突然変異を有する核酸は、組換えによって導入されてよい。
【0046】
本明細書において使用されるように、腋芽成長(または「吸枝形成」)は、当技術分野において一般的に理解されているように、タバコ植物が摘心された後に葉と茎との間で成長する側芽(または「吸枝」)の生成のことを言う。摘心は、茎先端(植物がほぼ成熟している場合には花および幾つかの隣接する葉までを含む)の除去を指し、これは頂芽優勢の喪失をもたらす。腋芽成長が十分に制御されているという条件で、摘心は、生産量および値/エーカーを増加させ、かつ、葉の物理的および化学的特性に対して望ましい改変をもたらす。
【0047】
突然変異を有するタバコ植物を作出する方法は、当技術分野において公知である。突然変異は、ランダム突然変異または標的突然変異であることができる。ランダム突然変異誘発では、例えば、化学的突然変異誘発物質、電離放射線、または高速中性子衝突を使用して、細胞(例えば、ニコチアナ・タバカム細胞)を突然変異誘発させることができる(例えば、Li et al., 2001, Plant J., 27:235-42を参照のこと)。代表的な化学的突然変異誘発物質には、非限定的に、亜硝酸、アジ化ナトリウム、アクリジンオレンジ、臭化エチジウム、およびエチルメタンスルホナート(EMS)を含み、一方で、代表的な電離放射線には、非限定的に、X線、ガンマ線、高速中性子照射、およびUV照射を含む。突然変異誘発化学物質または放射線の投与量は、致死率または生殖不稔性によって特徴付けられる閾値未満である突然変異頻度が得られるように、植物組織の種類ごとに実験的に決定される。突然変異誘発処理から生じたM1世代種子の数またはM1植物集団のサイズは、予想される突然変異頻度に基づいて推定される。標的突然変異誘発では、代表的な技術には、TALEN(例えば、Li et al., 2011, Nucleic Acids Res., 39(14):6315-25を参照のこと)またはジンクフィンガーヌクレアーゼの使用(例えば、Wright et al., 2005, The Plant J., 44:693-705を参照のこと)を含む。ランダムであるか標的であるかにかかわらず、突然変異は、点突然変異、挿入、欠失、置換、またはその組み合わせであることができる。
【0048】
本明細書において説明されるように、1つまたは複数のヌクレオチドを突然変異させて、コードされたポリペプチドの発現および/または機能を、対応する野生型ポリペプチドの発現および/または機能に比べて変化させることができる。例えば、高度に保存された領域の1つまたは複数における突然変異はポリペプチドの機能を変化させる可能性が高いが、一方で、その保存された領域以外での突然変異はポリペプチドの機能にほとんど影響を及ぼさない可能性が高いことが理解されよう。加えて、単一のヌクレオチドにおける突然変異は、終止コドンを生み出すことができ、これは、短縮型ポリペプチドをもたらし、そして、短縮化の程度によっては、機能の喪失をもたらすだろう。
【0049】
好ましくは、本明細書に開示される新規核酸の一つにおける突然変異は、該突然変異を含むタバコ植物において摘心後に腋芽成長の低下またはさらには完全な排除をもたらす。コード配列における好適な種類の突然変異には、非限定的に、ヌクレオチドの挿入、ヌクレオチドの欠失、または野生型コード配列におけるトランジションもしくはトランスバージョンを含む。コード配列における突然変異は、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、1つまたは複数のアミノ酸の欠失、および/またはコードされたポリペプチドにおける非保存的アミノ酸置換をもたらすことができる。幾つかの場合には、コード配列は、1つより多い突然変異または1つより多い種類の突然変異を含む。
【0050】
コード配列におけるアミノ酸の挿入または欠失は、例えば、コードされたポリペプチドの立体構造を破壊することができる。アミノ酸挿入または欠失はまた、結合リガンドの認識またはポリペプチドの活性に重要な部位を破壊することができる。多数の隣接アミノ酸の挿入または欠失は、より少ない数のアミノ酸の挿入または欠失と比較して、遺伝子産物を非機能的にする可能性がより高いことが当技術分野において公知である。加えて、1つまたは複数の突然変異(例えば、点突然変異)は、ポリペプチドの局在化を変化させるか、終止コドンを導入して短縮型ポリペプチドを産生させるか、またはポリペプチド内の活性部位もしくはドメイン(例えば、触媒部位またはドメイン、結合部位またはドメイン)を破壊することができる。加えて、標的配列またはシグナル配列を突然変異させ、それによって、細胞中のタンパク質を破壊またはその配置を変化させることができる。
【0051】
非保存的アミノ酸置換は、あるクラスのアミノ酸を異なるクラスのアミノ酸に置き換えることができる。非保存的置換は、遺伝子産物の電荷または疎水性に大きな変化を起こすことができる。非保存的アミノ酸置換はまた、例えばイソロイシン残基の代わりにアラニン残基を置換することによって、残基側鎖の体積(bulk)に大きな変化を起こすことができる。非保存的置換の例には、非極性アミノ酸の代わりの塩基性アミノ酸、または酸性アミノ酸の代わりの極性アミノ酸を含む。
【0052】
突然変異誘発に続いて、突然変異誘発細胞からM0植物を再生し、そして、それらの植物またはその集団の後続世代(例えば、M1、M2、M3など)を関心対象の配列(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77)における突然変異についてスクリーニングすることができる。関心対象の配列に突然変異を保有する植物についてのスクリーニングは、当技術分野において日常的な方法(例えば、ハイブリダイゼーション、増幅、それらの組み合わせ)を使用して、またはその表現型を評価する(例えば、腋芽成長を検出および/または測定する)ことによって実施することができる。一般に、本明細書に開示される核酸配列(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77)の1つまたは複数における突然変異の存在は、該突然変異を欠く対応する植物(例えば、同じ品種のバックグラウンドを有する)と比較して、突然変異体植物において腋芽成長の低下をもたらす。
【0053】
本明細書において使用されるように、低下した吸枝成長とも称される、低下した腋芽成長は、対照植物と比較した場合の、腋芽の数の低下(例えば、統計的に有意な低下)、腋芽のサイズ(例えば、バイオマス)の低下(例えば、統計的に有意な低下)、および/または腋芽が農業生産力(例えば、植物の生産量、品質および生産性全体)に及ぼす影響力の低下(例えば、統計的に有意な低下)を指す。その効果は、摘心後に腋芽成長を妨げるおよび/もしくは排除する、または摘心後に化学薬品(例えば、MHおよび/またはフルメトラリン)の適用の必要性を低下させるおよび/もしくは排除することとして実証することができる。本明細書において使用されるように、統計的に有意とは、統計的有意性の適切な尺度、例えば片側二標本t検定(one-tailed two sample t-test)を使用した、0.05未満のp値、例えば、0.025未満のp値または0.01未満のp値を指す。
【0054】
M1タバコ植物は、変異対立遺伝子についてヘテロ接合性であり得、かつ野生型の表現型を示し得る。このような場合には、そのような植物の第一世代の自家受粉後代の少なくとも一部は、野生型の表現型を示す。代替的に、M1タバコ植物は、変異対立遺伝子を有し得、かつ突然変異型の表現型を示し得る。そのような植物は、ヘテロ接合性であり得、かつ、野生型対立遺伝子の存在にもかかわらずドミナントネガティブ抑制のような現象のために突然変異型の表現型を示し得るか、または、このような植物は、異なる対立遺伝子において異なる独立に誘発された突然変異のためにヘテロ接合性であり得る。
【0055】
変異対立遺伝子を保有するタバコ植物を植物育種プログラムに使用して、新規で有用な栽培品種、系統、品種および雑種を生み出すことができる。したがって、幾つかの態様において、少なくとも一つの突然変異を含有するM1、M2、M3またはそれ以降の世代のタバコ植物を第二のニコチアナ・タバカム植物と交雑させ、該突然変異が存在するその交雑種の後代を同定する。第二のニコチアタバカム植物が本明細書に記載される種および品種の一つであることができることが理解されよう。また。第二のニコチアタバカム植物が、それが交雑される植物と同じ突然変異、異なる突然変異を含むことができるか、またはその遺伝子座において野生型であり得ることが理解されよう。追加的にまたは代替的に、第二のタバコ系統は、例えば、耐病性、高い生産量、高い等級指数、乾燥性(curability)、乾燥品質、機械収穫性、保持能力、葉質、高さ、植物の成熟度(例えば、早生、中早生、中生、中晩生、または晩生)、茎サイズ(例えば、小、中、または大)、および/または植物当たりの葉数(例えば、少数(例えば、5〜10枚の葉)、中程度(例えば、11〜15枚の葉)、または多数(例えば、16〜21枚の葉))のような表現型形質を示すことができる。
【0056】
育種は、公知の手順を使用して行われる。DNAフィンガープリンティング、SNPまたは類似の技術を、本明細書に記載されるように、マーカーアシスト選抜(MAS)育種プログラムに使用して、変異対立遺伝子を他のタバコに導入または継承し得る。この交雑種の後代は、本明細書に記載される方法を使用して突然変異についてスクリーニングすることができ、本明細書に開示される核酸配列(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77)に突然変異を有する植物を選択することができる。例えば、本明細書に列挙される技術の一つを使用し、本明細書に記載される配列またはそのフラグメントから開発されたマーカーを使用して、F2または戻し交雑世代の植物をスクリーニングすることができる。また、後代植物を腋芽成長についてスクリーニングすることができ、該突然変異を欠く対応する植物と比較して低下した腋芽成長を有する植物を選択することができる。変異対立遺伝子および/または突然変異型の表現型を保有するとして同定された植物を戻し交雑または自家受粉させて、スクリーニングされる第二の集団を生み出すことができる。反復親の所望の表現型が回復するまで、戻し交雑または他の育種手順を繰り返すことができる。
【0057】
成功した交雑は、繁殖力があるF1植物および必要であれば親系統と戻し交雑することができるF1植物を生成する。幾つかの態様において、F2世代の植物集団を、標準的な方法(例えば、本明細書に開示される核酸配列に基づくプライマーを用いたPCR)を使用して、突然変異またはバリアント遺伝子発現についてスクリーニングする。次に、選択された植物を親の一つと交雑させ、そして、第一の戻し交雑(BC1)世代植物を自家受粉させて、バリアント遺伝子発現について再度スクリーニングされるBC1F2集団を産生させる。戻し交雑、自家受粉、およびスクリーニングのプロセスを、繁殖力がありかつ反復親にかなり類似する植物を最後のスクリーニングが産生するまで、例えば少なくとも4回繰り返す。この植物を、所望であれば、自家受粉させ、その後、この植物が該突然変異を含有しかつバリアント遺伝子発現を示すことを確認するためにこの後代を再度スクリーニングする。選択された植物の原種種子を、例えば圃場試験、ヌル条件(null condition)の確認、および/または植樹を含む標準的な方法を使用して生産し、腋芽成長を評価することができる。
【0058】
本明細書に記載される突然変異タバコ植物を使用した植物育種プログラムの結果は、新規で有用な栽培品種、品種、系統、および雑種である。本明細書において使用されるように、用語「品種」は、それらを同じ種の他の植物と分ける特徴を共有する植物の集団を指す。品種は、必ずではないが、市販されていることが多い。1つまたは複数の特有の形質を保持しながら、品種は、その品種内の個体間での非常に小さな全体的変動によってさらに特徴付けられる。「純系」品種は、数世代の自家受粉および選択よって、または組織もしくは細胞培養技術を使用した単一の親からの栄養繁殖によって生み出され得る。「系統」は、品種と区別されるとおり、ほとんどの場合、非商業的に、例えば植物研究において使用される植物の一群を表す。系統は、典型的には、関心対象の1つまたは複数の形質について個体間で全体的変動をほとんど示さないが、他の形質について個体間で幾分の変動があり得る。
【0059】
品種は、別の系統または品種に本質的に由来することができる。International Convention for the Protection of New Varieties of Plants(1961年12月2日、ジュネーブで1972年11月10日に、1978年10月23日に、および1991年3月19日に改正された)によって定義されているとおり、品種は、以下の条件: a)品種が、原品種の遺伝子型または遺伝子型の組み合わせから生じる本質的な特徴の発現を維持しながら、原品種に主として由来するか、または原品種に主として由来する品種に由来する;b)品種が原品種と明確に区別される;ならびにc)派生行為から生じた差異を除いて、品種が、原品種の遺伝子型または遺伝子型の組み合わせから生じる本質的な特徴の発現が原品種と一致する場合に、原品種に「本質的に由来する」。本質的に由来する品種は、例えば、自然突然変異体もしくは誘発突然変異体、ソマクローナルバリアント、原品種由来の個々のバリアント植物の選択、戻し交雑、または形質転換によって得ることができる。
【0060】
タバコ雑種は、第一の品種の雌性親植物(すなわち、種子親)の自家受粉を防止し、第二の品種の雄性親植物由来の花粉を雌性親植物に受粉させ、そして、雌性植物においてF1雑種種子を形成させることによって産生することができる。雌性植物の自家受粉は、花の発生の初期段階で花を除雄することによって防止することができる。代替的に、花粉形成は、雄性不稔の形態を使用して雌性親植物において防止することができる。例えば、雄性不稔は、細胞質雄性不稔(CMS)、核雄性不稔、遺伝的雄性不稔、分子雄性不稔によって産生することができ、ここで、導入遺伝子は、小胞子生成および/または花粉形成、または自家不和合性を阻害する。CMSを含有する雌性親植物が特に有用である。雌性親植物がCMSである態様において、雄性親植物は、典型的には、F1雑種が確実に稔性であるように稔性回復遺伝子を含有する。雌性親がCMSである他の態様において、稔性回復を含有しない雄性親を使用することができる。そのような親から産生されたF1雑種は、雄性不稔性である。雄性不稔性の雑種種子は、雄性稔性種子と混植することで、得られた雄性不稔性植物で結実させるための花粉を提供することができる。
【0061】
本明細書に記載される品種、系統および栽培品種を使用して、単交雑タバコF1雑種を形成することができる。そのような態様において、親品種の植物を、実質的に均質な隣接集団として成長させて、雄性親植物から雌性親植物への自然他家受粉を容易にすることができる。雌性親植物で形成されたF2種子は、従来手段によって選択的に収穫される。また、二つの親植物品種をまとめて成長させて、雌性親で形成されたF1雑種種子と自家受粉の結果として雄性親で形成された種子とのブレンドを収穫することもできる。代替的に、単交雑F1雑種を雌性親として使用して異なる雌性親と交雑させる、三系交雑を行うことができる。別の代替として、二つの異なる単交雑のF1後代をそれ自体交雑させる二系交雑雑種を生み出すことができる。二系交雑雑種を形成する場合、雌性親の自家受粉を防止するために自家不和合性を特に有利に使用することができる。
【0062】
本明細書に記載される方法において使用されるタバコ植物は、バーレー種、ダーク種、黄色種、メリーランド種、またはオリエンタル種であることができる。本明細書に記載される方法において使用されるタバコ植物は、典型的には、N.タバカム由来であり、かつ、様々なN.タバカム品種に由来することができる。品種は、BU 64、CC 101、CC 200、CC 13、CC 27、CC 33、CC 35、CC 37、CC 65、CC 67、CC 301、CC 400、CC 500、CC 600、CC 700、CC 800、CC 900、CC 1063、Coker 176、Coker 319、Coker 371 Gold、Coker 48、CU 263、DF911、Galpao タバコ、GL 26H、GL 338、GL 350、GL 395、GL 600、GL 737、GL 939、GL 973、GF 157、GF 318、RJR 901、HB 04P、K 149、K 326、K 346、K 358、K394、K 399、K 730、NC 196、NC 37NF、NC 471、NC 55、NC 92、NC2326、NC 95、 NC 925、PVH 1118、PVH 1452、PVH 2110、PVH 2254、PVH 2275、VA 116、VA 119、KDH 959、KT 200、KT204LC、KY 10、KY 14、KY 160、KY 17、KY 171、KY 907、KY907LC、KTY14 x L8 LC、Little Crittenden、McNair 373、McNair 944、msKY 14xL8、Narrow Leaf Madole、NC 100、NC 102、NC 2000、NC 291、NC 297、NC 299、NC 3、NC 4、NC 5、NC 6、NC7、NC 606、NC 71、NC 72、NC 810、NC BH 129、NC 2002、Neal Smith Madole、OXFORD 207、‘Perique’タバコ、PVH03、PVH09、PVH19、PVH50、PVH51、R 610、R 630、R 7-11、R 7-12、RG 17、RG 81、RG H51、RGH 4、RGH 51、RS 1410、Speight 168、Speight 172、Speight 179、Speight 210、Speight 220、Speight 225、Speight 227、Speight 234、Speight G-28、Speight G-70、Speight H-6、Speight H20、Speight NF3、TI 1406、TI 1269、TN 86、TN86LC、TN 90、TN90LC、TN 97、TN97LC、TN D94、TN D950、TR (Tom Rosson) Madole、VA 309、またはVA359であることができる。
【0063】
突然変異に加えて、タバコにおいて腋芽成長を低下させることができる別の方法は、阻害性RNA(例えば、RNAi)を使用することである。それゆえ、発現されたときに本明細書に記載される内因性核酸(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77)の少なくとも一つをサイレンシングする少なくとも一つのRNAi分子をコードする導入遺伝子を含有する、トランスジェニックタバコ植物が提供される。本明細書に記載されるように、そのようなトランスジェニック植物は、低下した腋芽成長(例えば、該RNAiを欠くまたは該RNAiを発現しない植物と比較して)を示す。
【0064】
RNAi技術は、当技術分野において公知であり、転写後遺伝子サイレンシングの非常に有効な形態である。RNAi分子は、典型的には、標的遺伝子に相補的であるヌクレオチド配列(例えば、約18ヌクレオチド長(例えば、約19または20ヌクレオチド長)から約700ヌクレオチド長まで)をセンス配向とアンチセンス配向の両方に含有する。センス鎖およびアンチセンス鎖を、短い「ループ」配列(例えば、約5ヌクレオチド長から約800ヌクレオチド長まで)によって連結させて、単一の転写産物で発現させることができるか、または、センス鎖およびアンチセンス鎖を、別々のベクターもしくは構築物で標的細胞内に送達して、そこで発現させることができる。多数の会社が、RNAi設計および合成サービスを提供している(例えば、Life Technologies, Applied Biosystems)。
【0065】
RNAi分子は、植物発現ベクターを使用して発現させることができる。RNAi分子は、典型的には、少なくとも25ヌクレオチド長であり、かつ、本明細書に開示される核酸配列(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77)の一つに対して少なくとも91%の配列同一性(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するか、または、ストリンジェントな条件下で、本明細書に開示される核酸配列(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、61、63、65、69、71、73、75、または77)の一つにハイブリダイズする。ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションについては先に記載している。
【0066】
さらに、本明細書に記載されるある種の配列を植物において過剰発現させて、腋芽成長を低下させることができる。したがって、植物において発現を駆動することが可能なプロモーターの制御下で本明細書に記載される核酸分子(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81)で、または、その機能的フラグメントで形質転換されたトランスジェニックタバコ植物が提供される。本明細書において説明されるように、植物発現ベクターにおいて使用される核酸分子は、本明細書に記載される配列とは異なる配列を有することができ、これらの配列は、配列同一性パーセント(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81に対する)として、あるいは、該配列がSEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81にハイブリダイズする条件に基づいて表すことができる。
【0067】
完全長配列を使用する代わりに、所望の機能性を有するポリペプチドフラグメント(本明細書において「機能的フラグメント」と称される)をコードする、該配列の一部を使用することができる。核酸に関して使用される場合、それは、機能性を保有する核酸フラグメントではなく、コードされたポリペプチドフラグメントであると理解されるだろう。本明細書の開示および図3に示されるアラインメントに基づいて、当業者は、所望の機能性を付与し得るポリペプチドの部分(例えば、1つまたは複数のドメイン)を予測することができる。
【0068】
植物においてコード配列の発現を駆動するプロモーターは、当技術分野において公知である。代表的なプロモーターは、例えば、CaMV 35Sプロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーター、ファセオリンプロモーター、ルビスコプロモーター、ゼインプロモーター、ACEI系プロモーター、In2プロモーター、またはH3ヒストンプロモーターを含む。加えて、腋芽成長に関連する組織特異的または発生特異的プロモーター配列も本明細書に記載され、かつ、核酸コード配列を発現または過剰発現するためにこれ使用することができる。腋芽成長に関連する代表的な組織特異的または発生特異的プロモーター配列は、SEQ ID NO: 113、114、115、116、117、または118に示される。本明細書に記載されるように、該コード配列は、本明細書に記載される核酸コード配列(例えば、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、または81)のいずれかであることができるが;代替的に、コード配列は、プログラム化細胞死をもたらす遺伝子(例えば、リボソーム不活性化タンパク質をコードする核酸分子、病原体(例えば、真菌または細菌)に直面したときに植物が起こす過敏応答に関与するタンパク質をコードする核酸分子)に由来することができる。単なる例として、本明細書に記載されるとおりの腋芽成長に関連する組織特異的または発生特異的プロモーター配列を使用して、摘心後にその発現が減少するコード配列またはアポトーシスに関与するコード配列を発現または過剰発現させることができる。
【0069】
植物細胞内に核酸(例えば、異種核酸)を導入する方法は、当技術分野において公知であり、例えば、粒子衝突、アグロバクテリウム媒介形質転換、マイクロインジェクション、ポリエチレングリコール媒介形質転換(例えば、プロトプラストの、例えば、Yooら(2007, Nature Protocols, 2(7):1565-72)を参照のこと)、リポソーム媒介DNA取り込み、またはエレクトロポレーションを含む。形質転換に続いて、トランスジェニック植物細胞を、トランスジェニックタバコ植物へと再生させることができる。本明細書に記載されるように、導入遺伝子の発現は、該導入遺伝子を発現しない植物に比べて低下した腋芽成長を示す植物をもたらす。再生されたトランスジェニック植物を腋芽成長についてスクリーニングすることができ、そして、対応する非トランスジェニック植物と比較して低下した腋芽成長を有する植物を、例えば本明細書において説明されるとおりの育種プログラムにおける使用のために選択することができる。
【0070】
腋芽成長関連コード配列の過剰発現またはダウンレギュレーションに加えて、以下のアプローチのいずれかを使用して腋芽成長を制御することができる:
a.腋芽発生にとって重要である腋芽成長関連調節遺伝子の発現を変化させること(実施例7および8に記載されるとおり);
b.腋芽特異的プロモーターを使用して分裂組織発生特異的遺伝子を変化させること;
c.ホルモンシグナル伝達を変化させて、腋枝成長阻害を導くこと。これは、組織特異的または時期特異的(例えば、摘心後)プロモーターによって駆動されるホルモン合成遺伝子またはホルモン輸送遺伝子の過剰発現またはダウンレギュレーションを通して達成することができる;ならびに
d.細胞自殺遺伝子または細胞毒性遺伝子を駆動する腋芽特異的プロモーターを使用して、腋芽において細胞死メカニズムを始動させること。
【0071】
また、除草剤抵抗性(除草剤耐性と称されることもある)、昆虫抵抗性、またはストレス耐性のような形質を付与する核酸も本明細書に記載される新規タバコ植物に存在することができる。イミダゾリノンまたはスルホニル尿素のような成長点または分裂組織を阻害する除草剤への抵抗性を付与する遺伝子が適切であることができる。このカテゴリー内の例示的な遺伝子は、例えば米国特許第5,767,366号および第5,928,937号に記載されているような突然変異型ALSおよびAHAS酵素をコードする。米国特許第4,761,373号および第5,013,659号は、種々のイミダゾリノンまたはスルホンアミド除草剤に抵抗性である植物を対象にしている。米国特許第4,975,374号は、グルタミンシンテターゼ(GS)を阻害することが知られている除草剤、例えばホスフィノトリシンおよびメチオニンスルホキシイミンによる阻害に抵抗性である突然変異型グルタミンシンテターゼ(GS)をコードする遺伝子を含有する、植物細胞および植物に関する。米国特許第5,162,602号は、シクロヘキサンジオンおよびアリールオキシフェノキシプロパン酸除草剤による阻害に抵抗性である植物を開示している。
【0072】
また、グリホサートへの抵抗性のための遺伝子も好適である。例えば、米国特許第4,940,835号および第4,769,061号を参照のこと。そのような遺伝子は、トリメチルスルホニウム塩、イソプロピルアミン塩、ナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩のようなグリホサートの塩を非限定的に含むグリホサート除草剤組成物への抵抗性を付与することができる。例えば、米国特許第6,451,735号および第6,451,732号を参照のこと。また、グルホシネートアンモニウムまたはホスフィノトリシンのようなホスホノ化合物、およびピリジノキシまたはフェノキシプロピオン酸、およびシクロヘキソン類への抵抗性のための遺伝子も好適である。例えば、米国特許第5,879,903号;第5,276,268号;および第5,561,236号;ならびに欧州特許出願第0 242 246号を参照のこと。
【0073】
他の好適な除草剤には、トリアジンおよびベンゾニトリル(ニトリラーゼ)のような光合成を阻害する除草剤を含む。米国特許第4,810,648号を参照のこと。他の好適な除草剤は、2,2-ジクロロプロピオン酸、セトキシジム、ハロキシホップ、イミダゾリノン除草剤、スルホニル尿素除草剤、トリアゾロピリミジン除草剤、s-トリアジン除草剤およびブロモキシニルを含む。また、好適なものは、プロトックス(protox)酵素への抵抗性を付与する除草剤である。例えば、米国特許第6,084,155号およびUS 20010016956を参照のこと。
【0074】
昆虫、例えば鱗翅目(Lepidoptera)の昆虫への抵抗性を付与する多数の遺伝子が利用可能である。例示的な遺伝子は、短縮型Cry1A(b)およびCry1A(c)毒素をコードする遺伝子を含む。例えば、米国特許第5,545,565号;第6,166,302号;および第5,164,180号に記載されている遺伝子を参照のこと。また、Vaeck et al., 1997, Nature, 328:33-37 および Fischhoff et al., 1987, Nature Biotechnology, 5:807-813も参照のこと。特に有用なものは、Manduca sexta(タバコスズメガ);Heliothis virescens Fabricius(オオタバコガ)および/またはS. litura Fabricius(ハスモンヨトウ)に対して殺虫活性を示す毒素をコードする遺伝子である。
【0075】
タバコ製品および製造方法
低下した腋芽成長を有するタバコ植物由来の葉を、乾燥、熟成、調整(conditioned)、および/または発酵させることができる。タバコを乾燥させる方法は、周知であり、例えば、風乾、火力乾燥、熱風乾燥および日干乾燥を含む。また、成熟も公知であり、典型的には、木製ドラム(例えば、大樽)または段ボールカートン中、加圧条件で、約10%〜約25%の湿度で数年(例えば、2〜5年)行われる(例えば、米国特許第4,516,590号および第5,372,149号を参照のこと)。調整は、例えば、US 2004/0118422またはUS 2005/0178398に記載されているような加熱、搾取または低温殺菌工程を含むが、発酵は、典型的には、高い初期湿度、発熱、および乾燥重量の10〜20%損失によって特徴付けられる。例えば、米国特許第4,528,993号、第4,660,577号、第4,848,373号および第5,372,149号を参照のこと。該タバコはまた、所望であればさらに加工(例えば、切断、膨張、ブレンド、破砕または粉末化)して、タバコ製品に使用することができる。
【0076】
タバコ製品は、当技術分野において公知であり、タバコ製品の任意の成分、部品、または付属品を含む、ヒトでの消費を意図するタバコから製造されたまたはタバコに由来する製品を含む。代表的なタバコ製品は、非限定的に、無煙タバコ製品、タバコ由来のニコチン製品、シガリロ、非通気式リセスフィルターシガレット、通気式リセスフィルターシガレット、葉巻、嗅ぎタバコ、パイプタバコ、葉巻タバコ、紙巻タバコ、噛みタバコ、葉タバコ、刻みタバコ、およびカットタバコを含む。代表的な無煙タバコ製品は、例えば、噛みタバコ、嗅ぎタバコ、ロングカット湿性無煙タバコ、スヌース、パウチ、フィルム、タブレット、コートダウエル(coated dowels)、ロッドなどを含む。代表的なシガレットおよび他の喫煙具は、例えば、フィルター部材またはロッド部材を含む喫煙具を含み、この場合、喫煙可能材料のロッド部材は、タバコブレンド内に乾燥タバコを含むことができる。本明細書に記載されるタバコに加えて、タバコ製品はまた、非限定的に、結合剤、可塑剤、安定剤、および/または香味剤のような他の成分を含むことができる。タバコ製品の例については、例えば、US 2005/0244521;US 2006/0191548;US 2012/0024301;US 2012/0031414;およびUS 2012/0031416を参照のこと。
【0077】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明されるが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される方法および組成物の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0078】
実施例1-試料採取、RNA調製および配列決定
バーレー品種のTN90由来のタバコ種子を発芽させた。4週間後、実生を4インチポット上に移した。取入れ段階時(8〜10枚の完全展開葉)に、摘心前の腋芽(Aa)、摘心後の腋芽(Ab、Ac、AdおよびAe(それぞれ、2時間、6時間、24時間および72時間)、摘心前の根(Ra)、摘心後の根(Rb、Rc(24時間および72時間))、摘心時の若葉(YL)、および茎頂分裂組織(ST)を含む合計10個の異なる試料を、次世代配列決定解析のために収集した。それぞれの時点を3個の独立に収集した試料によって表した。これらの3個の試料は、生物学的複製物としての役割を果たした。
【0079】
先に記載した試料由来のRNAを、RNeasy Plant Mini Kit(Qiagen, MA)を使用して単離し、Agilent Plant RNA Nano Kitおよび2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies, CA)を使用して品質を試験した。30個のcDNAライブラリーを、TrueSeq RNA Library Prep Kit v.2(Illumina)を使用して構築し、インデックスを作成した。同じ生物学的複製物から製造したcDNAライブラリーを一緒にプールし、そして、各プールした複製物を、Illumina HiSeq 2000にて、1試料当たり最小3000万リード(read)で100bpのシングルリードにより解析した。2個の試料を、合計15個の配列決定レーンについてレーン毎にタグ化した。TN90タバコにおける腋芽特異的遺伝子発現を、ArrayXpress(Raleigh, NC)によって実施したRNAディープ配列決定によって決定した。
【0080】
実施例2-RNA配列解析
5個の腋芽、3個の根、ならびに若葉および茎頂分裂組織試料の各1個からの遺伝子発現データを解析して、他の組織と比較した腋芽発生関連遺伝子を同定した。遺伝子リードを当施設内タバコペディア(tobaccopedia)ゲノムデータにマッピングした(表1)。CLC genomic workbenchのEdgeRを使用して、差次的遺伝子発現を実施した。遺伝子発現データを、他の組織から腋芽特異的発現についてフィルターにかけた。FDR調整を全てのp値に対して実施し、FDR補正したp値<0.05のカットオフを使用した。次に、結果を高い腋芽発現についてフィルターにかけた。吸枝制御について差次的に発現した候補遺伝子の一覧を表2に列挙する。
【0081】
(表1)施設内タバコペディア・データベースを使用した次世代配列決定リードのマッピング
【0082】
(表2)選択した候補遺伝子の差次的遺伝子発現
【0083】
実施例3-選択した候補遺伝子発現の確認
選択した候補遺伝子の発現パターンを確認するために、10〜16個の異なる組織試料(6個の腋芽試料(摘心前ならびに摘心の2時間後、6時間後、12時間後、24時間後および72時間後)、摘心の24時間後の若葉、成葉、老葉、中脈、摘心前の茎、摘心の24時間後の茎、茎頂分裂組織、摘心前の根および摘心の24時間後の根)由来の転写産物の相対的変化を測定した。簡潔に述べると、トータルRNAを、TRI Reagent(Sigma-Aldritch, St. Louis, Mo)を使用して単離した。DNA不純物を除去するために、精製したRNAをRNase-free DNase(Turbo DNA-free, Ambion, Austin, TX)で処理した。第一のcDNA鎖を合成するために、およそ10μgのトータルRNAを、High Capacity cDNA Kit(Applied Biosystems, Foster City, CA)を利用して転写した。試料中の選択した遺伝子転写産物のレベルを測定するために、SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems, Foster City, CA)および表3に列挙される遺伝子特異的プライマーを使用してRT-PCRを実施した。代表的な候補遺伝子のリアルタイム遺伝子発現検証を図1A〜1Gに列挙する。
【0084】
(表3)遺伝子発現の確認に使用されるリアルタイムPCRプライマー
【0085】
実施例4-完全長候補遺伝子のクローニング、解析および検証のための選択されたリアルタイムPCR
腋芽の発芽および成長に関与すると予測される候補遺伝子を同定およびアノテートし(表4)、摘心前のおよび摘心の12時間後、24時間後および48時間後のTN90植物の腋芽組織に由来するRNAを収集した。Clontech社のIn-Fusion SMARTER Directional cDNA Library Construction Kit(Cat # 634933)を使用して、RNAからcDNAライブラリーを作製した。完全長候補遺伝子を、予測された完全長cDNA配列から設計された遺伝子特異的プライマーを使用してクローニングした。その完全長コード配列を配列決定によって確認し、これをSEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、57、59、または69に示す。予測タンパク質配列をSEQ ID NO: 2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、58、60、または70に示す。
【0086】
(表4)選択された候補遺伝子
【0087】
RNAの配列解析およびRT-PCR確認から、RNAiおよび完全長アグロバクテリウム形質転換解析ために候補となる推定完全長遺伝子配列を選択した。候補配列を表5に列挙し、これをSEQ ID NO: 39、41、43、45、47、49、51、53、61、63、65、71、73、75、または77に示す。予測タンパク質配列をSEQ ID NO: 40、42、44、46、48、50、52、54、62、64、66、72、74、76、または78に示す。
【0088】
候補遺伝子の6個は、保存ドメイン(TCPドメイン)の存在に基づく転写因子遺伝子ファミリーのメンバーである。ヌクレオチドおよびタンパク質配列アラインメントを図3に示す。このファミリーのメンバーは、植物成長および発生の調節に関与している。その保存ドメインは、下流遺伝子を調節するためのプロモーター中のシスエレメントへのDNA結合を担っていると考えられる。
【0089】
(表5)選択された候補となる推定遺伝子配列
【0090】
実施例5-RNAiまたは過剰発現構築物を含有するトランスジェニック植物の開発および有効性試験
候補遺伝子の機能を調査するために、3セットのトランスジェニック植物を生成した;タバコ由来の完全長コード配列(表4、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、57、59、または69)を使用した第一のセット、非タバコ起源の完全長遺伝子(表4、SEQ ID NO: 55、67、79、または81)を使用した第二のセット;およびRNAi配列(SEQ ID NO: 83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、または101)を使用した第三のセット。発現ベクターp45-2-7(SEQ ID NO: 112;図2)を使用し、これは、CsVMVプロモーターおよびNOSターミネーターと、アクチン2プロモーターの指令下にカナマイシン選択マーカー(NPTII)を有しかつNOSターミネーターを有するカセットとを有する。関心対象の導入遺伝子を保有する核酸構築物を、アグロバクテリウム形質転換アプローチを使用してタバコリーフディスクに導入した。例えば、Mayo et al., 2006, Nat Protoc., 1(3):1105-11およびHorsch et al., 1985, Science 227:1229-1231を参照のこと。
【0091】
簡潔に述べると、タバコ植物(Narrow Leaf Madole(NLM))をマゼンタボックスから成長させ、そして、リーフディスクを15×150mmのプレート中に切り取った。標的プラスミドを含有するアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を、50ml遠心分離チューブ中の細胞懸濁液20mlを3500rpmで10分間遠心分離することによって収集した。上清を除去し、そして、アグロバクテリウム細胞ペレットを液体再懸濁培地40mlに再懸濁した。溶液の約25mlを各15×100mmのペトリ皿に移した。これらの15×150mmのプレート中、中脈を除けたタバコ葉を0.6cmディスクに切り取った。リーフディスクをひっくり返して置き、MS/B5液体再懸濁培地の薄層を加え、薄片を#15カミソリ刃で作製した。リーフディスクを尖端針で均一に突き刺した。8個のディスクを各再生プレート(15×100mm)中にひっくり返して置いた。アグロバクテリウム・ツメファシエンス懸濁液を加え、そして、リーフディスクを10分間インキュベートした。
【0092】
リーフディスクを共培養プレート(1/2MS培地)に移し、ディスクをひっくり返して共培養TOM培地(20gスクロース/L;1mg/L IAAおよび2.5mg/L BAPを含有するMS培地)上に重ねた濾紙と接触させて置いた。プレートをパラフィルムで密閉して、適切に標識した。プレートを、薄暗がり(60〜80mE/ms)の下、18/6の明期にて、24℃で3日間インキュベートした。リーフディスクを再生/選択TOM K培地プレート(300mg/lカナマイシンを含有するTOM培地)に移し、そして、シュートが切除可能となるまで薄暗がりの下24℃で同じ新鮮培地に2週に1度継代培養した。葉由来のシュートをピンセットで採取し、発根のために24℃および6080mE/msの光強度の18/6の明期にて100mg/Lカナマイシンを含有するMS基礎培地中に挿入した。
【0093】
シュートおよび根の両方を持つ小植物体を十分大きく成長させたら(例えば、GA7ボックスの半分超に達する)、これらを順化用の土壌に移した。移す間に、水道水で根組織からゲルを洗い流した。土着した実生をさらなる解析のために温室に移して結実させた。
【0094】
植物を取入れ段階まで成長させることによって、吸枝成長表現型についての有効性試験を行った。これらの植物を摘心し、そして、摘心後の特定の時点で腋芽成長を観察した。
【0095】
図4Aは、摘心前の野生型植物(左)およびRNA構築物#1で形質転換された植物(SEQ ID NO: 55;右)を示し、図4Bは、摘心後の表示時間での野生型植物(上)およびRNA構築物#1で形質転換された植物(下)を示す。図4Cは、野生型植物(左)およびRNA構築物#1で形質転換された植物(右)のT1世代を示す。摘心後の腋芽の成長は、野生型植物に比べてトランスジェニック植物において実質的に増大した。トランスジェニック植物における腋芽成長の開始は、植物が摘心される前でもすでに始まっており、そして、成長の速度は摘心後、最大で一週間に増加した。これらの結果は、RNA構築物#1の発現が芽の休眠に関与する可能性が高いこと、および該遺伝子のダウンレギュレーションが吸枝の発生開始および成長の要因であることを実証した。
【0096】
発現カセットの配列をSEQ ID NO: 111に示し、関連のある部分を左に表示する。
【0097】
実施例6-プロモータークローニング、形質転換および解析
41個の候補遺伝子の発現パターンを解析し、腋芽において高い発現レベルにあるが他の組織において低い発現レベルにある遺伝子のプロモーターを選択した(表6)。これらのクローンの発現パターンをリアルタイムPCR解析によって確認した(図1)。6個の腋生分裂組織特異的プロモーターを、PCR法によって遺伝子特異的プライマーを使用してTN90ゲノムDNAからクローニングした。プロモーターの配列をSEQ ID NO: 113〜118に示す。
【0098】
キメラ候補プロモーター::β-グルクロニダーゼ(GUS)レポーター遺伝子を実施例5に記載される同じカセットと共に用いたタバコの形質転換によって、候補プロモーターの発現を解析した。キメラ遺伝子を、アグロバクテリウム媒介形質転換を介してNLM系統に導入した。Crone et al., 2001, Plant Cell Environ., 24:869-874の方法に従って、GUS染色を使用してプロモーター発現を突き止めた。トランスジェニックタバコ組織を氷上の冷90%アセトン中に入れた。全ての試料を採取したら、試料を室温で20分間置いた。試料からアセトンを除去し、そして、染色緩衝液(0.2% Triton X-100;50mM NaHPO4緩衝液、pH 7.2;2mMフェロシアン化カリウム)を試料に加え、試料を氷上で維持しながら、その全てを行った。染色緩衝液にX-GlucをDMF中2mMの終濃度まで(100mMのX-Gluc原液から)加えたが、これは暗所で-20℃に維持しなければならない。試料から染色緩衝液を除去し、そして、X-Glucを含有する新鮮染色緩衝液を加えた。試料を氷上で15〜20分間真空浸透させた。試料を37℃で2時間〜一晩インキュベートした。インキュベーターから試料を取り出し、染色緩衝液を除去した。試料を、光を避けながら、エタノール系(すなわち、10%、30%、50%、70%から;所望であれば、試料を60℃に加熱して葉緑体を取り除くことができる)に工程毎に30分間通して、95%まで洗浄した。最後に、試料を100%エタノール中に維持した。
【0099】
GUS陽性植物組織を、明視野顕微鏡(Leica Q500MC, Cambridge, England)によって低倍率で調べ、デジタルカメラで撮影した。図5Aおよび5Bを参照のこと。本明細書に記載される2個の異なるプロモーター(SEQ ID NO: 113および115)を使用した実験の結果を図5に示す。若い実生を染色した。青色の染色によって表示されるGUS発現は、腋芽に集中しており、このことは、これらの2個のプロモーターが腋芽において活性であるが、茎または葉では活性でないことを示している(図5A)。SEQ ID NO: 113のプロモーターの指令下でのGUSの発現はまた摘心後に減少したが、これはこのプロモーターによって通常調節される内因遺伝子について観察された遺伝子発現パターンと一致する(図5B)。植物の他の部分での発現を制限しながら、これらのプロモーター配列を使用して腋芽においてのみまたは腋芽に優先的に遺伝子を発現させることができる。
【0100】
(表6)プロモーター解析のための選択クローン
【0101】
実施例7-プロモーターおよび遺伝子の組み合わせの有効性試験
トランスジェニック植物におけるプロモーター::GUS融合解析を使用した候補プロモーターの組織特異的発現パターンを試験した後、本発明者らは、腋芽においてのみ候補遺伝子を発現する一連のベクターを構築した。アグロバクテリウム媒介形質転換を使用して、これらの構築物を含有するトランスジェニック植物を生成する。トランスジェニック植物における候補遺伝子の発現は、候補遺伝子の抑制または過剰発現のいずれかから生じる腋芽成長を抑制する植物をもたらすことができる。
【0102】
幾つかの実施例を以下のとおり示す:
構築物1:プロモーター(SEQ ID NO: 113)および遺伝子(SEQ ID NO: 17)
構築物2:プロモーター(SEQ ID NO: 113)および遺伝子(SEQ ID NO: 104)
構築物3:プロモーター(SEQ ID NO: 113)および遺伝子(SEQ ID NO: 7)
構築物4:プロモーター(SEQ ID NO: 113)および遺伝子(SEQ ID NO: 41)
構築物5:プロモーター(SEQ ID NO: 113)および遺伝子(SEQ ID NO: 5)
構築物6:プロモーター(SEQ ID NO: 118)および遺伝子(SEQ ID NO: 17)
構築物7:プロモーター(SEQ ID NO: 118)および遺伝子(SEQ ID NO: 104)
構築物8:プロモーター(SEQ ID NO: 118)および遺伝子(SEQ ID NO: 7)
構築物9:プロモーター(SEQ ID NO: 118)および遺伝子(SEQ ID NO: 41)
構築物10:プロモーター(SEQ ID NO: 118)および遺伝子(SEQ ID NO: 5)
構築物11:プロモーター(SEQ ID NO: 115)および遺伝子(SEQ ID NO: 17)
構築物12:プロモーター(SEQ ID NO: 115)および遺伝子(SEQ ID NO: 104)
構築物13:プロモーター(SEQ ID NO: 115)および遺伝子(SEQ ID NO: 7)
構築物14:プロモーター(SEQ ID NO: 115)および遺伝子(SEQ ID NO: 41)
構築物15:プロモーター(SEQ ID NO: 115)および遺伝子(SEQ ID NO: 5)
構築物16:プロモーター(SEQ ID NO: 117)および遺伝子(SEQ ID NO: 17)
構築物17:プロモーター(SEQ ID NO: 117)および遺伝子(SEQ ID NO: 104)
構築物18:プロモーター(SEQ ID NO: 117)および遺伝子(SEQ ID NO: 7)
構築物19:プロモーター(SEQ ID NO: 117)および遺伝子(SEQ ID NO: 41)
構築物20:プロモーター(SEQ ID NO: 117)および遺伝子(SEQ ID NO: 5)。
【0103】
構築物1〜20の影響についての有効性試験は、温室条件および野外条件下で行われる。トランスジェニック植物および一致した野生型対照を、取入れ段階まで成長させて摘心する。吸枝成長は、吸枝の総数、吸枝成長の速度、および吸枝除去後の新たな吸枝の出現を含む測定基準で定量化される。これらの測定は、手動でまたはデジタル画像処理技術で行われる。野外有効性試験はまた、通常の農学的実践下で必要な吸枝制御の化学的適用の種類および程度も決定する。この測定基準で、腋芽の発芽および成長に及ぼす遺伝子発現構築物の効果を同じ品種の野生型植物と比較する。同時に、この技術の吸枝制御に関連する費用に及ぼす影響および最終乾葉において見られる化学残留量の任意の変化が定量化される。
【0104】
実施例8-TALEN媒介突然変異誘発
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)技術を使用して、TN90、K326およびNarrow Leaf Madoleのような市販のタバコ品種においてゲノム修飾を行った。TALENは、DNA標的配列において二本鎖切断(DSB)の誘発を通して遺伝子修飾を可能にする。その後の非相同末端結合(non-homologous end joining)(NHEJ)または相同指向修復(homology-directed repair)(HDR)媒介経路のいずれかによるDNA切断修復を活用して、所望の修飾(例えば、遺伝子破壊、遺伝子修正または遺伝子挿入)を導入することができる。
【0105】
TALENおよびドナーDNAを植物細胞に導入するために、PEG媒介プロトプラスト形質転換を使用した。無菌培養からの4〜8週齢のタバコ植物のタバコ葉を小さなフラグメントに切り取り、1.0%セルラーゼオノズカR-10(Cellulase onuzuka R10)および0.5%マセロザイム(Macerozym)を含む濾過滅菌済み酵素溶液を含有するペトリ皿に移した。ペトリ皿中の葉片を、デシケーターを使用して暗所で30分間真空浸透させた。インキュベーション後、分解した葉を45rpmで230分間振盪させることによって再懸濁させ、次に、50ml遠心分離チューブ中に収集することによって滅菌ナイロンフィルター(細孔径100μm)に通して濾過した。リンホプレップ(Lymphoprep)上の溶液を100gで10分間の遠心分離で分離した。パスツールピペットを使用してプロトプラストバンドを収集し、そして、精製したプロトプラストを、NaCl、CaCl2、KCl、MESおよびグルコースを含有する等量のW5n溶液で洗浄し、2000rpmで5分間遠心分離した。プロトプラストペレットをW5n溶液中に2×105/mlで再懸濁し、氷上に30分間静置した。その後、上清を除去し、そして、プロトプラストペレットを、マンニトール、MgCl2およびMESを含有する濾過滅菌済みMMM溶液中に再懸濁した。
【0106】
タバコプロトプラストのPEGトランスフェクションは、Zhangら(2012)によって記載されている方法に従っていくらかの変更を加えて実施した。プロトプラスト懸濁液のアリコート500μlを10ml培養チューブに移し、そして、プロトプラスト懸濁液に25μl(10μg)のプラスミドDNAをゆっくり加えた。プロトプラスト-DNA溶液中に、PEG溶液525μlを加え、チューブを叩くことによって慎重に混合した。チューブを20分間インキュベートし、次に、W5n溶液2.5mlを加えて反応を停止した。溶液を100gで5分間遠心分離し、プロトプラスト培養培地で洗浄した。PEGで処理したプロトプラストを、0.1mg/l NAAおよび0.5mg/l BAPを含有する培養培地1mlに再懸濁し、低融点寒天1mlと混合してプロトプラストビーズを作製した。プロトプラストビーズを液体培地中で培養し、プロトプラストビーズから成長したカルスを固体のシュート形成培地上に移した。シュートが十分に発達したら、シュートを根形成用のマゼンタボックスに移した。根系が十分に発達しかつシュート成長が再び開始したら、植物を土壌に移植した。
【0107】
吸枝成長を抑制または低下させるために使用することができるTALENアプローチは、以下を含む:(1)タバコ品種への標的化ゲノム組込みのため、相同誘発組換え(homology-derived recombination)(HDR)を伴う遺伝子特異的TALENおよびドナーDNAを設計する;(2)タバコゲノムへの吸枝特異的プロモーターおよび標的遺伝子挿入のため;ならびに(3)標的遺伝子破壊のため、例えば非相同末端結合(NHEJ)を伴う遺伝子特異的TALENを使用して、TALENを標的遺伝子破壊へ向ける。
【0108】
(1)標的化ゲノム組込み:
(A)腋芽において高度に特異的な発現を伴う遺伝子のプロモーター領域へのコード配列の標的化ゲノム組込み:
従来の形質転換法を使用したランダム遺伝子挿入の代わりに、腋芽において高度に特異的な発現を伴う遺伝子のプロモーター領域へのコード配列の標的化ゲノム組込みを使用して、内因性プロモーター活性によるコード配列の発現を制御することができる。標的化ゲノム組込みアプローチの一例は、プロモーター(SEQ ID NO: 118)とコード配列(SEQ ID NO: 1)の組み合わせである。そのような構築物を使用して、一つのコード配列(または一つより多いコード配列)を、プロモーター配列のゲノム領域へ相同組換えし、プロモーターによって制御する。
TALENドナー配列を、SEQ ID NO: 119(プロモーターおよび標的配列には下線を引き、そして、標的遺伝子配列は太字である)に示し、TALEN標的配列をSEQ ID NO: 120(標的配列には下線を引いている)に示す。
【0109】
(B)腋芽において高度に特異的な発現を伴う遺伝子のプロモーター領域へのプロモーターおよびコード配列の標的化ゲノム組込み:
2倍量のプロモーター制御を効果的に提供するために、吸枝特異的プロモーターおよびコード配列を、腋芽において高度に発現される遺伝子のプロモーター領域に挿入することができる。このアプローチでは、2個のプロモーターが一緒に働いて、コード配列(一つまたは複数)を制御する。例えば、プロモーター(SEQ ID NO: 118)の一端に、TALEN技術を使用してプロモーター(SEQ ID NO: 113)およびコード配列(SEQ ID NO: 13)を含む構築物を挿入し、それによって両方のプロモーター(SEQ ID NO: 118および113)によるコード配列の発現を指令する。
TALENドナー配列を、SEQ ID NO: 121(内因性プロモーターには下線を引き、外因性プロモーターはイタリック体であり、標的遺伝子は太字である)に示す。
【0110】
(C)吸枝特異的プロモーターおよびコード配列の挿入:
標的化遺伝子組込みの別のオプションは、選択されたタバコプロモーターおよびコード配列をTALENによってタバコゲノムの効果的な位置に挿入することである。
【0111】
(2)標的遺伝子破壊
RNAi構築物を使用せずに候補遺伝子の機能を破壊するために、遺伝子特異的TALENを設計してこれをタバコ細胞へ導入し、その結果欠失または挿入を生じさせ、内因遺伝子(一つまたは複数)をノックアウトさせた。例えば、コード配列(SEQ ID NO: 104)中の潜在的なTALEN標的部位を同定し、遺伝子のコード配列内の相同組換え部位を選択した。
【0112】
TALEN標的配列をSEQ ID NO: 122(標的配列には下線を引いている)に示す。
【0113】
実施例9-追加のトランスジェニック戦略
吸枝伸長を調節するための以下の戦略を本明細書に記載する。
【0114】
適用される第一の戦略は、腋芽伸長の遺伝子発現を調節することであった。
アラビドプシス、イネ、およびオオムギにおける突然変異体研究は、分枝を調節する遺伝経路が複雑であることを示唆している。分枝を調節する2つの一般的な遺伝子クラスがある。1つの遺伝子クラスは、芽の伸長を制限し、増加した分枝を伴う突然変異体によって定義される。例えば、アラビドプシスBRANCHED1遺伝子(例えば、SEQ ID NO: 81およびSEQ ID NO: 1、13、35、37、39に示される可能性のあるタバコ相同体)およびアラビドプシス More Axillary Branching(MAX)遺伝子を参照のこと。他の遺伝子クラスは、腋生分裂組織の発生を促進し、減少した分枝を伴う突然変異体によって定義される。例えば、アラビドプシスLateral Suppressor(LAS)遺伝子および可能性のあるタバコの相同体(例えば、SEQ ID NO: 71または73)、ならびにアラビドプシスRegulator of Axillary Meristems(RAX)および可能性のあるタバコ相同体(例えば、SEQ ID NO: 75および77)を参照のこと。
【0115】
適用される第二の戦略は、タバコサイトカイニンの合成および分布を調節することであった。
植物ホルモンとして、サイトカイニンは、シュート成長、葉の老化の遅延、根成長の阻害、種子発芽、およびストレス応答において多くの調節的役割を担っている。サイトカイニンが腋芽伸長を促進することは周知である。サイトカイニンが腋芽に直接適用されるかまたは木部流を介して供給されると、側枝が増加する。サイトカイニンオキシダーゼ/デヒドロゲナーゼ(CKX)は、サイトカイニンを分解する酵素である。個々のCKX遺伝子の過剰発現は、サイトカイニン欠損植物を確立し、かつ、サイトカイニンがシュート分裂組織活性の正の調節因子であることを明らかにした。一方で、イネにおけるCKXの低下した発現は、シュート分裂組織中のサイトカイニン蓄積を引き起こし、これは花芽のような芽の数を増加させ、最終的に増強された穀物生産量をもたらす。これらの結果に基づいて、腋芽におけるCKX発現は、茎頂分裂組織が摘心された後のタバコにおいて腋芽伸長を阻害または遅延させることができる。
【0116】
茎頂の頂部除去は、それらの睡眠状態から腋芽を解放し、これらは伸び始める。無傷の茎頂に由来するオーキシンは腋芽伸長を抑制するが、一方、茎頂の頂部除去によって誘導されるサイトカイニンは腋芽伸長を刺激する。腋芽特異的プロモーターの制御下での関連酵素の過剰発現による腋芽領域におけるサイトカイニンの枯渇を使用して、腋生分裂組織の伸長を阻害することができる。この戦略に関与する候補遺伝子は、アラビドプシスサイトカイニンオキシダーゼ(CKX;SEQ ID NO: 55;SEQ ID NO: 56をコードする);タバコCKX(SEQ ID NO: 57、59、または61);およびタバコアデノシンホスファート-イソペンテニルトランスフェラーゼ(IPT)(SEQ ID NO: 61)である。
【0117】
適用される第三の戦略は、腋生頂端分裂組織の発生を破壊することによって腋芽伸長を制御することであった。
トランスジェニック植物において2種類の導入遺伝子の発現:構成的発現および組織特異的発現がある。構成的遺伝子発現は、ある組織において非常に重要な遺伝子が他の組織において異常発現される場合に予期しない問題をもたらす可能性がある。遺伝子の構成的発現とは異なり、組織特異的発現は、標的組織における遺伝子調節の結果である。組織特異的発現については、プロモーターは、所与の遺伝子の発現を組織依存的にかつ植物の発生段階に応じて制御することができる。本発明者らの場合では、プロモーターは、腋芽において特異的に発現された遺伝子から得られ、該プロモーターは、芽において遺伝子発現を調節すると定義された。茎頂分裂組織の摘心後の吸枝成長を制御するために、プロモーター(または改変プロモーター)を使用して、タバコ植物において異種遺伝子の発現を指令することができる。腋芽特異的発現の結果として、プロモーターに機能的に連結された異種遺伝子(または導入遺伝子)が、導入遺伝子の発現が望まれる腋芽において発現され、植物の残部が導入遺伝子発現によって影響を受けないようになる。
【0118】
植物のシュート分裂組織は、ホメオボックスWUSCHEL(WUS)遺伝子およびCLAVATA(CLV)遺伝子シグナル伝達経路が関与する古典的なフィードバック回路を介して連続的に補給される幹細胞からなる。WUSHEL配列の標的化または腋芽におけるCLAVATA遺伝子の過剰発現は、その経路を変化させ、シュート分裂組織発生の欠陥を引き起こし、そして、シュート伸長を阻害する。候補遺伝子は、WUS(SEQ ID NO: 63および65)およびCLV3(SEQ ID NO: 67)である。
【0119】
キンギョソウ(Antirrhinum)におけるシュート分裂組織の無限成長に必要なCENTRORADIALIS(CEN)遺伝子をクローニングおよび特性決定した。該遺伝子がタバコにおいて発現されると、タバコ植物は、延長した栄養期を示し、開花への切り替えを遅らせた。タバコでは、CET遺伝子(「タバコ由来のCEN様遺伝子(CEN-like genes from tobacco」に由来する)は、主シュート分裂組織において発現されず;それらの発現は栄養期の腋生分裂組織に制限される。栄養期の腋生分裂組織の腋芽成長への発達においてCET遺伝子がある役割を担っていることは明らかであるが、しかしながら、それらの実際の機能は依然として不明である。それらの発現がRNAi_CET構築物を使用してサイレンシングされると、トランスジェニック植物は摘心後に芽成長の遅延を示す。
【0120】
実施例10-実験データ
植物組織を、染色液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0、1mM EDTA、0.5mg/mL 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-D GlcUA[X-Gluc;Biosynth AG]、0.4% Triton X-100、および各5mMのフェリシアン化カリウム/フェロシアン化カリウム)中への浸漬によってGUSについて染色し、37℃で6〜24時間インキュベートした。
【0121】
SEQ ID NO: 117に示されるプロモーターは、摘心前および摘心後15日間の腋芽における特異的発現のための良好な候補であることが示された。摘心前の茎頂分裂組織領域においては、発現はなかった。SEQ ID NO: 117に示されるプロモーター(約2.5kb)は、SEQ ID NO: 27の5'末端上流の配列であり、これは、タンパク質合成の開始における数工程に必要な、真核生物翻訳開始因子3(eIF-3)複合体の一成分である真核生物翻訳開始因子3サブユニットA(eIF-3A)をコードする。
【0122】
SEQ ID NO: 117に示されるプロモーターの制御下、例えばRNAiを使用して、幾つかの遺伝子を同時形質転換によってスタッキングし、過剰発現および/またはノックダウンした。以下は、同時形質転換によって一緒にスタッキングされた構築物および遺伝子である:
a)CET2、SEQ ID NO: 11およびSEQ ID NO: 49を標的とする、プロモーターSEQ ID NO: 117-RNAi_CET2-26-6;
b)プロモーターSEQ ID NO: 117-AtBRC1(SEQ ID NO: 81)で同時形質転換された、プロモーターSEQ ID NO: 117-RNAi_CET2-26-6;
c)プロモーターSEQ ID NO: 117-SEQ ID NO: 1で同時形質転換された、プロモーターSEQ ID NO: 117-RNAi_CET2-26-6;および
d)プロモーターSEQ ID NO: 117-AtBRC1(SEQ ID NO: 81)で同時形質転換された、プロモーターSEQ ID NO: 117-SEQ ID NO: 1。
【0123】
方法および組成物は、多数の異なる局面と併せて本明細書に記載されているが、種々の局面の前述の記載は、例示を目的としており、前記の方法および組成物の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。他の局面、利点、および変更は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0124】
添付書類A
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3A-1】
図3A-2】
図3A-3】
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]