【実施例】
【0045】
実施例1:ピーク分離能プロセス
二重特異性抗体は、以下のように、スター置換を利用してプロテインAクロマトグラフィーによって、混入しているホモ二量体から分離された。Fc*Fc*ホモ二量体は、Fc領域から除去された両方のプロテインA結合部位を有するため、この産物に関連する不純物は、カラムを通って流れて除去されることが予測され、一方、二重特異性およびFcFcホモ二量体は、カラムに維持されることが予測された。一連の洗浄は、CHO DNAまたは宿主細胞タンパク質(host cell protein)(HCP)などのプロセスに関連する混入物を除去するために実施された。その後、二重特異性は、pH勾配またはpH工程によって選択的に溶出され、一方、FcFc混入物は、二重特異性に比べてより強い結合のために保持された。
【0046】
二重特異性から二重特異性までの分離性能における広い変動性が、最初の実験が組換えブドウ球菌プロテインA(SpA)クロマトグラフィー樹脂を用いて実施された場合に観察された。幾つかの場合において、結合性FcFcホモ二量体と二重特異性産物間のベースライン分離能が得られたのに対して、二重特異性抗体(「bsAb」)のサブグループは非常乏しい分離能を示した。これらの分子に対して、向上したベース(base)安定性を示すように操作された親和性樹脂上で分離を実施した場合に、良好な分離能が達成された。この1つの例は、bsAb Eであり、採取され清澄化された細胞培養液が、SpA樹脂(MABSELECT XTRA(商標)、
図1A)または操作されたプロテインAベース樹脂(MABSELECT SURE(商標)、
図1B)のいずれかに5g/Lでロードされた。一連の(例えば、pH6〜8)緩衝液洗浄工程の後、40mM酢酸500mM NaCl中pH5〜3の40カラム体積(「CV」)勾配が、結合種を溶出するために適用された。MABSELECT XTRA(商標)(
図1A)において、25〜35CVの間の溶出ピークは、分離能がなく、二重特異性およびFcFcホモ二量体の両方を含んだ。さらに、Fc*Fc*混入物においてFc領域に結合するプロテインAを欠失しているにもかかわらず、主要な浅い溶出ピーク(0〜25CV)は、Fc*Fc*ホモ二量体タンパク質から成っていた。しかし、MABSELECT SURE(商標)にアプライされた同じbsAb Eロードは、それぞれ二重特異性およびFcFcホモ二量体を含む2つの良好に分離されたピークを生じ(
図1B)、全てのFc*Fc*ホモ二量体はロードの最中にカラムを通って流れた。これは、IgGおよび天然型プロテインA(「SpA」)と操作されたSuReリガンドとの間の異なる相互作用によって生じる可能性がある。
【0047】
古典的結合部位に加えて、幾つかの抗体は、重鎖の可変領域(「VH」)における代替のSpA結合部位を含むことが示されている。特に、ヒトVH3遺伝子ファミリーに由来する重鎖を含む幾つかのIgGは、VH3サブファミリーに属するヒトVH生殖系列遺伝子のほぼ半分で、この性質を示すことが示されている。(Sasso et al., Journal of Immunology 1989; 142:2778-83;Sasso et al., Journal of Immunology 1991; 147:1877-83;Schroeder et al., International immunology 1990; 2:41-50;およびWalter, M.A., and D.W. Cox, American Journal of Human Genetics 1988; 42:446-51を参照のこと。)したがって、SpAベースの樹脂において、bsAb Eなどの二重特異性抗体が、2つの結合種の乏しい分離能、およびVH結合性のための「非結合性」Fc*Fc*ホモ二量体樹脂の保持を示す可能性があるように思われる。したがって、VH結合性は、二重特異性およびFcFcホモ二量体間の結合力の相違、ならびにFc*Fc*の低い親和性結合を低下させると考えられる。
【0048】
この仮定は、MABSELECT SURE(商標)により観察された改良した精製によってサポートされる。SpAと抗体間の結合試験は、SpAの5つのドメイン(E、D、A、B、およびC)の全てがFc領域を介してIgGに結合し、ドメインDおよびドメインEのみが顕著なFab結合を示すことが示されている。(例えば、Starovasnik et al., Protein Science 1999; 8:1423-31を参照のこと。)操作されたMABSELECT SURE(商標)親和性リガンドは、天然型の非Fab結合性SpA Bドメインのタンパク質操作バージョンである、Zドメインの四量体である。Zドメインは、抗体可変領域に対して無視できるほど僅かな結合性を有することが知られている(Starovasnik、上記)。したがって、MABSELECT SURE(商標)リガンドを有するこの樹脂が使用される場合、二重特異性およびFcFcホモ二量体間の結合力における増加した相違は、これらのピークの向上した分離能を可能にし;Fc*Fc*ホモ二量体は保持されない。
【0049】
複数のプロテインAベースのクロマトグラフィー樹脂が、二重特異性の臨床および商業的産生物に対して樹脂を同定するためにスクリーニングされた。2つのbsAbが、評価のために選択され、1つはVH領域を介してSpAに結合すること(bsAb A)、1つはこの能力を欠失していること(bsAb B)が以前に観察された。ロード材料は、予め、Fc*Fc*不純物を除去するために、標準のポジティブモード親和性クロマトグラフィーに供された。初めの二重特異性の純度(Fc*Fc/[Fc*Fc+Fc*Fc*+FcFc])は、bsAb AおよびbsAb Bに対して、それぞれ84%および76%であった。全ての樹脂は、10g総タンパク質/L樹脂までロードされた。一連の洗浄の後、抗体は、移動相修飾剤としての500mM NaClまたは500mM CaCl
2のいずれかでpH6〜3の30CVの勾配を用いて溶出された。
【0050】
6つの選択された商業的に入手可能なプロテインA樹脂は、様々なベースマトリックス、ビーズサイズ、およびリガンド型を示す。SpAを用いた樹脂4つ、1つはZドメインの四量体(MABSELECT SURE(商標))、1つはYドメインと呼ばれる非Fab結合性のCドメインのベース安定化バージョンの多量体(TOYOPEARL AF-rプロテインA-650F)であった。二重特異性産物と結合性FcFcホモ二量体との間で得られたこれらのデータおよびピーク分離能(Rs=1.18([t
R2−t
R1]/[W1/2
2+W1/2
1];Rsはピーク分離能であり、W1/2は半分の高さのピーク幅であり、およびt
Rは保持時間である)は、表1に詳細に記載される。
【0051】
(表1)V
H-プロテインA結合性(bsAb A)および非V
H結合性(bsAb B)の2つの抗体を用いプロテインA媒体の範囲を使用して得られた、結合性不純物からの二重特異性の分離効率の比較。
a 半分の高さの幅を用いて計算された分離能。半分の高さのピーク幅がピーク収束のために計算され得なかった場合には、分離能は「分離能無し」と記載された。
【0052】
溶出緩衝液中で移動相修飾剤としてNaClを用いた場合に、増加した分離能が、ビーズサイズに反比例して示され、45μmを超える平均粒子を有するSpA樹脂に対して観察された分離能がなかった。興味深いことに、MABSELECT SURE(商標)(Rs=0.92)は、bsAb Aを有するTOYOPEARL AF-rプロテインA-650F(Rs=0.87)に匹敵する性能を示した。これは、(i)TOYOPEARL AF-rプロテインA-650Fに対してより小さい平均ビーズサイズ(45 cf. 85μm)、および(ii)Yドメイン(Cドメインに由来する)に基づき、したがってVH結合性を欠失していることが予測される(Starovasnik、上記)親和性リガンドの類似性のために、予測されなかった。bsAb Bに対して、POROS MABCAPTURE A(商標)は、より小さい粒子サイズを有
しないにもかかわらず、TOYOPEARL AF-rプロテインA-650FおよびABSOLUTE HICAP(商標)と比較して、優れた分離能を示した(それぞれ2.37および2.41と比較して、2.50)。これは、物質移動を補助する大きい通行できる孔、平均孔直径1100オングストロームにより促進される、このベースマトリックス中の散水の流れ(perfusive flow)の要素のためであると推測される。POROS MABCAPTURE A(商標)はまた、行った任意の他のSpA樹脂よりもbsAb Aにおける良好な分離能を示し、TOYOPEARL AF-rプロテインA-650FおよびMABSELECT SURE(商標)の非VH結合性樹脂に匹敵する分離能を有した(それぞれ0.87および0.92と比較して、0.70)。
【0053】
NaClが、移動相修飾剤としてCaCl
2に置き換えられた場合、POROS MABCAPTURE A(商標)は、MABSELECT SURE(商標)よりも格段に優れて、分離力を大きく向上させることが観察された(それぞれRs 1.83、c.f. 1.08)。このデータ全体に基づき、POROS MABCAPTURE A(商標)およびMABSELECT SURE(商標)は、均一濃度溶出のためのクロマトグラフィー樹脂の可能な分離としてさらに評価された。
【0054】
樹脂の比較が、比較的速い線速度である400cm/hで行われたため、(i)より大きいビーズサイズおよび(ii)散水の流れの欠如という理由で、MABSELECT SURE樹脂は、POROS MABCAPTURE Aと比べて有効性を減少し得た。したがって、樹脂は、滞留時間の産生関連範囲において比較された。BsAb Aは、モデル分子として、そのVH領域を介したSpAへのその観察された結合性(それにより、非VH結合性MABSELECT SUREに対する二重特異性とFcFc不純物との間のより大きい結合力の相違が与えられる)のために選択された。MABSELECT SUREは、この結合力の利点無しにMABCAPTURE Aのより小さいビーズサイズのために劣っていると予測されたので、VH結合性抗体が、この評価のために選択されたことに注意すること。樹脂評価研究のために使用された、同じ親和性の捕捉されたbsAb Aロード材料が、10g総タンパク質/L樹脂の負荷で使用された。全てのクロマトグラフィー工程は、2〜8分(600〜150cm/h)まで様々であった溶出を除き、3分の滞留時間で実施された。FcFcホモ二量体のピークからの二重特異性のピークの分離能の計算は、樹脂の分離能が滞留時間と共に増加したが、効果は、POROS MABCAPTURE AよりもMABSELECT SUREに対してより明白であった(それぞれRs増加 0.7および0.3、
図2)。加えて、POROS MABCAPTURE A樹脂は、この樹脂に対するVH結合性の不都合にもかかわらず、全ての試験された条件でMABSELECT SUREに対して優れた分離能を示し、これは、2つの結合種の分離力に関する樹脂の全体的な優位性を確認するものである。
【0055】
溶出緩衝液中に移動相修飾剤を含めることは、FcFcホモ二量体からの二重特異性産物の分離能を変更し、かつ向上させる可能性があった(表1を参照のこと)。したがって、ホフマイスターシリーズ(Hofmeister series)の様々な位置の塩の使用は、抗体種とプロテインAリガンドとの間の疎水性相互作用の軽減により、樹脂選択性を向上すると予測された。VH結合性bsAb Aは、MABCAPTURE A樹脂に10g/Lでロードされた。一連の洗浄の後、抗体は、以下の溶出移動相修飾剤:ホフマイスターシリーズにおいて、コスモトロピックからカオトロピックへの順序に並べられた、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、および塩化カルシウムで、pH6〜3の30CVの勾配を用いて溶出された。500mMの塩レベルは、クエン酸ナトリウム以外の全ての塩のために使用され、クエン酸ナトリウムでは、300mMを超える濃度をスパイクされた場合にロード材料中のタンパク質が沈殿するために、250mMが使用された。二重特異性産物と結合性のFcFcホモ二量体との間の優れた分離能は、より多くのカオトロピック塩で得られた(
図3)。二重特異性のピークは、
図3で詳細に記載されるような、第1のピークリフトオフからピークバレー屈曲までを回収された。二重特異性収率%、二重特異性の純度%、ピーク分離能(Rs)、および可溶性凝集物%が測定された(表2)。二重特異性pH頂点でのpHはまた、クロマトグラムから計算された。より多くのカオトロピック塩(塩化カルシウムおよび塩化マグネシウム)の使用は、増加した収率および二重特異性の純度を示した。タンパク質はまた、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムでより高いpHにおいて溶出された。使用された最もカオトロピックな塩も最もコスモトロピックな塩も、二重特異性の溶出中に著しい凝集を誘導しなかった。したがって、溶出緩衝液中の移動相修飾剤としての塩化カルシウムなどのカオトロピック塩の使用は、ピーク分離能およびその後のbsAbの精製を増強することが示された。
【0056】
(表2)様々な溶出移動相修飾剤を用いたPOROS MABCAPTURE A(商標)からのbsAb Aの勾配溶出中に回収された二重特異性画分において測定された、収率、可溶性凝集物、ピーク頂点pH、ピーク分離能、および二重特異性の純度。
【0057】
実施例2:商業的プロセスの開発
二重特異性抗体の精製のためのスター置換ベースのプラットフォームの実現可能性を判定するために、bsAb Cの精製のための拡張性のあるプロセスが開発された。このタンパク質は、SpAに対する著しいVHの結合性を示すことが見出されたために、プラットフォームのための最悪の場合の試験として選択された。重要な開発目標は、(i) 緩衝液の消費と処理時間を減少させることに加え、プラントフィットと技術移転を簡単なものにするために、均一濃度(工程)溶出を達成すること、(ii) ロード条件を殆どまたは全く有さない親和性分離工程と連携するポリッシング工程を同定することであった。
【0058】
初期因子スクリーニングおよび設計空間評価は、96ウェルプレートフォーマット(HTPD)におけるハイスループットスクリーニングを用いて行われた。溶出pH、カラムローディング(g/L総タンパク質)、および移動相修飾剤濃度は、重要なプロセスインプットとして同定された(
図2を参照のこと)。溶出滞留時間もまた考慮された。この研究のためのロード材料は、予め、64%の二重特異性の純度を生じるFc*Fc*不純物を除去するために、標準的なポジティブモード親和性クロマトグラフィーに供された。2つの18ラン中心複合計画実験計画法(central-composite design-of-experiments studies)(CCD DoE)が、均一濃度溶出モードにおいて、MABSELECT SUREおよびPOROS MABCAPTURE Aの両方を評価するために行われた。POROS MABCAPTURE A樹脂に対して試験された因子は、カラムローディング(10〜25gの範囲の総タンパク質/L)、溶出pH(4.5〜5.5)、および溶出緩衝液中の塩化カルシウムの濃度(250〜500mM)であった。滞留時間は、3分(400cm/h)で一定に保たれた。その後、MABSELECT SUREは、カラムローディング(10〜25gの範囲の総タンパク質/L)、溶出pH(3.8〜5.0)、および滞留時間(5〜11分)に関して評価された。溶出緩衝液中の塩化カルシウム濃度は、500mMで一定に保たれた。
【0059】
MABCAPTURE Aのために、良好なモデルは、標準的な最小二乗フィットアルゴリズムを用いて、二重特異性の収率(R
2=0.97)および二重特異性の純度(R
2=0.92)の両方のために得られた。全ての条件で、溶出緩衝液中で250〜500mMまで塩化カルシウムレベルを増加すると、二重特異性の純度を減少することなく、10〜20%まで二重特異性の収率を増加することが観察された(データは示していない)。このモデルを用いて、スイートスポット解析が500mM CaCl
2で実施された。解析は、5.0〜5.1の溶出pHが、17〜25g/Lの樹脂チャレンジを受けるために>95%の純度目標および>80%の収率を可能にすることを示した。類似のクロマトグラフィー条件は、2kL産生スケールまで使用され、99%を超える二重特異性の純度が、さらなる最適化の後に得られた。
【0060】
MABSELECT SUREデータを評価し、良好なモデルフィットが、二重特異性の収率(R
2=0.99)および二重特異性の純度(R
2=1.00)のために達成された。滞留時間は、いずれの反応に対しても重要な因子であることを示されなかった。MABCAPTURE Aに関しては、二重特異性の収率<80%および二重特異性の純度<95%が得られる領域を除外するために、8分の滞留時間で等高線プロットに制限が課された。望ましい操作ウィンドウ(operating window)またはスイートスポットは、MABCAPTURE Aで観察されるものより非常に小さい。したがって、MABSELECT SUREの使用は、小さいpHまたはローディング変化が許容されない二重特異性の純度または収率を生じる可能性があるため、産生スケールで不十分なロバスト性を示すプロセスを生じる可能性がある。
【0061】
実施例3:親和性後のポリッシング
親和性分離工程の後、二重特異性抗体は、標準的なモノクローナル抗体と高度に類似する様式で、プロセスおよび産物に関連する不純物を除去することを意図されるポリッシング工程に供され得る。しかし、親和性分離工程の溶出緩衝液中の高濃度の塩化カルシウムの使用は、下流の単位操作を潜在的に困難にする可能性があった。限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)は、陽イオン交換または陰イオン交換クロマトグラフィーなどの、伝統的なmAbポリッシング工程を促進するために、プールの伝導率を減少させるために使用され得た。しかし、塩耐性ポジティブモードクロマトグラフィー工程の単離は、この追加の単位操作の導入を避け得た。マルチモーダルまたはミックスモードクロマトグラフィーは、単一樹脂との疎水性相互作用、水素結合、およびイオン性相互作用などの様々な型の相互作用を組み合わせる。これは塩耐性吸着を促進することができることが示されている。
【0062】
様々なマルチモーダル樹脂は、ポリッシング工程として考慮された:(i) CAPTO ADHEREおよび(ii) CAPTO ADHERE IMPRES(陰イオン交換、疎水性、および水素結合相互作用基の両方を含むN-ベンジル-メチルエタノールアミンリガンド)、(iii) セラミックヒドロキシアパタイト、ならびに(iv) CAPTO MMC、疎水性相互作用および水素結合ポテンシャルを有するマルチモーダル陽イオン交換樹脂。最終的に、CAPTO MMCが、プロセスおよび産物に関連する不純物を同時に除去する一方で、プロセスストリームの伝導性を低下させるために開発された。プロセスの開発の後、コンセプト実証が、bsAb CおよびbsAb Dを用いたポジティブモードCAPTO MMCクロマトグラフィーを利用する製造規模で確認された(表3を参照のこと)。両方の例において、合理的(19〜25g/L)動的結合能力が、収率≧85%、可溶性凝集物の3倍までの低下、および中程度(0.2〜0.7log除去)のCHO宿主細胞タンパク質クリアランスで得られた。
【0063】
(表3)250mM CaCl
2を含む親和性分離プールをロードされたCAPTOMMC媒体を用いたポジティブモードマルチモーダルクロマトグラフィーによって得られた収率および混入物除去
【0064】
実施例4:精製ストラテジー
上記に行われ記載された発見に基づき、2つの下流の二重特異性プロセスプラットフォームが想定された(
図4)。二重特異性抗体が、VH3遺伝子断片ファミリーから得られ、VH領域を通じてSpAに結合できる場合、親和性捕捉クロマトグラフィーと呼ばれる追加の親和性クロマトグラフィー単位操作が使用され得る(
図4A)。採取による細胞および破片の除去の後、Zドメインを介したVH結合性の欠如がFc*Fc*親抗体不純物の除去を確実にするため、親和性捕捉クロマトグラフィーがMABSELECT SURE樹脂を用いて実施される。この工程は、商業的なモノクローナル抗体に対して標準的なプロテインA結合性、洗浄、および溶出条件を用いて実施され、この工程はまた、タンパク質濃度を増加させ、プロセスおよび産物に関連する不純物を除去するように作用する。タンパク質が低pHで溶出されるため、このことは、産物プールでウイルス不活性化のために低pHを保つためにも都合がよい。この後、FcFc不純物の除去は、「親和性分離クロマトグラフィー」と呼ばれる第2のポジティブモードプロテインA工程によって達成される。溶出緩衝液中のカオトロピック修飾剤と組み合わされたPOROS MABCAPTURE A樹脂の使用は、>95%二重特異性の純度のプールを生じ得る。親和性分離クロマトグラフィーの後、ポジティブモード塩耐性マルチモーダルクロマトグラフィーの使用は、親和性分離工程と直接連携することを促進し、したがって、プロセスストリームからカオトロピック塩を除去するためにUF/DF操作を介在する必要性を取り除く。陰イオン交換クロマトグラフィーおよびウイルス保持性濾過などの追加のポリッシング工程と組み合わせて、凝集物、HCP、DNA、ウイルス、および他の不純物は、許容されるレベルまで除去され得る。最終的に、精製された産物は、標準的な限外濾過/ダイアフィルトレーション方法論により、最終形成緩衝液中に濃縮される。この精製の一連の流れは、二重特異性分子が親和性捕捉工程の除去によりSpAに対するVH結合性を示さない場合に、単純化され得る(
図4B)。この場合において、FcFcおよびFc*Fc*不純物の両方の除去は、親和性分離クロマトグラフィーによって実施され得る。
【0065】
実施例5:材料および方法
これらの実施例において使用される全ての二重特異性抗体および細胞培養液は、CHO細胞において発現された。クロマトグラフィー樹脂は、製造業者:MABSELECT SURE、MABSELECT XTRA、CAPTO MMC(GE Healthcare)、POROS MABCAPTURE A(Life Technologies)、TOYOPEARL AF-rプロテインA-650F(TOSOH Biosciences)、ABSOLUTE HIGH CAP(Novasep Inc.)、PROSEP ULTRA PLUS(EMD Millipore)から入手された。使用される全ての化学物質は、J.T. Bakerによって供給された。
【0066】
実験室規模のクロマトグラフィー分離は、GE Healthcare からのAKTA AVANTクロマトグラフィーシステムおよび1.0cm内径(I.D.)OMNIFIT BENCHMARKクロマトグラフィーカラム(Omnifit Ltd)を用いて実施された。パイロット規模のクロマトグラフィーは、GE HealthcareからのAKTA PILOTクロマトグラフィーシステムおよび7.0cm I.D. INdEX クロマトグラフィーカラムを使用した。生産規模のクロマトグラフィーは、AKTAPROCESSクロマトグラフィースキッドおよび40cm I.D. CHROMOFLOWカラム(GE Healthcare)で行われた。UPLC解析は、Waters CorporationからのACQUITY UPLCシステムを利用した。細胞培養は、2L BIOSTAT B-DCUベンチトップバイオリアクター(Sartorius)、50、250、もしくは2000L HYCLONE単回使用バイオリアクター(Thermo Scientific)、または160Lステンレススチールバイオリアクター(ABEC Inc.)のいずれかを用いて実施された。
【0067】
清澄化された細胞培養液が直接使用されなかった場合に、親和性分離開発のためのロード材料が、20±1cmベッド高MABSELECT SUREカラムを用いて親和性捕捉クロマトグラフィーによって産生された。20mMリン酸ナトリウムpH7.2の2カラム体積(CV)での平衡化の後、カラムは、清澄化された細胞培養液を10〜40g 結合性抗体/Lまでロードされた。結合性抗体の濃度は、二重特異性およびFcFcの力価の合計により決定された。カラムは洗浄され、タンパク質は、2CVのカラムストリップの前に専用の緩衝液システムで溶出された。全体の溶出ピークが回収され、2Mトリス塩を有するpH7.5±0.5で中和された。
【0068】
全ての親和性分離クロマトグラフィーは、20±1cmベッド高カラムを用いて実施された。検討されたプロテインAカラムは、ロード適用の前に、2CVの20mMリン酸ナトリウムpH7.2で平衡化された。ロードした後、カラムは、専用の洗浄緩衝液システムで洗浄され、特定されるように、勾配溶出または均一濃度溶出のいずれかで溶出された。均一濃度ランのために、4CVの溶出体積が使用され、溶出工程の開始の後、0.5〜4CVからのプールを回収した。勾配溶出緩衝液および均一濃度溶出緩衝液の両方は、緩衝種として40mM酢酸を含んだ。以下の溶出カラムは、2CVの緩衝液で取り去られた。特に記載しない限り、全ての工程は、400cm/hの線速度で実施された。UNICORN 6.1ソフトウエア(GE Healthcare)は、半分の高さでの幅を用いるガウスピークを推定するピーク分離能(Rs)の計算を含む、クロマトグラフィー解析のために使用された。自動化された分割が行われた場合、ピークリフトオフは、ベースラインUV280において>50mAuの増加によって定義された。実験、解析、およびモデリングの統計学的設計は、JMP 11.1.1(SAS Institute Inc.)を用いて実施された。
【0069】
CAPTO MMCクロマトグラフィーは、4分の滞留時間(線速度300cm/h)で実施された全ての工程で、25.1 Lカラム(20cmベッド高:40cm I.D.)を用いて行われた。親和性分離プールは、水で50%に希釈され、pH5.0±0.1に調整された。カラムは、40mM酢酸ナトリウム、250mM塩化カルシウム、pH5.0±0.1中で2CVの平衡化の前に2CVの2M NaClで予め平衡化された。ロード適用の後、カラムは、40mMトリス、40mM酢酸、pH5.0±0.1の3CVで洗浄され、その後、産物は、20mMトリス、60mM酢酸、pH8.0±0.1(bsAb C)または20mMトリス、40mM酢酸、pH8.0±0.1(bsAb D)のいずれかの8CVで溶出された。プールは、UV
280nmのリフトオフから溶出工程の最後まで回収された。溶出の後、カラムは、2CVの2M NaCl、その後、2CVの1M NaOHで洗浄された。
【0070】
宿主細胞タンパク質(「HCP」)定量化は、商業的に入手可能なELISAキットCat#F550(Cygnus Technologies)を用いて実施された。連続する10mMリン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、pH7.0移動相における2つのACQUITY UPLC PrST SECカラム、200Å、1.7μm、4.6mm×150mm cat#186005225による、可溶性凝集物の定量化。二重特異性の純度は、連続して3つの予め充填されたPOROS A 20μmカラム(2.1mm×30mm、0.1mL)cat#2-1001-00、および均一濃度溶出緩衝液システムを用いて測定された。二重特異性およびFcFcの力価は、POROS A 20μmカラム(2.1mm×30mm、0.1mL)cat#2-1001-00を用いて測定され、Fc*Fc*の力価は、POROS G 20μmカラム(2.1mm×30mm、0.1mL)を流れたもののローディングによって測定された。