特許第6702967号(P6702967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6702967二重特異性抗体のための精製プラットフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702967
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】二重特異性抗体のための精製プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/22 20060101AFI20200525BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20200525BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20200525BHJP
【FI】
   C07K1/22
   !C07K16/46
   !C12P21/08
【請求項の数】18
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-525320(P2017-525320)
(86)(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公表番号】特表2017-524740(P2017-524740A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】US2015041936
(87)【国際公開番号】WO2016018740
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年7月20日
(31)【優先権主張番号】62/029,463
(32)【優先日】2014年7月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】タスティアン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】エンディコット クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アダムス ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】マッティラ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バク ハンネ
【審査官】 堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−531439(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/049003(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/121865(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/136186(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/073985(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/123520(WO,A1)
【文献】 JESUS, FERNANDEZ-RODRIGUEZ et al.,INDUCED HETERODIMERIZATION AND PURIFICATION OF TWO TARGET PROTEINS BY A SYNTHETIC COILED-COIL TAG,PROTEIN SCIENCE,米国,2012年 2月23日,VOL:21, NR:4,PAGE(S):511 - 519,URL,http://dx.doi.org/10.1002/pro.2035
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12P
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) (i) 2コピーの第1のポリペプチドを含む第1のホモ二量体、(ii) 2コピーの第2のポリペプチドを含む第2のホモ二量体、および(iii) 該第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含むヘテロ二量体とを含む、多量体タンパク質の混合物を、親和性マトリックスにロードする工程であって、該第1のポリペプチドが、プロテインAリガンドに対して親和性を有し、且つ該第2のポリペプチドと比べて、該親和性マトリックスに対してより高い親和性を有し、該親和性マトリックスが、平均直径45μmを有し、かつ平均直径1100Åを有する孔を含む多数の粒子を含む基材に付着された、ロテインAリガンドを含む、工程;ならびに
(b) 該ヘテロ二量体を、該親和性マトリックスからCaCl2またはMgCl2を含みかつ第1のpH範囲を有する緩衝液中に溶出および回収する工程
を含み、
該第1のホモ二量体が、該親和性マトリックスから第2のpH範囲の緩衝液中に溶出し、および該第2のホモ二量体が、該親和性マトリックスから第3のpH範囲の緩衝液中に溶出し、該第3のpH範囲が、第1のpH範囲よりも高いpHを含み、該第1のpH範囲が、第2のpH範囲よりも高いpHを含む、タンパク質を製造する方法。
【請求項2】
(c) 酸性pHを有する緩衝液中で工程(b)回収されたヘテロ二量体をマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂にアプライする工程;
(d) 該ヘテロ二量体を、該マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂から、よりアルカリ性のpHを有する緩衝液中に溶出する工程;ならびに
(e) 該ヘテロ二量体を回収する工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記基材が、アガロース、ポリ(スチレンジビニルベンゼン)、ポリメタクリレート、セルロース、コントロールドポアガラス(controlled pore glass)、および球状シリカのいずれか1つまたは複数を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
親和性マトリックス1リットル当たり5〜50グラムのタンパク質がロードされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)のロードされる親和性マトリックスにpH勾配を適用する工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記pH勾配を適用する工程の前に、工程(a)のロードされる親和性マトリックスをpH6〜8の溶液で洗浄する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記pH勾配がpH6〜pH3で実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のpH範囲が、pH5.5からpH3.6の範囲から選択される、請求項57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記緩衝液が酢酸を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記緩衝液が40mM酢酸を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記緩衝液CaCl2含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記緩衝液が、MgCl2を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記緩衝液250〜500mM CaCl2を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記緩衝液が、250〜500mM MgCl2を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記へテロ二量体が、抗体であり、および前記第1のポリペプチドが、プロテインAリガンドに結合することができるCH3ドメインを含み、かつ前記第2のポリペプチドが、プロテインAリガンドに結合することができないCH3ドメインを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のポリペプチドがそのCH3ドメインにおいてH435RおよびY436Fの置換(EUナンバリング)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ヘテロ二量体が二重特異性抗体である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記多量体タンパク質の混合物が、細胞培養物中の複数の真核細胞によって産生され、任意で、該真核細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはその派生物を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
親和性クロマトグラフィーによってタンパク質の複合混合物から特異性多量体タンパク質を精製するための方法が提供される。具体的には、カオトロピック剤を用いる親和性クロマトグラフィー(プロテインAクロマトグラフィーを含む)によって、単量体およびホモ二量体の複合混合物からヘテロ二量体(二重特異性抗体を含む)を単離するための方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
背景
複数の二重特異性抗体の形式が提案されており、現在開発中である。1つのそのような形式は、改良された薬物動態プロファイルおよび最小の免疫原性を有する標準的な完全ヒトIgG抗体に基づく(その全体が本明細書に組み入れられる米国特許第8,586,713号(特許文献1)を参照のこと)。二重特異性のものを形成するために、単一の共通の軽鎖および2つの異なる重鎖が組み合わされる。重鎖の一方は、置換されたFc配列(以下、「Fc*」と称する)を含み、該Fc配列がプロテインAへのFc*の結合を減少または除去する。例えば、1つのそのようなFc*配列は、CH3ドメインにおけるH435R/Y436F(EUナンバリングシステムによる;IMGTエクソンナンバリングシステムによるH95R/Y96F)置換を含む。2つの重鎖および共通の軽鎖の同時発現の結果として3つの産物が産生され、そのうちの2つは、重鎖に対してホモ二量体であり、そのうちの1つは、望ましいヘテロ二量体の二重特異性産物である。Fc*配列は、高い結合力(avidity)のFcFc重鎖ホモ二量体または弱い結合性のFc*Fc*ホモ二量体と比べて、プロテインAに対して中間の結合親和性であるために、商業的に入手可能な親和性カラムにおけるFcFc*二重特異性産物の選択的な精製を可能にする。
【0003】
二重特異性ヘテロ二量体の商業的規模の精製を達成するためには、FcFcホモ二量体とFc*Fcヘテロ二量体とFc*Fc*ホモ二量体との間の良好な分離能が必要とされる。本明細書において、本出願人は、これらの3つの分子形態の分離能を最適化する、改良された分離プロセスを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8,586,713号
【発明の概要】
【0005】
概要
1つまたは複数の局面およびその態様において、本発明は、親和性捕捉および溶出プロセスを用いることによって、例えば二重特異性抗体などのヘテロ二量体タンパク質をホモ二量体とヘテロ二量体とを含むタンパク質の複合混合物から精製する方法に関する。1つの局面において、本発明は、これらの方法のいずれか1つによって産生された、精製されたヘテロ二量体タンパク質に関する。
【0006】
第1の局面において、本発明は、親和性マトリックスに多量体タンパク質の混合物をロードする工程、ならびに、その後、ヘテロ二量体タンパク質を、マトリックスから特定のpH範囲でかつカオトロピック剤を含む緩衝液中に、溶出および回収する工程を含む、タンパク質を製造する方法に関する。1つの態様において、親和性マトリックスは、最初に、親和性マトリックス1リットル当たり5〜50グラムのタンパク質をロードされる。幾つかの場合において、多量体タンパク質の混合物は、複数の真核細胞によって、例えば細胞培養物中のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などによって産生される。
【0007】
1つの態様において、多量体タンパク質の混合物は、(i) 2コピーの第1のポリペプチドを含む第1のホモ二量体と、(ii) 第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含むヘテロ二量体と、任意で(iii) 2コピーの第2のポリペプチドを含む第2のホモ二量体とを含む。ここで、第1および第2のポリペプチドは、第1のホモ二量体、ヘテロ二量体、および第2のホモ二量体が親和性マトリックスに示差的に結合することに基づいて分離され得るように、親和性マトリックスに対して異なる親和性を有する。
【0008】
親和性マトリックスへの示差的な結合は、特に、親和性マトリックスを通過した溶液のpHおよび/またはイオン強度を変更することによって操作され得る。溶液へのカオトロピック剤の添加は、親和性マトリックスからの各二量体種の溶出を増強し、それにより、個々の各二量体種の純度を増加させる。1つの態様において、ヘテロ二量体は、親和性マトリックスから第1のpH範囲を有する緩衝液中に溶出され、第1のホモ二量体は、親和性マトリックスから第2のpH範囲を有する緩衝液中に溶出される。ヘテロ二量体は回収される。第2のホモ二量体が多量体の混合物中に含まれる任意の態様において、第2のホモ二量体は、第3のpH範囲を有する洗浄緩衝液中結合せずにカラムを通って流れるか、または親和性マトリックスから第3のpH範囲を有する洗浄緩衝液中に溶出されるかのいずれかである。第3のpH範囲は、第1のpH範囲よりも高いpHを含み、第1のpH範囲は、第2のpH範囲よりも高いpHを含む。
【0009】
1つの態様において、親和性マトリックスは、基材に付着されたプロテインAリガンドを含む。幾つかの場合において、基材は、親和性マトリックスがプロテインAと付着された複数の粒子であるようなビーズまたは粒子である。プロテインAは、天然型もしくは修飾されたブドウ球菌プロテインAであり得るか、またはそれは、操作されたプロテインAであり得る。操作されたプロテインAは、例えば、Zドメイン四量体、Yドメイン四量体、またはDドメインとEドメインとを欠失している操作されたプロテインAであり得る。これらの操作されたプロテインAの例は、免疫グロブリンのVH3ドメインに結合することができない(または、もし結合するとしても非常に低い親和性で結合する)が、依然としてIgG1、IgG2、およびIgG4のCH3ドメインに結合することができる。
【0010】
幾つかの場合において、親和性マトリックス基材は、アガロース、ポリ(スチレンジビニルベンゼン)、ポリメタクリレート、コントロールドポアガラス(controlled pore glass)、球状シリカ、セルロースなどを含むか、またはそれからなる。基材がビーズまたは粒子として形作られる態様において、粒子の平均直径は、25μm〜100μmである。幾つかの態様において、粒子は、平均直径35μm、45μm、60μm、75μm、または85μmを有する。特定の態様において、粒子は、平均直径45μmを有し、かつ平均直径1100Åを有する孔を含む。
【0011】
幾つかの態様において、親和性マトリックスにタンパク質の混合物を最初にロードした後、マトリックスは、pH5より大きいpHを有する緩衝液で洗浄される。幾つかの場合において、緩衝液は、pH7.2で20mMリン酸ナトリウムを含む。第2のホモ二量体がタンパク質の混合物中に含まれる場合、第2のホモ二量体は、洗浄緩衝液中に親和性マトリックスから洗い流される。したがって、ここで洗浄緩衝液は、第3のpH範囲のものである。
【0012】
幾つかの態様において、緩衝化されたpH勾配が、ロードされた親和性マトリックスに適用されるか、または代替的に、各々が異なるpHを有する連続溶出緩衝液が、ロードされた親和性マトリックスに適用される。1つの態様において、pH勾配はpH6からpH3までで実行される。ヘテロ二量体が親和性マトリックスから溶出される第1のpH範囲は、約pH5.5〜約pH3.6である。幾つかの場合において、溶出緩衝液および/または緩衝化されたpH勾配は、クエン酸、酢酸、4-モルホリノエタンスルホン酸(MES)、クエン酸-リン酸、コハク酸などの適した緩衝液を含み、これは、1つの態様において、40mM酢酸とカオトロピック剤である。カオトロピック剤は、リチウム、マグネシウム、カルシウム、およびグアニジウムから選択される陽イオン、ならびに塩化物、硝酸、臭化物、塩素酸、ヨウ化物、過塩素酸、およびチオシアン酸から選択される陰イオンを有する、塩であり得る。1つの特定の態様において、カオトロピック剤は、例えば250〜500mM CaCl2などのCaCl2である。別の特定の態様において、カオトロピック剤は、例えば250〜500mM MgCl2などのMgCl2である。
【0013】
1つの態様において、ヘテロ二量体は、二重特異性抗体である。ここで、第1のポリペプチドは、プロテインAに結合することができるCH3ドメイン(「Fc」)を含み、かつ第2のポリペプチドは、プロテインAに結合することができないCH3ドメイン(「Fc*」)を含む。幾つかの場合において、第2のポリペプチドは、そのCH3ドメインにおけるH435R/Y436F(EUナンバリングシステムによる;IMGTエクソンナンバリングシステムによるH95R/Y96F)(別名「Fc*」または「スター置換」)置換を含む。したがって、幾つかの態様において、第1のホモ二量体は、2つの置換されたCH3ドメイン(すなわち、FcFc)を有する単一特異性抗体であり;第2のホモ二量体は、2つのH435R/Y436F置換されたCH3ドメイン(すなわち、Fc*Fc*)を有する単一特異性抗体であり;ならびにヘテロ二量体は、1つの非置換のCH3ドメインおよび1つのH435R/Y436F置換されたCH3ドメイン(すなわち、Fc*Fc)を有する二重特異性抗体である。
【0014】
1つの態様において、親和性マトリックスから回収されたヘテロ二量体は、その後、より酸性のpHでクロマトグラフィー媒体にロードされ、かつ、その媒体からカオトロピック剤を欠いた(またはより低い量もしくは微量のカオトロープを有する)よりアルカリ性の緩衝液中に溶出される。1つの場合において、クロマトグラフィー媒体は、マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂である。ヘテロ二量体はさらに精製され得る。
【0015】
第2の局面において、第2のホモ二量体は、第1のホモ二量体およびヘテロ二量体がマトリックスに結合したままであるが、第2のホモ二量体が中を流れて廃棄されるように、第1の親和性マトリックスに混合物をアプライすることによって、タンパク質の混合物から初めに除去される。第1のホモ二量体およびヘテロ二量体は、その後、第1の親和性マトリックスから溶出され、その後、第2の親和性マトリックスに適用される。1つの態様において、第1の親和性マトリックスは、最初に、親和性マトリックス1リットル当たり5〜50グラムのタンパク質をロードされる。幾つかの場合において、多量体タンパク質の混合物は、複数の真核細胞によって、例えば細胞培養物中のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などによって産生される。
【0016】
1つの態様において、第1の親和性マトリックスに適用される多量体タンパク質の混合物は、(i) 2コピーの第1のポリペプチドを含む第1のホモ二量体と、(ii) 第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含むヘテロ二量体と、 (iii) 2コピーの第2のポリペプチドを含む第2のホモ二量体とを含む。ここで、第1および第2のポリペプチドは、第1のホモ二量体、ヘテロ二量体、および第2のホモ二量体が第1および/または第2の親和性マトリックスに示差的に結合することに基づいて分離され得るように、第1の親和性マトリックスおよび第2の親和性マトリックスに対して異なる親和性を有する。
【0017】
1つの態様において、第1の親和性マトリックスは、免疫グロブリンのVH3ドメインに結合する能力を欠失しており基材に付着された、操作されたプロテインAリガンドを含む。幾つかの場合において、プロテインAは、DドメインとEドメインとを欠失しており、Z-四量体またはY-四量体を含む操作されたプロテインAなどである。
【0018】
第2の親和性マトリックスへの第1のホモ二量体およびヘテロ二量体の示差的な結合は、特に、親和性マトリックスを通過した溶液のpHおよび/またはイオン強度を変更することによって操作され得る。溶液へのカオトロピック剤の添加は、非重複画分における第2の親和性マトリックスからの各二量体種の溶出を増強し、それにより、各二量体種の純度を増加させる。1つの態様において、ヘテロ二量体は、第2の親和性マトリックスから第1のpH範囲を有する緩衝液中に溶出され、第1のホモ二量体は、第2の親和性マトリックスから第2のpH範囲を有する緩衝液中に溶出される。ヘテロ二量体は回収される。ここで、第1のpH範囲は、第2のpH範囲よりも高いpHを含む。
【0019】
1つの態様において、第2の親和性マトリックスは、基材に付着されたプロテインAリガンドを含む。幾つかの場合において、基材は、第2の親和性マトリックスがプロテインAリガンドと付着された複数の粒子であるような、ビーズまたは粒子である。プロテインAは、天然型もしくは修飾されたブドウ球菌プロテインAであり得るか、またはそれは、操作されたプロテインAであり得る。操作されたプロテインAは、例えば、Zドメイン四量体、Yドメイン四量体、またはDドメインとEドメインとを欠失している他の操作されたプロテインAであり得る。これらの操作されたプロテインA分子は、免疫グロブリンのVH3ドメインに結合することができない(または、もし結合するとしても非常に低い親和性で結合する)が、IgG1、IgG2、およびIgG4のCH3ドメインに結合することが可能であり続ける。
【0020】
幾つかの場合において、基材は、アガロース、ポリ(スチレンジビニルベンゼン)、ポリメタクリレート、コントロールドポアガラス、球状シリカ、セルロース(例えば、HYPERCEL)などを含むか、またはそれからなる。基材がビーズまたは粒子として形作られるそれらの態様において、粒子の平均直径は、30μm〜90μmである。幾つかの態様において、粒子は、平均直径35μm、45μm、60μm、75μm、または85μmを有する。特定の態様において、粒子は、平均直径45μmを有し、かつ平均直径1100Åを有する孔を含む。
【0021】
幾つかの態様において、最初に第2の親和性マトリックスに第1のホモ二量体とヘテロ二量体とを含む混合物をロードした後、マトリックスは、pH5より大きいpHを有する緩衝液で洗浄される。幾つかの場合において、緩衝液は、例えばpH7.2などのpH5〜8.5で20mMリン酸ナトリウムを含む。幾つかの態様において、緩衝化されたpH勾配は、ロードされた親和性マトリックスに適用されるか、または代替的に、各々が異なるpHを有する連続溶出緩衝液が、ロードされた第2の親和性マトリックスに適用される。1つの態様において、pH勾配は、pH6からpH2.5までで実行される。ヘテロ二量体が親和性マトリックスから溶出される第1のpH範囲は、約pH5.5〜約pH3.6である。幾つかの場合において、溶出緩衝液および/または緩衝化されたpH勾配は、酢酸を含み、1つの態様においては、40mM酢酸とカオトロピック剤である。カオトロピック剤は、リチウム、マグネシウム、カルシウム、およびグアニジウムから選択される陽イオン、ならびに塩化物、硝酸、臭化物、塩素酸、ヨウ化物、過塩素酸、およびチオシアン酸から選択される陰イオンを有する、塩であり得る。1つの特定の態様において、カオトロピック剤は、例えば500mM CaCl2などのCaCl2である。別の特定の態様において、カオトロピック剤は、例えば500mM MgCl2などのMgCl2である。
【0022】
1つの態様において、ヘテロ二量体は、二重特異性抗体である。ここで、第1のポリペプチドは、プロテインAに結合することができるCH3ドメイン(「Fc」)を含み、かつ第2のポリペプチドは、プロテインAに結合することができないCH3ドメイン(「Fc*」)を含む。幾つかの場合において、第2のポリペプチドは、そのCH3ドメインにおけるH435R/Y436F(別名「スター」)置換(「Fc*」)を含む。したがって、幾つかの態様において、第1のホモ二量体は、2つの置換されたCH3ドメイン(すなわち、FcFc)を有する単一特異性抗体であり;第2のホモ二量体は、2つのH435R/Y436F置換されたCH3ドメイン(すなわち、Fc*Fc*)を有する単一特異性抗体であり;かつヘテロ二量体は、1つの非置換のCH3ドメインおよび1つのH435R/Y436F置換されたCH3ドメイン(すなわち、Fc*Fc)を有する二重特異性抗体である。
【0023】
1つの態様において、第2の親和性マトリックスから回収されたヘテロ二量体は、その後、酸性のpHのクロマトグラフィー媒体にロードされ、かつ、その媒体からよりアルカリ性の緩衝液中にかつカオトロピック剤なし(または低下したレベルもしくは微量のカオトロープ)で溶出される。1つの場合において、クロマトグラフィー媒体は、マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂である。ヘテロ二量体はさらに精製され得る。
【0024】
第3の局面において、本発明は、上記の局面の方法に従って製造された、精製されたヘテロ二量体に関する。1つの態様において、ヘテロ二量体は二重特異性抗体である。
[本発明1001]
a. (i) 2コピーの第1のポリペプチドを含む第1のホモ二量体と、(ii) 2コピーの第2のポリペプチドを含む第2のホモ二量体と、(iii) 該第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含むヘテロ二量体とを含む、多量体タンパク質の混合物を、親和性マトリックスにロードする工程であって、該第1のポリペプチドが、該第2のポリペプチドと比べて、該親和性マトリックスに対してより高い親和性を有する、工程;ならびに
b. 該ヘテロ二量体を、親和性マトリックスからカオトロピック剤を含みかつ第1のpH範囲を有する緩衝液中に溶出および回収する工程
を含み、
該第1のホモ二量体が、該親和性マトリックスから第2のpH範囲の該緩衝液中に溶出し、かつ該第2のホモ二量体が、該親和性マトリックスから第3のpH範囲の該緩衝液中に溶出し、該第3のpH範囲が、該第1のpH範囲よりも高いpHを含み、該第1のpH範囲が、該第2のpH範囲よりも高いpHを含む、タンパク質を製造する方法。
[本発明1002]
前記親和性マトリックスが、基材に付着されたプロテインAリガンドを含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記プロテインAリガンドが、Zドメイン四量体またはYドメイン四量体を含む操作されたプロテインAである、本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記基材が、アガロース、ポリ(スチレンジビニルベンゼン)、ポリメタクリレート、セルロース、コントロールドポアガラス(controlled pore glass)、および球状シリカのいずれか1つまたは複数を含む、本発明1003の方法。
[本発明1005]
前記基材が粒子であり、かつ前記親和性マトリックスが、平均直径25μm〜100μmを有する多数の該粒子を含む、本発明1004の方法。
[本発明1006]
前記粒子が、平均直径45μmを有し、かつ平均直径1100Åを有する孔を含む、本発明1005の方法。
[本発明1007]
親和性マトリックス1リットル当たり5〜50グラムのタンパク質がロードされる、本発明1001〜1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
工程(a)のロードされる親和性マトリックスにpH勾配を適用する工程を含む、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記pH勾配を適用する工程の前に、工程(a)のロードされる親和性マトリックスをpH6〜8の溶液で洗浄する工程を含む、本発明1008の方法。
[本発明1010]
前記pH勾配がpH6〜pH3で実行される、本発明1008の方法。
[本発明1011]
前記第1のpH範囲が、pH5.5からpH3.6の範囲内から選択される、本発明1008〜1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記緩衝液が酢酸を含む、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記緩衝液が40mM酢酸を含む、本発明1012の方法。
[本発明1014]
前記カオトロピック剤が塩である、本発明1001の方法。
[本発明1015]
前記塩が、塩化物、硝酸、臭化物、塩素酸、ヨウ化物、過塩素酸、およびチオシアン酸からなるリストより選択される陰イオン;ならびにリチウム、マグネシウム、カルシウム、およびグアニジウムからなる群より選択される陽イオンを含む、本発明1014の方法。
[本発明1016]
前記カオトロピック剤がCaCl2またはMgCl2を含む、本発明1014または1015の方法。
[本発明1017]
前記カオトロピック剤が250〜500mM CaCl2を含む、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記第1のポリペプチドが、プロテインAに結合することができるCH3ドメインを含み、かつ前記第2のポリペプチドが、プロテインAに結合することができないCH3ドメインを含む、本発明1001の方法。
[本発明1019]
前記第2のポリペプチドがそのCH3ドメインにおいてHYからRFへの置換を含む、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記ヘテロ二量体が二重特異性抗体を含む、本発明1018または1019の方法。
[本発明1021]
前記多量体タンパク質の混合物が細胞培養物中の複数の真核細胞によって産生される、本発明1001の方法。
[本発明1022]
前記真核細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはその派生物を含む、本発明1021の方法。
[本発明1023]
c. 酸性pHを有する緩衝液中で工程(b)の回収されるヘテロ二量体をマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂にアプライする工程;
d. 該ヘテロ二量体を該マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂からよりアルカリ性のpHを有する該緩衝液中に溶出する工程;ならびに
e. 該ヘテロ二量体を回収する工程
を含む、本発明1001の方法。
[本発明1024]
a. i. 2コピーの第1のポリペプチドを含む第1のホモ二量体と、
ii. 該第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含むヘテロ二量体と、
iii. 2コピーの該第2のポリペプチドを含む第2のホモ二量体と
を含む、多量体タンパク質の混合物を、第1の親和性マトリックスにロードする工程;
b. 該第1の親和性マトリックスから洗浄緩衝液中に該第2のホモ二量体を洗い流す工程;
c. 該第1のホモ二量体および該ヘテロ二量体を該第1の親和性マトリックスから溶出および回収する工程;
d. 工程(c)で回収された第1のホモ二量体とヘテロ二量体とを含む混合物を、第2の親和性マトリックスにロードする工程;
e. 該ヘテロ二量体を該親和性マトリックスから第1のpH範囲を有する緩衝液中に溶出および回収する工程
を含み、
該第1のホモ二量体が、該親和性マトリックスから第2のpH範囲の該緩衝液中に溶出する、タンパク質を製造する方法。
[本発明1025]
前記第1の親和性マトリックス、前記第2の親和性マトリックス、または両方が、基材に付着されたプロテインAリガンドを含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
前記プロテインAリガンドが、操作されたプロテインAを含み、該操作されたプロテインAが、Zドメイン四量体、Yドメイン四量体、またはEドメインとDドメインとを欠失しているプロテインAを含む、本発明1025の方法。
[本発明1027]
前記第1の親和性マトリックスが、免疫グロブリン分子のVH3ドメインに結合しない操作されたプロテインAを含む、本発明1024〜1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
前記第1の親和性マトリックスの基材、前記第2の親和性マトリックスの基材、または両方の基材が、アガロース、ポリ(スチレンジビニルベンゼン)、ポリメタクリレート、コントロールドポアガラス、および球状シリカアガロースのいずれか1つまたは複数を含む、本発明1024の方法。
[本発明1029]
前記基材が粒子であり、かつ前記第1の親和性マトリックス、前記第2の親和性マトリックス、または両方が、平均直径25μm〜100μmの多数の粒子を含む、本発明1028の方法。
[本発明1030]
前記粒子が、平均直径1100Åを有する孔を含む、本発明1028または1029の方法。
[本発明1031]
前記多量体タンパク質の混合物中の5〜50グラムのタンパク質が、前記第1の親和性マトリックスにロードされる、本発明1024の方法。
[本発明1032]
工程(d)において、第2の親和性マトリックス1リットル当たり、工程(c)で回収された第1のホモ二量体とヘテロ二量体とを含む混合物中の5〜50グラムのタンパク質がロードされる、本発明1024または1031の方法。
[本発明1033]
工程(d)のロードされる親和性マトリックスにpH勾配を適用する工程を含む、本発明1024の方法。
[本発明1034]
前記pH勾配がpH6〜pH3で実行される、本発明1033の方法。
[本発明1035]
前記第1のpH範囲がpH5.5〜pH3.6である、本発明1033または1034の方法。
[本発明1036]
前記pH勾配が緩衝液およびカオトロピック剤を含む、本発明1033〜1035のいずれかの方法。
[本発明1037]
前記緩衝液が酢酸を含む、本発明1036の方法。
[本発明1038]
前記緩衝液が40mM酢酸を含む、本発明1037の方法。
[本発明1039]
前記カオトロピック剤が塩である、本発明1036の方法。
[本発明1040]
前記塩が、塩化物、硝酸、臭化物、塩素酸、ヨウ化物、過塩素酸、およびチオシアン酸からなるリストより選択される陰イオン;ならびにリチウム、マグネシウム、カルシウム、およびグアニジウムからなる群より選択される陽イオンを含む、本発明1039の方法。
[本発明1041]
前記カオトロピック剤がCaCl2またはMgCl2を含む、本発明1040の方法。
[本発明1042]
前記カオトロピック剤が250〜500mM CaCl2を含む、本発明1041の方法。
[本発明1043]
前記第1のポリペプチドが、プロテインAに結合することができるCH3ドメインを含み、かつ前記第2のポリペプチドが、プロテインAに結合することができないCH3ドメインを含む、本発明1024の方法。
[本発明1044]
前記第2のポリペプチドがそのCH3ドメインにおいてHYからRFへの置換を含む、本発明1043の方法。
[本発明1045]
前記ヘテロ二量体が二重特異性抗体を含む、本発明1043または1044の方法。
[本発明1046]
前記多量体タンパク質の混合物が細胞培養物中の複数の真核細胞によって産生される、本発明1024の方法。
[本発明1047]
前記真核細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含む、本発明1046の方法。
[本発明1048]
f. 酸性pHを有する緩衝液中で工程(d)の回収されるヘテロ二量体をマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂にアプライする工程;
g. 該ヘテロ二量体を該マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂からアルカリ性pHを有する緩衝液中に溶出する工程;ならびに
h. 該ヘテロ二量体を回収する工程
を含む、本発明1024の方法。
[本発明1049]
本発明1001または1024の方法に従って製造されたヘテロ二量体。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】組換えプロテインA樹脂(MABSELECT XTRA(商標))を用いたbsAb Eの精製のための溶出工程間のpH(点線)および280nmでの吸光度(直線)を示すクロマトグラムを示す。
図1B】VH結合性を欠失している操作されたプロテインAベースの樹脂(MABSELECT SURE(商標))を用いたbsAb Eの精製のための溶出工程間のpH(点線)および280nmでの吸光度(直線)を示すクロマトグラムを示す。
図2】MABSELECT SURE(商標)(白丸)またはPOROS MABCAPTURE A(商標)(黒四角)のいずれかを有する40mM酢酸、500mM塩化カルシウム中で、固定相として、30カラム体積(「CV」)の勾配溶出中の滞留時間(residence time)の関数として二重特異性(Fc*Fc)ピークと非CH3置換のホモ二量体(FcFc)ピークとの間で得られたピーク分離能(Rs)を示す。
図3A】溶出移動相への修飾剤(modifier)として添加されたクエン酸ナトリウムを用いたbsAb Aの精製のための溶出工程間のpH(点線)および280nmでの吸光度(直線)を示すクロマトグラムを示す。二重特異性のピーク分画は、垂直の点線によりマークされている。
図3B】溶出移動相への修飾剤として添加された塩化ナトリウムを用いたbsAb Aの精製のための溶出工程間のpH(点線)および280nmでの吸光度(直線)を示すクロマトグラムを示す。二重特異性のピーク分画は、垂直の点線によりマークされている。
図3C】溶出移動相への修飾剤として添加された塩化マグネシウムを用いたbsAb Aの精製のための溶出工程間のpH(点線)および280nmでの吸光度(直線)を示すクロマトグラムを示す。二重特異性のピーク分画は、垂直の点線によりマークされている。
図3D】溶出移動相への修飾剤として添加された塩化カルシウムを用いたbsAb Aの精製のための溶出工程間のpH(点線)および280nmでの吸光度(直線)を示すクロマトグラムを示す。二重特異性のピーク分画は、垂直の点線によりマークされている。
図4】VHドメインSpA結合性を示す(パネルA)またはVHドメインSpA結合性を示さない(パネルB)、スター置換を含む(CH3置換された、Fc*)二重特異性抗体(Fc*Fc)のための精製プロセスのフロースキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
記載される特定の方法および実験条件は変動し得るために、本発明は、そのような特定の方法および実験条件に限定されない。また、本発明の範囲は特許請求の範囲によって定義されるために、本明細書で使用される用語は、特定の態様を記載することのみを目的としており、限定することを意図されないこと理解すべきである。
【0027】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、特定の方法および材料が記載される。記載される全ての刊行物は、参照として本明細書に組み入れられる。
【0028】
本明細書で使用される用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結される2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖の4つのポリペプチド鎖を含む、免疫グロブリン分子を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVHと省略する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVLと省略する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、CLの1つのドメインを含む。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存される領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに分類され得る。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシル末端の方向で、以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(重鎖CDRはHCDR1、HCDR2、およびHCDR3と省略され得る;軽鎖CDRはLCDR1、LCDR2、およびLCDR3と省略され得る)。用語「高親和性」抗体は、例えばBIACORE(商標)などの表面プラズモン共鳴または溶液-親和性ELISAによって測定されるような、少なくとも10-9 M、少なくとも10-1 M;少なくとも10-11 M;または少なくとも10-12 Mのそれらの標的への結合親和性を有する、それらの抗体を意味する。
【0029】
用語「二重特異性抗体」は、2つまたはそれ以上のエピトープに選択的に結合することができる抗体を含む。二重特異性抗体は、一般に、2つの異なる重鎖を含み、各重鎖は、2つの異なる分子(例えば、抗原)上または同じ分子上(例えば、同じ抗原上)のいずれかで、異なるエピトープに特異的に結合する。二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープ(第1のエピトープおよび第2のエピトープ)に選択的に結合することができ、第1のエピトープに対する第1の重鎖の親和性は、一般に、第2のエピトープに対する第1の重鎖の親和性よりも、少なくとも1桁〜2桁または3桁または4桁低く、逆の場合も同じである。二重特異性抗体により認識されるエピトープは、同じまたは異なる標的上(例えば、同じまたは異なるタンパク質上)に存在し得る。二重特異性抗体は、例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって、作製され得る。例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列は、異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合され得、そのような配列は、免疫グロブリン軽鎖を発現する細胞において発現され得る。典型的な二重特異性抗体は、各々が3つの重鎖CDR、続いて(N末端からC末端に)、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを有する、2つの重鎖と;抗原結合特異性を与えないが各重鎖に関連し得るか、または各重鎖に関連し得かつ重鎖抗原結合領域によって結合された1つもしくは複数のエピトープに結合し得るか、または各重鎖に関連し得かつ一方もしくは両方のエピトープに対して一方もしくは両方の重鎖を結合し得る、免疫グロブリン軽鎖とを有する。
【0030】
用語「重鎖」または「免疫グロブリン重鎖」は、任意の生物由来の免疫グロブリン重鎖定常領域配列を含み、特に定めのない限り、重鎖可変ドメインを含む。重鎖可変ドメインは、特に定めのない限り、3つの重鎖CDRおよび4つのFR領域を含む。重鎖の断片は、CDR、CDR、およびFR、ならびにそれらの組み合わせを含む。典型的な重鎖は、以下の可変ドメイン(N末端からC末端に)、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを有する。重鎖の機能的断片は、抗原を特異的に認識すること(例えば、マイクロモル濃度、ナノモル濃度、またはピコモル濃度範囲のKDを有する抗原を認識すること)ができ、細胞から発現および選択され得、かつ少なくとも1つのCDRを含む、断片を含む。
【0031】
用語「軽鎖」は、任意の生物由来の免疫グロブリン軽鎖定常領域配列を含み、特に定めのない限り、ヒトκおよびλ軽鎖を含む。軽鎖可変(VL)ドメインは、特に定めのない限り、典型的には、3つの軽鎖CDRおよび4つのフレームワーク(FR)領域を含む。一般に、完全長の軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端に、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含むVLドメイン、および軽鎖定常ドメインを含む。本発明で使用され得る軽鎖は、例えば、抗原結合タンパク質によって選択的に結合された第1または第2の抗原のいずれかに選択的に結合しないものを含む。適した軽鎖は、存在する抗体ライブラリー(ウエットライブラリーまたはインシリコ)において最も一般に使用される軽鎖に対してスクリーニングすることによって同定され得るものを含み、この軽鎖は、抗原結合タンパク質の抗原結合ドメインの親和性および/または選択性に実質的に干渉しない。適した軽鎖は、抗原結合タンパク質の抗原結合領域によって結合された一方もしくは両方のエピトープに結合し得るものを含む。
【0032】
用語「可変ドメイン」は、以下のアミノ酸領域、N末端からC末端の順序で(特に定めのない限り)、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4を含む、免疫グロブリン軽鎖または重鎖のアミノ酸配列(望ましいように修飾される)を含む。「可変ドメイン」は、二重βシート構造を有する標準ドメイン(VHまたはVL)に折りたたむことができるアミノ酸配列を含み、このβシートは、第1のβシートおよび第2のβシートの残基間のジスルフィド結合によって連結される。
【0033】
用語「相補性決定領域」または用語「CDR」は、免疫グロブリン分子(例えば、抗体またはT細胞受容体)の軽鎖または重鎖の可変領域における2つのフレームワーク領域間で通常(すなわち、野生型動物で)見られる、生物の免疫グロブリン遺伝子の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。CDRは、例えば、生殖系列配列または再構成もしくは非再構成配列によって、および例えば、ナイーブまたは成熟B細胞もしくはT細胞によって、コードされ得る。幾つかの状況において(例えば、CDR3に対して)、例えば、配列のスプライシングまたは連結の結果として(例えば、重鎖CDR3を形成するためのV-D-J組換え)、CDRは、連続しない(例えば、非再構成核酸配列において)がB細胞核酸配列において連続する、2つまたはそれ以上の配列(例えば、生殖系列配列)によってコードされ得る。
【0034】
用語「Fc含有タンパク質」は、抗体、二重特異性抗体、イムノアドヘシン、ならびに免疫グロブリンCH2およびCH3領域の少なくとも機能的部分を含む他の結合タンパク質を含む。「機能的部分」は、Fc受容体(例えば、FcγR;またはFcRn、すなわち、新生児Fc受容体)に結合し得る、および/または補体の活性化に関与し得る、CH2およびCH3領域を意味する。CH2およびCH3領域が、欠失、置換、および/もしくは挿入、またはそれを任意のFc受容体に結合できず、補体を活性化もできない状態にする他の修飾を含む場合に、CH2およびCH3領域は機能的でない。
【0035】
Fc含有タンパク質は、免疫グロブリンドメインにおける修飾を含み得、修飾が結合タンパク質の1つもしくは複数のエフェクター機能に影響する場合(例えば、FcγR結合、FcRn結合、したがって半減期、および/またはCDC活性に影響する修飾)を含む。そのような修飾は、免疫グロブリン定常領域のEUナンバリングシステムを参照して、以下の修飾およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない:238、239、248、249、250、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、297、298、301、303、305、307、308、309、311、312、315、318、320、322、324、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、337、338、339、340、342、344、356、358、359、360、361、362、373、375、376、378、380、382、383、384、386、388、389、398、414、416、419、428、430、433、434、435、437、438、および439。
【0036】
例えばかつ限定するものではなく、結合タンパク質は、Fc含有タンパク質であり、増強された血清半減期(記載された修飾無しの同じFc含有タンパク質と比べて)を示し、250位(例えば、EもしくはQ);250位および428位(例えば、LもしくはF);252位(例えば、L/Y/F/WもしくはT)、254位(例えば、SもしくはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DもしくはT)での修飾;または428位および/もしくは433位(例えば、L/R/SI/P/QもしくはK)および/もしくは434位(例えば、H/FもしくはY)での修飾;または250位および/もしくは428位での修飾;または307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位での修飾を有する。別の例において、修飾は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)修飾;428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)修飾;433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)修飾;252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)修飾;250Qおよび428L修飾(例えば、T250QおよびM428L);307および/もしくは308修飾(例えば、308Fもしくは308P)を含み得る。
【0037】
用語「スター置換」、「Fc*」、および「HC*」は、プロテインAに結合することを抑制する、CH3ドメイン内の配列を含む、任意の分子、免疫グロブリン重鎖、Fc断片、Fc含有分子などを含む。ヒトIgG3はプロテインAに結合しないため、それはマウス-ラット雑種に対して使用されるものと類似する精製ストラテジーにおいて他の3つのヒトIgGサブクラスのいずれかと一緒に潜在的に使用され得ることが、以前に記載されている(Lindhofer, H. et ai (1995) J. Immunol. 155:219-225))。しかし、全ての4つのヒトIgGサブクラスの配列は、高度に相同であるにもかかわらず、IgGI、IgG2、およびIgG4のFc領域がどのようにしてIgG3とヘテロ二量体を容易に形成するのか知られておらず;ホモ二量体の優先的な形成でさえも、特定の状況下(例えば、クアドローマからの単離)では望ましいヘテロ二量体の総収量に負のインパクトを有すると考えられる。IgG3がプロテインAに結合できないことは、単一のアミノ酸残基、Arg435(EUナンバリング:IMGTによるとArg95)によって決定されることが報告されており、他のIgGサブクラスにおける対応する位置は、ヒスチジン残基によって占められている(Jendeberg, L. et al. (1997) J. Immunological Meth. 201:25-34))。したがって、IgG3の代わりに、His435がArgに突然変異されているIgG1配列を使用することが可能である。したがって、IgG1における単一点突然変異は、新規の精製スキームに適している異なる結合親和性を付与するために十分であるべきである。この修飾は、プロテインAに結合できないことを示すために、IgGIΔA(および、同様に、IgG2ΔAおよびIgG4ΔA、またはより一般に、FcΔA)として記載される。
【0038】
しかし、特定された点突然変異は、潜在的に免疫原性であり得る突然変異にわたる新規のペプチド配列を導入する。点突然変異は、理論上は、MHCクラスII分子にロードされ、T細胞に提示され、その結果として、免疫応答を引き起こし得る。このピットホールを避けるために、ジペプチド突然変異、H435R/Y436F(EUナンバリング;IMGTによるとH95R/Y96F)が使用され得る。変更付近に生じた配列は、T細胞の提示のために利用可能な非天然型の短いペプチドが存在しないため、IgG3のものと同一であり、したがって、免疫学的に「不可視」であることが予測され得る。この二重突然変異体は、依然としてプロテインAに結合しないことが報告されている(Jendeberg, L. et al. (1997) J. Immunological Meth. 201:25-34)。最後に、ジペプチド突然変異は、Fc二量体干渉を形成する如何なる残基も含まず、そのため、ヘテロ二量体の形成に干渉する可能性は低い。このジペプチド突然変異は、「スター置換」と称される。
【0039】
用語「細胞」は、組換え核酸配列を発現するために適した任意の細胞を含む。細胞は、原核生物および真核生物(単細胞または複数細胞)のもの、細菌細胞(例えば、大腸菌、バチルス属の菌種、ストレプトマイセス属の菌種の株など)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.セレビシエ(S. cerevisiae)、S.ポンベ(S. pombe)、P.パストリス(P. pastoris)、P.メタノリカ(P. methanolica)など)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、イラクサギンウワバなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または、例えばハイブリドーマもしくはクアドローマなどの細胞融合物を含む。幾つかの態様において、細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウス細胞である。幾つかの態様において、細胞は、真核細胞であり、以下の細胞から選択される:CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、ベロ、CV1、腎(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(上皮性)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT 060562、セルトリ細胞、BRL 3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、および上述の細胞由来の細胞系。幾つかの態様において、細胞は、1つまたは複数のウイルス遺伝子を含み、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)などである。
【0040】
用語「移動相修飾剤」は、タンパク質間の非特異的性(すなわち、非親和性)イオン性および他の非共有結合性相互作用の効果を減少させるかまたは該相互作用を破壊する部分を含む。「移動相修飾剤」は、例えば、I族金属およびII族金属と酢酸、炭酸水素、炭酸、ハロゲン(例えば、塩化物またはフッ化物)、硝酸、リン酸、または硫酸との、塩、イオン性の組み合わせを含む。「移動相修飾剤」の非限定的な具体例のリストは、酢酸のベリリウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩;炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、および炭酸セシウム;塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、および塩化マグネシウム;フッ化ナトリウムおよびフッ化カリウム;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、および硝酸カルシウム;リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウム;ならびに硫酸カルシウムおよび硫酸マグネシウムを含む。
【0041】
「移動相修飾剤」はまた、非共有結合性の力を弱めるかまたは非共有結合性の力に干渉し、生物分子システム内のエントロピーを増大させる、カオトロピック剤を含む。カオトロピック剤の非制限的な例は、ブタノール、塩化カルシウム、エタノール、塩化グアニジウム、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、チオ尿素、および尿素を含む。カオトロピック剤は、タンパク質の溶解性に影響する塩を含む。よりカオトロピックな陰イオンは、例えば、塩化物、硝酸、臭化物、塩素酸、ヨウ化物、過塩素酸、およびチオシアン酸を含む。よりカオトロピックな陽イオンは、例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、およびグアニジウムを含む。
【0042】
「移動相修飾剤」は、pH勾配もしくはpH工程の追加時、または「移動相修飾剤」のプロテインAサポートの平衡およびpH工程もしくはpH勾配の適用時に、ホモ二量体IgGおよびヘテロ二量体IgGの溶出間のpHユニット距離の広幅化を生じる、イオン性または他の非共有結合性の相互作用に影響するそれらの部分を含む(例えば、野生型ヒトIgG、および同IgGであるが本明細書に記載されるCH3ドメインの1つまたは複数の修飾を有するIgG)。「移動相修飾剤」の適した濃度は、所与のpH工程もしくはpH勾配で最大pH距離に達するまで、「移動相修飾剤」の濃度を増加することで、同カラム、pH工程もしくはpH勾配を使用するその濃度により、決定され得る。「移動相修飾剤」はまた、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコールなどを含む、非極性の修飾剤を含み得る。
【0043】
本明細書で使用されるように、「親和性クロマトグラフィー」は、クロマトグラフィー分離を生じさせるための、等電点、疎水性、またはサイズなどの生物分子の一般的性質よりもむしろ、生物分子間の特異性の可逆的相互作用を使用するクロマトグラフィー方法である。「プロテインA親和性クロマトグラフィー」または「プロテインAクロマトグラフィー」は、免疫グロブリン分子のFc部分に対するプロテインAのIgG結合ドメインの親和性を使用する特異性の親和性クロマトグラフィー方法を意味する。このFc部分は、ヒトもしくは動物の免疫グロブリン定常ドメインCH2およびCH3、またはこれらと実質的に類似の免疫グロブリンドメインを含む。プロテインAは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞壁由来の天然タンパク質、組換えまたは合成方法によって産生されるプロテインA、およびFc領域に結合する能力を保つバリアントを含む。実際には、プロテインAクロマトグラフィーは、固体サポートに固定化されたプロテインAを用いることを含む。Gagnon, Protein A Affinity Chromotography, Purification Tools for Monoclonal Antibodies, pp. 155-198, Validated Biosystems, 1996を参照のこと。プロテインGおよびプロテインLもまた、親和性クロマトグラフィーのために使用され得る。固体サポートは、プロテインAが付着する非水系のマトリックスである。そのようなサポートは、アガロース、セファロース、ガラス、シリカ、ポリスチレン、ニトロセルロース、木炭、砂、セルロース、および任意の他の適した材料を含む。そのような材料は、当技術分野において周知である。任意の適した方法が、固体サポートに第2のタンパク質を取り付けるために使用され得る。適した固体サポートにタンパク質を取り付ける方法は、当技術分野において周知である。例えば、Ostrove, Guide to Protein Purification, Methods in Enzymology, 182: 357-371, 1990を参照のこと。プロテインAを固定化されたそのような固体サポート、およびプロテインAを固定化されていないそのような固体サポートは、Vector Laboratory(Burlingame, Calif.)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz, Calif.)、BioRad(Hercules, Calif.)、Amersham Biosciences(part of GE Healthcare, Uppsala, Sweden)、Pall(Port Washington, NY)、およびEMD-Millipore(Billerica, Mass.)などを含む、多くの商業的供給源から容易に入手可能である。細孔ガラスマトリックスに固定化されたプロテインAは、PROSEP(登録商標)-A(Millipore)として商業的に入手可能である。固相はまた、アガロースベースのマトリックスであり得る。アガロースマトリックスに固定化されたプロテインAは、MABSELECT(商標)(Amersham Biosciences)として商業的に入手可能である。
【0044】
親和性クロマトグラフィーはまた、抗体、抗体の断片、または免疫グロブリンドメインおよび/もしくは配列を含むキメラの融合タンパク質に選択的に結合し、したがって、これらを精製するために使用され得る媒体を含む。抗体は、IgG、IgA、IgM、IgY、IgD、およびIgE型を含む。抗体はまた、ラクダ抗体、操作されたラクダ抗体、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、ナノボディなどの単鎖効果を含む。抗体断片は、VH、VL、CL、CH配列を含む。抗体断片、および抗体配列を含む融合タンパク質は、例えば、F(ab’)3、F(ab’)2、Fab、Fc、Fv、dsFv、(scFv)2、scFv、scAb、ミニボディ、ディアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、Fc-融合タンパク質、捕捉分子などを含む(Ayyar et al., Methods 56 (2012): 116-129を参照のこと)。そのような親和性クロマトグラフィー媒体は、抗体、それらの断片、およびそれらの断片を含む融合タンパク質に選択的に結合するリガンドを含み得る。そのようなリガンドは、タンパク質、細菌由来の受容体、抗原、レクチン、または標的分子に指向された抗抗体を含む。抗体は精製を必要とする。例えば、IgG-CH1、IgG-Fc、IgG-CH3、IgG1、LC-κ、LC-λ、IgG3/4、IgA、IgMなどの任意の1つまたは複数に対して指向されたラクダ由来の親和性リガンドは、親和性リガンドとして使用され得る(CAPTURESELECTクロマトグラフィー樹脂、Life Technologies, Inc., Carlsbad, Calif.として商業的に入手可能)。
【実施例】
【0045】
実施例1:ピーク分離能プロセス
二重特異性抗体は、以下のように、スター置換を利用してプロテインAクロマトグラフィーによって、混入しているホモ二量体から分離された。Fc*Fc*ホモ二量体は、Fc領域から除去された両方のプロテインA結合部位を有するため、この産物に関連する不純物は、カラムを通って流れて除去されることが予測され、一方、二重特異性およびFcFcホモ二量体は、カラムに維持されることが予測された。一連の洗浄は、CHO DNAまたは宿主細胞タンパク質(host cell protein)(HCP)などのプロセスに関連する混入物を除去するために実施された。その後、二重特異性は、pH勾配またはpH工程によって選択的に溶出され、一方、FcFc混入物は、二重特異性に比べてより強い結合のために保持された。
【0046】
二重特異性から二重特異性までの分離性能における広い変動性が、最初の実験が組換えブドウ球菌プロテインA(SpA)クロマトグラフィー樹脂を用いて実施された場合に観察された。幾つかの場合において、結合性FcFcホモ二量体と二重特異性産物間のベースライン分離能が得られたのに対して、二重特異性抗体(「bsAb」)のサブグループは非常乏しい分離能を示した。これらの分子に対して、向上したベース(base)安定性を示すように操作された親和性樹脂上で分離を実施した場合に、良好な分離能が達成された。この1つの例は、bsAb Eであり、採取され清澄化された細胞培養液が、SpA樹脂(MABSELECT XTRA(商標)、図1A)または操作されたプロテインAベース樹脂(MABSELECT SURE(商標)、図1B)のいずれかに5g/Lでロードされた。一連の(例えば、pH6〜8)緩衝液洗浄工程の後、40mM酢酸500mM NaCl中pH5〜3の40カラム体積(「CV」)勾配が、結合種を溶出するために適用された。MABSELECT XTRA(商標)(図1A)において、25〜35CVの間の溶出ピークは、分離能がなく、二重特異性およびFcFcホモ二量体の両方を含んだ。さらに、Fc*Fc*混入物においてFc領域に結合するプロテインAを欠失しているにもかかわらず、主要な浅い溶出ピーク(0〜25CV)は、Fc*Fc*ホモ二量体タンパク質から成っていた。しかし、MABSELECT SURE(商標)にアプライされた同じbsAb Eロードは、それぞれ二重特異性およびFcFcホモ二量体を含む2つの良好に分離されたピークを生じ(図1B)、全てのFc*Fc*ホモ二量体はロードの最中にカラムを通って流れた。これは、IgGおよび天然型プロテインA(「SpA」)と操作されたSuReリガンドとの間の異なる相互作用によって生じる可能性がある。
【0047】
古典的結合部位に加えて、幾つかの抗体は、重鎖の可変領域(「VH」)における代替のSpA結合部位を含むことが示されている。特に、ヒトVH3遺伝子ファミリーに由来する重鎖を含む幾つかのIgGは、VH3サブファミリーに属するヒトVH生殖系列遺伝子のほぼ半分で、この性質を示すことが示されている。(Sasso et al., Journal of Immunology 1989; 142:2778-83;Sasso et al., Journal of Immunology 1991; 147:1877-83;Schroeder et al., International immunology 1990; 2:41-50;およびWalter, M.A., and D.W. Cox, American Journal of Human Genetics 1988; 42:446-51を参照のこと。)したがって、SpAベースの樹脂において、bsAb Eなどの二重特異性抗体が、2つの結合種の乏しい分離能、およびVH結合性のための「非結合性」Fc*Fc*ホモ二量体樹脂の保持を示す可能性があるように思われる。したがって、VH結合性は、二重特異性およびFcFcホモ二量体間の結合力の相違、ならびにFc*Fc*の低い親和性結合を低下させると考えられる。
【0048】
この仮定は、MABSELECT SURE(商標)により観察された改良した精製によってサポートされる。SpAと抗体間の結合試験は、SpAの5つのドメイン(E、D、A、B、およびC)の全てがFc領域を介してIgGに結合し、ドメインDおよびドメインEのみが顕著なFab結合を示すことが示されている。(例えば、Starovasnik et al., Protein Science 1999; 8:1423-31を参照のこと。)操作されたMABSELECT SURE(商標)親和性リガンドは、天然型の非Fab結合性SpA Bドメインのタンパク質操作バージョンである、Zドメインの四量体である。Zドメインは、抗体可変領域に対して無視できるほど僅かな結合性を有することが知られている(Starovasnik、上記)。したがって、MABSELECT SURE(商標)リガンドを有するこの樹脂が使用される場合、二重特異性およびFcFcホモ二量体間の結合力における増加した相違は、これらのピークの向上した分離能を可能にし;Fc*Fc*ホモ二量体は保持されない。
【0049】
複数のプロテインAベースのクロマトグラフィー樹脂が、二重特異性の臨床および商業的産生物に対して樹脂を同定するためにスクリーニングされた。2つのbsAbが、評価のために選択され、1つはVH領域を介してSpAに結合すること(bsAb A)、1つはこの能力を欠失していること(bsAb B)が以前に観察された。ロード材料は、予め、Fc*Fc*不純物を除去するために、標準のポジティブモード親和性クロマトグラフィーに供された。初めの二重特異性の純度(Fc*Fc/[Fc*Fc+Fc*Fc*+FcFc])は、bsAb AおよびbsAb Bに対して、それぞれ84%および76%であった。全ての樹脂は、10g総タンパク質/L樹脂までロードされた。一連の洗浄の後、抗体は、移動相修飾剤としての500mM NaClまたは500mM CaCl2のいずれかでpH6〜3の30CVの勾配を用いて溶出された。
【0050】
6つの選択された商業的に入手可能なプロテインA樹脂は、様々なベースマトリックス、ビーズサイズ、およびリガンド型を示す。SpAを用いた樹脂4つ、1つはZドメインの四量体(MABSELECT SURE(商標))、1つはYドメインと呼ばれる非Fab結合性のCドメインのベース安定化バージョンの多量体(TOYOPEARL AF-rプロテインA-650F)であった。二重特異性産物と結合性FcFcホモ二量体との間で得られたこれらのデータおよびピーク分離能(Rs=1.18([tR2−tR1]/[W1/22+W1/21];Rsはピーク分離能であり、W1/2は半分の高さのピーク幅であり、およびtRは保持時間である)は、表1に詳細に記載される。
【0051】
(表1)VH-プロテインA結合性(bsAb A)および非VH結合性(bsAb B)の2つの抗体を用いプロテインA媒体の範囲を使用して得られた、結合性不純物からの二重特異性の分離効率の比較。a 半分の高さの幅を用いて計算された分離能。半分の高さのピーク幅がピーク収束のために計算され得なかった場合には、分離能は「分離能無し」と記載された。
【0052】
溶出緩衝液中で移動相修飾剤としてNaClを用いた場合に、増加した分離能が、ビーズサイズに反比例して示され、45μmを超える平均粒子を有するSpA樹脂に対して観察された分離能がなかった。興味深いことに、MABSELECT SURE(商標)(Rs=0.92)は、bsAb Aを有するTOYOPEARL AF-rプロテインA-650F(Rs=0.87)に匹敵する性能を示した。これは、(i)TOYOPEARL AF-rプロテインA-650Fに対してより小さい平均ビーズサイズ(45 cf. 85μm)、および(ii)Yドメイン(Cドメインに由来する)に基づき、したがってVH結合性を欠失していることが予測される(Starovasnik、上記)親和性リガンドの類似性のために、予測されなかった。bsAb Bに対して、POROS MABCAPTURE A(商標)は、より小さい粒子サイズを有しないにもかかわらず、TOYOPEARL AF-rプロテインA-650FおよびABSOLUTE HICAP(商標)と比較して、優れた分離能を示した(それぞれ2.37および2.41と比較して、2.50)。これは、物質移動を補助する大きい通行できる孔、平均孔直径1100オングストロームにより促進される、このベースマトリックス中の散水の流れ(perfusive flow)の要素のためであると推測される。POROS MABCAPTURE A(商標)はまた、行った任意の他のSpA樹脂よりもbsAb Aにおける良好な分離能を示し、TOYOPEARL AF-rプロテインA-650FおよびMABSELECT SURE(商標)の非VH結合性樹脂に匹敵する分離能を有した(それぞれ0.87および0.92と比較して、0.70)。
【0053】
NaClが、移動相修飾剤としてCaCl2に置き換えられた場合、POROS MABCAPTURE A(商標)は、MABSELECT SURE(商標)よりも格段に優れて、分離力を大きく向上させることが観察された(それぞれRs 1.83、c.f. 1.08)。このデータ全体に基づき、POROS MABCAPTURE A(商標)およびMABSELECT SURE(商標)は、均一濃度溶出のためのクロマトグラフィー樹脂の可能な分離としてさらに評価された。
【0054】
樹脂の比較が、比較的速い線速度である400cm/hで行われたため、(i)より大きいビーズサイズおよび(ii)散水の流れの欠如という理由で、MABSELECT SURE樹脂は、POROS MABCAPTURE Aと比べて有効性を減少し得た。したがって、樹脂は、滞留時間の産生関連範囲において比較された。BsAb Aは、モデル分子として、そのVH領域を介したSpAへのその観察された結合性(それにより、非VH結合性MABSELECT SUREに対する二重特異性とFcFc不純物との間のより大きい結合力の相違が与えられる)のために選択された。MABSELECT SUREは、この結合力の利点無しにMABCAPTURE Aのより小さいビーズサイズのために劣っていると予測されたので、VH結合性抗体が、この評価のために選択されたことに注意すること。樹脂評価研究のために使用された、同じ親和性の捕捉されたbsAb Aロード材料が、10g総タンパク質/L樹脂の負荷で使用された。全てのクロマトグラフィー工程は、2〜8分(600〜150cm/h)まで様々であった溶出を除き、3分の滞留時間で実施された。FcFcホモ二量体のピークからの二重特異性のピークの分離能の計算は、樹脂の分離能が滞留時間と共に増加したが、効果は、POROS MABCAPTURE AよりもMABSELECT SUREに対してより明白であった(それぞれRs増加 0.7および0.3、図2)。加えて、POROS MABCAPTURE A樹脂は、この樹脂に対するVH結合性の不都合にもかかわらず、全ての試験された条件でMABSELECT SUREに対して優れた分離能を示し、これは、2つの結合種の分離力に関する樹脂の全体的な優位性を確認するものである。
【0055】
溶出緩衝液中に移動相修飾剤を含めることは、FcFcホモ二量体からの二重特異性産物の分離能を変更し、かつ向上させる可能性があった(表1を参照のこと)。したがって、ホフマイスターシリーズ(Hofmeister series)の様々な位置の塩の使用は、抗体種とプロテインAリガンドとの間の疎水性相互作用の軽減により、樹脂選択性を向上すると予測された。VH結合性bsAb Aは、MABCAPTURE A樹脂に10g/Lでロードされた。一連の洗浄の後、抗体は、以下の溶出移動相修飾剤:ホフマイスターシリーズにおいて、コスモトロピックからカオトロピックへの順序に並べられた、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、および塩化カルシウムで、pH6〜3の30CVの勾配を用いて溶出された。500mMの塩レベルは、クエン酸ナトリウム以外の全ての塩のために使用され、クエン酸ナトリウムでは、300mMを超える濃度をスパイクされた場合にロード材料中のタンパク質が沈殿するために、250mMが使用された。二重特異性産物と結合性のFcFcホモ二量体との間の優れた分離能は、より多くのカオトロピック塩で得られた(図3)。二重特異性のピークは、図3で詳細に記載されるような、第1のピークリフトオフからピークバレー屈曲までを回収された。二重特異性収率%、二重特異性の純度%、ピーク分離能(Rs)、および可溶性凝集物%が測定された(表2)。二重特異性pH頂点でのpHはまた、クロマトグラムから計算された。より多くのカオトロピック塩(塩化カルシウムおよび塩化マグネシウム)の使用は、増加した収率および二重特異性の純度を示した。タンパク質はまた、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムでより高いpHにおいて溶出された。使用された最もカオトロピックな塩も最もコスモトロピックな塩も、二重特異性の溶出中に著しい凝集を誘導しなかった。したがって、溶出緩衝液中の移動相修飾剤としての塩化カルシウムなどのカオトロピック塩の使用は、ピーク分離能およびその後のbsAbの精製を増強することが示された。
【0056】
(表2)様々な溶出移動相修飾剤を用いたPOROS MABCAPTURE A(商標)からのbsAb Aの勾配溶出中に回収された二重特異性画分において測定された、収率、可溶性凝集物、ピーク頂点pH、ピーク分離能、および二重特異性の純度。
【0057】
実施例2:商業的プロセスの開発
二重特異性抗体の精製のためのスター置換ベースのプラットフォームの実現可能性を判定するために、bsAb Cの精製のための拡張性のあるプロセスが開発された。このタンパク質は、SpAに対する著しいVHの結合性を示すことが見出されたために、プラットフォームのための最悪の場合の試験として選択された。重要な開発目標は、(i) 緩衝液の消費と処理時間を減少させることに加え、プラントフィットと技術移転を簡単なものにするために、均一濃度(工程)溶出を達成すること、(ii) ロード条件を殆どまたは全く有さない親和性分離工程と連携するポリッシング工程を同定することであった。
【0058】
初期因子スクリーニングおよび設計空間評価は、96ウェルプレートフォーマット(HTPD)におけるハイスループットスクリーニングを用いて行われた。溶出pH、カラムローディング(g/L総タンパク質)、および移動相修飾剤濃度は、重要なプロセスインプットとして同定された(図2を参照のこと)。溶出滞留時間もまた考慮された。この研究のためのロード材料は、予め、64%の二重特異性の純度を生じるFc*Fc*不純物を除去するために、標準的なポジティブモード親和性クロマトグラフィーに供された。2つの18ラン中心複合計画実験計画法(central-composite design-of-experiments studies)(CCD DoE)が、均一濃度溶出モードにおいて、MABSELECT SUREおよびPOROS MABCAPTURE Aの両方を評価するために行われた。POROS MABCAPTURE A樹脂に対して試験された因子は、カラムローディング(10〜25gの範囲の総タンパク質/L)、溶出pH(4.5〜5.5)、および溶出緩衝液中の塩化カルシウムの濃度(250〜500mM)であった。滞留時間は、3分(400cm/h)で一定に保たれた。その後、MABSELECT SUREは、カラムローディング(10〜25gの範囲の総タンパク質/L)、溶出pH(3.8〜5.0)、および滞留時間(5〜11分)に関して評価された。溶出緩衝液中の塩化カルシウム濃度は、500mMで一定に保たれた。
【0059】
MABCAPTURE Aのために、良好なモデルは、標準的な最小二乗フィットアルゴリズムを用いて、二重特異性の収率(R2=0.97)および二重特異性の純度(R2=0.92)の両方のために得られた。全ての条件で、溶出緩衝液中で250〜500mMまで塩化カルシウムレベルを増加すると、二重特異性の純度を減少することなく、10〜20%まで二重特異性の収率を増加することが観察された(データは示していない)。このモデルを用いて、スイートスポット解析が500mM CaCl2で実施された。解析は、5.0〜5.1の溶出pHが、17〜25g/Lの樹脂チャレンジを受けるために>95%の純度目標および>80%の収率を可能にすることを示した。類似のクロマトグラフィー条件は、2kL産生スケールまで使用され、99%を超える二重特異性の純度が、さらなる最適化の後に得られた。
【0060】
MABSELECT SUREデータを評価し、良好なモデルフィットが、二重特異性の収率(R2=0.99)および二重特異性の純度(R2=1.00)のために達成された。滞留時間は、いずれの反応に対しても重要な因子であることを示されなかった。MABCAPTURE Aに関しては、二重特異性の収率<80%および二重特異性の純度<95%が得られる領域を除外するために、8分の滞留時間で等高線プロットに制限が課された。望ましい操作ウィンドウ(operating window)またはスイートスポットは、MABCAPTURE Aで観察されるものより非常に小さい。したがって、MABSELECT SUREの使用は、小さいpHまたはローディング変化が許容されない二重特異性の純度または収率を生じる可能性があるため、産生スケールで不十分なロバスト性を示すプロセスを生じる可能性がある。
【0061】
実施例3:親和性後のポリッシング
親和性分離工程の後、二重特異性抗体は、標準的なモノクローナル抗体と高度に類似する様式で、プロセスおよび産物に関連する不純物を除去することを意図されるポリッシング工程に供され得る。しかし、親和性分離工程の溶出緩衝液中の高濃度の塩化カルシウムの使用は、下流の単位操作を潜在的に困難にする可能性があった。限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)は、陽イオン交換または陰イオン交換クロマトグラフィーなどの、伝統的なmAbポリッシング工程を促進するために、プールの伝導率を減少させるために使用され得た。しかし、塩耐性ポジティブモードクロマトグラフィー工程の単離は、この追加の単位操作の導入を避け得た。マルチモーダルまたはミックスモードクロマトグラフィーは、単一樹脂との疎水性相互作用、水素結合、およびイオン性相互作用などの様々な型の相互作用を組み合わせる。これは塩耐性吸着を促進することができることが示されている。
【0062】
様々なマルチモーダル樹脂は、ポリッシング工程として考慮された:(i) CAPTO ADHEREおよび(ii) CAPTO ADHERE IMPRES(陰イオン交換、疎水性、および水素結合相互作用基の両方を含むN-ベンジル-メチルエタノールアミンリガンド)、(iii) セラミックヒドロキシアパタイト、ならびに(iv) CAPTO MMC、疎水性相互作用および水素結合ポテンシャルを有するマルチモーダル陽イオン交換樹脂。最終的に、CAPTO MMCが、プロセスおよび産物に関連する不純物を同時に除去する一方で、プロセスストリームの伝導性を低下させるために開発された。プロセスの開発の後、コンセプト実証が、bsAb CおよびbsAb Dを用いたポジティブモードCAPTO MMCクロマトグラフィーを利用する製造規模で確認された(表3を参照のこと)。両方の例において、合理的(19〜25g/L)動的結合能力が、収率≧85%、可溶性凝集物の3倍までの低下、および中程度(0.2〜0.7log除去)のCHO宿主細胞タンパク質クリアランスで得られた。
【0063】
(表3)250mM CaCl2を含む親和性分離プールをロードされたCAPTOMMC媒体を用いたポジティブモードマルチモーダルクロマトグラフィーによって得られた収率および混入物除去
【0064】
実施例4:精製ストラテジー
上記に行われ記載された発見に基づき、2つの下流の二重特異性プロセスプラットフォームが想定された(図4)。二重特異性抗体が、VH3遺伝子断片ファミリーから得られ、VH領域を通じてSpAに結合できる場合、親和性捕捉クロマトグラフィーと呼ばれる追加の親和性クロマトグラフィー単位操作が使用され得る(図4A)。採取による細胞および破片の除去の後、Zドメインを介したVH結合性の欠如がFc*Fc*親抗体不純物の除去を確実にするため、親和性捕捉クロマトグラフィーがMABSELECT SURE樹脂を用いて実施される。この工程は、商業的なモノクローナル抗体に対して標準的なプロテインA結合性、洗浄、および溶出条件を用いて実施され、この工程はまた、タンパク質濃度を増加させ、プロセスおよび産物に関連する不純物を除去するように作用する。タンパク質が低pHで溶出されるため、このことは、産物プールでウイルス不活性化のために低pHを保つためにも都合がよい。この後、FcFc不純物の除去は、「親和性分離クロマトグラフィー」と呼ばれる第2のポジティブモードプロテインA工程によって達成される。溶出緩衝液中のカオトロピック修飾剤と組み合わされたPOROS MABCAPTURE A樹脂の使用は、>95%二重特異性の純度のプールを生じ得る。親和性分離クロマトグラフィーの後、ポジティブモード塩耐性マルチモーダルクロマトグラフィーの使用は、親和性分離工程と直接連携することを促進し、したがって、プロセスストリームからカオトロピック塩を除去するためにUF/DF操作を介在する必要性を取り除く。陰イオン交換クロマトグラフィーおよびウイルス保持性濾過などの追加のポリッシング工程と組み合わせて、凝集物、HCP、DNA、ウイルス、および他の不純物は、許容されるレベルまで除去され得る。最終的に、精製された産物は、標準的な限外濾過/ダイアフィルトレーション方法論により、最終形成緩衝液中に濃縮される。この精製の一連の流れは、二重特異性分子が親和性捕捉工程の除去によりSpAに対するVH結合性を示さない場合に、単純化され得る(図4B)。この場合において、FcFcおよびFc*Fc*不純物の両方の除去は、親和性分離クロマトグラフィーによって実施され得る。
【0065】
実施例5:材料および方法
これらの実施例において使用される全ての二重特異性抗体および細胞培養液は、CHO細胞において発現された。クロマトグラフィー樹脂は、製造業者:MABSELECT SURE、MABSELECT XTRA、CAPTO MMC(GE Healthcare)、POROS MABCAPTURE A(Life Technologies)、TOYOPEARL AF-rプロテインA-650F(TOSOH Biosciences)、ABSOLUTE HIGH CAP(Novasep Inc.)、PROSEP ULTRA PLUS(EMD Millipore)から入手された。使用される全ての化学物質は、J.T. Bakerによって供給された。
【0066】
実験室規模のクロマトグラフィー分離は、GE Healthcare からのAKTA AVANTクロマトグラフィーシステムおよび1.0cm内径(I.D.)OMNIFIT BENCHMARKクロマトグラフィーカラム(Omnifit Ltd)を用いて実施された。パイロット規模のクロマトグラフィーは、GE HealthcareからのAKTA PILOTクロマトグラフィーシステムおよび7.0cm I.D. INdEX クロマトグラフィーカラムを使用した。生産規模のクロマトグラフィーは、AKTAPROCESSクロマトグラフィースキッドおよび40cm I.D. CHROMOFLOWカラム(GE Healthcare)で行われた。UPLC解析は、Waters CorporationからのACQUITY UPLCシステムを利用した。細胞培養は、2L BIOSTAT B-DCUベンチトップバイオリアクター(Sartorius)、50、250、もしくは2000L HYCLONE単回使用バイオリアクター(Thermo Scientific)、または160Lステンレススチールバイオリアクター(ABEC Inc.)のいずれかを用いて実施された。
【0067】
清澄化された細胞培養液が直接使用されなかった場合に、親和性分離開発のためのロード材料が、20±1cmベッド高MABSELECT SUREカラムを用いて親和性捕捉クロマトグラフィーによって産生された。20mMリン酸ナトリウムpH7.2の2カラム体積(CV)での平衡化の後、カラムは、清澄化された細胞培養液を10〜40g 結合性抗体/Lまでロードされた。結合性抗体の濃度は、二重特異性およびFcFcの力価の合計により決定された。カラムは洗浄され、タンパク質は、2CVのカラムストリップの前に専用の緩衝液システムで溶出された。全体の溶出ピークが回収され、2Mトリス塩を有するpH7.5±0.5で中和された。
【0068】
全ての親和性分離クロマトグラフィーは、20±1cmベッド高カラムを用いて実施された。検討されたプロテインAカラムは、ロード適用の前に、2CVの20mMリン酸ナトリウムpH7.2で平衡化された。ロードした後、カラムは、専用の洗浄緩衝液システムで洗浄され、特定されるように、勾配溶出または均一濃度溶出のいずれかで溶出された。均一濃度ランのために、4CVの溶出体積が使用され、溶出工程の開始の後、0.5〜4CVからのプールを回収した。勾配溶出緩衝液および均一濃度溶出緩衝液の両方は、緩衝種として40mM酢酸を含んだ。以下の溶出カラムは、2CVの緩衝液で取り去られた。特に記載しない限り、全ての工程は、400cm/hの線速度で実施された。UNICORN 6.1ソフトウエア(GE Healthcare)は、半分の高さでの幅を用いるガウスピークを推定するピーク分離能(Rs)の計算を含む、クロマトグラフィー解析のために使用された。自動化された分割が行われた場合、ピークリフトオフは、ベースラインUV280において>50mAuの増加によって定義された。実験、解析、およびモデリングの統計学的設計は、JMP 11.1.1(SAS Institute Inc.)を用いて実施された。
【0069】
CAPTO MMCクロマトグラフィーは、4分の滞留時間(線速度300cm/h)で実施された全ての工程で、25.1 Lカラム(20cmベッド高:40cm I.D.)を用いて行われた。親和性分離プールは、水で50%に希釈され、pH5.0±0.1に調整された。カラムは、40mM酢酸ナトリウム、250mM塩化カルシウム、pH5.0±0.1中で2CVの平衡化の前に2CVの2M NaClで予め平衡化された。ロード適用の後、カラムは、40mMトリス、40mM酢酸、pH5.0±0.1の3CVで洗浄され、その後、産物は、20mMトリス、60mM酢酸、pH8.0±0.1(bsAb C)または20mMトリス、40mM酢酸、pH8.0±0.1(bsAb D)のいずれかの8CVで溶出された。プールは、UV280nmのリフトオフから溶出工程の最後まで回収された。溶出の後、カラムは、2CVの2M NaCl、その後、2CVの1M NaOHで洗浄された。
【0070】
宿主細胞タンパク質(「HCP」)定量化は、商業的に入手可能なELISAキットCat#F550(Cygnus Technologies)を用いて実施された。連続する10mMリン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、pH7.0移動相における2つのACQUITY UPLC PrST SECカラム、200Å、1.7μm、4.6mm×150mm cat#186005225による、可溶性凝集物の定量化。二重特異性の純度は、連続して3つの予め充填されたPOROS A 20μmカラム(2.1mm×30mm、0.1mL)cat#2-1001-00、および均一濃度溶出緩衝液システムを用いて測定された。二重特異性およびFcFcの力価は、POROS A 20μmカラム(2.1mm×30mm、0.1mL)cat#2-1001-00を用いて測定され、Fc*Fc*の力価は、POROS G 20μmカラム(2.1mm×30mm、0.1mL)を流れたもののローディングによって測定された。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4