(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702968
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】クロージャシステム
(51)【国際特許分類】
A43C 11/00 20060101AFI20200525BHJP
A43B 23/02 20060101ALI20200525BHJP
A44B 99/00 20100101ALI20200525BHJP
A43C 11/16 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
A43C11/00
A43B23/02 106
A44B99/00 611M
A43C11/16
【請求項の数】22
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-525661(P2017-525661)
(86)(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公表番号】特表2017-525528(P2017-525528A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】CA2015050727
(87)【国際公開番号】WO2016015161
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年7月26日
(31)【優先権主張番号】62/031,220
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/060,745
(32)【優先日】2014年10月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517032956
【氏名又は名称】パワーレース・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ラッベ,フレデリック
【審査官】
柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0198867(US,A1)
【文献】
米国特許第08087188(US,B2)
【文献】
国際公開第2007/080205(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0082963(US,A1)
【文献】
特表2006−502797(JP,A)
【文献】
特開2003−093109(JP,A)
【文献】
米国特許第6735829(US,B2)
【文献】
米国特許第6467194(US,B1)
【文献】
米国特許第6427361(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43C 11/00−11/24
A43B 23/02
A44B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロージャシステムであって、前記クロージャシステムが、
ボディと、起動デバイスと、前記ボディの少なくとも1つの側壁内に収容される少なくとも1つの引き締め機構とを備え、
前記ボディは、基部構造、および、物体を受けるための空洞を画定するように前記基部構造から突出する側壁を有し、
前記起動デバイスは、前記クロージャシステム内に前記物体を配置することにより作動可能でり、前記起動デバイスが前記ボディ内に収容され、押し上げ構成と押し下げ構成との間で動作可能であり、
前記少なくとも1つの引き締め機構は、前記ボディに機能的に接続可能であり、前記起動デバイスに動作可能に反応し、その結果、前記押し上げ構成から前記押し下げ構成の間での前記起動デバイスの移行時に前記少なくとも1つの引き締め機構が前記物体の周りで前記ボディを引き締めるようになり、また、前記押し下げ構成から前記押し上げ構成への前記起動デバイスの移行時に前記少なくとも1つの引き締め機構が前記物体から前記ボディを緩めるようになり、前記少なくとも1つの引き締め機構が少なくとも1つの連結組立体を備え、
前記各連結組立体が、
前記起動デバイスを前記ボディに動作可能に連結する少なくとも1つの張力要素、
前記押し上げ構成から前記押し下げ構成への前記起動デバイスの前記移行時に経路に沿って前記少なくとも1つの張力要素を変位させてそれにより前記物体の周りで前記ボディを引き締めるための、および、前記押し下げ構成から前記押し上げ構成への前記起動デバイスの前記移行時に前記経路に沿って前記少なくとも1つの張力要素を元の緩んだ構成へと戻してそれにより前記物体から前記ボディをほどくための、可動ディスプレーサ、
前記少なくとも1つの張力要素に動作可能に接続されて前記可動ディスプレーサに取り外し可能に係合可能であるロックデバイスであって、前記ロックデバイスが、前記起動デバイスが前記押し下げ構成にある状態において前記可動ディスプレーサに前記ロックデバイスが係合されるロック構成と、前記ロックデバイスが可動ディスプレーサを選択的に外してそれにより前記押し上げ構成から前記押し下げ構成への前記起動デバイスの移行時に前記可動ディスプレーサが前記経路に沿って自由に移動することが可能となる変位可能構成と、の間で動作可能である、ロックデバイス、ならびに、
前記ボディ上に設置されて前記可動ディスプレーサに機能的に接続される解放デバイスであって、前記解放デバイスが前記ロック構成から前記変位可能構成へと前記ロックデバイスをアンロックするように構成される、解放デバイスを備え、
前記ロックデバイスが、前記可動ディスプレーサの移動により変位可能でありまた前記張力要素に連結されるロック挿入物をさらに備え、前記ロック挿入物が、前記可動ディスプレーサの軌道のすぐ近くに形成される凹部の中に取り外し可能に挿入可能であり、それにより、前記凹部の中に前記ロック挿入物が入るときに前記可動ディスプレーサとは関係なく前記張力要素内で張力が維持され、前記起動デバイスが前記張力要素から外れ、また、前記起動デバイスから前記物体が取り外されて前記解放デバイスが外されるとき、前記可動ディスプレーサが移動することで前記凹部から前記ロック挿入物が取り外され、前記張力要素から張力が取り除かれる、
クロージャシステム。
【請求項2】
前記物体が人間の付属肢または頭部であり、前記クロージャシステムが衣服に一体化される、請求項1に記載のクロージャシステム。
【請求項3】
前記衣服が、履き物、手袋、帽子、ヘルメットおよび補綴具からなる群から選択される、請求項2に記載のクロージャシステム。
【請求項4】
前記衣服が履き物であり、前記基部構造が前記履き物の靴底であり、前記可動ディスプレーサが線形可動ディスプレーサであり、前記解放デバイスが連接式レバーであり、前記ロック挿入物がペレット要素である、請求項2に記載のクロージャシステム。
【請求項5】
前記衣服が履き物であり、前記基部構造が前記履き物の靴底であり、前記可動ディスプレーサが回転可能な可動ディスプレーサであり、前記解放デバイスが連接式レバーであり、前記ロック挿入物がペレット要素である、請求項2に記載のクロージャシステム。
【請求項6】
前記履き物が、前記回転可能な可動ディスプレーサおよび前記ロックデバイスを収容するケーシングを備える、請求項5に記載のクロージャシステム。
【請求項7】
前記連接式レバーが前記ボディの後部に設置される、請求項4から6までのいずれか一項に記載のクロージャシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの張力要素およびコネクタが、ケーブル、ストリング、コードおよびストラップからなる群から選択される取付具である、請求項7に記載のクロージャシステム。
【請求項9】
前記起動デバイスが中底を備える、請求項4から8までのいずれか一項に記載のクロージャシステム。
【請求項10】
前記起動デバイスがリンクプレートを介して前記少なくとも1つの引き締め機構に接続可能である、請求項4から9までのいずれか一項に記載のクロージャシステム。
【請求項11】
前記ボディが前記空洞を覆う凸部をさらに備え、前記凸部が使用者の足の周りで前記凸部を引き締めるための少なくとも1つの圧迫デバイスを備え、前記少なくとも1つの圧迫デバイスが、ストラップ、タイ、ベルト、ひも、ストリング、ワイヤ、ケーブル、および、フック・ループ式ファスナからなる群から選択される、請求項4から10までのいずれか一項に記載のクロージャシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの圧迫デバイスが前記少なくとも1つの張力要素の端部に接続可能である、請求項11に記載のクロージャシステム。
【請求項13】
前記使用者の前記足が前記ボディから取り外されているときの、前記起動デバイスによって形成される地面を基準としたオフセットにより、前記押し上げ構成が画定され、また、前記使用者の前記足が前記ボディ内で受けられているときの、地面に実質的に平行である前記起動デバイスにより、前記押し下げ構成が画定される、請求項11または12に記載のクロージャシステム。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一項に記載のクロージャシステムを備える、重量により起動してひもを結ばれる履き物。
【請求項15】
ひもロックをさらに備え、前記ひもロックが、
第1の端部から第2の端部まで頂部部材を横断する主通路を画定する第1のアパーチャを備える頂部部材と、
前記頂部部材を横断する前記通路内に嵌合されるように整形される底部部材であって、前記底部部材が、
閉じた頂部端部、
開いた底部端部、および、
前記開いた底部端部に集まるように前記閉じた頂部端部の両側で少なくとも1つのひもを誘導するように整形およびサイズ決定される対向するように配置される一対の副通路
を備える、底部部材と、
を備え、
前記頂部部材と前記底部部材との間に前記少なくとも1つのひもを配置するとき、前記底部部材の前記閉じた頂部端部が前記頂部部材の方に変位されることで、前記底部部材の前記副通路と前記頂部部材の前記主通路との間で前記少なくとも1つのひもが圧縮されてロックされ、また、前記底部部材の前記開いた底部端部が前記頂部部材の方に変位されることで、前記少なくとも1つのひもがそこから解放される、
請求項14に記載の重量により起動してひもを結ばれる履き物。
【請求項16】
ひもロックであって、前記ひもロックが、
第1の端部から第2の端部まで頂部部材を横断する主通路を画定する第1のアパーチャを備える頂部部材と、
前記頂部部材を横断する前記主通路内に嵌合されるように整形される底部部材であって、前記底部部材が、
閉じた頂部端部、
開いた底部端部、および、
前記開いた底部端部に集まるように前記閉じた頂部端部の両側で少なくとも1つのひもを誘導するように整形およびサイズ決定される対向するように配置される複数の副通路
を備える、底部部材と、
を備え、
前記頂部部材と前記底部部材との間に前記少なくとも1つのひもを配置するとき、前記底部部材の前記閉じた頂部端部が前記頂部部材の方に変位されることで、前記底部部材の前記副通路と前記頂部部材の前記主通路との間で前記少なくとも1つのひもが圧縮されてロックされ、また、前記底部部材の前記開いた底部端部が前記頂部部材の方に変位されることで、前記少なくとも1つのひもがそこから解放される、
ひもロック。
【請求項17】
プリングワイヤとひも組立体との間で張力を分配するためのひも張力分配装置であって、前記ひも張力分配装置が、
前記プリングワイヤを受けるように構成される、前記ひも張力分配装置の第1の側にある第1の受け構造、および、
前記ひも組立体を受けるように構成される、前記ひも張力分配装置の第2の側にある第2の受け構造、
を備え、
前記プリングワイヤの第1の有効断面積が前記ひも組立体の第2の有効断面積より小さい、
ひも張力分配装置。
【請求項18】
前記第2の受け構造が複数のひもを受けるように構成される、請求項17に記載のひも張力分配装置。
【請求項19】
前記第2の受け構造が少なくとも1つの平坦なひもを受けるように構成される、請求項17に記載のひも張力分配装置。
【請求項20】
プリングワイヤとひも組立体との間で張力を分配するためのひも張力分配装置をさらに備え、前記ひも張力分配装置が、
前記プリングワイヤを受けるように構成される、前記ひも張力分配装置の第1の側にある第1の受け構造、および、
前記ひも組立体を受けるように構成される、前記ひも張力分配装置の第2の側にある第2の受け構造、
を備え、
前記プリングワイヤの第1の有効断面積が前記ひも組立体の第2の有効断面積より小さい、
請求項14に記載の重量により起動してひもを結ばれる履き物。
【請求項21】
クロージャシステムであって、前記クロージャシステムが、
ボディと、前記ボディの少なくとも1つの側壁内に収容される少なくとも1つの引き締め機構とを備え、
前記ボディは、基部構造、および、物体を受けるための空洞を画定するように前記基部構造から突出する側壁を有し、
前記少なくとも1つの引き締め機構は、前記ボディに機能的に接続可能であり、引き締めアクチュエータに動作可能に反応し、その結果、解除構成から引き締め構成の間での前記引き締めアクチュエータの移行時に前記少なくとも1つの引き締め機構が前記物体の周りで前記ボディを引き締めるようになり、また、前記引き締め構成から前記解除構成への前記引き締めアクチュエータの移行時に前記少なくとも1つの引き締め機構が前記物体から前記ボディを緩めるようになり、前記少なくとも1つの引き締め機構が少なくとも1つの連結組立体を備え、
前記各連結組立体が、
前記引き締めアクチュエータを前記ボディに動作可能に連結する少なくとも1つの張力要素、
前記解除構成から前記引き締め構成への前記引き締めアクチュエータの前記移行時に経路に沿って前記少なくとも1つの張力要素を変位させてそれにより前記物体の周りで前記ボディを引き締めるための、および、前記引き締め構成から前記解除構成への前記引き締めアクチュエータの前記移行時に前記経路に沿って前記少なくとも1つの張力要素を元の緩んだ構成へと戻してそれにより前記物体から前記ボディをほどくための、可動ディスプレーサ、
前記少なくとも1つの張力要素に動作可能に接続されて前記可動ディスプレーサに取り外し可能に係合可能であるロックデバイスであって、前記ロックデバイスが、起動デバイスが押し下げ構成にある状態において前記可動ディスプレーサに前記ロックデバイスが係合されてそれにより前記可動ディスプレーサが前記経路に沿って移動することが防止されるロック構成と、前記ロックデバイスが可動ディスプレーサを選択的に外してそれにより押し上げ構成から前記押し下げ構成への前記起動デバイスの移行時に前記可動ディスプレーサが前記経路に沿って自由に移動することが可能となる変位可能構成と、の間で動作可能である、ロックデバイス、ならびに、
前記ボディ上に設置されて前記可動ディスプレーサに機能的に接続される解放デバイスであって、前記解放デバイスが前記ロック構成から前記変位可能構成へと前記ロックデバイスをアンロックするように構成される、解放デバイス
を備え、
前記ロックデバイスが、前記可動ディスプレーサの移動により変位可能でありまた前記張力要素に連結されるロック挿入物をさらに備え、前記ロック挿入物が、前記可動ディスプレーサの軌道のすぐ近くに形成される凹部の中に取り外し可能に挿入可能であり、それにより、前記凹部の中に前記ロック挿入物が入るときに前記可動ディスプレーサとは関係なく前記張力要素内で張力が維持され、前記引き締めアクチュエータが前記張力要素から外れ、また、前記解放デバイスが外されるとき、前記可動ディスプレーサが移動することで前記凹部から前記ロック挿入物が取り外され、前記張力要素から張力が取り除かれる、
クロージャシステム。
【請求項22】
前記張力要素のプリングワイヤと前記ボディ上のひも組立体との間で張力を分配するためのひも張力分配装置をさらに備え、前記ひも張力分配装置が、
前記プリングワイヤを受けるように構成される、前記ひも張力分配装置の第1の側にある第1の受け構造、および、
前記ひも組立体を受けるように構成される、前記ひも張力分配装置の第2の側にある第2の受け構造、
を備え、
前記プリングワイヤの第1の有効断面積が前記ひも組立体の第2の有効断面積より小さい、
請求項21に記載のクロージャシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してクロージャシステムに関する。本発明は概して履き物に関し、より詳細には、靴、ブーツおよびスノーシューズなどのひもを結ぶことが意図されるクロージャシステムに関し得るが、本発明は他の種類の物体を閉じるのにも使用され得る。本発明の別の態様は概してひも張力分配装置(lace tension distributor)に関する。本発明の別の態様は概して履き物に関するが、より詳細には、靴、ブーツ、スノーシューズ、または、ひもを組み込む任意の物品、のひもを結ぶことが意図されるひもロック(lace lock)に関する。
【背景技術】
【0002】
靴のひもを結ぶことは一部の人々にとっては困難なものであるかまたは不可能なものである可能性があることから、ここ数年、複数の発明者がこのことを単純化することを試みてきた。
【0003】
本発明者による米国特許出願公開第2005/0198867(A1)号(現在放棄されている)が、使用者の重量によりひも締めデバイス(lacing device)が起動されるような、自己ひも結び靴(self tying shoe)を説明している。重量が足の下の靴底内に位置する機構に伝達される。多数の可動部品がこの機構を破損しやすいものとする。加えて、この機構が下方に位置するということが、足にいくらかの不快感を与える。
【0004】
米国特許第4,741,115号が閉じるためのおよび調整するための動作組立体を備えるスキー靴に関連し、閉じているケーブルを巻くために被駆動歯車(driven gearwheel)に選択的に係合可能である駆動歯車(driving gearwheel)および/またはブーツの調整デバイスを動作させる、スキー靴によって支持される動力源を含む。
【0005】
米国特許第5,205,055号が、靴のアッパー内のひも締め用の隙間(lacing gap)の周りで方向づけられる複数の固定ウェブ(securement web)を有する靴部材に関連し、ここでは、ウェブの各々が関連付けられる空洞内に摺動可能に設置され、テザーライン(tether line)がクランクプーリの上方で動作可能となるようにウェブに設置される。クランクプーリが、それぞれの空洞内で固定ウェブを強制的に突出させるために摺動可能アクチュエータロッドに動作可能に係合されており、ここでは、ガスシリンダが、関連付けられる各固定ウェブを基準として関連付けられる各テザーラインを巻くことを目的として、ガイドシリンダ(guide cylinder)内にある関連付けられる摺動ロッドを使用することによりクランクプーリを回転させるように動作可能である。
【0006】
米国特許第5,335,401号が、靴の上で靴ひもを迅速に引き締めるための、および、蝶結びまたは他の結び目を作るように結ぶことを必要とすることなく、引き締めたひもをロックするためのデバイスを説明している。このデバイスが、スロットの一方の側に沿う面取りされる縁部を有するように形成されるスロット開口部を備えるボディユニットを有する。1組の面取りされる隆起部を有する回転可能なシャフトがスロットの幅を横断するように横方向にロールする。スロットを通して導入される靴ひもがスロット開口部の面取りされる縁部とシャフトの面取りされる隆起部との間で挟まれるようになる。シャフトが、所望される張力まで引き締められるときにひもを定位置で自動でロックするようにばねにより付勢される。ひもを抜く場合、クイックリリースレバーがシャフトを引っ込める。
【0007】
米国特許第5,511,325号が、踵骨を受けるロケーションの上方の領域内でアッパーの踵の上に配置される中央回転クロージャ(central rotary closure)を有し、さらには、中央回転クロージャから靴の各側に向かって延びる引き締めセクションを有する少なくとも1つの引き締め要素を有する、靴を示している。引き締めセクションが、各引き締めセクションから延びる少なくとも1つのストラップを備える結合要素または甲の上の結合要素ならびに/あるいはアーチ(arch)により、他の引き締めセクションまたは結合要素に結合される。
【0008】
米国特許第5,600,874号が、必要となるスペースを一切増大させることなく、コードディスクの回転数を制限するような形で靴を閉じるための少なくとも1つのコードタイプのテンショニング部材のための回転可能に支持されるコードディスクを備える、靴のための中央クロージングデバイス(central closing device)を示している。コードディスクおよび静止部材の両方が、各々、等しい歯ピッチを有するが直径の異なる相互に協働する歯形を有する。これらの歯形の異なる直径により作られる中間スペース内に、等しいピッチのアイドリングピニオンが位置し、これが2つの歯形に噛合する。アイドリングピニオンの移動を制限するために少なくとも1つの停止部が設けられる。
【0009】
米港特許第5,718,021号が靴の上で靴ひもを結ぶためのデバイスを示している。このデバイスが、基部、および、開位置と閉位置との間で枢動可能となるように基部上にヒンジ式に設置されるカバーを有する。基部が、頂部表面、底部表面、ならびに、そこを通して靴ひもを挿入することができるようにサイズ決定および整形される第1および第2の孔を有する。カバーが、頂部表面、底部表面、ならびに、カバーが閉位置にある場合に第1および第2の孔の中へとそれぞれ突出するように位置合わせされる第1および第2のピンを有する。カバーが、閉位置にあるカバーを着脱自在にロックするために基部上の先端部に係合されるロックタブ(locking tab)をさらに有する。
【0010】
米国特許第5,839,210号が、着用者の甲の周りの靴ケーシングを引き締めるように位置決めされる調整可能なストラップを組み込む靴を示している。リトラクタ機構が弾性部材を組み込む。着用者がストラップを引っ張ることにより靴を緩めるときに、弾性部材が装填される。留め具が外されて弾性部材を解放するときに、蓄積されたエネルギーが解放され、それにより着用者の足の上で靴が引き締められて固く締められる。
【0011】
米国特許第6,202,953号が、引き締め機構に取り付けられるひもを有する履き物ひも締めシステムを示している。ひもが、足の頂部および履き物の足首部分に沿うように配置される一連の対向する誘導部材の中を通される。ひもおよび誘導装置は、誘導部材を通してひもを摺動させるのを促進するために、好適には低摩擦表面を有し、その結果、履き物部材の全体にわたってひもが均等に張力を分配するようになる。この引き締め機能により、ひもの張力を漸進的に調整することが可能となる。解放機構により、使用者がひもを迅速に緩めることが可能となる。
【0012】
米国特許第6,467,194号が、交差するひもと、着用者の足の周りで靴を引き締めることを目的として交差するひもを自動で引き締めるために一方向に動作し、また、着用者の足から靴を取り外すことができるようにするために容易に解放され得る引き締め機構と、を備える、自動引き締め靴(automated tightening shoe)を示している。
【0013】
いくつかの発明が本底領域に一体化される手動引き締め機構を含み、また、他のいくつかの発明が、靴の上に係止される引っ込み可能であるヒールを使用する。さらに他のシステムが、手動で巻くことを伴う中央クロージングデバイスを使用する。これらのすべての発明は手で動作させる必要がある。別のシステムが空気圧手段を使用することを伴う。
【0014】
本発明者による加国特許CA2564152が、使用者の足に着用されている履き物のひもを重量より起動して結ぶことを説明しており、それにより、使用者が足の周りで履き物を容易に引き締めることが可能となる。履き物が、足を受けるためのボディを有する。起動デバイスがボディの靴底に接続され、使用者の足によって起動される。この起動デバイスは、履き物内での足の位置に応じて、押し上げ構成と押し下げ構成との間で動作する。ボディの垂直壁内にある引き締め機構が起動デバイスの動作に反応する。起動デバイスが押し上げ構成である場合、引き締め機構が使用者の足の周りで緩んでいる。使用者が起動デバイスを押し下げて押し下げ構成にする場合、引き締め機構が使用者の足の周りに密着した状態となる。しかし、この機構は、特定のシナリオにおいて、疲労応力(fatigue stress)を原因として破損する可能性がある。
【0015】
米国特許第4790048号が、頂部プレートが底部プレートまで180度回転して底部プレートに対してスナップ式にロックされるときに交差してひもを握持するような頂部プレートおよび底部プレートを有する靴ひもロックを説明している。このデザインは幾分か嵩高であり、また、スナップ式ロック機構を必要とする。
【0016】
したがって、上で言及したことを考慮すると、そのデザインおよび構成要素により、上で言及した従来技術の問題のうちのいくつかの問題を解消するかまたは少なくとも最小にすることが可能となるようなクロージャシステムが必要とされる。
【0017】
また、クロージャシステムを使用するのを容易にすることができるひも張力分配装置が必要とされる。
また、そのデザインおよび構成要素により、従来技術のシステムに対しての改善を構成し得るような改善されたひもロックシステム(lace locking system)が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、そのデザインおよび構成要素により、上で言及した要求のうちのいくつかの要求を満たし、したがってそれにより、自己ひも締め(self−lacing)または自己引き締め(self−tightening)あるいは他の同様の用途で使用される従来技術で既知の他の関連するクロージャシステムおよび/または方法に対して改善されるような、クロージャシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によると、本明細書で簡潔に説明されるようなクロージャシステムおよび添付図面で例示されるようなクロージャシステムなどの、クロージャシステムを用いて、容易に理解されるように、上記の目的のうちの1つの目的が達成される。
【0020】
より詳細には、本発明によると、クロージャシステムが提供され、このクロージャシステムが、
基部構造、および、物体を受けるための空洞を画定するように基部構造から突出する少なくとも2つの対向する側壁を有するボディと、
クロージャシステム内に物体を配置することにより動作可能である起動デバイスであって、この起動デバイスがボディ内に収容され、押し上げ構成と押し下げ構成との間で動作可能である、起動デバイスと、
基部構造から一定の垂直距離のところでボディの少なくとも1つの垂直側壁内に収容される少なくとも1つの引き締め機構であって、この少なくとも1つの引き締め機構がボディに機能的に接続されて起動デバイスに動作可能に反応し、その結果、押し上げ構成から押し下げ構成の間での起動デバイスの移行時にこの少なくとも1つの引き締め機構が物体の周りでボディを引き締めるようになり、また、押し下げ構成から押し上げ構成への起動デバイスの移行時にこの少なくとも1つの引き締め機構が物体からボディを緩めるようになり、またここでは、この少なくとも1つの引き締め構成が少なくとも1つの連結組立体を備え、各連結組立体が、
起動デバイスをボディに動作可能に連結する少なくとも1つの張力要素、
押し上げ構成から押し下げ構成への起動デバイスの移行時に経路に沿って少なくとも1つの張力要素を変位させてそれにより物体の周りでボディを引き締めるための、および、押し下げ構成から押し上げ構成への起動デバイスの移行時にその経路に沿って少なくとも1つの張力要素を元の緩んだ構成へと戻してそれにより物体からボディをほどくための、可動ディスプレーサ(movable displacer)、
少なくとも1つの張力要素に動作可能に接続されて可動ディスプレーサに取り外し可能に係合可能であるロックデバイスであって、このロックデバイスが、起動デバイスが押し下げ構成にある状態において可動ディスプレーサにロックデバイスが係合されてそれにより経路に沿ってディスプレーサが移動することが防止されるロック構成と、ロックデバイスが可動ディスプレーサを選択的に外してそれにより押し上げ構成から押し下げ構成への起動デバイスの移行時にディスプレーサが経路に沿って自由に移動することが可能となる変位可能構成と、の間で動作可能である、ロックデバイス、ならびに
ボディ上に設置されて可動ディスプレーサに機能的に接続される解放デバイスであって、この解放デバイスがロック構成から変位可能構成へとロックデバイスをアンロックするように構成される、解放デバイス
を備える、少なくとも1つの引き締め機構と、
を備え、
ここでは、ロックデバイスが、可動ディスプレーサの移動により変位可能でありまた張力要素に連結されるロック挿入物(locking insert)をさらに備え、このロック挿入物が、可動ディスプレーサの軌道のすぐ近くに形成される凹部の中に取り外し可能に挿入可能であり、それにより、凹部の中にロック挿入物が入るときに可動ディスプレーサとは関係なく張力要素内で張力が維持され、起動デバイスが張力要素から外れ、また、起動デバイスから物体が取り外されて解放デバイスが外されるとき、可動ディスプレーサが移動することで凹部からロック挿入物が取り外され、張力要素から張力が取り除かれる。
【0021】
本発明によると、ひもロックがさらに提供され、このひもロックが、
第1の端部から第2の端部まで頂部部材を横断する主通路を画定する第1のアパーチャを備える頂部部材と、
頂部部材を横断する通路内に嵌合されるように整形される底部部材であって、この底部部材が:
− 閉じた頂部端部、
− 開いた底部端部、および、
− 開いた底部端部に集まるように閉じた頂部端部の両側でひもを誘導するように整形およびサイズ決定される対向するように配置される複数の副通路
を備える、底部部材と、
を備え、
ここでは、頂部部材と底部部材との間にひもを配置するとき、底部部材の閉じた頂部端部が頂部部材の方に変位され、底部部材の副通路と頂部部材の主通路との間でひもを圧縮してロックし、また、底部部材の開いた底部端部が頂部部材の方に変位され、そこからひもが解放される。
【0022】
本発明によると、プリングワイヤとひも組立体との間で張力を分配するためのひも張力分配装置がさらに提供され、このひも張力分配装置が、
− プリングワイヤを受けるように構成される、ひも張力分配装置の第1の側にある第1の受け構造、および、
− ひも組立体を受けるように構成される、ひも張力分配装置の第2の側にある第2の受け構造
を備え、
ここでは、プリングワイヤの第1の有効断面積がひも組立体の第2の有効断面積より小さい。
【0023】
添付図面を参照する好適な実施形態の以下の詳細な説明から、本発明の上記のおよび他の目的、特徴および利点がより容易に明らかとなり、ここでは、本発明の好適な実施形態は例として示されて説明される。理解されるであろうが、本発明は他の異なる実施形態も可能であり、そのいくつかの細部が本発明から一切逸脱することなく種々の明らかな点において修正され得る。したがって、図面および説明は本質的に例示であるとみなされ、限定的であるとみなされない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態による、重量により起動してひもを結ばれる靴(weight−activated tying shoe)を示す斜視図である。
【
図2】靴の起動デバイスが下向きの位置で示されている、
図1に示されるものを示す別の斜視図である。
【
図3】
図1に示される靴の内部構成要素を示す斜視図である。
【
図4】起動デバイスが上向きの位置で示されている、
図1に示される靴の内部構成要素を示す側面図である。
【
図5】起動デバイスが下向きの位置で示されている、
図4に示される靴の内部構成要素を示す別の側面図である。
【
図6】
図3に示される靴の内部構成要素を示す分解斜視図である。
【
図7】起動デバイスが上向きの位置で示されている、本発明の別の実施形態による靴の内部構成要素を示す側面図である。
【
図8】起動デバイスが下向きの位置で示されている、
図7に示される靴の内部構成要素を示す側面図である。
【
図9】起動デバイスが上向きの位置で示されている、本発明の別の実施形態による靴の内部構成要素を示す側面図である。
【
図10】起動デバイスが下向きの位置で示されている、
図9に示される靴の内部構成要素を示す側面図である。
【
図11】本発明の実施形態によるひもロックを示す斜視図である。
【
図12】ひもが中に挿入されており、ひもロックが開位置にある、
図11に示されるひもロックを示す正面部分断面図である。
【
図13】ひもが中に挿入されており、ひもロックが閉位置にある、
図11に示されるひもロックを示す正面部分断面図である。
【
図14】本発明の実施形態による靴のためのクロージャシステムを示す斜視図である。
【
図15】ひもを引き締めた構成の、
図1に示されるものを示す別の斜視図である。
【
図16】
図14に示されるクロージャシステムを示す後方斜視図である。
【
図17】
図14に示される靴の内部構成要素を示す斜視図である。
【
図18】ひもが解除構成にある、
図14に示されるクロージャシステムの内部構成要素を示す斜視図である。
【
図19】ひもが引き締め構成にある、
図14に示されるクロージャシステムの内部構成要素を示す斜視図である。
【
図20】本発明の実施形態によるひも張力分配装置を示す正面図である。
【
図21】
図20に示されるひも張力分配装置を示す切欠図(cut view)である。
【
図22】本発明の別の実施形態によるひも張力分配装置を示す正面図である。
【
図23】本発明の別の実施形態によるひも張力分配装置を示す正面図である。
【
図24】本発明の別の実施形態によるひも張力分配装置を示す正面図である。
【
図25】本発明の別の実施形態によるひもロックを示す斜視図である。
【
図27】ひもを引き締めた構成の、本発明の別の実施形態によるクロージャシステムを示す後方斜視図である。
【
図28】ひも解除構成にある、
図27に示されるクロージャシステムを示す後方斜視図である。
【
図29】本発明の別の実施形態によるクロージャシステムを示す後方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の説明では、等しい参照符号は類似の要素を意味する。図に示されるかまたは本発明の記述で説明される実施形態、幾何学的構成、言及の材料、および/または、寸法は、単に好適な実施形態であり、単に例示のために与えられるものである。
【0026】
また、主として、少なくとも1つの引き締め機構を介して使用者の重量を適用することにより使用者の足の周りで自己引き締めされるように本開示のクロージャシステムを設計したが、当業者には明らかなように、本開示のクロージャシステムは他の種類の目的のためにも使用され得、他の種類の物体と共にも使用され得、また、他の分野でも使用され得る。したがって、本明細書で使用される「靴」、「足」、「靴底」などの表現は本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明を使用することができまた本発明が有用となり得るような他のすべての種類の目的または分野を含む。このクロージャシステムは、限定しないが、手袋、スケート靴、ブーツ、自転車ヘルメットおよび補綴具などを含めた多様な物体を共に使用され得る。
【0027】
また、本発明の文脈では、当業者には明らかであろうが、「靴」、「履き物」、「ブーツ」、「サンダル靴」および「スリッパ」という表現、さらには、当技術分野で既知の任意の他の等価の表現および/またはその複合語が交換可能に使用され得る。
【0028】
また、添付図面に示される本発明の実施形態が多様な構成要素を備えることができるが、また、示される、重量により起動してひもを結ばれる履き物(weight−activated tying footwear)の好適な実施形態が、本明細書で説明されて示される特定の幾何学的構成から構成されるが、これらの構成要素および幾何形状のすべてが本発明にとって不可欠であるというわけではなく、したがってそれらの各々が限定的な意味で解釈されるべきではなく、つまり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。やはり当業者には明らかであろうが、他の適切な構成要素およびそれらの間での協働、さらには、他の適切な幾何学的構成が、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で以下に簡潔に説明されるような形でおよび当業者により本明細書から容易に推論され得るような形で、本発明による重量により起動してひもを結ばれる履き物および相当する構成要素のために使用され得る。
【0029】
本発明によるクロージャシステム(1)の主要な構成要素および特徴の一部を考察してきたが、本明細書において以下で他の好適な実施形態をさらに考察する。
図1および6を参照すると、示される実施形態は2つの対称的な横方向のクロージャシステムを示しているが、単一のクロージャシステムとして機能する。
図1から6が履き物に適用されるクロージャシステム(1)の実施形態を示す。クロージャシステムが、履き物のための靴底などの基部構造を有するボディ(2)と、履き物の中の足などの物体を受けるための空洞を画定するように基部構造(2)から突出する少なくとも2つの対向する側壁(22)とを有する。
【0030】
図6により良好に示されるように、クロージャシステム(1)が、クロージャシステム(1)内に足などの物体を配置することにより作動可能である起動デバイス(32)を有する。起動デバイス(32)がボディ(2)内に収容され、押し上げ構成と押し下げ構成との間で動作可能である。
【0031】
図6を参照すると、引き締め機構(34)が基部構造から一定の垂直距離のところでボディ(2)の少なくとも1つの垂直側壁(22)内に収容されている。引き締め機構(34)がボディ(2)に機能的に接続可能であり、起動デバイス(32)に動作可能に反応し、その結果、押し上げ構成から押し下げ構成の間での起動デバイス(32)の移行時に引き締め機構(34)が物体の周りでボディ(2)を引き締めるようになる。押し下げ構成から押し上げ構成への起動デバイス(32)の移行時に、引き締め機構(34)が物体からボディ(2)を緩めるようになる。
【0032】
引き締め機構(34)が連結組立体(36)を有する。連結組立体(36)が、起動デバイス(32)をボディ(2)に動作可能に連結する、プリングワイヤ(7)などの張力要素を有する。
【0033】
回転可能な可動ディスプレーサ(14)などの可動ディスプレーサが、押し上げ構成から押し下げ構成への起動デバイス(32)の移行時に経路に沿って張力要素を変位させてそれにより物体の周りでボディ(2)を引き締める(
図5に部分的に示される)。可動ディスプレーサが、押し下げ構成から押し上げ構成への起動デバイス(32)の移行時にその経路に沿って張力要素を元の緩んだ構成へと戻してそれにより物体からボディ(2)をほどく(
図4に部分的に示される)。この可動ディスプレーサは起動デバイスを引き締め機構から外すことにより引き締め機構内の張力をより良好に制御することを補助し、快適さを向上させる。
【0034】
例えば凹部(20)に係合可能であるペレット要素(12)などの、ロックデバイス(38)が張力要素に動作可能に接続され、可動ディスプレーサに取り外し可能に係合され得る。ロックデバイスは、起動デバイスが押し下げ構成にある状態において可動ディスプレーサにロックデバイスが係合されてそれにより経路に沿ってディスプレーサが移動することが防止されるロック構成(
図5に部分的に示される)と、ロックデバイスが可動ディスプレーサを選択的に外してそれにより押し上げ構成から押し下げ構成への起動デバイスの移行時にディスプレーサが経路に沿って自由に移動することが可能となる変位可能構成(
図4に部分的に示される)と、の間で動作可能である。
【0035】
図7および8がロックデバイス(38)と可動ディスプレーサとの相互作用の別の実施形態を示しており、この事例では、線形要素(40)が変位可能構成(
図7に示される)からロック構成(
図8に示される)へとペレット要素(12)を変位させる。
【0036】
クロージャシステム(1)が、ボディ(2)上に設置されて可動ディスプレーサに機能的に接続される、
図1から8に示される例えば連接式レバー(6)などの解放デバイスをさらに有する。解放デバイス(6)は、ロック構成から変位可能構成へとロックデバイス(38)をアンロックするように構成される。
【0037】
図9および10が、回転可能な可動ディスプレーサ(14)に接続されるプリングタブ(42)である解放デバイスの別の実施形態を示している。
いくつかの示される実施形態では、ロックデバイス(38)が、可動ディスプレーサの移動により変位可能でありまた張力要素またはブリングワイヤ(7)に連結される、ペレット要素(12)などのロック挿入物を有する。ロック挿入物が、可動ディスプレーサの軌道のすぐ近くに形成される凹部(20)の中に取り外し可能に挿入可能であり、それにより、凹部(20)の中にロック挿入物が入るときに可動ディスプレーサとは関係なく張力要素内で張力が維持され、起動デバイスが張力要素から外れる。起動デバイスから物体が取り外されて解放デバイスが外されるとき、可動ディスプレーサが移動することで凹部からロック挿入物が取り外され、張力要素から張力が取り除かれる。
【0038】
いくつかの実装形態では、物体が人間の付属肢または頭部であり、クロージャシステムが衣服に一体化される。
他の実装形態では、図に示されるように、衣服が、履き物、手袋、帽子、ヘルメットおよび補綴具からなる群から選択される。
【0039】
図1から6に示されるように、衣服が履き物であるようないくつかの実装形態では、基部構造が履き物の靴底であり、可動ディスプレーサが回転可能な可動ディスプレーサであり、解放デバイスが連接式レバーであり、ロック挿入物がペレット要素であり、連結組立体がサイドウインチである。引き締め機構が2つのサイドウインチを備え、各サイドウインチが、靴底から一定のオフセット距離のところで、ボディの対応する側壁内に対向するように対称的に収容される。履き物が、数ある構成要素の中でもとりわけ、外側ケーシング(5)、内側ケーシング(13)、回転可能な可動ディスプレーサ(14)、ひも張力分配装置(4)、ペレット要素(12)、ストップリング(15)を備える起動ケーブル(10)、解放ケーブル(8)、および、プリングワイヤ(7)をさらに有する。履き物が、ケーブル(10、15)の作動を介して回転可能な可動ディスプレーサ(14)に接続される、踵の下にある起動ドーム(activation dome)(11)を起動デバイスとしてさらに有する。発泡体の起動ドーム(9)が踵の下にある剛体のドーム(11)に接続される。解放可能ケーブル(8)が、回転可能な可動ディスプレーサ(14)、および、解放デバイスまたは解放連接式レバー(release articulated lever)(6)に接続される。プリングワイヤ(7)が一方の側でひも張力分配装置(4)に接続され、もう一方の側でペレット要素(12)に接続される。履き物を引き締めるとき、ペレット要素(12)が回転可能な可動ディスプレーサによって押されて内側ケーシング(5)および外側ケーシング(13)の中を凹部(20)(
図4および5により良好に示される)まで移動し、それにより、回転可能な可動ディスプレーサ(14)に関係なく、プリングワイヤ(7)およびひも張力分配装置(12)内で張力が維持される。この構成は、所与の位置でプリングワイヤ(7)から起動デバイスまたは起動ドーム(11)を外すのを可能にする(ひも張力分配装置(4)が下側位置にある)。好適には4つ以上であるひも(3)がひも張力分配装置(4)に接続される。履き物から足を取り外すために踵を持ち上げるのと同時に解放のための連接式レバー(6)を押すとき、解放ケーブル(8)内の張力が回転可能な可動ディスプレーサ(14)を時計回り方向に回転させ、それによりペレット要素(12)を再係合させてひも張力分配装置(4)から張力を取り除くことが可能となる。
【0040】
図1および2をそれぞれ参照すると、開いた靴の構成および閉じた靴の構成が示されている。
図4が解放構成のひも張力分配装置(4)を示しており、ここでは、起動ドーム構成要素(9、11)が押し上げ構成にあり、起動ケーブルが回転可能な可動ディスプレーサ(14)と起動ドーム構成要素(9、11)との間にある。
【0041】
図5が引き締め構成にあるひも張力分配装置(4)を示しており、ここでは、起動ドーム構成要素(9、11)が降下構成であり、起動ケーブルが回転可能な可動ディスプレーサ(14)と起動ドーム構成要素(9、11)との間にある。いくつかの実装形態では、履き物が、回転可能な可動ディスプレーサおよびロックデバイスを収容するケーシングを有する。
【0042】
いくつかの実装形態では、連接式レバーがコネクタによりロックデバイスに接続可能である。
いくつかの実装形態では、連接式レバーがボディの後部に設置される。
【0043】
いくつかの実装形態では、張力要素およびコネクタが、ケーブル、ストリング、コードおよびストラップからなる群から選択される取付具である。
いくつかの実装形態では、起動デバイスが可撓性材料で作られる。
【0044】
いくつかの実装形態では、起動デバイスが中底を備える。
いくつかの実装形態では、起動デバイスがリンクプレートを介して少なくとも1つの引き締め機構に接続可能である。
【0045】
いくつかの実装形態では、リンクプレートが剛体材料で作られる。
いくつかの実装形態では、ボディが空洞を覆う凸部をさらに備え、この凸部が使用者の足の周りで凸部を引き締めるための少なくとも1つの圧迫デバイスを備え、ここでは、この少なくとも1つの圧迫デバイスが、ストラップ、タイ(tie)、ベルト、ひも、ストリング、ワイヤ、ケーブル、および、フック・ループ式ファスナからなる群から選択される。
【0046】
いくつかの実装形態では、圧迫デバイスが張力要素の端部に接続可能である。
いくつかの実装形態では、使用者の足がボディから取り外されているときの、起動デバイスによって形成される地面を基準とした上向きの角度により、押し上げ構成が画定され、また、使用者の足がボディ内で受けられているときの、地面に実質的に平行である起動デバイスにより、押し下げ構成が画定される。
【0047】
このクロージャシステムが履き物または靴と共に使用される実装形態では、このような履き物および/または靴が使用者の重量を利用して靴のひもを結ぶための効率的な手法を提供し、ここでは使用者が靴の内部で自分の足を摺動させるときに可動起動デバイスを押し下げることになる。これにより、靴のひもを締めることを目的として使用者の足に向かうように靴のボディを閉じるのに使用されるケーブルシステムを備えるウインチから好適にはなる引き締め機構が起動される。使用者はこの機構を起動するために単純に自分の重量を使用する。使用者のもう一方の足を使用することにより、使用者が機構の張力を解放するように連接式レバーを移動させることができる。さらに、凹部の中に取り外し可能に挿入可能である、履き物の構成をロックするためのロックデバイス内にあるペレット要素が引き締め機構内の張力をより良好に制御するのを補助し、ロックデバイスの耐久性を向上させる。
【0048】
図14から19がクロージャシステムの別の実施形態を示しており、ここでは、引き締め機構(34)が履き物の後方部分上に位置する。
図16および17により良好に示されるように、解放デバイス(6)が回転ノブを有する。ノブを回転させることにより、
図18または19に示される開いた靴の構成と閉じた靴の構成との間でペレット要素(12)を変位させることを可能にする。
【0049】
図27および28が、履き物の後方部分上にある引き締め機構(34)を備えるクロージャシステム(1)の代替的実施形態を示しており、また、回転可能ノブを備える解放デバイス(6)の別の実施形態を示している。
【0050】
図29がクロージャシステム(1)の別の実施形態を示しており、ここでは、クロージャシステム(1)の中に足などの物体を配置することにより作動可能である起動デバイス(32)が必要ない。引き締め機構(34)が、プリングワイヤ(7)の中へと張力を誘起して例えば履き物のボディを引き締めるために、手動で作動され得る。後でより詳細に説明されるように、プリングワイヤ(7)がその引き締めを介して比較的小さく変位するがそれでも、ひも張力分配装置(4)がプリングワイヤ(7)の張力を複数のひも(3)の全体に分配するのを補助する。
【0051】
本発明の別の態様によると、
図11から13を参照すると、ひもロック(110)が提供されている。ひもロック(110)が、第1の端部(116)から第2の端部(118)まで頂部端部(112)を横断する主通路(114)を画定する第1のアパーチャを有する頂部部材(112)を有する。底部部材(120)が、頂部部材(112)を横断する主通路(114)内に嵌合されるように整形される。底部部材(120)が、閉じた頂部端部(122)、開いた底部端部(124)、および、開いた底部端部(124)に集まるように閉じた頂部端部(122)の両側でひも(130)を誘導するように整形およびサイズ決定される対向するように配置される複数の副通路(126)を有する。頂部端部(112)と底部端部(120)との間にひも(130)を配置するとき、底部部材(120)の閉じた頂部端部(122)を頂部部材(112)の方に変位させることで、
図3により良好に示されるように、底部部材(120)の副通路(126)と頂部部材(112)の主通路(114)との間でひも(130)を圧縮してロックする。底部部材(120)の開いた底部端部(124)を頂部部材(112)の方に変位させることで、
図2により良好に示されるように、そこからひも(130)が解放される。上記のひもロックは上述したクロージャシステムを備える履き物に一体化され得るか、または、ひもを有する任意の物品で使用され得る。
【0052】
図25および26がひもロック(110)の別の実施形態を示しており、ここでは、最大で4つのまたはそれ以上のひも(130)が頂部部材(112)と底部部材(120)との間でロックされる。
【0053】
本発明の別の態様によると、
図20から24を参照すると、ひも張力分配装置(4)が示されている。この分配装置がプリングワイヤ(50)とひも組立体(52)との間で張力を分配することができる。
図21により良好に示されるように、分配装置(4)が、プリングワイヤ(50)を受けるように構成される、分配装置(4)の第1の側にある第1の受け構造(54)、および、ひも組立体(52)を受けるように構成される分配装置(4)の第2の側にある第2の受け構造(56)を有する。プリングワイヤ(50)の第1の有効断面積がひも組立体(52)の第2の有効断面積より小さい。有効断面積のこのような変化により、単一のプリングワイヤから任意のタイプの二次ひも組立体へと引張応力が効率的に分配される。このような分配装置を使用することは上述のクロージャ要素に特に関連性が深く、ここでは、張力要素が、張力要素またはプリングワイヤの比較的小さい変位を介してボディまたは履き物に引き締め張力を分配する必要がある。
【0054】
図20から22に示されるように、いくつかの実装形態では、第2の受け構造が複数のひもを受けるように構成され、ここではひもの数が変化してよい。
図23および24に示されるように、いくつかの実装形態では、第2の受け構造が、
図24に示される単一の平坦なひもまたは
図23に示される複数の平坦なひもなどの、少なくとも1つの平坦なひもを受けるように構成される。平坦なひもが、例えば、ロック要素と相互作用するときに固定するのを可能にすることができるフック・ループ式ファスナのひもまたは畝付きの/不規則な表面のひもを有することができる。
【0055】
特許請求の範囲の範囲は実施例に記載される好適な実施形態によって限定されるべきではなく、本記述に全体的に一致する最も広い解釈が与えられるべきである。