特許第6702975号(P6702975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702975
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ニードルインターフェース
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/162 20060101AFI20200525BHJP
   A61M 5/178 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   A61M5/162
   A61M5/178
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-532717(P2017-532717)
(86)(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公表番号】特表2017-538507(P2017-538507A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】EP2015079608
(87)【国際公開番号】WO2016096738
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年11月30日
(31)【優先権主張番号】14199393.1
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マルクス−マイノルフ・ディットリヒ
【審査官】 上石 大
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0039820(US,A1)
【文献】 米国特許第07794451(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0177174(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0256584(US,A1)
【文献】 特表2011−507555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/162
A61M 5/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位先端部(3.1)を有する中空針(3)を薬剤リザーバ(1)に連結するためのニードルインターフェース(2)であって、
リザーバ(1)の可撓性リザーバ壁(4)に固定される内側リング(5)と、
針(3)に取付け可能な外側リング(6)と
を含み、ここで、内側リング(5)および外側リング(6)の一方は、少なくとも1つの磁石(6.1)を含み、内側リング(5)および外側リング(6)の他方は、磁化可能な材料(5.1)または磁石(6.1)を含み、
ここで、外側リング(6)は、針(3)がリザーバ(1)にある内側リング(5)に取り付けられると、針(3)の軸の一セクションを円周方向に取り囲み、針を定位置に保持し、それによって可撓性リザーバ壁(4)を内側リング(5)と外側リング(6)との間で保持し、針(3)の近位先端部(3.1)が内側リング(5)および外側リング(6)を通って可撓性リザーバ壁(4)を貫通することが可能となる、前記ニードルインターフェース。
【請求項2】
内側リング(5)の磁化可能な材料(5.1)は、生体適合性および/または薬物適合性材料を含むクラッド(5.2)内に埋め込まれる、請求項1に記載のニードルインターフェース(2)。
【請求項3】
内側リング(5)は、リザーバ壁(4)に埋め込まれる、請求項1または2に記載のニードルインターフェース(2)。
【請求項4】
内側リング(5)は、リザーバ壁(4)の内面(4.1)に生物適合性および/または薬物適合性接着剤で接着される、請求項1または2に記載のニードルインターフェース(2)。
【請求項5】
クラッド(5.2)は、リザーバ壁(4)と同じ材料からなる、請求項2〜4のいずれか1項に記載のニードルインターフェース(2)。
【請求項6】
クラッド(5.2)の材料は、エチレンビニルアセテートである、請求項5に記載のニードルインターフェース(2)。
【請求項7】
内側リング(5)は、外側リング(6)から近位の針(3)の長さからリザーバ壁(4)の厚さを引いたものに少なくとも等しい厚さを呈する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のニードルインターフェース(2)。
【請求項8】
内側リング(5)は、近位先端部(3.1)を中に配置可能な中央孔(5.4)に対して横断方向に向いている、1つまたはそれ以上の流路(5.3)を含む、請求項7に記載のニードルインターフェース(2)。
【請求項9】
流路(5.3)は、中央孔(5.4)から半径方向に延びる、請求項8に記載のニードルインターフェース(2)。
【請求項10】
内側リング(5)は、近位方向に延びる保護ケージ(5.5)を含み、内側リング(5)の厚さと、保護ケージ(5.5)の長さとの和が、外側リング(6)から近位の針(3)の長さからリザーバ壁(4)の厚さを引いたものに少なくとも等しい、請求項1〜6のいずれか1項に記載のニードルインターフェース(2)。
【請求項11】
針(3)は、外側リング(6)に対して摺動可能に配置される、請求項1〜10のいずれか1項に記載のニードルインターフェース(2)。
【請求項12】
磁化可能な固定リング(7)をさらに含み、磁化可能な固定リング(7)が、針(3)を覆った状態で廃棄可能であり、固定リング(7)は、針(3)の近位先端部(3.1)に向かってだけ軸方向に移動可能であり、したがってリザーバ(1)に入ることが可能な針(3)の長さが制限される、請求項11に記載のニードルインターフェース(2)。
【請求項13】
固定リング(7)は、針(3)の外面に配置された並列している凹部(8)のうちの1つに係合するように適用された、1つまたはそれ以上の弾性アーム(7.1)を含む、請求項12に記載のニードルインターフェース(2)。
【請求項14】
可撓性リザーバ壁(4)と、請求項1〜13のいずれか1項に記載のニードルインターフェース(2)とを含む、薬剤を貯蔵するための薬剤リザーバ(1)。
【請求項15】
請求項14に記載の薬剤リザーバと、
該薬剤リザーバ(1)からノズル(12)に薬剤をポンプ供給するポンプ(11)と、
薬剤リザーバに連結されるように適用された近位先端部(3.1)を有する中空針(3)と
を含む、薬物送達デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近位先端部を有する中空針を薬剤リザーバに連結するためのニードルインターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達デバイスは、使用前に滅菌状態で保たれなければならない薬剤リザーバを含むことができる。リザーバは、リザーバの壁を針で穿孔することによって針に連結することができる。場合によっては、針は、ニードルインターフェースによってリザーバに取り付けることができる。しかし、針と可撓性リザーバ壁との間の連結を確立し、維持することが困難となる場合がある。
【0003】
したがって、改良型ニードルインターフェースが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、改良型ニードルインターフェースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、請求項1に記載のニードルインターフェースによって達成される。
【0006】
本発明の例示的な実施形態が、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明によれば、近位先端部を有する中空針を薬剤リザーバに連結するためのニードルインターフェースは、リザーバのリザーバ壁に固定される内側リングと、針に取り付け可能または取り付けられる外側リングとを含み、内側リングおよび外側リングの一方は、少なくとも1つの磁石を含み、内側リングおよび外側リングの他方は、磁化可能な材料または磁石を含む。
【0008】
これら2つのリングは、針が通ってリザーバのリザーバ壁を穿孔することができるニードルチャネルを形成し、かつ磁気的に互いに引き合うように配置され、それによって針がリザーバ内で定位置に画成され維持される。
【0009】
例示的な一実施形態では、内側リングの磁化可能な材料は、生体適合性および/または薬物適合性材料を含む、またはそれらの材料からなるクラッド内に埋め込まれる。これによって、リザーバ内の薬剤が内側リング内の磁化可能な材料または磁石によって汚染されることが防止される。
【0010】
例示的な一実施形態では、内側リングは、リザーバ壁に埋め込まれ、例えば、リザーバ壁は、互いに封止された少なくとも2つの層を含むことができ、内側リングはこれらの層のうちの2つの間に位置し、したがって内側リングはリザーバ壁に固定される。
【0011】
例示的な別の実施形態では、内側リングは、リザーバ壁の内面に生物適合性および/または薬物適合性の接着剤で接着され、したがって内側リングはリザーバ壁に固定される。
【0012】
例示的な一実施形態では、クラッドは、リザーバ壁と同じ材料、例えばエチレンビニルアセテートからなる。この材料によって、内側リングをリザーバ壁に熱封止することが可能となる。
【0013】
例示的な一実施形態では、内側リングは、近位先端部がリザーバに挿入されたときに内側リングから突出しないように、外側リングから近位の針の長さからリザーバ壁の厚さを引いたもの少なくとも等しい厚さを呈する。
【0014】
例示的な一実施形態では、内側リングは、近位先端部を中に配置可能な中央孔に対して実質的に横断方向に向いた1つまたはそれ以上の流路を含む。多数の流路を設けることによって、内側リングの外周面の多数の位置に針を流体連結することが可能となり、それによってリザーバが内側リングの周りで潰れるにつれて、リザーバがより完全に空になることが確実になる。例示的な一実施形態では、流路は、中央孔から半径方向に延びる。
【0015】
例示的な別の実施形態では、内側リングは、近位方向に延びる保護ケージを含み、内側リングの厚さと、保護ケージの長さとの和は、近位先端部がリザーバに挿入されたときに保護ケージから突出しないように、外側リングから近位の針の長さからリザーバ壁の厚さを引いたもの少なくとも等しい。
【0016】
例示的な一実施形態では、針は、外側リングに対して摺動可能に配置される。特に、磁化可能な固定リングが、針を覆った状態で廃棄可能とすることができ、固定リングは、針に対して軸方向の少なくとも一方向に固定可能であり、したがってリザーバに入ることが可能な針の長さを制限することができる。
【0017】
例示的な一実施形態では、固定リングは、固定リングに対して針を軸方向に拘束することが可能となるように、針の外面に配置された一連の凹部のうちの1つに係合するように適用された、1つまたはそれ以上の弾性アームを含む。
【0018】
例示的な一実施形態では、近位先端部付近の凹部のうちの1つは、近位先端部が固定リングによってカバーされるように、弾性アームをロックするように適用されている。したがって、針による穿刺外傷のリスクが軽減される。
【0019】
例示的な一実施形態では、ニードルインターフェースは、薬剤を貯蔵するための、可撓性リザーバ壁を含む薬剤リザーバの一部である。
【0020】
例示的な一実施形態では、薬物送達デバイスは、
− 薬剤リザーバからノズルに薬剤をポンプ供給するポンプと、
− 薬剤リザーバに連結されるように適用された近位先端部を有する中空針と
を含む。
【0021】
本発明を適用可能なさらなる範囲は、以下に示す詳細な説明から明白となろう。しかし、詳細な説明、および具体的な例は、本発明の例示的な実施形態を示すものであり、例として示すものにすぎず、本発明の趣旨および範囲に含まれる様々な変更および改変が、この詳細な説明から当業者には明白となることを理解されたい。
【0022】
本発明は、以下に示す詳細な説明、および単なる例示として示し、したがって本発明を限定するものではない添付の図面から、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】薬剤リザーバをニードルインターフェースおよび針とともに示す例示的な一実施形態の概略図である。
図2】ニードルインターフェースの内側リングの例示的な別の実施形態の概略図である。
図3】薬剤リザーバをニードルインターフェースおよび一方向クラッチ機構を有する針とともに示す例示的なさらに別の実施形態の概略図である。
図4】針が固定リングから延びた状態にある、一方向クラッチ機構の概略図である。
図5】針が固定リングによってカバーされた状態にある、一方向クラッチ機構の概略図である。
図6】薬剤リザーバをニードルインターフェースおよび中空針とともに示す例示的な一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
すべての図にわたって、対応する部品には同じ参照符号が付されている。
【0025】
図1は、薬剤リザーバ1を、ニードルインターフェース2および中空針3、例えば皮下注射針、または薬物送達デバイス10をリザーバ1に連結するための針とともに示す例示的な一実施形態の概略図である。この薬物送達デバイスは、薬剤を薬剤リザーバ1からノズル12、例えば皮下注射針にポンプ供給するポンプ11を含むことができる。例示的な一実施形態では、ポンプ11に動力供給する(powering)ためのエネルギー源13、例えばバッテリまたはばねを設けてもよい。針3は、リザーバ1のリザーバ壁4を貫通するように適用された近位先端部3.1を含み、リザーバ1は可撓性リザーバでよい。例示的な一実施形態では、針3は、ポンプ11に連結するために、薬物送達デバイス10のセプタム14または膜を貫通するように適用された遠位先端部3.2を含むことができる。針3は、遠位先端部3.2を用いてリザーバ壁4を貫通し、近位先端部3.1を用いてセプタム14または膜を貫通することができるように配置することができる。例示的な他の実施形態では、針3は遠位先端部を含まず、ポンプ11に、異なる形で恒久的に、または解放可能に連結してもよい。ニードルインターフェース2は、リザーバ1内、すなわちリザーバ壁4の内面4.1に配置された内側リング5、例えば剛性リングを含む。内側リング5は、磁化可能な材料5.1、すなわち磁石によって引きつけることができる材料、例えば鉄および/またはニッケルなどの強磁性体または強磁性材料を含む。針3は、少なくとも1つの磁石6.1、例えば永久磁石またはソレノイドを含む取付け外側リング6を含み、この磁石は、エネルギー源、例えば薬物送達デバイス10のエネルギー源13に連結することができる。外側リング6は、リザーバ1にある内側リング5に取り付けられると、針3の軸の一セクションを円周方向に取り囲み、針を定位置に保持し、それによってリザーバ壁4を内側リング5と外側リング6との間で保持し、針3の近位先端部3.1が内側リング5および外側リング6を通ってリザーバ壁4を貫通することが可能となる。内側リング5の磁化可能な材料5.1は、生体適合性材料および/または薬物適合性材料を含む、またはそれらの材料からなるクラッド5.2内に埋め込むことができる。これによって、リザーバ1内の薬剤が磁化可能な材料5.1によって汚染されることが防止される。
【0026】
外側リング6、および針3は、再使用可能とすることができる。
【0027】
代替実施形態では、内側リング5は、リザーバ壁4に埋め込まれていてもよく、例えば、リザーバ壁4は、互いに封止された少なくとも2つの層を含むことができ、内側リング5はこれらの層のうちの2つの間に位置することになる。別の代替実施形態では、内側リング5は、内面4.1に生体適合性および/または薬物適合性の接着剤で接着することができる。例示的な一実施形態では、内側リング5のクラッド5.2は、リザーバ壁4と同じ材料、例えばエチレンビニルアセテートからなることができる。この材料では、内側リング5をリザーバ壁4に対して加熱封止することが可能となる。
【0028】
図2は、内側リング5の別の例示的な実施形態の概略図であり、この図では磁化可能な材料5.1は、図が見やすいように示されていない。近位先端部3.1が内側リング5を越えてリザーバ1内に突出し、リザーバ1が潰れるにつれて鋭利な近位先端部3.1がリザーバ1を損傷する危険のある図1の実施形態とは異なり、図2の実施形態では、内側リング5は、リザーバ1が近位先端部3.1によって損傷するのを保護するように適用されている。この目的で、内側リング5は、近位先端部3.1がリザーバ1に挿入されたときに内側リング5から突出しないように、外側リング6から近位の針3の長さからリザーバ壁4の厚さを引いたものに少なくとも等しい長さを呈する。リザーバ1から針3への流体の流れが遮られないよう確保するために、内側リング5は、近位先端部3.1がその中に配置される、または配置可能となる中央孔5.4に対して実質的に横断方向に向けることができる1つまたはそれ以上の流路5.3を含むことができる。特に、流路5.3は、中央孔5.4から半径方向に延ばすことができる。多数の流路5.3を設けることによって、内側リング5の外周面の多数の位置に針3を流体連結することが可能となり、それによってリザーバ1が内側リング5の周りで潰れるにつれて、リザーバ1がより完全に空になることが確実になる。例示的な代替実施形態では、流路5.3は、異なる方向に延ばしてもよい。
【0029】
図3は、薬剤リザーバ1をニードルインターフェース2および針3とともに示す例示的なさらに別の実施形態の概略図である。針3は、リザーバ1のリザーバ壁4を貫通するように適用された近位先端部3.1を含み、リザーバ1は可撓性リザーバでよい。ニードルインターフェース2は、リザーバ1内、すなわちリザーバ壁4の内面4.1に配置された内側リング5、例えば、剛性リングを含む。内側リング5は、磁化可能な材料5.1、すなわち磁石によって引きつけることができる材料、例えば、鉄および/またはニッケルなどの強磁性体または強磁性材料を含む。外側リング6が針3に取り付けられ、この外側リング6は、少なくとも1つの磁石6.1、例えば永久磁石またはソレノイドを含み、この磁石は、エネルギー源、例えば薬物送達デバイス10のエネルギー源13に連結することができる。外側リング6は、リザーバ1にある内側リング5に取り付けられると、針3の軸の一セクションを円周方向に取り囲み、針を定位置に保持し、それによってリザーバ壁4を内側リング5と外側リング6との間で保持し、針3の近位先端部3.1が内側リング5および外側リング6を通ってリザーバ壁4を貫通することが可能となる。内側リング5の磁化可能な材料5.1は、生体適合性および/または薬物適合性材料を含む、またはそれらの材料からなるクラッド5.2内に埋め込むことができる。これによって、リザーバ1内の薬剤が磁化可能な材料5.1によって汚染されることが防止される。本実施形態では、内側リング5は、近位方向に延びる保護ケージ5.5を含み、内側リング5の厚さと、保護ケージ5.5の長さとの和は、近位先端部3.1がリザーバ1に挿入されたときに保護ケージ5.5から突出しないように、外側リング6から近位方向の針3の長さからリザーバ壁4の厚さを引いたものに少なくとも等しい。さらに、針3は、外側リング6に対して摺動可能に配置される。針3とリザーバ1との間の流体連通を確立するために、外側リング6は、内側リング5とは反対側でリザーバ1に取り付けられ、それによって針3を外側リング6および内側リング5を通して挿入できるようにする針用チャネルを形成している。磁化可能な固定リング7が、針3を覆って配設される。固定リング7は、針3に軸方向の少なくとも一方向に固定され、したがって針3がリザーバ1に入ることが可能な長さを制限している。
【0030】
図3の実施形態では、固定リング7は、針3の動きをリザーバ1に向かう方向において制限するように配置されている。この目的で、固定リング7は、固定リング7の遠位側に配設された1つまたはそれ以上の弾性アーム7.1を含み、この弾性アーム7.1は、弛緩時に実質的に半径方向内方に向かい、針3の外面に配置された一連の凹部8のうちの1つと係合するように適用される、各凹部8は、針3の長手方向軸に対して実質的に横断方向に並び、この一連の凹部8は、針3の軸方向に沿って配設されている。したがって、固定リング7は、近位先端部3.1の方に動くことはできるが、近位先端部3.1から離れる方には動くことができない。
【0031】
例示的な一実施形態では、固定リング7は、針3をリザーバ1から抜き取るときに、鋭利な近位先端部3.1付近の第2の位置まで自由に動き、そこで留まって、近位先端部3.1を覆う針安全デバイスとして働くように設計することができる。
【0032】
針3を後退させるとき、固定リング7は、磁力によって外側リング6に保持される。針3は、弾性アーム7.1が凹部8に沿って近位先端部3.1の方へと跳んで弾性アーム7.1が鋭利な近位先端部3.1付近の凹部8のうちの1つにロックされるまで、固定リング7を通って後方に摺動する。固定リング7の針3に対する固定は、固定リング7を外側リング6から分離するように、磁力に打ち勝つほど十分強力である。次いで、近位先端部3.1は、固定リング7(図5参照)によってカバーされる。
【0033】
弾性アーム7.1および凹部8によって、固定リング7中を通って針3を後退させることはできるが、リザーバ1に再度進めることはできないように確実にする一方向クラッチ機構9が形成される。
【0034】
図4は、例えば、針3をリザーバ1中に挿入する前の、針3が固定リング7から延びた状態にある、一方向クラッチ機構9の概略図である。図5は、例えば、針3をリザーバ1から抜き取った後の、針3が固定リング7によってカバーされた状態にある、一方向クラッチ機構9の概略図である。
【0035】
図3の保護ケージ5.5はまた、図1の実施形態と組み合わせることができる。
【0036】
磁化可能な材料5.1を含む内側リング5は、磁性外側リング6内の磁石6.1に比べてかなり安価であるため、磁性外側リング6を針3に配置し、磁化可能内側リング5をリザーバ1内に配置することによって、コストが削減される。
【0037】
先に述べた実施形態はすべて、磁石6.1を有する内側リング5および磁化可能な材料5.1を有する外側リング6を用いて改変することができる。同様に、内側リング5および外側リング6の両方ともが磁石を含んでもよい。以下では、磁石6.1を有する内側リング5と、磁化可能な材料5.1を有する外側リング6とを有する例について説明する。
【0038】
図6は、薬剤リザーバ1を、ニードルインターフェース2および中空針3、例えば皮下注射針、または薬物送達デバイス10をリザーバ1に連結する針とともに示す例示的な実施形態の概略図である。この薬物送達デバイスは、薬剤を薬剤リザーバ1からノズル12、例えば皮下注射針にポンプ供給するポンプ11を含むことができる。例示的な一実施形態では、ポンプ11に動力供給するためのエネルギー源13、例えばバッテリまたはばねを設けてもよい。針3は、リザーバ1のリザーバ壁4を貫通するように適用された近位先端部3.1を含み、リザーバ1は可撓性リザーバでよい。ニードルインターフェース2は、リザーバ1内、すなわちリザーバ壁4の内面4.1に配置された内側リング5、例えば剛性リングを含む。内側リング5は、少なくとも1つの磁石6.1、例えば永久磁石またはソレノイドを含み、この磁石は、エネルギー源、例えば薬物送達デバイス10のエネルギー源13に連結することができる。針3は、磁化可能な材料5.1、すなわち磁石によって引きつけることができる材料、例えば鉄および/またはニッケルなどの強磁性体または強磁性材料を含む取付け外側リング6を含む。外側リング6は、リザーバ1にある内側リング5に取り付けられると、針3の軸の一セクションを円周方向に取り囲み、針を定位置に保持し、それによってリザーバ壁4を内側リング5と外側リング6との間で保持し、針3の近位先端部3.1が内側リング5および外側リング6を通ってリザーバ壁4を貫通することが可能となる。内側リング5の磁石6.1は、生体適合性および/または薬物適合性材料を含む、またはそれらの材料からなるクラッド5.2内に埋め込むことができる。これによって、リザーバ1内の薬剤が磁石6.1によって汚染されることが防止される。
【0039】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0040】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0041】
インスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0042】
エキセンジン−4は、例えば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0043】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0044】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0045】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0046】
多糖類としては、例えば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、例えば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0047】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0048】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(例えば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0049】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0050】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C)と可変領域(V)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0051】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0052】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0053】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0054】
薬学的に許容される塩は、例えば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、例えば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、例えば、アルカリまたはアルカリ土類、例えば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0055】
薬学的に許容される溶媒和物は、例えば、水和物である。
【0056】
本明細書に記載の装置、方法、および/またはシステム、ならびに実施形態の様々な構成要素には、本発明の全範囲および趣旨から逸脱することなく改変(追加および/または削除)を行うことができ、こうしたあらゆる改変形態およびその均等物も、本発明の全範囲および趣旨に含まれることが当業者には理解されよう。
【符号の説明】
【0057】
1 リザーバ
2 ニードルインターフェース
3 針
3.1 近位先端部
3.2 遠位先端部
4 リザーバ壁
4.1 内面
5 内側リング
5.1 磁化可能な材料
5.2 クラッド
5.3 流路
5.4 中央孔
5.5 保護ケージ
6 外側リング
6.1 磁石
7 固定リング
7.1 弾性アーム
8 凹部
9 一方向クラッチ機構
10 薬物送達デバイス
11 ポンプ
12 ノズル
13 エネルギー源
14 セプタム
図1
図2
図3
図4
図5
図6