特許第6702990号(P6702990)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6702990水性ベースコートにリン酸エステルを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702990
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】水性ベースコートにリン酸エステルを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20200525BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20200525BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20200525BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D7/61
   C09D7/63
   B05D7/24 301C
   B05D7/24 303E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-541626(P2017-541626)
(86)(22)【出願日】2016年1月20日
(65)【公表番号】特表2018-509498(P2018-509498A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】EP2016051111
(87)【国際公開番号】WO2016124400
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2018年8月30日
(31)【優先権主張番号】15153945.9
(32)【優先日】2015年2月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】シュタインメッツ,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヤンコヴスキー,ペギー
(72)【発明者】
【氏名】ルーマン,ナディア
(72)【発明者】
【氏名】マトゥラ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォールファルト,ミヒャエル
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−088056(JP,A)
【文献】 特開平11−106707(JP,A)
【文献】 特表2005−503938(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0072943(US,A1)
【文献】 特開2011−137177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/00
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ベースコート材料中におけるリン酸及び/又はリン酸のモノエステル及び/又はジエステルの使用であって、ホウ素化合物を含むオーバーベークされたクリアコート材料に対する、これらのコーティング材料の接着性を向上させるための使用。
【請求項2】
前記ベースコート材料が、未硬化の前記コーティング材料に対して0.1〜5質量%のリン酸及び/又はリン酸エステルを含有するものである請求項1に記載の使用。
【請求項3】
リン酸及び/又はリン酸エステルの量が0.3〜1.5質量%である請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記リン酸エステルが、一般式I
【化1】
(式中、R及びRは、互いに同一又は異なっており、1〜20個の炭素原子を有する置換及び非置換アルキル、3〜20個の炭素原子を有するシクロアルキル、及び6〜20個の炭素原子を有するアリール、置換及び非置換アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリール、及びシクロアルキルアリールアルキルからなる群から選択され、これらの基に存在する該アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基は、各々の場合において、上記の数の炭素原子を含有し、モノエステルの場合には、R又はRは水素である)
を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記リン酸エステルが、モノフェニル若しくはジフェニルホスフェート、又はモノブチル若しくはジブチルホスフェート、又は前記リン酸エステルの2種以上からなる混合物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記ベースコート材料が、効果顔料、より具体的にはアルミニウム効果顔料を含まないものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜間接着性 (intercoat adhesion)を向上する目的で、水性ベースコート材料中におけるリン酸及び/又はリン酸のモノエステル及び/又はジエステルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースコート材料は、色彩(カラー)及び/又は特殊効果(effect)を付与する中塗り材料であり、自動車の仕上げコーティング及び産業コーティングにおいて、一般的によく使用されている。ベースコート塗膜は、その上に形成されるクリアコート塗膜で覆われる。これにより、ベースコート系は風化作用の影響から、また、機械的及び化学的な破壊作用から保護されることになる。ベースコート材料とクリアコート材料とは、一般的には、ウェット・オン・ウェット方式で塗布され、焼付け(ベーク)することによって一緒に硬化されるものである。
【0003】
自動車仕上げでは、以前から、ベースコート材料の前に、電着材料を被覆した車体にサーフェーサーを最初に塗布していたが、最近の塗装プラントでは、多くの場合、任意のサーフェーサーを省略している。この場合、その代わりに、2層のベースコート塗膜を塗布している。このプロセスを「統合塗装プロセス(Integrated Paint Process)」(IPP)と呼ぶこととする。
【0004】
塗装仕上げにおける重要な品質基準は、硬化した塗装組成物が有する、塗装基材に対する接着性(付着性、adhesion)である。例えば、自動車仕上げにおける、通常の種類の多層塗装系の場合には、塗料の個々の塗膜間における接着性が極めて重要であり、これを塗膜間接着性と呼ぶこととする。
【0005】
自動車の塗装仕上げは、飛び石又は跳ね石など(projectile stones)の作用の結果として、激しい機械的ストレスを受けやすいものである。従って、高いレベルの耐ストーンチップ性(石による損傷に対する耐性、stonechip resistance)を有することが要求されている。車体に対する塗装最下層の塗膜の接着性が不十分である場合には、多層塗装系全体の剥離が生じることがある。また、塗膜間接着性が不十分である場合には、石による損傷の危険に曝されると、1層又はそれ以上の塗膜の接合部分が、下地の基材が完全に露出しない状態で剥離してしまうことがある。
【0006】
特許出願WO03/011986A1には、塗膜間接着性を向上させる目的で、多層(マルチコート)塗装系を製造する際に使用する塗料に接着促進剤としてのホウ酸又は他のホウ素化合物を添加することが開示されている。このような塗装系では、最上層塗膜を形成するのに使用するクリアコート材料に、当該ホウ素化合物を含ませる場合がある。
【0007】
例えば、自動車の産業的仕上げ塗装では、塗装したワークピース(workpiece)をオーブン乾燥ユニットに通過させ、その内で熱エネルギーを導入することによって、塗布したコーティング材料を硬化させている。例えば、今日広く普及している金属仕上げ塗装の場合にあっては、金属のベースコート材料及び最終のクリアコート材料をウェット・オン・ウェット方式で塗布し、一緒に硬化させている。
【0008】
オーブン乾燥に関して、焼付け時間と焼付け温度というパラメータは、相互に、逆向に、影響するものであり、すなわち、塗装系を理想的に硬化させるには、焼付け温度がより高温の場合には焼付け時間が短縮化され、焼付け時間がより長くなると、焼付け温度はより低温で十分である。例えば、搬送装置が停止することによって乾燥装置内に混乱が生じ、その結果として、一般的に採用される温度に照らすと、ワークピースがオーブン乾燥装置内に長時間滞留し過ぎることがある。その場合、オーバーベーク(焼きすぎ、overbaking)として知られる現象が起こる可能性がある。オーバーベークは、完全な架橋のために必要とされるエネルギーよりも高いエネルギーを投入することによってコーティング材料を焼き付けることと理解されている。オーバーベークは焼付け時間及び/又は焼付け温度を超過することによって引き起こされるものである。オーバーベークが生じると、分子間に存在していた架橋が再び切断し、その結果として開裂生成物が形成される。オーバーベーク中に所望の架橋より大きな架橋が起こることもあり得る。また、一般的には、必要な耐性を有する仕上げ塗装を得ることができない。オーバーベークすることによる影響には、塗膜の脆化又は黄変が含まれる(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、第10版、1998年、第585頁)。
【0009】
オーバーベークは、塗料に要求される焼付け時間が20%以上を超えた場合、及び/又は要求される焼付け温度が5℃以上を超え、より具体的には10℃以上を超えた場合に起こるものと推定される。
【0010】
例えば、汚れ、ピンホール、又は表面のくぼみといった、仕上げ塗装作業に伴う代表的な塗装欠陥が原因で、ワークピースの再塗装が必要になる場合がある。また、時には、オーバーベークしたワークピースを再塗装する必要があることがある。
【0011】
ここで、メーカーのプラント内及び補修工場の双方において、ベースコート材料及びクリアコート材料を既存の硬化したクリアコート材料に塗布する場合、当該既に硬化したクリアコート材料がホウ素化合物類を含んでいるものであって、かつ、オーバーベークされたものであると、層間接着性は極めて不十分なものとなることが、今や見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO03/011986A1
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、第10版、1998年、第585頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、ホウ素化合物類を含み、既に硬化され、かつ、オーバーベークされたクリアコート材料上に更なるベースコート材料を塗布する場合の層間接着性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
驚くべきことに、この目的は、リン酸及び/又はリン酸エステルをベースコート材料に加えることによって達成できることを見出した。
【0016】
したがって、本発明は、リン酸及び/又はリン酸のモノエステル及び/又はジエステルを水性ベースコート材料に使用する方法であって、ホウ素化合物類を含み、オーバーベークされたクリアコート材料上での、これらの塗装材料の接着性を向上させる使用方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
リン酸エステルが有する接着性促進効果は、それ自体公知である。しかしながら、既知の接着(接着)促進剤が多く存在することを考慮しても、特にリン酸エステルが、ホウ素化合物を含みオーバーベークしたクリアコートに対する、補修ベースコートの接着性を向上し得るとは予測することができないものであった。
【0018】
ベースコート材料は、未硬化のコーティング材料に対して0.1〜5質量%のリン酸及び/又はリン酸エステルを含有することが有利である。その量が0.1質量%未満では充分な効果が得られない。リン酸及び/又はリン酸エステルの量が5質量%を超えると、塗膜に欠陥が生じることがある。
【0019】
リン酸及び/又はリン酸エステルの量は0.3〜1.5質量%であることが、特に有利である。
【0020】
上記のリン酸エステルは、有利には、下記の一般式Iを有するものである。
【0021】
【化1】
【0022】
式中、R及びRは、互いに同一又は異なっており、1〜20個の炭素原子を有する置換及び非置換アルキル、3〜20個の炭素原子を有するシクロアルキル、及び6〜20個の炭素原子を有するアリール、置換及び非置換アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリール、及びシクロアルキルアリールアルキルからなる群から選択されるものである。これらの基に存在する該アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基は、各々の場合において、上記の数の炭素原子を含有する。また、モノエステルの場合には、R又はRは水素である。
【0023】
特に有利には、リン酸エステルは、リン酸モノフェニル又はリン酸ジフェニル、又はリン酸モノブチル又はリン酸ジブチル、又は当該2種以上のリン酸エステルの混合物である。
【0024】
ベースコート材料は、効果(エフェクト、effect)顔料、より詳細にはアルミニウム効果顔料を含まないことが有利である。
【0025】
ベースコート材料にリン酸及び/又はリン酸エステルが存在することを除いて、本発明に従って使用することのできるベースコート材料及びクリアコート材料には特異性がない。したがって、通常の水性ベースコート材料及び通常のクリアコート材料を使用することができる。
【0026】
本発明について、以下に挙げる実施例によって一層詳細に説明する。
【実施例】
【0027】
A)コポリマー(CP)の調製及びこのポリマーを含む水性分散液の調製
α−メチルスチリル含有ポリウレタンの分散液を、特許明細書DE19948004B4、第27頁、実施例1、「本発明のポリウレタン(B)の製造」に基づく方法で調製した。ただし、トリメチロールプロパンを追加して使用するとともに、生成した分散液の固形分含量は35.1質量%ではなくわずか29質量%であった。特許明細書DE19948004B4、製造実施例1に記載の付加物(B2)と同様にして、ただし、ジエタノールアミンではなくモノエタノールアミンを用いて付加物を製造した:
この調製を行うに当たり、まず、撹拌機、内部温度計、還流冷却器及び電気加熱装置を備えた反応容器に、窒素下で、メチルエチルケトン200.0質量部、N−メチルピロリドン800.0質量部、モノエタノールアミン(BASF SE社製)221.3質量部を20℃で入れた。この混合物に、1時間半かけて、1−(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−3−(1−メチルエチル)ベンゼン(TMI(登録商標)(META)不飽和脂肪族イソシアネート、Cytec社製)(イソシアネート含量が20.4質量%イソシアネートである)778.7質量部を滴下した。なお、この添加は反応温度が40℃を超えないように行った。得られた反応混合物を、遊離イソシアネート基がもはや検出できなくなるまで撹拌した。その後、反応混合物を200ppmのヒドロキノンで安定化させた。
【0028】
このようにして調製した、上記付加物の溶液に関し、理論上の固形分は50質量%であった。
【0029】
次に、攪拌機、内部温度計、還流冷却器、電気加熱装置を備えた別の反応容器内で、直鎖ポリエステルポリオール431.7質量部及びジメチロールプロピオン酸(GEO Specialty Chemicals社製)69.7質量部を窒素下で355.8質量部のメチルエチルケトン及び61.6質量部のN−メチルピロリドンに溶解させた。当該直鎖ポリエステルポリオールは、二量化脂肪酸(Pripol(登録商標)1012、Uniqema社製)、イソフタル酸(BP Chemicals社製)、及びヘキサン−1,6−ジオール(BASF SE社製)(二量体脂肪酸対イソフタル酸対ヘキサン−1,6−ジオールの出発物質の質量比=54.00:30.02:15.98)を用いて、事前に、製造したものであって、73mgKOH/gヒドロキシル価の固形分及び1379g/molの数平均モル質量を有していた。得られた溶液に、45℃で、37.75質量%のイソシアネート含量を有するイソホロンジイソシアネート(Basonat(登録商標)I、BASF SE社製)288.6質量部を添加した。発熱反応が収まったとき、反応混合物を撹拌しながらゆっくりと80℃まで加熱した。この温度で、その溶液のイソシアネート含有量が3.2質量%になり一定になるまで、さらに撹拌した。その後、反応混合物を65℃に冷却し、上記付加物85.2質量部をトリメチロールプロパン(BASF SE社製)21.8質量部とともに添加した。得られた反応混合物を、その溶液のイソシアネート含量が1.0質量%に低下するまで65℃で撹拌した。この段階で、ジエタノールアミン(BASF SE社製)22.2質量%を添加し、遊離イソシアネート基がもはや検出されなくなるまでイソシアネート基の量をチェックした。得られた溶解ポリウレタンを139.7質量部のメトキシプロパノール及び43.3質量部のトリエチルアミン(BASF SE社製)と混合した。アミンを添加してから30分後、その溶液の温度を60℃に下げ、その後、脱イオン水1981質量部を30分間にわたって撹拌しながら添加した。得られた分散液からメチルエチルケトンを減圧下で60℃で留去した。その後、水及び溶媒の損失分を補った。
【0030】
得られたα−メチルスチリル含有ポリウレタンの分散液は、固形分29.0質量%有し、酸価は34.0mgKOH/g固形分であり、pHは7.0(23℃で測定)であった。
【0031】
塗料配合物の具体例
1.本発明でない水性ベースコート材料1の調製
表Aに列挙した各成分を、記載した順序で一緒に攪拌して水性混合物を形成した。次いで、この混合物を、10分間撹拌し、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いてpH8に、かつ、1000s−1のせん断荷重下でスプレー粘度125mPasに調整した。なお、その粘度の測定は、23℃で回転粘度計(Rheomat RM180計測器(メトラ−トレド(Mettler−Toledo)社製)を用いて行った。
【0032】
【表A】
【0033】
イエローペーストの調製:
このイエローペーストは、49.5質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(それ自体は国際特許出願WO91/15528のバインダー分散液Aについての記載に従って調製)、37質量部のBayferrox(登録商標)3910及び13.5質量部の脱イオン水から調製した。
【0034】
カーボンブラックペーストの調製:
このカーボンブラックペーストは、25質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(それ自体は国際特許出願WO91/15528のバインダー分散液Aについての記載に従って調製)、10質量部のカーボンブラック、0.1質量部のメチルイソブチルケトン、1.36質量部のジメチルエタノールアミン(脱イオン水中10%濃度)、2質量部の市販ポリエーテル(BASF SE社製Pluriol(登録商標)P900)、及び61.45質量部の脱イオン水から調製した。
【0035】
レッドペーストの調製:
このレッドペーストは、40質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(それ自体は国際特許出願WO91/15528のバインダー分散液Aについての記載に従って調製)、34.5質量部のCinilex(登録商標)DPP Red、2質量部の市販ポリエーテル(BASF SE社製Pluriol(登録商標)P900)、2質量部の1−プロポキシ−2−プロパノール、及び20.5質量部の脱イオン水から調製した。
【0036】
ホワイトペーストの調製:
このホワイトペーストは、PAT75688と同様にして、43質量部のチタンルチル(Titan rutile)2310、39質量部の上記コポリマー(前記A)に記載した方法によって調製)、5質量部のブチルグリコール、及び13質量部の脱イオン水から調製した。
【0037】
2.本発明の水性ベースコート材料E1の調製
Duraphos(登録商標)BAP(Solvay社製)13質量部とジメチルエタノールアミンの10%濃度溶液(脱イオン水中)87質量部との混合物6.5質量部を追加して加えたことを除き、表Aと同様にして、水性ベースコート材料E1を調製した。
【0038】
3.本発明の水性ベースコート材料E2の調製
脱イオン水中10%濃度のジメチルエタノールアミンで予め中和したBaysolvex(登録商標)D2EHPA(Lanxess社製)1.58質量部を追加して添加したことを除き、表Aと同様にして、水性ベースコート材料E2を調製した。
【0039】
4.本発明の水性ベースコート材料E3の調製
Phenyl Acid Phosphate(登録商標)(IlseChem、LLC社製)75質量部とジメチルエタノールアミンの10%濃度溶液(脱イオン水中)337.5質量部との混合物6.9質量部を追加して添加したことを除き、表Aと同様にして、水性ベースコート材料E3を調製した。
【0040】
5.本発明の水性ベースコート材料E4の調製
リン酸(Brenntag社製)6.3質量部とジメチルエタノールアミンの10%濃度溶液(脱イオン水中)93.7質量部との混合物0.298質量部を追加して添加したことを除き、表Aと同様にして、水性ベースコート材料E4を調製した。
【0041】
6.本発明ではない水性ベースコート材料2の調製
表Bの「水相」に列挙した成分を、記載した順序で一緒に攪拌して、水性混合物を形成した。次の工程で、「有機相」に列挙した成分から有機混合物を調製した。その有機混合物を前記水性混合物に加えた。次いで、得られた混合物を10分間撹拌し、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いてpH8に、かつ、1000s−1のせん断荷重下でスプレー粘度58mPasに調整した。この粘度は、23℃で回転粘度計(Rheomat RM180計測器(メトラ−トレド(Mettler−Toledo)製)を用いて測定したものである。
【0042】
【表B】
【0043】
ブルーペーストの調製:
このブルーペーストは、69.8質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(それ自体は国際特許出願WO91/15528のバインダー分散液Aについての記載に従って調製)、12.5質量部のPaliogen(登録商標)Blue L6482、1.5質量部のジメチルエタノールアミン(脱イオン水中10%濃度)、1.2質量部の市販ポリエーテル(BASF SE社製Pluriol(登録商標)P900)及び15質量部の脱イオン水から調製した。
【0044】
カーボンブラックペーストの調製:
このカーボンブラックペーストは、25質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(それ自体は国際特許出願WO91/15528のバインダー分散液Aについての記載に従って調製)、10質量部のカーボンブラック、0.1質量部のメチルイソブチルケトン、1.36質量部のジメチルエタノールアミン(脱イオン水中10%濃度)、2質量部の市販ポリエーテル(BASF SE社製Pluriol(登録商標)P900)、及び61.45質量部の脱イオン水から調製した。
【0045】
水性ベースコート材料1とE1〜E4との比較
耐ストーンチップ性(stonechip resistance)を判定するため、以下の一般的方法に従って、多層塗装系を製造した。このプロセスは統合塗装プロセス(IPP)に対応している。
【0046】
10×20cmの寸法を有する、陰極電着コートで被覆した鋼パネルを基材として使用した。
【0047】
このパネル上に、最初に、水性ベースコート材料1又はE1〜E4を塗装した。室温でそのベースコートを4分間フラッシュ(flashing)した後、それぞれの場合に、水性ベースコート材料2を塗装し、続いて室温で4分間フラッシュし、次いで70℃の強制空気オーブン中で10分間、中間乾燥した。乾燥した水性ベースコート塗膜の上にPPG社製のホウ素含有2成分クリアコート材料CeramiClear(登録商標)を塗装した。得られたクリアコート塗膜を室温で20分間フラッシュした。その後、オーバーベークの状態にするために、水性ベースコート塗膜及びクリアコート塗膜を150℃の強制空気オーブンで68分間硬化させた。CeramiClear(登録商標)クリアコート材料においては、規定の(mandated)焼付け時間は20分で、規定の焼付け温度は140℃である。次いで、上記の初期仕上げ塗装(original finish)に水性ベースコート材料1又はE1〜E4を塗装した。室温でベースコートに対して4分間フラッシュした後、それぞれの場合に、水性ベースコート材料2を塗布し、続いて室温で4分間フラッシュし、次いで70℃の強制空気オーブンで10分間、中間乾燥した。乾燥した水性ベースコート塗膜上に、PPG社製2成分クリアコート材料CeramiClear(登録商標)を塗布した。得られたクリアコートフィルムを室温で20分間フラッシュした。引き続いて、水性ベースコート塗膜及びクリアコート塗膜を140℃の強制空気オーブン中で20分間硬化させた。
【0048】
したがって、得られた多層塗装系について、クロスカット(cross-cut)接着性を調べた。この目的のために、クロスカットはDIN EN ISO2409:2013−6に準拠して実施した。クロスカットの結果は、DIN EN ISO 2409:2013−6に従って評価した。
【0049】
その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
この結果は、リン酸及び/又はリン酸のモノエステル及びジエステルについての本発明に係る使用が、水性ベースコート材料1と比較して、耐クロスカット性を大いに高めるものであることを示している。
【0052】
使用した原料の一覧表:
Tafigel(登録商標)AP10 変性アクリルポリマー(増粘剤)(MuenzingChemie GmbH社製)
TMDD 2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール
Luwipal(登録商標)052 エーテル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(BASF SE社製)
Rheovis(登録商標)PU レオロジー調整剤(BASF SE社製)
Acronal(登録商標)290D アクリレート分散液(BASF SE社製)
Bayferrox(登録商標)3910 酸化鉄顔料(LANXESS AG社製)
Pluriol(登録商標)P900 ポリプロピレングリコール(BASF SE社製)
Cinilex(登録商標)DPP Red レッド顔料(CINIC CHEMICALS社製)
チタンルチル(Titan rutile)2310 二酸化チタン(Kronos Titan GmbH社製)
Duraphos(登録商標)BAP ブチルホスフェート(Solvay社製)
Baysolvex(登録商標)D2EHPA ジ(2−エチルヘキシル)リン酸(LANXESS AG社製)
Phenyl Acid Phosphate(登録商標) モノフェニルホスフェートとジフェニルホスフェートの混合物(IsleChem,LLC社製)
Isopar(登録商標)L イソパラフィン炭化水素(ExxonMobil社製)
Byk−347(登録商標) シリコーン系界面活性剤(BYK Chemie GmbH社製)
Tinuvin(登録商標)384−2 光安定剤(BASF SE社製)
Tinuvin123 光安定剤(BASF SE社製)
Paliogen(登録商標)BlueL6482 ブルー顔料(BASF SE社製)