【実施例】
【0027】
A)コポリマー(CP)の調製及びこのポリマーを含む水性分散液の調製
α−メチルスチリル含有ポリウレタンの分散液を、特許明細書DE19948004B4、第27頁、実施例1、「本発明のポリウレタン(B)の製造」に基づく方法で調製した。ただし、トリメチロールプロパンを追加して使用するとともに、生成した分散液の固形分含量は35.1質量%ではなくわずか29質量%であった。特許明細書DE19948004B4、製造実施例1に記載の付加物(B2)と同様にして、ただし、ジエタノールアミンではなくモノエタノールアミンを用いて付加物を製造した:
この調製を行うに当たり、まず、撹拌機、内部温度計、還流冷却器及び電気加熱装置を備えた反応容器に、窒素下で、メチルエチルケトン200.0質量部、N−メチルピロリドン800.0質量部、モノエタノールアミン(BASF SE社製)221.3質量部を20℃で入れた。この混合物に、1時間半かけて、1−(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−3−(1−メチルエチル)ベンゼン(TMI(登録商標)(META)不飽和脂肪族イソシアネート、Cytec社製)(イソシアネート含量が20.4質量%イソシアネートである)778.7質量部を滴下した。なお、この添加は反応温度が40℃を超えないように行った。得られた反応混合物を、遊離イソシアネート基がもはや検出できなくなるまで撹拌した。その後、反応混合物を200ppmのヒドロキノンで安定化させた。
【0028】
このようにして調製した、上記付加物の溶液に関し、理論上の固形分は50質量%であった。
【0029】
次に、攪拌機、内部温度計、還流冷却器、電気加熱装置を備えた別の反応容器内で、直鎖ポリエステルポリオール431.7質量部及びジメチロールプロピオン酸(GEO Specialty Chemicals社製)69.7質量部を窒素下で355.8質量部のメチルエチルケトン及び61.6質量部のN−メチルピロリドンに溶解させた。当該直鎖ポリエステルポリオールは、二量化脂肪酸(Pripol(登録商標)1012、Uniqema社製)、イソフタル酸(BP Chemicals社製)、及びヘキサン−1,6−ジオール(BASF SE社製)(二量体脂肪酸対イソフタル酸対ヘキサン−1,6−ジオールの出発物質の質量比=54.00:30.02:15.98)を用いて、事前に、製造したものであって、73mgKOH/gヒドロキシル価の固形分及び1379g/molの数平均モル質量を有していた。得られた溶液に、45℃で、37.75質量%のイソシアネート含量を有するイソホロンジイソシアネート(Basonat(登録商標)I、BASF SE社製)288.6質量部を添加した。発熱反応が収まったとき、反応混合物を撹拌しながらゆっくりと80℃まで加熱した。この温度で、その溶液のイソシアネート含有量が3.2質量%になり一定になるまで、さらに撹拌した。その後、反応混合物を65℃に冷却し、上記付加物85.2質量部をトリメチロールプロパン(BASF SE社製)21.8質量部とともに添加した。得られた反応混合物を、その溶液のイソシアネート含量が1.0質量%に低下するまで65℃で撹拌した。この段階で、ジエタノールアミン(BASF SE社製)22.2質量%を添加し、遊離イソシアネート基がもはや検出されなくなるまでイソシアネート基の量をチェックした。得られた溶解ポリウレタンを139.7質量部のメトキシプロパノール及び43.3質量部のトリエチルアミン(BASF SE社製)と混合した。アミンを添加してから30分後、その溶液の温度を60℃に下げ、その後、脱イオン水1981質量部を30分間にわたって撹拌しながら添加した。得られた分散液からメチルエチルケトンを減圧下で60℃で留去した。その後、水及び溶媒の損失分を補った。
【0030】
得られたα−メチルスチリル含有ポリウレタンの分散液は、固形分29.0質量%有し、酸価は34.0mgKOH/g固形分であり、pHは7.0(23℃で測定)であった。
【0031】
塗料配合物の具体例
1.本発明でない水性ベースコート材料1の調製
表Aに列挙した各成分を、記載した順序で一緒に攪拌して水性混合物を形成した。次いで、この混合物を、10分間撹拌し、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いてpH8に、かつ、1000s
−1のせん断荷重下でスプレー粘度125mPasに調整した。なお、その粘度の測定は、23℃で回転粘度計(Rheomat RM180計測器(メトラ−トレド(Mettler−Toledo)社製)を用いて行った。
【0032】
【表A】
【0033】
イエローペーストの調製:
このイエローペーストは、49.5質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(それ自体は国際特許出願WO91/15528のバインダー分散液Aについての記載に従って調製)、37質量部のBayferrox(登録商標)3910及び13.5質量部の脱イオン水から調製した。
【0034】
カーボンブラックペーストの調製:
このカーボンブラックペーストは、25質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(それ自体は国際特許出願WO91/15528のバインダー分散液Aについての記載に従って調製)、10質量部のカーボンブラック、0.1質量部のメチルイソブチルケトン、1.36質量部のジメチルエタノールアミン(脱イオン水中10%濃度)、2質量部の市販ポリエーテル(BASF SE社製Pluriol(登録商標)P900)、及び61.45質量部の脱イオン水から調製した。
【0035】
レッドペーストの調製:
このレッドペーストは、40質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(それ自体は国際特許出願WO91/15528のバインダー分散液Aについての記載に従って調製)、34.5質量部のCinilex(登録商標)DPP Red、2質量部の市販ポリエーテル(BASF SE社製Pluriol(登録商標)P900)、2質量部の1−プロポキシ−2−プロパノール、及び20.5質量部の脱イオン水から調製した。
【0036】
ホワイトペーストの調製:
このホワイトペーストは、PAT75688と同様にして、43質量部のチタンルチル(Titan rutile)2310、39質量部の上記コポリマー(前記A)に記載した方法によって調製)、5質量部のブチルグリコール、及び13質量部の脱イオン水から調製した。
【0037】
2.本発明の水性ベースコート材料E1の調製
Duraphos(登録商標)BAP(Solvay社製)13質量部とジメチルエタノールアミンの10%濃度溶液(脱イオン水中)87質量部との混合物6.5質量部を追加して加えたことを除き、表Aと同様にして、水性ベースコート材料E1を調製した。
【0038】
3.本発明の水性ベースコート材料E2の調製
脱イオン水中10%濃度のジメチルエタノールアミンで予め中和したBaysolvex(登録商標)D2EHPA(Lanxess社製)1.58質量部を追加して添加したことを除き、表Aと同様にして、水性ベースコート材料E2を調製した。
【0039】
4.本発明の水性ベースコート材料E3の調製
Phenyl Acid Phosphate(登録商標)(IlseChem、LLC社製)75質量部とジメチルエタノールアミンの10%濃度溶液(脱イオン水中)337.5質量部との混合物6.9質量部を追加して添加したことを除き、表Aと同様にして、水性ベースコート材料E3を調製した。
【0040】
5.本発明の水性ベースコート材料E4の調製
リン酸(Brenntag社製)6.3質量部とジメチルエタノールアミンの10%濃度溶液(脱イオン水中)93.7質量部との混合物0.298質量部を追加して添加したことを除き、表Aと同様にして、水性ベースコート材料E4を調製した。
【0041】
6.本発明ではない水性ベースコート材料2の調製
表Bの「水相」に列挙した成分を、記載した順序で一緒に攪拌して、水性混合物を形成した。次の工程で、「有機相」に列挙した成分から有機混合物を調製した。その有機混合物を前記水性混合物に加えた。次いで、得られた混合物を10分間撹拌し、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを用いてpH8に、かつ、1000s
−1のせん断荷重下でスプレー粘度58mPasに調整した。この粘度は、23℃で回転粘度計(Rheomat RM180計測器(メトラ−トレド(Mettler−Toledo)製)を用いて測定したものである。
【0042】
【表B】
【0043】
ブルーペーストの調製:
このブルーペーストは、69.8質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(それ自体は国際特許出願WO91/15528のバインダー分散液Aについての記載に従って調製)、12.5質量部のPaliogen(登録商標)Blue L6482、1.5質量部のジメチルエタノールアミン(脱イオン水中10%濃度)、1.2質量部の市販ポリエーテル(BASF SE社製Pluriol(登録商標)P900)及び15質量部の脱イオン水から調製した。
【0044】
カーボンブラックペーストの調製:
このカーボンブラックペーストは、25質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(それ自体は国際特許出願WO91/15528のバインダー分散液Aについての記載に従って調製)、10質量部のカーボンブラック、0.1質量部のメチルイソブチルケトン、1.36質量部のジメチルエタノールアミン(脱イオン水中10%濃度)、2質量部の市販ポリエーテル(BASF SE社製Pluriol(登録商標)P900)、及び61.45質量部の脱イオン水から調製した。
【0045】
水性ベースコート材料1とE1〜E4との比較
耐ストーンチップ性(stonechip resistance)を判定するため、以下の一般的方法に従って、多層塗装系を製造した。このプロセスは統合塗装プロセス(IPP)に対応している。
【0046】
10×20cmの寸法を有する、陰極電着コートで被覆した鋼パネルを基材として使用した。
【0047】
このパネル上に、最初に、水性ベースコート材料1又はE1〜E4を塗装した。室温でそのベースコートを4分間フラッシュ(flashing)した後、それぞれの場合に、水性ベースコート材料2を塗装し、続いて室温で4分間フラッシュし、次いで70℃の強制空気オーブン中で10分間、中間乾燥した。乾燥した水性ベースコート塗膜の上にPPG社製のホウ素含有2成分クリアコート材料CeramiClear(登録商標)を塗装した。得られたクリアコート塗膜を室温で20分間フラッシュした。その後、オーバーベークの状態にするために、水性ベースコート塗膜及びクリアコート塗膜を150℃の強制空気オーブンで68分間硬化させた。CeramiClear(登録商標)クリアコート材料においては、規定の(mandated)焼付け時間は20分で、規定の焼付け温度は140℃である。次いで、上記の初期仕上げ塗装(original finish)に水性ベースコート材料1又はE1〜E4を塗装した。室温でベースコートに対して4分間フラッシュした後、それぞれの場合に、水性ベースコート材料2を塗布し、続いて室温で4分間フラッシュし、次いで70℃の強制空気オーブンで10分間、中間乾燥した。乾燥した水性ベースコート塗膜上に、PPG社製2成分クリアコート材料CeramiClear(登録商標)を塗布した。得られたクリアコートフィルムを室温で20分間フラッシュした。引き続いて、水性ベースコート塗膜及びクリアコート塗膜を140℃の強制空気オーブン中で20分間硬化させた。
【0048】
したがって、得られた多層塗装系について、クロスカット(cross-cut)接着性を調べた。この目的のために、クロスカットはDIN EN ISO2409:2013−6に準拠して実施した。クロスカットの結果は、DIN EN ISO 2409:2013−6に従って評価した。
【0049】
その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
この結果は、リン酸及び/又はリン酸のモノエステル及びジエステルについての本発明に係る使用が、水性ベースコート材料1と比較して、耐クロスカット性を大いに高めるものであることを示している。
【0052】
使用した原料の一覧表:
Tafigel(登録商標)AP10 変性アクリルポリマー(増粘剤)(MuenzingChemie GmbH社製)
TMDD 2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール
Luwipal(登録商標)052 エーテル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(BASF SE社製)
Rheovis(登録商標)PU レオロジー調整剤(BASF SE社製)
Acronal(登録商標)290D アクリレート分散液(BASF SE社製)
Bayferrox(登録商標)3910 酸化鉄顔料(LANXESS AG社製)
Pluriol(登録商標)P900 ポリプロピレングリコール(BASF SE社製)
Cinilex(登録商標)DPP Red レッド顔料(CINIC CHEMICALS社製)
チタンルチル(Titan rutile)2310 二酸化チタン(Kronos Titan GmbH社製)
Duraphos(登録商標)BAP ブチルホスフェート(Solvay社製)
Baysolvex(登録商標)D2EHPA ジ(2−エチルヘキシル)リン酸(LANXESS AG社製)
Phenyl Acid Phosphate(登録商標) モノフェニルホスフェートとジフェニルホスフェートの混合物(IsleChem,LLC社製)
Isopar(登録商標)L イソパラフィン炭化水素(ExxonMobil社製)
Byk−347(登録商標) シリコーン系界面活性剤(BYK Chemie GmbH社製)
Tinuvin(登録商標)384−2 光安定剤(BASF SE社製)
Tinuvin123 光安定剤(BASF SE社製)
Paliogen(登録商標)BlueL6482 ブルー顔料(BASF SE社製)