(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703033
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】生物センサーミクロ電極及び生物センサー
(51)【国際特許分類】
G01N 27/30 20060101AFI20200525BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20200525BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20200525BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20200525BHJP
C01B 32/158 20170101ALI20200525BHJP
H01M 8/16 20060101ALN20200525BHJP
【FI】
G01N27/30 B
G01N27/416 338
H01M4/90 X
H01M4/86 M
H01M4/86 B
C01B32/158
!H01M8/16
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-88634(P2018-88634)
(22)【出願日】2018年5月2日
(65)【公開番号】特開2018-189650(P2018-189650A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2018年5月2日
(31)【優先権主張番号】201710318859.0
(32)【優先日】2017年5月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HON HAI PRECISION INDUSTRY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】付 紅穎
(72)【発明者】
【氏名】李 文珍
【審査官】
櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/093225(WO,A1)
【文献】
国際公開第2016/059747(WO,A1)
【文献】
特開2009−152181(JP,A)
【文献】
特開2009−117354(JP,A)
【文献】
特開2014−215150(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0285514(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第105779804(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
H01M 4/86−4/98
B82B 1/00−3/00
B82Y 5/00−99/00
C25D 11/00−11/18
C22C 1/08
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元の多孔性複合構造を含む生物センサーミクロ電極において、該三次元の多孔性複合構造が帯状金属及び少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造を含み、前記帯状金属は多くの孔が形成され、少なくとも一つの前記カーボンナノチューブ構造が前記帯状金属の中に設置され、少なくとも一つの前記カーボンナノチューブ構造は、少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムを含み、少なくとも一層の前記カーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブを含み、複数の前記カーボンナノチューブは端と端が接続され、且つ同じ方向に沿って配向して配列されていることを特徴とする生物センサーミクロ電極。
【請求項2】
少なくとも一層の前記カーボンナノチューブフィルムにおける一部分のカーボンナノチューブが前記帯状金属の中に嵌め込まれ、少なくとも一層の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるもう一部分のカーボンナノチューブが複数の前記孔の内部に位置し、或いは、少なくとも一層の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるもう一部分のカーボンナノチューブが複数の前記孔によって露出することを特徴とする、請求項1に記載の生物センサーミクロ電極。
【請求項3】
分子識別素子及び信号転換素子を含み、前記分子識別素子は、検出されるための生物分子が触媒され、形成された生化反応信号を識別することに用いられ、前記信号転換素子が前記分子識別素子に識別された生化反応信号を電気化学信号に転換して、前記分子識別素子が請求項1〜2の中のいずれか一項に記載の生物センサーミクロ電極を含むことを特徴とする生物センサー。
【請求項4】
前記分子識別素子は、更に触媒作用を有する材料を含み、触媒作用を有する材料が前記三次元の多孔性複合構造の表面に設置されることを特徴とする、請求項3に記載の生物センサー。
【請求項5】
前記触媒作用を有する材料がナノの酸化物であることを特徴とする、請求項4に記載の生物センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物センサーミクロ電極及び生物センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
生物センサーは、生物分子の濃度を検出することに用いられるので、感度がよく、信頼性がよく、反応が早く、選択性がよく、コストが低い特徴を有する必要がある。生物センサーは、分子識別素子及び信号転換素子からなり、分子識別素子が生化反応信号を識別することに用いられ、信号転換素子が生化反応信号を電気信号に転換することに用いられる。分子識別素子は、一般的に電極及び電気触媒作用を有する材料からなり、電気触媒作用を有する材料が接着剤又は物理接触によって電極と結合する。電極は、生化反応によって形成された電流を収集することに用いられ、電気触媒作用を有する材料が検出されるための生物分子と生化反応を発生して、触媒作用を果たす。
【0003】
現在、電極材料は、ナノの多孔性金属を採用する。ナノの多孔性金属が大きな比表面積を有して、よりよい感度及びより低い検出限度を実現できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許公開第101239712A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ナノの多孔性金属は、孔の直径が均一ではなく、帯状部のサイズが均一ではなく、帯状部の接続が完全でないので、ナノの多孔性金属の機械強度及び靭性がよくない。従って、生物センサーミクロ電極及び生物センサーの使用寿命が長くない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これによって、使用寿命が長い生物センサーミクロ電極及び生物センサーを提供する必要がある。
【0008】
生物センサーミクロ電極は、三次元の多孔性複合構造を含む。該三次元の多孔性複合構造が帯状金属及び少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造を含む。前記帯状金属は多くの孔が形成され、少なくとも一つの前記カーボンナノチューブ構造が前記帯状金属の中に設置され、少なくとも一つの前記カーボンナノチューブ構造は、少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムを含み、少なくとも一層の前記カーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブを含み、複数の前記カーボンナノチューブは端と端が接続され、且つ同じ方向に沿って配向して配列されている。
【0009】
分子識別素子は、更に触媒作用を有する材料を含み、触媒作用を有する材料が前記三次元の多孔性複合構造の表面に設置される。
【0010】
触媒作用を有する材料がナノの酸化物である。
【0011】
少なくともの一層の前記カーボンナノチューブフィルムにおける一部分のカーボンナノチューブが前記帯状金属の中に嵌め込まれ、一部分のカーボンナノチューブが複数の前記孔の内部に位置し、或いは一部分のカーボンナノチューブが複数の前記孔によって露出する。
【0012】
生物センサーは、分子識別素子及び信号転換素子を含む。前記分子識別素子は、検出されるための生物分子が触媒され、形成された生化反応信号を識別することに用いられ、前記信号転換素子が前記分子識別素子に識別された生化反応信号を電気化学信号に転換して、前記分子識別素子が上記の生物センサーミクロ電極である。
【発明の効果】
【0013】
従来技術と比べて、本発明の生物センサーミクロ電極は、三次元の多孔性複合構造を含み、三次元の多孔性複合構造の内部に少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムが設置され、カーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブを含み、カーボンナノチューブが優れた機械強度及び優れた靭性を持つので、生物センサーミクロ電極及び生物センサーの使用寿命が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例の三次元の多孔性複合構造の構造を示す図である。
【
図2】本発明の実施例の複数のカーボンナノチューブが三次元の多孔性複合構造の帯状金属の中に設置される走査型電子顕微鏡写真である
【
図3】本発明の実施例の
図1における三次元の多孔性複合構造の製造方法のフローチャートである。
【
図4】プリフォーム体が、濃度が0.05m/Lである希塩酸に腐食され形成された三次元の多孔性複合構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図5】
図4の三次元の多孔性複合構造の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図6】プリフォーム体が、濃度が0.05m/Lである希塩酸に電気化学腐食され形成された三次元の多孔性複合構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図7】本発明の実施例の三次元の多孔性複合構造が低い倍率の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図8】プリフォーム体が、濃度が0.05m/Lである希塩酸に15時間腐食され形成された三次元の多孔性複合構造の走査型電子顕微鏡写真である。
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0016】
本発明の実施例は、生物センサーミクロ電極を提供する。生物センサーミクロ電極は三次元の多孔性複合構造を含む。
図1及び
図2を参照すると、三次元の多孔性複合構造は、帯状金属(金属靱帯)及び少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造を含む。帯状金属は多くの孔が形成され、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造が帯状金属の中に設置される。少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造は、少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムを含み、少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブを含み、複数のカーボンナノチューブは端と端が接続され、且つ同じ方向に沿って配向して配列されている。
【0017】
生物センサーミクロ電極が更に触媒作用を有する材料を含む。触媒作用を有する材料が三次元の多孔性複合構造の表面に設置される。触媒作用を有する材料がナノの酸化物、金属粒子などであり、更に分子識別素子の触媒作用を高めることができる。ナノの酸化物が化学法又は電気化学法によって三次元の多孔性複合構造の表面に成長される。ナノの酸化物が、Co
3O
4、MnO
2などである。ナノの酸化物の形状がナノの粒子、ナノのシート、ナノフラワーなどである。
【0018】
三次元の多孔性複合構造は、三次元の網状構造であり、多孔性構造は、帯状金属が互いに交錯して、複数の孔が形成される構造であることを理解できる。複数の孔が規則正しく分布してもよいし、不規則的に分布してもよい。複数の孔の直径が100マイクロメートル以下である。複数の孔の形成方法が制限されない。好ましくは、前記帯状金属の材料が、金、銀、銅、水銀、プラチナ、パラジウム、イリジウムなどの不活性金属の中のいずれか一種である。本実施例において、帯状金属の材料が銅である。
【0019】
カーボンナノチューブ構造が複数ある時、複数のカーボンナノチューブ構造が間隔を置いて設置され、隣接する二つのカーボンナノチューブ構造におけるカーボンナノチューブの配列方向は、角度θが形成され、角度θが0°〜90°である。好ましくは、角度θが0°であり、即ち、カーボンナノチューブ構造におけるカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って配向して配列される。カーボンナノチューブ構造は、少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムを含む。カーボンナノチューブ構造が多層のカーボンナノチューブフィルムを含む場合には、多層のカーボンナノチューブフィルムが共平面に設置され、又は積層して設置される。積層して設置された隣接するカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、角度αが形成され、角度αが0°〜90°である。好ましくは、角度αが0°であり、即ち、カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って配向して配列される。本実施例においては、カーボンナノチューブ構造が一つであり、カーボンナノチューブ構造が一層のカーボンナノチューブフィルムからなる。
【0020】
カーボンナノチューブフィルムは、基本的に同じ方向に沿って配向して配列され、端と端が接続された複数のカーボンナノチューブを含むので、カーボンナノチューブフィルムがより優れた機械強度、靭性及び導電性を有する。配向して配列されることとは、カーボンナノチューブフィルムにおける大多数のカーボンナノチューブの全体の延伸方向が基本的に同じ方向に沿う。大多数のカーボンナノチューブの全体の延伸方向がカーボンナノチューブフィルムの表面に基本的に平行する。さらに、カーボンナノチューブフィルムにおける大多数のカーボンナノチューブは、分子間力で端と端が接続され、隣接するカーボンナノチューブの間が隙間を有する。具体的には、カーボンナノチューブフィルムにおいて、基本的に同じ方向に沿って延伸される大多数のカーボンナノチューブの中の各々のカーボンナノチューブは、延伸方向に隣接するカーボンナノチューブと分子間力で端と端が接続されるので、カーボンナノチューブフィルムが自立構造を有するものである。
【0021】
もちろん、カーボンナノチューブフィルムには、少数のランダムに配列されるカーボンナノチューブが存在しているが、これらのカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブフィルムにおける大多数のカーボンナノチューブの全体が配向して配列されることに対して、顕著な影響を及ぼすことはない。理解できることは、カーボンナノチューブフィルムにおいて、基本的に同じ方向に沿って延伸する大多数のカーボンナノチューブが絶対的に直線状ではなく、適切に曲げることができ、或いは、完全に延伸方向に沿って配列することはなく、適当に延伸方向から外れることができることである。従って、カーボンナノチューブフィルムにおける基本的に同じ方向に沿って延伸する多数のカーボンナノチューブの中では、並んだカーボンナノチューブの間にカーボンナノチューブの一部分が接触して、これらのカーボンナノチューブの他の一部分が分離する可能性がある。本実施例において、カーボンナノチューブフィルムは、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して得られたものである。超配列カーボンナノチューブアレイにおける複数のカーボンナノチューブが基本的に同じ方向に沿って生長して、互いに平行する。
【0022】
本実施例において、一層のカーボンナノチューブフィルムが帯状金属の中に設置される。カーボンナノチューブフィルムにおける一部分のカーボンナノチューブが帯状金属の中に嵌め込まれ、一部分のカーボンナノチューブが複数の孔の内部に位置し、或いは一部分のカーボンナノチューブが複数の孔によって露出する。
【0023】
本実施例の三次元の多孔性複合構造が、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造を含むので、三次元の多孔性複合構造は、優れた導電性、靭性及び安定性を有する。三次元の多孔性複合構造が多孔性構造を有して、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造が帯状金属の中に設置され、三次元の多孔性複合構造の比表面積を高め、三次元の多孔性複合構造の中にカーボンナノチューブが差し挟まれ、三次元の多孔性複合構造が自立構造を有するものである。
【0024】
図3を参照して、本発明は、更に三次元の多孔性複合構造の製造方法を提供する。三次元の多孔性複合構造の製造方法は、主に以下のステップを含む。
【0025】
ステップS10:不活性金属の塩溶液及び活性金属の塩溶液を提供する。
【0026】
不活性金属の塩溶液は、めっき用液Aとして、活性金属の塩溶液は、めっき用液Bとする。活性金属は、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、錫、ニッケルの中のいずれか一種である。不活性金属は、銅、水銀、銀、プラチナ、金の中のいずれか一種である。活性金属が不活性金属と比べて、更に酸又はアルカリと反応しやすい。好ましくは、不活性金属の塩溶液が葡萄糖と十分に混ぜ合わせられることで、引き続いて形成される不活性金属めっき膜を細分化できる。本実施例において、活性金属の塩溶液がZnSO
4溶液であり、不活性金属の塩溶液がCuSO
4溶液である。
【0027】
ステップS20:基板を提供して、基板の表面に不活性金属の塩溶液を電気めっきして、めっき膜Mを形成する。
【0028】
基板は、純金属又は金属の合金であり、金属の種類が制限されず、炭素、チタン、金、銀やプラチナなどである。電気めっきする具体的な過程は、基板を作動電極として、不活性金属板を対電極として、不活性金属の塩溶液をめっき用液として、所定の電圧を印加することによって、不活性金属の塩溶液における不活性金属のイオンが電子を獲得して、不活性金属のイオンが還元され、不活性金属の原子を形成して、不活性金属の原子が基板の表面に堆積して、めっき膜Mを形成する。めっき膜Mは、めっき用液Aにおける不活性金属の原子から形成されるフィルム構造である。本実施例において、基板がチタン板であり、めっき膜Mが銅のめっき膜である。
【0029】
ステップS30:めっき膜Mの表面に一つのカーボンナノチューブ構造を設置する。
【0030】
一つのカーボンナノチューブ構造が少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムを含み、少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムが順にめっき膜Mの表面に敷設する。カーボンナノチューブフィルムが複数の層である時に、隣接する二層のカーボンナノチューブフィルムが共平面に設置され、又は積層して設置される。隣接する二層のカーボンナノチューブフィルムが積層して設置されれば、隣接する二層のカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向が角度αを成して、角度αが0°〜90°である。好ましくは、角度αが0°である。隣接する二層のカーボンナノチューブフィルムが隙間無く共平面に設置されれば、隣接する二層のカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って、配向して配列される。カーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブを含み、複数のカーボンナノチューブが分子間力で端と端とが接続され、同じ方向に沿って、配向して配列される。複数のカーボンナノチューブがカーボンナノチューブフィルムの平面に平行する。好ましくは、複数のカーボンナノチューブが分子間力で互いに接続され、互いに引き付けられ、緊密に接合され、カーボンナノチューブフィルムを自立構造にならせる。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブフィルムを独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、カーボンナノチューブフィルムを対向する両側から支持して、カーボンナノチューブフィルムの構造を変化させずに、カーボンナノチューブフィルムを懸架させることができることを意味する。
【0031】
カーボンナノチューブフィルムの獲得方法は制限されず、好ましくは、カーボンナノチューブフィルムが、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して得られたものである。カーボンナノチューブフィルムの製造方法は次のステップを含む。
【0032】
まず、カーボンナノチューブアレイを提供する。該カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施例において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)を成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直に生長する複数のカーボンナノチューブからなる。隣接するカーボンナノチューブは、互いに接触して、分子間力で接続される。生長の条件を制御することによって、カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。不純物を含まず、カーボンナノチューブの間が緊密に接触しているので、隣接するカーボンナノチューブの間が大きな分子間力を有して、カーボンナノチューブ(カーボンナノチューブセグメント)を引き出す時に、隣接するカーボンナノチューブを分子間力の作用によって、端と端とが接続させ、連続に引き出され、連続な、自立構造を有するカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0033】
本実施例において、カーボンを含むガスとしては、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。具体的には、超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、特許文献1を参照する。
【0034】
次に、ピンセットなどの工具を利用して、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して、少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルムを獲得する。
【0035】
具体的には、下記のステップを含む。ステップ(A)では、カーボンナノチューブアレイから一定の幅を有する複数のカーボンナノチューブセグメントを選択する。ステップ(B)では、所定の速度でカーボンナノチューブアレイの生長方向に基本的に垂直する方向に沿って、複数のカーボンナノチューブセグメントを引き出し、連続のカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0036】
ステップS40:カーボンナノチューブ構造の表面に活性金属の塩溶液を電気めっきして、めっき膜Nを形成して、基板を剥離して、複合構造を形成する。
【0037】
めっき膜Nは、めっき用液Bにおける活性金属原子から形成されたフィルム構造である。複合構造は、めっき膜M、カーボンナノチューブ構造及びめっき膜Nが積層して設置される。電気めっきする過程において、活性金属原子がカーボンナノチューブフィルムにおける隣接するカーボンナノチューブの間の隙間に入る。本実施例において、めっき膜Nが亜鉛のめっき膜である。ステップS40において、一つの複合構造のみを形成してもよく、複数の複合構造を形成してもよく、複数の複合構造が積層して設置される。即ち、めっき膜M、カーボンナノチューブ構造及びめっき膜Nの表面に繰り返してめっき膜M、カーボンナノチューブ構造及びめっき膜Nを形成してもよい。隣接する二つの複合構造におけるカーボンナノチューブフィルムの中のカーボンナノチューブの配列方向が制限されず、実際の応用に応じて選択することができる。
【0038】
ステップS50:複合構造に対して高温でアニーリングして、複合構造における金属原子を合金に形成させ、プリフォーム体を獲得する。
【0039】
複合構造が真空条件のもとで、高温でアニーリングする過程は、次の通りである。高温で加熱する時に、複合構造におけるめっき膜N及びめっき膜Mが溶融状態になり、めっき膜Nにおける活性金属の原子及びめっき膜Mにおける不活性金属の原子がカーボンナノチューブ構造を介して混合される。具体的には、溶融状態の活性金属の原子及び不活性金属の原子が隣接する二つのカーボンナノチューブの間の隙間又はカーボンナノチューブフィルムの表面に位置して、この時、アニーリングし、冷却して、活性金属の原子及び不活性金属の原子が合金に形成される。異なる金属のアニーリング温度が異なり、アニーリング温度を制御することによって、原子と原子との間の十分な拡散を実現でき、且つ合金を形成する。高温でアニーリングする過程において、溶融状態の金属が直接的にカーボンナノチューブに生長して、大幅にカーボンナノチューブと金属との間の接触抵抗を下げ、三次元の多孔性複合構造により優れた導電性を有させる。理解できることは、カーボンナノチューブが金属と接触する界面が、格子面が連続となる整合界面(Coherent interface)である。好ましくは、アニーリング温度が300℃以上である。本実施例において、アニーリング温度が450℃であり、Zn原子とCu原子が十分に拡散して、合金を形成する。
【0040】
プリフォーム体における活性金属及び不活性金属からなる合金は、カーボンナノチューブフィルムの表面に存在するだけではなく、更にカーボンナノチューブフィルムにおける隣接する二つのカーボンナノチューブの隙間に存在して、更に端と端とが接続された二本のカーボンナノチューブのノードに存在する。
【0041】
ステップS60:プリフォーム体を腐食して、多孔性構造に形成して、三次元の多孔性複合構造を獲得する。
【0042】
図4、
図5及び
図6を参照すると、プリフォーム体を腐食する方法は、電気化学腐食法又は化学腐食法である。具体的には、プリフォーム体を希酸又は希アルカリの溶液中に置き、プリフォーム体における活性金属原子が希酸又は希アルカリと化学反応又は電気化学反応を起こして、プリフォーム体における活性金属原子が完全に反応され、多孔性構造を形成する。好ましくは、プリフォーム体に対して電気化学腐食をすることで、更に孔の直径の大きさを制御しやすい。
【0043】
図7及び
図8を参照すると、プリフォーム体が腐食された後、帯状金属が形成され、帯状金属の間に多くの孔が形成される。理解できることは、形成された三次元の多孔性複合構造が三次元の網目状である。三次元の多孔性複合構造における複数のカーボンナノチューブの存在形式が多種あって、例えば、カーボンナノチューブが孔から露出して、或いは、孔の中に位置してもよく、帯状金属の内部に嵌め込んでもよい。孔の直径及び分布率などのパラメータが活性金属原子と不活性金属原子の割合、希酸の濃度、希アルカリの濃度、腐食時間によって、決められる。プリフォーム体を腐食し始めてから、活性金属が完全に腐食されるまで、腐食時間が長ければ、形成された孔の直径が大きい。本実施例において、希酸は、希塩酸であり、濃度が0.05mol/Lであり、孔の直径が1マイクロメートルである。
【0044】
本発明の三次元の多孔性複合構造の製造方法において、まず、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造を不活性金属と活性金属との間に設置して、その後、合金を去除する技術で多孔性構造を形成する。カーボンナノチューブ構造における複数のカーボンナノチューブは、一部分が帯状金属の中に嵌め込み、他の一部分が孔の中に位置するので、三次元の多孔性複合構造の導電性、機械強度及び安定性を高め、且つ三次元の多孔性複合構造の比表面積を増加して、カーボンナノチューブと金属との接触箇所が整合界面を有するので、カーボンナノチューブと金属との間の接触抵抗を削減して、更に三次元の多孔性複合構造の導電性を高める。
【0045】
本発明の生物センサーミクロ電極は、三次元の多孔性複合構造を含み、三次元の多孔性複合構造の内部に少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムが設置される。少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブを含み、複数のカーボンナノチューブが優れた機械強度及び優れた靭性を持つので、生物センサーミクロ電極の使用寿命が高められる。
【0046】
本発明は、更に生物センサーを提供する。生物センサーは、分子識別素子及び信号転換素子を含む。信号転換素子が分子識別素子に識別された生化反応信号を電気化学信号に転換する。分子識別素子が三次元の多孔性複合構造を含む。三次元の多孔性複合構造は、帯状金属及び少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造を含む。帯状金属は多くの孔が形成され、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造が帯状金属の中に設置される。少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造は、少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムを含み、少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブを含み、複数のカーボンナノチューブは端と端が接続され、且つ同じ方向に沿って配向して配列されている。
【0047】
分子識別素子における触媒が検出されるための生物分子と反応を発生して、分子識別素子は、検出されるための生物分子が触媒され、形成された生化反応信号を識別することに用いられる。検出されるための生物分子は、葡萄糖分子(Glucose molecule)、有機分子(Organic molecule)、酵素(Enzyme)、酵素の基質(Enzyme substrate)、抗体又は抗原などである。本実施例において、検出されるための生物分子は、葡萄糖分子である。分子識別素子における三次元の多孔性複合構造が検出されるための生物分子と接触して、検出されるための生物分子が一定の電圧のもとで触媒され、生化反応信号を形成して、信号転換素子が生化反応信号を物理信号に転換して、信号処理システムに出力する。物理信号を処理することによって、生物分子の濃度を検出する。三次元の多孔性複合構造における帯状金属及びカーボンナノチューブが優れた触媒作用を有し、且つ帯状金属及びカーボンナノチューブが優れた導電性を有するので、三次元の多孔性複合構造は、同時に電子を収集する作用及び触媒作用を有する、従って、構造が簡単であり、分子識別素子の内部抵抗を小さくならせる
【0048】
分子識別素子が更に触媒作用を有する材料を含む。触媒作用を有する材料が三次元の多孔性複合構造の表面に設置される。触媒作用を有する材料がナノの酸化物、金属粒子などであり、更に分子識別素子の触媒作用を高めることができる。ナノの酸化物が化学法又は電気化学法によって三次元の多孔性複合構造の表面に成長される。ナノの酸化物が、Co
3O
4、MnO
2などである。ナノの酸化物の形状がナノの粒子、ナノのシート、ナノフラワーなどである。
【0049】
信号転換素子が物理変換器又は化学変換器である。変換器は、酸素電極、光電管、電界効果トランジスタ、ピエゾ・エレクトリック・クリスタルなどの中のいずれか一種である。信号転換素子が分子識別素子に識別された生化反応信号を測量できる電気化学信号に転換して、検出されるための生物分子の濃度を獲得する。
【0050】
本発明の生物センサーにおいて、三次元の多孔性複合構造の内部に少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムが設置され、少なくとも一層のカーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブを含み、複数のカーボンナノチューブが優れた機械強度及び優れた靭性を有するので、三次元の多孔性複合構造が優れた機械強度及び優れた靭性を有する。従って、生物センサーの使用寿命が高められる。三次元の多孔性複合構造は、同時に電子を収集する作用及び触媒作用を有するので、構造が簡単であり、分子識別素子の内部抵抗を小さくならせる。