特許第6703090号(P6703090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6703090CRTH2受容体アンタゴニストに対する応答に関連した遺伝的マーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703090
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】CRTH2受容体アンタゴニストに対する応答に関連した遺伝的マーカー
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/437 20060101AFI20200525BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200525BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20200525BHJP
【FI】
   A61K31/437
   A61P11/06
   A61P43/00 121
   A61P43/00 111
   C12Q1/6876 ZZNA
【請求項の数】15
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2018-502772(P2018-502772)
(86)(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公表番号】特表2018-520199(P2018-520199A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】US2016043234
(87)【国際公開番号】WO2017015418
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年2月21日
(31)【優先権主張番号】62/196,128
(32)【優先日】2015年7月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596129215
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】オピテック,グレゴリー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ペギー・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】マケルウィー,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】メイロトラ,デヴァン・ブイ
(72)【発明者】
【氏名】グリーンバーグ,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ズーファン
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−097927(JP,A)
【文献】 Clin. Pharmacol. Ther., (2012), 92, [1], p.96-102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 31/437
A61K 31/47
C12Q 1/68
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CRTH2受容体アンタゴニストの治療的有効量を含む、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である障害を有する患者の治療用の医薬組成物であって、
該医薬組成物は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、以下の表:
【表1】

におけるCRTH2受容体アンタゴニストマーカーから選択される、より良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している患者に投与され
ここで、CRTH2受容体アンタゴニストは、{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸またはその医薬上許容される塩であり、そして、
CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である障害が喘息である、医薬組成物
【請求項2】
CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーがrs12748961 SNPであり、そして
患者が、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs12748961 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断された患者に投与される、喘息を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、CRTH2受容体アンタゴニストの治療的有効量を含み、そして、該医薬組成物は、以下のステップを経由して投与される;
(a)ヒト患者から生物学的サンプルを得、
(b)以下の表:
【表2】

におけるCRTH2受容体アンタゴニストマーカーの少なくとも1つの、より良好な応答の対立遺伝子が生物学的サンプル中に存在するかどうかを検出し、
(c)生物学的サンプルにおいて、より良好な応答の対立遺伝子の存在が検出されたら、患者がCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断され、そして、
(d)診断された患者にCRTH2受容体アンタゴニストの治療的有効量が投与される、
ことを特徴とし、
ここで、CRTH2受容体アンタゴニストは、{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸またはその医薬上許容される塩である、医薬組成物
【請求項4】
工程(d)が、ロイコトリエン受容体アンタゴニストが患者に投与されることを更に含む、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs12748961 SNPのC対立遺伝子を検出し、そして、
工程(c)において、rs12748961 SNPのC対立遺伝子が検出されたら、患者が、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断される、請求項3または4記載の医薬組成物。
【請求項6】
工程(d)において、診断された患者に、CRTH2受容体アンタゴニストである、{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸の有効量およびロイコトリエン受容体アンタゴニストであるモンテルカストが投与される、請求項4または5記載の医薬組成物。
【請求項7】
医薬組成物と、処方情報を含む指示書とを含む医薬品であって、
医薬組成物がCRTH2受容体アンタゴニストを含み、そして、処方情報が遺伝薬理学的適応を含み、
ここで、遺伝薬理学的適応が、以下の表:
【表3】

におけるCRTH2受容体アンタゴニストマーカーから選択される、より良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を指示し、
該医薬組成物は、前記遺伝薬理学的適応に従って患者に投与され
ここで、CRTH2受容体アンタゴニストは、{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸またはその医薬上許容される塩であり、そして、
CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である障害が喘息である、医薬品
【請求項8】
処方情報が、rs12748961 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む遺伝薬理学的適応、を含む、請求項7記載の医薬品。
【請求項9】
医薬組成物がロイコトリエン受容体アンタゴニストを更に含む、請求項7または8記載の医薬品。
【請求項10】
以下の表:
【表4】

から選択されるCRTH2アンタゴニスト応答マーカーの1つから選択される、より良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在または非存在に関しての、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患を有する患者を試験するためのキットであって、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つを遺伝子型決定するように設計されたオリゴヌクレオチドのセットを含むキットであり、
ここで、CRTH2受容体アンタゴニストは、{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸またはその医薬上許容される塩であり、そして、
CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である障害が喘息である、キット
【請求項11】
CRTH2アンタゴニスト応答マーカーがrs12748961 SNPである、請求項10記載のキット。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドが対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブである、請求項10または11記載のキット。
【請求項13】
CRTH2受容体アンタゴニストに加えてロイコトリエン受容体アンタゴニストが患者に投与される、請求項1または2のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項14】
ロイコトリエン受容体アンタゴニストがモンテルカストである、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
患者がCRTH2受容体アンタゴニストでの喘息の治療に感受性であるかどうかを診断するための、生物学的サンプルにおけるデータの取得方法であって、該方法は
(a)以下の表:
【表5】

におけるCRTH2受容体アンタゴニストマーカーの少なくとも1つの、より良好な応答の対立遺伝子が生物学的サンプル中に存在するかどうかを検出し、
(b)生物学的サンプルにおいて、より良好な応答の対立遺伝子の存在が検出されたら、その結果を記録する、工程を含み、
ここで、CRTH2受容体アンタゴニストは、{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸またはその医薬上許容される塩である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に対する有益な応答を予測する、ヒト第1染色体上の遺伝的マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
この節または本出願の任意の節における任意の刊行物の特定は、そのような刊行物が本発明の先行技術であることを認めるものではない。
【0003】
喘息は、著しい罹患率および死亡率を伴う非常に一般的な疾患であり、直接的および間接的な高い医療費をもたらす。世界保健機関(WHO)のデータが現在推定しているところによると、喘息の罹患数は全世界で3億人であり、この数字は2025年までに4億人まで増加すると予想されている。約1500万の障害調整生存年数が喘息によって失われ、250件中1件の死亡が喘息によるものである。Masoli Mら,for the Global Initiative for Asthma(GINA) Program,Allergy 2004;59:469−78。この高い疾病負荷は、部分的には、標準療法において十分には抑制されていない患者によるものである。Bateman EDら,Am J Respir Crit Care Med 2004;170:836−44。また、標準的な吸入療法に対するコンプライアンスは比較的低い。併用および同時吸入療法を開始した患者のそれぞれ44.2%および51.5%は最初の1年間において彼らの初期処方を更新しないと推定されている。Marceau Cら,J.Allergy Clin Immunol 2006;118:574−81。吸入に代わる選択肢には、経口剤、例えばモンテルカストおよびジロートン、ならびに、アミノフィリンのようなメチルキサンチンが含まれるが、これらの物質は吸入剤ほど強力ではないと認識されている。したがって、単独で又は利用可能な療法と組合せて、喘息を有効に治療する耐容性良好な新規経口療法が必要とされている。
【0004】
Th2細胞上の化学誘引物質受容体相同分子(CRTH2)は、好酸球、好塩基球およびTh2細胞上で発現されるプロスタグランジンD2(PGD2)のGタンパク質共役型受容体である。インビトロにおいて、PGD2およびそのCRTH2選択的代謝産物の幾つかは、これらの白血球をリクルートし、以下により活性化する;1)血管壁への細胞接着および血液循環から炎症組織への細胞の遊出を促進する表面タンパク質CD11bの発現を刺激すること、及び2)炎症部位への細胞の移動(走化性)を刺激すること。CRTH2の活性化は、Th2サイトカイン放出(例えば、TH2細胞からのIL−13)の刺激、ならびに好塩基球および好酸球の脱顆粒の刺激をももたらす。
【0005】
既存の前臨床および臨床データは、PGD2/CRTH2経路が、喘息に関与する重要な炎症性白血球のリクルートメントおよび活性化に必須であることを示唆している。Shichijo M,Arimura A,Hirano Yら,Clin Exp Allergy 2009 Sep;39(9):1404−14;Lukacs NW,Berlin AA,Franz−Bacon Kら,Am J Physiol Lunch Cell Mol Physiol 2008:295:L767−79;Uller L,Mathiesen JM,Alenmyr Lら,Respir Res 2007;8:16I。ヒトにおいて、CRTH2 mRNA安定性の増強をもたらすCRTH2遺伝的多型が2つの独立した集団において喘息と有意に関連づけられている。Huang J−L,Gao P−S,Mathias RA,Yao T−C,Chen L−C,Kuo M−Lら,Hum Mol Genet 2004;13(21):2691−7。二重TP/CRTH2アンタゴニストであるラマトロバンはアレルギー性鼻炎において或る程度の有効性を示すと報告されており、日本において商業化されている。Ishizuka T,Matsui T,Okamoto Yら,Cardiovasc Drug Rev 2004;22:71−90。更に、好酸球性重症喘息に罹患した患者集団において行われた最近の第IIa相臨床研究は、CRTH2アンタゴニストであるフェビピプラントで治療された患者における喀痰好酸球の減少を示した。European Medical Journal Respir.2014;2:50−57。総合すると、これらの知見は、喘息の治療におけるCRTH2抑制の潜在的に重要な役割と合致している。
【0006】
CRTH2受容体アンタゴニストの治療効果は、喘息に罹患した患者の間で広範に変動しうる。より良好にCRTH2受容体に応答しうる患者をより良好に標的化し、それにより、より良好かつより費用効果的な喘息治療を提供するために、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療から利益を得る可能性が高い患者を特定するための方法が必要とされている。本発明はその要求に対処するものである。
【発明の概要】
【0007】
発明の概括
本発明は、ヒト第1染色体上の一塩基多型(SNP)のような遺伝的多型が、CRTH2受容体機能に関連した障害に罹患した患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に対する応答に有意に関連しているという知見に基づく。CRTH2受容体アンタゴニスト療法に対する応答に関連した遺伝的多型は、本明細書においては「CRTH2アンタゴニスト応答マーカー」と称される。
【0008】
これらの遺伝的多型の1つは、NCBI SNPデータベースにおけるrs12748961として特定されるC/T多型であるSNPである。C対立遺伝子の存在は、より良好な治療応答に関連しており、C/CまたはC/T遺伝子型が喘息患者における1秒努力呼気肺活量(FEV)における4.5倍良好な改善に関連している。C対立遺伝子は白人におけるマイナー対立遺伝子であるが、それは、アジア人を祖先とする集団においては集団全体より実質的に高い頻度で存在するため、rs12748961多型は、CRTH2受容体アンタゴニスト療法から利益を受けうる喘息患者の適当な集団を選択する際に、医療従事者、保健機関および医療保険提供者にとっての指針となりうる。
【0009】
本発明者らはまた、第1染色体上の他の遺伝的多型間の、CRTH2受容体アンタゴニストに対する有益な応答(例えば、喘息患者におけるFEVスコアの改善)との関連性を特定した。CRTH2受容体アンタゴニスト療法に対する有益な応答に関連した遺伝的多型を以下の表1に示し、ここで、PSはSNP NCBIデータベースによる多型部位を意味し、第2列における「−」は、変異体が欠失または挿入変異体に相当することを示す。
【表1】
【0010】
表1において、第2列におけるエントリーとしての「−」の表示は、変異体が欠失または挿入変異体に相当することを示す。例えば、rs67625805においては、代替(alternate)対立遺伝子は、対応位置におけるTヌクレオチドの欠失を表す。もう1つの例として、rs71970505においては、対立遺伝子の1つにおいては11残基ヌクレオチドセグメントが存在しないが、代替対立遺伝子においては、ヌクレオチドセグメントATGCAGACTGTがヌクレオチドの対応位置に存在する。
【0011】
本発明者らはここで、表1のCRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1以上の存在に関する個体の試験が、遺伝薬理学的産物およびCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である障害に対するCRTH2受容体アンタゴニスト療法に応答する可能性が高い対象を特定することを含む種々の方法において有用であり、そして、喘息に罹患した患者にCRTH2受容体アンタゴニストを処方すべきかどうかを医師が決定するのを補助すると想定している。例えば、本発明者らは、rs12748961 SNPに関するC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関する被験者(対象)の試験が、そのような産物および方法で有用であり、そしてそのような医師を補助すると想定している。
【0012】
したがって、第1の実施形態においては、本発明は、CRTH2受容体アンタゴニストの治療的有効量を患者に投与することを含む、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である障害を有する患者の治療方法を提供し、
ここで、該患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、前記表1から選択されるCRTH2受容体アンタゴニストマーカーから選択される、より良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している。
【0013】
第1の実施形態の第1の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs12748961 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している。
【0014】
第1の実施形態の第2の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs12118655 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している。
【0015】
第1の実施形態の第3の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs6679073 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している。
【0016】
第1の実施形態の第4の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs12564209 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している。
【0017】
第1の実施形態の第5の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs3805 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している。
【0018】
第1の実施形態の第6の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs71633561 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している。
【0019】
第1の実施形態の第7の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs71970505 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している(表1の「より良好な応答対立遺伝子」の列において「−」として示されている)。
【0020】
第1の実施形態の第8の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs12132270 SNPのT対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している。
【0021】
第1の実施形態の第9の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs67625805 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している(表1の「より良好な応答対立遺伝子」の列において「−」として示されている)。
【0022】
第1の実施形態の第10の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs3747972 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している。
【0023】
第1の実施形態の第11の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs11557080 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している。
【0024】
第1の実施形態の第12の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs71633563 SNPのT対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している。
【0025】
第1の実施形態の第13の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs34848415 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している(表1の「より良好な応答対立遺伝子」の列において「−」として示されている)。
【0026】
第1の実施形態の第14の態様においては、患者は、CRTH2受容体アンタゴニストの投与の前に、rs1891091 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示している。
【0027】
第1の実施形態の第15の態様(第1〜第15の態様のいずれかを含む)においては、該方法は更に、ロイコトリエンアンタゴニスト、例えばモンテルカスト、ザフィルカストまたはプランルカストを患者に投与することを含む。第1の実施形態の第16の態様(第1〜第15の態様のいずれかを含む)においては、該方法は更に、モンテルカストを患者に投与することを含む。
【0028】
第2の実施形態においては、本発明は、医薬組成物と処方情報とを含む医薬品を提供し、
ここで、該医薬組成物は、CRTH2受容体アンタゴニストを含み、該処方情報は遺伝薬理学的適応を含み、
ここで、該遺伝薬理学的適応は、前記表1に記載されているCRTH2受容体アンタゴニストマーカーから選択される、より良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0029】
第2の実施形態の第1の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs12748961 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0030】
第2の実施形態の第2の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs12118655 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0031】
第2の実施形態の第3の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs6679073 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0032】
第2の実施形態の第4の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs12564209 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0033】
第2の実施形態の第5の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs3805 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0034】
第2の実施形態の第6の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs71633561 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0035】
第2の実施形態の第7の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs71970505 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0036】
第2の実施形態の第8の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs12132270 SNPのT対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0037】
第2の実施形態の第9の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs67625805 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0038】
第2の実施形態の第10の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs3747972 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0039】
第2の実施形態の第11の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs11557080 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0040】
第2の実施形態の第12の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs71633563 SNPのT対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0041】
第2の実施形態の第13の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs34848415 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0042】
第2の実施形態の第14の態様においては、遺伝薬理学的適応は、rs1891091 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す患者におけるCRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患の治療を含む。
【0043】
第2の実施形態に記載されている医薬品の第15の態様(第1〜第14の態様のいずれかを含む)においては、該医薬品は更に、ロイコトリエンアンタゴニスト、例えばモンテルカスト、ザフィルカストまたはプランルカストを含む。第2の実施形態の第16の態様(第1〜第15の態様のいずれかを含む)においては、該医薬品は更に、モンテルカストを含む。
【0044】
第3の実施形態においては、本発明は、前記表1に記載されているCRTH2受容体アンタゴニストマーカーから選択される、より良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示し、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患を有する患者を治療するための医薬の製造における、CRTH2受容体アンタゴニストの使用を提供する。
【0045】
第3の実施形態の第1の態様においては、患者はrs12748961 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0046】
第3の実施形態の第2の態様においては、患者はrs12118655 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0047】
第3の実施形態の第3の態様においては、患者はrs6679073 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0048】
第3の実施形態の第4の態様においては、患者はrs12564209 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0049】
第3の実施形態の第5の態様においては、患者はrs3805 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0050】
第3の実施形態の第6の態様においては、患者はrs71633561 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0051】
第3の実施形態の第7の態様においては、患者はrs71970505 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0052】
第3の実施形態の第8の態様においては、患者はrs12132270 SNPのT対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0053】
第3の実施形態の第9の態様においては、患者はrs67625805 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0054】
第3の実施形態の第10の態様においては、患者はrs3747972 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0055】
第3の実施形態の第11の態様においては、患者はrs11557080 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0056】
第3の実施形態の第12の態様においては、患者はrs71633563 SNPのT対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0057】
第3の実施形態の第13の態様においては、患者はrs34848415 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0058】
第3の実施形態の第14の態様においては、患者はrs1891091 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。
【0059】
第4の実施形態においては、本発明は、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患を有する患者を治療するための療法の選択方法を提供し、ここで、表1に記載されているものから選択される多型部位における患者の遺伝子型を決定及び報告し、該方法は、
該報告を検討して、該患者が、CRTH2のアンタゴニスト応答マーカーの、より良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認し、
その検討に基づいて、該CRTH2受容体アンタゴニストで該患者を治療することを含む。
【0060】
第4の実施形態の第1の態様においては、該報告を検討して、患者がrs12748961 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0061】
第4の実施形態の第2の態様においては、該報告を検討して、患者がrs12118655 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0062】
第4の実施形態の第3の態様においては、該報告を検討して、患者がrs6679073 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0063】
第4の実施形態の第4の態様においては、該報告を検討して、患者がrs12564209 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0064】
第4の実施形態の第5の態様においては、該報告を検討して、患者がrs3805 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0065】
第4の実施形態の第6の態様においては、該報告を検討して、患者がrs71633561 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0066】
第4の実施形態の第7の態様においては、該報告を検討して、患者がrs71970505 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0067】
第4の実施形態の第8の態様においては、該報告を検討して、患者がrs12132270 SNPのT対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0068】
第4の実施形態の第9の態様においては、該報告を検討して、患者がrs67625805 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0069】
第4の実施形態の第10の態様においては、該報告を検討して、患者がrs3747972 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0070】
第4の実施形態の第11の態様においては、該報告を検討して、患者がrs11557080 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0071】
第4の実施形態の第12の態様においては、該報告を検討して、患者がrs71633563 SNPのT対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0072】
第4の実施形態の第13の態様においては、該報告を検討して、患者がrs34848415 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0073】
第4の実施形態の第14の態様においては、該報告を検討して、患者がrs1891091 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを有することを確認する。
【0074】
第5の実施形態においては、本発明は、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である障害を有する患者の群から、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療のための患者を選択するためのスクリーニング方法を提供し、該方法は、前記表1に記載されているものから選択されるCRTH2アンタゴニスト応答マーカーの、より良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験することを含み、ここで、試験陽性は、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの、より良好な応答の対立遺伝子の少なくとも1つが存在することである。
【0075】
第5の実施形態の第1の態様においては、rs12748961 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs12748961 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0076】
第5の実施形態の第2の態様においては、rs12118655 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs12118655 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0077】
第5の実施形態の第3の態様においては、rs6679073 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs6679073 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0078】
第5の実施形態の第4の態様においては、rs12564209 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs12564209 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0079】
第5の実施形態の第5の態様においては、rs3805 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs3805 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0080】
第5の実施形態の第6の態様においては、rs71633561 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs71633561 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0081】
第5の実施形態の第7の態様においては、rs71970505 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs71970505 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0082】
第5の実施形態の第8の態様においては、rs12132270 SNPのコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs12132270 SNPのコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0083】
第5の実施形態の第9の態様においては、rs67625805 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs67625805 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0084】
第5の実施形態の第10の態様においては、rs3747972 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs3747972 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0085】
第5の実施形態の第11の態様においては、rs11557080 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs11557080 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0086】
第5の実施形態の第12の態様においては、rs71633563 SNPのT対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs71633563 SNPのT対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0087】
第5の実施形態の第13の態様においては、rs34848415 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs34848415 SNPの欠失対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0088】
第5の実施形態の第14の態様においては、rs1891091 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在に関して該群の各メンバーを試験し、ここで、試験陽性は、rs1891091 SNPのA対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが存在することである。
【0089】
第6の実施形態においては、本発明は、前記表1に記載されているCRTH2アンタゴニスト応答マーカーの1つから選択される、より良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つの存在または非存在に関しての、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患を有する患者を試験するためのキットを提供し、該キットは、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つを遺伝子型決定するように設計されたオリゴヌクレオチドのセットを含む。
【0090】
第6の実施形態の第1の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs12748961 SNPである。
【0091】
第6の実施形態の第2の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs12118655 SNPである。
【0092】
第6の実施形態の第3の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs6679073 SNPである。
【0093】
第6の実施形態の第4の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs12564209 SNPである。
【0094】
第6の実施形態の第5の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs3805 SNPである。
【0095】
第6の実施形態の第6の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs71633561 SNPである。
【0096】
第6の実施形態の第7の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs71970505 SNPである。
【0097】
第6の実施形態の第8の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs12132270 SNPである。
【0098】
第6の実施形態の第9の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs67625805 SNPである。
【0099】
第6の実施形態の第10の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs3747972 SNPである。
【0100】
第6の実施形態の第11の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs11557080 SNPである。
【0101】
第6の実施形態の第12の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs71633563 SNPである。
【0102】
第6の実施形態の第13の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs34848415 SNPである。
【0103】
第6の実施形態の第14の態様においては、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの少なくとも1つはrs1891091 SNPである。
【0104】
第6の実施形態のキットの第15の態様(第1〜第14の態様のいずれかを含む)においては、オリゴヌクレオチドは対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブである。特定の態様においては、オリゴヌクレオチドは固体表面上に固定化されている。
【0105】
第7の実施形態においては、本発明は、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である患者を診断し、喘息を治療する方法を提供し、該方法は、
(a)ヒト患者から生物学的サンプル(例えば血液サンプル、例えば血漿サンプル)を得、
(b)前記表1におけるCRTH2受容体アンタゴニストマーカーの少なくとも1つの、より良好な応答の対立遺伝子が血液サンプル中に存在するかどうかを検出し、
(c)血液サンプルにおいて、より良好な応答の対立遺伝子の存在が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断し、そして、
(d)診断された患者にCRTH2受容体アンタゴニストの治療的有効量を投与することを含む。
【0106】
第7の実施形態の1つの態様においては、工程(d)は、ロイコトリエン受容体アンタゴニストを患者に投与することを更に含む。例えば、ロイコトリエン受容体アンタゴニストはモンテルカストまたはその医薬上許容される塩でありうる。
【0107】
第7の実施形態の1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs12748961 SNPのC対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs12748961 SNPのC対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0108】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs12118655 SNPのG対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs12118655 SNPのG対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0109】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs6679073 SNPのA対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs6679073 SNPのA対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0110】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs12564209 SNPのG対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs12564209 SNPのG対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0111】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs3805 SNPのG対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs3805 SNPのG対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0112】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs71633561 SNPのC対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs71633561 SNPのC対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0113】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs71970505 SNPの欠失対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs71970505 SNPの欠失対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0114】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs12132270 SNPのT対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs12132270 SNPのT対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0115】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs67625805 SNPの欠失対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs67625805 SNPの欠失対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0116】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs3747972 SNPのA対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs3747972 SNPのA対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0117】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs11557080 SNPのA対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs11557080 SNPのA対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0118】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs71633563 SNPのT対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs71633563 SNPのT対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0119】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs34848415 SNPの欠失対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs34848415 SNPの欠失対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0120】
第7の実施形態のもう1つの態様においては、工程(b)において、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs1891091 SNPのA対立遺伝子を検出し、そして
工程(c)において、rs34848415 SNPのA対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断する。
【0121】
第7の実施形態の1つの態様においては、工程(d)において、診断された患者に、CRTH2受容体アンタゴニストである{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸およびロイコトリエン受容体アンタゴニストであるモンテルカストの有効量を投与する。
【0122】
第7の実施形態の1つの特定の態様においては、
工程(b)において、検出しようとする、より良好な応答の対立遺伝子は、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーrs12748961 SNPのC対立遺伝子であり、
工程(c)において、rs12748961 SNPのC対立遺伝子が検出されたら、患者を、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性であると診断し、そして
工程(d)において、診断された患者に、CRTH2受容体アンタゴニストである{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸およびロイコトリエン受容体アンタゴニストであるモンテルカストの有効量を投与する。
【0123】
第8の実施形態においては、本発明は、(i)第1の実施形態の方法、(ii)第2の実施形態の医薬品、(iii)第3の実施形態の使用、(iv)第4の実施形態の方法、(v)第5の実施形態の方法、(vi)第6の実施形態のキット、または第7の実施形態の方法を提供し、ここで、CRTH2受容体アンタゴニスト治療に感受性である患者は、前記表1におけるCRTH2受容体アンタゴニストマーカーの少なくとも2つに関する、より良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。例えば、この実施形態においては、患者が、rs12748961 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つと、rs12118655 SNPのG対立遺伝子のコピーの少なくとも1つとの両方を有する場合に、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である患者が特定される。
【0124】
前記実施形態に記載されている方法、使用、医薬品またはキットの或る実施形態においては、CRTH2受容体アンタゴニストは、{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸もしくは2−(2−メチル−1−(4−(メチルスルホニル)−2−(トリフルオロメチル)ベンジル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)酢酸(フェビピプラント)、またはどちらかの化合物の医薬上許容される塩である。
【0125】
前記実施形態に記載されている方法、使用、医薬品またはキットの或る実施形態においては、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である障害は喘息である。
【0126】
発明の詳細な説明
I.定義
本発明がより容易に理解されうるように、幾つかの科学技術用語を以下に具体的に定義する。本明細書中の他の箇所で特に定義されていない限り、本明細書中で用いられる他の全ての科学技術用語は、本明細書中で用いられるのに類似した文脈において用いられる場合、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味を有する。
【0127】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書において用いる”a”、”an”、及び、”the”のような単数形の語は、文脈に明らかに矛盾しない限り、その対応複数対象物を含む。
【0128】
数的に定められるパラメーター(例えば、本明細書に記載されている治療用物質の投与量または治療時間の長さ)を修飾するために用いられる「約」は、該パラメーターが、そのパラメーターに関して示されている数値より上または下に10%変動しうることを意味する。
【0129】
「対立遺伝子」は、その特定のヌクレオチド配列によって他の形態から区別される遺伝子または他の遺伝子座の特定の形態であり、対立遺伝子なる語は、多型部位において見出される代替的多型(例えば、SNP)の1つをも含む。
【0130】
「有益な結果」は、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療の所望の臨床的結果を意味し、1以上の疾患症状の軽減、疾患の度合の低減(例えば、喘息の治療の場合のFEVの改善)、疾患の安定化(すなわち、悪化していない)状態、疾患進行の緩徐化、病態の改善または緩和、生存期間の延長(治療されなかった場合の予想生存期間との比較)、無再発生存期間、寛解(部分的または完全)および治癒(すなわち疾患の排除)を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0131】
「より良好な応答の対立遺伝子」は、もし患者に存在するなら、そのような形態の遺伝子または他の遺伝子座が存在しない患者における尺度と比較して改善した臨床尺度(例えば改善したFEV尺度)をもたらす遺伝子または他の遺伝子座の特定の形態である。
【0132】
本明細書および特許請求の範囲の全体において用いられる「から実質的になる」およびその派生語、例えば「から実質的になり」または「から実質的になっており」は、任意の列挙されている要素または要素群の包含、および特定されている投与レジメン、方法または組成物の基本的または新規な特性を実質的に変化させない、列挙要素と類似した又は異なる性質の他の要素の任意的包含を示す。
【0133】
「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」は、特許請求している組成物および方法のいずれかが必要とされる又は有益でありうる任意のヒト対象、特に哺乳動物対象を意味する。好ましい実施形態においては、個体は、成人、すなわち少なくとも18歳のヒトである。
【0134】
「単離(された)」は、典型的には、生物学的分子、例えばRNA、DNA、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質の精製状態を表すために用いられ、そのような文脈において、該分子は、他の生物学的分子、例えば核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または、他の物質、例えば細胞残渣および増殖培地を実質的に含有しない。一般に、「単離(された)」なる語は、他の生物学的分子または物質の完全な非存在、または水、バッファーもしくは塩の非存在を意図したものではないが、それらは、本発明の方法を実質的に妨げる量で存在してはならない。
【0135】
「遺伝子座」は、遺伝子、多型部位のような物理的特徴または表現型特徴に関連した位置に対応する、染色体またはDNA分子上の位置を意味する。
【0136】
「ヌクレオチドペア」は、個体からの染色体の2つのコピー上の多型部位において見出される(同じ又は異なりうる)2つのヌクレオチドのセットである。
【0137】
「オリゴヌクレオチド」は、通常は5〜100個の連続塩基長、最も頻繁には10〜50、10〜40、10〜30、10〜25、10〜20、15〜50、15〜40、15〜30、15〜25、15〜20、20〜50、20〜40、20〜30または20〜25個の連続塩基長である核酸を意味する。オリゴヌクレオチドの配列は、遺伝子座の対立遺伝子形態のいずれかに特異的にハイブリダイズするように設計可能であり、そのようなオリゴヌクレオチドは、対立遺伝子(アレル)特異的プローブと称される。遺伝子座がSNPを含むPSである場合、そのSNPの相補的対立遺伝子は、対立遺伝子特異的プローブ内の任意の位置に存在しうる。本発明の実施において有用な他のオリゴヌクレオチドは、PSに隣接した標的領域に特異的にハイブリダイズし、それらの3’末端は、PSから1個〜約10個以下、好ましくは約5個のヌクレオチドの位置に位置する。PSの隣接部にハイブリダイズするそのようなオリゴヌクレオチドはポリメラーゼ媒介性プライマー伸長法において有用であり、本明細書においては「プライマー伸長オリゴヌクレオチド」と称される。好ましい実施形態においては、プライマー伸長オリゴヌクレオチドの3’末端は、PSに直に隣接して位置するヌクレオチドに相補的なデオキシヌクレオチドである。
【0138】
「医薬上許容される」は、ヒトに投与された場合に「概ね安全とみなされる」、例えば、生理的に許容され、アレルギーまたは同様の望ましくない反応、例えば急性胃蠕動などを典型的には引き起こさない分子および組成物を意味する。もう1つの実施形態においては、この語は、動物、より詳細にはヒトにおける使用に関して、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認された又は米国薬局方もしくは別の一般に認識されている薬局方に収載されている分子および組成物を意味する。
【0139】
「多型部位」または「PS」は、例えば一塩基多型(SNP)、制限酵素断片長多型(RFLP)、様々な数のタンデムリピート(VNTR)、ジヌクレオチド反復、トリヌクレオチド反復、テトラヌクレオチド反復、単純配列反復、Aluのような挿入エレメントおよび1以上のヌクレオチドの欠失または挿入のような多型が見出される遺伝子座または遺伝子における位置を意味する。PSは、通常、関心のある集団における高度に保存された配列の前および後に存在し、したがって、PSの位置は、典型的には、PSを一括して含む30〜40ヌクレオチドのコンセンサス核酸配列に関して定められ、これは、SNPの場合には「SNPコンテクスト配列」と一般に称される。PSの位置は、コンセンサスまたは参照配列におけるその位置によっても特定されうる。コンセンサスまたは参照配列と比較した場合の個体における1以上の挿入または欠失の存在ゆえに、個々のPSの位置は関心集団内の各個体における参照またはコンテクスト配列において厳密に同じ位置には存在しない可能性がある、と当業者は理解する。更に、PSが存在するコンテクスト配列または参照配列の一方または両方および検出すべきPSにおける代替対立遺伝子の同一性が当業者に与えられれば、任意の与えられた個体の多型部位における代替対立遺伝子を検出するための頑強で特異的で高精度のアッセイを設計することは当業者にとって常套的なことである。したがって、当業者は、参照またはコンテクスト配列における特定の位置に関する本明細書に記載の任意のPSの位置の特定は便宜上のことに過ぎないこと、及び、具体的に列挙されている任意のヌクレオチド位置は、本明細書に記載されている遺伝子型決定法または当技術分野でよく知られた他の遺伝子型決定法のいずれかを用いて本発明の遺伝的マーカーの存在または非存在に関して試験される任意の個体における同じ遺伝子座内に同じPSが実際に位置するどのようなヌクレオチド位置をも事実上含むこと、を理解する。
【0140】
「参照SNP」または「rs」番号は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)によって個々のSNPに割り当てられたアクセッション番号を意味する。
【0141】
「治療」または「治療する」は、例えば本明細書に記載されているCRTH2受容体アンタゴニストを含有する組成物のような治療用物質を、該治療用物質を要する個体に内的または外的に投与することを意味する。該物質を要する個体には、該物質での治療に感受性である症状または障害を有する又はそれらを発生するリスクを有すると診断された個体、あるいは第2の治療用物質での軽減に感受性である第1の治療用物質での治療の有害な作用の1以上を示す又はそれを発生するリスクを有する個体が含まれる。典型的には、治療用物質は治療的有効量で投与され、治療的有効量は、1以上の有益な結果をもたらす有効な量を意味する。個々の物質の治療的有効量は、治療される患者の病態、年齢および体重、ならびに治療用物質に対する患者の感受性、例えば応答能のような要因によって変動しうる。有益な又は臨床上の結果が達成されたかどうかは、標的疾患、症状または有害な作用の存在、重症度または進行状態を評価するために医師または他の熟練した医療提供者によって典型的に用いられる任意の臨床的測定により評価されうる。典型的には、薬剤の治療用有効量は、ベースライン状態、または治療されなかった場合の予想状態と比較した場合の関連臨床尺度における、少なくとも5%、通常は少なくとも10%、更に通常は少なくとも30%、更に通常は少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも60%、理想的には少なくとも70%、より理想的には少なくとも80%、更に理想的には少なくとも90%の改善をもたらすであろう。例えば、症状または障害が喘息である1つの実施形態においては、改善の臨床的尺度はFEV尺度における改善である。本発明の実施形態(例えば、治療方法または製造品)は所望の臨床利益または結果を全ての患者において達成するとは限らないかもしれないが、当技術分野で公知のいずれかの統計検定、例えばスチューデントt検定、カイ2乗検定、マンおよびホイットニーによるU検定、クラスカル−ウォリス検定(H検定)、ヨンケーレ−テルプストラ検定およびウィルコクソン検定により決定される統計的に有意な数の患者において、それを達成するはずである。
【0142】
II.本発明のCRTH2アンタゴニスト応答マーカーの有用性
本明細書に記載されている応答マーカーの表現型効果は、限定されるものではないが、この応答マーカーの存在または非存在に基づいて選択された患者における研究用の又は既に承認されているCRTH2受容体アンタゴニスト薬の臨床試験、この応答マーカーを有する患者を治療するためのCRTH2受容体アンタゴニストを含む医薬組成物および医薬品、診断方法ならびに薬理遺伝学的治療方法(これらは、患者がこのマーカーを有するかどうかに基づいて患者の薬物療法を適合化することを含む)を含む種々の商業的用途におけるこのマーカーの使用を支持する。
【0143】
本出願で特許請求している商業的用途のいずれかの有用性は、本発明の応答マーカーの存在とCRTH2受容体アンタゴニストに対する所望の応答の発生との間の相関性が、CRTH2受容体アンタゴニストの投与を受けた個体の100%において認められることを要さず、また、診断方法またはキットが応答マーカーの存在または非存在の決定において特定の度合の特異性または感度を有することも要さず、また、本出願で特許請求している診断方法が、個体がCRTH2受容体アンタゴニストに対する有益な応答を示す可能性があるかどうかを全ての個体に関して予測することにおいて100%正確であることも要さない。したがって、本発明者らは、「決定する」、「決定」および「予測」なる語は確定的な又は一定の結果を要すると解釈されるべきではなく、これらの語は、特許請求している方法が個体の大多数に関して正確な結果をもたらすこと、またはいずれかの与えられた個体に関する結果もしくは予測が正確である可能性が不正確である可能性より高いことを意味すると解釈されるべきである、と本発明で意図している。
【0144】
好ましくは、本発明の診断方法によりもたらされる結果の精度は、当業者または規制当局が、該方法が用いられる個々の用途に適しているとみなす精度である。同様に、特許請求している医薬品および治療方法の有用性は、それらが特許請求している又は所望の効果を全ての個体においてもたらすことを要さず、要求される全ては、臨床実施者が全ての適用可能な基準に合致した彼らの専門的判断を適用した場合に、特許請求している方法に従い又は特許請求している医薬品で所与個体を治療する特許請求している効果を達成する可能性が、該治療または医薬品を処方することを保証するのに十分に高いと判断することである。
【0145】
A.本発明のCRTH2アンタゴニスト応答マーカーの試験
CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの存在または非存在は、当技術分野で一般に用いられる任意の種々の遺伝子型決定技術により検出されうる。典型的には、そのような遺伝子型決定技術は、関心のあるPSを含有する又はそれに隣接する領域に相補的な1以上のオリゴヌクレオチドを使用する。関心のある個々のPSを遺伝子型決定するために使用されるオリゴヌクレオチドの配列は、典型的にはPSのコンテクスト配列に基づいて設計される。
【0146】
前記で特定された多型部位の個々の個体における位置は、関心のあるPSを包囲する参照コード化またはゲノムDNA配列、または以下の表2に示されているコンテクスト配列またはそれらの相補的配列の1つに存在する。
【表2】
【0147】
当業者により認識されているとおり、個々のPSを含有する核酸サンプルは相補的二本鎖分子であり、したがって、センス鎖上の個々の部位に対する言及は相補的アンチセンス鎖上の対応部位をも指す。同様に、染色体の一方の鎖の両方のコピー上のPSに関して得られる個々の遺伝子型に対する言及は、他方の鎖の両方のコピー上の同じPSに関して得られる相補的遺伝子型と同等である。例えば、遺伝子のコード鎖上のrs12748961 PSに関するC/C遺伝子型は、非コード鎖上のそのPSに関するG/G遺伝子型と同等である。
【0148】
本明細書中に挙げられているコンテクスト配列およびそれらの相補的配列は、個体がより良好な応答の対立遺伝子に関する少なくとも1つのコピーを有するかどうかの決定を可能にする当技術分野でよく知られた種々の方法のいずれかを用いて、関心のあるヒト対象から得られた核酸サンプルにおけるCRTH2アンタゴニスト応答マーカーを遺伝子型決定するためのプローブおよびプライマーを設計するために使用されうる。そのような方法において使用される核酸分子には、一般には、RNA、ゲノムDNA、またはRNA由来のcDNAが含まれる。
【0149】
典型的には、遺伝子型決定方法は、関心のある1以上の多型部位に存在するヌクレオチドまたはヌクレオチドペアの同一性を決定するために、個体から得られた生物学的サンプルから調製された核酸サンプルをアッセイすることを含む。核酸サンプルは、実質的に全ての生物学的サンプルから調製されうる。例えば、簡便なサンプルには、全血 血清、精液、唾液、涙、糞便、尿、汗、頬側物質、皮膚および毛が含まれる。体細胞が好ましく、なぜなら、体細胞は、関心のあるPSに存在する両方の対立遺伝子の同一性の決定を可能にするからである。
【0150】
核酸サンプルは、当業者に公知の任意の技術を用いて、分析用に調製されうる。好ましくは、そのような技術は、核酸分子における所望の多型部位の遺伝子型を決定するのに十分に純粋なゲノムDNAの単離をもたらす。その決定の感度および特異性を増強するために、遺伝子型決定すべきPSを含有する標的領域を核酸サンプルから増幅することがしばしば望ましい。核酸の単離および増幅技術は、例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,New York)(2001)において見出されうる。
【0151】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(これに限定されるものではない)を含む当業者に公知の任意の増幅技術が、本発明の実施において使用されうる。PCRは、当業者に公知の材料および方法を用いて行われうる(全般的には、PCR Technology:Principals and Applications for DNA Amplification(H.A.Erlich編,Freeman Press,NY,N.Y.,1992);PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら編,Academic Press,San Diego,Calif.,1990);Matillaら,Nucleic Acids Res.19:4967(1991);Eckertら,PCR Methods and Applications 1:17(1991);PCR(McPhersonら編,IRL Press,Oxford);および米国特許第4,683,202号を参照されたい)。他の適当な増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace,Genomics 4:560(1989)ならびにLandegrenら,Science 241:1077(1988)を参照されたい)、転写増幅(Kwohら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173(1989))、自家持続配列複製法(Guatelliら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,87:1874(1990))、等温法(Walkerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:392−6(1992))、および核酸ベース配列増幅(NASBA)が含まれる。
【0152】
増幅された標的領域は、標的領域内のPSに存在する対立遺伝子の少なくとも1つの同一性を決定するためにアッセイされる。遺伝子座の両対立遺伝子が増幅標的内に表されている場合、そのPSにおいてホモ接合である個体のPSにおいては1つの対立遺伝子だけが検出され、一方、個体がそのPSに関してヘテロ接合であれば、2つの異なる対立遺伝子が検出される、と当業者によって容易に理解されるであろう。
【0153】
対立遺伝子の同一性(正体)は、陽性型特定として公知の方法で直接的に特定可能であり、あるいは陰性型特定と称される方法で推定により特定可能である。例えば、参照集団においてSNPがグアニンまたはシトシンであることが知られている場合、PSは、その部位における個々のホモ接合に関してグアニンまたはシトシンのいずれかであると陽性法で決定可能であり、あるいは個体がその部位でヘテロ接合である場合には、グアニンおよびシトシンの両方であると決定可能である。あるいは、PSはグアニンではない(したがってシトシン/シトシン)またはシトシンではない(したがってグアニン/グアニン)と陰性法で決定可能である。いずれの場合も、より良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つが表1に記載のとおりに存在すると判定された場合には、その判定は、本明細書に記載されている方法、使用、医薬品またはキットにおける、より良好な応答の対立遺伝子に関する陽性試験結果であるとみなされる。
【0154】
個体から得られた核酸サンプルにおけるPSにおける対立遺伝子または対立遺伝子ペア(例えば、SNPの場合の2つのヌクレオチド)の特定は、当業者に公知の任意の技術を用いて達成されうる。好ましい技術は、最小限度のサンプル処理で、複数のPSの迅速で正確なアッセイを可能にする。適当な技術の幾つかの例には、増幅標的領域の直接DNA配列決定、キャピラリー電気泳動、対立遺伝子特異的プローブのハイブリダイゼーション、一本鎖コンホメーション多型分析、変性勾配ゲル電気泳動、温度勾配電気泳動、ミスマッチ検出、核酸アレイ、プライマー特異的伸長、タンパク質検出、および当技術分野よく知られた他の技術が含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,New York)(2001);Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,New York)(1997);Oritaら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86,2766−2770(1989);Humphriesら,in MOLECULAR DIAGNOSIS OF GENETIC DISEASES,Elles編,pp.32 1−340,1996;Wartellら,Nucl.Acids Res.18:2699−706(1990);Hsuら(1994)Carcinogenesis 15:1657−1662;Sheffieldら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:232−6(1989);Winterら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:7575(1985);Myersら(1985)Nature 313:495;RosenbaumおよびReissner(1987)Biophys Chem.265:12753;Modrich,Ann.Rev.Genet.25:229−53(1991);米国特許第6,300,063号;米国特許第5,837,832号;米国特許第5,459,039号;ならびにHuSNP Mapping Assay,reagent kit and user manual,Affymetrix Part No.90094(Affymetrix,Santa Clara,CA)を参照されたい。
【0155】
好ましい実施形態においては、PSにおける対立遺伝子の同一性は、ポリメラーゼ媒介プライマー伸長法を用いて決定される。幾つかのそのような方法が特許および科学文献に記載されており、「遺伝子ビット分析(Genetic Bit Analysis)」法(WO 92/15712)およびリガーゼ/ポリメラーゼ媒介遺伝子ビット分析(米国特許第5,679,524号)を含む。関連方法はWO 91/02087、WO 90/09455、WO 95/17676ならびに米国特許第5,302,509号および第5,945,283号に開示されている。多型の相補体を含有する伸長プライマーは、米国特許第5,605,798号に記載されている質量分析により検出されうる。
【0156】
もう1つのプライマー伸長法は対立遺伝子特異的PCRを用いる(Ruano,G.ら,Nucl.Acids Res.17:8392(1989);Ruano,G.ら,Nucl.Acids Res.19:6877−82(1991);WO 93/22456;Turkiら,J.Gun.Invest.95:1635−41(1995))。
【0157】
多型を特定し分析するための更にもう1つのプライマー伸長法は、付加塩基の標識とプライマーの標識との間の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)と共役した蛍光標識プライマーの一塩基伸長(SBE)を用いる。典型的には、Chenら,Proc.Nat.Acad.Sci.94:10756−61(1997)に記載されているような方法は、5’末端上で5−カルボキシフルオレセイン(FAM)で標識された遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドプライマーを使用する。この標識プライマーは、3’末端が関心多型部位に直に隣接するように設計される。標識プライマーを遺伝子座にハイブリダイズさせ、ダイ−ターミネーター・シークエンシングにより、蛍光標識ジデオキシリボヌクレオチド(ddNTP)を使用して標識プライマーの一塩基伸長を行い、ただし、デオキシリボヌクレオチドは存在しない。標識プライマーの波長における励起に応答した付加ddNTPの蛍光の増強を用いて、付加ヌクレオチドの同一性(正体)を推定する。
【0158】
好ましい遺伝子型決定アッセイは、Thermo Fisher Scientific,Waltham,Massachusetts,USAのTaqMan(登録商標)SNP遺伝子型決定アッセイ(Genotyping Assay)、またはほぼ同じ信頼性、精度および特異性を有するアッセイである。そのようなアッセイの或る実施形態においては、2つの対立遺伝子特異的プローブを使用して、特定のPSを標的化し、この場合、各プローブは、それに結合した異なる蛍光標識および消光分子を有する。また、2つの対立遺伝子特異的プライマーを使用する。DNA鎖の伸長に際して、Taq DNAポリメラーゼは蛍光標識を切断し、その切断は、検出可能な蛍光発光をもたらす。
【0159】
前記方法の全てにおいて、任意のPSにおける対立遺伝子の同一性を検出するように設計されたアッセイの精度および特異性は、典型的には、そのPSにおける対立遺伝子の同一性が既知であるDNAサンプルに対するアッセイを行うことにより妥当性評価される。好ましくは、それぞれの可能な対立遺伝子を代表するサンプルを該妥当性評価プロセスに含める。二倍体遺伝子座(例えば、常染色体上のもの)に関しては、妥当性評価サンプルは、典型的には、PSにおいてメジャー(major)対立遺伝子に関してホモ接合であるサンプル、PSにおいてマイナー対立遺伝子に関してホモ接合であるサンプル、およびそのPSにおいてヘテロ接合であるサンプルを含む。これらの妥当性評価サンプルは、典型的には、試験サンプル(すなわち、PSにおける対立遺伝子の同一性が未知であるサンプル)に対してアッセイを行う場合の対照としても含まれる。アッセイの特異性は、試験サンプルに関するアッセイ結果を、異なるタイプのアッセイを用いて同じサンプルに関して得られた結果と比較することによっても確認可能であり、例えば、関心のあるPSを含有すると考えられる増幅標的領域の配列を決定し、該決定配列を、当技術分野で認められたコンテクスト配列(例えば、本明細書に記載されているコンテクスト配列)と比較することによっても確認可能である。
【0160】
適切なゲノム位置がアッセイされていることを確認するのに必要なコンテクスト配列の長さは、標的領域における配列の特有性によって変動するであろう(例えば、1以上の高度に相同な配列が他のゲノム領域内に存在しうる)。当業者は、公知技術を用いて(例えば、公的に利用可能な配列データベースに対してコンテクスト配列をBLAST処理することにより)、任意のPSのコンテクスト配列の適当な長さを容易に決定可能である。一次レベルの特異性をもたらす増幅標的領域に関しては、アッセイ設計が関心PSに特異的であることを保証するためには、典型的には、既知サンプルにおけるPSの各側の約30〜60塩基のコンテクスト配列の検査で十分である。場合によっては、妥当性評価されたアッセイは、試験サンプルに関して明確な結果をもたらさない可能性がある。これは、通常、不十分な純度または量のDNAをサンプルが含有することによって生じ、明確な結果は、通常、DNAサンプルを再精製または再単離することにより、あるいは異なるタイプのアッセイを用いてサンプルをアッセイすることにより得られる。
【0161】
挿入/欠失変異により特徴づけられるPSを検出するためには、幾つかのアッセイ技術が使用されうる。挿入/欠失変異体は、ジデオキシヌクレオシド三リン酸を使用するサンガー配列決定法により検出されうる。幾つかの実施形態においては、商業的に入手可能なソフトウェアパッケージ、例えば、SoftGenetics LLC,State College,Pennsylvania,USAから入手可能なMutation Surveyor(登録商標)ソフトウェアがホモ接合およびヘテロ接合挿入/欠失変異体を検出しうる。また、Hjelmら,The Journal of Molecular Diagnostics 12(5),pp 607−610(2010)に開示されている断片分析法が、挿入および欠失変異体を特徴づけるために使用されうる。
【0162】
Scientific Reports,3,2161(2013)およびhttp://emu.src.riken.jp/VCMM/に開示されている多項確率的モード(Multinomial Probabilistic Mode)でのVariant Callerのようなプログラムが、高い精度で挿入/欠失変異体を検出するために使用されうる。挿入/欠失変異体の検出のためのもう1つの方法は、Z.Yhangら,Nucleic Acids Research 43(9)349(2015)に開示されており、これはアンプリコン標識および自動キャピラリー電気泳動に基づく。
【0163】
更に、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーの存在または非存在の決定を要する本明細書に記載されている方法のいずれかを行う際には、そのような決定は、患者が該マーカーを有するかどうかを決定するために、患者の遺伝的組成に関する十分な情報を含有するデータリポジトリを調べることにより行われうる。好ましくは、データリポジトリには、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーが個体において存在する及び存在しないかどうかが列挙されている。データリポジトリは、個体の病歴、医療データカード、コンピュータによりアクセス可能なファイル(例えば、フラットASCIIファイル)、または適当な情報もしくは遺伝的データが保存されうる他の電子もしくは非電子媒体を含みうる。本明細書中で用いる医療データカードはポータブルストレージデバイス、例えば磁気データカード、スマートカード(これはオンボード処理装置を有しており、Siemens(Munich Germany)のようなベンダーにより販売されている)、またはフラッシュメモリーカードである。データレポジトリが、コンピュータによりアクセス可能なファイルである場合には、そのようなファイルは、サーバー、クライアント、ハードディスク、CD、DVD、携帯情報端末、例えばスマートフォン、テープ、zipディスク、コンピュータの内部ROM(読取り専用メモリ)またはインターネットもしくはワールドワイドウェブを含む種々の媒体上に配置されうる。コンピュータによりアクセス可能なファイルを格納するための他の媒体は当業者に明らかであろう。
【0164】
本発明はまた、rs12748961 SNPまたは前記表1に特定されているその他のCRTH2アンタゴニスト応答マーカーの1つに関して、より良好な応答の対立遺伝子との高い連鎖不平衡(LD)状態にある異なる遺伝子座において個体が対立遺伝子(例えば、特定のヌクレオチド配列)を有するかどうかを調べることにより、CRTH2アンタゴニスト応答マーカーに関する試験が決定されうると想定している。同じ染色体上の異なる遺伝子座における2つの特定の対立遺伝子は、1つの遺伝子座におけるそれらの対立遺伝子の1つの存在が他方の遺伝子座における他方の対立遺伝子の存在を予測する傾向にある場合、LD状態にあると称される。そのような変異体は本明細書においては連鎖変異体またはプロキシ(proxy)変異体と称されるが、より良好な応答の関心対立遺伝子との高いLD状態にある任意のタイプの変異体(例えば、SNP、挿入または欠失変異体)でありうる。
【0165】
連鎖変異体は、例えばrs12748961 SNPのより良好な応答の対立遺伝子と候補連鎖対立遺伝子との間の連鎖不平衡(LD)の度合を決定することによって容易に特定される。候補連鎖変異体は、現在公知の多型の対立遺伝子でありうる。他の候補連鎖変異体は、多型を発見するための当技術分野でよく知られた任意の技術を用いて当業者によって容易に特定されうる。
【0166】
CRTH2アンタゴニスト応答マーカー(例えば、rs12748961 SNP)の1つにおける、より良好な応答の対立遺伝子と候補連鎖変異体との間のLDの度合は、当技術分野で公知の任意のLD測定を用いて決定されうる。ゲノム領域におけるLDパターンは、任意の2つの対立遺伝子(例えば、異なるPSにおけるヌクレオチド間)が連鎖不平衡状態にあるかどうかを決定するための当技術分野で公知の種々の技術(例えば、GENETIC DATA ANALYSIS II,Weir,Sineuer Associates,Inc.Publishers,Sunderland,MA 1996を参照されたい)を用いて、適切に選択されたサンプルにおいて経験的に容易に決定される。LDを決定するためのどの方法が個々の集団サンプルサイズおよびゲノム領域に最も適しているかを当業者は容易に選択しうる。連鎖不平衡の最も頻繁に用いられる尺度の1つはrであり、これは、Devlinら(Genomics,29(2):311−22(1995))により記載されている式を用いて計算される。rは、第1遺伝子座における対立遺伝子Xが同一染色体上の第2遺伝子座における対立遺伝子Yの存在をどの程度良く予測するかの尺度である。推測が完全な場合にだけ(例えば、Yの場合かつその場合に限りX)、該尺度は1.0に達する。
【0167】
1つの実施形態においては、連鎖変異体の遺伝子座は、rs12748961 SNPのPSのいずれかにわたって伸長する約100キロベース、より好ましくは約10kbのゲノム領域内に存在する。他の連鎖変異体は、より良好な応答の対立遺伝子とのLDが、適当な参照集団において測定された場合に、少なくとも0.75、より好ましくは少なくとも0.80、より一層好ましくは少なくとも0.85または少なくとも0.90、更に好ましくは少なくとも0.95、最も好ましくは1.0のr値を有するものである。このr測定に用いられる参照集団は、一般集団、CRTH2受容体アンタゴニストを使用する集団、CRTH2受容体アンタゴニストが有効性を示す特定の症状を有すると診断された集団、または例えば白人、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、ラテン系、ネイティブアメリカンなどのような同一民族群に属すると自己認識しているメンバーの集団、またはこれらの範疇の任意の組合せでありうる。好ましくは、参照集団は、CRTH2受容体アンタゴニストで治療される患者の集団の遺伝的多様性を反映する。
【0168】
実施例2の表6に示されているr2のような幾つかの実施形態においては、r2はピアソン相関係数の2乗であり、ここで、ピアソン相関係数は、各変異体とrs12748961との間の遺伝子型データ(各被験者に関する各変異体のマイナー対立遺伝子の数値である0、1、2として数値的にコード化されている)から計算される。r2は0〜1の範囲であり、1は2つの完全相関変異体を表し、0は2つの独立した変異体を表す(分析データセットに基づく)。
【0169】
幾つかの実施形態においては、医師は、表1におけるCRTH2アンタゴニスト応答マーカー(例えば、rs12748961 SNP)の1つのより良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つを患者が有するかどうかを決定するように設計された診断試験を指示することにより、本明細書に記載されているCRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーを患者が有するかどうかを決定する。好ましくは、試験は、このPSにおける両方の対立遺伝子の同一性(正体)、すなわち、遺伝子型を決定する。幾つかの実施形態においては、試験を行う検査所は、患者から得られた生物学的サンプル(例えば、血液サンプルまたは頬側スワブ)から核酸サンプルを調製する。幾つかの実施形態においては、患者からの血液サンプルは、医師もしくは医療スタッフによってまたは診断検査所の技術者によって採取される。幾つかの実施形態においては、頬の内側から頬側スワブを採取するためのキットを患者に提供し、ついで患者はそれを医療スタッフに提出し、または診断検査所に直接送付する。
【0170】
幾つかの実施形態においては、試験検査所は、それが試験しているサンプルの個体の正体(誰であるか)を知らず、すなわち、検査所が受領したサンプルは、検査所に送付される前に何らかの様態で匿名化されている。例えば、サンプルは番号または何らかの他のコード(「サンプルID」)によってのみ識別可能であり、診断方法の結果は、サンプルIDを用いて、試験依頼者に報告されうる。
【0171】
幾つかの実施形態においては、試験結果が得られた後、試験検査所は試験報告を作成し、これは、より良好な応答の対立遺伝子が遺伝子型決定多型部位に存在するか存在しないかを示し、好ましくは、患者が、より良好な応答の対立遺伝子に関してヘテロ接合であるかホモ接合であるかを示す。幾つかの実施形態においては、試験報告は文書であり、これは試験検査所によって作成され、ハードコピーとして又は電子メールにより患者または患者の医師に送付される。他の実施形態においては、試験報告はコンピュータプログラムによって作成され、診察室内のビデオモニター上に表示される。試験報告は、患者または患者の医師または診療所内の権限のある従業員への直接的な試験結果の口頭伝達を含みうる。同様に、試験報告は、医師が患者のファイル内に作成する試験結果の記録を含みうる。
【0172】
1つの実施形態においては、患者がより良好な応答の対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示した場合には、試験報告は更に、患者が、CRTH2アンタゴニストでの治療に対する応答の可能性に関連した遺伝的マーカーに関して陽性試験結果を示したことを示し、一方、個体がより良好な応答の対立遺伝子に関して陰性試験結果を示した場合には、試験報告は更に、患者が、CRTH2アンタゴニストでの治療に対する応答の可能性に関連した遺伝的マーカーに関して陰性試験結果を示したことを示す。
【0173】
典型的には、個体はCRTH2受容体アンタゴニスト療法の開始の前にCRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーの存在に関して試験されるが、そのような試験は、CRTH2受容体アンタゴニストの最初の用量が個体に投与された後の任意の時点で行われうると予想される。例えば、治療医師は、患者が適切に応答していないのではないかと懸念する可能性があり、CRTH2受容体アンタゴニストでの継続治療が妥当であるかどうかを判定するために個体を試験することを望むかもしれない。幾つかの実施形態においては、医師は、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーに関して個体が試験されるべきか否かを決定しうる。例えば、医師は、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーに関して陽性試験結果を示す患者に適応する医薬品を患者に処方すべきかどうかを考慮するかもしれない。
【0174】
いずれかの個々の患者の治療においてCRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカー試験結果の利用方法を決める際に、医師は、治療すべき疾患または症状、患者の年齢、体重、性別、遺伝的バックグラウンドおよび人種のような他の関連状況をも考慮することが可能であり、例えば、療法および/または治療レジメンを選択する際に医師を導くのを助けるモデルにこれらの要因と遺伝的マーカー試験結果との組合せを入力することを含む。
【0175】
CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーのいずれかの存在または非存在の検出は、この目的のために特別に設計されたキットを使用して行われうる。1つの実施形態においては、本発明のキットは、例えばrs12748961の場合のように、PSにおける対立遺伝子のそれぞれを特定するように設計されたオリゴヌクレオチドのセットを含む。
【0176】
幾つかの実施形態においては、キットにおけるオリゴヌクレオチドは、対立遺伝子特異的プローブまたは対立遺伝子特異的プライマーである。他の実施形態においては、キットはプライマー伸長オリゴヌクレオチドを含む。更に他の実施形態においては、オリゴヌクレオチドのセットは対立遺伝子特異的プローブ、対立遺伝子特異的プライマーおよびプライマー伸長オリゴヌクレオチドの組合せである。該キットは、CRTH2受容体アンタゴニスト療法に対する応答に関連した他の遺伝的マーカーの存在を検出するように設計されたオリゴヌクレオチドを含みうる。
【0177】
本発明のキットにおけるオリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの標的領域に特異的にハイブリダイズしうるものでなければならない。本明細書中で用いる特異的ハイブリダイゼーションは、オリゴヌクレオチドが或るハイブリダイゼーション条件下で標的領域とは逆平行二本鎖構造を形成するが、同じハイブリダイゼーション条件下で該ポリヌクレオチドと共にインキュベートされた場合に非標的領域とはそのような構造を形成しないことを意味する。幾つかの実施形態においては、標的領域は、関心のあるPSを含有し、一方、他の実施形態においては、標的領域はPSから1〜10ヌクレオチドの隣接位置に位置する。
【0178】
キットにおける各オリゴヌクレオチドの組成および長さは、PSを含有するゲノム領域の性質、およびオリゴヌクレオチドを使用して行われるアッセイのタイプに左右され、当業者によって容易に決定される。
【0179】
例えば、アッセイにおいて使用されるポリヌクレオチドは増幅産物を構成することが可能であり、したがって、オリゴヌクレオチドに要求される特異性は、個体から単離されたゲノムまたはcDNAにおけるものではなく、増幅産物における標的領域に対するハイブリダイゼーションに関するものである。もう1つの例としては、キットが、2以上の多型部位を同時に遺伝子型決定するように設計されている場合には、キットにおける各PSに対するオリゴヌクレオチドの融解温度は、典型的には、狭い範囲内のもの、好ましくは約5℃未満、より好ましくは約2℃未満の範囲内のものである。
【0180】
幾つかの実施形態においては、キットにおける各オリゴヌクレオチドはその標的領域の完全な相補体である。オリゴヌクレオチドが別の核酸分子の「完全」または「完璧」な相補体と言えるのは、該分子の1つの各ヌクレオチドが他方の分子の対応位置におけるヌクレオチドに相補的である場合である。多型を検出するためには、完全に相補的なオリゴヌクレオチドが好ましいが、完全な相補性からの逸脱が想定され、ここで、そのような逸脱は、前記の標的領域に該分子が特異的にハイブリダイズすることを妨げるものであってはならない。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、その5’末端に非相補的断片を有することが可能であり、プライマーの残部は標的領域に完全に相補的である。あるいは、生じるプローブまたはプライマーは標的領域に尚も特異的にハイブリダイズしうる限り、プローブまたはプライマー内に非相補的ヌクレオチドが点在していてもよい。
【0181】
幾つかの好ましい実施形態においては、キットにおける各オリゴヌクレオチドは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、その標的領域に特異的にハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は配列依存的であり、状況に応じて様々である。一般に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、一定のイオン強度およびpHにおいて特異的配列の熱融解点(Tm)より約5℃低くなるように選択される。Tmは、標的配列に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度(一定のイオン強度、pHおよび核酸濃度におけるもの)である。標的配列は一般に過剰に存在するため、Tmにおいては、プローブの50%が平衡状態で占拠される。
【0182】
典型的には、ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3において少なくとも約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)の塩濃度を含み、温度は短いオリゴヌクレオチドプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約25℃である。ストリンジェントな条件は、不安定化剤、例えばホルムアミドの添加によっても達成されうる。例えば、5×SSPE(750mM NaCl、50mM リン酸Na、5mM EDTA、pH7.4)の条件および25〜30℃の温度は対立遺伝子特異的プローブハイブリダイゼーションに適している。追加的なストリンジェントな条件は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989),第7,9および11章、ならびにNUCLEIC ACID HYBRIDIZATION,A PRACTICAL APPROACH,Haymesら,IRL Press,Washington,D.C.,1985に見出されうる。
【0183】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な一例には、約65〜70℃での4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中のハイブリダイゼーション(あるいは、約42〜50℃での4×SSC+50% ホルムアミド中のハイブリダイゼーション)、およびそれに続く、約65〜70℃での1×SSC中の1回以上の洗浄が含まれる。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な一例には、約65〜70℃での1×SSC中のハイブリダイゼーション(あるいは、約42〜50℃での1×SSC+50% ホルムアミド中のハイブリダイゼーション)、およびそれに続く、約65〜70℃での0.3×SSC中の1回以上の洗浄が含まれる。低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の非限定的な一例には、約50〜60℃での4×SSC中のハイブリダイゼーション(あるいは、約40〜45℃での6×SSC+50% ホルムアミド中のハイブリダイゼーション)、およびそれに続く、約50〜60℃での2×SSC中の1回以上の洗浄が含まれる。中等度〜前記値(例えば、65〜70℃または42〜50℃)の範囲のストリンジェンシー条件も本発明に含まれると意図される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄バッファーにおいてはSSPE(1×SSPEは0.15M NaC1、10mM NaHPOおよび1.25mM EDTA,pH7.4である)がSSC(1×SSCは0.15M NaClおよび15mM クエン酸ナトリウムである)の代わりに使用されうる。洗浄は、ハイブリダイゼーションが完了した後、それぞれ15分間行われる。
【0184】
50塩基対長未満であると予想されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度はハイブリッドの融解温度(T)より5〜10度低いべきであり、ここで、Tmは以下の式に従い決定される。18塩基対長未満のハイブリッドの場合、T(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)である。18〜49塩基対長のハイブリッドの場合、T(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)であり、ここで、Nはハイブリッド中の塩基の数であり、[Na+]はハイブリダイゼーションバッファー中のナトリウムイオンの濃度である(1×SSCの場合の[Na+]=0.165M)。
【0185】
本発明のキットにおけるオリゴヌクレオチドは、任意のリン酸化状態のリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、および非環状ヌクレオチド誘導体、および他の機能的等価誘導体を含みうる。あるいは、オリゴヌクレオチドは、ホスファート非含有バックボーンを有することが可能であり、これはカルボキシメチル、アセトアミド、カルバマート、ポリアミド(ペプチド核酸(PNA))などのような結合を含みうる(Varma,MOLECULAR BIOLOGY AND BIOTECHNOLOGY,A COMPREHENSIVE DESK REFERENCE,Meyers編,pp.6 17−20,VCH Publishers,Inc.,1995)。オリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の適当な方法を用いる化学合成により製造可能であり、あるいは生物学的サンプルから、例えば制限消化により誘導可能である。オリゴヌクレオチドは、放射能標識、蛍光標識、酵素標識、タンパク質、ハプテン、抗体、配列タグなどの使用を含む、当技術分野で公知の任意の技術に従う検出可能な標識を含有しうる。該キットにおけるオリゴヌクレオチドはアナライト特異的試薬(ASR)として製造され、販売されることが可能であり、あるいは、承認された診断装置の構成成分でありうる。
【0186】
幾つかの実施形態においては、該キットにおけるオリゴヌクレオチドのセットは、2以上の多型部位における対立遺伝子の同一性(正体)の同時決定を可能にする異なる標識を有する。オリゴヌクレオチドは、例えばマイクロチップ、シリカビーズ(例えば、Illumina,San Diego,CAのBeadArrayテクノロジー)またはガラススライドのような固体表面上に固定化されたオリゴヌクレオチドの秩序だったアレイをも含みうる(例えば、WO 98/20020およびWO 98/20019を参照されたい)。そのような固定化オリゴヌクレオチドを含むキットは、プローブハイブリダイゼーションおよびポリメラーゼ伸長アッセイ(これらに限定されるものではない)を含む種々の多型検出アッセイを行うように設計されうる。
【0187】
本発明のキットは、他の試薬、例えばハイブリダイゼーションバッファー(例えば、オリゴヌクレオチドを対立遺伝子特異的プローブとして使用しようとする場合)またはジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP;例えば、多型部位における対立遺伝子をプライマー伸長により検出しようとする場合)をも含有しうる。ポリメラーゼ媒介遺伝子型決定アッセイにおける使用のために設計されたキットは、実施されるポリメラーゼ媒介アッセイのために最適化された反応バッファーおよびポリメラーゼをも含有しうる。
【0188】
本発明のキットはまた、特異的ハイブリダイゼーションが生じた場合または特異的ポリメラーゼ媒介伸長が生じた場合に検出するための試薬を含みうる。そのような検出試薬は、ビオチンタグ化もしくは蛍光タグ化オリゴヌクレオチドまたはddNTPおよび/または酵素標識抗体、ならびに酵素作用に際して検出可能なシグナルを生成する1以上の基質を含みうる。
【0189】
アッセイを行うための試薬およびオリゴヌクレオチドのセットは、生物学的または化学的活性を維持しアッセイにおける適切な使用を可能にするのに適当であるならば、キット容器内に配置された別々の容器内で提供される、と当業者に理解される。
【0190】
他の実施形態においては、該キットにおけるオリゴヌクレオチドのそれぞれ及び全ての他の試薬は、前記表1におけるPSの少なくとも1以上(例えば、rs12748961 SNP)に関して遺伝子型を決定するように設計されたアッセイにおける最適な性能に関して品質検査されている。幾つかの実施形態においては、該キットは、応答マーカーの存在または非存在を試験核酸サンプルに割り当てるための決定遺伝子型の利用方法を記載した説明マニュアルを含む。
【0191】
幾つかの好ましい実施形態においては、該キットにおけるオリゴヌクレオチドのセットは対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドである。本明細書中で用いる対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)なる語は、十分にストリンジェントな条件下、PSを含有する標的領域におけるPSの対立遺伝子の1つには特異的にハイブリダイズしうるが、異なる対立遺伝子を含有する同じ領域にはハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドを意味する。当業者に理解されるとおり、対立遺伝子特異性は、塩およびホルムアミド濃度ならびに温度(ハイブリダイゼーション工程および洗浄工程の両方に関するもの)を含む、容易に最適化される種々のストリンジェンシー条件に左右される。
【0192】
ASOプローブおよびプライマーに典型的に用いられるハイブリダイゼーションおよび洗浄条件の例は、Koganら,“Genetic Prediction of Hemophilia A”,PCR PROTOCOLS,A GUIDE TO METHODS AND APPLICATIONS,Academic Press,1990およびRuafloら,Proc.Nati.Acad.Sci.USA 87:6296−300(1990)において見出される。
【0193】
典型的には、ASOは一方の対立遺伝子には完全に相補的であるが、他方の対立遺伝子に対しては単一ミスマッチを含有する。ASOプローブにおいては、単一ミスマッチは、好ましくは、それが標的領域内の多型部位と整列するように、オリゴヌクレオチドプローブの中央位置に存在する(例えば、15マーにおける約7番目または8番目の位置、16マーにおける8番目または9番目の位置、および20マーにおける10番目または11番目の位置)。ASOプライマーにおける単一ミスマッチは、3’末端ヌクレオチド、または好ましくは3’末端から2番目のヌクレオチドに位置する。コードまたは非コード鎖にハイブリダイズするASOプローブおよびプライマーは本発明に含まれる。
【0194】
幾つかの実施形態においては、該キットは、アッセイされる各PSに対する対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドのペアを含み、該ペアの一方のメンバーは一方の対立遺伝子(例えば、より良好な応答の対立遺伝子)に特異的であり、他方のメンバーは他方の対立遺伝子に特異的である。そのような実施形態においては、アッセイされるPSの遺伝子型をキットの使用者が決定することが可能となるよう、該ペアにおけるオリゴヌクレオチドは、異なる長さを有し、または異なる検出可能標識を有しうる。
【0195】
更に他の好ましい実施形態においては、該キットにおけるオリゴヌクレオチドは、プライマー伸長オリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドのいずれかからのポリメラーゼ媒介伸長のための終結混合物は、PSに存在する代替ヌクレオチドに応じて、関心のあるPSにおいてまたはそれより1塩基後で、オリゴヌクレオチドの伸長を終結するように選択される。
【0196】
もう1つの実施形態においては、該キットは、表1における多型部位の少なくとも1つを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、表2に示されているコンテクスト配列の、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、表2に示されているコンテクスト配列の他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0197】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs12748961 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs12748961 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs12748961 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0198】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs12118655 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs12118655 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs12118655 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0199】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs6679073 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs6679073 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs6679073 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0200】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs12564209 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs12564209 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs12564209 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0201】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs3805 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs3805 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs3805 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0202】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs71633561 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs71633561 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs71633561 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0203】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs71970505 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs71970505 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs71970505 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0204】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs12132270 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs12132270 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs12132270 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0205】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs67625805 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs67625805 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs67625805 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0206】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs3747972 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs3747972 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs3747972 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0207】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs11557080 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs11557080 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs11557080 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0208】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs71633563 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs71633563 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs71633563 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0209】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs34848415 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs34848415 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs34848415 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0210】
もう1つの実施形態においては、該キットは、rs1891091 SNPを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブのペアを含む。1つの実施形態においては、該ペアにおける一方のASOプローブは、rs1891091 SNPの、より良好な応答の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、該ペアにおける他方のASOプローブは、rs1891091 SNPの他方の対立遺伝子と同一であるか又は完全に相補的である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0211】
B.医薬組成物、医薬品および治療レジメン
本明細書に記載されている方法および産物のいずれかによって試験または治療される個体は、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療を要するヒト対象(ヒト被験者)である。幾つかの実施形態においては、個体は、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患を有すると診断されているか、または該疾患の症状を示す。他の実施形態においては、使用されるCRTH2受容体アンタゴニスト薬は、個体が診断された適応症の治療における使用に関して承認されている。
【0212】
幾つかの実施形態においては、本発明の医薬組成物、医薬品、キット 方法および使用において使用されるCRTH2受容体アンタゴニストは、任意の公知CRTH2受容体アンタゴニストでありうる。
【0213】
1つの実施形態においては、CRTH2受容体アンタゴニストは、米国特許第8,394,819号(その開示を、本明細書に完全に記載されている場合と同様に、参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている式Iの化合物である。この特許は、式I
【化1】
【0214】
の化合物またはその医薬上許容される塩を開示しており、式中、
【化2】
【0215】

【化3】
【0216】
を表し;
は、所望により置換されていてもよいアリールおよび−C(R)(R)(R)から選択され;
は、Hおよび−C1−6アルキルから選択され;
Zは、Hおよび−C1−6アルキルから選択され;
1aおよびR1bは、独立して、H、ハロゲン、−OC1−6アルキル、−O−ハロC1−6アルキル、−C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、所望により置換されていてもよいアリールおよび−(C1−3アルキレン)−所望により置換されていてもよいアリールから選択され;
は、H;ハロゲン、−OHまたは−NHSOCHで所望により置換されていてもよい−C1−6アルキル;−OH;−OC1−6アルキル;−S(O)1−6アルキル;−CN;所望により置換されていてもよいアリール;所望により置換されていてもよい−O−アリールおよび所望により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され、ここで、nは0、1または2であり;
は、H、−C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、所望により置換されていてもよいアリールおよび所望により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;そして
は、H、−C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、所望により置換されていてもよいアリールおよび所望により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;または
、Rおよびそれらが結合している炭素原子が一緒になって、−C3−6シクロアルキル、フルオレニルまたは−C3−6ヘテロシクリル[これは、−N(R)−、−O−および−S−から選択される環ヘテロ原子を有する]を形成し;または
、Rが一緒になってC1−6アルキリデンを表し;
Raは、H、C1−6アルキルまたは−C(O)C1−6アルキルであり;そして
アリールおよびヘテロアリールの、所望により存在していてもよい置換基は、ハロゲン、−C1−3アルコキシ、−C1−3ハロアルキル、ヒドロキシ−C1−3アルキル、−S(O)1−3アルキル、アミノ、ならびに、モノおよびジ−(C1−3アルキル)アミノから独立して選択される1〜4個の基である。
【0217】
特定の実施形態においては、CRTH2受容体アンタゴニストは、{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸またはその医薬上許容される塩である。
【0218】
他の実施形態においては、CRTH2受容体アンタゴニストは、米国特許第8,592,383号(その開示を、本明細書に完全に記載されている場合と同様に、参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されているアンタゴニストである。特定の実施形態においては、CRTH2受容体アンタゴニストは、
4−{シクロプロピル[シス,シス−4−{[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルボニル}−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[b]キノリン−9−イル]アミノ}−4−オキソブタン酸、
4−[シクロプロピル[シス,シス−7−フルオロ−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−4−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンゾイル]−1H−シクロペンタ[b]キノリン−9−イル]アミノ]−4−オキソブタン酸、
4−(シクロプロピル((3aS,9R,9aR)−7−フルオロ−4−(4−(トリフルオロメトキシ)ベンゾイル)−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[b]キノリン−9−イル)アミノ)−4−オキソブタン酸、
4−[シクロプロピル[シス,シス−1,2,2a,3,8,8a−ヘキサヒドロ−3−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンゾイル]シクロブタ[b]キノリン−8−イル]アミノ]−4−オキソブタン酸、
(R)−1−((シス,シス−3−(ベンジルオキシカルボニル)−5,6−ジフルオロ−1,2,2a,3,8,8a−ヘキサヒドロシクロブタ[b]キノリン−8−イル)(シクロプロピル)カルバモイル)アゼチジン−2−カルボン酸、または、それらの医薬上許容される塩
から選択される。
【0219】
もう1つの実施形態においては、該化合物は、米国特許第7,666,878号に開示されている2−(2−メチル−1−(4−(メチルスルホニル)−2−(トリフルオロメチル)ベンジル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)酢酸(フェビピプラント)またはその医薬上許容される塩である。
【0220】
もう1つの実施形態においては、該化合物は3−((3R)−3−{[(4−フルオロフェニル)スルホニル]アミノ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−9H−カルバゾール−9−イル)プロパン酸(ラマトロバン)またはその医薬上許容される塩である。
【0221】
幾つかの実施形態においては、CRTH2受容体アンタゴニストは、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、例えばモンテルカスト、ザフィルカストまたはプランルカストと組合せて投与される。特定の実施形態においては、ロイコトリエン受容体アンタゴニストはモンテルカストである。CRTH2受容体アンタゴニストおよびロイコトリエン受容体アンタゴニストは、同じ又は別々の剤形で投与されうる。
【0222】
併用療法の特定の実施形態においては、CRTH2アンタゴニストは{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸またはその医薬上許容される塩であり、ロイコトリエン受容体アンタゴニストはモンテルカストである。他の特定の実施形態においては、CRTH2受容体アンタゴニストはフェビピプラントまたはその医薬上許容される塩であり、ロイコトリエン受容体アンタゴニストはモンテルカストである。
【0223】
本発明に従う本発明の医薬組成物、医薬品、キット、方法および使用で治療されうる障害は、一般には、CRTH2受容体アンタゴニスト療法での治療に感受性である障害であり、すなわち、CRTH2受容体アンタゴニストは、該疾患を有する患者の群において臨床的に測定可能な有益な結果を達成する。CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である典型的な疾患および症状には、ヒトおよび他の哺乳動物における喘息、うっ血、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、皮膚炎、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、アレルギー性腎炎、結膜炎、気管支喘息、食物アレルギー、全身性肥満細胞症、アナフィラキシーショック、蕁麻疹、湿疹、掻痒、炎症、虚血再灌流障害、脳血管障害、胸膜炎、潰瘍性大腸炎、好酸球関連疾患例えばチャーグ−ストラウス症候群および副鼻腔炎、及び、好塩基球関連疾患例えば好塩基球性白血病および好塩基球増加症が含まれるが、これらに限定されるものではない。脳血管障害の例には、脳卒中が含まれる。
【0224】
ある実施形態においては、本発明は、喘息、うっ血、アレルギー性鼻炎またはCOPDを治療するための、医薬組成物、医薬品、キット、方法または使用を提供し、これらは、そのような治療を要する患者にCRTH2受容体アンタゴニストの治療的有効量を投与するための説明を含む。特定の実施形態においては、治療される疾患または症状は喘息である。もう1つの実施形態においては、治療される疾患または症状はCOPDである。
【0225】
また、CRTH受容体アンタゴニストは、収縮性プロスタノイドに拮抗すること又は弛緩性プロスタノイドを模擬することによりプロスタノイド誘発性平滑筋収縮を抑制することが可能であり、したがって、月経困難症、早産および好酸球関連障害の治療方法に使用されうる。
【0226】
好ましい実施形態においては、本発明のCRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーは、アレルギー性喘息を含む喘息を治療するために、CRTH2受容体アンタゴニストおよびロイコトリエン受容体アンタゴニスト(例えば、モンテルカスト)を含む任意のCRTH2受容体アンタゴニスト単独療法または併用療法治療レジメンと共に使用される。
【0227】
CRTH2アンタゴニストによる治療に感受性である障害の治療のための本発明の併用療法において使用されるその他の物質の用量および投与レジメンは、添付文書における承認された用量および投与レジメン、ならびに、患者の年齢、性別および全身健康状態を考慮して、担当医師によって決定される。併用療法において投与される物質は、同時に(すなわち、同じ組成物において、または次々と投与される別々の組成物において)または連続的に投与されうる。その組合せの成分を、異なる投与スケジュールで投与する場合(例えば、1つの成分を1日1回投与し、別の成分を6時間ごとに投与する場合)、またはそれらの好ましい医薬組成物が異なる場合(例えば、一は錠剤であり一はカプセル剤である場合)、これは特に有用である。したがって、別々の剤形を含むキットが好都合である。
【0228】
患者におけるCRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーの存在または非存在に基づいて患者を治療するように選択された併用療法を行う場合、組み合された治療用物質またはそれらの治療用物質を含む医薬組成物もしくは組成物は、任意の順序で、例えば連続的に、共に、一緒に、同時になどで投与されうる。そのような併用療法における種々の治療用物質の量は、異なる量(異なる投与量)、または同じ量(同じ投与量)でありうる。幾つかの実施形態においては、組合された物質は、患者の疾患または症状を治療するためにそのような物質が単独療法で使用される場合に一般に用いられる用量で投与され、一方、他の実施形態においては、該物質は、該疾患または症状を治療するためにそのような物質が単独療法で使用される場合に一般に用いられる用量より低い用量で投与される。
【0229】
幾つかの実施形態においては、併用療法において使用される治療用物質は同一医薬組成物中に存在し、これは経口投与、静脈内投与、皮下投与または非経口投与に好適でありうる。
【0230】
特定の実施形態においては、併用療法において使用される治療用物質は、同一医薬組成物中に存在し、これは、経口投与に適した錠剤である。
【0231】
本発明者らは、薬理遺伝学的適応(すなわち、疾患成分とCRTH2受容体アンタゴニストマーカー成分とを含む適応)に関する、新規CRTH2受容体アンタゴニスト医薬品を販売するための規制機関の承認を得るために、本明細書に記載されているCRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーが使用されうることも本発明で想定している。疾患成分は、CRTH2受容体アンタゴニストでの治療に感受性である疾患であり、遺伝的マーカー成分は、表1に記載されている、より良好な応答の対立遺伝子の1つの、少なくとも1つのコピーに関して(例えば、rs12748961 SNPのC対立遺伝子の、1つのコピーの少なくとも1つに関して、)陽性試験結果を示す患者である。同様に、本発明者らは、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーが、一般集団における当該疾患に対する当該薬物の限界的な利益/リスク比に基づいて或る疾患に対して医師が処方したがらない現在承認されているCRTH2受容体アンタゴニスト薬に関して、そのような薬理遺伝学的適応の承認を得るのに有用であることを本発明で想定している。
【0232】
薬理遺伝学的適応の承認を得ることは、典型的には、薬物で治療された2つの別々の患者群において薬物に対する所望の応答の頻度を測定することを含む。それらの群の1つにおける各個体は、提示されている薬理遺伝学的適応内に個体を配置する疾患および遺伝的プロファイルを有する。他方の群における個体は、提示されている薬理遺伝学的適応の遺伝的マーカー成分を彼らが有するかどうかには関係なく無作為に選択されうる。あるいは、遺伝的マーカー成分を満たす個体と満たさない個体との比率が、一般集団、または提示されている薬理遺伝学的適応の疾患成分を有する患者の集団において観察されるものに類似している、「対照」群を与える様態で、個体がその他の群に割り付けされる。承認を求めている医薬品は、前向き(プロスペクティブ)治験において、それらの2つの群に投与されうるであろう。あるいは、該薬物で既に治療された患者の後向き(レトロスペクティブ)薬理遺伝学的分析が行われうるであろう。
【0233】
薬理遺伝学的適応が求められている医薬品は、治療的に活性な他の物質、例えば、提示されている薬理遺伝学的適応における疾患または症状に対する治療有効性を有する別の薬物、あるいは薬物により引き起こされる有害な作用の頻度を減少させることを意図した物質で評価されうるであろう。幾つかの実施形態においては、規制機関による承認が求められている薬理遺伝学的適応は、他のマーカー(遺伝的マーカーまたはバイオマーカー)または薬物に対する応答の予測因子を含みうる。
【0234】
薬理遺伝学的研究は、個々の国において薬理遺伝学的医薬品を販売する前に承認を要求している規制当局または政府の代表者と協議して設計されうるであろう。好ましくは、規制当局は、例えばオーストラリア、カナダ、中国、欧州連合加盟国、日本、韓国、台湾などのような主要先進国の政府によって権限が与えられている。最も好ましくは、規制当局は米国の政府によって権限が与えられており、提出される承認のための出願の種類は、医薬品に適用可能な食品医薬品化粧品法の最新版に記載されている法的要件によって決まり、規制当局への出願の費用および医薬品の販売戦略のような他の考慮事項をも含みうる。例えば、医薬品における医薬製剤が、提示されている薬理遺伝学的適応の疾患成分に関して既に承認されている場合には、出願は紙書類NDA、補足的NDAまたは簡略化NDAでありうるが、医薬製剤が過去に承認されたことがない場合には、出願は完全NDAであることを要しうるであろう。これらの用語は、医薬分野の当業者によってそれらに適用される意味、または1984年の医薬品価格競争および特許期間回復法において定義されている意味を有する。
【0235】
本発明のCRTH2受容体応答マーカーを使用する薬理遺伝学的臨床試験の、1つの所望の結果は、(1)CRTH2受容体アンタゴニスト医薬組成物と、(2)該医薬組成物が推奨される薬理遺伝学的適応を含む処方情報とを含む、医薬品を販売するための承認である。処方情報は、典型的には、その薬物に関する製品インサート(添付文書と称されることも多い)またはラベルにおいて見出される。
【0236】
前記のとおり、薬理遺伝学的適応は疾患成分とCRTH2受容体応答マーカー成分との2つの成分を有する。したがって、処方情報は、1以上の疾患、症状または医学的症状に対して該薬物が有効性を示している遺伝的に定められた患者群を記載するであろう。幾つかの実施形態においては、処方情報は、遺伝的に定められた群に含まれる個体の特定方法を示す。例えば、幾つかの実施形態においては、処方情報は、本明細書に記載されているCRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーの、より良好な応答の対立遺伝子に関して陽性試験結果を示す個体に該薬物が適応することを示す。あるいは、処方情報は、本明細書に記載されているCRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーの、より良好な応答の対立遺伝子に関して陰性試験結果を示す個体に関しては該薬物が禁忌であることを示しうる。幾つかの好ましい実施形態においては、処方情報は、薬理遺伝的適応に要求される遺伝的マーカー成分の存在または非存在を検出するために使用される少なくとも1つの承認された診断試験の名称を含む。前記のとおり、本発明の薬理遺伝学的薬品における薬理遺伝学的適応は、CRTH2受容体アンタゴニスト医薬組成物に対する応答の追加的マーカーもしくは予測因子、および/または1以上の他の治療的に活性な物質(例えば、モンテルカスト)と組合せて該薬物を使用するための要件を含みうる。処方情報は推奨投与量および治療レジメンに関する情報を含みうる。
【0237】
本発明の好ましい薬理遺伝学的薬品においては、医薬組成物は、{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸およびフェビピプラントから選択されるCRTH2受容体アンタゴニストを含む。より好ましくは、医薬組成物は、{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸であるCRTH2受容体アンタゴニストと、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、例えばモンテルカストとを含む。本発明の医薬品の好ましい薬理遺伝学的適応は、表1に記載されているCRTH2応答アンタゴニストマーカーに関するより良好な応答の対立遺伝子の1つの少なくとも1つのコピー、および、喘息に罹患した患者の治療のための該医薬組成物、の使用を含む。好ましい実施形態においては、患者はrs12748961 SNPに関するC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つに関して陽性試験結果を示す。幾つかの実施形態においては、処方情報は、CRTH2受容体アンタゴニスト医薬組成物は、喘息に罹患した患者を治療するためのロイコトリエン受容体アンタゴニスト(例えば、モンテルカスト)との組合せにおいて適応することを記載している。
【0238】
本明細書に記載されている方法および使用を行う際または本明細書に記載されているキット、組成物および医薬品を使用する際に含まれる、分析的および数学的操作の全ては、コンピュータにより実行されうる。例えば、コンピュータは、CRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーのより良好な応答の対立遺伝子の存在または非存在を、試験検査所の従業員または治療医師により入力された遺伝子型データに基づいて、個体に割り当てるコンピュータプログラムを実行しうる。また、同じコンピュータまたは異なるコンピュータが、その応答マーカー割り当てに基づいて、CRTH2受容体アンタゴニスト療法に対する推定応答を出力しうる。個体におけるCRTH2受容体アンタゴニスト応答マーカーの、より良好な応答の対立遺伝子の存在または非存在に関するデータは、個体に関する他の臨床的および/または遺伝的データを含有するリレーショナルデータベース(例えば、OracleデータベースまたはASCIIフラットファイルのセット)の一部として保存されうる。これらのデータは、コンピュータのハードドライブ上に保存されることが可能であり、あるいは、例えば、CD ROM上に、またはコンピュータによってアクセス可能な1以上の他の記憶装置上に保存されうる。例えば、データは、ネットワークを介してコンピュータに接続された1以上のデータベース上に保存されうる。
【図面の簡単な説明】
【0239】
図1図1は2015年6月7日現在のNCBI SNPデータベースにおけるCRTH2アンタゴニスト応答マーカーの参照ヌクレオチド配列を示し、ここで、変異位置は太字で示されている。
図2図2は、CRTH2受容体アンタゴニストおよびモンテルカストで治療された患者の有効性の測定に用いた研究設計のグラフ表示である。
図3図3は、C対立遺伝子のコピーを有さない個体(C=0)およびC対立遺伝子のコピーの1つ又は2つのコピーを有する個体(C=1+2)における、図2に要約されている臨床研究からのrs12748961で、化合物Aおよびモンテルカストの組合せと、プラセボおよびモンテルカストの組合せとを比較した場合の、第4週におけるFEVスコアの改善(mL)の推定平均患者内相違を示す。
図4図4は、1000ゲノムデータセットに基づく、種々の集団の全体にわたるrs12748961のマイナー対立遺伝子(C)頻度を示す。
【0240】
実施例
以下の実施例は、本発明をより明らかに説明するために記載されており、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0241】
実施例1.CRTH2受容体アンタゴニスト/モンテルカスト併用療法での治療に対するFEV応答に関連した一塩基多型(SNP)の特定
治療応答に対する遺伝的寄与を特定するために、本発明者らは、予め特定された一塩基多型(SNP)により定められた幾つかの患者亜群間で平均治療差異(mean treatment difference)が変動するかどうかを評価するために、CRTH2受容体アンタゴニストを使用する臨床試験を受けていた喘息研究被験者において薬理遺伝学的(PGx)分析を行った。
【0242】
臨床研究設計の概要
図2は研究設計のグラフ表示である。該研究は、モンテルカスト(ML)の投与を受けている持続的症状を示す喘息被験者において4週間投与された{(7R)−4−フルオロ−7−[5−(4−フルオロベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−1−イル]−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[1,2−a]インドール−10−イル}−酢酸(以下、「化合物A」)の、FEVに対する効果を評価するための、研究組織内で盲検化された17週間のランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー研究であった。全体で104名の患者が該研究を完了した。第I期は前研究期間であった。別々に又は一定の用量の組合せの一部として吸入コルチコステロイド(ICS)と共に長時間作用型ベータ−アゴニスト(LABA)の投与を受けている被験者は、ICSの投与は尚も受け続ける一方でLABA成分は中断することが要請された。第II期は2〜4週間の馴らし期間であり、この期間中に、被験者は非盲検のモンテルカスト(ML)および一重盲検プラセボ(PBO)の投与を受けた。ICSまたは他のコントローラーの投与を受けている被験者においては、モンテルカストの投与を受けながら、これらの投薬を漸減することが要求され;第III期は4週間の二重盲検ランダム化治療期間であり、この期間中に、被験者は、モンテルカスト 10mg(QD)の投与を受け続けながら、化合物A 150mgまたは合致イメージ(matching−image)のプラセボの投与を受け;第IV期は4週間の休薬(wash out)期間であり、この期間中、被験者は、モンテルカスト 10mg(QD)の投与を受け続けながら、一重盲検様態でプラセボの投与を受け;第V期は4週間の二重盲検期間であり、この期間中、被験者は、第III期中に受けなかった反対の治療へと移行した。
【0243】
該研究の主要有効性エンドポイントは4週間の投与の後の1秒努力呼気肺活量(FEV)であり、該研究は、110mLの真の全平均治療差異を検出する85%の検出力を示した。
【0244】
幾つかの所定のSNPにより定められた患者亜群間で平均治療差異が変動するかどうかを評価するために、薬理遺伝学的分析も行った。
【0245】
遺伝子型および臨床データ
CRTH2遺伝子に関連した一塩基多型(SNP)、末梢血好酸球および好塩基球数、血清IgEレベルならびにペリオスチン肺発現定量的形質遺伝子座(eQTL)の予め特定された一覧に基づいて、次世代シークエンシングプラットフォームを使用して5,092個のSNPの遺伝的データを作成した。遺伝子型変動が認められないSNPの除去の後、85個が残った。ついで、1%未満のマイナー対立遺伝子頻度(MAF)を有するSNPを除去したところ、70個のSNPが得られ、これらを薬理遺伝学的統計分析に含めた。
【0246】
該研究を完了した研究被験者のうちの1名は、この患者に関する遺伝子型決定データが収集されなかったため除外され、薬理遺伝学的分析のための有効性データセットは103名の患者に基づくものであった。
【0247】
統計手法
EFVにおける全平均治療差異の評価(遺伝は無視)
各期間における縦断的測定でのクロスオーバー設計に関する一般分析は線形混合効果「セル平均(cell means)」モデルを用い、ここで、従属変数として臨床尺度(ここではFEV)を用い、順序(S=M→P,P→M)、治療(T=M,P)、訪問(V=0,2,4週間)ならびにS、TおよびVを含む全ての可能な相互作用を独立変数として用い;M=化合物A+モンテルカスト,P=プラセボ+モンテルカストである。また、仮定を最小限にするために、各順序における2つの治療にわたり及び経時的なFEV応答間の患者内相関性を説明するために、いずれの構造(例えば、化合物の対称性)のインポジション(imposition)をも伴わない共分散行列を用いた。
【0248】
この一般分析は、いずれかのクロスオーバー順序において以下の条件の両方が重なった場合には誤解を招きうる:(1)2つの治療に関するベースライン平均における観察された平均差異が、ゼロから「遠く」離れている;および(ii)ベースラインおよびベースライン後応答が、非常に強く相関している(相関性:0.9以上)。薬理遺伝学的分析のための準備において、これらの条件の両方がFEVデータにおいて観察された。したがって、本発明者らは、Mehrotra DV,Pharmaceutical Statistics 13,376−387(2014)に記載されている分析の方法の拡張形態を用いて、FEVデータを分析した。この第2の分析方法は、ベースライン測定を用いてクロスオーバー分析のために特別に設計される。それを行うために、本発明者らは、「xdiff」(治療MとPとの間のベースライン差異)、およびxdiffと全てのその他の一定の効果の項(S、TおよびVを含む)との間の相互作用を、前記の一般分析クロスオーバーモデルに加えた。第4週における平均治療差異は、以下のSASコードにより、xdiff=0と推定された。
【数1】
【0249】
前記のSASコードにおいては、欠如したxdiff値を有する患者は分析から自動的に除去された。合計103名の患者が該分析に留まるという結果を得るために、欠如期間2ベースラインFEV値(これは欠如xdiff値を与える;これは、脱落ゆえに、患者の〜20%の場合であった)を単純線形回帰モデルにより各順序において別々に補完(impute;インピュテーション)させ、ここで、従属変数として期間2ベースラインを用い、独立変数として対応期間1ベースラインを用いた。既に記載されているとおり、期間1および期間2 FEVベースライン間の観察された相関性は両方の順序において:0.9であったが、これは、欠如期間2ベースラインに関する補完値が良好な信頼性を有していたという保証をもたらすものである。
【0250】
標準的クロスオーバー分析と前記の第2分析との間の主要差異は、それらのそれぞれの推定値(すなわち、標的パラメーター)により説明されうる。前者の推定値はE[(Y−X)−(Y−X)]=E[(Y−Y)−(X−X)]であり、ここで、E(z)はzの集団平均を示し、一方、後者の推定値はE[(Y−Y)|(X−X)=0]であり、ここで、Xは治療Mの前のベースラインFEVであり、Yは治療Mの後の第4週のFEVである等。新たな分析は、条件X−X=0(または同等に、X=X)を課すことにより、治療間のベースライン後FEV値を比較する場合にベースライン不均衡を「補正」することに注目されたい。この条件付けはMおよびPの正当な比較を保証する一方で、また、標準分析と比較して標的パラメーターの推定の変動性を低減する。
【0251】
PGx分析:FEVにおける平均治療差異がSNPに関連しているかどうかの評価
薬理遺伝学的分析のために、直前に記載されているモデルにおいて、遺伝子型(与えられたSNPに関してマイナー対立遺伝子に応じてG=0、1または2としてコード化される)および遺伝子型相互作用による治療に関する一定の効果の項を加えたが、後者に主たる関心が持たれる。推定モデルパラメーターにおける不安定性を回避するために、任意の与えられたSNPに関して、G=1およびG=2の遺伝的亜群を組み合せた(後者の亜群内の患者の数が5未満である場合)。各SNPを別々に分析した。PGx分析のために、以下のSASコードを使用した。
【数2】
【0252】
前記SASコードによって誘導された70個のp値(各SNPに関して1つ)を、ボンフェローニ補正の後で統計的有意性に関して評価した。したがって、関連p値が0.05/70=.00071未満であった場合に、SNPは統計的に有意とみなされた。
【0253】
感度分析:前記の主要薬理遺伝学的分析の頑強性を評価するために、感度分析を行い、この場合、人種群および人種群相互作用による治療に関する項を薬理遺伝学的分析モデルに含め、ここで、人種群は、「白人」/その他または「複数」/その他のいずれかの自己申告人種に関するバイナリー指標変数として表される。
【0254】
結果
第4週における全平均治療差異の評価(遺伝は無視)
表3は、第0週(ベースライン)、第4週、および第4週におけるベースラインからの変化に関する、順序および治療ごとのFEV(mL)の統計の概要を示す。最後の2つの列は、誘導された患者内変数Xdiff(MおよびPの前のベースライン値における差異)およびΔΔ(MおよびPの後のベースラインからの変化における差異)に関する統計の概要を示し、どちらも完了者のみに基づいている。
【0255】
表3における2つの観察が注目に値する。第1に、利用可能なデータを有する全患者に基づけば、MおよびPの投与の前のベースライン平均はM→Pの順序においては類似しているが(2270対2297mL)、それらはP→Mの順序においては顕著に異なっており(2452対2226mL);153mLのXdiff平均に基づいて完了者のみに焦点を合わせると、P→Mの順序におけるベースライン不均衡に関する同じ懸念が生じる。第2に、それらの2つの順序の間で平均ΔΔ値も顕著に異なっており、第1の順序における133mLの平均ΔΔは110mLより大きいが(検出するように治験が設計された効果)、第2の順序における対応する観察された差異は逆方向のもの(−78mL)である。
【表3】
【0256】
統計手法の節に記載されている第2の分析方法(ここでは、共変数としてxdiffを用い、条件xdiff=0を課した後で平均治療差異の推定を得ている)に基づく結果を表4に示す。
【表4】
【0257】
表4における結果は、バックグラウンド療法としてモンテルカストの服用を継続している患者における4週間の治療の後、プラセボと比較して、化合物Aは平均してFEVレベルの改善において顕著に有効であるらしいことを示唆している。
【0258】
以下に示す薬理遺伝学的分析の結果は、〜120mLの見掛け平均純利益が治験集団の全体にわたって均等に分布しているのか、または主に遺伝学ベース亜群によって導かれるのかを示している。
【0259】
PGx分析:FEVにおける平均治療差異がSNPと関連しているかどうかの評価
合計70個のSNPをこの分析において評価した。分析した70個のSNPのうち、1個(rs12748961)だけが、0.00071のボンフェローニ閾値より小さいp値を有していた。
【0260】
表5は、SNP rs12748961に関する遺伝子型亜群による第4週における推定平均治療差異を、遺伝子型相互作用による治療に関する統計的に有意なp値と共に示す。このSNPの場合、C=0、1および2遺伝的亜群における患者の数はそれぞれ74、27および2であった。統計手法の節に記載されている理由により、後者の2つの亜群をPGx分析の前に組合せた。
【表5】
【0261】
表5における結果のグラフ表示を図3に示す。見掛け上有益な全体的な薬物効果は主に、rs12748961 SNPのC対立遺伝子のコピーの少なくとも1つ(C1)を有する治験集団の〜30%の平均によって導かれるようであり;患者の残りの70%における化合物Aの推定利益は比較的小さいようである。
【0262】
感度分析:ここでは、人種群および人種群相互作用による治療に関する項を、全SNPに関して前記で示されているものに非常に類似していた薬理遺伝学的分析モデルによってもたらされた結果に加えた。
【0263】
rs12748961に関するマイナー対立遺伝子頻度は、図4に示されているとおり、全世界の集団に基づいて、1000 Genomes Projectによって確認されたとおり、〜20%であると報告されている。Paul Julian Kerseyら,“Ensembl Genomes 2013:scaling up access to genome−wide data,”Nucleic Acids Research 2014,42(D1):D546−D552。しかし、同様に図4に示されているとおり、アジア人集団とアフリカ人集団との間で、その頻度においては劇的な差異が存在し、このことは、より高いC対立遺伝子頻度を有する集団を、CRTH2受容体アンタゴニスト、例えば化合物Aで治療する際に、特有の医学的および/または商業的機会をもたらしうるであろう。
【0264】
実施例2.CRTH2受容体アンタゴニスト/モンテルカスト併用療法での治療に対するFEV応答に関連した追加的遺伝的変異体の特定
CRTH2受容体アンタゴニスト/モンテルカスト併用に対する有益な応答を予測する、rs12748961以外の追加的遺伝的マーカーを特定するために、第2の研究を行った。
【0265】
前記の研究からの患者からの血液サンプルを、Merck Custom Axiom Arrayを使用して、更に遺伝子型決定した。Merck Custom Axiom Arrayは、種々の民族集団における一般的SNPに関する、より大きな多様性を含めるためのカスタムコンテンツ、および薬物代謝酵素に関する追加的コンテンツと共に、UK Biobank Axiom Genotyping Arrayをバックボーンとして使用して設計した。この研究は、更なる遺伝子型決定に利用可能なDNAが少なすぎたため1名の患者のデータが除外されたこと以外は、前記実施例1に記載されているものと同じ患者集団を含むものであった。合計102名の被験者からのデータをこの研究に含めた。
【0266】
B.N.Howieら,“A flexible and accurate genotype imputation method for the next generation of genome−wide association studies,”PLoS Genetics(2009)5(6):e1000529における開示に基づく遺伝子型補完およびハプロタイプ・フェージング・プログラムであるIMPUTE2ソフトウェアを使用して、(遺伝的品質管理の後の)Merck Custom Axiom Array上でアッセイされた変異体に基づいて、遺伝的補完(genetic imputation)を行った。Howieらにおいて説明されているとおり、補完方法は、参照パネルにおいて測定された対立遺伝子相関性を外挿するための集団遺伝的モデルを用いて、研究サンプルにおける未観察遺伝子型を予測する。この場合、1000 Genome Projectからの配列データを補完参照データセットとして使用した。低い補完確実性(情報計量<0.3)を有する補完変異体を該分析から除外した。
【0267】
この研究は、アッセイされたPSおよび補完されたPSの両方に関して、rs12748961を含有する200kBの領域内の、0.05を超えるマイナー対立遺伝子頻度(MAF)を有する全てのPSを試験することを含んでいた。合計1054個のPS(111個のアッセイされた変異体を含む)を分析した。実施例1に記載されているのと同じ統計手法をこの分析において適用した。
【0268】
表6は、0.001未満のp値で遺伝子型相互作用による治療効果を示す又はそれを有すると予想されるPSを列挙する。分析データセットに基づくマイナー対立遺伝子頻度(MAF)が第2列に示されている。第3列は、個々のPSがAxiom Merck Custom Arrayによってアッセイされたのかどうかを示す。第5列は、rs12748961 SNPのC対立遺伝子の存在に関するピアソン相関係数の2乗を示す。
【表6】
【0269】
本発明は、本明細書に記載されている特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されているものに加えて本発明の種々の修飾が前記説明から当業者に明らかになるであろう。そのような修飾は添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。
【0270】
本出願の全体にわたって引用されている特許、特許出願、刊行物、製品説明およびプロトコルの開示の全体をあらゆる目的で本明細書に組み入れることとする。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]