(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の態様の防音材の実施形態について説明する。尚、以下に記載する特性は、特記されていない限り常温での特性である。本実施形態の防音材は、無機繊維からなる多孔体を吸音材として含む。この多孔体は、セル構造を有する。多孔体として発泡体を用いることができる。
【0012】
本実施形態で用いる無機繊維は、石綿繊維を含まないで構成され、例えばセラミック繊維、生体溶解性繊維(アルカリアースシリケート繊維、ロックウール等)及びガラス繊維から選択される1以上を用いることができる。
【0013】
生体溶解性無機繊維は、例えば、40℃における生理食塩水溶解率が1%以上の無機繊維である。
生理食塩水溶解率は、例えば、次のようにして測定される。すなわち、先ず、無機繊維を200メッシュ以下に粉砕して調製された試料1g及び生理食塩水150mLを三角フラスコ(容積300mL)に入れ、40℃のインキュベーターに設置する。次に、三角フラスコに、毎分120回転の水平振動を50時間継続して加える。その後、ろ過により得られた濾液に含有されている各元素(主要元素でよい)ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na )、カリウム(K)及びアルミニウム(Al)の濃度(mg/L)をICP発光分析装置により測定する。そして、測定された各元素の濃度と、溶解前の無機繊維における各元素の含有量(質量%)と、に基づいて、生理食塩水溶解率(%)を算出する。すなわち、例えば、測定元素が、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)及びアルミニウム(Al)である場合には、次の式により、生理食塩水溶解率C(%)を算出する;C(%)=[ろ液量(L)×(a1+a2+a3+a4)×100]/[溶解前の無機繊維の質量(mg)×(b1+b2+b3+b4)/100]。この式において、a1、a2、a3及びa4は、それぞれ測定されたケイ素、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムの濃度(mg/L)であり、b1、b2、b3及びb4は、それぞれ溶解前の無機繊維におけるケイ素、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムの含有量(質量%)である。
【0014】
生体溶解性繊維は例えば以下の組成を有する。
SiO
2とZrO
2とAl
2O
3とTiO
2の合計 50重量%〜82重量%
アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物との合計 18重量%〜50重量%
【0015】
また、生体溶解性繊維は例えば以下の組成を有して構成されることも可能である。
SiO
2 50〜82重量%
CaOとMgOとの合計 10〜43重量%
【0016】
平均繊維径は限定されないが細い方が好ましい。例えば、0.08μm〜4.0μm、0.1μm〜2.0μm、又は0.2μm〜1.0μmとできる。平均繊維径はランダムに選択した繊維100本について測定した繊維径から求めることができる。
【0017】
また、本実施形態で用いる多孔体(発泡体等)(以下、本実施形態の多孔体ともいう)は、無機成分の他、カップリング剤等の有機成分を含むことができる。
【0018】
本実施形態の多孔体は、無機成分として酸化ホウ素、窒化ホウ素、金属ホウ化物等の無機結合剤を含まないで構成することができる。この場合、多孔体はカップリング剤等を含む。
また、本実施形態の多孔体は、有機成分として有機結合剤を含まないで構成することができる。この場合、多孔体は無機結合剤等を含む。結合剤として無機結合剤を用いると、無機結合剤は高温条件下(例えば450℃)でも焼失しないため嵩密度、圧縮応力、圧縮復元率を維持できる。
【0019】
また、本実施形態の多孔体では、常温(JIS Z 8703による5〜35℃)における圧縮率0〜90%における各圧縮率で圧縮した際の圧縮応力が全て好ましくは2.0MPa以下である。例えば、1.5MPa以下、1.3MPa以下、1.0MPa以下、0.8MPa以下、0.6MPa以下、0.4MPa以下、0.2MPa以下、0.05MPa以下、又は0.02MPa以下とできる。下限は0MPaである。さらに好ましくは、本実施形態の多孔体では、高温下(450℃)における圧縮率0〜90%の各圧縮率で圧縮した際の圧縮応力が全て好ましくは2.3MPa以下である。例えば、2.0MPa以下、1.7MPa以下、1.5MPa以下、1.3MPa以下、1.0MPa以下、0.8MPa以下、0.6MPa以下、0.4MPa以下、0.2MPa以下又は0.04MPa以下とできる。下限は0MPaである。
【0020】
また、本実施形態の多孔体では、常温における圧縮率80%における圧縮した際の圧縮応力(又は圧縮率0〜80%における各圧縮率で圧縮した際の圧縮応力が全て)が好ましくは0.5MPa以下である。例えば、0.3MPa以下、0.1MPa以下、0.08MPa以下、0.06Pa以下、0.04Pa以下、0.02Pa以下、0.01MPa以下、0.008MPa以下、又は0.005MPa以下とできる。下限は限定されないが、通常0.0001MPa以上又は0.00001MPa以上である。
【0021】
ここで、多孔体においては、嵩密度、圧縮応力が各々、高い値であるとき、硬く反発性(復元性)が低くなりがちである。これに対して、本多孔体では、上記のように圧縮率0〜90%における各圧縮率で圧縮した際の圧縮応力が全て低いため、柔軟性を高くでき変形特性を向上できる。よって、例えば多孔体が取り付けられる被取付部に対して馴染み易く多孔体と被取付部との間の隙間を抑制してシール性(施工性)を向上させることができる。より具体的には、かかる多孔体では、常温から高温下(例えば450℃)において高い柔軟性を発現でき、多孔体が取り付けられる被取付部に対して馴染み易く多孔体と被取付部との間の隙間を抑制して常温から高温下におけるシール性を確保及び向上できる。
【0022】
また、本実施形態の多孔体では、好ましくは常温での圧縮率40〜80%における見かけヤング率が0.7MPa以下である。例えば、0.6MPa以下、0.3MPa以下、0.1MPa以下、0.05MPa以下、又は0.01MPa以下とできる。下限は限定されないが、通常0.0001MPa以上である。より好ましくは、本多孔体では、好ましくは高温下(450℃)における圧縮率40〜80%における見かけヤング率が0.8MPa以下である。例えば、0.6MPa以下、0.1MPa以下、0.08MPa以下、又は0.05MPa以下とできる。下限は限定されないが、通常0.0001MPa以上である。さらに好ましくは、本多孔体では、常温及び高温下(450℃)における圧縮率0〜90%の各圧縮率で圧縮した際の見かけヤング率が上記の低い値である。このように本実施形態の多孔体では、見かけヤング率が低いため、柔軟性を高くでき変形特性を向上できる。
【0023】
ここで、本発明における見かけヤング率とは、圧縮率を歪量とみなして、所定の圧縮率で圧縮したときの圧縮応力を前記所定の圧縮率で除した値である。
【0024】
本実施形態の多孔体では、好ましくは常温での圧縮率80%における見かけヤング率が0.7MPa以下である。例えば、0.6MPa以下、0.3MPa以下、0.1MPa以下、0.05MPa以下、又は0.01MPa以下とできる。下限は限定されないが、通常0.0001MPa以上である。
【0025】
また、本実施形態の多孔体では、嵩密度(常温、圧縮率0%)が好ましくは0.001〜0.13g/cm
3である。例えば、0.002〜0.12g/cm
3、0.003〜0.1g/cm
3、0.004〜0.09g/cm
3、0.005〜0.08g/cm
3、又は0.006〜0.05g/cm
3とできる。嵩密度が上記の範囲であると、柔軟性を高くでき変形特性を向上できる。
【0026】
また、本実施形態の多孔体では、好ましくは圧縮率40〜80%における又は圧縮率80%における嵩密度と圧縮応力との積算値[MPa・g/cm
3]が0.30以下である。より好ましくは、前記積算値[MPa・g/cm
3]は、0.28以下である。例えば、0.1以下、0.05以下、0.01以下、0.001以下、又は0.0005以下とできる。嵩密度と圧縮応力との積算値[MPa・g/cm
3]が低いと、多孔体の嵩密度及び圧縮応力を低くでき、柔らかいだけでなく高い復元性を発現できる。
【0027】
また本実施形態の多孔体では、細孔径の平均円相当径は、好ましく150μm〜1000μmである。例えば、180μm〜800μm、200μm〜700μm、250μm〜600μmとできる。細孔径の平均円相当径が上記の範囲にあると、構造的強度を保持しつつも圧縮後の復元力を確保(換言すれば、圧縮復元率を担保・調整)してシール性を確保・向上できる。さらに、細孔径の平均円相当径が小さいため、対流による熱伝導を抑制して断熱性を向上させると共に、圧力損失を高めてシール性を向上できる。細孔径の平均円相当径は発泡して製造する場合、発泡倍率、気泡量、気泡径等により調整できる。
【0028】
なお、上記の圧縮応力、嵩密度、見かけヤング率、平均円相当径は、例えば、後述する発泡体の製造方法において、無機繊維に対する界面活性処理方法、無機繊維の濃度(含有割合)、発泡倍率、気泡量、気泡径等により調整(制御)できる。
【0029】
本実施形態の多孔体は、好ましくは、常温で、圧縮率80%(好ましくは0〜90%)で圧縮した際の復元率が50%以上である。例えば、60%、70%、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上とできる。上限は限定されないが、通常99%以下である。より好ましくは高温下(450℃)における圧縮率80%(好ましくは0〜90%)で圧縮した際の復元率が50%以上である。例えば、60%、70%、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上とできる。上限は限定されないが、通常99%以下である。
【0030】
本実施形態の多孔体は、好ましくは、常温で、圧縮率40%における各圧縮率で圧縮した際の復元率が87%以上(より好ましくは90%以上)である。上限は限定されないが、通常99%以下である。
【0031】
かかる多孔体では、復元率が高いため、復元性を高くでき変形特性を向上できる。より具体的には、多孔体が取り付けられる被取付部に対して馴染み易く多孔体と被取付部との間の隙間を抑制して常温から高温下におけるシール性を確保及び向上できる。
【0032】
多孔体は上記の特性を任意に組み合わせて有することができる。また多孔体は断熱性にも優れる。
【0033】
以上のような多孔体は、後述の方法で気泡を形成して製造する。そのため、上記実施形態の多孔体は、気泡形成を助長するためのフッ素雲母や、アラビアゴムを含まないで構成されることができる。なお、異なる実施形態として、多孔体はフッ素雲母やアラビアゴムを含んで構成されることも可能である。
【0034】
次に、上記実施形態の防音材(多孔体)は以下の方法で製造できる。本製造方法は、無機繊維質発泡体の製造を含み、発泡体の製法は、無機繊維分散液を作成する作成工程と、無機繊維分散液を発泡させる発泡工程と、発泡体を乾燥する脱水工程(分散媒の除去工程)と、結合剤を付与する結合剤付与工程とを含んで構成される。界面活性剤が残留していると結合剤の反応が悪くなる場合は、結合剤の付着を促すために、発泡体を所定温度で焼成を行う焼成工程を、結合剤付与工程の前に追加してもよい。防音材の製造方法は、発泡体に他の層を積層又は被覆する工程を含んでもよい。尚、結合剤は、発泡用の分散液に事前に入れておき、発泡体作成後に熱処理してもよい。
【0035】
前記作成工程の一態様は、無機繊維の表面をアルカリ性又は酸性の処理液に接触させることにより、負又は正に荷電させる荷電ステップと、荷電した無機繊維に界面活性剤を添加させて分散液を作成する界面活性剤添加ステップとを含む。無機繊維の表面を負に荷電させたときは、カチオン性界面活性剤を、又は、無機繊維の表面を正に荷電させたときは、アニオン性界面活性剤を添加することが好ましい。
【0036】
前記荷電ステップでは、アルカリ性又は酸性の処理液を用いてpH調整することにより、無機繊維の表面のゼータ電位を制御する。具体的には、無機繊維の表面のゼータ電位をマイナス又はプラスとする。
【0037】
界面活性剤添加ステップでは、好ましくは、前記荷電した無機繊維に対し、逆符号の親水基を有する界面活性剤を添加し、界面活性剤の親水基側を無機繊維の表面に吸着させて疎水基側を無機繊維の表面と反対側に配置させることで無機繊維(最外面)を疎水化する。このように界面活性剤を無機繊維の表面に吸着させて無機繊維表面を疎水化した状態において、後述の発泡工程によって空気を導入して発泡させると、無機繊維表面の疎水基側に泡の形成が助長されて良好に発泡した発泡体を得ることができる。換言すれば、無機繊維表面のゼータ電位を制御することで、無機繊維に界面活性剤を相互作用させて繊維を疎水化させ、無機繊維の周りに泡を係止(付着)し易くして発泡させた発泡体(スポンジ構造)を形成する。
【0038】
なお、前記無機繊維にはセラミック繊維、生体溶解性繊維(アルカリアースシリケート繊維、ロックウール等)、ガラス繊維等を用いることができる。また、前記処理液には、水に溶解してpHを変化させることができるものであればよく、無機化合物の酸又は塩基、有機化合物の酸又は塩基を用いることができる。無機繊維の表面のゼータ電位は、0でない値を示すこと、例えば−5mV〜−70mV、−7mV〜−60mV、−10mV〜−45mV、+5mV〜+65mV、+7mV〜+60mV又は、+10mV〜+45mVとする。繊維の種類により、所定のゼータ電位にするためのpHは異なるため、pHを一義的に特定することはできないが、例えば、ゼータ電位が0となるpHが7である繊維を用いる場合(等電点pHが7)、pH7より高いpHで負に荷電し、pH7より低いpHで正に荷電させることができる。また、例えば、ゼータ電位が0となるpHが2である繊維を用いる場合(等電点pHが2)、pH2より高いpHで負に荷電し、pH2より低いpHで正に荷電させることができる。尚、ゼータ電位は、所定のpHに調整した水系の分散媒中に繊維を分散させ、繊維の汎用ゼータ電位計(例えばModelFPA、AFG Analytik社製)を用いて測定することで得られる。
【0039】
また、前記作成工程における荷電ステップと界面活性剤添加ステップとは経時的又は同時に実施し得る。荷電ステップと界面活性剤添加ステップとを同時に実施する場合、処理液、無機繊維及び界面活性剤を一緒に混ぜることができる。一方、荷電ステップと界面活性剤添加ステップとを経時的に実施する場合、無機繊維を、予め処理液で開繊、分散して荷電し、その後、界面活性剤と混ぜることができる。また、前記作成工程の他の態様としては、界面活性剤を用いることなく、両親媒性物質、疎水性の官能基を有するシランカップリング剤、疎水性の官能基を有するチタンカップリング剤等による表面処理によって少なくとも表面を疎水化した無機繊維を分散液(分散媒)に入れて作成することも可能である。尚、この工程のカップリング剤は発泡体を形成するために疎水化の状態にするためのものである。後の結合剤付与工程で用いるカップリング剤は発泡体の形態が水に濡れることにより崩壊することを防止するためのものである。
【0040】
分散液における界面活性剤の量は無機繊維より適宜調整できるが、例えば、ガラス繊維100重量部に対し、界面活性剤を0.01〜1.0重量部としてよい。前記界面活性剤は、好ましくは0.1〜0.8重量部、より好ましくは0.2〜0.7重量部とすることが可能である。尚、界面活性剤の添加量は、少なすぎると無機繊維の表面を十分に疎水化できず発泡性が低下する恐れがあり、一方で界面活性剤の量が多すぎると界面活性剤同士が付着し無機繊維の表面を十分に疎水化できない恐れがある点に鑑みて調整され得る。
【0041】
また、分散液は、有機結合剤(樹脂エマルジョン、ゴム(エラストマー)成分(アラビアゴム等)又はマグネシウム酸化物若しくは水酸化物を含まないで構成され得る。
【0042】
前記発泡工程では、処理液と無機繊維と界面活性剤とが混合されてなる無機繊維分散液に気泡供給装置から空気(気泡)を供給して発泡させる。なお、気泡供給装置を用いることなく、攪拌によって無機繊維分散液に空気(気泡)を供給して発泡させてもよい。かかる気泡供給装置や攪拌によって、気泡倍率、気泡量、気泡径を調整できる。
【0043】
前記脱水工程では、発泡体を所定時間(例えば4時間)、常温又は常温外の所定温度下で分散液に含まれていた分散媒を乾燥(自然乾燥を含む)することによって脱水する。
【0044】
前記焼成工程では、発泡体を高温度(例えば450℃)で焼成し、界面活性剤を除去する。なお、焼成工程は、前記脱水工程と同時に実施することが可能である。
【0045】
前記結合剤付与工程に用いる結合剤として、繊維同士を結合する結合剤を用いることができ、例えば、カップリング剤、無機結合剤等である。カップリング剤を用いるとき、発泡体と、カップリング剤と水蒸気を反応させて付与する。具体的には、カップリング剤を加熱して発生した蒸気を発泡体に付着させて、水蒸気と反応させる。水蒸気で処理することにより、カップリング剤が加水分解、脱水縮合されて、発泡体に付着する。例えば、閉鎖容器(外から容器内に気体は混入しないが、内部の加熱による圧力の上昇が可能な程度の密閉容器)内で発泡体とカップリング剤蒸気を接触させる。接触後、閉鎖容器に水を入れて水蒸気を発生させてカップリング剤と反応させる。尚、カップリング剤を多く付与させるときは、前記の処理に代えて又は前記の処理に加えて、発泡体にカップリング剤を直接含浸させて加熱してもよい。その後水蒸気と接触させる。
【0046】
無機結合剤の例として、SiO
2系(SiO
2粒子、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、Al
2O
3系(Al
2O
3粒子、ポリ塩化アルミニウム等の塩基性酸アルミニウム等)、リン酸塩、粘土鉱物(合成、天然)等が挙げられる。
カップリング剤の例として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤としてメチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
結合剤の量は無機繊維により適宜調整でき限定されないが、例えば、1〜10重量%程度である。
【0048】
多孔体は、無機繊維、界面活性剤及び結合剤、又は無機繊維及び結合剤から本質的になってもよく、これらのみからなってもよい。ここで本質的になるとは95重量%以上、98重量%以上又は99重量%以上がこれらからなることをいう。
【0049】
次に、本発明の第2の態様の防音材の実施形態について説明する。
本実施形態の防音材は、無機繊維から構成されるセル構造を有する多孔体からなる。
【0050】
一般に、繊維質防音材の吸音率は equivalent fluid model の一つであるLimp frameモデル(R. Panneton, Journal of Acoustical Society of America, Vol.122, Issue 6(2007))で予測できることが知られている。Limp frameモデルは、7つの変数(Biotパラメータ)で防音材の吸音率を規定する。変数は複雑に影響し合うが、無機繊維質防音材では、Biotパラメータのうち、流れ抵抗と嵩密度の影響が大きいことを確認した。具体的には、流れ抵抗と嵩密度を変えてBioモデルに基づき計算した吸音率(計算値)と、実際に製造して測定した吸音率(実測値)を比較した。結果を
図1に示す。
図1から計算値と実測値の相関が高いことが分かる。嵩密度を10kg/m
3又は20kg/m
3に一定にし、流れ抵抗を変えて、吸音率を計算した結果を
図2,3に示す。尚、「aE+b」は「a×10
b」を意味する。また、流れ抵抗を1×10
7Ns/m
4に一定にし、嵩密度を変えて、吸音率を計算した結果を
図4に示す。吸音率のカーブ形状は流れ抵抗や嵩密度の値の変化に従って大きく変動することが分かる。また、
図2,3では、嵩密度が10kg/m
3のときは、流れ抵抗が4×10
5Ns/m
4のとき、最も吸音率が高くなる。また、嵩密度が20kg/m
3のときは、流れ抵抗が1×10
6Ns/m
4のとき、最も吸音率が高くなる。即ち、流れ抵抗には適正値があることが分かる。さらに、
図4から、嵩密度が増えると高い吸音率が低周波数にシフトすることが分かる。
【0051】
以上から、例えば、低周波数で高い吸音率を得るためには、流れ抵抗を適正値に維持しながら、嵩密度を増やせばよいことになる。しかしながら、通常、いわゆるBiesの式(
図5参照)に示されるように、流れ抵抗は、嵩密度と比例する。嵩密度を増やすと流れ抵抗も増えてしまった。
【0052】
本発明者らは、セル径を調整すると、嵩密度が増えても流れ抵抗が従来のように多く増えないことを見い出した。
図5にセル径0.3mmと0.5mmのときの嵩密度と流れ抵抗の実測値を示す。実線は、従来のBiesの式に基づく、セル構造を有さない防音材における、嵩密度と流れ抵抗の関係を示す。即ち、嵩密度が増えれば流れ抵抗も増える。一方、セル構造を有する防音材において、セル径が0.3μmと0.5μmの場合、嵩密度と流れ抵抗は、Biesの式とは異なる関係を有する。即ち、セル径を調整することにより、流れ抵抗を+20〜−50%変えることができる。尚、セルは、無機繊維からなるセル壁に囲まれている。従って、セル構造の多孔体の嵩密度は、セル壁の厚さにより決まると考えられる。即ち、本態様では、セル径を調整することにより、高い吸音率を得るために適した嵩密度、流れ抵抗を有する防音材を得ることができる。
【0053】
上記の知見に基づき、本態様の防音材は、無機繊維を含むセル構造を有する多孔体からなり、以下の特性の有することを特徴とする。
平均セル径:300μm超1000μm以下
嵩密度:7〜24kg/m
3
流れ抵抗:170,000〜2,000,000Ns/m
4
【0054】
平均セル径は400〜1000μmとすることができる。嵩密度は10〜20kg/m
3とすることができる。
例えば、嵩密度が10kg/m
3のとき、周波数3000〜5000Hzにおいて、セル径0.50〜1.0mmが好ましく、セル径0.70〜1.0mmがより好ましい。嵩密度が14kg/m
3のとき、周波数2000〜5000Hzにおいて、セル径0.50〜1.0mmが好ましく、セル径0.70〜1.0mmがより好ましい。嵩密度が20kg/m
3のとき、周波数1000〜4000Hzにおいて、セル径0.50〜1.0mmが好ましく、セル径0.70〜1.0mmがより好ましい。
【0055】
平均セル径、嵩密度及び流れ抵抗は、実施例6記載の方法で測定できる。
図6,7にセル構造を示す。セル構造は、気孔とそれを囲むセル壁が多数連なった構造である。
図6のセル構造の平均セル径は、
図7のセル構造の平均セル径より小さい。
【0056】
本態様の防音材は、軽量であり、繊維密集部と空間部(セル)を含むことにより、優れた吸音性能を有する。
【0057】
本態様で用いる無機繊維、セル構造(多孔体)の好適な構造及び特性は、上述した第1の態様の防音材と同様である。
【0058】
本態様の防音材は、上述した第1の態様の防音材と同様の方法で製造できる。ただし、発泡工程において、処理液と無機繊維と界面活性剤を含む無機繊維分散液に気泡供給装置から空気(気泡)を供給して発泡させるが、気泡供給装置によって、気泡径を調整することにより、セル径を調整できる。
【0059】
本発明の防音材は、多孔体のみから構成してもよいが、他の適当な機能を有する層を含むことができる。他の層は、多孔体の表面の一部又は全部を被覆してもよく、多孔体と積層してもよい。他の層には、遮音層、吸音層、発塵抑制層、接着層等があり、複数の機能を備えてもよい。以下、図面を参照して、他の層を含む防音材の例を説明する。
【0060】
図8(a)に示す防音材1は、多孔体(吸音材)10の一面に遮音層12が設けられ、被覆又は積層している。遮音層12は、樹脂フィルム、ガラスクロス等の軟質の層でもよく、金属板(例えばSUS板、アルミ板)等の硬質の層でもよい。
【0061】
図8(b)に示す防音材2は、多孔体10の一面に遮音層12が設けられ、対向する他の面に、他の吸音層14が設けられている。吸音層14は、吸音性能の更なる向上のため、繊維状物質による多孔体やフォーム材等から構成される。
【0062】
図8(c)に示す防音材3は、多孔体10の一面に遮音層12が設けられ、対向する他の面に発塵抑制層16が設けられている。発塵抑制層16は、繊維質の不織布、ガラスクロス、金属箔、金属板等から構成される。
【0063】
防音材は、同一又は異なる防音材を2以上積層して用いることもできる。例えば、
図8(d)に示す防音材4は、
図8(a)に示す防音材1と
図8(b)に示す防音材2を積層したものである。
【0064】
多孔体に他の層を積層又は被覆する工程では、他の層を接着剤で積層してもよいし、被覆材を加熱し溶着により積層してもよい。
【実施例】
【0065】
以下、具体的な実施例を示すが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0066】
実施例1
マイクロガラス繊維(平均繊維径0.4μm)を、pH10のアンモニア水に濃度0.5重量%となるように分散させて繊維表面のゼータ電位を−55mvに調整して処理した。次に、カチオン性界面活性剤(ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド(商品名;コータミン24P、花王株式会社製))を、繊維100重量部に対して、界面活性剤の固形物換算で0.5重量部添加して、撹拌混合した。このとき空気を取り込み発泡させた。得られた湿潤発泡体を乾燥させ、電気炉を用いて450℃にて1時間処理し、発泡体に付着している界面活性剤を除去した。次に、カップリング剤を付与した。カップリング剤はメチルトリエトキシシラン(商品名;KBE−13、信越化学工業製)を用い、密閉容器内にシランカップリング剤を入れ、160℃程度に加熱し、シランカップリング剤の蒸気を発生させ、発泡体へ4時間処理した。次に、カップリング剤の反応を進行させるため、閉鎖容器内へ水を8g添加し、水蒸気を発生させ、発泡体へ2時間処理した。さらに閉鎖容器内にて、発泡体重量1gあたり10g程度のカップリング剤を直接塗布し、105℃にて4時間加熱した。その後、上記と同様にカップリング剤の半分の質量に相当する水を容器にいれ、105℃にて2時間処理した。常温(20℃)の非圧縮時における発泡体細孔径の平均円相当径は、0.25mm程度であった。
【0067】
得られた発泡体(防音材)の断面の写真を
図9に示す。発泡体について以下の評価をした。結果を表1に示す。なお、得られた発泡体は、下記評価の他、熱伝導率(断熱性)や吸音性についても優れていた。
【0068】
(1)嵩密度と圧縮応力との積算値
下記嵩密度と圧縮応力とを積算して算出した。
(a)嵩密度
作成した発泡体からサンプルを切断し、寸法計測装置(例えばノギス)を用いて、前記サンプルの縦、横、高さの寸法を計測した。次に、前記サンプルの重量を計測し、以下の式により嵩密度を測定した。
嵩密度(g/cm
3)=重量÷縦寸法÷横寸法÷高さ
(b)圧縮応力
以下の式に示すように、試験時のサンプル圧縮時の荷重値を上記サンプル寸法計測により求めた面積(縦寸法と横寸法)で除算して算出した。圧縮時の荷重は、上記の嵩密度と同じようにサンプルの寸法を計測し、このサンプルの厚さを100%として圧縮率を設定(0〜90%)して、材料試験機(オートグラフ、島津製作所)を用いて所定厚さまで圧縮(2mm/min)した際の荷重値とした。
圧縮応力N/m
2=測定荷重(N)÷サンプル面積(m
2)
【0069】
(2)復元率
上記の嵩密度と同じようにサンプルの寸法を計測した。このサンプルの厚さを100%として圧縮率を設定(0〜90%)して、材料試験機(オートグラフ、島津製作所)を用いて所定厚さまで圧縮(2mm/min)した。試験終了後のサンプルの厚さを計測し、以下の式から復元率を算出した。
復元率(%)=圧縮試験後の厚さ÷試験前の厚さ×100
【0070】
(3)細孔径の平均円相当径
作成した発泡体からサンプルを切断し、断面をマイクロスコープ(ハイロックス社製MODEL KH2200)を用いて20倍にて撮影した。撮影した画像内の全細孔(12〜332個)を画像解析ソフトImageProPlus(Media Cybernetics社製)を用いて計測した。計測は、細孔と認められる部分が楕円形状となっていることから、細孔の長径と短径を計測し、断面積を以下の式により算出した。
細孔断面積=長径÷2×短径÷2×π
また、前記断面積から真円相当となる径を円相当径として以下の式により算出した。そして、前記画像内の全細孔についての円相当径の平均を算出した。
円相当細孔径=2×√(細孔断面積÷π)
尚、平均円相当径は、以下の式で求める算術平均細孔径である。
【数1】
(式中、dは円相当径、nは細孔の数である。)
【0071】
(4)見かけヤング率
前記圧縮応力と、サンプルの寸法計測によって計測した歪量とに基づき見かけヤング率を算出した。
【0072】
(5)シール性
発泡体を内径15mm×外形30mmのリング状に打ち抜いてサンプルを作成した。一対の挟持部で、サンプルとスペーサーを挟み、所定の圧縮率(0〜90%)の厚さになるようにボルト締結した。N
2ボンベから差圧計を用いてガス圧を20kPaに調整してN
2ガスを一対の挟持部の一方の内部から試料を貫通するように流した。一対の挟持部の他方の内部に設置した流量計により、系内のN
2ガスの流量を測定した。該測定したN
2ガスの流量を挟持部の他方の断面から流出しているN
2ガスの漏れ量L/min・mmとした。
【0073】
実施例2
セラミック繊維(アルミナ約50重量%、シリカ約50重量%)(平均繊維径2.0μm)を、pH10のアンモニア水に濃度2重量%となるように分散させて繊維表面のゼータ電位を−32mvにした。次に、カチオン性界面活性剤(ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド(商品名;コータミン24P、花王株式会社製))を、繊維100重量部に対して界面活性剤の固形物換算重量で0.5重量部添加して、撹拌混合した。このとき空気を取り込み発泡させた。得られた発泡体を実施例1と同様に乾燥、焼成およびカップリング剤付与処理を行った。常温の非圧縮時における発泡体細孔径の平均円相当径は、0.53mm程度であった。得られた発泡体について実施例1と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0074】
実施例3
実施例1において、カチオン性界面活性剤の代わりに、アニオン性界面活性剤(ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム(商品名;ネオペレックスG65、花王株式会社製))を用いた他は、実施例1と同様にして発泡体を作製して評価した。結果を表3に示す。
【0075】
実施例4
実施例2において、カチオン性界面活性剤の代わりに、アニオン性界面活性剤(ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム(商品名;ネオペレックスG65、花王株式会社製))を用いた他は、実施例2と同様にして発泡体を作製して評価した。結果を表4に示す。
【0076】
比較例1
実施例1と同様に繊維の分散液を作製した上で、繊維表面のゼータ電位調整も発泡操作も行わずに脱水・乾燥を行った。得られた未発泡体(常温の非圧縮時)の細孔径の平均円相当径は、143μm程度であった。
得られた未発泡体の断面の写真を
図10に示す。さらに未発泡体について実施例1と同様に評価をした。結果を表5に示す。
【0077】
比較例2
実施例1において、カップリング剤を付与しなかった他は、実施例1と同様にして発泡体を作製した。得られた発泡体は脆く、評価できなかった。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
実施例5
実施例1において、マイクロガラス繊維を、pH3の酢酸溶液(濃度0.3重量%)に分散させてゼータ電位を−38mVとし、カップリング剤としてトリメチルシラン(CH
3SiO
3/2)を用いた他は、実施例1と同様にして発泡体(嵩密度10kg/m
3)を作製した。
【0084】
得られた発泡体から、CO
2レーザー加工機(コマックス社LASER MAN A−2)を用いて直径29mm、厚さ10mmの吸音率評価用のサンプルを切断した。JIS A 1405−2(垂直入射吸音率、背面空気層無し)に準じて吸音率測定システム(ブリュエル・ケアー社測定システム)を用いて吸音率を測定した(吸音率測定システム:ソフトウエア:MS1021、音響管:4206型、パワーアンプ:4206型、PULSE:フロントエンド)。結果を
図11に示す。
【0085】
比較例3
実施例5と同じマイクロガラス繊維とカチオン性界面活性剤を含む酢酸分散液を、実施例5とは異なり発泡させずに、嵩密度が10kg/m
3となるように水中での繊維の分散体積を調整して、−10℃にて凍結させ真空中(10Pa程度)にて水を昇華させて乾燥させた。その後は実施例5と同様に加熱して界面活性剤を除去しカップリング剤処理して、マット状非スポンジ状構造体(非発泡体)(嵩密度10kg/m
3)を作製した。実施例5と同様にして吸音率を測定した。結果を
図11に示す。
【0086】
実施例6
実施例1において、発泡工程で、ノズルを用いて、ノズルから出る泡の大きさを変えて、異なるセル径の発泡体を得た他は、実施例1と同様にして発泡体を得た。
【0087】
得られた発泡体について、以下の評価をした。平均セル径が270〜510μm、嵩密度が6.8〜20.6kg/m
3において、流れ抵抗の測定を行った。結果を表6に示す。また、流れ抵抗の測定結果から、セル径と嵩密度の関係式を導いた。関係式を以下に示す。式の各係数C1,C2,C3は測定結果から多重回帰分析を用いて求めた。計算された流れ抵抗を表6に合わせて示す。流れ抵抗の実測値と計算値との関係を
図12に示す。
σ=C1×ρ
C2×D
C3
ただし、σは流れ抵抗[Ns/m
4]、ρは防音材の嵩密度[kg/m
3]、Dはセル径[m],係数C1,C2,C3は2.49,0.98,−1.34である。
図12から流れ抵抗の計算値は実測値を良好に予測していることがわかった。平均セル径が400〜1000μm、嵩密度が10〜20kg/m
3において、上記の式により計算した流れ抵抗から、吸音率を計算した。結果を
図13〜15に示す。発泡体は優れた吸音率を有することが分かる。特に、
図13から、嵩密度が10kg/m
3のとき、周波数3000〜5000Hzにおいて、セル径が0.70〜1.0mmのとき吸音率は良くなることが分かる。
図14から、嵩密度が14kg/m
3のとき、周波数2000〜5000Hzにおいて、セル径が0.70〜1.0mmのとき吸音率は良くなることが分かる。
図15から、嵩密度が20kg/m
3のとき、周波数1000〜4000Hzにおいて、セル径が0.70〜1.0mmのとき吸音率は良くなることが分かる。
【0088】
・平均セル径(平均円相当径)
作成した発泡体からサンプルを切断し、X線マイクロCTスキャナ(BRUKER社製SkyScan1272)を用いて、解像度5μm/pixelにて線透過像を撮影した。得られたX線透過像から、付属のソフト(NRrecon及びDATAVIEWER)を用いて3次元像を合成し、サンプル内部の断面像を作成した。得られた断面像の全細孔を実施例1と同様にして計測し円相当径の平均を算出した。
【0089】
・嵩密度
実施例1と同じ方法で測定した。
【0090】
・流れ抵抗
流れ抵抗とは、防音材料中の空気の流れにくさを表すBiotパラメータである。流れ抵抗の測定は、防音材料に空気を流した時の材料前後の差圧を測定することによって行われ、次式から流れ抵抗を求めることができる。
σ=ΔP/(V・L)
なお、σは材料の流れ抵抗(N・s/m
4)、Vは材料中の空気の流速(m/s)、ΔPは材料前後の差圧(Pa)、Lは材料の厚さ(m)である。
流れ抵抗は、例えば、流れ抵抗測定装置(製品名:AirReSys、日本音響エンジニアリング株式会社)によって測定することができる。
【0091】
・吸音率
繊維質防音材の吸音率予測計算にはequivalent fluid modelの一つであるLimp frameモデル(R.Panneton,Journal of Acoustical Society of America,Vol.122,Issue 6(2007))が有効であることがよく知られている。したがって、吸音率はLimp frameモデルで計算した。式を以下に示す。
【数2】
ただし、α
0は背後剛壁における垂直入射吸音率、Z
0は背後剛壁における音響インピーダンス、Z
Cは防音材の特性インピーダンス、Γは防音材の伝搬定数、Lは防音材の厚さ、ωは音波の角速度、ρ
effは防音材中の実行密度、K
fは防音材中の実行体積弾性率、φは気孔率、σは防音材の流れ抵抗、Λは防音材の粘性特性長、Λ’は防音材の熱的特性長、αは防音材の迷路度で繊維質防音材の場合はほぼ1、ρは防音材の嵩密度、ρsは防音材の繊維の真密度、B
2は空気のPrandtl数で0.71、ηは空気の粘度で1.84×10
−5[Ns/m
2]、ρ0は空気の密度で1.2[kg/m
3]、c
0は空気の音速で342[m/s]、γは空気の比熱比で1.4、P
0は空気の圧力で常圧を想定して1.013×10
5[Pa]、jは虚数単位である。
【0092】
熱的特性長Λ’については、次式で定義されている。
【数3】
ただし、Aは防音材中の繊維の表面積、Vは防音材中の空気の体積である。防音材が繊維のみで構成されている場合、繊維径dを用いると、下記のように書き換えられる。
【数4】
粘性特性長Λについては、次式のAllardの式を用いた。
【数5】
【0093】
【表6】
【0094】
比較例4
嵩密度が10,14,20kg/m
3となるように比較例3と同様にして、セル構造を有さない非発泡体を製造した。これらの吸音率の計算値を
図13〜15に合わせて示す。流れ抵抗は次式に示すBiesの式で計算した。
σ=3.19×10
−9×ρ
1.53×d
−2
ただし、σは流れ抵抗[Ns/m
4]、ρは防音材の嵩密度[kg/m
3]、dは繊維径[m]である。