特許第6703110号(P6703110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703110
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】金属ナノ粒子分散系
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20200525BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20200525BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20200525BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C09D17/00ZNM
   C09D11/52
   H01B1/22 A
   H01B13/00 503D
【請求項の数】5
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2018-532081(P2018-532081)
(86)(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公表番号】特表2019-505621(P2019-505621A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】EP2016080375
(87)【国際公開番号】WO2017102574
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年6月18日
(31)【優先権主張番号】15200995.7
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504376795
【氏名又は名称】アグフア−ゲヴエルト
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボレン,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ファン・アールト,フベルトゥス
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/095611(WO,A1)
【文献】 特開2005−120225(JP,A)
【文献】 特表2011−525034(JP,A)
【文献】 特開平09−194659(JP,A)
【文献】 特表2002−542369(JP,A)
【文献】 特開2008−094997(JP,A)
【文献】 米国特許第06013203(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0169122(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101137730(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
C09D 11/52
H01B 1/22
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ粒子、結合剤及び液体担体を含む金属ナノ粒子分散系であって、該結合剤が塩化ビニルとヒドロキシ官能基性モノマーのコポリマーであり且つ該液体担体がメチル−5−(ジメチルアミノ)−2−メチル−5−オキソペンタノエート又はメチルブチロラクトンを含むことを特徴とする、金属ナノ粒子分散系。
【請求項2】
前記ヒドロキシル官能基性モノマーは、ビニルアルコール、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートからなる群から選ばれる請求項1に記載の金属ナノ粒子分散系。
【請求項3】
前記塩化ビニルの量は、コポリマーの合計重量に対して90重量%より多いかもしくはそれに等しい、請求項1に記載の金属ナノ粒子分散系。
【請求項4】
前記コポリマーの量は分散系の合計量に対して0.25〜5.0重量%である、請求項1に記載の金属ナノ粒子分散系。
【請求項5】
請求項1に記載の金属ナノ粒子分散系を基材上に適用する段階を含み、続いて焼結段階を行う、金属層又はパターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は金属ナノ粒子分散系、例えばナノ銀分散系ならびにそれから製造される導電性インク及びペーストに関する。本発明は金属ナノ粒子分散系の調製方法ならびに穏やかな硬化条件で金属ナノ粒子分散系から形成される導電性層又はパターンにも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
金属ナノ粒子を含む金属印刷もしくはコーティング流体への興味は、所与の金属のバルク特性と比較されるときのそれらの独特の性質の故に、この10年の間に増した。例えば金属ナノ粒子の融点は粒度の低下とともに低下し、それらをプリンテッドエレクトロニクス、電気化学、光学、磁気及び生物学的用途のために興味深いものとする。
【0003】
例えばインクジェット印刷により印刷され得るか又は高速でコーティングされ得る安定且つ濃い金属印刷もしくはコーティング流体の調製は、それが低コストでの電子機器の製造を可能にするので非常に興味深い。
【0004】
金属印刷もしくはコーティング流体は、典型的には金属ナノ粒子及び分散媒を含む金属ナノ粒子分散系である。そのような金属ナノ粒子分散系を印刷又はコーティング流体として直接用いることができる。しかしながら、得られる金属印刷もしくはコーティング流体の性質を最適化するために、多くの場合に追加の成分を金属ナノ粒子分散系に加える。
【0005】
金属ナノ粒子の調製は、例えば非特許文献1に開示されているいわゆるポリオール合成により、ポリオール合成法の派生法により、又は種々の還元剤の存在下における金属塩のin situ還元により、水中又は有機溶媒中で行われ得る。そのような方法は例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17に開示される。
【0006】
安定な金属印刷もしくはコーティング流体を得るために、金属ナノ粒子の調製において多くの場合に高分子分散剤が用いられる。上記で言及した銀ナノ粒子の調製のためのポリオール合成は、典型的にポリビニルピロリドン(PVP)の存在下で行われる。安定でない金属ナノ粒子分散系は不可逆的な相分離を生じ得、それは中でもコーティングもしくはプリントヘッドの目詰まりを引き起こす。金属ナノ粒子の凝集は、導電率の低下も生じ得る。
【0007】
高分子分散剤は、典型的にアクリル酸、メタクリル酸、ビニルピロリジノン、ビニルブチラール、酢酸ビニル又はビニルアルコールモノマーから製造されるホモ−又はコポリマーである。
【0008】
典型的に、基材上に金属印刷またはコーティング流体を適用した後、硬化段階とも呼ばれる高温における焼結段階が行われ、適用される層のパターンの導電率を誘導/増強する。金属印刷もしくはコーティング流体の有機成分、例えば高分子分散剤は焼結効率及びかくして適用される層のパターンの導電率を低下させ得る。この理由で、有機成分を分解するためにより高い焼結温度及びより長い焼結時間が多くの場合に必要である。
【0009】
上記のような典型的な高分子分散剤は、少なくとも350℃の完全な分解温度を特徴とする。従ってそのような高分子分散剤を含む金属印刷もしくはコーティング流体を用いてコーティング又は印刷された層又はパターンは、確実にほとんどの高分子分散剤を分解するために、典型的に高められた温度における焼結段階を必要とする。
【0010】
そのような高い焼結温度は、比較的低いガラス転移温度を有するポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリカーボネートのような通常のポリマー箔と適合しない。これは選択をポリイミドのようなより高価なポリマーに制限する。
【0011】
かくして導電性層又はパターンを得るために必要な焼結温度を下げることに、興味がある。
【0012】
特許文献18は、熱重量分析により測定される時に300℃より低い温度で95重量%が分解する高分子分散剤を開示する。そのような高分子分散剤を含む金属印刷もしくはコーティング流体の使用により、焼結温度を下げ且つ時間を短縮することができる。特許文献19及び特許文献20において、焼結温度をさらに低下させるためにいわゆる焼結添加剤が特許文献18の高分子分散剤と組み合わせて用いられる。
【0013】
特許文献21は、特定の分散媒、例えば2−ピロリドンを含み、高分子分散剤を使用せずにより安定な分散系を生ずる金属ナノ粒子分散系を開示する。
【0014】
特許文献22は、特定の分散媒、例えば2−ピロリドン及びカルボン酸の存在下における金属ナノ粒子分散系の調製方法を開示する。
【0015】
導電性インクと関連する問題は、多くの場合にそれらの劣った接着性である。
【0016】
特許文献23は、導電性材料及び塩化ビニル/酢酸ビニル/ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートコポリマー樹脂を含む導電性インクを開示する。インクは紙及び種々のプラスチックフィルムのような種々の基材への優れた接着性を有する。
【0017】
特許文献24は、基材上に塗着させるための(a)反応性有機媒体、(b)粉末の金属フレーク及び(c)接着促進添加剤の混合物を含む導電性インク組成物を開示する。接着促進添加剤は、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン塩化ビニル、ポリエステル、それらのコポリマーから選ばれるポリマー又は第1級ジアミンの場合がある。
【0018】
特許文献25は、安定化されたサブミクロン銀粒子、熱可塑性樹脂及び場合により有機希釈剤を含む組成物を開示する。熱可塑性樹脂は中でも塩化ビニリデン、塩化ビニル、アクリロニトリル又はアルキルアクリレートを含むビニルコポリマーの場合がある。
【0019】
ナノ銀インクは、典型的に種々の基材と組み合わせて用いられるので、種々の基材へのナノ銀インクの接着性をさらに向上させる必要がまだある。
【0020】
スクリーン印刷の間に、ナノ銀インクが一定時間経過後に、用いられているスクリーン印刷篩(seeve)上のスクリーンステンシルの膨潤により表面粗さの変化を引き起こし得ることも観察された。これは印刷の質の劣化を生じ得る。
【0021】
スクリーン印刷の間に、ナノ銀インクが、用いられているスクリーン印刷篩上のスクリーンエマルション又はスクリーンキャピラリーフィルムを、印刷されている基材に粘着させ得ることも観察された。これも基材とスクリーンステンシルの分離が困難なために印刷の質の劣化を生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第2010143591号明細書
【特許文献2】米国特許第2009142482号明細書
【特許文献3】米国特許第20060264518号明細書
【特許文献4】欧州特許第A2147733号明細書
【特許文献5】欧州特許第A2139007号明細書
【特許文献6】欧州特許第A803551号明細書
【特許文献7】欧州特許第A2012952号明細書
【特許文献8】欧州特許第A2030706号明細書
【特許文献9】欧州特許第A1683592号明細書
【特許文献10】欧州特許第A166617号明細書
【特許文献11】欧州特許第A2119747号明細書
【特許文献12】欧州特許第A2087490号明細書
【特許文献13】欧州特許第A2010314号明細書
【特許文献14】国際公開第2008/151066号パンフレット
【特許文献15】国際公開第2006/076603号パンフレット
【特許文献16】国際公開第2009/152388号パンフレット
【特許文献17】国際公開第2009/157393号パンフレット
【特許文献18】欧州特許第A2468827号明細書
【特許文献19】欧州特許第A2608218号明細書
【特許文献20】欧州特許第A2608217号明細書
【特許文献21】欧州特許第A2671927号明細書
【特許文献22】欧州特許第A2781562号明細書
【特許文献23】欧州特許第1860163号明細書
【特許文献24】国際公開第2004/069941号パンフレット
【特許文献25】国際公開第2015/023370号パンフレット
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】‘Approaches to the synthesis and Characterization of Spherical and Anisotropic Silver Nanomaterials’,Metallic Nanomaterials Vol.1.,Edited by Challa S.S.R.Kumar,Wiley−VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,Weinheim
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、種々の基材への接着性が改善された高導電性のコーティング又はパターンを得ることができる安定な金属ナノ粒子分散系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的は、請求項1で定義される金属ナノ粒子分散系により実現される。
【0026】
本発明のさらなる利点及び態様は、以下の説明及び従属請求項から明らかになるであろう。
【0027】
発明の詳細な記述
定義
本明細書で用いられる場合、高分子支持体及び箔という用語は、自立性のポリマーに基づくシートを意味し、それは1つもしくはそれより多い接着層、例えば下塗り層を伴っている場合がある。支持体及び箔は通常、押出を介して製造される。
【0028】
本明細書で用いられる場合、層という用語は自立性ではないと考えられ、(高分子)支持体又は箔の上にそれをコーティング又は噴霧することにより製造される。
【0029】
PETはポリエチレンテレフタレートに関する略語である。
【0030】
アルキルという用語は、アルキル基中の炭素原子のそれぞれの数に可能なすべての変形、すなわちメチル、エチル、3個の炭素原子に関して:n−プロピル及びイソプロピル;4個の炭素原子に関して:n−ブチル、イソブチル及び第3級−ブチル;5個の炭素原子に関して:n−ペンチル、1,1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピル及び2−メチル−ブチルなどを意味する。
【0031】
他に特定しなければ、置換もしくは非置換アルキル基は、好ましくはC1〜C6−アルキル基である。
【0032】
他に特定しなければ、置換もしくは非置換アルケニル基は、好ましくはC2〜C6−アルケニル基である。
【0033】
他に特定しなければ、置換もしくは非置換アルキニル基は、好ましくはC2〜C6−アルキニル基である。
【0034】
他に特定しなければ、置換もしくは非置換アラルキル基は、好ましくは1、2、3個又はそれより多いC1〜C6−アルキル基を含むフェニル又はナフチル基である。
【0035】
他に特定しなければ、置換もしくは非置換アルカリール基は、好ましくはアリール基、好ましくはフェニル基又はナフチル基を含むC7〜C6−アルキル基である。
【0036】
他に特定しなければ、置換もしくは非置換アリール基は、好ましくは置換もしくは非置換フェニル基又はナフチル基である。
【0037】
環式基は少なくとも1個の環構造を含み、単環式又は多環式基であることができ、1個の環又は縮合した1個より多くの環を意味する。
【0038】
複素環式基は、その環のメンバーとして少なくとも2種類の元素の原子を有する環式基である。複素環式基の反対語は同素環式基であり、その環構造は炭素のみから作られている。他に特定しなければ、置換もしくは非置換複素環式基は、好ましくは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子又はそれらの組み合わせから選ばれる1、2、3又は4個のヘテロ原子により置換された好ましくは5−もしくは6−員環である。
【0039】
脂環式基は、環原子が炭素原子からなる非−芳香族同素環式基である。
【0040】
ヘテロアリール基という用語は、環構造中に炭素原子ならびに窒素、酸素、セレン及び硫黄から独立して選ばれる1個もしくはそれより多いヘテロ原子、好ましくは1〜4個のヘテロ原子を含む単環式もしくは多環式芳香環を意味する。ヘテロアリール基の好ましい例にはピリジニル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジル、トリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、(1,2,3,)−及び(1,2,4)−トリアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル及びオキサゾリルが含まれるが、これらに限られない。ヘテロアリール基は非置換であるか、又は1、2個もしくはそれより多い適した置換基で置換されていることができる。好ましくはヘテロアリール基は単環式環であり、ここで環は1〜5個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含む。
【0041】
例えば置換されたアルキル基における置換されたという用語は、アルキル基が通常そのような基中に存在する原子、すなわち炭素及び水素以外の他の原子により置換され得ることを意味する。例えば置換されたアルキル基はハロゲン原子又はチオール基を含む場合がある。非置換アルキル基は炭素原子及び水素原子のみを含有する。
【0042】
他に特定されなければ、置換されたアルキル基、置換されたアルケニル基、置換されたアルキニル基、置換されたアラルキル基、置換されたアルカリール基、置換されたアリール基、置換されたヘテロアリール基及び置換された複素環式基は、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、1−イソブチル、2−イソブチル及び第3級−ブチル、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、スルホンアミド、−Cl、−Br、−I、−OH、−SH、−CN及び−NO2からなる群から選ばれる1個もしくはそれより多い置換基により置換されている。
【0043】
金属ナノ粒子分散系
本発明の金属ナノ粒子分散系は金属ナノ粒子、結合剤及び液体担体を含み、結合剤が塩化ビニルとヒドロキシ官能基性モノマーのコポリマーであることを特徴とする。
【0044】
金属ナノ粒子分散系はさらに界面活性剤及びその性質をさらに最適化するための他の添
加剤を含む場合がある。
【0045】
結合剤
金属ナノ粒子分散系は金属ナノ粒子、結合剤及び液体担体を含み、結合剤が塩化ビニルとヒドロキシ官能基性モノマーのコポリマーであることを特徴とする。
【0046】
ヒドロキシル官能基性モノマーは、好ましくは2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1−ヒドロキシ−2−プロピルアクリレート、3−メチル−3−ブテン−1−オール、2−メチル−2−プロペン酸2−ヒドロキシプロピルエステル、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ(エチレンオキシド)モノメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、1,2−プロピレングリコールメタクリレート、2,3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、2−プロペン酸5−ヒドロキシペンチルエステル、2−メチル−2−プロペン酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエステル、1−ヒドロキシ−2−プロペン酸1−メチルエチルエステル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−ブタンジオールモノビニルエーテル、ポリ(ε−カプロラクトン)ヒドロキシエチルメタクリレートエステル、ポリ(エチレンオキシド)モノメタクリレート、2−メチル−2−プロペン酸2,5−ジヒドロキシペンチルエステル、2−メチル−2−プロペン酸5,6−ジヒドロキシヘキシルエステル、1,6−ヘキサンジオールモノメタクリレート、1,4−ジデオキシ−ペンチトール、5−(2−メチル−2−プロペノエート)、2−プロペン酸2,4−ジヒドロキシブチルエステル、2−プロペン酸3,4−ジヒドロキシブチルエステル、2−メチル−2−プロペン酸2−ヒドロキシブチルエステル、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−プロペン酸2,4−ジヒドロキシブチルエステル、イソプロペニルアルコールからなる群から選ばれる。
【0047】
ヒドロキシル官能基性モノマーは、最も好ましくはビニルアルコール、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1−ヒドロキシ−2−プロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートである。
【0048】
塩化ビニルとヒドロキシ官能基性モノマーのコポリマーの例はクロロエチレン−酢酸ビニル−ビニルアルコールコポリマー、ビニルアルコール−塩化ビニルコポリマー、2−ヒドロキシプロピルアクリレート−塩化ビニルポリマー、プロパンジオールモノアクリレート−塩化ビニルコポリマー、酢酸ビニル−塩化ビニル−2−ヒドロキシプロピルアクリレートコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレート−塩化ビニルコポリマー、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−塩化ビニルコポリマーである。
【0049】
特定の好ましいコポリマーは、塩化ビニル、酢酸ビニル及びヒドロキシ官能基性モノマーのコポリマーである。
【0050】
塩化ビニルの量は、好ましくはコポリマーの合計重量に対して90重量%より多いかそれに等しい。
【0051】
ポリスチレン標準及び溶離剤としてTHFを用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される塩化ビニルとヒドロキシ官能基性モノマーのコポリマーの分子量(MW)は、好ましくは15000より大きいかもしくはそれに等しく、より好ましくは20000より大きいかもしくはそれに等しい。
【0052】
ISO 1628−2(1998)に従って測定される塩化ビニルとヒドロキシ官能基
性モノマーのコポリマーのK値は、好ましくは40より大きいかもしくはそれに等しく、より好ましくは45より大きいかもしくはそれに等しい。
【0053】
適したコポリマーは例えばすべてShin Etsuから商業的に入手可能である92重量%塩化ビニル−3重量%酢酸ビニル−5重量%ビニルアルコールのコポリマーであるSolbin(登録商標) A、93重量%塩化ビニル−2重量%酢酸ビニル−5重量%ビニルアルコールのコポリマーであるSolbin(登録商標) AL、83重量%塩化ビニル−4重量%酢酸ビニル−13重量%ヒドロキシアルキルアクリレートのコポリマーであるSolbin(登録商標) TA2、83重量%塩化ビニル−4重量%酢酸ビニル−13重量%ヒドロキシアルキルアクリレートのコポリマーであるSolbin(登録商標) TA3、91重量%塩化ビニル−2重量%酢酸ビニル−7重量%ビニルアルコールのコポリマーであるSolbin(登録商標) TAO;すべてWacker Chemieから商業的に入手可能であるVinnol(登録商標) E15/40A、Vinnol(登録商標) E 15/45A、Vinnol(登録商標) E 15/48A、Vinnol(登録商標) E 22/48A及びVinnol(登録商標) H 5/50A;すべてYantai Suny Chem Internationalから商業的に入手可能な90重量%塩化ビニル−4重量%酢酸ビニル−6重量%ビニルアルコールのコポリマーであるSunvac(登録商標) GH、81重量%塩化ビニル−4重量%酢酸ビニル−15重量%ヒドロキシアルキルアクリレートのコポリマーであるSunvac(登録商標) GF及び81重量%塩化ビニル−4重量%酢酸ビニル−15重量%ヒドロキシアルキルアクリレートのコポリマーであるSunvac(登録商標) OH;Sekisuiから商業的に入手可能なS−Lec E4−HA;ならびにWuxi Honghui Chemicalから商業的に入手可能なVROH、LPOH及びUMOHである。
【0054】
金属ナノ粒子分散系中の結合剤の量は、好ましくは分散系の合計重量に対して0.1〜15重量%、より好ましくは0.2〜7.5重量%、最も好ましくは0.25〜5重量%であり、特に好ましいのは0.5〜3.0重量%である。結合剤の量が多すぎると、例えば分散系の合計重量に対して15重量%より多いと、金属ナノ粒子分散系の導電率が低下する傾向がある。結合剤の量が少なすぎると、例えば分散系の合計重量に対して0.1重量%より少ないと、接着性における向上が観察され得ない。
【0055】
金属ナノ粒子
本発明の金属ナノ粒子分散系は、金属ナノ粒子を含む。
【0056】
金属ナノ粒子は1種もしくはそれより多い金属を元素形態又は合金形態で含む。元素は好ましくは銀、金、銅、ニッケル、コバルト、モリブデン、パラジウム、白金、錫、亜鉛、チタン、クロム、タンタル、タングステン、鉄、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、アルミニウム及び鉛からなる群から選ばれる。銀、銅、モリブデン、アルミニウム、金、銅又はそれらの組み合わせに基づく金属ナノ粒子は特に好ましい。最も好ましいのは銀に基づく金属ナノ粒子である。
【0057】
「ナノ粒子」という用語は、100nmより小さい、好ましくは50nmより小さい、より好ましくは30nmより小さい、最も好ましくは20nmより小さい平均粒度又は平均粒径を有する分散された粒子を指す。言及される平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて決定される。例えば銀インクのような金属ナノ粒子分散系は一次粒子及び二次粒子を含むことができる。後者は凝集した一次粒子の場合がある。上記で言及した粒径は、一次粒子の粒径である。
【0058】
金属ナノ粒子分散系は、好ましくは分散系の合計重量に対して少なくとも5重量%、よ
り好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも15重量%、特に好ましくは少なくとも20重量%の金属ナノ粒子を含む。
【0059】
液体担体
金属ナノ粒子分散系は液体担体を含む。
【0060】
液体担体は、好ましくは有機溶媒である。有機溶媒はアルコール、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、ジメチルスルホキシド(DMSO)、高級脂肪酸、カルビトール、セロソルブ及び高級脂肪酸エステルから選ばれる場合がある。
【0061】
適したアルコールにはメタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ブタノール、t−ブタノールが含まれる。
【0062】
適した芳香族炭化水素にはトルエン及びキシレンが含まれる。
【0063】
適したケトンにはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2,4−ペンタンジオン及びヘキサ−フルオロアセトンが含まれる。
【0064】
グリコール、グリコールエーテル、N,N−ジメチル−アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドも用いられ得る。
【0065】
金属ナノ粒子分散系の性質を最適化するために有機溶媒の混合物を用いることができる。
【0066】
好ましい溶媒は高沸点溶媒である。本明細書で言及する高沸点有機溶媒は、水の沸点より高い(>100℃)沸点を有する溶媒である。
【0067】
好ましい高沸点溶媒を以下の表に示す。
【0068】
【表1-1】
【0069】
【表1-2】
【0070】
導電性インクジェットインク中で用いられる特に好ましい高沸点溶媒は、2−フェノキシ−エタノール、プロピレンカーボネート、n−ブタノール、ガンマ−ブチロ−ラクトン及びそれらの混合物である。
【0071】
導電性スクリーン印刷インク中で用いられる特に好ましい高沸点溶媒は、ジメチルスルホキシド、2−ブトキシエタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート及びそれらの混合物である。
【0072】
導電性フレキソ及びグラビア印刷インク中で用いられる特に好ましい高沸点溶媒は、メチルイソブチルケトン、2−ブトキシ−エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びそれらの混合物である。
【0073】
液体担体はナノ粒子の調製法中で用いられる溶媒、例えば欧州特許第A2671927号明細書及び欧州特許第A2781562号明細書に開示されている方法において用いられるもの、例えば2−ピロリドンを含む場合もある。
【0074】
液体担体がメチル−5−(ジメチルアミノ)−2−メチル−5−オキソペンタノエート(RhodiaからRhodasolv Polarcleanとして商業的に入手可能)又はメチルブチロラクトンを含む銀インクは向上した粘着行動及び向上したワニス安定性(varnish stability)を有することが観察された。
【0075】
液体担体の量は印刷もしくはコーティング流体の所望の粘度に依存する。液体担体の量は、金属ナノ粒子分散系の合計重量に対して好ましくは95重量%より少なく、より好ましくは90重量%より少なく、最も好ましくは85重量%より少ない。
【0076】
界面活性剤
金属ナノ粒子分散系は好ましくは界面活性剤を含む。種々の界面活性剤を用いることができる。しかしながら、Disperbyk 2151、Disperbyk 2025及びDisperbyk 2155からなる群から選ばれる界面活性剤を金属ナノ粒子分散系に加えることは、特にITO(インジウム錫酸化物)基材上の分散系の接着性のさらなる向上を生ずることが観察された。Disperbyk−2151を用いて特に優れた結果が得られる。
【0077】
界面活性剤の量は、好ましくは金属ナノ粒子分散系の合計量に対して0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%、最も好ましくは0.1〜1.0重量%である
【0078】
接着促進化合物
接着促進化合物の添加は種々の基材への接着性をさらに向上させ得ることが観察された。
【0079】
例えば商業的に入手可能な接着促進化合物Byk−4511は、特にITO(インジウム錫酸化物)基材への接着性を向上させることができる。
【0080】
特に好ましい接着促進化合物は酸性ポリエステルである。酸性ポリエステルを含む金属ナノ粒子分散系はITO(インジウム錫酸化物)基材上における実質的に向上した接着性により特徴付けられることが観察された。
【0081】
酸性ポリエステルの量は、好ましくは金属ナノ粒子分散系の合計量に対して0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%、最も好ましくは0.1〜1.0重量%である。
【0082】
酸性ポリエステルは、典型的に15〜100mg KOH/gの酸価を有する酸性基を有するコポリマーである。商業的に入手可能な酸性ポリエステルの例にはBYK−4510(Byk Altanaから商業的に入手可能)、PLUSOLIT H−PD(Maederから商業的に入手可能)又はBORCHI GEN HMP−F(OMG Borchersから商業的に入手可能)が含まれる。
【0083】
酸性ポリエステルは、典型的にポリオールとポリカルボン酸の重縮合物である。ポリオール及びポリカルボン酸を所望の割合で合わせ、標準的なエステル化(縮合)法を用いて化学的に反応させ、ポリエステル樹脂中にヒドロキシル基及びカルボン酸基の両方を有するポリエステルを与える。分枝鎖状ポリエステルを与えるためにトリオールが典型的に用いられる。
【0084】
適したポリカルボン酸又は無水物の例には無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリト酸無水物、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、セバシン酸及びそれらの種々の混合物が含まれるが、これらに限られない。
【0085】
適したジオール、トリオール及びポリオールの例にはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジプピレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール及びポリエチレン又はポリプロピレングリコールが含まれるが、これらに限られない。
【0086】
好ましいポリオールはトリメチロールプロパンであり、好ましいポリカルボン酸はアジピン酸である。
【0087】
他の好ましい酸性ポリエステルは、
(a)2000〜10000の分子量(Mn)、20〜75のヒドロキシル価及び15〜25の酸価を有するポリエステルであって、
(i)ジオールとトリオールの混合物を含むポリオール成分
(ii)アルファ,ベータ−エチレン性不飽和ポリカルボン酸を含むポリ酸成分
の縮合物であるポリエステル並びに
(b)亜リン酸(phosphorus acid)
の反応生成物である。
【0088】
リン酸塩処理された(phosphatised)ポリエステルのさらなる例は国際公開第2012/162301号パンフレットに開示される。
【0089】
分散系−安定化化合物(DSC)
本発明に従う金属ナノ粒子分散系は、式VII、VIII、IX又はX
【0090】
【化1】
【0091】
[式中、
Qは置換もしくは非置換5もしくは6員複素芳香環の形成に必要な原子を示し;
Mはプロトン、一価カチオン性基、アルキル基、ヘテロアルキル基及びアシル基からなる群から選ばれ;
R9及びR10は水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換のアリール又はヘテロアリール基、ヒドロキシル基、チオエーテル、エーテル、エステル、アミド、アミン、ハロゲン、ケトン及びアルデヒドからなる群から独立して選ばれ;
R9及びR10は5〜7員環の形成に必要な原子を示すことができ;
R11〜R13は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、ヒドロキシル基、チオール、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、エーテル、エステル、アミド、アミン、ハロゲン、ケトン、アルデヒド、ニトリル及びニトロ基からなる群から独立して選ばれ;
R12及びR13は5〜7員環の形成に必要な原子を示す場合がある]
に従う分散系−安定化化合物(DSC)を含む場合がある。
【0092】
分散系−安定化化合物は好ましくは式VIIに従う化合物である。
【0093】
分散系−安定化化合物は、より好ましくはQが5員複素芳香環の形成に必要な原子を示す式VIIに従う化合物である。
【0094】
特定の好ましい分散系−安定化化合物は、Qがイミダゾール、ベンズイミダゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール及びテトラゾールからなる群から選ばれる5員複素芳香環である式VIIに従う化合物である。
【0095】
分散系−安定化化合物のいくつかの例を以下の表において示す。
【0096】
【表2-1】
【0097】
【表2-2】
【0098】
【表2-3】
【0099】
分散系−安定化化合物は、好ましくはN,N−ジブチル−(2,5−ジヒドロ−5−チオキソ−1H−テトラゾール−1−イル−アセトアミド、5−ヘプチル−2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、5−メチル−1,2,4−トリアゾロ−(1,5−a)ピリミジン−7−オール及びS−[5−[(エトキシカルボニル)アミノ]−1,3,4−チアジアゾール−2−イル]O−エチルチオカーボネートからなる群から選ばれる。
【0100】
式VII〜Xに従う分散系−安定化化合物は、好ましくは非−高分子化合物である。本明細書で用いられる非−高分子化合物は、好ましくは1000より低い、より好ましくは500より低い、最も好ましくは350より低い分子量を有する化合物を意味する。
【0101】
金属ナノ粒子中の銀(Ag)の合計重量に対する重量%として表される分散系−安定化化合物(DSC)の量は、好ましくは0.005〜10.0、より好ましくは0.0075〜5.0、最も好ましくは0.01〜2.5である。金属ナノ粒子中の銀の合計重量に対する分散系−安定化化合物の量が少なすぎると、安定化効果は低すぎるかも知れず、一方、多すぎる量の分散系−安定化化合物は金属ナノ粒子分散系を用いて得られるコーティング又はパターンの導電率に不利に影響し得る。
【0102】
添加剤
コーティング又は印刷性を最適化するため、及びまたそれが用いられる用途に依存して、還元剤、湿潤剤/均展剤、デウェッティング剤(dewetting agents)、流動学修正剤、接着剤、粘着剤、保湿剤、ジェッティング剤(jetting agents)、硬化剤、殺生物剤(biocides)又は酸化防止剤のような添加剤を上記の金属ナノ粒子分散系に加えることができる。
【0103】
欧州特許第A2821164号明細書に開示されているような、少量の無機酸又は金属ナノ粒子分散系から形成される金属層又はパターンの硬化の間にそのような酸を生成することができる化合物を金属ナノ粒子分散系に加えるのは有利な場合がある。そのような金属ナノ粒子分散系から形成される層又はパターンのより高い導電率及び/又はより低い硬化温度が観察された。
【0104】
国際公開第2015/000937号パンフレットに開示されている式XI
【0105】
【化2】
【0106】
[式中、
Xは置換もしくは非置換環の形成に必要な原子を示す]
に従う化合物を含む金属ナノ粒子分散系を用いる場合も、より高い導電率及び/又はより低い硬化温度を得ることができる。
【0107】
特に好ましい式XIに従う化合物は、アスコルビン酸又はエリソルビン酸誘導体化合物である。
【0108】
印刷又はコーティング流体の粘度を上昇させるために増粘剤を加えることができる。好ましい増粘剤は非晶質シリカ、種々の分子量を有するポリビニルピロリドン及びセルロースに基づく増粘剤から選ばれることができる。特に好ましい増粘剤はヒドロキシプロピルセルロースである。
【0109】
金属ナノ粒子分散系の調製
本発明に従う金属ナノ粒子分散系の調製は、典型的に撹拌、高せん断混合、超音波処理又はそれらの組み合わせのような均一化法の使用により、液体担体、塩化ビニルとヒドロキシ官能基性モノマーのコポリマー及び場合による添加剤を金属ナノ粒子に加えることを含む。
【0110】
それから金属ナノ粒子分散系が調製される金属ナノ粒子は、典型的に金属ナノ粒子のペースト又は高度に濃い分散系である。金属ナノ粒子の好ましい調製法を下記に説明する。
【0111】
最高で100℃の高温度で均一化段階を行うことができる。好ましい態様において、均一化段階は60℃に等しいかそれより低い温度で行われる。
【0112】
好ましい態様において、金属ナノ粒子分散系はインクジェット印刷法において用いられる。金属インクジェット液もしくはインク又は導電性インクジェット液もしくはインクとも呼ばれるそのような金属ナノ粒子分散系は、25℃において且つ90s-1のせん断速度で測定される時、好ましくは35mPa.sより低い、好ましくは28mPa.sより低い、そして最も好ましくは2〜25mPa.sの粘度を有する。
【0113】
いわゆる通過流(throughflow)プリントヘッドを用いる場合、金属インクジェット液の粘度はより高くても良く、好ましくは25℃において且つ90s-1のせん断速度で60mPa.sより低い場合がある。金属インクジェット液に関するより高い粘度制限は、液のより多くの組成的変動を開拓し、それはより濃い及び/又はより安定な金属インクジェット液に向けて有利であり得る。
【0114】
他の好ましい態様において、金属ナノ粒子分散系はフレキソグラフィー印刷法において
用いられる。金属フレキソインク又は導電性フレキソインクとも呼ばれるそのような金属ナノ粒子分散系は、好ましくは25℃において且つ90s-1のせん断速度で測定される10〜200mPa.s、より好ましくは25〜150mPa.s、最も好ましくは50〜100mPa.sの粘度を有する。
【0115】
別の好ましい態様において、金属ナノ粒子分散系はスクリーン印刷法において用いられる。金属スクリーンインク又は導電性スクリーンインクとも呼ばれるそのような金属ナノ粒子分散系は、好ましくは25℃において且つ1s-1のせん断速度で測定される3000〜1000000mPa.s、最も好ましくは5000〜750000mPa.s、最も好ましくは10000〜500000の粘度を有する。
【0116】
金属層又はパターン
金属ナノ粒子分散系から印刷又はコーティングされる薄層又はパターンを、通常の金属印刷又はコーティング流体を用いて得られるものと比較してより低い焼結温度で導電性にすることができる。従って本発明の金属印刷もしくはコーティング流体から形成される導電性薄層又はパターンを、例えばPETのような高温における熱処理に耐えられない柔軟性支持体上にコーティング又は印刷することができる。
【0117】
金属層又はパターンは、上記で定義された金属ナノ粒子分散系を支持体上に適用し、続いて焼結段階を行う段階を含む方法により形成される。
【0118】
支持体はガラス、紙又は高分子支持体の場合がある。
【0119】
好ましい高分子支持体はポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリ塩化ビニル(PVC)に基づく支持体である。好ましいPET支持体は、例えばMacDermidからのAUTOSTATTM 熱安定化ポリエステルである。
【0120】
適用される導電性インクジェット、スクリーン又はフレキソインクの接着性、吸収性又は展延性(spreading)を向上させるための1つもしくはそれより多い層を、上記の支持体に備えることができる。
【0121】
好ましくは、適用される導電性インクジェット、スクリーン又はフレキソインクの接着性を向上させるためのいわゆる下塗り層を、高分子支持体に備える。そのような下塗り層は、典型的にビニリデンコポリマー、ポリエステル又は(メタ)アクリレートに基づく。
【0122】
この目的のために有用な下塗り層は当該技術分野において周知であり、例えば塩化ビニリデンのポリマー、例えば塩化ビニリデン/アクリロニトリル/アクリル酸ターポリマーあるいは塩化ビニリデン/メチルアクリレート/イタコン酸ターポリマーが含まれる。
【0123】
他の好ましい下塗り層には、ポリエステル−ウレタンコポリマーに基づく結合剤が含まれる。より好ましい態様において、ポリエステル−ウレタンコポリマーは、好ましくはテレフタル酸及びエレングリコール及びヘキサメチレンジイソシアナートに基づくポリエステルセグメントを用いるイオノマー型ポリエステルウレタンである。適したポリエステル−ウレタンコポリマーは、DIC Europe GmbHからのHydranTM APX101 Hである。
【0124】
下塗り層の適用はハロゲン化銀写真フィルム用のポリエステル支持体の製造の分野において周知である。例えばそのような下塗り層の調製は、米国特許第3649336号明細書及び英国特許第1441591号明細書に開示されている。
【0125】
国際公開第2015/000932号パンフレットに開示されている通り、酸生成化合物を支持体上のプライマー層に導入することができる。好ましいプライマーは塩化ビニリデン、アクリルエステル及びイタコン酸のコポリマーを含む。
【0126】
好ましい態様において、下塗り層は0.2μmより厚くない、又は好ましくは200mg/m2より厚くない乾燥厚さを有する。
【0127】
別の好ましい支持体は、透明導電性酸化物に基づく支持体である。そのような支持体は典型的にガラス又はポリマー支持体であり、その上に透明導電性酸化物(TCO)の層又はパターンが与えられる。そのような導電性酸化物の例はITO(インジウム錫酸化物)、ZnO、SnO2又はドーピングされた酸化物、例えばZnO:Alである。特に好ましいTCOはITOである。
【0128】
好ましい紙に基づく支持体は、Arjowiggins Creative Papersによるプリンテッドエレクトロニクス用に設計された基材であるPowercoat(登録商標)紙基材である。
【0129】
複数の金属層又はパターン、すなわちパターン形成された(patterned)、又はパターン形成されない層の積み重ねを基材上に適用することができる。金属層又はパターンの形成法において言及される支持体は、かくしてあらかじめ適用された金属層又はパターンも含む。
【0130】
金属層を同時−押出又はいずれかの通常のコーティング法、例えば浸漬コーティング、ナイフコーティング、押出コーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ブレードコーティング、スロットダイコーティング、スライドホッパーコーティング及びカーテンコーティングにより支持体上に与えることができる。
【0131】
金属層及び特に金属パターンを、凸版印刷、スクリーン印刷、フレキソグラフィー印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、グラビアオフセット印刷などのような印刷法により支持体上に与えることができる。
【0132】
好ましい印刷法はインクジェット、スクリーン印刷及びフレキソグラフィー印刷法である。
【0133】
支持体上に金属層又はパターンを与える別の方法はエアゾールジェット(aerosol jet)印刷である。Optomecにより開発されたエアゾールジェット印刷は、インクジェット印刷の利点のほとんどを保存しながらその制限の多くを減らしている。方法はプリンテッドエレクトロニクスの分野における使用のために開発されている。方法は、例えば米国特許第2003/0048314号明細書、米国特許第2003/0020768号明細書、米国特許第2003/0228124号明細書及び国際公開第2009/049072号パンフレットに開示されている。エアゾールジェットプリントエンジン、例えばAerosol Jet Printer OPTOMEC AJ 300 CEがOptomecから商業的に入手可能である。
【0134】
5000mPa.sより低い粘度を有する実質的にいずれの液体もエアゾールジェット印刷法を用いて塗着させることができる。より高い粘度の液の使用は、金属インクの安定性に関して有利な場合がある。
【0135】
硬化段階
層又はパターンを支持体上に適用した後、硬化段階とも呼ばれる焼結段階を行う。この
焼結段階の間に溶媒は蒸発し、金属粒子は一緒に焼結する。金属粒子間に連続パーコレーションネットワークが形成されると、層又はパターンは導電性になる。通常の焼結は、典型的に熱の適用により行われる。焼結温度及び時間は用いられる支持体及び金属層又はパターンの組成に依存する。金属層の硬化のための焼結段階を250℃より低い、好ましくは200℃より低い、より好ましくは180℃より低い、最も好ましくは160℃より低い温度で行うことができる。
【0136】
焼結時間は、選ばれる温度、支持体及び金属層の組成に依存して60分より短時間、好ましくは2〜30分そしてより好ましくは3〜20分の場合がある。
【0137】
しかしながら、通常の熱の適用による焼結の代わりに、又はそれに加えて、別の焼結法、例えばアルゴンレーザー、マイクロ波放射、IR線、UV線又は低圧アルゴンプラズマへの暴露、フォトン硬化、プラズマもしくはプラズマ増強、電子ビーム、レーザービームもしくはパルス電流焼結を用いることができる。パルス電流焼結を用いる場合、電流を導電性インクに直接又は誘導を介して間接的に適用することができる。
【0138】
別の硬化法はいわゆる近赤外硬化法を用いる。コーティング又はパターンの金属、例えば銀はNIR線のための吸収剤として働き得る。
【0139】
さらに別の硬化法は、熱風温度硬化の代わりに加熱蒸気を用い、それもコーティング又はパターンの金属を有効に加熱し且つ焼結させる。
【0140】
本発明の金属層は、先行技術の方法より低い硬化温度の使用を可能にする。結果として、例えばPETのような高温における熱処理に耐えられない高分子基材の使用が可能である。硬化時間も実質的に短縮することができ、先行技術の方法より高い時間当たりの生産を得る可能性に導く。金属層の導電率は保持されるか、又はある場合には向上さえする。
【0141】
さらに導電率を向上させるため、又は硬化温度を下げるために、国際公開第2015/000932号パンフレットに開示されている通り、酸か、金属層又はパターンの硬化の間に酸を放出することができる酸前駆体かを含む溶液と金属層又はパターンを接触させるのも有利な場合がある。
【0142】
金属層又はパターンを種々の電子機器又はそのような電子機器の部品、例えば有機光発電装置(OPV’s)、無機光発電装置(c−Si、a−Si、CdTe、ClGS)、OLEDディスプレー、OLED照明、無機照明、RFID’s、有機トランジスタ、薄フィルムバッテリー、タッチ−スクリーン、e−ペーパー(e−paper)、LCD’s、プラズマ、センサー、膜スイッチ又は電磁遮蔽において用いることができる。
【0143】
金属ナノ粒子の調製
本発明に従う金属ナノ粒子はいずれの既知の調製法によっても調製され得る。
【0144】
特に好ましい金属ナノ粒子の調製法は、欧州特許第A2781562号明細書に開示されている。
【0145】
欧州特許第A2781562号明細書に開示されている方法により得られる金属ナノ粒子分散系は、典型的に分散系の合計重量に対して少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%の金属ナノ粒子を含有する。次いでこの高度に濃い分散系を上記の本発明に従う金属ナノ粒子分散系の調製に用いる。
【発明を実施するための形態】
【0146】
実施例
材料
以下の実施例中で用いられるすべての材料は、他に特定しなければALDRICH CHEMICAL Co.(Belgium)及びACROS(Belgium)のような標準的な供給源から容易に入手可能であった。用いられる水は脱イオン水であった。
【0147】
酸化銀(Ag2O)は、水酸化ナトリウム(33重量%)のアルカリ性水溶液中における硝酸銀の沈殿に続くろ過及び乾燥により調製された。
【0148】
Solbin(登録商標) A、SHIN ETSUから商業的に入手可能な92重量%塩化ビニル、3重量%酢酸ビニル及び5重量%ビニルアルコールのコポリマー。
【0149】
Solbin(登録商標) AL、SHIN ETSUから商業的に入手可能な93重量%塩化ビニル、2重量%酢酸ビニル及び5重量%ビニルアルコールのコポリマー。
【0150】
Solbin(登録商標) MFK、SHIN ETSUから商業的に入手可能な90重量%塩化ビニル、7重量%酢酸ビニル及び3重量%アクリル酸のコポリマー。
【0151】
Solbin(登録商標) TAO、SHIN ETSUから商業的に入手可能な91重量%塩化ビニル、2重量%酢酸ビニル及び7重量%ビニルアルコールのコポリマー。
【0152】
Solbin(登録商標) TA2、SHIN ETSUから商業的に入手可能な83重量%塩化ビニル、4重量%酢酸ビニル及び13重量%ヒドロキシアルキルアクリレートのコポリマー。
【0153】
Solbin(登録商標) CNL、SHIN ETSUから商業的に入手可能な90重量%塩化ビニル及び10重量%酢酸ビニルのコポリマー。
【0154】
Laroflex MP15、BASFから商業的に入手可能な塩化ビニルとビニルイソブチルエーテルのコポリマー。
【0155】
Laroflex MP60、BASFから商業的に入手可能な塩化ビニルとビニルイソブチルエーテルのコポリマー。
【0156】
DEG(CASRN 111−46−6)は、Sigma−Aldrichから商業的に入手可能なジエチレングリコールである。
【0157】
Dowanol DPMA(CASRN 88917−22−0)はDOW CHEMICALSから商業的に入手可能なジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートである。
【0158】
Butyl Cellosolve(CASRN 111−76−2)は、Merckから商業的に入手可能なエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0159】
Efka FL3277(CASRN 849624−75−5)は、BASFから商業的に入手可能な湿潤剤である。
【0160】
Disperbyk 2151はBYK CHEMIEから商業的に入手可能な湿潤剤である。
【0161】
Byk 4510は、Altanaから商業的に入手可能な接着促進化合物である。
【0162】
Rhodiasolv(登録商標) PolarCleanは、SOLVAYから商業的に入手可能なメチル−5−(ジメチルアミノ)2−メチル5−オキソペンタノエートである。
【0163】
Rhodiasolv(登録商標) Irisは、SOLVAYから商業的に入手可能なジメチル2−メチルペンタンジオネートである。
【0164】
Agnique AMD−3は、BASFから商業的に入手可能な乳酸ジメチルアミドである。
【0165】
測定法
銀コーティングの導電率
4点コリニアプローブ(four−point collinear probe)を用いて銀コーティングの表面抵抗(SER)を測定した。表面もしくはシート抵抗を次式:
SER=(Π/ln2)*(V/I)
[式中、
SERはΩ/□で表される層の表面抵抗であり;
Πは大体3.14に等しい数学定数であり;
ln2は2の自然対数に等しい数学定数であり、大体0.693に等しく;
Vは4点プローブ測定機器の電圧計により測定される電圧であり;
Iは4点プローブ測定機器により測定されるソース電流である]
により算出した。
【0166】
各試料に関し、コーティングの異なる位置において3回の測定を行い、平均値を算出した。
【0167】
コーティングの銀含有率MAg(g/m2)をWD−XRFにより決定した。
【0168】
次いで次式:
【0169】
【数1】
【0170】
[式中、
ρAgは銀の密度(10.49g/cm3)であり、σAgは銀の比導電率(6.3 105S/cmに等しい)である]
を用いて銀のバルク導電率(bulk conductivity)のパーセンテージとして導電率を計算することにより、コーティングされた層の導電率を決定した。
【0171】
接着性
種々の基材上の銀コーティングの接着性を、ASTM D3359に従うテープ試験により評価した。評価は0(非常に優れた接着性)から5(非常に悪い接着性)の得点の結果となる。
【0172】
ワニス透明性
銀インクのワニスという用語は、典型的に調製法の最後に加えられる銀沈殿物(sediment)以外のすべての成分を含有する銀インクの組成物を意味する。ワニスを室温で少なくとも24時間放置することにより、ワニス透明度を視覚的に評価した。視覚的なワニスの曇り(cloudiness)又は靄(haziness)が観察されなかったら、それを“OK”として評価した。ワニスにおいて曇りが観察されたら、それを“曇り”として評価した。ゲル形成が観察されたら、ワニス透明度を“ゲル”として評価した。
【0173】
粘着行動
インクのスクリーン印刷のために用いられる篩(sieve)への銀インクの粘着行動を評価した。従って少なくとも50gの銀インクを、篩の底に適用されるMacDerrmidから入手可能なPlus 8000エマルションステンシルを有するスクリーンの非−印刷領域上に付着させた。少なくとも4時間待った後、付着させたインクの下の篩の反対位置においてステンシルに柔らかく触れ、反対側にインクを付着させていない篩の底におけるステンシルの位置と比較されるステンシルの粗さ及び/又は粘着性における変化を比較することにより、粘着性の変化を評価した。変化が感じられなかったら、それを“OK”として記録し、そうでなかったら“NOK”を記録した。
【実施例1】
【0174】
銀ナノ粒子分散系NPD−01の調製
78.0gの酸化銀を、275.0gのペンタン酸及び401.0gの2−ピロリドンを含有する1リットルの反応器に撹拌しながらゆっくり加えた。混合物の温度を25℃に保った。
【0175】
酸化銀を完全に加えた後、懸濁液を25℃で終夜撹拌した。
【0176】
次いで300.0gのN,N−ジエチルヒドロキシルアミンを1.5時間の時間内に懸濁液に加えた。反応混合物の温度を25℃に保った。すべての還元剤を加えたら、反応混合物を撹拌しながら25℃にさらに1時間保った。
【0177】
次いで反応混合物を沈殿容器に供給し、そこでそれを終夜撹拌せずに保った。上澄み液を注意深く沈殿物から除去した。
【0178】
得られる沈殿物を、Dowanol PMTM(547g)を用いて2回と、butylcellosolveTM(547g)を用いて2回との4回洗浄した。各洗浄段階に、溶媒を沈殿物に加え、得られる懸濁液を300rpmで0.5時間撹拌した。次いで懸濁液を撹拌しないでさらに1時間保ち、上澄み液を注意深く除去した。
【0179】
butylcellosolveTMを用いる最後の洗浄段階の後、Rousselet
Robatel(France)からの遠心分離デカンター(centrifugal
decanter)中で3000rpmにおいて0.5時間沈殿物を遠心分離した。
【0180】
得られる銀ナノ粒子分散系NPD−01は、分散系の合計重量に対して±75重量%の銀を有した。
【0181】
銀インクSI−01〜SI−14の製造
表1の非−銀成分を透明な溶液が得られるまで撹拌しながら一緒に混合することにより、銀インクSI−01〜SI−14を製造した。次いで銀ナノ粒子分散系NPD−01を透明な溶液に加え、続いて高せん断均一化を行った。
【0182】
【表3-1】
【0183】
【表3-2】
【0184】
銀インクSI−01〜SI−014を種々の基材上に、ポリエステルP180 ULANO篩(Ulano CDF Matrix UVフィルム)を用いてスクリーン印刷し、それにより約6.0x4.5cmの寸法を有するパターンを形成した。印刷された銀を次いでベルトオーブンにおいて130℃で3分間乾燥し、続いてボックスオーブン中で150℃において15分間硬化段階を行った。
【0185】
印刷された銀パターンの導電率(%Ag−バルクとして表されるCond.)及び接着性(Adh.)を上記の通りに評価した。結果を表2に示す。
【0186】
25より高い導電率及び2より低い接着性は許容され得ると考えられる。
【0187】
【表4】
【0188】
表2の結果から、塩化ビニルとヒドロキシ官能基性モノマーを含むコポリマーを含む本発明の銀インクは、その導電率は許容され得るままでありながら、調べられたすべての基材上における非常に優れた接着性を有することが明らかである。
【実施例2】
【0189】
銀インクSI−15〜SI−24の製造
表3の非銀成分を透明な溶液が得られるまで撹拌しながら一緒に混合することにより、銀インクSI−15〜SI−24を製造した。次いで銀ナノ粒子分散系NPD−01を透明な溶液に加え、続いて高せん断均一化を行った。
【0190】
【表5】
【0191】
銀インクSI−15〜SI−24を種々の基材上に、ポリエステルP180 ULANO篩(Ulano CDF Matrix UVフィルム)を用いてスクリーン印刷し、それにより約6.0x4.5cmの寸法を有するパターンを形成した。次いで印刷された銀をベルトオーブンにおいて130℃で3分間乾燥し、続いてボックスオーブン中で150℃において15分間硬化段階を行った。
【0192】
印刷された銀パターンの導電率(Cond.は%Ag−バルクとして表される)及び接着性(Adh.)を上記の通りに評価した。結果を表2に示す。
【0193】
25より高い導電率及び2より低い接着性は許容され得ると考えられる。
【0194】
【表6】
【0195】
表4の結果は、塩化ビニルとヒドロキシ官能基性モノマーを含むコポリマーを含有するすべての銀インクが、その導電率は許容され得るままでありつつ、調べられたすべての基材上における非常に優れた接着性を有することを示す。
【実施例3】
【0196】
銀インクSI−25〜SI−42の製造
表5の非−銀成分を透明な溶液が得られるまで撹拌しながら一緒に混合することにより、銀インクSI−25〜SI−42を製造した。次いで銀ナノ粒子分散系NPD−01を透明な溶液に加え、続いて高せん断均一化を行った。
【0197】
【表7-1】
【0198】
【表7-2】
【0199】
銀インクSI−25〜SI−42を種々の基材上に、ポリエステルP180 ULANO篩(Ulano CDF Matrix UVフィルム)を用いてスクリーン印刷し、それにより約6.0x4.5cmの寸法を有するパターンを形成した。次いで印刷された銀をベルトオーブンにおいて130℃で3分間乾燥し、続いてボックスオーブン中で150℃において15分間硬化段階を行った。
【0200】
印刷された銀パターンの導電率(Cond.は%Ag−バルクとして表される)及び接着性(Adh.)を上記の通りに評価した。結果を表6に示す。
【0201】
25より高い導電率及び2より低い接着性は許容され得ると考えられる。
【0202】
【表8】
【0203】
表6の結果は、塩化ビニルとヒドロキシ官能基性モノマーを含むコポリマーを含有するすべての銀インクが、その導電率は許容され得るままでありつつ、調べられたすべての基材上における非常に優れた接着性を有することを示す。
【0204】
上記の通りにワニス透明性及び粘着行動を評価した。結果を表7に示す。
【0205】
【表9】
【0206】
表7の結果は、Rhodasolv Polarclean又はメチルブチロラクトンを含む液体担体の銀インクが、粘着行動が改善し、ワニス透明性が改善することを示す。