特許第6703203号(P6703203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6703203ひげぜんまい調整機構、てんぷ受ユニット、ムーブメント及び時計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6703203
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ひげぜんまい調整機構、てんぷ受ユニット、ムーブメント及び時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 18/06 20060101AFI20200525BHJP
   G04B 17/32 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G04B18/06
   G04B17/32
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-12473(P2020-12473)
(22)【出願日】2020年1月29日
【審査請求日】2020年1月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502366745
【氏名又は名称】セイコーウオッチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】伊東 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】川内谷 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 久
(72)【発明者】
【氏名】森 裕一
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−161307(JP,A)
【文献】 特開2015−121534(JP,A)
【文献】 米国特許第2356911(US,A)
【文献】 独国実用新案第202010014253(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/32
G04B 17/34
G04B 18/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦巻状に形成されたひげぜんまいと、
前記ひげぜんまいの外端部が連結され、前記ひげぜんまいの中心軸線と平行な第一軸線に沿う第一方向に移動可能、及び前記第一軸線回りの第二方向に回転可能なひげ持と、
てんぷ受に連結されるひげ持受と、
前記ひげ持を前記第一方向に移動可能に保持するとともに、前記第二方向に回転可能に支持されるひげ持押さえと、
前記ひげ持に当接することにより前記ひげ持押さえに対する前記ひげ持の前記第一方向への移動を規制するひげ持固定部材と、
を備えるひげぜんまい調整機構。
【請求項2】
前記ひげ持受は、前記ひげ持押さえを前記第二方向に回転可能に支持する請求項に記載のひげぜんまい調整機構。
【請求項3】
前記ひげ持受に重ねて設けられ、前記ひげ持押さえを前記第二方向に回転可能に支持する案内板と、
前記案内板に対して前記ひげ持受とは反対側に重ねて設けられる案内板押さえと、
前記ひげ持受と前記案内板押さえとの間隔を調節可能な調節部材と、
を備え、
前記案内板は、前記調節部材が取り付けられ、前記中心軸線の軸方向から見て、前記中心軸線及び前記第一軸線を繋ぐ直線に沿う第三方向に長い長孔を有する請求項に記載のひげぜんまい調整機構。
【請求項4】
前記調節部材は、前記ひげ持受に締結され、前記ひげ持受側に向かって前記案内板押さえを押圧する押さえねじであり、
前記押さえねじは、前記長孔に挿通されている請求項に記載のひげぜんまい調整機構。
【請求項5】
前記ひげ持固定部材は、前記ひげ持押さえに取り付けられたひげ持ねじである請求項から請求項のいずれか1項に記載のひげぜんまい調整機構。
【請求項6】
前記ひげ持は、前記ひげ持ねじに当接する押圧面を有し、
前記押圧面に前記ひげ持ねじが当接した状態で、前記ひげ持押さえとともに前記第二方向に回転する請求項に記載のひげぜんまい調整機構。
【請求項7】
前記ひげぜんまいの前記外端部は、前記渦巻状に形成されたひげぜんまい本体に対して前記第一方向の異なる位置に設けられる請求項1から請求項のいずれか1項に記載のひげぜんまい調整機構。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のひげぜんまい調整機構を備えるてんぷ受ユニット。
【請求項9】
前記ひげぜんまいが取り付けられるてんぷを備え、
前記てんぷは、
環状のてん輪と、
前記てん輪に取り付けられるチラねじと、
を有する請求項に記載のてんぷ受ユニット。
【請求項10】
請求項又は請求項に記載のてんぷ受ユニットを備えるムーブメント。
【請求項11】
請求項10に記載のムーブメントを備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひげぜんまい調整機構、てんぷ受ユニット、ムーブメント及び時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、てんぷの中心に固定されたひげぜんまいを用いた機械式時計の構成が知られている。機械式時計では、例えば製造誤差等により、ひげぜんまいの外端部を保持するひげ持の寸法が個々に異なる場合がある。このような場合において、ひげ持の位置を調整することにより、機械式時計の等時性を調整するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、内端部がバランススタッフに接続されたひげぜんまいと、ひげぜんまいの外端部を保持するバランススプリングスタッド(ひげ持)と、ひげ持に取り付けられ、回転することによりひげぜんまいの外端部を付勢する調節ねじと、を備えた時計用振動システムの構成が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、調節ねじを回転させて軸方向に移動させることにより、ひげぜんまいの外端部を任意に屈折させることができる。これにより、ひげぜんまいの中心に対してひげぜんまいを偏心させ、等時性エラーを減少させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4976262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、ひげぜんまいの中心軸線に直交する平面方向に沿ってひげぜんまいの外端部を移動させる構成を有するが、中心軸線と平行な高さ方向に沿ってひげぜんまいの外端部を移動させる機構を有しない。このため、ひげぜんまいの外端部の高さを調整する場合には、ピンセット等を用いてひげぜんまいの形状を変える必要があり、高度な熟練技術が必要であった。よって、作業者の技能や熟練度に依らず、所望の方向に容易にひげ持を移動可能な構成が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、ひげ持を所望の方向に容易に調整可能なひげぜんまい調整機構、このひげぜんまい調整機構を備えたてんぷ受ユニット、ムーブメント及び時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一つの形態のひげぜんまい調整機構は、渦巻状に形成されたひげぜんまいと、前記ひげぜんまいの外端部が連結され、前記ひげぜんまいの中心軸線と平行な第一軸線に沿う第一方向に移動可能、及び前記第一軸線回りの第二方向に回転可能なひげ持と、てんぷ受に連結されるひげ持受と、前記ひげ持を前記第一方向に移動可能に保持するとともに、前記第二方向に回転可能に支持されるひげ持押さえと、前記ひげ持に当接することにより前記ひげ持押さえに対する前記ひげ持の前記第一方向への移動を規制するひげ持固定部材と、を備える。
【0008】
この構成によれば、ひげ持は、ひげぜんまいの第一方向及び第二方向に沿って調整可能とされている。これにより、ひげ持に保持されたひげぜんまいの外端部を、第二方向に沿って回転及び第一方向に沿って移動させることができる。よって、少なくとも第一方向と第二方向との2方向においてひげ持を移動させ、ひげぜんまいの位置を調整できる。
したがって、ひげ持を所望の方向に容易に調整可能なひげぜんまい調整機構を提供できる。
また、これにより、従来技術と比較して、作業者の技能や熟練度に依らず、ひげ持の位置合わせを行うことができるので、製造時の作業性を容易にするとともに、製品の品質を安定的かつ良好な状態に維持することができる。
【0010】
この構成によれば、ひげ持受は、ひげ持押さえを回転可能に支持し、ひげ持押さえは、ひげ持を第一方向に移動可能に保持している。さらに、ひげ持固定部材は、ひげ持押さえに対してひげ持の第一方向への移動を規制する。これにより、ひげ持固定部材によりひげ持の移動を規制した状態でひげ持押さえを回転させると、ひげ持は、ひげ持受に対してひげ持押さえと一体に回転する。よって、ひげ持受に対してひげ持を第一方向及び第二方向にそれぞれ独立に移動させることができる。
ひげ持は、ひげ持押さえを介してひげ持受に回転可能に支持されることにより、第一方向及び第二方向にそれぞれ独立で移動する。これにより、例えばひげ持受に直接ひげ持が取り付けられ、ひげ持受に対してひげ持が第一方向及び第二方向に自由に移動する場合と比較して、調整したい方向のみにひげ持受を移動させることができる。よって、第一方向及び第二方向の調整を独立して行うことにより、各方向に沿う調整をより容易に行うことができるので、作業性を向上できる。
【0011】
また、前記ひげぜんまい調整機構は、前記ひげ持受は、前記ひげ持押さえを前記第二方向に回転可能に支持する。
【0012】
この構成によれば、ひげ持押さえを介して、ひげ持受にひげ持を回転可能に取り付けることができる。よって、簡素な構成によりひげ持の第一方向及び第二方向への移動が可能なひげぜんまい調整機構とすることができる。
【0013】
また、前記ひげぜんまい調整機構は、前記ひげ持受に重ねて設けられ、前記ひげ持押さえを前記第二方向に回転可能に支持する案内板と、前記案内板に対して前記ひげ持受とは反対側に重ねて設けられる案内板押さえと、前記ひげ持受と前記案内板押さえとの間隔を調節可能な調節部材と、を備え、前記案内板は、前記調節部材が取り付けられ、前記中心軸線の軸方向から見て、前記中心軸線及び前記第一軸線を繋ぐ直線に沿う第三方向に長い長孔を有する。
【0014】
この構成によれば、案内板は、ひげ持受と案内板押さえに挟持された状態で、ひげ持押さえを回転可能に支持するとともに、長孔の長手方向に沿って第三方向に移動する。案内板が第三方向へ移動すると、案内板とともにひげ持押さえ及びひげ持が第三方向に移動する。これにより、ひげ持受に対して、第一方向、第二方向及び第三方向の3方向にひげ持を移動させることができる。よって、ひげ持の調整の自由度を高めることができる。
調節部材は、ひげ持受と案内板押さえとが近接するように間隔を調節することにより、案内板押さえとひげ持受とにより案内板を挟持する。案内板の長孔には、調節部材が取り付けられている。このため、調節部材を調節することで案内板の第三方向への移動を規制できる。また、ひげ持受と案内板押さえとが離間するように間隔を調節することにより、調節部材に長孔を沿わせつつ、案内板を第三方向に沿って移動させることができる。
【0015】
また、前記ひげぜんまい調整機構は、前記調節部材は、前記ひげ持受に締結され、前記ひげ持受側に向かって前記案内板押さえを押圧する押さえねじであり、前記押さえねじは、前記長孔に挿通されている。
【0016】
この構成によれば、押さえねじは、締結されることによりひげ持受側に向かって案内板押さえを押圧し、案内板押さえとひげ持受とにより案内板を挟持する。案内板の長孔には、押さえねじが挿通されている。このため、押さえねじを締結することで案内板の第三方向への移動を規制できる。また、押さえねじの締結を解除することで、押さえねじに長孔を沿わせつつ、案内板を第三方向に沿って移動させることができる。
【0017】
また、前記ひげぜんまい調整機構は、前記ひげ持固定部材は、前記ひげ持押さえに取り付けられたひげ持ねじである。
【0018】
この構成によれば、ひげ持ねじを締結した状態でひげ持押さえを回転させると、ひげ持は、ひげ持受に対してひげ持押さえと一体に回転する。これにより、ひげ持受に対してひげ持を第一方向及び第二方向にそれぞれ独立に移動させることができる。また、ひげ持ねじを締結することにより、ひげ持押さえとひげ持との相対移動を抑制できる。よって、簡素な構成によりひげ持を固定可能なひげぜんまい調整機構とすることができる。
【0019】
また、前記ひげぜんまい調整機構は、前記ひげ持は、前記ひげ持ねじに当接する押圧面を有し、前記押圧面に前記ひげ持ねじが当接した状態で、前記ひげ持押さえとともに前記第二方向に回転する。
【0020】
この構成によれば、ひげ持は、ひげ持ねじが当接する押圧面を有するので、ひげ持とひげ持ねじとを確実に当接させ易い。また、ひげ持が押圧面を有しない場合と比較して、ひげ持ねじを締結した際にひげ持押さえに対してひげ持が回転するのを抑制できる。これにより、特にひげ持を第一方向のみに移動させたい場合に、ひげ持が意図せず回転するのを抑制できる。また、ひげ持は、押圧面にひげ持ねじが当接した状態で、ひげ持押さえとともに回転する。これにより、特にひげ持を回転方向(第二方向)のみに移動させたい場合に、ひげ持が意図せず第一方向に移動するのを抑制できる。よって、第一方向及び第二方向のそれぞれに独立に移動可能とし、作業性を向上することができる。
【0021】
また、前記ひげぜんまい調整機構は、前記ひげぜんまいの前記外端部は、前記渦巻状に形成されたひげぜんまい本体に対して前記第一方向の異なる位置に設けられる。
【0022】
この構成によれば、ひげぜんまい本体に対して外端部が第一方向の異なる位置に設けられる、いわゆる巻き上げひげに適用することができる。よって、ひげぜんまい調整機構の汎用性を向上できる。
【0023】
本発明の一つの形態のてんぷ受ユニットは、上述のひげぜんまい調整機構を備える。
【0024】
この構成によれば、上述のひげぜんまい調整機構を備えるので、ひげぜんまいの第一方向及び第二方向に沿ってひげ持を移動させることができる。
したがって、ひげ持を所望の方向に容易に調整可能なひげぜんまい調整機構を備えた、動作の正確性を向上したてんぷ受ユニットを提供できる。
【0025】
また、前記てんぷ受ユニットは、前記ひげぜんまいが取り付けられるてんぷを備え、前記てんぷは、環状のてん輪と、前記てん輪に取り付けられるチラねじと、を有する。
【0026】
この構成によれば、チラねじの締結量(てん輪に対する径方向の突出量)により、てん輪の慣性モーメントを調整する、いわゆるフリースプラング方式に適用することができる。よって、例えば緩急針を用いないフリースプラング方式において、等時性のズレを精度良く調整可能なてんぷ受ユニットとすることができる。
【0027】
本発明の一つの形態のムーブメントは、上述のてんぷ受ユニットを備える。
【0028】
この構成によれば、ひげ持を所望の方向に容易に調整可能なひげぜんまい調整機構を有するてんぷ受ユニットを備えた、高性能なムーブメントを提供できる。
【0029】
本発明の一つの形態の時計は、上述のムーブメントを備える。
【0030】
この構成によれば、時計は、上述のムーブメントを備え、ムーブメントは、上述のひげぜんまい調整機構を備える。よって、ひげぜんまいの第一方向及び第二方向に沿ってひげ持を移動させることで、等時性のズレを調整できる。
したがって、ひげ持を第一方向及び第二方向にそれぞれ容易に調整可能なひげぜんまい調整機構を備えた、等時性のズレを容易に調整可能な時計とすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ひげ持を所望の方向に容易に調整可能なひげぜんまい調整機構、このひげぜんまい調整機構を備えたてんぷ受ユニット、ムーブメント及び時計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1実施形態に係る時計の外観図。
図2】第1実施形態に係るムーブメントを表側から見た平面図。
図3】第1実施形態に係るてんぷ受ユニットを表側から見た平面図。
図4】第1実施形態に係るてんぷ受ユニットの斜視図。
図5図3のV−V線に沿う断面図。
図6】第2実施形態に係るてんぷ受ユニットの斜視図。
図7】第2実施形態に係るてんぷ受ユニットを表側から見た平面図。
図8図7の案内板押さえの図示を省略したてんぷ受ユニットの平面図。
図9図7のIX−IX線に沿う断面図。
図10図7のX−X線に沿う断面図。
図11】第3実施形態に係るてんぷ受ユニットを表側から見た平面図。
図12図11のXII−XII線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0034】
(第1実施形態)
(時計)
図1は、第1実施形態に係る時計1の外観図である。
時計1は、ケース蓋(不図示)及びガラス11を有する時計ケース12内に、ムーブメント2や、時刻に関する情報を示す目盛り等を有する文字板13、各種指針(時針14、分針15及び秒針16)等が組み込まれて構成されている。
【0035】
(ムーブメント)
図2は、第1実施形態に係るムーブメント2を表側から見た平面図である。図2では、図面を見やすくするため、ムーブメント2を構成する時計用部品のうち一部の図示を省略しているとともに、各時計用部品を簡略化して図示している。また、以下の説明では、ムーブメント2の基板を構成する地板17に対して時計ケース12(図1参照)のガラス11側(文字板13側)をムーブメント2の「裏側」と称し、ケース蓋側(文字板13とは反対側)をムーブメント2の「表側」と称する。
【0036】
ムーブメント2は、地板17と、香箱車、二番車、三番車及び四番車を含む図示しない表輪列と、表輪列の回転を制御するための脱進調速機3と、を備える。図示のムーブメント2は、回転錘を備えた自動巻式時計用のムーブメントを例にしている。但し、この場合に限定されるものではなく、巻真18による手巻き式時計用のムーブメントであっても構わない。
図1に示す秒針16は、四番車の回転に基づいて回転するとともに、脱進調速機3によって調速された回転速度、すなわち1分間で1回転する。分針15は、二番車の回転、或いは二番車の回転に伴って回転する分車の回転に基づいて回転するとともに、脱進調速機3によって調速された回転速度、すなわち1時間で1回転する。時針14は、日の裏車を介して二番車の回転に伴って回転する筒車の回転に基づいて回転するとともに、脱進調速機3によって調速された回転速度、すなわち12時間或いは24時間で1回転する。
【0037】
脱進調速機3は、四番車に噛み合う不図示のがんぎ車及びアンクルと、てんぷ受ユニット4と、を備える。アンクルは、がんぎ車を脱進させる。てんぷ受ユニット4は、一定周期で規則正しく動作するてんぷ5を備えている。
【0038】
(てんぷ受ユニット)
図3は、第1実施形態に係るてんぷ受ユニット4を表側から見た平面図である。図4は、第1実施形態に係るてんぷ受ユニット4の斜視図である。図5は、図3のV−V線に沿う断面図である。
図3から図5に示すように、てんぷ受ユニット4は、てんぷ5と、てんぷ受6と、ひげぜんまい調整機構7と、を有する。
【0039】
図3及び図5に示すように、てんぷ5は、てん真21と、てん輪22と、ひげぜんまい23と、を備える。てん真21は、中心軸線C周りに回転自在とされている。てん真21は、詳しくは後述するてんぷ受6に軸受36を介して回転可能に支持されている。
以下の説明では、てん真21の中心軸線Cに沿う方向を軸方向といい、中心軸線Cに直交する方向を径方向といい、中心軸線C周りに周回する方向を周方向という場合がある。
てん輪22は、てん真21に圧入等によって固定されたハブ部24と、ハブ部24を径方向の外側から囲繞する環状のリム部25と、ハブ部24及びリム部25間を連結する連結部26と、を備える。てん輪22のリム部25には、チラねじ27が取り付けられている。本実施形態において、チラねじ27は、てん輪22の周方向に沿って等間隔に4個設けられている。
【0040】
ひげぜんまい23は、てん真21とてん輪22との間に配置されている。ひげぜんまい23は、アルキメデス曲線に沿うように巻回された、軸方向から見て渦巻状の平ひげである。ひげぜんまい23の内端部28は、ひげ玉31(図5参照)を介しててん真21に連結されている。ひげぜんまい23の外端部29は、詳しくは後述するひげぜんまい調整機構7のひげ持53に連結されている。ひげぜんまい23の外端部29は、渦巻状に形成されたひげぜんまい本体30及び内端部28に対して軸方向の異なる位置に配置されている。具体的に、ひげぜんまい23の外端部29は、ひげぜんまい本体30及び内端部28より軸方向の表側(後述するてんぷ受6側)に位置している。
【0041】
てん真21は、ひげぜんまい23から伝えられた動力によって中心軸線C周りに一定の振動周期で正逆回動する。てん真21は、軸方向における一端部21a(表側端部)が軸受36を介しててんぷ受6に支持され、他端部21b(裏側端部)が地板17(図2参照)に形成された図示しない軸受に支持されている。てん真21の他端部21bには、上述したアンクルに連係する筒状の振り座19(図5参照)が外装されている。
【0042】
図4に示すように、てんぷ受6は、軸方向においててんぷ5より表側に配置されている。てんぷ受6は、取付基部35と、軸受36と、ひげ持受37と、を有する。
取付基部35は、軸方向から見て、中心軸線Cから径方向の両側に向かって延びている。取付基部35は、軸方向を厚み方向とする平板状に形成されている。取付基部35の延在方向の両端部の形状は、時計ケース12の形状に合わせた円弧状に形成されている(図2も参照)。取付基部35には、軸方向に貫通する取付孔38が複数形成されている。てんぷ受ユニット4は、取付孔38内にそれぞれ挿通された固定ねじ(不図示)を介して地板17(図2参照)に固定されている。取付基部35は、中心軸線Cと同軸上に形成された中央孔39を有する。図5に示すように、取付基部35のうち、中央孔39の外周部を形成する部分は、軸受筒部40とされている。軸受筒部40は、取付基部35に対して裏側に一段下がって形成されている。
【0043】
軸受36は、いわゆる耐振軸受であって、軸受枠43と、穴石44と、受石45と、を備える。
軸受枠43は、軸受筒部40内に軸方向の表側から圧入されている。これにより、軸受枠43は、中心軸線Cと同軸上に配置されるとともに、てんぷ受6に固定されている。
穴石44は、軸受枠43内に取り付けられている。穴石44は、てん真21の一端部21aを回転可能に支持している。
受石45は、穴石44に重ねて配置され、てん真21の一端部21aを表側から支持している。受石45には、受石45をてん真21に向けて付勢する不図示の受石押さえばねが重ねて配置されている。
なお、軸受36の構成は一例であり、てん真21を回転可能に支持できる構成であれば、上述の構成に限られない。
【0044】
図5に示すように、ひげ持受37は、軸受筒部40の外周部に設けられた座部41を介して、取付基部35の軸受筒部40に外嵌されている。図4に示すように、ひげ持受37は、把持部46と、把持部46に連結されるひげ持アーム47と、を有する。把持部46は、軸方向から見た平面視でC字状に形成されている。把持部46は、所定の回転トルクを付与したときに軸受筒部40に対してスリップする。これにより、ひげ持受37は、中心軸線C周りに回転可能となっている。
【0045】
ひげ持アーム47は、把持部46より径方向の外側に設けられている。具体的に、ひげ持アーム47は、把持部46の外周部から径方向の外側に向けて延びる基部48と、基部48の外径側端部から周方向の一方側に向かって延びる延長部49と、によりL字状に形成されている。軸方向から見て、把持部46と、ひげ持アーム47と、により、周方向の一方側に開口するU字状の溝50が形成されている。
【0046】
(ひげぜんまい調整機構)
ひげぜんまい調整機構7は、上述のひげぜんまい23と、ひげ持53と、ひげ持押さえ54と、ひげ持ねじ55(請求項のひげ持固定部材)と、を備える。
図5に示すように、ひげ持53は、ひげぜんまい23の外端部29を保持している。ひげ持53は、中心軸線Cと平行な第一軸線Oを中心とする円柱状に形成されている。ひげ持53は、把持部46及びひげ持アーム47により形成されたU字状の溝50内に配置されている。ひげ持53は、外周部の一部が平坦状に形成された取付面56及び押圧面57を有する。取付面56は、ひげ持53における第一方向D1の裏側の端部に設けられている。取付面56には、ひげぜんまい23の外端部29が取り付けられている。押圧面57は、取付面56より第一方向D1の表側に設けられている。
【0047】
ひげ持押さえ54は、ひげ持受37に支持されている。ひげ持押さえ54は、第一軸線Oを中心とする円筒状に形成されている。ひげ持押さえ54の外周部には、外周部の周方向に沿って延びる段部が形成されている。段部には、把持部46及びひげ持アーム47が入り込んでいる。これにより、ひげ持押さえ54は、把持部46及びひげ持アーム47に挟持されている。ひげ持押さえ54の内周部には、上述のひげ持53が挿入されている。よって、ひげ持53は、ひげ持押さえ54に対して第一方向D1に移動可能に保持されている。
ひげ持押さえ54は、ひげ持受37に挟持された状態で、ひげ持受37に対して第一軸線O回りの第二方向D2(図3参照)に回転可能に支持されている。よって、ひげ持受37に保持されたひげ持53は、ひげ持押さえ54に対して第一方向D1に移動するとともに、ひげ持押さえ54とともに第二方向D2に回転可能となっている。
【0048】
図4に示すように、ひげ持押さえ54の軸方向における表側の端面には、マイナスドライバー等の工具が挿入可能な凹溝58が形成されている。凹溝58は、表側の端面から裏側に向けて凹んでいる。凹溝58は、軸方向から見て、第一軸線Oを通る直線状に形成されている。凹溝58に工具を挿入して工具を回すことにより、ひげ持押さえ54が第二方向D2に回転する。
図5に示すように、ひげ持押さえ54の外周部には、ねじ孔59が形成されている。ねじ孔59は、第一軸線Oの径方向に沿って形成されている。ねじ孔59は、ひげ持押さえ54の内周部と外周部とを連通している。ねじ孔59の内周部には、雌ねじが形成されている。
【0049】
ひげ持ねじ55は、ひげ持押さえ54のねじ孔59に挿入されている。ひげ持ねじ55は、ねじ孔59と螺合し、第一軸線Oの径方向に沿って移動可能となっている。ひげ持ねじ55の第一軸線O側に位置する先端部55aは、ひげ持53に形成された押圧面57に当接する。ひげ持ねじ55は、ひげ持53の押圧面57に当接することにより、ひげ持押さえ54に対するひげ持53の第一方向D1への移動を規制している。
【0050】
具体的に、ひげ持ねじ55を締結方向に回して先端部55aがひげ持53の押圧面57に当接すると、ひげ持53がひげ持押さえ54に押圧される。これにより、ひげ持押さえ54とひげ持53との相対移動が規制される。この状態でひげ持受37に対してひげ持押さえ54を第二方向D2に回転させた場合、ひげ持53は、ひげ持押さえ54とともに第二方向D2に回転する。一方、ひげ持ねじ55を解除方向に回して先端部55aがひげ持53の押圧面57から離間すると、ひげ持53は、ひげ持押さえ54に対して第一方向D1に移動可能となる。
【0051】
(作用、効果)
次に、上述のひげぜんまい調整機構7、てんぷ受ユニット4、ムーブメント2及び時計1の作用、効果について説明する。
本実施形態のひげぜんまい調整機構7によれば、ひげ持53は、ひげぜんまい23の第一方向D1及び第二方向D2に沿って調整可能とされている。これにより、ひげ持53に保持されたひげぜんまい23の外端部29を、第二方向D2に沿って回転及び第一方向D1に沿って移動させることができる。よって、少なくとも第一方向D1と第二方向D2との2方向においてひげ持53を移動させ、ひげぜんまい23の位置を調整できる。
したがって、ひげ持53を所望の方向に容易に調整可能なひげぜんまい調整機構7を提供できる。
【0052】
また、これにより、従来技術と比較して、作業者の技能や熟練度に依らず、ひげ持53の位置合わせを行うことができるので、製造時の作業性を容易にするとともに、製品の品質を安定的かつ良好な状態に維持することができる。
【0053】
ひげ持受37は、ひげ持押さえ54を回転可能に支持し、ひげ持押さえ54は、ひげ持53を第一方向D1に移動可能に保持している。さらに、ひげ持ねじ55(請求項のひげ持固定部材)は、ひげ持押さえ54に対してひげ持53の第一方向D1への移動を規制する。これにより、ひげ持ねじ55によりひげ持53の移動を規制した状態でひげ持押さえ54を回転させると、ひげ持53は、ひげ持受37に対してひげ持押さえ54と一体に回転する。よって、ひげ持受37に対してひげ持53を第一方向D1及び第二方向D2にそれぞれ独立に移動させることができる。
【0054】
ひげ持53は、ひげ持押さえ54を介してひげ持受37に回転可能に支持されることにより、第一方向D1及び第二方向D2にそれぞれ独立で移動する。これにより、例えばひげ持受37に直接ひげ持53が取り付けられ、ひげ持受37に対してひげ持53が第一方向D1及び第二方向D2に自由に移動する場合と比較して、調整したい方向のみにひげ持受37を移動させることができる。よって、第一方向D1及び第二方向D2の調整を独立して行うことにより、各方向に沿う調整をより容易に行うことができるので、作業性を向上できる。
【0055】
ひげ持押さえ54は、てんぷ受6に連結されるひげ持受37に対して第二方向D2に回転可能に支持されている。これにより、ひげ持押さえ54を介して、ひげ持受37にひげ持53を回転可能に取り付けることができる。よって、簡素な構成によりひげ持53の第一方向D1及び第二方向D2への移動が可能なひげぜんまい調整機構7とすることができる。
【0056】
本実施形態では、ひげ持固定部材としてひげ持ねじ55が用いられる。このため、ひげ持ねじ55を締結した状態でひげ持押さえ54を回転させると、ひげ持53は、ひげ持受37に対してひげ持押さえ54と一体に回転する。よって、ひげ持受37に対してひげ持53を第一方向D1及び第二方向D2にそれぞれ独立に移動させることができる。また、ひげ持ねじ55は、ひげ持押さえ54に取り付けられている。これにより、ひげ持ねじ55を締結することにより、ひげ持押さえ54とひげ持53との相対移動を抑制できる。よって、簡素な構成によりひげ持53を固定可能なひげぜんまい調整機構7とすることができる。
【0057】
ひげ持53は、ひげ持ねじ55が当接する押圧面57を有するので、ひげ持53とひげ持ねじ55とを確実に当接させ易い。また、ひげ持53が押圧面57を有しない場合と比較して、ひげ持ねじ55を締結した際にひげ持押さえ54に対してひげ持53が回転するのを抑制できる。これにより、特にひげ持53を第一方向D1のみに移動させたい場合に、ひげ持53が意図せず回転するのを抑制できる。また、ひげ持53は、押圧面57にひげ持ねじ55が当接した状態で、ひげ持押さえ54とともに回転する。これにより、特にひげ持53を回転方向(第二方向D2)のみに移動させたい場合に、ひげ持53が意図せず第一方向D1に移動するのを抑制できる。よって、第一方向D1及び第二方向D2のそれぞれに独立に移動可能とし、作業性を向上することができる。
【0058】
ひげぜんまい23の外端部29は、ひげぜんまい本体30に対して第一方向D1(軸方向)の異なる位置に設けられる。これにより、ひげぜんまい本体30に対して外端部29の位置が異なる、いわゆる巻き上げひげに適用することができる。よって、ひげぜんまい調整機構7の汎用性を向上できる。
【0059】
本実施形態のてんぷ受ユニット4によれば、上述のひげぜんまい調整機構7を備えるので、ひげぜんまい23の第一方向D1及び第二方向D2に沿ってひげ持53を移動させることができる。
したがって、ひげ持53を所望の方向に容易に調整可能なひげぜんまい調整機構7を備えた、動作の正確性を向上したてんぷ受ユニット4を提供できる。
【0060】
てん輪22には、チラねじ27が設けられている。これにより、チラねじ27の締結量(てん輪22に対する径方向の突出量)により、てん輪22の慣性モーメントを調整する、いわゆるフリースプラング方式に適用することができる。よって、例えば緩急針を用いないフリースプラング方式において、等時性のズレを精度良く調整可能なてんぷ受ユニット4とすることができる。
【0061】
本実施形態のムーブメント2によれば、ひげ持53を所望の方向に容易に調整可能なひげぜんまい調整機構7を有するてんぷ受ユニット4を備えた、高性能なムーブメント2を提供できる。
【0062】
本実施形態の時計1によれば、時計1は、上述のムーブメント2を備え、ムーブメント2は、上述のひげぜんまい調整機構7を備える。よって、ひげぜんまい23の第一方向D1及び第二方向D2に沿ってひげ持53を移動させることで、等時性のズレを調整できる。
したがって、ひげ持53を第一方向D1及び第二方向D2にそれぞれ容易に調整可能なひげぜんまい調整機構7を備えた、等時性のズレを容易に調整可能な時計1とすることができる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に係るてんぷ受ユニット4の斜視図である。図7は、第2実施形態に係るてんぷ受ユニット4を表側から見た平面図である。図8は、図7の案内板押さえ261の図示を省略したてんぷ受ユニット4の平面図である。図9は、図7のIX−IX線に沿う断面図である。図10は、図7のX−X線に沿う断面図である。第2実施形態では、第一方向D1及び第二方向D2に加え、中心軸線Cの径方向に沿う第三方向D3にひげ持53が移動可能となっている点で上述した第1実施形態と相違している。また、第2実施形態において、てん輪22は、チラねじ27(図4参照)を有することなく形成されている。
【0064】
図6及び図7に示すように、第2実施形態のひげぜんまい調整機構7は、ひげぜんまい223と、ひげ持53と、ひげ持押さえ54と、案内板260と、案内板押さえ261と、押さえねじ262(請求項の調節部材)と、を備える。第2実施形態におけるひげ持53及びひげ持押さえ54の構成は、上述の第1実施形態におけるひげ持53及びひげ持押さえ54の構成と同等となっている。このため、第2実施形態では、第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と同一の構成について詳細な説明を省略する。
【0065】
第2実施形態において、ひげぜんまい223の外端部29は、ひげぜんまい本体30と軸方向において同等の位置に配置されている。ひげぜんまい223の外端部29は、径方向の外側に膨出した弧状部263となっている。
ひげ持押さえ54は、後述する案内板260を介してひげ持受37に連結されている(図10参照)。
【0066】
図6及び図8に示すように、第2実施形態のひげ持受37は、把持部46から径方向の外側に向かって延びた後に周方向に離間したひげ持アーム247を有する。ひげ持受37には、ひげ持アーム247により、軸方向から見て径方向の外側に開口するU字状の溝250が形成されている。図8に示すように、ひげ持アーム247は、それぞれ締結孔264を有する。締結孔264は、各ひげ持アーム247をそれぞれ軸方向に貫通する円形状の孔である。締結孔264の内周部には、雌ねじが形成されている。
【0067】
図8及び図9に示すように、案内板260は、ひげ持受37のひげ持アーム247に対して表側に重ねて設けられている。案内板260は、軸方向から見て、周方向に長い楕円板状に形成されている。案内板260は、支持凹部265と、長孔266と、を有する。
支持凹部265は、案内板260のうち径方向の外側を向く端部に設けられている。支持凹部265は、径方向の外側から内側に向かって凹んでいる。支持凹部265は、軸方向から見て、ひげ持受37のU字状の溝250と対応する位置に設けられている。支持凹部265は、ひげ持押さえ54を第二方向D2(図7参照)に回転可能に支持している。
図8に示すように、長孔266は、支持凹部265を挟んで周方向の両側に一対設けられている。長孔266は、案内板260を軸方向に貫通している。長孔266は、軸方向から見て、ひげ持受37の締結孔264と対応する位置に設けられている。一対の長孔266は、軸方向から見て、中心軸線C及び第一軸線Oを繋ぐ直線Lに沿う第三方向D3を長手方向として形成されている。
【0068】
図9に示すように、案内板押さえ261は、案内板260に対してひげ持受37とは反対側に重ねて設けられている。換言すれば、案内板260は、ひげ持受37及び案内板押さえ261により軸方向の両側から挟持されている。図7に示すように、軸方向から見た案内板押さえ261の外形は、軸方向から見た案内板260の外形と同等となっている。案内板押さえ261は、軸方向から見てひげ持受37の締結孔264と対応する位置に貫通孔267を有する。貫通孔267は、案内板押さえ261を軸方向に貫通している。
【0069】
図9に示すように、押さえねじ262は、ひげ持受37、案内板260及び案内板押さえ261が重ねられた状態で、締結孔264、長孔266及び貫通孔267に挿入されている。押さえねじ262は、ひげ持受37と案内板押さえ261との間隔を調節する。具体的に、押さえねじ262は、案内板押さえ261側(表側)から挿入され、ひげ持受37に形成された雌ねじに締結される。これにより、押さえねじ262は、ひげ持受37、案内板260及び案内板押さえ261を共締めしている。
【0070】
このように形成されたひげぜんまい調整機構7は、押さえねじ262を解除した場合、ひげ持受37及び案内板押さえ261に対して、案内板260が長孔266の長手方向である第三方向D3に移動可能となる。案内板260が第三方向D3に移動すると、案内板260に連結されたひげ持押さえ54とともに、ひげ持53が第三方向D3に移動する。
案内板260を第三方向D3における所望の位置に移動させた後、押さえねじ262を締結方向に回した場合、案内板押さえ261は、押さえねじ262の軸力によりひげ持受37側に移動する。これにより、案内板260は、ひげ持受37及び案内板押さえ261により軸方向の両側から押圧され、第三方向D3への移動が規制される。
【0071】
ここで、上述のひげぜんまい調整機構7に加え、第2実施形態では、てんぷ受6の形状が上述した第1実施形態と相違している。具体的に、第2実施形態において、てんぷ受6の取付基部35は、軸方向から見て中心軸線Cから一方向に延びている。取付基部35は、中心軸線Cから径方向の外側へ向かうにつれて周方向に沿って湾曲する円弧状に形成されいる。
【0072】
第2実施形態によれば、案内板260は、ひげ持受37と案内板押さえ261に挟持された状態で、ひげ持押さえ54を回転可能に支持するとともに、長孔266の長手方向に沿って第三方向D3に移動する。また、ひげ持受37と案内板押さえ261との間隔を調節可能な調節部材として押さえねじ262が用いられる。案内板260が第三方向D3へ移動すると、案内板260とともにひげ持押さえ54及びひげ持53が第三方向D3に移動する。これにより、ひげ持受37に対して、第一方向D1、第二方向D2及び第三方向D3の3方向にひげ持53を移動させることができる。よって、ひげ持53の調整の自由度を高めることができる。
押さえねじ262(請求項の調節部材)は、ひげ持受37と案内板押さえ261とが近接するように間隔を調節することにより、案内板押さえ261とひげ持受37とにより案内板260を挟持する。具体的に、押さえねじ262は、締結されることによりひげ持受側に向かって案内板押さえを押圧し、案内板押さえとひげ持受とにより案内板を挟持する。案内板260の長孔266には、押さえねじ262が挿通されている。このため、押さえねじ262を締結することで案内板260の第三方向D3への移動を規制できる。また、ひげ持受37と案内板押さえ261とが離間するように間隔を調節する、すなわち押さえねじ262の締結を解除することで、押さえねじ262に長孔266を沿わせつつ、案内板260を第三方向D3に沿って移動させることができる。
【0073】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。図11は、第3実施形態に係るてんぷ受ユニット4を表側から見た平面図である。図12は、図11のXII−XII線に沿う断面図である。第3実施形態では、てんぷ受ユニット4が緩急針371を備える点で上述した第1実施形態と相違している。
【0074】
図11及び図12に示すように、第3実施形態において、ひげぜんまい323の外端部29は、ひげぜんまい本体30と軸方向において同等の位置に配置されている。ひげぜんまい323の外端部29は、径方向の外側に膨出した弧状部363となっている。
第3実施形態のてんぷ受ユニット4は、微動緩急針レバー370と、緩急針371と、を有する。
【0075】
微動緩急針レバー370は、軸受枠43(図12参照)に対して中心軸線C回りに回転可能に取り付けられている。微動緩急針レバー370は、軸受枠43に嵌合される嵌合部372と、嵌合部372から径方向の外側に延びるとともに、周方向に分岐する二股状に形成された係合フォーク373と、を有する。係合フォーク373の内側には、調整ピン374が配設されている。図12に示すように、調整ピン374は、てんぷ受6に設けられた軸受ブッシング375の内側に回転可能に嵌合されている。調整ピン374は、軸受ブッシング375と同軸の軸部376と、軸部376の表側端部に一体形成され、軸部376に対して偏心した頭部377と、を有する。頭部377は、係合フォーク373の内面に摺動可能に接触している。よって、調整ピン374を軸受ブッシング375に対して回転させることで、微動緩急針レバー370の全体をてんぷ5の中心軸線C回りに回転させることが可能となっている。
【0076】
図11に示すように、緩急針371は、緩急針体378と、ひげ棒379と、ひげ受380と、を備える。
緩急針体378は、中心軸線C周りに回転可能とされている。緩急針体378は、微動緩急針レバー370の嵌合部372を径方向外側から囲むベース部381と、ベース部381から径方向の外側に延びる緩急針アーム382と、を有する。
ひげ棒379及びひげ受380は、緩急針アーム382に取り付けられている。ひげ棒379及びひげ受380は、ひげぜんまい323の弧状部363を間に挟んで径方向に向い合うように配置されている。具体的に、ひげ棒379は、弧状部363より径方向の内側に位置している。ひげ受380は、弧状部363より径方向の外側に位置している。ひげ棒379及びひげ受380の裏側に位置する端部は、ひげぜんまい323の弧状部363よりも下方に突出している。ひげ棒379とひげ受380との間隔は、調整可能となっている。これにより、ひげぜんまい323の振り幅を調整する。
【0077】
第3実施形態において、ひげ持受37は、軸受筒部40(図5参照)に外嵌された把持部46(図3参照)と、把持部46から径方向の外側へ延びるとともに周方向に分岐する二股状のひげ持アーム347と、を有する。ひげぜんまい調整機構7は、二股状のひげ持アーム347の間で、ひげ持アーム347に対して回転可能に支持されている。なお、第3実施形態におけるひげぜんまい調整機構7の構成は、第1実施形態におけるひげぜんまい調整機構7の構成と同等となっているため、以下では詳細な説明を省略する。
【0078】
第3実施形態によれば、緩急針371を有するてんぷ受ユニット4において、上述のひげぜんまい調整機構7を適用可能である。よって、上述の第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができることに加え、緩急針371を調整することで、より調整の自由度及び調整の精度を向上できる。
【0079】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態では、ひげ持押さえ54に対するひげ持53の第一方向D1への移動を規制するためにひげ持固定部材としてひげ持ねじ55を用いる構成としたが、これに限られない。例えばひげ持ねじ55の代わりにピンを差し込むことにより、ひげ持53の第一方向D1への移動を規制する構成としてもよい。
【0080】
同様に、第2実施形態においては、調節部材として押さえねじ262を用いる構成としたが、ひげ持受37と案内板押さえ261との間隔を調節するためにねじ以外の部材を用いてもよい。
ひげ持押さえ54を回転可能に保持するひげ持受37の形状は、上述した形状に限られない。例えば、ひげ持アーム47を軸方向に貫通する環状の孔を形成し、この孔の内側にひげ持押さえ54を挿入してもよい。
てんぷ受6における取付基部35の形状は、上述した第1実施形態から第3実施形態の形状に限定されない。
【0081】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 時計
2 ムーブメント
4 てんぷ受ユニット
5 てんぷ
6 てんぷ受
7 ひげぜんまい調整機構
22 てん輪
23,223,323 ひげぜんまい
27 チラねじ
29 外端部
30 ひげぜんまい本体
37 ひげ持受
53 ひげ持
54 ひげ持押さえ
55 ひげ持ねじ(ひげ持固定部材)
57 押圧面
260 案内板
261 案内板押さえ
262 押さえねじ(調節部材)
266 長孔
C 中心軸線
O 第一軸線
D1 第一方向
D2 第二方向
D3 第三方向
【要約】
【課題】ひげ持を所望の方向に容易に調整可能なひげぜんまい調整機構、このひげぜんまい調整機構を備えたてんぷ受ユニット、ムーブメント及び時計を提供する。
【解決手段】ひげぜんまい調整機構7は、渦巻状に形成されたひげぜんまい23と、ひげぜんまい23の外端部29が連結され、ひげぜんまい23の中心軸線Cと平行な第一軸線Oに沿う第一方向D1、及び第一軸線O回りの第二方向に回転可能なひげ持53と、てんぷ受6に連結されるひげ持受37と、ひげ持53を第一方向D1に移動可能に保持するとともに、第二方向に回転可能に支持されるひげ持押さえ54と、ひげ持53に当接することによりひげ持押さえ54に対するひげ持53の第一方向D1への移動を規制するひげ持ねじ55と、を備える。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12