(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
上述した膜厚測定を行う装置は、真空蒸着装置などの成膜装置に搭載される。膜厚測定装置が採用するQCM(Quartz Crystal Microbalance)法は、水晶振動子を加振することにより得られる直列共振周波数や半値半幅から堆積物の膜厚を測定したり、水晶振動子が製品寿命に達したことを検出したりすることに用いられる(例えば、特許文献1,2,3、非特許文献1を参照)。水晶振動子の直列共振周波数と膜厚との関係は、例えば、下記式(1)によって示される。水晶振動子の半値半幅と膜厚との関係は、例えば、下記式(2)によって示される。なお、直列共振周波数におけるコンダクタンス値の1/2が半値であり、直列共振周波数を頂点とした山形状を描く関数の半値における全幅の1/2が半幅である。下記式(2)において、半値における全幅の1/2は、半値半幅Fwとも表記する。差分ΔFwは、半値半幅Fwの変動量であり、相互に異なる2つの膜厚間での半値半幅Fwの変動量に対応する。
【0003】
下記式(1)は、堆積時の水晶振動子における直列共振周波数を系の入力として利用する場合に使用される。式(1)は、主に金属や金属酸化物などの比較的に硬い膜が水晶振動子に堆積する場合に用いられる。
【0004】
下記式(2)は、複素弾性率Gと損失弾性率G”とを系の入力として利用する場合に用いられる。すなわち、複素弾性率Gと損失弾性率G”との算出において堆積時の水晶振動子における直列共振周波数、および、半値周波数を系の入力として利用する場合に使用される。直列共振周波数は、基本波と、基本波の3倍波などのn倍波を用いてもよい。式(2)は、有機膜などの比較的に柔らかい膜が水晶振動子に堆積する場合に用いられる。
【0005】
なお、式(1)を用いる構成と式(2)を用いる構成との差異として、式(1)では、直列共振周波数のみを利用しているために測定における構成を簡略化できることが挙げられる。一方、式(2)では、半値周波数が変数として加わること等から、導出する入力次元数が上昇する方向、すなわち計算ステップ数が増加する方向となり、測定における構成が式(1)を主に利用する構成と比べて複雑となるが、測定精度の向上が期待できる。仮に、特許文献4に記載のn倍波等を利用する場合は、測定精度の向上が更に顕著になる。
【0006】
【数1】
【0007】
【数2】
式(1)において、ρ
fは堆積物の密度、t
fは堆積物の膜厚、ρ
qは水晶振動子の密度、t
qは水晶振動子の膜厚、Zは音響インピーダンス比、f
qは未堆積時の水晶振動子における直列共振周波数である。密度ρ
f、密度ρ
q、膜厚t
q、音響インピーダンス比Z、および、直列共振周波数f
qは、一般的に定数として扱うことが可能である。式(1)において、f
cは堆積時の水晶振動子における直列共振周波数であり、一般的に測定可能な値であり入力値とすることができる。この変数である入力値と上述した各定数を利用することによって、堆積物の膜厚t
fは、変数である直列共振周波数f
cの値が定まれば算出することができ、言い換えれば、膜厚t
f=f(直列共振周波数f
c)のように、直列共振周波数f
cの関数として表記することができる。
【0008】
式(2)において、差分ΔFwは、未堆積時の水晶振動子における半値半幅Fw
qと、堆積時の水晶振動子における半値半幅Fw
cとの差分として求められる。堆積時の水晶振動子における半値半幅Fw
cは、一般的に測定可能な値であり入力値とすることができる。なお、差分ΔFwは、式(2)の右辺に示されているように、次に説明するパラメータを用いて求めることもできる。Gは複素弾性率、G’は貯蔵弾性率、G”は損失弾性率である。ωは角周波数、F
0は基本周波数、Z
qは水晶のせん断モード音響インピーダンスである。複素弾性率G、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”は、先行する技術文献に記載の手法を用い、堆積時の水晶振動子における直列共振周波数、および、半値周波数を測定し、その測定結果を変数である入力値として利用することによって求めることができる。なお、直列共振周波数は、例えば、基本波とその3倍波などのn倍波を複合して求めることもできる。式(2)を利用すれば、直列共振周波数f
cと半値周波数とを変数である入力値とし、堆積物の膜厚t
fは、膜厚t
f=f(直列共振周波数f
c、半値周波数)のように、直列共振周波数f
cと半値周波数との関数として表記することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1から
図6を参照して、測定異常検出装置、および測定異常検出方法の一実施形態を説明する。本実施形態では、測定異常検出装置を備える膜厚測定装置が成膜装置に搭載されている例を説明する。膜厚測定装置は、膜厚の測定、および膜厚測定の異常判定を行う。成膜装置は、膜厚測定装置から出力される膜厚や判定結果に基づいて成膜材料の堆積速度についてフィードバック制御などを実行する。
【0020】
図1が示すように、成膜装置は、真空槽11を備える。真空槽11は、蒸着源12、および、検出装置14を内部に収容する。蒸着源12は、外部の電源13に接続されている。蒸着源12は、電源13から電力の供給を受けて、成膜材料を図示しない基板に向けて昇華させる。蒸着源12での昇華方式は、例えば、抵抗加熱式、誘導加熱式、電子ビーム加熱式などである。成膜材料は、有機材料、金属材料、金属酸化物や金属窒化物などの金属化合物材料である。基板は、半導体基板、石英基板、ガラス基板、樹脂フィルムなどである。成膜材料は、基板と検出装置14とにおいて同じように堆積する。
【0021】
膜厚測定装置は、検出装置14と、制御装置20とを備える。制御装置20は、制御部21、記憶部22、測定部23、および異常検出部24を備える。制御装置20は、検出装置14を制御する機能に加えて、成膜装置を制御する機能を兼ね備える。
【0022】
検出装置14は、水晶振動子を備える。水晶振動子は、所定の直列共振周波数を固有振動数として有する。水晶振動子を構成する材料は、例えば、ATカット型水晶振動子、あるいは、SCカット型水晶振動子である。水晶振動子の直列共振周波数は、例えば、3MHz以上6MHz以下である。検出装置14は、基板に堆積した堆積物の膜厚、および、堆積速度を測定するために用いられる。これら膜厚や堆積速度などに関わる測定値、および計算値は、成膜装置が行う処理のフィードバック量として成膜装置で用いられる。検出装置14は、真空槽11のなかで蒸着源12と対向するように配置されている。検出装置14は、検出した結果を制御装置20に出力する。
【0023】
水晶振動子の表面は、蒸着源12と対向するように配置されている。水晶振動子の表面には、任意の時間間隔で蒸着源12から成膜材料が堆積する。水晶振動子の表面に堆積する成膜材料は、任意の時間間隔で新たに付加された質量として、水晶振動子の振動周波数を変化させる。また、水晶振動子の表面における堆積物の質量は、堆積物の密度と相関を有する。つまり、水晶振動子の振動周波数の変化を測定すれば、水晶振動子の表面に堆積した成膜材料の膜厚である長さを求めることができる。そして、膜厚測定装置は、水晶振動子の加振を行い、加振の結果である振動波形から膜厚を間接測定する。
【0024】
膜厚測定装置は、加振源として周波数信号である交流信号を用いる。加振された水晶振動子は、表面に付着した堆積物を含めた系として応答する。膜厚測定装置は、機械的な振動現象が含まれた水晶振動子の応答を、水晶振動子の圧電効果を介した電気的な振動波形として検出する。膜厚測定装置は、検出結果である波形を記憶し、記憶された波形の解析を行う。膜厚測定装置は、波形の解析結果に含まれる膜厚を抽出して出力する。
【0025】
図2は、加振に対して応答する系を等価回路によって示す。なお、
図2が示す等価回路は、測定系とも言う。
【0026】
図2が示すように、水晶振動子は、モーショナル容量C1、モーショナルインダクタンスL1、直列等価抵抗R1から構成される直列共振回路と、シャント容量C0との並列回路として示される。直列共振回路は、水晶振動子の機械振動要素を含めた等価回路である。シャント容量C0は、例えば、水晶振動子を保持するためのパッケージなどが有する寄生容量を含めた水晶振動子を挟む電極間での容量である。直列等価抵抗R1は、水晶振動子が振動するときの内部摩擦、機械的な損失、音響損失などの振動の損失成分を示す。直列等価抵抗R1が高まるほど、水晶振動子は、振動しにくくなる。
【0027】
図1に戻り、制御装置20の測定部23は、第1測定部23Aおよび第2測定部23Bを備えている。ただし、測定部23は、第1測定部23A、および、第2測定部23Bの少なくとも一方を備えていればよい。すなわち、測定部23は、第1測定部23Aを割愛された構成であってもよいし、第2測定部23Bを割愛された構成であってもよい。制御装置20は、主に成膜装置が行う処理を制御し、制御部21は、主に膜厚測定装置が行う処理を制御する。
【0028】
制御装置20は、電源13に電力を供給させて、蒸着源12から基板に向けて成膜材料を昇華させる。制御装置20は、例えば、制御部21から得られる堆積速度を用いて、堆積速度が目標値となるように、電源13の出力電力をフィードバック制御する。蒸着源12を用いた成膜が開始されると、制御部21は、記憶部22に記憶された測定プログラムや測定異常検出プログラムなどを読み出して、読み出されたプログラムを実行することによって、膜厚測定方法や測定異常検出方法を実行する。
【0029】
制御部21は、測定部23から検出装置14に交流信号を入力させる。第1測定部23Aを備える構成において、制御部21は、例えば、直列共振周波数Fsを第1測定部23Aに測定させる。第2測定部23Bを備える構成において、制御部21は、水晶振動子の直列共振周波数Fsの付近に交流信号の周波数を掃引することによって、直列共振周波数Fs、半値周波数F1,F2、および半値周波数幅を、第2測定部23Bに測定させる。
【0030】
制御部21は、検出装置14の応答である振動波形を記憶部22に記憶させる。制御部21は、測定部23と異常検出部24とが扱う各種の値を記憶部22に記憶させる。制御部21は、振動波形の解析を行う、あるいは測定部23に振動波形の解析を行わせる。制御部21は、予め指定された時間間隔における膜厚、すなわち堆積速度を、測定部23に算出させる。そして、制御部21は、測定部23から入力される各種の値を異常検出部24に処理させる。
【0031】
制御部21は、制御装置20より成膜が終了したことを受け取ると、測定プログラムの実行を終了させる。
【0032】
制御部21は、例えば、CPU、RAM、ROMなどのコンピュータに用いられるハードウェア要素、および、ソフトウェアによって構成される。制御部は、各種の処理を全てソフトウェアで処理するものに限らない。例えば、制御部は、各種の処理のうちの少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェアである判定用途向け集積回路(ASIC)を備えてもよい。制御部は、ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラムであるソフトウェアに従って動作する1つ以上のプロセッサであるマイクロコンピュータ、あるいは、これらの組み合わせ、を含む回路として構成してもよい。
【0033】
記憶部22は、目標値、指標、検出指標空間、標本、電圧振動波形、加振周波数範囲、加振信号波形などの各種の値、膜厚測定プログラム、測定異常検出プログラム、および、データを記憶する。制御部21は、記憶部22が記憶する各種の値や膜厚測定プログラム、および、データを読み出し、膜厚測定プログラムを実行することによって、測定部23に各種の処理を実行させる。制御部21は、各種の処理を実行させる。記憶部22が記憶する各種の値や測定異常検出プログラム、および、データを読み出し、測定異常検出プログラムを実行することによって、異常検出部24に、測定異常の判定を含む各種の処理を実行させる。
【0034】
第1測定部23Aは、記憶部22および制御部21と連携することによって、共振特性値の一例である水晶振動子の直列共振周波数Fsなどを測定可能に構成されている。第1測定部23Aは、例えば、発振回路と測定回路とを備える。発振回路は、交流信号を加振信号とし、検出装置14が備える水晶振動子に、未堆積時の水晶振動子の直列共振周波数Fs、またはその近傍の周波数などの特定の周波数を入力して、水晶振動子を振動させる。測定回路は、例えば、加振を停止させた後の減衰応答である電圧振動波形を測定し、その結果を記憶部22に記録する。制御部21は、記録された電圧振動波形に対し、予め準備された公知の解析手法を用い、必要とする共振特性値を算出する。解析手法の例としては、指数関数的な減衰を利用した手法(以下、Ring-down analysisとも表記する)である。Ring-down analysisは、水晶振動子の表面に付加された変動質量が減衰応答時の運動エネルギー放出変動として観察できることを利用した解析手法である。
【0035】
第2測定部23Bは、所謂、ネットワークアナライザとして機能する。第2測定部23Bは、直列共振周波数Fsと半値周波数F1,F2などを、記憶部22および制御部21と連携せずに測定可能に構成されている。第2測定部23Bは、信号供給回路と測定回路とを備え、水晶振動子に供給した加振信号を、加振信号が重畳した応答である電圧振動波形から除去し、応答信号のみを分離可能に構成されている。例えば、信号供給回路は、検出装置14が備える水晶振動子に、交流信号を加振信号として入力する。加振信号には、例えば水晶振動子の直列共振周波数Fsの付近における正弦波スイープ信号を用いる。測定回路は、例えば応答信号から、直列共振周波数Fs、半値周波数F1,F2、および、半値半幅Fwを求める。これら直列共振周波数Fs、半値周波数F1,F2、および、半値半幅Fwは、共振特性値の一例である。
【0036】
このように、測定部23として第1測定部23Aまたは第2測定部23Bを備える構成であれば、膜厚を導くための関数である式(1)または式(2)における変数の入力値が得られる。第1測定部23Aおよび第2測定部23Bのいずれか一方が、測定結果に基づいて制御部21に選択される構成でもよい。また、測定部23は、式(1)から式(6)に記載された変数以外を必要に応じて計算する構成であってもよい。
【0037】
図3が示すように、半値周波数F1,F2は、直列共振周波数Fsにおけるコンダクタンスの最大値の1/2を与える周波数である。半値周波数幅は、半値半幅Fwの2倍であり、一方の半値周波数F1と他方の半値周波数F2との差分値である。換言すれば、半値半幅Fwは、半値周波数幅の1/2である。
【0038】
ところで、水晶振動子における発振周波数の精度や安定性の指標であるQ値、および、D値は、下記式(3)、(4)によって示される。モーショナル容量C1が変化せず定数としての取り扱いが可能とすれば、モーショナルインダクタンスL1は、直列共振周波数Fsにより下式(5)によって示され、直列等価抵抗R1は、下記式(6)によって示される。これらの式は、記憶部22に保存されている。制御部21は、これらの式を利用して各種の値を計算する。例えば、制御部21は、測定部23において半値周波数F1,F2、および直列共振周波数Fsが得られるごとに、これらの式に基づく計算を時系列的に行う。制御部21が行う計算は、異常検出部24が行ってもよい。時系列的に行われた計算の結果である計算値は、時系列に従って時間インデックス値を付与された後に、記憶部22に保存される。測定部23において同一の機会に得られる半値周波数F1,F2および直列共振周波数Fsを用いた計算の結果には、同一の時間インデックス値が付与される。時間インデックス値の付与は、測定部23、制御部21、異常検出部24のなかのいずれかで行われる。
【0039】
Q=Fs/(2×Fw) ・・・ 式(3)
D=1/Q ・・・ 式(4)
L1=1/((2π×Fs)
2×C1) ・・・ 式(5)
R1=4π×L1×Fw ・・・ 式(6)
測定部23は、上述した共振特性値の測定や解析を含めた処理を、所定の時間毎に繰り返し実行し、測定値や計算値を記憶部22に送信する。測定の時間間隔は、精度面からは処理可能な範囲で最小の時間として固定されてもよいが、制御装置20、あるいは制御部21による一時中断を含め、可変としてもよい。この時間変動は、記憶部22において時間インデックス値の相対関係として記録されているため、指定される時間あたりの堆積速度の算出処理のような、その後の数値処理に利用することも可能となる。
【0040】
図1に戻り、異常検出部24は、測定部23が測定や解析に使用した信号、および、記憶部22が記憶する測定値や計算値を利用可能に構成される。記憶部22が記憶する測定値や計算値の例としては、加振や応答の時間応答波形である電圧振動波形、半値周波数F1,F2、直列共振周波数Fs、共振周波数におけるコンダクタンス値、直列等価抵抗R1、膜厚などである。なお、検出指標空間を定めるための指標の値は、測定異常の有無を判定するための予め実験的に定められた値であり、例えば、制御装置20を経由して記憶部22に手動入力される。
【0041】
異常検出部24は、同一の時間インデックス値が付与された2つ以上の値の組み合わせを標本として取り扱えるように構成されている。つまり、複数の標本は、時間インデックス値を有したスプレッドシート状のデータとなる。なお、標本の取り扱いに際して、測定部と制御部21とは、複数の標本である標本群を作成し、標本群を記憶部22に保存した後に、異常検出部24が標本群を利用してもよい。
【0042】
以下、異常検出部24が実行する測定異常の検出概要を説明する。以下の説明において、異常検出部24は、特定部25と検出部26とを備える。
【0043】
まず、異常検出部24は、準備工程として、記憶部22が記憶する指標の値に基づいて、検出指標空間を定める。指標の値は、検出指標空間を定めるための次元における正常範囲を特定する値である。検出指標空間は、測定における正常範囲を示す空間であり、2次元以上の領域を有した空間である。なお、本実施形態において、検出指標空間を定める各次元は、別々の物理量に対応する。次元と物理量とは、一対一の対応関係を有し、次元は、それに対応した物理量に入れ替えることもできる。次に、異常検出部24は、準備工程として、測定部23が測定する測定値、あるいは記憶部22が記憶する測定値や計算値について、検出指標空間を定める次元に対応した値となるように、各種の物理量を選択する。
【0044】
異常検出部24は、制御部21からの処理命令に従って、作業工程として、選択した物理量である選択物理量での値を取り込む。選択物理量での値の取り込みは、測定部23の処理と同期した逐次処理とするか、選択物理量での値に時間インデックス値が付与されている場合であれば、測定部23の処理と非同期の処理としてもよい。なお、以下は、逐次処理が行われる場合を説明する。異常検出部24に取り込まれた選択物理量での値は、標本として取り扱われる。標本は、インデックスとして時間インデックス値を利用する。各標本は、インデックスを利用することによって、例えば任意の標本間での単位時間変化量の算出を可能とする。なお、上記では、異常検出部24が取り込む値が、選択された物理量である例を示したが、後述するように、異常検出部24が取り込む値は、無次元などの各種の値とすることもできる。
【0045】
異常検出部24は、検出指標空間と同一の空間に標本を点として示すように構成されている。なお、本実施形態において、異常検出部24は、検出指標空間と標本とを同一の2次元平面に示すように構成されている。異常検出部24は、例えば特定部25に、この作業を実行させる。特定部25は、2次元平面において標本が示す点を特定した後、標本が検出指標空間外か否かの判定を行う。例えば、2次元平面における標本の各座標値について、検出指標空間が示す正常範囲内であるか否かを、正常範囲を特定する各指標の値との大小関係を判別するなどの論理演算を行うことによって判定する。本実施形態では、特定部25は、検出指標空間を閉じた2次元平面として特定し、正常範囲のなかに標本の座標が存在する場合には正常であると判定し、正常範囲のなかに標本の座標が存在しない場合には測定異常であると判定する。
【0046】
特定部25は、測定異常であると判定した場合に、測定異常が生じていることを検出したものとして、例えば記憶部22に入力する。検出部26は、測定異常が生じていることを記憶部22、あるいは特定部25から受け取ると、必要な処理を施した後に、測定異常が生じていることを検出した旨の出力を行う。測定異常が生じている旨の出力を受けると、制御部21、あるいは制御装置20は、例えば水晶振動子を交換する作業、あるいは成膜装置を停止させるための作業を開始する。なお、検出部26で行われる必要な処理は、時間領域に係る処理であって、例えばノイズ低減手法に代表される信号処理である。例として、複数回の異常判定がなされた後に測定異常を検出する処理が挙げられる。ただし、特に時間領域に係る処理が必要でなければ、特定部25で判定された結果が即時出力されてよい。この構成の場合、検出部26は割愛されてもよい。
【0047】
制御部21は、異常検出部24によって測定が正常であると判定された場合に、予め設定された時間間隔後に、選択物理量での値を取り込んで異常検出部24に判定を行わせる処理の命令を再度行う。処理の繰り返しは、通常、成膜装置の制御装置20が成膜終了となるまで行われる。
【0048】
なお、標本が有する値は、典型的には、式(1)から(6)を構成する各項となる物理量ではあるが、式(1)から(6)を変形して、各項を無次元量としてもよい。この際、検出指標空間を定める次元の値、すなわち、記憶部22が記憶する指標の値もまた、無次元量である。こうした無次元量を用いる構成においても、検出指標空間内に標本が存在するか否かの判別によって、同様の結果が得られる。また、標本を構成する次元の数は、検出指標空間を構成する次元以上であってもよい。本実施形態では、
図4、5が示すように、直列共振周波数Fs(MHz)と直列等価抵抗R1(Ω)との組、膜厚(μm)と直列等価抵抗R1(Ω)との組を、2次元の標本として利用している。また、2つの物理量の間に相関関係が存在するのであれば、上述した式(1)から(6)に存在しない物理量も利用できる。例えば、
図2が示す等価回路の全体に流れる電流や、シャント容量C0に流れる電流などを、標本を構成する次元に含めてもよい。
【0049】
複数の標本は、時間インデックス値を有するため、異常検出部24は、現在から特定の時間範囲の標本を指定でき、指定範囲の標本群を抽出することが可能である。つまり、異常検出部24は、標本ごとに判定を行い、その判定の結果を集計し、直近の時間あたりの異常発生率である次元単位の異常率を計算することができる。これは、次元別に時間領域の異常検出感度を設定できることを意味する。言い換えると、異常検出部24は、各物理量別に正常範囲となる指標を設けて異常判定を行い、更に各物理量別に単位時間あたりの異常率が超過したか否かを重ねて判定し、その後に測定異常の検出とする処理が可能となる。別の類似手法として、例えば一次遅れを模した数値演算手法に代えて、同様の機能を実現してもよい。
【0050】
図4を参照して、2つの次元を用いた測定異常の検出例を説明する。なお、
図4、および
図5においては、予め実施された実験によって、正常例と膜質異常例とが事前に判明している標本が示されている。
【0051】
膜厚の測定とは、水晶振動子に成膜材料が堆積する際の時系列的な測定である。そのため、水晶振動子での成膜材料の堆積が進行すると、付加された質量に準じて直列共振周波数Fsが低下し、周波数軸の左端に向けて状態が遷移する。つまり、
図4の周波数軸における右端は、成膜材料が水晶振動子に堆積されていない状態であって、膜厚がゼロであるときを示す。そして、膜厚がゼロであるときの水晶振動子が5MHzで直列共振していることを示す。
【0052】
<第1実施例>
図4が示す例には、堆積物が金である第1実施例が含まれる。異常検出部24は、1つの次元である直列共振周波数Fsに対応する第1検出指標として、5MHz以下4.2MHz以上を定める。また、異常検出部24は、他の次元である直列等価抵抗R1に対応する第2検出指標として、20Ω以上50Ω以下を定める。これら2つの指標は、4組の座標点であり、四角形状の平面を区画する検出指標空間を特定する。なお、第1検出指標は、4.2MHz以上としてもよく、この構成は、検査済みの水晶振動子を用いるなどのように、第1検出指標の上限について異常判定を行う必要が無い場合などに適用される。
【0053】
ここで、特許文献3のような従前の技術では、例えば、直列共振周波数Fsが4.2MHzを下回ると、堆積によって水晶振動子の使用可能期間が終了したと定められる、すなわち水晶振動子が寿命を迎えたと判定される。つまり、振動波形の解析から得られる直列共振周波数Fsが4.2MHzを下回った場合に、個体異常が生じていると判定される。個体異常の検出は、直列共振周波数Fsのみである1つの次元を選択し、選択された1つの次元での検出指標を5MHz以下4.2MHz以上と定め、その定められた範囲である直線状範囲や指標値内を正常、範囲外を個体異常であると判定することである。言い換えれば、個体異常の検出は、直列共振周波数Fsのみを利用する標本と指標の値との大小関係を利用した検出であると言える。この際、指標の値を多段としたり、特許文献3に記載のような、標本群の時間あたり異常率を利用した、ノイズ低減手法も適用されている。
【0054】
これに対して、第1実施例では、第1検出指標と第2検出指標との2種類の指標が判定に用いられる。すなわち、四角形状で囲まれる2次元の検出指標空間が判定に用いられる。特定部25は、検出指標空間となる平面内に各標本が位置するか否かを、各標本について論理演算することによって判定し、判定の結果である正常または異常を示すステータスを各標本に付与する。
【0055】
なお、ステータスの付与処理は、標本の時系列取得に応じた逐次処理としている。検出指標空間が示す空間形状は、四角形状に限らず、選択された検出指標、または指標の値に応じて、三角形状や不定形形状に定めることができる。例えば、直列等価抵抗R1に対応する第2検出指標として、5MHzにおいて20Ω以上50Ω以下、4.2MHzにおいて30Ω以上80Ω以下として、直列等価抵抗R1が堆積するにつれて一方向へと定率的に変動する傾向に応じた台形のような検出指標空間とする。これによって、何れの堆積状態でも最適な検出感度を保つ事が可能となる。本実施例では、特定部25で判定された結果は、検出部26経由で逐次出力される。
【0056】
上述したように、2次元以上の検出指標空間を用いる構成であれば、複数の次元について測定異常の検出が可能となる。従来例のように、直列共振周波数Fsのみの1次元の検出指標空間を定める構成では、
図4が示す直列等価抵抗R1のみが変動した結果である膜質異常の標本を測定異常として検出することはできない。仮に、直列共振周波数について時間あたりの異常率を利用しても、
図4が示す4.4MHzと4.5MHzとの間に示されうる膜質異常を測定異常として検出することはできず、恰も、正常な測定として測定が行われてしまう。これは、直列等価抵抗R1の変動が、直列共振周波数Fsの時間領域における変動に結びついていないためである。これに対して、直列周波数領域に加え直列等価抵抗R1の領域を加えた2次元の検出指標空間を用いる構成であれば、
図4が示す膜質異常の標本を測定異常として検出することが可能となる。なお、測定異常の判定に用いる指標の物理量は、測定異常として判別し得る感度などの要望から、膜質異常などのように、生じ得る測定異常に応じて、適宜選択することが可能である。
【0057】
<第2実施例>
図4が示す例には、堆積物がアルミニウムである第2実施例が含まれる。第2実施例では、第1実施例で説明した検出指標空間に代えて、曲線を模した多角形状境界を有する2次元の検出指標空間、あるいは、曲線状の境界を有する2次元の検出指標空間を定めること以外は、第1実施例と同様の検出が行われる。以下、第1実施例と相違する検出指標空間について説明を行う。
【0058】
第1実施例において、第1検出指標と第2検出指標とは、最大で4組の座標点を定めるに留まるが、曲線を模した多角形状境界、あるいは曲線状の境界を定める第2実施例では、第1検出指標として3つ以上の値を定めて、4組を超える座標点を検出指標空間として指定する。以下、曲線を模した多角形状境界、あるいは曲線状の境界を定める第1検出指標を、曲線状指標とも言う。
【0059】
次に、曲線状指標の算出手法について説明する。
【0060】
例えば、アルミニウムの物性値である貯蔵弾性率G’が26GPaであること、および、アルミニウムの損失弾性率G”が0.2GPaであることを用い、直列等価抵抗R1=f(直列共振周波数)として表される指標関数が予め導出される。指標関数の導出にあたっては上述した式などを用いる。制御装置20は、こうした指標関数を用いて、第1検出指標の範囲である5MHz以下4.2MHz以上について掃引を行い、各周波数における直列等価抵抗の値を計算する。
図4に示される破線は、第1検出指標の範囲で掃引した際の座標の軌跡を示す。
【0061】
図4が示す破線は、物性値に基づいた計算値であるため、制御装置20においては、例えば、変動の許容範囲が計算値の±10%として定められる。つまり、
図4の破線が示す値の1.1倍が第1検出指標の上限を示す曲線状指標であり、
図4の破線が示す値の0.9倍が第1検出指標の下限を示す曲線状指標として定められる。
【0062】
なお、第2実施例では、検出指標を直列等価抵抗の次元についてのスカラー値である倍数で規定したが、変動を許容する破線の摂動方向は、直列共振周波数側の次元を含めてもよい。つまり、摂動量をベクトル値で規定してもよい。このようにすれば、変動する傾向が2つの次元にまたがる場合であっても、測定異常の検出をより精度良く行うことが可能となる。また、様々な実験を要さずに検出指標空間を定められるため、検出指標空間を定めるための作業を簡略化できる。また、予め実施される実験の結果と、上述した計算値とを組み合わせれば、摂動量が明確となり、測定異常の判定における精度を更に向上させることが可能となる。
【0063】
また、曲線状指標によって示される境界を有した検出指標空間を定める検出によっても、
図4が示す膜質異常の標本例が測定異常であると検出することが可能となる。例えば、従来例のように、直列等価抵抗R1のみの1次元の検出指標空間を定めて、1次元の検出指標空間を20Ω以上700Ω以下とする構成では、
図4が示す膜質異常の標本を測定異常として検出することが不可能である。仮に、直列等価抵抗R1が50Ω以下である範囲を検出指標空間として定めた場合には、直列等価抵抗R1が100Ωである膜質異常の標本を測定異常として検出することは可能とはなるが、直列共振周波数Fsが4.6MHz以下の正常な標本をも測定異常であると検出してしまう。結果として、水晶振動子の寿命、すなわち使用可能期間を大幅に短くしてしまう。これに対して、曲線状指標によって示される境界を有した検出指標空間、言い換えると曲線状境界を有した検出指標空間を用いる構成であれば、堆積物がアルミニウム膜である場合であっても、
図4における正常の標本と異常の標本とを明瞭に区別することが可能となる。
【0064】
<第3実施例>
第3実施例では、損失弾性率G”が無視できる領域、すなわち水晶振動子に成膜材料が堆積しても、複素弾性率G、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”が水晶振動子の固有値からほぼ変動しない領域が、第1検出指標の範囲である場合を説明する。第3実施例では、堆積物の密度ρ
fを成膜材料である有機物の値として、直列等価抵抗R1=f(直列共振周波数)として表される指標関数を導出する。
【0065】
制御装置20は、こうした指標関数を用いて、第1検出指標の範囲で掃引を行い、各周波数における直列等価抵抗の値を計算する。
図5に示される直線は、第1検出指標の範囲で掃引した際の座標の軌跡を示す。制御装置20は、
図5に示される直線を第2実施例と同様に摂動させて、第1検出指標と組み合わせることによって、四角形状の検出指標空間を定める。そして、制御装置20は、こうして定められた検出指標空間を用いて、測定異常の検出を行う。
【0066】
なお、堆積物の密度ρ
fから検出指標空間を定める構成であれば、堆積物の密度ρ
fを金やアルミニウムに変更してもよい。つまり、堆積物の密度ρ
fによって2次元の検出指標空間を選択するように変更してもよい。すなわち、検出指標空間の選択は、堆積物の密度ρ
f、直列等価抵抗R1、および直列共振周波数Fsの3つの指標を利用した3次元の検出指標空間から、堆積物の種類に応じた2次元の検出指標空間を選択している、と言い換えることもできる。このように、検出指標空間は、2次元に限られず、3次元以上の空間を適宜利用してもよい。
【0067】
<第4実施例>
第4実施例では、第2実施例の検出指標空間として用いる次元を直列共振周波数Fsから膜厚に変更する。そして、第4実施例は、第2実施例と同様の曲線を模した多角形状境界を有する2次元の検出指標空間、あるいは、曲線状の境界を持つ2次元の検出指標空間を用いて、測定異常の検出を行う。
【0068】
まず、直列等価抵抗=f(膜厚)として表される指標関数が導出される。指標関数の導出では、第2実施例と同様の条件が用いられる。つまり、アルミニウムの堆積量の変化が直列等価抵抗R1の変化に対応する関数が、指標関数として導出される。制御装置20は、こうした指標関数を用いて、第1検出指標の範囲である膜厚の範囲で掃引を行い、各膜厚における直列等価抵抗の値を計算する。
図6に示される破線は、指標関数を用いて掃引した際の座標の軌跡を示す。次に、制御装置20は、第1検出指標を設定する。第1検出指標は、予め実施される実験によって計算されてよいが、第2実施例と同様の条件であれば、第1検出指標は、0μm以上60μm以下である。こうした膜厚の範囲は、第2実施例の第1検出指標である5MHz以下4.2MHz以上に対応した値である。次に、制御装置20は、
図6の破線を摂動させた検出指標空間を定める。以降、測定異常を検出する手順は、第2実施例と同様である。
【0069】
つまり、第4実施例は、第2実施例と比較し、第1検出指標と第2検出指標とが実質的に同一であり、第4実施例と第2実施例との相違は、検出指標空間を構成する次元の一つである。具体的には、第2実施例の検出指標空間を構成する直列共振周波数Fsが、第4実施例において膜厚に代えられている。そして、第4実施例における検出指標空間は、物性値としてアルミニウムを利用しているため、堆積物がアルミニウムである場合に利用可能である。
【0070】
ここで、
図6の破線に示されるように、膜厚と直列等価抵抗とを次元とした空間には、アルミニウムを堆積物とした正常な標本、および膜質異常の標本、これに加えて、銀、およびアルミニウムキノリノール錯体(Alq
3)を堆積物とした正常な標本も示される。この例では、正常な標本は、第1検出指標において0μm以上20μm以下、第2検出指標においては第1実施例と同様の範囲に存在することが認められる。そして、膜質異常の標本の座標値は、第2検出指標から十分に離れていることが認められる。
【0071】
このように、第4実施例における摂動について、上記を満たすように行えば、物性値としてアルミニウムを利用した検出指標空間であるにも関わらず、その検出指標空間を用いた判定であれば、金、銀、有機物であるアルミニウムキノリノール錯体(Alq
3)についても、測定異常を検出可能である。また、相互に異なる密度を有した堆積物に関して測定異常の検出が可能であるから、制御装置20での計算ステップ数を増加させずに、測定異常の判定が可能となる。
【0072】
以上、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0073】
(1)2次元以上の検出指標空間を用いた異常判定を行うため、1次元の検出指標では検出できない測定異常を検出することが可能となる。
【0074】
(2)検出指標空間を構成する次元に膜厚を含む構成は、堆積物が比較的に硬い膜である場合であれ、堆積物が比較的に軟らかい膜である場合であれ、測定異常を判定可能とする。
【0075】
(3)直列等価抵抗R1と直列共振周波数Fsとは、水晶振動子に堆積する堆積物の質量変化に別々に強く応答する次元であるから、直列共振周波数Fsと直列等価抵抗R1との少なくとも1つを含む検出指標空間であれば、質量変化に依存した測定異常を検出するうえで好適とも言える。
【0076】
(4)密度ρ
fは、内部摩擦と複素弾性率とが直列等価抵抗R1に寄与し得る比較的に軟らかい膜が測定対象である場合であれ、内部摩擦と複素弾性率とが直列等価抵抗R1に寄与し得ない比較的に硬い膜であれ、水晶振動子に堆積する堆積物の質量変化に直接的に応答する次元である。そのため、密度ρ
fを含めた3次元の検出指標を用いる構成であれば、質量変化に依存した測定異常が生じているか否かを検出するうえで、特に好適とも言える。
【0077】
(5)検出指標空間を構成する次元に膜の密度が含まれる構成であれば、堆積物が比較的に硬い膜である場合であれ、堆積物が比較的に軟らかい膜である場合であれ、これらに共通した検出指標空間として適用可能である。
【0078】
(6)標本群を得るための共振特性値として、直列共振周波数Fsと半値周波数F1,F2とを用いる構成であれば、上記式2を利用することが可能ともなるため、上記式1のみを利用する場合と比べて、検出指標の表現に用いられる次元の範囲を拡張することが可能ともなる。
【0079】
<他の実施例>
検出指標空間を構成する次元は、直列共振周波数Fsと直列等価抵抗R1、あるいは、直列共振周波数Fsと半値周波数幅とから得られるD値、D値と直列等価抵抗R1であってもよい。さらに、検出指標の表現に用いられる次元は、直列共振周波数Fs、直列等価抵抗R1、Q値、半値半幅、膜厚、水晶振動子に流れる電流値からなる群から選択される2種類以上であってもよい。例えば、第1検出指標値は、直列共振周波数Fs、直列等価抵抗R1、Q値、半値半幅、膜厚、水晶振動子に流れる電流値からなる群のなかの1種であり、第2検出指標値は、同群のなかの第1検出指標値以外の1種であってもよい。この際、測定異常の検出精度を高められる観点から、第1検出指標値に対して第2検出指標値が大きく変わる変数の組みを選択することが好ましい。
【0080】
なお、検出部26は、例えば、ノイズ対策として、時間遅れ要素を付加して測定異常の検出を行う。時間遅れ要素を付加する例は、時系列で逐次処理されるステータスの判定時に、所謂一次遅れ要素を付与して判定を行う。具体的には、検出部26は、標本が異常であることを示すステータスが付与された所定数の標本を任意の時間あたりに検出部26が受け取った場合に、検出部26は、測定異常を発生していると判定する。なお選択した指標について時間的な検出感度を高めたい場合は、その指標の次元方向については前述した一次遅れ要素等を付加せずに即時判定とする検出処理としてもよい。つまり本発明の技術思想では各次元毎に適切なノイズ対策を行うことも可能である。
測定異常検出装置は、共振特性値から複数の標本を得る。複数の標本は、時系列を有した標本群として取り扱われるものであって、かつ、各標本が2つ以上の相互に異なる次元を有するものである。測定異常検出装置は、標本が有する全ての次元によって表現される検出指標空間を用い、測定部が取得した標本群のなかに検出指標空間外の標本が含まれるか否かを標本群と検出指標空間との論理演算によって判定する異常検出部(24)を備える。