特許第6703318号(P6703318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6703318
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/10 20060101AFI20200525BHJP
   B23C 5/28 20060101ALI20200525BHJP
   B23B 51/06 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B23B27/10
   B23C5/28
   B23B51/06 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-191125(P2019-191125)
(22)【出願日】2019年10月18日
【審査請求日】2019年11月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 凌
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−081459(JP,A)
【文献】 特開平08−252745(JP,A)
【文献】 特開平11−246881(JP,A)
【文献】 米国特許第06299388(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0352640(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/10
B23Q 11/10
B23B 51/06
B23C 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンク部からヘッド部へクーラントを流通させる流路が内部に設けられた本体部と、
前記流路のうち前記ヘッド部の開口端部に配設され、切削領域へ向けて前記クーラントを吐出するノズルと
を備え、
前記ノズルは、前記シャンク部から前記ヘッド部へ前記クーラントが供給された場合に前記クーラントの流圧により前記切削領域の方向へ突出する突出状態となり、前記ノズルの先端部が前記開口端部の方向へ外力を受けた場合に退避する退避状態となり、
前記ノズルは、前記退避状態において、前記先端部とは反対側の、前記流圧を受ける後端部が他の部材と接触するが面接触しない切削工具。
【請求項2】
前記ヘッド部は、交換式の切削インサートを装着する装着部を有する請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記ノズルを前記開口端部に配設するために前記ヘッド部に設けられた貫通孔は止栓によって封塞され、
前記ノズルは、前記退避状態において、前記後端部が前記止栓と接触する請求項1または2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記止栓の中心軸と前記ノズルの中心軸は、交差またはねじれの関係にある請求項3に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
切削工具を用いてワークを切削する場合に、発生する熱を除去したり、摩擦力を低減したりするために、切削領域へ向けてクーラントを吐出する技術が知られている。特に、クーラントを吐出させるノズルをヘッド部に設けた切削工具が、近年着目されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012−517908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノズルを切削工具のヘッド部に進退可能に設け、クーラントの流圧を利用して退避状態から突出状態へノズルを遷移させる構造を採用した場合に、切削工具へクーラントの供給を開始してもノズルが突出状態に遷移しない事象がしばしば発生している。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、進退可能に設けられたノズルが、クーラントの供給開始と共に確実に突出状態へ遷移する切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の具体的な態様における切削工具は、シャンク部からヘッド部へクーラントを流通させる流路が内部に設けられた本体部と、当該流路のうちヘッド部の開口端部に配設され、切削領域へ向けてクーラントを吐出するノズルとを備え、当該ノズルは、シャンク部からヘッド部へクーラントが供給された場合にクーラントの流圧により切削領域の方向へ突出する突出状態となり、ノズルの先端部が開口端部の方向へ外力を受けた場合に退避する退避状態となり、また、当該ノズルは、退避状態において、先端部とは反対側の、流圧を受ける後端部が他の部材と面接触しない。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、クーラントの供給開始と共に確実にノズルを突出状態へ遷移させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る切削工具の全体斜視図である。
図2】ノズルが突出状態であるヘッド部の外観斜視図である。
図3】ノズルが退避状態であるヘッド部の外観斜視図である。
図4】本体部の内部に設けられた流路等を示す部分透視図である。
図5】ノズルの突出状態を示すヘッド部の断面概略図である。
図6】ノズルの退避状態を示すヘッド部の断面概略図である。
図7】ノズルと止栓の他の実施例を示す概略図である。
図8】ノズルと止栓のさらに他の実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る切削工具100の全体斜視図である。本実施形態における切削工具100は、旋盤用の切削工具である。切削工具100は、本体部110とノズル150を備える。本体部110は、旋盤のチャックに固定される柄の部分であるシャンク部120と、ノズル150が配設され、切削インサート200が装着されるヘッド部130とを有する。シャンク部120は、後述する内部流路にクーラントを供給するための供給口121が設けられている。クーラントは、外部のタンクから供給口121に接続されたホースを介して切削工具100の内部流路へ供給される。なお、クーラントの切削工具100への供給は、ホースを介さず、工作機械の刃物台やチャックに設けられたクーラント供給口に直結する形式であっても良い。
【0011】
ヘッド部130は、ノズル150を後述するように進退可能にガイドするノズルガイド部131と、切削インサート200を収容して装着できるように凹形状に形成された装着部132とを有する。本実施形態におけるノズルガイド部131は、シャンク部120およびヘッド部130と一体的に形成されているが、ヘッド部130に対して着脱可能に構成することもできる。着脱可能に構成する場合には、後述するようにノズル150をノズルガイド部131の後端から挿入する場合に限らず、ヘッド部130と接する接触面側からノズル150を組み込むこともできる。着脱可能に構成されたノズルガイド部131は、例えば、締結ビスによってヘッド部130の上面に固定される。
【0012】
切削インサート200は、例えば図示するような菱形形状をなす交換可能な刃先チップであり、装着部132に載置され、固定ねじ210によって装着部132へ固定される。一定の使用を経て切削能力が低下した切削インサート200は、装着部132から取り外され、他の切削インサート200へ交換される。なお、本実施形態においては、菱形の切削インサート200を装着する切削工具100を説明するが、三角形、矩形、円形等の他の形状の切削インサートを装着できる切削工具であっても良い。また、切削インサートを装着部に載置して固定する切削工具に限らず、他の装着手法を採用する切削工具であっても良い。
【0013】
図2は、ノズル150が突出状態であるヘッド部130の外観斜視図である。切削工具100へのクーラントの供給が開始されると、ノズル150は、ノズルガイド部131にガイドされてノズルガイド部131の開口端部133から矢印で示す方向へ飛び出し、突出状態となる。矢印で示す方向は、切削インサート200の刃がワークと接触してワークを削る領域とその周辺領域である切削領域の方向である。したがって、クーラントは、切削工具100がワークを切削する使用状態において、ノズル150から切削領域へ向けて吐出される。
【0014】
クーラントは、切削領域で発生する熱を除去したり、刃先とワークの摩擦力を低減したりするために供給される媒体であり、水と油を混合したエマルジョン、切削油、圧縮空気、液化ガス等が用いられる。熱除去や摩擦力低減の効果を高めるために、ノズル150の吐出口はできるだけ切削領域に近いことが好ましい。ノズル150の吐出口が切削領域に近ければ、遠い場合と比較して少量のクーラントで同等の熱除去や摩擦力低減の効果を得ることができる。また、少量のクーラントを供給すれば良いのであれば、ヘッド部130の内部に設ける流路も狭小化できるので、ヘッド部130を小型化することができる。この観点から、本実施形態におけるノズル150は、突出状態において、先端部である吐出口が固定ねじ210の中心よりも切削領域側まで伸延するように構成されている。
【0015】
図3は、ノズル150が退避状態であるヘッド部130の外観斜視図である。切削工具100へクーラントが供給されていなければ、ノズル150は、例えば作業者によりその先端部が開口端部133の方向へ押されることにより、ノズルガイド部131の内部に収容されて退避する退避状態となる。より具体的には、ノズル150は、切削インサート200の上部空間から退避する。
【0016】
このように、退避状態においてノズル150が切削インサート200の上部空間から退避すれば、作業者は、切削インサート200の交換作業を行いやすく、ノズル150を損傷する恐れも少ない。なお、切削インサート200の交換作業を行いやすい限りにおいては、退避状態においてノズル150の一部が当該上部空間を覆っていても良い。
【0017】
図4は、本体部110の内部に設けられた流路等を示す部分透視図である。本体部110において、外部より観察できる形状を点線で示し、内部流路を実線で示している。また、ノズル150と、止栓171、172の外観形状を実線で示している。
【0018】
上述のように、本体部110の内部には、シャンク部120からヘッド部130へクーラントを流通させる流路が設けられている、本実施形態において当該内部流路は、それぞれドリルで形成された孔である中央孔161、ヘッド孔162、止栓孔163、ガイド孔164を含んで形成されている。中央孔161は、主にシャンク部120の内部においてシャンク部120の長手方向に沿って設けられた流路であり、上述の供給口121と連通している。ヘッド孔162は、ヘッド部130の内部に設けられた流路であって、中央孔161の端部と連通している。ヘッド孔162は、中央孔161から流れ込むクーラントをノズルガイド部131の方向へ導く。ヘッド部130の下面に位置するヘッド孔162のドリル開口は、止栓171によって封塞される。止栓171は、イモネジや金属栓等を採用することができる。
【0019】
止栓孔163とガイド孔164は、ノズルガイド部131の内部に設けられた流路であって、ほぼ同一方向に沿って互いに連通している。ヘッド孔162の一端は、止栓孔163とガイド孔164の境界付近、あるいは止栓孔163のうち当該境界に近い位置に接続され、連通している。止栓孔163の内径は、ノズルガイド部131の内径よりも大きい。ノズル150は、ノズルガイド部131の後端に開口する止栓孔163の後端開口135から挿入されてガイド孔164に配設される。ガイド孔164は、ノズルガイド部131の先端側に、ノズル150の先端部が外部空間へ向けて突出する開口端部133を有する。すなわち、止栓孔163とガイド孔164は、合わせてノズルガイド部131を貫通する貫通孔として形成されている。
【0020】
ノズル150の外周面は、ガイド孔164の内周面に対して摺動可能に嵌合し、ノズル150は、ガイド孔164の中心軸方向にガイドされる。また、ガイド孔164のうち開口端部近傍の内径は、他の部分の内径よりも小さく形成されており、その内径の違いによって鍔状の突当部134が形成されている。ノズル150は、ガイド孔164の内周に嵌合する外周面の前端に段差部151が設けられており、ノズル150が開口端部133から突出する場合に、段差部151が突当部134に突き当たることにより、ノズル150の抜けが防止される。すなわち、突出状態においては、ノズル150のうちほぼ段差部151よりも先端側の部分が、開口端部133より突出していることになる。
【0021】
止栓172は、ノズル150をガイド孔164へ配設した後に止栓孔163へねじ込まれて後端開口135を封塞する。止栓172は、止栓171と同様に、イモネジや金属栓等を採用することができる。
【0022】
図5は、ノズル150の突出状態を示すヘッド部130の断面概略図である。ヘッド孔162から止栓孔163およびガイド孔164へ供給されるクーラントは、ガイド孔164に嵌合するノズル150の内孔152へ流入し、先端部153の開口から吐出される。このとき、内孔152のうち先端部153とは反対側であるノズル150の後端部154の近傍に設けられたテーパ部155は、ノズル150を突出方向へ遷移させる力として作用するクーラントの流圧を受ける。すなわち、クーラントがノズル150の内孔152を流通すると、テーパ部155が受ける流圧により、ノズル150が突出方向へ摺動する。そして、段差部151が突当部134と接触し、ノズル150は、突出状態となる。クーラントが供給されている間は、テーパ部155が流圧を受け続けるので、ノズル150の突出状態が維持される。なお、ガイド孔164の少なくとも一部は、上述のようにノズル150をガイドする機能を担うので、内部流路としては、ノズル150の内孔152を介して間接的にクーラントを流通させていると言える。
【0023】
図6は、ノズル150の退避状態を示すヘッド部130の断面概略図である。クーラントが供給されていない状態ではノズル150を突出させる力が作用しないので、上述のように先端部153が外力により押圧されると、ノズル150は、退避状態になる。退避状態においてはノズル150の後端部154が止栓172の端面173に突き当たり、ノズル150の全体がノズルガイド部131の内部に入り込んでしまうことを防いでいる。別言すれば、止栓172は、ノズル150の適切な退避状態を実現するように、止栓孔163の内部で配設位置が調整されている。
【0024】
さて、進退可能なノズル構造を採用した従前の切削工具においては、切削工具へクーラントの供給を開始してもノズルが突出状態に遷移しない事象がしばしば発生している。本願発明者がこれを分析したところ、クーラントにより湿潤状態にあるノズルの後端面が、ノズルの退避状態においてストッパとなる他の部材と面接触状態で密着していることを見出した。面接触状態で密着すると、クーラントがノズルの内孔に進入しない、あるいは進入しても密着を引き剥がすだけの流圧を与えられないということがわかった。
【0025】
そこで、本実施形態においける切削工具100は、退避状態において、クーラントの流圧を受けるノズル150の後端部154が、止栓172の端面173と面接触しない構造を採用した。具体的には、止栓172のねじ込み方向の中心軸とノズル150の進退方向の中心軸を同軸とはせず、互いに交差するように構成した。そのために、ノズル150をガイドするガイド孔164の中心軸に対して、止栓172と嵌合する止栓孔163の中心軸を数度傾けている(図の例では約7度)。止栓172の端面173は、一般的に、止栓172のねじ込み方向の中心軸に対して直交する平面として形成されているので、このような構造を採用することにより、ノズル150の後端部154と面接触することがない。
【0026】
ノズル150の後端部154と止栓172の端面173が面接触していないので、互いに密着する力が作用せず、また両者間に間隙が生じるので、クーラントが進入しやすくなる。したがって、ノズル150は、クーラントが供給されるとその流圧を受けやすくなり、確実に退避状態から突出状態へ遷移することができる。なお、止栓172の中心軸とノズル150の中心軸は、互いに交差する関係に限らず、ねじれの関係にある場合でも、ノズル150の後端部154と止栓172の端面173の面接触を回避することができる。
【0027】
なお、止栓172の中心軸とノズル150の中心軸の交差角(上記の例では約7度)やねじれ角は、ノズル150の後端部154と止栓172の端面173との間に留まるクーラントの表面張力によって両者が実質的に密着することを防ぐ角度が望ましい。後端部154の形状やクーラントの粘性にも依るが、具体的には、後端部154の全体および端面173の全体の少なくともいずれかが、残留するクーラントによって覆われない程度の角度を採用すると良い。
【0028】
以上本実施形態の一実施例を説明したが、ノズル150の後端部154が他の部材と面接触をしない構造は、他にも多様に採用し得る。以下にいくつかの他の実施例について説明する。
【0029】
図7は、ノズル150’と止栓172の他の実施例を示す概略図である。ノズル150’は、テーパ部155に代えて後端部にフランジ部156が設けられており、主にフランジ部156が、ノズル150’を退避状態から突出状態へ遷移させるクーラントの流圧を受ける。このような構造においては、フランジ部156のフランジ面が止栓172の端面173と点接触あるいは線接触するので、やはり両者間に間隙が生じ、ノズル150’は、クーラントが供給されるとその流圧を受けやすくなる。
【0030】
図8は、ノズル150’と止栓172のさらに他の実施例を示す概略図である。ノズル150’は、図7におけるノズル150’と同一であり、フランジ部156を備える。止栓172は、フランジ部156と接触させるための突起部174を備える。このように構成されたノズル150’と止栓172は、互いに点接触するので、やはり両者間に間隙が生じ、ノズル150’は、クーラントが供給されるとその流圧を受けやすくなる。このような構造を採用する場合は、止栓172の中心軸とノズル150の中心軸は、互いに同軸であっても構わない。また、ノズルの後端部は、フランジ部156を採用する場合に限らず、突起部174を点接触で受ける構成であれば、いずれの構成であっても構わない。また、突起部174は、複数で構成されていなくても良く、ノズルの後端部との間に間隙が生じ得る構成であれば良い。例えば、止栓の端面が全体的に凸状の曲面で構成され、これをノズルの後端部に設けられた平面部が点接触で受ける構成であっても良い。
【0031】
以上説明した各実施例において「面接触しない」構成を説明したが、点接触や線接触であってもミクロ領域で観察すれば厳密には微小面で接触しているとも言える。そこで、本実施形態において「面接触しない」とは、相互の接触面積が後端部154の投影面積に対して3%以内に収まることを意味するものとする。この範囲に収まる接触面積であれば、後端部がクーラントの流圧を受けたときに、ノズルが突出状態へ適切に遷移することが確認できた。
【0032】
以上の各実施例で説明したストッパ構造は、後退するノズルの後端部を止栓で受ける構造を説明したが、ノズルの後端部を他の部材で受ける構造であっても構わない。いずれにしても、ノズルの後端部が当該他の部材と面接触をしないようにすれば良い。また、上述の実施例のように切削インサート200が切削工具100へ着脱可能に装着される交換式の場合に限らず、切削刃がヘッド部130の先端に一体的に形成された切削工具であっても良い。このような切削工具であっても、非使用状態においてノズルが退避状態になっていれば、ノズルの損傷を防ぐ効果を期待できる。また、以上説明した切削工具100は旋盤用工具であったが、上述のような構造は、旋盤に限らず他の工作機械に利用される切削工具にも適用し得る。例えば、フライス盤やボール盤に用いられる切削工具にも組み込むことができる。
【符号の説明】
【0033】
100 切削工具、110 本体部、120 シャンク部、121 供給口、130 ヘッド部、131 ノズルガイド部、132 装着部、133 開口端部、134 突当部、135 後端開口、150、150’ ノズル、151 段差部、152 内孔、153 先端部、154 後端部、155 テーパ部、156 フランジ部、161 中央孔、162 ヘッド孔、163 止栓孔、164 ガイド孔、171、172 止栓、173 端面、174 突起部、200 切削インサート、210 固定ねじ
【要約】
【課題】進退可能に設けられたノズルが、クーラントの供給開始と共に確実に突出状態へ遷移する切削工具を提供する。
【解決手段】切削工具は、シャンク部からヘッド部へクーラントを流通させる流路が内部に設けられた本体部と、当該流路のうちヘッド部の開口端部に配設され、切削領域へ向けてクーラントを吐出するノズルとを備え、当該ノズルは、シャンク部からヘッド部へクーラントが供給された場合にクーラントの流圧により切削領域の方向へ突出する突出状態となり、ノズルの先端部が開口端部の方向へ外力を受けた場合に退避する退避状態となり、また、当該ノズルは、退避状態において、先端部とは反対側の、流圧を受ける後端部が他の部材と面接触しない。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8