特許第6703324号(P6703324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6703324-分離式昇降搬送車及び入浴装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703324
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】分離式昇降搬送車及び入浴装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   A61H33/00 310L
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-196671(P2015-196671)
(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-64297(P2017-64297A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103471
【氏名又は名称】オージー技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春田 信一
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−217884(JP,A)
【文献】 実開昭52−141297(JP,U)
【文献】 特開2006−158964(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0083990(US,A1)
【文献】 特開2015−058054(JP,A)
【文献】 特開2006−288841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車部と、前記台車部から分離可能で入浴者を搭載する搭載部と、前記搭載部を昇降する昇降部とを備えた搬送車であって、
前記昇降部に、当該昇降部を昇降する昇降部駆動機構を備え、
前記昇降部駆動機構は、前記昇降部を昇降させる直動式シリンダーと、前記直動式シリンダーの伸縮ストロークに対して、前記昇降部の昇降運動を増幅する増幅機構と、前記増幅機構を構成する伝達部が固定されている機構枠体と、を備え、
前記昇降部の下部側は前記台車部の台車ボックスの内部に位置し、前記昇降部が上限位置と下限位置との間を昇降するときの前記昇降部駆動機構の全体は、前記昇降部および前記台車ボックスの内部に収納されており
前記昇降部の側部に直に接触可能な部材が前記直動式シリンダーのロッドに設けられることなく、前記ロッドが伸縮する、
ことを特徴とする分離式昇降搬送車。
【請求項2】
前記増幅機構は、回転体と、前記伝達部とを含み、
前記回転体は、前記直動式シリンダーの前記ロッドに回転可能に取り付けられ、
前記伝達部は、一端側が前記台車部に固定され、前記回転体に巻き掛けられたうえで、他端側が前記機構枠体に固定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の分離式昇降搬送車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分離式昇降搬送車と、浴槽を備える、
ことを特徴とする入浴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車部と、台車部から分離可能で、かつ、要介助者等の入浴者を搭載する搭載部と、搭載部を上下方向に昇降する昇降部と、を備えた分離式昇降搬送車(以下、「搬送車」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
後記の特許文献1の搬送車(車椅子)においては、搭載部(座席部)と台車部とが分離可能であり、昇降部(直動式シリンダーからなる昇降機能部)が油圧で駆動されると、搭載部が昇降するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−75988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の搬送車にあっては、Xリンク式昇降機構の昇降部と比較して、昇降機構の収納スペースが小さくなるメリットがある一方、搭載部の上下限のストロークを長くすればするほど、直動式シリンダーも伸縮ストロークが長く大きい物を選定する必要があり、搭載部の下限時の高さも高くなってしまう問題点を抱えていた。
【0005】
また、昇降速度は直動式シリンダーの性能によって決まる為、昇降速度の増加をする為には、性能が高い直動式シリンダーを選定する必要があり、直動式シリンダーの選定に制限があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、昇降機構の収納スペースが小さいままに、直動式シリンダーのロッドの伸縮ストロークに対して昇降部の昇降運動を増幅機構で増幅することで、直動式シリンダーのロッドが短い物を選択でき、直動式シリンダーの昇降方向への大きさを小さくすることができることで、搭載部の座面を低くでき、また、昇降部の昇降速度を増幅機構によってめることができる搬送車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、以下の手段を提供する。
【0008】
(1)本発明に係る搬送車は、台車部と、前記台車部から分離可能で入浴者を搭載する搭載部と、前記搭載部を昇降する昇降部とを備えた搬送車であって、前記昇降部に、当該昇降部を昇降する昇降部駆動機構を備え、前記昇降部駆動機構は、前記昇降部を昇降させる直動式シリンダーと、前記直動式シリンダーの伸縮ストロークに対して、前記昇降部の昇降運動を増幅する増幅機構と、前記増幅機構を構成する伝達部が固定されている機構枠体と、を備え、前記昇降部の下部側は前記台車部の台車ボックスの内部に位置し、前記昇降部が上限位置と下限位置との間を昇降するときの前記昇降部駆動機構の全体は、前記昇降部および前記台車ボックスの内部に収納されており前記昇降部の側部に直に接触可能な部材が前記直動式シリンダーのロッドに設けられることなく、前記ロッドが伸縮する、ことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、昇降部駆動機構の昇降動力として直動式シリンダーを使用し、そのロッドのストロークに対して昇降部の昇降距離を増幅機構で増幅できる。従って、直動式シリンダーのロッドが短い物を選択でき、直動式シリンダーの昇降方向への大きさを小さくすることができる。そのため、搭載部の座面を低くできる。また、昇降部の昇降速度を増幅機構によってめることができる。そのため、昇降部の昇降に要する時間が短縮できる。さらに、直動式シリンダーが電動でない場合は、人力で昇降操作を実施する運動量が減る為、昇降部の上昇操作が容易になる。
【0010】
(2)本発明において、好ましい実施態様では、前記増幅機構は、回転体と、前記伝達部とを含み、前記回転体は、前記直動式シリンダーの前記ロッドに回転可能に取り付けられ、前記伝達部は、一端側が前記台車部に固定され、前記回転体に巻き掛けられたうえで、他端側が前記機構枠体に固定されている。
【0011】
この構成によれば、省スペースにでき、前記増幅機構が安価に済み、また構成を簡素にできる。
【0012】
(3)本発明に係る入浴装置は、前記搬送車と、浴槽を備える。
【0013】
この構成によれば、前記搬送車と、浴槽を備え、昇降距離が長く、使い勝手の良い安全に入退浴を行う事ができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、昇降機構の収納スペースが小さいままに、直動式シリンダーのロッドのストロークに対して昇降部の昇降距離を増幅機構で増幅することで、直動式シリンダーのロッドが短い物を選択でき、直動式シリンダーの昇降方向への大きさを小さくすることができることで、搭載部の座面を低くでき、また、昇降部の昇降速度を増幅機構によってめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】搬送車が浴槽に横付けされて接続された状態で示す斜視図である。
図2】昇降部が下限位置にある台車部の斜視図である。
図3】昇降部が上限位置にある台車部の斜視図である。
図4図2に対応し要部を断面で示す台車部の正面図である。
図5図3に対応し要部を断面で示す台車部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態に係る搬送車を説明する。
【0017】
図1ないし図3を参照して、搬送車を説明する。図1は、搬送車が浴槽に横付けされて接続されている状態を示す。図2は昇降部が下限位置にある台車部、図3は、昇降部が上限位置にある台車部をそれぞれ示す。
【0018】
図1において、搬送車1は、浴槽2に横付け状態で接続されている。搬送車1は、台車部3と、台車部3から分離可能な搭載部4と、搭載部4を昇降する昇降部5と、を備える。図1では、図解の明瞭化のため、搭載部4は、搬送車1から浴槽2側へ移動した状態で示す。
【0019】
台車部3は、キャスター6と、台枠7と、台車ボックス8と、を有する。
【0020】
台車ボックス8には、昇降ペダル9と、浴槽ロック解除ペダル10とが設けられる。昇降ペダル9は、昇降部5を昇降操作するためのペダルである。台車部3は、浴槽2に接続されると、後述のロック機構でロックされる。浴槽ロック解除ペダル10は、そのロックを解除するためのペダルである。
【0021】
台車ボックス8内部に、昇降部5が、昇降可能に収納されている。昇降部5の上面には、搭載部4が設置される平行に対向する一対のガイドレール11が設けられている。
【0022】
昇降部5の上面には、コの字状の枠体(ロック部)13が設けられる。また、昇降の際に垂直に昇降するよう昇降部5には昇降ガイドローラー12が設けられている。
【0023】
一方、浴槽2の一方の側部における上縁には、台車部3と浴槽2とを接続するための接続部材15が装着される。接続部材15には前記枠体13に対応したコの字状の溝(被ロック部)14が形成されている。枠体13と溝14とで、台車部3と浴槽2とを接続状態にロックするロック機構を構成する。
【0024】
さらに、浴槽2側には、台車部3側のガイドレール11に対向して一対のガイドレール16が取り付けられている。
【0025】
ガイドレール11に搭載部4を設置した状態で、昇降部5を上限の高さ位置まで上昇させる。次いで、台車部3のガイドレール11と浴槽2のガイドレール16とを対向させた状態で、台車部3を浴槽2に横付け、台車部3の枠体13を浴槽2側の接続部材15の上面に乗り上げ、溝14に入り込ませる。これにより、台車部3は、浴槽2に接続される。
【0026】
この接続の状態は、台車部3と浴槽2とが、搭載部4を台車部3と浴槽2との間で相互に受け渡し可能な高さ位置で接続されている状態である。
【0027】
台車部3と浴槽2とが接続されている状態で、搭載部4を台車部3のガイドレール11に沿って浴槽2のガイドレール16上へ移動させて、搭載部4を台車部3から浴槽2へと受け渡す。
【0028】
浴槽2のガイドレール16上へ受け渡された搭載部4は、ガイドレール16に沿って、浴槽2の上方に案内される。搭載部4は、ガイドレール16の中央に移動すると、浴槽2内に下降され、入浴者を搭載部4に乗った状態で浴槽2に入浴させることができる。
【0029】
次に、図4および図5を参照して昇降部5を詳細に説明する。図4および図5は台車部3の一部および昇降部5が断面で示される図であり、図4は昇降部5が下限位置にあり、図5は昇降部5が上限位置にある。
【0030】
昇降部5は、四周の側部5aと上部5bとから下部が開口した矩形ボックス形状をなし、台車部3の台車ボックス8内に昇降可能に収納されている。昇降部5は、その上部5bの上面側に、ガイドレール11が設けられている。
【0031】
昇降部駆動機構21は、昇降部5および台車ボックス8の内部に収納される。そして、昇降部5は、図4に示す位置を下限位置、図5に示す位置を上限位置とし、両位置間を昇降する。昇降部5の下部側は、台車ボックス8の内部に位置している。そのため、昇降部5や搭載部4が障害物に干渉されても、昇降部駆動機構21は、障害物に干渉されることはない。
【0032】
昇降部駆動機構21は、直動式シリンダー22と、機構枠体24と、動滑車25(回転体)と、索条26(伝達部)と、制御ユニット28と、を備える。
【0033】
直動式シリンダー22は、電動式で、直動式シリンダー22を制御する制御ユニット28と共に、台車部3の底面に固定されている。直動式シリンダー22のロッド22aの先端に回転体25が回転可能に軸支されている。伝達部26は、その一端側が台車部3の底面に固定され、動滑車25に巻き掛けられて、その他端側が機構枠体24の一部である横枠24aに固定されている。直動式シリンダー22が作動してロッド22aが伸縮すると、動滑車25が昇降する。動滑車25の昇降により、索条26を介して、機構枠体24が昇降する。
【0034】
動滑車25と索条26は、ロッド22aの昇降ストロークに対して、昇降部5の昇降動作を増幅する増幅機構を構成する。この増幅機構によって、ロッド22aの伸縮ストロークを短くすることができる。そのため、搭載部4の座面を低くし、また、昇降部5の昇降速度をめることができる。
【0035】
昇降ペダル9が昇降操作されると、制御ユニット28は、昇降ペダル9の操作に応じて、直動式シリンダー22を駆動して、昇降部5を昇降させる。
【0036】
実施形態では、直動式シリンダー22は、電動式であるが、油圧式、水圧式、空冷式でもよい。また、図示を略するが、直動式シリンダー22を、ネジシャフト式伸縮体、または、伸縮作動をなすアクチェーター等のメカニカルシリンダーに代えてもよい。また、必要に応じ複数本のシリンダーによって昇降させることもできる。
【0037】
更に、昇駆動機構21動滑車25と索条26、それぞれ複数の動滑車、索条で構成しても良い。また、それぞれスプロケットとチェーンの組み合わせでも良い。
【0038】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は特許請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0039】
1 搬送車
2 浴槽
3 台車部
4 搭載部
5 昇降部
9 昇降ペダル
11 ガイドレール
12 昇降ガイドローラー
13 枠体(ロック部)
14 溝(被ロック部)
15 接続部材
16 ガイドレール
21 昇降部駆動機構
22 直動式シリンダー
24 機構枠体
25 回転体
26 伝達部
28 制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5