(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の長さを有する単レールと下フレームとを所定距離隔てて平行に配置し接続部材によって単レールと下フレームとを接続した跨座式台車用レールユニットを、長手方向に連設しながら傾斜面に設置する方法であって、
鉛直方向に対して傾斜面の下側方向に20°以上45°以下の角度で1本の支持杭を傾斜面に打ち込む打ち込み工程と、
打ち込まれた前記支持杭に前記レールユニットの下フレームを接続する接続工程と、
下フレームが前記支持杭に接続された前記レールユニットを下フレームを中心として揺動させて、単レールの中心軸と下フレームの中心軸とを含む平面が鉛直方向と平行となる鉛直状態になるように調整する調整工程と、
棒状又は板状の角度調整部材の一方端部を、鉛直状態に調整された前記レールユニットに接続し、もう一方端部を前記支持杭に接続して前記レールユニットを鉛直状態で固定する固定工程と
を有することを特徴とする跨座式台車用レールユニットの設置方法。
角度調整部材による前記レールユニットと支持杭との固定位置が、前記支持杭と下フレームとの接続位置よりも上方位置である請求項1記載のレールユニットの設置方法。
斜面に打ち込まれた前記支持杭の近傍に補助杭を鉛直方向に打ち込み、前記補助杭と前記支持杭とを接続して前記支持杭を補強する補強工程をさらに有する請求項1又は2記載のレールユニットの設置方法。
鉛直状態に調整された前記レールユニットと前記レールユニットの近傍の既存物との間に帯状バンドを張力がかかった状態で架け渡して、前記レールユニットの鉛直状態を補助する工程をさらに有する請求項1〜4のいずれかに記載のレールユニットの設置方法。
鉛直状態に調整された前記レールユニットの近傍にアンカー部材を打ち込み、鉛直状態に調整された前記レールユニットと前記アンカー部材との間に帯状バンドを張力がかかった状態で架け渡して、前記レールユニットの鉛直状態を補助する工程をさらに有する請求項1〜5のいずれかに記載のレールユニットの設置方法。
前記請求項5〜7のいずれかに記載のレールユニットの設置方法に用いる、所定長さの帯状バンドを所望周長の輪状に調整して張力がかかった状態とし固定する固定具であって、
離隔対向する一対の板状部材と、
前記一対の板状部材の平面中央部同士を接続し、帯状バンドを挿通可能な貫通孔が形成された柱状部材と、
前記一対の板状部材の平面外縁部の前記柱状部材を中心として対称位置に形成された複数の固定用穴と、
前記対向する固定用穴に挿通可能な棒状の回転止め部材と
を有し、
帯状バンドの長手方向両端部を前記貫通孔の両側からそれぞれ挿通させて帯状バンドを輪状とした後、固定具を回転させて帯状バンドを前記柱状部材に巻き付けて、輪状となった帯状バンドの周長を調整し、前記対向する固定用穴に前記回転止め部材を挿通して、前記帯状バンドを前記柱状部材に巻き付いた状態で固定する
ことを特徴とする帯状バンドの固定具。
前記一対の板状部材の少なくとも一方が、前記柱状部材の中心軸と同じ軸を中心軸とする外方向に突出した軸部を有し、前記軸部を用いて固定具を回転する請求項8〜10のいずれかに記載の帯状バンドの固定具。
【背景技術】
【0002】
例えば、林業において山中の作業現場まで機材や資材を運んだり、伐採した木材を搬出することは大変な重労働であり、作業従事者の負担が大きい。また、近年の林業従事者の高年齢化が進んでいることも相俟って、機材や資材、伐採した木材などを容易に運搬できる装置が望まれている。
【0003】
加えて、近年の自然環境保護の高まりから、運搬装置は、森林を破壊せず撤収可能な装置であることも望まれている。
【0004】
そこで、本発明者は、このような要望に応えるため、不整地の山林等に好適に使用される跨座式単レール用台車及び軌道運搬装置を開発し、これらについて特許出願を行った(特許文献1)。
【0005】
また、跨座式単レール用台車及び軌道運搬装置を実際に使用するためには、台車を走行させるレールを、起伏の激しい山間でも容易に建設できるようにすることも重要であることから、レール建設用台車及びレール建設方法を開発し、これらについても特許出願を行った(特許文献2)。
【0006】
前記開発したレール建設方法において、レールユニットは鉛直状態に設置する必要があるところ、山林などの傾斜面において地面に打ち込んだ支持杭に対してレールユニットを鉛直状態に取り付けることは時間と労力がかかる作業であった。
【0007】
特許文献3には、単レールを支える台座として立木の切り株を利用することが提案されているが、単レールは長手方向に所定間隔で支えることが望まれるところ、そのような所定の位置に切り株があるとは限らない。また特許文献3では支柱を鉛直に設けることに関する記述はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、レールユニットを長手方向に連設しながら傾斜面に設置する際に、少ない時間と労力でレールユニットを鉛直状態に支持杭に固定できる方法を提供することにある。
【0010】
また本発明の目的は、レールユニットの鉛直状態を補助するために、レールユニット近傍の既存物やアンカー部材とレールユニットとの間に帯状バンドを張力がかかった状態で簡単に固定できる固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成する本発明に係る跨座式台車用レールユニットの設置方法は、所定の長さを有する単レールと下フレームとを所定距離隔てて平行に配置し接続部材によって単レールと下フレームとを接続したレールユニットを、長手方向に連設しながら傾斜面に設置する方法であって、鉛直方向に対して傾斜面の下側方向に20°以上45°以下の角度で支持杭を傾斜面に打ち込む打ち込み工程と、打ち込まれた前記支持杭に前記レールユニットの下フレームを接続する接続工程と、下フレームが前記支持杭に接続された前記レールユニットを下フレームを中心として揺動させて、単レールの中心軸と下フレームの中心軸とを含む平面が鉛直方向と平行となる鉛直状態になるように調整する調整工程と、棒状又は板状の角度調整部材の一方端部を、鉛直状態に調整された前記レールユニットに接続し、もう一方端部を前記支持杭に接続して前記レールユニットを鉛直状態で固定する固定工程とを有することを特徴とする。
【0012】
前記構成のレールユニットの設置方法において、角度調整部材による前記レールユニットと支持杭との固定位置は、前記支持杭と下フレームとの接続位置よりも上方位置である構成とするのが好ましい。
【0013】
また前記構成のレールユニットの設置方法において、斜面に打ち込まれた前記支持杭の近傍に補助杭を鉛直方向に打ち込み、前記補助杭と前記支持杭とを接続して前記支持杭を補強する補強工程をさらに有する構成とするのが好ましい。
【0014】
また前記構成のレールユニットの設置方法において、前記支持杭の上端部と前記補助杭とを接続する構成とするのが好ましい。
【0015】
また前記構成のレールユニットの設置方法において、鉛直状態に調整された前記レールユニットと前記レールユニットの近傍の既存物との間に帯状バンドを張力がかかった状態で架け渡して、前記レールユニットの鉛直状態を補助する工程をさらに有する構成とするのが好ましい。
【0016】
また前記構成のレールユニットの設置方法において、鉛直状態に調整された前記レールユニットの近傍にアンカー部材を打ち込み、鉛直状態に調整された前記レールユニットと前記アンカー部材との間に帯状バンドを張力がかかった状態で架け渡して、前記レールユニットの鉛直状態を補助する工程をさらに有する構成とするのが好ましい。
【0017】
ここで、前記アンカー部材が、棒状部材と、前記棒状部材の一方端部に前記棒状部材との成す角が90°以下となるように取り付けられた刃床部と、前記棒状部材のもう一方端に前記帯状バンドを接続する接続部とを有し、前記刃床部を傾斜面に打ち込むことによって前記アンカー部材を傾斜面に固定する構成であってもよい。
【0018】
また本発明に係る帯状バンドの固定具は、前記のレールユニットの設置方法に用いる、所定長さの帯状バンドを所望周長の輪状に調整して張力がかかった状態とし固定する固定具であって、離隔対向する一対の板状部材と、前記一対の板状部材の平面中央部同士を接続し、帯状バンドを挿通可能な貫通孔が形成された柱状部材と、前記一対の板状部材の平面外縁部の前記柱状部材を中心として対称位置に形成された複数の固定用穴と、前記対向する固定用穴に挿通可能な棒状の回転止め部材とを有し、帯状バンドの長手方向両端部を前記貫通孔の両側からそれぞれ挿通させて帯状バンドを輪状とした後、固定具を回転させて帯状バンドを前記柱状部材に巻き付けて、輪状となった帯状バンドの周長を調整し、前記対向する固定用穴に前記回転止め部材を挿通して、前記帯状バンドを前記柱状部材に巻き付いた状態で固定することを特徴とする。
【0019】
前記構成の帯状バンドの固定具において、前記柱状部材に2つの貫通孔が周方向に90°隔てて形成されている構成とするのが好ましい。
【0020】
また前記構成の帯状バンドの固定具において、前記柱状部材が4つの棒状部材から構成され、前記4つの棒状部材は、それぞれの軸中心が四角形の頂点位置となるよう配置され、前記棒状部材間には前記帯状バンドが挿通可能な隙間が前記貫通孔として形成されている構成とするのが好ましい。
【0021】
また前記構成の帯状バンドの固定具において、前記一対の板状部材の少なくとも一方が、前記柱状部材の中心軸と同じ軸を中心軸とする外方向に突出した軸部を有し、前記軸部を用いて固定具を回転する構成とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のレールユニットの設置方法によれば、レールユニットを長手方向に連設しながら傾斜面に設置する際に、少ない時間と労力でレールユニットを鉛直状態とし支持杭に固定できる。
【0023】
また本発明の固定具によれば、レールユニット近傍の既存物やアンカー部材とレールユニットとの間に帯状バンドを張力がかかった状態で架け渡す際に、簡単な操作で帯状バンドに張力がかかった状態で固定できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のレールユニットの設置方法及び帯状バンドの固定具について図に基づいてさらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0026】
(レールユニット)
最初に、本発明で用いるレールユニット2について、
図1を用いてその構造の概略を説明する。
図1はレールユニット2の一例を示す正面図である。なお、
図1の上下方向、長手方向及び紙面奥行き方向がレールユニット2の上下方向、長手方向及び左右方向である。
【0027】
図1に示すレールユニット2は跨座式台車用レールユニットであり、上下方向に所定距離隔てて平行に配置された断面円形状の単レール21及び下フレーム22と、単レール21と下フレーム22との間に長手方向に所定間隔で設けられた複数の鉛直材23と、鉛直材23と鉛直材23との間に「ハ」字状に設けられた複数の斜材24と、長手方向両端側の鉛直材23と当該鉛直材23の両隣の斜材24とにわたって上下方向中央部において単レール21と平行に設けられた円柱状の2つの固定支持部25とを有する。本実施形態では鉛直材23と斜材24とが本発明における接続部材を構成する。レールユニットを構成するこれらの部材の主要材料は金属材料である。具体的にはステンレス鋼が好適に使用される。レールユニット2の長手方向の長さは通常4m〜6m程度である。複数のレールユニット2を長手方向に連設することによって単レール21が建設される。
【0028】
(跨座式台車)
次に単レール21に跨って移動する跨座式台車(以下、「台車」と記すことがある。)について説明する。
図2及び
図3に、台車1の概略構成図を示す。
図2は、単レール21に跨った台車1の正面図であり、
図3は、
図2のA−A線断面図である。台車1は、筐体11内の走行方向前後に2つのモーターM1,M2とを備える。
図3に示すように、筐体11内には、筐体11に支持され、単レール21の外周に周方向に等間隔で圧接する3つの駆動車輪12a,12b,12cと、軸受け56a,56bと保持板57a,57bとの間にそれぞれ介装され、駆動車輪12bと駆動車輪12cとを単レール21の方向に付勢する圧縮コイルバネ14a,14bとを有する。
【0029】
また台車1は、駆動車輪12aと駆動車輪12bとの間の周方向中央位置(駆動車輪12cと単レール21を挟んで対向する位置)及び駆動車輪12aと駆動車輪12cとの間の周方向中央位置(駆動車輪12bと単レール21を挟んで対向する位置)に、単レール21に接触し転動する従動車輪16a,16bをさらに備える。従動車輪16a,16bは、付勢手段によって単レール21に圧接していてもよいし、単に接触しているだけでもよい。圧縮コイルバネ14a,14bで単レール21にそれぞれ圧接されている駆動車輪12b,12cの対向位置に、このように、従動車輪16a,16bを設けることによって、単レール21として中空円柱状のものを用いた場合であっても、単レール21の断面形状の変形が効果的に防止される。従動車輪16a,16bの取付位置は、駆動車輪12a,12bの間及び駆動車輪12a,12cの間であれば特に限定はないが、単レール21の断面形状の変形を防止する観点からは、駆動車輪と単レール21を挟んで対向する位置が望ましい。
【0030】
モーターM1の駆動力は、ギアボックス51においてモーターM1の駆動軸(不図示)から回転軸52に伝えられ、駆動車輪12aと傘歯車53a,53bとが回転する。そして、傘歯車53aと傘歯車54aとの歯合によって駆動力が回転軸55aに伝えられ、駆動車輪12bが回転する。同様に、傘歯車53bと傘歯車54bとの歯合によって駆動力が回転軸55bに伝えられ、駆動車輪12cが回転する。なお、モーターM2によるもう一つの駆動部も同様の構成である。
【0031】
駆動車輪12bと駆動車輪12cとは圧縮コイルバネ14a,14bの付勢力で、駆動車輪12aは台車1の自重で単レール21にそれぞれ圧接している。加えて、3つの駆動車輪12a,12b,12cの単レール21の圧接位置が周方向に等間隔であるため、駆動車輪12a,12b,12cと単レール21との間の摩擦力は大きく、台車1は単レール21を効率的に走行し登坂性も高い。また、台車1は、前後方向に2つの駆動部を備えているので、例えば林道の建設資材や機材、伐採した木材などの重量物も運搬することができる。本発明者が作成した試作装置では今のところ200kgまで運搬できることが確認できている。さらに、台車1の水平方向位置が一対の摺動部材17a,17bによって定められるので、走行時の台車1の、単レール21を中心とした揺れが抑えられる。圧縮コイルバネ14a,14bによる荷重としては、通常、数千N程度が好ましく、より好ましくは4000N以上である。
【0032】
(第1実施形態)
本発明のレールユニット2の設置方法について
図4〜
図6を用いて説明する。まず
図4に示すように、山林等の傾斜面に支持杭31を打ち込む。支持杭31の傾斜面に対する打ち込み角度θは、鉛直方向に対して傾斜面の下側方向に20°以上45°以下の範囲である。打ち込み角度θをこの範囲とすることによって、倒伐材などの重量物を台車1に載せて搬送する場合でもレールユニット2を支持杭31によってしっかりと支えることができる。通常、傾斜面の傾きが急になるほど支持杭31の打ち込み角度θは大きくするのが望ましい。
【0033】
使用する支持杭31の太さ、長さ、材質などは、台車1に載せて運搬する物品の重量等から適宜決定すればよい。例えば、倒伐材などの重量物を台車1で運搬する場合には長さ1m〜2m程度、太さ(外径)4cm〜8cm程度の単管パイプが好適に使用される。もちろん丸太杭などであっても構わないが、杭打ち作業の効率などを考慮すると単管パイプが好ましい。支持杭31の打ち込み深さについては、深いほど支持杭31の安定性は向上するが杭打ち作業に時間と労力が必要となる。また、撤収作業すなわち支持杭31の引き抜き作業にも時間と労力が必要となる。本発明者等の実験によれば、傾斜面に土質にもよるが通常打ち込み深さが10cm〜20cm程度で重量物を台車1で運搬する場合でも耐えられることがわかった。なお、湿地帯などの土質の場合にはより深く杭打ちを行う必要がある。
【0034】
次いで、
図5に示すように、傾斜面に所定角度で打ち込まれた支持杭31にレールユニット2の下フレーム22を接続する。支持杭31に対する下フレーム22の接続位置に特に限定はないが、レールユニット2を安定に支持する観点からは、支持杭31の下方すなわち傾斜面の近傍で接続するのが望ましい。支持杭31として単管パイプを使用する場合には、支持杭31と下フレーム22との接続は市販のクランプ34を使用することができる。ただし、支持杭31と下フレーム22との接続は、下フレーム22を中心としてレールユニット2が揺動可能である必要がある。
【0035】
そして、下フレーム22の中心軸を中心としてレールユニット2を揺動させて、単レール21の中心軸と下フレーム22の中心軸とを含む平面が鉛直方向と平行となる鉛直状態になるように調整する。レールユニット2の鉛直状態の調整は、例えば気泡管水準器を用いて行えばよい。
【0036】
次に、
図6に示すように、単管パイプ状の角度調整部材32の一方端部を、鉛直状態に調整されたレールユニット2の固定支持部25に接続し、角度調整部材32のもう一方端部を支持杭31に接続してレールユニット2を鉛直状態で固定する。角度調整部材32によるレールユニット2と支持杭31との固定位置は、前記支持杭31と下フレーム22との接続位置よりも上方位置である。また、角度調整部材32とレールユニット2の固定支持部25との接続及び角度調整部材32と支持杭31との接続には、角度調整部材32及び支持杭31として単管パイプを使用する場合には市販のクランプ34を使用できる。
【0037】
なお、レールユニット2を鉛直状態に調整する前に、固定支持部25及び支持杭31の少なくとも一方と角度調整部材32とを角度調整部材32の抜き差し可能に予め弱く接続しておき、レールユニット2を鉛直状態に調整した後、緩く接続していた部分を抜き差し不能に強く接続するようにしても構わない。
【0038】
図7に示すように、傾斜面の角度が急な場合などには、支持杭31の近傍に補助杭33を鉛直方向に打ち込み、補助杭33と支持杭31とを接続して、支持杭31によるレールユニット2の支持を補強するようにしてもよい。具体的には、補助杭33の下端を沈下抑制板35の貫通孔351に挿通させた後、補助杭33を地面に打ち込む。そして、沈下抑制板35を地面に接触させ、補助杭3の沈下抑制板35の直上部分に止め具36を取り付ける。沈下抑制板35に形成された貫通孔351の内径は補助杭33の外径よりも大きく、止め具36の外径よりは小さく設定されている。これにより、補助杭33の地面への沈み込み方向にかかる力は、止め具36を介して沈下抑制板35にかかり、補助杭33の地面への沈み込みが抑制される。補助杭33と支持杭31との接続位置は支持杭31の上端部であるのが好ましい。補助杭33としては、支持杭31と同様に、単管パイプが好適に使用される。補助杭33及び支持杭31として単管パイプを使用する場合には、市販のクランプを接続部材として使用できる。補助杭33の打ち込み深さは、支持杭31と同様に、杭打ち作業と撤収作業(引き抜き作業)の時間と労力及び補強の強度などの観点から通常は10cm〜20cm程度で足りる。
【0039】
図8に、以上説明した本発明の設置方法でレールユニット2を設置した場合の斜視図を示す。レールユニット2は、長手方向の長さが通常4m〜6m程度であり、レールユニット2が長手方向に連続して接続されることによって台車1が移動する単レール21が建設される。
図8は、建設中のレールユニット2の長手方向先端であって、次のレールユニット2を長手方向に延設する場合には、レールユニット2の単レール21同士及び下フレーム22同士をそれぞれ直線ジョイントを用いて接続する。そして、延設したレールユニット2の長手方向先端部を前記の本発明の方法で鉛直状態に固定する。この作業を繰り返すことによってレールユニット2は所定の位置から所望の位置まで設置可能となる。
【0040】
(第2実施形態)
図9に第2実施形態を示す模式図を示す。
図7及び
図8に示した第1実施形態では、支持杭31の近傍に補助杭33を鉛直方向に打ち込み、補助杭33と支持杭31とを接続して、支持杭31によるレールユニット2の支持を補強したが、
図9に示す第2実施形態では、レールユニット2よりも傾斜面上側の近傍の既存物、ここでは樹木の幹とレールユニット2との間を帯状バンド4で張力がかかった状態で架け渡してレールユニット2の鉛直状態を補助している。レールユニット2の鉛直状態を補助する既設物としては樹木に限定されるものではなく、傾斜面にしっかりと固定されたものであれば自然物及び人工物のいずれであっても構わない。
【0041】
本発明で使用する帯状バント4としては、ポリプロピレン(PP)製の帯状バンド4が好適に使用される。使用する帯状バンド4の幅としては15mm〜25mmの範囲が引張強度及び現場作用性の観点から望ましい。
【0042】
支持杭31の近傍の既設物とレールユニット2との間を帯状バンド4を張力がかかった状態で架け渡し固定するには、通常梱包などに用いられる手段を用いることができる。すなわち、帯状バンド4を既設物とレールユニット2とに巻き付けて輪状とし、帯状バンド4の長手方向両端部を偏平四角柱形状の金属製バンド用シールの対向する開口部からそれぞれ挿入し重ね合うようにする。そして帯状バンド4を引き締めて張力がかかった状態とした後、封緘機によってバンド用シールを押圧変形させて帯状バンド4の長手方向両端部を結束する。
【0043】
なお、このようなバンド用シールを用いた帯状バンド4の結束には封緘機や引締機が必要となることから傾斜面での作業性が低下する場合がある。そこで、本発明者は、所定長さの帯状バンド4を所望周長の輪状に調整して張力がかかった状態とし固定する固定具を新たに発明した。この固定具については後述する。
【0044】
図10に、第2実施形態の変形例を示す。この図に示す実施形態では、樹木の幹に台付けロープ71aを巻き掛けてその両端の輪状部をシャックル72aに係合している。また、レールユニット2の固定支持部25と下フレーム22とに台付けロープ71bを巻き掛けてその両端の輪状部をシャックル72bに係合している。そして、シャックル72aとシャックル72bとを帯状バンド4で張力がかかった状態で連結している。この実施形態においても、後述の固定具を用いて、所定長さの帯状バンド4を所望周長の輪状に調整して張力がかかった状態として固定するのが好ましい。
【0045】
(第3実施形態)
図11に第3実施形態を示す模式図を示す。
図9及び
図10に示した第2実施形態では、レールユニット2の近傍の既設物を利用して、支持杭31によるレールユニット2の支持を補強したが、
図11に示す第3実施形態では、アンカー部材5を傾斜面に打ち込みアンカー部材5とレールユニット2との間を帯状バンド4で張力がかかった状態で架け渡してレールユニット2の鉛直状態を補助している。この実施形態によれば、長手方向に連設されたレールユニット2の所望の位置においてレールユニット2の鉛直状態を補助することが可能となる。
【0046】
図11の第3実施形態では平鍬形状のアンカー部材5を用いている。
図12にこのアンカー部材5の斜視図を示す。アンカー部材5は平鍬形状を有し、棒状の柄部51と、柄部51の一方端に柄部51に対して鋭角に取り付けられた板状の刃床部52と、柄部51の他方端に設けられた、帯状バンド4との接続部53とを有する。
【0047】
接続部53は、細長い長方形状の板金を長手方向の中央を中心として対称位置で垂直に折り曲げて底面531と両側面532,533とが形成された略「コ」字形状を有する。そして、柄部51の端面と接続部53の底面とが離隔対向するように、接続部53の両側面532,533の先端部が柄部51の端部に揺動可能に軸54で固定されている。接続部53の底面531内側には円弧状の曲面531aが形成されている。帯状バンド4は柄部51の端面と接続部53の底面531との間の空間に挿通され、帯状バンド4に張力がかかると帯状バンド4は接続部53の底面531内部に形成された曲面531aに接触する。このように曲面531aに帯状バンド4を接触させることにより帯状バンド4の折れ曲がりを抑制できる。
【0048】
アンカー部材5は、傾斜面の所望位置に刃床部52を打ち入れて固定した後、レールユニット2とアンカー部材5の接続部53との間に帯状バンド4を巻き付けて輪状とする。そして、前述のように、張力がかかった状態としてバンド用シールによって帯状バンド4の長手方向両端部を結束するか、あるいは後述のように、本発明者が発明した固定具によって帯状バンド4を張力がかかった状態で固定する。
【0049】
アンカー部材5は鍬形状に限定されるものではない。例えば、円柱状のアンカー杭を用いてもよい。アンカー杭をレールユニット2の近傍に打ち込み、アンカー杭とレールユニット2との間を帯状バンド4で張力がかかった状態で架け渡してレールユニット2の鉛直状態を補助するようにしてもよい。
【0050】
図13に、第3実施形態の変形例を示す。この図に示す実施形態では、レールユニット2の固定支持部25と下フレーム22とに台付けロープ71bを巻き掛けてその両端の輪状部をシャックル72bに係合している。そして、アンカー部材5の接続部53とシャックル72bとを帯状バンド4で張力がかかった状態で連結している。この実施形態においても、後述の固定具を用いて、所定長さの帯状バンド4を所望周長の輪状に調整して張力がかかった状態として固定するのが好ましい。
【0051】
(固定具:第1実施形態)
図14及び
図15に本発明に係る固定具6を示す。
図14は固定具6の斜視図であり、
図15は
図14のB−B線断面図である。これらの図に示す固定具6は、第2実施形態及び第3実施形態などにおいて既存物やアンカー部材5とレールユニット2とを帯状バンド4で張力がかかった状態で架け渡して固定するためのものである。
【0052】
固定具6は、帯状バンド4の幅よりも少し長い距離を隔てて対向する略正方形状の一対の板状部材61a,61bと、一対の板状部材61a,61bの平面中央部同士を接続し、帯状バンド4を挿通可能な貫通孔621,622が周方向に90°隔てて2つ形成された柱状部材62と、一対の板状部材61a,61bの柱状部材62を中心として対称位置に形成された固定用穴63a,63b,63c,63dと、これらの固定用穴63a,63b,63c,63dに挿通可能な2つの棒状の回転止め部材65とを有する。そして、一対の板状部材61aに、柱状部材62の中心軸と同じ軸を中心軸とし外方向に突出した断面六角形状の軸部64が形成されている。
【0053】
固定具6を構成する各部材は所定以上の強度を有する必要があるため、鉄やステンレス鋼などの金属材料から構成するのが望ましい。また同様の理由から、柱状部材62及び軸部64の板状部材61a,61bへの取り付けは溶接やネジ止めなどの強固な接合方法によるのが望ましい。
【0054】
図15に示すように、柱状部材62には周方向に90°隔てて2つの貫通孔621,622が形成されており、2つの貫通孔621,622は柱状部材62の軸中心において交差している。貫通孔621,622の高さhは帯状バンド4の厚みの2倍よりも少し高い程度に設定される。なお、帯状バンド4の長手方向両端部の結束及び長さ調整には貫通孔は少なくとも1つあれば足りる。
【0055】
図16に、このような構造の固定具6を用いた帯状バンド4の固定方法について説明する。
図16(a)に示すように、既存物やアンカー部材5とレールユニット2との間に架け渡した帯状バンド4の長手方向両端部を柱状部材62の貫通孔621の両側から挿通させ、貫通孔621内において帯状バンド4の長手方向両端部が重なり合うようにする。
【0056】
次いで、
図16(b)に示すように、固定具6を回転させることによって帯状バンド4を柱状部材62の外周に巻き付けて、輪状にした帯状バンド4を周長を狭めていく。ポリプロピレン製の帯状バンド4は変形抵抗性を有しているため、帯状バンド4に張力がかかった状態とするまで固定具6を回転させるには大きな力を必要とする。このため、六角柱形状の軸部64(
図13に図示)に例えばラチェットハンドルなどの工具を係合させて固定具6を回転させるのがよい。
【0057】
図16(c)に示すように、固定具6をさらに回転させて、既存物やアンカー部材5とレールユニット2との間に架け渡して輪状とした帯状バンド4の周長を狭めて帯状バンド4に張力がかかった状態とする。
【0058】
そして、
図16(d)に示すように、柱状部材62の軸を中心として対称位置にある固定用穴63a,63cに回転止め部材65(
図13に図示)を挿通する。ポリプロピレン製の帯状バンド4は変形抵抗性を有し、固定具6の柱状部材62の外周に巻き付けられた帯状バンド4は元の状態に戻ろうと固定具6を帯状バンド4の周長が広がる方向(
図16の時計回り方向)に逆回転しようとするが、固定用穴63a,63cに挿通された回転止め部材65(
図13に図示)によって固定具6の逆回転は阻止される。これにより、帯状バンド4は張力がかかった状態で固定される。
【0059】
なお、固定具6による帯状バンド4の固定を解除する場合には、回転止め部材65を固定用穴63a,63cから引き抜き、固定具6を逆回転させる。これによって帯状バンド4は柱状部材62から巻き出されて帯状バンド4の固定は解消される。
【0060】
一対の板状部材61a,61bにおける固定用穴の形成位置は、柱状部材62に巻き付けられた帯状バンド4の最外周よりも半径方向外方位置すなわち外縁位置で、柱状部材62の軸を中心として対称位置であるのがよい。また、固定具6の回転方向に等間隔で形成されているのが好ましい。そしてまた、固定用穴の形成個数は2以上であればよい。固定用穴の形成個数を増やすほど帯状バンド4に生じる張力を細かく調整することが可能となるが、一対の板状部材61a,61bの強度の低下を招くおそれがあるので、固定用穴の形成個数は一対の板状部材61a,61bの材質や固定用穴の内径等を考慮し決定するのがよい。
【0061】
(固定具6:第2実施形態)
図17は、固定具6の第2実施形態を示す図であって、
図15と対応する断面図である。この図に示す固定具6が
図14及び
図15に示す固定具6と相違する点は柱状部材の構造である。
図17に示す固定具6では柱状部材は4つの棒状部材66から構成される。
図17の一点鎖線で示すように、4つの棒状部材66は、それぞれの軸中心が四角形の頂点位置となるように配置され、棒状部材66間には帯状バンド4の長手方向両端部が重なって挿通可能な隙間dが形成されている。これらの隙間dが本発明の貫通孔を構成する。棒状部材66の軸方向に垂直な断面形状及び太さに特に限定はなく、使用する帯状バンド4の幅や厚みなどから適宜決定すればよい。これらの棒状部材66の材質としては鉄やステンレス鋼などの金属材料が望ましく、棒状部材66の一対の板状部材61a,61bへの取り付けは溶接やネジ止めなどの強固な接合方法によるのが望ましい。