特許第6703354号(P6703354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 栄研化学株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6703354-非特異反応抑制剤および前処理方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703354
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】非特異反応抑制剤および前処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   G01N33/543 521
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-168771(P2016-168771)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-36119(P2018-36119A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000120456
【氏名又は名称】栄研化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】國料 秀勇
(72)【発明者】
【氏名】坂西 千紗
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−006929(JP,A)
【文献】 国際公開第2000/016803(WO,A1)
【文献】 特表2002−523030(JP,A)
【文献】 国際公開第2000/010584(WO,A1)
【文献】 特開2003−265196(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0028927(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼを含む非特異反応抑制剤と、尿試料とを接触させる工程を含む、尿試料中の多糖抗原を検出または定量するためのイムノクロマトグラフィー法における前処理方法。
【請求項2】
前記多糖抗原が肺炎球菌またはレジオネラに由来する、請求項1に記載の前処理方法。
【請求項3】
前記プロテアーゼがプロテイナーゼKである、請求項1または2に記載の前処理方法。
【請求項4】
前記プロテアーゼを含む前記非特異反応抑制剤と、前記尿試料とを接触させる工程が、前記尿試料と前記非特異反応抑制剤を含む前処理液中で接触させる工程である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の前処理方法。
【請求項5】
前記前処理液における前記プロテアーゼの濃度が0.002U/ml以上である、請求項4に記載の前処理方法。
【請求項6】
前記前処理液における前記プロテアーゼの濃度が4.66U/ml以上である、請求項4に記載の前処理方法。
【請求項7】
前記前処理液における前記プロテアーゼの濃度(U/ml)と前記プロテアーゼおよび前記試料が接触する時間(hr)との積が0.14以上である請求項4乃至6のいずれか1項に記載の前処理方法。
【請求項8】
前記プロテアーゼを含む前記非特異反応抑制剤と、前記尿試料とを接触させる工程が加温されることなく行われる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の前処理方法。
【請求項9】
尿試料中の多糖抗原を検出または定量するためのイムノクロマトグラフィー法に用いられる非特異反応抑制剤であって、プロテアーゼを含む、非特異反応抑制剤。
【請求項10】
前記多糖抗原が肺炎球菌またはレジオネラに由来する、請求項9に記載の非特異反応抑制剤。
【請求項11】
前記プロテアーゼがプロテイナーゼKである、請求項9または10に記載の非特異反応抑制剤。
【請求項12】
前記尿試料の前処理液または展開液として用いられる請求項9乃至11のいずれか1項に記載の非特異反応抑制剤。
【請求項13】
試料供給部と、
前記試料供給部の下流側に位置するクロマトグラフ媒体と、
標識試薬が溶出可能に保持された標識試薬保持部と、
固定化抗体を含む検出部と、
を有するテストストリップおよび、
請求項9乃至1のいずれか1項に記載の非特異反応抑制剤を含む、イムノクロマト試薬。
【請求項14】
前記非特異反応抑制剤が、前記テストストリップの前記試料供給部から前記標識試薬保持部までのいずれかの部位に含まれる、請求項1に記載のイムノクロマト試薬。
【請求項15】
試料供給部と、
前記試料供給部の下流側に位置するクロマトグラフ媒体と、
標識試薬が溶出可能に保持された標識試薬保持部と、
固定化抗体を含む検出部と、
を有するテストストリップを用いて、イムノクロマトグラフィー法により尿試料中の多糖抗原を検出または定量する方法であって、
請求項9乃至1のいずれか1項に記載の非特異反応抑制剤を用いる、方法。
【請求項16】
試料供給部と、
前記試料供給部の下流側に位置するクロマトグラフ媒体と、
標識試薬が溶出可能に保持された標識試薬保持部と、
固定化抗体を含む検出部と、
を有するテストストリップを用いて、イムノクロマトグラフィー法により尿試料中の多糖抗原を検出または定量する方法であって、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の前処理方法を用いる、方法。
【請求項17】
プロテイナーゼKを含む非特異反応抑制剤と、尿試料とを接触させる工程を含む、尿試料中の多糖抗原を検出または定量するための免疫学的測定法における非特異反応の抑制方法。
【請求項18】
前記多糖抗原が肺炎球菌またはレジオネラに由来する請求項17に記載の非特異反応の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿試料中の多糖抗原を検出または定量するための免疫学的測定法において、プロテアーゼを含む非特異反応抑制剤を用いる前処理方法、およびそれを用いる検出または定量方法に関するものであり、また、プロテアーゼを含む非特異反応抑制剤、およびそれを含むイムノクロマト試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症の発見やその原因を特定するために、試料中の細菌やウイルスの検出が重要である。細菌やウィルスの検査方法として、分離培養した後、同定を行う培養法、病原体に特徴的な遺伝子を検出する遺伝子検査法、電子顕微鏡により特定する方法などが知られている。しかしながら、これらの検査方法は、試料の処理が煩雑である、測定のために熟練した技術が必要である、特別な装置が必要である、結果を得るまでに時間がかかる、短時間で多数の検体を検査できないなどの問題がある。一方、簡易かつ迅速な免疫学的測定法としてイムノクロマトグラフィー法が知られている。イムノクロマトグラフィー法は、血液や尿、糞便などの試料をテストストリップ上に塗布または滴下する(必要に応じて試料を前処理液や希釈液で懸濁、ろ過フィルターでろ過する)という簡単な操作で試料中の測定対象物を検出することができ、また、目視判定が可能であることなどから、広く実施されている。
【0003】
イムノクロマトグラフィー法は、メンブレンに固定化され、測定対象物に特異的に結合することができる抗原または抗体などにより、測定対象物に特異的に結合する標識した抗原または抗体などと測定対象物の複合体を捕捉し、測定対象物を測定する方法である。しかしながら、イムノクロマトグラフィー法などの免疫学的測定法では、測定対象物が試料中に存在しないにもかかわらず、陽性と判定してしまう非特異反応(偽陽性)が起こることがある。偽陽性が起こる原因として、例えば、測定対象物(抗原または抗体)以外の成分と、測定対象物に対する抗体または抗原が非特異反応を起こすことがあげられる。その因子としてリウマトイド因子や異好性抗体などが挙げられるが、不明なものも多く、原因は様々である。このため、非特異反応を抑制する技術として、例えば、試料や標識抗体を固相上で展開する際に特定の成分を溶液中に含有させる方法(例えば、特許文献1)や、抗体を固定化する際の固相作製用試薬(例えば、特許文献2)など様々な方法が提案されている。
【0004】
また、非特異反応の原因は検査に用いる試料の種類に特有である場合もある。検査に用いられる試料としては、糞便、咽頭ぬぐい液、喀痰、血液、体組織、および食品などが挙げられるが、感染症の原因となる菌やウイルスに由来する抗原が尿中に排出されることがあることから、尿を試料として用いる場合がある。尿試料は、非侵襲的かつ容易に採取できること、喀痰試料の検査に比べて口腔内常在菌の影響を受けにくいことなどから、尿試料からの測定対象物の検出は非常に有用である。尿試料を用いる免疫学的測定法では、非特異反応を抑制する技術として、試料や標識抗体を固相上で展開する際に酸化剤を溶液中に含有させる方法(例えば、特許文献3)、鳥由来のIgYを試料と接触させる方法(例えば、特許文献4)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−291780号公報
【特許文献2】特開2009−162535号公報
【特許文献3】特表2009−517632号公報
【特許文献4】特開2012−47481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これまで提案されてきた非特異反応抑制方法であっても、完全には抑制できない非特異反応があり、新たな非特異反応抑制方法が望まれている。また、試料の種類に応じた非特異反応の抑制方法が望ましい。
【0007】
さらに、多糖抗原を検出または定量する免疫学的測定法では、抗原を遊離するために前処理が必要とされることがあるが、酵素による前処理方法は特異抗体の存在下では抗体が変性してしまうため使用できない、という問題があった。
【0008】
本発明は、免疫学的測定法、特にイムノクロマトグラフィー法において、尿中に含まれる微量の測定対象物である多糖抗原を正確に検出および/または定量しうる、非特異反応を効果的に抑制できる前処理方法、非特異反応抑制剤、イムノクロマト試薬、および検出または定量方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の(1)乃至(18)に係る尿試料中の多糖抗原を検出または定量するためのイムノクロマトグラフィー法における前処理方法、およびそれを用いる検出または定量方法、並びにプロテアーゼを含む非特異反応抑制剤、およびそれを含むイムノクロマト試薬を提供する。
(1) プロテアーゼを含む非特異反応抑制剤と、尿試料とを接触させる工程を含む、尿試料中の多糖抗原を検出または定量するためのイムノクロマトグラフィー法における前処理方法。
(2) 前記多糖抗原が肺炎球菌またはレジオネラに由来する、(1)に記載の前処理方法。
(3) 前記プロテアーゼがプロテイナーゼKである、(1)または(2)に記載の前処理方法。
(4) 前記プロテアーゼを含む前記非特異反応抑制剤と、前記尿試料とを接触させる工程が、前記尿試料と前記非特異反応抑制剤を含む前処理液中で接触させる工程である、(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の前処理方法。
(5) 前記前処理液における前記プロテアーゼの濃度が0.002U/ml以上である、(4)に記載の前処理方法。
(6) 前記前処理液における前記プロテアーゼの濃度が4.66U/ml以上である、(4)に記載の前処理方法。
(7) 前記前処理液における前記プロテアーゼの濃度(U/ml)と前記プロテアーゼおよび前記試料が接触する時間(hr)との積が0.14以上である(4)乃至(6)のいずれか1つに記載の前処理方法。
(8) 前記プロテアーゼを含む前記非特異反応抑制剤と、前記尿試料とを接触させる工程が加温されることなく行われる、(1)乃至(7)のいずれか1つに記載の前処理方法。
(9) 尿試料中の多糖抗原を検出または定量するためのイムノクロマトグラフィー法に用いられる非特異反応抑制剤であって、プロテアーゼを含む、非特異反応抑制剤。
(10) 前記多糖抗原が肺炎球菌またはレジオネラに由来する、(9)に記載の非特異反応抑制剤。
(11) 前記プロテアーゼがプロテイナーゼKである、(9)または(10)に記載の非特異反応抑制剤。
(12) 前記尿試料の前処理液または展開液として用いられる(9)乃至(11)のいずれか1つに記載の非特異反応抑制剤。
(13) 前記前処理液または前記展開液における前記プロテアーゼの濃度が0.002U/ml以上である、(12)に記載の非特異反応抑制剤。
(14) 前記前処理液または前記展開液における前記プロテアーゼの濃度が4.66U/ml以上である、(12)に記載の非特異反応抑制剤。
(15) 試料供給部と、前記試料供給部の下流側に位置するクロマトグラフ媒体と、前記クロマトグラフ媒体の一部に位置する、標識試薬が溶出可能に保持された標識試薬保持部と、前記クロマトグラフ媒体の一部であって前記標識試薬保持部より下流側に位置する、固定化抗体を含む検出部と、を有するテストストリップおよび、(9)乃至(14)のいずれか1つに記載の非特異反応抑制剤を含む、イムノクロマト試薬。
(16) 前記非特異反応抑制剤が、前記テストストリップの前記試料供給部から前記標識試薬保持部までのいずれかの部位に含まれる、(15)に記載のイムノクロマト試薬。
(17) 試料供給部と、前記試料供給部の下流側に位置するクロマトグラフ媒体と、前記クロマトグラフ媒体の一部に位置する、標識試薬が溶出可能に保持された標識試薬保持部と、前記クロマトグラフ媒体の一部であって前記標識試薬保持部より下流側に位置する、固定化抗体を含む検出部と、を有するテストストリップを用いて、イムノクロマトグラフィー法により尿試料中の多糖抗原を検出または定量する方法であって、(9)乃至(14)のいずれか1つに記載の非特異反応抑制剤を用いる、方法。
(18) 試料供給部と、前記試料供給部の下流側に位置するクロマトグラフ媒体と、前記クロマトグラフ媒体の一部に位置する、標識試薬が溶出可能に保持された標識試薬保持部と、前記クロマトグラフ媒体の一部であって前記標識試薬保持部より下流側に位置する、固定化抗体を含む検出部と、を有するテストストリップを用いて、イムノクロマトグラフィー法により尿試料中の多糖抗原を検出または定量する方法であって、(1)乃至(8)のいずれか1つに記載の前処理方法を用いる、方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の前処理方法によれば、尿試料中の多糖抗原を検出または定量するためのイムノクロマトグラフィー法において、プロテアーゼを含む非特異反応抑制剤と、尿試料とを接触させることで非特異反応を抑制することができる。
【0011】
本発明の非特異反応抑制剤によれば、尿試料中の多糖抗原を検出または定量するためのイムノクロマトグラフィー法において非特異反応を抑制することができる。
【0012】
また、本発明のイムノクロマト試薬によれば、非特異反応を抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明のイムノクロマトグラフィー法により尿試料中の多糖抗原を検出または定量する方法によれば、非特異反応を抑制して、多糖抗原を検出または定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るレジオネラ検出用イムノクロマト試薬のテストストリップの模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0016】
1.前処理方法
本発明の一実施形態に係る前処理方法は、尿試料中の多糖抗原を検出または定量するための免疫学的測定法に用いることができ、プロテアーゼを含む非特異反応抑制剤と、尿試料とを接触させる工程を含む。本実施形態の前処理方法によれば、非特異反応を抑制することができる。特に、本実施形態の前処理方法によれば、尿試料中の多糖抗原を検出または定量するためのイムノクロマトグラフィー法において、プロテアーゼを含む非特異反応抑制剤と、尿試料とを接触させることで、非特異反応を抑制することができる。さらに、本実施形態の前処理方法によれば、イムノクロマトグラフィー法において、抗測定対象物抗体に好ましくない影響を及ぼすことなく非特異反応を抑制して、測定対象物の正確な検出または定量に寄与しうる。
【0017】
「免疫学的測定法」とは、測定対象である測定対象物と特異的に結合する物質(例えば、抗体または抗原)を用いて、測定対象物の存在の有無の判定(検出)や、測定対象物が存在する場合にはその存在量の測定(定量)を行う方法である。測定対象物が抗原性を有する物質である場合、測定対象物を特異的に認識する抗体を用いて免疫学的測定法を実施することができる。この場合、抗体の具体的な形態について特に制限はないが、例えば、その測定対象物によって免疫された動物の血清から調製する抗血清、抗血清から精製された免疫グロブリン画分から得られるポリクローナル抗体、その分析対象物によって免疫された動物の脾臓細胞を用いる細胞融合によって得られるモノクローナル抗体、または、それらの断片[例えば、F(ab’)、Fab、Fab’、またはFv]を用いることができる。抗測定対象物抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれを用いてもよい。これらの抗体の調製は、公知の方法により行うことができる。本実施形態は、サンドイッチ型免疫学的測定法が好ましく、特に、ポリクローナル抗体−抗原−ポリクローナル抗体複合体を形成するサンドイッチ型免疫学的測定法が好ましい。また、測定対象物が抗体(すなわち、特定の抗原に対する免疫グロブリン分子)である場合には、当該抗体が特異的に認識する物質(抗原)または免疫グロブリン分子に対する抗体を用いて免疫学的測定法を実施することができる。
【0018】
免疫学的測定法としては、イムノクロマトグラフィー法(好ましくは、後述するサンドイッチ型イムノクロマトグラフィー法)やELISA法、ラテックス凝集法、免疫比濁法などが挙げられ、本実施形態は、特にイムノクロマトグラフィー法に用いられる。イムノクロマトグラフィー法は、簡易かつ迅速な検査方法であり、早期に治療を開始し、感染拡大を防ぐために迅速な診断が必要とされる菌やウイルスによる感染症の検査に非常に有用である。イムノクロマトグラフィー法では、後述するように標識試薬の抗体と非特異反応抑制剤が接触する前に試料と非特異反応抑制剤が反応する工程、および試料が検出部の抗体と反応する前に試料と非特異反応抑制剤が反応する工程を有することによって、反応に十分な濃度のプロテアーゼを用いても測定系に好ましくない影響を及ぼすことなく、さらに、試料と非特異反応抑制剤がクロマトグラフ媒体において接触して移動することで、検出前に試料と非特異反応抑制剤の反応時間を十分に確保できることによって、非特異反応を効果的に抑制することができると考えられるが、この原理に限定されるものではない。
【0019】
本実施形態の「測定対象物」とは、糖(特に糖タンパク質の糖部分、糖脂質の糖部分など)、複合糖質などの糖類を含むものであればよく、特に本実施形態の測定対象物は、C−多糖(CPS)抗原、莢膜多糖抗原、細胞膜多糖抗原、またはリポ多糖(LPS)抗原などを含む多糖抗原であることが好ましい。測定対象物は、菌やウイルスに由来するものであれば、特に制限はないが、呼吸器系感染症(例えば市中肺炎)の原因菌、特に肺炎球菌またはレジオネラ由来の多糖抗原を含むものを測定対象とすることで、非特異反応(偽陽性)の発生を抑制しつつ、迅速かつ正確な検出または定量を可能としうる本実施形態の効果が優れたものとなる。
【0020】
本実施形態の尿試料とは、特に制限はなく、全尿、部分尿でもよく、初尿でも中間尿でもよい。
【0021】
本発明者らは、測定対象物および試料に応じた好適な非特異反応抑制剤および前処理方法を新たに見出したものであり、本実施形態の非特異反応抑制剤および前処理方法を用いて尿試料を前処理することにより、多糖抗原を検出または定量するための免疫学的測定法、特にイムノクロマトグラフィー法において非特異反応を抑制できることを新たに見出したものである。
【0022】
2.非特異反応抑制剤
本発明の一実施形態に係る尿試料中の多糖抗原を検出または定量するためのイムノクロマトグラフィー法に用いられる非特異反応抑制剤は、プロテアーゼを含む。本実施形態の非特異反応抑制剤によれば、尿試料と接触させることにより、本来の目的とする抗原抗体反応以外の非特異反応を抑制することができる。さらに、本実施形態の非特異反応抑制剤によれば、非特異反応を抑制することによって測定対象物の正確な検出または定量に寄与しうる。さらに、本実施形態の非特異反応抑制剤によれば、イムノクロマトグラフィー法において、非特異反応を抑制すると共に、本来の目的とする抗原抗体反応を促進することで検出部(テストライン)の呈色強度を増大させ、検出感度を向上させることができる。
【0023】
本実施形態のプロテアーゼは、ペプチド結合加水分解酵素であれば特に制限はないが、特に基質特異性の低いエンドペプチダーゼであることが好ましく、キモトリプシン、プロナーゼ、プロテイナーゼK、またはスブチリシンなどセリンエンドプロテアーゼがより好ましい。
【0024】
さらに、尿試料のpHや塩濃度は、個人差や症例により様々であることから、本実施形態のプロテアーゼは、広い範囲のpHや塩濃度条件においてもプロテアーゼ活性を保持していることが望ましい。特に、本実施形態のプロテアーゼはプロテイナーゼKであることが好ましい。プロテイナーゼKは、広い範囲のpHと塩濃度で安定したプロテアーゼ活性を有し、尿中に多く含有されるカルシウムイオンの存在下でプロテアーゼ活性が安定する。また、尿素などの変性剤の存在下でも不活性化することがなく、熱安定性も高い。従って、本実施形態において、プロテイナーゼKは、尿試料の性状の影響を受けにくく、最も好適である。さらに、本実施形態において、プロテイナーゼKは、非特異反応の抑制と共に、検出部の発色強度を増加させることができる。
【0025】
本実施形態の非特異反応抑制剤は、プロテアーゼを有効成分として含むものであればよく、プロテアーゼのみからなるようにしてもよく、他の公知の非特異反応抑制のための物質、例えば、免疫グロブリン、塩基性アミノ酸、無機塩類、および界面活性剤等を含むようにしてもよい。また、プロテアーゼは、1種類ではなく、2種類以上を併用しても良い。
【0026】
本実施形態の非特異反応抑制剤は、尿試料と接触する形態であればよく、溶液形態でもよく、乾燥形態でもよい。本実施形態の非特異反応抑制剤は、抽出用溶液、希釈用溶液、懸濁用溶液、または保存用溶液などの、測定対象物を含む尿試料を前処理および/または保存するための前処理用溶液に含まれるようにしてもよく、尿試料をイムノクロマト試薬に滴下または塗布する前または後に滴下する展開液に含まれるようにしてもよい。本実施形態の非特異反応抑制剤は、非特異反応抑制剤のみからなる前処理用溶液であってもよい。溶液形態とすることで、非特異反応抑制剤と尿試料を均一に接触させて、反応を進行させることができる。また、本実施形態の非特異反応抑制剤は、尿試料または前処理用溶液用の容器内に乾燥形態で含ませてもよく、試料のろ過用フィルター、イムノクロマト試薬のニトロセルロース膜もしくはセルロースろ紙などの多孔性物質、またはサンプルパッドもしくはテストストリップなど試料が接触する部材に乾燥形態で含有させてもよい。本実施形態の非特異反応抑制剤は、乾燥した状態で用いることにより、プロテアーゼ活性を保持して長期間保存することができる。
【0027】
本実施形態の非特異反応抑制剤と尿試料の接触はどのような方法で行われてもよいが、測定対象物を含む尿試料と測定対象物に対する抗体を接触させる前に接触させる。本実施形態において前処理液とは、尿試料と非特異反応抑制剤を含む溶液をいい、例えば、尿試料の前処理用溶液に尿試料を添加した後、非特異反応抑制剤を添加して前処理液とすることで、非特異反応抑制剤と尿試料を接触させてもよい。また、非特異反応抑制剤を含む前処理用溶液に尿試料を添加して前処理液とすることで、非特異反応抑制剤と尿試料を接触させてもよい。また、尿試料に非特異反応抑制剤を直接添加して前処理液とすることで、非特異反応抑制剤と尿試料を接触させてもよい。本実施形態の非特異反応抑制剤によれば、免疫学的測定法、特にイムノクロマトグラフィー法に用いられる抗測定対象物抗体に好ましくない影響を及ぼすことなく非特異反応を抑制して、測定対象物を正確に検出または定量することができる。
【0028】
本実施形態の非特異反応抑制剤と尿試料を接触させる時間(接触時間)の下限は、プロテアーゼ活性が発揮される十分な時間であればよく、特に制限はないが、例えば、30秒以上、より好ましくは1分以上である。また、接触時間の上限は、特に制限はないが、臨床において迅速に測定を行うことができるよう、180分以内、より好ましくは120分以内、さらに好ましくは60分以内、特に好ましくは30分以内、最も好ましくは5分以内にすることができる。
【0029】
本実施形態の非特異反応抑制剤と尿試料を接触させる温度(接触温度)はプロテアーゼ、特にプロテイナーゼKが酵素活性を維持する温度であればよく、特に制限はないが、下限は、15℃以上であることが好ましく、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上である。また、接触温度の上限は60℃以下であることが好ましく、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。接触温度の範囲として、特に制限はないが、好ましくは20℃乃至60℃であり、より好ましくは20℃乃至40℃である。接触温度を30℃以上とすることで、プロテアーゼが低濃度であっても非特異反応を効果的に抑制することができ、特に接触温度を30℃乃至40℃とすれば、臨床において一般的な装置(例えば恒温槽)を使用することができ、さらに非特異反応を効果的に抑制することができる。また、本実施形態のプロテアーゼを含む非特異反応抑制剤によれば、加温することなく非特異反応を抑制することができる。本実施形態において、「加温しない温度」とは、室温である約20℃乃至35℃、好ましくは23℃乃至30℃を意味する。本実施形態では、接触温度が約25℃であっても、接触時間5分以内、さらには1分以内で非特異反応を抑制する効果に優れる。室温(約25℃)かつ短時間でも非特異反応の抑制効果があることにより、イムノクロマト試薬の測定者が試料を室温で測定する場合であっても非特異反応抑制効果を奏するため、迅速かつ簡便にイムノクロマトグラフィー法を行うことができ、臨床において非常に有用である。一実施形態では、接触温度が加温しない温度範囲である場合、接触時間を30秒以上5分以内、より好ましくは1分以上5分以内としてもよい。別の実施形態では、接触温度が30℃以上60℃以内である場合、接触時間は30分以上120分以内、より好ましくは30分以上60分以内としてもよい。なお、接触温度は、上述の接触時間において上述の温度範囲内にあることが好ましく、より好ましくは、上述の接触時間において上述の温度範囲内の一定温度に維持される。
【0030】
本実施形態の非特異反応抑制剤はプロテアーゼを失活させる高温、例えば90℃以上、好ましくは95℃以上の加熱処理を必要とせずに非特異反応を抑制して本来の目的とする抗原抗体反応を進行させることができる。別の実施形態では、非特異反応抑制剤と尿試料を接触させた後、プロテアーゼを失活させる高温、例えば90℃以上、好ましくは95℃以上の加熱処理を行ってもよい。
【0031】
非特異反応抑制剤と尿試料の接触時のpHは、プロテアーゼ、特にプロテイナーゼKが酵素活性を維持するpHであればよく、好ましくはpH4乃至pH12、より好ましくは、尿が通常有するpHの範囲であるpH5乃至pH9程度が好ましい。
【0032】
(前処理用溶液および展開液)
本実施形態の非特異反応抑制剤は、上述したように前処理用溶液または展開液に含まれうる。前処理用溶液は、抽出用溶液、希釈用溶液、懸濁用溶液、または保存用溶液など、尿試料を前処理および/または保存するための溶液を含む。前処理用溶液および展開液は、上述したようにその使用形態が異なるが、同一の組成の溶液が前処理用溶液および展開液の双方として機能しうる。前処理用溶液および展開液は、緩衝剤および溶媒(通常は、水)からなる緩衝液を含む。緩衝剤としては、目的とする免疫反応に好適なpHに調節可能な緩衝剤が用いられる。一般に、緩衝液のpHは5乃至10が好ましく、この場合にはリン酸緩衝液、Tris緩衝液、グッド緩衝液などの通常使用される緩衝液が用いられうる。特に免疫反応に好適なpH6乃至8を与える緩衝剤としては、HEPESやPIPESなどのグッド緩衝液が好ましい。また、前処理用溶液および展開液には、緩衝剤以外に塩化ナトリウムなどを添加してもよく、公知の添加剤をさらに添加してもよい。添加剤としては、例えば、抗原抗体反応の促進または非特異反応の抑制を目的としたタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチンなど)、高分子化合物(例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ツイーン(登録商標)20、トリトン(登録商標)X−100など)、イオン性界面活性剤またはポリアニオン(例えば、デキストラン硫酸、ヘパリン、ポリスチレンスルホン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など)またはその塩など;抗菌剤としてのアジ化ナトリウム、長鎖アルキル4級アンモニウム塩などが挙げられる。その他、前処理用溶液は多糖抗原を抽出するために必要な成分を含んでもよい。
【0033】
本実施形態では、非特異反応抑制剤が前処理液または展開液に含まれる場合、前処理液または展開液中のプロテアーゼの濃度は、非特異反応を抑制することができればよく、下限は、好ましくは0.002U/ml以上、より好ましくは0.07U/ml以上、さらに好ましくは0.15U/ml以上、特に好ましくは0.93U/ml以上である。0.002U/ml以上であることにより、非特異反応を抑制する効果に優れ、さらに、0.07U/ml以上であることにより、非特異反応を十分に抑制することができ、さらに、0.93U/ml以上であることにより、非特異反応を効果的に抑制することができると共に、検出部の発色強度を十分に増加させることができる。
【0034】
さらに、前処理液または展開液中のプロテアーゼの濃度の下限は、好ましくは4.66U/ml以上、より好ましくは9.32U/ml以上、最も好ましくは18.64U/ml以上である。4.66U/ml以上であることにより、加温する必要なく、非特異反応の抑制効果に優れるため、加温のための装置を必要としない。さらに、9.32U/ml以上であることにより、非特異反応を十分に抑制する効果に優れ、18.64U/ml以上であることにより、非特異反応抑制剤と尿試料を接触させた後、速やかに測定を行うことができ、接触時間が短時間であっても十分な非特異反応の抑制効果に優れ、迅速かつ簡便であるイムノクロマトの優位性を顕著にすることができる。前処理液または展開液中のプロテアーゼの濃度の上限は、イムノクロマトグラフィー法において尿試料がテストストリップ上を展開できる濃度であれば、特に制限はなく、200U/ml以下にしてもよく、好ましくは150U/ml以下にしてもよい。
【0035】
本実施形態では、前処理液または展開液中のプロテアーゼの濃度(単位:U/ml)と、非特異反応抑制剤と尿試料が接触する時間(単位:hr)の積を前処理定数と定義し、前処理定数との関係性により、効果的に非特異反応を抑制できることを見出した。すなわち、前処理定数の下限は、好ましくは0.004以上、より好ましくは0.14以上、さらに好ましくは0.31以上、最も好ましくは0.78以上である。前処理定数が0.004以上であることにより非特異反応を抑制する効果に優れ、0.14以上であることにより非特異反応を十分に抑制することができ、0.31以上であることにより加温する必要なく非特異反応を効果的に抑制する効果に優れ、さらに、前処理定数が0.78以上であることにより、非特異反応を十分に抑制することができる。前処理定数の上限は、非特異反応抑制剤と尿試料が十分に反応する値であれば、特に制限はなく、50以下、好ましくは10以下、より好ましくは4.66以下である。一実施形態では、接触温度が加温しない温度範囲である場合、前処理定数は0.31以上であることが好ましく、0.78以上であることがより好ましい。別の実施形態では、接触温度が30℃以上60℃以内である場合、0.004以上であることが好ましく、0.46以上であることがより好ましい。
【0036】
3.イムノクロマト試薬
本発明の一実施形態に係るイムノクロマト試薬は、試料供給部と、試料供給部の下流側に位置するクロマトグラフ媒体と、クロマトグラフ媒体の一部に位置する、標識試薬が溶出可能に保持された標識試薬保持部と、クロマトグラフ媒体の一部であって標識試薬保持部より下流側に位置する、固定化抗体を含む検出部と、を有するテストストリップおよび非特異反応抑制剤を含む。別の実施形態のイムノクロマト試薬は、非特異反応抑制剤を含むテストストリップ、および前処理用溶液または展開液を含む。さらに、別の実施形態のイムノクロマト試薬は、テストストリップ、および非特異反応抑制剤を含む前処理用溶液または展開液を含む。本実施形態のイムノクロマト試薬によれば、非特異反応を抑制することができる。さらに、本実施形態のイムノクロマト試薬によれば、非特異反応を抑制することで尿試料中の多糖抗原を正確に検出または定量しうる。以下に、イムノクロマトグラフィー法において用いられるイムノクロマト試薬について図1を参照して詳細に説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係るレジオネラ検出用イムノクロマト試薬のテストストリップ100の模式的斜視図である。図1に示すレジオネラ検出用イムノクロマト試薬のテストストリップ100は、ラテラルフロー式テストストリップであり、最下層としてプラスチック製粘着シート110を有し、当該粘着シート110上には、クロマトグラフ媒体(不溶性担体;固定相)としての抗体固定化メンブレン120が積層され、抗体固定化メンブレン120上の一方にはサンプルパッド140(試料供給部)と、標識試薬保持パッド130(標識試薬保持部)が積層され、他方には吸収パッド150が積層されている。
【0038】
抗体固定化メンブレン120には、抗測定対象物抗体である抗レジオネラ抗体(例えば、抗レジオネラニューモフィラ血清型1LPSウサギポリクローナル抗体)が固定化されたテストライン122(検出部)、および抗免疫グロブリン抗体(例えば、抗ウサギIgGヤギ抗体)が固定化されたコントロールライン124(コントロール部)が配置されている。
【0039】
当該標識試薬保持パッド130には、金コロイド粒子の表面に抗測定対象物抗体である抗レジオネラ抗体(例えば、抗レジオネラニューモフィラ血清型1LPSウサギポリクローナル抗体)が固定化されてなる標識抗体(標識試薬)が溶出可能に保持されている。以下、抗体固定化メンブレン120の試料供給部140側を上流、試料が流れていく方向(吸収部150側)を下流として説明する。
【0040】
4.イムノクロマトグラフィー法
本実施形態のイムノクロマトグラフィー法により尿試料中の多糖抗原を検出または定量する方法では、試料供給部と、試料供給部の下流側に位置するクロマトグラフ媒体と、クロマトグラフ媒体の一部に位置する、標識試薬が溶出可能に保持された標識試薬保持部と、クロマトグラフ媒体の一部であって標識試薬保持部より下流側に位置する、固定化抗体を含む検出部と、を有するテストストリップを用い、プロテアーゼを含む非特異反応抑制剤を用いる。別の実施形態のイムノクロマトグラフィー法により尿試料中の多糖抗原を検出または定量する方法では、テストストリップを用い、プロテアーゼを含む非特異反応抑制剤と、尿試料とを接触させる工程を含む前処理方法を用いる。本実施形態のイムノクロマトグラフィー法により尿試料中の多糖抗原を検出または定量する方法によれば、非特異反応を抑制することができる。さらに、本実施形態のイムノクロマトグラフィー法により尿試料中の多糖抗原を検出または定量する方法によれば、抗測定対象物抗体に好ましくない影響を及ぼすことなく非特異反応を抑制して、尿試料中の多糖抗原を正確に検出または定量することができる。
【0041】
以下に、テストストリップ100を使用した検出または定量方法(イムノクロマトグラフィー法)を説明する。はじめに、本実施形態の非特異反応抑制剤を含む前処理用溶液を用いる場合、マイクロチューブなどの容器中で尿試料を前処理用溶液と混合し、前処理液を得る。得られた前処理液をサンプルパッド140に滴下すると、前処理液は展開液として機能して、毛細管現象によりサンプルパッド140を通過し、標識試薬保持パッド130へと移動する。
【0042】
そして、試料が標識試薬保持パッド130に到達すると、試料中に測定対象物(例えば、レジオネラ由来の多糖抗原)が存在する場合には、標識試薬を構成する抗レジオネラ抗体と試料中のレジオネラ由来の多糖抗原との抗原抗体反応により、複合体(金コロイド粒子−抗レジオネラ抗体−レジオネラ由来の多糖抗原の複合体)が形成される。さらに、この複合体は、毛細管現象により、抗体固定化メンブレン120中を下流側へ移動し、テストライン122(検出部)に到達すると、テストライン122に固定化されている抗測定対象物抗体である抗レジオネラ抗体と複合体の抗原抗体反応によって、複合体はテストライン122上に捕捉される。これにより、テストライン122は呈色し、尿試料中におけるレジオネラ由来の多糖抗原の存在を確認でき、尿試料中の多糖抗原を検出または定量することが可能となる。
【0043】
なお、試料中の測定対象物と反応しなかった抗レジオネラ抗体結合金コロイド(標識試薬)は、コントロールライン124(コントロール部)に固定化された抗免疫グロブリン抗体に捕捉される。これにより、コントロールライン124は赤色のラインを呈することから、テストストリップ100上で試料が正常に移動したことが確認される。
【0044】
なお、他の実施形態として、尿試料と前処理用溶液を混合した後に非特異反応抑制剤を添加して得られた前処理液をサンプルパッド140に滴下または塗布してもよい。また、サンプルパッドに前処理液を滴下する前に、前処理液を加温するようにしてもよい。また、尿試料を直接サンプルパッド140に滴下または塗布した後、非特異反応抑制剤を含む展開液を滴下するようにしてもよい。さらに、他の実施形態として、試料と接触する部位、例えばろ過フィルターやサンプルパッド140などの各部材に非特異反応抑制剤を保持するようにしてもよく、この場合、尿試料のみを直接サンプルパッド140に滴下または塗布して展開液を用いるようにしてもよく、また、尿試料を前処理用溶液で処理してサンプルパッド140に滴下または塗布するようにしてもよく、また、前処理用溶液または展開液を用いることなく尿試料のみを直接サンプルパッド140に滴下または塗布して、展開させるようにしてもよい。標識試薬保持部より前で非特異反応抑制剤と尿試料が接触することにより、効果的に非特異反応を抑制することができる。
【0045】
以下、免疫学的測定用キット(イムノクロマト試薬)の各構成要素について、詳細に説明する。
【0046】
(抗体固定化メンブレン)
抗体固定化メンブレン120の主相は、イムノクロマトグラフィーのクロマトグラフ媒体(固定相)として機能する多孔質体からなる不溶性担体である。当該抗体固定化メンブレン120の構成材料である多孔質体としては、例えば、ニトロセルロース膜、セルロース膜、アセチルセルロース膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、ナイロン膜、ガラス繊維、不織布、布などの多孔質シートが挙げられ、特にニトロセルロース膜が好ましく用いられる。なお、滴下された試料のメンブレン120上での移動速度は、メンブレンの材質、大きさ、孔径および分布などにより変えることができ、測定対象物の測定に合った速度を設定することができる。
【0047】
(サンプルパッド)
サンプルパッド140は、滴下または塗布された試料を受ける試料供給部として機能する。さらに、サンプルパッド140は、尿試料中の不溶物粒子などをろ過する機能や試料が溢れることを防ぐ機能をも兼ねることができる。サンプルパッド140の構成材料としては、例えば、セルロースろ紙、ガラス繊維、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ナイロン、不織布および綿布などの均一な特性を有する材料が挙げられる。
【0048】
(標識試薬保持パッド)
標識試薬保持パッド130は、上述したように標識試薬を保持する標識試薬保持部として機能する。標識試薬保持パッド130の構成材料としては、例えば、セルロースろ紙、ガラス繊維、および不織布などが挙げられ、好ましくはガラス繊維が用いられる。
【0049】
標識試薬保持パッド130によって保持される標識試薬は、測定対象物と特異的に結合する物質と、適当な標識体との複合体である。「測定対象物と特異的に結合する物質」としては、上述したように、測定対象物が抗体である場合には、当該抗体が特異的に認識する物質(抗原)または免疫グロブリン分子に対する抗体が用いられ、測定対象物が抗原性を有する物質である場合には、測定対象物を特異的に認識する抗測定対象物抗体(好ましくは、ポリクローナル抗体)が用いられる。「標識体」としては、着色粒子が好ましく、例えば、金、銀、白金または銅などの金属粒子または金属コロイド、酸化鉄などの金属酸化物粒子または金属酸化物コロイド、セレン、テルル、硫黄などの非金属粒子、あるいは、染料などで着色したものを含む有色ラテックス粒子などが挙げられ、特に金コロイドが好ましい。
【0050】
(テストライン)
テストライン122は検出部として機能する。テストライン122は、抗体固定化メンブレン120における標識試薬保持パッド130より下流側に位置しており、測定対象物と特異的に結合する物質が固定化試薬として配置されている。図1において、テストライン122はライン状に形成されている。検出部の形状はこれに限定されず、任意の形状にできるが、ライン状であることが好ましく、幅0.5乃至1.5mmのライン状であることがより好ましい。
【0051】
なお、標識試薬保持パッド130への標識試薬の固定化や、テストライン122への固定化試薬(抗体など)の固定化方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。これらの固定化方法としては、固定化すべき試薬をクロマトグラフ媒体に物理的手段または化学的手段により直接固定化する方法がある。直接固定化する方法としては物理吸着や共有結合がある。一般に、クロマトグラフ媒体がニトロセルロース膜または混合ニトロセルロースエステル膜の場合、物理吸着を行うことができる。なお、固定化した後、非特異的な吸着により分析の精度が低下することを防止するため、必要に応じて、公知の方法でブロッキング処理を行ってもよい。
【0052】
(コントロールライン)
コントロールライン124は、テストストリップ100上で試料が正常に移動したことを確認するために設けられる。コントロールライン124は、抗体固定化メンブレン120におけるテストライン122より下流側に位置しており、標識試薬と特異的に結合する物質が固定化試薬として配置されている。例えば標識試薬として金コロイド標識ウサギポリクローナル抗体を用いた場合には、抗ウサギ抗体を固定化しておけばコントロール部として機能する。標識試薬がコントロールライン124まで移動すると、コントロールライン124に配置された固定化試薬と反応して標識試薬が集積する。その結果、コントロールライン124は標識試薬の集積に起因して発色などを示すことから、テストストリップ100上で試料が正常に移動したことが確認される。図1において、コントロール部もコントロールライン124としてライン状に形成されている。コントロール部の形状は任意の形状にできるが、ライン状であることが好ましく、幅0.5乃至1.5mmのライン状であることがより好ましい。
【0053】
(吸収パッド)
吸収パッド150は、テストライン122およびコントロールライン124より下流側に位置しており、クロマトグラフ媒体を移動した尿試料や展開液、検出部に捕捉されない標識物質などを吸収する機能を有する部材である。吸収パッド150の構成材料について特に制限はなく、例えば、セルロ−スろ紙、不織布、布、またはセルロースアセテートなどの吸水性材料が用いられる。
【0054】
なお、これらの部材は、毛細管現象により試料が移動できればよく、サンプルパッド、標識試薬保持パッド、テストライン、コントロールライン、および吸収パッドなどを基材に貼り付けても、単一の多孔性部材シートとしてもよい。
【0055】
(前処理用溶液または展開液)
さらに、本実施形態のイムノクロマト試薬は、上述した前処理用溶液または展開液を含む。本実施形態の非特異反応抑制剤を含む前処理用溶液または展開液を用いることで非特異反応を効果的に抑制することができる。
【0056】
(その他の構成要素)
本実施形態では、必要に応じてその他の構成要素(例えば、使用説明書、試料採取用器具、試料前処理用容器など)をさらに備えていてもよく、採尿容器やマイクロチューブなどの試料前処理用容器中で尿試料を前処理用溶液と混合するようにしてもよい。また、尿試料や前処理液を通過させるろ過フィルターを備えてもよい。また、テストストリップは、図示しないプラスチック製の試料供給窓部および検出窓部を有するケースに格納し、イムノクロマトテストデバイスの形態とされることが好ましい。
【0057】
別の実施形態では、試料と接触する部位、例えば試料供給部などの各部材が非特異反応抑制剤を含む。さらに別の実施形態では、試料前処理用容器またはろ過フィルターが非特異反応抑制剤を含む。試料前処理用容器、ろ過フィルター、または試料供給部などの各部材が非特異反応抑制剤を含むことで、非特異反応を抑制することができる。標識試薬保持部よりも前で測定対象物を含む尿試料と非特異反応抑制剤が接触することで、非特異反応を効果的に抑制することができる。各部材に非特異反応抑制剤を保持せる方法としては、公知の方法であればよく、例えば、ろ過フィルターや試料供給部などの作製時に用いられる溶液や緩衝液、洗浄液などに非特異反応抑制剤を含ませて各部材に塗布、滴下、含浸または噴霧などした後、これを凍結乾燥や風乾などにより乾燥して保持させる方法などが挙げられる。各部材が非特異反応抑制剤を保持する場合、非特異反応抑制剤をパッド類に含浸させることにより、パッド類の非特異反応抑制剤の量を、測定に必要とされる量の試料と反応できる量にすればよく、非特異反応抑制剤の使用量を効率良く抑えることができる。
【0058】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
イムノクロマト試薬のテストストリップの作製
図1に示す構造を有するレジオネラ検出用イムノクロマト試薬のテストストリップを作製し、プロテアーゼによる本実施形態の効果(非特異反応の抑制)を確認した。
【0060】
なお、作製したイムノクロマト試薬のラテラルフローテストストリップ100は、ニトロセルロース膜からなる抗体固定化メンブレン120上に標識試薬保持パッド130が配置された構成を有しており、標識試薬保持パッド130には、抗レジオネラニューモフィラ血清型1LPSウサギポリクローナル抗体金コロイド液が含浸されている。また、検出部であるテストライン122には、固定化抗体として抗レジオネラニューモフィラ血清型1LPSウサギポリクローナル抗体が固定化されている。さらに、コントロール部であるコントロールライン124には、抗ウサギIgGヤギ抗体が固定化されている。
【0061】
(1)テストラインの作製
ニトロセルロースからなる膜のテストライン領域に抗レジオネラウサギポリクローナル抗体を塗布した。抗体は、予め20mM リン酸緩衝液(pH7.5)に希釈し、これをニトロセルロース膜に塗布、乾燥した。
【0062】
なお、コントロールライン領域にはウサギIgGに対するヤギ由来の精製抗体を用いた。抗体は、予め10mM リン酸緩衝液(pH7.5)に希釈し、これをニトロセルロース膜に塗布した。
【0063】
(2)標識試薬保持パッドの作製
標識試薬保持パッドは、以下のように作製した。金コロイド溶液1000μLに対して、50mM ホウ酸緩衝液(pH9.0)で希釈済みの抗体(抗レジオネラウサギポリクローナル抗体)の溶液100μLを添加した。この溶液を遠心分離機を用いて10,000×g、25℃の条件で10分間遠心分離した後、上澄み液を除去し、20mM Tris−HCl(pH8.2)からなる保存液を加えた。ボルテックスミキサーにより金コロイド粒子を分散させた後、10,000×g、25℃の条件で10分間遠心分離した。上澄み液を除去し、20mM Tris−HCl(pH8.2)からなる保存液を加えてボルテックスミキサーにより、金コロイド粒子を分散させた。これを抗体感作金コロイド溶液(標識試薬溶液)とした。この抗体感作金コロイド溶液100μLに対し、20mM Tris−HCl(pH8.2)400μLの溶液を加えて、よく混和した。この溶液800μLをガラス繊維パッドに添加し、均一に馴染ませ、十分に乾燥させて、標識試薬保持パッドを得た。
【0064】
(3)テストストリップの作製
前記(1)で作製したテストラインおよびコントロールラインを有するクロマトグラフ媒体上に、前記(2)で作製した標識試薬保持パッド、サンプルパッドを設置し、展開された水溶液を吸収する吸収パッドをコントロールラインの下流に設置して、テストストリップを作製した。
【0065】
[実施例2]
尿を試料とするイムノクロマト試薬における各プロテアーゼの非特異反応抑制効果
尿試料として、レジオネラ由来の多糖抗原の存在を確認済みの陽性試料、レジオネラ由来の多糖抗原の不存在を確認済みの偽陽性試料および陰性試料の3種を用いた。レジオネラ由来の多糖抗原の存在・不存在はEIA試薬であるレジオネラ抗原「ミツビシ」(LSIメディエンス社製)を用いて確認した。
【0066】
各尿試料180μL(pH6.0)に、精製水に溶解した各プロテアーゼ(プロテイナーゼK(Worthington社製、23.3U/mg)、またはStreptomyces griseus由来のPronase(SIGMA社製、7unit/mg))をそれぞれ20μL添加して前処理液を得た。前処理液中のプロテアーゼ濃度は、表1に示す濃度となるように調製した。前処理液を37℃(接触温度)、30分間(接触時間)混合した。なお、接触時間は、非特異反応抑制剤(前処理用溶液)と尿試料が接触してからイムノクロマト試薬のサンプルパッドに滴下されるまでの時間である。得られた前処理液150μLを、実施例1で作製したイムノクロマト試薬のテストストリップのサンプルパッドに滴下し、15分後にテストラインを確認した。ラインの確認は、イムノクロマトリーダーC10066−10(浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、テストラインの反射光強度を測定し、反射光強度と目視判定に基づいて、以下の通り判定した。結果を表1に示す。表1に記載の「−」は、陰性(テストラインが発色しなかったこと)、「+」は、陽性(テストラインが明確に発色したこと)、「+w」は、弱陽性(テストラインが薄く発色したこと)を示す。なお、プロテアーゼを添加していない試料についても同様に測定を行った。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すとおり、プロテアーゼを含まない場合には、抗原を含有しない偽陽性の試料であっても、目視でも十分に確認できる発色を示し、強い非特異反応を示した。しかし、プロテアーゼを含む非特異反応抑制剤と尿試料を接触させることで、偽陽性の発生を有意に抑制できたことがわかる。これは、尿試料に含まれる何らかの成分に起因する非特異反応が抑制されたことによるものと考えられる。一方、陽性試料に対する発色強度は、プロテアーゼの添加によって大きく低下することはなかったことから、迅速な検査および診断に資する免疫学的測定法の利点を損なうことはないことも確認された。
【0069】
[実施例3]
プロテイナーゼKの濃度および接触時間と非特異反応抑制効果の関係
プロテイナーゼKの濃度および接触時間を変えた点を除いて、上述した実施例2と同様の方法により、プロテイナーゼKの濃度による非特異反応抑制効果を確認した。結果を下記の表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2に示すとおり、プロテイナーゼKを含まない場合、偽陽性の試料は目視でも十分に確認できる発色を示した。しかし、プロテイナーゼKと尿試料を接触温度37℃、接触時間120分接触させた場合、プロテイナーゼK濃度0.002U/ml(前処理定数0.004)で偽陽性試料の発色強度が減少し始め、0.07U/ml(前処理定数0.14)で完全に目視できない程度にすることができ、非特異反応の抑制に十分な効果を示した。プロテイナーゼKと尿試料を接触温度37℃、接触時間30分または60分接触させた場合、プロテイナーゼK濃度は、それぞれ0.93U/ml(前処理定数0.47)、0.15U/ml(前処理定数0.15)で、偽陽性試料の発色は完全に目視できない程度になり、非特異反応の抑制に十分な効果を示した。また、陽性の試料では、プロテイナーゼKを添加しても安定した発色強度が保たれ、さらにプロテイナーゼKの濃度を大きくすることによって、発色強度を増加できることが明らかとなった。
【0072】
[実施例4]
室温におけるプロテイナーゼKの濃度および接触時間と非特異反応抑制効果の関係
接触温度を室温(25℃)とし、プロテイナーゼKの濃度および接触時間を変えた点を除いて、上述した実施例2と同様の方法により、プロテイナーゼKによる非特異反応抑制効果を確認した。結果を下記の表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
表3に示すとおり、プロテイナーゼKを添加しない場合、偽陽性の試料は目視でも十分に確認できる発色強度を示した。しかし、プロテイナーゼKと尿試料の接触時間5分の場合、プロテイナーゼK濃度4.66U/ml(前処理定数0.39)で、偽陽性試料の発色強度は減少し始め、9.32U/ml(前処理定数0.78)で、完全に目視できない程度にすることができた。さらに、プロテイナーゼKと尿試料の接触を速やかに行い、試料供給部に滴下した場合(接触時間1分以内)であっても、プロテイナーゼK濃度11.65U/ml(前処理定数約0.19)で、偽陽性試料の発色強度は減少し始め、18.64U/ml(前処理定数0.31)で、完全に目視できない程度にすることができた。また、陽性の試料においては、プロテイナーゼKを添加することで発色強度を増加できることが明らかとなった。なお、酵素反応の性質上、実施例で示した時間および濃度より増加させて接触させた場合でも、非特異反応の抑制効果が認められるであろうことは容易に推定される。
【0075】
[実施例5]
テストストリップの各部位へのプロテイナーゼKの添加による非特異反応の抑制
上述した実施例2乃至実施例4では、非特異反応抑制剤を含む前処理用溶液を用いたが、本実施例では、前処理用溶液ではなくテストストリップの構成要素の一部であるサンプルパッドに非特異反応抑制剤(プロテイナーゼK)を含ませることで、上記と同様の効果(非特異反応の抑制)が奏されるかどうかを確認した。
【0076】
精製水に、プロテイナーゼKを添加し、得られた溶液をサンプルパッド(セルロース膜)に含浸させ、乾燥させて、本実施例のサンプルパッドを得た。得られたサンプルパッドを用いたこと、プロテアーゼを添加することなく尿試料を直接サンプルパッドに滴下したこと、滴下から測定まで室温(約25℃)で行ったこと以外は、上述した実施例1で作製したテストストリップおよび実施例2と同様の手法により、各試料における反射光強度を測定すると共に目視判定に基づいて測定を行った。
【0077】
その結果、本実施形態に係る非特異反応抑制剤の添加による非特異反応の抑制効果は、非特異反応抑制剤を前処理用溶液ではなくテストストリップの構成要素に含ませた場合であっても同様に奏されることが確認された。
【0078】
[実施例6]
肺炎球菌検出用イムノクロマト試薬におけるプロテイナーゼKの濃度および接触時間と非特異反応抑制効果の関係
標識試薬保持パッド130に、抗肺炎球菌莢膜ウサギポリクローナル抗体金コロイド液を含浸した点、テストライン122に、抗肺炎球菌莢膜ウサギポリクローナル抗体を固定化した点を除き、実施例1と同様に肺炎球菌検出用テストストリップを作製した。試料として、肺炎球菌の菌株(ATCC49619)から抽出した莢膜多糖抗原を尿試料に添加した陽性試料、尿試料のみの偽陽性試料、および尿試料のみの陰性試料の3種を用いた。上述の肺炎球菌検出用テストストリップおよび試料を用いた点、プロテイナーゼKの濃度および接触時間を変えた点を除いて、上述した実施例2と同様の方法により、プロテイナーゼKの濃度による非特異反応抑制効果を確認した。結果を下記の表4に示す。
【0079】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、尿を試料とする多糖抗原、例えば肺炎球菌またはレジオネラ由来の抗原を検出または定量するための免疫学的測定法、特にイムノクロマトグラフィー法における非特異的反応を顕著に抑制させるものであり、採取が容易で、常在菌の少ない尿による簡便で高感度、高信頼性の測定手段を提供するものであり、産業上有用であり、産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0081】
100 テストストリップ
110 プラスチック製粘着シート
120 抗体固定化メンブレン(クロマトグラフ媒体)
122 テストライン(検出部)
124 コントロールライン(コントロール部)
130 標識試薬保持パッド(標識試薬保持部)
140 サンプルパッド(試料供給部)
150 吸収パッド


図1