特許第6703360号(P6703360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6703360スリーブ位置検査装置及びスリーブ位置検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703360
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】スリーブ位置検査装置及びスリーブ位置検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20200525BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20200525BHJP
   E04G 15/06 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G01C15/00 104Z
   G01C15/06 T
   E04G15/06 A
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-543943(P2018-543943)
(86)(22)【出願日】2017年10月4日
(86)【国際出願番号】JP2017036185
(87)【国際公開番号】WO2018066614
(87)【国際公開日】20180412
【審査請求日】2019年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-196894(P2016-196894)
(32)【優先日】2016年10月5日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-39055(P2017-39055)
(32)【優先日】2017年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】永元 直樹
(72)【発明者】
【氏名】掛橋 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】池原 基博
(72)【発明者】
【氏名】内山 英昭
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−153438(JP,A)
【文献】 特表2009−517636(JP,A)
【文献】 特開2010−8347(JP,A)
【文献】 特開平11−325318(JP,A)
【文献】 特開2016−121450(JP,A)
【文献】 特開2015−232203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01C 15/06
G01B 11/00
E04G 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造体に貫通孔を形成するためにコンクリート打設前の鉄筋に取り付けられてなる少なくとも1つのスリーブの位置を該コンクリート打設前に検査するスリーブ位置検査装置において、
前記鉄筋と前記スリーブとからなるコンクリート打設前の構造体を鉄筋構造体とした場合に、
該鉄筋構造体又は前記コンクリート構造体のBIMモデルを記憶するBIMモデル記憶手段と、
該鉄筋構造体の内部又は近傍であって該BIMモデルにて既知の位置に設置された基準マーカーと、
前記スリーブの位置を測定すべく該スリーブに設置されたスリーブマーカーと、
前記基準マーカー及び少なくとも1つの前記スリーブマーカーをそれらの順でセンシングし、それらのマーカーのセンシングの後に再び該基準マーカーをセンシングするセンシング装置と、
該センシング装置がセンシングして得たデータから前記基準マーカーに関連付けた前記スリーブマーカーの位置を解析するスリーブマーカー位置解析手段と、
該スリーブマーカー位置解析手段が解析した該スリーブマーカーの位置が前記BIMモデル記憶手段に記憶されているBIMモデルに照合して正しいかどうかを判別するスリーブマーカー位置判別手段と、
を備えたことを特徴とするスリーブ位置検査装置。
【請求項2】
前記スリーブマーカーは、該スリーブマーカーが設置されたスリーブのIDや径についての情報を担持する画像コードである、
ことを特徴とする請求項1に記載のスリーブ位置検査装置。
【請求項3】
前記スリーブマーカーは、前記スリーブの開口を閉塞するように貼付される開口用粘着シートに配置されてなる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスリーブ位置検査装置。
【請求項4】
前記開口用粘着シートには、該開口用粘着シートが貼付されるスリーブの開口の形状が描画されてなる、
ことを特徴とする請求項3に記載のスリーブ位置検査装置。
【請求項5】
前記スリーブマーカーは、前記スリーブの側面に貼付される側面用粘着シートに配置されてなる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスリーブ位置検査装置。
【請求項6】
前記側面用粘着シートに配置された前記スリーブマーカーは、該側面用粘着シートが貼付されるスリーブの端縁までの距離と該スリーブの半径とを情報として担持する、
ことを特徴とする請求項5に記載のスリーブ位置検査装置。
【請求項7】
前記側面用粘着シートは、前記スリーブマーカーが配置されてなるマーカー部と、該マーカー部に連設されると共に該側面用粘着シートが貼付されるスリーブの端縁まで延設されてなる延設部と、該延設部に連設されると共に前記スリーブの開口を閉塞するように配置される開口閉塞部と、を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載のスリーブ位置検査装置。
【請求項8】
前記センシング装置はカメラ、ライダー装置又はハンディスキャナーである、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスリーブ位置検査装置。
【請求項9】
コンクリート構造体に貫通孔を形成するためにコンクリート打設前の鉄筋に取り付けられてなる少なくとも1つのスリーブの位置を該コンクリート打設前に検査するスリーブ位置検査方法において、
前記鉄筋と前記スリーブとからなるコンクリート打設前の構造体を鉄筋構造体とした場合に、
該鉄筋構造体又は前記コンクリート構造体のBIMモデルを記憶する工程と、
該鉄筋構造体の内部又は近傍であって該BIMモデルにて既知の位置に基準マーカーを設置する工程と、
前記スリーブの位置を測定すべく該スリーブにスリーブマーカーを設置する工程と、
前記基準マーカー及び少なくとも1つの前記スリーブマーカーをそれらの順でセンシング装置でセンシングし、それらのマーカーのセンシングの後に再び該基準マーカーを該センシング装置でセンシングする工程と、
該センシング装置がセンシングして得たデータから前記基準マーカーに関連付けた前記スリーブマーカーの位置を解析する工程と、
該解析した該スリーブマーカーの位置が前記BIMモデルに照合して正しいかどうかを判別する工程と、
を備えたことを特徴とするスリーブ位置検査方法。
【請求項10】
前記スリーブマーカーは、該スリーブマーカーが設置されたスリーブのIDや径についての情報を担持する画像コードである、
ことを特徴とする請求項9に記載のスリーブ位置検査方法。
【請求項11】
前記スリーブマーカーは、前記スリーブの開口を閉塞するように貼付される開口用粘着シートに配置されてなる、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のスリーブ位置検査方法。
【請求項12】
前記センシング装置はカメラ、ライダー装置又はハンディスキャナーである、
ことを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載のスリーブ位置検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造体に貫通孔を形成するためにコンクリート打設前の鉄筋に取り付けられてなる少なくとも1つのスリーブの位置を該コンクリート打設前に検査するスリーブ位置検査装置及びスリーブ位置検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート製の建物においては、水道、ガス、換気用などの各種配管や電気配線などを通す必要があることから、スリーブと呼ばれる筒状の部材をコンクリート打設前の鉄筋に取り付けておいてコンクリートを打設した後の梁や壁の部分に貫通孔を形成することが行われていた(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
そして、各スリーブが適正な位置に配置されているか否かの検査は、コンクリート打設前にコンベックス(メジャー)や金尺などのスケールを使って作業者によって行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−071014号公報
【特許文献2】特開2013−142247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スケールを使った検査はミスが生じないように慎重に行う必要があり、その分、作業者に負担を掛けることとなり、時間も掛かってしまうという問題があった。また、検査の過程が自動的に記録されていないので、コンクリートを打設した後に検査の過程を検証できないという問題もあった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできるスリーブ位置検査装置及びスリーブ位置検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、図1及び図2に例示するものであって、コンクリート構造体に貫通孔を形成するためにコンクリート打設前の鉄筋(図2(a)の符号R参照)に取り付けられてなる少なくとも1つのスリーブ(S)の位置を該コンクリート打設前に検査するスリーブ位置検査装置(1)において、
前記鉄筋(R)と前記スリーブ(S)とからなるコンクリート打設前の構造体(A)を鉄筋構造体とした場合に、
該鉄筋構造体(A)又は前記コンクリート構造体のBIMモデルを記憶するBIMモデル記憶手段(2)と、
該鉄筋構造体(A)の内部又は近傍であって該BIMモデルにて既知の位置に設置された基準マーカー(3)と、
前記スリーブ(S)の位置を測定すべく該スリーブ(S)に設置されたスリーブマーカー(4)と、
前記基準マーカー(3)及び少なくとも1つの前記スリーブマーカー(4)をそれらの順でセンシングし、それらのマーカー(3,4)のセンシングの後に再び該基準マーカー(3)をセンシングするセンシング装置(C)と、
該センシング装置(C)がセンシングして得たデータから前記基準マーカー(3)に関連付けた前記スリーブマーカー(4)の位置を解析するスリーブマーカー位置解析手段(5)と、
該スリーブマーカー位置解析手段(5)が解析した該スリーブマーカー(4)の位置が前記BIMモデル記憶手段(2)に記憶されているBIMモデルに照合して正しいかどうかを判別するスリーブマーカー位置判別手段(6)と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点は、前記スリーブマーカー(4)が、該スリーブマーカー(4)が設置されたスリーブ(S)のIDや径についての情報を担持する画像コードであることを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点は、図3(a)〜(c)に例示するものであって、前記スリーブマーカー(4)が、前記スリーブ(S)の開口(Sa)を閉塞するように貼付される開口用粘着シート(7)に配置されてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点は、前記開口用粘着シート(7)には、該開口用粘着シート(7)が貼付されるスリーブ(S)の開口(Sa)の形状(Sb)が描画されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の観点は、図4(a)〜(c)に例示するものであって、前記スリーブマーカー(4)が、前記スリーブ(S)の側面(Sc)に貼付される側面用粘着シート(17,27,37)に配置されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の観点は、前記側面用粘着シート(17,27,37)に配置された前記スリーブマーカー(4,…)が、該側面用粘着シート(17,27,37)が貼付されるスリーブ(S)の端縁までの距離と該スリーブ(S)の半径とを情報として担持することを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の観点は、前記側面用粘着シート(37)が、前記スリーブマーカー(4)が配置されてなるマーカー部(37a)と、該マーカー部(37a)に連設されると共に該側面用粘着シート(37)が貼付されるスリーブ(S)の端縁まで延設されてなる延設部(37b)と、該延設部(37b)に連設されると共に前記スリーブ(S)の開口(Sa)を閉塞するように配置される開口閉塞部(37c)と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の第8の観点は、前記センシング装置(C)がカメラ、ライダー装置又はハンディスキャナーであることを特徴とする。
【0015】
本発明の第9の観点は、コンクリート構造体に貫通孔を形成するためにコンクリート打設前の鉄筋(R)に取り付けられてなる少なくとも1つのスリーブ(S)の位置を該コンクリート打設前に検査するスリーブ位置検査方法において、
前記鉄筋(R)と前記スリーブ(S)とからなるコンクリート打設前の構造体(A)を鉄筋構造体とした場合に、
該鉄筋構造体(A)又は前記コンクリート構造体のBIMモデルを記憶する工程(図5のS1)と、
該鉄筋構造体(A)の内部又は近傍であって該BIMモデルにて既知の位置に基準マーカー(3)を設置する工程(S2)と、
前記スリーブ(S)の位置を測定すべく該スリーブ(S)にスリーブマーカー(4)を設置する工程(S3)と、
前記基準マーカー(3)及び少なくとも1つの前記スリーブマーカー(4)をそれらの順でセンシング装置(C)でセンシングし、それらのマーカー(3,4)のセンシングの後に再び該基準マーカー(3)を該センシング装置(C)でセンシングする工程(S4)と、
該センシング装置(C)がセンシングして得たデータから前記基準マーカー(3)に関連付けた前記スリーブマーカー(4)の位置を解析する工程(S5)と、
該解析した該スリーブマーカー(4)の位置が前記BIMモデルに照合して正しいかどうかを判別する工程(S6)と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の第10の観点は、前記スリーブマーカー(4)が、該スリーブマーカー(4)が設置されたスリーブ(S)のIDや径についての情報を担持する画像コードであることを特徴とする。
【0017】
本発明の第11の観点は、前記スリーブマーカー(4)が、前記スリーブ(S)の開口(Sa)を閉塞するように貼付される開口用粘着シート(7)に配置されてなることを特徴とする。
【0018】
本発明の第12の観点は、前記センシング装置(C)がカメラ、ライダー装置又はハンディスキャナーであることを特徴とする。
【0019】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0020】
上記した第1、2、8、9、10及び12の観点によれば、各スリーブが正しい位置にあるかどうかの判別は上述したBIMモデル記憶手段やスリーブマーカー位置解析手段やスリーブマーカー位置判別手段によって自動的に行われるようになっていて、作業者は上述した基準マーカーやスリーブマーカーをセンシング装置でセンシングするだけで良いので、作業者への負担を軽減することができ、検査時間も短縮することができる。また、現場ではセンシング装置によるセンシングだけを行えば良いので、検査のために現場を占有する時間を従来よりも短縮することができ、検査以外の他の作業(建設作業)への邪魔を最小限に抑えることができる。さらに、鉄筋構造体をセンシングした後の作業は現場以外の場所(机や椅子などがあって作業環境が整っているような場所)で行うことができるので、作業効率を高めることができる。またさらに、前記スリーブマーカー位置解析手段の解析結果や前記スリーブマーカー位置判別手段の判別結果を自動的に保存するようにすれば、検査の過程をいつでも検証できる。
【0021】
上記した第3及び11の観点によれば、前記スリーブマーカーの前記スリーブへの取り付けと前記スリーブの開口の閉塞とを1つの作業で行うことができ、ガムテープによる開口の閉塞作業が不要となり、その分、作業の簡素化を図ることができる。
【0022】
上記した第4の観点によれば、前記開口用粘着シートを貼付しようとする作業者は、該シートに描かれているスリーブ開口の形状が実際のスリーブ開口のものと一致するかどうかを視覚で簡単に確認でき、該開口用粘着シートの貼り間違いを未然に防止することができる。
【0023】
上記した第5及び6の観点によれば、前記スリーブマーカーに担持された情報から前記スリーブ開口の開口中心の位置を求めることができる。
【0024】
上記した第7の観点によれば、前記側面用粘着シートを前記スリーブの端縁や前記スリーブ開口を基準とした適正な位置に貼付することができ、さらに、該スリーブマーカーに担持された情報から前記スリーブ開口の開口中心の位置を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明に係るスリーブ位置検査装置の全体構成の一例を示すブロック図である。
図2図2(a)は、本発明に係るスリーブ位置検査装置により検査を行う様子の一例を示す模式図であり、同図(b)は、スリーブの形状を例示する斜視図である。
図3図3(a)〜(c)は、開口用粘着シートを貼付する様子の一例を示す斜視図である。
図4図4(a)〜(c)は、側面用粘着シートの3つの例を示す斜視図である。
図5図5は、本発明に係るスリーブ位置検査方法の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1乃至図5に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
本発明に係るスリーブ位置検査装置は、鉄筋コンクリート製の建物(コンクリート構造体)の梁や壁に貫通孔を形成するためにコンクリート打設前の鉄筋(図2(a)の符号R参照)に取り付けられてなる少なくとも1つのスリーブ(同図(a)(b)の符号S参照)の位置を該コンクリート打設前に検査するための装置である。ここで、貫通孔としては、ガスの配管や電気配線などを通すための貫通孔を挙げることができ、スリーブSとしては、図示のような円筒状のものだけでなく角筒状のものを挙げることができる。
【0028】
そして、本発明に係るスリーブ位置検査装置は、図1に符号1で例示するものであって、前記鉄筋Rと前記スリーブSとからなるコンクリート打設前の構造体Aを“鉄筋構造体”とした場合に、
・ 該鉄筋構造体A又は前記コンクリート構造体のBIMモデル(設計のための3次元の建物のデジタルモデル)を記憶するBIMモデル記憶手段2と、
・ 該鉄筋構造体Aの内部又は近傍であって該BIMモデルにて既知の位置に設置された基準マーカー3と、
・ 前記スリーブSの位置を測定すべく該スリーブSに設置されたスリーブマーカー4と、
・ 前記基準マーカー3や前記スリーブマーカー4をセンシングするためのセンシング装置Cと、
・ 該センシング装置Cがセンシングして得たデータ(例えば、カメラで撮影して得た画像)から前記基準マーカー3に関連付けた前記スリーブマーカー4の位置を解析するスリーブマーカー位置解析手段5と、
・ 該スリーブマーカー位置解析手段5が解析した該スリーブマーカー4の位置を前記BIMモデル記憶手段2に記憶されているBIMモデルに重ね合わせ、該スリーブマーカー4の位置が該BIMモデルに照合して正しいかどうかを判別するスリーブマーカー位置判別手段6と、
を備えている。そして、上述したセンシング装置Cは、
・ 前記基準マーカー3
・ 1つの又は複数の前記スリーブマーカー4,…
・ 前記基準マーカー3
の順でそれぞれのマーカー3,4,…をセンシングするようになっている。つまり、上述したセンシング装置Cは、前記基準マーカー3及び少なくとも1つの前記スリーブマーカー4をそれらの順でセンシングし、それらのマーカー3,4,…のセンシングの後に再び該基準マーカー3をセンシングするようになっている。なお、このセンシング装置Cとしては、
・ 各マーカーを撮影(センシング)して画像を得るためのカメラや、
・ 各マーカーをセンシングするライダー(LiDAR)装置や、
・ 各マーカーをスキャン(センシング)するハンディスキャナー(例えば、赤外線を使ったハンディスキャナー)
などを挙げることができる。
【0029】
ここで、前記基準マーカー3は、少なくとも、
・ 基準マーカーである旨の情報(ID情報)と、
・ ターゲットマークと
を担持したものであって、例えば、前記カメラCが撮影した画像から認識される画像コードである。前記ID情報は、バーコードやQRコード(登録商標)やその他の2次元コードに担持させれば良く、ターゲットマークは、どのような形状であっても良い。
【0030】
また、前記スリーブマーカー4は、少なくとも、
・ ターゲットマークや、
・ 該スリーブマーカー4が設置されたスリーブSのID情報や、
・ 該スリーブSが円筒の場合にはその径(直径又は半径)についての情報であり、該スリーブSが角筒の場合には該スリーブSの側面から開口中心までの寸法や、
・ 該スリーブマーカー4が設置されたスリーブSの長さについての情報
などを担持するコードであって、文字や記号や図形の形状や色を利用した画像コードであるようにすると良い。
【0031】
なお、図1及び図2(a)に例示するセンシング装置Cは三脚にセットされているが、もちろんこれに限られるものではなく、手持ちで移動させるようにしても良い。また、該センシング装置にカメラを用いる場合における前記基準マーカー3やスリーブマーカー4の撮影は動画で行うようにしても、或いは、静止画で連続撮影するようにしても、どちらでも良い。
【0032】
さらに、前記BIMモデルは、少なくとも各スリーブSのID情報や径や長さについての情報や配置位置についての情報(座標)を有していると良い。
【0033】
またさらに、前記スリーブマーカー位置解析手段5は、前記センシング装置Cがセンシングして得たデータに基づき、
・ 該センシング装置Cがどの方向に移動しているか
・ 該センシング装置Cがいかなる速度で移動しているか
の情報を取得する。また、該スリーブマーカー位置解析手段5は、前記センシング装置Cがセンシングして得たデータに基づいて該センシング装置Cの位置と各スリーブマーカー4,…の位置とを推定し、該センシング装置自身の移動に関する情報(つまり、どの方向に移動しているかや、いかなる速度で移動しているかの情報)に基づいて前記基準マーカー3や前記スリーブマーカー4,…の位置が分かるマップを形成するように構成されている。つまり、このスリーブマーカー位置解析手段5は、前記センシング装置Cがセンシングして得たデータ中の“ある物体”の移動量から、前記センシング装置Cの位置姿勢の変化量と特徴点の3次元形状を計算できるように構成されている。
【0034】
本発明によれば、各スリーブSが正しい位置にあるかどうかの判別は上述したBIMモデル記憶手段2やスリーブマーカー位置解析手段5やスリーブマーカー位置判別手段6によって自動的に行われるようになっていて、作業者は上述した基準マーカー3やスリーブマーカー4,…をセンシング装置Cでセンシングするだけで良いので、作業者への負担を軽減することができ、検査時間も短縮することができる。また、現場ではセンシング装置Cによるセンシングだけを行えば良いので、検査のために現場を占有する時間を従来よりも短縮することができ、検査以外の他の作業(建設作業)への邪魔を最小限に抑えることができる。さらに、鉄筋構造体Aをセンシングした後の作業は現場以外の場所(机や椅子などがあって作業環境が整っているような場所)で行うことができるので、作業効率を高めることができる。またさらに、前記スリーブマーカー位置解析手段5の解析結果や前記スリーブマーカー位置判別手段6の判別結果を自動的に保存するようにすれば、検査の過程をいつでも検証できる。
【0035】
前記スリーブマーカー4は、図3(a)〜(c)に例示するように、前記スリーブSの開口(以下、“スリーブ開口”とする)Saを閉塞するように貼付される開口用粘着シート7に配置(形成又は貼付)されていると良い。従来は、該スリーブ開口Saの閉塞はガムテープを貼付することによって行っていたが、そのような開口用粘着シート7を用いることによって前記スリーブマーカー4の前記スリーブSへの取り付けと前記スリーブ開口Saの閉塞とを1つの作業で行うことができ、ガムテープによるスリーブ開口Saの閉塞作業が不要となり、その分、作業の簡素化を図ることができる。その場合、前記粘着シート7の前記スリーブ開口Saを閉塞する部分には、該粘着シート7が貼付されようとしているスリーブSのスリーブ開口の形状Sbが描画されてなるようにすると良い。これにより、該開口用粘着シート7を貼付しようとする作業者は、該シート7に描かれているスリーブ開口の形状Sbが実際のスリーブ開口Saのものと一致するかどうかを視覚で簡単に確認でき、該開口用粘着シート7の貼り間違いを未然に防止することができる。
【0036】
ところで、上述した鉄筋構造体Aにおいてスリーブ開口Saがセンシング装置Cに検知される位置に配置されているスリーブSについては上述のような開口用粘着シート7を貼付すれば良いが、スリーブ開口Saがセンシング装置Cに検知されない位置に配置されているスリーブSについては、前記スリーブマーカー4は、図4(a)に例示するように、前記スリーブSの側面Scに貼付される側面用粘着シート17に配置されていると良い。そして、該側面用粘着シート17に配置された前記スリーブマーカー4は、ターゲットマークの他に、少なくとも、
・ 該側面用粘着シート17が貼付されるスリーブSのID情報や、
・ 該側面用粘着シート17が貼付されるスリーブSの端縁までの距離dや、
・ 該スリーブSが円筒の場合にはその径(半径又は直径)についての情報であり、該スリーブSが角筒の場合には該スリーブSの側面から開口中心までの寸法や、
・ 該側面用粘着シート17が貼付されるスリーブSの長さ
などを情報として担持するようにすると良い。そのようにした場合には、該スリーブマーカー4に担持された情報から前記スリーブ開口Saの開口中心の位置を求めることができる。また、該側面用粘着シートは、図4(b)に符号27で例示するように、
・ 前記スリーブマーカー4が配置されてなるマーカー部27aと、
・ 該マーカー部27aに連設されると共に前記側面Scに貼付された状態でスリーブSの端縁まで延設されてなる延設部27bと、
を有するようにしても良い。そして、該マーカー部27aに配置するスリーブマーカー4は、ターゲットマークの他に、少なくとも、
・ 該側面用粘着シート27が貼付されるスリーブSのID情報や、
・ 該側面用粘着シート27が貼付されるスリーブSの端縁までの距離dや、
・ 該スリーブSが円筒の場合にはその径(半径又は直径)についての情報であり、該スリーブSが角筒の場合には該スリーブSの側面から開口中心までの寸法や、
・ 該側面用粘着シート17が貼付されるスリーブSの長さ
などを情報として担持するようにすると良い。そのようにした場合には、前記側面用粘着シート27を前記スリーブSの端縁を基準とした適正な位置に貼付することができると共に、該スリーブマーカー4に担持された情報から前記スリーブ開口Saの開口中心の位置を求めることができる。さらに、前記側面用粘着シートは、図4(c)に符号37で例示するように、
・ 前記スリーブマーカー4が配置されてなるマーカー部37aと、
・ 該マーカー部37aに連設されると共に前記側面Scに貼付された状態でスリーブSの端縁まで延設されてなる延設部37bと、
・ 該延設部37bに連設されると共に前記スリーブ開口Saを閉塞するように配置される開口閉塞部37cと、
を有するようにしても良い。そして、該マーカー部37aに配置するスリーブマーカー4は、ターゲットマークの他に、少なくとも、
・ 該側面用粘着シート37が貼付されるスリーブSのID情報や、
・ 該側面用粘着シート37が貼付されるスリーブSの端縁までの距離dや、
・ 該スリーブSが円筒の場合にはその径(半径又は直径)についての情報であり、該スリーブSが角筒の場合には該スリーブSの側面から開口中心までの寸法や、
・ 該側面用粘着シート17が貼付されるスリーブSの長さ
などを情報として担持するようにすると良い。そのようにした場合には、前記側面用粘着シート37を前記スリーブSの端縁や前記スリーブ開口Saを基準とした適正な位置に貼付することができ、さらに、該スリーブマーカー4に担持された情報から前記スリーブ開口Saの開口中心の位置を求めることができる。なお、図4(c)に例示する側面用粘着シート37には、前記マーカー部37aや前記延設部37bを前記スリーブSの側面Scにしわ無く貼付するために、該延設部37bと前記開口閉塞部37cとの境界部分に切り込みを入れておく必要があるが、その切り込みは該側面用粘着シート37の作成時に入れるようにしても、或いは該側面用粘着シート37を前記スリーブSに貼付する際に作業者が入れるようにしても、どちらでも良い。また、前記開口閉塞部37cには、該開口閉塞部37cが貼付されるスリーブ開口Saの全部の形状(図3(a)(b)に符号Sbで示したような形状)が描かれるようにすると良い。これにより、該開口閉塞部37cを貼付する作業者は、該開口閉塞部37cに描かれているスリーブ開口Saの形状や大きさが実際のスリーブ開口Saのものと一致するかどうかを視覚で簡単に確認でき、前記側面用粘着シート37の貼り間違いを未然に防止することができる。なお、上述した開口閉塞部37cは、前記スリーブ開口Saの全部を閉塞するのではなく一部を横断(閉塞)するような形状にすると共に、該スリーブ開口Saの一部の形状が描かれるようにしても良い。
【0037】
一方、本発明に係るスリーブ位置検査方法は、コンクリート構造体に貫通孔を形成するためにコンクリート打設前の鉄筋Rに取り付けられてなる少なくとも1つのスリーブSの位置を該コンクリート打設前に検査するための方法であって、図5に例示するように、
・ 前記鉄筋構造体A又は前記コンクリート構造体のBIMモデルを記憶する工程S1と、
・ 該鉄筋構造体Aの内部又は近傍であって該BIMモデルにて既知の位置に基準マーカー3を設置する工程S2と、
・ 前記スリーブSの位置を測定すべく該スリーブSにスリーブマーカー4を設置する工程S3と、
・ 前記基準マーカー3及び少なくとも1つの前記スリーブマーカー4をそれらの順でセンシング装置Cでセンシングし、それらのマーカー3,4のセンシングの後に再び該基準マーカー3を該センシング装置Cでセンシングする工程S4と、
・ 該センシング装置Cがセンシングして得たデータから前記基準マーカー3に関連付けた前記スリーブマーカー4の位置を解析する工程S5と、
・ 該解析した該スリーブマーカー4の位置が前記BIMモデルに照合して正しいかどうかを判別する工程S6と、
を備えている。
【0038】
本発明によれば、各スリーブSが正しい位置にあるかどうかの判別は上述したBIMモデル記憶手段2やスリーブマーカー位置解析手段5やスリーブマーカー位置判別手段6によって自動的に行われるようになっていて、作業者は上述した基準マーカー3やスリーブマーカー4をセンシング装置Cでセンシングするだけで良いので、作業者への負担を軽減することができ、検査時間も短縮することができる。また、現場ではセンシング装置Cによるセンシングだけを行えば良いので、検査のために現場を占有する時間を従来よりも短縮することができ、検査以外の他の作業(建設作業)への邪魔を最小限に抑えることができる。さらに、鉄筋構造体Aをセンシングした後の作業は現場以外の場所(机や椅子などがあって作業環境が整っているような場所)で行うことができるので、作業効率を高めることができる。またさらに、前記スリーブマーカー位置解析手段5の解析結果や前記スリーブマーカー位置判別手段6の判別結果を自動的に保存するようにすれば、検査の過程をいつでも検証できる。
【0039】
ここで、前記スリーブマーカー4は、少なくとも、
・ ターゲットマークや、
・ 該スリーブマーカー4が設置されたスリーブSのID情報や、
・ 該スリーブSが円筒の場合にはその径(直径又は半径)についての情報であり、該スリーブSが角筒の場合には該スリーブSの側面から開口中心までの寸法や、
・ 該スリーブマーカー4が設置されたスリーブSの長さについての情報
を担持するコードであって、文字や記号や図形の形状や色を利用した画像コードであるようにすると良い。また、前記スリーブマーカー4は、図3(a)〜(c)に例示するように、前記スリーブ開口Saを閉塞するように貼付される開口用粘着シート7に配置(形成又は貼付)されていると良い。
【符号の説明】
【0040】
1 スリーブ位置検査装置
2 BIMモデル記憶手段
3 基準マーカー
4 スリーブマーカー
5 スリーブマーカー位置解析手段
6 スリーブマーカー位置判別手段
7 開口用粘着シート
17,27,37 側面用粘着シート
37a マーカー部
37b 延設部
37c 開口閉塞部
A 鉄筋構造体
C センシング装置(カメラ、ライダー装置、ハンディスキャナー)
R 鉄筋
S スリーブ
Sa スリーブの開口
Sc 側面
図1
図2
図3
図4
図5