特許第6703365号(P6703365)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703365
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】樽洗浄システム及び樽洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/34 20060101AFI20200525BHJP
   A61L 2/04 20060101ALI20200525BHJP
   B65B 55/06 20060101ALI20200525BHJP
   B65B 55/10 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B08B9/34
   A61L2/04
   B65B55/06 C
   B65B55/10
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-150009(P2014-150009)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-22449(P2016-22449A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年7月14日
【審判番号】不服2019-831(P2019-831/J1)
【審判請求日】2019年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100208524
【弁理士】
【氏名又は名称】小曳 満昭
(72)【発明者】
【氏名】穴井 浩平
(72)【発明者】
【氏名】木口 幹康
(72)【発明者】
【氏名】福田 知行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸司
(72)【発明者】
【氏名】梅山 洋一郎
【合議体】
【審判長】 久保 竜一
【審判官】 長馬 望
【審判官】 堀川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−214246(JP,A)
【文献】 特開2012−214245(JP,A)
【文献】 特表2009−537412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/34
A61L 2/04
B65B 55/06
B65B 55/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樽容器の洗浄と殺菌とを行う樽洗浄システムであって、
平面視において円形状の搬送経路に沿って被洗浄物である前記樽容器を移動させながら洗浄及び殺菌を行う樽洗浄殺菌装置と、
前記樽洗浄殺菌装置の前記平面視において円形状の搬送経路の接線に沿うように直線状に延在し、前記樽洗浄殺菌装置への前記樽容器の搬出と前記樽洗浄殺菌装置からの前記樽容器の搬入とを行うコンベアと、
前記洗浄又は前記殺菌が行われた前記樽容器の温度を測定する非接触式の温度センサと、
前記温度センサによって測定された前記樽容器の温度により、前記樽容器が洗浄不良又は殺菌不良であると判断する判断部と、
を備え、
前記樽洗浄殺菌装置は、前記平面視において円形状の搬送経路に沿って移動すると共に前記樽容器の洗浄及び殺菌を行う複数のヘッドを有し、平面視における前記樽洗浄殺菌装置の中心から前記コンベアに向かって延びる垂線に対するヘッドの位置を示す角度が所定角度範囲である殺菌領域において前記樽容器を殺菌する殺菌工程を行い、
前記温度センサは、前記殺菌領域の下流側端部近傍であって、前記樽洗浄殺菌装置の搬送経路の外側における前記ヘッドの隣接位置に配置されており、
前記温度センサは、金属の表面温度測定用の近赤外線センサであって、前記殺菌領域の下流側端部近傍に位置する前記樽容器からの赤外線を受光し、受光した赤外線を電気信号に変換して前記樽容器の温度を測定し、前記赤外線の測定波長が1〜5μmである、
樽洗浄システム。
【請求項2】
前記判断部は、前記温度センサによって測定された前記樽容器の温度が所定の閾値以下である場合に、前記樽容器が洗浄不良又は殺菌不良であると判断する、
請求項1に記載の樽洗浄システム。
【請求項3】
前記搬送経路は、前記樽容器の殺菌を行う殺菌領域の上流側に前記樽容器の洗浄を行う洗浄領域を有している
請求項1又は2に記載の樽洗浄システム。
【請求項4】
前記判断部は、前記搬送経路における前記樽容器の位置情報に基づいて、前記判断を行うか否かを決定する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の樽洗浄システム。
【請求項5】
樽容器の洗浄と殺菌とを行う樽洗浄方法であって、
平面視において円形状となる搬送経路に沿って被洗浄物である樽容器を移動させながら洗浄及び殺菌を行う洗浄殺菌工程と、
前記洗浄殺菌工程により洗浄及び殺菌が行われた前記樽容器の温度を非接触で測定する温度測定工程と、
前記温度測定工程において測定された前記樽容器の温度により、前記樽容器が洗浄不良又は殺菌不良であると判断する工程と、
を備え、
前記温度測定工程は、金属の表面温度測定用の近赤外線センサによって温度が測定される工程であり、
前記近赤外線センサは、前記洗浄及び殺菌が行われた前記樽容器からの赤外線を受光し、受光した赤外線を電気信号に変換して前記樽容器の温度を測定し、前記赤外線の測定波長が1〜5μmである、
樽洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を収容する樽の洗浄を行う樽洗浄システム及び樽洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール等の飲料を収容する樽を洗浄するシステムとしては種々のものが知られている。特開2011−67729号公報には、口部を下向きにした樽に下から洗浄液を注入させて樽の内部を洗浄する樽洗浄システムが記載されている。この樽洗浄システムは、平面視において円形状となる搬送機構に沿って樽を搬送させながら樽の内部を洗浄する樽洗浄装置と、洗浄後の樽を搬送する搬送コンベアと、洗浄等の状態が不良と判断された樽を搬送コンベアから排除する樽排除装置と、を備えている。
【0003】
上記の樽洗浄装置は、搬送機構の外周に所定のピッチで設けられる複数の洗浄ヘッドと、樽を支持する複数のテーブルと、樽からの洗浄液の漏れを検出する液漏れ検出装置と、を備えている。この液漏れ検出装置は、上記テーブルの光沢に関する物理量を検出する光沢センサと、上記テーブルの温度に関する物理量を検出する温度センサと、液漏れ検出の制御を行う制御装置と、を備えている。制御装置は、光沢センサによってテーブル上で漏れ領域の光沢が測定された場合、及び温度センサによってテーブル上で洗浄液による高温領域が検出された場合に、洗浄液が漏れていると判断し、当該テーブルに載置されていた樽が不良であると判断する。このように制御装置は、樽が不良であると判断すると、樽排除装置を動作させ、当該不良の樽を搬送コンベアから排除させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−67729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような樽洗浄システムでは、樽が樽洗浄装置に連続的に搬送されるので、各センサの測定と樽の良不良の判断とを迅速且つ正確に行う必要がある。また、樽洗浄システムでは、上述したように樽の内部を洗浄する洗浄工程と、樽の内部を殺菌する殺菌工程とが行われることがある。殺菌工程では、樽の内部を高温にすることで樽の内部の殺菌を行う。しかしながら、この殺菌方法では、何らかの理由で所定の温度に達しなかった場合に、殺菌が十分に行われないという問題が生じる可能性がある。以上より、樽の内部の洗浄殺菌において、樽の良不良の判断を迅速且つ正確に行うことが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、樽容器の内部の洗浄殺菌において、樽容器の洗浄や殺菌が正常に完了したか否かの判断を迅速且つ正確に行うことができる樽洗浄システム及び樽検査システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る樽洗浄システムは、樽容器を搬送経路に沿って搬送させながら樽容器の洗浄と樽容器の殺菌とを行う樽洗浄システムであって、洗浄又は殺菌が行われた樽容器の温度を測定する非接触式の温度センサと、温度センサによって測定された樽容器の温度により、樽容器が洗浄不良又は殺菌不良であると判断する判断部と、を備える。
【0008】
本発明に係る樽洗浄システムによれば、洗浄又は殺菌が行われた樽容器の温度により、当該樽容器が洗浄不良又は殺菌不良であると判断する判断部を備えている。よって、洗浄液の温度又は殺菌に用いられる蒸気等の温度により洗浄又は殺菌が十分に行われていないと判断することができ、樽容器の洗浄不良又は殺菌不良を検知することができる。また、本発明に係る樽洗浄システムは、洗浄又は殺菌が行われた樽容器の温度を測定する非接触式の温度センサを備えている。非接触式の温度センサは、接触式の温度センサと比較して、温度応答が速く、迅速且つ正確な温度測定が可能となっている。よって、搬送経路に沿って搬送される樽容器の一つ一つに対して迅速且つ正確に温度測定を行うことができるので、樽容器の良不良の判断も迅速且つ正確に行うことが可能となる。
【0009】
また、判断部は、温度センサによって測定された樽容器の温度が所定の閾値以下である場合に、樽容器が洗浄不良又は殺菌不良であると判断してもよい。この場合、洗浄又は殺菌が行われた樽容器の温度が所定の閾値以下である場合に、当該樽容器が洗浄不良又は殺菌不良であると判断される。よって、例えば、洗浄液の温度又は殺菌に用いられる蒸気等の温度が低くなっているときに洗浄又は殺菌が十分に行われていないと判断することができ、樽容器の洗浄不良又は殺菌不良を検知することができる。
【0010】
また、搬送経路は、樽容器の洗浄を行う洗浄領域と、樽容器の殺菌を行う殺菌領域と、を有しており、温度センサは、搬送経路における洗浄領域の下流側、又は搬送経路における殺菌領域の下流側、に配置されていてもよい。このように温度センサを洗浄領域の下流側又は殺菌領域の下流側に配置した場合、洗浄工程の終了後における樽容器の温度、又は殺菌工程の終了後における樽容器の温度を測定することができる。従って、洗浄時における樽容器の温度又は殺菌時における樽容器の温度をより正確に測定することができるので、樽容器の良不良の判断もより正確に行うことができる。
【0011】
また、判断部は、搬送経路における樽容器の位置情報に基づいて、上記判断を行うか否かを決定してもよい。この場合、搬送経路における樽容器の位置に応じて上記判断を行うか否かを決定するので、適切なタイミングで樽容器の良不良を判断することができる。従って、樽容器の良不良の判断を一層正確に行うことが可能となる。
【0012】
本発明に係る樽洗浄方法は、樽容器を搬送経路に沿って搬送させながら前記樽容器の洗浄と前記樽容器の殺菌とを行う樽洗浄方法であって、前記洗浄又は前記殺菌が行われた前記樽容器の温度を非接触で測定する工程と、測定された前記樽容器の温度により、前記樽容器が洗浄不良又は殺菌不良であると判断する工程と、を備える。
【0013】
本発明に係る樽洗浄方法によれば、洗浄又は殺菌が行われた樽容器の温度により、当該樽容器が洗浄不良又は殺菌不良であると判断している。よって、洗浄液の温度又は殺菌に用いられる蒸気等の温度により洗浄又は殺菌が十分に行われていないと判断することができ、樽容器の洗浄不良又は殺菌不良を検知することが可能となる。また、本発明に係る樽洗浄方法では、洗浄又は殺菌が行われた樽容器の温度を非接触で測定する。よって、温度センサを接触させて測定を行う場合と比較して、温度応答が速く、迅速且つ正確な温度測定が可能となっている。従って、搬送経路に沿って搬送される樽容器の一つ一つに対して迅速且つ正確に温度測定を行うことができるので、樽容器の良不良の判断も迅速且つ正確に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樽容器の内部の洗浄殺菌において、樽容器の良不良の判断を迅速且つ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の樽洗浄システムを示す平面図である。
図2】樽容器に対して洗浄又は殺菌を行う状態を示す部分断面図である。
図3】樽洗浄殺菌装置で行われる各工程を示す表である。
図4】樽容器を判定する処理を示すブロック図である。
図5】温度センサの配置位置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る樽洗浄システム及び樽洗浄方法の実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一の符号を付すこととする。また、本発明に係る樽洗浄システムにおける樽洗浄殺菌装置は、後述するようにレーン式でもよいが、本実施形態では、平面視円形状の樽洗浄殺菌装置を例として説明する。
【0017】
図1及び図2に示されるように、本実施形態の樽洗浄システム1は、ビールを収容する樽容器100の内部を洗浄及び殺菌するものであり、複数の樽容器100を搬送させながら連続的に洗浄及び殺菌を行うことが可能となっている。また、樽洗浄システム1は、各樽容器100に対して洗浄不良又は殺菌不良であるか否かを判断し、例えば、樽容器100の洗浄や殺菌が正常に完了したか否かの判断を行う樽検査システムとしての機能を備えている。樽洗浄システム1は、複数の樽容器100に対して洗浄及び殺菌を連続的に行う平面視円形状の樽洗浄殺菌装置10と、樽洗浄殺菌装置10への樽容器100の搬入及び樽洗浄殺菌装置10からの樽容器100の搬出を行う直線状のコンベア20と、を備えている。
【0018】
コンベア20は、平面視において円形状となる樽洗浄殺菌装置10の接線に沿うように直線状に延在している。このコンベア20は、不図示のモータから駆動力を受けることによって樽容器100を搬送する。コンベア20は、外側のみが洗浄された樽容器100を樽洗浄殺菌装置10に向かって搬送する。樽容器100は、その開口100aが下を向いた状態で搬送される。コンベア20は、樽洗浄殺菌装置10に樽容器100を搬入する搬入経路20Aと、樽洗浄殺菌装置10から搬出された樽容器100が通る搬出経路20Bと、不良と判断された樽容器100が通る排斥経路20Cと、を備えている。排斥経路20Cは、搬出経路20Bの途中部分Eにおいて搬出経路20Bから離れる方向に延在している。
【0019】
コンベア20の樽洗浄殺菌装置10に向かう途中である搬入経路20Aには、樽容器100を樽洗浄殺菌装置10に向かって移動させるスターホイール23と、樽容器100を樽洗浄殺菌装置10に案内する円弧状のガイド部材24と、が設けられている。
【0020】
スターホイール23は、平面視において、周方向に等間隔に配置される4個の羽根部23aを備えている。スターホイール23は、鉛直方向に延在する軸線23bの回りを回るように4個の羽根部23aを水平方向に回転させる。スターホイール23に向かって搬送された樽容器100は、一の羽根部23aと他の羽根部23aとの間に入り込む。このように羽根部23aの間に入り込んだ樽容器100は、羽根部23aの回転に伴ってガイド部材24側に押し出される。
【0021】
ガイド部材24は、樽洗浄殺菌装置10と接点Pで接触している。ガイド部材24は、接点Pから搬入経路20Aに向かって円弧状に延びている。ガイド部材24は、スターホイール23から押し出された樽容器100を上記円弧状の部分に沿わせることによって、樽容器100を樽洗浄殺菌装置10に案内する。
【0022】
樽洗浄殺菌装置10は、コンベア20の搬入経路20Aから搬入された一つ一つの樽容器100に対して洗浄及び殺菌を行う。樽洗浄殺菌装置10は、不図示のモータから駆動力を受けることによって、平面視において円形状となる搬送経路10Aに沿って樽容器100を例えば時計回りに移動させる。樽洗浄殺菌装置10は、円形状となる搬送経路10Aに沿って樽容器100を移動させながら洗浄及び殺菌を行ういわゆるロータリー式の洗浄装置である。
【0023】
樽洗浄殺菌装置10は、周方向に等間隔に並設される例えば32個のヘッド11を備えており、各ヘッド11に対して上記ガイド部材24から樽容器100が一つ一つ案内される。32個のヘッド11には、それぞれヘッド番号が割り振られていて、個々のヘッド11を識別可能となっている。
【0024】
ヘッド11は、例えば、上下に貫通する貫通孔12aを有し樽容器100が載置されるテーブル12と、テーブル12の貫通孔12aに固定されて樽容器100の口金101をガイドする口金ガイド部13と、を備えている。口金ガイド部13には、下方からノズル14を通すための貫通孔13aが設けられている。このノズル14が口金101から樽容器100の内部に通されてノズル14から洗浄液又は蒸気等の噴射を行うことにより、口金101が口金ガイド部13にガイドされた樽容器100に対して洗浄又は殺菌が行われる。
【0025】
図1に示されるように、樽洗浄殺菌装置10は、平面視における樽洗浄殺菌装置10の中心Oからコンベア20に向かって延びる垂線Lに対するヘッド11の位置を示す角度θに応じて、洗浄工程及び殺菌工程等の種々の工程を行う。角度θは、垂線Lと、中心Oからヘッド11に向かって延びる直線Hとのなす角度である。例えば、図3に示されるように、角度θがθ1であるときに樽容器100を樽洗浄殺菌装置10に供給し、角度θがθ2であるときに樽容器100を洗浄する洗浄工程を行い、角度θがθ3であるときに樽容器100を殺菌する殺菌工程を行い、角度θがθ4であるときに洗浄及び殺菌を行った樽容器100を樽洗浄殺菌装置10からコンベア20に排出する。
【0026】
上述した角度θ1、θ2、θ3及びθ4の値(搬送経路10Aの周方向における樽容器100の位置)は、例えば360°以下の値で適宜設定することが可能であり、各工程の内容についても、適宜変更することが可能である。
【0027】
図1に示されるように、ガイド部材25は、接点Pから搬出経路20Bに向かって円弧状に延びており、樽洗浄殺菌装置10からの樽容器100を上記円弧状の部分に沿わせることによって、樽容器100を搬出経路20Bに案内する。スターホイール26は、スターホイール23と同様、4個の羽根部26aを備えており、羽根部26aを水平方向に回転させる。ガイド部材25によって案内された樽容器100は、一の羽根部26aと他の羽根部26aとの間に入り込み、羽根部26aの回転に伴って搬出経路20Bへ押し出される。
【0028】
ところで、樽洗浄システム1では、良と判断された樽容器100が搬出経路20Bの途中部分Eに来たときには、そのまま樽容器100を搬出経路20Bに沿って移動させる。一方、不良と判断された樽容器100が途中部分Eに来たときには、排斥シリンダ28が樽容器100を排斥経路20Cに移動させる。排斥シリンダ28は、不良と判断された樽容器100が途中部分Eに来たときにロッドを伸長させて、当該樽容器100を搬出経路20Bから排斥経路20Cに押し出す。
【0029】
また、樽洗浄システム1における樽洗浄殺菌装置10及びコンベア20の周囲には、温度センサ33と、不図示の制御装置と、が設けられている。温度センサ33は、樽洗浄殺菌装置10の搬送経路10Aの外側におけるヘッド11の隣接位置に設けられている。制御装置は、樽洗浄殺菌装置10による樽容器100の洗浄及び殺菌等を制御する機能を有する。
【0030】
温度センサ33は、搬送経路10Aにおける殺菌領域(例えば角度θがθ3である領域)の下流側端部近傍に配置されており、殺菌領域の下流側端部近傍に位置する樽容器100の温度を非接触で測定する。ここで、殺菌領域の下流側端部近傍とは、搬送経路10Aにおける樽容器100の殺菌工程が終了する箇所を示している。温度センサ33は、赤外線センサであり、殺菌領域の下流側端部近傍に位置する樽容器100からの赤外線を受光し、受光した赤外線を電気信号に変換して樽容器100の表面の温度を測定する。
【0031】
このように、温度センサ33では、樽容器100の温度を非接触で瞬時に測定することが可能となっている。また、温度センサ33は、赤外線の測定波長が短い(1〜5μm程度)方が好ましく、金属製の樽容器100を用いる場合は、金属の表面温度測定用の近赤外線センサであることが好ましい。よって、温度センサ33では、樽容器100表面の光沢による測定温度のばらつきが抑えられるので、安定した温度測定が可能となっている。従って、このような温度センサ33によって、より精度が高い温度測定を行うことができる。
【0032】
ところで、樽洗浄殺菌装置10における樽容器100の殺菌では、何らかの理由で蒸気等の温度が所定の温度に達しなくなったような場合に、殺菌が十分に行われないという問題が生じる可能性がある。従って、樽洗浄システム1では、殺菌工程直後の樽容器100の温度を温度センサ33によって測定する。そして、樽洗浄システム1は、測定した温度が所定の閾値より高い場合には当該樽容器100を殺菌良であると判断し、測定した温度が上記閾値以下である場合には当該樽容器100を殺菌不良であると判断する。ここで、例えば蒸気の温度が120℃に設定された場合、上記閾値を100℃とすることができる。この場合、殺菌工程直後の樽容器100の温度が100℃より高ければ、樽容器100の内部の殺菌が十分に行われていると考えられるからである。なお、殺菌工程における温度センサ33の位置は、下流側端部近傍でなくてもよく、樽洗浄殺菌装置の下流かつビール充填装置の上流であればよい。上記閾値は100℃でなくてもよく、例えば温度センサ33を設置する位置や蒸気の温度、周辺環境に応じて適宜変更可能である。
【0033】
以下では、樽容器100の良不良の判断を行う処理、及び不良と判断された樽容器100が生じたときにおける各装置の動作について、図4を参照しながら説明する。ここで、図4において、制御部41は制御装置に搭載されて演算処理を行うシーケンサと、各ヘッド11に搭載されて演算処理を行うシーケンサとを示している。また、ヘッド11には、ヘッドブロック機能が設けられており、このヘッドブロック機能は不良と判断されたヘッド11に樽容器100が搬入されるのを防止する機能を示している。制御部41は、樽洗浄殺菌装置10のエンコーダから、搬送経路10Aの周方向におけるヘッド11の位置情報である角度θの情報を受信する。また、制御部41は、洗浄及び殺菌を行った樽容器100に対して良不良の判断を行う判断部としての機能も備えている。
【0034】
温度センサ33によって殺菌領域の下流側端部近傍に位置する樽容器100の温度が測定されると、測定された温度が温度センサ33から制御部41に出力される(樽容器100の温度を非接触で測定する工程)。制御部41は、温度センサ33によって測定された温度と角度θの情報との取り込みを行い、角度θの情報から上記良不良の判断を行うか否かを決定する。すなわち、制御部41は、ヘッド11が搬送経路10Aにおける殺菌領域の下流側端部近傍の位置にある場合に上記判断を行い、それ以外の場合には上記判断を行わない。
【0035】
制御部41は、ヘッド11が殺菌領域の下流側端部近傍に位置しているときに樽容器100に対して良不良の判断を行い、不良と判断した場合には、不良の樽容器100が生じた旨のNG信号を出力する(殺菌不良であると判断する工程)。すなわち、制御部41は、温度センサ33によって測定された樽容器100の温度が上述した閾値以下(100℃以下)でない場合に樽容器100が殺菌良であると判断し、温度センサ33によって測定された樽容器100の温度が上記閾値以下である場合に、樽容器100が殺菌不良であると判断する。
【0036】
制御部41は、排斥シリンダ28にNG信号を出力する。NG信号を受信すると、排斥シリンダ28は不良と判断された樽容器100を排斥経路20Cに押し出す。
【0037】
以上、本実施形態に係る樽洗浄システム1及び樽洗浄方法によれば、殺菌が行われた樽容器100の温度により、当該樽容器100が殺菌不良であると判断する制御部41を備えている。よって、殺菌に用いられる蒸気等の温度により殺菌が十分に行われていないと判断することができ、樽容器100の殺菌不良を検知することができる。
【0038】
また、樽洗浄システム1は、殺菌が行われた樽容器100の温度を測定する非接触式の温度センサ33を備えている。非接触式の温度センサ33は、接触式の温度センサと比較して、温度応答が速く、迅速且つ正確な温度測定が可能となっている。よって、搬送経路10Aに沿って搬送される樽容器100の一つ一つに対して迅速且つ正確に温度測定を行うことができるので、樽容器100の良不良の判断も迅速且つ正確に行うことが可能となる。
【0039】
また、樽洗浄システム1は、殺菌が行われた樽容器100の温度が所定の閾値以下である場合に殺菌不良であると判断する。よって、殺菌に用いられる蒸気等の温度が低くなっているときに殺菌が十分に行われていないと判断することができ、樽容器100の殺菌不良を検知することができる。
【0040】
また、樽洗浄殺菌装置10の搬送経路10Aは、樽容器100の洗浄を行う洗浄領域と、樽容器100の殺菌を行う殺菌領域、を有している。そして、温度センサ33は搬送経路10Aにおける殺菌領域の下流側端部近傍に配置されているので、殺菌工程の終了直後における樽容器100の温度を迅速且つ正確に測定することができる。従って、殺菌時における樽容器100の温度をより正確に測定することができるので、樽容器100の良不良の判断もより正確に行うことが可能となる。
【0041】
また、樽洗浄殺菌装置10の搬送経路10Aは、平面視において円形状となっており、制御部41は、搬送経路10Aの周方向における樽容器100の位置情報(角度θの情報)に基づいて、上述した判断を行うか否かを決定する。よって、搬送経路10Aの周方向における樽容器100の位置に応じて上記判断を行うか否かを決定するので、適切なタイミングで樽容器100の良不良の判断を行うことができる。従って、樽容器100の良不良の判断を一層正確に行うことが可能となる。
【0042】
また、円形状となっている搬送経路10Aを備えたロータリー式の樽洗浄システム1は、直線状となっている搬送経路を備えるレーン式の樽洗浄システムと比較して、単位時間当たりに洗浄及び殺菌が行える樽容器100の数が多いという利点がある。よって、ロータリー式の樽洗浄システム1では、搬送経路10Aの数を増やす必要がないので、部品点数の削減及び省スペース化を実現することができる。
【0043】
また、レーン式の樽洗浄システムの場合には、搬送経路の数に応じて温度センサ33の数を増やすことによって上記実施形態と同様の効果が得られる。しかしながら、ロータリー式の樽洗浄システム1では、搬送経路10Aの数を増やす必要がないので、温度センサ33の数も1個で済むという利点がある。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、樽洗浄システム1を構成する各部品の構成や形状は上記の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0045】
例えば、上述した実施形態において、温度センサ33は、搬送経路10Aにおける殺菌領域の下流側端部近傍に配置されていたが、温度センサの配置位置は適宜変更することが可能である。例えば、図5に示されるように、コンベア20の搬出経路20Bにおける途中部分Eの下流側に配置された印字機29の隣接位置に温度センサ33を配置してもよい。印字機29は、樽容器100の表面に印字を行う機器である。
【0046】
また、例えば、温度センサ33を搬送経路10Aにおける洗浄領域(例えば角度θがθ2である領域)の下流側端部近傍に配置して、洗浄領域の下流側端部近傍に位置する樽容器100の温度を測定してもよい。ここで、洗浄領域の下流側端部近傍とは、搬送経路10Aにおける樽容器100の洗浄工程が終了する箇所を示している。そして、制御部41は、角度θが例えばθ2程度であってヘッド11が洗浄領域の下流側端部近傍の位置にあるときに上記良不良の判断を行ってもよい。この場合、洗浄が行われた樽容器100の温度が所定の閾値以下である場合に、当該樽容器100が洗浄不良であると制御部41が判断する。よって、洗浄に用いられる洗浄液等の温度が低くなっている場合に洗浄が十分に行われていないと判断することができるので、樽容器100の洗浄不良を検知することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1…樽洗浄システム、10…樽洗浄殺菌装置、10A…搬送経路、33…温度センサ、41…制御部(判断部)、100…樽容器。
図1
図2
図3
図4
図5