(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像生成手段は、前記電磁波により撮像された画像に含まれる複数の特徴点のうち前記検出手段により検出された移動方向が特異な特徴点ではない特徴点の位置が一致または近接するように、前記異なる時点の各々において撮像された複数の画像を重ね合わせて得られる画像を生成する
請求項2に記載の検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ニトログリセリン、ガソリン等の液体の危険物は揮発性が高く、意図せぬ容器の破損等によっても大事故に繋がる危険性がある。また、化学反応により毒性の強い気体を生じる液体もある。そのため、手荷物等の外部から視認できない対象物に液体が含まれているか否かを外部から検査したい、というニーズがある。
【0006】
また、爆薬には粉粒体のものが多くある。さらに、危険物ではないが所持が禁じられている麻薬にも粉粒体のものが多くある。そのため、手荷物等の外部から視認できない対象物に粉粒体が含まれているか否かを外部から検査したい、というニーズがある。
【0007】
本発明は、外部から視認できない対象物に含まれる液体または粉粒体を外部から検出することを可能とする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、外部から視認できない対象物に対し異なる時点の各々において電磁波により撮像された前記対象物を含む画像に含まれる複数の特徴点の
中から移動方向が特異な特徴点を液体または粉粒体の上面上の点を示す特徴点として検出する検出手段
と、前記検出手段により検出された移動方向が特異な特徴点の移動量に基づき、前記対象物に含まれる液体または粉粒体の粘性値を特定する粘性値特定手段と、を備える液体または粉粒体の検出装置を、第1の態様として提供する。
【0009】
第1の態様の検出装置によれば、外部から視認できない対象物に含まれる液体または粉粒体を外部から検出することができる。
また、第1の態様の検出装置によれば、対象物に含まれる液体または粉粒体の粘性値が特定される。
【0010】
第1の態様の検出装置において、前記検出手段により検出された移動方向が特異な特徴点を他の特徴点と異なる態様で表示する画像を生成する画像生成手段を備える、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0011】
第2の態様の検出装置によれば、利用者は液体または粉粒体の上面上の点を示す特徴点を他の特徴点と区別して視認することができる。
【0012】
第2の態様の検出装置において、前記画像生成手段は、前記電磁波により撮像された画像に含まれる複数の特徴点のうち前記検出手段により検出された移動方向が特異な特徴点ではない特徴点の位置が一致または近接するように、前記異なる時点の各々において撮像された複数の画像を重ね合わせて得られる画像を生成する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0013】
第3の態様の検出装置によれば、利用者は液体または粉粒体の上面上の点を示す特徴点の他の特徴点に対する相対的な移動の様子を容易に知ることができる。
【0014】
第1乃至第3のいずれかの態様の検出装置において、前記電磁波により撮像された画像に含まれる複数の特徴点の位置に基づき、前記対象物に含まれる液体または粉粒体の量を特定する量特定手段を備える、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0015】
第4の態様の検出装置によれば、対象物に含まれる液体または粉粒体の量が特定される。
【0016】
第1乃至第4のいずれかの態様の検出装置において、前記検出手段により検出された移動方向が特異な特徴点の移動量に基づき、前記対象物に含まれる液体または粉粒体の粘性値を特定する粘性値特定手段を備える、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0017】
第5の態様の検出装置によれば、対象物に含まれる液体または粉粒体の粘性値が特定される。
【0018】
第
1乃至第4のいずれかの態様の検出装置において、前記粘性値特定手段により特定された粘性値と、前記対象物の温度とを関連付ける関連付手段を備える、という構成が第
5の態様として採用されてもよい。
【0019】
第
5の態様の検出装置によれば、対象物に含まれる液体または粉粒体の粘性値が対象物の温度と関連付けられる。
【0020】
また、本発明は、上述の検出装置と、前記対象物の水平方向の移動速度を変化させる速度変更装置と、を備える液体または粉粒体の検出システムを、第
6の態様として提供する。
【0021】
第
6の態様の検出システムによれば、外部から視認できない対象物に液体または粉粒体が含まれている場合、対象物の水平方向の移動速度が変化しない場合と比較し、当該液体または粉粒体の上面が大きく変形するため、対象物に含まれる液体または粉粒体の検出が高い精度で行われる。
【0022】
また、本発明は、上述の検出装置と、前記対象物の鉛直方向に対する角度を変化させる角度変更装置と、を備える液体または粉粒体の検出システムを、第
7の態様として提供する。
【0023】
第
7の態様の検出システムによれば、外部から視認できない対象物に液体または粉粒体が含まれている場合、対象物の鉛直方向に対する角度が変化しない場合と比較し、当該液体または粉粒体の上面の位置が大きく変化するため、対象物に含まれる液体または粉粒体の検出が高い精度で行われる。
また、本発明は、外部から視認できない対象物に対し異なる時点の各々において電磁波により撮像された前記対象物を含む画像に含まれる複数の特徴点の中から移動方向が特異な特徴点を液体または粉粒体の上面上の点を示す特徴点として検出する検出手段を備える液体または粉粒体の検出装置と、前記対象物の水平方向の移動速度を変化させる速度変更装置と、を備える液体または粉粒体の検出システムを、第8の態様として提供する。
第8の態様の検出システムによれば、外部から視認できない対象物に液体または粉粒体が含まれている場合、対象物の水平方向の移動速度が変化しない場合と比較し、当該液体または粉粒体の上面が大きく変形するため、対象物に含まれる液体または粉粒体の検出が高い精度で行われる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.実施形態
1−1.検出システムの全体構成
以下、本発明の一実施形態に係る検出システム9を説明する。検出システム9は、鞄等の収容具(以下、「物体J」という)の中に収容された外部から視認できない内容物(以下、「対象物C」という)に液体または粉粒体が含まれている場合、当該液体または粉粒体を検出するシステムである。なお、本願において粉粒体は、集合体として液体と同様または類似の挙動を示す固体の集合体であればよく、個々の粉または粒の形状、大きさ、物質等により限定されない。
【0026】
図1は、検出システム9の主要構成を示す図である。検出システム9は、物体Jおよび物体Jに収容された対象物C(以下、物体Jと物体Jに収容される対象物Cの区別を要さない場合、物体Jおよび物体Jに収容された対象物Cを単に「物体J」という)を搬送方向D1に向けて搬送する搬送装置3、搬送される物体Jに対して所定の周波数帯の電磁波を照射する照射装置2、電磁波が照射された物体Jの画像を撮像する撮像装置4、および撮像された画像を用いてその物体Jの中に収容された外部から視認できない対象物Cに含まれている液体または粉粒体を検出する検出装置1を有する。
なお、搬送装置3はベルトコンベア、ローラーコンベア等のいずれの方式により物体Jの搬送を行ってもよい。
【0027】
照射装置2は、搬送装置3が物体Jを搬送する搬送方向D1と交差する概ね水平方向に電磁波を照射する。照射装置2が照射する電磁波は物体Jを透過しつつ、物体Jおよびその収容物を構成する物質の種別によって透過率が異なる周波数帯の電磁波であればよく、例えばX線である。物体Jは、搬送装置3による搬送中にこの電磁波を受ける。遮蔽板Sは電磁波が撮像装置4の近くの通行人等に照射されないように、照射装置2から照射された電磁波を遮蔽する。
【0028】
撮像装置4は、一次元イメージセンサであり、
図1に示されるように、概ね鉛直方向である走査方向D0に沿って直線上に並べられたフォトダイオードなどの電磁波センサを有する。撮像装置4は、これらの電磁波センサにより、照射装置2から照射されて物体Jを透過した電磁波の照射を受けて発光する硫酸化ガドリニウム等の蛍光体から発せられる光の強度を感知する。そして、撮像装置4は、各電磁波センサが感知した電磁波の強度に応じて線状の画像を出力する。撮像装置4は、搬送装置3により搬送される物体Jを継続的に撮像することにより、物体Jの二次元画像を生成する。
【0029】
1−2.検出装置の構成
図2は、検出システム9が備える構成部の関係および検出装置1の構成を示す図である。検出装置1は、バス19に接続された制御部11、記憶部12、表示部13、操作部14、および通信部16を有する。
なお、
図2において破線で示される測温部15は後述する変形例における検出装置1が備える構成部であり、本実施形態に係る検出装置1は測温部15を備えない。また、
図2において破線で示される速度変更部31および角度変更部32は後述する変形例における搬送装置3が備える構成部であり、本実施形態に係る搬送装置3は速度変更部31および角度変更部32を備えない。
【0030】
制御部11は、検出装置1の各部の動作を制御する手段である。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶装置を備え、これら記憶装置に記憶されたプログラムに従い各種情報処理を実行する。
【0031】
また、制御部11は、照射装置2、搬送装置3および撮像装置4と通信可能に接続されており、これらの装置に対して動作の指示を行う。照射装置2は、検出装置1の制御部11からの指示を受けて撮像装置4に向けて電磁波を照射する。搬送装置3は、検出装置1の制御部11からの指示を受けて物体Jを搬送方向D1に搬送する。撮像装置4は、検出装置1の制御部11からの指示を受けて物体Jを透過した電磁波が表す画像を生成する。
【0032】
記憶部12は、データを持続的に記憶する装置(例えばハードディスク装置)を有しており、制御部11が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。
【0033】
表示部13は、検出装置1により生成される画像等の情報を表示する。操作部14は、キーボードやマウスなど、利用者が検出装置1を操作するための入力装置を有している。通信部16は、検出装置1が外部の装置と通信を行うためのインタフェースである。
【0034】
1−3.検出装置の機能的構成
図3は、検出装置1の機能的構成を示す図である。制御部11は、上述のプログラムを実行することにより、検出部111、画像生成部112、および量特定部113として機能する。
なお、
図3において破線で示される粘性値特定部114および関連付部115は後述する変形例における検出装置1が備える構成部であり、本実施形態に係る検出装置1は粘性値特定部114および関連付部115を備えない。
【0035】
検出部111は、撮像装置4によって異なる時点の各々において撮像された複数の線状の画像を取得する。そして、検出部111は、取得したそれらの線状の画像から特徴点を抽出し、抽出した複数の特徴点のなかから時間の経過に伴う移動方向が他の特徴点と比較し特異な特徴点を抽出する。
物体Jは搬送時に生じる振動を受けながら撮像装置4により撮像される。物体Jに収容される対象物Cに液体または粉粒体が含まれる場合、当該液体または粉粒体の上面(液体の場合は液面)は振動により変形する。従って、撮像装置4により撮像される画像において、液体または粉粒体の上面上の点を示す特徴点は、それ以外の特徴点(例えば、容器の壁面上の点等)とは異なる方向に移動する。
従って、検出部111は、上述した他の特徴点と比較し移動方向が特異な特徴点を液体または粉粒体の上面上の点を示す特徴点として検出する。
【0036】
図4は、検出部111が液体または粉粒体の上面上の点を示す特徴点を検出する過程を説明するための図である。
図4に示す物体Jは搬送装置3によって搬送方向D1に速度v1で搬送されている。物体Jの中には、対象物Cとして、書籍C1、電子機器C2、ボトルC3、およびボトルC3に収容されている液体C4が収容されている。
【0037】
撮像装置4は、物体Jのうち、走査方向D0に沿って並べられた電磁波センサに対向するラインLを透過した電磁波が表す線状の画像を生成する。物体J、ボトルC3、液体C4等は各々が異なる物質であるため、それらを電磁波が透過する際の透過率が異なる。従って、撮像装置4により撮像される線状の画像において、ラインL上の物体Jの上側の点を示す点P1、ラインL上のボトルC3の上側の点を示す点P2、ラインL上の液体C4の液面を示す点P3、ラインL上の物体Jの下側の点(およびボトルC3の下側の点)を示す点P4等において、濃度が不連続に変化する。検出部111は、これらの濃度が不連続に変化する点を特徴点として抽出する。
【0038】
搬送装置3は、物体Jを搬送方向D1に搬送する際、例えば搬送ベルトに生じる波打ち等により物体Jおよび対象物Cに対し搬送方向D1とは異なる方向(鉛直方向成分を含む方向)に振動を与える。物体Jおよび対象物Cのうち固体の部分(例えば、
図4における書籍C1、電子機器C2、ボトルC3)はこの振動に追従して動く。一方、対象物Cに含まれる液体または粉粒体(例えば、
図4における液体C4)は振動を受けてその上面が変形する。そのため、液体の液面または粉粒体の上面は必ずしも搬送装置3から受ける振動に追従しない。
【0039】
図5は、撮像装置4により撮像された線状の画像を搬送方向D1に並べて得られる二次元画像を示した図である。この二次元画像は、制御部11の画像生成部112により生成される。画像生成部112は、時間軸上で隣接する2つの線状の画像を繋ぎ合わせる際、各々の画像から抽出した複数の特徴点の鉛直方向における位置に基づき、異なる画像から抽出した特徴点の間のマッチングを行う。例えば、第1の時刻に撮像された画像から抽出された点P1〜点P4(
図4参照)と、第1の時刻に後続する第2の時刻に撮像された画像から抽出された点P1〜点P4は、鉛直方向の位置が互いに近い点が同じ対象物を示す点として対応付けられる。このように対応付けられた点P1〜点P4のペアうち、多数のペアが鉛直方向において同じ位置となるように、例えば第2の時刻に撮像された画像の鉛直方向の位置の補正が行われる。その結果、画像生成部112により生成される二次元画像は、物体Jおよび対象物Cが搬送装置3から受ける振動に追従した鉛直方向の移動によるノイズが除去された画像となる。
【0040】
しかしながら、画像生成部112により生成される二次元画像からは、物体Jおよび対象物Cが搬送装置3から受ける振動に追従しない鉛直方向の移動によるノイズ、すなわち、液体または粉粒体の上面が変形するために生じる上面上の点(
図4の点P3)の鉛直方向の移動によるノイズは除去されない。
図5の画像Q1は
図4の点P3の軌跡を示しており、除去されないノイズにより鉛直方向に激しく移動していることが分かる。これは、点P3の移動方向が他の特徴点(例えば、点P1、点P2、点P4)の移動方向と比べ特異であるためである。
【0041】
検出部111は、時間の経過に伴い鉛直方向に移動する特徴点のうち、移動距離が他の多数の特徴点の移動距離と比べ、例えば所定の閾値以上に異なる特徴点を液体または粉粒体の上面上の点を示す特徴点として検出する。
図4の例では、点P3が液体または粉粒体の上面上の点と示す特徴点として検出される。
【0042】
画像生成部112は、
図5に示される二次元画像を生成する際、検出部111により検出された液体または粉粒体の上面上の点を示す特徴点を他の特徴点と異なる態様で表示するように二次元画像を生成する。画像生成部112により生成された二次元画像は表示部13により表示される。その結果、
図5に示される二次元画像が、例えば画像Q1が赤色等で強調された状態で、表示される。
【0043】
量特定部113は、電磁波により撮像された画像に含まれる複数の特徴点の位置に基づき、対象物Cに含まれる液体または粉粒体の量を特定する。例えば、量特定部113は、
図5の画像Q1で示される点P2の鉛直方向の位置を平均して液面(または粉粒体の上面)の高さHを求める。そして、高さHおよびボトルC3の形状に基づいて、液体C4の量を特定する。
【0044】
なお、画像生成部112により生成される画像は二次元画像であるため、液体C4の奥行き方向の長さは二次元画像からは特定できない。従って、量特定部113は、例えばボトルC3の左右方向の長さと奥行き方向の長さが同じであると仮定して、液体C4の体積を特定する。例えば、
図5に示されるように、ボトルC3の底から液体C4の液面までの高さがHであり、ボトルC3の左右方向の長さ(幅)がWである場合、量特定部113は、例えば、V=H×W×Wで算出される体積Vを、液体C4の体積として特定する。
【0045】
量特定部113により特定された液体C4の量は、例えば画像生成部112によって
図5に示される二次元画像に合成され、表示部13に出力される。従って、利用者は、検出装置1が検出した液体または粉粒体の量を把握することができる。
【0046】
上述した実施形態における装置の構成、形状、大きさ、配置関係等は本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、様々に変更されてよい。
【0047】
2.変形例
上述の実施形態は様々に変形され得る。以下に、それらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0048】
2−1.変形例1
撮像装置4は二次元イメージセンサであってもよい。
図6は、この変形例における検出システム9の主要構成を示す図である。
図6に示す検出システム9において、撮像装置4は二次元イメージセンサである。従って、撮像装置4は、或る時点において照射装置2から照射され物体Jを透過した電磁波が表す二次元画像を生成する。この変形例において、検出部111は異なる時点で撮影された複数の二次元画像から抽出した特徴点のうち他の多数の特徴点と比較して特異な方向に移動している特徴点を抽出する。そのように抽出される特徴点は液体または粉粒体の上面を示す線を表すことになる。
【0049】
2−2.変形例2
搬送装置3は、物体Jを搬送する際、走査方向D0(鉛直方向)の成分が含まれる方向に意図的に振動させる振動機構を有していてもよい。搬送装置3は、この振動機構によって物体Jを、例えば一定の周期で、またはランダムに振動させつつ、搬送方向D1に搬送する。撮像装置4は、振動機構により振動される物体Jを撮像する。
【0050】
なお、上述した変形例1の場合、撮像装置4は二次元イメージセンサであるため、必ずしも物体Jが搬送される必要はない。この場合、検出システム9は、搬送装置3に代えて、物体Jを振動させる加振装置を備えてもよい。
【0051】
この変形例によれば、対象物Cに液体または粉粒体が含まれる場合、上述した実施形態における場合と比較して液体または粉粒体の上面が大きく変形するため、より高い精度で液体または粉粒体の検出が行われる。
【0052】
2−3.変形例3
搬送装置3は、対象物の水平方向の移動速度を変化させる速度変更装置として機能してもよい。この場合、搬送装置3は、搬送方向D1における物体Jの搬送速度を変化させる速度変更部31(
図2参照)を有する。速度変更部31は、制御部11から移動速度の変化の指示を受けると、この指示に応じて搬送ベルト等を駆動する駆動機構(図示せず)を制御して物体Jの搬送速度を変更する。
【0053】
図7は、搬送装置3により搬送速度が変化した場合に液体または粉粒体の上面が変形する様子を示した図である。なお、
図7において、ボトルC3を収容する物体Jおよび物体Jに収容される他の対象物C(例えば、
図4に示される書籍C1および電子機器C2)は図示が省略されている。
図7(a)に示すボトルC3および液体C4は搬送装置3によって搬送方向D1に速度v1で搬送されている。搬送装置3からボトルC3および液体C4が受ける鉛直方向の振動が無視できる程度に小さく、搬送速度が速度v1で長らく一定であれば、液体C4の上面は概ね水平に保たれる。
【0054】
搬送装置3の速度変更部31が制御部11からの指示に応じて搬送速度を速度v1から速度v2(
図7の例では、v1>v2)に変更すると、固体であるボトルC3は変化した搬送速度に追従し、速度v2で移動する。一方、液体C4は慣性力により変形し、
図7(b)に示されるように、その上面に大きな変形が生じる。
【0055】
この変形例によれば、対象物Cに液体または粉粒体が含まれる場合、上述した実施形態における場合と比較して液体または粉粒体の上面が大きく波打つため、より高い精度で液体または粉粒体の検出が行われる。
【0056】
2−4.変形例4
上述した変形例2−1において、画像生成部112は、照射装置2が対象物Cに向けて照射した電磁波により撮像された二次元画像に含まれる複数の特徴点のうち検出部111により検出された移動方向が特異な特徴点ではない特徴点の位置が一致または近接するように、異なる時点の各々において撮像された複数の二次元画像を重ね合わせて得られる画像を生成してもよい。
【0057】
図8は、この変形例における重ね合わせの画像を示す図である。なお、
図8に示す画像は、
図7(a)に示される画像と、
図7(b)に示される画像とを重ね合わせた画像である。
図7(b)に示される画像に含まれるボトルC3および液体C4の搬送方向D1における位置は、
図7(a)に示される画像に含まれるボトルC3および液体C4より前方に移動している。画像生成部112は、この搬送方向D1における前方への移動を相殺するように、例えば
図7(a)の画像に含まれるボトルC3および液体C4の水平方向の位置を変更した後、2つの画像を重ね合わせる。画像生成部112は、例えば重ね合わせた2つの画像において互いにずれた2本の線で囲まれた領域Rを他の領域とは異なる態様で表す画像を生成し、表示部13に出力する。その結果、表示部13には、
図8に示される画像が、例えば領域Rが赤色等で強調された状態で表示される。従って、利用者は対象物Cに液体または粉粒体が含まれることを容易に確認することができる。
【0058】
また、検出部111が領域Rの面積を算出し、算出した面積に基づき対象物が液体または粉粒体であるか否かを判定してもよい。また、検出部111が領域Rの上下方向における長さの最大値(互いにずれた2本の線のずれの最大値)を算出し、算出した長さに基づき対象物が液体または粉粒体であるか否かを判定してもよい。
【0059】
2−5.変形例5
搬送装置3は、物体Jおよび物体Jに収容される対象物Cの鉛直方向に対する角度を変化させる角度変更装置として機能してもよい。この場合、搬送装置3は、物体Jおよび対象物Cの鉛直方向に対する角度を変化させる角度変更部32(
図2参照)を有する。角度変更部32は、制御部11からの指示に応じて搬送ベルト等の角度を調整する調整機構(図示せず)を制御して物体Jおよび対象物Cの鉛直方向に対する角度を変更する。
【0060】
搬送装置3が物体Jを搬送させる搬送路が位置によって異なる角度で傾斜するように構成されてもよい。
図9は、この変形例における搬送装置3を水平方向に見た状態を示す図である。この変形例において、搬送装置3の搬送路は搬送方向における上流側の領域と下流側の領域において、鉛直方向に対する角度が異なっている。すなわちこの搬送路は、上流側の領域においては上向きに傾斜した搬送方向D1aに物体Jを搬送し、下流側の領域においては下向きに傾斜した搬送方向D1bに物体Jを搬送する。
【0061】
図10は、この変形例において、鉛直方向に対する角度が変化された場合における、対象物Cに含まれる液体C4の上面の挙動を示した図である。
図10(a)は搬送路の上流側の領域において搬送方向D1aに搬送されるボトルC3および液体C4の状態を示し、
図10(b)は搬送路の下流側の領域において搬送方向D1bに搬送されるボトルC3および液体C4の状態を示している。なお、
図10(a)に示される角度θ1は上流側の領域における搬送路の仰角を示し、
図10(b)に示される角度θ2(θ2≠θ1)は下流側の領域における搬送路の仰角を示す。なお、
図10においては、θ1>0であり、θ2<0であるが、θ1≠θ2であればθ1およびθ2の正負はいずれでもよい。
【0062】
図11は、この変形例に上述した変形例4を組み合わせて、
図10(a)および
図10(b)に示される2つの二次元画像を重ね合わせて得られる画像を示す図である。
図10(a)の画像に含まれるボトルC3の画像と、
図10(b)の画像に含まれるボトルC3の画像とは、左右方向に対する傾きの角度が異なる。画像生成部112は、この角度を揃えるように2つの画像を重ね合わせ、両者のうち異なる部分を抽出する。画像生成部112は、両者のうち異なる部分として抽出した互いにずれた2本の線に囲まれた領域Rを、他の領域と異なる態様で表示する重ね合わせの画像を生成し、表示部13に出力する。その結果、表示部13には、
図11に示される画像が、例えば領域Rが赤色等で強調された状態で表示される。従って、利用者は対象物Cに液体または粉粒体が含まれることを容易に確認することができる。
【0063】
また、検出部111が領域Rの面積を算出し、算出した面積に基づき対象物が液体または粉粒体であるか否かを判定してもよい。また、検出部111が領域Rの上下方向における長さの最大値(互いにずれた2本の線のずれの最大値)を算出し、算出した長さに基づき対象物が液体または粉粒体であるか否かを判定してもよい。
【0064】
この変形例によれば、対象物Cに液体または粉粒体が含まれる場合、上述した実施形態における場合と比較して、対象物Cに含まれる液体または粉粒体ではない部分に対する液体または粉粒体の上面の角度が大きく変化するため、より高い精度で液体または粉粒体の検出が行われる。
【0065】
2−6.変形例6
検出装置1は、検出部111により検出された移動方向が特異な特徴点の移動量に基づき、対象物Cに含まれる液体または粉粒体の粘性値を特定する粘性値特定手段を備えていてもよい。この場合、検出装置1の制御部11は、粘性値特定部114(
図3参照)を備える。粘性値特定部114は、画像生成部112が生成した画像に基づいて、移動方向が特異な特徴点の単位時間当たりの移動量を特定し、対象物Cに含まれる液体または粉粒体の変形の速度を算出する。このように粘性値特定部114により特定される液体または粉粒体の変形の速度は、液体または粉粒体の粘度の大小を示す指標値である。本願において、粘度の大小を示す指標値を粘性値というものとする。粘性値は粘度を含む概念である。なお、粘性値特定部114が、例えば、液体または粉粒体の変形の速度と粘度との対応を示すデータを記憶部12から読み出し、算出した変形の速度に応じた粘度を特定してもよい。粘性値特定部114により特定された粘性値は、例えば、検出された液体または粉粒体の種別の特定に用いられる。
【0066】
液体または粉粒体の粘性値は液体の温度により変化する場合がある。従って、粘性値特定部114により特定された粘性値が液体または粉粒体の種別の特定に用いられる場合、粘性値に加え、液体または粉粒体の温度が特定されると便利である。従って、検出装置1は液体または粉粒体の温度を計測する測温部15(
図2参照)を備えてもよい。また、制御部11は、粘性値特定部114により特定された粘性値と、測温部15により計測された温度とを関連付ける関連付部115(
図3参照)を備えてもよい。なお、測温部15により計測される温度は、液体または粉粒体の温度の推定値でよく、例えば検出システム9が置かれている空間の温度が測温部15により計測され、対象物Cに含まれる液体または粉粒体の温度の推定値として用いられてもよい。
【0067】
2−7.変形例7
検出部111が、他の多くの特徴点と移動方向が異なる特徴点を液体または粉粒体の上面上の点として特定した後、特定したそれらの特徴点(移動方向が他の多くの特徴点と異なる特徴点)の数に基づき、対象物に液体または粉粒体が含まれるか否かの判定を行ってもよい。この変形例によれば、液体または粉粒体の上面上の点ではなく、振動等により物体Jの中において移動した対象物が誤って液体または粉粒体と誤判定される不都合が回避される。