(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記扉、前記壁及び仕切り板には、基板と、前記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、前記表層樹脂層上に存在する光触媒とからなる化粧板が用いられている請求項1又は2に記載のトイレブースシステム。
前記光触媒は、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、鉄担持チタニア触媒、窒素ドープチタニア触媒、硫黄ドープチタニア触媒、炭素ドープチタニア触媒、又は、酸化タングステンである請求項1〜8のいずれかに記載のトイレブースシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した技術では、便座に付着した細菌やウィルスのみを不活性化できるだけであり、トイレブースの扉、壁等に付着した細菌やウィルスを失活させることが難しく、さらに水洗で空気中に舞い上がる飛沫細菌やウィルスを完全に失活させることも難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、トイレブースの扉、壁等に付着した細菌、ウィルス等を失活させ、その数を減少させることができ、さらに、トイレブース内の空間に漂う細菌やウィルス等を失活させ、その数を減少させることができるトイレブースシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトイレブースシステムは、開閉可能な扉、壁及び床からなるトイレブースを備えたトイレブースシステムであって、上記トイレブースは、該トイレブース内の空気を下から上の方向に流動させるための局所換気装置を備え、少なくとも上記トイレブースを構成する上記扉及び上記壁のいずれかに、光触媒が担持されていることを特徴とする。
本発明のトイレブースシステムにおいて、上記トイレブースは、上記壁として機能する仕切り板をさらに備えていてもよい。
【0008】
本発明のトイレブースシステムでは、少なくとも扉及び壁のいずれかに光触媒が担持されているので、光触媒により、扉、壁(仕切り板)等に付着した細菌、ウィルス等を失活させ、その数を減少させることができる。
また、本発明のトイレブースシステムでは、局所換気装置により、空気を下から上の方向に流動させ、トイレブース内の空間に漂う細菌やウィルス等を扉、壁(仕切り板)及び床に付着させて失活させるとともに、トイレブース外に排気し、細菌、ウィルスの数を減少させることができる。
【0009】
本発明のトイレブースシステムでは、トイレブースには、光触媒を機能させるための光源が設けられていてもよい。上記光源が設けられている場合には、上記扉、壁(仕切り板)等に付着した細菌、ウィルス等の数を、より効果的に減少させることができる。
【0010】
本発明のトイレブースシステムでは、トイレブースに天井が設けられ、上記壁は、上記天井との間に隙間がない状態で設けられていてもよい。上記のように構成されている場合、上記局所排気装置により、トイレブース内の空間に漂う細菌、ウィルスを、上方向の気流に乗せて上昇させ、確実にトイレブース外に排出させることができる。また、細菌、ウィルスの一部は、上記扉、壁(仕切り板)等に付着し易く、付着することにより失活する。そのため、より確実にトイレブース内の細菌、ウィルスの数を減少させることができる。
より確実に細菌、ウィルスを失活させるために、天井に光触媒が担持されていてもよい。
【0011】
本発明のトイレブースシステムでは、上記扉及び上記壁には、基板と、上記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、上記表層樹脂層上に存在する光触媒とからなる化粧板が用いられていることが望ましい。
上記扉及び上記壁(仕切り板)に、上記した構成の化粧板を用いることにより、上記した本発明の効果を得ることができる。
【0012】
上記トイレブースシステムでは、上記化粧板を構成する上記表層樹脂層上には、セラミック粒子が露出して配置され、上記光触媒は、上記セラミック粒子の露出面上に担持されていることが望ましい。
さらに、本発明で用いる化粧板は、上記構成からなるので、扉、壁(仕切り板)等を構成するメラミン樹脂等の表層樹脂層の劣化を防ぐことができる。
【0013】
本明細書において、セラミック粒子とは、セラミック粒子の露出面上に担持されている光触媒の等電点よりも高い等電点となる粒子を指す。ここで等電点とは、溶液の水素イオン濃度を変化させたとき、溶質となる粒子の正と負の電荷が全体としてゼロになり、電場をかけても移動しないような状態で、粒子全体の電荷平均が0となるときの水素イオン指数であり、その値をpHとして表す。この等電点は物質により規定される値であり、その一例として、光触媒の等電点はpH5〜6であるものが多く、それに対して、セラミック粒子は、光触媒の等電点よりも高い等電点となるものを用いることができる。特に、セラミック粒子の等電点がpH7以上であることがより望ましい。なお、等電点の測定方法としては、電気泳動法(JIS R1638)により行うことができる。
【0014】
セラミック粒子としては、具体的には、セリウム、ジルコニウム、ストロンチウム、アルミニウム、珪素、鉄、コバルト、銅、クロム、ニッケル、錫、カドミウム、マグネシウム、マンガン、タングステン、バナジウム、イットリウムなどから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属酸化物あるいは金属水和物の粒子、酸化アルミニウム含有粒子、シリカ含有粒子、珪藻土からなるセラミック粒子等を用いることができる。また、等電点に関し、アルミナ(Al
2O
3)の等電点は、pH:7.4〜9.2、ベーマイト(AlOOH)の等電点は、pH7.7〜9.4、カドミウム水酸化物(Cd(OH)
2)の等電点は、pH10.5以上、酸化カドミウム(CdO)の等電点は、pH7.7、鉄水和物(Fe(OH)
2)の等電点は、pH12、酸化鉄(Fe
3O
4)の等電点は、pH12、酸化銅(CuO)の等電点は、pH9.5、銅水和物(Cu(OH)
2)の等電点は、pH7.7である。これらの成分を複合化し、セラミック粒子としての等電点が、光触媒の等電点よりも高いことが望ましい。上記したセラミック粒子を構成する化合物のなかでは、特に酸化アルミニウム含有粒子を用いることが望ましい。
【0015】
セラミック粒子は、細菌やウィルスを引き寄せやすいという作用を有する。そもそも、細菌やウィルスは、タンパク質や脂肪を含んでいるため、アニオン物質であり、アニオン物質は、その対極であるカチオン物質に引き寄せられるという性質を有する。つまり、化粧板の表層に存在する細菌やウィルスは、セラミック粒子に引き寄せられ、セラミック粒子に担持された光触媒により、細菌やウィルスを減少させることができ、また、細菌やウィルスが増殖しないので、抗菌や抗ウィルスの効果を得やすくなる。セラミック粒子でない粒子の場合、化粧板の表層に存在する細菌やウィルスが光触媒に接触する頻度が低いので、細菌やウィルスが残存または増殖し、抗菌や抗ウィルスの効果を得にくいのである。
【0016】
また、表層樹脂層上に露出した配置されたセラミック粒子は、光触媒を一定間隔で担持しやすいという性質を有する。セラミック粒子でない粒子に光触媒を担持させると、光触媒の間隔が狭くなりやすい。そのため、細菌やウィルスと光触媒との接触頻度が低下し、想定される細菌やウィルスの減少作用が発揮されなくなる。その結果、細菌やウィルスを減少させるのに時間を要し、抗菌、抗ウィルスの効果が発現しにくくなる。これに対して、本発明で用いるセラミック粒子は、一定間隔に露出した状態で配置されるので、細菌やウィルスが光触媒との接触頻度の低下がなく、所望の時間で細菌やウィルスを減少させ、抗菌、抗ウィルスの効果が発現しやすくなる。このように、セラミック粒子は、光触媒の担持を一定間隔にさせ、細菌やウィルスを引き寄せるという効果があり、抗菌や抗ウィルス効果を向上させることができる。光触媒に、細菌やウィルスが接触すると、光触媒は、細菌やウィルスを全分解させるか、又は、一部を損傷させることができるので、細菌やウィルスを減少させることができる。
上記した効果は、セラミック粒子の露出面に光触媒を担持させることにより得られる。
【0017】
本発明のトイレブースシステムでは、セラミック粒子として、酸化アルミニウム含有粒子を用いることが望ましい。また、セラミック粒子として、具体的には、アルミナ又はアルミン酸ストロンチウムのいずれかからなる粒子を用いることが望ましい。アルミナは、セラミック粒子の中で最も利用しやすい上に、上記で説明した細菌やウィルスを減少させる作用を効率的に利用することができる。また、アルミン酸ストロンチウムは、蓄光作用があるので、光がない環境下でも細菌やウィルスを減少させる作用を長時間持続させることができる。
【0018】
本発明のトイレブースシステムにおいて、上記セラミック粒子の平均粒子径は、0.1μm〜55μmであることが望ましい。
【0019】
本発明のトイレブースシステムで用いる化粧板において、上記セラミック粒子は、上記表層樹脂層表面に対して5〜30%の面積率で露出して存在することが望ましい。
セラミック粒子が、表層樹脂層表面に対して5%以上の面積率で露出していると、光触媒を充分に担持させることができるため、細菌やウィルスを減少させる作用を充分に発揮させることができる。また、セラミック粒子が、表層樹脂層表面に対して30%以下の面積率で露出していると、光触媒を担持するセラミック粒子が表層樹脂層に強固に接合され脱落しにくくなるため、細菌やウィルスを減少させる作用を充分に持続させることができる。
【0020】
本発明のトイレブースシステムにおいて、上記光触媒は、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、鉄担持チタニア触媒、窒素ドープチタニア触媒、硫黄ドープチタニア触媒、炭素ドープチタニア触媒、又は、酸化タングステンであることが望ましい。特に、光触媒の等電点は、pH5〜6であることが望ましい。
【0021】
本発明のトイレブースシステムにおいて、化粧板を構成する上記表層樹脂層は、シリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有していてもよい。
【0022】
本発明のトイレブースシステムにおいて、セラミック粒子の表層に無機ゾルの乾燥体を有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のトイレブースシステムでは、少なくとも扉及び壁のいずれかに光触媒が担持されているので、光触媒により、扉、壁(仕切り板)等に付着した細菌、ウィルス等を失活させ、その数を減少させることができる。
また、本発明のトイレブースシステムでは、局所換気装置により、空気を下から上の方向に流動させ、トイレブース内の空間に漂う細菌やウィルス等を扉、壁(仕切り板)及び床に付着させて失活させるとともに、トイレブース外に排気し、細菌、ウィルスの数を減少させることができる。
従って、本発明のトイレブースシステムは、介護設備、病院等の感染症が発生し易いトイレ等に最適である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のトイレブースシステムについて詳細に説明する。
本発明のトイレブースシステムは、開閉可能な扉、壁及び床からなるトイレブースを備えたトイレブースシステムであって、上記トイレブースは、該トイレブース内の空気を下から上の方向に流動させるための局所換気装置を備え、少なくとも上記トイレブースを構成する上記扉及び上記壁のいずれかに、光触媒が担持されていることを特徴とする。
【0026】
本発明のトイレブースシステムでは、トイレブースには、光触媒を機能させるための光源が設けられていてもよい。また、本発明のトイレブースシステムでは、トイレブースに天井が設けられていてもよい。
【0027】
本発明のトイレブースシステムにおいて、トイレブースは、壁として機能する仕切り板をさらに備えていてもよい。この場合、本発明のトイレブースシステムは、仕切り板で間仕切りされた複数のトイレブースから構成され、複数のトイレブースは、それぞれのトイレブース内の空気を下から上の方向に流動させるための局所換気装置を備える。そして、少なくとも扉、壁及び仕切り板のいずれかに光触媒が担持されていればよい。
【0028】
図1(a)は、本発明の第一の実施形態に係るトイレブースシステムを模式的に示す概略平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示したトイレブースシステムの概略断面図である。
【0029】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、トイレブースシステム10では、床15に設置された便器21とともに、扉12、仕切り板13(壁として機能する)及び壁14からなる複数のトイレブース11を備えており、さらに個々のトイレブース11の天井17には、局所換気装置16及び照明18が備えられている。また、床15、扉12、仕切り板13及び壁14には、光触媒24が担持されている。なお、天井17と扉12、仕切り板13との間には、隙間が存在する。
【0030】
このトイレブースシステム10において、天井17に設置された局所換気装置16を作動させると、上方に向かう気流19が発生し、水洗を使用することにより舞い上がった飛沫細菌やウィルス22が、床15、壁14、仕切り板13等と接触しながら、上方に移動する。床15、壁14、仕切り板13には、光触媒24が担持されているので、飛沫細菌やウィルス22が失活するとともに、飛沫細菌やウィルス22がトイレブース11外に排出され、トイレブース11内の細菌やウィルス22の数が大きく減少する。なお、局所換気装置16を作動させた際、上方に向かう気流19が発生し易いように、壁14、仕切り板13、扉12は、床15との間に隙間が形成されている必要がある。
【0031】
また、上述のように、トイレブース11には、光源である照明18が設置されており、この照明18により、光触媒24が活性化され、光触媒24に接触した細菌やウィルス22が失活する。
また、トイレブース11には、図示しないセンサが設けられており、人がトイレブース11内に入室したことを確認すると、局所排気装置16が作動する。また、照明18も、図示しないセンサにより、人がトイレブース11内に入室したことを確認すると、光触媒24が機能するように点灯する。
【0032】
図1(a)及び
図1(b)に示したトイレブースシステム10では、トイレブース11の天井17に、局所換気装置16が設けられているので、天井17にも、例えば、光触媒24を担持させ、天井17に付着した細菌、ウィルス22を失活させ、減少させてもよい。
なお、トイレブース11の仕切り板13とは、トイレを取り囲む間仕切りの役割を果たす建具であり、トイレブース用の扉12とは、トイレの出入口に開閉可能に設けられた建具である。なお、
図1(a)及び
図1(b)に示したトイレブースシステム10では、仕切り板13及び壁14は、天井17との間に隙間がある状態で設けられているが、仕切り板13及び壁14は、天井17との間に隙間が存在しない状態で設けられていてもよい。
【0033】
図1(a)及び
図1(b)に示したトイレブースシステム10では、床15、扉12、仕切り板13及び壁14の全部に光触媒24が担持されているが、本発明のトイレブースシステムでは、少なくとも扉及び壁(仕切り板)のいずれかに光触媒が担持されていればよい。
【0034】
本発明のトイレブースシステムにおいて、扉及び壁等に光触媒を担持する方法は、特に限定されるものではないが、下記する構成の光触媒が担持された化粧板が用いられていることが望ましい。
【0035】
図2は、本発明のトイレブースシステムを構成する化粧板の一実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【0036】
本発明のトイレブースシステムで用いる化粧板30は、基板(図示せず)と基板の表面上に積層されるメラミン樹脂等からなる表層樹脂層32を有し、セラミック粒子33が表層樹脂層32上に露出して配置され、光触媒24がセラミック粒子33の露出面上に担持された構造を有するものである。
【0037】
本発明のトイレブースシステムにおいて、化粧板を構成する表層樹脂層上に、セラミック粒子が露出して配置され、セラミック粒子の露出面上に光触媒が担持されていると、光触媒は表層樹脂層に直接接触しないので、光触媒による表層樹脂層の劣化を防ぐことができる。
また、光触媒がセラミック粒子の露出面上に担持されていると、光触媒の表層樹脂層中への埋没がなく、化粧板の表面上に露出されているので、抗菌性、抗ウィルス性等、光触媒としての本来の機能を発揮することができ、その効果を長期間維持することができる。
【0038】
本発明のトイレブースシステムで用いる化粧板に使用する基板は、特に限定されるものではなく、一般的に化粧板に使用されるコア紙やマグネシアセメント等の不燃基材等を使用することができる。コア紙は単独でもよく複数枚のコア紙を積層した積層体としてもよい。コア紙の枚数は特に限定されないが、1〜20枚とすることができる。コア紙としては、例えば、水酸化アルミニウム抄造紙を使用することができる。コア紙には、フェノール樹脂を含浸させることができる。また、コア紙とマグネシアセメント不燃基材を積層させて基板とすることもできる。
【0039】
マグネシアセメント不燃基材は、単独で使用することにより、又は、コア紙の中心部に積層して配置させることにより基板を構成することができる。マグネシアセメント不燃基材は、酸化マグネシウム(MgO)と塩化マグネシウム(MgCl
2)を混合し、さらに骨材と水を加えて混練し、板状に成形することにより製造されるものである。骨材としては、ロックウール、グラスウール等の無機質繊維、ウッドチップ、パルプ等の有機質繊維を用いることができる。また、マグネシアセメント不燃基材の強度を高めるため、中間層として網目状等に形成されたガラス繊維層を設けることができる。
【0040】
複数又は単数のコア紙及び/又はマグネシアセメント不燃基材からなる基板表面上に表層樹脂層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、一般的な方法で行うことができる。例えば、基板の片面又は両面にメラミン樹脂含浸紙を積層し、熱圧成形する方法を用いることができる。上記方法を用いると、メラミン樹脂含浸紙のメラミン樹脂がコア紙に浸透し、そこで硬化反応が進行して、コア紙に対するメラミン樹脂含浸紙の接着力が発現する。
また、本発明のトイレブースシステムで用いる化粧板を構成する表層樹脂層に用いることができる樹脂としては、メラミン樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、グアナミン樹脂などが挙げられる。これらの中では、メラミン樹脂を用いることが望ましい。
【0041】
メラミン樹脂は、透光性などの光学的、視覚的特性を損なうことなく、寸法安定性や靭性を改善した樹脂である。メラミン樹脂としては、メラミン及びその誘導体をモノマーとする樹脂であれば公知のものを採用することができる。また、メラミン樹脂は、単一のモノマーからなる樹脂であってもよく、複数のモノマーからなる共重合体であってもよい。メラミンの誘導体としては、例えば、イミノ基やメチロール基、メトキシメチル基、ブトキシメチル基等のアルコキシメチル基などの官能基を有する誘導体が挙げられる。また、メチロール基を有するメラミン誘導体に低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物をモノマーとして用いることができる。モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロール基を有する誘導体(以下、「メチロール化メラミン」という。)を架橋剤としてメラミンと共重合させてなるメラミン樹脂を用いることができる。
【0042】
メラミン樹脂含浸紙は、パターン紙にメラミン樹脂を所定の含浸率で含浸させた後、加熱、乾燥させることにより作製される。メラミン樹脂をパターン紙に含浸させるには、溶媒として、例えば、ホルムアルデヒド水溶液を使用したメラミン樹脂含有溶液中にパターン紙を浸漬することにより行うことができる。また、メラミン樹脂含浸紙に曲げ加工性を付与するために、メラミン樹脂と共に可塑剤を含む溶液を含浸させることができる。可塑剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、アセトグアナミン、パラトルエンスルフォン酸アミド、尿素等を使用することができる。パターン紙としては、例えばチタン紙が用いられる。パターン紙の坪量は、パターン紙の厚みや重さを考慮して80〜150g/m
2とすることができる。加熱、乾燥の温度は、パターン紙にメラミン樹脂を強固に固着させるために100〜150℃に設定することができる。
【0043】
本発明のトイレブースシステムで用いる化粧板を構成するセラミック粒子としては、光触媒の等電点より高い等電点を有し、光触媒を担持することができる粒子であれば特に限定されないが、酸化アルミニウム含有粒子であることが望ましい。セラミック粒子としては、具体的には、アルミナ又はアルミン酸ストロンチウムのいずれかからなる粒子を用いることが望ましい。
【0044】
本発明のトイレブースシステムで用いる化粧板において、セラミック粒子の平均粒子径は0.1〜55μmであることが望ましく、0.5〜5μmであることがより望ましい。セラミック粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、セラミック粒子が表層樹脂層に埋まり易くなり、光触媒がセラミック粒子に担持されにくくなる傾向にあり、セラミック粒子の平均粒子径が55μmを超えると、セラミック粒子が脱落したり、表層樹脂層に凹凸が形成されたりするため、化粧板の外観及び意匠性に不具合が生じる傾向にある。セラミック粒子の平均粒子径が0.5〜5μmであると、光触媒としての機能性が発揮されて、化粧板の外観及び意匠性においても問題とならない。
【0045】
本発明のトイレブースシステムで用いる化粧板において、上記セラミック粒子は、上記表層樹脂層表面に対して5〜30%の面積率で露出して存在することが望ましい。
【0046】
セラミック粒子が、表層樹脂層表面に対して5%以上の面積率で露出していると、光触媒を充分に担持させることができるため、細菌やウィルスを減少させる作用を充分に発揮させることができる。また、セラミック粒子が、表層樹脂層表面に対して30%以下の面積率で露出していると、光触媒を担持するセラミック粒子が表層樹脂層に強固に接合され脱落しにくくなるため、細菌やウィルスを減少させる作用を充分に持続させることができる。
図3は、本発明の化粧板を構成するセラミック粒子の露出部の面積率の算定の基礎となる面積部を示す説明図である。
本発明の化粧板における面積率とは、
図3における表層樹脂層32全体の表面積Aに対する、その上にセラミック粒子33が露出して存在する表層樹脂層32の合計の表面積Bの割合を意味する。セラミック粒子33が、上記表層樹脂層表面に対して面積率で5%未満しか露出しないと、光触媒の機能性が十分に発揮できない傾向にある。
【0047】
本発明のトイレブースシステムで用いる光触媒の具体例としては、例えば、酸化チタンに白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族、鉄、銅などを担持させたものなどが挙げられる。
【0048】
本発明のトイレブースシステムで用いる化粧板において、光触媒は、可視光応答型光触媒であることが望ましく、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、鉄担持チタニア触媒、窒素ドープチタニア触媒、硫黄ドープチタニア触媒、炭素ドープチタニア触媒、又は、酸化タングステンであることがより望ましく、銅担持チタニア触媒であることがさらに望ましい。銅担持チタニア触媒としては、例えば、特開2006−232729号公報に記載されたCuO/TiO
2(重量%比)=1.0〜3.5の範囲で銅を含有するアナターゼ型酸化チタン、特開2012−210557号公報に記載された亜酸化銅(酸化銅(I):Cu
2O)と酸化チタンとが複合化した光触媒組成物、特開2013−166705号公報に記載された一価銅化合物及び二価銅化合物を含む混合物を表面に担持した酸化チタン、並びに、国際公開第2013/094573号に記載された結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有する銅及びチタン含有組成物などが挙げられる。
【0049】
本発明のトイレブースシステムで用いる化粧板において、表層樹脂層は、シリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有していてもよい。シリコーン樹脂としては、例えば、シリコーンレジン、変性シリコーンオイル等を用いることができる。変性シリコーンオイルとしては、分子内に1個以上の官能基を有するシリコーンオイルを用いることができる。官能基を導入する位置は特に限定されず、ポリシロキサン主鎖の片末端、両末端あるいは側鎖のいずれの位置に導入してもよい。また、官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、メトキシ基、ヒドラジノ基、エポキシ基、メタクリル基、カルボキシル基、カルビノール基等を導入することができる。
【0050】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基といった官能基を持ったものが望ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、ジアリルジメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
また、本発明のトイレブースシステムで用いる化粧板において、セラミック粒子の表層に無機ゾルの乾燥体又は接着剤の硬化体を有していることが望ましい。光触媒を無機ゾルの乾燥体又は接着剤の硬化体を介して光触媒を固定化することにより、光触媒をより強固に固定化することができるからである。無機ゾルとしては、シリカゾル、アルミナゾル、シリカ−アルミナゾル、チタニアゾル等を用いることができるが、シリカゾルを用いることが望ましい。接着剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等からなる接着剤を用いることでき、その中でもシリコーン樹脂からなる接着剤を用いることが望ましい。シリカゾル又はシリコーン樹脂からなる接着剤を用いることにより、光触媒とセラミック粒子との密着性を向上させることができ、光触媒の脱落が抑制され、機能性が維持される。
【0052】
本発明のトイレブースシステムで用いられる局所換気装置は、特に限定されるものではなく、従来より用いられている換気装置でよい。局所換気装置は、人の退出後も所定時間稼動させることが望ましい。例えば、病院のトイレでは換気回数が1時間あたり10回という基準があり、局所換気装置の換気能力もその基準を満たすものであれば使用できる。
【0053】
また、本発明のトイレブースシステムで用いられる照明は、特に限定されるものではなく、従来より用いられている照明でよいが、LEDが望ましい。上記照明は、化粧板に担持された光触媒を充分に活性化できる程度の照度を有することが望ましく、100〜500ルクスの照度を有するものが好ましい。また、円形拡散角度は、50〜80°が好ましい。また、上述したように、照明は、人感センサにより、人がトイレに入室すると点灯する。一方、人がいないときには、光触媒が機能するために必要最小限度まで減光され、ウィルスが99.9%失活するまで時間が経過すると消灯するように構成されていてもよい。この場合、ウィルスが99.9%失活するまで時間については、予め実験を行って決定しておく必要がある。なお、人がトイレから退出すると同時に消灯してもよい。
【0054】
本発明のトイレブースシステムでは、少なくとも扉及び壁(仕切り板)のいずれかに、化粧板が用いられることが望ましい。そこで、次に、上記化粧板の製造方法について説明する。
上記化粧板の製造方法においては、最初に、複数又は単数のコア紙及び/又はマグネシアセメント不燃基材等からなる基板表面上に表層樹脂層を形成する。上記基板やその製造方法、上記表層樹脂層については、本発明のトイレブースシステムの説明において説明したので、ここでは省略する。
【0055】
本発明のトイレブースシステムにおいても説明したが、基板表面上に表層樹脂層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、一般的な方法で行うことができる。具体的な表層樹脂層の形成方法としては、例えば、コア紙の積層体からなる基板の片面又は両面にメラミン樹脂等の樹脂含浸紙を積層する積層工程と、メラミン樹脂等の樹脂含浸紙が積層された基板を熱圧成形する熱圧成形工程を含む方法が挙げられる。上記方法を用いると、メラミン樹脂含浸紙のメラミン樹脂がコア紙に浸透し、そこで硬化反応が進行して、コア紙に対するメラミン樹脂含浸紙の接着力が発現する。
【0056】
熱圧成形する際の加熱条件としては、化粧板の温度を125〜150℃とすることができ、加圧条件としては、1.96〜9.80MPa(20〜100kg/cm
2)とすることができる。温度が125℃未満の場合又は圧力が1.96MPa未満の場合には、基板に対する樹脂含浸紙の密着性が不足し、剥離が発生しやすくなる。一方、温度が150℃を超える場合又は圧力が9.80MPaを超える場合には、亀裂が発生するおそれがある。
【0057】
基板上に表層樹脂層を有する表層樹脂層表面に、セラミック粒子を固定する方法としては、例えば、セラミック粒子を含むスプレー液を表層樹脂層表面に吹き付け、乾燥後、熱圧着する方法をとることができる。上記方法により、表層樹脂層の表面上にセラミック粒子を露出して固定させることができる。
【0058】
上記工程の後、セラミック粒子が配置された基板を、光触媒を含む溶液中に浸漬することにより、光触媒をセラミック粒子の露出面上に担持させることができる。光触媒を含む溶液を、セラミック粒子が配置された基板上に塗布することにより、光触媒をセラミック粒子の露出面上に担持させてもよい。
【0059】
上記化粧板の製造方法においては、セラミック粒子を表層樹脂層表面に熱圧着する際、セラミック粒子吹き付け面と熱圧着プレス面との間にポリエチレンテレフタレート(PET)からなる離形クッション材を介在させて行うことができる。これによって、セラミック粒子が表層樹脂層内に埋没するのを防止することができ、表層樹脂層の表面上に露出して固定することができる。
【0060】
上記化粧板の他の製造方法としては、転写フィルムにセラミック粒子を含むスプレー液を吹き付け、次いで、表層樹脂層の表面に、転写フィルムのセラミック粒子付着面を対向させて、セラミック粒子を熱転写する方法が挙げられる。
【0061】
表層樹脂層にシリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有させる際には、メラミン樹脂溶液中に、シリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含ませることによって、表層樹脂層にシリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含浸する方法を用いることができる。
【0062】
表層樹脂層にシリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有させることで、セラミック粒子を埋没させずに固定化させることができ、表層樹脂層に光触媒が付着しにくくなる効果がある。具体的には、工程中に過剰となった光触媒が表層樹脂層に付着しても、洗浄工程後に除去しやすいということである。さらに、細菌やウィルスなどを含む汚染水が親水性のセラミック粒子や光触媒に引き寄せられやすくなり、機能性が発現しやすくなる。特に、表層樹脂層にメラミン樹脂を用いた場合には、上記の作用、効果を得やすい。
【0063】
さらに、本発明の化粧板で用いる化粧板の製造方法においては、セラミック粒子の表層に無機ゾル又は接着剤を付着させることが望ましい。光触媒の固定化を補強することができるからである。無機ゾルとしてはシリカゾル、アルミナゾル、シリカ−アルミナゾル、チタニアゾル等を用いることができ、シリカゾルを用いることが望ましい。接着剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等からなる接着剤を用いることでき、その中でもシリコーン樹脂からなる接着剤を用いることが望ましい。
【0064】
上記化粧板が上記表層樹脂層上に露出して配置されるセラミック粒子を有し、上記光触媒は、上記セラミック粒子の露出面上に担持されていると、セラミック粒子は、表層樹脂層に直接接触しない。このため、光触媒による表層樹脂層の劣化を防ぐことができ、表層樹脂層の変色や表層樹脂層の劣化等に起因する光触媒の脱落を防止することができる。また、光触媒が上記セラミック粒子の露出面上に担持されていると、抗菌性、抗ウィルス性等、光触媒としての本来の機能を発揮することができ、清掃を行っても光触媒の脱落がないので、その効果を長期間維持することができる。
【0065】
本発明のトイレブースシステムでは、上記のようにして製造された化粧板を扉及び壁(仕切り板)のいずれかに用いることにより、扉、壁等を構成するメラミン樹脂等の表層樹脂層の劣化を防ぐことができ、上記扉、壁等に付着した細菌、ウィルス等の数を減少させることができ、上記局所換気装置によりトイレブース内の空間に漂う細細菌やウィルス等を減少させることができる。床等に光触媒を担持する場合には、光触媒を含有する樹脂等を床に塗布する方法をとることができる。
【0066】
図4は、本発明の第二の実施形態に係るトイレブースシステムを模式的に示す概略断面図である。
【0067】
図4に示すように、本発明の第二の実施形態に係るトイレブースシステム40でも、
図1(a)及び
図1(b)に示す第一の実施形態に係るトイレブースシステム10と同様、床45に設置された便器51とともに、扉42、仕切り板43(壁として機能する)及び壁44からなる複数のトイレブース41を備えており、さらに個々のトイレブース41の天井47には、局所換気装置46及び照明48が備えられている。また、床45、扉42、仕切り板43及び壁44には、光触媒24が担持されている。なお、
図1(a)及び
図1(b)に示す第一の実施形態に係るトイレブースシステム10と異なるのは、天井47と扉42、仕切り板43との間には、隙間が存在せず、気密が保てるように構成されている点である。
【0068】
このため、局所換気装置46を作動させると、天井47の隙間から空気が入り込むことがなく、確実にトイレブース41で上方に向かう気流19が発生し、トイレブース41内の飛沫細菌やウィルス22が、床45、壁44、仕切り板43等と接触しながら、上方に移動する。床45、壁44、仕切り板43には、光触媒24が担持されているので、飛沫細菌やウィルス22が失活するとともに、飛沫細菌やウィルス22がトイレブース41外に排出され、トイレブース41内の細菌やウィルス22の数が大きく減少する。また、天井47と扉42、仕切り板43との間には、隙間が存在せず、気密が保てるように構成されているので、飛沫細菌やウィルス22が、床45、壁44、仕切り板43等とより接触し易くなり、より短時間で細菌やウィルスの失活させることができる。なお、局所換気装置46を作動させた際、上方に向かう気流19が発生し易いように、壁44、仕切り板43、扉42には、床45との間に隙間があるか、トイレブース41外の空気を取り入れるための吸気孔53が設けられている。
【0069】
また、上述のように、トイレブース41には、光源である照明48が設置されており、この照明48により、光触媒24が活性化され、光触媒24に接触した細菌やウィルス22が失活する。
また、トイレブース41には、
図1(a)及び
図1(b)に示す第一の実施形態に係るトイレブースシステム10と同様、図示しないセンサが設けられており、人がトイレブース41内に入室したことを確認すると、局所排気装置46が作動する。また、照明48も、図示しないセンサにより、人がトイレブース41内に入室したことを確認すると、光触媒24が機能するように点灯する。
なお、前述のように、センサにより、人がトイレブース41から退出したことを確認すると、光が必要最小限度まで減光され、ウィルスが99.9%失活する時間が経過すると消灯するように構成されている。
【0070】
本発明の第二の実施形態に係るトイレブースシステムにおいて、該トイレブースシステムを構成する扉、壁(仕切り板)、床、局所換気装置及び照明等は、第一の実施形態に係るトイレブースシステムの場合と同様に構成されている。また、上記トイレブースシステムに用いられる化粧板も、基板と、上記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、上記表層樹脂層上に存在する光触媒とからなり、基体、表層樹脂層及び光触媒も、第一の実施形態に係るトイレブースシステムの場合と同様に構成されているので、その詳しい説明は、省略することとする。