特許第6703400号(P6703400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6703400HPV誘発の侵食癌および高度前駆病変の分子診断マーカーPRDM14およびFAM19A4
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703400
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】HPV誘発の侵食癌および高度前駆病変の分子診断マーカーPRDM14およびFAM19A4
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20200525BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20200525BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20200525BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20200525BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20200525BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20200525BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C12Q1/68
   C12Q1/686 Z
   C12Q1/6886 Z
   C12N15/12ZNA
   C12N15/113 Z
   C12Q1/34
   G01N33/50 P
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-536738(P2015-536738)
(86)(22)【出願日】2013年10月14日
(65)【公表番号】特表2015-532108(P2015-532108A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】NL2013050729
(87)【国際公開番号】WO2014058321
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年9月30日
(31)【優先権主張番号】12188377.1
(32)【優先日】2012年10月12日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514064877
【氏名又は名称】セルフ−スクリーン ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】SELF−SCREEN B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メイエル,クリストフォルス・ヨハネス・ランベルトゥス・マリア
(72)【発明者】
【氏名】スニデルス,ペトルス・ヨーゼフス、フェルディナンドゥス
(72)【発明者】
【氏名】ステーンベルヘン,レンスケ・ダニエラ・マリア
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 Wilting SM et al,Methylation-mediated silencing and tumor suppressive function of hsa-miR-124 in cervical cancer,Molecular Cancer,2010年,9:167
【文献】 Teschendorff AE et al,Epigenetic variability in cells of normal cytology is associated with the risk of future morphological transformation,Genome Medicine,2012年,4:24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/00−3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HPV誘発の高度子宮頸部前癌病変およびHPV誘発の侵食子宮頸部癌の改善された検出方法であって、
前記方法は、子宮頸部細胞におけるFAM19A4遺伝子のプロモーターのメチル化およびhsa−miR124−2のプロモーターのメチル化の検出を含み、
前記FAM19A4遺伝子のプロモーターのメチル化およびhsa−miR124−2のプロモーターのメチル化は、HPV誘発の高度子宮頸部前癌病変およびHPV誘発の侵食子宮頸部癌の有無を示し、
ここにおいて、メチル化されたDNAの測定量が正常対照平均比率などの所定のカットオフ値を超えた場合に陽性と判断される、方法。
【請求項2】
前記HPV誘発の侵食子宮頸部癌は、ハイリスク型HPV誘発の侵食子宮頸部癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
FAM19A4遺伝子のプロモーターのメチル化およびhsa−miR124−2のプロモーターのメチル化は、進行CIN3病変の有無を示す、請求項1または2に記載の前記方法。
【請求項4】
前記FAM19A4遺伝子のプロモーターのメチル化は、配列番号9におけるCpGに富む配列から検出される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記FAM19A4遺伝子のプロモーターのメチル化は、同等な正常細胞と比較して、被検細胞におけるFAM19A4のCpGに富むプロモーターの増加したメチル化である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
メチル化の検出において、BssHII、MspI、NotIおよびHpaIIからなる群から選択されるメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼが用いられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
メチル化の検出において、DNAの亜硫酸水素塩修飾に基づくメチル化特異的PCRが行われ、続いてCpGに富む配列を標的にする特異的PCR反応が行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
配列番号9で表される核酸配列FAM19A4遺伝子に結合する核酸プローブまたはプライマーが使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記核酸プローブまたはプライマーは、検出可能な標識を有する、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、癌の予防および医療診断の分野に関連し、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)により誘発された侵食子宮頸部癌および子宮頸部前癌病変のような侵食癌および高度前駆病変の分子診断マーカーに関する。特に、本発明は、hrHPV誘発の侵襲性前癌病変およびhrHPV誘発の侵食癌のマーカーとして、PRDM14のゲノム配列および調節配列とFAM19A4のゲノム配列および調節配列との使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
子宮頸部癌は、世界中の女性において、最もよく発生する癌の第3位であり、毎年約25万人の癌死亡者を招く原因である。
【0003】
子宮頸部扁平上皮癌の進行は、前癌病変により特徴付けられる。前癌病変は、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)とも称され、それぞれ軽度の形成異常(CIN1)、中度の形成異常(CIN2)および重度の形成異常/上皮内癌(CIN3)の1〜3に分級される。また、CIN1は、低度扁平上皮内病変(LSIL)と呼ばれ、CIN2およびCIN3はともに、高度扁平上皮内病変(HSIL)と呼ばれている。子宮頸腺癌の場合、上皮内腺癌(ACIS)は、公認された前駆病変である。原則として、これらの前癌病変は、可逆的である。しかしながら、病変がより深刻になれば、自然退縮の可能性がより低くなる。子宮頸部癌は、その前癌段階が剥離細胞診により検出することができ、必要に応じて、わずかな副作用で比較的容易に治療できるため、予防できると考えられる。子宮頸部検診は、高度な前癌であるが治療可能な前癌病変(すなわち、CIN2、CIN3および上皮内腺癌)を早期診断することを目的とし、侵食子宮頸部癌による死亡率を減少する。子宮頸部癌の発症を予防するために、一般的な医療行為は、形態学的に確認されたCIN2、CIN3および上皮内腺癌を患うすべての女性に対する治療を含む。
【0004】
過去10年間において、子宮頸部発癌が高危険性のヒト乳頭腫ウイルス(hrHPV)の感染により誘発されることは、確証された。それぞれp53およびRb腫瘍抑制経路を妨害するウイルス発癌遺伝子E6およびE7の発現が腫瘍形成の発症および悪性表現型の維持の両方に必須であることは、証明された。したがって、hrHPVの検出は、魅力的な一次検診ツールとして現れた。しかしながら、hrHPV感染細胞から侵食癌細胞に進行するためには、発癌の多段階に一致して、宿主細胞ゲノムにおける追加的改変が必要である。高危険性のHPVに感染された女性のうち、わずか一部は、高度子宮頸部前癌病変(CIN2/3)に進行し、治療しない場合に子宮頸部癌に進行する。子宮頸部前癌病変を患うほとんどの女性に、病変が自然に退縮する。集団検診に参加した女性のうち、約5〜6%のhrHPV検査が陽性である。そのうち、最大20%(参加した女性の1%)がCIN2/3以上の病変をもつ。したがって、hrHPV検査陽性の女性をCIN2/3および上皮内腺癌以上の病変危険性に層別化することを可能にする子宮頸部癌検査にマーカーを適用しなければ、hrHPV検査による一次検診は、女性の間に、多くの冗長なフォローアップ手順および不必要な不安を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
主な課題は、HPV検査陽性の女性の百分率を臨床的に意味のある病変をもつ女性の百分率に減少することである。1つの方法は、hrHPV陽性の女性に対し、細胞診を二次検査(いわゆるトリアージ)として行うことである。細胞診を行っても、hrHPV陽性の女性のうち、細胞診が正常である女性は、まだ多く(集団検診を受ける女性の3.5%)残される。そのうちの10%は、CIN3以上の病変をもっているまた患っている。また、細胞診は、自宅で自己採取した子宮頸部膣頸の標本に適用できない。その理由は、自宅で自己サンプリングした頸膣標本が子宮頸部の細胞学的状態を代表するものではないからである。別の方法は、HPV16/18の遺伝子型判定を使用することである。しかしながら、この方法は、より少なったにもかかわらず、非HPV16/18型と判定されたが、CIN2/3および上皮内腺癌以上の病変危険性をもつ女性がまだ残される。したがって、hrHPV陽性の女性を、CIN2/3以上の病変および上皮内腺癌をもつ人間と、もたない人間とに層別化する補足的なトリアージツールまたは代替的なトリアージツールが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
発明者らは、HPV誘発の高度前癌病変およびHPV誘発の侵食癌を検出するための方法を発見した。この方法は、細胞におけるPRDM14および/またはFAM19A4遺伝子の過剰メチル化の検出を含む。過剰メチル化は、HPV誘発の侵襲性前駆病変およびHPV誘発の侵食癌の有無を示す。好ましくは、このような方法において、HPV誘発の高度前癌病変またはHPV誘発の侵食癌は、高度子宮頸部前癌病変または侵食子宮頸部癌であり、より好ましくは、HPV誘発の高危険性の侵食癌である。
【0007】
本発明の好ましい実施形態において、過剰メチル化は、図1および図2に示されたCpGに富む配列から検出される。
【0008】
また、本発明は、上記に定義された方法に関する。この方法において、過剰メチル化は、同等な正常細胞と比較して、被検細胞におけるPRDM14および/またはFAM19A4のCpGに富むプロモーターおよび/またはゲノム配列の増加したメチル化である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、(過剰)メチル化の検出は、BssHII、MspI、NotIおよびHpaIIからなる群から選択されるメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼを用いて行われる。本発明の代替的な好ましい実施形態において、(過剰)メチル化の検出は、DNAの重亜硫酸塩水素塩修飾に基づくメチル化特異的PCR、続いてCpGに富む配列を標的にする特異的PCR反応を介して行われる。この方法において、好ましくは、図1または図2に示された核酸に結合する核酸プローブまたはプライマーが使用され、より好ましくは、核酸プローブまたはプライマーは、検出可能なランドマークを有する。
【0010】
本発明の別の実施形態において、核酸プローブは、a)苛酷な条件の下で、図1に記載の配列PRDM14または図2に記載の配列FAM19A4とハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列と、b)上記a)のポリヌクレオチドと少なくとも70%の同一性を有するポリヌクレオチドと、c)上記a)のポリヌクレオチドの相補的ポリヌクレオチドと、d)上記a)またはb)のヌクレオチドの少なくとも15個の塩基を含むポリヌクレオチドとからなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0011】
本発明の方法において、さらに好ましくは、PRDM14遺伝子およびFAM19A4遺伝子の両方のメチル化は、決定される。また、好ましくは、FAM19A4およびhsa−miR−124−2のメチル化は、合わせて検出される。
【0012】
また、本発明の一部は、HPV誘発の高度前癌病変またはHPV誘発の侵食癌を検出するための分子診断マーカーとして、PRDM14および/またはFAM19A414の使用に係る。好ましくは、このような使用において、マーカーのメチル化は、病変または癌の発生を予兆する。
【0013】
また、本発明は、HPV誘発の高度前癌病変またはHPV誘発の侵食癌を検出するための方法に使用される部品キットを含む。このキットは、PRDM14および/またはFAM19A4のメチル化を検出するための手段を備え、この手段は、図1のPRDM14ヌクレオチド配列および/または図2のFAM19A4ヌクレオチド配列に特異的なプローブおよび/またはプライマーを含む。このキットは、HPV感染を検出するための手段を備え、この手段は、HPVに特異的なプローブおよびプライマーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1-1】PRDM14の5′調節領域と、コード配列と、第1イントロン配列および転写された3′非コード配列のCpGに富む部分とを示す図である。転写の開始は、太字で示され、コード配列は、大文字で示される。CpGに富む配列をともに含む1000bpのプロモーター配列および第1イントロンは、小文字で示される。
図1-2】PRDM14の5′調節領域と、コード配列と、第1イントロン配列および転写された3′非コード配列のCpGに富む部分とを示す図である。転写の開始は、太字で示され、コード配列は、大文字で示される。CpGに富む配列をともに含む1000bpのプロモーター配列および第1イントロンは、小文字で示される。
図2-1】FAM19A4の5′調節領域と、コード配列と、第1イントロン配列および転写された3′非コード配列のCpGに富む部分とを示す図である。転写の開始は、太字で示され、コード配列は、大文字で示される。CpGに富む配列をともに含む1000bpのプロモーター配列および第1イントロンは、小文字で示される。
図2-2】FAM19A4の5′調節領域と、コード配列と、第1イントロン配列および転写された3′非コード配列のCpGに富む部分とを示す図である。転写の開始は、太字で示され、コード配列は、大文字で示される。CpGに富む配列をともに含む1000bpのプロモーター配列および第1イントロンは、小文字で示される。
図3】DNAメチル化阻害剤(DAC)を用いて処理することによってアップレギュレートすることができるSiHa細胞子宮頸部癌細胞におけるPRDM14のmRNA発現を示す図である。SiHa細胞子宮頸部癌細胞の処理は、メチル化阻害剤2′−デオキシ−5′アザシチジン(5′−azaまたはDAC)を用いて、0.2μΜおよび5μΜ濃度で行った。他の処理は、PBSおよびエタノール(EtOH)であった。すべての処理は、正副二通に行われた。対照は、ヒト参照RNAおよびRT無し対照(cDNA反応混合物に逆転写酵素を添加していない)である。
図4】SiHa細胞、CaSki細胞および93VU147T細胞におけるPRDM14の異所性発現の効果を示す図である。(A)空白ベクター細胞と比較して、形質転換してから24時間、48時間および72時間後、PRDM14による形質転換された細胞におけるGFP細胞の低下百分率。(B)アネキシンVおよびPIを用いて二重標識された細胞のフローサイトメトリー分析は、PRDM14発現細胞集団において、初期アポトーシス細胞(アネキシンV/PI)および後期アポトーシス細胞(アネキシンV/PI)の両方が増加していることを示している。
図5】定量的メチル化特異的PCRを用いて、子宮頸部組織標本において測定したPRDM14およびFAM19A4のレベルの散布図である。y軸は、メチル化されたDNAのレベルを示し、x軸は、各々の病期および組織型に分類されたサンプルを示している。PRDM14およびFAM19A4のメチル化レベルは、疾患段階とともに増加し、実質的に全てのSCCおよびAdCAにおいて検出される。疾患種類の間のメチル化レベルにおける有意差が示されている。
図6】hrHPV陽性頭頸部組織標本(HNSCC:頭頸部SCC)におけるPRDM14およびFAM19A4のメチル化レベルを示す図である。対照と比較して、メチル化レベルは、癌において有意に増加している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
「HPV誘発の侵食癌」という用語は、高危険性のHPVにより誘発され、周辺組織を侵食する癌を指す。このような癌は、たとえば子宮頸部、口腔、中咽頭、肛門、直腸、陰茎、外陰部、膣などの関連臓器におけるすべてのHPV誘発癌組織型、すなわち、扁平上皮癌、腺癌、腺扁平上皮癌および神経内分泌癌、特に頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、子宮頸部扁平上皮細胞癌および子宮頸腺癌を含む。
【0016】
「侵食子宮頸部癌」という用語は、周辺組織を侵食する子宮頸部癌を指す。このような癌は、すべての癌組織型、すなわち、扁平上皮癌、腺癌、腺扁平上皮癌および神経内分泌癌を含む。
【0017】
「前癌病変」および「前駆病変」という用語は、細胞が癌に進行する多段階のうち、癌に進行する可能性が非常に高い段階を指す。病理学者は、伝統的な形態学を用いて、患者個体において、このような病変が進行するまたは退行するかを予測することができない。本発明は、侵食癌または高度前駆病変を予測できる方法に関する。
【0018】
高度子宮頸部前癌病変」という用語は、細胞が子宮頸部癌に進行する多段階のうち、子宮頸部癌に進行する可能性が非常に高い段階を指す。「特異的にハイブリダイズすることができる」という表現は、1つの核酸配列が相補的核酸配列と特異的な塩基対を形成することによって、相補的核酸配列に結合し、核酸二重鎖を形成することができることを指す。
【0019】
「進行CIN3病変」という用語は、はるかに前からhrHPVにより感染され、著しく多いDNAコピー数変化をもたらした癌組織型のCIN3病変を指す。したがって、このCIN3病変というサブ種類は、癌になる危険性が高くなった高次病期を表す。
【0020】
「補足的配列」または「相補的配列」は、1つのヌクレオチド配列がWatson-Crick塩基対規則に従って、水素結合により別のヌクレオチド配列と二重鎖を形成することを意味する。たとえば、5′−AAGGCT−3′の相補的塩基配列は、3′−TTCCGA−5′である。
【0021】
「苛酷なハイブリッド形成条件」という用語は、ハイブリッド体の安定性を影響するハイブリッド形成条件、たとえば、温度、塩濃度、pH、ホルムアミド濃度などを意味する。これらの条件は、プライマーまたはプローブと標的核酸配列との特異的な結合を最大にし且つ非特異的な結合を最小にするように、実験的に最適化される。使用された用語は、プローブまたはプライマーが、他の配列よりも、より大きな検出可能なレベル(たとえば、バックグラウンドよりも少なくとも2倍)で標的配列とハイブリダイズする条件の言及を含む。苛酷な条件は、配列に依存しており、異なる環境において異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般に、苛酷な条件は、規定のイオン強度およびpHにおいて、特定配列の熱融点(T)よりも約5℃低くなるように選択される。このTは、(規定のイオン強度およびpHの下で)相補的標的配列の50%が完全にマッチしたプローブまたはプライマーとハイブリダイズする温度である。一般的に、苛酷な条件は、塩濃度がpH7.0〜8.3の下で、約1.0MのNaイオン濃度未満、典型的には約0.01〜1.0MのNaイオン濃度(または他の塩)であり、温度が短いプローブまたはプライマー(たとえば10〜50ヌクレオチド)の場合少なくとも約30℃、長いプローブまたはプライマー(たとえば50ヌクレオチドを超える)の場合少なくとも約60℃であるという条件である。また、苛酷な条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によって達成することができる。例示的な低い苛酷な条件または「苛酷さを低減した条件」は、37℃で30%のホルムアミド緩衝液、1MのNaClおよび1%のSDSの中でハイブリッドを形成し、40℃で2倍のSSC中で洗浄することを含む。例示的な高い苛酷な条件は、37℃で50%のホルムアミド、1MのNaClおよび1%SDSの中でハイブリッドを形成し、60℃で0.1倍のSSC中で洗浄することを含む。ハイブリッド形成の手順は、当技術分野で周知であり、たとえば、Ausubel et al, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc., 1994に記載されている。
【0022】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、リン結合(たとえば、ホスホジエステル、アルキルホスフェートまたはアリールホスフェート、ホスホロチオエート)または非リン結合(たとえば、ペプチド、スルファメートおよびその他のもの)によって結合された短配列のヌクレオチドモノマー(通常、6〜100ヌクレオチドを含む)を指す。オリゴヌクレオチドは、修飾された塩基(たとえば、5−メチルシトシン)と修飾された糖基(たとえば、2′−O−メチルリボシル、2′−O−メトキシエチルリボシル、2′−フルオロリボシル、および2′−アミノリボシルなど)とを有する修飾ヌクレオチドを含んでもよい。オリゴヌクレオチドは、円形状、分岐形状または直線形状を有する二本鎖DNAまたは一本鎖DNA若しくは二本鎖RNAまたは一本鎖RNAからなる天然存在の分子または合成分子であってもよく、必要に応じて安定な二次構造(たとえば、ステム−ループ構造またはループ−ステム−ループ構造)を形成することができるドメインを含んでもよい。
【0023】
本明細書に使用された「プライマー」という用語は、核酸鎖と相補的であるプライマー伸長産物の合成を誘発する適切な条件下で、すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼなどの重合剤の存在下かつ適切な温度およびpHで、DNAポリメラーゼをDNA合成の開始点として付着させることを可能にする増幅標的物にアニーリングすることができるオリゴヌクレオチドを指す。増幅時に最大の効率を得るために、(増幅される)プライマーは、好ましくは一本鎖である。好ましくは、このプライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。このプライマーは、重合剤の存在下で伸長産物の合成をプライミングするのに十分な長さを有しなければならない。プライマーの正確な長さは、温度およびプライマー源を含む多くの因子に依存するだろう。本明細書に使用された「一対の双方向性プライマー」は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅などのDNA増幅技術分野によく使用されたもののように、1つの順方向プライマーおよび1つの逆方向プライマーを指す。
【0024】
「プローブ」という用語は、標的の核酸配列分析物またはまたはそのcDNA誘発体に存在する相補的配列を認識し、その相補的配列と水素結合により二重鎖を形成する一本鎖オリゴヌクレオチド配列を指す。
【0025】
DNAメチル化は、高等生物において正常な発育に重要である生化学過程である。DNAメチル化は、シトシンのピリミジン環の5位にまたはアデニンのプリン環の6位Nにメチル基を追加することを含む。シトシンの5位のDNAメチル化は、遺伝子発現を低下させる特定の効果を有し、調査したすべての脊椎動物に見られている。成体の体細胞組織において、DNAメチル化は、一般的に、CpGジヌクレオチドの前後に発生する。
【0026】
ゲノム全域のDNAメチル化スクリーニングを使用することによって分かったのは、遺伝子コード化PRドメインジンクフィンガータンパク質14(PRDM14とも称される。遺伝子バンク受入番号:NM_024504.2)、配列類似性を有する遺伝子コード化ファミリ19(ケモカイン(C−Cモチーフ))、およびメンバA4(FAM19A4とも呼ばれる。遺伝子バンク受入番号:NM_001005527.2)が、ウイルス性発癌遺伝子(HPV16E6E7)による発現後、主要ケラチン合成細胞においてDNAメチル化の標的とされること、およびPRDM14およびFAM19A4プロモーターのメチル化がhrHPV誘発の発癌の重要因子であることである。よって、PRDM14およびFAM19A4のゲノム配列および調節配列は、侵食子宮頸部癌および高度前駆病変を診断する貴重なマーカーとなる。さらに、本発明は、非子宮頸部hrHPV関連の侵食癌および高度前駆病変を診断するのに好適である。
【0027】
子宮頸部癌は、殆ど例外なくヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の感染に関連している。ヒト乳頭腫ウイルスは、DNA配列における変異によって同定されたように、100種類を超えるウイルスの群を構成する。さまざまなHPVは、種々の皮膚疾患または粘膜疾患を引き起こす。HPVは、感染細胞において悪性変化を誘発する能力に基づき、低危険性種および高危険性種に広く分類される。1、2、4、6、11、13および32などの低危険性種のHPVは、主に、良性病変または尋常性疣贅に関連し、16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66および68などの高危険性種のHPVは、主に、前癌性上皮病変および悪性上皮病変に関連している。HPV−6およびHPV−11などの低危険性種のHPVによって引き起こされた疣贅に比べて、高危険性のHPVによって引き起こされた腫瘍は、通常平坦で、ほぼ無形である。現在分かったのは、高危険性種のHPVが子宮頸部侵食癌を引き起こすとともに、肛門性器部領域および/または頭頸部領域の他の箇所に侵食癌を引き起こすということである。したがって、本発明は、PRDM14および/またはFAM19A4に関連する侵食子宮頸部癌およびその前駆病変段階ではなく、HPV特に高危険性種のHPVによって誘発された他の侵食癌およびその前駆段階を検出するのに好適である。したがって、本発明は、任意のHPV誘発の高度前癌病変または侵食癌の危険性を評価するための方法を提供する。
【0028】
本発明の文脈に適したHPV誘発の前駆病変および侵食癌は、子宮頸部前癌病変および侵食子宮頸部癌ではなく、口腔、中咽頭、肛門、直腸、陰茎、外陰部、膣など他の組織においてHPV誘発の高危険性前駆病変および侵食癌を含む。
【0029】
被検細胞は、PRDM14および/またはFAM19A4に関連されたHPV誘発の侵襲性前駆病変またはHPV誘発の侵食癌の存在が検出される(前)癌細胞、増殖性子宮頸部細胞、または他の任意の細胞であってもよい。
【0030】
64kDaの核内たんぱく質をコード化するPRDM14遺伝子は、もともと、ヒト胚性幹細胞の維持に重要な調節因子として同定されており、自己再生および分化に関与している(Chiaら, Nature 2010, 468: 316-320)。PRDM14は、ヒトリンパ系腫瘍(Dettmanら, Oncogene 2011, 30: 2859-73)および乳癌(Nishikawaら, Cancer Res 2007, 67: 9649-57)において発癌性たんぱく質として機能すると記載されている。また、PRDM14プロモーターのメチル化は、ヒト乳癌から検出された(Nishikawaら, Cancer Res 2007, 67: 9649-57)。16kDaの分泌たんぱく質をコード化するFAM19A4遺伝子は、もともと、ヒトcDNAライブラリ(Strausbergら, PNAS, 2002, 99(26): 16899-903)の配列決定により同定された。この遺伝子は、小さな分泌たんぱく質をコード化する5つの高度な相同性を有する遺伝子から構成されたTAFAファミリの一員である。これらのたんぱく質は、固定位置にシステイン保存残基を含み、CCケモカインファミリの一員であるMIP−1αとは遠縁である。TAFAたんぱく質は、主に脳の特定の領域で発現され、免疫系細胞および神経細胞の調節因子として機能する脳特異的ケモカインまたはニューロカインとして機能する(Tom Tangら, Genomics 2004, 83(4): 727-34)と仮定されている。この遺伝子について、選択的にスプライシング転写物の変異体は、観察された。癌との関係は、まだ記載されていない。
【0031】
本発明者らは、PRDM14およびFAM19A4両方の遺伝子のプロモーターおよび第1イントロンなどのCpGに富む領域のメチル化が、扁平上皮癌組織型、腺扁平上皮癌組織型、腺癌組織型および神経内分泌癌組織型ならびにそれらの高度前駆病変の両方の子宮頸部癌においてよくある現象であることを実証した。インビトロ研究では、子宮頸部癌の進行に機能的に関与するPRDM14の不活性化、たとえば、HPV16を含む子宮頸癌細胞株SiHaおよびCaSkiの細胞におけるPRDM14の過剰発現は、アポトーシスを誘発することを明らかにした。このことは、PRDM14が子宮頸部癌において腫瘍抑制遺伝子として機能することを示しており、以前の記載によりこのたんぱく質がリンパ腫および乳癌細胞において発癌性機能を有するという事実(Dettmanら, Oncogene 2011, 30: 2859-73; Nishikawaら, Cancer Res 2007, 67:9649-57)を考慮すれば、非常に注目すべきである。FAM19A4の正確な機能は、まだ定義されていない。
【0032】
最も興味深いことに、本発明者らは、PRDM14およびFAM19A4プロモーター(およびイントロン配列)の過剰メチル化は、子宮頸部の掻き取りサンプルから検出することができ、この特徴を用いて、高度CIN病変または侵食癌の有無を予測することができることを示した。また、本発明者らは、PRDM14およびFAM19A4プロモーターのメチル化は、自己サンプリングによって収集した頸膣標本から検出することができ、潜在的な高度CIN病変または侵食子宮頸部癌の有無に関連していることを見出した。
【0033】
したがって、本発明は、HPV誘発の高度前癌病変およびHPV誘発の侵食癌を検出するための方法を提供する。この方法は、細胞におけるPRDM14および/またはFAM19A4遺伝子の過剰メチル化の検出を含む。過剰メチル化は、HPV誘発の侵襲性前駆病変およびHPV誘発の侵食癌の有無を示す。
【0034】
被検体の被検細胞は、HPVに関連された前駆病変または癌を検出する予定の子宮頸部細胞などの粘膜細胞サンプルからの細胞ならびに口腔、咽頭、陰茎、外陰部、肛門、直腸および他の組織からの細胞を含んでもよい。これらのサンプルのすべては、本発明の方法において、サンプルとして使用することができる。好ましくは、患者の細胞のサンプルは、被検細胞として子宮頸部細胞を含む。この子宮頸部細胞は、たとえば、組織学的サンプルまたは細胞学的サンプルとして提供されてもよい。細胞学的標本は、従来の子宮頸部塗抹標本および子宮頸部の薄片標本、ならびに自己サンプリングによって収集した頸膣標本または膣標本を含む。
【0035】
本発明の方法は、高危険性のHPVによって誘発され、PRDM14および/またはFAM19A4に関連した高度前癌病変および侵食癌の検出に特に好適である。HPV誘発の侵襲性高度前癌病変およびHPV誘発の侵食癌を検出する方法は、PRDM14および/またはFAM19A4プロモーターおよび第1イントロンの測定を含んでもよい。
【0036】
図1は、PRDM14遺伝子のCpGに富むプロモーター領域およびCpGに富む第1イントロン配列ならびにコード配列および転写された3′非コード配列を示している。
【0037】
図2は、FAM19A4遺伝子のCpGに富むプロモーター領域およびCpGに富む第1イントロン配列の一部ならびにコード配列および転写された3′非コード配列を示している。
【0038】
メチル化の検出は、DNAのような核酸上で行われる。使用される試薬は、典型的には、核酸(DNA)プローブまたは(PCR)プライマーまたは制限エンドヌクレアーゼであり、好ましくは、被検細胞DNA上にメチル基の有無を検出するためのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼである。
【0039】
被検細胞の成分は、上皮内から直接検出されてもよく、試薬と接触させる前に、当業者に公知の一般的な方法(たとえば、"Current Protocols in Molecular Biology", Ausubelら, 1995、4th edition, John Wiley and Sons; "A Laboratory Guide to RNA: Isolation, analysis and synthesis", Krieg (ed.), 1996, Wiley-Liss; "Molecular Cloning: A laboratory manual", J. Sambrook, E.F. Fritsch. 1989. Vol 3, 2nd edition, Cold Spring Harbour Laboratory Pressを参照)によって、他の細胞成分から単離されてもよい。
【0040】
本発明は、PRDM14が腫瘍抑制遺伝子として機能することおよびPRDM14転写レベルの低下がDNAメチル化の抑制によってアップレギュレートされ得ることを示しているため、PRDM14遺伝子が過剰メチル化されたか否かを直接決定することが望ましい。同様に、FAM19A4遺伝子が過剰メチル化されたか否かを直接決定することも望ましい。具体的には、主に遺伝子の5′調節領域に位置し、「CpG島」と呼ばれるシトシンに富む領域は、通常メチル化されない。「過剰メチル化」という用語は、PRDM14またはFAM19A4遺伝子配列の通常メチル化されていない位置に存在するシトシンのメチル化(たとえば、PRDM14またはFAM19A4プロモーター、第1エクソン配列および第1イントロン配列(各々図1および図2を参照))を含む。DNAメチル化は、科学的研究に現在使用されている以下のような分析手法によって、検出することができる。
【0041】
− メチル化特異的PCR法(MSP)。この手法は、DNAと重亜硫酸塩水素ナトリウムとの化学反応に基づき、CpGのジヌクレオチド内のメチル化されていないシトシンをウラシルまたはUpGに変換し、続いて従来のPCRを行う。しかしながら、この過程において、メチル化されたシトシンが変換されず、メチル化されたかまたはメチル化されていないメチル化状態を決定することを可能にするために、プライマーが目的のCpG部位に重なるように設計されている。
【0042】
− BS−Seqとも知られている全ゲノム重亜硫酸塩水素塩シークエンシング。この手法は、高スループットのゲノム全域のDNAメチル化解析である。この手法は、前述したゲノムDNAの重亜硫酸塩水素ナトリウム変換に基づき、続いて、次世代シークエンシングプラットフォームを用いて、変換されたDNAの配列を決定する。その後、得られた配列は、参照ゲノムに再整列され、非メチル化されていないシトシンをウラシルに変換することにより生じた不一致に基づき、CpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定する。
【0043】
− HELP分析。この手法は、メチル化されたCpGのDNA部位およびメチル化されていないCpGのDNA部位を認識して切断する制限酵素の分化能力に基づいている。
【0044】
− ChIPオンチップ分析。この手法は、商業的に調製された抗体がMeCP2のようなDNAメチル化に関連するたんぱく質と結合する能力に基づいている。
【0045】
− 制限ランドマークゲノム走査法。この手法は、制限酵素がメチル化されたCpG部位およびメチル化されていないCpG部位に対する認識の分化能力に基づいており、複雑であるため、現在めったに使われない。この手法は、内容的にHELP分析と類似する。
【0046】
− メチル化DNA免疫沈降法(MeDIP)。この手法は、クロマチン免疫沈降法に類似し、メチル化されたDNA断片を単離して、DNAマイクロアレイ(MeDIPチップ)またはDNAシークエンシング(MeDIP配列決定法)のようなDNA検出方法に入力するために使用される。
【0047】
− 重亜硫酸塩処理DNAのピロシーケンス。この手法は、通常は順方向プライマーであり、ビオチン化により逆方向プライマーになるプライマーを用いて、選択の遺伝子をPCRすることによって、単位複製配列(amplicon)を決定する方法である。その後、ピロシーケンス操作者は、DNAを変性し、ユーザによって与えられた配列に従って、一度に1つの塩基を混合物に添加することによって、サンプルを解析する。不一致がある場合、不一致が存在するDNAおよびその百分率を記録し、提示する。これによって、ユーザに各CpG島のメチル化百分率を提供する。
【0048】
− DNAのアデニンメチルトランスフェラーゼの活性を分析するための分子光分解手法。この手法は、制限酵素DpnIの特異度に依存して、蛍光体および消光剤により標識されたオリゴヌクレオチド内のGATC部位を完全にメチル化(アデニンメチル化)する。アデニンメチルトランスフェラーゼは、オリゴヌクレオチドをメチル化することによって、オリゴヌクレオチドをDpnIの基質に形成する。DpnIによるオリゴヌクレオチドの切断は、蛍光性を増加する。
【0049】
− メチル感受性サザンブロット法。この手法は、サザンブロット技術を用いて、制限消化を使用し、メチル化における遺伝子特異的な違いをプローブするが、HELPと類似している。この技術は、プローブの結合部位の近傍に局所的なメチル化を評価するために使用される。
【0050】
好ましくは、過剰メチル化は、PRDM14またはFAM19A4ポリヌクレオチド(遺伝子)の制限エンドヌクレアーゼ処理およびサザンブロット分析によって検出されることができる。CGを認識部位の一部として含み、Cがメチル化されると抑制される任意の制限エンドヌクレアーゼを利用することができる。エンドヌクレアーゼの例としては、単独でまたは組合わせで使用されるBssHII、MspI、NotIまたはHpaIIが挙げられる。他のメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、当業者に公知であろう。
【0051】
メチル化された配列を検査するための別の好ましい手段は、DNAの重亜硫酸塩水素塩修飾およびその後CpGに富む配列を標的とする特定のPCR反応に基づくメチル化特異的PCRである。
【0052】
本発明の目的を達成するために、PRDM14またはFAM19A4に特異的な核酸プローブを用いて、生物学的液体または組織におけるPRDM14またはFAM19A4ポリヌクレオチドの有無を(核酸プローブを用いて)検出することができる。PRDM14またはFAM19A4配列中の任意のコード配列領域および調節配列領域に基づくオリゴヌクレオチドプライマーは、たとえばPCR法によって、DNAを増幅するために有用である。
【0053】
PCRプライマー、核酸プローブまたは制限エンドヌクレアーゼを使用する場合に、(それぞれ図1および2に明記された)PRDM14またはFAM19A4配列の5′調節領域、第1イントロン配列およびコード配列は、解析される。
【0054】
検出可能な量のPRDM14またはFAM19A4ポリヌクレオチドを含有する任意標本を使用することができる。本発明の方法に従った検出用の好ましいサンプルは、(子宮頸部または膣)からの掻取り標本、頸膣の洗浄または掃除標本および/または(頸部)の生検標本などを含む。被検対象が任意の哺乳動物であってもよいが、好ましくは、被検対象がヒトである。
【0055】
疾患検出ための診断方法は、検査用のサンプルを提供する方法を含む。サンプルは、子宮頸部または他の組織からの細胞調製物を含む。好ましくは、このようなサンプルは、塗抹標本または他の細胞学的サンプルとして提供される。
【0056】
哺乳類、好ましくはヒトから得られた細胞サンプルまたは組織サンプルは、サンプルに含有された被検細胞の細胞DNAと、PRDM14またはFAM19A4を検出し且つ同等な正常細胞に比べてPRDM14またはFAM19A4遺伝子のメチル化における変化を検出する試薬との接触を可能にするために、事前に適切に処理される。個々の細胞の観察を可能にするために、サンプルを適切な支持体に載せることができる。周知の支持体材料の例は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートまたはポリウレタンを含み、サンプルの細胞接着および固定を改善するために、必要に応じて、これらの材料にポリ−L−リジンまたはシランからなる層を設ける。子宮頸部塗抹標本または生検標本は、たとえば、当業者に公知な方法によって、パパニコロー(Pap)検査または任意の適切な修飾のために用意されてもよく、試薬を標的成分に適切に接触させることを可能にする手順によって固定されてもよい。本発明の特定の実施形態において、細胞学的標本は、従来の塗抹標本、子宮頸部細胞の薄片標本、液体系の細胞学的サンプル、または当業者に知られている他の種類の標本として、提供される。保存が必要な場合に、通常の手順によって、緩衝ホルマリンを用いて固定を行い、その後パラフィンを用いて包埋を行うことにより、よく保存された組織の基礎構造を提供する。免疫組織化学染色または免疫蛍光染色を可能にするために、サンプル材料の抗原性を取り戻す必要またはマスクを解除する必要がある。ホルムアルデヒドにより架橋されたたんぱく質の抗原性を取り戻す方法の1つは、たんぱく質分解酵素を用いて、サンプルを処理することを含む。この方法は、サンプル材料の(部分)消化を引き起こし、生成された元のたんぱく質の断片が、抗体によってアクセスすることができる。
【0057】
本発明の方法の一実施形態において、同等の正常細胞に比べて、被検細胞におけるPRDM14および/またはFAM19A4プロモーターのメチル化の増加は、検出される。
【0058】
別の実施形態において、メチル化を増加したhsa−miR124−2配列と組合わせて、FAM19A4プロモーターおよびイントロン配列の増加したメチル化を測定する分析手法は、好まれる。その理由は、感度が増加されたのである。
【0059】
hsa−miR124の成熟配列(受入番号:MIMAT0000422)は、3つの異なるゲノム領域に位置する3つの未熟マイクロRNA配列個体、すなわち染色体8p23.1に位置するhsa−miR124−1(受入番号:MI0000443)、染色体8q12.3に位置するhsa−miR124−2(受入番号:MI0000444)、および染色体20ql2.33に位置するhsa−miR124−3(受入番号:MI0000445)によりコード化される(示された受入番号は、マンチェスター大学生命科学学部のmiRBase(www.mirbase.org)のmiRNAデータベースによるものである)。
【0060】
(自己採取した)頸管塗抹サンプルにおいてHPV誘発の高度前癌病変およびHPV誘発の侵食癌の存在を検出または予測する方法に、hsa−miR124過剰メチル化の分析手法を使用ことは、国際公開公報2013/039394およびWiltingら(Mol. Cancer 2010: 9, 167)により記載されている。
【0061】
本発明はまた、被検対象の被検細胞中のPRDM14および/またはFAM19A4に関連するHPV誘発の侵襲性前駆病変およびHPV誘発の侵食癌を検出する方法に使用され、特許請求の範囲により定義された部品キットを提供する。このようなキットは、好適には(子宮頸部)を掻き取るブラシまたはスパーテルと、収集媒体により充填され、被検細胞を収集する容器とを含むことができる。代替的には、頸膣洗浄によって子宮頸部細胞を収集するために、灌注注射器、使い捨てメス尿カテーテルおよび灌注流体を有する容器からなるサンプリング装置を含んでもよい。本発明に係るキットは、PRDM14および/またはFAM19A4プロモーターのメチル化を検出するためのプライマーおよびプローブを含むことができる。
【0062】
本発明による部品キットは、図1および/または図2のヌクレオチド配列とハイブリダイズできるメチル化感受性制限酵素、プローブまたはプライマーのような、PRDM14および/またはFAM19A4プロモーターのメチル化を検出するための手段を備える。当然なことに、分析手法がhsa−miR124−2のメチル化を検出する場合、この配列のメチル化を検出するためのプライマーおよびプローブを含んでもよい。
【0063】
本発明のキットのさらに別の代替的な実施形態において、PRDM14および/またはFAM19A4プロモーターのメチル化を検出するための手段は、HPV感染、好ましくは高危険性HPV感染を検出するための手段と組合わせられてもよい。当技術分野で知られているように、そのような手段は、HPVに特異的なプライマーまたはプローブ、HPV感染用のたんぱく質マーカーまたはHPV感染用の代用マーカーを含んでもよい。
【0064】
以下の非限定的な実施例を用いて、本発明を説明する。
実施例
【実施例1】
【0065】
実施例1:HPV誘発形質転換のメチル化ターゲットとしてのPRDM14およびFAM19A4の発見
インビトロのHPV誘発形質転換に関連するゲノム全域のDNAメチル化の変化(ウイルスの癌遺伝子の発現および後続の主要ケラチン合成細胞の不死化)に対する総合的分析は、メチル化特異のデジタル染色体分析(MSDK)(Huら, 2005)を用いて、行われた。MSDKは、メチル化感受性制限酵素(AscI)を用いるゲノムDNAの切断に依存する配列依存方法であるため、公平な総合的メチル化プロファイリングを可能にする。この方法において、ゲノムの特定の場所から由来した21bpの配列タグは、高性能配列解読装置により連結され、解析される。我々は、形質導入されていない主要包皮ケラチン生成細胞(継代5)のメチル化パターンをHPV16E6E7(継代7)が形質導入された初期継代対応物と比較することにより、HPV16のE6およびE7の発現から起因するゲノム全域のDNAメチル化の変化を決定した。さらに、形質転換において、不死性の獲得、使い捨て点と謂われる臨界点および現象に関連する変更されたメチル化は、HPV16E6E7が形質導入された不死性の誘発体(継代30)を含むことによって分析された。
【0066】
この手法によって、我々は、PRDM14およびFAM19A4をHPV誘発形質転換の新規メチル化ターゲットとして特定した。不死性の形質導入において、PRDM14およびFAM19A4のメチル化は、顕著であり、しかしながら初期継代細胞において、PRDM14のメチル化は、まれであった。
【0067】
PRDM14およびFAM19A4プロモーター領域のメチル化は、HPV形質転換された一連のケラチン合成細胞細胞の独立株に対する定量メチル化特異的PCR(qMSP)によって、確認された。qMSPに使用されたプライマーおよびプローブは、表1に列挙されている。PRDM14プロモーターのメチル化は、2つのHPV16(FK16A、FK16B)不死性ケラチン合成細胞細胞株および2つのHPV18(FK18A、FK18B)不死性ケラチン合成細胞細胞株において、検出された。また、高レベルのPRDM14メチル化は、3つのhrHPV陽性の子宮頸部癌細胞株(SiHa細胞、HeLa細胞およびCaSki細胞)およびHPV16陽性の頭頸部癌細胞株(93VU147T)において、検出された。HPV陰性の主要ケラチン合成細胞(HFK)の3つの分離株に対するPRDM14メチル化検査は、陰性であった(表2を参照)。
【0068】
メチル化阻害剤5−アザ−2−デオキシシチジン(DAC)を用いて、SiHa子宮頸部癌細胞に対する処理は、PRDM14のmRNA発現の上方調節をもたらした。このことは、PRDM14プロモーターのメチル化が子宮頸部癌細胞内の遺伝子発現を調節することを示している(図2)。
【0069】
PRDM14と同様に、FAM19A4プロモーターのメチル化は、2つのHPV16(FK16A、FK16B)不死性ケラチン合成細胞細胞株および2つのHPV18(FK18A、FK18B)不死性ケラチン合成細胞細胞株ならびに子宮頸部癌細胞株(SiHa細胞、HeLa細胞およびCaSki細胞)および頭頸部癌細胞株(93VU147T)において、検出された。後者は、最高レベルのFAM19A4メチル化を示す。HPV陰性の主要ケラチン合成細胞(HFK)の3つの分離株に対するFAM19A4メチル化検査は、陰性であった(表2を参照)。
【実施例2】
【0070】
実施例2:子宮頸部発癌におけるPRDM14の機能的役割
子宮頸部発癌におけるPRDM14の潜在的な機能的役割を決定するために、我々は、PRDM14発現ベクターまたは空白対照ベクター(GFP)を用いて、子宮頸癌細胞株SiHa細胞およびCaSki細胞を含むHPV16の細胞を形質転換した。SiHa細胞およびCaSki細胞のPRDM14形質転換体における異所PRDM14発現は、RT−PCRにより確認された。形質転換後、細胞アポトーシス誘導は、アネキシンVおよびヨウ化プロピジウム(PI)用に染色された細胞に対するFACS分析によって、測定された。空白対照ベクターの形質転換体および形質転換されていない親細胞と比較して、アポトーシスの強力な誘導は、PRDM14過剰発現の細胞において顕著であった(図4)。子宮頸部癌細胞におけるPRDM14の異所性発現によるアポトーシスの強力な誘導は、子宮頸部発癌における腫瘍抑制の役割を示唆する。子宮頸部癌細胞株の結果と同様に、PRDM14の異所性発現は、HPV16陽性頭頸部癌細胞株においても、アポトーシスを誘導した(図4)。したがって、これらのデータは、PRDM14がHPV陽性頭頸部癌において、腫瘍抑制の役割を有することを示唆している。ヒト胎児腎臓細胞(HEK)にPRDM14を導入しても、アポトーシスの誘導は観察されなかった。このことは、HPV陽性の癌細胞株に観察されたアポトーシスの誘導は、形質転換のために使用された構造物の非特異的効果から起因していないことを示している。
【実施例3】
【0071】
実施例3:高度CIN病変、子宮頸部扁平上皮癌、腺癌、腺癌および神経内分泌癌に共通であるPRDM14およびFAM19A4プロモーターのメチル化
次に、我々は、実施例1に説明した定量メチル化特異的PCR(qMSP)を用いて、子宮頸部組織標本におけるPRDM14およびFAM19A4プロモーターのメチル化を解析した。ハウスキーピング遺伝子β−アクチン(ACTB)は、すべてのDNA入力の測定基準として選択された。すべてのサンプルに対し、メチル化されたDNAの測定量をACTBの量で除して、所定のカットオフ値(たとえば、正常対照平均比率(主要な外れ値を除く)+2.58×標準偏差)を超える比率を有するサンプルは、陽性に分類された。
【0072】
我々は、PRDM14プロモーターのメチル化が、11%(2/18)の正常子宮頸部対照サンプル、33%(13/40)のCIN1病変、55%(23/42)のCIN3病変、および100%(42/42)の子宮頸部扁平上皮細胞癌(SCC)において検出可能であること(表3)を発見した。疾患の異なる段階で検出されたPRDM14のメチル化レベルは、図5に描画されている。
【0073】
子宮頸部扁平上皮細胞癌の次に、我々はまた、子宮頸腺癌におけるPRDM14プロモーターのメチル化を解析した。全国範囲の子宮頸部検診プログラムによれば、子宮頸腺癌の発生率が国中で同一のレベルに止まりまたは増加しているため、子宮頸部癌の20%を占める腺癌は、特に重視されている。このことは、子宮頸腺癌および子宮頸腺前駆病変、すなわち上皮内腺癌(ACIS)は、細胞学に基づく検診でしばしば見逃されることを示している。子宮頸部扁平上皮細胞癌と子宮頸腺癌との間の遺伝学および後成学の比較研究に基づいて、両方の腫瘍の組織型は、独特な発癌性経路によって発症することが分かった(Dongら, 2001, Kangら, 2005, Wiltingら, 2006, Henkenら, 2007)。その結果、子宮頸部扁平上皮癌を検出可能な殆どのバイオマーカーは、必ずしも子宮頸腺癌を検出できるとは限らない。
【0074】
CADM1、CDH1、DAPK1およびSOX17のようなメチル化マーカーは、扁平上皮癌に対してより特異的である一方、RASSF1A、APC、DKK3およびSFRP2のようなマーカーは、腺癌において圧倒的にメチル化される(Overmeerら, 2008, Kangら, 2005, Dongら, 2001, van der Meideら, 2011)。
【0075】
興味深いことに、殆どの公知マーカーとは対照的に、PRDM14プロモーターのメチル化は、例外であり得る。PRDM14プロモーターのメチル化は、扁平上皮癌と同様の頻度で子宮頸腺癌から検出される。すなわち、97%(30/31)の腺癌は、PRDM14プロモーターのメチル化を示し、57%(12/21)の上皮内腺癌検査は、PRDM14メチル化が陽性であった(図5、表3)。同様の結果は、子宮頸腺癌および神経内分泌癌からも得られている。
【0076】
したがって、PRDM14プロモーターのメチル化は、すべての子宮頸部癌組織型の共通メチル化マーカーであると考えられる。
【0077】
FAM19A4プロモーターのメチル化に対する分析は、19%(3/16)の正常子宮頸部対照サンプル、12%(3/26)のCIN1病変、43%(18/42)のCIN3病変、100%(42/42)の子宮頸部扁平上皮細胞癌(SCC)、52%(11/21)の上皮内腺癌(ACIS)および92%(24/26)の腺癌(AdCA)において、メチル化が陽性であること(表3)を解明した。疾患の異なる段階で検出されたFAM19A4のメチル化レベルは、図5に描画されている。したがって、FAM19A4プロモーターのメチル化は、すべての子宮頸部癌組織型の共通メチル化マーカーである。
【実施例4】
【0078】
実施例4:hrHPV陽性の子宮頸部掻き取りサンプルにおけるPRDM14およびFAM19A4プロモーターのメチル化の検出
集団検診に参加した女性の症例対照設計を用いて、我々は、最大CIN1の腫瘍と診断されたhrHPV陽性の女性(すなわち、対照)に対して、CIN2以上腫瘍(2級の腫瘍を含む)と診断されたhrHPV陽性の女性(すなわち、症例)の子宮頸部掻き取りサンプルを研究した。これらの女性からの子宮頸部掻き取りサンプルは、核酸をよく保存する保存培地で収集した。
【0079】
PRDM14のメチル化は、23%(8/35)の正常な細胞診を有するhrHPV陽性対照女性および74%(17/23)のCIN2以上の女性から検出された。FAM19A4のメチル化は、3%(1/35)の正常な細胞診を有するhrHPV陽性対照女性およびで52%(12/23)のCIN2以上の女性から検出された。前向きな人口スクリーニング検査POBASCAM(Rijkaartら、ランセット・オンコロジー2012)に収集されたより大きな200例の連続的hrHPV陽性子宮頸部掻き取りサンプルに対し、CIN>の女性の正常な細胞診と対照女性、その後の検証解析は、FAM19Aが特異度を50%まで引き上げる分析閾値でCIN3を患う女性を80%超える百分率で検出することを解明した。70%の特異度に対応する閾値で、CIN3を患う女性を70%で検出した。
【0080】
これらのデータは、PRDM14およびFAM19A4両方のメチル化解析が、hrHPV陽性子宮頸部掻き取りサンプルに潜在する子宮頸部疾患(CIN2+)の検出を可能にし、したがって、一次HPV検査による子宮頸部検診に有望なトリアージマーカーを提供できることを示している。
【実施例5】
【0081】
実施例5:短期HPV感染および長期HPV感染に関連したCIN3を患う女性の子宮頸部掻き取りサンプルにおけるFAM19A4のメチル化解析
過去の研究において、我々は、DNAコピー数の変化に関して、短期(<5年)持続HPV感染によるCIN3病変を患う女性と長期(≧5年)持続HPV感染によるCIN3病変を患う女性とを比較した(Bierkensら, Int J Cancer 2012: 131(4):E579-85)。hrHPV感染の持続期間は、CIN3病変をそれぞれ低次病期および高次病期に割り当てることのできる病変時期の代用物としての役割を果たす。長期持続hrHPV感染によるCIN3病変において著しく多いDNAコピー数の変化が検出されたということは、この種類のCIN3病変が癌になる危険性が高くなった高次病期、いわゆる進行CIN3病変を表すという仮説を実証した。
【0082】
FAM19A4メチル化解析がこれらの進行CIN3病変を検出できるかどうかを判断するために、我々は、短期持続hrHPV感染によるCIN3を患う19人の女性および長期持続hrHPV感染によるCIN3を患う29人の女性からの子宮頸部掻き取りサンプルを分析した。最も興味深いことに、短期hrHPV感染に関連したCIN3病変、いわゆる早期CIN3病変を患う女性の掻き取りサンプルの42%(8/19)に対し、(長期持続hrHPV感染による)進行CIN3病変を患う女性からのすべての掻き取りサンプル(29/29、100%)は、FAM19A4メチル化によって検出された。メチル化陽性の検査結果は、特異度を70%まで引き上げる分析閾値の設定に基づいたものであった。進行病変を患う女性においてこの非常に高い発症率は、FAM19A4メチル化の検査による検出された進行CIN3病変を患うすべての女性には膣鏡診の即時紹介が必要であることを示唆している。
【実施例6】
【0083】
実施例6:癌患者の子宮頸部掻き取りサンプルにおけるFAM19A4プロモーターのメチル化
子宮頸部癌の患者からの合計60例の子宮頸部掻き取りサンプルに対し、FAM19A4メチル化の分析を行った。これらのサンプルは、10例の腺癌、2例の上皮内腺癌、2例の腺癌、43例の扁平上皮癌および3例の未分化癌を含む。1例の腺癌を除き、すべての癌は、FAM19A4メチル化の検査(特異度70%)が陽性であった。子宮頸部癌患者の掻き取りサンプルに加えて、子宮内膜癌の女性からの掻き取りサンプルのサブセットは、FAM19A4メチル化が陽性であることが分かった。最も興味深いことに、すべての癌患者からの掻き取りサンプルに対し、FAM19A4およびhsa−miR124−2の組合わせのメチル化検査が陽性であることを判明した(Wiltingら, Mol Cancer 2010: 9, 167)。
【0084】
したがって、子宮頸部掻き取りサンプルにおけるFAM19A4およびhsa−miR124−2メチル化の総合検査は、子宮頸部および子宮内膜の両方から起源したすべての癌(100%)の検出を可能にする。
【実施例7】
【0085】
実施例7:自己採取した標本におけるPRDM14およびFAM19A4プロモーターのメチル化
我々は、前向き研究の期間中(www.trialregister.nl, 試験番号:NTR962 (PROHTECT試験))に、二次リマインダーを送っても子宮頸部定期検診の要請に応答しなかった女性に合計45000自己採取パッケージを送った。そして、我々は、VibaBrush(登録商標、Rovers Medical Devices、Oss、オランダ)またはデルファイスクリーナー(Delphi BioScience、Scherpenzeel BV、オランダ)のいずれかを用いて自己採取された頸膣標本を分析した。定期検診の要請に応答しなかった女性にhrHPV検査用の自己採取パッケージを提供することは、最大30%の女性を検診プログラムに再誘致した(Gokら,BMJ 2010; 340:cl040)。HPV検査に関して、自己採取されたサンプルは、医師採取したものと同等である(Brinkら, J Clin Microbiol 2006; 44:2518-23)。この集団において、自己採取したサンプルに対するhrHPV検査は、同じ規模の女性応答者の集団で定期検診によって検出したCIN2以上の病変と少なくとも同様な数の病変を検出した(Baisら, Int J Cancer: 2007, 120: 1505-1510; Gokら, BMJ 2010; 340:c1040)。しかしながら、HPV自己サンプリングに対し、hrHPV陽性の女性をCIN2/3以上の病変および上皮内腺癌を患うものとそれを患っていないものとに分類するトリアージツールが必要とされる。従来の細胞診が自己採取した頸膣標本に確実に実行することができないが(Brinkら, J Clin Microbiol 2006; 44:2518-23)、DNAメチル化解析は、自己採取した頸膣洗浄物に適用することができる(Eijsinkら, Gynecol Oncol 2011; 120:280-3)。重要なことに、この発見は、メチル化マーカーFAM19A4およびPRDM14が自己採取の頸膣洗浄標本だけではなく、自己採取の膣ブラシサンプルにも適用されても、潜在的なCIN2+を検出できることを示している。自己採取の膣ブラシサンプルは、従来の既知マーカーがしばしば低い臨床的感度で行われている標本である。したがって、PRDM14およびFAM19A4マーカーは、医師採取の子宮頸部塗抹標本、自己採取の洗浄サンプルおよび自己採取の掻き取りサンプに対し、同等に機能する汎用検出マーカーとして見なすことができる。
【0086】
経過観察において臨床的な意味のある疾患を患う証拠の無い(すなわち、正常な細胞診/HPVまたはCIN0/CIN1組織構造を有する)hrHPV陽性の女性から自己採取した177例の膣ブラシサンプル、およびCIN3以上の病変(68例のCIN3、4例のSCC、1例のACISおよび1例の36ヶ月以内の腺細胞癌)を患うhrHPV陽性の女性から自己採取した74例の膣ブラシサンプルに対し、qMSPに従って、PRDM14およびFAM19A4プロモーターのメチル化検査を行った。PRDM14と組合わせても組合わせなくても、FAM19A4のメチル化解析は、CIN3以上の病変に対し、70%の特異度で70%の感度に達した。驚くべきことに、現在までは、FAM19A4メチル化は、hrHPV陽性の女性から自己採取した膣ブラシサンプルに潜在的に存在するCIN3以上の病変を許容可能な感度(>60%)で予測できる唯一のメチル化マーカーである。他のメチル化マーカーまたは他のマーカーの組合せを用いて、自己採取の膣ブラシサンプルに対する検出感度は、はるかに低かった。このような優れた性能が従来の掻き取りサンプルまたは頸膣洗浄標本から観察されなかったので、この発見は、予想外である。
【0087】
さらに、経過観察において臨床的な意味のある疾患を患う証拠の無い(すなわち、正常な細胞診/HPVまたはCIN0/CIN1の組織構造を有する)hrHPV陽性の女性から自己採取した272例の頸膣洗浄標本、およびCIN3以上の病変を患うhrHPV陽性の女性から自己採取した78例の頸膣洗浄標本を含むhrHPV陽性の女性から自己採取した350例の頸膣洗浄標本に対し、PRDM14およびFAM19A4プロモーターのメチル化解析を行った。PRDM14メチル化マーカーと組合わせても組合わせなくても、FAM19A4は、70%の特異度でCIN3以上の病変に対し、70%の感度を示した。このことは、FAM19A4がPRDM14メチル化マーカーまたは他のメチル化マーカーと組合わせても組合わせなくても、子宮頸部掻き取りサンプルおよび自己採取の(頸)膣ブラシサンプルまたは洗浄標本を含むさまざまな種類のサンプルに対し、汎用検出機能を有することを実証した。
【0088】
さらなる研究において、我々は、PRDM14以外のメチル化マーカーが自己採取した膣ブラシサンプルまたは洗浄サンプルに存在するCIN3以上の病変を検出するためのFAM19A4を相補的に補助できるか否かを究明した。70%未満の特異度(60%および50%)で、メチル化マーカーhsa−miR124−2(Wiltingら, Mol. Cancer 2010: 9, 167)は、FAM19A4を単独に使用する検査に比べて、感度の増加をもたらす付加的な価値があるということを見出した。
【0089】
これらのデータは、自己採取した膣ブラシサンプルおよび自己採取した頸膣洗浄標本の両方から得られた自己採取材料に対するPRDM14およびFAM19A4プロモーターのメチル化解析が十分可能であり、潜在的な高度子宮頸部疾患の検出を向上できることを示している。特に、FAM19A4は、己採取した膣ブラシサンプルおよび自己採取した頸膣洗浄標本の両方において、他のメチル化マーカーまたはHPV16/18の遺伝子型判定を超える高感度および高特異度(70%、70%)を達成した。FAM19A4を単独に使用する場合に比べて、FAM19A4およびHSA−ミール124−2の組合わせ解析は、50%および60%の特異度で優れていることを示した。
【実施例8】
【0090】
実施例8:hrHPV陽性の頭頸部扁平上皮癌、外陰部癌、外陰部前駆病変および肛門癌におけるPRDM14およびFAM19A4プロモーターのメチル化解析
hrHPVに関連する子宮頸部癌以外の上皮性悪性腫瘍からPRDM14およびFAM19A4プロモーターのメチル化を検出可能であるかどうかを決定するために、我々は、qMSPに従って、20例のhrHPV陽性頭頸部(すなわち口腔咽頭)扁平上皮癌(HNSCC)および2例の正常な口腔粘膜サンプルに対する分析を行った。正常な頭頸部粘膜サンプル(図6)に比べて、HNSCCにおいて、PRDM14およびFAM19A4両方のメチル化レベルが有意に増加した(p<0.05)。つまり、すべて(20/20)のHNSCCにおいて、対照に比べて、PRDM14のメチル化レベルが増加した。90%(18/20)のHNSCCにおいて、対照に比べて、FAM19A4メチル化レベルが増加した。
【0091】
さらに、我々は、PRDM14およびFAM19A4メチル化に対し、3例のhrHPV陽性外陰部癌、4例の前癌外陰部病変(VIN3)および3例のhrHPV陽性肛門癌を検査した。子宮頸部病変と同様に、全11例の病変は、高レベルのPRDM14メチル化を示し、1例のVIN3病変を除き、残り3例のVIN3病変は、高レベルのPRDM14メチル化を示した。
【0092】
これらのデータは、頭部および頸部ならびに外陰部および肛門を含むhrHPV陽性の非子宮頸部(前)癌病変は、FAM19A4および/またはPRDM14のメチル化によって検出することができることを示している。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]