特許第6703403号(P6703403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703403
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】パレット
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/38 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   B65D19/38 B
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-1091(P2016-1091)
(22)【出願日】2016年1月6日
(65)【公開番号】特開2017-121950(P2017-121950A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安川 真知子
(72)【発明者】
【氏名】高木 政美
(72)【発明者】
【氏名】日比野 浩
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−302959(JP,A)
【文献】 特開2009−234619(JP,A)
【文献】 特開平07−291289(JP,A)
【文献】 特開2011−024933(JP,A)
【文献】 特開2008−189228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/22−19/40
B65G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平軸を中心に回動可能な上板と、
前記上板の下側に設けられた下板と、
前記上板の回動を固定するストッパと、
前記上板と前記下板との間に介設されて前記上板に押し上げ力を付与する付勢部材と、を備えるパレットであって、
前記上板は、前記ストッパにより固定されているときは前記下板と平行で、前記ストッパによる固定が解除されると前記付勢部材の押上げ力により回動して一方の端部がその反対側の端部よりも高くなるように傾斜することを特徴とする、パレット。
【請求項2】
前記上板の一方の端部が押し下げられたときに前記ストッパによる固定が解除されることを特徴とする、請求項に記載のパレット。
【請求項3】
前記付勢部材が、前記水平軸の位置に配設されたねじりバネまたは一方の端部に配設された圧縮バネであることを特徴とする、請求項または請求項に記載のパレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラック倉庫における積荷用のパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
ラック倉庫では、複数のラックが並設されており、これらのラックにはパレットを介して荷物が載置されている。
ラック倉庫に対して地震時等による大きな水平力が作用すると、ラックに積載された積荷に荷崩れが生じるおそれがある。このような荷崩れは、荷物そのものの損傷だけではなく、周辺機器の損壊を引き起こす場合がある。
そのため、ラック倉庫内での荷崩れ防止を目的として、ラック倉庫の制振化または免震化を行う場合がある。ところが、建物(倉庫)自体を制振化または免震化する場合は、大規模な工事が必要となり、手間と費用がかかる。
【0003】
これに対し、本出願人等は、例えば、特許文献1に示すように、ラックのパレット載置部に設ける制振装置として、水平方向の揺れを吸収し、ラックに積載された荷物の落下を防止する制振装置を開発した。
また、特許文献2には、内蔵された免震層によって水平方向の揺れを吸収することで上載された荷物の落下を防止するパレットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−180870号公報
【特許文献2】特開2015−098335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大規模なラック倉庫において各ラックに制震装置を設置するには手間がかかる。また、複雑な構造を備える制振装置が多数必要となるため費用もかかる。また、免震層を備えたパレットも単価が高く、パレットが多数必要なラック倉庫に採用するには高価であった。
このような観点から、本発明は、簡易な構造でかつ安価な積荷の落下防止用のパレットを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明のパレットは、水平軸を中心に回動可能な上板と、前記上板の下側に設けられた下板と、前記上板の回動を固定するストッパと、前記上板と前記下板との間に介設されて前記上板に押し上げ力を付与する付勢部材とを備えており、前記上板は、前記ストッパにより固定されているときは前記下板と平行で、前記ストッパによる固定が解除されると前記付勢部材の押上げ力により回動して一方の端部がその反対側の端部よりも高くなるように傾斜することを特徴としている。
かかるパレットによれば、ストッパの固定が解除されることで、一方の端部が他方の端部よりも高くなるように上板が傾斜する。そのため、ストッパが地震時に振動によって解除されるようにすれば、地震時の振動によってパレットに上載された積荷が一方の端部側にすべり出ることが防止され、ひいては荷崩れを防止することができる。
前記上板と前記下板との間に介設されて前記上板に押し上げ力を付与する付勢部材を備えているため、ストッパによる固定が解除された際に上板を押し上げて回動させることが可能となる。
このようなストッパとしては、例えば、前記上板の一方の端部が一時的に押し下げられたときに前記ストッパによる固定が解除される構造とする。
また、前記付勢部材には、例えば、前記水平軸の位置に配設されたねじりバネや、一方の端部において前記下板と前記上板との間に介設された圧縮バネを使用する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパレットによれば、簡易かつ安価に、ラック倉庫内の荷崩れを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】は第一の実施形態に係るパレットの通常時を示す斜視図である。
図2】同パレットの平面図である。
図3】(a)は同パレットの通常時を示す断面図、(b)は同パレットの地震後を示す断面図、(c)は同パレットの地震時を示す断面図である。
図4】第二の実施形態に係るパレットを示す斜視図である。
図5】同パレットの下板を示す平面図である。
図6】(a)は図5の一部を示す拡大平面図、(b)はストッパを示す斜視図である。
図7】(a)は図4に示すパレットの地震時を示す側面図、(b)は通常時のストッパを示す模式図、(c)は地震時のストッパを示す模式図、(d)は地震後のストッパを示す模式図である。
図8】第三の実施形態に係るパレットを示す斜視図である。
図9】同パレットの下板を示す平面図である。
図10】(a)は図8に示すパレットを示す側面図、(b)は通常時のストッパを示す模式図、(c)は地震時のストッパを示す模式図である。
図11】第四の実施形態に係るパレットを示す斜視図である。
図12】同パレットの下板を示す平面図である。
図13】(a)は図11に示すパレットを示す側面図、(b)は通常時のストッパを示す模式図、(c)は地震時のストッパを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一の実施形態>
本発明の実施形態では、ラック倉庫において使用するパレット1について説明する。
パレット1は、図1に示すように、前後左右の側面にそれぞれフォークリフト爪を挿入可能な開口部10,10を備えている。なお、開口部10,10は、少なくとも前面に形成されている。
ここで、本明細書において各方向(前後上下左右)は、図1に示す方向に統一する。
【0010】
第一の実施形態のパレット1は、図1および図2に示すように、上板2と、上板2の下側に設けられた下板3と、上板2と下板3との間に介設された付勢部材4と、上板2の回動を規制するストッパ5および形状保持部材6とを備えている。
上板2は、パレット1の上面に配設された平板であって、平面視矩形状を呈している。なお、上板2の形状および板厚は限定されるものではない。上板2を構成する材料は、パレット1に上載される荷物に対して十分な強度を有していれば限定されるものではなく、例えば、木材、プラスチック等の樹脂材または鋼板である。
上板2の下面には、複数の上板脚部21,21,…が形成されている。本実施形態では、3本の上板脚部21,21,…が3列(計9本)配設されているが、上板脚部21の数は限定されない。上板脚部21は、角筒状に形成されていて、後記する下板脚部31を挿入可能に構成されている。なお、上板脚部21の形状は限定されない。
【0011】
下板3は、パレット1の下面に配設された平板であって、平面視矩形状を呈している。本実施形態の下板3は、上板2と同一の平面形状を有している。なお、下板3の形状および板厚は限定されるものではない。下板3を構成する材料は、パレット1に上載される荷物および自重に対して十分な強度を有していれば限定されるものではなく、例えば、木材、プラスチック等の樹脂材または鋼板が使用される。
下板3の上面には、上板脚部21の位置に対応して下板脚部31が突設されている。下板脚部31は、角筒状を呈している。なお、上板脚部21に挿入可能な形状であれば下板脚部31の形状は限定されるものではない。また、下板脚部31は、上板脚部21を収容可能な形状としてもよい。
【0012】
上板2および下板3は、隙間11をあけて上下に重ねられている。隙間11は開口部10を介して外部に通じている。
上板2は、下板3と平行な回転軸(水平軸)を中心に回動可能に設けられている。上板2の回転軸は、パレット1の後方に設けられている。そのため、上板2が上方向に回動すると、パレット1の前側において上板2と下板3との隙間が、後側の隙間に比べて大きくなる。
上板2は、付勢部材4によって、押し上げ力が付与されているが、通常時は、ストッパ5によって固定されている。上板2は、図3(a)に示すように、ストッパ5により固定されている状態で、下板3と平行である。
本実施形態の付勢部材4は、上板2の回転軸の位置に配設されたねじりバネである。付勢部材4は、上板2に対して押し上げ力(傾動力)を付与している。すなわち、上板2は、付勢部材4の押し上げ力によって前側が上方に押し上げられる。
【0013】
上板2および下板3は、下板脚部31を上板脚部21に挿入した状態で、隙間11をあけて上下に重ねられている。隙間11は開口部10を介して外部に通じている。
図2に示すように、パレット1の前部および前後方向中央部に形成された下板脚部31に第一のコイルバネ32が配設されている。第一のコイルバネ32は、通常時における荷物による重量を上板2から下板3に伝達する。また、第一のコイルバネ71は、地震時等に上載された荷物が揺れてパレットの前側に荷物の荷重が集中した際に収縮する。
パレット1の後部に配設された下板脚部31には、第二のコイルバネ33が配設されている。第二のコイルバネ33は、通常時における荷物による重量を上板2から下板3に伝達する。また、第二のコイルバネ33は、付勢部材4により上板2に対して押し上げ力が作用した際に収縮する。
【0014】
ストッパ5は、図3(a)に示すように、パレット1の後端部において、上板2と下板3との間に介設されている。ストッパ5は、下板3の後端部に回動可能に設けられている。ストッパ5は、パレット1の後端において、上板2と下板3との間に挟持されていることで、上板2の回動を固定している。ストッパ5は、上板2の前端側が下降して上板2の後端側が上昇すると、図3(b)に示すように、挟持状態が解除されて、後側に倒れる。ストッパ5が後側に倒れると、上板2の固定が解除される。すなわち、上板2の前側が押し下げられることで上板2の後端が上昇すると、ストッパ5による上板2の回動の固定が解除される。
ストッパ5による上板2の固定状態が解除されると、付勢部材4の押し上げ力により上板2が回動し、上板2の前側端部が後側端部よりも高くなるように傾斜する。
【0015】
形状保持部材6は、傾斜した上板2の傾斜状態を保持する部材である。
本実施形態の形状保持部材6は、パレット1の前側において、上板2と下板3との間に配設されている。形状保持部材6は、図3(a)および(b)に示すように、板状の本体部61と、上板2の下面に本体部61を回動可能に取り付ける取付部62とを有している。本体部61は、図3(a)に示すように、通常時は上板2と下板3との間において傾斜した状態で配設されている。一方、ストッパ5による固定が解除されて上板2が押し上げられると、図3(b)に示すように、本体部61が上板2と下板3との間において立設した状態となる。本体部61が上板2と下板3との間で立設すると、上板2の前側の下降が本体部により妨げられるため、上板2の傾斜した状態が保持される。
なお、下板3の上面には、本体部61の位置に対応して、規制部63が設けられている。規制部63は、上板2の前側が上昇した際に、本体部61が垂直に立設するように本体部61を係止する部材である。
なお、形状保持部材6の設置箇所および構成は、上板2が傾斜した際の状態を保持することが可能であれば限定されるものではない。例えば、本体部61として、板状部材に代えて棒状部材や板ばねが採用される。
【0016】
荷物Cが上載されたパレット1に地震等に伴う前後方向の水平力が作用すると、図3(c)に示すように、パレット1の前側端部に荷重Pが作用することで、上板2の前側が後側よりも低くなるように傾斜する。この上板2の傾斜により、パレット1の後端におけるストッパ5の固定が解除される。ストッパ5による固定が解除されると、図3(b)に示すように、上板2が付勢部材4によって押し上げられて、前側が後側よりも高くなるように上板2が傾斜する。さらに、形状保持部材6によって、上板2の傾斜状態が保持される。そのため、パレット1に上載された荷物Cは、パレット1の前側に落下することがない。なお、荷重Pを、式1に示す。
また、パレット1は、上板脚部21および下板脚部31(圧縮バネ32)により上板2が支持されているとともに、ストッパ5によって上板の回動が固定されているため、開口部10からフォークリフト爪を挿入してパレット1を輸送すること、およびパレット1に荷物Cを上載することが可能である。
【0017】
【数1】
【0018】
以上の通り、本実施形態のパレット1に対して地震時等の水平力が作用すると、ストッパ5による固定が解除されて、上板2の前側が後側よりも高くなるように傾斜した状態となる。そのため、パレット1に上載された積荷が前側にすべり出ることが防止され、ひいては荷崩れが防止される。
【0019】
<第二の実施形態>
第二の実施形態のパレット1は、図4および図5に示すように、上板2と、上板2の下側に設けられた下板3と、上板2と下板3との間に介設された付勢部材4と、上板2の回動を規制するストッパ5とを備えている。
上板2は、パレット1の上面に配設された平板であって、平面視矩形状を呈している。なお、上板2の形状および板厚は限定されるものではない。上板2を構成する材料は、パレット1に上載される荷物に対して十分な強度を有していれば限定されるものではなく、例えば、木材、プラスチック等の樹脂材または鋼板を使用する。
上板2の下面には、複数の上板脚部21,21,…が形成されている。本実施形態では、3本の上板脚部21,21,…が3列(計9本)配設されているが、上板脚部21の数は限定されない。上板脚部21は、角筒状に形成されていて、後記する下板脚部31を挿入可能に構成されている。なお、上板脚部21の形状は限定されない。
【0020】
下板3は、パレット1の下面に配設された平板であって、平面視矩形状を呈している。本実施形態の下板3は、上板2と同一の平面形状を有している。なお、下板3の形状および板厚は限定されるものではない。下板3を構成する材料は、パレット1に上載される荷物および自重に対して十分な強度を有していれば限定されるものではなく、例えば、木材、プラスチック等の樹脂材または鋼板を使用すればよい。
下板3の上面には、上板脚部21の位置に対応して下板脚部31が突設されている。下板脚部31は、角筒状を呈している。なお、上板脚部21に挿入可能な形状であれば下板脚部31の形状は限定されるものではない。また、下板脚部31は、上板脚部21を収容可能な形状としてもよい。
【0021】
上板2および下板3は、下板脚部31を上板脚部21に挿入した状態で、隙間11をあけて上下に重ねられている。隙間11は開口部10を介して外部に通じている。
パレット1の後部に配設された上板脚部21と下板脚部31は、下板3と平行な回転軸(軸材7)を中心とした回転が可能となるように、ピン接合されている。すなわち、上板2は、下板3と平行な水平軸(軸材7)を中心に回動可能に設けられている。
上板2は、付勢部材4によって、押し上げ力が付与されているが、通常時は、ストッパ5によって固定されている。上板2は、ストッパ5により固定されている状態で、下板3と平行である。
本実施形態の付勢部材4は、図6(a)に示すように、パレット1の前部に形成された下板脚部31に配設された圧縮バネ(コイルバネ)である。付勢部材4は、上板2の前側に対して押し上げ力を付与している。すなわち、上板2は、付勢部材4の押し上げ力によって前側が上方に押し上げられる。また通常時は、荷物による重量を上板2からコイルばねを通して下板に伝達する。そのためコイルばねを挿入する位置はパレット前側に限定されるものではない。
【0022】
ストッパ5は、図6(a)に示すように、パレット1の前部に形成された下側脚部31内に配設されている。
ストッパ5は、図6(b)に示すように、ストッパー棒51、ルーズホール板52、支持板53および押し出し棒54を備えている。
ストッパー棒51は、太径部51aと細径部51bとを備えている。太径部51aにはコイルバネ55が装着されている。太径部51aの端部には係止部51cが形成されている。また、ストッパー棒51は、太径部51aと細径部51bとの間に、徐々に縮径するテーパー部51dを有している。コイルバネ55は、係止部51cとルーズホール板52との間に介設されていて、ストッパー棒51をルーズホール板52から離れる方向に付勢している。
ルーズホール板52は、ストッパー棒51と直交するように、下板脚部31に固定されている。ルーズホール板52には、ストッパー棒51の太径部51aを挿通可能な挿入孔52aが形成されている。挿入孔52aの上部には、太径部51aの外径よりも小さく、細径部51bの外径よりも大きな幅(細径部51bの挿入が可能な幅)のスリット52bが形成されている。
支持板53は、ルーズホール板52と平行に、下板脚部31に固定されている。支持板53には、細径部51bを挿通可能な挿入孔53aが形成されている。
押し出し棒54は、ルーズホール板52と支持板53との間に配設されている。押し出し棒54の下端部には、貫通孔54aが形成されている。貫通孔54aには、ストッパー棒51の細径部51bが貫通している。また、押し出し棒54は、上端が上板2の下面に接する長さを有している。なお、押し出し棒54の上端は、上板2の下面に当接またはピン接合されている。
【0023】
ストッパー棒51は、ルーズホール板52、支持板53および押し出し棒54を貫通した状態で配設されている。通常時には、図7(b)に示すように、ストッパー棒51の太径部51aがルーズホール板52の挿入孔52aに挿通されている。すなわち、通常時は、付勢部材4によって上板2が押し上げられることで、ストッパー棒51も押し出し棒54を介して引き上げられているため、太径部51aがスリット52bの入口付近(下端)に係止された状態となる。
一方、押し出し棒54によりストッパー棒51が押し下げられると、図7(c)に示すように、ストッパー棒51とスリット52bの入口付近との係止状態が解除される。すると、コイルバネ55の付勢力によってストッパー棒51の太径部51aがルーズホール板52から離れる方向(図6において左方向)に移動する。すると、図7(d)に示すように、スリット52bの下側に細径部51bが移動し、ストッパー棒51が上側に移動可能な状態となる。つまり、ストッパ5による上板2の回動の固定が解除される。
ストッパ5による固定が解除されると、付勢部材4の押し上げ力により上板2が回動し、上板2の前側端部が後側端部よりも高くなるように傾斜する。
【0024】
荷物Cが上載されたパレット1に地震等に伴う前後方向の水平力が作用すると、図7(a)に示すように、パレット1の前側端部に荷重Pが作用することで、上板2の前側が後側よりも低くなるように押し下げられる。上板2が押し下げられると、押し出し棒54を介してストッパー棒51も押し下げられ、ストッパー棒51の細径部51bがスリット52bの下側に移動し、ストッパ5の固定が解除される(図7(c)、(d)参照)。ストッパ5による固定が解除されると、図4に示すように、上板2が付勢部材4によって押し上げられることで、前側が後側よりも高くなるように上板2が傾斜する。
なお、パレット1は、ストッパ5によって上板の回動が固定されているため、開口部10からフォークリフト爪を挿入してパレット1を輸送することおよびパレット1に荷物Cを上載することが可能である。
また、パレット1は、係止部51cをルーズホール板52方向(図6において右方向)に押し込むことで、ストッパ5の固定が解除された状態(図7(d)参照)から、固定状態(図7(b)参照)に戻すことができる。
【0025】
以上の通り、本実施形態のパレット1に対して地震時等の水平力が作用すると、ストッパ5による固定が解除されて、上板2の前側が後側よりも高くなるように傾斜した状態となる。そのため、パレット1に上載された積荷が前側にすべり出ることが防止され、ひいては荷崩れが防止される。
【0026】
<第三の実施形態>
第三の実施形態のパレット1は、図8および図9に示すように、上板2と、上板2の下側に設けられた下板3と、上板2と下板3との間に介設された付勢部材4と、上板2の回動を規制するストッパ5とを備えている。
上板2は、パレット1の上面に配設された平板であって、平面視矩形状を呈している。なお、上板2の形状および板厚は限定されるものではない。上板2を構成する材料は、パレット1に上載される荷物に対して十分な強度を有していれば限定されるものではなく、例えば、木材、プラスチック等の樹脂材または鋼板を使用すればよい。
上板2の下面には、複数の上板脚部21,21,…が形成されている。本実施形態では、3本の上板脚部21,21,…が3列(計9本)配設されているが、上板脚部21の数は限定されない。上板脚部21は、角筒状に形成されていて、後記する下板脚部31を挿入可能に構成されている。なお、上板脚部21の形状は限定されない。
【0027】
下板3は、パレット1の下面に配設された平板であって、平面視矩形状を呈している。本実施形態の下板3は、上板2と同一の平面形状を有している。なお、下板3の形状および板厚は限定されるものではない。下板3を構成する材料は、パレット1に上載される荷物および自重に対して十分な強度を有していれば限定されるものではなく、例えば、木材、プラスチック等の樹脂材または鋼板を使用する。
下板3の上面には、上板脚部21の位置に対応して下板脚部31が突設されている。下板脚部31は、角筒状を呈している。なお、上板脚部21に挿入可能な形状であれば下板脚部31の形状は限定されるものではない。また、下板脚部31は、上板脚部21を収容可能な形状としてもよい。なお、下板脚部31の前後方向の幅は、上板脚部21の内側空間の前後方向の幅よりも小さく、下板3が上板2に対して、前後に移動することが可能に構成されている。
【0028】
上板2および下板3は、下板脚部31を上板脚部21に挿入した状態で、隙間11をあけて上下に重ねられている。隙間11は開口部10を介して外部に通じている。
パレット1の後部に配設された上板脚部21と下板脚部31は、下板3と平行な回転軸(軸材7)を中心とした回転が可能となるように、ピン接合されている。すなわち、上板2は、下板3と平行な水平軸(軸材7)を中心に回動可能に設けられている。
軸材7は、上板脚部21および下板脚部31に形成された挿通孔を貫通している。上板脚部21に形成された挿通孔21aは、パレット1の前後方向に対して長い長孔である。
【0029】
上板2は、付勢部材4によって、押し上げ力が付与されているが、通常時は、ストッパ5によって固定されている。上板2は、図10(b)に示すように、ストッパ5により固定されている状態で、下板3と平行である。
本実施形態の付勢部材4は、図9に示すように、パレット1の前部中央および前後方向中央部に形成された下板脚部31に配設された圧縮バネ(コイルバネ)である。付勢部材4は、上板2の前側に対して押し上げ力を付与している。すなわち、上板2は、付勢部材4の押し上げ力によって前側が上方に押し上げられる。また通常時は、荷物による重量を上板2からコイルばねを通して下板に伝達する。コイルばねを挿入する位置は限定されるものではない。
【0030】
ストッパ5は、図10(a)に示すように、パレット1の前部に形成された上側脚部21および下側脚部31に配設されている。
ストッパ5は、図10(b)に示すように、ストッパー棒51、上板脚部21に形成されたルーズホール56とを備えている。
ストッパー棒51は、下板脚部31を貫通した状態で下板脚部31に固定されており、両端部は上板脚部21のルーズホール56を貫通している。
ルーズホール56は、門型状に形成された長孔であって、ストッパー棒51を移動可能に挿通している。ルーズホール56の中央部には、凹部56aが形成されていて、ストッパー棒51の係止が可能に構成されている。
ストッパー棒51は、通常時には、図10(b)に示すように、付勢部材4によって上板2が押し上げられることで、凹部56aに係止されている。
【0031】
荷物Cが上載されたパレット1に地震等に伴う前後方向の水平力が作用すると、パレット1の前側端部に荷重Pが作用することで、上板2の前側が後側よりも低くなるように押し下げられる。上板2が押し下げられると、ストッパー棒51と凹部56aの係止状態が解除される。係止状態が解除された状態で水平力が作用すると、上板2が下板3に対して前または後に移動する。そして、図10(c)に示すようにストッパー棒51がルーズホール56の前端または後端に位置すると、上板2が上方に押し上げられる。上板2が付勢部材4によって押し上げられることで、前側が後側よりも高くなるように上板2が傾斜する。このとき、パレット1の後部に形成された上板脚部21の挿通孔21aは長孔であるため、上板2の前後方向の移動が軸材7によって阻害されることがない。
【0032】
以上の通り、本実施形態のパレット1に対して地震時等の水平力が作用すると、ストッパ5による固定が解除されて、上板2の前側が後側よりも高くなるように傾斜した状態となる。そのため、パレット1に上載された積荷が前側にすべり出ることが防止され、ひいては荷崩れが防止される。
なお、パレット1は、ストッパ5によって上板の回動が固定されているため、開口部10からフォークリフト爪を挿入してパレット1を輸送することおよびパレット1に荷物Cを上載することが可能である。
【0033】
<第四の実施形態>
第四の実施形態のパレット1は、図11および図12に示すように、上板2と、上板2の下側に設けられた下板3と、上板2と下板3との間に介設された付勢部材4と、上板2の回動を規制するストッパ5とを備えている。
上板2は、パレット1の上面に配設された平板であって、平面視矩形状を呈している。なお、上板2の形状および板厚は限定されるものではない。上板2を構成する材料は、パレット1に上載される荷物に対して十分な強度を有していれば限定されるものではなく、例えば、木材、プラスチック等の樹脂材または鋼板を使用すればよい。
上板2の下面には、複数の上板脚部21,21,…が形成されている。本実施形態では、3本の上板脚部21,21,…が3列(計9本)配設されているが、上板脚部21の数は限定されない。上板脚部21は、角筒状に形成されていて、後記する下板脚部31を挿入可能に構成されている。なお、上板脚部21の形状は限定されない。
【0034】
下板3は、パレット1の下面に配設された平板であって、平面視矩形状を呈している。本実施形態の下板3は、上板2と同一の平面形状を有している。なお、下板3の形状および板厚は限定されるものではない。下板3を構成する材料は、パレット1に上載される荷物および自重に対して十分な強度を有していれば限定されるものではなく、例えば、木材、プラスチック等の樹脂材または鋼板を使用すればよい。
下板3の上面には、上板脚部21の位置に対応して下板脚部31が突設されている。下板脚部31は、角柱状を呈している。なお、上板脚部21に挿入可能な形状であれば下板脚部31の形状は限定されるものではない。また、下板脚部31は、上板脚部21を収容可能な形状としてもよい。なお、下板脚部31の前後方向の幅は、上板脚部21の内側空間の前後方向の幅よりも小さく、下板3が上板2に対して、前後に移動することが可能に構成されている。
【0035】
上板2および下板3は、下板脚部31を上板脚部21に挿入した状態で、隙間11をあけて上下に重ねられている。隙間11は開口部10を介して外部に通じている。
パレット1の前部に配設された上板脚部21と下板脚部31は、下板3と平行な回転軸(軸材7)を中心とした回転が可能となるように、ピン接合されている。すなわち、上板2は、下板3と平行な水平軸(軸材7)を中心に回動可能に設けられている。
軸材7は、上板脚部21および下板脚部31に形成された挿通孔を貫通している。上板脚部21に形成された挿通孔21aは、パレット1の前後方向に対して長い長孔である。
【0036】
上板2は、通常時は、ストッパ5によって固定されていて、下板3と平行である。
ストッパ5は、図12(a)に示すように、パレット1の後部に形成された上側脚部21および下側脚部31に配設されている。
ストッパ5は、図12(b)に示すように、ストッパー棒51、上板脚部21に形成されたルーズホール56とを備えている。
ストッパー棒51は、下板脚部31を貫通した状態で下板脚部31に固定されており、両端部は上板脚部21のルーズホール56を貫通している。
ルーズホール56は、凹字状に形成された長孔であって、ストッパー棒51を移動可能に挿通している。ルーズホール56の中央部には、凹部56aが形成されていて、ストッパー棒51の係止が可能に構成されている。
ストッパー棒51は、通常時には、図12(b)に示すように、凹部56aに係止されている。
【0037】
荷物Cが上載されたパレット1に地震等に伴う前後方向の水平力が作用すると、ストッパー棒51と凹部56aの係止状態が解除される。係止状態が解除された状態で水平力が作用すると、上板2が下板3に対して前または後に移動する。そして、図12(c)に示すようにストッパー棒51がルーズホール56の前端または後端に位置すると、上板2が下方に押し下げられて、前側が後側よりも高くなるように上板2が傾斜する。このとき、パレット1の後部に形成された上板脚部21の挿通孔21aは長孔であるため、上板2の前後方向の移動が軸材7によって阻害されることがない。
【0038】
以上の通り、本実施形態のパレット1に対して地震時等の水平力が作用すると、ストッパ5による固定が解除されて、上板2の前側が後側よりも高くなるように傾斜した状態となる。そのため、パレット1に上載された積荷が前側にすべり出ることが防止され、ひいては荷崩れが防止される。
なお、パレット1は、ストッパ5によって上板の回動が固定されているため、開口部10からフォークリフト爪を挿入してパレット1を輸送することおよびパレット1に荷物Cを上載することが可能である。
【0039】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
前記各実施形態では、上板2および下板3が平板の場合について説明したが、上板2および下板3は、板材を組み合わせることにより形成されたスノコ状の部材であってもよい。
なお、付勢手段4として、第一の実施形態ではねじりバネ、第二の実施形態では圧縮バネを採用したが、ねじりバネと圧縮バネとを組み合わせて使用してもよい。また、付勢手段4は、板ばねであってもよく、その構成は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 パレット
2 上板
3 下板
4 付勢部材
5 ストッパ
6 形状保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図13