(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該作業工具では、モータやスピンドル等の機構部材を収容するハウジングにつき、第1ハウジング要素と第2ハウジング要素を接合する構成を採用している。かかる接合態様として、第1ハウジング要素と第2ハウジング要素は、スピンドルの回転軸方向(上下方向)およびハウジング長尺方向(前後方向)にそれぞれ交差する方向(すなわち作業工具の左右方向)において、互いに対向した状態で組み付け可能に設定されている。この設定により、ハウジング要素の一方につき、他方が組み付けられていない状態で、上記機構部材を配置しておき、そのうえで他方のハウジング要素を組み付けることになるが、組み付け方向が作業工具の左右方向に設定されているため、上記機構部材の配置およびハウジング要素同士の組み付け作業が比較的容易とされる。
【0005】
一方、上記のように第1ハウジング要素と第2ハウジング要素を組み付けた場合、当該第1ハウジング要素と第2ハウジング要素の組み付け接合線が、少なくともハウジングの上面側に形成されることになるが、この部分はハンドル部として使用者が把持して使う箇所に相当し、当該接合線が掌に当接することで使用者に違和感を与える可能性がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑み、高い製造効率を維持しつつ、人間工学的に優れた作業工具を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述課題は特許請求の範囲に記載の発明によって解決される。本発明に係る作業工具は、先端工具によって被加工材に所定の加工作業を行うべく、モータと、回動軸を有するとともに、当該モータを介して当該回転軸周りの所定の角度範囲内で回転動作し、これによって当該先端工具を駆動するスピンドルと、少なくとも当該モータを収容するインナハウジングと、長尺状に形成されるとともに、当該インナハウジングを収容するアウタハウジングと、当該インナハウジングおよびアウタハウジングの間に介在配置される弾性部材と、を有する。
【0008】
インナハウジングは、互いに組み付けられることで当該インナハウジングを構成する第1インナハウジング構成要素および第2インナハウジング構成要素を有する。第1インナハウジング構成要素および第2インナハウジング構成要素は、互いに鏡対称状に形成されてもよく、あるいは非対称に形成されてもよい。また両構成要素が互いに組み付けられることでインナハウジングの全体を形成する態様、インナハウジングの一部を形成する態様のいずれも好適に包含する。インナハウジングには少なくともモータが収容されるが、さらに典型的には、当該モータに加えてスピンドルもインナハウジングに収容する構成とすることが好適である。また「モータを収容」とはモータの全部がインナハウジングに収容される態様、モータの一部がインナハウジングに収容される態様のいずれも包含する。
【0009】
一方、アウタハウジングは、互いに組み付けられることで当該アウタハウジングを構成する第1アウタハウジング構成要素および第2アウタハウジング構成要素を有する。第1アウタハウジング構成要素および第2アウタハウジング構成要素は、互いに鏡対称状に形成されてもよく、あるいは非対称に形成されてもよい。また両構成要素が互いに組み付けられることでアウタハウジングの全体を形成する態様、アウタハウジングの一部を形成する態様のいずれも好適に包含する。アウタハウジングは、典型的には、インナハウジングの全部を収容するが、当該インナハウジングの一部のみを収容する態様も可能である。
【0010】
ここで、長尺状に形成されたアウタハウジングの長軸方向を前後方向と定義し、スピンドルの回動軸の延在方向を上下方向と定義し、当該前後方向および上下方向と直交する方向を横方向と定義する。本発明に係る第1インナハウジング構成要素と第2インナハウジング構成要素は、前記横方向において互いに対向した状態で組み付けられる。この場合、上記モータないしスピンドルに関しては、第1インナハウジング構成要素および第2インナハウジング構成要素の一方側に予め組み込みを行ってサブアセンブリとしておき、当該サブアセンブリに対し、他方のインナハウジング構成要素を前記横方向において互いに対向した状態で組み付けてインナハウジングを構成することが好ましい。一方のインナハウジング構成要素に、モータ、更に典型的にはスピンドルを組み込む場合、当該モータやスピンドルはそれらの軸部材が上記上下方向に延在することが多い関係で、かかる機構部品を一方のインナハウジング構成要素に組み込むには、上記横方向には他方のインナハウジング構成要素がない状態で、当該横方向からモータないしスピンドルを組み込み、しかる後に他方のインナハウジング構成要素を横方向において組み付けることになるので、インナハウジングへの機構部品の組み付けが容易に行える。
【0011】
なお「横方向において互いに対向した状態」とは、第1インナハウジング構成要素と第2インナハウジング構成要素が当該横方向に並列状に隣接配置されるとともに、当該横方向に互いを接合させる態様をいう。典型的には、第1インナハウジング構成要素の接合面と第2インナハウジング構成要素の接合面のそれぞれの法線が互いに横方向に延在した状態で互いに接合された態様として定義される。
【0012】
一方、第1アウタハウジング構成要素と第2アウタハウジング構成要素は、上下方向において、互いに対向した状態で組み付けられる。「上下方向において互いに対向した状態」とは、第1アウタハウジング構成要素と第2アウタハウジング構成要素が当該上下方向に並列状に隣接配置されるとともに、当該上下方向に互いを接合させる態様をいう。典型的には、第1アウタハウジング構成要素の接合面と第2アウタハウジング構成要素の接合面のそれぞれの法線が互いに上下方向に延在した状態で互いに接合された態様として定義される。
【0013】
アウタハウジングには、典型的には、使用者の把持に供せられるハンドル部が形成される場合が多いが、本発明においては、当該アウタハウジングとインナハウジングの間に弾性部材が介在配置されており、作業中に振動源となり易いインナハウジングからのアウタハウジングへの振動伝達が効果的に抑制され、アウタハウジングを把持する作業者に対する振動対策が効果的に講じられる。
【0014】
さらにアウタハウジングを構築するにあたり、第1アウタハウジング構成要素と第2アウタハウジング構成要素は、上下方向において互いに対向した状態で組み付けられる。このことは、典型的には、アウタハウジング構成要素同士の組み付けに起因して発生する接合線が、当該アウタハウジングの横方向(ないし前後方向)に形成されることを帰結する。換言すれば、実際の作業工具使用に際しては、使用者がアウタハウジングをグリップとして把持した場合に、当該使用者の掌の部分が当該アウタハウジングの上部側に位置することが多いが、本発明においては、アウタハウジング構成要素同士の組み付け接合線が当該掌の近傍に存在しないこととなり、作業工具を把持して加工作業を行う場合に、組み付け接合線が掌に接触して使用者が違和感を覚える等の弊害を未然に防止することが可能とされる。すなわち「上記アウタハウジングは、少なくとも前記上下方向における上部側にハンドル部が設けられるとともに、前記第1アウタハウジング構成要素と第2アウタハウジング構成要素の組み付け接合線につき、(前記アウタハウジングにおける前記前後方向面および左右方向面に形成されることで)当該ハンドル部を回避する構成」である。
【0015】
なお、本発明に係る作業工具では、スピンドルは、当該スピンドルの回動軸周りに所定の角度範囲で回動される構成となっている。かかる「所定の角度」は、常に固定されたものであってもよいし、所定の操作を通じて回動角度を可変とする構成を採用することも可能である。またスピンドルの所定の角度範囲での回動は、典型的には一定の回動周期を設定することが好ましいが、当該回動周期を、所定操作を通じて可変とする構成も採用可能である。
【0016】
また、回動軸周りに所定の角度範囲で回動するスピンドルによって駆動される先端工具については、かかる動作態様で加工作業が可能な工具を広く包含することができる。例えば、切断作業、剥離作業、研削作業等が掲げられ、先端工具をこれらの加工作業に応じて任意に交換することも可能である。なお、単一の作業工具に対して、加工作業に応じて複数種類の先端工具の中から任意のものを選択して取付ることから、かかる作業工具は「マルチツール」と称呼することもできる。
【0017】
さらに先端工具のスピンドルへの取付に際しては、クランプシャフトを用いることができる。典型的には、このクランプシャフトとスピンドルの間に先端工具を介在配置させる形で、当該先端工具を挟持する態様である。この場合、スピンドルを回動軸に沿って中空状とし、当該中空箇所にクランプシャフトを挿通する。クランプシャフトはスピンドルに対して回動軸方向に相対移動可能とし、当該相対位置移動を介して、先端工具保持位置と、先端工具開放位置間で切り替えを可能とする。そして作業時には、先端工具保持位置で当該先端工具を保持して加工作業を遂行し、先端工具を交換する場合にはクランプシャフトを移動させて先端工具解放位置に置く。
【0018】
このクランプシャフトによる先端工具の保持・解放にあたっては、当該クランプシャフトのロック機構を採用することが好ましい。当該ロック機構は、使用者の手動操作に応じて、クランプシャフトが先端工具保持位置に置かれた状態で当該クランプシャフトをロック(固定)する係合位置と、クランプシャフトのロックを解除して先端工具の開放を許容する解除位置との間で移動可能に構成するのが好ましい。かかる構成により、使用者によるロック機構の手動操作を通じて、先端工具の保持・解放を容易に行うことができる構成が提供される。
【0019】
本発明の一つの態様として、前記モータをブラシレスモータによって構成するとともに、当該ブラシレスモータの駆動制御を行うコントローラを備えることが可能である。この場合、ブラシレスモータの出力軸につき、スピンドルの回動軸と平行に配置することができる。ブラシレスモータの出力軸とスピンドルの回動軸を平行に配置する構成を採用する場合、ブラシレスモータの回転出力をスピンドルに伝達する動力伝達機構につき、従前の構成と比較して、上記先端工具にさらに近接して配置することが可能となるため、作業時における作業工具の偶バランスが向上し、振動低減が一層図られることとなる。
【0020】
更に本発明の一つの態様として、第1アウタハウジング構成要素と第2アウタハウジング構成要素を固定する固定部材を設定可能である。当該固定部材は、回動軸方向に延在するように構成するとともに、アウタハウジングは、ブラシレスモータのステータとスピンドルの間に、当該固定部材の収容空間を有するよう構成することができる。
このように構成することで、アウタハウジング構成要素同士を互いに組み付ける場合に、当該固定部材を介して両者を確実に固定するとともに、当該固定に必要な部材を、アウタハウジングに合理的に収容することが可能とされる。
【0021】
更に本発明の一つの態様として、上記固定部材収容空間につき、弾性部材の収容空間を兼用させることが可能である。このように構成することで、さらに作業工具内の空間利用効率が向上することとなる。
【0022】
更に本発明の一つの態様として、上記作業工具が電装部材を更に有する構成とし、上記インナハウジングについては、アウタハウジングの長軸方向に沿って長尺状に形成することが可能である。そして、当該インナハウジングの長軸方向の一方側の端部領域には、少なくともモータ、さらに好ましくはスピンドル等を収容するとともに、他方側の端部領域には、上記電装部材を設けることが可能である。電装部材とは、作業工具における電気式装置部材を広く包含し、例えば、モータ駆動制御用のコントローラ(モータ駆動用のCPUやスイッチング素子等が一体化されたユニット基材)、あるいは電気スイッチ等といった電材がこれに該当する。かかる構成を採用することにより、モータや電装部材といった、比較的重量のある部材を、長尺状に形成されたインナハウジングの両端領域に分散配置することで、当該インナハウジングの慣性モーメントを増大し、これによって作業時に生じるインナハウジングの振動を低減することが可能とされる。
【0023】
更に本発明の一つの態様として、モータ駆動用のバッテリを装着するためのバッテリ装着部を設けることができる。この場合、インナハウジングについて、アウタハウジングの長軸方向に沿って長尺状に形成するとともに、当該長軸方向の一方側端部領域にモータ(ないしスピンドル)を収容するとともに、他方側端部領域に、当該バッテリ装着部を設けることが可能である。相応の重量物であるバッテリを、モータと反対側の端部領域に装着可能とすることで、インナハウジング全体に重量物を分散させ、これによって当該インナハウジングの慣性モーメントを増大させ、作業時におけるインナハウジングの振動発生を極力低減することが可能となる。
【0024】
更に本発明の一つの態様として、介在部材を設けるとともに、上記弾性部材は、当該介在部材を介してインナハウジングとアウタハウジングの間において、上記横方向に挟持されて配置することが可能である。本発明では、既に述べたように、アウタハウジングに関し、人間工学的見地に鑑み、第1アウタハウジング構成要素および第2アウタハウジング構成要素を上下方向において互いに対向した状態で組み付ける構成を採用したが、かかる上下方向での組み付けにもかかわらず、上記弾性部材は、介在部材を介して、アウタハウジングとインナハウジングの間において横方向に挟持されることとなる。これにより、弾性部材を介在させた状態での、インナハウジングに対するアウタハウジングの組み付け性が向上することとなる。なお介在部材は、典型的には、アウタハウジングにおいて、インナハウジング側に突出形成されて、弾性部材に当接する構造が採用可能である。
【0025】
以上のように、本発明ならびに各種態様により、高い製造効率を維持しつつ、人間工学的に優れた作業工具が提供されることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る作業工具の実施形態を
図1〜
図15に基づき説明する。
図1に示す通り、本発明に係る作業工具は電動式の振動工具100である。振動工具100は、例えば、ブレードや研磨パッド等の複数種類の先端工具を選択的に装着し、当該先端工具を振動させることによって被加工材に対して工具の種類に応じた加工を行う。なお先端工具の一例として、
図1においてはブレード145が装着されている。このブレード145が本発明に係る「先端工具」の一例である。
(アウタハウジング)
図1に示す通り振動工具100は、振動工具100の外郭を構成するアウタハウジング102を有する。アウタハウジング102は合成樹脂製であり、
図2および
図3に示す通り、駆動機構ハウジング106とインナハウジング104を収容する収容空間1021を形成する。なお、
図3は
図2におけるI−I線断面図である。このアウタハウジング102が本発明に係る「アウタハウジング」の一例であり、インナハウジング104が本発明に係る「インナハウジング」の一例である。
【0028】
図2に示す通りアウタハウジング102は、スピンドル124の回動軸の延在方向と交差する方向に長尺状に延在して設けられている。本実施の形態では、当該アウタハウジング102の長軸延在方向を前後方向(
図2の左右方向)と定義し、当該前後方向のうち、ブレード145が装着される側(
図2の左側)を振動工具100の前側と定義し、反対側(
図2の右側)を振動工具100の後側と定義する。また、後述するスピンドル124の回動軸延在方向を上下方向と定義し、上下方向のうち、後述するロック操作機構150が設けられる側(
図2の上側)を振動工具100の上側と定義し、ブレード145が設けられる側(
図2の下側)を振動工具100の下側と定義する。さらに、当該前後方向および上下方向の双方に対して交差する方向(
図2における紙面法線方向)を振動工具100の横方向ないし左右方向と定義する。当該横方向は、
図3における上下方向、
図3のII−II線断面図である
図9の左右方向を示す。また横方向において、
図3における下側(
図9における右側)は振動工具100の右側、
図3における上側(
図9における左側)は振動工具100の左側をそれぞれ定義する。なお、当該方向に係る定義は他の図面や構成における説明についても適宜使用される。
【0029】
図4および
図5に示す通りアウタハウジング102は、上側アウタハウジング構成要素102Aと下側アウタハウジング構成要素102Bとを上下方向に重ねて接合する(互いに対向した状態で組み付ける)ことにより構成される。この上側アウタハウジング構成要素102Aが本発明に係る「第1アウタハウジング構成要素」の一例であり、下側アウタハウジング構成要素102Bが本発明に係る「第2アウタハウジング構成要素」の一例である。
図5に示す通り上側アウタハウジング構成要素102Aは、上壁部102A1と、当該上壁部102A1から下方向に延在される側壁部102A2を有する。側壁部102A2は、上側アウタハウジング構成要素102Aの前側と、右側と、左側に構成される。すなわち、上側アウタハウジング構成要素102Aは後側が開放された構成とされる。下側アウタハウジング構成要素102Bは、下壁部102B1と、当該下壁部102B1から上方向に延在される側壁部102B2を有する。側壁部102B2は、下側アウタハウジング構成要素102Bの前側と、右側と、左側に構成される。すなわち、下側アウタハウジング構成要素102Bは後側が開放された構成とされる。
【0030】
上側アウタハウジング構成要素102Aと下側アウタハウジング構成要素102Bとは、
図4、
図7および
図8に示される介在部材103を介して一体化される。この介在部材103が本発明に係る「介在部材」の一例である。より具体的には、
図9および
図10に示す通り、上側アウタハウジング構成要素102Aと、下側アウタハウジング構成要素102Bと、上側アウタハウジング構成要素102Aと下側アウタハウジング構成要素102Bの間に配置された介在部材103とが固定部材1023により一体化される。この場合、上側アウタハウジング構成要素102Aと下側アウタハウジング構成要素102Bは、
図4および
図5に示すように、上下方向において互いに対向した状態で組み付けられることになる。この結果、
図9および
図10に示すように、上側アウタハウジング構成要素102Aと下側アウタハウジング構成要素102Bとが組み付けられて形成されるアウタハウジング接合部102Cは、アウタハウジング102の長軸方向に沿って延在状に形成されることとなるが(
図9、
図10における紙面法線方向)、上側アウタハウジング構成要素102Aにおける上壁部102A1は、かかるアウタハウジング接合部102Cの形成が回避された構成とされている。従って、当該アウタハウジングを使用者がハンドル部として把持する場合に、典型的に掌が当接する領域である上壁部102A1にアウタハウジング接合部102Cが存在せず、把持の際の違和感を与えることのない人間工学的に優れた構成を確保することができる。
なお、介在部材103は合成樹脂製であり、右側介在要素103Aと左側介在要素103Bとにより構成される。固定部材1023はネジにより構成される。なお、
図9は
図3のII−II線断面図、
図10は
図2のIII−III線断面図である。
【0031】
当該構成によって、アウタハウジング102は、上壁部102A1、側壁部102A2、下壁部102B1、側壁部102B2に囲まれた収容空間1021を構成する。また、側壁部102A2と側壁部102B2の当接部分にはアウタハウジング接合部102C(
図1参照)が構成される。上述の通り、当該アウタハウジング接合部102Cは、上壁部102A1への形成が回避された状態で、前後方向に延在される。
【0032】
なお、
図1および
図3に示す通り、アウタハウジング102の前後方向における中央領域は、横方向においてアウタハウジング102の前方領域および後方領域よりも短く(細く)構成された短尺部107を有する。後述する通り振動工具100は、前方領域にブラシレスモータ115を収容し、後方領域にコントローラ180およびバッテリ装着部109を収容する(
図2参照)。すなわち、横方向において比較的長い寸法を有する部品が前方領域と後方領域に配置され、これにより中央領域に短尺部107が設けられる。短尺部107は、使用者の手に合わせたハンドル部として寸法設定が適宜行われる。このブラシレスモータ115が本発明に係る「モータ」および「ブラシレスモータ」の一例であり、コントローラ180が本発明に係る「コントローラ」の一例である。
【0033】
図1に示す通り短尺部107における上壁部102A1にはスライドスイッチ108aが、側壁部102A2にはダイヤルスイッチ108bがそれぞれ設けられる。スライドスイッチ108a、ダイヤルスイッチ108bおよびバッテリ装着部109は、コントローラ180と電気的に接続される。コントローラ180はブラシレスモータ115に設けられた複数のコイルを制御するためのスイッチング素子、中央演算処理装置(CPU)、コンデンサなどを基板に配置して構成される。
【0034】
短尺部107が上述の構成を有することから、使用者は、掌にアウタハウジング接合部102Cが当接しない状態でスライドスイッチ108aまたはダイヤルスイッチ108bを操作することができる。
なお
図2に参照される通り、スライドスイッチ108aが操作された場合には、コントローラ180がブラシレスモータ115を駆動することによりブレード145が振動される。また、ダイヤルスイッチ108bが操作された場合には、コントローラ180がブラシレスモータ115の回転数を変更することによりブレード145の振動速度が変更される。
【0035】
(インナハウジング)
図2に示す通りインナハウジング104は、駆動機構ハウジング106と固定部材105aにより一体化される。インナハウジング104は合成樹脂製であり、駆動機構ハウジング106は金属製である。固定部材105aはネジにより構成される。
図2に示す通り、駆動機構ハウジング106は、ブラシレスモータ115の出力によりブレード145を駆動する駆動機構120を収容する。
【0036】
図4および
図6に示す通り、インナハウジング104は、右側インナハウジング構成要素104Aと左側インナハウジング構成要素104Bとが、横方向に互いに対向した状態で組み付けられ、固定部材105bにより一体的に接合される。接合においては、特に
図4に示されるように、ブラシレスモータ115、およびスピンドル124を収容した駆動機構ハウジング106が、左側インナハウジング構成要素104Bに設置された状態とされ、更に
図6に示すようにコントローラ180およびバッテリ装着部109も左側インナハウジング構成要素104Bに設置された状態とされており、そこに右側インナハウジング構成要素104Aが横方向から組み付けられることになる。接合の結果、
図7および
図8に示すように、インナハウジング接合部104Cが前後方向に線状に延在した状態で、一体のインナハウジング104が形成されることになる。固定部材105bはネジにより構成される。この右側インナハウジング構成要素104Aが本発明に係る「第1インナハウジング構成要素」の一例であり、左側インナハウジング構成要素104Bが本発明に係る「第2インナハウジング構成要素」の一例である。
【0037】
図2に示すように、ブラシレスモータ115の出力軸部115a、スピンドル124の回動軸、および当該スピンドル124を収容する駆動機構ハウジング106は、いずれも上下方向に長軸延在成分を有する部材構成とされているが、これらの上下方向に長く形成された機構部材をインナハウジング104に設置する場合、
図4に示すように、右側インナハウジング構成要素104Aおよび左側インナハウジング構成要素104Bが、横方向において対向状に組み付けられるのが合理的である。仮に各インナハウジング構成要素を上下方向において組み付ける構造を採用した場合、当該上下方向に長軸延在成分を有する機構部材を一方のインナハウジング構成要素に組み付ける際に目視作業が困難になるからである。本実施の形態では、このような不具合を回避し、外部に露出した状態の右側インナハウジング構成要素104Aに各種の機構部材を容易に設置してプレアセンブリとし、そこに左側インナハウジング構成要素104Bを横方向から重ね合わせて組み付ければよいため、インナハウジング104の製造が容易化されることとなる。また、このように右側インナハウジング構成要素104Aが外部に露出した状態を利用して機構部材を設置する構成の場合、
図4および
図6に示すように、コントローラ180およびバッテリ装着部109についても予めプレアセンブルした状態で、右側インナハウジング構成要素104Aに設置できるので製造性の向上が確保できることになる。
【0038】
なお
図6に示す通り右側インナハウジング構成要素104Aは、右壁部104A1と、当該右壁部104A1から左方向に延在される側壁部104A2を有する。側壁部104A2は、右側インナハウジング構成要素104Aの前側と、上側と、下側に構成される。すなわち、右側インナハウジング構成要素104Aは後側が開放された構成とされる。左側インナハウジング構成要素104Bは、左壁部104B1と、当該左壁部104B1から右方向に延在される側壁部104B2を有する。側壁部104B2は、左側インナハウジング構成要素104Bの前側と、上側と、下側に構成される。すなわち、左側インナハウジング構成要素104Bは後側が開放された構成とされる。
【0039】
当該構成によって、インナハウジング104は、右壁部104A1、側壁部104A2、左壁部104B1、側壁部104B2に囲まれた内部空間を構成する。また
図7および
図8に示す通り、側壁部104A2と側壁部104B2の当接部分にはインナハウジング接合部104Cが構成される。インナハウジング接合部104Cは、上下方向に位置するとともに前後方向に延在される。
【0040】
図2および
図6に示す通りインナハウジング104の内部空間は、モータ収容空間1041と、接続部収容空間1042と、コントローラ収容空間1043と、バッテリ装着部収容空間1044が設けられる。
図2に示す通りインナハウジング104において、モータ収容空間1041は前方領域に、接続部収容空間1042は中央領域に、コントローラ収容空間1043およびバッテリ装着部収容空間1044は後方領域にそれぞれ設けられる。この接続部収容空間1042が本発明に係る「接続部収容空間」の一例である。
【0041】
図6に示す通り、モータ収容空間1041には、ブラシレスモータ115を配置するためのリブ(モータ配置部)が設けられる。接続部収容空間1042には、ブラシレスモータ115とコントローラ180とを電気的に接続する接続部を配置するためのリブ119a(接続部配置部)が設けられる。当該接続部(図示省略)は、給電ケーブルと信号伝達ケーブルにより構成される。当該接続部は本発明に係る「接続部」の一例である。コントローラ収容空間1043には、コントローラ180を配置するためのリブ(コントローラ配置部)が設けられる。バッテリ装着部収容空間1044には、バッテリ装着部109を配置するためのリブ(バッテリ装着部配置部)が設けられる。このバッテリ装着部109が本発明に係る「バッテリ装着部」の一例である。
図2に示されるバッテリ装着部109は、バッテリ190の給電端子と電気的に接続される受電端子が設けられる。またバッテリ装着部109は、バッテリ190を上下方向にスライド移動することにより当該バッテリ190を着脱可能とするよう構成される。なお
図2に示す通りコントローラ180は、バッテリ190をバッテリ装着部109に装着する際のスライド移動方向(上下方向)に延在状に配置されている。当該構成によって、前後方向におけるアウタハウジング102の後方領域の短尺化を図ることができる。
【0042】
図4、
図6、
図7および
図8に示す通り、インナハウジング104の後方領域には吸気口1045が設けられる。なお、吸気口1045は右側インナハウジング構成要素104Aと左側インナハウジング構成要素104Bの双方に設けられる。コントローラ180は吸気口1045の直下に設けられる。またモータ収容空間1041が形成されるインナハウジング104の前方領域には排気口1046が設けられる。また、接続部収容空間1042は吸気口1045と排気口1046とを連続するエア通路119を構成する。ブラシレスモータ115の出力軸部115a(
図13参照)に取り付けられた冷却ファン118が回転駆動されると、外部のエアが吸気口1045から吸入され、エア通路119を経由しつつ排気口1046から外部へと排出されるエア流路が構築され、このエア流路によって、コントローラ180とブラシレスモータ115を効率的に冷却することができる。接続部収容空間1042をエア通路119とすることにより、インナハウジング104の内部空間を効率的に活用することができる。
【0043】
なお
図2に示す通り、アウタハウジング102の後方領域とインナハウジング104の後方領域との間には間隙が形成されており、当該間隙が本体吸気口1024に該当する。これによって、冷却ファン118の回転駆動により流動したエアを本体吸気口1024から吸気口1045へと導くことができる。
【0044】
(弾性部材)
アウタハウジング102と駆動機構ハウジング106、アウタハウジング102とインナハウジング104とはそれぞれ弾性部材により連結される。これにより、駆動機構ハウジング106の振動がアウタハウジング102へ伝達することを抑制することができる。弾性部材は、前方弾性部材110aと、中間弾性部材110bと、後方弾性部材110cとにより構成される。この弾性部材が本発明に係る「弾性部材」の一例である。
【0045】
図10に示す通り、介在部材103の凸部1031と、駆動機構ハウジング106との間には4つの前方弾性部材110aが配置される。4つの前方弾性部材110aは、上下方向に離間されて配置される上下配置グループと、横方向に離間して配置される横方向グループとを構成する。横方向グループにおける前方弾性部材110aは、右側介在要素103Aと駆動機構ハウジング106との間に配置される右側弾性要素110a1と、左側介在要素103Bと駆動機構ハウジング106との間に配置される左側弾性要素110a2とにより構成される。
【0046】
上述した通り、駆動機構ハウジング106はインナハウジング104と一体化され、介在部材103はアウタハウジング102と一体化されているため、前方弾性部材110aによってインナハウジング104とアウタハウジング102とが連結される。前方弾性部材110aはゴム製の弾性要素によって構成され、凸部1031を被覆するよう配置される。また駆動機構ハウジング106には、前方弾性部材110aを備える凸部1031が配置される凹部を有する。当該構成によって前方弾性部材110aは、駆動機構ハウジング106とアウタハウジング102において、前後方向、上下方向、横方向の各方向に対応可能に配置される。換言すれば、駆動機構ハウジング106に発生する全方向の振動に対して対応可能な状態で介在配置されることとなる。
【0047】
なお
図3に示す通り、アウタハウジング102の収容空間1021において、ブラシレスモータ115のステータ115b(
図2参照)と駆動機構ハウジング106との間の領域には固定部材1023が配置される固定部材収容空間1022が形成される。この固定部材収容空間1022は、前方弾性部材110aが収容される弾性部材収容空間を兼用する。これによって、収容空間1021を有効に活用することができる。この固定部材収容空間1022が本発明に係る「固定部材収容空間」の一例であり、ステータ115が本発明に係る「ステータ」の一例である。
【0048】
図7、
図8、
図11および
図12に示す通り、インナハウジング104の後方領域とアウタハウジング102の後方領域の間には4つの後方弾性部材110cが配置される。なお、
図11は
図2におけるIV−IV線断面図であり、
図12は
図2におけるV−V線断面図である。4つの後方弾性部材110cは、上下方向に離間されて配置される上下配置グループと、横方向に離間して配置される横方向グループとを構成する。後方弾性部材110cはゴムで構成される。
【0049】
図7および
図11に示す通り上下配置グループにおける上側の後方弾性部材110cは、インナハウジング104とアウタハウジング102との間の空間に配置される。当該上側の後方弾性部材110cは、前後方向と、上下方向と、横方向に延在する構成とされている。また、
図8および
図12に示す通り上下配置グループにおける下側の後方弾性部材110cは、インナハウジング104とアウタハウジング102との間における空間に配置される。当該下側の後方弾性部材110cは、前後方向と、上下方向と、横方向に延在する構成とされている。
当該構成によって後方弾性部材110cは、インナハウジング104の後方領域とアウタハウジング102の後方領域において、振動工具100の前後方向、上下方向、横方向の各方向に対応可能に配置される。換言すれば、後方弾性部材110cは、全方向に関する振動に対応可能な状態で介在配置されることとなる。
【0050】
なお他の構成として、後方弾性部材110cは、インナハウジング104の後方領域と中間領域の境界と、アウタハウジング102の後方領域と中間領域の境界に配置することもできる。また後方弾性部材110cは、インナハウジング104の中央領域とアウタハウジング102の中央領域との間に配置することができる。また後方弾性部材110cは、インナハウジング104の後方領域とアウタハウジング102の中央領域との間に配置することができる。また後方弾性部材110cは、インナハウジング104の中央領域とアウタハウジング102の後方領域との間に配置することができる。
【0051】
図3、
図7および
図8に示されるインナハウジング104の中央領域は、合成樹脂で形成することで可撓性が付与されており、この結果、インナハウジング104の中央領域が中間弾性部材110bを兼務する構成とされている。中間弾性部材110bは、前後方向に延在するとともに当該前後方向周りに変形可能である。このため、駆動機構ハウジング106に発生する振動がインナハウジング104の後方領域に伝達することを効果的に抑制することができる。
【0052】
(駆動機構)
図2、
図13、
図14および
図15に基づき、駆動機構120の構成を説明する。なお、
図13は駆動機構120を示す拡大断面図、
図14は
図2のVI−VI線断面図、
図15は
図1のVII−VII線断面図である。
図2および
図13に示す通り、駆動機構120は、偏心軸部121と、駆動ベアリング122と、被駆動アーム123と、スピンドル124とを主体として構成される。このスピンドル124が本発明に係る「スピンドル」の一例である。なお、スピンドル124は円筒状に構成されており、当該スピンドル124内にクランプシャフト127が着脱自在に配置される。また振動工具100は、振動工具100に対するクランプシャフト127のロックおよびロック解除を行うロック機構130と、当該ロック機構130を使用者が手動操作するためのロック操作機構150を有する。
【0053】
図13に示す通り駆動機構ハウジング106は、第1駆動機構ハウジング106Aと、第2駆動機構ハウジング106Bとを有し、当該第1駆動機構ハウジング106Aと第2駆動機構ハウジング106Bとの間に、駆動機構120と、ロック機構130と、ロック操作機構150とが配置される。第1駆動機構ハウジング106Aと第2駆動機構ハウジング106Bは固定部材1061により一体化される。固定部材1061はネジにより構成される。
図13に示す通りスピンドル124の回動軸方向は、ブラシレスモータ115の出力軸部115aと平行とされる。出力軸部115aの先端に取り付けられた偏心軸部121は、上側のベアリング121bと下側のベアリング121cによって回転可能に支持されている。このベアリング121bと121cは、駆動機構ハウジング106に保持される。
【0054】
図13および
図14に示す通り被駆動アーム123は、偏心軸部121の偏心部121aに取り付けられた駆動ベアリング122の外周部に当接するよう構成されたアーム部123aと、スピンドル124の所定領域を包囲するとともに、当該スピンドル124に固定される固定部123bとを有する。被駆動アーム123とスピンドル124は、ブラシレスモータ115よりも下側に配置される。当該構成によって、スピンドル124の必要寸法を低減することができ、上下方向におけるスピンドル124の短尺化を図ることができる。また、当該構成によって、上下方向におけるブレード145と被駆動アーム123の位置を近づけることが可能となる。そのため、被駆動アーム123とブレード145の距離に応じて生じる偶力が低減される。これにより、加工作業時に、被加工材に対するブレード145の作用によって生じる振動が抑制される。
図13に示す通りスピンドル124は、クランプシャフト127とともにブレード145を挟持するためのフランジ状の工具保持部126を有する。スピンドル124は、上側のベアリング124aと下側のベアリング124bによって回転可能に支持されている。
【0055】
図13に示されるクランプシャフト127は、スピンドル124に挿入可能とされる略円柱状の部材である。クランプシャフト127の上側には係合溝部127aが、下側にはフランジ状のクランプヘッド127bがそれぞれ設けられる。クランプシャフト127がスピンドル124に挿入された状態にあっては、係合溝部127aがロック機構130に保持され、クランプヘッド127bと工具保持部126の間にブレード145が挟持される。
【0056】
ブラシレスモータ115が駆動されると、出力軸部115aの回転によって偏心軸部121の偏心部121aと駆動ベアリング122がモータ回動軸方向の周りを回転移動する。これにより被駆動アーム123がスピンドル124の回動軸を中心として円弧状に往復駆動される。その結果、スピンドル124とクランプシャフト127に挟持されたブレード145が円弧状に往復駆動され、所定の加工作業(例えば、切断等)が遂行可能となる。
【0057】
(ロック機構)
図13に示されるロック機構130はクランプシャフト127を保持する機構である。
図13に示す通りロック機構130は、クランプ部材131、カラー部材135、第1コイルスプリング134、蓋部材137、ベアリング135bを主体として構成されており、これらの部品は、ロック機構アセンブリを構成する。また、ロック機構130はクランプシャフト127を下側から上側へと付勢する付勢機構140を有する。付勢機構140は、支持部材141と第2コイルスプリング142を主体として構成される。
【0058】
図13に示す通り支持部材141は、クランプシャフト127を挿通する中空状の略円筒部材であり、ベアリング124aにより回転可能に支持されている。ベアリング124aは、スピンドル124と支持部材141をともに支持するよう構成される。当該構成によって、ベアリングの部品点数削減を図るとともに、上下方向における短尺化を図ることが可能となる。第2コイルスプリング142は支持部材141に挿通される。支持部材141の下側は第2コイルスプリング142の下側端部が当接されるようフランジ状に構成される。また、支持部材141の上側端部はクランプ部材131がブレード145を交換する場合の位置(解除位置)に置かれた状態において、クランプ部材131を支持するよう構成される。
【0059】
図13に示す通りロック機構130は、スピンドル124の回動軸方向において、支持部材141の上側の端部と、第1駆動機構ハウジング106Aとの間に配置される。ロック機構130とスピンドル124がそれぞれ独立した構成を有するとともに離間して配置されるため、ロック機構130の設計をスピンドル124に依存することなく行うことが可能となる。
【0060】
図13に示す通りクランプ部材131は、クランプシャフト127の径方向において当該クランプシャフト127の係合溝部127aを挟持する一対の部材で構成されている。それぞれのクランプ部材131は、上下方向と交差する方向に移動可能に構成されている。さらにクランプ部材131におけるクランプシャフト127と対向する内面領域には、係合溝部127aと係合可能な複数の凸部が構成される。さらにクランプ部材131は、上下方向に対して傾斜するクランプ部材傾斜部131aを有する。
図13に示す通り、当該クランプ部材傾斜部131aは2か所設けられている。
【0061】
図13に示す通り、クランプ部材131と蓋部材137との間には第1コイルスプリング134がそれぞれのクランプ部材131に対して配置される。第1コイルスプリング134は、クランプ部材131を下側に向かって付勢することによってクランプ部材131の姿勢を安定させる。
図13に示されるカラー部材135は、クランプ部材131によるクランプシャフト127の挟持状態を制御するための部材である。カラー部材135は、クランプ部材131が配置されるとともに、クランプシャフト127を挿通するための孔部を有する。カラー部材135の外側領域には、カラー部材135を回転可能に支持するためのベアリング135bが配置される。ベアリング135bは、第2駆動機構ハウジング106Bに対し摺動可能に構成される。
【0062】
当該構成によって、ロック機構アセンブリがスピンドル124の回動軸方向において移動可能とされる。カラー部材135は、スピンドル124の回動軸方向に対して傾斜するカラー部材傾斜部135aを有する。なお、カラー部材傾斜部135aとクランプ部材傾斜部131aとは互いに摺接するよう構成されるため、カラー部材傾斜部135aはクランプ部材傾斜部131aに対応して2か所設けられる。
【0063】
図13に示す通り、カラー部材135が第2コイルスプリング142に付勢されるとともに、クランプ部材131が第1コイルスプリング134に付勢されて、カラー部材傾斜部135aがクランプ部材傾斜部131aに当接する。これによりクランプ部材131は、クランプシャフト127の径方向内側に向かって移動される。その結果、クランプ部材131の凸部とクランプシャフト127の係合溝部127aが係合した状態で、2つのクランプ部材131がクランプシャフト127を挟持する。クランプシャフト127は、クランプ部材131に挟持された状態で、第2コイルスプリング142によって上側に付勢される。これにより、クランプシャフト127のクランプヘッド127bとスピンドル124の工具保持部126の間にブレード145が挟持される。
【0064】
(ロック操作機構)
図13および
図15に示されるロック操作機構150は、ロック機構130を操作するよう構成される。より具体的には、ロック操作機構150は、カラー部材135を上下方向に移動させるよう構成される。カラー部材135が上下方向に移動されることで、クランプ部材131とクランプシャフト127の係合と解除とが切り換えられる。
図13および
図15に示す通りロック操作機構150は、使用者に操作されるハンドル部151と、当該ハンドル部151と連動する回動軸部151aとを主体として構成される。
図15に示す通り回動軸部151aは、蓋部材137と第1駆動機構ハウジング106Aとの間において駆動機構ハウジング106を貫通して配置される。回動軸部151aの両端部には、カラー部材135に当接可能に構成された一対のカム部151bが設けられる。一対のカム部151bの間には偏心軸部151cが設けられる。
【0065】
図13および
図15はブレード145が振動工具100に装着された状態を示す。当該状態にあっては、カム部151bがカラー部材135に当接しないよう構成される。当該状態のカラー部材135は、第2コイルスプリング142によって上側に付勢されるため、カラー部材傾斜部135aとクランプ部材傾斜部131aが当接する。これにより、クランプ部材131がクランプシャフト127に向かって移動され、2つのクランプ部材131によってクランプシャフト127が挟持される。また偏心軸部151cは、第1駆動機構ハウジング106Aから離間した位置に置かれる。また支持部材141の上端部はクランプ部材131と非接触状態とされる。
上述した通り、当該状態におけるクランプシャフト127の位置はブレード145を保持する保持位置を規定し、クランプ部材131の位置はクランプシャフト127と係合する係合位置を規定し、カラー部材135の位置はクランプ部材131を係合位置に維持する維持位置を規定する。
【0066】
一方、ブレード145を取り外す場合には、使用者がハンドル部151を回動することによって回動軸部151aが回動される。当該ハンドル部151の回動状態にあっては、カム部151bがカラー部材135に当接し、第2コイルスプリング142の付勢力に抗してカラー部材135を下側に移動させる。この結果、支持部材141の上端部がクランプ部材131と当接し、クランプ部材131がカラー部材135に対して相対的に移動される。
【0067】
クランプ部材131がカラー部材135に対して相対的に上側へ移動されることにより、クランプ部材傾斜部131aとカラー部材傾斜部135aの当接が解除され、クランプ部材131がクランプシャフト127から離間する方向へ移動可能となる。すなわち、クランプ部材131によるクランプシャフト127のクランプ力が減少する。この状態で、クランプシャフト127を下方に引き抜くことで、クランプシャフト127がスピンドル124から取り外される。クランプシャフト127の挟持が解除されることで、ブレード145の挟持が解除される。これにより、先端工具としてのブレード145を交換することができる。
【0068】
当該状態におけるカラー部材135の位置はクランプ部材131の解除位置への移動を許容する許容位置を規定し、クランプ部材131の位置はクランプシャフト127との係合を解除する解除位置を規定し、クランプシャフト127の位置はブレード145を開放する開放位置を規定する。
なお、偏心軸部151cは、第1駆動機構ハウジング106Aと当接する位置に置かれる。
【0069】
(振動工具の動作)
次に
図1、
図2および
図13に基づき、加工作業を行う場合の振動工具100の動作を説明する。使用者は、短尺部107を把持するとともにスライドスイッチ108aをオンに切り替える。これによって、コントローラ180がブラシレスモータ115を回転駆動することに伴い、駆動ベアリング122が偏心軸部121とともに回転される。この結果、駆動ベアリング122が被駆動アーム123を駆動することにより、スピンドル124とともにブレード145が回動軸部を中心として往復回動を行う。当該状態において、使用者がブレード145を被加工材に当接させることにより、加工作業を行うことが可能となる。なお当該一連の加工作業にあっては、アウタハウジング接合部102Cの上壁部102A1(短尺部107の上部を含む)への形成が回避されていることから、当該上壁部使用者は掌に違和感を覚えることがなく、加工作業時の作業性を向上させることが可能とされる。
【0070】
また加工作業においては、インナハウジング104の後方領域にコントローラ180が配置され、バッテリ190が装着されている。これによって、駆動機構ハウジング106とインナハウジング104の慣性モーメントが増加されるため、駆動機構ハウジング106の振動を低減することができる。
【0071】
また、ブラシレスモータ115の回転駆動に伴い冷却ファン118が回転駆動される。これに伴い、本体吸気口1024から流入されたエアが吸気口1045からインナハウジング104内に取り込まれ、エア通路119を介して排気口1046から排出される。このエアの移動に伴い、吸気口1045の直下に配置されたコントローラ180と、ブラシレスモータ115とが冷却される。
【0072】
上述したように、本実施の形態による振動工具100によれば、高い製造効率を維持しつつ、人間工学的に優れた技術が構築されることとなる。
なお、以上の実施形態では振動工具100を用いて説明したが、本発明に係る作業工具は、これに限定されるものではない。例えば、グラインダや丸鋸のように先端工具が回転する作業工具に適用してもよい。また前方弾性部材110a、中間弾性部材110b、後方弾性部材110cは任意の数にて設定することができる。
【0073】
また本実施形態では、バッテリ190を電源として駆動するブラシレスモータ115が例示されているが、振動工具100は、バッテリ190に代えて外部電源を利用可能に構成することができる。具体的にはアウタハウジング102の後方領域に、外部電源に接続可能、且つ、コントローラ180に電気的に接続される電源ケーブルを接続することができる。ブラシレスモータ115が直流モータの場合には、コントローラ180は、外部電源から供給される交流電流を直流電流に変換するコンバータとしての機能を有するものとして構成することができる。一方、ブラシレスモータ115として、交流モータが採用されてもよい。
【0074】
(本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係)
本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下の通り示す。なお、本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものであり、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
振動工具100は本発明に係る「作業工具」の一例である。ブレード145は本発明に係る「先端工具」の一例である。アウタハウジング102は本発明に係る「アウタハウジング」の一例である。インナハウジング104は本発明に係る「インナハウジング」の一例である。上側アウタハウジング構成要素102Aは本発明に係る「第1アウタハウジング構成要素」の一例である。下側アウタハウジング構成要素102Bは本発明に係る「第2アウタハウジング構成要素」の一例である。介在部材103は本発明に係る「介在部材」の一例である。ブラシレスモータ115は本発明に係る「モータ」および「ブラシレスモータ」の一例である。コントローラ180は本発明に係る「コントローラ」の一例である。右側インナハウジング構成要素104Aは本発明に係る「第1インナハウジング構成要素」の一例である。左側インナハウジング構成要素104Bは本発明に係る「第2インナハウジング構成要素」の一例である。接続部収容空間1042は本発明に係る「接続部収容空間」の一例である。バッテリ装着部109は本発明に係る「バッテリ装着部」の一例である。スピンドル124は本発明に係る「スピンドル」の一例である。固定部材収容空間1022は本発明に係る「固定部材収容空間」の一例である。ステータ115は本発明に係る「ステータ」の一例である。