(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分散溶媒と当該分散溶媒中に分散したカーボンナノチューブとを通過させるフィルタ部の表面を、炭素繊維束を織糸とする織布の少なくとも1表面に接触させて保持する工程と、
前記分散溶媒と前記分散したカーボンナノチューブとを含む分散液中に、前記フィルタ部が保持された前記織布を浸漬し、前記分散液に超音波振動を印加する工程と、
前記分散液から前記フィルタ部が保持された前記織布を取り出し、前記織布から前記フィルタ部を取り外す工程と
を備えることを特徴とする複合織物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(1)全体構成
図1に示す複合織物10は、織布12Aと、当該織布12Aの両面に形成された構造体14とを備える。織布12Aは、複数の炭素繊維を束ねた炭素繊維束17を織糸とする炭素繊維クロスである。本図に示す織布12Aは、炭素繊維束17を経糸18及び緯糸20とした平織りで形成されている。炭素繊維は、ポリアクリルニトリル、レーヨン、ピッチなどの石油、石炭、コールタール由来の有機繊維、木材や植物繊維由来の有機繊維を焼成することによって得られる、直径が約5〜20μmの繊維である。
【0013】
構造体14は、織布12Aの表面全体にわたって、均等に分散した複数のCNT16を含む。複数のCNT16は、互いに直接接続されており、ネットワーク構造を形成している。ここでいう直接接続とは、CNT16同士が、分散剤や界面活性剤、接着剤などで覆われておらず、互いに絡み合った状態で、CNT16同士の間に接着剤や分散剤、界面活性剤などの介在物を介さずに接続していることをいい、物理的な接続(単なる接触)と、化学的な接続とを含む。
【0014】
CNT16は、多層であるのが好ましい。またCNT16は、長さが0.1μm以上50μm以下であるのが好ましい。CNT16は長さが0.1μm以上であると、CNT16同士が絡まり合って直接接続される。またCNT16は長さが50μm以下であると、均等に分散しやすくなる。一方、CNT16は長さが0.1μm未満であるとCNT16同士が絡まりにくくなる。また、CNT16は長さが50μm超であると凝集しやすくなる。
【0015】
CNT16は、直径が30nm以下であるのが好ましい。CNT16は直径が30nm以下であると、柔軟性に富み、炭素繊維の表面の曲面に沿って変形する。一方、CNT16は直径が30nm超であると、柔軟性が乏しくなり、炭素繊維の表面に沿って変形しにくくなる。
【0016】
CNT16の直径は、20nm以下であるのがより好ましい。なおCNT16の直径は、以下で説明する方法によりCNT16を炭素繊維に付着させる前に、付着に用いるCNT16の一部を取り出し、当該CNT16を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって撮影された画像を用いて測定した平均直径とする。
【0017】
このような構造体14は、織布12Aの表面に直接固定されている。すなわち、CNT16は、炭素繊維の表面と共に接着剤や分散剤、界面活性剤などで覆われることで炭素繊維の表面に固定されているのではなく、接着剤や分散剤、界面活性剤などを介して炭素繊維に固定されているのでもなく、炭素繊維の表面に直接固定されている。ここでいう固定とは、ファンデルワールス力による炭素繊維とCNT16との結合、CNT16の表面に形成されたヒドロキシル基又はカルボキシル基を介しての炭素繊維とCNT16との化学的な結合を含んでいる。
【0018】
構造体14には、複数のCNT16が凝集した凝集部(本図には図示しない)が含まれる場合がある。ここでいう凝集部とは、2本以上のCNT16が物理的に絡み合っている状態をいう。本実施形態の場合、織布における凝集部の存在比率は、単位面積あたり25%以下である。
【0019】
上記複合織物10は、例えば母材として熱可塑性樹脂を含浸させて、炭素繊維強化成形体としてのCFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics)材に適用することができる。
【0020】
(2)製造方法
次に、本実施形態に係る複合織物10の製造方法を説明する。複合織物10は、CNT16を作製し、当該CNT16を含む分散液を調整し、当該分散液を用いて構造体14を織布12A表面に形成することにより製造することができる。以下、各工程について順に説明する。
【0021】
(CNTの作製)
CNT16は、例えば特開2007−126311号公報に記載されているような熱CVD法を用いて作製することができる。この場合、まず、シリコン基板上にアルミ、鉄からなる触媒膜を成膜し、触媒膜を熱処理して触媒膜表面に触媒粒子を形成する。次に、加熱雰囲気中で炭化水素ガスを触媒粒子に接触させて触媒粒子からCNT16を成長させることで、CNT16を作製できる。
【0022】
このようにして作製されたCNT16は、基板上において基板表面に対して垂直方向に直線的に配向しており、数百から数千という高いアスペクト比を有している。CNT16は、基板から刈り取って使用する。刈り取ったCNT16には、触媒粒子やその欠片などの触媒残渣が含まれている場合がある。触媒残渣は、作製したCNT16を、不活性ガス中で高温アニールしたり、酸処理したりして、取り除かれることが望ましい。
【0023】
なお、アーク放電法、レーザ蒸発法などその他の作製方法により、CNT16を得ることもできるが、CNT16以外の不純物(触媒残渣など)を極力含まない方法でCNT16を作製するのが望ましい。この不純物についても、触媒残渣と同様に除去することが望ましい。
【0024】
(分散液の調整)
上記の方法で作製したCNT16が単離分散した分散液を調整する。単離分散とは、CNT16が1本ずつ物理的に分離して絡み合っていない状態で分散溶媒中に分散しており、2以上のCNT16が束状に集合した集合物の割合が10%以下である状態を意味する。CNT16が凝集した集合物の割合は、TEM画像からCNT16の本数と集合物の個数を測定して求める。
【0025】
まず上記の方法で作製したCNT16を所定温度の酸素雰囲気中で酸化する。このとき、CNT16表面の一部には、ヒドロキシ基やカルボキシ基などの官能基がCNT16表面に形成される。CNT16は、オゾン処理器を用いて酸化してもよく、例えば硝酸と硫酸の混酸(比率は任意に決めることができる)、あるいは過酸化水素水と硫酸の硫酸過水(比率は任意に決めることができる)にCNT16を浸漬して酸化してもよい。
【0026】
次に、表面を酸化したCNT16を、所定の質量濃度となるように、分散溶媒に投入し、ホモジナイザーや高圧せん断、超音波分散機などによりCNT16を均一に分散させることで、CNTが単離分散した分散液を生成できる。
【0027】
分散溶媒としては、水、アルコール類(エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなど)、有機溶媒(トルエン、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、ヘキサン、ノルマルヘキサン、エチルエーテル、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチルなど)を用いることができる。なお、分散液は、織布12A及びCNT16の機能を制限しない限り、分散剤、界面活性剤、接着剤などを含有していてもよい。
【0028】
なお分散液は、上記した集合物の割合が10%以下である場合に限られず、単離分散したCNT16を一定程度含んでいるのが好ましい。
【0029】
(構造体の形成)
図2に示すように、所定の大きさに切断した、織布12Aと、フィルタ部22Aと、保持部24とを準備する。織布12Aは、炭素繊維クロスであり、表面にサイズ剤が塗布されている。フィルタ部22Aは、合成樹脂で形成されたメッシュを用いることができる。合成樹脂は、上記分散溶媒に対し耐性を有していれば足り、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル等から選択することができる。フィルタ部22Aとしてのメッシュの目開きは、840μm以下が好ましく、より好ましくは41μm以下である。なお目開きは、縦線及び横線の1インチ(25.4mm)間による目数をM、線径をdとすると、(25.4/M−d)で表される。保持部24は、金網を用いることができる。保持部24は、超音波が通過し得る目開き(0.6mm程度)を有しており、表面の中央が、厚さ方向に湾曲して突出している。
【0030】
織布12Aを挟んで両側に、フィルタ部22A、保持部24の順に配置し、積層体25を得る。保持部24は、湾曲して突出した面がフィルタ部22Aに接触するように配置する。保持部24の端部同士を図示しないクリップで挟むことにより、積層体25を一体化する。これによりフィルタ部22Aは、保持部24によって織布12Aの表面に押し付けられる。織布12Aとフィルタ部22Aの間の隙間は、100μm以下とされるのが好ましい。
【0031】
次に積層体25を樹脂除去剤に浸漬し、織布12A表面に塗布されているサイズ剤を除去する。樹脂除去剤として例えばMEK等の有機溶剤を用いることができる。サイズ剤が除去されると、炭素繊維束17同士の結束が解けるが、織布12Aは、保持部24によって固定されていることにより、平織りの状態で保持される。
【0032】
次いで、上記のようにして作製した分散液に、積層体25を浸漬し、分散液に超音波振動を付与する。分散液中に超音波振動が付与されると、分散液中では、CNT16が分散する状態と凝集する状態とが繰り返される可逆的反応状態が生じる。この可逆的反応状態は分散液中に積層体25が浸漬されている間も生じる。超音波振動は、保持部24およびフィルタ部22Aを通過し、織布12Aへ到達する。単離分散したCNT16は、この超音波振動によって、保持部24およびフィルタ部22Aを通過し、織布12Aへ到達する。そのため、織布12Aの炭素繊維表面においてもCNT16の分散状態と凝集状態との可逆的反応状態が生じ、CNT16が分散状態から凝集状態へ移る際に、炭素繊維表面にCNT16が絡み合って付着し、炭素繊維に構造体14が形成される。
【0033】
CNT16が凝集する際、CNT16は、CNT16表面に形成されたヒドロキシ基又はカルボキシ基を介して、又は、炭素繊維とCNT16との間に作用するファンデルワールス力により炭素繊維の表面に固定される。
【0034】
一方、分散液に含まれる集合物は、フィルタ部22Aを通過できず、織布12Aまで到達しない。したがってCNTの集合物は、フィルタ部22Aに付着するものの、フィルタ部22Aで遮られることにより、織布12A表面に付着することが防止される。また織布12Aとフィルタ部22Aの間は、隙間が100μm以下に保持されているので、織布12A表面において分散液の対流などの流れが生じず、CNT16は超音波振動によってのみ分散液中を移動する。これにより織布12Aに一旦付着したCNT16が分散液の流れによって剥がれることが防止されるので、CNT16の付着量が飛躍的に増加する。
【0035】
続いて、積層体25を分散液から取り出して、MEKで洗浄後、クリップを取り外して織布12Aからフィルタ部22Aおよび保持部24を取り除く。次いで、当該積層体25を乾燥する。最後にサイズ剤を塗布することで、構造体14が形成された織布12Aを備える複合織物10を得ることができる。なお構造体14は、織布12の織目、すなわち炭素繊維束17同士が重なった部分における炭素繊維束17の間には、CNT16が入り込まないので、形成されない。なお、積層体25を分散液から取り出して、直ちにクリップを取り外して織布12Aからフィルタ部22Aおよび保持部24を取り除いた後、MEKで洗浄することとしてもよい。
【0036】
(3)作用及び効果
本実施形態に係る複合織物10は、織布12Aの表面に隙間が100μm以下となるようにフィルタ部22Aを設けた状態で、分散液中で超音波振動により、CNT16を付着させ織布12Aの表面に構造体14を形成して、作製することとした。フィルタ部22Aに付着したCNTの集合物は、フィルタ部22A上で乾燥後CNTの凝集部となって、フィルタ部22Aと共に取り除かれる。
【0037】
上記のように構成された複合織物10と母材とを備えた炭素繊維強化成形体は、CNT16を含む構造体14を表面に有する複合織物10が、構造体14に起因した微細な凹凸を表面に有しているので、アンカー効果によって、複合織物10と母材との接着力が強化される。
【0038】
複合織物10におけるCNT16は弾性率が高いのに対して、樹脂材料の硬化物からなる母材は弾性率が低い。炭素繊維強化成形体においては、織布と母材の界面には、母材の一部とCNT16とによって、複合層が形成される。織布12Aと母材との間に介在する複合層は、急激な弾性率変化を抑制することにより、織布12Aと母材との界面における応力集中を緩和し、炭素繊維強化成形体の強度を向上することができる。因みに構造体に含まれる凝集部は、応力が集中するので、炭素繊維強化成形体の強度を低下させる原因となる。
【0039】
さらに複合織物10は、CNT16の凝集部が少ない構造体14を織布12Aの表面に形成することができる。これにより複合織物10は、炭素繊維強化成形体の強度を向上させることができる。したがって当該複合織物10を用いた炭素繊維強化成形体は、均一な複合層が得られるので、強度をより向上することができる。また複合織物10は、表面にCNT16の凝集部が少ないので、当該複合織物10を用いた炭素繊維強化成形体の表面の意匠性を向上することができる。
【0040】
上記「(2)製造方法」に示す手順にしたがって、実施例1に係る複合織物10を作製した。実施例1では、CNT16として、上述した熱CVD法によりシリコン基板上に直径10〜15nm、長さ100μm以上に成長させた多層カーボンナノチューブを用いた。
【0041】
作製したCNT16を硝酸と硫酸の混酸(比率は任意に決めることができる)、あるいは過酸化水素水と硫酸の硫酸過水(比率は任意に決めることができる)に浸漬し、洗浄後に濾過乾燥して触媒残渣を除去した。なお実施例1では、触媒残渣を除去するためにCNT16を混酸に浸漬したときに、CNT16の表面も酸化されているので、別途、CNT16の酸化処理を行っていない。
【0042】
作製したCNT16の長さが100μm以上と長いため、CNT16を分散溶媒としてのMEKに投入した後、CNT16が0.5〜10μmの長さになるまで超音波ホモジナイザーでCNT16を粉砕しつつ、CNT16を均一に分散させた。分散液におけるCNT16の濃度は0.025wt%とした。
【0043】
織布12Aとして炭素繊維織物(サカイオーベックス製、型(品)番:SA-32021、サイズ50×50mm)、フィルタ部22Aとしてナイロンメッシュ(NYTAL製、型(品)番:NY41-HC、サイズ80×80mm)、保持部24として工作ネット(吉田隆製、型(品)番:2004−45(T)、サイズ70×70mm)を用いた。積層体25を、樹脂除去剤に浸漬し、サイズ剤を除去した。樹脂除去剤はMEKを用いた。次いで、積層体25を分散液に浸漬し、分散液に対して130kHzの超音波を1分30秒間付与し続けた。その後、分散液から積層体25を取り出して、MEKで洗浄後、フィルタ部22A、保持部24を取り外して当該織布12Aを80℃のホットプレート上で乾燥した。最後にサイズ剤を塗布した後、複合織物10を得た。比較として、フィルタ部22Aおよび保持部24を用いない以外は、実施例1と同様の条件で、比較例1に係る複合織物10を作製した。
【0044】
図3Aに示すように、実施例1の複合織物10は、織布12Aの表面に凝集部がほとんど見られなかった。一方、
図3Bに示すように、比較例1の複合織物100は、織布12Aの表面に島状の凝集部101が複数認められた。
【0045】
実施例1の複合織物10は、
図4A及び
図4Bに示すように、炭素繊維21表面にCNT16が均一に付着しており、炭素繊維束17を構成する炭素繊維21同士がCNT16で互いに接続されている様子も確認された。
【0046】
次に分散液の違いによって、織布12Aの表面に形成される構造体14にどのような差異が生じるか検証した。実施例2に係る複合織物10は、実施例1と同じ条件で作製した。実施例2に係る複合織物10は、分散液の溶媒をエタノールに変更した以外は、実施例1と同じ条件で作製した。実施例2の結果を
図5A〜5C、実施例3の結果を
図6A〜6Cに示す。
図5Aに示すように、実施例2で用いた分散液26は、CNT16が完全に単離分散しているので、集合物は確認されなかった。一方、
図6Aに示すように、実施例3で用いた分散液28は、CNT16の集合物30が複数認められた。しかしながら、実施例2だけでなく、実施例3に係る複合織物10においても、織布12A表面に凝集部がほとんど認められず、炭素繊維21表面にCNT16が均一に付着しており、両者に差異がないという結果が得られた。このことから、本実施例に係る製造方法を用いることにより、分散液に含まれるCNT16の集合物30が織布12Aに付着するのを、フィルタ部22Aが防止することにより、凝集物を含んだ分散液であっても、凝集部の少ない複合織物10が得られることが確認できた。
【0047】
次に、フィルタ部22Aの目開きの大きさと、複合織物10表面に付着する凝集部の量との関係について検証した。実施例1に対し、フィルタ部22Aのみ変更し、実施例4〜7の複合織物10を作製した。実施例4のフィルタ部22AはNYTAL製(型(品)番:NY10-HC、目開き10μm)、実施例5のフィルタ部22AはNYTAL製(型(品)番:NY20-HC、目開き20μm)、実施例6のフィルタ部22AはNYTAL製(型(品)番:NY41-HC、目開き41μm)、実施例7のフィルタ部22Aはダイオ化成株式会社製(型番:ダイオクラウンネット、目開き840μm)を用いた。またフィルタ部22Aおよび保持部24を用いない以外は実施例1と同じ条件で比較例2の複合織物10を作製した。その結果を
図7A〜7Eに示す。フィルタ部22Aを用いない比較例2では、島状の凝集部101が多数認められた(
図7E)のに対し、
図7Dに示すように、目開き840μmのフィルタ部22Aを用いることで、凝集部101が、小さく点状であって、しかも数が減少することが確認できた。このことから、目開きが840μm以下のフィルタ部22Aを用いることにより、凝集部101の少ない複合織物10を作製できることが確認できた。
【0048】
(4)変形例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0049】
上記実施形態の場合、複合織物10を製造するにあたって、
図2に示すように織布12A、フィルタ部22A、保持部24を一体化した積層体を用いたが、本発明はこれに限らない。例えば、
図8に示すように織布12Bを挟んで両側にフィルタ部22Bを配置して積層体30を得る。
図9に示すように、積層体30を一端30Aに向かって他端30Cを丸めていく。積層体30をロール状に巻いた状態で、輪ゴム33で保持する(
図10)。因みに内側に配置されるフィルタ部22Aの長手方向に平行な縁部(
図8)31にそれぞれ、スペーサ(図示しない)を設けてもよい。スペーサが設けられていることにより、ロール状に巻いたとき、積層体30同士が重なる部分に隙間を設けることで、分散液が積層体30間に浸透しやすくなる。スペーサは、弾性変形可能な樹脂製の部材で、フィルタ部22Bの全長に渡って設けるのが好ましい。
【0050】
この状態で、上記実施形態と同様に、分散液中に積層体30を浸漬し、分散液に超音波振動を付与することにより、織布12Bの表面に構造体14が形成された複合織物10を得ることができる。フィルタ部22Bは、分散液中のCNT16の集合物を遮ることで、集合物が織布12Bまで到達しないので、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
しかも本変形例の場合、積層体25をロール状に巻いた状態で保持することにより、織布12Bとフィルタ部22Bの間のすき間を100μm以下とすることができるので、保持部24を省略することができる。本変形例では、織布12Bの両側にフィルタ部22Bを配置する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、ロール状に巻いたときに内側に配置されるフィルタ部22Bを省略してもよい。
【0052】
本変形例に係る製造方法にしたがって、実施例8に係る複合織物10を作製した。織布12Bとして炭素繊維織物(サカイオーベックス製、型(品)番:SA-32021、サイズ50×400mm)、フィルタ部22Bとしてダイオ化成株式会社製(型番:ダイオクラウンネット、サイズ70×450mm)を用いた以外は、上記実施例1と同じ条件で複合織物10を作製した。なお積層体30は、外径が55mmとなるようにロール状に巻いた。
【0053】
その結果、
図11A〜11Cに示すように、ロール状に巻いた積層体30の最も外側となる一端30A、積層体30の重なった部分である中央30B、最も内側となる他端30Cの3か所において、CNT16が均一に付着しており、凝集部がほとんど認められず、複合織物10の全体にわたって構造体14の形態に差異がなかった。このことから本変形例に係る製造方法においても、上記実施形態と同様の複合織物10を作製できることが確認できた。