(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703436
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】車両用カーテンエアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/232 20110101AFI20200525BHJP
B60R 21/213 20110101ALI20200525BHJP
【FI】
B60R21/232
B60R21/213
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-84652(P2016-84652)
(22)【出願日】2016年4月20日
(65)【公開番号】特開2017-105421(P2017-105421A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2019年1月22日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0174749
(32)【優先日】2015年12月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉 昌 鎭
【審査官】
森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−057028(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/111073(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/122623(WO,A1)
【文献】
特表2017−505732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側面窓側に配置される後面パネル、車両の室内側に配置され、後面パネルより前後方向へ長く形成され、周縁部が後面パネルの周縁部と重なった状態で、中央部が後面パネルより長くなった分だけ室内側に折り畳まれて突出した突出部を持つ前面パネル、及び突出部が後方に折り畳まれた状態で、前面パネルと後面パネルの周縁部を一緒に固定させる外側縫着線、を含み、
前記突出部は、上端が下端より前方に傾いて車両のステアリングホイールの角度に平行に形成されることを特徴とする車両用カーテンエアバッグ。
【請求項2】
前記突出部は、カーテンエアバッグの全開の際、運転席のエアバッグより後方に位置することを特徴とする請求項1に記載の車両用カーテンエアバッグ。
【請求項3】
前記突出部の前方に一定距離だけ離隔した地点に上下方向に設けられて前面パネルと後面パネルを一緒に固定することにより、突出部の前方膨脹範囲を制限する第1縫着線をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用カーテンエアバッグ。
【請求項4】
前記突出部の後方に一定距離だけ離隔した地点に上下方向に設けられて前面パネルと後面パネルを一緒に固定することにより、突出部の後方膨脹範囲を制限する第2縫着線をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用カーテンエアバッグ。
【請求項5】
前記突出部は、前方パネルの折畳部を中心に前方側面と後方側面からなり、突出部の内部には後方側面の中心と後面パネルを連結する内部テザーが設けられることにより、突出部が後方に傾いて展開するようにすることを特徴とする請求項1に記載の車両用カーテンエアバッグ。
【請求項6】
前記突出部は、カーテンエアバッグの全開の際、運転者エアバッグより後方に位置し、運転者エアバッグによって支持されることによって支持力を得ることを特徴とする請求項2に記載の車両用カーテンエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンエアバッグに係り、より詳しくは、車両の傾斜衝突状況で運転者が車両のAピラー部位とハードコンタクトすることを防止する車両用カーテンエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の機能及び便宜性だけでなく搭乗客の安全に対する関心が高くなるに従い、事故発生時に搭乗客を保護することができる安全関連装置の重要性が益々増大している。 搭乗客保護のための安全装置の中で、特にエアバッグシステムは車両の衝突状況で搭乗客の衝撃を分散させる最も基本になる保護装置である。
エアバッグは、運転席及び助手席の正面だけでなく、側面に対する衝突に備え、側面窓に沿って長く広がるサイドエアバッグ、カーテンエアバッグなどの種々のものがある。特に、車両の側面衝突に関連したエアバッグシステムは、通常搭乗客の頭部保護のためのカーテンエアバッグ(Curtain Air−Bag)と、搭乗客の側面胸部を保護するためのサイドエアバッグ(Side Air−Bag)に区分されて使われている。
一般に、カーテンエアバッグクッションは、自動車のルーフパネルの側面に沿って自動車の前後に長く設置され、インフレーターによってガスが流入すれば、ドアガラスと乗客との間に展開して、前座席及び後座席に座った乗客の頭部を保護する装置である。
但し、従来の2次元平面形カーテンエアバッグのみでは車両の傾斜衝突状況で運転者を充分に保護することができず、車両のAピラー部分とハードコンタクトをする状況が発生する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国特許公開第10−2004−0079246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、車両の傾斜衝突状況で運転者の頭部がカーテンエアバッグと運転者エアバッグの間の空間に入り、ハードコンタクトが発生する状況を防止することができるカーテンエアバッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明による車両用カーテンエアバッグは、車両の側面窓側に配置される後面パネル、車両の室内側に配置され、後面パネルより前後方向へ長く形成され、周縁部が後面パネルの周縁部と重なった状態で、中央部が後面パネルより長くなった分だけ室内側に折り畳まれて突出した突出部を持つ前面パネル、及び突出部が後方に折り畳まれた状態で、前面パネルと後面パネルの周縁部を一緒に固定させる外側縫着線、を含むことを特徴とする。
【0006】
前記突出部は、カーテンエアバッグ全開の際、運転席のエアバッグより後方に位置し、
上端が下端より前方に傾いて車両のステアリングホイールの角度に平行に形成され、
突出部の前方に一定距離だけ離隔した地点に上下方向に設けられて前面パネルと後面パネルを一緒に固定することにより、突出部の前方膨脹範囲を制限する第1縫着線をさらに含み、
突出部の後方に一定距離だけ離隔した地点に上下方向に設けられて前面パネルと後面パネルを一緒に固定することにより、突出部の後方膨脹範囲を制限する第2縫着線をさらに含むことを特徴とする。
【0007】
前記突出部は、前方パネルの折畳部を中心に前方側面と後方側面からなり、突出部の内部には後方側面の中心と後面パネルを連結する内部テザーが設けられることにより、突出部が後方に傾いて展開するようにすることができ、
カーテンエアバッグの全全開の際、運転者エアバッグより後方に位置し、運転者エアバッグによって支持されることによって支持力を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用カーテンエアバッグによれば、車両傾斜衝突状況においても運転者の頭部が車両のフレームと直接衝突することを防止して運転者の傷害を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例による車両用カーテンエアバッグの後面パネルを示す図である。
【
図2】本発明の実施例による車両用カーテンエアバッグの前面パネルを示す図である。
【
図3】本発明の実施例による車両用カーテンエアバッグを示す図である。
【
図6】本発明の実施例による車両用カーテンエアバッグの展開の際、突出部の形状を示す概略図である。
【
図7】本発明の他の実施例による
図3のB−B線に沿って見た断面図である。
【
図8】本発明の他の実施例による車両用カーテンエアバッグの展開の際、突出部の形状を示す概略図である。
【
図9】本発明の実施例による車両用カーテンエアバッグと運転席のエアバッグの支持構造を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
図1は本発明の実施例による車両用カーテンエアバッグ101の後面パネルを示す図、
図2は車両用カーテンエアバッグの前面パネル103を示す図、
図3は車両用カーテンエアバッグを示す図、
図4は
図3のA−A線に沿って見た断面図、
図5は
図3のB−B線に沿って見た断面図、
図6は車両用カーテンエアバッグの展開の際、突出部105の形状を示す概略図、
図7は
図3のB−B線に沿って見た断面図、
図8は車両用カーテンエアバッグの展開の際、突出部105の形状を示す概略図、
図9は車両用カーテンエアバッグと運転席のエアバッグ300の支持構造を示す概念図である。
【0011】
本発明による車両用カーテンエアバッグは、車両の側面窓側に配置される後面パネル101、車両の室内側に配置され、後面パネル101より前後方向へ長く形成され、周縁部が後面パネル101の周縁部と重なった状態で、中央部が後面パネル101より長くなった分のだけ室内側に折り畳まれて突出した突出部を持つ前面パネル103、及び突出部105が後方に折り畳まれた状態で前面パネル103と後面パネル101の周縁部を一緒に固定させる外側縫着線201、を含む。
本発明の理解に役立てるために、運転者エアバッグとカーテンエアバッグ間の関係を中心に説明するが、本発明は助手席エアバッグとカーテンエアバッグの間にも同様に適用できる。
【0012】
一般に、カーテンエアバッグクッションは、自動車のルーフパネルの側面に沿って自動車の前後に長く設置され、インフレーターによってガスが流入すれば、ドアガラスと乗客との間に展開して、前座席及び後座席に座った乗客の頭部を保護する装置である。
従来、車両の正面衝突や側面衝突状況においては、既存のカーテンエアバッグと運転者の正面の運転者エアバッグによって運転者を保護していた。ただ、傾斜衝突状況においては、予期しなかった運転者の挙動によって運転者を十分に保護することができない場合が発生した。
具体的に説明すれば、傾斜衝突状況において、運転者の頭部が運転者エアバッグとカーテンエアバッグの間に入り、車両のAピラー部位と衝突することになる状況が発生する。したがって、本発明は、運転者エアバッグとカーテンエアバッグの間に運転者の頭部が入らないように、カーテンエアバッグから室内空間側に突出する部分105を形成して運転者の頭部をキャッチ(Catch)するように構成されている。
【0013】
車両のドアガラス側に配置される後面パネル101と後面パネル101より前後方向への長さが長い前面パネル103を後面パネル101の周縁部と重ねた状態で、中央部が後面パネル101より長くなった分だけ室内側に折り畳まれて突出するようにし、突出部105が後方に折り畳まれた状態で、前面パネル103と後面パネル101の周縁部を一緒に固定させる。この際、カーテンエアバッグにガスが供給されれば、前面パネル103の折畳部が展開しながら突出するタックイン(Tuck−in)構造を形成することになる。すなわち、タックイン構造部分が車両の傾斜衝突時に運転者の頭部をキャッチする役目をする。これにより、運転者の頭部が運転者エアバッグとカーテンエアバッグの間に入り、車両のAピラー部位とハードコンタクトすることを防止することができる。
突出部105は、カーテンエアバッグの全全開の際、運転席エアバッグ300より後方に位置する。突出部105は上端が下端より前方に傾いて車両のステアリングホイールの角度に平行に形成できる。突出部105は、カーテンエアバッグ全開の際、運転者エアバッグより後方に位置して運転席エアバッグ300によって支持されることにより支持力を得ることができる。
【0014】
傾斜衝突状況において、前面パネル103の突出部105が運転者の頭部をキャッチすることにより、頭部が運転席エアバッグ300とカーテンエアバッグの間に入ることを1次に防止することができる。ただ、傾斜衝突の際、衝突強度が高いほど運転者の頭部がエアバッグにロードされる強度が高くなり、突出部105が固定できなければ、運転者頭の移動によって突出部位がそのまま前方に倒れて車両のAピラーと衝突する状況があり得る。
したがって、本発明は、カーテンエアバッグの突出部105が全開した運転席エアバッグ300によって支持されることにより、運転者の頭部が突出部105にロードされても突出部位が前方に倒れないようにするとともに運転者の頭部をキャッチすることができることになる。
【0015】
また、突出部が運転者のステアリングホイールの角度に平行に形成されることにより、安定に運転席エアバッグ300から支持力を得ることができるように構成されている。
また、突出部105の前方に一定距離だけ離隔した地点に上下方向に設けられ、前面パネル103と後面パネル101を一緒に固定することにより、突出部105の前方膨脹範囲を制限する第1縫着線203、をさらに含む。
突出部105の後方に一定距離だけ離隔した地点には、上下方向に設けられ、前面パネル103と後面パネル101を一緒に固定することにより、突出部105の後方膨脹範囲を制限する第2縫着線205、をさらに含む。
【0016】
カーテンエアバッグの前面パネル103の一定部分を突出させた後、後面パネル101と一緒に固定することにより、突出部105を形成することはできるが、突出部が残りの前面パネル103に対して形成する勾配角が緩い場合、運転者の頭部を効果的にキャッチすることができず、緩やかな傾斜に沿って運転者の頭部が突出部105を越える状況が発生する。また、突出部105の体積が大きい場合、突出部105を全開させるのに必要なガス量が増加して、展開速度が遅くなるとかインフレーターの容量増加をもたらすことがある。
したがって、本発明は、突出部105の前方及び後方に第1縫着線203及び第2縫着線205を設けることで、突出部105の勾配角が増加するようにし、突出部105の膨脹容積を制限して展開速度を向上させる一方で、インフレーター容量の増加を防ぐことができる。
【0017】
突出部105は前方パネルの折畳部を中心に前方側面と後方側面からなり、突出部105の内部には後方側面の中心と後面パネル101を連結する内部テザー207が設けられることにより、突出部105が後方に傾いて展開することができる。
本発明は、突出部105の内部において、後方側面の中心と後面パネル101を内部テザー207を介して連結することで、突出部105の展開の際、運転者側にもっと折られるようにして運転者の頭部をより確かにキャッチできるように構成されている。
【0018】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明が属する技術分野を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、車両の傾斜衝突状況で運転者の頭部がカーテンエアバッグと運転者エアバッグの間の空間に入り、ハードコンタクトが発生する状況を防止することができるカーテンエアバッグに適用可能である。
【符号の説明】
【0020】
101 後面パネル
103 前面パネル
105 突出部
201 外側縫着線
203 第1縫着線
205 第2縫着線
207 内部テザー
300 運転席エアバッグ