(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記顔料の色と、前記染料の発色後の色とは、染色されていない状態の前記浸透性媒体の色と同系色でないことを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載の印刷済媒体製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
顔料インクを使用してインクジェット印刷によって印刷済みの布を製造する方法においては、水性の顔料インクを使用して表面が粗面で浸透性の大きい、綿などの布にインクジェット印刷する場合、顔料インクは、インクジェットヘッドから吐出されて記録媒体としての布の表面に付着した後、布を構成する網目の中にまで一部が浸透するので、布の表面に残る量が減少する。そのため、同一の顔料インクを同一の量だけ使用してプラスチックフィルム等の非浸透性の記録媒体にインクジェット印刷する場合と比較して、記録媒体の表面の印刷濃度が低下するので、印刷の品質が十分でない。ここで、顔料インクを使用してインクジェット印刷によって印刷済みの布を製造する方法においては、印刷に使用する顔料インクの量を増やすことによって布の表面の印刷濃度を向上することはできるが、使用する顔料インクの量を増やすと、布における顔料インクの滲みが大きくなり、やはり印刷の品質が十分でなくなる。
【0007】
また、顔料インクを使用してインクジェット印刷によって印刷済みの布を製造する方法においては、高さが高い毛羽が表面に多数立っている、絨毯やタオルのような布に顔料インクを使用してインクジェット印刷する場合、顔料がインクジェットヘッドから吐出されて布の表面の毛羽に捕まるので、布の表面全体を染色することができない。そのため、印刷の品質が十分ではない。
【0008】
また、顔料インクを使用してインクジェット印刷によって印刷済みの布を製造する方法においては、
図7(a)および
図7(b)に示すように、顔料インク911aは、図示していないインクジェットヘッドから吐出されて布990の表面990aに付着するが、布990を構成する繊維991の中にまで浸透しない。そのため、顔料インク911aを使用してインクジェット印刷された布990に強い摩擦が加えられると、布990の繊維991が回転したり移動したりして、
図7(c)および
図7(d)に示すように、布990のうち顔料が付着していない部分990bが布990の表面990aに現れる場合があるので、布990の表面990aの印刷濃度が低下する。このように、布990のうち顔料が付着していない部分990bが強い摩擦によって布990の表面990aに現れる傾向は、布が湿潤して柔らかい状態である場合に、特に顕著に表れる。すなわち、顔料インクを使用してインクジェット印刷によって印刷済みの布を製造する方法は、摩擦堅牢度、特に、湿潤時の摩擦堅牢度や、洗濯堅牢度が低い。
【0009】
また、顔料が布の繊維自体を染色することができないので、顔料インクを使用してインクジェット印刷によって印刷済みの布を製造する方法においては、
図8(a)および
図8(b)に示すように、顔料インク911aがインクジェットヘッド(図示していない。)から吐出されて布990の表面990aに付着した場合、顔料は、布990の繊維991にバインダー樹脂で接着されている状態である。そのため、顔料インク911aを使用してインクジェット印刷された布990に強い摩擦が加えられると、
図8(c)および
図8(d)に示すように、布990の繊維991の一部から顔料が脱落し、布990のうち顔料が付着していない部分990cが布990の表面990aに現れる場合があるので、布990の表面990aの印刷濃度が低下する。このように、布990のうち顔料が付着していない部分990cが強い摩擦によって布990の表面990aに現れる傾向は、布が湿潤して柔らかい状態である場合に、特に顕著に表れる。すなわち、顔料インクを使用してインクジェット印刷によって印刷済みの布を製造する方法は、摩擦堅牢度、特に、湿潤時の摩擦堅牢度や、洗濯堅牢度が低い。
【0010】
以上に説明したように、顔料インクを使用してインクジェット印刷によって印刷済みの布を製造する方法は、布に対する印刷の品質が十分でない場合があるという問題や、印刷後の堅牢度が低いという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、浸透性媒体に対する印刷の品質および堅牢度を従来より向上することができる印刷済媒体製造方法、印刷済媒体製造装置およびインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の印刷済媒体製造方法は、インクが浸透する記録媒体である浸透性媒体に対して前記インクによる印刷を施して印刷済媒体を製造する印刷済媒体製造方法であって、前記インクは、前記浸透性媒体を染色するための顔料と、加熱されることによって前記顔料を前記浸透性媒体に定着させるバインダー樹脂と、加熱されることによって前記浸透性媒体自体を発色させる染料とを備え、前記印刷済媒体製造方法は、前記浸透性媒体に前記インクを付着させるインク付着処理と、前記インク付着処理によって前記浸透性媒体に付着させられた前記インクを加熱することによって、前記バインダー樹脂によって前記顔料を前記浸透性媒体に定着させる顔料定着処理と、前記インク付着処理によって前記浸透性媒体に付着させられた前記インクを加熱することによって、前記浸透性媒体自体を前記染料によって発色させる染料発色処理とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成により、本発明の印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体をインク中の顔料で染色するだけでなく、インク中の染料で浸透性媒体自体を発色させるので、十分な印刷濃度を実現するために必要なインクの使用量を抑えることができる。したがって、本発明の印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体の表面におけるインクの滲みを抑えて、浸透性媒体の表面の印刷濃度を向上することができる。すなわち、本発明の印刷済媒体製造方法は、印刷の品質を従来より向上することができる。また、本発明の印刷済媒体製造方法は、印刷済媒体に強い摩擦が加えられるなどして、浸透性媒体のうち顔料が付着していない部分が浸透性媒体の表面に現れても、インク中の染料で浸透性媒体自体を発色させているので、浸透性媒体の表面の印刷濃度の低下を抑えることができる。したがって、本発明の印刷済媒体製造方法は、従来より堅牢度を向上することができる。
【0014】
本発明の印刷済媒体製造方法において、前記インクは、溶媒を備え、前記印刷済媒体製造方法は、前記溶媒を蒸発させて前記インクの粘度を上昇させる粘度上昇処理を前記染料発色処理より前に備え、前記染料発色処理は、前記粘度上昇処理と比較して、前記インクの加熱温度が高くても良い。
【0015】
この構成により、本発明の印刷済媒体製造方法は、染料発色処理より前に粘度上昇処理によってインクの粘度を上昇させることによって、浸透性媒体の表面におけるインクの滲みを抑えるので、印刷の品質を向上することができる。
【0016】
本発明の印刷済媒体製造方法において、前記バインダー樹脂は、ラテックス系の樹脂であっても良い。
【0017】
この構成により、本発明の印刷済媒体製造方法は、インク中のバインダー樹脂がラテックス系の樹脂であり、インクの溶媒中にバインダー樹脂の微粒子が分散しているので、インクの溶媒の蒸発量に対するインクの粘度の上昇量が大きく、インクの粘度を高速に上昇させることができる。したがって、本発明の印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体の表面におけるインクの滲みを抑えて、印刷の品質を向上することができる。
【0018】
本発明の印刷済媒体製造方法において、前記染料は、分散染料であっても良い。
【0019】
この構成により、本発明の印刷済媒体製造方法は、インクに助剤が不要であるので、助剤のための処理が不要である。したがって、本発明の印刷済媒体製造方法は、印刷済媒体を容易に製造することができる。
【0020】
本発明の印刷済媒体製造方法において、前記顔料の色と、前記染料の発色後の色とは、染色されていない状態の前記浸透性媒体の色と同系色でなくても良い。
【0021】
この構成により、本発明の印刷済媒体製造方法は、印刷済媒体に強い摩擦が加えられるなどして、浸透性媒体のうち顔料が付着していない部分が浸透性媒体の表面に現れても、染色されていない状態の浸透性媒体とは同系色ではない色で染料によって浸透性媒体自体を発色させているので、浸透性媒体のうち顔料が付着していない部分が視認され難い。したがって、本発明の印刷済媒体製造方法は、堅牢度を向上することができる。
【0022】
本発明の印刷済媒体製造方法において、前記顔料の色と、前記染料の発色後の色とは、互いに同系色であっても良い。
【0023】
この構成により、本発明の印刷済媒体製造方法は、印刷済媒体に強い摩擦が加えられるなどして、浸透性媒体のうち顔料が付着していない部分が浸透性媒体の表面に現れても、インク中の染料によってインク中の顔料と同系色の色で浸透性媒体自体を発色させているので、浸透性媒体のうち顔料が付着していない部分が視認され難い。したがって、本発明の印刷済媒体製造方法は、堅牢度を向上することができる。
【0024】
本発明の印刷済媒体製造方法において、前記インク付着処理は、前記インクジェット印刷によって前記浸透性媒体に前記インクを付着させる処理であり、前記インクの粘度は、前記インクジェット印刷が可能な粘度であっても良い。
【0025】
この構成により、本発明の印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体をインク中の顔料で染色するだけでなく、インク中の染料で浸透性媒体自体を発色させるので、インクジェット印刷が可能な粘度のインク、すなわち、粘度が低いインクであっても、十分な印刷濃度を実現するために必要なインクの使用量を抑えることができる。したがって、本発明の印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体の表面におけるインクの滲みを抑えて、浸透性媒体の表面の印刷濃度を向上することができる。すなわち、本発明の印刷済媒体製造方法は、印刷の品質を向上することができる。
【0026】
本発明の印刷済媒体製造装置は、インクが浸透する記録媒体である浸透性媒体に対して前記インクによる印刷を施して印刷済媒体を製造する印刷済媒体製造装置であって、前記インクは、前記浸透性媒体を染色するための顔料と、加熱されることによって前記顔料を前記浸透性媒体に定着させるバインダー樹脂と、加熱されることによって前記浸透性媒体自体を発色させる染料とを備え、前記印刷済媒体製造装置は、前記浸透性媒体に前記インクを付着させるインク付着手段と、前記インク付着手段によって前記浸透性媒体に付着させられた前記インクを加熱することによって、前記バインダー樹脂によって前記顔料を前記浸透性媒体に定着させる顔料定着手段と、前記インク付着手段によって前記浸透性媒体に付着させられた前記インクを加熱することによって、前記浸透性媒体自体を前記染料によって発色させる染料発色手段とを備えることを特徴とする。
【0027】
この構成により、本発明の印刷済媒体製造装置は、浸透性媒体をインク中の顔料で染色するだけでなく、インク中の染料で浸透性媒体自体を発色させるので、十分な印刷濃度を実現するために必要なインクの使用量を抑えることができる。したがって、本発明の印刷済媒体製造装置は、浸透性媒体の表面におけるインクの滲みを抑えて、浸透性媒体の表面の印刷濃度を向上することができる。すなわち、本発明の印刷済媒体製造装置は、印刷の品質を従来より向上することができる。また、本発明の印刷済媒体製造装置は、印刷済媒体に強い摩擦が加えられるなどして、浸透性媒体のうち顔料が付着していない部分が浸透性媒体の表面に現れても、インク中の染料で浸透性媒体自体を発色させているので、浸透性媒体の表面の印刷濃度の低下を抑えることができる。したがって、本発明の印刷済媒体製造装置は、従来より堅牢度を向上することができる。
【0028】
本発明のインクは、インクが浸透する記録媒体である浸透性媒体に対して前記インクによる印刷を施して印刷済媒体を製造する印刷済媒体製造方法に使用される前記インクであって、前記浸透性媒体を染色するための顔料と、加熱されることによって前記顔料を前記浸透性媒体に定着させるバインダー樹脂と、加熱されることによって前記浸透性媒体自体を発色させる染料とを備えていることを特徴とする。
【0029】
この構成により、本発明のインクは、浸透性媒体を顔料で染色するだけでなく、染料で浸透性媒体自体を発色させるので、十分な印刷濃度を実現するために必要なインクの使用量を抑えることができる。したがって、本発明のインクは、浸透性媒体の表面における滲みを抑えて、浸透性媒体の表面の印刷濃度を向上することができる。すなわち、本発明のインクは、印刷の品質を従来より向上することができる。また、本発明のインクは、印刷済媒体に強い摩擦が加えられるなどして、浸透性媒体のうち顔料が付着していない部分が浸透性媒体の表面に現れても、染料で浸透性媒体自体を発色させているので、浸透性媒体の表面の印刷濃度の低下を抑えることができる。したがって、本発明のインクは、従来より堅牢度を向上することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の印刷済媒体製造方法、印刷済媒体製造装置およびインクは、浸透性媒体に対する印刷の品質および堅牢度を従来より向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0033】
まず、本実施の形態に係る印刷済媒体製造装置としてのインクジェットプリンターの構成について説明する。
【0034】
図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター10の概略側面図である。
【0035】
図1に示すように、インクジェットプリンター10は、インク11aが浸透する記録媒体である浸透性媒体90に向けてインク11aを吐出するインクジェットヘッド11と、インクジェットヘッド11に対してインクジェットヘッド11によるインク11aの吐出方向(矢印11bで示す方向)側に配置されていて、浸透性媒体90を支持するプリントプラテン12と、プリントプラテン12に対して浸透性媒体90の搬送方向(矢印10aで示す方向)側とは反対方向に配置されていて、浸透性媒体90を支持するプリプラテン13と、プリントプラテン12に対して浸透性媒体90の搬送方向(矢印10aで示す方向)側に配置されていて、浸透性媒体90を支持するアフタープラテン14とを備えている。
【0036】
浸透性媒体90は、例えば布である。浸透性媒体90は、例えば、繊維状の糸で織った布帛(織物)でも良いし、繊維状の糸で編んだ編物でも良い。浸透性媒体90の材質は、例えば、ポリエステルである。
【0037】
インクジェットプリンター10は、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインク11aをそれぞれ吐出可能な4つのインクジェットヘッド11を備えている。インクジェットヘッド11は、浸透性媒体90にインク11aを付着させるデバイスであり、本発明のインク付着手段を構成している。
【0038】
インク11aは、例えば、水などの溶媒と、浸透性媒体90を染色するための顔料と、加熱されることによって顔料を浸透性媒体90に定着させる水性ラテックス系のバインダー樹脂と、加熱されることによって浸透性媒体90自体を発色させる染料とを備えている。
【0039】
インク11a中の染料の発色後の色は、同一のインク11a中の顔料の色に対して、同一の色または近い色であることが好ましい。例えば、インク11a中の染料の発色後の色は、同一のインク11a中の顔料の色に対して、同系色であることが好ましい。また、インク11a中の染料の発色後の色は、同一のインク11a中の顔料の色に対して、例えば、CIE1976色空間に基づく色差式でΔEが30以内の範囲にあることが好ましい。インク11a中の染料の発色後の色が同一のインク11a中の顔料の色に対して同一の色または近い色である場合、インク11aによって印刷された浸透性媒体90において、染料で染色された部分と、顔料で染色された部分とで色の差を無くす、または、少なくすることができるので、浸透性媒体90にインク11aによって印刷された画像の色の濁りを無くす、または、少なくすることができる。インク11a中の染料の種類および濃度は、このような色の条件を満たすように選択されることが好ましい。
【0040】
インク11a中の染料は、加熱されることによって浸透性媒体90自体を発色させるものであれば良く、例えば、反応染料、酸性染料、分散染料または昇華染料である。
【0041】
また、インク11aは、染料を有効に発色させるための助剤や、染料を浸透性媒体90の繊維に定着させる媒染剤を、必要に応じて備えていても良い。例えば、インク11aは、染料が反応染料である場合、芒硝(硫酸ナトリウム)を備えていても良い。
【0042】
また、インク11aは、粘度調整剤や防腐剤などを備えていても良い。
【0043】
インク11aの粘度は、インクジェットヘッド11で適切に吐出可能な例えば2〜100mPa・sec程度であることが好ましい。また、インク11aの表面張力も、インクジェットヘッド11で適切に吐出可能な例えば23〜40mN/m程度であることが好ましい。インク11aの粘度および表面張力は、インク11aに添加する溶剤、樹脂、増粘剤などによって調整可能である。
【0044】
インクジェットヘッド11は、ピエゾ方式であることが好ましいが、他の方式であっても良い。例えば、インクジェットヘッド11は、サーマルジェット方式であっても良い。
【0045】
インクジェットプリンター10は、プリントプラテン12に対してプリントプラテン12が浸透性媒体90を支持する側とは反対側に配置されていて、浸透性媒体90のうちプリントプラテン12に支持されている部分のインク11aを加熱するための電熱ヒーターであるプリントヒーター15と、プリプラテン13に対してプリプラテン13が浸透性媒体90を支持する側とは反対側に配置されていて、浸透性媒体90のうちプリプラテン13に支持されている部分のインク11aを加熱するための電熱ヒーターであるプリヒーター16と、アフタープラテン14に対してアフタープラテン14が浸透性媒体90を支持する側とは反対側に配置されていて、浸透性媒体90のうちアフタープラテン14に支持されている部分のインク11aを加熱するための電熱ヒーターであるアフターヒーター17と、アフタープラテン14が支持している浸透性媒体90をアフタープラテン14とともに挟む位置に配置されていて、浸透性媒体90のうちアフタープラテン14に支持されている部分のインク11aを加熱するための赤外線ヒーターである赤外線アフターヒーター18とを備えている。
【0046】
赤外線アフターヒーター18は、赤外線や近赤外線などの光を照射して浸透性媒体90上のインク11aを加熱するデバイスである。
【0047】
アフターヒーター17および赤外線アフターヒーター18は、後述するように、インクジェットヘッド11によって浸透性媒体90に付着させられたインク11aを加熱することによって、インク11a中のバインダー樹脂によってインク11a中の顔料を浸透性媒体90に定着させるデバイスであり、本発明の顔料定着手段を構成している。また、アフターヒーター17および赤外線アフターヒーター18は、後述するように、インクジェットヘッド11によって浸透性媒体90に付着させられたインク11aを加熱することによって、浸透性媒体90自体をインク11a中の染料によって発色させるデバイスであり、本発明の染料発色手段を構成している。
【0048】
図2は、インクジェットプリンター10のブロック図である。
【0049】
図2に示すように、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド11に対して浸透性媒体90(
図1参照。)を矢印10a(
図1参照。)で示す方向、すなわち、副走査方向に搬送する媒体搬送装置21と、矢印10aで示す方向および矢印11b(
図1参照。)で示す方向の両方に直交する方向、すなわち、主走査方向にインクジェットヘッド11を移動させるヘッド移動装置22と、LAN(Local Area Network)などのネットワークを介さずに有線または無線で直接に、または、ネットワークを介して、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部23と、インクジェットプリンター10全体を制御する制御部24とを備えている。
【0050】
制御部24は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを予め記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行するようになっている。
【0051】
次に、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法について説明する。
【0052】
本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体90に対してインク11aによる印刷を施して印刷済媒体、すなわち、印刷済みの浸透性媒体90を製造する方法である。具体的には、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、インク11aを浸透性媒体90に付着させるインクジェット印刷工程と、インクジェット印刷工程の後で、インク11a中の顔料を浸透性媒体90に定着させるとともに、インク11a中の染料によって浸透性媒体90の繊維自体を発色させる定着発色工程とを備えている。
【0053】
まず、インクジェット印刷工程について説明する。
【0054】
制御部24は、通信部23を介して入力された印刷データに基づいてインクジェットヘッド11、媒体搬送装置21およびヘッド移動装置22を駆動する。具体的には、制御部24は、媒体搬送装置21によってインクジェットヘッド11に対する副走査方向における浸透性媒体90の位置が変更される度に、ヘッド移動装置22によって主走査方向にインクジェットヘッド11を移動させながらインクジェットヘッド11によって浸透性媒体90に向けてインク11aを吐出することによって、浸透性媒体90に対して印刷データに基づいた画像をインク11aによって形成する。すなわち、制御部24は、浸透性媒体90にインク11aを付着させるインク付着処理を実行する。
【0055】
また、制御部24は、浸透性媒体90に対して印刷データに基づいた画像をインク11aによって形成する場合、プリントヒーター15を加熱させる。したがって、インク11aは、浸透性媒体90に付着した時点で、プリントヒーター15によって例えば30℃〜60℃に加熱される。この加熱によって、インク11aは、溶媒が蒸発することによって粘度が上昇するので、浸透性媒体90に対する滲みが抑えられる。すなわち、制御部24は、インク11aの溶媒を蒸発させてインク11aの粘度を上昇させる粘度上昇処理を実行する。
【0056】
なお、インク11aが浸透性媒体90に付着した時点でプリントヒーター15によって適切に加熱されるために、浸透性媒体90は、プリヒーター16によって予め加熱されても良い。この場合、制御部24は、浸透性媒体90に対して印刷データに基づいた画像をインク11aによって形成するとき、プリヒーター16を加熱させる。
【0057】
図3(a)は、インクジェットプリンター10によるインクジェット印刷工程によってインク11aが塗布された浸透性媒体90の一部の側面断面図である。
図3(b)は、
図3(a)に示す浸透性媒体90の一部の上面図である。
【0058】
図3に示すように、インク11aは、浸透性媒体90のうちインクジェットヘッド11側の面、すなわち、表面90a側の部分だけでなく、浸透性媒体90の内部、すなわち、浸透性媒体90を構成する繊維91によって構成される網目の中にまで浸透している。
【0059】
次に、定着発色工程について説明する。
【0060】
制御部24は、アフターヒーター17を加熱させ、赤外線アフターヒーター18によって赤外線を照射させ、媒体搬送装置21を駆動する。すなわち、制御部24は、媒体搬送装置21によって浸透性媒体90をアフターヒーター17および赤外線アフターヒーター18の位置まで搬送して、アフターヒーター17および赤外線アフターヒーター18によって浸透性媒体90を加熱する。したがって、インク11aは、アフターヒーター17および赤外線アフターヒーター18によって例えば60℃〜200℃、好ましくは120℃〜180℃に加熱される。この加熱によって、インク11aは、顔料をバインダー樹脂によって浸透性媒体90の繊維91に接着させることによって浸透性媒体90に定着させる。また、この加熱によって、インク11aは、染料が繊維91中に拡散して、この染料によって繊維91自体を発色させる。すなわち、制御部24は、インク付着処理によって浸透性媒体90に付着させられたインク11aを加熱することによって、インク11a中のバインダー樹脂によってインク11a中の顔料を浸透性媒体90に定着させる顔料定着処理と、浸透性媒体90自体をインク11a中の染料によって発色させる染料発色処理とを実行する。
【0061】
なお、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、インク11a中の染料と、浸透性媒体90の繊維91との組み合わせが、蒸熱処理が必要な組み合わせである場合、定着発色工程の後、浸透性媒体90をスチームオーブンなどに入れて蒸熱処理を実行する。例えば、インク11a中の染料が反応染料や酸性染料である場合、蒸熱処理が必要なときがある。本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、蒸熱処理を実行する場合、繊維91が蒸されて拡がるため、インク11a中の染料が繊維91内に入り込み易いので、インク11a中の染料によって浸透性媒体90を効果的に染色することができる。
【0062】
インク11a中の染料が反応染料や酸性染料である場合、染料が発色するための助剤が必要なときがある。本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、染料が発色するための助剤が必要な場合、助剤がインク11aに添加されることが最も簡便で好ましい。しかしながら、助剤がインク11aに添加された場合に、インク11a中の顔料が凝集したり、インク11a中の染料が変質したりなど、インク11aに不具合が発生するときには、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、助剤がインク11aとは別に浸透性媒体90に塗布されることが好ましい。例えば、助剤を備えているインク(以下「助剤用インク」と言う。)をインク11aとは別に用意し、インクジェットヘッド11による浸透性媒体90への印刷前、印刷中または印刷後に、インクジェットヘッド11とは異なるインクジェットヘッドで助剤用インクを浸透性媒体90に印刷しても良い。また、インクジェットヘッド11による浸透性媒体90への印刷前または印刷後に、インクジェット印刷以外の方法によって助剤を浸透性媒体90に塗布しても良い。なお、浸透性媒体90が衣類に使用されるなど、何らかの理由で、浸透性媒体90に助剤を残留させたくない場合、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体90を洗浄して助剤を取り除く工程を後処理として備えても良い。
【0063】
図4は、インクジェットプリンター10による定着発色工程によってインク11a中の染料が発色させられた浸透性媒体90の一部の側面断面図である。
【0064】
図4に示すように、浸透性媒体90の繊維91の少なくとも一部は、インク11a中の染料によって発色させられている。
【0065】
本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法によって製造された印刷済媒体は、例えば、Tシャツ、ユニホーム、カーテン、シーツ、旗、幟、垂れ幕など、様々な用途に使用されることが可能である。例えば、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法によって製造された印刷済媒体は、壁紙、襖紙など、長期に使用される内装材に使用されることも可能である。
【0066】
以上に説明したように、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体90をインク11a中の顔料で染色するだけでなく、インク11a中の染料で浸透性媒体90自体を発色させるので、十分な印刷濃度を実現するために必要なインク11aの使用量を抑えることができる。したがって、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体90の表面90aにおけるインク11aの滲みを抑えて、浸透性媒体90の表面90aの印刷濃度を向上することができる。すなわち、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、印刷の品質を従来より向上することができる。
【0067】
なお、インク11aは、染料だけでなく、染料より粒が大きい顔料を備えているので、従来の染料インク、すなわち、染料および顔料のうち染料のみを備えているインクと比較して、粘度が高く、浸透性媒体90に塗布された場合に滲み難い。したがって、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、従来の顔料インク、すなわち、染料および顔料のうち顔料のみを備えているインクによる浸透性媒体90への印刷と同様に、従来の染料インクによる浸透性媒体90への印刷と比較して、短時間で容易に低コストで完了することができる。
【0068】
染料より顔料の粒が大きいので、インク11aは、染料の量に対する顔料の量(インク11a中にバインダー樹脂が粒で存在する場合には、バインダー樹脂の量も含む。)の比率が大きいほど、粘度が高い。例えば、インク11aは、染料の量が30%で、顔料の量が70%であっても良い。
【0069】
本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、インク11a中の染料で浸透性媒体90自体を発色させるので、高さが高い毛羽が表面90aに多数立っている媒体が浸透性媒体90である場合に、インク11a中の顔料が浸透性媒体90の表面90aの毛羽に捕まったとしても、インク11a中の染料によって浸透性媒体90の表面90a全体を染色することができる。したがって、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、印刷の品質を従来より向上することができる。
【0070】
図5(a)は、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法における印刷済媒体としての浸透性媒体90の一部の側面断面図である。
図5(b)は、
図5(a)に示す浸透性媒体90の一部の上面図である。
図5(c)は、繊維91が回転したり移動したりした場合の
図5(a)に示す浸透性媒体90の一部の側面断面図である。
図5(d)は、
図5(c)に示す浸透性媒体90の一部の上面図である。
【0071】
本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法においては、
図5(a)および
図5(b)に示すように、インク11aは、インクジェットヘッド11から吐出されて浸透性媒体90の表面90aに付着するが、インク11a中の顔料は、浸透性媒体90を構成する繊維91の中にまで浸透しない。そのため、インク11aを使用してインクジェット印刷された浸透性媒体90に強い摩擦が加えられると、浸透性媒体90の繊維91が回転したり移動したりして、
図5(c)および
図5(d)に示すように、浸透性媒体90のうち顔料が付着していない部分90bが浸透性媒体90の表面90aに現れる場合がある。しかしながら、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法においては、インク11a中の染料で浸透性媒体90自体を発色させており、浸透性媒体90の表面90aに現れた、顔料が付着していない部分90bも、染料で発色させられているので、浸透性媒体90の表面90aの印刷濃度の低下を抑えることができる。したがって、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、摩擦堅牢度や洗濯堅牢度などの堅牢度を従来より向上することができる。
【0072】
図6(a)は、一部の顔料が剥離した場合の
図4に示す浸透性媒体90の一部の側面断面図である。
図6(b)は、
図6(a)に示す浸透性媒体90の一部の上面図である。
【0073】
顔料が浸透性媒体90の繊維91自体を染色することができないので、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法においては、
図4に示すように、インク11aがインクジェットヘッド11から吐出されて浸透性媒体90の表面90aに付着した場合、顔料は、繊維91にバインダー樹脂で接着されている状態である。そのため、インク11aを使用してインクジェット印刷された浸透性媒体90に強い摩擦が加えられると、
図6(a)および
図6(b)に示すように、浸透性媒体90の繊維91の一部から顔料が脱落し、浸透性媒体90のうち顔料が付着していない部分90cが浸透性媒体90の表面90aに現れる場合がある。しかしながら、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法においては、インク11a中の染料で浸透性媒体90自体を発色させており、浸透性媒体90の表面90aに現れた、顔料が付着していない部分90cも、染料で発色させられているので、浸透性媒体90の表面90aの印刷濃度の低下を抑えることができる。したがって、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、摩擦堅牢度や洗濯堅牢度などの堅牢度を従来より向上することができる。
【0074】
なお、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、インク11a中の顔料の色と、インク11a中の染料の発色後の色とが、染色されていない状態の浸透性媒体90の色と同系色でない場合には、染色されていない状態の浸透性媒体90とは同系色ではない色で浸透性媒体90自体が染料によって発色させられているので、浸透性媒体90のうち顔料が付着していない部分が浸透性媒体90の表面90aに現れても、浸透性媒体90のうち顔料が付着していない部分が視認され難い。したがって、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、摩擦堅牢度や洗濯堅牢度などの堅牢度を向上することができる。
【0075】
また、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、例えば、インク11a中の顔料の色、インク11a中の染料の発色後の色がそれぞれブルー、シアンである組み合わせ、マゼンタ、淡い赤である組み合わせなど、インク11a中の顔料の色と、インク11a中の染料の発色後の色とが互いに同系色である場合には、インク11a中の染料によってインク11a中の顔料と同系色の色で浸透性媒体90自体を発色させているので、浸透性媒体90のうち顔料が付着していない部分が浸透性媒体90の表面90aに現れても、浸透性媒体90のうち顔料が付着していない部分が視認され難い。したがって、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、摩擦堅牢度や洗濯堅牢度などの堅牢度を向上することができる。
【0076】
なお、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、インク11a中の顔料の色と、インク11a中の染料の発色後の色とが互いに同系色でなくても、インク11a中の顔料の色と、インク11a中の染料の発色後の色とが、染色されていない状態の浸透性媒体90の色と同系色でない場合には、上述したように、浸透性媒体90のうち顔料が付着していない部分が視認され難いという効果を期待することができる。
【0077】
インク11a中の色材の色は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック以外の色であっても良い。例えば、インク11a中の色材の色は、レッド、グリーン、ブルーや、オレンジ、黄緑、蛍光色などの特色でも良いし、メタリックやパールなどでも良い。インク11a中の顔料の色がメタリックやパールである場合、インク11a中の染料の発色後の色は、顔料の色に色相が近い淡い色が選択されても良いし、浸透性媒体90の色が白である場合には例えば灰色など、浸透性媒体90の色と異なる色が選択されても良い。
【0078】
以上に説明したように、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、摩擦堅牢度や洗濯堅牢度などの堅牢度を向上することができる。例えば、湿潤時の摩擦堅牢度は、顔料インクを使用してインクジェット印刷によって印刷済みの布を製造する従来の方法において2〜3級であったが、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法によって5級に改善することができた。
【0079】
なお、染料は、本来、耐光性や耐候性が低い。しかしながら、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法において製造された印刷済媒体においては、染料は、耐光性や耐候性が高い顔料が外側に存在することによって、顔料によって保護されている。すなわち、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法において製造された印刷済媒体においては、耐光性や耐候性に関する堅牢度を維持する役割を顔料が果たしている。したがって、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法において製造された印刷済媒体は、耐光性や耐候性に関して、顔料インクを使用する従来の方法において製造された印刷済媒体と同等の堅牢度を維持することができる。
【0080】
本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、顔料定着処理および染料発色処理より前に粘度上昇処理によってインク11aの粘度を上昇させることによって、浸透性媒体90の表面90aにおけるインク11aの滲みを抑えるので、印刷の品質を向上することができる。なお、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、インク11a中のバインダー樹脂を、プリントヒーター15による加熱温度で顔料を浸透性媒体90に定着させるバインダー樹脂とすることによって、顔料定着処理をインクジェット印刷工程において実行しても良い。
【0081】
本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、インク11a中のバインダー樹脂がラテックス系の樹脂であり、インク11aの溶媒中にバインダー樹脂の微粒子が分散しているので、インク11aの溶媒の蒸発量に対するインク11aの粘度の上昇量が大きく、インク11aの粘度を高速に上昇させることができる。したがって、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体90の表面90aにおけるインク11aの滲みを抑えて、印刷の品質を向上することができる。
【0082】
本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、インク11a中の染料が分散染料である場合、インク11a中に助剤が不要であるので、助剤のための処理が不要である。したがって、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、印刷済媒体を容易に製造することができる。例えば、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、インク11a中の染料と、浸透性媒体90との好ましい組み合わせの1つとして、分散染料と、ポリエステル製の浸透性媒体90との組み合わせを採用することが可能である。
【0083】
本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体90をインク11a中の顔料で染色するだけでなく、インク11a中の染料で浸透性媒体90自体を発色させるので、インクジェット印刷が可能な粘度のインク11a、すなわち、粘度が低いインク11aであっても、十分な印刷濃度を実現するために必要なインク11aの使用量を抑えることができる。したがって、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体90の表面90aにおけるインク11aの滲みを抑えて、浸透性媒体90の表面90aの印刷濃度を向上することができる。すなわち、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、印刷の品質を向上することができる。
【0084】
インク11aの溶媒の蒸発は、本実施の形態においてプリントヒーター15によって実現している。しかしながら、他の方法によって実現しても良い。例えば、インク11aの溶媒は、プリントヒーター15によって一部が蒸発させられて、他の一部がアフターヒーター17および赤外線アフターヒーター18の少なくとも一方によって蒸発させられても良い。
【0085】
インク11a中の顔料の浸透性媒体90への定着と、インク11a中の染料による浸透性媒体90自体の発色とは、本実施の形態においてアフターヒーター17および赤外線アフターヒーター18によって実現している。しかしながら、他の方法によって実現しても良い。例えば、アフターヒーター17および赤外線アフターヒーター18の何れか一方のみによって実現しても良い。また、アフターヒーター17は、浸透性媒体90を圧接加熱するロールヒーターであっても良い。
【0086】
本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、インクジェット印刷工程および定着発色工程をインクジェットプリンター10によって実行するので、インクジェットプリンター10によって実行することができない前処理や後処理が不要である場合、容易に実行することができる。
【0087】
なお、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、少なくとも一部の処理をインクジェットプリンター10を使用せずに実行しても良い。例えば、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、粘度上昇処理、顔料定着処理および染料発色処理の少なくとも1つをインクジェットプリンター10を使用せずに実行しても良い。
【0088】
本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、以上においては、主走査方向にインクジェットヘッド11を移動させて副走査方向に浸透性媒体90を移動させる所謂Role to Role送りのシリアルインクジェットプリンターであるインクジェットプリンター10を使用しているが、他の方式のインクジェットプリンターを使用しても良い。例えば、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、浸透性媒体90を移動させずに浸透性媒体90に対してインクジェットヘッド11を移動させる所謂フラットベッドタイプのインクジェットプリンターを使用しても良いし、所謂ラインヘッドのインクジェットプリンターを使用しても良い。
【0089】
また、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、インク付着処理においてインクジェット印刷以外の方法によって浸透性媒体90にインク11aを付着させても良い。例えば、本実施の形態に係る印刷済媒体製造方法は、ディスペンサーによって浸透性媒体90にインク11aを付着させたり、デジタルスクリーン印刷によって浸透性媒体90にインク11aを付着させたり、デジタルパッド印刷によって浸透性媒体90にインク11aを付着させたりしても良い。