(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2支持部は、平面視において、前記整合素子の中央近傍を通り、前記整合素子における電磁波の共振方向と直交する直交方向に延びる直線上に設けられている、請求項2に記載の電力変換器。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る平面アンテナ及びこれを含むアンテナ装置について説明する。
<1.第1実施形態>
以下では、まず第1実施形態の電力変換器について説明し、その後、この電力変換器を有するアンテナ装置について説明する。この電力変換器は、電磁波を送受信するアンテナと、ミリ波及びマイクロ波などの高周波を送受信する高周波回路との間で電力の変換を行う機器である。
【0028】
(1)電力変換器の構成
図1は、第1実施形態に係る電力変換器の斜視図である。
図2は、
図1の分解斜視図である。
図3は、導波管の平面図である。
図4は、整合素子を含むグランド基板の平面図である。
図5は、シールドユニット及び伝送パターンの平面図である。
図6は、
図2の直線αにおける断面図である。
図7は、
図2の直線γにおける断面図である。
【0029】
以下では、
図1等に示す方向、つまり上、下、前、後、右、左にしたがって説明を行う。但し、この向きによって、本発明が限定されるものではないが、本実施形態の「前後方向」が本発明の共振方向に相当し、「左右方向」が本発明の共振方向と直交する方向に相当する。
【0030】
また、以下の説明において、ある部分の管内波長という場合には、ある部分に隣接するあらゆる構成によって影響を受けた、ある部分の電磁波の波長を意味するものとする。例えば、後述するように、整合素子における電磁波の管内波長とは、整合素子が設けられているグランド基板、整合素子と対向するシールド板、整合素子周囲の空気等、整合素子の周囲のあらゆる構成によって影響を受けた、整合素子における電磁波の波長を意味するものとする。
【0031】
図1に示すように、この電力変換器100は、電磁波が電送される導波管(伝送部)11と、導波管11を通過する電磁波を送受信する整合素子19を含む整合素子ユニット17と、整合素子19との間に隙間をおいて配置され、電磁波の不要放射を抑制するためのシールドユニット24と、このシールドユニット24の近傍に設けられ、電磁波を伝送する伝送パターン29とを含む。以下に、導波管11、整合素子ユニット17、シールドユニット24及び伝送パターン29の各部の構成について説明する。
【0032】
(1−1)導波管11
導波管11は、導電性材料から形成された筐体である。
図2、
図3、
図6、
図7等に示すように、導波管11の中央部には、上下方向に貫通する直方体状の貫通孔15が形成されている。この貫通孔15は、上端の上部開口13と、下端の下部開口16とを有しており、上部開口13から下部開口16に至るまで概ね一定の大きさである。下部開口16は、電磁波の送受信端子となる結合素子と対向し、上部開口13は、整合素子ユニット17の整合素子19と対向する。よって、結合素子から供給された電磁波は、下部開口16を介して導波管11の貫通孔15内に入り、貫通孔15の内壁面を反射壁として伝播し、上部開口13を介して整合素子ユニット17の整合素子19に供給される。逆に、整合素子19からの電磁波は、上部開口13を介して導波管11の貫通孔15内を伝播し、下部開口16を介して結合素子に供給される。
【0033】
図3に示すように、貫通孔15の上部開口13は、前後方向に延びる一対の短辺と、左右方向に延びる一対の長辺とを有する長方形状である。そして、一対の長辺の長さL1は、1/2λaより大きい。ここで、λaは、貫通孔15を伝播する電磁波の管内波長である。この貫通孔15内における電磁波の遮断波長は2×L1である。つまり、遮断波長と長辺の長さL1とがこの関係を満たす場合、電磁波は減衰する。よって、貫通孔15内の管内波長λaは2×L1より小さくする必要がある。上記の構成によれば、上部開口13の長辺の長さL1は1/2λaより大きいため、電磁波の減衰を抑制できる。長さL1は、例えば2.8mm〜3.6mmとすることができる。
【0034】
また、上部開口13の短辺の長さL2は、長辺の長さL1より小さいか、あるいは長さL1×1/2である。長さL2は、例えば1.4mm〜1.8mmとすることができる。このように長さL2を定義することで、短辺が延びる前後方向を電磁波の共振方向とすることができる。一方、長さL2を上記のように定義しない場合には、共振方向が、上部開口13の短辺が延びる前後方向から変化してしまい、導波管11の貫通孔15において電磁波を共振状態に維持できず電力損失が大きくなる。
【0035】
(1−2)整合素子ユニット17
整合素子ユニット17は、板状のグランド基板18と、導波管11との間で電磁波を送受信する整合素子19と、整合素子19をグランド基板18に対して支持する第2支持部21とを含む。グランド基板18の中央部には、上下方向に貫通する長方形状の貫通孔23が形成されている。整合素子19は、貫通孔23よりも小さく、第2支持部21によって貫通孔23内に支持されて配置されている。以下に、整合素子ユニット17の各部について説明する。
【0036】
(a)グランド基板18
グランド基板(第1支持基板)18は、接地された板状の基板であり、導波管11の上面に接触して配置される。グランド基板18に形成された貫通孔23は、上述した導波管11の上部開口13に対応して位置合わせされている。また、貫通孔23内には、整合素子19が配置されているため、上部開口13を介して導波管11と整合素子19との間で電磁波が送受信される。また、整合素子19の周囲はグランド基板18により取り囲まれているため、整合素子19からの電磁波の不要放射の広がりがグランド基板18により抑制されている。
【0037】
グランド基板18は、例えば
図7に示すように概ね均一の厚みW1を有している。厚みW1は、特に限定されないが、小さいほどグランド基板18を薄板状に形成できる。よって、電力変換器100を薄型化することができる。厚みW1は、例えば0.100mm〜0.300mmとすることができる。また、グランド基板18の貫通孔23と、導波管11の上部開口13とは、同様の形状及び寸法を有する。つまり、貫通孔23は、長さL2を有して前後方向に延びる一対の左辺23L及び右辺23Rと、長さL1を有して左右方向に延びる一対の前辺23F及び後辺23Bとを有する長方形状である。
【0038】
(b)整合素子19
また、整合素子19は、導波管11の貫通孔15に電磁波を送信し、又は貫通孔15から電磁波を受信する素子である。整合素子19は矩形状であり、左右方向に対向する一対の左第1辺19L及び右第1辺19Rと、前後方向に対向する一対の前第2辺19F及び後第2辺19Bとを有する。このとき、左第1辺19Lと左辺23Lとが、後述の第2支持部21の左第2支持部21Lによって接続されている。また、右第1辺19Rと右辺23Rとが、後述の第2支持部21の右第2支持部21Rによって接続されている。そして、整合素子19は、その各辺19L、19R、19F、19Bが、それぞれ貫通孔23の各辺23L、23R、23F、23Bから離隔するように配置されている。よって、整合素子19は、グランド基板18の貫通孔23内に第2支持部21のみを介して支持される。
【0039】
整合素子19及び貫通孔23は、
図2及び
図4等に示すように、整合素子19及び貫通孔23の前後方向及び左右方向の中心である中心点βを同じ中心として配置されている。ここで、直線αは、中心点βを通り前後方向に延びる。また、直線γは、中心点βを通り左右方向に延びる。そして、整合素子19及び貫通孔23それぞれは、直線αに対して左右対称であり、かつ、直線γに対して前後対称である。
【0040】
整合素子19において、前第2辺19Fと後第2辺19Bとの間隔の長さL3は、整合素子19における電磁波の管内波長をλgとすると、1/2λgである。言い換えれば、左第1辺19L及び右第1辺19Rのそれぞれの前後方向の長さL3は1/2λgである。長さL3は、例えば1.2mm〜1.4mmとすることができる。このように長さL3が1/2λgである場合、整合素子19における電磁波は前後方向を共振方向とする共振状態となり定在波が生じる。つまり、整合素子19において、電磁波は、前後方向において反射を繰り返す定在波となる。このとき、整合素子19の共振方向の中央部、つまり前第2辺19Fと後第2辺19Bとの中間部分では、定在波の節が位置する。一方、一対の前第2辺19F及び後第2辺19Bそれぞれでは、定在波の腹が位置する。このように整合素子19において電磁波がある共振周波数で共振して定在波が形成されることで、電力損失を最小化できる。
【0041】
また、整合素子19において、左第1辺19Lと右第1辺19Rとの間隔の長さL4は、前第2辺19F及び後第2辺19Bのそれぞれの左右方向の長さである。長さL4は、前述の貫通孔23の左右方向の長さL1より短ければ特に限定されない。例えば、整合素子19は正方形状であり、長さL4は長さL3と同程度であり、長さL1より短くすることができる。長さL4は、例えば1.2mm〜2.8mmとすることができる。なお、整合素子19の厚み(
図6、
図7)は、特に限定されないが、グランド基板18の厚みW1と概ね同一である。これにより、電力変換器100を薄型化することができる。
【0042】
(c)第2支持部21
図1、
図2、
図4等に示すように、第2支持部21は、左第2支持部21L及び右第2支持部21Rを含み、整合素子19をグランド基板18に支持しており、左右方向に延びる棒状部材である。左第2支持部21Lと右第2支持部21Rとは直線αを中心として左右対称であるので、以下では右第2支持部21Rについてのみ説明する。
【0043】
右第2支持部21Rは、貫通孔23の右辺23Rの前後方向の中心と、整合素子19の右第1辺19Rの前後方向の中心とを接続する。よって、右第2支持部21Rは、整合素子19の中心点βを通って左右方向に延びる直線γに沿って配置されている。
【0044】
上記のように、右第2支持部21Rが直線γ上に配置されて整合素子19に接続されている理由について以下に説明する。
図8は、整合素子ユニット17を平面視した場合における電界強度分布を示す解析図である。
図8の解析では、整合素子ユニット17に対して、例えば、電力1W、周波数76GHzの条件を適用している。整合素子19の電界強度分布を参照すると、整合素子19の前第2辺19F及び後第2辺19Bを含む領域I及びIIにおいて、電界強度が最も大きい。前第2辺19Fの左右方向の中央部では、伝送パターン29と重畳している部分において、電界強度が大きい領域が前第2辺19Fから後に向かって突出している。一方、直線γを含む領域IIIは、電界強度が最も小さい。つまり、直線γを含む領域IIIは、整合素子19の領域I及びIIに比べて、電界強度が小さい。これは、整合素子19における電磁波の定在波の腹が、前第2辺19F及び後第2辺19Bに位置し、定在波の節が直線γを含む整合素子19の中央近傍に位置するからである。このように、定在波の節が位置する領域では電位がゼロとなりショートした状態となる。そして、この直線γ上において右第2支持部21Rと整合素子19とを接続することで、右第2支持部21Rを整合素子19に設けることにより生じる、整合素子19における電磁波への影響を抑制し、電力損失を抑制できる。
【0045】
右第2支持部21Rの左右方向の長さL5(
図4)は、整合素子19とグランド基板18とを接続できればよく、整合素子19の左右方向の長さL4及び貫通孔23の左右方向の長さL1等を考慮して決定される。長さL5は、例えば0.1mm〜1.2mmとすることができる。また、右第2支持部21Rの前後方向の長さL7は、整合素子19の左第1辺19L及び右第1辺19Rの長さL3よりも小さければ特に限定されない。ただし、長さL7が小さい方が、右第2支持部21Rが整合素子19の電磁波に与える影響を小さくすることができ好ましい。長さL7は、例えば0.1mm〜0.4mmとすることができる。さらに、右第2支持部21Rの上下方向の厚みは、グランド基板18及び整合素子19の厚みW1(
図7)と概ね同一である。なお、整合素子19の前第2辺19F及び貫通孔23の前辺23F間と、後第2辺19B及び後辺23B間とは、同じ長さL6(
図4)を有して離隔している。長さL6は、例えば0.1mm〜0.5mmとすることができる。
【0046】
なお、左第2支持部21Lと、右第2支持部21Rとは直線αを中心として左右対称であり、同じ長さL5を有する。この場合、これら支持部21L、21Rが非対称に配置されている場合に比べて、整合素子19における電磁波の共振状態の不均一を抑制できる。つまり、互いに対向する左第2支持部21Lと右第2支持部21Rとが対称に配置されていると、これらが整合素子19における電磁波に与える影響が対称となる。これにより、整合素子19における電磁波の共振状態を、直線αに対して対称に維持できる。そのため、共振状態の不均一による電力損失を抑制できる。
【0047】
(d)整合素子ユニット17の材料及び加工方法
上記の、グランド基板18、整合素子19及び第2支持部21は例えば導体から形成されており、例えば金、銀、銅、銅合金、アルミニウム等の金属から適切な材料が選択される。グランド基板18、整合素子19及び第2支持部21は、例えば打ち抜き加工等により一体に形成される。その他、グランド基板18、整合素子19及び第2支持部21は、メッキ処理及びフォトレジストリソグラフィ等により基体上に薄膜状に一体に導体を形成した後、形成された導体を基体から剥離することで得られてもよい。
【0048】
また、グランド基板18、整合素子19及び第2支持部21それぞれは、異なる材料であってもよい。例えば、第2支持部21は導体ではなく、絶縁材料で形成されていてもよい。第2支持部21を絶縁材料で形成する場合には、整合素子19と第2支持部21との導電率の違いによって、整合素子19における電磁波が第2支持部21によって影響を受けるのを抑制できる。
【0049】
(1−3)シールドユニット24
シールドユニット24は、シールド板25と、シールド板25をグランド基板18上に支持する第1支持部27とを含む。以下に各部について説明する。
(a)シールド板25
図1、
図2、
図4、
図5等に示すように、シールド板25は、長方形状の板状基板であり、第1支持部27に支持されることにより、整合素子19との間に隙間を有して、その上方を覆うように配置されている。シールド板25の前側の端部には後側に凹む矩形状の切欠き25aが形成されている。切欠き25a内には、伝送パターン29の後方端部29aが非接触状態で挿入されている。このようなシールド板25は、整合素子19及び伝送パターン29等から漏出した電磁波が、例えば空気中等に広がるのを抑制する。よって、整合素子19と伝送パターン29との間での電磁波の送受信効率を高め、電力損失を抑制できる。
【0050】
シールド板25は、
図5に示すように、左右方向に対向する左シールド辺25L及び右シールド辺25Rと、前後方向に対向する前シールド辺25F及び後シールド辺25Bとを有する。シールド板25の左右方向に延びる前シールド辺25F及び後シールド辺25Bの長さL11と、シールド板25の前後方向に延びる左シールド辺25L及び右シールド辺25Rの長さL12とは、整合素子19及び貫通孔23を覆う大きさであれば特に限定されない。例えば、長さL11は3.5mm〜4.5mmとすることができ、長さL12は2.4mm〜3.1mmとすることができる。また、
図6、
図7に示すように、シールド板25の上下方向の厚みはW2である。厚みW2は、例えば0.012mm〜0.300mmとすることができる。
【0051】
(b)第1支持部27
第1支持部27は、
図1及び
図2等に示すように、L字型に形成されており、グランド基板18に対してシールド板25を支持することで、シールド板25と整合素子19との間に隙間を形成している。第1支持部27は、直線αを中心として左右対称な左第1支持部27Lと右第1支持部27Rとを有する。よって、以下では、右第1支持部27Rについてのみ説明する。
【0052】
右第1支持部27Rは、右第1水平部27HR及び右第1垂直部27VRを有するL字型に形成されている。右第1水平部27HRは、
図4及び
図5に示すように、左右方向に延びる直方体状の棒状部材であり、シールド板25の右シールド辺25Rの中心に接続され、直線γに沿って延びている。そして、右第1水平部27HRの右端部に、右第1垂直部27VRが接続されている。右第1垂直部27VRは、上下方向に延びており、その下端がグランド基板18に接続されている。例えば、右第1垂直部27VRの下端は、グランド基板18に設けた開口に挿入されて固定することができる。但し、第1支持部27の固定方法はこれには限定されない。
【0053】
ここで、右第1支持部27R(右第1水平部27HR及び右第1垂直部27VR)が直線γに沿って配置されている理由について以下に説明する。
図9は、シールド板及び伝送パターンを平面視した場合における電界強度分布を示す解析図である。解析時の適用条件は
図8と同様である。
図9を参照すると、シールド板25の4つの角部を含む領域IV、V、VI、VIIと、伝送パターン29を含む領域VIIIにおいて、電界強度が最も大きい。一方、直線γを含む領域IX、Xは、電界強度が最も小さい。つまり、領域IX、Xは、領域IV、V、VI、VII及びVIIIに比べて、電界強度が小さい。ここで、整合素子19の共振方向の中央近傍、つまり直線γを含む領域は、定在波の節の位置に対応しており、電磁波の電界強度が中央近傍以外の他の領域に比べて小さい。シールド板25は、この整合素子19に対向して配置されているため、整合素子19の電磁波の影響を受ける。よって、整合素子の19共振方向の中央近傍に対向する、シールド板25の中央近傍の領域IX、Xの電界強度は、中央近傍以外の他の領域IV、V、VI、VIIの電界強度に比べて小さい。
【0054】
右第1支持部27Rは、直線γを含み、前述のように電界強度が他の領域よりも小さい領域IX、Xに対応してシールド板25に接続されている。よって、右第1支持部27Rをシールド板25に設けることにより生じる、シールド板25における電磁波への影響を抑制し、電力損失を抑制できる。また、シールド板25は整合素子19とも対向しているため、ひいては整合素子19における電磁波への影響を抑制し、電力損失を抑制できる。
【0055】
右第1水平部27HRの前後方向の長さL14(
図5)は、特に限定されない。しかし、長さL14が小さいほど、右第1水平部27HRがシールド板25における電磁波に与える影響が小さく好ましい。例えば、長さL14は、右シールド辺25Rの前後方向の長さL12よりも十分に小さいのが好ましい。また、長さL14は、右第2支持部21Rの前後方向の長さL7と同程度であってもよく、例えば0.100mm〜0.400mmとすることができる。
【0056】
右第1水平部27HRの上下方向の厚みは、シールド板25の上下方向の厚みはW2と概ね同一とすることができるが(
図7)、厚みW2とは異なっていてもよい。
【0057】
右第1水平部27HRの左右方向の長さL10(
図5、
図7)は、特に限定されないが、シールド板25をグランド基板18に対して支持できる長さが好ましい。例えば、L10とシールド板25の左右方向の長さL11との合計長さが、グランド基板18の貫通孔23の左右方向の長さL1よりも長い。また、長さL10は、例えば、右第1水平部27HRがシールド板25における電磁波に与える影響を小さくできる程度が好ましい。長さL10は、例えば0.5mm〜1.5mmとすることができる。
【0058】
右第1垂直部27VRの上下方向の長さL9(
図6、
図7)は、シールド板25とグランド基板18との間に隙間を形成し、ひいてはシールド板25と整合素子19との間に隙間を形成できる長さである。また、長さL9は、シールド板25と整合素子19との間に電磁波を閉じ込めることができる長さであるのが好ましい。具体的には、長さL9は、例えば0.080mm〜0.250mmとすることができる。一方、右第1垂直部27VRの左右方向の長さL13(
図7)は、例えば、シールド板25及び右第1水平部27HRを支持できる強度等に基づいて決定される。具体的には、長さL13は、例えば0.020mm〜0.200mmとすることができる。また、右第1垂直部27VRの前後方向の長さは特に限定されないが、右第1水平部27HRの前後方向の長さL14と同程度である(
図5)。
【0059】
なお、前述の第2支持部21と同様に、左第1支持部27Lと右第1支持部27Rは直線αを中心として左右対称である。この場合、これら支持部27L、27Rが非対称に配置されている場合に比べて、シールド板25における電磁波の不均一を抑制できる。ひいては、シールド板25に対向する整合素子19における電磁波の共振状態の不均一を抑制でき、電力損失を抑制できる。
【0060】
(c)シールドユニット24の材料及び加工方法
シールドユニット24の材料及び加工方法は、前述の整合素子ユニット17の材料及び加工方法と同様であり、例えば、金、銀、銅、銅合金、アルミニウム等の金属から適切な材料が選択され、打ち抜き加工等により形成される。なお、シールド板25及び第1支持部27は一体に形成してもよいし、別個に形成して組み合わせてもよい。
【0061】
(1−4)伝送パターン29
図5に示すように、伝送パターン29は、シールド板25の切欠き25a内に挿入されている後方端部29aから前方に向かって前後方向に延びる帯状に形成されている。そして、
図4に示すように、後方端部29aが整合素子19の端部と重畳している。つまり、整合素子19の前後方向の中央部よりも前側において、伝送パターン29の後方端部29aと、整合素子19とが重畳している。伝送パターン29は、後述の平面アンテナ200に接続されて支持されており、シールド板25と概ね面一に配置されている。
【0062】
伝送パターン29では、その延びる前後方向に電磁波が伝送される。整合素子19における電磁波の共振方向は前後方向であり、整合素子19と伝送パターン29との間で電磁波が前後方向に沿ってスムーズに伝送され、電力損失を抑制できる。さらには、導波管11内の電磁波の共振方向も前後方向であるので、導波管11、整合素子19及び伝送パターン29間において、電力損失を抑制して電磁波を送受信できる。
【0063】
(2)アンテナ装置の構成
次に、上記の電力変換器100を含むアンテナ装置1000について説明する。
図10は、第1実施形態に係る電力変換器100を含むアンテナ装置の一部分解斜視図である。
図11は、第1実施形態に係る電力変換器100を含む別のアンテナ装置の一部分解斜視図である。
【0064】
図10、
図11に示すアンテナ装置1000は、上記第1実施形態に係る電力変換器100と、電磁波を受送信する平面アンテナ200と、ミリ波及びマイクロ波などの高周波を送受信する高周波回路300と、を含む。アンテナ装置1000は、さらに、電力変換器100との間で電磁波を送受信する結合素子160と、結合素子160と高周波回路300との間に接続される導体パターン165とを含む。
【0065】
高周波回路300は、例えばMMIC(monolithic microwave integrated circuit:モノシリックマイクロ波集積回路)であり、上記のように、ミリ波及びマイクロ波などの高周波を送受信する。この高周波回路300は、導体パターン165の一方の第1端部165aに接続されており、他方の第2端部165bに接続された結合素子160に電磁波を送信し、又は結合素子160から電磁波を受信する。結合素子160は、導波管11の貫通孔15の下部開口16に対向して配置されており、導波管11との間で電磁波を送受信する。また、平面アンテナ200は、高周波回路300から送信され、電力変換器100において電力変換された電磁波を放射する。一方、平面アンテナ200は、電磁波を受信すると、受信した電磁波を電力変換器100を介して、高周波回路300に送信する。
【0066】
なお、以下では、電力変換器100に接続される平面アンテナ200の例として、構成1、2を挙げて説明する。構成1,2は平面アンテナの例であり、いずれも用いることができるが、これ以外の平面アンテナであってもよい。
【0067】
(2ー1)構成1
まず、平面アンテナ200の構成1について、
図10を用いて説明する。
図10に示す構成1の平面アンテナ200は、電磁波を送受信する4個の第1〜第4アンテナ導体213(213a〜213d)と、接地されたグランド導体216と、各アンテナ導体213をグランド導体216に対して支持する第1〜第4支持部215(215a〜215d)とを含む。また、4個の第1〜第4アンテナ導体213a〜213dは、一直線上に並び、互いに第2〜第4接続導体211b〜211dによって接続されている。そして、最後尾に配置された第1アンテナ導体213aが、第1接続導体211aを介して伝送パターン29と接続されており、この伝送パターン29は、電力変換器100に接続されている。
【0068】
各アンテナ導体213及びグランド導体216は平板状の導体で形成されており、第1〜第4支持部215によって上下方向に互いに隙間を有して対向している。よって、電磁波は、アンテナ導体213とグランド導体216との間の空間内を反射しながら伝搬する。空気の比誘電率は約1.0であり誘電体材料よりも小さいため、電磁波が上記隙間を伝搬する際の電力損失が抑えられる。また、ここでは、伝送パターン29は、第1接続導体211aに接続され、第1〜第4支持部215(215a〜215d)によってグランド導体216に対して支持されている。ただし、伝送パターン29そのものに、グランド導体216に対して支持する支持部が設けられてもよい。
【0069】
(2ー2)構成2
次に、平面アンテナ200の構成2について、
図11を用いて説明する。
図11に示す構成2の平面アンテナ200は、構成1の平面アンテナ200の第1〜第4支持部215を備えておらず、代わりに、アンテナ導体213とグランド導体216との間に誘電体214が介在している。つまり、平面アンテナ200は、電磁波を送受信する4個の第1〜第4アンテナ導体213(213a〜213d)と、接地されたグランド導体216と、これらの導体の間に挟まれた誘電体214とを含む。その他の構成は、構成1の平面アンテナ200と同様であるので説明を省略する。
【0070】
(3)特徴
(3−1)
上記第1実施形態では、整合素子19とシールド板25とは隙間を有するように支持されているため、整合素子19とシールド板25との間には、比誘電率が約1.0である空気が介在する。空気は、整合素子19とシールド板25との間に誘電体材料を介在させる場合よりも比誘電率が小さい。これにより、整合素子19とシールド板25近傍の伝送パターン29との間での電磁波の送受信における電力損失を抑制できる。よって、電力損失を抑制し、効率の良い電力変換器100を得ることができる。また、整合素子19とシールド板25との間に誘電体材料を配置する必要がないため、電力変換器100の小型化、軽量化及び低コスト化を実現できる。
【0071】
(3−2)
上記第1実施形態では、第1支持部27は、平面視において、整合素子19の中心点βを通る直線γに対応するように位置しつつ、シールド板25に接続される。前述の通り、直線γは整合素子19の中央近傍に対応しており、定在波の節が位置する。そのため、シールド板25において、整合素子19の電磁波の共振方向の中央近傍に対向する部分は、電界強度が他の領域に比べて小さい。よって、第1支持部27を直線γに対応してシールド板25に設けることで、シールド板25における電磁波への影響を抑制し、電力損失を抑制できる。また、シールド板25は整合素子19とも対向しているため、ひいては整合素子19における電磁波への影響を抑制し、電力損失を抑制できる。
【0072】
(3−3)
上記第1実施形態では、整合素子19の中心点βを通り、左右方向に延びる直線γに対応して第1支持部27が位置する。ここで、整合素子19における電磁波は共振状態にあり、整合素子19の共振方向の中央部では、定在波の節が位置する。そして、直線γは、定在波の節の位置に対応して延びている。よって、整合素子19の中央近傍を通る直線γ上では、電磁波の電界強度が中央近傍以外の他の領域に比べて小さい。しかし、整合素子19の左第1辺19Lと右第1辺19Rでは、整合素子19の中央部に比べて、電磁波の電界強度が大きくなる傾向にある。これは、左第1辺19L、右第1辺19Rでは、整合素子19が空気と接することで、整合素子19の実効誘電率が変化し、この変化によって電磁波が集中し易くなることによると考えられる。
【0073】
そこで、上記実施形態では、まず、第1支持部27の第1水平部27H(27HL、27HR)が、シールド板25のシールド辺の中央近傍を始点として、シールド板25から離れる終端に向かって平面に沿って延びる。つまり、第1支持部27において、第1水平部27Hがまず、電磁波の電界強度が大きいシールド板25のシールド辺から離れるように、シールド板25の平面に沿って延びる。これにより、第1水平部27Hにおいて、電界強度の大きな電磁波が集中するのを抑制できる。そして、第1支持部27の第1垂直部27V(27VL、27VR)は、第1水平部27Hの終端からグランド基板18に向かって延びる。これにより、第1支持部27を設けることにより生じる、シールド板25における電磁波への影響を抑制し、ひいては整合素子19における電磁波への影響を抑制し、電力損失を抑制できる。
【0074】
(4)変形例
以下に、第1実施形態の電力変換器100の変形例について説明する。なお、以下の第2、第3実施係形態と同様の変形例については、共通の変形例として後述する。
【0075】
(4−1)
上記第1実施形態では、第1支持部27は直線γに対応しているが、必ずしも直線γに対応している必要はない。例えば、第1支持部27は、電磁波が形成する定在波の節の位置、つまり整合素子19の中央近傍に対応して位置すればよい。なお、「中央近傍」とは、整合素子19のうち電界強度の小さい領域であればよく、整合素子19の中心点βのみならず、中心点β及びその近傍を含む意味である。例えば、整合素子19の対向する前第2辺19F及び後第2辺19Bからλg/4の近傍、つまり前第2辺19F及び後第2辺19B間の中央部分ということができる。この位置に第1支持部27を設けることで、電力損失を抑制できる。なお、一組の前第2辺19F及び後第2辺19Bからλg/4の近傍とは、例えば、一組の前第2辺19F及び後第2辺19Bからλg/4を中心として、±λg/8の範囲ということができる。
【0076】
さらには、第1支持部27は、整合素子19における電磁波の定在波の節を通って左右方向に延びる直線に対応して位置すれば、必ずしも整合素子19の中央近傍に対応して位置する必要はない。
【0077】
(4−2)
上記第1実施形態では、左第1支持部27Lと右第1支持部27Rとは、直線αを中心として概ね左右対称である。しかし、少なくとも、左第1支持部27Lとシールド板25との接続部分と、右第1支持部27Rとシールド板25との接続部分とが左右対称であればよい。そのような例として
図12を用いて説明する。
図12は、左第1支持部及び右第1支持部のシールド板に対する配置関係を示す平面図である。
【0078】
図12では、左第1水平部27HLとシールド板25との接続部分と、右第1支持部27Rとシールド板25との接続部分とは、直線αに対して概ね左右対称である。しかし、左第1支持部27Lと右第1支持部27Rとは反転対称に配置されている。この場合でも、各支持部27L及び27Rとシールド板25との接続部分が左右対称であるため、シールド板25における電磁波が不均一となるのが抑制される。ひいては、シールド板25に対向する整合素子19における電磁波の共振状態の不均一による電力損失を抑制できる。
【0079】
また、例えば、左第1支持部27Lと右第1支持部27Rとは、例えば、
図13のように直線αを中心として非対称に配置されていてもよい。
図13は、左第1支持部及び右第1支持部のシールド板に対する配置関係を示す平面図である。
図13では、各支持部27L及び27Rとシールド板25との接続部分が左右対称であるが、各支持部27L及び27Rは直線αに対して非対称に配置されている。この場合も、各支持部27L及び27Rとシールド板25との接続部分が左右対称であるため、シールド板25における電磁波が不均一となるのが抑制され、電力損失を抑制できる。さらには、左第1支持部27Lと右第1支持部27Rとの長さは必ずしも同一である必要はない。ただし、これらの長さが左右で同一である場合には、シールド板25における電磁波の状態が概ね均一となり好ましい。
【0080】
(4−3)
上記第1実施形態では、第1支持部27はL字型に形成されている。しかし、第1支持部27は直方体状に形成されてもよい。
図14は、変形例に係るシールド板の斜視図である。
図14に示す通り、直線γに対応する位置において、右第1支持部27Rがシールド板25の右シールド辺25Rからグランド基板18に延び、左第1支持部27Lが左シールド辺25Lからグランド基板18に延びる。その他、第1支持部27は、直線γに対応する位置であり、かつシールド板25の下部からグランド基板18に向かって延びてもよい。
【0081】
(4−4)
上記第1実施形態では、高周波回路300が導体パターン165を介して導波管11と接続されているが、導波管11を用いない構成にも本発明を適用できる。
図15は、平板状の電力変換器を示す分解斜視図である。
図15に示す電力変換器105は、下から順に第1基板ユニット101(伝送部)と、第2基板ユニット107と、シールドユニット24とが順に互いに接触するように積層されて構成されている。伝送パターン29はシールドユニット24に隣接して配置されている。シールドユニット24及び伝送パターン29は、上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0082】
第1基板ユニット101は、矩形状の第1基板110を備え、第1基板110の上面に、矩形状の結合素子111と、第1伝送パターン112と、接地電位を有する第1上面グラウンド113とが配置されている。第1伝送パターン112は前後方向に延びており、後側の第1端部112aには、図視しない高周波回路300が接続可能となっている。また、第1伝送パターン112は、前側の第2端部112bにおいて、結合素子111と接続されている。第1上面グラウンド113は、平面視において、第1伝送パターン112及び結合素子111に対応する部分には配置されておらず、これらを取り囲むように配置されている。一方、第1基板110の第1下面110bには、概ね全体に亘って接地電位を有する第1下面グラウンド114が配置されている。
【0083】
第2基板ユニット107は、整合素子ユニット17と、整合素子ユニット17の下部に配置された固定部材130と、を含む。固定部材130は、整合素子ユニット17の貫通孔23に対応する領域には設けられていない。固定部材130は、整合素子19と結合素子111とが対向するように、第2基板ユニット107と第1基板ユニット101とを互いに固定する。このとき、第2基板ユニット107と第1基板ユニット101とを固定部材130を介して固定するため、整合素子19と結合素子111との間には空気が介在している。そのため、整合素子19と結合素子111との間の電力損失を抑制できる。整合素子ユニット17は、上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0084】
上記の電力変換器105では、高周波回路300から第1伝送パターン112の第1端部112aに電磁波が入力される。入力された電磁波は、第1伝送パターン112の第2端部112bに伝送され、これに連続する結合素子111に供給される。次に、結合素子111と整合素子19とは空気を介して互いに電磁的に結合し、結合素子111と整合素子19との間で電力変換が行われる。整合素子19を経た電磁波は、伝送パターン29から図示しない平面アンテナ200に向かって伝送され、平面アンテナ200から電磁波が放射される。一方、平面アンテナ200が電磁波を受信する場合は、前述と逆の順序で電磁波が電力変換器100を経て高周波回路300に伝送される。
【0085】
(4−5)
上記第1実施形態では、整合素子19は第2支持部21を介してグランド基板18に接続されている。しかし、整合素子19は、グランド基板18を介さず、第2支持部21によって導波管11に対して支持されてもよい。
図16は、整合素子を支持する第2支持部の別の一例を示す分解斜視図である。
図16の電力変換器105aでは、整合素子19は、左第1辺19Lの前後方向の中央部に接続されたL字型の左第2支持部21Lと、右第1辺19Rの前後方向の中央部に接続されたL字型の右第2支持部21Rとによって、導波管11の上面に支持される。第2支持部21は、導波管11上に整合素子19を支持できれば形状は特に限定されない。例えば、
図16に示すように、左第2支持部21Lは左水平部21HL及び左垂直部21VLを有し、右第2支持部21Rは右水平部21HR及び右垂直部21VRを有する。この場合、整合素子19とシールド板25との間に隙間を有するように、第1支持部27の上下方向の長さが調整されている。
【0086】
また、上述の
図15で示す電力変換器105において、
図16に示す整合素子19及び第2支持部21を適用してもよい。
図17は、平板状の電力変換器を示す別の一例を示す分解斜視図である。
図17の電力変換器105bでは、整合素子19は、第2支持部21によって第1基板ユニット101の第1上面グラウンド113に対して支持されている。
【0087】
(4−6)
上記第1実施形態では、左第1水平部27HL及び右第1水平部27HRは、直線γ上に対応して左右方向に沿って直線状に延びている。しかし、左第1水平部27HL及び右第1水平部27HRは、湾曲又は屈曲していてもよい。
【0088】
(4−7)
左第1支持部27L及び右第1支持部27Rは、少なくともシールド板25との接続部分が直線γ上に位置すればよく、必ずしも左第1支持部27L及び右第1支持部27R全体が直線γ上に位置する必要はない。
【0089】
(4−8)
上記第1実施形態では、第1支持部27(27L、27R)は直方体状の棒状部材である。しかし、第1支持部27はシールド板25を支持できれば形状は限定されず、例えば円柱状の棒状部材であってもよい。ただし、グランド基板18とともに打ち抜き加工等で一体に形成する場合には、加工の容易性から第1支持部27は直方体状の棒状部材であるのが好ましい。
【0090】
<2.第2実施形態>
次に、図面を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る電力変換器及びこれを含むアンテナ装置について説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なるのはシールドユニットの第1支持部の構成であり、その他の構成は第1実施形態とほぼ同様であるため、同一構成には同一の符号を付して説明を省略する。
図18は、第2実施形態に係る電力変換器の斜視図である。
図19は、
図18の分解斜視図である。
図20は、導波管の平面図である。
図21は、整合素子を含むグランド基板の平面図である。
図22は、シールドユニット及び伝送パターンの平面図である。
図23は、
図19の直線αにおける断面図である。
図24は、
図19の直線γにおける断面図である。
【0091】
(1)第1支持部31の構成
第2実施形態のシールドユニット24aの第1支持部31は、シールド板25の下部に配置された柱状部材からなる。この第1支持部31は、シールド板25をその下部から支持し、シールド板25とグランド基板18との間、ひいてはシールド板25と整合素子19との間に隙間を形成する。
【0092】
第1支持部31は、内部に空間を有して上下方向に延びる円筒である。第1支持部31は、グランド基板18とシールド板25との間に配置されている。また、
図21等に示すように、複数の第1支持部31が、平面視において、グランド基板18の貫通孔23を取り囲むように、かつ、シールド板25の外縁の内側に上下方向及び左右方向に並んで配置されている。そして、複数の第1支持部31は、直線αを中心として概ね左右対称に配置されている。なお、第1支持部31は、伝送パターン29及び切欠き25aに対応する位置には配置されていない。
【0093】
第1支持部31の直径R1(
図20、
図24)は特に限定されないが、直径R1は、貫通孔23とシールド板25の外縁であるシールド辺との間に複数の第1支持部31が配置可能な大きさであることができる。例えば、直径R1は0.05mm〜0.50mmとすることができる。また、第1支持部31の上下方向の長さは、グランド基板18に支持される整合素子19とシールド板25との間に隙間を形成できれば特に限定されない。第1支持部31の長さは、例えば、第1実施形態の第1支持部27の長さL9と同じであることができる。また、隣接する第1支持部31の壁面間の間隔L15(
図20)は、例えば1/4λbである。ここで、λbは、第1支持部31における電磁波の管内波長である。例えば、間隔L15は0.4mm〜0.9mmとすることができる。
【0094】
このような複数の第1支持部31を上記のように配置した場合における、電界強度分布について説明する。
図25は、シールド板を上部から平面視した場合における電界強度を示す解析図である。なお、解析時の適用条件は
図8と同様であり、整合素子ユニット17における電界強度分布は、第1実施形態の
図8に示した通りである。
図8のように、整合素子19では、前側の前第2辺19F及び後側の後第2辺19Bにおいて電界強度が大きい。さらに、伝送パターン29においても電界強度が高い。整合素子19を覆うシールド板25では、
図25に示すように、
図8における整合素子19及び伝送パターン29の電界強度の大きい部分に対応した、領域XI、XII、XIII及びXIVにおいて電界強度が大きい。一方、それ以外の領域である第1支持部31により囲まれた領域では、前記の領域よりも電界強度がかなり小さくなっている。よって、第1支持部31によって、シールド板25と整合素子19との間に隙間を形成しつつ、かつ、整合素子19等からの電磁波の不要放射を抑制できていることが分かる。
【0095】
(2)特徴
(2−1)
上記第1実施形態と同様に、整合素子19とシールド板25との間に空気を介在させることで、誘電体を介在させる場合よりも電力損失を抑制し、効率の良い電力変換器を得ることができる。
【0096】
(2−2)
第1支持部31は、整合素子19を内部に有する貫通孔23を取り囲むことで、整合素子19等からの電磁波の不要放射を反射する。これにより、電磁波がシールド板25及び空気中等に広がるのを抑制し、電力損失を抑制できる。また、第1支持部31の壁面間の間隔L15(
図20)が1/4λbであるため、整合素子19等からの電磁波を第1支持部31により囲まれる内部に閉じ込め、不要放射の広がりを抑制できる。
【0097】
(2−3)
複数の第1支持部31は、直線αを中心として左右対称に配置されているため、左右均等に整合素子19等からの不要放射を抑制することができる。よって、不要放射の抑制が不均一であることに起因する、整合素子19における電磁波の共振状態の不均一を抑制できる。これにより、共振状態の不均一による電力損失を抑制できる。
【0098】
(3)変形例
以下に、第2実施形態の電力変換器180の変形例について説明する。なお、第1、第3実施係形態と同様の変形例については、共通の変形例として後述する。
(3−1)
上記第2実施形態では、円筒である第1支持部31によってシールド板25をグランド基板18に対して支持し、整合素子19とシールド板25との間に隙間を形成している。しかし、シールド板25の支持部として
図26に示す第1支持部を用いてもよい。
図26は、第2実施形態の変形例に係る電力変換器の分解斜視図である。
図26に示すように、変形例に係る電力変換器183では、第1支持部33は、グランド基板18の貫通孔23を取り囲み、伝送パターン29に対応して開口を有する隔壁である。このような隔壁である第1支持部33は、上述した第2実施形態の第1支持部31と同様に、シールド板25と整合素子19との間に隙間を形成しつつ、かつ、整合素子19等からの電磁波の不要放射を抑制する。
【0099】
(3−2)
上記第2実施形態は、上記第1実施形態の変形例に係る
図15と同様に、導波管11を用いない構成とすることもできる。
図27は、平板状の電力変換器を示す分解斜視図である。
図27の電力変換器185では、第2実施形態と同様にグランド基板18の貫通孔23に沿って、円筒である複数の第1支持部31が配置されている。この第1支持部31によってシールド板25が支持されることで、シールド板25と整合素子19とが隙間を有して対向している。その他の構成は
図15と同様であるので説明を省略する。また、第1支持部31は、
図26の隔壁である第1支持部33により代替可能である。
【0100】
(3−3)
上記第2実施形態において、上記第1実施形態の変形例に係る
図16と同様に、整合素子19は、グランド基板18を介さず、第2支持部21によって導波管11に対して支持されてもよい。
図28は、整合素子を支持する第2支持部の別の一例を示す分解斜視図である。
図28の電力変換器185aでは、導波管11の上面に、第2支持部21が設けられている。さらに、導波管11の貫通孔15に沿って、円筒である複数の第1支持部31が配置されている。複数の第1支持部31の上下方向の長さは、第2支持部21の上下方向の長さよりも長い。これにより、シールド板25を第1支持部31により導波管11の上面に対して支持した場合に、シールド板25と整合素子19との間に隙間を形成することができる。その他の構成は
図16と同様であるので説明を省略する。また、第1支持部31は、
図26の隔壁である第1支持部33により代替可能である。
【0101】
また、上述の
図27で示す電力変換器185において、
図28に示す整合素子19及び第2支持部21を適用してもよい。
図29は、平板状の電力変換器を示す別の一例を示す分解斜視図である。
図29の電力変換器185bでは、整合素子19は、第2支持部21によって第1基板ユニット101の第1上面グラウンド113に対して支持されている。
(3−4)
上記第2実施形態では、第1支持部31は円筒であるが、グランド基板18に対してシールド板25を支持し、電磁波の不要放射を抑制できればよく、その形状は限定されない。例えば、第1支持部31は、内部に空洞を有する四角柱状及び多角柱状などに形成されてもよい。また、第1支持部31は内部に空洞を有していなくてもよい。さらに、整合素子19等からの電磁波の不要放射を抑制できれば、第1支持部31の直径及び数等は特に限定されない。
【0102】
<3.第3実施形態>
次に、図面を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る電力変換器及びこれを含むアンテナ装置について説明する。第3実施形態が第1実施形態と異なるのはシールドユニットの第1支持部の構成であり、その他の構成は第1実施形態とほぼ同様であるため、同一構成には同一の符号を付して説明を省略する。
図30は、第3実施形態に係る電力変換器の斜視図である。
図31は、
図30の分解斜視図である。
図32は、導波管の平面図である。
図33は、整合素子を含むグランド基板の平面図である。
図34は、シールドユニット及び伝送パターンの平面図である。
図35は、
図31の直線αにおける断面図である。
図36は、
図31の直線γにおける断面図である。
【0103】
(1)第1支持部41の構成
第3実施形態のシールドユニット24bの第1支持部41(第2支持基板)は、シールド板25の上部に設けられた誘電体基板からなる。第1支持部41は、その下面によってシールド板25を支持し、シールド板25とグランド基板18との間、ひいてはシールド板25と整合素子19との間に隙間を形成する。
【0104】
第1支持部41を構成する誘電体基板の厚みは、特に限定されないが厚みW3(
図35、
図36)を有する。この第1支持部41は、左右方向を支持台ユニット50によって支持されている。具体的には、第1支持部41は、右端の上下方向を一対の右挟持部材53Ra及び53Rbにより挟持されている。右挟持部材53Ra及び53Rbは、右支持台51Rによって所定の高さに支持されている。第1支持部41の左端は、右端と同様に挟持されて支持されているので説明を省略する。このように支持された第1支持部41の中央部の下面にシールド板25が貼付される。伝送パターン29もまたシールド板25と同様に第1支持部41に貼付されてもよい。このとき、シールド板25は、
図35及び
図36に示すように、グランド基板18に支持された整合素子19と、例えば長さL9の隙間を有している。
【0105】
(2)特徴
上記第1実施形態と同様に、整合素子19とシールド板25との間に空気を介在させることで、誘電体を介在させる場合よりも電力損失を抑制し、効率の良い電力変換器100を得ることができる。また、誘電体基板である第1支持部41により、シールド板25を安定に支持できる。
【0106】
(3)変形例
以下に、第3実施形態の電力変換器190の変形例について説明する。なお、第1、第2実施係形態と同様の変形例については、共通の変形例として後述する。
(3−1)
上記第3実施形態は、上記第1実施形態の変形例に係る
図15と同様に、導波管11を用いない構成とすることもできる。
図37は、平板状の電力変換器を示す分解斜視図である。
図37の電力変換器195では、第3実施形態と同様にシールド板25は、第1支持部41及び支持台ユニット50によって、整合素子19との間に隙間を有するように支持されている。その他の構成は
図15と同様であるので説明を省略する。
【0107】
(3−2)
上記第3実施形態において、上記第1実施形態の変形例に係る
図16と同様に、整合素子19は、グランド基板18を介さず、第2支持部21によって導波管11に対して支持されてもよい。
図38は、整合素子を支持する第2支持部の別の一例を示す分解斜視図である。
図38の電力変換器195aでは、導波管11の上面に、第2支持部21が設けられている。さらに、上記第3実施形態と同様にシールド板25は、第1支持部41及び支持台ユニット50によって、整合素子19との間に隙間を有するように支持されている。その他の構成は
図16と同様であるので説明を省略する。
【0108】
また、上述の
図37で示す電力変換器195において、
図38に示す整合素子19及び第2支持部21を適用してもよい。
図39は、平板状の電力変換器を示す別の一例を示す分解斜視図である。
図39の電力変換器195bでは、整合素子19は、第2支持部21によって第1基板ユニット101の第1上面グラウンド113に対して支持されている。
【0109】
(3−2)
上記第3実施形態では、第1支持部41は誘電体基板である。しかし、シールド板25を支持可能な部材であれば、誘電体基板に限定されない。例えば、第1支持部41は接地電位のグランド基板であってもよい。
【0110】
<4.変形例>
以上、本発明の第1〜第3実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下のような種々の変更が可能である。以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。なお、各実施形態における特有の変形例については各実施形態において述べたが、ここでは、第1〜第3実施形態に共通の変形例を述べる。
【0111】
<4−1>
上記第1〜第3実施形態では、左第2支持部21Lと右第2支持部21Rとは、直線αを中心として左右対称である。しかし、少なくとも、左第2支持部21Lと整合素子19との接続部分と、右第2支持部21Rと整合素子19との接続部分とが左右対称であればよい。そのような例として
図40を用いて説明する。
図40は、左第2支持部及び右第2支持部の整合素子に対する配置関係を示す平面図である。
図40では、左第2支持部21Lと整合素子19との接続部分と、右第2支持部21Rと整合素子19との接続部分とは、直線αに対して左右対称である。しかし、左第2支持部21Lと右第2支持部21Rとは反転対称に配置されている。少なくとも、左第2支持部21L及び右第2支持部21Rと整合素子19との接続部分が左右対称であるため、整合素子19における電磁波の共振状態の不均一による電力損失を抑制できる。なお、整合素子19における電磁波の共振状態が不均一とならない程度であれば、左第2支持部21L及び右第2支持部21Rと整合素子19との接続部分が完全な左右対称である必要はない。
【0112】
また、例えば、左第2支持部21Lと右第2支持部21Rとは、例えば、
図41のように直線αを中心として非対称に配置されていてもよい。
図41は、左第2支持部及び右第2支持部の整合素子に対する配置関係を示す平面図である。
図40と同様に、左第2支持部21Lと整合素子19との接続部分と、右第2支持部21Rと整合素子19との接続部分とは、直線αに対して左右対称である。しかし、
図40とは異なり、左第2支持部21Lと右第2支持部21Rとは非対称に配置されている。
<4−2>
上記第1〜第3実施形態では、整合素子19と、グランド基板18の貫通孔23とは同位置の中心点βを有する。しかし、整合素子19の左第1辺19Lの中心近傍から左第2支持部21Lが延びており、整合素子19の右第1辺19Rの中心近傍から右第2支持部21Rが延びていればよく、整合素子19の中心と貫通孔23の中心とはずれていてもよい。例えば、左第2支持部21Lは、貫通孔23の左辺23Lの中央近傍からずれた位置に接続されていてもよい。同様に、右第2支持部21Rは、貫通孔23の右辺23Rの中央近傍からずれた位置に接続されていてもよい。この場合であっても、整合素子19のうち電界強度の弱い中央近傍の領域と、左第2支持部21L及び右第2支持部21Rとが接続されることで、第2支持部21を設けることにより生じる、整合素子19における電磁波への影響を抑制し、電力損失を抑制できる。
【0113】
<4−3>
上記第1〜第3実施形態では、左第2支持部21L及び右第2支持部21Rは、直線γ上において左右方向に沿って直線状に延びている。しかし、左第2支持部21L及び右第2支持部21Rは、湾曲又は屈曲していてもよい。
【0114】
<4−4>
左第2支持部21L及び右第2支持部21Rは、少なくとも整合素子19との接続部分が直線γ上に位置すればよく、必ずしも左第2支持部21L及び右第2支持部21R全体が直線γ上に位置する必要はない。
【0115】
<4−5>
上記第1〜第3実施形態では、第2支持部21は直線γ上に位置するが、必ずしも直線γ上に位置する必要はない。例えば、第2支持部21は、電磁波が形成する定在波の節が位置する整合素子19の中央近傍に対応して位置すればよい。なお、「中央近傍」とは、整合素子19のうち電界強度の小さい領域であればよく、整合素子19の中心点βのみならず、中心点β及びその近傍を含む意味である。例えば、整合素子19の対向する前第2辺19F及び後第2辺19Bからλg/4の近傍、つまり前第2辺19F及び後第2辺19B間の中央部分ということができる。このλg/4の近傍とは、例えば、一組の前第2辺19F及び後第2辺19Bからλg/4を中心として、±λg/8の範囲ということができる。
【0116】
さらには、第2支持部21は、整合素子19における電磁波の定在波の節を通って左右方向に延びる直線上に位置すれば、必ずしも整合素子19の中央近傍に対応して位置する必要はない。
【0117】
<4−6>
上記第1〜第3実施形態では、整合素子19は、グランド基板18と面一で形成されている。しかし、整合素子19の上下方向の位置はこれに限定されず、グランド基板18よりも上又は下に位置するように、第2支持部21により支持されてもよい。
【0118】
<4−7>
上記第1〜第3実施形態では、整合素子19の前後方向の長さL3はλg/2である。しかし、整合素子19の前後方向において電磁波が共振状態にあればよく、長さL3はλg/2に限定されない。例えば、整合素子19の前後方向の長さL3は(λg/2)×p(pは2以上の整数)であってもよい。ただし、電力変換器100の小型化を達成し、かつ電磁波を安定に共振状態に維持するためには、整合素子19の前後方向の長さL3はλg/2であるのが好ましい。
【0119】
<4−8>
上記第1〜第3実施形態では、第2支持部21(21L、21R)は直方体状の棒状部材である。しかし、第2支持部21は整合素子19を支持する部材であれば形状は限定されず、例えば円柱状の棒状部材であってもよい。ただし、グランド基板18とともに打ち抜き加工等で一体に形成する場合には、加工の容易性から第2支持部21は直方体状の棒状部材であるのが好ましい。
【0120】
<4−9>
上記第1〜第3実施形態では、シールド板25内の切欠き25a内に伝送パターン29が配置されている。しかし、シールド板25によって整合素子19からの電磁波の不要放射を抑制できればよく、切欠き25a内に伝送パターン29が配置されている必要はない。例えば、整合素子19の上方に伝送パターン29が配置され、さらに伝送パターン29の上方にシールド板25が配置されてもよい。
【0121】
<4−10>
上記第1〜第3実施形態では、整合素子19は正方形状であるが、例えば正方形状以外の長方形状及び台形状などの矩形状でもよい。また、整合素子19は、共振方向において対向する一組の辺が互いに平行であるのが好ましい。その他、整合素子19は、共振方向において対向する一組の辺が互いに平行であれば、四角形よりも多角形状及び円弧を含む形状であってもよい。
【0122】
<4−11>
上記第1〜第3実施形態では、整合素子19を支持する支持基板としてとしてグランド基板18を例示している。しかし、支持基板は接地されている必要はなく、例えば、所定の電位を有する導体であってもよい。ただし、接地されたグランド基板18を用いると、電磁波の電界を安定化できるので好ましい。
【0123】
<4−12>
上記第1〜第3実施形態では、伝送パターン29は1本であるが、伝送パターン29の本数は複数本であってもよい。なお、第1支持部27は、伝送パターン29が設けられている領域を除くように配置される。