(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両(50)の周囲に探査波を送信し、その探査波の反射波を受信することで該車両の周囲に存在する物体までの距離を計測する測距センサ(10)と、前記車両の周囲を撮像する車載カメラ(20)とを備える前記車両に適用され、
前記車載カメラにより撮像された撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像に基づいて、前記測距センサの反射波による物体検知が困難となる所定物体に対して前記車両が近づきつつある状況下にあるかを判定する判定部と、
前記所定物体に対して前記車両が近づきつつある状況下にあると判定されたことを条件に、前記測距センサによる物体検知の感度を一時的に大きくする感度制御部と、
前記所定物体を対象物体として車両制御を実施する車両制御部と、
を備える物体検知装置(30)。
車両(50)の周囲に探査波を送信し、その探査波の反射波を受信することで該車両の周囲に存在する物体までの距離を計測する測距センサ(10)と、前記車両の周囲を撮像する車載カメラ(20)とを備える前記車両に適用され、
前記車載カメラにより撮像された撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像に基づいて、前記測距センサの反射波による物体検知が困難となる所定物体に対して前記車両が近づいている状況下にあるかを判定する判定部と、
前記所定物体に対して前記車両が近づいている状況下にあると判定された場合に、前記所定物体に対する前記車両の位置に応じて、前記測距センサによる物体検知の感度を一時的に大きくすることにより、前記所定物体以外の物体に対する前記物体検知の感度に比べて、前記所定物体に対する前記物体検知の感度を前記一時的に大きくする感度制御部と、
前記所定物体を対象物体として車両制御を実施する車両制御部と、
を備える物体検知装置(30)。
車両(50)の周囲に探査波を送信し、その探査波の反射波を受信することで該車両の周囲に存在する物体までの距離を計測する測距センサ(10)と、前記車両の周囲を撮像する車載カメラ(20)とを備える前記車両に適用され、
前記車載カメラにより撮像された撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像に基づいて、駐車場所に存在する所定物体としての輪留め部(42)に対して前記車両が近づいている状況下にあるかを判定するものであり、前記駐車場所において前記車両が所定位置まで進んだ場合に、前記輪留め部に対して前記車両が近づいている状況下にあると判定する判定部と、
前記輪留め部に対して前記車両が近づいている状況下にあると判定された場合に、前記輪留め部に対する前記車両の位置に応じて、前記測距センサによる物体検知の感度を一時的に大きくする感度制御部と、
前記撮像画像に基づいて、前記測距センサの出力により検知可能であり、かつ前記輪留め部とは異なる検知物体(43)が存在することを判定する物体判定部と、
前記輪留め部を対象物体として車両制御を実施する車両制御部と、
を備え、
前記検知物体が存在すると判定された場合に、前記検知物体を前記車両制御の前記対象物体から除去する、物体検知装置(30)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、車両に搭載された物体検知システムを具体化している。当該システムでは、物体検知装置(以下、ECUという)を中枢として、車両の周囲に存在する物体(例えば、他車両や道路構造物等)を検知する。
【0012】
まず、本実施形態に係る車両の物体検知システムの概略構成について
図1を用いて説明する。車両50は、測距センサとしての超音波センサ10と、車両周辺を撮像する車載カメラ20と、ECU30とを有している。
【0013】
超音波センサ10は、所定の制御周期ごとに探査波としての超音波を送信し、物体から反射された反射波を受信するセンサである。超音波センサ10は、この反射波に基づく測距情報をECU30へ出力する。
【0014】
本実施形態では、車両50の前部及び後部のバンパに、車幅方向に並ぶようにして4つのセンサが所定の間隔を開けてそれぞれ取り付けられている。例えば前方バンパには、超音波センサ10として、車幅の中心線51の近傍に、中心線51に対して対称位置に取り付けられた2つのセンタセンサである第1センサ11及び第2センサ12と、車両50の右コーナ及び左コーナにそれぞれ取り付けられた2つのコーナセンサ13,14とが設けられている。
【0015】
車載カメラ20は、例えばCCDカメラ、CMOSイメージセンサ、近赤外線カメラ等の単眼カメラ又はステレオカメラで構成されている。本実施形態では、車両50は、車載カメラ20として、前部、後部、右側面部及び左側面部に4つのカメラ21〜24を有している。
【0016】
フロントカメラ21は、車両の前部(例えばナンバープレート付近)に取り付けられ、車両前方へ向けて所定角度範囲で広がる領域を撮影する。リアカメラ22は、車両50の後部(例えばトランク付近)に取り付けられ、車両後方へ向けて所定角度範囲で広がる領域を撮影する。右サイドカメラ23は、車両の右側面部(例えばドアミラー付近)に取り付けられ、車両右側方へ向けて所定角度範囲で広がる領域を撮影する。左サイドカメラ24は、車両の左側面部(例えばドアミラー付近)に取り付けられ、車両左側方へ向けて所定角度範囲で広がる領域を撮影する。なお、各カメラ21〜24により撮像された撮像画像はECU30へ出力される。
【0017】
ECU30は、CPUや各種メモリ等を備えたコンピュータを主体として構成されている。ECU30は、超音波センサ10から出力された測距情報に基づいて、物体を検知する。具体的には、反射波の反射強度が検知閾値を超えたことに基づいて、物体までの距離を取得する。そして、その距離に基づいて、物体に対する車両制御を実施する。車両制御には、ドライバ等のユーザに物体の存在を報知するための警報装置やブレーキ装置等の安全装置の作動が含まれる。なお、反射波の反射強度は、超音波センサ10により反射波が受信される際に、波高値又は振幅の大きさに基づいて求められる。
【0018】
またECU30は、フロントカメラ21から出力されたフロント撮像画像、リアカメラ22から出力されたリア撮像画像、右サイドカメラ23から出力された右サイド撮像画像、左サイドカメラ24から出力された左サイド撮像画像を用いて各種合成画像(例えばトップビュー画像)を生成する。
【0019】
トップビュー画像は、車両50の上方に視点を設定し、その設定した視点から車両50およびその周辺を見た場合の画像である。ECU30は、各カメラ21〜24から出力された各撮像画像に対して周知の視点変換処理を施すことで、それら撮像画像の撮影範囲を予め設定した視点から見た場合の画像に変換する。
【0020】
ところで、超音波センサ10が探査波としての送信波を送信し、物体によって反射された反射波を受信することで、物体までの距離が計測される。ここで、反射波の反射強度は、物体の種類や大きさ等に応じて相違する。例えば、物体における探査波の反射面が大きい場合は、小さい場合に比べて反射強度が大きくなり、また、反射面が平面である場合は、曲面である場合に比べて反射強度が大きくなる。一方、超音波センサ10の取付位置よりも低い位置に存在する物体(地面付近の物体)の場合は、反射強度が小さくなる傾向にある。その他、物体の材質等によっても反射強度の大きさは影響を受ける。
【0021】
このような傾向から、例えば、駐車区画内に設置されている輪留めや、縁石、空間を仕切る金網、ロープ、自転車、ショッピングカート等は、超音波センサ10の出力に基づく物体検知では検知されにくいものとなっている。
【0022】
ここで、輪留めに対する探査波の反射について、
図2を用いて説明する。
図2(a)には、他車両や壁等の対向物41に探査波が反射される様子を示しており、
図2(b)には、輪留め42に探査波が反射される様子を示している。なお、
図2(a)及び
図2(b)において、超音波センサ10は、破線で示した受信範囲に到達した反射波を取得可能としている。
【0023】
図2より、対向物41の場合、探査波は概ね直角に入射する。これに対して、輪留め42の場合、探査波が直角に入射しない。そのため、超音波センサ10から送信された探査波は、地面により反射された後に輪留め42へ到達し、輪留め42より反射されて超音波センサ10へ到達する。又は、超音波センサ10から送信された探査波は、輪留め42へ直接到達し、輪留め42により反射された後、地面により反射されて超音波センサ10へ到達する。その結果、輪留め42により反射される反射波は、複数回反射されることで減衰し、反射強度が小さくなる。そのため、輪留め42は超音波センサ10で検知されにくいものとなっている。
【0024】
一方、ユーザにとっても駐車時に輪留め42の位置を把握することは難しい。そのため、ユーザにとって輪留め42の位置が的確に把握できることが望ましい。また、自動運転技術を搭載した車による自動駐車制御では、駐車目標として輪留め42が検知されることで自動駐車が好適に行えると考えられる。
【0025】
そこで、本実施形態では、超音波センサ10と車載カメラ20とを備える車両50において、車載カメラ20の撮像画像に基づいて、超音波センサ10の反射波による物体検知が困難となる所定物体に対して車両50が近づいている状況下にあるかを判定し、その所定物体に対して車両50が近づいている状況下にあると判定された場合に、超音波センサ10による物体検知の感度を一時的に大きくする。そして、所定物体を対象物体とし、超音波センサ10の出力に基づいて車両制御を実施するようにした。この場合、所定物体に対して車両50が近づいている状況下にあるかを、撮像画像を用いることで判断できることに着目し、撮像画像に基づく物体認識を行いつつ、超音波センサ10の出力に基づく物体検知を実施することで、所定物体を検知できるようにしている。
【0026】
なお、本実施形態では、輪留め42、縁石、ロープ、自転車、金網、ショッピングカート等の物体を「所定物体」としており、これら各物体は、超音波センサ10の出力に基づく物体検知では検知されにくいものとなっている。
【0027】
ECU30は、撮像画像に基づいて、所定物体に対して車両50が近づいている状況下にあるかを判定する。なお、以下においては、所定物体として、特に駐車場所に存在する地面上の突起物(輪留め部)を想定し、より具体的には、駐車場所としての駐車区画内に設けられた輪留め42を想定する。そして、ECU30は、例えば車両50が駐車区画の中間点である所定位置まで進んだ場合に、輪留め42に対して車両50が近づいている状況下にあると判定し、物体検知の感度を一時的に大きくする。要するに、車両50が駐車区画の中間点である所定位置を通過した場合には、車両50が進行する方向には輪留め42が存在するとみなして感度を大きくする。なお、駐車区画の所定位置を通過したことは、車両50が駐車対象とする駐車区画と車両50との位置関係に基づいて判定されればよい。例えば、撮像画像に基づいて駐車区画の駐車区画線を認識することによって、車両50が所定位置を通過したことが判定される。
【0028】
続いて、超音波センサ10による物体検知の感度を一時的に大きくすることについて、具体的に説明する。本実施形態では、反射波の波高値の閾値Thを一時的に小さくすることで、超音波センサ10による物体検知の感度を一時的に大きくしている。この感度制御により、輪留め42が検知されやすくしている。なお、反射波の波高値の閾値Thを小さくする態様は、特に限定されず、超音波センサ10の探査領域の全域において一律に小さくしてもよく、又、車両50に対する輪留め42の相対位置を推定し、その推定位置に基づいて部分的に閾値Thを小さくしてもよい。
【0029】
後者の場合、ECU30は、車両50に対する輪留め42の相対位置として、車両50から輪留め42までの距離Lを推定する。ここで、距離Lは、駐車区画における車両50の位置に基づいて推定される。すなわち、輪留め42は、通常駐車区画内の所定の位置に設置されていると考えられるため、駐車区画における車両50の位置から、輪留め42までの距離Lが推定される。そして、輪留め42の推定位置を含む所定範囲を設定し、その範囲内において閾値Thを小さくする。
【0030】
図3のフローチャートを用いて、撮像画像を用いた物体検知処理について説明する。この物体検知処理は、ECU30により所定周期で繰り返し実行される。
【0031】
ステップS11では、超音波センサ10から出力された測距情報を取得する。ステップS12では、車載カメラ21〜24から出力された各撮像画像に基づいて生成されたトップビュー画像を取得する。なお、ステップS12が「画像取得部」に相当する。
【0032】
ステップS13では、車両50を駐車する状況であるか否かを判定する。この判定手法には種々の方法を用いることができる。例えば、撮像画像から車両50が駐車場に進入したと認識された場合に、駐車する状況であると判定することができる。また、ナビゲーション装置(図示しない)から取得される駐車場情報と車両50の位置情報に基づいて、駐車する状況を判定してもよい。その他、シフト位置が後退レンジ(Rレンジ)となることに基づいて判定してもよい。ステップS13がYESであれば、ステップS14へ進み、ステップS13がNOであれば、そのまま本処理を終了する。
【0033】
ステップS14では、車載カメラ20の撮像画像に基づいて、輪留め42に対して車両50が近づいている状況下にあるか否かを判定する。具体的には、車両50が駐車区画内の中間点である所定位置を通過したか否かを判定する。ここでは、撮像画像に基づいて、駐車区画線を認識すること等によって判定する。駐車区画線の認識には、周知の方法を用いることができる。例えば、画像の解析領域内でエッジ点を抽出し、画像上のエッジ点の位置を実座標系上の位置に写像し、ハフ変換等の直線抽出手法を用いて認識された直線状に並んだエッジ点を駐車区画線であると認識する。そして、左右一対の駐車区画線を認識することで、駐車区画を特定する。
【0034】
また、所定位置としては、車両50が輪留め42に対して接近した状態であることが判断される位置であればよく、例えば車両50の車長方向に対応する駐車区画の長さ方向の約半分の位置である。ステップS14がYESであれば、輪留め42に対して車両50が近づいている状況下にあるとして、ステップS15へ進む。一方、ステップS14がNOであれば、感度制御を実施せずに、そのまま本処理を終了する。なお、ステップS14が「判定部」に相当する。
【0035】
ステップS15では、撮像画像に基づいて、超音波センサ10の出力により検知可能であり、かつ輪留め42とは異なる検知物体が存在しているか否かを判定する。言い換えると画像物体において、超音波センサ10の反射波による物体検知では検知され得るものの、車両制御の対象とならない物体が、含まれているか否かを判定する。ここで、物体検知の感度が一時的に大きくされると、例えば輪留め42が検知されるようになる反面、車両制御の対象とならない物体まで検知されてしまうおそれがある。例えば、地面上に設置されるマンホールや、溝蓋等のグレーチングは、車両走行において障害物とならないため、これらが検知されてしまうと、運転支援を実施する際の不要作動となるおそれがある。なお、画像物体とは、車載カメラ20の撮像画像中において認識される物体をいう。
【0036】
そこで本実施形態では、物体検知の感度を大きくする際に、画像物体にマンホール等が含まれているか否かを判定し、画像物体にマンホール等が含まれている場合に、これらを車両制御の対象から除去するようにした。具体的には、反射波の波高値の閾値Thをマンホール等の位置に対して大きくする。要するに、マンホール等に対して、超音波センサ10による物体検知の感度を一時的に小さくすることで、マンホール等を検知しないようにしている。なお、マンホール等の位置は、撮像画像に基づいて視差情報等を用いることにより推定される。
【0037】
本実施形態では、マンホールや溝蓋等のグレーチング等の物体を「検知物体」としており、これら各物体は、超音波センサ10の反射波による物体検知では検知され得るものの、車両制御の対象とならないものとなっている。
【0038】
ステップS15では、画像物体に例えばマンホールが含まれているか否かを判定する。具体的には、撮像画像の画像データと予め記憶されているマンホールの辞書情報とをパターンマッチングにより照合することで、マンホールを認識する。なお、ステップS15が、「物体判定部」に相当する。
【0039】
ステップS15がYESであれば、ステップS16へ進み、超音波センサ10による物体検知の感度を制御する。すなわち、マンホールに対しては感度を小さくする一方で、輪留め42に対しては感度を大きくする。具体的には、マンホールの位置に合わせて波高値の閾値Thを所定の基準値よりも大きくする一方で、輪留め42の位置に合わせて波高値の閾値Thを所定の基準値よりも小さくする。なお、マンホールや輪留め42の位置は、上述した方法等により推定される。
【0040】
一方、ステップS15がNOであれば、車両周辺にはマンホールは存在しないとして、ステップS17へ進み、輪留め42に対して物体検知の感度を制御する。具体的には、輪留め42の位置に合わせて物体検知の感度を大きくする。なお、ステップS16,S17が「感度制御部」に相当する。
【0041】
ステップS18では、ステップS16又はステップS17で制御された感度に基づいて、輪留め42を検知する。具体的には、超音波センサ10の出力に基づいて、輪留め42までの距離を取得する。ステップS19では、検知された輪留め42に対して、車両制御を実施する。例えば、輪留め42までの距離をユーザに表示したり、ブレーキ装置を作動させて輪留め42の位置に合わせて車両50を停止させるようにする。なお、ステップS19が、「車両制御部」に相当する。
【0042】
続いて、
図4には、
図3の処理をより具体的に示すタイミングチャートを示す。
図4では、対象とする駐車区画に車両50を後退させて駐車するシーンを示している。なお、対象とする駐車区画には輪留め42が設置されており、さらに輪留め42の近傍(車両50から見て輪留め42の奥側)にはグレーチング43が設けられている。
【0043】
まず、車両50が駐車場に進入し、シフト位置が後退レンジ(Rレンジ)とされることで、車両50を駐車する状況であると判定される。その後、対象とする駐車区画に進入し、例えば車両50の進行方向前端部Sが駐車区画の所定位置に達すると(タイミングt11)、輪留め42に対して車両50が近づく状況下にあると判定され、物体検知の感度が制御される。この場合、輪留め42に対しては感度が大きくされる一方で、グレーチング43に対しては感度が小さくされる。そして、輪留め42に対する感度が大きくなることで、輪留め42が検知される。
【0044】
その後、車両50の駐車が進むにつれて、車両50と輪留め42との距離が縮まり、タイミングt12で、輪留め42が超音波センサ10の探査領域外となると検知されなくなる。このとき、変更された感度が元の感度に戻される。すなわち、車両50に対する輪留め42の距離が所定以下となる場合に、物体検知の感度の変更を禁止している。ここで、車両50に対する輪留め42の距離が所定以下(例えば、超音波センサ10の探査領域から外れる距離以下)となるタイミングt12以降も物体検知の感度を大きくした状態とすると、不要な物体まで検知するおそれがあり、その結果不要作動を招く可能性がある。そのため、タイミングt12において、感度制御を解除している。その後、タイミングt13において、車速がゼロになることで、車両50の駐車が完了する。なお、駐車が完了するタイミングt13において、感度を元に戻す設定としてもよい。
【0045】
続いて、物体検知の感度制御の時系列的な変化について、
図5を用いて説明する。
図5には、反射波の波高値とその閾値Thとの関係を示している。なお、横軸は車両50からの距離を表している。閾値Thは、探査波の残響に基づく反射波を検知しないように、車両50に接近した領域では高く設定されている。ここで、反射波Pは輪留め42に由来する反射波を表し、反射波Qはグレーチング43に由来する反射波を表している。
【0046】
まず、位置Xにおける感度制御では、輪留め42の推定位置に基づいて波高値の閾値Thを小さくし、グレーチング43の推定位置に基づいて波高値の閾値Thを大きくする。この場合、輪留め42の推定位置、又はグレーチング43の推定位置を含む所定範囲内において、感度制御がそれぞれ実施される。その後、車両50が輪留め42及びグレーチング43に近づく際には、車両50と輪留め42及びグレーチング43との距離に応じて、閾値Thを時系列的に変化させる。すなわち、車両50の位置が位置X→位置Y→位置Zと進むにつれて、車両50と輪留め42及びグレーチング43との距離は縮まることから、閾値Thを上下させるポイント(距離)を変化させている。これにより、所望の物体だけを選択的に検知することができる。
【0047】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0048】
超音波センサ10の出力に基づく物体検知では、反射強度の点などから検知されにくい物体があり、このような物体に対して車両制御が実施されないことで不都合が生じることがある。この点、上記構成では、車載カメラ20の撮像画像に基づいて、超音波センサ10の反射波による物体検知が困難となる所定物体に対して車両50が近づいている状況下にあるかを判定し、その所定物体に対して車両50が近づいている状況下にあると判定された場合に、超音波センサ10による物体検知の感度を一時的に大きくする。具体的には、所定物体を駐車区画に設置されている輪留め42として、輪留め42を対象物体とし、超音波センサ10の出力に基づいて車両制御を実施するようにした。この場合、撮像画像に基づいて輪留め42に対して車両50が近づいている状況下にあることを判定し、輪留め42に対する車両50の位置に応じて、物体検知の感度を一時的に大きくすることで、超音波センサ10の出力に基づいて輪留め42を検知することが可能となる。すなわち、車載カメラ20の撮像画像を用いた物体認識を行いつつ、超音波センサ10の出力に基づく物体検知を実施することで、検知されにくい物体を検知できるようにしている。これにより、物体に対する車両制御を適正に実施することができる。
【0049】
また、車両50が駐車区画の中間点である所定位置まで進むと、輪留め42に対して車両50が近づいている状況下にあるとして、超音波センサ10の検知感度を一時的に大きくするようにした。この場合、輪留め42に対して車両50が接近した状態であると考えられ、かかる状況下で超音波センサ10による物体検知の感度を大きくすることで、輪留め42を好適に検知することができる。
【0050】
一方、マンホールやグレーチング等は、超音波センサ10の反射波による物体検知では検知され得るものの、車両制御の対象物体とされることで不要作動が生じるおそれがある。この点を考慮し、輪留め42に対して感度を大きくする際に、撮像画像に基づいてマンホールやグレーチングが車両周辺に存在することを判定し、これらが存在すると判定された場合に車両制御の対象物体から除去するようにした。この場合、撮像画像を用いることで、マンホールやグレーチングの存在を判定することができる。その結果、物体検知の感度を大きくすることで輪留め42が車両制御の対象物体となる一方で、マンホールやグレーチングが車両制御の対象物体となることを防ぐことができる。これにより、所望の物体のみを適正に検知して、車両制御の対象とすることができる。
【0051】
具体的には、輪留め42に対しては感度を大きくするとともに、マンホールやグレーチングに対しては感度を小さくするようにした。これにより、マンホールやグレーチングが車両制御の対象物体となることを好適に防ぎつつ、輪留め42のみを適正に検知することができる。
【0052】
また、車両50が輪留め42に対して近づく状況下で輪留め42が超音波センサ10の探査領域外となった場合に、物体検知の感度の変更を禁止するようにしたため、輪留め42が検知されなくなったにもかかわらず、物体検知の感度を大きくした状態が維持されることで不要な物体が検知されることを防ぐことができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。超音波センサ10を用いた物体検知において、三角測量の原理を利用して車両50に対する物体の相対的な位置(座標)が算出されることが知られている。なお、三角測量の原理による物体の位置の算出は周知であるため、詳細は省略する。この三角測量において、超音波センサ10の探査領域内に複数の物体が存在する場合には、物体が存在しないにもかかわらず、実在しない位置に物体が存在すると検知されることがある。ここで、
図6左図では、物体B1及び物体B2が、第2センサ12及び第1センサ11からそれぞれ等距離に存在する状況を示している。かかる状況下では、実在しない物体であるにもかかわらず、B3の位置に物体が存在すると検知されることがある。このような実在しない物体(ゴースト)は、検知されないことが望ましい。
【0054】
本実施形態では、撮像画像を用いて、超音波センサ10により検知された物体が実在しない物体(ゴースト)であるか否かを判定し、ゴーストであると判定された場合にゴーストが検知されないように超音波センサ10による物体検知の感度を制御している。具体的には、超音波センサ10の探査領域や反射強度を制御して、ゴーストが現れないようにする。すなわち、超音波センサ10の出力により検知される検知物体(ゴースト)を、車両制御の対象物体から除去する。
【0055】
例えば、
図6右図には、物体検知の感度として超音波センサ10の探査領域を制御した例を示している。すなわち、ECU30は、超音波センサ10により物体B1と物体B2の間のB3の位置に物体が検知されている状態から、撮像画像に基づいてB3の位置には物体が存在しないと判定すると、例えば第1センサ11の探査領域を小さく(狭く)する。つまり、物体B2が第1センサ11の探査領域外となるように、第1センサ11の探査領域を小さくする。これにより、ゴーストが検知されないようにしている。
【0056】
なお、第1センサ11の探査領域を変更せずに、第1センサ11によって受信される反射波の反射強度が小さくなるように、反射波電圧に対する増幅率(ゲイン)を小さくしてもよい。かかる場合においてもゴーストが検知されなくなる。
【0057】
図7は、第2実施形態における撮像画像を用いた物体検知処理の手順を示すフローチャートである。本処理は、上述の
図3に置き換えてECU30により所定周期で繰り返し実施される。なお
図7では、
図3と同様の処理について同一のステップ番号を付して説明を簡略にする。
図3の処理からの変更点は、ステップS15からステップS21への置換及びステップS16の処理内容の変更である。
【0058】
図7において、車両50が、駐車をする状況であって、駐車区画内の所定位置を通過すると(ステップS13:YES,ステップS14:YES)、ステップS21へ進む。ステップS21では、撮像画像を用いて、超音波センサ10により検知された物体が、ゴーストであるか否かを判定する。具体的には、超音波センサ10により検知された物体の位置に物体が存在するか否かを撮像画像により判定する。
【0059】
ステップS21がYESであれば、ステップS16へ進み、物体検知の感度を制御する。ここでは、ゴーストを超音波センサ10で検知しないようにするため、センタセンサのいずれか一方(例えば第1センサ11)の探査領域を小さくする一方で、輪留め42に対しては、感度を大きくする側に変更する。
【0060】
一方、ステップS21がNOであれば、ステップS17に進み、輪留め42に対して感度を大きくする。なお、第2実施形態において、ステップS21が「物体判定部」に相当する。
【0061】
超音波センサ10では、実在しない物体(ゴースト)であるにもかかわらず、物体として検知されることがあり、その物体が対象物体とされると運転支援を実施する際の不要作動の原因となる。この点を考慮し、撮像画像に基づいて、ゴーストが存在すると判定した場合に、車両制御の対象物体から除去するようにした。具体的には、超音波センサ10による物体検知の感度を制御し、輪留め42に対しては感度を大きくする一方で、ゴーストを検知しないように超音波センサ10の探査領域を狭くするようにした。これにより、ゴーストの検知を抑制しつつ、輪留め42のみを適正に検知することができる。
【0062】
上記の実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0063】
・上記実施形態では、超音波センサ10による物体検知の感度を大きくする制御として、反射波の波高値の閾値Thを小さくする構成としたが、これに限らない。例えば超音波センサ10から出力される反射波電圧に対して行う増幅処理において、輪留め42の推定位置にかかる反射波電圧に対して限定的に増幅率(ゲイン)を大きくする構成としてもよい。さらに、これらを併用する構成としてもよい。
【0064】
・上記実施形態では、
図3のステップS14において、輪留め42に対して車両50が近づいている状況下にあるかの判定として、車両50が駐車区画の中間点である所定位置まで進んだか否かを判定したが、これを変更してもよい。例えば、輪留め42の辞書情報を用いたパターンマッチングを行って、画像物体に輪留め42が含まれているか否かを判定してもよい。すなわち、画像物体に輪留め42が含まれている場合に(ステップS14:YES)、輪留め42に対して車両50が近づいている状況下にあるとして、ステップS15へ進む。なお、かかる構成では、撮像画像上に認識される輪留め42に基づいて、輪留め42の位置が推定される。
【0065】
また、撮像画像内の所定領域、例えば画像下端から上方となる所定位置までの領域に輪留め42が含まれているかに基づいて、輪留め42に対して車両50が近づいている状況下であることを判定してもよい。
【0066】
・上記実施形態では、駐車場所として駐車区画を想定し、所定物体として駐車区画の所定の位置に設置されている輪留め42を前提として、
図3のステップS14における判定を実施した。この点、駐車場所は駐車区画に限らず、例えば区画整備されていない臨時の駐車場所等であってもよく、輪留め42は、そういった駐車場所等に設置されている突起物(例えば、花壇の石段や縁石等)であってもよい。
【0067】
そのようなシーンでは、ステップS14において、撮像画像中に地面上の突起物が存在するか否かを判定する。そして、ステップS14がYESの場合、つまり撮像画像上に地面上の突起物が存在すると判定された場合に、ステップS15へ進む。
【0068】
・上記実施形態では、車両50を後退させて駐車させる、いわゆる後ろ向き駐車における制御を示したが、前向き駐車においても同様に実施することができる。なお、上記制御について、前向き駐車又は後ろ向き駐車に応じて、処理内容を一部変更してもよい。例えば、ステップS14の判定における駐車区画の所定位置を、前向き駐車又は後ろ向き駐車に応じて変更してもよい。
【0069】
・駐車時には、ドライバによる車両50の切り返し操作によって駐車区画内を車両50が前後に進行する状況が考えられる。このような状況下において、車両50の後退時に超音波センサ10の感度を制御することで輪留め42の位置を一度検知した場合には、輪留め42の位置を一時的に記憶しておき、撮像画像にかかわらず輪留め42の位置を追跡できるようにするとよい。この構成によれば、切り返し操作による車両50の前進によって、撮像画像から輪留め42が認識されなくなっても、一度検知した輪留め42の位置に基づいて、車両制御を実施することができると考えられる。
【0070】
・上記実施形態では、4つの車載カメラ21〜24により生成されるトップビュー画像を用いて、物体検知処理を実施したが、これに限らず、各カメラ21〜24の撮像画像を用いて、上記物体検知処理を実施してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、測距センサとして超音波センサ10を用いたが、探査波を送受信できるセンサであれば特に制限されない。例えば、ミリ波レーダやレーザレーダ等を用いる構成であってもよい。