(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703478
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ポリアミド合成法
(51)【国際特許分類】
C08G 69/08 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
C08G69/08
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-530975(P2016-530975)
(86)(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公表番号】特表2016-538392(P2016-538392A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】FR2014052904
(87)【国際公開番号】WO2015071604
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年9月14日
(31)【優先権主張番号】1361211
(32)【優先日】2013年11月15日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブリフォー, ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ノゲス, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ル, ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】マレ, フレデリク
【審査官】
阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公告第00997511(GB,A)
【文献】
英国特許出願公告第00857657(GB,A)
【文献】
英国特許出願公告第00857062(GB,A)
【文献】
特開平11−343337(JP,A)
【文献】
特表2002−501961(JP,A)
【文献】
PERKINS R B; RODEN J J; PRYDE E H,NYLON-9 FROM UNSATURATED FATTY DERIVATIVES: PREPARATION AND CHARACTERIZATION,JOURNAL OF THE AMERICAN OIL CHEMISTS' SOCIETY (JAOCS),ドイツ,SPRINGER,1975年11月 1日,VOL:52,PAGE(S):473 - 477,URL,http://dx.doi.org/10.1007/BF02637493
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式NH2−(CH2)n−COOR(式中、Rはアルキル基を表し、nは9から14の整数を表す)のアミノエステルからポリアミドを生成するための方法であって、
−水の存在下における第1の温度での第1の反応工程;
−それに続く、第1の温度より高い第2の温度での第2の反応工程
を含み、
第1の温度は、120℃以下、好ましくは110℃以下、及び特に好ましくは100℃以下である、方法。
【請求項2】
第2の温度は、第1の温度より、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃、特に好ましくは少なくとも80℃、又は場合によっては少なくとも100℃高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の温度は、150℃以上、好ましくは180℃以上、及び特に好ましくは200℃以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第1の工程の継続時間は、少なくとも20分、好ましくは少なくとも40分、特に好ましくは少なくとも60分、又は場合によっては少なくとも90分である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Rは、直鎖状又は分枝状の、好ましくは直鎖状の、1〜4の炭素原子を含むアルキル基を表し;好ましくは、Rはメチル基又はエチル基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
nは9〜12であり、好ましくは10又は11であり;好ましくは、アミノエステルはアミノウンデカン酸メチル又はアミノドデカン酸メチルである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の工程の間に、式R−OHのアルコールの蒸留及び除去を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1の工程の前又は第1の工程の開始時に、有機溶媒、好ましくはアルコール、特に好ましくは式R−OHのアルコールの添加を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1の工程の前又は第1の工程の開始時に、好ましくはNaOH及びKOHから選ばれた、アミノエステルの加水分解のための触媒の添加を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の工程の開始時におけるアミノエステル/水の重量比は、1:5〜5:1、好ましくは1:3〜3:1、特に好ましくは1:2〜2:1、及び理想的には約1:1である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第2の工程の間に水のエバポレーション及び除去を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1の工程は、好ましくは、1.1bar未満の絶対圧で実施される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
バッチ式の方法である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
連続式の方法である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノエステルからポリアミドを合成するための方法と、この方法により調製されたポリアミドに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、二酸を用いたジアミンの重縮合により、又はアミノ酸の重縮合により、調製される。
【0003】
エステルの形態の二酸又はアミノ酸を提供することは既知の手順である。例えば、論文「Catalyzed polycondensation of ethyl 11-aminoundecanoate」(by F. Carriere and H. Sekiguchi, in Bulletin de la societe chimique de France, 1970, p. 1148-1150)は、種々の酸の存在下におけるアミノウンデカン酸エチルについて記載している。
【0004】
特開昭57−80426には、40〜90重量%の水の存在下において110〜160℃の温度でヘキサメチレンジアミンとカルボン酸ジメチルエステルとを等モル反応させ、続いて生成されたメタノールを除去してポリアミド中間体を得て、次いでこれを従来の技術によって重合することが記載されている。
【0005】
米国特許第6011134号には、アジピン酸モノメチルとヘキサメチレンジアミンからのPA6.6の合成であって、(a)等モル比で、水の存在下、100〜165℃の温度で、メタノールと水の同時蒸留を伴う℃の温度第1の反応工程、次いで(b)200〜260℃の温度、高圧(少なくとも100psig、即ち6.9bar)での残留水分の蒸留と、それに続く大気圧への圧力の減少を伴う270〜280℃の温度での加熱により蒸留残査を重縮合するとを伴う、℃の温度と高圧(少なくとも100psig、即ち6.9bar)第2の加熱工程を備える合成が記載されている。
【0006】
エステルからのポリアミドの合成に関して注目すべき一の問題は、副反応が特にN−アルキル化アミンの発生を促進するという問題である。このような望ましくない生成物は、重縮合と、更にはポリアミドの結晶化を妨害する。
【0007】
したがって、特にアミノエステルから、N−アルキル化度の低いポリアミドを生成するための改良法を開発することが必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、第1に、式NH
2−(CH
2)
n−COOR(式中、Rはアルキル基を表し、nは5から14の整数を表す)のアミノエステルからポリアミドを生成するための方法に関し、この方法は:
−水の存在下における第1の温度での第1の反応工程;
−それに続く、第1の温度より高い第2の温度での第2の反応工程
を含む。
【0009】
一実施態様によれば、第2の温度は第1の温度より、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃、特に好ましくは少なくとも80℃、又は場合によっては少なくとも100℃高い。
【0010】
一実施態様によれば、第1の温度は、120℃以下、好ましくは110℃以下、及び特に好ましくは100℃以下であり;及び/又は第2の温度は、150℃以上、好ましくは180℃以上、及び特に好ましくは200℃以上である。
【0011】
一実施態様によれば、第1の工程の継続時間は、少なくとも20分、好ましくは少なくとも40分、特に好ましくは少なくとも60分、又は場合によっては少なくとも90分である。
【0012】
一実施態様によれば、Rは、直鎖状又は分枝状の、好ましくは直鎖状の、1〜4の炭素原子を含むアルキル基を表し;好ましくは、Rはメチル基又はエチル基である。
【0013】
一実施態様によれば、nは5から12であり、好ましくは10又は11であり;好ましくは、アミノエステルはアミノウンデカン酸メチル又はアミノドデカン酸メチルである。
【0014】
一実施態様によれば、方法は、第1の工程の間に、式R−OHのアルコールの蒸留及び除去を含む。
【0015】
一実施態様によれば、方法は、第1の工程の前又は第1の工程の開始時に、有機溶媒、好ましくはアルコール、特に好ましくは式R−OHのアルコールの添加を含む。
【0016】
一実施態様によれば、方法は、第1の工程の前又は第1の工程の開始時に、好ましくはNaOH及びKOHから選ばれた、アミノエステルの加水分解のための触媒の添加を含む。
【0017】
一実施態様によれば、第1の工程の開始時におけるアミノエステル/水の重量比は、1:5〜5:1、好ましくは1:3〜3:1、特に好ましくは1:2〜2:1、及び理想的には約1:1である。
【0018】
一実施態様によれば、方法は、第2の工程の間に水のエバポレーション及び除去を含む。
【0019】
一実施態様によれば、第1の工程は、好ましくは1.1bar未満の絶対圧で実行される。
【0020】
一実施態様によれば、方法はバッチ式の方法である。
【0021】
一実施態様によれば、方法は連続式の方法である。
【0022】
本発明は、上述の方法により得られるポリアミドにも関する。
【0023】
一実施態様によれば、ポリアミドはポリウンデカンアミド又はポリドデカンアミドである。
【0024】
一実施態様によれば、ポリアミドは、40μeq/g以下、又は10μeq/g以下、好ましくは5μeq/g以下、特に2μeq/g以下、及び理想的には1μeq/g以下のN−アルキル化度を有する。
【0025】
本発明は、先行技術の欠点を克服することを可能にする。本発明は、具体的には、アミノエステルからポリアミドを生成するための方法であって、得られたポリアミドが低いN−アルキル化度を呈する方法を提供する。
【0026】
これは、二工程のシステム、即ち、水の存在下でアミノエステルを加水分解することを可能にする第1の工程と、この加水分解により生じたアミノ酸を重縮合する第2の工程により達成される。言うまでもなく、重縮合を第1の工程の間に部分的に開始することができ、加水分解を第2の工程の間も部分的に継続することができる。
【0027】
加えて、第1の工程は、第2の工程より低い温度で実施される。実際、本発明者らは、加水分解工程中の温度がN−アルキル化度に極めて重要な影響を有することを発見した。したがって、第1の工程は適度な温度で実施されなければならず、一方第2の工程は好ましくは、重縮合の効率を保証するため、即ち、m−クレゾールにおいて測定した場合に0.8を上回る粘度を有するポリマーを獲得するために、比較的高温で実施される。
【0028】
逆に、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸モノメチルからのPA6.6の生成に関する米国特許第6011134号では、観察されたN−メチル化は、比較的高いレベルに達しているものの、温度に対する感受性はずっと低い。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここから、本発明について詳細に且つ非限定的に記載する。
【0030】
別途指示がない限り、示される比率又は割合は重量によるものである。
【0031】
本発明は、式NH
2−(CH
2)
n−COOR(式中、Rはアルキル基を表し、nは5から14の整数を表す)のアミノエステルからのポリアミドの生成を提供する。アルキル基は好ましくは置換されない。
【0032】
一実施態様によれば、コポリアミドを形成するために、異なる変数nを有する二以上のアミノエステルが使用される。
【0033】
しかしながら、ホモポリマーを形成するためには、単一の変数nを有する単一のアミノエステルが使用されることが好ましい。
【0034】
実施態様によれば、nは6以上であるが、好ましくはnは7以上若しくは8以上であり、又は更に好ましくは9以上若しくは10以上である。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、変数nが大きい程、加水分解の結果生じたアミノ酸は水に溶けにくく、したがって前記アミノ酸に望ましくないN−メチル化が起こる可能性が低いと考える。
【0035】
一実施態様によれば、nは5であり、合成されるポリアミドはPA6(ポリヘキサンアミド)である。
【0036】
本発明の好ましい一実施態様によれば、nは7〜14の、好ましくは8〜14の、好ましくは9〜14の、好ましくは9〜13の、好ましくは9〜11の範囲に含まれ、好ましくはnは9又は10又は11であり、好ましくはnは10又は11である。
【0037】
一実施態様によれば、nは10であり、合成されるポリアミドはPA11(ポリウンデカンアミド)である。
【0038】
一実施態様によれば、nは11であり、合成されるポリアミドはPA12(ポリドデカンアミド)である。
【0039】
R基は、直鎖状又は分枝状の、好ましくは直鎖状の、アルキル基である。R基は、例えば、1〜4の炭素原子を含みうる。R基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチル基である。エチル基及びメチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0040】
反応の第1の工程は、水の存在下で実施され、N−アルキル化化合物の生成を制限する適度な第1の温度でアミノエステルを加水分解することを目的としている。加水分解により、式NH
2−(CH
2)
n−COOHのアミノ酸及び式R-OHのアルコールが生成される。
【0041】
水/アミノエステルの重量比は、例えば、1:5〜5:1、又は1:3〜3:1、又は1:2〜2:1、又は約1:1である。
【0042】
したがって、第1の温度は、120℃以下;又は115℃以下;又は110℃以下;又は105℃以下;又は100℃以下;又は95℃以下;又は90℃以下;又は85℃以下;又は80℃以下;又は75℃以下;又は70℃以下;又は65℃以下;又は60℃以下;又は55℃以下;又は50℃以下;又は45℃以下;又は40℃以下である。
【0043】
驚くべきことに且つ予期せぬことに、このように第1の温度が120℃以下であるという基準は、nが7以上、好ましくは9以上であるために、本発明の方法においていっそう有利である。
【0044】
一実施態様によれば、アミノエステルの加水分解は、例えば、論文「Enzyme and Microbial Technology」(30 (2002) p.19-25)に記載されるリパーゼにより触媒される酵素分解である。
【0045】
第1の工程の継続時間は、例えば少なくとも20分、又は少なくとも30分、又は少なくとも40分、又は少なくとも50分、又は少なくとも1時間、又は少なくとも1時間30分、又は少なくとも2時間、又は少なくとも3時間である。
【0046】
第1の工程の間、第1の温度は好ましくは一定である。代替的に、この第1の温度は第1の工程の間に、例えば単調に又は循環的に、変動してもよい。第1の工程の開始時又は第1の工程の前に、温度上昇段階を設けることができる。好ましくは、温度上昇段階の継続時間は30分未満、又は20分未満、又は15分未満、又は10分未満である。
【0047】
第1の工程は、数百mbarの減圧下で、大気圧で、又はそれよりも高い圧力(例えば絶対圧1.5〜3bar)で実行することができる。
【0048】
好ましくは、加水分解の間に生成される式R-OHのアルコールは、第1の工程の間に蒸留及び除去される(好ましい実施態様ではメタノール)。本明細書における用語「除去」は、関連する化合物の除去、分離を意味し;必ずしも関連化合物の完全な除去を指すものではない。したがって、反応器は残留アルコール含有量を含みうる。
【0049】
代替的に、アルコールは第2の工程において、又は場合によっては反応終了時に除去することができる(随意で水と同時に)。
【0050】
一実施態様によれば、溶媒は、第1の工程の前に、又は第1の工程の開始時に、水とアミノエステルの結合を促進するために、媒質に導入されうる。溶媒として、特にアルコールR-OH(したがって好ましくはメタノール)が使用されるが、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド,n−メチルピロリドン又はアセトニトリルといった非プロトン性極性溶媒も使用される。好ましくは、溶媒の重量比は70%以下、好ましくは50%、30%又は20%以下である。
【0051】
媒質には、第1の工程前又は第1の工程の開始時に、アミノエステルの加水分解のための触媒を導入することも可能である。このような触媒は、好ましくは無機塩基(アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、例えばNaOH、KOH、Ca(OH)
2又はBa(OH)
2)である。トリアザビシクロデセン、トリアゾール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)などの、強い非プロトン性の有機塩基を使用してもよい。
【0052】
この触媒は、好ましくは、アミノエステルに対して1mol%以下の濃度で使用される。
【0053】
有利には、反応混合物は、超音波を印加することにより、又は制御された機械的キャビテーションにより、又はマイクロ波放射の印加により、活性化してもよい。
【0054】
数時間(好ましくは1〜5)かけて、アミノエステルを加水分解媒質に導入することもできる。
【0055】
反応の第2の工程は、所望のポリアミドを形成するために、加水分解の結果生じたアミノ酸を重縮合することを目的とする。この第2の工程は、結果としてポリアミド中に生じた酸及びアミンを重縮合するための通例の工程である。この工程は、固体相又は溶融相で実施することができる。
【0056】
この第2の工程は、重縮合の効率を上げるために、第1の温度より高い第2の温度で実施される。第2の温度は、例えば、150℃以上、又は160℃以上、又は170℃以上、又は180℃以上、又は190℃以上、又は200℃以上、又は210℃以上、又は220℃以上、又は230℃以上、又は240℃である。
【0057】
第2の工程の継続時間は、温度及び触媒の任意選択的含有量によって決まる。
【0058】
第2の工程の間、第2の温度は好ましくは一定である。代替的に、この第2の温度は第2の工程の間に、例えば単調に又は循環的に、変動してもよい。第1の工程と第2の工程の間には温度上昇段階が設けられる。好ましくは、温度上昇段階の継続時間は30分未満、又は20分未満、又は15分未満、又は10分未満、又は5分未満である。
【0059】
第2の工程は、一般に、第1の工程の圧力より高い圧力、即ち、考慮される温度での水の飽和蒸気圧以下の水蒸気圧で実施される。代替的に、特に連続法の場合、二つの工程は大気圧で実施することができる。
【0060】
好ましくは、水は第2の工程の間にエバポレート及び除去され、第2の工程は大気圧下又は場合によっては真空下の段階によって終了する。
【0061】
リン酸又は次亜リン酸といったアミノ酸の重縮合のための触媒は、第1の工程の前、又は第1の工程の間、又は第1の工程と第2の工程の間、又は第2の工程の開始時に媒質中に導入することができる。触媒の量は、脂肪族ポリアミドの量に対して3000ppm以下であり、有利には50〜1000ppmである。
【0062】
アミノ酸の重縮合のための触媒として、様々な添加剤、即ちUV安定剤、熱安定剤及び/又は可塑剤を、場合によっては第1の工程の前に、又は第1の工程の間に、又は第1の工程と第2の工程の間に、又は第2の工程の開始時に、媒質中に導入することもできる。
【0063】
得られるポリアミドの分子量は、生成物の溶融粘度をモニタリングすることにより常套的に制御することができる。重合の範囲を制限するために、随意で鎖制御剤(例えばモノカルボン酸、モノアミン、二酸又はジアミン)を添加することができる。
【0064】
反応終了時、ポリアミドは溶融状態で反応器から収集される。
【0065】
本発明の方法により得られるポリアミドは、
エステル鎖末端の残留物含有量が0.1又は1μeq/gより多いこと;
N−アルキル化(R基がメチル基である場合はN−メチル化)度が低いこと、即ちN−アルキル化度が40μeq/g以下、又は30μeq/g以下、又は20μeq/g以下、又は10μeq/g以下、又は5μeq/g以下、又は2μeq/g以下、又は1μeq/g以下であること
を特徴とする。
【0066】
エステル鎖末端及びN−アルキル化度は、ヘキサフルオロイソプロパノール(即ちHFIP)/CD
2Cl
2混合物中に溶解させた後でNMR分析によって測定することができる。μeq/gでの値は、ポリアミド1グラム当たりの化合物(エステル又はN−アルキル化化合物)のμmolの数に対応する。N−アルキル化化合物には、N−アルキルアミン及びジ−N−アルキルアミン鎖末端及び第三級N−アルキルアミド構造が含まれる。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は本発明を限定することなく説明する。
【0068】
実施例1:11−アミノメチルエステルの温度110℃での加水分解と、それに続く250℃での重合
反応混合物は、1:1の重量比の水/11−アミノメチルエステル混合物である。反応混合物は、全還流で反応器に導入される。反応は、110℃の反応混合物温度に対応する145℃の設定温度で実行される。反応の継続時間は90分である。次いで媒質を凍結乾燥し(水とメタノールを除去するため)、凍結乾燥物をNMRにより分析する。N−メチル化化合物の含有量は、5μeq/gの検出限界を下回っている。
【0069】
次いで凍結乾燥物を、予め窒素で不活性化したガラス製反応器内において窒素フラッシング下で250℃に加熱する。2時間30分間加熱した後、得られたポリマーを冷却し、次いでNMRにより分析する。N−メチル化化合物の含有量は42μeq/gである。これら化合物の中で、N−脱メチル化鎖末端の含有量は3μeq/gである。
【0070】
実施例2:11−アミノメチルエステルの130℃の温度での加水分解と、それに続く250℃での重合
反応混合物は、1:1の重量比の水/11−アミノメチルエステル混合物である。反応混合物は、全還流で反応器に導入される。反応は、130℃の反応混合物温度で実施される。5℃/分での加熱段階の後の、反応の継続時間は90分である。媒質を10rpmで撹拌する。反応終了時の圧力は約2.8barである。
【0071】
得られた媒質は、二相媒質(ペースト状白色相と液相)である。媒質を混合し、次いで凍結乾燥し(水とメタノールを除去するため)、凍結乾燥物をNMRにより分析する。N−メチル化化合物の含有量は38μeq/gである。
【0072】
次いで凍結乾燥物を、予め窒素で不活性化したガラス製反応器内において窒素フラッシング下で250℃に加熱する。2時間30分間加熱した後、得られたポリマーを冷却し、次いでNMRにより分析する。N−メチル化化合物の含有量は73μeq/gである。これら化合物の中で、N−脱メチル化鎖末端の含有量は7μeq/gである。
【0073】
実施例3:12−アミノメチルエステルの110℃の温度での加水分解と、それに続く250℃での重合
反応混合物は、1:1の重量比の水/12−アミノメチルエステル混合物である。反応混合物は、全還流で反応器に導入される。反応は、110℃の反応混合物温度に対応する145℃の設定温度で実施される。反応の継続時間は90分である。次いで媒質を凍結乾燥する(水とメタノールを除去するため)。
【0074】
次いで凍結乾燥物を、予め窒素で不活性化したガラス製反応器内において窒素フラッシング下で250℃に加熱する。2時間30分間加熱した後、得られたポリマーを冷却し、次いでNMRにより分析する。N−メチル化化合物の含有量は32μeq/gである。これら化合物の中で、N−脱メチル化鎖末端の含有量は4μeq/gである。
【0075】
実施例4:6−アミノメチルエステルの110℃の温度での加水分解と、それに続く250℃での重合
反応混合物は、1:1の重量比の水/6−アミノメチルエステル混合物である。反応混合物は、全還流で反応器に導入される。反応は、110℃の反応混合物の温度に対応する145℃の設定温度で実施される。反応の継続時間は90分である。次いで媒質を凍結乾燥する(水とメタノールを除去するため)。
【0076】
次いで凍結乾燥物を、予め窒素で不活性化したガラス製反応器内において窒素フラッシング下で250℃に加熱する。2時間30分間加熱した後、得られたポリマーを冷却し、次いでNMRにより分析する。N−メチル化化合物の含有量は12μeq/gである。これら化合物の中に、N−脱メチル化鎖末端は検出されない。
【0077】
実施例5:6−アミノメチルエステルの130℃の温度での加水分解と、それに続く250℃での重合
反応混合物は、1:1の重量比の水/6−アミノメチルエステル混合物である。反応混合物は、全還流で反応器に導入される。反応は、130℃の反応混合物温度で実施される。反応の継続時間は90分である。次いで媒質を凍結乾燥する(水とメタノールを除去するため)。
【0078】
次いで凍結乾燥物を、予め窒素で不活性化したガラス製反応器内において窒素フラッシング下で250℃に加熱する。2時間30分間加熱した後、得られたポリマーを冷却し、次いでNMRにより分析する。N−メチル化化合物は検出されない。
【0079】
実施例6:11−アミノメチルエステルの110℃の温度で水なしでの加熱と、それに続く250℃での重合
11−アミノメチルエステルは、全還流で反応器に導入される。反応は、110℃の反応混合物温度で実施される。反応の継続時間は90分である。次いで媒質を凍結乾燥する(メタノールを除去するため)。
【0080】
次いで凍結乾燥物を、予め窒素で不活性化したガラス製反応器内において窒素フラッシング下で250℃に加熱する。2時間30分間加熱した後、得られたポリマーを冷却し、次いでNMRにより分析する。このポリマーは脆性で、腐った魚のような不快な臭いを有している。N−メチル化化合物の含有量は150μeq/gである。これら化合物の中で、N−脱メチル化鎖末端の含有量は95μeq/gである。