【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、摩擦クラッチ装置、特に内燃機関により駆動される自動車のパワートレーン用の摩擦クラッチ装置であって、回転軸線と、ハウジングと、少なくとも1つの第1のクラッチプレートと、摩擦クラッチ装置を操作すべく、少なくとも1つの第1のクラッチプレートに対して相対的に軸方向で制限された範囲で変位可能な少なくとも1つの第2のクラッチプレートと、操作装置と、を備える摩擦クラッチ装置において、操作装置は、一方のクラッチプレートに旋回可能に支持されている少なくとも1つのレバー要素と、一方では、レバー要素に、他方では、他方のクラッチプレートに、ヒンジ式に結合されている少なくとも1つのロッド要素と、を有することを特徴とする摩擦クラッチ装置により解決される。
【0006】
圧着プレートは、エンゲージ(係合)された操作位置と、レリーズ(係合解除)された操作位置との間で変位可能であってもよい。摩擦クラッチ装置は、摩擦結合を介した出力伝達のために少なくとも1つのプレッシャプレートと少なくとも1つの圧着プレートとの間でクランプ可能な少なくとも1つのクラッチディスクを有していてもよい。
【0007】
パワートレーンは、内燃機関を有していてもよい。内燃機関は、出力軸を有していてもよい。パワートレーンは、トーショナルバイブレーションダンパを有していてもよい。パワートレーンは、トランスミッションを有していてもよい。トランスミッションは、少なくとも1つの入力軸を有していてもよい。パワートレーンは、少なくとも1つの駆動輪を有していてもよい。摩擦クラッチ装置は、パワートレーン内に配置可能であってもよい。摩擦クラッチ装置は、内燃機関とトランスミッションとの間に配置可能であってもよい。摩擦クラッチ装置は、トーショナルバイブレーションダンパとトランスミッションとの間に配置可能であってもよい。
【0008】
摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つのプレッシャプレートを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの圧着プレートを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの中間プレッシャプレートを備えていてもよい。少なくとも1つの第1のクラッチプレートは、プレッシャプレート又は中間プレッシャプレートであってもよい。少なくとも1つの第2のクラッチプレートは、圧着プレートであってもよい。
【0009】
摩擦クラッチ装置は、1つの入力部を備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの出力部を備えていてもよい。ハウジングは、カバーと称呼してもよい。入力部は、内燃機関の出力軸により駆動可能であってもよい。少なくとも1つの出力部により、トランスミッションの少なくとも1つの入力軸が、駆動可能であってもよい。
【0010】
摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの単板クラッチを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの多板クラッチを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの常開型のクラッチを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの常閉型のクラッチを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つのプッシュ型のクラッチを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つのプル型のクラッチを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、クラッチペダルにより操作可能であってもよい。摩擦クラッチ装置は、自動操作可能であってもよい。摩擦クラッチ装置は、シングルクラッチを備えていてもよい。シングルクラッチは、1つのプレッシャプレートと1つの圧着プレートとを有していてもよい。摩擦クラッチ装置は、デュアルクラッチを備えていてもよい。デュアルクラッチは、1つの中間プレッシャプレートと1つの第1の圧着プレートと1つの第2の圧着プレートとを有していてもよい。中間プレッシャプレートは、第1の圧着プレートと第2の圧着プレートとの間に配置されていてもよい。摩擦クラッチ装置は、ボーデンケーブルクラッチを備えていてもよい。
【0011】
摩擦クラッチ装置は、入力部と少なくとも1つの出力部との間で実質的に出力伝達が実施されない完全にレリーズされた操作位置から、入力部と少なくとも1つの出力部との間で実質的に完全な出力伝達が実施される完全にエンゲージされた操作位置まで、操作に応じて、増加する機械的な出力伝達ができるようになっていてもよく、このとき、入力部と少なくとも1つの出力部との間の出力伝達は、摩擦結合を介して実施される。反対に、入力部と少なくとも1つの出力部との間で実質的に完全な出力伝達が実施される完全にエンゲージされた操作位置から、入力部と少なくとも1つの出力部との間で実質的に出力伝達が実施されない完全にレリーズされた操作位置まで、操作に応じて、減少する機械的な出力伝達ができるようになっていてもよい。完全にエンゲージされた操作位置は、閉鎖操作位置であってもよい。完全にレリーズされた操作位置は、開放操作位置であってもよい。
【0012】
摩擦クラッチ装置は、発進及びトランスミッション変速比の切り換えを可能にするために用いられてもよい。摩擦クラッチ装置により、入力部と、第1の出力部及び/又は第2の出力部とが、互いに接続又は互いに切断されてもよい。このために、入力部からの出力フローは、繋ぎ換え時、第1の出力部から第2の出力部へ、反対に第2の出力部から第1の出力部へと移されてもよい。
【0013】
少なくとも1つの第1のクラッチプレートとハウジングとは、互いに堅固に結合されていてもよい。少なくとも1つの第1のクラッチプレートとハウジングとは、互いに相対回動不能に、かつ軸方向で堅固に結合されていてもよい。少なくとも1つの第2のクラッチプレートとハウジングとは、互いに相対回動不能に結合されていてもよい。少なくとも1つの第2のクラッチプレートは、ハウジングに制限された範囲で軸方向に変位可能に結合されていてもよい。摩擦クラッチ装置の入力部は、ハウジングと、少なくとも1つの第1のクラッチプレートと、少なくとも1つの第2のクラッチプレートとを有していてもよい。摩擦クラッチ装置の少なくとも1つの出力部は、少なくとも1つのクラッチディスクを有していてもよい。
【0014】
操作装置は、少なくとも1つの第2のクラッチプレートを変位させるために用いられてもよい。操作装置は、一方では、少なくとも1つの第1のクラッチプレート及び/又はハウジングに支持され、他方では、少なくとも1つの第2のクラッチプレートに支持されていてもよい。操作装置は、操作力及び/又は操作運動を変換するために用いられてもよい。操作装置は、操作力を増幅するために用いられてもよい。操作装置は、回転操作運動を並進操作運動に変換するために用いられてもよい。操作装置は、伝動機構を有していてもよい。操作装置は、機械的倍率を有していてもよい。操作装置は、機械式の伝動機構を有していてもよい。
【0015】
少なくとも1つのレバー要素は、第1のクラッチディスクに旋回可能に支持されていてもよい。少なくとも1つのロッド要素は、一方では、レバー要素に、他方では、第2のクラッチプレートにヒンジ式に結合されていてもよい。少なくとも1つのレバー要素は、第2のクラッチディスクに旋回可能に支持されていてもよい。少なくとも1つのロッド要素は、一方では、レバー要素に、他方では、第1のクラッチプレートに、ヒンジ式に結合されていてもよい。
【0016】
それぞれ1つのレバー要素と1つのロッド要素とは、1つの操作モジュールを形成してもよい。ロッド要素は、ウェブ(Steg)と称呼してもよい。操作装置は、少なくとも1つの操作モジュールを有していてもよい。操作装置は、複数の操作モジュールを有していてもよい。操作装置は、4つ〜8つの操作モジュール、特に6つの操作モジュールを有していてもよい。
【0017】
クラッチプレートは、それぞれ1つの外縁を有していてもよい。クラッチプレートは、それぞれ、少なくとも略同じ外側直径を有していてもよい。クラッチプレートは、互いに同心に配置されていてもよい。少なくとも1つのレバー要素及び少なくとも1つのロッド要素は、クラッチプレートの半径方向外側に配置されていてもよい。少なくとも1つのレバー要素及び少なくとも1つのロッド要素は、クラッチプレートの外縁に配置されていてもよい。操作装置の複数の操作モジュールは、周方向で均等に分配配置されていてもよい。
【0018】
少なくとも1つのレバー要素は、摩擦クラッチ装置の回転軸線に対して垂直な旋回軸線回りに旋回可能であってもよい。少なくとも1つのロッド要素は、摩擦クラッチ装置の回転軸線に対して垂直なヒンジ軸線回りに変位可能であってもよい。
【0019】
少なくとも1つのレバー要素は、アングルレバーとして構成されていてもよい。少なくとも1つのレバー要素は、作用点側の腕及び力点側の腕を有していてもよい。力点側の腕は、作用点側の腕より長くてもよい。少なくとも1つのレバー要素は、支点を有していてもよい。少なくとも1つのレバー要素は、その支点でもって少なくとも1つのプレッシャプレートに配置されていてもよい。少なくとも1つのロッド要素は、作用点側の腕に結合されていてもよい。
【0020】
操作装置は、摩擦クラッチ装置の回転軸線に関して同心の、回動可能なリング要素を有していてもよい。少なくとも1つのレバー要素は、リング要素にヒンジ式に結合されていてもよい。少なくとも1つのレバー要素の力点側の腕は、リング要素に結合されていてもよい。リング要素の回動が、少なくとも1つのレバー要素の旋回を引き起こすようになっていてもよい。
【0021】
摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つのレバー要素を旋回可能に支持すべく、かつ/又は少なくとも1つのロッド要素をヒンジ式に結合すべく、内側部分と外側部分とを有する少なくとも1つの支持装置を備えていてもよい。支持装置は、揺動セグメントと称呼してもよい。内側部分は、ピン状に構成されていてもよい。外側部分は、ナット状(mutterartig)に構成されていてもよい。内側部分と外側部分とは、互いに相対的に変位可能であってもよい。内側部分と外側部分とは、互いに転動可能であってもよい。内側部分は、外側部分のための転動区分を有していてもよい。外側部分は、内側部分のための転動区分を有していてもよい。転動区分は、それぞれ1つの凸面状の表面を有していてもよい。転動区分は、それぞれ異なる転動半径を有していてもよい。内側部分の転動半径は、外側部分の転動半径より大きくてもよい。
【0022】
内側部分は、ヘッド状(gelenkkopfartig)の断面を有していてもよい。外側部分は、ソケット状(gelenkpfannenartig)の断面を有していてもよい。内側部分は、外側部分内に変位可能に収容されていてもよい。内側部分と外側部分とは、それぞれ1つの対称の断面を有していてもよい。内側部分と外側部分とは、互いに第1の終端位置と第2の終端位置との間で変位可能であってもよい。第1の終端位置及び第2の終端位置は、1つの傾動角を画定してもよい。内側部分及び外側部分は、それぞれ、終端位置において形状結合式に互いに当接する対応する輪郭を有していてもよい。対応する輪郭は、それぞれ1つのS字状の形状を有していてもよい。
【0023】
内側部分と外側部分との間で、±25°まで、特に±20°まで、特に±15°までの傾動角が可能であってもよい。
【0024】
外側部分は、1つのクラッチプレート又はロッド要素に力結合(kraftschluessig)、特に摩擦結合、及び/又は形状結合(formschluessig)を介して結合されていてもよい。外側部分は、クラッチプレート内又はロッド要素内に圧入されていてもよい。単数又は複数のクラッチプレート及び/又はロッド要素は、外側部分のための収容部を有していてもよい。内側部分は、レバー要素に堅固に結合されていてもよい。
【0025】
総括及び換言すると、本発明により、とりわけレバークラッチ用の傾動セグメントが得られる。揺動セグメントは、滑り摩擦なしの接触箇所を有していてもよい。純然たる転がり運動が実施されてもよい。揺動セグメントは、2つの要素を有していてもよい。揺動セグメントの2つの要素は、異なる転がり半径を有していてもよい。一方の要素は、レバー内に固定されていてもよい。他方の要素は、圧着プレート内に固定されていてもよい。レバー内に固定された要素は、圧着プレート内に固定された要素より大きな転がり半径を有していてもよい。揺動セグメントの傾動角(β)は、転がり点における法線と、揺動セグメントの両要素の対称軸線との間の角度(α1及びα2)の合計である。揺動セグメントピンにおける上述の角度は、スリップ条件に障らないことが望ましい(tanα1<μ)。これにより、レバーは、全作業範囲(±20°)においてスリップしないように圧着プレートに支持されてもよい。
【0026】
揺動セグメントナットは、揺動セグメントピンより小さな転がり半径を有していてもよい。揺動セグメントナットは、支持要素内に圧入されていてもよい。圧着プレートとレバーの対偶の場合、圧着プレートが、支持要素として用いられてもよい。レバーとウェブの対偶の場合、レバーが、支持要素として用いられてもよい。揺動セグメントピンは、あらゆる位置で揺動セグメントナットの外側半径内にとどまってもよく、その結果、支持要素の圧入孔は、接触されない。揺動セグメントナットは、揺動セグメントピンを、接触領域において、スリップ、例えば輸送時のスリップが回避されるように包囲してもよい。最大の傾動角は、転がり点における法線と、揺動セグメントピンにおける力の方向(対称軸線でもある)との間の角度が、スリップ条件:tanα1<μを満たすように選択されてもよい。
【0027】
「〜てもよい」とは、特に本発明の任意選択的な特徴を表している。したがって、これらの単数又は複数の特徴をそれぞれ含む本発明の一実施の形態がその都度存在する。
【0028】
本発明に係る摩擦クラッチ装置により、操作時の機械的倍率を高めることが可能となる。クラッチ軸線方向の全調節ストロークにわたる、エンゲージ力及びレリーズ力の印加が可能となる。構成スペースをより有効に利用可能となる。レバー要素の傾動角を拡大することが可能となる。レバー要素における滑り運動は回避される。摩耗は低減される。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この説明からさらなる特徴及び利点が看取可能である。これらの実施の形態の具体的な特徴は、本発明の一般的特徴を構成し得る。これらの実施の形態の、他の特徴と結び付いた特徴も、本発明の独立した特徴を構成し得る。
【0030】
図面は、概略的かつ例示的なものである。