特許第6703490号(P6703490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703490
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】摩擦クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 23/12 20060101AFI20200525BHJP
   F16D 13/52 20060101ALI20200525BHJP
   F16D 13/46 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   F16D23/12 B
   F16D13/52 B
   F16D13/46 A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-565322(P2016-565322)
(86)(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公表番号】特表2017-514083(P2017-514083A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】DE2015200272
(87)【国際公開番号】WO2015165459
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2018年4月19日
(31)【優先権主張番号】102014207910.1
(32)【優先日】2014年4月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティン ホムトフスキー
(72)【発明者】
【氏名】オスヴァルト フリートマン
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭42−10246(JP,Y1)
【文献】 実開昭53−117864(JP,U)
【文献】 実開昭51−72652(JP,U)
【文献】 実公昭34−13810(JP,Y1)
【文献】 特公昭33−3954(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 23/12,13/52,13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦クラッチ装置(102,200)であって、
回転軸線と、
ハウジングと、
少なくとも1つの第1のクラッチプレート(106,206)と、
前記摩擦クラッチ装置(102,200)を操作すべく、前記少なくとも1つの第1のクラッチプレート(106,206)に対して相対的に軸方向で制限された範囲で変位可能な少なくとも1つの第2のクラッチプレート(104,108,204)と、
操作装置と、
を備え、
前記操作装置は、
前記第2のクラッチプレート(104,108,204)に旋回可能に支持されている少なくとも1つのレバー要素(110,208)と、
一方では、前記レバー要素(110,208)の作用点側の腕(114)に、他方では、前記第1のクラッチプレート(106,206)に、ヒンジ結合されている少なくとも1つのロッド要素(118,210)と、
前記摩擦クラッチ装置(102,200)の回転軸線に関して同心の、回動可能なリング要素(214)と、
を有し、前記レバー要素(110,208)の力点側の腕(112)が、前記リング要素(214)にヒンジ結合されていることを特徴とする摩擦クラッチ装置(102,200)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのレバー要素(110,208)及び前記少なくとも1つのロッド要素(118,210)は、前記第1および第2のクラッチプレート(104,106,108,204,206)の半径方向外側に配置されている、請求項1に記載の摩擦クラッチ装置(102,200)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのレバー要素(110,208)は、前記摩擦クラッチ装置(102,200)の前記回転軸線に対して垂直な旋回軸線回りに旋回可能であり、前記少なくとも1つのロッド要素(118,210)は、前記摩擦クラッチ装置(102,200)の前記回転軸線に対して垂直なヒンジ軸線回りに変位可能である、請求項1または2に記載の摩擦クラッチ装置(102,200)。
【請求項4】
前記摩擦クラッチ装置(102,200)は、前記少なくとも1つのレバー要素(110,208)を旋回可能に支持すべく、かつ/又は前記少なくとも1つのロッド要素(118,210)をヒンジ結合すべく、内側部分(302)及び外側部分(304)を有する少なくとも1つの支持装置(216,218,300)を備え、前記内側部分(302)と前記外側部分(304)とは、互いに相対的に変位可能である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の摩擦クラッチ装置(102,200)。
【請求項5】
前記内側部分(302)は、前記外側部分(304)のための転動区分(306)を有し、前記外側部分(304)は、前記内側部分(302)のための転動区分(310)を有し、前記外側部分のための転動区分(306)と前記内側部分のための転動区分(310)は、それぞれ異なる転動半径(r1,r2)を有する、請求項4に記載の摩擦クラッチ装置(102,200)。
【請求項6】
前記内側部分(302)は、ヘッド状の断面を有し、前記外側部分(304)は、ソケット状の断面を有する、請求項4または5に記載の摩擦クラッチ装置(102,200)。
【請求項7】
前記内側部分(302)と前記外側部分(304)との間で、±25°まで、特に±20°まで、特に±15°までの傾動角(β)が可能である、請求項4から6までのいずれか1項に記載の摩擦クラッチ装置(102,200)。
【請求項8】
前記外側部分(304)は、1つのクラッチプレート(104,108,204)又は前記ロッド要素(118,210)に力結合、特に摩擦結合、及び/又は形状結合を介して結合されている、請求項4から7までのいずれか1項に記載の摩擦クラッチ装置(102,200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に内燃機関により駆動される自動車のパワートレーン用の摩擦クラッチ装置であって、回転軸線と、ハウジングと、少なくとも1つの第1のクラッチプレートと、摩擦クラッチ装置を操作すべく、少なくとも1つの第1のクラッチプレートに対して相対的に軸方向で制限された範囲で変位可能な少なくとも1つの第2のクラッチプレートと、操作装置と、を備える摩擦クラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102011104412号明細書において、入力部であって、プレッシャプレート、及びプレッシャプレートに関して制限された範囲で軸方向に変位可能な少なくとも1つの圧着プレートを有する入力部と、少なくとも1つのクラッチディスクを有する少なくとも1つの出力部と、を備え、少なくとも1つのクラッチディスクは、プレッシャプレートと少なくとも1つの圧着プレートとの間に配置されており、少なくとも1つの圧着プレートの変位に応じて、入力部と出力部との間の摩擦結合(reibschluessig)を介した力伝達/運動伝達が可能である、特に内燃機関により駆動される自動車のパワートレーン用の摩擦クラッチ装置であって、少なくとも1つの圧着プレートを変位させるべく、滑車列からなる装置が設けられていることを特徴とする摩擦クラッチ装置が公知である。
【0003】
独国特許出願公開第102013201262号明細書において、自動車の駆動エンジンの駆動軸を自動車トランスミッションの第1のトランスミッション入力軸及び/又は第2のトランスミッション入力軸に断接するデュアルクラッチであって、駆動軸を第1のトランスミッション入力軸に断接する第1の摩擦クラッチを備え、第1の摩擦クラッチは、第1のカウンタプレートと、第1のカウンタプレートに対して相対的に可動な第1の圧着プレートであって、第1のクラッチディスクを第1のカウンタプレートと第1の圧着プレートとの間で締め付ける第1の圧着プレートと、第1の引っ張り手段を用いて第1の圧着プレートを第1のカウンタプレートに対して相対的に動かす操作力を伝達する第1の滑車列、特に因数型滑車列(Faktorflaschenzug)であって、第1の圧着プレートの半径方向外側に取り付けられ、第1の引っ張り手段を変向させる第1の圧着プレート変向手段、特に索輪、及び第1のカウンタプレートの半径方向外側に取り付けられ、第1の引っ張り手段を変向させる第1のカウンタプレート変向手段、特に索輪を有する第1の滑車列と、を有し、さらに駆動軸を第2のトランスミッション入力軸に断接する第2の摩擦クラッチを備え、第2の摩擦クラッチは、第2のカウンタプレートと、第2のカウンタプレートに対して相対的に可動な第2の圧着プレートであって、第2のクラッチディスクを第2のカウンタプレートと第2の圧着プレートとの間で締め付ける第2の圧着プレートと、第2の引っ張り手段を用いて第2の圧着プレートを第2のカウンタプレートに対して相対的に動かす操作力を伝達する第2の滑車列、特に因数型滑車列であって、第2の圧着プレートの半径方向外側に取り付けられ、第2の引っ張り手段を変向させる第2の圧着プレート変向手段、特に索輪、及び第2のカウンタプレートの半径方向外側に取り付けられ、第2の引っ張り手段を変向させる第2のカウンタプレート変向手段、特に索輪を有する第2の滑車列と、を有し、第1のカウンタプレート変向手段は、軸方向で第2の圧着プレート変向手段に対向するように配置されており、かつ/又は、第2のカウンタプレート変向手段は、軸方向で第1の圧着プレート変向手段に対向するように配置されている、デュアルクラッチが公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の根底にある課題は、冒頭で述べた摩擦クラッチ装置を構造的かつ/又は機能的に改良することである。特に、操作時の機械的倍率を高めることが可能であることが望ましい。クラッチ軸線方向の全調節ストロークにわたり、特にエンゲージ力及びレリーズ力の印加が可能であることが望ましい。特に構成スペースがより有効利用されることが望ましい。特にレバー要素の拡大された傾動角が可能であることが望ましい。特にレバー要素における滑り運動が回避されていることが望ましい。特に摩耗が低減されていることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、摩擦クラッチ装置、特に内燃機関により駆動される自動車のパワートレーン用の摩擦クラッチ装置であって、回転軸線と、ハウジングと、少なくとも1つの第1のクラッチプレートと、摩擦クラッチ装置を操作すべく、少なくとも1つの第1のクラッチプレートに対して相対的に軸方向で制限された範囲で変位可能な少なくとも1つの第2のクラッチプレートと、操作装置と、を備える摩擦クラッチ装置において、操作装置は、一方のクラッチプレートに旋回可能に支持されている少なくとも1つのレバー要素と、一方では、レバー要素に、他方では、他方のクラッチプレートに、ヒンジ式に結合されている少なくとも1つのロッド要素と、を有することを特徴とする摩擦クラッチ装置により解決される。
【0006】
圧着プレートは、エンゲージ(係合)された操作位置と、レリーズ(係合解除)された操作位置との間で変位可能であってもよい。摩擦クラッチ装置は、摩擦結合を介した出力伝達のために少なくとも1つのプレッシャプレートと少なくとも1つの圧着プレートとの間でクランプ可能な少なくとも1つのクラッチディスクを有していてもよい。
【0007】
パワートレーンは、内燃機関を有していてもよい。内燃機関は、出力軸を有していてもよい。パワートレーンは、トーショナルバイブレーションダンパを有していてもよい。パワートレーンは、トランスミッションを有していてもよい。トランスミッションは、少なくとも1つの入力軸を有していてもよい。パワートレーンは、少なくとも1つの駆動輪を有していてもよい。摩擦クラッチ装置は、パワートレーン内に配置可能であってもよい。摩擦クラッチ装置は、内燃機関とトランスミッションとの間に配置可能であってもよい。摩擦クラッチ装置は、トーショナルバイブレーションダンパとトランスミッションとの間に配置可能であってもよい。
【0008】
摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つのプレッシャプレートを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの圧着プレートを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの中間プレッシャプレートを備えていてもよい。少なくとも1つの第1のクラッチプレートは、プレッシャプレート又は中間プレッシャプレートであってもよい。少なくとも1つの第2のクラッチプレートは、圧着プレートであってもよい。
【0009】
摩擦クラッチ装置は、1つの入力部を備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの出力部を備えていてもよい。ハウジングは、カバーと称呼してもよい。入力部は、内燃機関の出力軸により駆動可能であってもよい。少なくとも1つの出力部により、トランスミッションの少なくとも1つの入力軸が、駆動可能であってもよい。
【0010】
摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの単板クラッチを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの多板クラッチを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの常開型のクラッチを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つの常閉型のクラッチを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つのプッシュ型のクラッチを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つのプル型のクラッチを備えていてもよい。摩擦クラッチ装置は、クラッチペダルにより操作可能であってもよい。摩擦クラッチ装置は、自動操作可能であってもよい。摩擦クラッチ装置は、シングルクラッチを備えていてもよい。シングルクラッチは、1つのプレッシャプレートと1つの圧着プレートとを有していてもよい。摩擦クラッチ装置は、デュアルクラッチを備えていてもよい。デュアルクラッチは、1つの中間プレッシャプレートと1つの第1の圧着プレートと1つの第2の圧着プレートとを有していてもよい。中間プレッシャプレートは、第1の圧着プレートと第2の圧着プレートとの間に配置されていてもよい。摩擦クラッチ装置は、ボーデンケーブルクラッチを備えていてもよい。
【0011】
摩擦クラッチ装置は、入力部と少なくとも1つの出力部との間で実質的に出力伝達が実施されない完全にレリーズされた操作位置から、入力部と少なくとも1つの出力部との間で実質的に完全な出力伝達が実施される完全にエンゲージされた操作位置まで、操作に応じて、増加する機械的な出力伝達ができるようになっていてもよく、このとき、入力部と少なくとも1つの出力部との間の出力伝達は、摩擦結合を介して実施される。反対に、入力部と少なくとも1つの出力部との間で実質的に完全な出力伝達が実施される完全にエンゲージされた操作位置から、入力部と少なくとも1つの出力部との間で実質的に出力伝達が実施されない完全にレリーズされた操作位置まで、操作に応じて、減少する機械的な出力伝達ができるようになっていてもよい。完全にエンゲージされた操作位置は、閉鎖操作位置であってもよい。完全にレリーズされた操作位置は、開放操作位置であってもよい。
【0012】
摩擦クラッチ装置は、発進及びトランスミッション変速比の切り換えを可能にするために用いられてもよい。摩擦クラッチ装置により、入力部と、第1の出力部及び/又は第2の出力部とが、互いに接続又は互いに切断されてもよい。このために、入力部からの出力フローは、繋ぎ換え時、第1の出力部から第2の出力部へ、反対に第2の出力部から第1の出力部へと移されてもよい。
【0013】
少なくとも1つの第1のクラッチプレートとハウジングとは、互いに堅固に結合されていてもよい。少なくとも1つの第1のクラッチプレートとハウジングとは、互いに相対回動不能に、かつ軸方向で堅固に結合されていてもよい。少なくとも1つの第2のクラッチプレートとハウジングとは、互いに相対回動不能に結合されていてもよい。少なくとも1つの第2のクラッチプレートは、ハウジングに制限された範囲で軸方向に変位可能に結合されていてもよい。摩擦クラッチ装置の入力部は、ハウジングと、少なくとも1つの第1のクラッチプレートと、少なくとも1つの第2のクラッチプレートとを有していてもよい。摩擦クラッチ装置の少なくとも1つの出力部は、少なくとも1つのクラッチディスクを有していてもよい。
【0014】
操作装置は、少なくとも1つの第2のクラッチプレートを変位させるために用いられてもよい。操作装置は、一方では、少なくとも1つの第1のクラッチプレート及び/又はハウジングに支持され、他方では、少なくとも1つの第2のクラッチプレートに支持されていてもよい。操作装置は、操作力及び/又は操作運動を変換するために用いられてもよい。操作装置は、操作力を増幅するために用いられてもよい。操作装置は、回転操作運動を並進操作運動に変換するために用いられてもよい。操作装置は、伝動機構を有していてもよい。操作装置は、機械的倍率を有していてもよい。操作装置は、機械式の伝動機構を有していてもよい。
【0015】
少なくとも1つのレバー要素は、第1のクラッチディスクに旋回可能に支持されていてもよい。少なくとも1つのロッド要素は、一方では、レバー要素に、他方では、第2のクラッチプレートにヒンジ式に結合されていてもよい。少なくとも1つのレバー要素は、第2のクラッチディスクに旋回可能に支持されていてもよい。少なくとも1つのロッド要素は、一方では、レバー要素に、他方では、第1のクラッチプレートに、ヒンジ式に結合されていてもよい。
【0016】
それぞれ1つのレバー要素と1つのロッド要素とは、1つの操作モジュールを形成してもよい。ロッド要素は、ウェブ(Steg)と称呼してもよい。操作装置は、少なくとも1つの操作モジュールを有していてもよい。操作装置は、複数の操作モジュールを有していてもよい。操作装置は、4つ〜8つの操作モジュール、特に6つの操作モジュールを有していてもよい。
【0017】
クラッチプレートは、それぞれ1つの外縁を有していてもよい。クラッチプレートは、それぞれ、少なくとも略同じ外側直径を有していてもよい。クラッチプレートは、互いに同心に配置されていてもよい。少なくとも1つのレバー要素及び少なくとも1つのロッド要素は、クラッチプレートの半径方向外側に配置されていてもよい。少なくとも1つのレバー要素及び少なくとも1つのロッド要素は、クラッチプレートの外縁に配置されていてもよい。操作装置の複数の操作モジュールは、周方向で均等に分配配置されていてもよい。
【0018】
少なくとも1つのレバー要素は、摩擦クラッチ装置の回転軸線に対して垂直な旋回軸線回りに旋回可能であってもよい。少なくとも1つのロッド要素は、摩擦クラッチ装置の回転軸線に対して垂直なヒンジ軸線回りに変位可能であってもよい。
【0019】
少なくとも1つのレバー要素は、アングルレバーとして構成されていてもよい。少なくとも1つのレバー要素は、作用点側の腕及び力点側の腕を有していてもよい。力点側の腕は、作用点側の腕より長くてもよい。少なくとも1つのレバー要素は、支点を有していてもよい。少なくとも1つのレバー要素は、その支点でもって少なくとも1つのプレッシャプレートに配置されていてもよい。少なくとも1つのロッド要素は、作用点側の腕に結合されていてもよい。
【0020】
操作装置は、摩擦クラッチ装置の回転軸線に関して同心の、回動可能なリング要素を有していてもよい。少なくとも1つのレバー要素は、リング要素にヒンジ式に結合されていてもよい。少なくとも1つのレバー要素の力点側の腕は、リング要素に結合されていてもよい。リング要素の回動が、少なくとも1つのレバー要素の旋回を引き起こすようになっていてもよい。
【0021】
摩擦クラッチ装置は、少なくとも1つのレバー要素を旋回可能に支持すべく、かつ/又は少なくとも1つのロッド要素をヒンジ式に結合すべく、内側部分と外側部分とを有する少なくとも1つの支持装置を備えていてもよい。支持装置は、揺動セグメントと称呼してもよい。内側部分は、ピン状に構成されていてもよい。外側部分は、ナット状(mutterartig)に構成されていてもよい。内側部分と外側部分とは、互いに相対的に変位可能であってもよい。内側部分と外側部分とは、互いに転動可能であってもよい。内側部分は、外側部分のための転動区分を有していてもよい。外側部分は、内側部分のための転動区分を有していてもよい。転動区分は、それぞれ1つの凸面状の表面を有していてもよい。転動区分は、それぞれ異なる転動半径を有していてもよい。内側部分の転動半径は、外側部分の転動半径より大きくてもよい。
【0022】
内側部分は、ヘッド状(gelenkkopfartig)の断面を有していてもよい。外側部分は、ソケット状(gelenkpfannenartig)の断面を有していてもよい。内側部分は、外側部分内に変位可能に収容されていてもよい。内側部分と外側部分とは、それぞれ1つの対称の断面を有していてもよい。内側部分と外側部分とは、互いに第1の終端位置と第2の終端位置との間で変位可能であってもよい。第1の終端位置及び第2の終端位置は、1つの傾動角を画定してもよい。内側部分及び外側部分は、それぞれ、終端位置において形状結合式に互いに当接する対応する輪郭を有していてもよい。対応する輪郭は、それぞれ1つのS字状の形状を有していてもよい。
【0023】
内側部分と外側部分との間で、±25°まで、特に±20°まで、特に±15°までの傾動角が可能であってもよい。
【0024】
外側部分は、1つのクラッチプレート又はロッド要素に力結合(kraftschluessig)、特に摩擦結合、及び/又は形状結合(formschluessig)を介して結合されていてもよい。外側部分は、クラッチプレート内又はロッド要素内に圧入されていてもよい。単数又は複数のクラッチプレート及び/又はロッド要素は、外側部分のための収容部を有していてもよい。内側部分は、レバー要素に堅固に結合されていてもよい。
【0025】
総括及び換言すると、本発明により、とりわけレバークラッチ用の傾動セグメントが得られる。揺動セグメントは、滑り摩擦なしの接触箇所を有していてもよい。純然たる転がり運動が実施されてもよい。揺動セグメントは、2つの要素を有していてもよい。揺動セグメントの2つの要素は、異なる転がり半径を有していてもよい。一方の要素は、レバー内に固定されていてもよい。他方の要素は、圧着プレート内に固定されていてもよい。レバー内に固定された要素は、圧着プレート内に固定された要素より大きな転がり半径を有していてもよい。揺動セグメントの傾動角(β)は、転がり点における法線と、揺動セグメントの両要素の対称軸線との間の角度(α1及びα2)の合計である。揺動セグメントピンにおける上述の角度は、スリップ条件に障らないことが望ましい(tanα1<μ)。これにより、レバーは、全作業範囲(±20°)においてスリップしないように圧着プレートに支持されてもよい。
【0026】
揺動セグメントナットは、揺動セグメントピンより小さな転がり半径を有していてもよい。揺動セグメントナットは、支持要素内に圧入されていてもよい。圧着プレートとレバーの対偶の場合、圧着プレートが、支持要素として用いられてもよい。レバーとウェブの対偶の場合、レバーが、支持要素として用いられてもよい。揺動セグメントピンは、あらゆる位置で揺動セグメントナットの外側半径内にとどまってもよく、その結果、支持要素の圧入孔は、接触されない。揺動セグメントナットは、揺動セグメントピンを、接触領域において、スリップ、例えば輸送時のスリップが回避されるように包囲してもよい。最大の傾動角は、転がり点における法線と、揺動セグメントピンにおける力の方向(対称軸線でもある)との間の角度が、スリップ条件:tanα1<μを満たすように選択されてもよい。
【0027】
「〜てもよい」とは、特に本発明の任意選択的な特徴を表している。したがって、これらの単数又は複数の特徴をそれぞれ含む本発明の一実施の形態がその都度存在する。
【0028】
本発明に係る摩擦クラッチ装置により、操作時の機械的倍率を高めることが可能となる。クラッチ軸線方向の全調節ストロークにわたる、エンゲージ力及びレリーズ力の印加が可能となる。構成スペースをより有効に利用可能となる。レバー要素の傾動角を拡大することが可能となる。レバー要素における滑り運動は回避される。摩耗は低減される。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この説明からさらなる特徴及び利点が看取可能である。これらの実施の形態の具体的な特徴は、本発明の一般的特徴を構成し得る。これらの実施の形態の、他の特徴と結び付いた特徴も、本発明の独立した特徴を構成し得る。
【0030】
図面は、概略的かつ例示的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】開放操作位置にある摩擦クラッチのレバー操作部の動作を示す図である。
図2】閉鎖操作位置にある摩擦クラッチのレバー操作部の動作を示す図である。
図3】レバー操作部を有する摩擦クラッチの斜視図である。
図4】レバー操作部の操作モジュールの詳細図である。
図5】中間位置にあるレバー操作部の支持部を示す図である。
図6】一方の終端位置にあるレバー操作部の支持部を示す図である。
図7】レバー操作部の支持部の幾何学形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、開放操作位置にある、その他の部分の詳細な図示は省略した摩擦クラッチ102のレバー操作部100の動作を示している。図2は、閉鎖操作位置にある摩擦クラッチ102のレバー操作部100の動作を示している。
【0033】
摩擦クラッチ102は、本形態ではデュアルクラッチであり、第1の圧着プレート104、中間プレッシャプレート106及び第2の圧着プレート108を備えている。中間プレッシャプレート106は、軸方向で第1の圧着プレート104と第2の圧着プレート108との間に配置されている。
【0034】
摩擦クラッチ102は、ハウジングを備えている。中間プレッシャプレート106は、ハウジングに堅固に結合されている。第1の圧着プレート104及び第2の圧着プレート108は、ハウジングにそれぞれ相対回動不能に、かつ中間プレッシャプレート106に対して相対的に軸方向で制限された範囲で変位可能に結合されている。レバー操作部100は、第1の圧着プレート104を変位させるために用いられる。
【0035】
レバー操作部100は、レバー要素110を有している。レバー要素110は、力点側の腕112と作用点側の腕114と支点116とを有するアングルレバーとして構成されている。力点側の腕112は、作用点側の腕114より大きな長さを有している。レバー要素110は、その支点116でもって第1の圧着プレート104に旋回可能に支持されている。レバー操作部100は、ロッド要素118を有している。ロッド要素118は、一方の端部120でもってヒンジ式に作用点側の腕114の自由端部122に結合されており、他方の端部124でもってヒンジ式に中間プレッシャプレート106に結合されている。力点側の腕112は、操作力を加える自由端部126を有している。
【0036】
図1に示した開放操作位置では、圧着プレート104と中間プレッシャプレート106とは、圧着プレート104と中間プレッシャプレート106との間に配置されるクラッチディスクへの/からの、摩擦結合を介した出力伝達が実施されない間隔に互いに離間されている。力点側の腕112に操作力を加えることで、レバー要素110は、支点116を中心に旋回可能であり、その結果、ロッド要素118により、圧着プレート104は中間プレッシャプレート106に向かって変位する。図2に示した閉鎖操作位置では、圧着プレート104は、圧着プレート104と中間プレッシャプレート106との間に配置されるクラッチディスクへの/からの、摩擦結合を介した出力伝達が実施可能であるように、中間プレッシャプレート106に向かって変位されている。操作ストロークは、図1又は図2に符号128で示した。
【0037】
図3は、レバー操作部を備える摩擦クラッチ200を斜視図で示している。摩擦クラッチ200は、本形態ではシングルクラッチであり、1つの圧着プレート204と1つのプレッシャプレート206とを備えている。
【0038】
レバー操作部202は、複数のレバー要素(そのうちの1つに符号208を付した)と、複数のロッド要素(そのうちの1つに符号210を付した)とを有している。それぞれ1つのレバー要素208と1つのロッド要素210とは、1つの操作モジュール212を形成する。摩擦クラッチ200は、複数の、本形態では6つの、操作モジュール212を備えており、これらの操作モジュール212は、周方向で均等に分配配置されている。
【0039】
摩擦クラッチ200は、回動可能なリング要素214を備えている。リング要素214は、圧着プレート204及びプレッシャプレート206に対して同心に配置されている。レバー要素208の自由端部は、リング要素214に枢支されている。リング要素214の回動は、レバー要素208の旋回を引き起こす。その他の点については、補足的に図1及び図2並びに対応する説明を参照されたい。
【0040】
図4は、レバー要素208を有する操作モジュール212とロッド要素210とを詳細図で示している。レバー要素208を圧着プレート204に旋回可能に支持するために、支持部216が用いられる。ロッド要素210をレバー要素208に旋回可能に支持するために、支持部218が用いられる。
【0041】
図5は、例えば図4に示した支持部216,218等の、レバー操作部の支持部300を中間位置で示している。図6は、支持部300を一方の終端位置で示している。図7は、支持部300の幾何学形状を中間位置と一方の終端位置とで示している。
【0042】
支持部300は、内側部分302及び外側部分304を有している。内側部分302は、ピン状に構成されており、レバー操作部のレバー要素に堅固に結合されている。外側部分304は、ナット状に構成されており、摩擦クラッチのクラッチプレート又はレバー操作部のロッド要素に堅固に結合されている。例えば外側部分304は、クラッチプレート又はロッド要素の円形の収容部内に圧入されている。
【0043】
内側部分302は、外側部分のための転動区分306を有している。内側部分302は、転動区分306の側方に引っ込み308を有している。外側部分304は、内側部分302のための転動区分310を有している。外側部分304は、転動区分310の側方に出っ張り312を有している。内側部分302の転動区分306及び外側部分304の転動区分310は、それぞれ1つの凸面状の表面を有している。この場合、内側部分302の転動区分306は、大径の半径r1を有し、外側部分304の転動区分310は、小径の半径r2を有している。内側部分302と外側部分304とは、互いに相対的に2つの終端位置間で傾動角βにわたって変位可能である。その際、内側部分302の転動区分306と、外側部分304の転動区分310とは、滑動条件tanα1<μが満たされていることに基づいて滑動せずに互いに転動する。法線に沿った力を、Fで示した。
【0044】
終端位置において、それぞれ、内側部分302の1つの引っ込み308と、外側部分304の1つの出っ張り312とが、形状結合式に互いに当接する。これにより、終端位置における変位可能性は制限されている。その他の点については、補足的に特に図4及び対応する説明を参照されたい。
【符号の説明】
【0045】
100 レバー操作部
102 摩擦クラッチ
104 第1の圧着プレート
106 中間プレッシャプレート
108 第2の圧着プレート
110 レバー要素
112 力点側の腕
114 作用点側の腕
116 支点
118 ロッド要素
120 端部
122 端部
124 端部
126 端部
128 操作ストローク
200 摩擦クラッチ
204 圧着プレート
206 プレッシャプレート
208 レバー要素
210 ロッド要素
212 操作モジュール
214 リング要素
216 支持装置
218 支持装置
300 支持部
302 内側部分
304 外側部分
306 転動区分
308 引っ込み
310 転動区分
312 出っ張り
図1-2】
図3
図4
図5
図6
図7