(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂層は、さらにJIS−K5600−5−1(1999)に準拠した円筒形マンドレル法で測定した耐屈曲試験の値が8mm以下の耐屈曲性を有する請求項3又は4記載のシート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.ベース基材シート
本発明に係るベース基材シートは、透明導電層を積層するために使用されるものであり、透明材料で形成された基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも一方の面に積層され、かつ硬化性組成物の硬化物で形成された樹脂層とを含む。
【0012】
(基材フィルム)
基材フィルムは、透明な材質で形成されたポリマーフィルムであればよく、例えば、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などであってもよい。これらのうち、ポリエステル系樹脂、セルロースエステルなどが汎用される。
【0013】
ポリエステル系樹脂としては、PET、PENなどのポリアルキレンアリレート系樹脂などが挙げられる。これらのうち、PETなどのポリC
2−4アルキレンアリレートが特に好ましい。セルロースエステルとしては、セルローストリアセテート(TAC)などのセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートC
3−4アシレートなどが挙げられる。
【0014】
基材フィルムは、PET、PENなどのポリアルキレンアリレート系樹脂を二軸延伸したフィルムであってもよい。基材フィルムは、必要に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。基材フィルムの厚みは、用途に応じて10〜300μm程度である。
【0015】
(樹脂層)
樹脂層は、その上に積層する透明導電層の接着性を向上させ、かつ形成した透明導電層の電気抵抗を低く維持する機能を司り、硬化型樹脂及び無機粒子分散体を含む特定組成の硬化性組成物(硬化性樹脂前駆体)の硬化物で形成され、かつ膜厚が所定範囲に調整してある。これにより樹脂層表面の諸特性を調整しやすく、その結果、表面に積層する透明導電層の接着性が向上し、かつ形成した透明導電層の電気抵抗が低く維持される。以下、詳述する。
【0016】
(A)硬化型樹脂
硬化型樹脂としては、熱硬化型樹脂や電離放射線硬化型樹脂が含まれる。熱硬化型樹脂としては、例えば、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0017】
電離放射線硬化型樹脂としては、電離放射線(紫外線若しくは電子線)の照射により架橋硬化するものであればよく、このようなものとしては、光カチオン重合可能な光カチオン重合性樹脂、光ラジカル重合可能な光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーなどの1種又は2種以上を混合したものが使用できる。
【0018】
光カチオン重合性樹脂としては、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂やビニルエーテル系樹脂などが挙げられる。
【0019】
光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が使用できる。さらにこれらのアクリル系プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性を向上させ光学機能層の硬度をより向上させるために、光重合性モノマーを加えることが好ましい。
【0020】
光重合性モノマーとしては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等の2官能アクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能アクリルモノマー等の1種若しくは2種以上が使用される。
【0021】
電離放射線硬化型樹脂の市販品としては、以下のものが例示できる。東亜合成(株)製:アロニックスM−400、アロニックスM−402、アロニックスM−408、アロニックスM−450、アロニックスM−7100、アロニックスM−8030、アロニックスM−8060、大阪有機化学工業(株)製:ビスコート♯400、化薬サートマー(株)製:SR−295、ダイセルUCB(株)製:DPHA、Ebecryl 220、Ebecryl 1290K、Ebecryl 5129、Ebecryl 2220、Ebecryl 6602、新中村化学工業(株)製:NKエステルA−TMMT、NKオリゴEA−1020、NKオリゴEMA−1020、NKオリゴEA−6310、NKオリゴEA−6320、NKオリゴEA−6340、NKオリゴMA−6、NKオリゴU−4HA、NKオリゴU−6HA、NKオリゴU−324A、BASF社製:LaromerEA81、サンノプコ(株)製:フォトマー3016、荒川化学工業(株)製:ビームセット371、ビームセット575、ビームセット577、ビームセット700、ビームセット710、根上工業(株)製:アートレジンUN−3320HA、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−3320HC、アートレジンUN−3320HS、アートレジンUN−9000H、アートレジンUN−901T、アートレジンHDP、アートレジンHDP−3、アートレジン H61、日本合成化学工業(株)製:紫光UV−7600B、紫光UV−7610B、紫光UV−7620EA、紫光UV−7630B、紫光UV−1400B、紫光UV−1700B、紫光UV−6300B、共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−4A、ライトアクリレートDPE−6A、UA−306H、UA−306T、UA−306I、日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA、KAYARAD DPHA2C、KAYARAD DPHA−40H、KAYARAD D−310、KAYARAD D−330。
【0022】
後述する無機粒子分散体に光硬化性分散剤を含み、かつ硬化性組成物中の硬化型樹脂に電離放射線硬化型樹脂を用いる場合、硬化性組成物中の硬化型樹脂に用いる電離放射線硬化型樹脂は、光硬化性分散剤とは組成が異なる別のもので構成するとよい。すなわち無機粒子分散体に光硬化性分散剤を含み、かつ硬化性組成物中の硬化型樹脂に電離放射線硬化型樹脂を用いる場合、硬化性組成物中の硬化型樹脂に用いる電離放射線硬化型樹脂は、光硬化性分散剤と同一組成の化合物を除いたものにするとよい。
【0023】
硬化型樹脂は、硬化性組成物の固形分の全量を基準(100質量部)として、例えば10質量部以上、好ましくは15質量部以上、80質量部以下、好ましくは70質量部以下とするとよい。
【0024】
本例では、硬化型樹脂として、好ましくは、少なくとも電離放射線硬化型樹脂を含み、より好ましくは電離放射線硬化型樹脂のみ(後述の重合開始剤を含む)で構成することが望ましい。
電離放射線硬化型樹脂は、硬化型樹脂の全量を基準(100質量部)として、例えば80質量部以上、好ましくは100質量部とするとよい。
【0025】
(B)無機粒子分散体
(B1)無機粒子
本発明で用いる無機粒子分散体は、無機粒子が平均分散粒径45nm未満となる形態で分散しているものであればよい。本例では、上記所定の分散状態で分散体中に存在する無機粒子は、平均分散粒径が40nm以下、30nm以下、例えば20nm以下又は10nm以下の形態で分散していることが望ましい。分散粒径が45nm未満の無機粒子は、無機粒子全体(100%)の、例えば50%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは80%以上又は実質的にすべて(100%)であることが望ましい。本例では、特に、分散体中に、分散粒径が95nm以上の凝集粒子が1%以上存在しないことが望ましい。
【0026】
無機粒子の分散後の「平均分散粒径」は、分散体中における無機粒子の分散の程度を示すものであり、この値が小さいほど分散度が高いものとなる。本例では、分散体中において無機粒子が高度に分散していると(平均分散粒径が45nm未満)、塗膜としたときの可視光透過率、HAZE性能及び表面の平滑度を向上させやすい。また、分散度が高いほど、無機粒子の表面積が大きくなるため、無機粒子が有する機能特性をより明確に発現させ得る。さらに、無機粒子が特に高度に分散している場合、例えば無機粒子の実質的にすべてが45nm未満の形態で分散している場合、可視光透過率、HAZE性能及び表面の平滑度をより一層、向上させやすく有益である。
【0027】
なお、所定の分散粒径(例えば45nm)未満の形態で分散している粒子(すなわち凝集粒子又は一次粒子)の割合は、透過型電子顕微鏡を用いて加速電圧120kVにて、分散体を観察及び撮影し、その後、取得した画像につき、画像解析ソフトを用いて、分散体中において孤立分散している各々の凝集粒子又は一次粒子に関して、画像上で同一の面積をもつ円の径を求める画像解析を行って、分散粒径分布を求め、そしてこの分布に基づいて、下記式1によって求められる値である。
【0028】
[式1]{所定の分散粒径(例えば45nm)未満の形態で分散している粒子の数}/{全粒子の数}×100(%)
【0029】
本例では、上記分散体を調製するために、凝集前の一次粒子の平均粒子径(平均一次粒径)が45nm以下の無機粒子を用いることができる。
無機粒子は、45nm以下、40nm以下、又は35nm以下の平均一次粒径を有することができる。また、無機粒子の平均一次粒径は、5nm以上、10nm以上、又は15nm以上であってよい。平均一次粒径が充分に小さいと、ナノ粒子に特有の特性を効果的に発現することができ、また光散乱なども抑制できるなどの点で好ましい。
平均一次粒径が小さすぎる無機粒子の場合、粒子同士の凝集力が非常に大きいことから、透明性の高い一次粒子レベルの分散をさせることが困難になりうる。一方、平均一次粒径が45nmを超える無機粒子の場合、一次粒子レベルで分散させることは比較的容易になるが、粒径が大きいことから可視光などの光に対して散乱が生じ易く、硬化物からなる樹脂層の透明性を悪化させる問題が生じうる。
【0030】
無機粒子の分散前の「平均一次粒径」は、例えば、動的光散乱法粒子径分布測定装置(ベックマンコールター社製、「サブミクロン粒子アナライザーDelsaNano S」)等の粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。また例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた画像解析を利用して測定(特定)することもできる。
TEMを用いた画像解析としては、例えば、無機粒子の分散液を乾燥させ、得られた乾燥物をTEMにより撮影(75万倍)し、取得した画像について画像解析ソフトを用いて、100個の一次粒子について、画像上で同一の面積をもつ円の径を求める画像解析を行い、この径の平均値として得られる値を平均一次粒径と特定する方法などが挙げられる。
【0031】
本例において、無機粒子の、平均分散粒径と平均一次粒径の関係は、略同等程度(前者が後者の例えば1.0〜1.4倍、好ましくは1.2倍前後)であればよい。
【0032】
無機粒子の形状は、特に限定されず、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状、棒状、不定形などが挙げられるが、等方的に光を散乱し、視認性を向上できる点から、略球状などの等方形状が好ましい。
【0033】
無機粒子を構成する無機化合物としては、例えば、金属単体、金属酸化物、屈折率を上昇できる効果の点から、金属酸化物が好ましい。
【0034】
金属酸化物としては、例えば、周期表第4A族金属酸化物(例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウムなど)、第5A族金属酸化物(酸化バナジウムなど)、第6A族金属酸化物(酸化モリブデン、酸化タングステンなど)、第7A族金属酸化物(酸化マンガンなど)、第8族金属酸化物(酸化ニッケル、酸化鉄など)、第1B族金属酸化物(酸化銅など)、第2B族金属酸化物(酸化亜鉛など)、第3B族金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化インジウムなど)、第4B族金属酸化物(酸化ケイ素、酸化錫など)、第5B族金属酸化物(酸化アンチモンなど)の他、これらナノ粒子の格子中に異種金属をドーピングしたもの(例えば、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛など)、並びに表面改質を施したもの(例えば、ATO被覆酸化チタンなど)等が挙げられる。これらの金属酸化物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ケイ素は、粒子表面に水酸基が多く存在することで、粒子表面へ、必要に応じて配合される後述の光硬化性分散剤が比較的容易に吸着することができるため好ましい。こうした金属酸化物粒子は、気相法又は液相法により作製したもの、また必要に応じて、焼成して微結晶化したものを用いることもできる。
【0036】
金属酸化物の市販品としては、日産化学工業(株)製:サンエポックEFR−6N、サンエポックEFR−6NP(五酸化アンチモン)、石原産業(株)製:SN−100P(ATO)、FS−10P(ATO)、SN−102P(ATO)、FS−12P(ATO)、ET−300W(ATO被覆酸化チタン)、TTO−55(A)(酸化チタン)、TTO−55(B)(酸化チタン)、TTO−55(C)(酸化チタン)、TTO−55(D)(酸化チタン)、TTO−55(S)(酸化チタン)、TTO−55(N)(酸化チタン)、TTO−51(A)(酸化チタン)、TTO−51(C)(酸化チタン)、TTO−S−1(酸化チタン)、TTO−S−2(酸化チタン)、TTO−S−3(酸化チタン)、TTO−S−4(酸化チタン)、TTO−F−1(鉄含有酸化チタン)、TTO−F−2(鉄含有酸化チタン)、TTO−F−3(鉄含有酸化チタン)、TTO−F−11(鉄含有酸化チタン)、ST−01(酸化チタン)、ST−21(酸化チタン)、ST−30L(酸化チタン)、ST−31(酸化チタン)、三菱マテリアル(株)製:T−1(ITO)、S−1200(酸化スズ)、EP SP−2(リンドープ酸化スズ)、
三井金属工業(株)製:パストラン(ITO、ATO)、シーアイ化成(株)製:ナノテックITO、ナノテックSnO
2、ナノテックTiO
2、ナノテックSiO
2、ナノテックAl
2O
3、ナノテックZnO、触媒化成工業(株)製:TL−20(ATO)、TL−30(ATO)、TL−30S(PTO)、TL−120(ITO)、TL−130(ITO)、ハクスイテック(株)製:PazetCK(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、堺化学工業(株)製:FINEX−25(酸化亜鉛)、FINEX−25LP(酸化亜鉛)、FINEX−50(酸化亜鉛)、FINEX−50LP(酸化亜鉛)、FINEX−75(酸化亜鉛)、NANOFINE−50A(酸化亜鉛)、NANOFINE−50SD(酸化亜鉛)、EZ−1(酸化亜鉛)、STR−60C(酸化チタン)、STR−60C-LP(酸化チタン)、STR−100C(酸化チタン)、STR−100C−LP(酸化チタン)、STR−100A−LP(酸化チタン)、STR−100W(酸化チタン)、住友大阪セメント(株)製:OZC−3YC(酸化ジルコニウム)、OZC−3YD(酸化ジルコニウム)、OZC−3YFA(酸化ジルコニウム)、OZC−8YC(酸化ジルコニウム)、OZC−0S100(酸化ジルコニウム)、日本電工(株)製:PCS(酸化ジルコニウム)、PCS−60(酸化ジルコニウム)、PCS−90(酸化ジルコニウム)、T−01(酸化ジルコニウム)、テイカ(株)製:MT−100S(酸化チタン)、MT−100HD(酸化チタン)、MT−100SA(酸化チタン)、MT−500HD(酸化チタン)、MT−500SA(酸化チタン)、MT−600SA(酸化チタン)、MT−700HD(酸化チタン)、MZ−303S(酸化亜鉛)、MZY−303S(酸化亜鉛)、MZ−303M(酸化亜鉛)、MZ−505S(酸化亜鉛)、MZY−505S(酸化亜鉛)、MZ−505M(酸化亜鉛)、日本アエロジル(株)製:Aluminium Oxide C(酸化アルミニウム)、AEROSIL130(酸化ケイ素)、AEROSIL200(酸化ケイ素)、AEROSIL200V(酸化ケイ素)、AEROSIL200CF(酸化ケイ素)、AEROSIL200FA(酸化ケイ素)、AEROSIL300(酸化ケイ素)、AEROSIL300CF(酸化ケイ素)、AEROSIL380(酸化ケイ素)、AEROSILR972(酸化ケイ素)、AEROSILR974(酸化ケイ素)、AEROSILR976(酸化ケイ素)、AEROSILR202(酸化ケイ素)、AEROSILR805(酸化ケイ素)、AEROSILR812(酸化ケイ素)、AEROSILR812S(酸化ケイ素)、AEROSILMOX50(酸化ケイ素)、AEROSILTT600(酸化ケイ素)、AEROSILMOX80(酸化ケイ素/酸化アルミニウム)、AEROSILMOX170(酸化ケイ素/酸化アルミニウム)、AEROSILCOX84(酸化ケイ素/酸化アルミニウム)、等が挙げられる。
【0037】
特に制限されないが、無機粒子は、分散体中に、例えば10質量%以上、好ましくは15質量%以上で配合(充填)されていることが好ましい。あるいは、体積分率で、例えば1体積%以上、好ましくは3体積%以上で配合(充填)されていることが好ましい。分散体中への配合量(充填率)が充分に大きい場合には、無機粒子の機能を十分発揮することができ、得られる樹脂層の応用範囲が拡がりうる。含有量(充填率)が少なすぎると、所期の目的を達することができない。
【0038】
(B2)分散剤
分散体中での無機粒子の分散性を向上させるために、分散剤を用いることもできる。すなわち無機粒子分散体は、さらに分散剤を含むことができる。使用可能な分散剤としては、特に制限されないが、上述した無機粒子に対して高い分散性と光硬化性を備えた光硬化性分散剤を用いることが好ましい。
【0039】
光硬化性分散剤としては、上記性能を備えていれば、その構造等は特に制限されず、例えば、アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物(具体的には、芳香環を含まない樹枝状に枝分かれした脂肪族化合物であって、樹枝状であることにより分子末端に多くのアクリレート基を有するもの。多分岐型多官能(メタ)アクリレート化合物と同義)、などを用いることができる。アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物は、特に限定されないが、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
特に、上記のような樹枝状脂肪族化合物の中でも、デンドリマー又はハイパーブランチポリマーであることが好ましい。デンドリマーは高い規則性で分岐されたポリマーであり、例えば、コア部を有し、コア部から放射状に規則的な分岐繰り返し単位を有し、かつ分岐繰り返し単位を2以上有する化合物である。ハイパーブランチポリマーは低い規則性で分岐されたポリマーであって、直鎖状の高分子に比べ低粘度で溶剤溶解性に優れる。このハイパーブランチポリマーは、デンドリマーと同じ繰り返し単位の構成を有するが、コア部は必須ではなく(あってもよい)、また分岐繰り返し単位に一部欠部や不規則または不連続な箇所があることもある化合物である。
【0041】
光硬化性分散剤として使用可能なデンドリマーの市販品としては、大阪有機化学工業社製のビスコート#1000及びビスコート#1020(商品名)等が挙げられる。このビスコート#1000及びビスコート#1020は、末端にアクリレート基を有する多分岐(デンドリマー型)ポリエステルアクリレートを主成分とするものである。また、ビスコート#1000は分子量1000〜2000程度であり、ビスコート#1020は分子量1000〜3000程度である。
【0042】
光硬化性分散剤として使用可能なハイパーブランチポリマーの市販品としては、大阪有機化学工業社製のSTAR−501(SIRIUS−501、SUBARU−501)(商品名)等が挙げられる。このSTAR−501は、ジペンタエリスリトールをコアとして、末端にアクリレート基を有する多分岐(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)連結型)ポリアクリレートを主成分とするものである。また、STAR−501は分子量16000〜24000程度である。
【0043】
また光硬化性分散剤として、例えば、カルボキシル基を有する化合物(X)に、該化合物(X)のカルボキシル基と反応しうる官能基を有する化合物(Y)を反応させた化合物(Z)を用いることもできる。化合物(X)としては、例えば、芳香族骨格または脂肪族骨格と、2つ以上のカルボン酸無水物基とを有する化合物(a)に、カルボン酸無水物基と反応しうる官能基を有する化合物(b)を反応させた化合物を用いることができる。
光硬化性とハードコート性の観点から、上記化合物(b)及び化合物(Y)の少なくとも一部が、重合性不飽和二重結合基を有するものであることが好ましい。
【0044】
化合物(b)における「カルボン酸無水物基と反応しうる官能基」としては、ヒドロキシ基、アミノ基、グリシジル基などが挙げられ、中でもヒドロキシ基が特に好ましい。すなわち化合物(b)は、水酸基を1個または2個有するアクリレート化合物またはメタクリレート化合物であることが好ましい。化合物(Y)における「カルボキシル基と反応しうる官能基」としては、エポキシ基、オキサゾリン基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボジイミド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ビニルエーテル基などが挙げられる。
【0045】
具体的には、例えば、化合物(a)としての芳香族または脂肪族テトラカルボン酸二無水物を、化合物(b)としてのヒドロキシル基含有アクリレート化合物またはメタクリレート化合物と反応させて化合物(X)を得ることができる。
【0046】
「アクリレート基またはメタクリレート基」は、アクリレート基およびメタクリレート基の双方を含む、または使用する場合を含む概念である。以下、アクリレートとメタクリレートをまとめて「(メタ)アクリレート」と記載する場合がある。
【0047】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル骨格を有するビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン骨格を有するナフタレンテトラカルボン酸二無水物等、フルオレン骨格を有する9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、あるいは、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、テトロヒドロナフタレン骨格を有するテトラヒドロナフタレンカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート等が挙げられる。中でも、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これは、硬化膜のハードコート性と無機粒子の良好な分散性を併せ持つことが期待される。
【0048】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0049】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシアクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
硬化膜の硬度向上に寄与しうる観点からは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0050】
芳香族または脂肪族テトラカルボン酸二無水物と、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物との反応は、芳香族または脂肪族テトラカルボン酸二無水物の有する2つのカルボン酸無水物基と、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物が有するヒドロキシル基との反応であり、それ自体当該分野においてよく知られている。例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物とを、シクロヘキサノンなどの有機溶媒中、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンなどの触媒の存在下、温度50〜120℃で反応させることができる。この場合、反応系に、メトキノンなどの重合禁止剤を添加することができる。
【0051】
上記反応後、反応生成物である化合物(X)を含む反応混合物に、これを精製することなく、化合物(Y)としての、例えばエポキシ基含有化合物を添加し、反応させて化合物(Z)を得ることができる。
エポキシ基含有化合物には、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートのようなエポキシ基含有(メタ)アクリレート;o−フェニルフェノールグリシジルエーテル、p−フェニルフェノールグリシジルエーテル、モノスチレン化フェノールグリシジルエーテル、4−シアノ−4−ヒドロキシビフェニルグリシジルエーテル、4,4'−ビフェノールモノグリシジルエーテル、4,4'−ビフェノールジグリシジルエーテルのような芳香族グリシジルエーテル化合物等が含まれる。
【0052】
芳香族または脂肪族テトラカルボン酸二無水物と、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物との反応物である化合物(X)と、化合物(Y)としてのエポキシ基含有化合物との反応は、化合物(X)が有するカルボキシル基と、化合物(Y)が有するエポキシ基との反応であり、それ自体当該分野においてよく知られている。例えば、この反応は、ジメチルベンジルアミンなどのアミン触媒の存在下、50〜120℃の温度で行なうことができる。
【0053】
これらの反応は、無溶媒で行なってもよく、あるいは反応に対して不活性な溶媒中で行なってもよい。かかる溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、ベンゼンまたはトルエン等の炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルまたは酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンまたはパークレン等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等の極性溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
無機粒子分散体中に光硬化性分散剤を含む場合、その配合量は、特に制限されないが、無機粒子及び分散剤の固形分合計量100質量部中、例えば、1質量部以上、好ましくは3質量部以上であって40質量部以下、好ましくは30質量部以下の範囲内で使用することが好ましい。配合させる場合の分散剤の配合量が少なすぎると、配合させる意味がなく、一方多すぎると顔料が持つ効果が薄れてしまう不都合が生じうる。
【0055】
(B3)調製など
無機粒子分散体は、無機粒子粉末が均一に分散していることが好ましい。分散体は、平均一次粒径が10〜45nmの無機粒子を、必要に応じて配合する分散剤とともに、有機溶剤存在下で分散させることにより、好ましく製造できる。分散の程度は、平均一次粒径が例えば10nm以上45nm以下の無機粒子の50%以上が分散粒径45nm未満の形態で分散しているようにする。
【0056】
有機溶剤などの非水系ビヒクル中への無機粒子、分散剤の分散または混合などには、公知の分散機を使用すればよい。分散機にメディアを使う場合には、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズ等を用いることが好ましい。分散に関しては、2種類以上の分散機、または大きさの異なる2種類以上のメディアをそれぞれ用い、段階的に使用してもよい。
【0057】
無機粒子分散体は、少なくとも無機粒子及び必要に応じて配合される分散剤を含有するものであり、さらに溶剤や様々な添加剤を、本発明の目的や効果を損なわない範囲において含むことができる。具体的には、例えば、MIBK、MEK、PGMの溶剤や、帯電防止剤、UV吸収剤の添加剤等である。
【0058】
(C)硬化性組成物
硬化性組成物(硬化性樹脂前駆体)は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、熱重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物などの熱ラジカル発生剤)であってもよく、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。好ましい重合開始剤は、光重合開始剤である。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類などの光ラジカル重合開始剤や、オニウム塩類、スルホン酸エステル、有機金属錯体などの光カチオン重合開始剤などが例示できる。光重合開始剤には、慣用の光増感剤や光重合促進剤(例えば、第三級アミン類など)が含まれていてもよい。
【0059】
光重合開始剤の割合は、電離放射線硬化型樹脂の全量(無機粒子分散体中に光硬化性分散剤を含む場合は、電離放射線硬化型樹脂と光硬化性分散剤の合計量)100質量部に対して、例えば0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜8質量部(特に1〜5質量部)程度であってもよい。
【0060】
硬化性組成物は、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0061】
硬化性組成物は、透明性を損なわない範囲で、さらに慣用の添加剤を含有していてもよい。硬化性組成物は、塗工性などの点から、さらに溶媒を含んでいるのが好ましい。
【0062】
硬化性組成物は、熱硬化性組成物であってもよいが、短時間で硬化できる光硬化性化合物、例えば、紫外線硬化性化合物、EB硬化性化合物であってもよい。特に、実用的に有利な樹脂前駆体は、紫外線硬化性樹脂である。
【0063】
硬化性組成物中の硬化型樹脂と無機粒子の配合比率は、例えば、前者が15質量%以上90質量%以下、後者が10質量%以上85質量%以下であることが好ましい。なお、無機粒子分散体中に光硬化性分散剤を含み、かつ硬化性組成物中の硬化型樹脂に電離放射線硬化型樹脂を用いる場合、電離放射線硬化型樹脂と光硬化性分散剤の配合比率は、例えば、前者が10質量%以上90質量%以下、後者が10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。硬化性組成物中の無機粒子の割合は、硬化性組成物の固形分の全量を基準(100質量部)として、例えば10質量部以上、好ましくは30質量部以上、例えば85質量部以下、好ましくは70質量部以下であることが望ましい。
【0064】
(D)樹脂層の形成
樹脂層は上述した硬化性組成物の硬化物で形成されており、この硬化物は基材フィルムの少なくとも一方の面に硬化性組成物を含む塗工液を塗布した後、硬化させることにより得ることができる。
【0065】
硬化性組成物の塗布方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。なお、必要であれば、塗布液は複数回に亘り塗布してもよい。
【0066】
硬化性組成物が有機溶媒を含有する場合など、塗布後は、必要に応じて乾燥を行ってもよい。乾燥は、例えば、50〜150℃、好ましくは60〜140℃、さらに好ましくは70〜130℃程度の温度で行ってもよい。
【0067】
硬化工程において、硬化性組成物は、重合開始剤の種類に応じて加熱して硬化させてもよいが、通常、活性エネルギー線を照射することにより硬化できる。活性エネルギー線としては、例えば、放射線(ガンマー線、X線など)、紫外線、可視光線、電子線(EB)などが利用でき、通常、紫外線、電子線である場合が多い。
【0068】
光源としては、例えば、紫外線の場合は、DeepUVランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、50〜10000mJ/cm
2、好ましくは70〜7000mJ/cm
2、さらに好ましくは100〜5000mJ/cm
2程度であってもよい。
【0069】
電子線の場合は、電子線照射装置などの露光源によって、電子線を照射する方法が利用できる。照射量(線量)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、1〜200kGy(グレイ)、好ましくは5〜150kGy、さらに好ましくは10〜100kGy(特に20〜80kGy)程度である。加速電圧は、例えば、10〜1000kV、好ましくは50〜500kV、さらに好ましくは100〜300kV程度である。
【0070】
なお、活性エネルギー線の照射は、必要であれば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)雰囲気中で行ってもよい。
【0071】
なお、後述する透明導電層の、樹脂層に対する密着性を向上させるために、樹脂層を表面処理に供してもよい。表面処理としては、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾンや紫外線照射処理などが挙げられる。
【0072】
(E)厚み
以上のようにして得られる樹脂層は、その厚みが200nm以上、好ましくは250nm以上であって、400nm以下、好ましくは400nm未満、より好ましくは350nm以下に調整されていることが望ましい。樹脂層を、無機粒子の分散状態が適切な分散体を含む硬化性組成物の硬化物で構成するとともに、厚みを所定範囲に調整することで、層表面の諸特性が改善され、その結果、表面に積層する透明導電層の接着性(例えば耐候性、耐UV性)が向上し、かつ形成した透明導電層の電気抵抗が低く維持されることを本発明者らは見出したものである。
無機粒子の分散状態(平均分散粒径)が適切であっても、硬化後の膜厚が薄いと、硬化膜中で無機粒子が凸部となって現れ、その結果、平滑度が改善されにくい。また、無機粒子の分散状態が適切であっても、硬化後の膜厚が厚いと、硬化膜表面に樹脂そのもののうねりが発生してしまい、この場合も平滑度が改善されにくいと考えられる。
【0073】
(F)特性
所定組成で構成するとともに厚みが所定範囲に調整された、本例の樹脂層は、例えば、その層表面の平滑度が改善されていることが好ましい。具体的には、樹脂層は、層表面の算術平均粗さ(Ra)が、好ましくは1nm以下、より好ましくは0.8nm以下に調整されていることが望ましい。層表面のRaが1nm以下、すなわち実質的に平滑にすることにより、層表面より上方に形成する他の膜の性能を良好にすることができる。例えば、透明導電膜を上方に設計する場合は、透明導電膜の抵抗率を下げることができる。
【0074】
層表面のRaを低下させるには、樹脂層の形成に使用する硬化性組成物中にレベリング剤を配合しないこと、などが有効である。樹脂層の平滑度を高めるために、レベリング剤を加えることが一般的に知られているが、これを使用すると、硬化後の塗膜の、濡れ性や水に対する静的接触角が高くなり、次に積層される物質との密着性が悪くなる傾向にある。
一方、本発明のように、無機粒子の平均分散粒径と、硬化後塗膜の厚みを調節することにより、硬化後塗膜の平滑度が高められるため、レベリング剤を使用する必要はなく、積層される物質との密着性が悪くなることはない。なお、本願でいうレベリング剤を使用しないは、塗膜中への含有量が0.02%未満である場合を言う。
【0075】
Raは粗さ曲線の粗さの平均を示すパラメータであって、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定された値を意味しており、例えば走査型プローブ顕微鏡(日立ハイテク社)を用いて測定できる。
【0076】
樹脂層は、層表面のぬれ張力が、好ましくは40mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上に調整されていてもよい。層表面のぬれ張力を40mN/m以上に調整することにより層表面に直接設置する膜との密着性が向上し、耐候性が向上する。層表面のぬれ張力を上げるには、樹脂層の形成に使用する硬化性組成物の組成からシリコン又はフッ素等の使用を減らすことなどが有効である。ぬれ張力の値は、JIS−K6768(1999)に準拠した方法で測定した値である。
【0077】
樹脂層は、層表面の水に対する静的接触角が、好ましくは70度以下、より好ましくは68度以下に調整されていてもよい。層表面の水接触角を70度以下に調整することにより層表面に直接設置する膜との密着性が向上し、耐候性が向上する。
層表面の水に対する接触角を下げるには、樹脂層の形成に使用する硬化性組成物の組成からシリコン又はフッ素等の使用を減らすことなどが有効であり、接触角を上げるには、シリコン又はフッ素を含有する材料を使用するか、レベリング剤の使用が有効である。水に対する静的接触角は、JIS−R3257(1999)に準拠した方法で測定した値である。
【0078】
樹脂層は、500g/cm
2の荷重によるメラミンスポンジを、10回(好ましくは20回)往復させても、傷がつかない程度の表面硬度(耐擦傷性)も有していてもよい。これにより、樹脂層上に透明導電層を形成する際の加工適性に優れたものとすることができる。また、本発明のベース基材シートは、例えば、透明材料で形成された帯状の基材フィルム上に樹脂層を形成して帯状の積層体とし、これを一旦ロール状に巻き取り、原反(ロール状原反)とした後、切断機を用いてロール状原反から繰り出される積層体を所定サイズのシート状に切断することにより得られるが、このシート状に切り出す作業を行う場合における、樹脂層表面への無用の傷つきを防止することもできる。
【0079】
樹脂層は、JIS−K5600−5−1(1999)に準拠した円筒形マンドレル法で測定した耐屈曲試験の値が8mm以下(好ましくは5mm以下、より好ましくは2mm以下)の耐屈曲性を有していてもよい。これによっても、樹脂層上に透明導電層を形成する際の加工適性に優れたものとすることができる。なお、ここでの耐屈曲試験の値は、125μmのポリエチレンテレフタレートを基材としたサンプル片を測定した値である。
【0080】
なお、樹脂層は、基材フィルムの少なくとも一方の面に形成されていればよく、両面に形成されていてもよい。
【0081】
(その他の層)
樹脂層は、基材フィルム上に直接形成されてもよいし、あるいは、基材フィルムとの間に1層以上の下層が存在してもよい。下層としては、例えば、基材フィルムの少なくとも表裏いずれかの面上に形成された易接着層などが挙げられる。易接着層としては、予め基材フィルムの製膜時に加工されたものであってもよいし、別途例えばウェットコーティング等の方法により易接着層を塗工して形成したものであってもよい。基材フィルムの上に易接着層を形成する場合、その易接着層に用いられる材料としては、通常例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂等が用いられる。また、易接着層に酸化チタン、酸化ケイ素や酸化ジルコニウムなどの無機粒子を配合させてもよい。易接着層の厚さは、特に限定されず、通常50〜150nm程度である。
【0082】
また、表面に積層する透明導電層はパターン化して形成されるため(詳細は後述)、パターン部の反射色度と、非パターン部の反射色度との色差(ΔE)が、より小さくなることが望ましい。このため、樹脂層の基材フィルムとは反対側の面に、光学調整層を形成してもよい。光学調整層は、本発明で必須の上記樹脂層よりも低い屈折率を持つものであるとよい。
本例では、光学調整層の表面は、本発明で必須の上記樹脂層と同様、平滑度が改善されたものであることが好ましい。光学調整層を設ける場合、その表面に積層する透明導電層の電気抵抗を下げるためである。
光学調整層の平滑度を改善する方法としては、スパッタや蒸着によりSiO
2を製膜する方法や、紫外線硬化型樹脂のウェットコーティング(その際にフッ素系やシリコン系等の材料を混ぜても良い)により塗工して形成する方法や、本発明で開示する上記条件(無機粒子の分散状態と、硬化後塗膜の膜厚との、調整)による方法等が挙げられる。光学調整層の厚さは、特に限定されず、通常10〜100nm程度である。
【0083】
本発明に係るベース基材シートには、さらに慣用の機能層、例えば、アンチブロッキング層、アンチニュートンリング層、光散乱層、反射防止層などと組み合わせてもよい。
【0084】
本発明に係るベース基材シートは、タッチパネル等の表示装置に使用されるため、視認性の観点から、全光線透過率(JIS K7361−1:1997)が90%以上、へーズ(JIS K7136:2000)が10%以下であることが好ましい。
【0085】
2.透明導電性積層体
本発明に係る透明導電性積層体は、例えば、静電容量式タッチパネルの電極基板に使用されるものであり、本発明のベース基材シートと、このベース基材シートの表面に形成した樹脂層表面の一部の領域に形成された透明導電層とを含む。
【0086】
(透明導電層)
透明導電層は、透明電極として利用されている慣用の透明導電層を利用でき、導電性無機化合物や導電性ポリマーで形成された透明導電層でよい。透明導電層の構成材料としての導電性無機化合物としては、透明性に優れ、導電性が高ければ特に限定されないが、例えば、酸化錫、インジウムドープ酸化錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等の金属酸化物等を使用できるが、特に透明性及び導電性が高いITOが好ましい。
【0087】
本例の透明導電層は、ベース基材シートの表面に形成した樹脂層表面の一部の領域に(部分的に)形成されており、通常、格子状などにパターン化されて形成される。
【0088】
透明導電層の厚みは、例えば1〜1000nm、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜30nm、さらに好ましくは12〜25nmである。上記厚さが薄すぎると、所望の抵抗率が得られず電極としての特性が不十分となり、厚すぎると透光性が低下し、光学特性が不十分となる傾向がある。
【0089】
透明導電層は、本発明のベース基材シートの樹脂層表面に物理的又は化学的気相法で形成する方法により得られる。
【0090】
透明導電層を導電性無機化合物で形成する場合の方法は、金属又は金属化合物を含む薄膜を形成可能な方法であれば、特に限定されず、慣用の成膜方法を利用できる。成膜方法としては、例えば、物理的気相法(PVD)[例えば、真空蒸着法、フラッシュ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法(例えば、HCD法、エレクトロンビームRF法、アーク放電法など)、スパッタリング法(例えば、直流放電法、高周波(RF)放電法、マグネトロン法など)、分子線エピタキシー法、レーザーアブレーション法など]、化学的気相法(CVD)[例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、MOCVD法(有機金属気相成長法)、光CVD法など]、イオンビームミキシング法、イオン注入法などが例示できる。これらの成膜方法のうち、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの物理的気相法、化学的気相法などが汎用され、スパッタリング法、プラズマCVD法(特にスパッタリング法)が好ましく、特にスパッタリング法による製膜が、製膜速度が速いなどの生産性の観点からより好ましい。
なお、製膜後に、膜の結晶化・安定化を目的として150℃で30分程度の条件でアニール処理をすることができる。
一方、透明導電層を導電性ポリマーで形成する場合の方法は、導電性ポリマーを含有する液状組成物を塗布して乾燥する方法を利用できる。
【0091】
透明導電層は、利用する用途(タッチパネルに使用する場合は、その種類)に応じて、格子状又はストライプ状その他の形状にパターン化される。例えば静電容量方式タッチパネルでは、例えば、樹脂層の全面に透明導電層を形成した後、酸やアルカリなどを用いたエッチングにより格子状にパターン化する方法や、マスクなどを利用したパターニングにより格子状のパターンを形成する方法などが挙げられる。
【0092】
透明導電層をパターン化した場合の、パターン部の反射色度と、非パターン部の反射色度と、の色差(△E)は、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。△Eが大きくなり過ぎると、パターン部と非パターン部の境が認識され、見栄えが損なわれてしまうおそれがある。
【0093】
なお、色差(△E)は、L
*a
*b
*色度図に基づき下記式2により算出される。
【0094】
[式2] △E=(△L
*2+△a
*2+△b
*2)
1/2
【実施例】
【0095】
以下、本発明の実施形態をより具体化した実施例を挙げ、さらに詳細に説明する。本実施例において「部」、「%」は、特に示さない限り重量基準である。
【0096】
1.無機粒子分散体の作製
[作製例1]
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)60gに、酸化ジルコニウムの凝集体(PCS:日本電工社、平均一次粒径20nm、比表面積33.6m
2/g、比表面積径29.5nm)を28.5g、光硬化性分散剤(ビスコート#1020:大阪有機化学工業社、末端にアクリレート基を有する多分岐(デンドリマー型)ポリエステルアクリレートを主成分とする化合物、分子量1000〜3000)を11.5g添加し、室温で約1時間攪拌させてプレミックス液を得た。次に、上述のプレミックス液を、粒子径0.3mm〜0.05mmのジルコニアビーズを使用し、滞留時間140分としてビーズミル分散機により、開砕及び分散処理を行い、作製例1の酸化ジルコニウム分散液を得た(固形分40.0%)。酸化ジルコニウム分散液中の酸化ジルコニウム粒子の平均分散粒径(メジアン径)は20nmであった。
【0097】
[作製例2]
溶剤としてのPGMを94.9g、酸化ジルコニウム凝集体としてのPCSを50.54gとし、かつ光硬化性分散剤に代えて、光硬化性でない市販のポリマー分散剤(アジスパーPB822:味の素ファインテクノ社、塩基性官能基含有共重合体)を2.57g用いた以外は作製例1と同様の工程を経て、作製例2の酸化ジルコニウム分散液を得た(固形分35.9%)。酸化ジルコニウム分散液中の酸化ジルコニウム粒子の平均分散粒径(メジアン径)は50nmであった。
【0098】
2.樹脂層用塗布液(硬化性組成物)の作製
[作製例3]
下記処方の塗布液を調製した。
<塗布液の処方>
・電離放射線硬化型樹脂(固形分90%) 25部
(紫光UV−1700BA;日本合成化学工業社、分子量5000)、
・作製例1の無機粒子分散体(固形分40.0%) 150部
・光重合開始剤 1部
(イルガキュア127:チバ・ジャパン社)
・希釈溶剤(MIBK) 400部
【0099】
[作製例4]
下記処方の塗布液を調製した。
<塗布液の処方>
・電離放射線硬化型樹脂(固形分90%) 25部
(紫光UV−1700BA)
・作製例2の無機粒子分散体(固形分35.9%) 150部
・光重合開始剤 1部
(イルガキュア127)
・希釈溶剤(MIBK) 350部
【0100】
[作製例5]
下記処方の塗布液を調製した。
<塗布液の処方>
・電離放射線硬化型樹脂(固形分90%) 3部
(紫光UV−1700BA)
・レベリング剤(固形分10%) 0.2部
(M−Additive:東レダウコーニング社)
・光重合開始剤 0.37部
(イルガキュア127)
・希釈溶剤(MIBK) 26.5部
【0101】
3.ベース基材シートの作製
[実験例1]
基材フィルムとして、厚み125μmの透明ポリエステルフィルム(商品名 コスモシャインA4300:東洋紡株式会社)を使用し、その一方の面(表面)に、作製例3の塗布液を塗布、乾燥、紫外線照射して厚み300nmの樹脂層を形成することによりベース基材シートを得た。
【0102】
[実験例2]
塗布液を作製例4で得られたものに変更した以外は、実験例1と同様にベース基材シートを得た。
【0103】
[実験例3]
塗布液を作製例5で得られたものに変更し、かつ樹脂層の厚みを1000nmにした以外は、実験例1と同様にベース基材シートを得た。
【0104】
4.透明導電性積層体の作製
[実験例4]
実験例1にて作製したベース基材シートの樹脂層の上全面に、マグネトロンスパッタリング法にてインジウムドープ酸化錫(ITO)を積層して、厚さ20nmの透明導電層を形成した後、その透明導電層に対してフォトリソグラフィー法にてパターニング処理を行い、パターン部と非パターン部を有する透明導電性積層体を得た。
【0105】
[実験例5]
実験例2にて作製したベース基材シートを用いた以外、実験例4と同様に、パターン部と非パターン部を有する透明導電性積層体を得た。
【0106】
[実験例6]
実験例3にて作製したベース基材シートを用いた以外、実験例4と同様に、パターン部と非パターン部を有する透明導電性積層体を得た。
【0107】
5.評価
実験例1〜3で得られたベース基材シートについて、以下の(1)〜(5)の評価を行った。実験例4で得られた透明導電性積層体について、以下の(6)及び(7)の評価を行った。実験例5,6で得られた透明導電性積層体について、以下の(6)の評価を行った。結果を表1に示す。なお表1中の「−」は評価不実施を示している。
【0108】
(1)平滑度
作製した各ベース基材シートの樹脂層について、測定装置としての走査型プローブ顕微鏡(日立ハイテク社)を使用し、JIS B0601における算術平均粗さ(Ra)の値を測定し、以下の基準で評価した。
◎:Raが0.5nm以下(優れている)。
〇:Raが1nm以下(良好)。
×:Raが1nm超過(不良)。
【0109】
なお、測定条件は以下とした。
測定モード:DFM、
カンチレバー:DF20P2、
範囲:5μm×5μm、
測定:256×256点。
【0110】
(2)濡れ性1
JIS−K6768(1999)に準拠した方法で、作製した各ベース基材シートの樹脂層上のぬれ張力を測定した。最終的には測定値5点の平均(Ave.)を樹脂層上のぬれ張力とし、以下の基準で評価した。
◎:ぬれ張力が50mN/m以上(優れている)。
〇:ぬれ張力が40mN/m以上(良好)。
×:ぬれ張力が40mN/m未満(不良)。
【0111】
(3)濡れ性2
作製した各ベース基材シートの樹脂層面の純水の接触角を測定した。接触角の値は、純水滴下1分後の接触角の測定値について、滴下と測定を5回繰り返して得られた測定値の平均値とし、以下の基準で評価した。
◎:接触角が60度未満(優れている)。
〇:接触角が60度以上70度未満(良好)。
×:接触角が70度以上(不良)。
【0112】
(4)耐擦傷性
作製した各ベース基材シートの樹脂層表面を、メラミンスポンジ(商品名:激落ち君、メラミンフォーム、レック社)で、500g/cm
2となる荷重をかけながら往復10回ラビングした後、樹脂層表面を観察し、以下の基準で評価した。
◎:樹脂層表面に変化が認められない(優れている)。
〇:擦過痕は認められるが樹脂層の脱落が認められない(良好)。
×:樹脂層の脱落が認められる(不良)。
【0113】
(5)耐屈曲性
実験例1及び2の樹脂層を、188μmの透明ポリエステルフィルムに設け、厚みを各実験例と同じにしたサンプル片を用いて、JIS−K5600−5−1(1999)に準拠した円筒形マンドレル法で測定した耐屈曲試験の値を測定した。最終的には測定値5点の平均(Ave.)を耐屈曲性とし、以下の基準で評価した。
◎:耐屈曲試験の値が2mm以下(優れている)。
〇:耐屈曲試験の値が3mm以上8mm以下(良好)。
×:耐屈曲試験の値が9mm以上(不良)。
【0114】
(6)耐候性
作製した各透明導電性積層体を85℃85%環境下に設置し、所定の時間経過後に透明導電層側のテープ密着試験を行い、以下の基準で評価した。
◎:500時間経過後でも塗膜又は導電層の剥がれ無し(優れている)
○:250時間経過後でも塗膜又は導電層の剥がれ無し(良好)
×:250時間経過後に塗膜又は導電層の剥がれ有り(不良)
【0115】
(7)耐UV性
作製した各透明導電性積層体を150℃で1時間、加熱し、次にUV光を3000mJ/cm
2の積算光量で照射後に、透明導電層側の碁盤目テープ法(JIS−K5400)による密着試験(スコッチテープを使用)を行い、以下の基準で評価した。
◎:碁盤目部分の塗膜又は導電層の剥がれが全くなかった(優れている)
△:碁盤目部分の塗膜又は導電層の剥がれが一部発生したが剥離面積が50%未満であった(良好)
×:碁盤目部分の塗膜又は導電層の剥離面積が50%以上であった(不良)
【0116】
【表1】
【0117】
6.考察
表1に示すように、樹脂層の膜厚と無機粒子の平均分散粒径がともに本発明範囲(前者200〜400nm、後者45nm未満)であると(実験例1)、樹脂層表面の平滑度を改善できた(平滑度が◎)。また実験例1のケースでは、平滑度に加えて、濡れ性1、濡れ性2、耐擦傷性及び耐屈曲性も改善できたことが認められる。平滑度が改善された樹脂層上に透明導電層をパターン化して形成したもの(実験例4)は、透明導電層側の接着性に優れていた(耐候性が◎、耐UV性も◎)。
これに対し、樹脂層の膜厚が本発明範囲であっても、無機粒子の平均分散粒径が本発明範囲から外れると(実験例2)、濡れ性1、濡れ性2、耐擦傷性及び耐屈曲性は改善できたものの、樹脂層表面の平滑度を改善できなかった(平滑度が×)。平滑度が改善されていない樹脂層上に透明導電層をパターン化して形成したもの(実験例5)は、透明導電層側の接着性が劣っていた(耐候性が×)。
また無機粒子を配合せず、かつ樹脂層の膜厚が本発明範囲から外れる場合(実験例3)、平滑度や耐擦傷性は改善できたものの、濡れ性1、濡れ性2及び耐屈曲性を改善できなかった。平滑度が改善されたものの濡れ性1や濡れ性2が改善できていない樹脂層上に透明導電層をパターン化して形成したもの(実験例6)は、透明導電層側の接着性が劣っていた(耐候性が×)。
【0118】
なお、表1には記載していないが、作製例3の塗布液(作製例1の無機粒子分散体を含む)を用いても、樹脂層の膜厚が本発明範囲(200〜400nm)から外れる場合、実験例1と同等未満の評価しか得られないことも確認した。具体的には、樹脂層の膜厚を50nmと薄くした場合(実験例7)、濡れ性1、濡れ性2、耐屈曲性は実験例1と同等であったものの、耐擦傷性が〇(10回以上)、平滑度が×(1.9nm)の評価しか得られなかった。樹脂層の膜厚を500nmと厚くしたベース基材シートを用いた透明導電性積層体の場合(実験例8)、耐UV性が×(50%以上)の評価しか得られなかった。作製例4の塗布液(作製例2の無機粒子分散体を含む)を用い、樹脂層の膜厚を500nmと厚くしたベース基材シートを用いた透明導電性積層体の場合(実験例9)、実験例8と同様に、耐UV性が×(50%以上)の評価しか得られなかった。