特許第6703492号(P6703492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6703492薬物送達デバイス用の用量標示機構および薬物送達デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703492
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス用の用量標示機構および薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20200525BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   A61M5/31 520
   A61M5/315 550P
   A61M5/315 580
   A61M5/315 550X
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-569830(P2016-569830)
(86)(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公表番号】特表2017-516561(P2017-516561A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2015061619
(87)【国際公開番号】WO2015181187
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】14170332.2
(32)【優先日】2014年5月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シャーバッハ
【審査官】 上石 大
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/067889(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/126173(WO,A1)
【文献】 特開2000−070368(JP,A)
【文献】 特表平08−503385(JP,A)
【文献】 特開2003−010327(JP,A)
【文献】 特表2013−539694(JP,A)
【文献】 特表2013−512060(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/097125(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/315
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の薬剤カートリッジ(2)内に含まれた薬剤を送達するように構成された薬物送達デバイス(1)用の用量標示機構であって、薬剤は、少なくとも1つの第1の薬物および1つの第2の薬物を含み、ここで、該用量標示機構は、
本体(3)と、
用量設定中に本体(3)に対して動くように構成された用量ダイヤル部材(7)と、
用量設定中に用量ダイヤル部材(7)の変位に応じて第1の薬物の設定された用量を表示するように構成された第1の用量インジケータ手段(10)とを含み、
該用量標示機構は、用量設定中、第2の薬物の設定された用量を表示するように構成される第2の用量インジケータ手段(15)であって、表示される設定された用量が用量ダイヤル部材(7)の変位に応じて変化するように用量ダイヤル部材(7)に連結される前記第2の用量インジケータ手段(15)をさらに含むことを特徴とする、前記用量標示機構。
【請求項2】
第1の用量インジケータ手段(10)および/または第2の用量インジケータ手段(15)は、用量値を表示するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の用量標示機構。
【請求項3】
第2の薬物の表示される設定された用量は、第1の薬物の表示される用量に対して一定の比率にあることを特徴とする、請求項1または2に記載の用量標示機構。
【請求項4】
第1の用量インジケータ手段(10)は、第1の用量スケール(13)を含むこと、および/または第2の用量インジケータ手段(15)は、第2の用量スケール(14)を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の用量標示機構。
【請求項5】
第1の用量スケール(13)は、第2の用量スケール(14)に対して異なることを特徴とする、請求項4に記載の用量標示機構。
【請求項6】
用量ダイヤル部材(7)は、外側周囲表面上に用量関連の情報(19)を備えることを
特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の用量標示機構。
【請求項7】
第1および/または第2の用量インジケータ手段(10、15)は、用量関連の情報(19、13、14)を含み、かつ、用量ダイヤル部材の変位が用量関連の情報の変位を引き起こすように用量ダイヤル部材(7)に連結される、少なくとも1つの可動の要素(21)を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の用量標示機構。
【請求項8】
可動の要素(21)は、本体(3)に対して軸方向に動くように構成されることを特徴とする、請求項7に記載の用量標示機構。
【請求項9】
可動の要素(21)は、本体(3)内で軸方向に案内されることを特徴とする、請求項8に記載の用量標示機構。
【請求項10】
本体(3)は、用量設定中、可動の要素(21)上の用量関連の情報(19)と相互作用するように構成された用量関連の情報(13、14、17)を備えることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の用量標示機構。
【請求項11】
本体(3)は、第1の薬物の設定された用量および/または第2の薬物の設定された用量がアパーチャ(11、16、17)を通じて示されるように配置される少なくとも1つのアパーチャ(11、16、17)を備えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の用量標示機構。
【請求項12】
可動の要素(21)および/または用量ダイヤル部材(7)は、色付きインジケータ(19)を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の用量標示機構。
【請求項13】
単一の薬剤カートリッジ(2)内に含まれた薬剤を送達するように構成された薬物送達デバイスであって、請求項1〜12のいずれか1項に記載の用量標示機構を含む、前記薬物送達デバイス。
【請求項14】
プレミックス薬剤を有する薬剤カートリッジ(2)を含み、該薬剤は、第1の薬物および第2の薬物を含み、第1の薬物と第2の薬物の間の比率は、第1の用量インジケータ手段(10)と第2の用量インジケータ手段(15)の表示される用量値間の比率に対応することを特徴とする、請求項13に記載の薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の薬剤カートリッジ内に含まれた薬剤を送達するように構成された薬物送達デバイス用の用量標示機構を対象とし、薬剤は、少なくとも1つの第1の薬物と、少なくとも1つの第2の薬物とを含む。用量標示機構は、本体と、用量設定中に本体に対して動くように構成された用量ダイヤル部材と、用量設定中に用量ダイヤル部材の変位に応じて薬剤の、および/または第1の薬物の設定された用量を表示するように構成された第1の用量インジケータ手段とを含む。また、本発明は、それぞれの用量標示機構を含む薬物送達デバイスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
前述の種の薬物送達デバイスは、単一のカートリッジから患者に薬剤の注射をするために通常使用されており、ハウジング本体に取付け可能なカートリッジホルダ内に収容することができる単一の薬剤カートリッジを受けるように、またはそこに接続されるように適用される。カートリッジホルダの遠位部分は、充填された薬剤カートリッジを受けるように適用され、カートリッジの遠位部分では、注射針付きのニードルアセンブリが取付け可能であり、カートリッジの近位部分は、薬物送達デバイスの駆動機構を少なくとも一部受けるように適用され、駆動機構は、薬剤の用量をカートリッジから吐出するためにカートリッジのピストンと動作可能に係合されることになるピストンロッドを有する。用量を設定するために、薬物送達デバイスは、用量設定中に回転するように構成される用量ダイヤル部材を含む。そのような用量ダイヤル部材は、用量ドラム、用量ダイヤル、または数字スリーブとして構成することができる。
【0003】
通常、薬物送達デバイスは、以前に医療訓練を受けたことがない人によって使用される。したがって、この応用例には、この種の薬物送達デバイスのためのいくつかの要件を設定する状況が伴う。患者には、自分のデバイスを設定した後で自分が注射しようとする薬剤の用量について注意深く情報を伝えなければならない。この目的のために、当技術分野では、設定された用量に対応して設定された用量値、投薬数(dosage number)などを表示する用量標示機構が知られている。これらの機構は、数字スリーブの外側表面上に印刷された投薬数などインジケータ手段を含み、ハウジング本体内の表示窓を通じて見ることができ、実際の表示される用量値は、薬剤の設定された用量に対応する。
【0004】
特許文献1には、医薬注射デバイスのための用量標示アセンブリについて記載されている。この用量標示アセンブリは、軸方向に延びる外部ハウジング外筒と、ハウジング外筒内に一部配置され、用量設定中、外筒に対して軸方向にねじ込み可能に可動であるダイヤルとを含む。ダイヤルは、カートリッジ内の異なる薬物濃度をそれぞれ表す用量印の複数の平行なアレイが設けられた半径方向外縁を含む。薬剤カートリッジ内の薬物の選ばれた濃度に応じて、設定された用量を表示するために第1、第2、または第3のアレイが使用される。
【0005】
特許文献2は、薬剤の設定された用量を表示するためにいくつかの用量設定窓を有する注射デバイスについて記載している。用量設定スリーブが、所望の用量を設定するために本体と回転可能に連結され、複数の投薬数が用量設定スリーブに配置されている。第1の螺旋パターンが偶数を含み、第2の螺旋パターンが奇数を含む。非数字インジケータが第1の螺旋パターンの偶数を第2の螺旋パターンの奇数から分離する。所望の用量を設定するために用量設定スリーブを回転させたとき、投薬数が投薬インジケータ窓を通じて連続的に見えるようになり、数字は、複数の投薬インジケータ窓を通じて交互に見える。
【0006】
特許文献3に記載の用量情報デバイスは、医療投与デバイス内で使用される。用量設定手段が、用量設定中、所定の用量が用量窓内に見えるまで回転するように配置される。用量を設定するために用量設定部材が回転された後で、用量が用量情報部材によって登録され、用量情報部材は、標示が見えるまで回転される。後で用量が送達されたとき、用量情報部材が回転し、その結果、用量が送達されたときこの所定の用量が登録情報窓内に示され、どの後続の用量が設定されることになるかを患者に示す。
【0007】
特許文献4に記載の用量表示機構は、第1および第2の表示スケールをその周囲表面上に有する用量設定ダイヤルを含む。第1および第2の螺旋用量表示スケールは、左利きおよび右利きの患者がデバイスを回すことを必要とせずに用量情報を読むことができるように、用量関連の情報を異なる向きで提供する。これらの2つの用量表示スケールは、同一の情報を異なる向きで提供し、どちらのインジケータも、薬剤の設定された用量全体を表示する。
【0008】
特許文献5は、用量設定中に回転する用量設定部材および用量設定前に医師によって操作される用量制限部材上のスケールが見える2つの窓を有する用量設定機構を開示している。用量制限部材は、所定の用量サイズが窓内に見えるまで回転される。次いで、用量制限部材はロックされる。用量を設定するために、ユーザは、用量設定部材を回転させる用量ノブを回す。ユーザが事前設定より大きな用量を設定しようと試みた場合、これは、用量制限部材のストップ表面によって防止される。 併用療法治療の場合、その療法治療のための必要をすべて十分に満たすには、知られている機構は適していない。いくつかの療法は、活性薬剤、それぞれ薬剤薬物の組合せ処方を施すことを必要とする。患者が薬の組合せを必要とする場合には、それらの薬を単一の配合物(すなわち、両薬物が所定の割合で混合され、1つの一次パックで供給される)として、単一の注射デバイスによって、単一の針を通じて1回の注射で送達するために提供することができれば有利である。たとえば、場合によっては、糖尿病患者を長時間作用性インスリンで、またプログルカゴン遺伝子の転写産物から導出されるグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)で治療することが有益となることがある。GLP−1は、体内に見出され、腸管L細胞によって消化管ホルモンとして分泌される。GLP−1は、糖尿病の潜在的治療としてGLP−1(およびそのアナログ)を集中調査の対象とするいくつかの生理学的特性を保有する。別の薬剤組合せの一例は、グルカゴンと混合されたGLP−1である。
【0009】
したがって、単一のカートリッジを、第1の薬物Aと第2の薬物Bの混合物など薬剤のプレミックス(premix)を含むように生産することができる。また、薬物Bが薬剤Aの成分を構成するように薬物Bを薬物A内に溶存させてもよい。したがって、薬物AおよびBは、異なる濃度で提供される。患者に自分が注射しようとする薬剤の割合に関する情報を提供するために、薬物の一定の比率を薬剤カートリッジまたはペンに取り付けられたラベル上に印刷することが知られている。しかし、注射予定の用量が設定されたとき、第1の薬剤薬物A(通常、薬剤内の主要な薬物)の用量または予め混合された薬剤の設定された用量全体がユーザに対して表示されるにすぎない。患者または医療担当者が薬剤用量についての正確な情報を必要とするとき、それぞれの計算を実施しなければならない。これらの計算は、薬物Aの必要とされる用量がしばしば柔軟であることに関してコストがかかる。計算違いは、療法の有効性に影響を及ぼす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2007/067889A1
【特許文献2】WO2012/158138A1
【特許文献3】WO2007/107431A1
【特許文献4】WO2011/067267A1
【特許文献5】WO2010/097125A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、薬物送達デバイスの用量設定特性を、安全および情報内容の点で改善すること、特に、ユーザが投与しようとする注射の薬剤組成に関する情報表現を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これは、請求項1の特徴を有する用量標示機構によって、また請求項14の特徴を有する薬物送達デバイスによって達成される。
【0013】
具体的には、用量設定中、第2の薬物の設定された用量を表示するように構成される第2の用量インジケータ手段を提供することにより、ユーザは、用量ダイヤル部材が薬物Aの設定された用量に従って変位されるにつれて自分が設定している第1の薬物Aの現在の用量値についての情報を、第1の用量インジケータ手段を通じて絶えず受け取る。同時に、ユーザは、自分が設定している薬物Bの用量値についての情報を受け取る。実際の用量値が用量設定工程を通じて絶えず表示されるので、薬物Aと薬物Bの間の比率に基づく計算はもはや必要でない。第1の用量インジケータ手段は、薬剤全体の設定された用量を表示するように適用され、これは、たとえば薬物Bが薬物A内に溶存するとき効果的である。また、第1の用量インジケータ手段は、ある割合の薬剤、または薬剤が有意な割合を有する2つの混合された物質、たとえば薬物Aと薬物Bの混合物を含むとき効果的である成分の設定された用量だけを表示するように適用される。
【0014】
本発明の意味での「薬物」は、薬剤として理解すべきであるが、薬剤成分でもあり得る。
【0015】
本発明を組み込むことができるペン型デバイスの例は、欧州特許第1603611B1号に記載されている。この機構は、吸入器、軟膏応用例など、他の応用例にも適している。
【0016】
欧州特許第1603611B1号明細書は、ペン型注射器または薬物送達デバイスの構造および機能、特に本体と用量ダイヤル部材の間の相互作用について記載しており、カートリッジ内に含まれる薬剤の設定された用量を示すためのそれぞれの第1の用量インジケータ手段をも含む。ペン型注射デバイスの完全な説明は、参照により本明細書に組み入れる欧州特許第1603611B1号に開示されている。
【0017】
それは、第1の用量インジケータ手段および/または第2の用量インジケータ手段が、用量値を、好ましくは数字で表して表示するように構成されるとき効果的であることが証明されている。他の好適な用量関連の情報は、投薬数、ポインタ、数値もしくはグラフィカルな記号、ディジット、または設定された用量に関する正確な情報を患者に提供するための他の好適なキャラクタなどインデックスを有する用量標示スケールを含む。
【0018】
用量ダイヤル部材は、本体に対して軸方向に可動とすることができ、第1の用量インジケータ手段は、用量ダイヤル部材が変位するまたは動くと、表示される用量が変化するように構成される。本発明の他の実施形態では、用量ダイヤル部材は、本体内に回転可能に配置される。また、用量ダイヤル部材は、本体とねじ係合され、用量ダイヤル部材は、用量ダイヤル部材の外部表面に沿って螺旋溝を有してもよく、本体は、用量が設定され用量ダイヤル部材が本体に対して回転されたとき用量ダイヤル部材が本体に対して螺旋運動で動くように用量ダイヤル部材の螺旋溝と係合する、対応するねじ山を有する。本体は、用量ダイヤル部材を少なくとも一部受けるように適用された薬物送達デバイスのハウジングまたはハウジング要素として構成され、スリーブのような要素としても構成される。
【0019】
本発目の他の実施形態によれば、第2の用量インジケータ手段は、第2の用量インジケータ手段の表示される用量値が用量ダイヤル部材の変位または動きとは独立して、またはそれに対応して変化するように用量ダイヤル部材に結合される。第2の用量インジケータ手段を用量ダイヤル部材に連結することによって、第1および第2の薬物の設定された用量のそれぞれの値が同時に表示されることを確実にすることができる。第1の用量インジケータ手段は、それに応じて用量ダイヤル部材に連結される。代替として、またはそれに加えて、第2の用量インジケータ手段は、第2の用量インジケータ手段の表示される用量値が第1の用量インジケータ手段の表示される値に応じて変化するように第1の用量インジケータ手段に連結される。
【0020】
本発明の他の実施形態によれば、第2の薬物の表示される設定された用量は、第1の薬物の同時に表示される用量に対して一定の比率にある。好ましくは、第2の用量インジケータ手段の同時に提示される値は、第1の用量インジケータ手段の値に対して異なる。両用量インジケータ手段は、用量が設定されていないとき、用量設定の前にどちらの用量インジケータ手段もゼロ単位の設定された用量を表示するように構成される。
【0021】
好ましくは、同時に示される設定された用量間の比率は、同様でないものである。用量設定中、ゼロ単位より大きい設定された用量で、第1および第2の用量インジケータ手段の値間の比率は、第1の薬物Aと第2の薬物Bの間の比率に対応し、用量設定中、一定のままである。換言すれば、用量設定中、第2の用量インジケータ値は、第1の用量インジケータ値の比率に対して異なる比率で増大する。
【0022】
明瞭に見える情報を患者に提供するために、第1の用量インジケータ手段および/または第2の用量インジケータ手段は、少なくとも1つの用量スケールを含んでもよい。第1の用量インジケータ手段および/または第2の用量インジケータ手段は、スケール上のそれぞれの値を参照する、または指すことによって設定された用量を示すために、ポインタ、色付きマーキングなど、インジケータを含んでもよい。
【0023】
他の実施形態によれば、第1のスケールは、第2のスケールに対して異なる。たとえば、第1のスケール上の値は、第2のスケール上の値とは異なる比率で増大してもよい。これらのスケールは、区別するのがより容易であるだけでなく、用量設定中にスケールに対して動くように構成された共通のインジケータ、ポインタなどを使用することをも可能にする。また、第1の用量インジケータ手段および第2の用量インジケータ手段は、共通のスケールを共用してもよいが、スケール上で設定された用量の値を示すために、ポインタなどそれ自体のインジケータをそれぞれ備える。
【0024】
混乱を回避するために、どちらのスケールも、患者によって明確に区別可能であるように構成される。異なるスケールタイプを使用してもよい。さらに、スケールは、異なるサイズ、色、向きまたは位置を有してもよい。たとえば、一方のスケールは、用量ダイヤル部材上に回転可能に設けられ、一方、他方のスケールは、本体の外側表面上に設けられ、したがって動かない。
【0025】
本発明の他の実施形態によれば、用量ダイヤル部材は、スケール上の値を示すために、ポインタまたは色付きマーキングなどのような少なくとも1つの用量スケールまたはインジケータなど、用量関連の情報を備える。好ましくは、用量関連の情報は、用量ダイヤル部材の外側周囲表面上に設けられる。たとえば、数字スリーブが、その外側表面上に投薬数と共に設けられる。
【0026】
本発明の他の実施形態によれば、第1および/または第2の用量インジケータ手段は、用量関連の情報を備えた、また用量ダイヤル部材の変位が用量関連の情報の変位を引き起こし、それぞれの表示される用量値を変化させるように用量ダイヤル部材に連結される少なくとも1つの可動の要素を含む。それにより、第1の薬物または第2の薬物の設定された用量を、効率的に表示することができる。たとえば、可動の要素は、表示窓に沿って動くことができる少なくとも1つの用量スケールを備えてもよい。
【0027】
可動の要素は、本体に対して軸方向に、好ましくは本体内で動くように構成されることが好ましい。このために、可動の要素は、たとえば、好ましくは本体の内側表面上の溝など軸方向に延びるガイダンス(guidance)によって、本体内で軸方向に案内される。
【0028】
本体は、設定された用量を示すために可動の要素上および/または用量ダイヤル部材上の少なくとも1つの用量関連の情報と相互作用するように構成された本体の外側表面内のスケール、投薬数、グラフィカルな記号、または穴など用量関連の情報を備えてもよい。可動の要素上および/または用量ダイヤル部材は、ポインタ、色付きマーキング、または色付きバーなど、少なくとも1つの対応するインジケータを含んでもよい。可動の要素上および/または用量ダイヤル部材は、少なくとも1つのスケール、数字などを備えてもよく、本体上の用量関連の情報は、少なくとも1つの穴、用量表示窓、ポインタ、または任意の他の好適なインジケータなど、少なくとも1つの対応するインジケータを含んでもよい。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、本体の外側表面上に、第1の薬剤薬物の設定された用量を示すための第1のスケールが設けられる。さらに、好ましくは第1のスケールに対して異なる第2のスケールもまた、本体の外側表面上に設けられる。好ましくは色付きバー、ポインタなど、少なくとも1つの対応する標示要素が、それぞれの薬物の設定された用量を示すためなどに、スケールに対して動いてもよい。この可動の標示手段は、たとえば用量ダイヤル部材上に設けられる。さらに、この標示手段は、可動の要素上に設けてもよい。それぞれの場合において、標示手段は、用量ダイヤル部材の変位に対応して、スケールに対して動き、それによりそれぞれの薬物の設定された用量を示す。
【0030】
患者が設定された用量に関する情報を容易に捉えることを可能にするために、本体は、用量インジケータ窓など少なくとも1つのアパーチャを備え、アパーチャは、第1の用量インジケータ値および/または第2の用量インジケータ値がアパーチャによって示される、またはそこを通じて見えるように配置される。アパーチャのそれぞれは、拡大ガラスなど透明なカバーで覆ってもよい。本体は、第1の薬物の設定された用量の用量値を表示するための第1の用量インジケータ窓と、第2の薬物の設定された用量を表示するための本体内の第2の用量窓とを備えてもよい。これは、患者が第1の薬物と第2の薬物の間で明確に区別することを可能にする。好ましくは、これらの用量窓は、異なるサイズおよび/または形状を有する。
【0031】
他の実施形態によれば、本体は、可動の要素上の少なくとも1つのインジケータまたは少なくとも1つのスケールなど用量関連の情報を視覚的に捉えるために細長いアパーチャを含む。アパーチャは、可動の要素を軸方向に案内するように構成してもよい。
【0032】
他の実施形態によれば、本体は、スケール値として働くいくつかのアパーチャまたは穴を備え、可動の要素上および/または用量ダイヤル部材上のマーキングなどが、それぞれ用量設定中にアパーチャの1つと位置合わせされ、それにより、ある用量が設定されたことを示す。アパーチャには、それぞれ数字などがマーキングされ、それらの数字は、設定された用量の値に対応する。
【0033】
本発明の他の実施形態によれば、第1および第2の用量インジケータ手段は、たとえばスケールを異なるプレミックス薬剤の異なる比率に調整することができるように調整可能である。たとえば、第1の用量インジケータ手段のスケールと第2の用量インジケータ手段のスケールは、異なるプレミックスが使用されるとき適合されたスケールが本体に取り付けられるように、交換可能なステッカ、ラベルなどを使用することによって交換可能に構成してもよい。
【0034】
本発明の目的は、それぞれの用量インジケータ機構を含む薬物送達デバイスによっても解決される。好ましくは、そのような薬物送達デバイスは、予め混合された薬剤を備える薬剤カートリッジを含み、予め混合された薬剤は、第1の薬物および第2の薬物を含み、第1の薬物と第2の薬物の間の比率は、第1の用量インジケータ手段の表示される値と、第2の用量インジケータ手段の同時に表示される値との間の比率に対応する。
【0035】
特に、本発明の利点は、ペン型注射器が使い捨てペン注射デバイスであるとき明らかな効果をもたらす。そのようなデバイスは、薬剤の内容物が使い果たされた後で廃棄またはリサイクルすることができる。ペン型注射器は、欧州特許第1603611B1号から知られているものと同様に設計される。
【0036】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0037】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0038】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0039】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0040】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0041】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0042】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0043】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0044】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0045】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0046】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0047】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C)と可変領域(V)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0048】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0049】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0050】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0051】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0052】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0053】
以下では、本発明について、例として、概略図を参照して述べる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】通常の用量インジケータ手段を有する薬物送達デバイスの斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態による用量標示機構の側面図である。
図3】本発明の第2の実施形態による用量標示機構の側面図である。
図4】本発明の第3の実施形態による用量標示機構の側面図である。
図5図5a、5bは、本発明の第4の実施形態による用量標示機構の側面図である。
図6】本発明の第5の実施形態による用量標示機構の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、カートリッジ2内に含まれる予め混合された薬剤を送達するための薬物送達デバイスを示す。プレミックス薬剤は、第1の薬物A、たとえばインスリンと、第2の薬物B、たとえば薬物溶液A内に混合されるGLP−1とを含む。薬物送達デバイス1は、ハウジングとして働くスリーブのような本体3を含む。薬物送達デバイス1は、近位端4から遠位端5に延びる。近位端4では、用量設定中、ダイヤルグリップ6が用量ダイヤル部材7に回転可能に連結され、用量ダイヤル部材7は、数字スリーブとして構成され、複数の投薬数8がその外側周囲表面上に印刷されている。用量ダイヤル部材7は、本体3とねじ係合し、その外側表面上に、本体3の内側表面上にそれぞれ形成されたねじ山(図示せず)と係合する螺旋状に延びる溝9を有し、その結果、用量設定中、ダイヤル6を回転することによって用量ダイヤル部材7が第1の方向に回転されたとき、用量ダイヤル部材7は本体3から近位方向4に巻き出され、用量投薬中、用量ダイヤル部材7が反対方向に回転されたとき、用量ダイヤル部材7は、遠位方向5に本体3内へ巻き込まれる。
【0056】
投薬数8は、螺旋溝9に対して平行に用量ダイヤル部材7の外側周囲表面上に分配されている。本体3は、投薬数8と、用量窓として働く本体3内のアパーチャ11とを含む第1の用量インジケータ手段10を備える。
【0057】
用量設定中、用量ダイヤル部材7は、本体3に対して回転し、近位方向に動く。その結果、投薬数8は窓11を通り、連続的に窓11と重なり合い、窓11を通じて提示される投薬数8は、カートリッジ2内に含まれる予め混合された薬剤の現在設定されている用量に対応する。カートリッジ2は、本体3の遠位端でカートリッジホルダ12内に収容されている。用量設定中、ユーザは、自分が注射しようとする薬物Bの量について情報を得ることができない。
【0058】
カートリッジホルダ12の遠位端には、注射針など投薬インターフェース(図示せず)を取り付けることができる。本体3には、用量投薬機構(図示せず)が配置され、用量投薬機構は、ピストンロッド、親ねじなどを含む。用量投薬中、ピストンロッドは遠位方向に動き、それにより、カートリッジ2内で栓を変位させ、その結果、カートリッジ2内の薬剤が注射針を通じて投薬される。
【0059】
図2は、本発明の第1の実施形態による用量標示機構を示す。用量ダイヤル部材7の外側表面上には、第1の用量スケール13および第2の用量スケール14が設けられ、用量スケール13、14のそれぞれが、用量ダイヤル部材7の外側表面上に螺旋パターンで配置された投薬数8を含む。第1の用量スケール13および第2の用量スケール14は、平行の関係で配置される。第1の用量スケール13は、カートリッジ内の薬物A(たとえば、インスリン)の設定された単位を表示するように働く。一般に、第1の用量スケールはまた、予め混合された薬剤の設定された用量を表示するように構成される。
【0060】
第1の用量スケール13は、図1に示されている機構と同様に、用量ダイヤル部材7が本体3に対して螺旋の動きで動いたとき第1の用量スケール13だけが第1の用量窓11と位置合わせされるように配置される。第2の用量インジケータ手段15は、前記第2のスケール14と、本体3内の第2の用量窓16とを含む。第2の用量窓16は、用量ダイヤル部材7が本体3に対して螺旋の動きで動いたとき第2の用量スケール14だけを第2の用量窓16と位置合わせさせることができるように配置される。
【0061】
ユーザが、図2における第1の用量窓11内に表示されているようにダイヤルグリップ6を20単位まで回転させたときには、薬物Aの20単位が後続の注射ステップで投薬される。同時に、第2の薬物Bの設定された用量の値が第2の用量窓16を通じて提示される。窓11、16は、ユーザが薬物Aと薬物Bの設定された用量を明確に区別することができるように異なるサイズを有する。用量設定中、薬物Aおよび薬物Bの用量値は、第1および第2の用量窓11、16を通じて見ることができ、用量設定中、絶えず変化する。それぞれの用量窓を通じて同時に見ることができる第1の用量スケール13の投薬数および第2の用量スケール14の投薬数は、互いに一定の比率にある。2つの示される用量値間の比率は、カートリッジ2内に含まれる第1の薬物Aと第2の薬物Bとの間の比率に対応する。第1の用量スケール13と第2の用量スケール14は、用量ダイヤル部材7が回転されたとき第1の用量スケール13の数値が第2の用量スケール14の数値より高い比率で増大するように異なっている。
【0062】
図3では、第2の用量インジケータ手段15が、本体3内に4つのアパーチャまたは穴17を含む。穴17は、本体3の軸方向に並んで配置される。穴17のそれぞれは、投薬数18を備える。投薬数18は、第2の用量スケール14を構成する。用量ダイヤル部材7は、投薬数が図2における実施形態に類似する螺旋パターンで配置された第1の用量スケール13を含む。用量設定中、第1の薬物Aの設定された用量は、第1の用量窓11を通じて表示され、それぞれの投薬数が用量窓11と位置合わせされる。用量ダイヤル部材7は、インジケータとして働き用量ダイヤル部材7の外側表面上に配置された色付きマーキング19をも備える。用量設定中、色付きマーキング19は、用量ダイヤル部材7の変位に従って近位方向に、本体3に対して軸方向に動く。同時に、色付きマーキング19は、穴17の1つを通じて色付きマーキング19捉えることができるように穴17を通過する。色付きマーキング19が穴17の1つと位置合わせされたとき、第2の薬物Bの設定された用量が、色付きマーキング19で示される穴17の投薬数18によって示される。
【0063】
図4では、本体3は、第2の用量インジケータ手段15の一部として細長いアパーチャ20を備え、細長いアパーチャ20は、本体3の軸方向に延びる。細長いアパーチャ20の側縁には、第2の用量スケール14が設けられる。用量ダイヤル部材7は、バーのような色付きマーキング19を備え、マーキング19は、用量ダイヤル部材7に従って軸方向に動き、それにより、第2の薬物Bの設定された用量に従って単一の投薬数18を通る。色付きマーキング19は、用量ダイヤル部材7上のリングのようなマーキングとすることができる。用量ダイヤル部材7に第2の用量スケール、また本体3に第1の用量スケールを提供することも可能である。
【0064】
図5aおよび図5bにおける実施形態は、三角形のポインタの形態にあるインジケータ22を有する可動の要素21を有する点で図4における実施形態とは異なる。可動の要素21は、可動の要素21が本体3に対して軸方向に動くことができ、しかし回転することができないように、本体3の内側表面24上の溝23(図5b)内で軸方向に案内される。可動の要素21は、用量ダイヤル部材7の外側表面上の螺旋溝9と係合することによって軸方向に動かされる。このために、可動の要素21は、螺旋溝9と係合するねじ山要素25を有する。用量ダイヤル部材7が回転したとき、可動の要素21は、用量ダイヤル部材7の回転方向に応じて軸方向に案内される。第2の用量スケール14は、第2の用量スケール14上のポインタ22とそれぞれの投薬数18の相互作用によって示される用量が第2の薬物Bの設定された用量値を示すように選択される。アパーチャ20は、透明なカバー26によって覆われる。
【0065】
図6の実施形態では、用量ダイヤル部材7が第1の用量スケールを備えておらず、本体3が、細長いアパーチャ20の両側に設けられた第1の用量スケール13および第2の用量スケール14を備える。用量ダイヤル部材7は、用量設定中、用量ダイヤル部材7に従って軸方向に動く色付きマーキング19を備え、その結果、色付きマーキング19は、第1および第2の用量スケール13、14の投薬数18に対して動く。あるいは、色付きマーキング19は、図5aおよび図5bに示されているように可動の要素上に設けてもよい。
【0066】
図6でわかるように、第1の用量スケール13は、第2の用量スケール14に対して異なる。ゼロ単位の設定された用量を除いて、色付きマーキング19と第1の用量スケール13の相互作用によって同時に示される第1の薬物Aの設定された用量の値、および色付きマーキング19と第2の用量スケール14の相互作用によって示される第2の薬物Bの設定された用量の値は、常に互いに一定の比率にある。たとえば、第1の薬物Aの10単位の用量が設定されたとき、これは、第1の用量スケール13上の10単位投薬数と位置合わせされる色付きマーキング19によって示される。同時に、色付きマーキング19は、第2の用量スケール14上の2単位投薬数と位置合わせされ、第2の薬物Bの2単位の容量が設定されたことを示す。この点での第1の用量スケールと第2の用量スケールの間の比率は、5:1である。第1の薬物の20単位が設定されたときには、第2の薬物の4単位が設定される。この一定の比率は、薬剤内の第1と第2の薬剤薬物間の比率に対応する。
【符号の説明】
【0067】
1 薬物送達デバイス
2 カートリッジ
3 本体(ハウジング)
4 近位端
5 遠位端
6 ダイヤルグリップ
7 用量ダイヤル部材(数字スリーブ)
8 投薬数
9 螺旋溝
10 第1の用量インジケータ手段
11 第1の用量窓
12 カートリッジホルダ
13 第1の用量スケール
14 第2の用量スケール
15 第2の用量インジケータ手段
16 第2の用量窓
17 穴
18 投薬数
19 色付きマーキング(インジケータ)
20 細長いアパーチャ
21 可動の要素
22 ポインタ(インジケータ)
23 溝
24 内側表面
25 ねじ山要素
26 透明なカバー
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6