【実施例】
【0209】
(実施例1)
抗BCMA抗体の作出
(実施例1.1)
抗原およびツール試薬の作製
(実施例1.1.1)
可溶性の組換えヒトBCMA細胞外ドメイン
【0210】
ファージディスプレイ選択のための抗原として使用される、ヒトBCMA、カニクイザルBCMA、およびマウスBCMAの細胞外ドメインを、HEK EBNA細胞内で、N末端単量体のFc融合体として一過性に発現させ、受容体鎖(Fcノブ鎖)を保有するFc部分のC末端に配置されたaviタグ認識配列における、BirAビオチンリガーゼの共発現を介して、in vivoにおいて、部位特異的にビオチニル化させた。ヒトBCMA、カニクイザルBCMA、およびマウスBCMAの細胞外ドメインは、それぞれ、メチオニン4〜アスパラギン53、メチオニン4〜アスパラギン52、およびアラニン2〜トレオニン49を含んだ。これらを、N末端において、ヒトIgG1のヒンジへと融合させ、KIH(knob−into−hole)技術による、非融合ヒトIgG1 Fc部分(ホール鎖)とのヘテロ二量体化を可能とした。
【0211】
BCMAの細胞外ドメインを回収するために、以下のプライマー:
BamH1部位(太字、下線を付す)を組み込む、AAGCTTGGATCCATGTTGCAGATGGCTGGGCAGTGCTCC−3(配列番号9)、および
リバースプライマー:5−GAATTCGCGGCCGCTCATCCTTTCACTGAATTGGTCACACTTGCATTAC−3(配列番号10);
プライマー:5−ACGTTAGATCTCCACTCAGTCCTGCATCTTGTTCCAGTTAAC−3(配列番号11)、および
リバースプライマー:5−AACGTTGCGGCCGCTAGTTTCACAAACCCCAGG−3(配列番号12);
HindIII制限部位(太字、下線を付す)およびKozakコンセンサス配列を含む、GAATTCAAGCTTGCCACCATGTTGCAGATGGCTGGGCAGTGCTCC−3(配列番号13)、ならびに
リバースプライマー:5−GAATTCTCTAGATTACCTAGCAGAAATTGATTTCTCTATCTCCGTAGC−3(配列番号14)
を使用した。
【0212】
(実施例1.1.2)
組換え切断型マウスAPRIL
ファージディスプレイ選択およびELISAのためのツール(競合物質)として使用される、組換え切断型マウスAPRILを、HEK EBNA細胞内で、N末端単量体のFc融合体として一過性に発現させた。マウスAPRILは、ヒスチジン106〜ロイシン241を含んだ。マウスAPRILを、N末端において、ヒトIgG1のヒンジへと融合させ、KIH(knob−into−hole)技術による、非融合ヒトIgG1 Fc部分(ホール鎖)とのヘテロ二量体化を可能とした。
【0213】
(実施例1.2)
ツールとしてのBCMA発現細胞
【0214】
(実施例1.2.1)
ヒトBCMA、カニクイザルBCMA、またはマウスBCMAをそれらの表面において発現する組換え細胞
a)全長BCMAを一過性に発現させるHEK293−EBNA細胞の作製
BCMAを一過性に発現させるHEK293−EBNA細胞は、ポリマーベースのトランスフェクションを使用して、懸濁液中で、HEK293−EBNA細胞に、哺乳動物用発現ベクターをトランスフェクトすることにより作製した。細胞に、全長ヒトBCMA、全長マウスBCMA、または全長カニクイザルBCMAをコードする遺伝子を含有するベクターをトランスフェクトした。トランスフェクションの1日前に、HEK293−EBNA細胞を、6mMのL−グルタミンを補充した、Ex−Cell(登録商標)GTM−3培地中に、生細胞150万個/mLで播種した。
【0215】
最終的な産生容量1mL当たり、生細胞200万個を遠心分離した(210×gで5分間)。上清を吸引し、細胞を、100uLのCD CHO培地中に再懸濁させた。最終的な産生容量1mL当たりのDNAは、1ugのDNAを、100uLのCD CHO培地中で混合することにより調製した。0.27uLのポリマーベースの溶液(1mg/mL)を添加した後で、混合物を、15秒間にわたりボルテックスし、室温で10分間放置した。10分後、再懸濁させた細胞およびDNA/ポリマーベースの溶液混合物をまとめた。これを、適切な容器へと移し、これを、振とうデバイス(37℃、5%のCO2)内に置いた。3時間のインキュベーション時間後に、6mMのL−グルタミン、1.25mMのバルプロ酸、および12.5%のPepsoy(50g/L)を補充した、800uLのF17 Mediumを、最終的な産生容量1mL当たり添加した。
【0216】
インキュベーションの2日後、一過性にトランスフェクトされたHEK293−EBNA細胞を、遠心分離(200×g;10分間)により採取した。上清の吸引の後、細胞ペレットを、Ex−cell(登録商標)GTM−3培地と共に、要請される密度(細胞3000万個/mL)で、静かに再懸濁させた。細胞を、クライオバイアル(1mL/バイアル)へと移し、低温保存ボックスに入れ、これを、摂氏4度で少なくとも12時間、あらかじめ冷却し、摂氏−80度で保存した。摂氏−80度における72時間後、細胞を、液体窒素中へと移した。
【0217】
b)BCMAを発現するCHO細胞系の作出
ヒトBCMA、カニクイザルBCMA、またはマウスBCMAを過剰発現するCHO細胞系は、ウイルス様粒子(VLP)の形質導入により作出した。レンチウイルスベースのウイルス様粒子は、HEK293T(ATCC CRL11268)細胞への、ViraSafe(商標)Lentiviral Packagingプラスミド(Cell Biolabs、USA)と、ヒトBCMA、マウスBCMA、またはカニクイザルBCMAをコードするレンチウイルス発現ベクターとの共トランスフェクションにより作製した。プラスミドの、HEK293T細胞へのトランスフェクションは、製造元の指示書に従い、Lipofectamine LTX(Life Technologies、USA)により実施した。トランスフェクションは、2.5μgのプラスミドDNAを使用して、トランスフェクションの前日に、細胞6×10
5個/ウェルを播種された6ウェルプレート内で行った。各トランスフェクションは、0.4μgのpRSV−Revパッケージングベクター、0.4μgのpCgpVパッケージングベクター、0.4μgのpCMV−VSV−Gエンベロープベクター、および1.3μgのヒトB(pETR14305)、マウス(pETR14304)、またはカニクイザル(pETR14306)BCMAの発現ベクターを含有した。VLPを含有する上清は、48時間後に収集し、小孔サイズを0.45μmとするポリエーテルスルホン膜を介して濾過した。安定的なBCMA発現細胞系を作出するために、CHO細胞を、細胞1.0×10
6個/ウェルで、6ウェルプレート内に播種し、2mLのVLPを含有する上清を重層させた。形質導入は、Eppendorf centrifuge 5810 table−top centrifuge(Eppendorf、Germany)内で、800×gおよび32℃で30分間スピノキュレーションにより実行した。ウイルス上清は、スピノキュレーションの12時間後に、未使用の培地と交換した。形質導入の3日後に、ピューロマイシンを、6μg/mLまで添加し、細胞を、何代かの継代にわたり培養した。BCMA陽性細胞のプールは、交差反応性のAlexa Fluor 448で標識された抗BCMA抗体を使用する、FACS分取(FACS ARIA、Becton,Dickinson and Company、USA)により得た。
【0218】
c)カニクイザルBCMAを、それらの表面上で安定的に発現する組換え細胞
i.BCMAを安定的に発現するHEK293T細胞系の作出
ヒトBCMAまたはカニクイザルBCMAを過剰発現させるHEK293T(ATCC CRL11268)細胞系は、ウイルス様粒子(VLP)の形質導入により作出した。レンチウイルスベースのウイルス様粒子は、HEK293T細胞への、ViraSafe(商標)Lentiviral Packagingプラスミド(Cell Biolabs)と、ヒトBCMAまたはカニクイザルBCMAをコードするレンチウイルス発現ベクターとの共トランスフェクションにより作製した。プラスミドの、HEK293T細胞へのトランスフェクションは、製造元の指示書に従い、Lipofectamine LTX(Life Technologies)により実施した。トランスフェクションは、2.5μgのプラスミドDNAを使用して、トランスフェクションの前日に、細胞6×105個/ウェルを播種された6ウェルプレート内で行った。各トランスフェクションは、0.4μgのpRSV−Revパッケージングベクター、0.4μgのpCgpVパッケージングベクター、0.4μgのpCMV−VSV−Gエンベロープベクター、および1.3μgのヒト(pETR14305)またはカニクイザル(pETR14306)BCMA発現ベクターを含有した。VLPを含有する上清は、48時間後に収集し、小孔サイズを0.45μmとするポリエーテルスルホン膜を介して濾過した。安定的なBCMA発現細胞系を作出するために、HEK293T細胞を、細胞1.0×10
6個/ウェルで、6ウェルプレート内に播種し、1mLのVLPを含有する上清を重層させた。形質導入は、Eppendorf centrifuge 5810 table−top centrifuge(Eppendorf)内で、800×gおよび32℃で30分間スピノキュレーションにより実行した。ウイルス上清は、スピノキュレーションの12時間後に、未使用の培地と交換した。形質導入の3日後に、ピューロマイシンを、1μg/mLまで添加し、細胞を、何代かの継代にわたり培養した。BCMA陽性細胞のクローンは、ヒト/カニクイザル交差反応性抗BCMA抗体(MAB 83A10)と、二次抗体として、FITCコンジュゲートFcガンマ特異的ヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch、型番109−095−098)を使用する、FACS分取(FACS ARIA、Becton,Dickinson and Company)により得た。
【0219】
ii.ヒトBCMAおよびカニクイザルBCMAの発現の正常化
抗FLAG M2抗体(Sigma−Aldrich、型番F3165)を使用するフローサイトメトリー解析を、形質導入されたHEK293T細胞内の、FLAGでタグ付けされたカニクイザルBCMAとヒトBCMAとの同等な発現レベルを確認するのに使用した。細胞内FLAGタグを、ヒトBCMAおよびカニクイザルBCMAのC末端へと融合させた。細胞内染色のために、細胞10
6個を洗浄し、パラホルムアルデヒドで固定し、PBS中に1%のサポニンを使用して透過処理し、次いで、抗FLAG M2抗体と共に、4℃で30分間インキュベートした。細胞を、PBSですすぎ、RPEコンジュゲートヤギ抗マウス抗体(AbD Serotec、型番103001)と共に、30分間インキュベートし、PBSで3回洗浄し、フローサイトメトリー解析のために、1mLのPBS/5%のFCS中で再懸濁させた。
【0220】
(実施例1.2.2)
それらの表面上でBCMAを発現するヒト骨髄腫細胞系
BCMAの発現を、フローサイトメトリーにより、5つのヒト骨髄腫細胞系(NCI−H929、RPMI−8226、U266B1、L−363およびJJN−3)上で評価した。NCI−H929細胞((H929)ATCC(登録商標)CRL−9068(商標))を、10〜20%の熱不活化FCSを伴い、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、および50μMのメルカプトエタノールを含有する場合もある、80〜90%のRPMI 1640中で培養した。RPMI−8226細胞((RPMI)ATCC(登録商標)CCL−155(商標))を、90%のRPMI 1640、および10%の熱不活化FCSを含有する培地中で培養した。U266B1((U266)ATCC(登録商標)TIB−196(商標))細胞を、2mMのL−グルタミン、10mMのHEPES、1mMのピルビン酸ナトリウム、4500mg/Lのグルコース、および1500mg/Lの炭酸水素ナトリウム、および15%の熱不活化FCSを含有するように改変されたRPMI−1640培地中で培養した。L−363細胞系(Leibniz Institute DSMZ(German collection of microorganisms and cell cultures);DSMZ受託番号ACC 49)を、85%のRPMI 1640、および15%の熱不活化FCS中で培養した。JJN−3細胞系(DSMZ受託番号ACC 541)を、40%のダルベッコMEM+40%のイスコフMDM+20%の熱不活化FBS中で培養した。略述すると、細胞を採取し、洗浄し、生存率についてカウントし、96ウェル丸底プレートの細胞50,000個/ウェルで再懸濁させ、10μg/mlの抗ヒトBCMA抗体(Abcam、型番ab54834、マウスIgG1)と共に、4℃で30分間インキュベートした(内部化を防止するように)。マウスIgG1を、アイソタイプ対照として使用した(BD Biosciences、型番554121)。次いで、細胞を遠心分離し(350×gで5分間)、2回洗浄し、FITCコンジュゲート抗マウス二次抗体と共に、4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション時間の終了時に、細胞を遠心分離し(350×gで5分間)、FACS緩衝液で2回洗浄し、100ulのFACS緩衝液中に再懸濁させ、FACS Divaソフトウェアを作動させるCantoIIデバイス上で解析した。H929骨髄腫細胞系、RPMI−8226骨髄腫細胞系、およびU266B1骨髄腫細胞系の表面膜上のBCMA受容体数の相対定量化は、QIFIKIT解析(Dako、型番K0078、製造元の指示書に従う)により評価した。H929細胞は、ヒトBCMAを、他の骨髄腫細胞系の最大5〜6倍の最高密度で発現させた。H929は、BCMAの発現が低度な骨髄腫細胞である、RPMI−8226、U266、およびL363と比較して、BCMAの発現が高度な骨髄腫細胞系であると考えられる。表4および4Aは、ヒト多発性骨髄腫細胞系の細胞表面上の相対BCMA受容体数についてまとめる。
【0221】
【表4】
【0222】
【表4A】
【0223】
(実施例1.3)
in vitroにおける組換えライブラリーからBCMA結合剤を得ること
(実施例1.3.1)
汎用Fabライブラリーの構築
Fabフォーマットの汎用抗体ライブラリーは、ヒト生殖細胞系列遺伝子に基づき、以下のVドメイン対合:DP47−3ライブラリーのための、Vk3_20カッパ軽鎖の、VH3_23重鎖との対合、およびDP88−3ライブラリーのための、Vk1_17カッパ軽鎖の、VH1_69重鎖との対合を使用して構築する。いずれのライブラリーも、軽鎖のCDR3(L3)内および重鎖のCDR3(H3)内で無作為化し、SOE(splicing by overlapping extension)−PCRにより、1つのライブラリー当たり3つの断片からアセンブルする。断片1が、無作為化されたL3を含む抗体遺伝子の5’末端を含み、断片2が、L3〜H3にわたる、中央の定常断片であるのに対し、断片3は、抗体遺伝子の無作為化されたH3および3’部分を含む。以下のプライマーの組合せを使用して、DP47−3ライブラリーのためのライブラリー断片:断片1(LMB3−LibL1b_new)、断片2(MS63〜MS64)、断片3(Lib2H−fdseqlong)を作出する。WO2012020038の表1を参照されたい。以下のプライマーの組合せを使用して、DP88−3ライブラリーのためのライブラリー断片:断片1(LMB3−RJH_LIB3)、断片2(RJH31〜RJH32)および断片3(LIB88_2−fdseqlong)を作出する。WO2012020038の表3および4を参照されたい。
【0224】
ライブラリー断片を作製するためのPCRプロトコールは、94℃で5分間の初期の変性;94℃で1分間、58℃で1分間、および72℃で1分間による25サイクル;ならびに72℃で10分間の終期の伸長を含む。アセンブリーPCRのためには、等モル比の3つの断片を、鋳型として使用する。アセンブリーPCRプロトコールは、94℃で3分間の初期の変性;ならびに94℃で30秒間、58℃で1分間、および72℃で2分間による5サイクルを含む。この段階で、断片1〜3の外側の配列と相補的なプライマーを添加し、さらなる20サイクルを実施してから、72℃で10分間終期の伸長を施す。十分な量の全長無作為化Fab構築物のアセンブリーの後で、Fab構築物を、同様に処理されるアクセプターファージミドベクターと共に、DP47−3ライブラリーのためには、NcoI/NotIで消化し、DP88−3ライブラリーのためには、NcoI/NheIで消化した。DP47−3ライブラリーのためには、22.8μgのFabライブラリーを、16.2μgのファージミドベクターとライゲーションする。DP88−3ライブラリーのためには、30.6μgのFabライブラリーを、30.6μgのファージミドベクターとライゲーションする。
【0225】
精製されたライゲーション物を、DP47−3ライブラリーのための68の形質転換、およびDP88−3ライブラリーのための64の形質転換のそれぞれに使用して、最終的なDP47−3ライブラリーおよびDP88−3ライブラリーを得る。Fabライブラリーを提示するファージミド粒子をレスキューし、PEG/NaCl精製により精製して、抗BCMA Fabクローンを選択するために使用する。
【0226】
(実施例1.3.2)
抗BCMA Fabクローンの選択
抗BCMA Fabは、ファージディスプレイにより、異なるVドメインファミリーに由来するVLとVHとの対合からなる合成Fabライブラリーから確立した。クローン17A5および83A10は、Vk3_20/VH3_23サブライブラリーから、クローン13A4は、Vk2D_28/VH5_1サブライブラリーから、それぞれ、作出した(表5)。これらのライブラリーは、VLドメインのCDR3(3つの異なる長さ)内およびVHドメインのCDR3(6つの異なる長さ)内の配列多様性を伴う完全ヒトフレームワークに基づく。
【0227】
【表5】
【0228】
選択ラウンド(バイオパニング)は、以下のパターンに従い溶液中で実施した:1)抗原のFc部分を認識する抗体のライブラリーを枯渇するための、10ug/mlの無関係なヒトIgGでコーティングされたイムノチューブ内、ライブラリープール1つ当たり約10
12個のファージミド粒子のプレクリアリング;2)Fc結合剤をさらに枯渇させるための、総容量2ml中、100nMの無関係な非ビオチニル化Fc KIH(knob−into−hole)構築物の存在下における、非Fc結合性ファージミド粒子の、100nMのビオチニル化BCMAとの0.5時間のインキュベーション;3)パニング反応物を、ニュートラアビジンまたはストレプトアビジンあらかじめコーティングされたマイクロタイタープレート上の16のウェルへと分配し、移すことによる、シェーカー上20分間にわたる、ビオチニル化BCMAおよび特異的結合性ファージの捕捉;4)プレート洗浄機を使用する、PBS/Tween20により10〜30回、およびPBSにより10〜30回のそれぞれのウェルの洗浄;5)230nMのマウスAPRILを添加することによって、天然リガンドの結合性部位を認識するFabクローンを変位させ、こうして、APRILと競合しないファージ抗体について選択する、任意選択の競合的洗浄ステップ;6)100mMのTEA(トリエチルアミン)、ウェル1つ当たり125ulの添加による、5〜10分間のファージ粒子の溶出と、1Mのトリス/HCl pH7.4、等容量の添加による中和;7)対数期のE.coli TG1細胞への、溶出させたファージ粒子の再感染、ヘルパーファージVCSM13の感染、シェーカー上、30℃で一晩にわたるインキュベーション、および、その後における、次の選択ラウンドで使用されるファージミド粒子の、PEG/NaCl沈殿。
【0229】
選択は、一定の抗原濃度である100nMを使用して、3〜5ラウンドにわたり実行した。ヒトBCMAだけを抗原として使用する選択方策とは別に、交差反応性抗体について選択するために、カニクイザルBCMAまたはマウスBCMAもまた、ヒトBCMAと交互に使用する、さらなる選択方策も実行した。なおさらに、ストレプトアビジンプレートベースの捕捉に対する代替法として、ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズ5.4×10
7個の、パニング反応物への添加に続き、上で記載した条件下で、それぞれの磁石を使用する洗浄ステップによって、抗原:ファージ複合体の捕捉も実施した。
【0230】
特異的結合剤は、BioRad製のProteOn XPR36バイオセンサーを使用する、Fabを含有する細菌培養物上清の、表面プラズモン共鳴によるスクリーニングにより同定した。略述すると、対数期のE.coli TG1細胞に、溶出させたファージ粒子を感染させた後、単一のコロニー形成単位(cfu)をプレーティングし、1mlの発現培養物の、96ディープウェルプレートへの接種のために取り集めた。Fabは、8.000〜10.000RUのヤギ抗ヒトIgG F(ab’)2断片特異的ポリクローナル抗体で誘導体化されたProteOn GLMチップ(Jackson ImmunoResearch、型番109−005−006)上で、上清から、垂直方向に捕捉した。その後、ヒトBCMA、カニクイザルBCMA、およびマウスBCMA、ならびに無関係なFc KIH(knob−into−hole)構築物を、解析物として水平方向に注入した。BCMAへの有意な結合応答を呈示し、抗原のFc部分に結合しなかったクローンを、0.5リットルの培養物容量中で細菌により発現させ、アフィニティー精製し、BioRad製のProteOn XPR36バイオセンサー上で、ワンショット反応速度プロトコールを使用する、SPR解析により反応速度的に特徴付けた。
【0231】
(実施例2)
BCMA結合アッセイ:表面プラズモン共鳴
a)抗BCMA Fabクローンのアフィニティー(KD)は、ニュートラアビジン捕捉により、ビオチニル化ヒトBCMA、ビオチニル化カニクイザルBCMA、およびビオチニル化マウスBCMAをNLCチップ上に固定化して、25℃でProteOn XPR36計器(Biorad)を使用する、表面プラズモン共鳴により測定した(表6)。無関係なビオチニル化Fc KIH(knob−into−hole)構築物も同様に、陰性対照として固定化した。抗原(リガンド)の固定化:組換え抗原を、PBST(10mMのリン酸塩、150mMの塩化ナトリウム、pH7.4、0.005%のTween 20)で、10ug/mlへと希釈し、次いで、40ul/分で300秒間、垂直方向に注入した。解析物の注入:ワンショット反応速度測定のために、注入方向を、水平方向へと変化させ、会合時間を200または300秒間とし、解離時間を300秒間として、精製Fabの2倍の希釈系列(濃度範囲を変化させる)を、チャネル1〜5に沿って、40ul/分で、同時に注入した。基準化のための「インラインの」ブランクをもたらすように、6番目のチャネルに沿って、緩衝液(PBST)を注入した。会合速度定数(kon)および解離速度定数(koff)は、ProteOn Manager v3.1ソフトウェアにおいて、単純な一対一ラングミュア結合モデルを使用して、会合センサーグラムと解離センサーグラムとを同時に当てはめることにより計算した。平衡解離定数(KD)は、koff/konの比として計算した。再生は、10mMのグリシン−HCl pH 1.5を、100ul/分の流量で、18秒間の接触時間使用して、水平方向で実施した。
【0232】
【表6】
【0233】
b)抗BCMA抗体の、組換えBCMAへの結合についての、表面プラズモン共鳴(SPR)による評価は、以下の通りに行った。全てのSPR実験は、Biacore T200上、25℃で、HBS−EP(0.01MのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.005%のSurfactant P20、Biacore、Freiburg/Germany)をランニングバッファーとして実施した。抗BCMA抗体と、組換えBCMA Fc(kih)(ヒト、カニクイザル、およびマウス)との相互作用のアビディティーを決定した。指示書(Biacore、Freiburg/Germany)に従い、ビオチニル化組換えヒトBCMA Fc(kih)、ビオチニル化組換えカニクイザルBCMA Fc(kih)、およびビオチニル化組換えマウスBCMA Fc(kih)を、SAチップ上に、直接カップリングさせた。固定化レベルは、200〜700RUの範囲であった。抗BCMA抗体は、フローセルを介して、2倍の濃度範囲(1.95〜500nM)、30μL/分の流量で、120秒間にわたり流過させた。解離は、180秒間モニタリングした。バルク屈折率の差違は、基準フローセル上で得られる応答を控除することにより補正した。ここで、抗BCMA抗体を、標準的なアミンカップリングキットにおいて記載されている通りに、あらかじめ活性化させ、脱活性化させた、空の表面上に流動させた。見かけの反応速度定数は、比較を目的とする、相互作用の二価性にも拘らず、数値積分により、1:1のラングミュア結合についての速度式を当てはめる、Biacore T200 Evaluation Software(vAA、Biacore AB、Uppsala/Sweden)を使用して導出した。
【0234】
また、抗BCMA抗体と、組換えヒトBCMA Fc(kih)との相互作用のアフィニティーも決定した。標準的なアミンカップリングキット(Biacore、Freiburg/Germany)を使用して、抗ヒトFab抗体(GE Healthcare)を、pH5.0で、CM5チップ上に、直接カップリングさせた。固定化レベルは、約6500RUであった。抗BCMA抗体は、25nMで90秒間捕捉した。組換えヒトBCMA Fc(kih)は、フローセルを介して、4倍の濃度範囲(1.95〜500nM)、30μL/分の流量で、120秒間流過させた。解離は、120秒間にわたりモニタリングした。バルク屈折率の差違は、基準フローセル上で得られる応答を控除することにより補正した。ここで、組換えBCMAを、抗ヒトFab抗体が固定化されているが、その上に、抗BCMA抗体ではなくて、HBS−EPを注入された表面上に流動させた。反応速度定数は、数値積分により、1:1のラングミュア結合についての速度式を当てはめる、Biacore T100 Evaluation Software(vAA、Biacore AB、Uppsala/Sweden)を使用して導出した(表7)。また、83A10抗BCMA抗体の、組換えカニクイザルBCMA Fc(kih)およびマウスBCMA Fc(kih)への結合も測定した(表8)。
【0235】
【表7】
【0236】
【表8】
【0237】
(実施例3)
抗BCMA IgG抗体の、huTACI−RおよびhuBAFF−Rに対する特異性についての試験
TNF−TNF−Rスーパーファミリーのメンバーとして、TACI受容体およびBAFF受容体は、細胞外ドメイン内の相同性を、それぞれ、22%、および18.5%として、BCMA受容体と類縁である。したがって、表面プラズモン共鳴(SPR)による結合実験を実施して、抗BCMA IgG抗体の特異性について検討する。全てのSPR実験は、Biacore T200(GE Healthcare)上、25℃で、HBS−EP(0.01MのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.005%のSurfactant P20)をランニングバッファーとして実施する。標準的なアミンカップリングキット(GE Healthcare)を使用して、Fcを融合させた、huBCMA、huBAFF−R、およびhuTACI−Rを、pH5.0で、高固定化レベル(約5000RU)により、Biacore CM5センサーチップの異なるフローチャネル上に、化学的に固定化する。まず、抗BCMA IgG 83A10ならびに陽性対照としての抗huTACI−R IgGおよび抗huBAFF−R IgGの高濃縮溶液(1.5μM、HBS−EP中に溶解させた)を注入(会合時間:80秒間、解離時間:600秒間、流量:30μl/分)して、結合が生じるのかどうかを点検する。抗huTACI−R IgGの、huTACI−Rへの正の結合イベントのほか、抗huBAFF−R IgGの、huBAFF−Rへの正の結合イベント、および抗BCMA IgG抗体の、huBCMAへの正の結合イベントは、全ての受容体が、固定化の後でもやはり認識されることを指し示す。抗BCMA IgG抗体の、huBAFF−Rおよび/またはhuTACI−Rへの、大きな反応速度定数による結合については、固定化レベルを小さくした(300RU)場合の反応速度パラメータについての注意深い検討を、新しいCM5センサーチップ上で実施する。濃度を700、350、175、87.5、43.75、21.88nM(HBS−EP中に溶解させた)とする抗BCMA IgG抗体希釈液を、注入(会合時間:80秒間、解離時間:300秒間、流量:30μl/分)し、試料を、二連で調べる。また、可能な場合、すなわち、解離が高速で完了してしまわない場合は、再生も実施する。抗BCMA IgG抗体と、huBAFF−RまたはhuTACI−Rとの相互作用についての反応速度による査定は、物質移動についての項(Biacore evaluation Version 2.0)を含む、1:1相互作用モデルへのデータのグローバルフィッティングにより実施する。また、抗BCMA IgG抗体の濃度がより高い定常状態解析も実施する。
【0238】
(実施例4)
BCMA抗体の、BCMA陽性多発性骨髄腫細胞系への結合(フローサイトメトリー)
フローサイトメトリーにより、抗BCMA IgG抗体(クローン17A5、83A10、13A4)を、BCMAを発現するH929細胞上の、ヒトBCMAへの結合について解析した。MKN45(BCMAを発現させない、ヒト胃腺癌細胞系)を、陰性対照として使用した。略述すると、培養された細胞を、採取し、カウントし、ViCellを使用して、細胞生存率を査定した。次いで、生細胞を、BSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)中、1ml当たりの細胞2×10
6個へと調整する。この細胞懸濁液100μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、さらにアリコート分割し、30μlの抗BCMA抗体または対応するIgG対照と共に、4℃で30分間インキュベートした。全ての抗BCMA抗体(およびアイソタイプ対照)を滴定し、0.1〜40ug/mlの間の最終濃度範囲で解析した。次いで、細胞を遠心分離し(350×gで5分間)、120μl/ウェルのFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)で洗浄し、再懸濁させ、蛍光色素コンジュゲートPEコンジュゲートAffiniPure F(ab’)2 Fragment goat anti−human IgG Fc Fragment Specific(Jackson Immuno Research Lab;109−116−170)と共に、4℃で、さらに30分間インキュベートした。次いで、細胞を、Stain緩衝液(BD Biosciences)で2回洗浄し、ウェル1つ当たり100ulのBD Fixation緩衝液(BD Biosciences、型番554655)を使用して、4℃で20分間固定し、120μlのFACS緩衝液中に再懸濁させ、BD FACS CantoIIを使用して解析した。
図4は、抗BCMA抗体の濃度の関数としてプロットされた、抗BCMA IgGクローンについての平均蛍光強度、(A)H929細胞上のクローン17A5、83A10、(B)MKN45細胞上のクローン17A5、83A10、(C)H929細胞上のクローン13A4、(D)MKN45細胞上のクローン13A4を示す。クローン17A5、83A10の、H929細胞への結合についてのEC50値(最大結合の50%に達するのに要請される抗体の濃度を示す)を、表9にまとめる。
【0239】
【表9】
【0240】
(実施例5)
100ng/mL、好ましくは、1000ng/mLのAPRILは、BCMA抗体の、ヒトBCMAへの結合を変更しない(フローサイトメトリーおよびELISA)
a)非APRIL競合抗BCMA Fabまたは抗体の、ELISAによる同定。Fabの、固定化されたヒトBCMAへの結合は、増大する濃度のマウスAPRILの存在下で評価した。ニュートラアビジンプレートに、25nMのビオチニル化ヒトBCMA(100μl/ウェル)をコーティングし、シェーカー上、室温で1時間インキュベートした。500nMまたは1000nMの精製Fabを添加して、コーティングしたヒトBCMAを、室温で1時間飽和させた。プレートを、PBSで3回洗浄し、0〜100nMの範囲にわたる、PBS緩衝液中の2倍の希釈系列を使用して、マウスAPRILを、8つの異なる濃度で添加し、シェーカー上で30分間インキュベートした。プレートを、PBSで3回洗浄し、抗FLAG−HRP二次抗体(1:4000)を、1時間添加した。ここでもまた、プレートを、PBSで3回洗浄し、100ul/ウェルのBM Blue POD(Roche)を添加することにより現像した。反応は、1MのH
2SO
4 50ul/ウェルを添加することにより停止させ、ODは、最終的なリードアウトであるOD
450−650のために、450nmで(650nmを基準とする)読み取った。選択されたFabについての結果を、
図5に示す。50nM(1200ng/mL)または6.25nM(140ng/mL)のmuAPRIL(マウスΔ−APRIL)の非存在下で抗BCMAクローンに関して測定されたOD値の、これらの存在下で測定されたOD値と対比した低減を表10にまとめる。
【0241】
【表10】
【0242】
b)フローサイトメトリーにより検出される、Δ−APRILの、抗BCMA抗体との競合。Δ−APRILと抗BCMA抗体との終局における競合についての評価は、H929細胞上で、増大する濃度の抗BCMA抗体(クローン17A5、83A10、13A4)の存在下における、Δ−APRILの結合を定量化することにより実施した。略述すると、培養された細胞を採取し、カウントし、ViCellを使用して、細胞生存率を査定した。生細胞は、BSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)中、1ml当たりの細胞1×10
6個へと調整した。この細胞懸濁液100μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、さらにアリコート分割し、30μlの抗BCMA抗体または対応するIgG対照と共に、4℃で30分間インキュベートする。全ての抗BCMA抗体(およびアイソタイプ対照)を滴定し、1、16、および40μg/mlの最終濃度で解析した。次いで、細胞を遠心分離し(350×gで5分間)、120μl/ウェルのFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)で洗浄し、再懸濁させ、ヘマグルチニン(HA)(R&D Systems Europe、型番7907−AP−010)でタグ付けされた、1ug/ml組換えマウスΔ−APRILと共に、4℃でさらに30分間インキュベートする。次いで、細胞を、120μl/ウェルのFACS緩衝液で1回洗浄し、FITCコンジュゲート抗HA抗体(Sigma Aldrich、型番H7411)と共に、4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション時間の終了時に、細胞を、120μl/ウェルのFACS緩衝液で洗浄し、ウェル1つ当たり100ulのBD Fixation緩衝液(BD Biosciences、型番554655)を使用して、4℃で20分間固定し、80μlのFACS緩衝液中に再懸濁させ、BD FACS Fortessaを使用して解析した。
図6は、H929細胞上で、増大する濃度の抗BCMA抗体クローン13A4の関数として検出される、Δ−APRIL(FITCシグナル)の相対蛍光強度中央値を示す。アイソタイプ対照の存在下における、Δ−APRILの結合時における蛍光強度中央値を1とし、他のシグナルは、これに対して標準化した。
【0243】
c)フローサイトメトリーにより検出される、抗BCMA抗体の、Δ−APRILとの競合。Δ−APRILと抗BCMA抗体との終局における競合についての評価は、RPMI細胞上で、Δ−APRILの存在下または非存在下における、抗BCMA抗体(クローン13A4、17A5、83A10)の結合を定量化することにより実施した。略述すると、培養された細胞を採取し、カウントし、ViCellを使用して、細胞生存率を査定した。生細胞は、BSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)中、1ml当たりの細胞1×10
6個へと調整した。この細胞懸濁液100μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、さらにアリコート分割し、30μlの抗BCMA抗体または対応するIgG対照と共に、4℃で20分間インキュベートした。全ての抗BCMA抗体およびアイソタイプ対照は、最終濃度40ug/mlで解析した。次いで、細胞を遠心分離し(350×gで5分間)、120μl/ウェルのFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)で洗浄し、再懸濁させ、ヘマグルチニン(HA)(R&D Systems Europe、型番7907−AP−010)でタグ付けされた、1μg/mlの組換えマウスΔ−APRILと共に、4℃でさらに40分間インキュベートした。次いで、細胞を、120μl/ウェルのFACS緩衝液で1回洗浄し、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗ヒトFc抗体(Jackson Immuno Research Lab、型番109−606−008)と共に、4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション時間の終了時に、細胞を、120μl/ウェルのFACS緩衝液で洗浄し、ウェル1つ当たり100ulのBD Fixation緩衝液(BD Biosciences、型番554655)を使用して、4℃で20分間固定し、80μlのFACS緩衝液中に再懸濁させ、BD FACS Fortessaを使用して解析した。
図7は、1000ng/mLのΔ−APRILの非存在下または存在下において検出される、RPMI8226細胞上の抗BCMA抗体(Alexa Fluor 647シグナル)クローン13A4、17A5、83A10の相対蛍光強度中央値を示す。Δ−APRILの非存在下における、抗BCMA抗体の結合時における蛍光強度中央値を1とし、Δ−APRILの存在下における、抗BCMA抗体のそれぞれに対する他のシグナルは、これに対して標準化した。
【0244】
d)同時的なインキュベーションの後において、フローサイトメトリーにより検出される、抗BCMA抗体の、Δ−APRILとの競合。Δ−APRILと抗BCMA抗体との終局における競合についての評価は、H929細胞(NCI−H929、ATCC(登録商標)CRL−9068(商標))上で、Δ−APRILの存在下または非存在下における、抗BCMA抗体(クローン13A4、17A5、83A10)の結合を定量化することにより実施した。略述すると、培養された細胞を採取し、カウントし、ViCellを使用して、細胞生存率を査定した。生細胞は、BSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)中、1ml当たりの細胞1×10
6個へと調整した。この細胞懸濁液100μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、さらにアリコート分割し、30μlの抗BCMA抗体または対応するIgG対照、およびヘマグルチニン(HA)(R&D Systems Europe、型番7907−AP−010)でタグ付けされた、30μlのΔ−APRILと共に、4℃で40分間インキュベートした。全ての抗BCMA抗体およびアイソタイプ対照は、最終濃度20ug/mlで、Δ−APRILは最終濃度2.5ug/mlで解析した。次いで、細胞を遠心分離し(350×gで5分間)、120μl/ウェルのFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)で洗浄した。その後、細胞を、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗ヒトFc抗体(Jackson Immuno Research Lab、型番109−606−008)およびFITCコンジュゲート抗HA抗体(Sigma Aldrich、型番H7411)と共に、4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション時間の終了時に、細胞を、120μl/ウェルのFACS緩衝液で洗浄し、ウェル1つ当たり100ulのBD Fixation緩衝液(BD Biosciences、型番554655)を使用して、4℃で20分間固定し、80μlのFACS緩衝液中に再懸濁させ、BD FACS CantoIIを使用して解析した。
図8Aは、抗BCMA抗体クローン(Alexa Fluor 647シグナル)の平均蛍光強度および相対蛍光シグナルを示し、
図8Bは、Δ−APRIL(FITCシグナル)および抗BCMA抗体クローン(Alexa Fluor 647シグナル)の平均蛍光強度および相対蛍光シグナルを示す。Δ−APRILの存在下における抗BCMA抗体の、FITCコンジュゲート抗ヒトFc抗体による検出は、Δ−APRILの非存在下における、抗BCMA抗体クローンのシグナルに対して標準化した。抗BCMA抗体クローンの存在下におけるΔ−APRILの、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗HA抗体による検出は、アイソタイプ対照の存在下における、Δ−APRILシグナルに対して標準化した。蛍光色素コンジュゲート抗ヒトFc抗体により検出された、Δ−APRIL(2.5μg/mL)の存在下における、抗BCMA抗体(20μg/mL)クローン13A4、17A5、および83A10の結合の低減を、表11にまとめる。
【0245】
【表11】
【0246】
(実施例6)
抗BCMA抗体は、NF−κBの活性化を単独では誘導しない(発光アッセイ)
抗BCMA抗体の、BCMAを発現するH929細胞への結合が、BCMAの下流における、公知のシグナル伝達経路である、NF−κBの活性化を誘導するのかどうかを評価した。略述すると、H929細胞を、細胞インキュベーター内の、0.25%のFCSを伴うRPMI1640中、37℃で24時間飢餓させた。飢餓時間の終了時に、細胞を採取し、カウントし、ViCellを使用して、細胞生存率を査定した。生細胞は、BSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)中、1ml当たりの細胞4×10
6個へと調整した。この細胞懸濁液30μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、さらにアリコート分割し、100または350nM(14または50ug/ml)の抗BCMA抗体30μlと共に、37℃で20分間インキュベートした。陰性対照としては、細胞を、非処置のまま放置するか、または対応するIgGアイソタイプ対照抗体100nM(14μg/ml)と共に、37℃で20分間インキュベートした。陽性対照としては、細胞を、ヘマグルチニン(HA)(R&D Systems Europe、型番7907−AP−010)でタグ付けされた、1μg/mlの組換えマウスΔ−APRILと共に、37℃で20分間インキュベートした。インキュベーション時間の終了時に、Nuclear Extract Kit(Active Motif、型番40410)の製造元のプロトコールに従い、細胞を採取し、洗浄し、溶解させ、操作した。製造元の指示書に従い、TransAm(登録商標)NF−κB p65 Chemi Assay kit(Active Motif、型番40097)を使用して、タンパク質抽出物を、NF−κB活性について解析した。発光シグナルは、Spectra Max M5 luminometer(Molecular Devices)を使用して読み取った。
図9に描示される通り、H929細胞を、1μg/mlのAPRILへと曝露したところ、H929細胞単独と比較して、4.2倍の発光シグナルの増大が達せられた。最小限のバックグラウンドの発光シグナルは、H929細胞単独に関して、またはアイソタイプ対照抗体の存在下において観察され、前に報告されている(Demchenkoら、Blood、2010年、115巻(17号):3541〜3552頁)通り、多発性骨髄腫細胞系内で観察される、基礎的なNF−κBの活性化により説明されうる。抗BCMA抗体(17A5、83A10)単独の添加により、NF−κBの活性化が、それぞれの対照アイソタイプ抗体と比較して、さらに誘導されることはなかった。結果は、抗BCMA抗体が、BCMA陽性細胞への結合時に、NF−κBの活性化を誘導しないことを示唆する。
【0247】
(実施例7)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の作出
(実施例7.1)
抗CD3抗体
本明細書で使用される「CD3εまたはCD3」という用語は、UniProt P07766(CD3E_HUMAN)下に記載されているヒトCD3εに関する。「CD3に対する抗体、抗CD3抗体」という用語は、CD3εに結合する抗体に関する。抗体は、配列番号1、2、および3の重鎖CDRを、それぞれ、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3として含む、可変ドメインVHと、配列番号4、5、および6の軽鎖CDRを、それぞれ、軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3として含む、可変ドメインVLとを含むことが好ましい。抗体は、配列番号7(VH)および配列番号8(VL)の可変ドメインを含むことが好ましい。
【0248】
上で記載した抗CD3抗体を使用して、以下の実施例で使用されるT細胞二特異性抗体を作出した。
【0249】
(実施例7.2)
Fc含有2+1フォーマットの抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の作出
対応する抗BCMA IgG1抗体の完全重鎖および完全軽鎖をコードするcDNA、ならびに抗CD3 VHおよび抗CD3 VLのcDNAを、出発材料として使用した。各二特異性抗体には、対応する抗BCMA抗体の重鎖および軽鎖、ならびに上で記載した抗CD3抗体の重鎖および軽鎖のそれぞれを含む、4つのタンパク質鎖が関与した。誤対合重鎖を伴う、例えば、抗CD3抗体の2つの重鎖を伴う、副産物の形成を最小化するために、WO2009080251およびWO2009080252において記載されている通り、「KIH(knob−into−hole)突然変異」および操作されたジスルフィド結合を保有する、突然変異させたヘテロ二量体のFc領域を使用する。誤対合軽鎖、例えば、抗BCMA抗体の2つの軽鎖を伴う、副産物の形成を最小化するために、WO2009080251およびWO2009080252に記載されている方法論を使用して、CH1×定常カッパクロスオーバーを、抗CD3抗体の重鎖および軽鎖へと適用する。
【0250】
a)2+1フォーマットを伴う抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体、すなわち、BCMAに対して二価であり、CD3に対して一価である、二特異性(Fab)
2×(Fab)抗体は、腫瘍標的BCMAに優先的に結合し、CD3抗体シンクを回避し、こうして、腫瘍へと焦点を当てた薬物曝露の確率がより高いため、効力に対する利点、有効性および安全性に対する予測可能性を有する。
【0251】
2+1フォーマットによる抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体、すなわち、BCMAに対して二価であり、CD3に対して一価である、二特異性(Fab)
2×aFab)抗体であって、Fcを伴う抗体を、以前に選択されたヒトBCMA抗体のために作製した。対応する抗BCMA IgG1抗体の完全Fab(重鎖VHドメインおよび重鎖CH1ドメインに加えた、軽鎖VLドメインおよび軽鎖CLドメイン)をコードするcDNA、ならびに抗CD3 VHおよび抗CD3 VLのcDNAを、出発材料として使用した。各二特異性抗体には、Fc領域を伴う、対応する抗BCMA抗体の重鎖および軽鎖、ならびに上で記載した抗CD3抗体の重鎖および軽鎖のそれぞれを含む、4つのタンパク質鎖が関与した。
【0252】
略述すると、各二特異性抗体は、それぞれが、a)対応するBCMA抗体の完全軽鎖のcDNA、b)スプライス−オーバーラップ−エクステンションPCRなど、標準的な分子生物学法により作出される、融合体のcDNAであって、(N末端からC末端の順序で)分泌リーダー配列、上で記載した、対応する抗BCMA抗体のFab(VHドメインに続くCH1ドメイン)、配列Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Serを伴う、可撓性のグリシン(Gly)−セリン(Ser)リンカー、上で記載した、対応する抗BCMA抗体のFab(VHドメインに続くCH1ドメイン)、配列Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Serを伴う、可撓性のグリシン(Gly)−セリン(Ser)リンカー、上で記載した抗CD3抗体のVH、およびヒト軽鎖cDNAの定常カッパドメインから制作される融合タンパク質をコードするcDNA、c)スプライス−オーバーラップ−エクステンションPCRなど、標準的な分子生物学法により作出される、融合体のcDNAであって、(N末端からC末端の順序で)分泌リーダー配列、上で記載した抗CD3抗体のVL、ヒトIgG1 cDNAの定常CH1ドメインから制作される融合タンパク質をコードするcDNAをコードする、4つの哺乳動物用発現ベクターの同時的な共トランスフェクションにより作製する。ヒトIgG1抗体またはヒト化IgG1抗体の産生のための、上で記載した方法であって、1つの改変:抗体の精製のために、プロテインAを使用して第1の捕捉ステップを行わず、代わりに、KappaSelect(GE Healthcare Life Sciences)など、ヒトカッパ軽鎖定常領域に結合する樹脂を充填したアフィニティークロマトグラフィーカラムを使用して行うことを伴う方法を使用する、哺乳動物細胞の共トランスフェクション、ならびに抗体の作製および精製。加えて、安定性および収率を増大させるように、ジスルフィドのほか、イオン性架橋を形成し、ヘテロ二量体化収率を増大させる、さらなる残基も、含むことができる(EP1870459A1)。
【0253】
b)BCMA×CD3二特異性抗体ベクターを作出するために、IgG1由来の二特異性分子は、少なくとも、2つの顕著に異なる抗原性決定基CD3およびBCMAに特異的に結合することが可能な、2つの抗原結合性部分からなる。抗原結合性部分は、各々が、可変領域および定常領域を含む、重鎖および軽鎖から構成されるFab断片であった。Fab断片のうちの少なくとも1つは、Fab重鎖と、Fab軽鎖の定常ドメインを交換した、「Crossfab」断片であった。Fab断片内の重鎖定常ドメインと軽鎖定常ドメインとの交換により、特異性の異なるFab断片が、同一のドメインの並びを有さず、結果として、軽鎖を相互交換しないことを確保する。二特異性分子のデザインは、CD3について一価であり、BCMAについて二価であり、この場合、1つのFab断片を、内側のCrossFab(2+1)のN末端へと融合させる。二特異性分子は、半減期が長くなるように、Fcパートを含有した。構築物の概略表示を、
図2に与え、好ましい構築物の配列を、配列番号41および43〜52に示す。分子は、ポリマーベースのトランスフェクションを使用して、懸濁液中で成長するHEK293 EBNA細胞に、哺乳動物用発現ベクターを共トランスフェクトすることにより作製した。2+1 CrossFab−IgG構築物を調製するために、細胞に、対応する発現ベクターを、1:2:1:1の比(「Fc(ノブ)ベクター」:「軽鎖ベクター」:「軽鎖 CrossFabベクター」:「重鎖−CrossFabベクター」)でトランスフェクトした。
【0254】
(実施例7.3)
比較のための、抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の作出
APRILおよびBAFFを遮断するJ6M0−TCBcvおよびBCMA50−sc(Fv)
2(BCMA50−BiTE(登録商標)としてもまた公知である)抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の作出、ならびに使用されるアミノ酸配列は、それぞれ、WO2012163805およびWO2013072406/WO2013072415に従った。
【0255】
(実施例8)
電荷変異体を伴うかまたは伴わない、抗BCMA/抗CD3 Fc含有(2+1)T細胞二特異性抗体の作製および精製
二特異性抗体を作製するために、二特異性抗体を、ポリマーベースのトランスフェクションを使用して、懸濁液中で培養される、HEK293−EBNA細胞内の、それぞれの哺乳動物用発現ベクターの一過性共トランスフェクションにより発現させた。トランスフェクションの1日前に、HEK293−EBNA細胞を、6mMのL−グルタミンを補充した、Ex−Cell培地中に、生細胞150万個で/mLで播種した。最終的な産生容量1mL当たり、生細胞200万個を遠心分離した(210×gで5分間)。上清を吸引し、細胞を、100μLのCD CHO培地中に再懸濁させた。最終的な産生容量1mL当たりのDNAは、1μgのDNA(重鎖:修飾重鎖:軽鎖:修飾軽鎖の比=1:1:2:1)を、100μLのCD CHO培地中で混合することにより調製した。0.27μLのポリマーベースの溶液(1mg/mL)を添加した後で、混合物を、15秒間ボルテックスし、室温で10分間放置した。10分後、再懸濁させた細胞およびDNA/ポリマーベースの溶液混合物をまとめ、次いで、適切な容器へと移し、これを、振とうデバイス(37℃、5%のCO
2)内に置いた。3時間のインキュベーション時間後に、6mMのL−グルタミン、1.25mMのバルプロ酸、および12.5%のPepsoy(50g/L)を補充した、800μLのEx−Cell Mediumを、最終的な産生容量1mL当たり添加した。24時間後、70μLのフィード溶液を、最終的な産生容量1mL当たり添加した。7日後、または細胞の生存率が、70%と等しいかまたはそれ未満となったところで、遠心分離および滅菌濾過により、細胞を、上清から分離した。抗体は、アフィニティーステップ、ならびにカチオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ除外クロマトグラフィーである、1つまたは2つの仕上げステップにより精製した。要請される場合は、さらなる仕上げステップも使用した。
【0256】
アフィニティーステップのために、上清を、20mMのリン酸ナトリウム、20mMのクエン酸ナトリウム、pH7.5 6CVで平衡化させたプロテインAカラム(HiTrap Protein A FF、5mL、GE Healthcare)上にロードした。同じ緩衝液による洗浄ステップの後で、20mMのリン酸ナトリウム、100mMの塩化ナトリウム、100mMのグリシン、pH3.0による段階的溶出によって、抗体を、カラムから溶出させた。所望の抗体を伴う画分を、0.5Mのリン酸ナトリウム、pH8.0(1:10)で速やかに中和し、プールし、遠心分離により濃縮した。濃縮物は、滅菌濾過し、さらにカチオン交換クロマトグラフィーおよび/またはサイズ除外クロマトグラフィーに掛けた。
【0257】
カチオン交換クロマトグラフィーステップのために、濃縮されたタンパク質を、アフィニティーステップのために使用した溶出緩衝液で、1:10に希釈し、カチオン交換カラム(Poros 50 HS、Applied Biosystems)へとロードした。それぞれ、20mMのリン酸ナトリウム、20mMのクエン酸ナトリウム、20mMのトリス、pH5.0、および20mMのリン酸ナトリウム、20mMのクエン酸ナトリウム、20mMのトリス、100mMの塩化ナトリウム、pH5.0である、平衡緩衝液および洗浄緩衝液による、2回の洗浄ステップの後で、タンパク質を、20mMのリン酸ナトリウム、20mMのクエン酸ナトリウム、20mMのトリス、100mMの塩化ナトリウム、pH8.5を使用する勾配により溶出させた。所望の抗体を含有する画分は、プールし、遠心分離により濃縮し、滅菌濾過し、さらにサイズ除外ステップに掛けた。
【0258】
サイズ除外ステップのために、濃縮されたタンパク質を、製剤緩衝液としての、Tween20を伴うかまたは伴わない、20mMのヒスチジン、140mMの塩化ナトリウム、pH6.0と共に、XK16/60 HiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)に注入した。単量体を含有する画分は、プールし、遠心分離により濃縮し、滅菌バイアルへと滅菌濾過した。
【0259】
抗体濃度の決定は、0.1%の抗体溶液の吸光度についての理論値を使用する、280nmにおける吸光度の測定により行った。この値は、アミノ酸配列に基づくものであり、GPMAWソフトウェア(Lighthouse data)により計算した。
【0260】
最終タンパク質調製物の純度および単量体含量は、25mMのリン酸カリウム、125mMの塩化ナトリウム、200mMのL−アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)のアジ化ナトリウム、pH6.7による緩衝液中で、CE−SDS(Caliper LabChip GXIIシステム(Caliper Life Sciences))およびHPLC(TSKgel G3000 SW XL解析用サイズ除外カラム(Tosoh))のそれぞれにより決定した。
【0261】
最終タンパク質調製物の分子量を検証し、最終タンパク質溶液中の分子が均質になるように調製されたことを確認するために、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)を使用した。脱グリコシル化ステップをまず実施した。炭水化物により導入される異質性を除去するために、構築物を、PNGaseF(ProZyme)で処理した。したがって、2Mのトリス2μlを、濃度を0.5mg/mlとする20μgのタンパク質へと添加することにより、タンパク質溶液のpHを、pH7.0へと調整した。0.8μgのPNGaseFを、添加し、37℃で12時間インキュベートした。次いで、LC−MSオンライン検出を実施した。LC−MS法は、TOF 6441質量分析計(Agilent)へとカップリングさせた、Agilent HPLC 1200上で実施した。クロマトグラフィーによる分離は、Macherey Nagel Polystereneカラム;RP1000−8(粒子サイズを8μmとする、4.6×250mm;カタログ番号719510)上で実施した。溶離液Aは、水中に5%のアセトニトリル、および0.05%(v/v)のギ酸であり、溶離液Bは、95%のアセトニトリル、5%の水、および0.05%のギ酸であった。流量は、1ml/分であり、分離は、40℃で実施し、前に記載した処理により、6μg(15μl)のタンパク質試料を得た。
【表33】
【0262】
最初の4分間の間、質量分析計を塩汚染から保護するように、溶出液を、廃棄物へと方向づけた。ESI源は、乾燥ガス流量を12l/分とし、温度を350℃とし、噴霧器圧力を60psiとして動作させた。MSスペクトルは、陽イオンモードにおいて、380Vのフラグメンター電圧および700〜3200m/zの質量範囲を使用して取得した。MSデータは、計器ソフトウェアにより、4〜17分間にわたり取得した。
【0263】
図10は、83A10−TCB抗体および83A10−TCBcv抗体のための、異なる精製法の後における、CE−SDS(非還元)による、最終タンパク質調製物についてのグラフを描示する。83A10−TCB抗体へと適用された、プロテインA(PA)アフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ除外クロマトグラフィー(SEC)による精製ステップが結果としてもたらす単量体含量(A)の純度は、30%未満および82.8%であった。カチオン交換クロマトグラフィー(cIEX)ステップおよび最終的なサイズ除外クロマトグラフィー(re−SEC)ステップを含むさらなる精製ステップを、(A)における最終タンパク質調製物へと適用したところ、純度は、93.4%へと増大したが、単量体含量は同じにとどまり、収率は、0.42mg/Lへと有意に低減された。しかし、特異的電荷修飾を、83A10抗BCMA Fab CL−CH1へと適用したところ、つまり、83A10−TCBcv抗体では、PA+cIEX+SEC精製ステップを適用した場合であってもなお、95.3%の純度、100%の単量体含量、および最大3.3mg/Lの収率により実証される通り、さらなるre−SEC精製ステップを含むにも拘らず、作製/精製プロファイルが、7.9分の1の収率および17.2%低量の単量体含量を示す(B)と比較して、TCB分子の優れた作製/精製プロファイルを既に観察することができた(C)。
【0264】
次いで、83A10−TCBの作製/精製プロファイルを、83A10−TCBcv抗体と対比して比較する、一対一の作製試行を行って、抗体へと適用されるCL−CH1電荷修飾の利点をさらに査定した。83A10−TCB分子および83A10−TCBcv分子のいずれも、
図2aに記載されている分子フォーマットの分子である。
図11に描示される通り、83A10−TCB抗体および83A10−TCBcv抗体の特性を、並行して測定し、各精製ステップ:1)PAアフィニティークロマトグラフィーだけ(A、B)、2)PAアフィニティークロマトグラフィー、次いで、SEC(C、D)、ならびに3)PAアフィニティークロマトグラフィー、次いで、SEC、次いで、cIEXおよびre−SEC(E、F)の後で比較した。83A10−TCB抗体および83A10−TCBcv抗体のための、それぞれの精製法の後における、CE−SDS(非還元)による、最終タンパク質溶液についてのグラフを、
図11に顕示する。
図11Aおよび11Bにおいて示される通り、電荷変異体をTCB抗体へと適用することによる改善は、PAアフィニティークロマトグラフィーだけによる精製の後で既に観察された。この一対一研究では、83A10−TCB抗体へと適用した、PAアフィニティークロマトグラフィーによる精製ステップは、61.3%の純度、26.2mg/Lの収率、および63.7%の単量体含量を結果としてもたらした(11A)。比較として、83A10−TCBcv抗体を、PAアフィニティークロマトグラフィーで精製したところ、より良好な81.0%の純度、より良好な51.5mg/Lの収率、および68.2%の単量体含量により、全ての特性が改善された(11B)。さらなるSEC精製ステップを、
図12Aおよび12Bで見られるように最終タンパク質調製物へと適用したところ、純度および単量体含量が、それぞれ、最大91.0%および83.9%と改善されたが、収率は10.3mg/Lであった83A10−TCBcv(D)と比較して、83A10−TCBは、69.5%の純度、14.1mg/Lの収率、および74.7%の単量体含量(C)と向上した。この特定の実験では、収率こそ、83A10−TCBcvが、83A10−TCBよりわずかに少なかった(すなわち、27%少なかった)ものの、適正な分子の百分率では、83A10−TCBcvが、83A10−TCBよりはるかに良好であり、LC−MSにより測定される通り、それぞれ、40〜60%と対比した90%であった。第3の一対一比較では、
図11Cおよび11Dからの、83A10−TCBおよび83A10−TCBcvの最終タンパク質調製物を、PAアフィニティークロマトグラフィーによる精製ステップだけの後における、別の精製バッチ(同じ作製)からの最終タンパク質調製物、それぞれ約1L(等容量)と共にプールした。次いで、プールされたタンパク質調製物を、cIEXおよびSECによる精製法により、さらに精製した。
図11Eおよび11Fに描示される通り、電荷変異体を伴わないTCB抗体と比較した場合の、電荷変異体を伴うTCB抗体の作製/精製プロファイルの改善が一貫して観察された。いくつかのステップによる精製法(すなわち、PA±SEC+cIEX+SEC)を使用して、83A10−TCB抗体を精製した後において、達せられた純度は、43.1%に過ぎず、98.3%の単量体含量は達成されたが、収率は損なわれ、0.43mg/Lへと低減された。LC−MSにより測定される適正な分子の百分率は、やはり低値であり、60〜70%であった。最後に、最終タンパク質調製物の品質は、in vitroにおける使用に許容可能なものではなかった。これとは全く対照的に、同じ複数の精製ステップを、同順で83A10−TCBcv抗体へと適用したところ、96.2%の純度および98.9%の単量体含量が達せられたほか、LC−MSにより測定される適正な分子も95%であった。しかし、ここでもまた、収率は、cIEX精製ステップの後で、0.64mg/Lへと大幅に低減された。結果は、83A10−TCBcv抗体に関して、より良好な純度、より高い単量体含量、より高い百分率の適正な分子、およびより良好な収率は、2つの標準的な精製ステップ、すなわち、PAアフィニティークロマトグラフィーおよびSECの後で初めて達成されうるが(
図11D)、83A10−TCBでは、さらなる精製ステップを適用してもなお、このような特性を達成することができなかった(
図11E)ことを示す。
【0265】
表12は、PA精製ステップの後における、83A10−TCBの、83A10−TCVcvと比較した特性についてまとめる。表13は、PA精製ステップおよびSEC精製ステップの後における、83A10−TCBの、83A10−TCVcvと比較した特性についてまとめる。表14は、PAおよびSECに加え、PA単独、次いで、cIEXおよびre−SECの精製ステップの後における、83A10−TCBの、83A10−TCVcvと比較した特性についてまとめる。表12〜14では、太字の値は、83A10−TCBと、83A10−TCVcvとの間で比較した場合の優れた特性を強調する。代表的ではい可能性がある1つ(すなわち、収率および量のそれぞれ;表13を参照されたい)を例外として、3つの一対一比較実験から得られる全ての作製/精製パラメータおよび値は、83A10−TCBと比較して、83A10−TCBcvが優れていた。全体的な結果により、作製/精製特徴における利点は、CL−CH1電荷修飾を、TCB抗体へと適用することにより達成できたこと、および開発可能特性が非常に良好な、既に高品質のタンパク質調製物を達成するのに要請される精製ステップは、2つ(すなわち、PAアフィニティークロマトグラフィーおよびSEC)だけであったことが明らかに実証される。
【0266】
【表12】
【0267】
【表13】
【0268】
【表14】
【0269】
(実施例9)
製剤緩衝液中の、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の安定性(凝集/断片化)
抗BCMA/抗CD3 TCBcv抗体を、凝集/断片化に関するそれらの安定性について評価し、BCMA×CD3(scFV)
2二特異性抗体フォーマットと比較するために、試料を、標準的な製剤緩衝液(例えば、20mMのクエン酸塩、180mMのスクロース、20mMのアルギニン、0.02%のポリソルベート20、または例えば、20mMのヒスチジン、140mMのNaCl、0.01%のTween20、pH6.0)中、タンパク質濃度約1mg/mLで、37〜40℃で10日間、好ましくは、2〜4週間インキュベートする。それぞれの対照試料は、−80℃で2〜4週間保存する。
【0270】
凝集物および低分子量(LMW)分子種を定量化するために、HPLCにより、サイズ除外クロマトグラフィーを実施する。25μgの量のタンパク質を、Agilent 1200 HPLCシステム(Agilent)上、5mMのK2HPO4、125mMのNaCl、200mMのL−アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)のNaN3、pH6.7中で、Tosoh TSKgel G3000SWXLカラムへと適用する。溶出したタンパク質は、280nmのUV吸光度により定量化する。
【0271】
(実施例10)
それらの表面上で、ヒトBCMA、カニクイザルBCMA、またはマウスBCMAを発現する組換え細胞への抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の結合(フローサイトメトリー)
a)抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の結合は、マウスBCMA(muBCMA−HEK)、またはカニクイザルBCMA(cyBCMA−HEK)を一過性に発現するHEK細胞上で、フローサイトメトリーにより実証した。略述すると、BCMAを発現するHEK細胞を採取し、カウントし、ViCellを使用して、細胞生存率を査定した。次いで、生細胞を、BSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)中、1ml当たりの細胞2×10
6個へと調整した。この細胞懸濁液100μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、さらにアリコート分割し、30μlの抗BCMA/抗CD3 TCB抗体または対応するTCB対照抗体と共に、4℃で30分間インキュベートした。全ての抗BCMA/抗CD3 TCB抗体およびTCB対照抗体を滴定し、2〜300nMの間の最終濃度範囲で解析した。次いで、細胞を遠心分離し(350×gで5分間)、120μl/ウェルのFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)で洗浄し、再懸濁させ、蛍光色素コンジュゲートPEコンジュゲートAffiniPure F(ab’)2 Fragment goat anti−human IgG Fc Fragment Specific(Jackson Immuno Research Lab;109−116−170)と共に、4℃で、さらに30分間インキュベートした。次いで、細胞を、Stain緩衝液(BD Biosciences)で2回洗浄し、ウェル1つ当たり100μlのBD Fixation緩衝液(BD Biosciences、型番554655)を使用して、4℃で20分間固定し、120μlのFACS緩衝液中に再懸濁させ、BD FACS CantoIIを使用して解析した。
図12に描示されるように、蛍光強度中央値の増大により測定される通り、83A10−TCBは、マウスBCMA(A)およびカニクイザルBCMA(B)を一過性に発現するHEK細胞に、特異的、かつ、濃度依存的に結合する。陰性対照のTCB抗体として、DP47−TCBは、muBCMA−HEK細胞およびcyBCMA−HEK細胞に結合しなかった。2つの分子の間では、VL CDRおよびVH CDRが同一であるので、83A10−TCBcvにも、83A10−TCBに関して観察されるのと同じ結合特性が予測される(実施例19を参照されたい)。
【0272】
b)抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の結合はまた、マウスBCMA、カニクイザルBCMAまたはBCMAを安定的に発現するCHO細胞上でも、フローサイトメトリーにより実施する。略述すると、BCMAを発現するHEK細胞を、採取し、カウントし、ViCellを使用して、細胞生存率を査定する。次いで、生細胞を、BSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)中、1ml当たりの細胞2×10
6個へと調整する。この細胞懸濁液100μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、さらにアリコート分割し、30μlの抗BCMA/抗CD3 TCB抗体または対応するTCB対照抗体と共に、4℃で30分間インキュベートする。全ての抗BCMA/抗CD3 TCB抗体およびTCB対照抗体を滴定し、2〜300nMの間の最終濃度範囲で解析する。次いで、細胞を遠心分離し(350×gで5分間)、120μl/ウェルのFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)で洗浄し、再懸濁させ、蛍光色素コンジュゲートPEコンジュゲートAffiniPure F(ab’)2 Fragment goat anti−human IgG Fc Fragment Specific(Jackson Immuno Research Lab;109−116−170)と共に、4℃で、さらに30分間インキュベートする。次いで、細胞を、Stain緩衝液(BD Biosciences)で2回洗浄し、ウェル1つ当たり100μlのBD Fixation緩衝液(BD Biosciences、型番554655)を使用して、4℃で20分間固定し、120μlのFACS緩衝液中に再懸濁させ、BD FACS CantoIIを使用して解析する。
【0273】
c)フローサイトメトリーにより測定された、それらの表面上で、ヒトBCMAまたはカニクイザルBCMAを安定的に発現する組換え細胞への、抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の結合。抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の結合は、ヒトBCMA(huBCMA−HEK293T)、またはカニクイザルBCMA(cynoBCMA−HEK293T)を安定的に発現するHEK293T細胞系上で、フローサイトメトリーにより実証した。ヒトBCMAおよびカニクイザルBCMAの、細胞表面における発現レベルは、細胞内FLAG発現により確認される通り、同様であった。略述すると、BCMAを発現するHEK293T細胞を採取し、カウントし、ViCellを使用して、細胞生存率を査定した。次いで、生細胞を、BSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)中、1ml当たりの細胞2×10
6個へと調整した。この細胞懸濁液100μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、さらにアリコート分割し、30μlの抗BCMA/抗CD3 TCB抗体または対応するTCB対照抗体と共に、4℃で30分間インキュベートした。全ての抗BCMA/抗CD3 TCB抗体およびTCB対照抗体を滴定し、2〜300nMの間の最終濃度範囲で解析した。次いで、細胞を遠心分離し(350×gで5分間)、120μl/ウェルのFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)で洗浄し、再懸濁させ、蛍光色素コンジュゲートPEコンジュゲートAffiniPure F(ab’)2 Fragment goat anti−human IgG Fc Fragment Specific(Jackson Immuno Research Lab;109−116−170)と共に、4℃で、さらに30分間インキュベートした。次いで、細胞を、Stain緩衝液(BD Biosciences)で2回洗浄し、ウェル1つ当たり100μlのBD Fixation緩衝液(BD Biosciences、型番554655)を使用して、4℃で20分間固定し、120μlのFACS緩衝液中に再懸濁させ、BD FACS CantoIIを使用して解析した。83A10−TCBcvの、huBCMA−HEK293T細胞およびcynoBCMA−HEK293T細胞への結合についてのEC50値を測定した(表14A)。
【0274】
【表14A】
【0275】
(実施例11)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の、BCMA陽性多発性骨髄腫細胞系への結合(フローサイトメトリー)
抗BCMA/抗CD3 TCB抗体(13A4−TCBcv、17A5−TCBcv、83A10−TCBcv)を、フローサイトメトリーにより、BCMAを発現するH929細胞およびL363細胞上における、ヒトBCMAへの結合について解析した。MKN45(BCMAを発現させない、ヒト胃腺癌細胞系)を、陰性対照として使用した。略述すると、培養された細胞を、採取し、カウントし、ViCellを使用して、細胞生存率を査定する。次いで、生細胞を、BSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)中、1ml当たりの細胞2×10
6個へと調整する。この細胞懸濁液100μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、さらにアリコート分割し、30μlの抗BCMA抗体または対応するIgG対照と共に、4℃で30分間インキュベートした。全ての抗BCMA/抗CD3 TCB抗体(およびTCB対照)を滴定し、1〜300nMの間の最終濃度範囲で解析した。次いで、細胞を遠心分離し(350×gで5分間)、120μl/ウェルのFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)で洗浄し、再懸濁させ、蛍光色素コンジュゲートPEコンジュゲートAffiniPure F(ab’)2 Fragment goat anti−human IgG Fc Fragment Specific(Jackson Immuno Research Lab;109−116−170)と共に、4℃で、さらに30分間インキュベートした。次いで、細胞を、Stain緩衝液(BD Biosciences)で2回洗浄し、ウェル1つ当たり100ulのBD Fixation緩衝液(BD Biosciences、型番554655)を使用して、4℃で20分間固定し、120μlのFACS緩衝液中に再懸濁させ、BD FACS CantoIIを使用して解析した。
図13に描示される通り、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体についての平均蛍光強度を、抗体濃度の関数としてプロットした;(A)H929細胞およびMKN45細胞上の83A10−TCBcv、(B)H929細胞およびMKN45細胞上の17A5−TCBcv、(C)H929細胞およびMKN45細胞上の13A4−TCBcvの結合。該当する場合、Prism GraphPad(LaJolla、CA、USA)を使用して、EC50を計算し、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の、H929細胞への結合について最大結合の50%を達成するのに要請される抗体の濃度を示すEC50値を、表15にまとめる。表15Aは、83A10−TCBcvの、L363 MM細胞への結合についてのEC50値を示す。
【0276】
【表15】
【0277】
【表15A】
【0278】
(実施例12)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の、CD3陽性Jurkat T細胞系への結合(フローサイトメトリー)
抗BCMA/抗CD3 TCB抗体(13A4−TCBcv、17A5−TCBcv、83A10−TCBcv)はまた、フローサイトメトリーにより、ヒト白血病性T細胞Jurkat(ATCC TIB−152)上で発現する、ヒトCD3へのそれらの結合特性についても解析した。Jurkat T細胞を、10%の熱不活化FCSを補充したRPMI中で培養した。略述すると、培養された細胞を採取し、カウントし、ViCellを使用して、細胞生存率を査定した。次いで、生細胞を、0.1%のBSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)中、1ml当たりの細胞2×10
6個へと調整した。この細胞懸濁液100μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、さらにアリコート分割した。細胞を含有するウェルへと、30μlの抗BCMA/抗CD3 TCB抗体または対応するIgG対照を添加して、3nM〜500nMまたは0.1pM〜200nMの最終濃度を得た。抗BCMA/抗CD3 TCB抗体と、対照IgGとは、同じモル濃度で使用した。4℃で30分間のインキュベーションの後、細胞を遠心分離し(350×gで5分間)、150μl/ウェルの、BSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)で2回洗浄し、次いで、ウェル1つ当たり100ulのBD Fixation緩衝液(BD Biosciences、型番554655)を使用して、4℃で20分間細胞を固定し、120μlのFACS緩衝液中に再懸濁させ、BD FACS CantoIIを使用して解析した。抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の、T細胞への結合を査定し、蛍光強度中央値を、CD3を発現するJurkat T細胞にゲーティングして決定し、ヒストグラムまたはドットプロットにプロットした。
図14は、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体(83A10−TCBcv(A);17A5−TCBcv(B))の、Jurkat T細胞への結合についての蛍光強度中央値であり、抗体の濃度の関数としてプロットされた蛍光強度中央値を示す。EC50値、および抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の、CD3陽性Jurkat T細胞への最大の結合には達しなかった。アイソタイプ対照抗体は、Jurkat T細胞に結合せず、BCMA/抗CD3 TCB抗体((A)83A10−TCBcv;(B)17A5−TCBcv)は、BCMA陰性MKN45細胞およびCD3陰性MKN45細胞に結合しなかった。
【0279】
(実施例13)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体は、細胞内リン酸化NF−κBにより検出される、APRIL依存性のNF−κBの活性化を遮断しない(フローサイトメトリー)
抗BCMA/抗CD3 TCB抗体が、APRIL依存性のNF−κBの活性化を遮断するのか、さらに誘導するのかについて調べるために、細胞内リン酸化NF−κBの検出を、Lafargeら、BMC Molecular Biol、2007年、8巻:64頁において記載されている通り、フローサイトメトリーにより測定した。ホスホフローサイトメトリー法とは、十分に好感度でなく、面倒なステップを含有する場合がある、ELISAベースの発光アッセイによるNF−κBの活性化の検出に対する代替法である(PerezおよびNolan、Nat Biotechnol、2002年、20巻(2号):155〜62頁)。抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の、BCMA陽性H929骨髄腫細胞への結合が、BCMA受容体の下流における、公知の核因子によるシグナル伝達経路である、APRIL依存性のNF−κBの活性化を遮断するのか、さらに誘導するのかを評価した。略述すると、H929細胞を、細胞インキュベーター内の、FCSを伴わないRPMI1640中、37℃で24時間飢餓させた。飢餓時間の終了時に、細胞を採取し、カウントし、ViCellを使用して、細胞生存率を査定した。生細胞は、BSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)中、1ml当たりの細胞1×10
6個へと調整した。この細胞懸濁液100μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、さらにアリコート分割し、飽和濃度400nM(77μg/ml)の抗BCMA/抗CD3 TCB抗体またはアイソタイプ対照抗体25μlと共に、37℃で20分間インキュベートするのに続いて、100ng/mLもしくは1μg/mLの組換えマウスΔ−APRIL(R&D Systems Europe)を伴う、37℃でさらに15分間直接的インキュベーションにかけた。陰性対照としては、細胞を、非処置のまま放置するか、または対応するIgGアイソタイプ対照抗体400nM(77μg/ml)と共に、37℃で、合計45分間インキュベートした。陽性対照としては、細胞を、100ng/mLまたは1μg/mlの組換えマウスΔ−APRIL単独(R&D Systems Europe)と共に、37℃で15分間インキュベートした。刺激の終了時に、細胞を遠心分離し(360×gで4分間)、細胞ペレットを、あらかじめ加温したCytofix緩衝液(BD Biosciences、型番554655)中で速やかに固定し、37℃で10分間インキュベートした。次いで、細胞を遠心分離し、上清を除去し、ボルテックスにより細胞ペレットを破壊した。次いで、細胞を、氷上の氷冷Phosflow Perm Buffer III(BD Biosciences、型番558050)中で30分間透過処理した。次いで、細胞を遠心分離し、上清を除去し、ボルテックスにより細胞ペレットを破壊した。細胞を、100μLのPhosflow Perm Buffer III中に再懸濁させ、透過処理された細胞を、光から保護して、抗NF−κB p65(pS529)抗体(BD Biosciences、型番558423)、またはアイソタイプ対照抗体(Mouse IgG2b κ、BD Biosciences型番555058)により、室温で60分間染色した。染色期間の後、細胞を、PBS+0.1%のBSAで洗浄してから、フローサイトメトリー解析にかけた。上で記載した通りに処置されたH929細胞から得られる、相対蛍光強度中央値を測定した。アイソタイプ対照の存在下において、Δ−APRILの結合時に得られる蛍光強度中央値(MFI)シグナルを1とし、他のシグナルは、これに対して標準化した。
図15に描示される通り、APRILと競合するBCMA結合性アーム(J6M0−TCB)と比較して、APRILと競合しないBCMA結合性アーム(83A10−TCBcv)を伴う抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の、H929細胞内の、1000ng/mLのAPRILに媒介されるNF−κBの活性化に対する効果について調べた(A)。1000ng/mLのAPRILの存在下におけるH929細胞と比較して、非APRIL競合83A10−TCBcvは、APRILにより誘導されるNF−κBの活性化シグナルを29.9%低減した(A)。実験によるばらつきが約20%存在しうることを考慮すると、83A10−TCBcvが示す、APRILに媒介されるNF−κBのリン酸化の低減は、最小限であった。これに対し、APRILと競合するBCMA結合性アームJ6M0−TCBを、1000ng/mLのAPRILの存在下におけるH929細胞と比較したところ、ホスホフローサイトメトリーにより測定されるNF−κBの活性化シグナルの、少なくとも79.3%の減少が見られた。J6M0抗BCMA抗体(WO2012163805)は、APRILにより誘導されるNF−κBの活性化を遮断することが報告されている。J6M0−TCBは、83A10−TCBcvと正確に同じTCBフォーマットを使用して作出した。
【0280】
実験の第2のセットでは、ホスホフローサイトメトリー技法を使用して、APRILと競合しない83A10−TCBcv、およびAPRILと競合するJ6M0−TCBの効果を、飽和濃度のAPRIL、すなわち、H929細胞内のNF−κBの活性化のためのより強力なシグナルを誘導する5000ng/mLのAPRILの存在下において検証し、第1の観察を確認した。5000ng/mLのAPRILの存在下におけるH929細胞と比較して、非APRIL競合83A10−TCBcvについては、NF−κBの活性化の、30%の増大が観察された(
図15B)。しかし、アッセイによるばらつきが依然として20〜30%であることを考慮すると、83A10−TCBcvについては、活性化シグナルの増大も低減も結論付けることができない。他方、APRILと競合するJ6M0−TCBを、5000ng/mLのAPRILの存在下におけるH929細胞と比較したところ、ホスホフローサイトメトリーにより測定されるNF−κBの活性化シグナルの、69%の減少が見られた。アッセイによるばらつきを考慮しても、これは、活性化シグナルの低減である。
【0281】
全体的な結果は、BCMAおよびBCMA陽性細胞への結合についての、APRIL競合研究のデータセットを補強し(
図5〜8)、83A10抗BCMA IgG抗体および83A10−TCBcvによる、APRILとの競合が最小限であり、APRILの、細胞上のBCMAへの結合を遮断しないか、またはこれを遮断しても最小限であるほか、APRILの、細胞上のBCMAへの結合時の、下流における、NF−κBによるシグナル伝達/シグナル変換への影響も最小限に限られることを確認する。この結果はまた、J6M0が、BCMAへの結合についてAPRILと競合し、APRILの下流におけるシグナル伝達を遮断する抗BCMA抗体であることも確認する。
【0282】
(実施例14)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体は、外因性APRILの非存在下において、リン酸化NF−κBにより測定されるNF−κBの活性化を直接誘導しない(フローサイトメトリー)
抗BCMA抗体/抗CD3 TCBの、BCMA陽性H929骨髄腫細胞への結合が、BCMA受容体の下流における、公知の核因子によるシグナル伝達経路である、NF−κBの活性化を誘導するのかどうかを評価した。略述すると、H929細胞を、細胞インキュベーター内の、FCSを伴わないRPMI1640中、37℃で24時間飢餓させた。飢餓時間の終了時に、細胞を採取し、カウントし、ViCellを使用して、細胞生存率を査定した。生細胞は、BSAを含有するFACS Stain緩衝液(BD Biosciences)中、1ml当たりの細胞1×10
6個へと調整した。この細胞懸濁液100μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、さらにアリコート分割し、飽和濃度400nM(77μg/ml)の抗BCMA/抗CD3 TCB抗体またはアイソタイプ対照抗体25μlと共に、37℃で20分間インキュベートするのに続いて、100ng/mLもしくは1μg/mL、または飽和濃度3μg/mL〜最大5μg/mLの組換えマウスΔ−APRIL(R&D Systems Europe)を伴う、37℃でさらに15分間直接的インキュベーションにかけた。陰性対照としては、細胞を、非処置のまま放置するか、または対応するIgGアイソタイプ対照抗体400nM(77μg/ml)と共に、37℃で、合計45分間インキュベートした。陽性対照としては、細胞を、100ng/mLまたは1μg/mlの組換えマウスΔ−APRIL単独(R&D Systems Europe)と共に、37℃で15分間インキュベートしたところ、陽性シグナルが検出可能なことが示され、シグナルの欠如/最小限のシグナルが、技術的誤差に起因するものではないことを示した。刺激の終了時に、細胞を遠心分離し(360×gで4分間)、細胞ペレットを、あらかじめ加温したCytofix緩衝液(BD Biosciences、型番554655)中で速やかに固定し、37℃で10分間インキュベートした。次いで、細胞を遠心分離し、上清を除去し、ボルテックスにより細胞ペレットを破壊した。次いで、細胞を、氷上の氷冷Phosflow Perm Buffer III(BD Biosciences、型番558050)中で30分間透過処理した。次いで、細胞を遠心分離し、上清を除去し、ボルテックスにより細胞ペレットを破壊した。細胞を、100μLのPhosflow Perm Buffer III中に再懸濁させ、透過処理された細胞を、光から保護して、抗NF−κB p65(pS529)抗体(BD Biosciences、型番558423)、またはアイソタイプ対照抗体(マウスIgG2b κ、BD Biosciences型番555058)により、室温で60分間染色した。染色期間の後、細胞を、PBS+0.1%のBSAで洗浄してから、フローサイトメトリー解析にかけた。上で記載した通りに処置されたH929細胞から得られる、相対蛍光強度中央値を測定した。アイソタイプ対照の存在下において、Δ−APRILの結合時に得られる蛍光強度中央値シグナルを1とし、他のシグナルは、これに対して標準化した。外因性APRILの非存在下における、H929細胞への結合時のNF−κBシグナル伝達に対する、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体(83A10−TCBcv)の効果を、
図16に示す。
図16Aは、抗BCMA/抗CD3 83A10−TCBcvの、H929細胞への結合は、APRILの非存在下において、NF−κBの活性化の増大を引き起こさず、わずかに18.1%の基礎シグナルの減少が観察されたが、これは、H929細胞単独と比較して、かつ、ホスホフローサイトメトリーによる細胞内NF−κB p65(pS529)の検出により測定される通り、実験によるばらつきの範囲内であることを示す。この観察は、抗BCMA/抗CD3 83A10−TCBcvが、BCMA陽性H929細胞への結合により、NF−κBの活性化を阻害も誘導もしないことを示す第2の実験において確認された(
図16B)。過去の刊行物において前に報告されている通り、H929骨髄腫細胞は、多発性骨髄腫細胞系の、公知の病理学的特徴である、NF−κB経路における基礎レベルの活性化を示した(Demchenkoら、Blood、2010年、115巻(17号):3541〜3552頁)。とりわけ、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の、BCMA腫瘍標的に対する結合アフィニティーが、T細胞上のCD3に対する結合アフィニティーと対比して大きいことに起因して、NF−FB経路をさらに活性化させないことが好ましく、かつ、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体が、いまだT細胞に結合しないうちに、BCMA陽性骨髄腫細胞に一時的に結合すれば、骨髄腫細胞の生存が延長されることを踏まえると、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の、BCMA陽性細胞への結合時における、NF−FB経路の活性化の欠如は有利でありうる。
【0283】
(実施例15)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の、CD3陽性T細胞、およびBCMA陽性多発性骨髄腫細胞系への結合時における、ヒトT細胞の活性化(フローサイトメトリー)
ヒトBCMAを発現するMM細胞の存在下または非存在下における、CD4
+およびCD8
+T細胞上の、早期活性化マーカーCD69、または後期活性化マーカーCD25の表面発現を査定することにより、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体を、フローサイトメトリーにより、T細胞の活性化を誘導するそれらの能力について解析した。略述すると、BCMA陽性H929細胞を、Cell Dissociation緩衝液により採取し、カウントし、生存率について点検した。細胞を、改変RPMI−1640培地中、1ml当たりの(生)細胞0.3×10
6個へと調整し、この細胞懸濁液100μlを、丸底96ウェルプレートへと、ウェルごとに、ピペッティングした(指し示される通りに)。50μlの(希釈された)抗BCMA/抗CD3 TCB抗体を、細胞を含有するウェルへと添加して、0.3pM〜30nMの最終濃度を得た。ヒトPBMCエフェクター細胞を、健常ドナーの採取したての血液から単離し、改変RPMI−1640培地中、1ml当たりの(生)細胞6×10
6個へと調整した。この細胞懸濁液50μlを、アッセイプレートのウェルごとに添加して、PBMCと骨髄腫腫瘍細胞との最終E:T比、10:1を得た。抗BCMA/抗CD3 TCB抗体が、ヒトBCMAを発現する標的細胞の存在下で、T細胞を特異的に活性化させることが可能であるのかどうかについて解析するために、それぞれの抗BCMA/抗CD3 TCB分子3nMを含有するウェルのほか、PBMCを含有するが、標的細胞は含有しないウェルも含めた。5%のCO
2、37℃で、15〜28時間(CD69)または24〜48時間(CD25)インキュベーションの後で、細胞を遠心分離し(350×gで5分間)、0.1%のBSAを含有する、150μl/ウェルのPBSで、2回洗浄した。CD4(マウスIgG1 K;クローンRPA−T4)、CD8(マウスIgG1 K;クローンHIT8a;BD型番555635)、CD69(マウスIgG1;クローンL78;BD型番340560)、およびCD25(マウスIgG1 K;クローンM−A251;BD型番555434)についての表面染色は、供給元の示唆に従い、4℃で30分間実施した。0.1%のBSAを含有する、150μl/ウェルのPBSで、細胞を2回洗浄し、100μl/ウェルの固定緩衝液(BD型番554655)を使用して、4℃で15分間固定した。遠心分離の後、試料を、0.1%のBSAを伴う、200μl/ウェルのPBS中に再懸濁させ、FACS CantoII装置(Software FACS Diva)を使用して解析した。
図17は、48時間のインキュベーションの後における、CD4
+およびCD8
+T細胞上の早期活性化マーカーCD69(C、D)、および後期活性化マーカーCD25(A、B)の発現レベル(2つの独立の実験からの代表的な結果)を描示する。83A10−TCBcv抗体は、BCMA陽性標的細胞の存在下で、CD69活性化マーカーおよびCD25活性化マーカーの上方調節を、濃度依存的かつ特異的に誘導した。ヒトPBMCを、DP47−TCB対照抗体で処置しても、CD4
+およびCD8+T細胞の活性化は観察されなかったことから、T細胞上のCD3への結合にも拘らず、TCB抗体が、BCMA陽性標的細胞に結合しない場合、T細胞の活性化は生じないことが示唆される(データは示さない)。
【0284】
(実施例16)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の、CD3陽性T細胞、およびBCMA陽性多発性骨髄腫細胞系への結合時における、活性化T細胞からのサイトカインの産生(サイトカイン放出アッセイにおけるCBA解析)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体を、ヒトBCMAを発現するMM細胞の存在下または非存在下において、T細胞に媒介されるサイトカインの産生を、デノボで誘導するそれらの能力について解析する。略述すると、ヒトPBMCを、軟膜から単離し、ウェル1つ当たり30万個の細胞を、丸底96ウェルプレートへとプレーティングする。代替的に、健常ドナーに由来する280μlの全血液を、ディープウェル96ウェルプレートのウェルごとにプレーティングする。腫瘍標的細胞(例えば、H929骨髄腫細胞、RPMI−8226骨髄腫細胞、U266骨髄腫細胞、またはL363骨髄腫細胞)を添加して、10:1の最終E:T比を得る。抗BCMA/抗CD3 TCB抗体および対照を、0.3pM〜30nMの最終濃度で添加する。5%のCO
2、37℃で最長24時間のインキュベーションの後、アッセイプレートを、350×gで5分間遠心分離し、その後における解析のために、上清を、新しいディープウェル96ウェルプレートへと移す。CBA解析は、製造元の指示書に従い、FACS CantoII上で、Human Th1/Th2 Cytokine Kit II(BD型番551809)、または以下のCBA Flex Set:ヒトグランザイムB(BD型番560304)、ヒトIFN−γ Flex Set(BD型番558269)、ヒトTNF Flex Set(BD型番558273)、ヒトIL−10 Flex Set(BD型番558274)、ヒトIL−6 Flex Set(BD型番558276)、ヒトIL−4 Flex Set(BD型番558272)、ヒトIL−2 Flex Set(BD型番558270)の組合せを使用して実施する。表15Cおよび15Dは、H929細胞およびRPMI−8226細胞を、それぞれ、腫瘍標的細胞として使用する場合の、抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の濃度当たりに分泌される、サイトカイン/プロテアーゼのEC50値および量を示す。
【0285】
【表15C】
【0286】
【表15D】
【0287】
(実施例17)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体により誘導される、リダイレクトされたT細胞による、カニクイザルBCMAトランスフェクト細胞に対する細胞傷害作用(LDH放出アッセイ)
a)抗BCMA/抗CD3 TCB抗体を、抗原結合性部分の、細胞上のBCMAへの結合を介する、TCB構築物の架橋時に、カニクイザルBCMAを発現するCHO細胞内でT細胞媒介型アポトーシスを誘導するそれらの能力について解析する。略述すると、カニクイザルBCMAを発現するCHO標的細胞を、Cell Dissociation Bufferにより採取し、洗浄し、10%のウシ胎仔血清(Invitrogen)を補充したRPMI中に再懸濁させる。ウェル1つ当たりの細胞約30,000個を、丸底96ウェルプレート内にプレーティングし、構築物のそれぞれの希釈液を、所望の最終濃度、0.1pM〜10nMの範囲の最終濃度となるように添加する(三連で)。適切な比較のために、全てのTCB構築物および対照を、同じモル濃度へと調整する。カニクイザルPBMCを、エフェクター細胞として使用し、10:1の最終E:T比を使用する。陰性対照群は、エフェクター細胞だけ、または標的細胞だけで表す。カニクイザルT細胞を活性化させるための陽性対照として、1μg/mlのPHA−M(Sigma型番L8902)を使用する。標準化のために、カニクイザルBCMAを発現するCHO標的細胞の最大溶解(=100%)を、最終濃度1%のTriton X−100を伴い、細胞死を誘導する、標的細胞のインキュベーションにより決定する。最小の溶解(=0%)は、エフェクター細胞だけを伴い、すなわち、T細胞二特異性抗体を伴わずに共インキュベートされた標的細胞により表した。次いで、5%のCO
2、37℃で20〜24時間のインキュベーションの後、製造元の指示書に従い、LDH検出キット(Roche Applied Science)により、アポトーシス性/壊死性カニクイザルBCMAを発現するCHO標的細胞から上清へのLDHの放出を測定した。LDH放出の百分率を、濃度応答曲線において、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の濃度に対してプロットする。EC50値は、Prismソフトウェア(GraphPad)を使用して測定し、最大LDH放出の50%を結果としてもたらすTCB抗体の濃度として決定する。
【0288】
b)抗BCMA/抗CD3 TCB抗体を、抗原結合性部分の、細胞上のBCMAへの結合を介する、TCB構築物の架橋時に、カニクイザルBCMAを発現するHEK293T細胞内でT細胞媒介型アポトーシスを誘導するそれらの能力について解析する。略述すると、カニクイザルBCMAを発現するHEK293T標的細胞を、Cell Dissociation Bufferにより採取し、洗浄し、10%のウシ胎仔血清(Invitrogen)を補充したRPMI 1640培地中に再懸濁させる。ウェル1つ当たりの細胞約30,000個を、丸底96ウェルプレート内にプレーティングし、構築物のそれぞれの希釈液を、所望の最終濃度、0.1pM〜10nMの範囲の最終濃度となるように添加する(三連で)。適切な比較のために、全てのTCB構築物および対照を、同じモル濃度へと調整する。カニクイザルPBMCを、エフェクター細胞として使用し、10:1の最終E:T比を使用する。陰性対照群は、エフェクター細胞だけ、または標的細胞だけで表す。標準化のために、カニクイザルBCMAを発現するHEK標的細胞の最大溶解(=100%)を、最終濃度1%のTriton X−100を伴い、細胞死を誘導する、標的細胞のインキュベーションにより決定する。最小の溶解(=0%)は、エフェクター細胞だけを伴い、すなわち、T細胞二特異性抗体を伴わずに共インキュベートされた標的細胞により表した。次いで、5%のCO
2、37℃で20〜24時間のインキュベーションの後、製造元の指示書に従い、LDH検出キット(Roche Applied Science)により、アポトーシス性/壊死性カニクイザルBCMAを発現するHEK標的細胞から上清へのLDHの放出を測定した。LDH放出の百分率を、濃度応答曲線において、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の濃度に対してプロットする。EC50値は、Prismソフトウェア(GraphPad)を使用して測定し、最大LDH放出の50%を結果としてもたらすTCB抗体の濃度として決定する。表15Eは、83A10−TCBcvによる、標的細胞であるcynoBCMA−HEK細胞の溶解についてのEC50値を示す。
【0289】
【表15E】
【0290】
(実施例18)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体により誘導される、リダイレクトされたT細胞による、BCMAの発現が高度なH929骨髄腫細胞に対する細胞傷害作用(比色LDH放出アッセイ)
また、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体を、抗原結合性部分の、細胞上のBCMAへの結合を介する、構築物の架橋時に、BCMAの発現が高度なMM細胞内でT細胞媒介型アポトーシスを誘導するそれらの潜在能力についても解析した。略述すると、ヒトBCMAを発現させるH929多発性骨髄腫標的細胞を、Cell Dissociation Bufferにより採取し、洗浄し、10%のウシ胎仔血清(Invitrogen)を補充したRPMI中に再懸濁させた。ウェル1つ当たりの細胞約30,000個を、丸底96ウェルプレート内にプレーティングし、構築物のそれぞれの希釈液を、所望の最終濃度、0.1pM〜10nMの範囲の最終濃度となるように添加した(三連で)。適切な比較のために、全てのTCB構築物および対照を、同じモル濃度へと調整した。ヒト全T細胞(エフェクター)を、ウェルへと添加して、5:1の最終E:T比を得た。ヒトPBMCを、エフェクター細胞として使用する場合、10:1の最終E:T比を使用した。陰性対照群は、エフェクター細胞だけ、または標的細胞だけで表した。ヒト汎T細胞を活性化させるための陽性対照として、1μg/mlのPHA−M(Sigma型番L8902)を使用した。標準化のために、H929 MM標的細胞の最大溶解(=100%)を、最終濃度1%のTriton X−100を伴い、細胞死を誘導する、標的細胞のインキュベーションにより決定した。最小の溶解(=0%)は、エフェクター細胞だけを伴い、すなわち、T細胞二特異性抗体を伴わずに共インキュベートされた標的細胞により表した。次いで、5%のCO
2、37℃で20〜24時間または48時間のインキュベーションの後、製造元の指示書に従い、LDH検出キット(Roche Applied Science)により、アポトーシス性/壊死性MM標的細胞から上清へのLDHの放出を測定した。LDH放出の百分率を、濃度応答曲線において、抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の濃度に対してプロットした。EC50値は、Prismソフトウェア(GraphPad)を使用して測定し、最大LDH放出の50%を結果としてもたらすTCB抗体の濃度として決定した。
図18に示される通り、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体((A)83A10−TCBcv、(B)17A5−TCBcv)は、LDHの放出により測定されるBCMA陽性H929骨髄腫細胞の、濃度依存的な殺滅を誘導した。BCMA陽性標的細胞に結合しないDP47−TCB対照抗体は、被験最高濃度であってもなお、LDHの放出を誘導しなかったので、H929細胞の殺滅は特異的であった(データは示さない)。表16および16Aは、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体により誘導される、リダイレクトされたT細胞による、BCMA陽性H929細胞の殺滅についてのEC50値についてまとめる。一部の実験では、83A10−TCBcvを、H929細胞の殺滅の誘導において、APRIL/BAFFリガンド競合J6M0−TCBと比較した(表16A)。
図18−1は、83A10−TCBcvが、LDHの放出により測定されるBCMA陽性H929骨髄腫細胞の、濃度依存的な殺滅を誘導したことを示す。BCMA陽性標的細胞に結合せず、T細胞上のCD3だけに結合する対照TCB抗体は、被験最高濃度であってもなお、LDHの放出を誘導しなかったので、H929細胞の溶解は特異的であった。
【0291】
【表16】
【0292】
【表16A】
【0293】
(実施例19)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体により誘導される、リダイレクトされたT細胞による、BCMAの発現が低度なU266BI骨髄腫細胞および/またはL363骨髄腫細胞に対する細胞傷害作用(LDH放出アッセイ)
抗BCMA/抗CD3 TCB抗体を、抗原結合性部分の、細胞上のBCMAへの結合を介する、構築物の架橋時に、BCMAの発現が低度なMM細胞内でT細胞媒介型アポトーシスを誘導するそれらの能力について解析する。略述すると、BCMAの発現が低度なヒトU266多発性骨髄腫標的細胞および/またはヒトL363多発性骨髄腫標的細胞を、Cell Dissociation Bufferにより採取し、洗浄し、10%のウシ胎仔血清(Invitrogen)を補充したRPMI中に再懸濁させる。ウェル1つ当たりの細胞約30,000個を、丸底96ウェルプレート内にプレーティングし、構築物のそれぞれの希釈液を、所望の最終濃度、0.1pM〜10nMの範囲の最終濃度となるように添加する(三連で)。適切な比較のために、全てのTCB構築物および対照を、同じモル濃度へと調整する。ヒト全T細胞(エフェクター)を、ウェルへと添加して、5:1の最終E:T比を得る。ヒトPBMCを、エフェクター細胞として使用する場合、10:1の最終E:T比を使用する。陰性対照群は、エフェクター細胞だけ、または標的細胞だけで表す。ヒトT細胞を活性化させるための陽性対照として、1μg/mlのPHA−M(Sigma型番L8902)を使用する。標準化のために、MM標的細胞の最大溶解(=100%)を、最終濃度1%のTriton X−100を伴い、細胞死を誘導する、標的細胞のインキュベーションにより決定する。最小の溶解(=0%)は、エフェクター細胞だけを伴い、すなわち、T細胞二特異性抗体を伴わずに共インキュベートされた標的細胞により表す。次いで、5%のCO
2、37℃で20〜24時間のインキュベーションの後、製造元の指示書に従い、LDH検出キット(Roche Applied Science)により、アポトーシス性/壊死性MM標的細胞から上清へのLDHの放出を測定する。LDH放出の百分率を、濃度応答曲線において、抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の濃度に対してプロットする。EC50値は、Prismソフトウェア(GraphPad)を使用して測定し、最大LDH放出の50%を結果としてもたらすTCB抗体の濃度として決定する。
図18−2に示される通り、83A10−TCBcv抗BCMA/抗CD3 TCB抗体は、LDHの放出により測定されるBCMA陽性L363骨髄腫細胞の、濃度依存的な殺滅を誘導した。BCMA陽性標的細胞に結合せず、T細胞上のCD3だけに結合する対照TCB抗体は、被験最高濃度であってもなお、LDHの放出を誘導しなかったので、L363細胞の溶解は特異的であった。表16Bは、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体により誘導される、リダイレクトされたT細胞による、BCMAの発現が中程度/低度なL363細胞の殺滅についてのEC50値についてまとめる。
【0294】
【表16B】
【0295】
(実施例19A)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体により誘導される、リダイレクトされたT細胞による、BCMAの発現が中程度/低度なRPMI−8226骨髄腫細胞に対する細胞傷害作用(LDH放出アッセイ)
抗BCMA/抗CD3 TCB抗体を、抗原結合性部分の、細胞上のBCMAへの結合を介する、構築物の架橋時に、BCMAの発現が中程度/低度なMM細胞内でT細胞媒介型アポトーシスを誘導するそれらの能力について解析した。略述すると、BCMAの発現が中程度/低度なヒトL363多発性骨髄腫標的細胞を、Cell Dissociation Bufferにより採取し、洗浄し、10%のウシ胎仔血清(Invitrogen)を補充したRPMI中に再懸濁させる。ウェル1つ当たりの細胞約30,000個を、丸底96ウェルプレート内にプレーティングし、構築物のそれぞれの希釈液を、所望の最終濃度、0.1pM〜10nMの範囲の最終濃度となるように添加する(三連で)。適切な比較のために、全てのTCB構築物および対照を、同じモル濃度へと調整する。ヒトPBMC(エフェクター細胞)を、ウェルへと添加して、腫瘍標的細胞1に対して、T細胞約3〜5のE:T比に対応する、10:1の最終E:T比を得た。陰性対照群は、エフェクター細胞だけ、または標的細胞だけで表した。標準化のために、MM標的細胞の最大溶解(=100%)を、最終濃度1%のTriton X−100を伴い、細胞死を誘導する、標的細胞のインキュベーションにより決定した。最小の溶解(=0%)は、エフェクター細胞だけを伴い、すなわち、T細胞二特異性抗体を伴わずに共インキュベートされた標的細胞により表した。次いで、5%のCO
2、37℃で20〜24時間のインキュベーションの後、製造元の指示書に従い、LDH検出キット(Roche Applied Science)により、アポトーシス性/壊死性MM標的細胞から上清へのLDHの放出を測定した。LDH放出の百分率を、濃度応答曲線において、抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の濃度に対してプロットした。EC50値は、Prismソフトウェア(GraphPad)を使用して測定し、最大LDH放出の50%を結果としてもたらすTCB抗体の濃度として決定した。
図18−3に示される通り、83A10−TCBcv抗BCMA/抗CD3 TCB抗体は、LDHの放出により測定されるBCMA陽性RPMI−8226骨髄腫細胞の、濃度依存的な殺滅を誘導した。BCMA陽性標的細胞に結合せず、T細胞上のCD3だけに結合する対照TCB抗体は、被験最高濃度であってもなお、LDHの放出を誘導しなかったので、RPMI−8226細胞の溶解は特異的であった。表16Cは、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体により誘導される、リダイレクトされたT細胞による、BCMAの発現が中程度/低度なRPMI−8226細胞の殺滅についてのEC50値についてまとめる。
【0296】
【表16C】
【0297】
(実施例19B)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体により誘導される、リダイレクトされたT細胞による、BCMAの発現が低度なJJN−3骨髄腫細胞に対する細胞傷害作用(フローサイトメトリーおよびLDHの放出)
抗BCMA/抗CD3 TCB抗体を、抗原結合性部分の、細胞上のBCMAへの結合を介する、構築物の架橋時に、BCMAの発現が低度なMM細胞内でT細胞媒介型アポトーシスを誘導するそれらの能力について解析した。略述すると、BCMAの発現が低度なヒトJJN−3多発性骨髄腫標的細胞を、Cell Dissociation Bufferにより採取し、洗浄し、10%のウシ胎仔血清(Invitrogen)を補充したRPMI中に再懸濁させる。ウェル1つ当たりの細胞約30,000個を、丸底96ウェルプレート内にプレーティングし、構築物のそれぞれの希釈液を、所望の最終濃度、0.1pM〜10nMの範囲の最終濃度となるように添加する(三連で)。適切な比較のために、全てのTCB構築物および対照を、同じモル濃度へと調整する。ヒトPBMC(エフェクター細胞)を、ウェルへと添加して、腫瘍標的細胞1に対して、T細胞約3〜5のE:T比に対応する、10:1の最終E:T比を得た。陰性対照群は、エフェクター細胞だけ、または標的細胞だけで表した。標準化のために、MM標的細胞の最大溶解(=100%)を、最終濃度1%のTriton X−100を伴い、細胞死を誘導する、標的細胞のインキュベーションにより決定した。最小の溶解(=0%)は、エフェクター細胞だけを伴い、すなわち、T細胞二特異性抗体を伴わずに共インキュベートされた標的細胞により表した。i)5%のCO
2、37℃で48時間のインキュベーションの後、培養された骨髄腫細胞を収集し、洗浄し、アポトーシス性骨髄腫細胞を決定するために、蛍光色素コンジュゲート抗体およびアネキシンVで染色した。染色パネルには、CD138−APCC750/CD38−FITC/CD5−BV510/CD56−PE/CD19−PerCP−Cy7/CD45−V450/アネキシンV−PerCP−Cy5.5を含めた。使用される蛍光色素で標識された抗体は、BD Biosciences(San Jose、CA)およびCaltag Laboratories(San Francisco CA)から購入した。取得は、マルチカラーフローサイトメーターおよびインストールされたソフトウェア(例えば、FACS Divaソフトウェアを作動させるCantoIIデバイスまたはCellQUESTソフトウェアを使用するFACSCaliburフローサイトメーター)を使用して実施した。データ解析のためには、Paint−A−Gate PROプログラム(BD Biosciences)を使用した。アネキシンVを、JJN−3細胞上で測定し、アネキシンv陽性JJN−3細胞の百分率を、抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の濃度に対してプロットした。具体的濃度の抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体により誘導される、JJN−3細胞の溶解の百分率はまた、所与のTCB濃度で、アネキシンV陰性JJN−3細胞の絶対カウントを測定し、これを、TCBを伴わないアネキシンV陰性JJN−3細胞の絶対カウントから減じ、これを、TCBを伴わないアネキシンV陰性JJN−3細胞の絶対カウントで除することによっても決定した。
図18−4は、83A10−TCBcv抗BCMA/抗CD3 TCB抗体が、フローサイトメトリーにより測定される、BCMAの発現が低度なJJN−3骨髄腫細胞の、濃度依存的な殺滅を誘導したことを示す。BCMA陽性標的細胞に結合せず、T細胞上のCD3だけに結合する対照TCB抗体は、被験最高濃度であってもなお、アネキシンV陽性JJN−3細胞またはJJN−3細胞の溶解の増大を誘導しなかったので、JJN−3細胞の溶解は特異的であった。表16Dおよび16Eは、それぞれ、アネキシンv陽性JJN−3細胞の百分率と、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体により誘導されたJJN−3細胞の溶解の百分率とについてまとめる。
【0298】
【表16D】
【0299】
【表16E】
【0300】
(実施例20)
高濃度のリガンドの存在下における、リダイレクトされたT細胞による、BCMA陽性多発性骨髄腫細胞系の殺滅について、APRILを遮断しない/APRILと競合しない抗BCMA抗体を含有する抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の、APRILを遮断する/APRILと競合する抗BCMA抗体を含有する抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体と対比した比較で
多発性骨髄腫など、ある特定の造血器悪性腫瘍では、循環BCMAリガンドである、APRILおよびBAFFのレベルが上昇しうる(Moreauxら、2004年、Blood、103巻(8号):3148〜3157頁)。こうして、本発明者らは、血清中高レベルのリガンドが、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の、腫瘍細胞上のBCMA受容体への結合に干渉しうることを認識する。健常ドナーと比較して、多発性骨髄腫患者の血液中の循環APRIL(BCMAに対する高アフィニティーリガンド)のレベルは、約10ng/mLと対比した、約100ng/mLである。BAFF(BCMAに対する低アフィニティーリガンド)では、レベルは、健常ドナーにおける約3ng/mLと比較して、1〜1000ng/mLで変動しうる。腫瘍細胞の近傍、すなわち、多発性骨髄腫患者の骨髄微小環境(骨髄は、構成的にAPRILに富む臓器である)内では、APRIL/BAFF濃度は、血清中で測定されるレベルより高い公算が大きいであろう。より重要なことは、APRILが、悪性骨髄腫細胞にとって重要な生存因子である、骨髄微小環境内で構成的に発現し、また、骨髄の骨髄系前駆体細胞により、主に産生および分泌されてもいることである(Matthesら、Blood、2011年、118巻(7号):1838〜1844頁)。こうして、この文脈では、骨髄腫患者の骨髄中のAPRILの濃度であって、最大1000ng/mLまたはそれをさらに超える、より甚大な大きさであることが予測される濃度の関与性が大きい。全身性エリテマトーデスなど、ある特定の自己免疫疾患でもまた、循環APRILのレベルは、約85ng/mLと上昇する(Koyamaら、2005年、Ann Rheum Dis、64巻:1065〜1067頁)。
【0301】
APRILを遮断しない/APRILと競合しない抗BCMA/抗CD3 TCB抗体が、APRILを遮断する/APRILと競合する抗BCMA/抗CD3 TCB抗体と比べて有利であるのかどうかを検証するため、APRILを遮断しない/APRILと競合しない抗BCMA/抗CD3 TCB抗体を、多発性骨髄腫患者において見出される、高APRIL濃度(すなわち、100ng/mL〜1000ng/mL)の存在下で、抗原結合性部分の、細胞上のBCMAへの結合を介する、構築物の架橋時に、BCMAを発現する骨髄腫細胞の、T細胞媒介型殺滅を誘導するそれらの潜在能力について解析した。APRILは、ヒトBCMAに、BAFFが、受容体に結合するアフィニティーの、最大1000倍のアフィニティーで結合するので、この文脈では、高濃度のAPRILの関与性が、高濃度のBAFFより大きい。高レベルのAPRILは、とりわけ、患者において、非常に低用量で治療剤を施す場合、TCB抗体の有効性に影響を及ぼす可能性が極めて高い(Bargouら、Science、2008年、321巻(5891号):974〜7頁)。こうして、APRILの存在下において、以下の実験を実施した。
【0302】
略述すると、ヒトBCMA陽性H929多発性骨髄腫標的細胞を、Cell Dissociation Bufferにより採取し、洗浄し、10%のウシ胎仔血清(Invitrogen)を補充したRPMI中に再懸濁させた。ウェル1つ当たりの細胞約30,000個を、丸底96ウェルプレート内にプレーティングし、TCB構築物のそれぞれの希釈液を、最終濃度を100ng/mLまたは1000ng/mLとするAPRILの存在下または非存在下における、所望の最終濃度、0.1pM〜10nMの範囲の抗BCMA/抗CD3 TCBの最終濃度となるように添加した(三連で)。適切な比較のために、全てのTCB構築物および対照を、同じモル濃度へと調整した。ヒトPBMC(エフェクター)を、ウェルへと添加して、10:1の最終E:T比を得た。陰性対照群は、エフェクター細胞だけ、または標的細胞だけで表した。ヒト汎T細胞を活性化させるための陽性対照として、1μg/mlのPHA(Sigma型番L8902)を使用した。標準化のために、H929 MM標的細胞の最大溶解(=100%)を、最終濃度1%のTriton X−100を伴い、細胞死を誘導する、標的細胞のインキュベーションにより決定した。最小の溶解(=0%)は、エフェクター細胞だけを伴い、すなわち、T細胞二特異性抗体を伴わずに共インキュベートされた標的細胞により表した。次いで、5%のCO
2、37℃で24時間のインキュベーションの後、製造元の指示書に従い、LDH検出キット(Roche Applied Science)により、アポトーシス性/壊死性H929骨髄腫標的細胞から上清へのLDHの放出を測定した。LDH放出の百分率を、濃度応答曲線において、抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の濃度に対してプロットした。EC50値は、Prismソフトウェア(GraphPad)を使用して測定し、最大LDH放出の50%を結果としてもたらすTCB抗体の濃度として決定した。
図19に示される通り、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体は、外因性APRILの存在下または非存在下におけるBCMA陽性H929骨髄腫細胞の殺滅を誘導した。
図19Aに描示される通り、APRILを遮断しない/APRILと競合しない83A10−TCBcvは、外因性APRILの非存在下において、低ピコモル効力(EC50
APRIL0=1.5pM)で、BCMA陽性H929骨髄腫の濃度依存的な殺滅を誘導した。多発性骨髄腫患者の血液中で見出されうるAPRILの濃度である、100ng/mLのAPRILを、培養物へと添加したところ、このような濃度のリガンドが、83A10−TCBcvに媒介される殺滅効力に与える影響は、EC50(EC50
APRIL100=4.3pM)の2.9倍の増大により反映される通り、最小限に限られた。多発性骨髄腫患者の骨髄中で見出されうる、10倍の高濃度のAPRIL(すなわち、1000ng/mL)を、培養物へと添加したところ、83A10−TCBcvに媒介される殺滅効力の低減は、EC50の6倍の増大(EC50
APRIL1000=9.0pM)により反映される通り、わずかであった。1000ng/mLのAPRILの存在下における、殺滅効力のこの小さな低減にも拘らず、APRILを遮断しない/APRILと競合しない83A10−TCBcvは、BCMA陽性H929骨髄腫細胞を、低ピコモル範囲の効力で、やはり効率的に死滅させうる。表17は、外因性APRILの非存在下および存在下における、APRILを遮断しない/APRILと競合しない83A10−TCBcvのEC50値についてまとめる。
【0303】
【表17】
【0304】
図19Bに描示される通り、APRILを遮断する/APRILと競合するJ6M0−TCBは、外因性APRILの非存在下において、低ピコモル効力(EC50
APRIL0=5.8pM)で、BCMA陽性H929骨髄腫の濃度依存的な殺滅を誘導した。100ng/mLのAPRILを、培養物へと添加したところ、このような濃度のリガンドが、J6M0−TCBに媒介される殺滅効力に与える影響は、EC50(EC50
APRIL100=14.2pM)の2.4倍の増大により示される通り、最小限に限られた。しかし、1000ng/mLのAPRILを、培養物へと添加したところ、J6M0−TCBに媒介される殺滅効力は、EC50の84.3倍の増大(EC50
APRIL1000=488.9pM)により反映される通り、大幅に低減された。表18は、外因性APRILの非存在下および存在下における、APRILを遮断する/APRILと競合するJ6M0−TCBのEC50値についてまとめる。
【0305】
全体的な結果は、APRILを遮断しない/APRILと競合しない抗BCMA/抗CD3 TCB抗体は、多発性骨髄腫患者の骨髄微小環境内に存在する公算が大きい、高濃度のAPRILの影響を受けず、かつ/または影響を受けても小さな影響であることにより、APRILを遮断する/APRILと競合する抗BCMA/抗CD3 TCB抗体に比べて、明らかな利点を有しうることを示唆する。1000ng/mLのAPRILの存在下における、殺滅効力のこの小さな低減にも拘らず、APRILを遮断しない/APRILと競合しない83A10−TCBcvは、BCMA陽性H929骨髄腫細胞を、低ピコモル範囲の効力で、やはり効率的に死滅させうる。これらの観察を臨床状況へと置き直すと、骨髄中のAPRILレベルが高い患者において、83A10−TCBcvなどのTCBの、所与の治療用量が低量であっても、やはり骨髄腫細胞を死滅させうることを意味する。J6M0−TCBなどのTCBを使用する場合は、状況は異なる可能性があり、APRILレベルが高い患者における抗腫瘍効果は、失われる公算が大きい。代替法は、はるかな高治療用量を使用することであるが、これは、副作用の危険性を増大させる(TCBであるブリナツモマブについて、用量依存的な副作用が報告されている)。
【0306】
【表18】
【0307】
(実施例21)
電荷変異体を伴わない83A10−TCBと、電荷変異体を伴う83A10−TCBcvとは、同様の生物学的特性を示す
いずれの分子においても、VL CDRと、VH CDRとは、同一のままであるので、CL−CH1において電荷修飾を伴うTCB抗体は、細胞ベースのアッセイにおいて、電荷修飾を伴わない、それらの野生型TCB対応物と同様に挙動し、同様の生物学的特性を提示することが予測される。
【0308】
電荷変異体を伴うTCBを、電荷変異体を伴わないTCBと対比して比較するのに最適な生物学的特性のうちの1つは、TCB抗体が細胞に結合する能力であろう。
図20Aは、濃度依存的で、それぞれEC50=9.8nM対EC50=14.5nMである、同様の効力を伴う、83A10−TCBおよび83A10−TCBcvの、BCMA陽性H929細胞への結合を描示する。DP47−TCB対照抗体は、蛍光強度中央値の増大の欠如により測定される通り、BCMA陽性H929骨髄腫細胞に結合しなかった。第2の一対一比較実験では、83A10−TCBおよび83A10−TCBcvを、BCMA陽性H929細胞への結合、およびBCMA/CD3陰性MKN45細胞への結合の欠如について査定した。
図20Bに描示される通り、83A10−TCBおよび83A10−TCBcvは、BCMA陽性H929細胞に、濃度依存的に、かつ、それぞれ、EC50=16.9nMおよびEC50=14.5nMである、同様の効力で結合する。83A10−TCBおよび83A10−TCBcvの、H929細胞への結合についてのEC50値を、両方の実験について、表19にまとめる。
【0309】
【表19】
【0310】
電荷変異体を伴うTCB抗体を、電荷変異体を伴わないTCB抗体と対比して比較するのに適切な別の生物学的特性は、リダイレクトされたT細胞による標的細胞の殺滅を誘導するそれらの能力であろう。
図20C〜Fに示される通り、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体((C、D)83A10−TCB、(E、F)83A10−TCBcv)は、LDHの放出により測定される、BCMA陽性H929骨髄腫細胞の、濃度依存的な殺滅を誘導した。BCMA陽性標的細胞に結合しないDP47−TCB対照抗体は、1nMの最高濃度であってもなお、LDHの放出を誘導しなかったので、H929細胞の殺滅は特異的であった(C)。83A10−TCB(C、D)および83A10−TCBcv(E、実験1)についてのEC50値は、Prism(GraphPad)統計学ソフトウェアにより測定可能ではなかったが、EC50値の大きさは、非帯電TCB分子および帯電TCB分子の両方について、ほぼ、低ピコモル範囲の効力であると推定しうる。第2の実験では、リダイレクトT細胞殺滅アッセイにおいて、83A10−TCBcvの効果を査定し、EC50値を、1.5pMと測定することができた(F)。著者らは、わずかに低値のEC50値(わずかにより良好な効力)が、血液ドナーのばらつきに起因する可能性を除外することができなかった。しかし、H929細胞を死滅させる効力の大きさが、低ピコモル範囲にあることは、疑いなかった。全体的な結果は、83A10−TCBcv(電荷変異体を伴う)と対比した、83A10−TCB(電荷変異体を伴わない)が、細胞ベースのアッセイにおいて、同様の生物学的特性を示すことを示唆する。83A10−TCBおよび83A10−TCBcvにより誘導される、リダイレクトされたT細胞による、H929細胞の殺滅についてのEC50値を、表20にまとめる。
【0311】
【表20】
【0312】
(実施例22)
多発性骨髄腫患者に由来する骨髄中の骨髄腫細胞上のBCMAの発現
目的の腫瘍標的を発現するヒト細胞系は、T細胞の存在下において腫瘍細胞細胞傷害作用を誘導する、TCB抗体の効力を測定し、EC50値を決定するのために、またTCB分子をランク付けするために、非常に有用で実際的なツールである。しかし、たやすく入手可能であり、実際的であるにも拘らず、ヒト骨髄腫細胞系には、分子レベルにおける著明な異質性により特徴付けられる、非常に複雑な疾患である、多発性骨髄腫の異質性を表さない点には注意すべきである。加えて、骨髄腫細胞系は、一部の細胞は、BCMAを、他の細胞より強力に発現させる(例えば、U266細胞またはRPMI−8226細胞と対比したH929細胞)ので、BCMA受容体を、同じ強度および密度では発現させないことから、細胞レベルにおけるこのような異質性はまた、異なる患者間でも観察されうることが示唆される。多発性骨髄腫における、重要な研究主導者による共同研究を通して、患者試料中のBCMAの発現および密度の決定、ならびに臨床患者試料による、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の査定が探索されている。地域の倫理審査委員会によるガイドラインおよびヘルシンキ宣言に従い、説明同意文書の署名を得た後で、多発性骨髄腫患者から、血液および骨髄吸引物を収集する。
【0313】
a)フローサイトメトリーにより検出される、BCMAの発現(蛍光強度中央値)
骨髄中の骨髄腫細胞上のBCMA受容体の発現を決定するために、単離されたばかりの骨髄吸引物を使用して、免疫表現型解析を実施する。赤血球溶解K
3−EDTA(エチレンジアミン四酢酸)で抗凝集処理された全骨髄試料を、免疫表現型解析に使用する。CD138
+ CD38
+ CD45
+ CD19
− CD56
+として同定される悪性形質細胞の特異的同定および免疫表現型による特徴付けを目的とする、直接免疫蛍光技法およびマルチカラー染色を使用して、チューブ1本当たりの総細胞2×10
6個を染色し、溶解させ、次いで、洗浄する。次いで、蛍光色素コンジュゲート抗体のパネルであって、少なくともCD38−FITC/CD56−PE/CD19−PerCP−Cy7/CD45−V450/BCMA−APCを含むパネルを使用して、細胞を染色する。使用される蛍光色素で標識された抗体は、BD Biosciences(San Jose、CA)およびCaltag Laboratories(San Francisco CA)から購入する。自家製のAPCコンジュゲート抗ヒトBCMA抗体は、免疫表現型解析において使用する。取得は、マルチカラーフローサイトメーターおよびインストールされたソフトウェア(例えば、FACS Divaソフトウェアを作動させるCantoIIデバイスまたはCellQUESTソフトウェアを使用するFACSCaliburフローサイトメーター)を使用して実施する。データ解析には、Paint−A−Gate PROプログラム(BD Biosciences)を使用する。BCMAの発現は、悪性形質細胞集団にゲーティングして測定し、蛍光強度中央値を決定し、骨髄腫患者間で比較する。
【0314】
【表21】
【0315】
b)BCMA抗原のコピー数の決定(定量的フローサイトメトリー解析)
(i)Qifikit(Dako)法を使用して、H929細胞の細胞表面上の、BCMA抗原のコピー数を定量化する。H929細胞を、FACS緩衝液で1回洗浄し(100μl/ウェル;350×gで5分間)、細胞100万個/mlへと調整する。50μl(=細胞50万個)の細胞懸濁液を、指し示される通りに、96丸底ウェルプレートの各ウェルへと移す。次いで、FACS緩衝液(PBS、0.1%のBSA)中で、25μg/mlの最終濃度まで(または飽和濃度に)希釈された、50μlのマウス抗ヒトBCMA IgG(BioLegend型番357502)、またはマウスIgG2aアイソタイプ対照(BioLegend型番401501)を添加し、暗所内、4℃で30分間、染色を実施する。次に、100μlのSet−up BeadsまたはCalibration Beadsを、別々のウェルに添加し、細胞ならびにビーズを、FACS緩衝液で2回洗浄する。細胞およびビーズを、Qifikitにより提供されている、フルオレセインコンジュゲート抗マウス二次抗体(飽和濃度の)を含有する、25μlのFACS緩衝液中に再懸濁させる。細胞およびビーズを、暗所内、4℃で45分間染色する。細胞を1回洗浄し、全ての試料を、100μlのFACS緩衝液中に再懸濁させる。試料を、マルチカラーフローサイトメーターおよびインストールされたソフトウェア(例えば、FACS Divaソフトウェアを作動させるCantoIIデバイスまたはCellQUESTソフトウェアを使用するFACSCaliburフローサイトメーター)上で解析する。代替的に、一部の研究では、市販のマウス抗ヒトBCMA IgGを一次抗体として使用する代わりに、結合特性が最適な、自家製の抗ヒトBCMA IgG抗体(例えば、83A10 IgG、17A5−IgGまたは13A4)IgGを使用するのに続いて、ヒトIgG−Fcに対する市販の第1の非コンジュゲート二次抗体(Abcam、型番ABM121)を伴う、さらなるインキュベーションステップにかけてから、第2のフルオレセインコンジュゲート抗マウス二次抗体を含有するFACS緩衝液の存在下において、キャリブレーションビーズを、細胞と共にインキュベートする。一次抗体および二次抗体を、飽和濃度で使用する場合、結合した一次抗体分子の数は、細胞表面上に存在する抗原性部位の数に対応し、蛍光は、細胞上およびビーズ上の、結合した一次抗体分子の数と相関する。
【0316】
(ii)Qifikit(Dako)法を使用して、患者骨髄の骨髄腫形質細胞上の細胞表面における、BCMA特異的抗原結合能(SABC)を定量化した。全骨髄吸引物から単離された骨髄腫形質細胞を、FACS緩衝液(PBS、0.1%のBSA)中で、25μg/mlの最終濃度まで(または飽和濃度に)希釈された、50μlのマウス抗ヒトBCMA IgG(BioLegend型番357502)、またはマウスIgG2aアイソタイプ対照(BioLegend型番401501)で染色し、染色は、暗所内、4℃で30分間実施した。次に、100μlのSet−up BeadsまたはCalibration Beadsを、別々のウェルに添加し、細胞ならびにビーズを、FACS緩衝液で2回洗浄した。細胞およびビーズを、Qifikitにより提供されている、フルオレセインコンジュゲート抗マウス二次抗体(飽和濃度の)を含有する、25μlのFACS緩衝液中に再懸濁させた。細胞およびビーズを、暗所内、4℃で45分間染色した。細胞を1回洗浄し、全ての試料を、100μlのFACS緩衝液中に再懸濁させた。試料を、マルチカラーフローサイトメーターおよびインストールされたソフトウェア(例えば、FACS Divaソフトウェアを作動させるCantoIIデバイスまたはCellQUESTソフトウェアを使用するFACSCaliburフローサイトメーター)上で速やかに解析した。
【0317】
【表22】
【0318】
(実施例23)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体により誘導される、リダイレクトされたT細胞による、骨髄中の患者骨髄腫細胞に対する細胞傷害作用(フローサイトメトリー)
a)多発性骨髄腫のためのTCB抗体候補物質の前臨床査定時において、最も有意義であり、かつ、極めて重要なin vitroの特徴付けのうちの1つは、TCB分子が、患者のT細胞を活性化させ、患者の骨髄に由来する原発性骨髄腫細胞の、リダイレクトされたT細胞による殺滅を誘導しうるかどうかである。リダイレクトされたT細胞による、骨髄中の骨髄腫細胞の殺滅を誘導する抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の効果を査定するため、全血液および赤血球溶解全骨髄試料から単離された、自家血液T細胞を収集し、調製する。第1の実験設定では、自家骨髄浸潤T細胞を、エフェクター細胞として使用し、TCB抗体を、赤血球溶解全骨髄試料中に直接スパイクする。全骨髄試料中に存在する、エフェクター細胞と腫瘍細胞との比(E:T比)を、決定し、フローサイトメトリーにより測定する。骨髄腫細胞1に対する、CD3
+細胞を1〜3とするE:T比を使用することが好ましい。第2の実験設定では、患者全血液から単離された自家血液T細胞を、全骨髄試料へと添加して、骨髄腫細胞1に対する、CD3
+細胞を1〜3とするE:T比を得る。略述すると、200μlの、調製された赤血球溶解全骨髄試料を、96ディープウェルプレートへと移す。抗BCMA/抗CD3 TCB抗体および対照抗体希釈液を、滅菌PBS中で調製し、10μlの調製物を、それぞれのウェルへと、0.1pM〜100nMの範囲の最終濃度となるように添加する。全骨髄−抗体懸濁液を、静かな振とうにより混合し、次いで、5%のCO
2、37℃で24時間〜48時間インキュベートし、パラフィンフィルムで密封する。インキュベーション期間の後、CD138−APCC750/CD38−FITC/CD5−BV510/CD56−PE/CD19−PerCP−Cy7/CD45−V450/BCMA−APC/アネキシンV−PerCP−Cy5.5を含む抗体パネルに基づき調製された、20μlの対応するFACS抗体溶液を、96U字型底プレートへと添加する。蛍光色素で標識された抗体は、BD Biosciences(San Jose、CA)およびCaltag Laboratories(San Francisco CA)から購入し、自家製のAPCコンジュゲート抗ヒトBCMA抗体を使用する。次いで、試料を、暗所内、室温で15分間インキュベートし、取得し、マルチカラーフローサイトメーターを使用して解析する。骨髄腫細胞の細胞死は、骨髄腫細胞集団CD138
+ CD38
+ CD45
+ CD19
−、およびCD138
+ CD38
+ CD45
+ CD19
− BCMA
+にゲーティングして、アネキシンV陽性発現を査定することにより決定する。次いで、骨髄腫細胞死の百分率を決定する。
【0319】
抗BCMA/抗CD3 TCB抗体が、骨髄腫患者のCD4
+T細胞およびCD8
+T細胞(例えば、骨髄浸潤T細胞(MIL)および血中T細胞)の活性化を誘導するのかどうかを査定するため、処置群、非処置群、および対照群のそれぞれに由来する試料もまた、CD8−APCH7/CD69−FITC/CD107−BV510/CD16−PE/CD25−PerCP−Cy7/CD4−PacB/HLD−DR−APC/CD3−PerCP−Cy5.5を含む抗体パネルに基づき調製された、FACS抗体溶液で染色する。次いで、試料を、暗所内、室温で15分間インキュベートし、取得し、マルチカラーフローサイトメーターを使用して解析する。T細胞の活性化は、CD4
+T細胞集団およびCD8
+T細胞集団にゲーティングして、CD25陽性発現および/またはCD69陽性発現を査定することにより決定する。次いで、T細胞の活性化の百分率を、測定する。
【0320】
b)リダイレクトされたT細胞による、骨髄中の骨髄腫形質細胞の殺滅を誘導する抗BCMA/抗CD3 TCB抗体の効果を査定するため、全骨髄吸引物を、多発性骨髄腫患者から、EDTAでコーティングされたチューブに収集し、細胞培養物アッセイのために速やかに使用した。全骨髄試料中に存在する、エフェクター細胞と腫瘍細胞との比(E:T比)を、決定し、フローサイトメトリーにより測定した。略述すると、200μlの骨髄試料を、96ディープウェルプレートへと移した。抗BCMA/抗CD3 TCB抗体および対照抗体希釈液を、滅菌培地中で調製し、10μlの調製物を、それぞれのウェルへと、0.1pM〜30nMの範囲の最終濃度となるように添加した。骨髄−抗体懸濁液を、静かな振とうにより混合し、次いで、5%のCO2、37℃で48時間インキュベートし、パラフィンフィルムで密封する。インキュベーション期間の後、CD138−APCC750/CD38−FITC/CD5−BV510/CD56−PE/CD19−PerCP−Cy7/CD45−V450/BCMA−APC/アネキシンV−PerCP−Cy5.5を含む抗体パネルに基づき調製された、20μlの対応するFACS抗体溶液を、96U字型底プレートへと添加した。蛍光色素で標識された抗体は、BD Biosciences(San Jose、CA)およびCaltag Laboratories(San Francisco CA)から購入し、自家製のAPCコンジュゲート抗ヒトBCMA抗体を使用した。次いで、試料を、暗所内、室温で15分間インキュベートし、取得し、マルチカラーフローサイトメーターを使用して解析した。骨髄腫細胞の細胞死は、骨髄腫細胞集団CD138+ CD38+ CD45+ CD19− CD56+にゲーティングして、アネキシンV陽性発現を査定することにより決定した。次いで、骨髄腫細胞死の百分率を決定した。具体的濃度の抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体により誘導される、患者骨髄の骨髄腫形質細胞の溶解の百分率はまた、所与のTCB濃度で、アネキシンV陰性骨髄腫形質細胞の絶対カウントを測定し、これを、TCBを伴わないアネキシンV陰性骨髄腫形質細胞の絶対カウントから減じ、これを、TCBを伴わないアネキシンV陰性骨髄腫形質細胞の絶対カウントで除することによっても決定した。抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の特異性を検証するために、アネキシンV発現はまた、T細胞、B細胞、およびNK細胞など、他の骨髄細胞型内でも測定した。
図21に示される通り、患者骨髄腫形質細胞の、濃度依存的で特異的な溶解が見られたのに対し、T細胞、B細胞、およびNK細胞の溶解は、観察されなかった。加えて、CD3だけに結合し、BCMAに結合しない対照TCBは、TCB抗体の最高濃度でも、骨髄腫形質細胞の細胞死を誘導しなかった。表23に示される通り、患者骨髄中のアネキシンV陽性骨髄腫細胞の百分率は、83A10−TCBcvについて、最高濃度(30nM)のときに、最大の29.31%に達したことから、83A10−TCBcvは、患者骨髄の骨髄腫形質細胞の殺滅を誘導するのに強力であることが示唆される。
【0321】
【表23】
【0322】
c)別の研究では、3例のMM患者に由来する骨髄吸引物中で、生存骨髄腫形質細胞の百分率を、アネキシンV陰性細胞集団にゲーティングすることにより決定し、抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の濃度に対してプロットした。EC50値は、最大生存骨髄腫形質細胞の50%を結果としてもたらすTCB抗体の濃度として、測定および決定した。EMAX(%)は、それぞれの抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の存在下における、生存骨髄腫形質細胞の最大値として決定した。83A10−TCBcvは、骨髄腫患者の骨髄吸引物試料中の骨髄腫形質細胞の溶解の誘導において強力であった(表24;
図22)。83A10−TCBcvで処置された患者試料3例中3例において、生存骨髄腫細胞の濃度依存的な低減が観察された。
図22および表24はまた、その後の研究において実施された、EC50値およびEMAX(%)値に関する83A10−TCBcvの、J6M0−TCBcvとの比較(J6M0とは、BCMAへの結合時に、APRILと競合することが報告されている抗体である(Taiら、Blood、2014年))も示す。患者試料3例中3例において、83A10−TCBcvは、30nMの等モル最大用量で、J6M0−TCBcvでより、患者骨髄吸引物に由来する骨髄腫形質細胞のより大きな溶解であって、生存骨髄腫形質細胞の百分率(この百分率が小さいほど、溶解細胞の百分率は大きい)を表すEMAX値により反映される溶解を誘導した。EC50値はまた、83A10−TCBcvがまた、患者試料3例中2例において、J6M0−TCBcvより強力であったことも示した。
【0323】
【表24】
【0324】
d)本発明の新たな抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体についての、83A10−TCBcvと比較したさらなる探索において、7例の採取したての患者全骨髄試料/吸引物を、CD138磁気マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)で染色し、autoMACS細胞分離カラム内に流過させ、MM形質細胞が十分な数残存し、通例、骨髄腫形質細胞が>4%である収集された画分を、さらなる実験のために使用した。24ウェルプレート内で、細胞500,000個/ウェルをインキュベートし、48時間培養した。抗BCMA/抗CD3 TCB抗体および対照抗体希釈液を、それぞれのウェルへと、0.1pM〜10nMの最終TCB濃度となるように添加した。各投与点は、三連で行った。形質細胞および骨髄微小環境細胞の生存率は、フローサイトメトリー(FACSCalibur;Becton Dickinson)を使用する、ヨウ化プロピジウム/CD138−FITC二重染色により探索した。データ解析は、FACSDiva Software(Becton Dickinson)を使用して実施した。
図23に描示される通り、バープロットは、それぞれの培地対照(MC)の三連にわたる平均値に対して標準化された平均値を示す。統計学的解析のためには、片側t検定を使用した。濃度10nMにおけるMM形質細胞成長の最大阻害(IMAX10)および1nMにおいて測定される阻害(IMAX1)は、それぞれ、培地対照に照らしたパーセントで与えた。対照TCB抗体(10nM)による、培地対照と比較した最大阻害もまた描示した。演算は、IMAX値の計算(Microsoft Excel(登録商標);Microsoft Office Professional 2013)を除き、R 3.1.19およびBioconductor 2.1310を使用して実施した。効果は、その対応する統計学的検定のP値が、<5%(
*)、<1%(
**)、または<0.1%(
***)である場合に、統計学的に有意であると考えられた。
図23A〜23Gに示される通り、結果は明らかに、患者試料7例中7例において、83A10−TCBcvを伴う骨髄中の生存骨髄腫形質細胞は、培地対照と比較して少ないこと(すなわち、骨髄中の骨髄腫形質細胞のより大きな溶解)を示す。
図25は、培地対照と比べて、抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体によって誘導される患者骨髄吸引物に由来する生存骨髄腫形質細胞の百分率を実証する。表26は、IMAX10値およびIMAX1値を示す。結果は、83A10−TCBcvが、患者骨髄の骨髄腫形質細胞の殺滅を誘導するのに強力であることを実証する。抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体により誘導され、全ての骨髄患者試料中で観察された骨髄形質細胞(BMPC)の特異的溶解にも拘らず、骨髄微小環境(BMME)は、それぞれの試料中で影響を受けなかった(
図23H、7例の患者試料を表す)。
【0325】
【表25】
【0326】
【表26】
【0327】
(実施例23A)
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体により誘導される、患者骨髄T細胞の活性化(マルチパラメータフローサイトメトリー)
抗BCMA/抗CD3 TCB抗体が、骨髄腫患者のCD4
+T細胞およびCD8
+T細胞(すなわち、骨髄浸潤T細胞(MIL))の活性化を誘導するのかどうかを査定するため、インキュベーションの48時間後における、処置群、非処置群、および対照群のそれぞれに由来する試料もまた、8つのマーカー:CD8/CD69/TIM−3/CD16/CD25/CD4/HLA−DR/PD−1を含む抗体パネルに基づき調製された、FACS抗体溶液で染色した。次いで、試料を、暗所内、室温で15分間インキュベートし、取得し、マルチカラーフローサイトメーターを使用して解析した。T細胞の活性化は、CD4
+T細胞集団およびCD8
+T細胞集団にゲーティングして、CD25陽性発現、CD69陽性発現、および/またはHLA−DR陽性発現を査定することにより決定した。次いで、T細胞の活性化の百分率を、測定した。
図24は、多発性骨髄腫患者に由来する、骨髄浸潤CD4
+T細胞およびCD8
+T細胞における、CD69およびCD25の濃度依存的な上方調節を示す。表26Aは、抗BCMA/抗CD3 TCB抗体により誘導される、CD4
+T細胞およびCD8
+T細胞における、CD69発現およびCD25発現の増大(1例の患者に由来するデータ)についてまとめる。
【0328】
【表26A】
【0329】
(実施例24)
マウスにおける薬物動態研究
抗BCMA/抗CD3 TCBcv抗体が、(scFV)
2(例えば、WO2013/072415およびWO2013/072406において記載されている、BCMA×CD3二特異性T細胞エンゲージャーBiTE)などの他の二特異性抗体に比べて有しうる、明らかな利点は、患者が携行するポンプを介して、数週間〜数カ月間投与される処置を要請する(scFV)
2の非常に短い消失半減期(例えば、1〜4時間の)と比較した、週2回または1回のi.v.投与またはs.c.投与を可能としうるin vivoにおける、はるかに長い消失半減期/小さなクリアランスである(Toppら、J Clin Oncol、2011年、29巻(18号):2493〜8頁)。週2回または1回の投与は、患者にとってはるかに好都合であり、また、はるかに危険(例えば、ポンプの不具合、カテーテルに関する問題)が小さい。
【0330】
抗BCMA/抗CD3 TCBcv抗体の、in vivoにおける消失半減期/クリアランスを検証するために、免疫不全雄マウスおよび/または免疫不全雌マウス(例えば、6〜10週齢で、体重18〜25gの、NOD/SCIDマウスまたはNOD/Shi−scid IL2rガンマ(ヌル)(NOG)マウスを、Charles River、The Jackson Laboratoryおよび/またはTaconicなど、認識された販売元から得、適切な条件下で、少なくとも1週間馴致する。馴致期間および実験期間を通して、動物には、標準的なペレットによる食餌および水が不断に供給された。動物の飼育および全ての手順は、連邦政府によるガイドラインおよび適切な動物福利に関する関連法規に従い、実績のあるCROおよび/または認可された実験室において行う。
【0331】
a)薬物動態研究を行うために、動物を、n=1〜n=6、好ましくは、n=2〜n=4の群へと無作為化し、選択された処置および/または用量および/または血液収集の時点へと割り当てる。群は、別々のケージに保ち、個々の動物は、適切な方法でマークする。動物には、1μg/kg〜20mg/kg、好ましくは、5μg/kg〜0.5mg/kgの範囲の用量で、抗BCMA/抗CD3 TCBcv抗体の、単回i.v.用量を投与する。投与容量は、5〜10mL/kgの範囲にわたる。一部の群では、比較のために、マウスに、BCMA×CD3(scFV)
2のi.v.投与を施す。採血は、実験プロトコールに従い、投与前、および被験薬をi.v.注射した10分後〜14日間後、好ましくは、15分後〜168時間後の範囲で、投与後の複数の時点にスケジューリングする。約200μlの血液試料は、ヘマトクリット毛細管を使用して、球後静脈叢の穿刺により、または安楽死の時点では、心穿刺により、microvettes(登録商標)へと収集する。血液試料は、4℃で速やかに保存し、最大9000×gで2〜5分間遠心分離する。少なくとも80μlの血清または血漿上清を分離し、解析まで、−20℃〜−80℃で保存する。ヒトIgGを検出する標準的なELISAアッセイ(abcam;カタログ番号ab1000547)を使用して、探索下の抗体の血清濃度または血漿濃度を測定する。血清濃度および/または血漿濃度から、薬物動態パラメータ、例えば、最大血清濃度/最大血漿濃度、分布容量、濃度時間曲線下面積、クリアランス、平均滞留時間、および/または半減期時間を計算する。ヒトIgG Fcを欠くBCMA×CD3(scFV)
2の血清濃度を検出するために、処置されたマウスに由来する血清試料中の、BCMA×CD3(scFV)
2の、ng/ml未満の濃度を定量化するための、生物学的アッセイを使用する。生物学的アッセイの基礎は、前に報告されている(Schlerethら、Cancer Immunol Immunother、2006年、55巻:503〜514頁)通り、BCMA×CD3(scFV)
2が、T細胞の活性化表面マーカー(CD69および/またはCD25)の上方調節を、濃度依存的に誘導することの観察である。BCMA陽性H929細胞に結合したBCMA×CD3(scFV)
2の存在下における、CD3陽性T細胞の免疫学的応答を測定する検量線を作成するために、3ng/ml〜200pg/mlの範囲のBCMA×CD3(scFV)
2濃度を使用する。細胞は、5%のCO
2、37℃、10:1のE:T比で、一晩にわたりインキュベートする。ブランク試料(BCMA×CD3(scFV)
2を伴わない)を使用して、バックグラウンドのマーカー発現を測定する。被験試料は、標準物質のための手順なものと同等に、そのままで扱うほか、プールされたヒト血清中1:2、および1:4に希釈する。免疫学的表面マーカーの発現レベルは、抗CD25および/または抗CD69 FITCまたはPE標識検出抗体(BD biosciences)を使用するFACS解析により決定する。未知の被験試料のBCMA×CD3(scFV)
2濃度は、Prism Software(GraphPad)の「内挿X値」関数を使用して、公知のBCMA×CD3(scFV)
2濃度に対する検量線から、それぞれのマーカーの量をプロットすることにより決定する。皮下投与が、最終的に好ましい臨床投与経路でありうるので、マウスにおける皮下薬物動態研究に取り組むことができる。
【0332】
b)単回投与の薬物動態研究では、動物を、群1つ当たりのマウスをn=9とする3つの処置群へと無作為化し、次いで、選択された血液収集の時点(処置群1つ当たり、1時点当たりのn=3)へとさらに割り当てた。動物には、抗BCMA/抗CD3 83A10−TCBcv抗体の単回IV用量を、0.0082mg/kg〜0.82mg/kgの範囲の用量で実施した。投与容量は、5mL/kgで投与した。採血は、実験プロトコールに従い、複数の時点:被験薬83A10−TCBcvのi.v.注射の、0.25、0.5、1、3、7、24、48、96、168、240時間後においてスケジューリングした。動物1匹当たり約100μlの血液試料は、ヘマトクリット毛細管を使用して、球後静脈叢の穿刺(球後静脈叢に由来する個々のマウスの血液は、注射後、2つまたは最大3つの時点において採取するにとどめた)により、または、安楽死の時点では、心穿刺により、Microvettes(登録商標)へと収集した。血液試料は、9300gで2.5分間の遠心分離まで、約60分間、凝固させるように、室温で保った。少なくとも50μlの血清上清を収集し、清浄な200μlのEppendorfチューブへと移し、解析まで、−85℃〜−70℃の間で保存した。探索下にある83A10−TCBcvの血清濃度は、ヒトFcまたはCH1/カッパを検出する、標準的な生化学アッセイであって、Stubenrauchら、J Pharm Biomed Anal、2009年、およびStubenrauchら、J Pharm Biomed Anal、2013年において記載されているアッセイを使用して測定した。表27および
図25に報告される血清濃度は、ヒトFcを検出するELISAを使用することにより測定した。表27および
図25は、ELISAにより、3つの用量で測定された血清濃度を示す。
図25は、探索される用量範囲における用量直線性を示唆する。濃度時間曲線は、注射後最初の数時間で、注射後24〜240時間の期間において観察される濃度の減衰より、比較的迅速な減衰を示すと考えられる。中用量(0.082mg/kg)では、24〜240時間後の間の減衰はむしろ、直線的挙動を反映し、直線的減衰の傾きから、約6〜7日間の消失半減期を取り出すことができる。高用量(0.82mg/kg)における濃度時間曲線の減衰は、なお緩徐であると考えられる、すなわち、消失半減期は、少なくとも6〜7日間であるが、なお長い可能性もある。低用量(0.0082mg/kg)における、24〜240時間後の間の消失半減期は、240時間後における血清レベルが検出限界を下回るため、完全には査定することができない。しかし、
図25は、24〜96時間後の間の消失半減期が、6〜7日間より短く、おそらく、3〜5日間に近い可能性があることを示唆する。83A10−TCBcvについて観察される濃度時間曲線は、薬物の、好都合な、週1回または2回の投与の可能性を裏付ける。
【0333】
【表27】
【0334】
(実施例24A)
カニクイザルにおける薬物動態/薬力学(PK/PD)研究
抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体(83A10−TCBcv)の単回用量による薬物動態(PK)薬力学(PD)研究は、AAALACにより認証された、実績のあるCROにおいて行った。約2歳で体重約3kgの、生物学的にナイーブな成体カニクイザルを、少なくとも40日間馴致し、体重、臨床観察、および臨床病態検討に基づき選択した。動物は、個々のタトゥーおよびカラーコード式ケージカードにより同定した。全ての動物手順(飼育、健康状態のモニタリング、拘束、投与などを含む)および倫理条項の改正は、「生物医学研究に使用される動物の保護に関する指令」を強化する現行の国内法令に従い実施した。動物は、直近の試験前体重に基づき、処置群へと無作為に割り当てた。許容不可能な試験前所見を伴う動物を除外した後で、試験前体重に関して均衡を達成するようにデザインされた、Pristima(登録商標)システム内に含まれるコンピュータプログラムを使用して、体重に関して両極値を示す動物を除外し、残りの動物を処置群へと無作為化した。動物を、83A10−TCBcvによる3つの処置群(群1つ当たりの動物のn=2、すなわち、雌1匹および雄1匹)であって、0.003;0.03;および0.3mg/kgの処置群へと割り当てた。動物に、83A10−TCBcvの単回i.v.注射を施し、PK査定のために、以下の収集スケジュールおよび手順:投与前、投与の30、90、180分後、7、24、48、96、168、336、504時間後に従い、1時点当たり、少なくとも0.8mLの血液試料を、末梢血管を介して収集した。血液試料は、血清分離のために、チューブ内、室温で60分間凝固させた。凝固物は、遠心分離(1200g、+4℃で少なくとも10分間)によりスピンダウンした。結果として得られる血清(約300μL)は、さらなる解析まで、−80℃で、直接保存した。また、PK査定のための骨髄試料も、大腿骨において、麻酔/鎮痛処置下、以下の収集スケジュール:投与前、投与の96および336時間後に従い、収集した。骨髄試料は、血清分離のために、チューブ内、室温で60分間凝固させた。凝固物は、遠心分離(1200g、+4℃で少なくとも10分間)によりスピンダウンした。結果として得られる骨髄(約1mL)は、さらなる解析まで、−80℃で、直接保存した。PKデータの解析および査定を実施する。標準的なノンコンパートメント解析は、Watsonパッケージ(v 7.4、Thermo Fisher Scientific Waltman、MA、USA)、またはPhoenix WinNonlinシステム(v. 6.3、Certara Company、USA)を使用して実施する。
図26、表28に示される通り、83A10−TCBcvの血清濃度は、ELISAにより測定する。表29は、各処置群についてのELISA(BLQとは、定量化レベルを下回ることを意味する)により測定される、骨髄中の83A10−TCBcvの濃度を示す。
【0335】
83A10−TCBcvの潜在的な臨床使用に適したいくつかの情報を、
図26、表28、および表29から抜き出すことができる。
・MM患者に由来する骨髄吸引物中では、1nMまたは10nMの濃度の83A10−TCBcvは、MM形質細胞の著明な殺滅、またはさらに全面的な殺滅を誘導し、0.03mg/kgの用量では、注射〜168時間後(7日後)の区間において、約1nM〜4nMの間の血漿濃度が達成されたことから、用量を約0.03mg/kg(200ng/mlは、約1nMに対応する)とする、週1回の治療が実施可能である公算が大きいことが示される。
・
図26は、探索される用量範囲内で、PKは、ほぼ用量に対して直線的であることを示すが、これは、臨床治療に有用な特性である、濃度が用量に比例することを意味する。
・MMとは、主に骨髄中に局在化する疾患であり、骨髄中で検出される83A10−TCBcvの濃度は、血清濃度に近接し(表29)、例えば、注射の96時間後において、約1および2nMの骨髄濃度が測定されているが、これらは、MM形質細胞の著明な殺滅が、MM患者から採取したて骨髄吸引物中で観察される本発明のTCBの濃度である(表25および26を参照されたい)ことから、ここでもまた、週1回などの好都合の投与間隔の可能性が実証される。
・注射後24〜504時間の間、消失は、ほぼ、半減期を約6〜8日間とする一次消失であることから、ここでもまた、例えば、週1回投与の可能性が確認される。
【0336】
【表28】
【0337】
【表29】
【0338】
薬力学(PD)測定:血液試料(時点:投与前、投与の24、48、96、168、336、504時間後)および骨髄試料(時点:投与前、投与の96および336時間後)を、i.v.で単回用量として施される83A10−TCBcvの、血中および骨髄中の形質細胞、B細胞、およびT細胞に対する効果をフローサイトメトリーによって査定するPD査定のために、7.5%のK3 EDTAを含有するチューブ内に収集した。表面マーカーの「溶解洗浄式」直接免疫蛍光染色法を適用した。略述すると、100μLの血液または骨髄を、CD45/CD2/CD16/CD20/CD27/CD38またはCD45/CD2/CD16/CD4/CD25/CD8を含む2つの抗体混合物と共に、暗所内、+4℃で30分間インキュベートした。赤血球を溶解させるために、2mLの溶解緩衝溶液を、試料へと添加し、暗所内、室温で15分間インキュベートした。遠心分離により細胞を収集し、染色緩衝液(PBS2%のウシ胎仔血清)で洗浄した。染色された試料は、同日における、血球計算器による取得まで、冷凍し、光から保護して保った。FACSデータ取得は、488および635のレーザーラインを装備した、Becton Dickinsonのフローサイトメーターである、BD FACS Canto IIで実施した。データの収集および解析には、BD FACSDivaソフトウェアを使用した。絶対細胞数の数え上げは、血液学解析器(ADVIATM 120、Siemens)により得られるWBCカウントに基づく複式プラットフォームにより実施した。
図27に示される通り、循環T細胞カウントの減少により示されるように末梢T細胞再分布再分布が、83A10−TCBcvの単回用量IV処置を施される全ての動物において観察された。
図28Aに示される通り、0.3mg/kgの83A10−TCBcvによる処置の24時間後において既に、血中形質細胞(BCMA陽性細胞)の減少が、処置された動物において観察される一方、総B細胞(BCMA陰性細胞)の減少は見られなかった。
図28Bは、カニクイザルにおける、0.3mg/kgの83A10−TCBcvによる処置の後における、血中の形質細胞の低減の動態を示す。
【0339】
血液試料はまた、以下の収集スケジュール:投与前、投与の30、90、180分後、7、24、48、96、168時間後に従い、サイトカイン解析(IL−1b、IL−2、IL−6、IL−10、TNF−α、およびIFN−γ)のための血漿収集のためにも操作した。血液試料は、氷冷水浴中に保たれたプラスチック製チューブに入れ、次いで、遠心分離(1200g、+4℃で少なくとも10分間)した。結果として得られる血漿は、解析まで、−80℃で、直接保存した。サイトカイン解析は、Multiplex bead−based cytokine immunoassay(Luminex Technology)により実施する。データは、Bio−Plex Manager 4.1ソフトウェア(Bio−Rad)(5パラメータロジスティック回帰モデル(5PL)を使用する)を使用して解析する。
【0340】
(実施例25)
ヒト骨髄腫異種移植マウスモデルにおける、抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体の治療有効性
a)抗BCMA/抗CD3 TCBcv抗体のin vivo効果を、ヒト骨髄腫異種移植マウスモデルにおいて査定する。略述すると、研究の0日目(d0)に、ヒト骨髄腫細胞系NCI−H929(NCI−H929、ATCC(登録商標)CRL−9068(商標))の細胞5×10
6〜100×10
6個を、免疫不全NOD/Shi−scid IL2rガンマ(ヌル)(NOG)成体マウス(The Jackson Laboratoryおよび/またはTaconic)の右脇腹の背側へと皮下注入し、7〜21日間、または腫瘍サイズが、50〜300cm
3、好ましくは100〜200cm
3に達するまで、放置して生着させる。移植されたマウスを、異なる処置群(n=5〜12)へと無作為に割り当てる。NOGマウスは、刺激されていないSCID免疫不全マウスまたはRAG免疫不全マウスにおいて観察される可能性があり、ヒト異種細胞による腫瘍生着に影響を及ぼしうる常在のNK細胞集団を含む免疫細胞の完全な欠如により反映される通り、ヒト化マウスモデルに最も適切な株のうちの1つである(Itoら、Curr Top Microbiol Immunol、2008年、324巻:53〜76頁)。腫瘍移植片が、約50〜300cm
3、好ましくは100〜200cm
3の容量に達する、7日目〜21日目(d7〜d21)において、軟膜から単離されたヒトPBMC 5×10
6〜100×10
6個を、宿主マウスの腹腔へと注入する。対照群からのマウスには、ヒトPBMCを施さず、ヒトPBMCを施される対照媒体で処置されるマウスとの比較のための非移植対照マウスとして使用して、T細胞の、腫瘍成長に対する影響をモニタリングする。TCBによる処置スケジュールは、あらかじめ得られた薬物動態データに基づき、抗BCMA/抗CD3 TCBcv抗体の最大3〜6回の注射のための、週1回のi.v.投与、s.c.投与、またはi.p.投与からなる。ヒトPBMCによるレシピエントの再構成(d9〜d23)の2日後、1μg/kg〜20mg/kg、好ましくは、5μg/kg〜0.5mg/kgの範囲の抗BCMA/抗CD3 2TCBcv抗体の初回投与を、尾静脈注射を介して、またはs.c.注射もしくはi.p.注射により施す。サテライト群の一部のマウスでは、採血時点を、薬物動態解析のために、抗BCMA/抗CD3 2+1 Fc含有TCB抗体の注射の5分後、1時間後、8時間後、および24時間後において実施する。初回のTCB処置の3〜7日後、レシピエントマウスを、抗BCMA/抗CD3 TCBcv抗体の2回目の投与で処置する。2回目のTCB注射の1時間前に、血液を収集して、処置抗体のトラフレベルを得る。2回目のTCB処置の3〜7日後、レシピエントマウスを、抗BCMA/抗CD3 TCBcv抗体の3回目の投与で処置するなどである。処置は、3週間にわたり継続するように、すなわち、週2回のスケジュールでは6回の投与、週1回のスケジュールでは3回の投与のそれぞれとなるように計画する。2回目のTCB注射(週1回の投与スケジュールにおいて)および4回目のTCB注射のそれぞれの1時間前に、薬物動態解析のために、血液を収集する。2回目のTCB処置と3回目のTCB処置との間、および4回目のTCB処置と5回目のTCB処置との間のそれぞれにおいて、サテライト群の一部のマウスを安楽死させ、薬力学効果の実証、ならびに処置されたマウスにおけるT細胞の活性化およびT細胞機能など、副次的評価項目の測定のために使用する。主要評価項目は、腫瘍容量により測定する。研究中に、腫瘍を、キャリパーにより測定し、進行を、腫瘍容量(TV)の群間比較により査定する。腫瘍成長阻害T/C(%)は、T/C(%)=100×(解析群のTV中央値)/(対照媒体処置群のTV中央値)としてのTCを計算することにより決定する。一部の研究では、宿主マウスの生存を、主要評価項目または副次的評価項目として使用する。H929細胞系の代替物として、ヒト骨髄腫細胞系RPMI−8226(ATCC(登録商標)CCL−155(商標))、U266B1(ATCC(登録商標)TIB−196(商標))、またはL−363細胞系(Leibniz Institute DSMZ(German collection of microorganisms and cell cultures);DSMZ受託番号ACC 49)を、異種移植片として使用することもできる。一部の研究では、NOD−Rag1(ヌル)−γ鎖(ヌル)(NRG)成体マウス(The Jackson Laboratory)を、移植レシピエントとして使用することもできる。一部の研究では、レシピエントマウスを、週2回および/または1回の処置スケジュールのために、同等用量のBCMA×CD3(scFV)
2(例えば、WO2013/072415およびWO2013/072406において記載されている、BCMA×CD3二特異性T細胞エンゲージャーBiTE)で処置する。
【0341】
b)PBMCヒト化NOGマウスによる、H929ヒト骨髄腫異種移植モデルにおいて、抗BCMA/抗CD3 T細胞二特異性抗体により誘導される、抗腫瘍活性。消失半減期が長いために、Fc含有抗BCMA/抗CD3 TCBcv抗体は、週1回のスケジュールにより、等モル用量で施される、BCMA50−BiTE(登録商標)など、(scFv)
2ベースの二特異性抗体より有効でありうる。83A10−TCBcv、およびBCMA50−BiTE(登録商標)(WO2013072415およびWO2013072406において記載されている)の、in vivoにおける効果を比較し、PBMCヒト化NOGマウスによる、H929ヒト骨髄腫異種移植モデルにおいて査定した。NOGマウスは、常在のNK細胞集団を含む免疫細胞を完全に欠いているので、ヒト化マウスモデルに適し、したがって、ヒト異種細胞による腫瘍生着に対する許容性が大きい(Itoら、Curr Top Microbiol Immunol、2008年、324巻:53〜76頁)。略述すると、研究の0日目(d0)に、50:50でマトリゲル(BD Biosciences、France)を含有する100μLのRPMI 1640培地中に5×10
6個の、ヒト骨髄腫細胞系NCI−H929(NCI−H929、ATCC(登録商標)CRL−9068(商標))を、8〜10週齢の免疫不全NOD/Shi−scid IL2rガンマ(ヌル)(NOG)雌マウス(Taconic、Ry、Danemark)の右脇腹の背側へと、皮下(SC)注入した。H929腫瘍細胞のSC植込みの24〜72時間前に、全てのマウスに、線源(1.44Gy、60Co、BioMep、Bretenieres、France)による全身照射を施した。15日目(d15)に、NOGマウスに、ヒトPBMC(PBS 1×、500μL、pH7.4中)2×10
7個の単回腹腔内(IP)注射を施した。ヒトPBMCの特徴付けは、免疫表現型決定(フローサイトメトリー)により実施した。次いで、Vivo manager(登録商標)ソフトウェア(Biosystemes、Couternon、France)を使用して、マウスを、異なる処置群および対照群(n=9/群)へと、注意深く無作為化し、統計学的検定(分散分析)を実施して、群間の均質性について調べた。抗体処置は、腫瘍容量が、全てのマウスにおいて、少なくとも100〜150mm3に達し、媒体で処置された対照群では、平均腫瘍容量が、300±161mm3に達し、2.6nM/kgの対照TCB処置群では、315±148mm3、2.6nM/kgの83A10−TCBcv群では、293±135mm3、および2.6nM/kgのBCMA50−(scFv)2(BCMA50−BiTE(登録商標))群では、307±138mm3に達した、19日目(d19)に、すなわち、H929腫瘍細胞のSC注射の19日後に開始した。TCB抗体による処置スケジュールは、83A10−TCBcvによりあらかじめ得られた薬物動態結果に基づき、週1回、最長3週間のIV投与(すなわち、合計3回のTCB抗体の注射)からなった。ヒトPBMCによる宿主マウスの再構成(d19)の4日後、抗BCMA/抗CD3 83A10−TCBcv抗体(2.6nM/kgのそれぞれ、0.5mg/kg)の初回投与を、尾静脈注射を介して施した。血液試料は、頸部/下顎部における静脈穿刺(麻酔下で)により、各処置の1時間前、2回目の処置の2時間前、および終了時に、83A10−TCBcvおよび対照TCBcvで処置された全ての群のマウスから収集した。血液試料は、凝固活性化因子を含有するチューブ(T MGチューブ、cherry red top、Capiject(登録商標)、Terumo(登録商標))へと速やかに移した。チューブを、室温で30分間放置して、凝固させた。次いで、凝固物/血清の分離のために、チューブを、1,300gで5分間遠心分離した。血清アリコートを調製し、液体窒素中で瞬時凍結させ、さらなる解析まで、−80℃で保存した。研究中に、腫瘍容量(TV)を、キャリパーにより測定し、進行を、TVの群間比較により査定した。TG(%)として規定される腫瘍成長の百分率は、TG(%)=100×(解析群のTV中央値)/(対照媒体処置群のTV中央値)を計算することにより決定した。倫理的な理由で、マウスは、TVが、少なくとも2000mm3に達したら、安楽死させた。
図29は、実験群ごとの各個々のマウスのTV:(A)媒体対照(実線)および対照TCB(点線)を含む対照群、(B)83A10−TCBcv(2.6nM/kg)群、ならびに(C)BCMA50−BiTE(登録商標)(2.6nM/kg)を示す。83A10−TCBcv(2.6nM/kg)群では、マウス9匹中6匹(67%)は、それらの腫瘍を、d19、すなわち、初回のTCB処置において記録されたTVをなおも下回って退縮させ、腫瘍の退縮は、研究の終了まで維持された。83A10−TCBcv(2.6nM/kg)処置群内の3匹のマウスであって、腫瘍の退縮を示さなかったマウスのTVは、d19において、それぞれ、376、402、および522mm3と等しかった。これに対し、等モル用量のBCMA50−BiTE(登録商標)(2.6nM/kg)により、週1回のスケジュールで3週間処置された9匹のマウス(0%)はいずれも、いずれの時点においても、それらの腫瘍を退縮させなかった。表30は、全ての実験群における、時間経過にわたる、腫瘍容量の推移を示す。腫瘍成長の百分率は、d19〜d43にわたり計算し、83A10−TCBcv(2.6nM/kg)群と、BCMA50−BiTE(登録商標)(2.6nM/kg)群との間で比較した(
図30)。結果は、83A10−TCBcv(2.6nM/kg)群では、TG(%)が、一貫して、かつ、有意に低減されるほか、TG(%)は、BCMA50−BiTE(登録商標)(2.6nM/kg)と比較した場合、常に低値であることを実証する。表31は、19〜43日目における、腫瘍容量(TV)中央値および腫瘍成長の百分率(TG(%))を示す。全体的な結果は、処置を、週1回3週間のスケジュールにおいて、等モル用量で施す場合、83A10−TCBcvは、in vivoにおいて抗腫瘍活性を誘導するのに、BCMA50−BiTE(登録商標)より優れていることを明らかに実証した。
【0342】
【表30-1】
【表30-2】
【表30-3】
【表30-4】
【0343】
【表31】