特許第6703528号(P6703528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6703528平坦部品を磁気パルス溶接するコイル及び関連する溶接方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703528
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】平坦部品を磁気パルス溶接するコイル及び関連する溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/06 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   B23K20/06
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-516774(P2017-516774)
(86)(22)【出願日】2015年9月23日
(65)【公表番号】特表2017-532206(P2017-532206A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】EP2015071819
(87)【国際公開番号】WO2016046248
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2018年6月21日
(31)【優先権主張番号】1458963
(32)【優先日】2014年9月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517100174
【氏名又は名称】エイディエム28・エスアーエルエル
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アヴリヨー,ジル
(72)【発明者】
【氏名】キュク・ルランデ,ジャン−ポール
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ,サミュエル
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−67357(JP,A)
【文献】 特開2003−123960(JP,A)
【文献】 特表2014−530107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を磁気パルス溶接する有効部分(125)を備えるコイル(10)であって、有効表面(121)と呼ぶ、前記有効部分(125)の表面は、前記部品の相互重複区域(25)の作用区域において、前記部品の一方に面して配置することを意図する、コイル(10)において、
前記有効表面(121)は、前記有効表面(121)の幅Lbにわたり、前記有効表面が平面(XY)に対して0ではない角度を呈することを意図するような傾斜外形と、前記傾斜外形を有する部分(123)によって互いに結合している、平面外形を有する2つの部分(122、124)を有し、
前記コイル(10)は、前記部品が溶接のために前記コイルの所定位置にある場合、前記平面(XY)に沿って、少なくとも前記作用区域内に延在する、前記有効表面に最も近い前記部品を磁界にさらす
ことを特徴とする、コイル(10)。
【請求項2】
前記有効部分(125)は、前記有効表面(121)の両側に、面取り部分及び/又は段付き部分を備える、請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
前記有効部分を備える磁界集束器を備える、請求項1又は2に記載のコイル。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載のコイル及び2つの部品を備える溶接セットであって、前記2つの部品は、前記部品の重ね合せ部で重複区域を形成するように重ねて配置し、前記重複区域は、前記コイルの前記有効表面に面し、前記コイルの前記有効表面に最も近い前記部品は、前記平面XYに沿って少なくとも前記作用区域内に延在する、溶接セット。
【請求項5】
2つの部品を磁気パルス溶接する方法であって、前記方法は、
−前記有効表面に最も近い前記部品の自由端が前記有効表面(121)に最も近いように前記部品を互いに対して配置し、請求項1から3のうちいずれか一項に記載のコイルの前記有効表面に面するいわゆる作用区域を形成するステップ、
−圧力を前記部品の一方の壁に加え、前記部品の一方の壁を前記部品のもう一方の壁に対して密に押圧して前記壁の永続的な結合を生じさせるように、前記作用区域を磁界にさらすステップ
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接の分野に関し、より詳細には、部品を互いに永続的に組み付ける磁気パルス溶接の分野に関する。本発明は、詳細には、平坦部品を溶接する、改良したコイルの実施形態に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気パルス溶接は、重複区域における互いに対する圧力によって2つの金属部品の間に結合をもたらすことを可能にする衝撃溶接方法の分野に属する。そのような磁気パルス溶接方法の原理は、主に、コイルが生成する電磁力による、部品の高速衝撃に基づく。
【0003】
従来、そのような磁気パルス溶接方法を実施するシステムは、短く、強力な磁界を生成する、コイルに結合した1つ又は複数のコンデンサを備える。1つ又は複数のコンデンサは、多量の電気エネルギーを貯蔵するために使用する。生成される強力な磁界は、この電気エネルギーをコイル内に超急速で放出することによるものである。
【0004】
そのような方法を用いて2つの部品を互いに溶接することを達成するために、上記2つの部品は、少なくともいわゆる重複区域上で互いに前もって重ねてある。コイルは、この重複区域のレベルで位置決めする。内側部品と呼ぶ部品は、コイルに接触することなく、コイルに近接して位置決めした部品であり、外側部品と呼ぶ部品は、コイルから最も遠い部品である。1つ又は複数のコンデンサ内に前もって貯蔵してある、超多量の電気エネルギーは、超高強度の可変電流の形態で、かなりの短時間でコイル内に突如放出される。例として、いくつかのシステムは、数マイクロ秒で数十万アンペアを達成することができる。電流は、コイルと内側部品との間に可変磁界を生成し、この内側部品内に渦電流を誘起する。周囲の磁界に付随するこうした渦電流は、ローレンツ力と呼ばれるかなりの量の力を内側部品内に生じさせる。これらの力は、内側部品の外側部品に対する強力な加速度を発生させる。内側部品が外側部品に衝突する速度は、数百m/sまで上昇させることができる。いくつかの衝撃条件、特に、衝突角度及び衝突速度が満たされると、この衝撃は、一方で、2つの部品の表面を清浄にする、材料に対する噴射をもたらし、もう一方で、2つの部品の材料の原子が、原子の固有の反発力に打ち勝つほどに互いを接触させる圧力を生成し、こうして無溶解金属結合をもたらす。この場合、内側部品の壁は、冶金学上の点で外側部品の壁に結合しているだけでなく、残存する変形も受けている。
【0005】
そのような磁気パルス溶接方法は、一般に、いわゆる環状コイルにより管状部品の組付けに使用する。この方法は、連続区域に対し、又は複数の箇所により平坦溶接板金にも使用する。
【0006】
そのような磁気パルス溶接方法の1つの利点は、2つの部品の組付けを固体の状態で実施することにあり、これにより、材料の溶解を伴う従来の溶接における全ての既知の問題を対処可能にする。したがって、エネルギー損失は最小であり、その結果、溶接する部品はそれほど熱くならない。したがって、溶接中に部品を溶解させないことにより、異なる溶融点を有する材料の組付けを可能にする。
【0007】
しかし、磁気パルス溶接方法は、部品を互いに溶接するために強い強度を必要とするといった欠点を生じさせる。そのような強度を用いると、コイル内に著しい温度及び応力が生じ、コイルのひび又は溶解等、コイルに対する不可逆的な損傷をもたらすおそれがある。
【0008】
この方法に伴う別の欠点は、生成した溶接部の質にもある。2つの部品の接触部は、溶接を保証するものではない。
【0009】
溶接を行う間、いくつかのパラメータ、特に衝突角度及び衝突速度を考慮に入れなければならない。これら2つのパラメータは、コイルと、溶接する2つの部品との最初の相対的な配置、部品の材料、及び使用する電流信号に関連する。
【0010】
要約すると、衝突速度は、2つの部品の間の径方向の衝突速度である。部品に接線方向に働く衝突点速度も定義される。衝突速度及び衝突点速度は、衝突角度によって関連付けられる。こうした衝突速度及び衝突点速度は、衝撃の際に変化する。衝突点速度は、数千m/sまで上昇させることができる。
【0011】
衝突角度は、衝突の際の2つの部品の壁の間の角度として定義される。衝突角度は、動的である、即ち、衝突角度は、特に内側部品が非均一に変形するため、衝突の間に変化する。
【0012】
各対の材料は、溶接ウインドウ、即ち、パラメータのセット(衝突角度、衝突点速度)によって定義され、良質な溶接部の生成を可能にする。パラメータのうちの1つの変更により、溶接部の質に影響を及ぼすことがある。とりわけ、衝突角度が衝突の間に変化した場合、溶接ウインドウ内に留めることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、これらの欠点を改善することである。
【0014】
本発明の目的は、特に、いわゆる平坦部品の溶接を可能にする一方で、そのような溶接部によって得られる物品の機械的強度を保証し、且つ健全な溶接部を保証する、効果的な解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、有効部分を備える部品を磁気パルス溶接するコイルに関し、有効表面と呼ぶ、有効部分の表面は、部品相互重複区域において部品の一方に面することを意図する。部品は、少なくとも1つの平坦表面又は実質的に平坦な表面を有する。
【0016】
平坦部品は、部品の長さの全て又は一部にわたり、少なくとも重複区域において、平面又は実質的に平面の形態の少なくとも1つの表面を有する部品であると理解すべきである。
【0017】
有効部分は、コイルのレベルで磁界を生成するために、電気エネルギー貯蔵ユニットによって電流を集束、循環、送出させるコイルの一区域であると理解すべきである。有効区域の厚さは、実質的に外殻の厚さに対応する。高周波では、電流は、外殻厚さに対応する、縮小した厚さ部にわたり循環する。磁気パルス溶接で加えられる周波数は、数十kHzであり、この周波数は、例えば鋼鉄材料で作製したコイルの数ミリメートルの外殻厚さに対応する。
【0018】
平坦部品は、重ねて配置し、その重ね合せ部で重複区域を形成し、次に、コイルの有効表面に面して位置合わせし、作用区域において、コイルの生成した磁界によって重ね合せ部で溶接することを意図する。部品の一方、例えばコイルの有効表面に最も近い部品は、所与の平面XYに沿って少なくとも作用区域内に延在する。
【0019】
作用区域は、有効表面に面して位置する重複区域の部分である。上記作用区域は、内側部品と外側部品との間の最大溶接長さに対応する作用長さLWZを有する。
【0020】
有効表面は、所与の幅Lbを有する。
【0021】
有効表面の幅Lbは、上記部品の間に予め定義した長さの溶接部の生成を可能にするように寸法決定する。この予め定義した長さは溶接長さである。好ましくは、有効表面の幅は、少なくとも溶接長さと等しい。
【0022】
本発明によれば、コイルの有効表面はその幅Lbにわたり傾斜外形を有し、このため、部品をコイルのレベルに配置し、溶接のための固定手段によって所定位置に固定したときに、上記有効表面が、コイルの有効表面に最も近い部品が画定する平面に対して0ではない角度を呈することを意図するようにする。
【0023】
コイルのそのような形態は、有利には、コイルの有効表面と、内側部品と呼ぶ、コイルの有効表面に最も近い部品との間の間隙の変更を可能にし、衝突点及び衝突角度といった基本パラメータに影響を与える。そのような有効表面の外形は、内側部品をその自由端が有効表面に最も近いように位置決めした場合、実質的に一定の衝突角度を保持することを可能にし、溶接する部品の対の材料の溶接ウインドウ内により長時間保持することを可能にする。2つの部品の間の溶接長さが増大するため、組付けに対する機械的耐強度が向上する。
【0024】
本発明によるコイルの別の利点は、温度及び塑性変形の点で、コイルが受け、超高強度の電流がコイル内を通過することにより生じる最大応力を低減することにある。コイルの有効表面の外形の変化は、有効区域における電流の分散の変化をもたらす。実際、関係するパラメータの1つは、コイルの有効表面と内側部品との間の距離である。有効部分の電流密度は、コイルの有効表面と内側部品との間の間隙が増大するにつれて減少する。したがって、電流密度は、実際にこの距離に反比例するため、本発明によるコイルの有効表面の外形は、電流密度が最高であったコイルの区域に対し距離の増大を可能にする。したがって、この区域では応力が低下する。コイルの寿命は著しく増大する。
【0025】
好ましい実装形態によれば、本発明は、個別に実装される以下の特徴、又は技術的に実現可能な組合せのそれぞれにおける特徴に更に焦点を当てる。
【0026】
好ましい実施形態によれば、有効表面は、その幅Lbの全てにわたり、傾斜外形を有する。
【0027】
好ましい実施形態によれば、有効表面は、その幅Lbにわたり、傾斜外形を有する部分によって平面外形が互いに結合している2つの部分を有する。
【0028】
好ましい実施形態によれば、部品溶接中のコイルの塑性変形を低減するために、有効部分は、有効表面の両側に面取り部分及び/又は段付き部分を備える。
【0029】
好ましい実施形態によれば、コイルは、有効部分を備える磁界集束器を備える。磁界集束器は、内側部品とコイルの外側表面との間に位置決めする。この場合、有効部分は、上記磁界集束器内に生成される。
【0030】
磁界集束器は、有利には、交換可能な部品であり、いくつかの用途(部品の寸法の変更等)で全く同一のコイルを保持することを可能にする。
【0031】
本発明の実施形態の少なくとも1つによれば、コイルは、部品がコイルのレベルで適所にある場合、部品と共に溶接セットを形成する。2つの部品は、好ましくは、重ねて配置し、その重ね合せ部で重複区域を形成する。2つの部品は、コイルの有効表面に面し、好ましくは、コイルの有効表面に最も近い部品は、所与の平面XYに沿って少なくとも作用区域内に延在する。有効表面は、少なくとも幅LWZに等しい幅Lbを有する。
【0032】
本発明は、2つの部品を磁気パルス溶接する方法にも関する。方法は、
−内側部品の自由端が有効表面に最も近いように、部品を互いに対して配置し、本発明の実施形態のうち1つによるコイルの有効表面に面する作用区域を形成するステップ、
−圧力を部品の一方のいわゆる外壁に加え、この外壁を部品のもう一方のいわゆる外壁に対して密に押圧して壁の永続的な結合を生じさせるように、作用区域を磁界にさらすステップ
を含み、このステップを溶接ステップと呼ぶ。
【0033】
2つの平坦部品は、重複区域を形成するように重ねて位置決めする。2つの部品は、重複区域に位置する作用区域が有効表面に面して置かれるように、コイルに面して配置する。圧力は、有効表面に最も近い部品、即ち内側部品の外壁に加えられ、内側部品の外壁は、有効表面から最も遠い部品、即ち外側部品の外壁に対し押圧する。
【0034】
溶接ステップでは、作用区域は、コイルの有効部分から発生した磁界にさらされ、このため、圧力は、コイルに最も近い部品の外壁に対し加えられ、この部品の反対側の外壁をもう一方の部品の外壁に密に押圧し、これらの外壁の永続的な結合を生じさせる。
【0035】
したがって、作用区域をコイルの生成した磁界にさらし、圧力溶接が保証されると、2つの部品は、速度が加えられること、及びコイルに最も近い部品がもう一方の部品の方に変形することによって、互いに対し密に押圧される。
【0036】
そのような方法は、溶接ステップにおいて、2つの部品の間の実質的に一定である衝突角度の維持を可能にし、これにより、溶接する部品を形成する対の材料の溶接ウインドウ内に保持することを可能にする。したがって、作製する溶接部を改良し、溶接長さが増大する。
【0037】
そのような方法は、溶接ステップの間のコイルの熱応力及び塑性変形に対する耐強度の向上も可能にする。
【0038】
添付の図面を参照しながら以下に示す説明を読めば本発明をより良好に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施形態の第1の例による、磁気パルス溶接のための平坦コイル、及び溶接する部品の概略斜視図であり、部品は、互いに向かい合っており、点線で示す。
図2図1のコイルの線AAに沿った横断面図であり、上記コイルの有効表面の外形を示す。
図3】実施形態の第2の例による、磁気パルス溶接のための平坦コイルの概略平面図である。
図4】関連する溶接ウインドウにおける同じ対の材料について、従来技術のコイル及び本発明の一実施形態によるコイルによって得た溶接距離を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1及び図2は、第1の実施形態による、2つの部品20、30を磁気パルス溶接するコイル10を示す。2つの部品20、30は、金属材料製である。
【0041】
そのようなコイル10は、磁気パルス溶接デバイスの一体部分を形成しており、磁気パルス溶接デバイスは、貯蔵ユニット50及び1つ又は複数のスイッチ51を更に備える。
【0042】
貯蔵ユニット50は、例えば数十キロジュール(kJ)程の高いエネルギーを貯蔵するように構成し、このエネルギーを貯蔵することを意図する。
【0043】
実施形態の好ましい例では、貯蔵ユニットは、放電用コンデンサのバッテリである。
【0044】
コイルは、その一部は、後述する境界を定めた空間内に集束する磁界を生成するように構成し、この磁界を生成することを目的とする。
【0045】
内側部品20及び外側部品30と呼ぶ2つの部品は、重ねて配置し、これらの重ね合せ部でいわゆる重複区域25を形成し、次に、コイル10によって上記重複区域の全て又は一部を溶接することを意図する。2つの部品20、30は、少なくとも重複区域において実質的に平行に重ねて位置決めする。
【0046】
好ましくは、重複区域25は、少なくとも1つの部品の端部、例えば内側部品20の端部に位置する。
【0047】
コイル及び2つの部品は、上記2つの部品がコイルのレベルで適所にある場合、溶接セットを形成する。
【0048】
図示しない一実施形態では、外側部品20を、非常に低い導電性を呈する材料、例えば鋼鉄製の部品等で作製する場合、プッシャと呼ぶ中間部品を外側部品の外壁に対して位置決めする。この中間部品は、良好な導電性を呈する。
【0049】
記載する実施形態では、一般には平坦コイルと呼ぶコイル10は、Eの字を平らに置いた形態の本体11を備える。
【0050】
本体は、中央枝部12を有し、中央枝部の両側に、それぞれがスリットによって上記中央枝部から分離する2つの側方枝部14、15を有する。
【0051】
本体11は、上面111と呼ぶ第1の面、及び底面112と呼ぶ、上記第1の上面とは反対側の第2の面を有する。
【0052】
本体11は、一方で、塑性変形に対する機械的抵抗という特性を呈し、もう一方で、高い導電性という特性を呈する材料で作製し、数十万アンペア程の超高強度の電流を材料内に循環させる。
【0053】
実施形態の好ましい例では、本体の材料は、鋼鉄製、好ましくは高強度鋼製である。
【0054】
側方枝部14、15は、優先的に、固定手段(図示せず)を通過させる貫通孔(図示せず)を備え、固定手段は、エネルギー貯蔵ユニット50及び1つ又は複数のスイッチ51に結合している基部(図示せず)にコイルを固定するように構成する。
【0055】
1つ又は複数のスイッチ51を閉鎖すると、コイル10の側方枝部14、15及び中央枝部12は貯蔵ユニット50に結合し、高強度の電流がコイル10内を循環し、磁界を生成する。
【0056】
コイルは、コイル区域内の電流密度が溶接条件を満たすのに十分であるように設計する。この区域を有効部分125と呼ぶ。この区域は、例えば文献WO2012/103873に記載されている。
【0057】
本実施形態で記載する平坦コイルの場合、電流は、図1の矢印によって示すように、中央枝部12内に通し、2つの側方枝部14、15内に発生させることによってコイル内を循環する。この電流は、中央枝部12内に位置する有効部分125において、有効表面121が境界を定める層の上に、第1の面111のレベルで、外殻厚さに対応する厚さで集束する。
【0058】
鋼鉄製コイルの非限定例では、外殻厚さは、数十kHzの周波数では数ミリメートル程のものである。電流は、重複区域25と有効表面121との間の境界を定める、作業区域と呼ぶ空間内に集束磁界を発生させる。
【0059】
2つの部品20、30は、有利には、重複区域25の全て又は一部が有効表面121に面するようにコイルのレベルで位置決めする。内側部品20は、有効部分125に最も近い部品であり、有効表面121に面する部品である。
【0060】
有効表面121に面する重複区域25を作用区域と呼ぶ。上記作用区域は、作用長さLWZと呼ぶ予め定義した長さを有する。この作用長さLWZは、内側部品と外側部品との間の最大溶接長さに対応する。実際には、溶接長さは、この作用長さよりも実質的に短い。
【0061】
部品は、コイルの上面に実質的に平行である、三面体XYZの平面XY内に延在する。
【0062】
コイルの有効表面121は、重複区域25の作用長さLWZと少なくとも等しいように寸法決定した幅Lbを有する。
【0063】
有効表面121は、その幅Lbにわたり傾斜外形を有する。即ち、有効表面は、作用区域において内側部品20の平面XYと平行ではない。
【0064】
言い換えれば、作業区域は、幅Lbに沿って漸減する区分を有する。
【0065】
一実施形態では、作業区域は、中央枝部12の第1の縁部128から開始し第2の縁部129に至る方向に、幅Lbに沿って単調減少する横断面の区分を有する。
【0066】
好ましい実施形態では、有効表面121は、その幅Lbにわたり、
−平面外形を有する、即ち、有効表面が内側部品20の平面XYと平行である、幅L1の第1の部分122、
−傾斜外形を有する、即ち、有効表面が重複区域25において内側部品20の平面XYと平行ではない、幅L2の第2の部分123、
−平面外形を有する、即ち、有効表面が内側部品20の平面XYと平行である、幅L3の第3の部分124
を有する。
【0067】
言い換えれば、作業区域は、その幅Lbにわたり、中央枝部12の第1の縁部128から開始して第2の縁部129に至る方向に、連続する3つの区分:
−一定の横断面S1を有する幅L1の第1の区分
−単調減少する横断面を有する幅L2の第2の区分、
−一定の横断面S3を有する幅L3の第3の区分
によって形成された断面を有する。
【0068】
言い換えれば、作業区域は、第3の区分内の横断面S3よりも小さい、第1の区分内の横断面S1を有する。
【0069】
第2の区分は、角度βの勾配によって画定する。
【0070】
第1の区分の横断面S1は、部品に最も近い区分であるため、コイル内を循環する電流強度レベルは、上記第1の区分においてより高くなる。実際には、磁界線は、互いにより近く、磁気圧力はより大きい。したがって、この第1の区分に位置する内側部品20の部分は、後述する溶接方法においてより強力な加速度を有することになる。
【0071】
一方、第3の区分の横断面S3が最大であるため、コイル内を循環する電流密度は、第3の区分ではそれほど高くなく、上記第3の区分内の磁気圧力を低減することになる。更に、コイルは、この第3の区分では機械的応力も熱応力もそれほど加えられない。
【0072】
そのような有効表面の外形は、有利には、コイルにより低いエネルギーを送出する貯蔵ユニットの使用を可能にし、上記コイルの熱及び構造に対する耐強度を向上させる。より低いエネルギーを送出するそのような貯蔵ユニットは、経済的な利益ももたらす。
【0073】
そのような有効表面の外形は、第1の部分のレベルでコイルの応力を制限することも可能にし、コイルの寿命を増大可能にする。
【0074】
そのような有効表面の外形は、有利には、コイル10と内側部品20との間の空間を修正することも可能にし、このことは、衝突点速度及び衝突角度といった基本パラメータに影響を与える。そのような外形は、内側部品20を、その自由端が作用区域の最小横断面にある第1の区分のレベルに位置するように位置決めした場合、外側部品を形成する材料の溶接可能ウインドウ内に基本パラメータをより長時間保持可能にする。したがって、内側部品20と外側部品30との間の溶接部の質及び効力が向上する。
【0075】
好ましい一実施形態では、第1の区分の幅L1は、第3の区分の幅L3よりも小さい。
【0076】
実施形態の好ましい一例では、幅L1は、有効表面121の幅Lbの10%に相当し、幅L3は、有効表面121の幅Lbの30%に相当し、第2の区分の勾配は、15°の角度βを呈する。
【0077】
縮小幅L1及び顕著な角度βの勾配により、第3の区分に応力が伝達される。
【0078】
別の実施形態では、プッシャを使用すると、第1の区分の幅L1は、第3の区分の幅L3に相当する。
【0079】
そのような実施形態の好ましい一例では、鋼鉄製コイルの場合、幅L3及び幅L1は、幅L1は、有効表面121の幅Lbの20%に相当し、第2の区分の勾配は、10°の角度βを呈する。
【0080】
図示しない一実施形態では、溶接中のコイルの塑性変形を更に著しく低減し、したがって有効表面121のレベルでコイルの応力を低減するために、有効部分125は、中央枝部12の第1の縁部128及び第2の縁部129の両側に面取り部分を備える。
【0081】
別の実施形態では、磁界線のスパイク効果及び/又はピンチ効果をなくすために、中央枝部は、第1の縁部128及び第2の縁部129の両側に丸みのある周縁輪郭を備える。したがって、電流密度は、より良好に分散し、応力の集中及び更には温度スパイクを回避する。
【0082】
次に、そのようなコイルに基づく溶接方法の一例を説明する。
【0083】
2つの部品を互いに磁気パルス溶接するために、方法は、溶接する2つの部品をコイルのレベルで位置決めする第1のステップを含む。
【0084】
2つの部品は、溶接を望む点で重複区域を形成するように重ねて位置決めする。
【0085】
2つの部品は、作用区域が有効表面121に面して置かれるようにコイル10上に配置する。
【0086】
2つの平坦部品は、有効表面の近傍で、実質的に互いに平行に、少なくとも重複区域内で、内側部品20が画定する平面XYに沿って固定手段(図示せず)によって保持する。
【0087】
実装形態の好ましい一例では、内側部品20は、その端部が作用区域の最小横断面に置かれるように、即ち第1の区分のレベルで、位置決めする。
【0088】
次に、方法は、磁気パルス溶接ステップを含む。
【0089】
作用区域は、コイルの有効部分から発生した磁界にさらされ、そのため、内側部品の外壁、又はプッシャが必要である場合は上記プッシャの外壁に対し圧力が加えられ、圧力により、内側部品の外壁を外側部品の外壁に対し密に押圧し、これらの永続的な結合を生じさせる。
【0090】
図3は、別の平坦コイル実施形態を示す。コイルは、Uの字を平らに置いた形態の本体11を備える。
【0091】
本体は、中央スリットにより分離させた2つの側方枝部12、14を有する。
【0092】
1つ又は複数のスイッチ51を閉鎖すると、コイル10の側方枝部12、14は貯蔵ユニット50に結合し、高強度電流は、図3の矢印で示すように側方枝部12内に通し、側方枝部14内に発生させることによってコイル10内を循環し、磁界を生成する。
【0093】
電流は、枝部12内に位置する有効部分125内に、有効表面121が境界を定める層の上で、外殻厚さに対応する厚さで集束する。
【0094】
2つの部品20、30は、有利には、重複区域25が有効表面121に面するように、コイルのレベルで位置決めする。
【0095】
本発明は、Eの字を平らに置いた形態又はUの字を平らに置いた形態の平坦コイルに限定するものではない。コイルは、溶接する部品の形態に成形するために、異なる形態を有することができる。
【0096】
例えば、Sの字の形態の溶接部によって溶接することが望ましい平坦部品では、コイルは、Sの字の形態の有効表面を有し、この有効表面は、溶接する部品の重複区域に面して位置決めされることになる。
【0097】
図4は、全く同一の所与の対の材料について、従来技術のコイル及び本発明の一実施形態によるコイルによって得た溶接距離を示す。
【0098】
従来技術のコイル及び本発明の一実施形態によるコイルは、以下の同一の特徴を有する:
−有効表面は、6mmの幅Lbを有する、
−材料は鋼鉄である、
−溶接する2つの部品の間の距離は1.7mmである、
−周波数は、数十kHzである。
【0099】
作用長さLWZは、有効表面の幅Lbと同一、即ち6mmである。
【0100】
従来技術のコイルの有効表面は平面である。
【0101】
本発明の一実施形態によるコイルの有効表面は、
○コイルの有効表面の幅Lbの10%に等しい、長さL1の第1の部分;
○コイルの有効表面の幅Lbの40%に等しい、長さL3の第3の部分;
○10°の角度βである勾配を有する第2の区分
を有する。
【0102】
溶接する2つの部品の所与の対の材料に対し、コイルの有効部分の形態が何であれ、溶接ウインドウを決定する。この溶接ウインドウは、超低周波曲線(曲線S)、流体力学曲線(曲線H)、融解曲線(曲線F)及び遷移曲線(曲線T)によって定義する。22°での最大衝突角度の限界も図4に示す(曲線A)。溶接ウインドウに関するより包括的な説明は、文献、名称「Explosive welding of aluminum to aluminum:analysis,computations and experiments」、Grigno&all、International Journal of Impact Engineering 30、(2004年)、1333〜1351頁に見出すことができる。
【0103】
この溶接ウインドウでは、曲線Eは、従来技術のコイルに関する対(衝突角度、衝突点速度)の傾向を表す。曲線Eの太字部分Egは、溶接距離を示す(ほぼ4つの三角形は4mmの溶接を表す)。この溶接距離に対し、衝突角度は15から20°の間で大きく変動し、溶接部の質に反映する可能性がある。
【0104】
曲線Bは、本発明の選択実施形態によるコイルに関する対(衝突角度、衝突点速度)の傾向を表す。そのようなコイルは、6mmの距離にわたる区域の溶接を可能にする(6個の四角)。更に、この距離の大部分に対し、衝突角度は16°から18°の間でほぼ一定に維持されていることがわかる。
【0105】
上記の説明は、本発明の様々な特徴及び利点によって、本発明が目標のセットを達成していることを明らかに示している。具体的には、本発明は、熱伝導性の低い材料から作製した部品の溶接に適したコイル及び関連する磁気パルス溶接方法を提供する。本発明は、有利には、有効部分内に、溶接中にコイルに加えられる熱応力及び機械的応力を著しく低減するような外形を提供し、コイルの寿命を向上させる。そのようなコイルの形態は、溶接する部品の間の溶接部の改良ももたらす。
図1
図2
図3
図4