(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703530
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器用のシーリング装置
(51)【国際特許分類】
F23R 3/08 20060101AFI20200525BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20200525BHJP
F23R 3/10 20060101ALI20200525BHJP
F23R 3/42 20060101ALI20200525BHJP
F16J 15/08 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
F23R3/08
F02C7/28 C
F23R3/10
F23R3/42 A
F23R3/42 D
F16J15/08 L
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-519823(P2017-519823)
(86)(22)【出願日】2015年10月13日
(65)【公表番号】特表2017-533400(P2017-533400A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(86)【国際出願番号】US2015055331
(87)【国際公開番号】WO2016061101
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2018年10月1日
(31)【優先権主張番号】14/512,633
(32)【優先日】2014年10月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516089843
【氏名又は名称】アンサルド エネルジア アイ・ピー ユー・ケイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ANSALDO ENERGIA IP UK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー メターニッチ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ダブリュー. ジョージェンセン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ギール
(72)【発明者】
【氏名】ラメシュ ケシャヴァ−バトゥ
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0064693(US,A1)
【文献】
特開2011−179812(JP,A)
【文献】
特開2011−226481(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0238029(US,A1)
【文献】
特開昭57−136028(JP,A)
【文献】
特開平08−284688(JP,A)
【文献】
特開2014−178076(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0132708(US,A1)
【文献】
特開2011−220335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/00− 7/00
F02C 7/18
F02C 7/28
F16J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン燃焼器用のシーリングシステムであって、
前記ガスタービン燃焼器の軸線に沿って位置する燃焼ライナと、
圧縮空気が供給されるプレナム内に配置された、前記燃焼ライナの半径方向外側に位置する流れスリーブであって、前記燃焼ライナと当該流れスリーブとの間に環状通路を形成していて、前記プレナムからの圧縮空気を前記環状通路に導く穴を有する流れスリーブと、
第1の環状部分と、第2の環状部分と、移行部分とを有した圧縮可能なシールと、を有しており、
該圧縮可能なシールは、前記燃焼ライナと前記流れスリーブとの間に位置していて、前記圧縮可能なシールは、当該圧縮可能なシールを通って、前記環状通路内へと入る空気流を調整する、ガスタービン燃焼器用のシーリングシステム。
【請求項2】
前記流れスリーブは、外径と内径とを有した入口リングを有している、請求項1記載のシーリングシステム。
【請求項3】
前記圧縮可能なシールの前記第2の環状部分は、前記流れスリーブ入口リングの内径に接触している、請求項2記載のシーリングシステム。
【請求項4】
前記シールは、前記燃焼ライナの後端部近くに位置している、請求項1記載のシーリングシステム。
【請求項5】
前記圧縮可能なシールは、前記燃焼ライナの後端部近くの前記燃焼ライナの環状リングに固定的に取り付けられている、請求項1記載のシーリングシステム。
【請求項6】
前記流れスリーブ入口リング近くの前記圧縮可能なシールの前記第2の環状部分に設けられた複数の軸方向スロットをさらに有している、請求項3記載のシーリングシステム。
【請求項7】
前記空気流は、前記圧縮可能なシールの前記移行部分のまわりに間隔を置いて設けられた複数の開口によって、前記圧縮可能なシールにより調整される、請求項1記載のシーリングシステム。
【請求項8】
前記複数の開口は、前記燃焼ライナに均一な空気流を提供する、請求項7記載のシーリングシステム。
【請求項9】
ガスタービン燃焼器用のシーリングシステムであって、
前記ガスタービン燃焼器の軸線に沿って位置する燃焼ライナと、
該燃焼ライナの半径方向外側に位置する流れスリーブであって、前記燃焼ライナと当該流れスリーブとの間に環状通路を形成している流れスリーブと、
第1の壁と第2の壁を有した移行ダクトであって、前記第2の壁は前記第1の壁の半径方向外側に位置していて、前記第1の壁は前記燃焼ライナに摺動可能に係合している、移行ダクトと、
前記流れスリーブに取り付けられる第1の環状部分と、前記移行ダクトの前記第2の壁の外周面にのみ接触する第2の環状部分とを有した圧縮可能なシールと、を有している、ガスタービン燃焼器用のシーリングシステム。
【請求項10】
前記圧縮可能なシールを通る冷却流体流を調整するための複数の穴をさらに有している、請求項9記載のシーリングシステム。
【請求項11】
前記圧縮可能なシールの後端部から延在している複数の軸方向スロットをさらに有している、請求項10記載のシーリングシステム。
【請求項12】
前記複数の軸方向スロットは、前記複数の穴に交差している、請求項11記載のシーリングシステム。
【請求項13】
前記複数の軸方向スロットと前記複数の穴とは、前記環状通路内への前記圧縮空気の流れを調整する、請求項11記載のシーリングシステム。
【請求項14】
ガスタービン燃焼器用のシーリングシステムであって、
前記ガスタービン燃焼器の軸線に沿って位置する燃焼ライナと、
該燃焼ライナの半径方向外側に位置する流れスリーブであって、前記燃焼ライナと当該流れスリーブとの間に環状通路を形成している流れスリーブと、
第1の壁と第2の壁を有した移行ダクトであって、前記第2の壁は前記第1の壁の半径方向外側に位置していて、前記第1の壁は前記燃焼ライナに摺動可能に係合している、移行ダクトと、
前記移行ダクトの前記第2の壁に取り付けられる第1の環状部分と、前記流れスリーブの外周面にのみ接触する第2の環状部分とを有した圧縮可能なシールと、を有している、ガスタービン燃焼器用のシーリングシステム。
【請求項15】
前記圧縮可能なシールを通る冷却流体流を調整するための複数の穴をさらに有している、請求項14記載のシーリングシステム。
【請求項16】
前記圧縮可能なシールの後端部から延在している複数の軸方向スロットをさらに有している、請求項15記載のシーリングシステム。
【請求項17】
前記複数の軸方向スロットは、前記複数の穴に交差している、請求項16記載のシーリングシステム。
【請求項18】
前記複数の軸方向スロットと前記複数の穴とは、前記環状通路内への前記圧縮空気の流れを調整する、請求項16記載のシーリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ガスタービン燃焼器の後方領域をシールする装置および方法に関する。特に、本発明は、冷却のため、及び燃焼ライナへの噴射前の混合のために燃焼器に送られる圧縮空気の量を制御する装置及び方法を提供する。
【0002】
発明の背景
ガス駆動式タービンからの汚染物エミッションの量を低減する努力において、政府省庁は、窒素酸化物(NOx)および一酸化炭素(CO)の量の低減を要求する多くの規則を制定してきた。より少ない燃焼エミッションは、しばしば、特に燃料インジェクタ位置、空気流量および混合効率に関して、より効率的な空気分配制御プロセスに起因する可能性がある。
【0003】
初期の燃焼システムは、拡散型ノズルを利用していた。拡散型ノズルでは、燃料は、火炎領域の近くで、拡散によって、燃料ノズルの外部の空気と混合される。拡散型ノズルは、従来、十分な燃焼器安定性および低い燃焼ダイナミクスを維持するために燃料と空気とが、混合することなく、高温において化学量論的に実質的に相互作用時に燃焼することにより、比較的大量のエミッションを発生する。
【0004】
燃料と空気を予混合し、より低いエミッションを得る択一的な手段は、複数の燃焼段を利用することによって得ることができる。複数の燃焼段を備える燃焼器を提供するために、混合され、燃焼されて高温燃焼ガスを形成する燃料および空気も、段付けされなければならない。燃焼システム内へ通過する燃料および空気の量を制御することにより、利用可能な電力およびエミッションを制御することができる。燃料は、燃料システム内の一連の弁または特定の燃料インジェクタへの専用の燃料回路によって段付けすることができる。しかしながら、エンジン圧縮機によって大量の空気が供給されると、空気を段付けすることはより困難となり得る。
【0005】
燃焼システムの動作にとっては、燃料との混合及び反応のために、かつ冷却空気の供給源として、燃焼システムに供給される圧縮空気の量を調整することも重要である。従って、燃焼システムに入る圧縮空気の分配を慎重に制御する必要がある。昨今のガスタービン燃焼システムの多くは燃焼ライナを取り囲む流れスリーブを含んでいる。この流れスリーブは、燃焼システムに入る空気量を少なくとも部分的に調整することができる。このような燃焼システム100の一例が、
図1及び
図2に示されている。燃焼システム100は、燃焼ライナ104を取り囲む流れスリーブ102を有する。燃焼ライナ104を冷却し、燃焼プロセスで使用するための空気は、複数の穴108と、流れスリーブ後端110における開口とを通って通路106へと入る。このような装置は、通路106に入る冷却空気量を制御する方法を殆ど有していない。
【0006】
次に
図3を参照すると、流れスリーブ302と燃焼ライナ304との間の通路326への圧縮空気流を制御するための、選択的な従来の形式の燃焼システム300が示されている。このような装置では、燃焼ライナ304と流れスリーブ302との間のシーリングインターフェースが、ピストンリング308によって形成されている。ピストンリング308は、シールを確実にする適切な予荷重を提供するように寸法設定された横断面積を有している。しかしながら適切な予荷重には、組み込むための大きな半径方向面積が必要である。このような所要の半径方向面積は、単にそのサイズに起因して、流れ閉塞問題に加えて組み込み問題も引き起こす恐れがある。結果として、起こり得る流れの閉塞は、空気入口領域にわたって生じる圧力降下を増加させ、燃焼システムの性能に悪影響を与える。さらに、ピストンリングのシーリングシステム性能は、シーリングインターフェースの真円度に直接、関連している。
【0007】
発明の概要
本発明は、燃焼システムへの圧縮空気供給を調整する装置及び方法を開示している。より具体的には、本発明の1つの態様では、ガスタービン燃焼器用のシーリングシステムが開示される。このシーリングシステムは、ガスタービン燃焼器の軸線に沿って位置する燃焼ライナと、この燃焼ライナの半径方向外側に位置する流れスリーブとを有しており、これにより、燃焼ライナと流れスリーブとの間に環状通路が形成される。このシーリングシステムはさらに、第1の環状部分と、第2の環状部分と、これらの間に位置する移行部分とを有する圧縮可能なシールを有している。このシールは流れスリーブと燃焼ライナとの間に位置していて、このシールを通って通過することのできる圧縮空気量を制御するために複数の開口を含んでいる。
【0008】
本発明の択一的な態様では、ガスタービン燃焼器用のシールが開示される。このシールは、第1の直径を有した第1の環状部分と、第2の直径を有した第2の環状部分とを有していて、この第2の環状部分は、第1の環状部分の半径方向外側に位置している。このシールはさらに、第1の環状部分と第2の環状部分との間に延在する移行部分を含み、この移行部分は、冷却流体の流れを調整するための複数の開口を有している。
【0009】
本発明のさらに別の態様では、ガスタービン燃焼器への冷却流体流を調整する方法が開示されている。より具体的には、この方法は、燃焼ライナと流れスリーブとの間に延在する、複数のスロットと複数の開口とを有したシールを設けるステップを有している。冷却流体は、シールを横切るように方向付けられて、シールは所定の量の空気が、燃焼ライナと流れスリーブとの間に位置する通路に入ることを可能にする。
【0010】
本発明の付加的な利点及び特徴は、以下に続く説明において部分的に示され、部分的に以下の説明の検討により当業者に明らかになるか、又は本発明の実施によって学ばれ得る。ここで、添付の図面を特に参照して、本発明を説明する。
【0011】
添付の図面を参照して、本発明を以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来の燃焼システムシーリング装置の断面図である。
【
図2】
図1の燃焼システムの一部分を示す詳細な断面図である。
【
図3】従来の形式による選択的な燃焼システムシーリング装置の一部を示す断面図である。
【
図4】本発明の1つの態様による燃焼システムの斜視図である。
【
図5】
図4の燃焼システムの一部を示す詳細な斜視図である。
【
図6】
図5の燃焼システムの一部を示すさらに詳細な斜視図である。
【
図7】本発明の1つの態様による燃焼システムの断面図である。
【
図8】
図7の燃焼システムの一部を示す詳細な断面図である。
【
図9】本発明の1つの態様を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の選択的な態様による燃焼システムの一部を示す断面図である。
【
図12】本発明のさらに別の選択的な態様による燃焼システムの一部を示す断面図である。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、燃焼システムへの圧縮空気流を調整するシステム及び方法を開示している。本発明は
図4〜
図9に詳細に示されている。最初に
図4〜
図8を参照するが、ガスタービン燃焼器で使用するシーリングシステム400が示されている。シーリングシステム400は、ガスタービン燃焼器404の中心軸線A−Aに沿って位置する燃焼ライナ402を有していて、さらに、この燃焼ライナ402の半径方向外側に位置する流れスリーブ406を含んでおり、これにより、燃焼ライナ402と流れスリーブ406との間に環状通路408が形成される。シーリングシステム400はさらに、燃焼ライナ402と流れスリーブ406との間に位置する圧縮可能なシール410を有している。圧縮可能なシール410は
図5、
図6及び
図8により詳しく示されていて、第1の環状部分412と、第2の環状部分414と、移行部分416とを有している。より詳しく後述するように、圧縮可能なシール410は、シール410を通過し、環状通路408に入る空気流を調整する。
【0014】
圧縮可能なシール410は、燃焼ライナ402を冷却し、燃料と混合するために燃焼ライナ402内へと入る、圧縮可能なシール410を通過する空気流を調整するために機能する。圧縮可能なシール410は、流れスリーブ406と燃焼ライナ402との間の環状通路408内へ入ることのできる冷却空気の量を調整する方法を提供する。
図1〜
図3に示したような従来の形式のいくつかの燃焼システムでは、空気流を調整するために使用される流れ制限装置のタイプのものはなかった。その代わりに、空気流は、開口全体、又は燃焼ライナと流れスリーブとの間の距離により調整されていた。さらに、従来の形式の燃焼システムにおけるシールの性能は、シーリングインターフェースの真円度に直接的に関連していた。圧縮可能なシールは、真円の嵌合面以外にも適応するより寛容なインターフェースを提供する。
【0015】
再度
図8を参照すると、圧縮可能なシール410は、第1の環状部分412でもって燃焼ライナ402の後端部418近くに位置する環状リング413に固定的に取り付けられている。第1の環状部分412の第1の直径D1は、環状リング413の直径よりも僅かに大きく寸法設定されているので、環状リング413の上の場所へとスライドさせて、環状リング413への取り付けを容易にすることができる。圧縮可能なシール410は、好適には、ステッチ溶接、プラグ溶接、又はその他の適切なタイプの溶接により環状リング413に取り付けられる。選択的に、圧縮可能なシール410は環状リング413にろう接されてもよい。
【0016】
環状リング413は、燃焼ライナ402の後端部418のまわりに位置していて、冷却通路420を形成している。 冷却通路420には、1つ以上の供給孔422を通って冷却空気が供給される。冷却空気は、冷却通路420を通って、燃焼ライナ402の後端部418から出ていく。
【0017】
上述し、
図8に示した通り、圧縮可能なシール410はさらに、第2の直径D2を有した第2の環状部分414を有している。この第2の環状部分414は、第1の環状部分412の半径方向外側に位置している。第2の環状部分414は、流れスリーブ406の入口リング424と接合するように寸法設定されている。即ち、入口リング424は外径ODと内径IDとを有していて、第2の環状部分414の第2の直径D2は、その自由状態で、入口リング424の内径IDよりも僅かに大きいように寸法設定されているので、圧縮可能なシール410が流れスリーブ406内に挿入される際に、圧縮可能なシール410の第2の環状部分414は、流れスリーブ406の入口リング424と圧縮ばめされる。第2の環状部分414が入口リング424に係合する際に圧縮され、これにより、入口リング424に接触し、擦り付けられるので、シールと入口リング424との摩耗を減じるために、第2の環状部分414と入口リング424の内径部分の両方に、表面硬化コーティングを塗布することができる。
【0018】
図5、
図6及び
図8を参照すると、第2の環状部分414はさらに、複数の軸方向スロット426を有している。この軸方向スロット426は圧縮可能なシール410の後端部411まで延在しており、本明細書に示した態様に関してはさらに、移行部分416まで延在している。複数の軸方向スロット426は、入口リング424への挿入時に、圧縮可能なシール410が圧縮するのを容易にする。本発明の代表的な態様では、18個の軸方向スロット426それぞれは、自由状態で、約0.020インチの幅を有している。しかしながら、当業者には理解されるように、スロットの正確な数及びスロットそれぞれの自由状態幅は変更可能である。しかしながら、スロット426の幅は、シールが圧縮でき、流れスリーブ406内側に装着できるために十分な幅を必要とするが、漏れ流を最小とするのに十分狭くなくてはならない。
【0019】
圧縮可能なシール410はさらに、第1の環状部分412と第2の環状部分414との間に延在する移行部分416を有している。移行部分416は圧縮可能なシール410を通る空気流を調整する経路を含む。特に、移行部分416は、移行部分416のまわりに位置する複数の開口428を有している。複数の開口428は、様々な形式で移行部分416のまわりに配置することができる。様々な形式の態様は、開口428の等しい均一な分布、開口428を複数の列に配置すること、又は空気流を所定の形式で分配するための開口428の所定のパターン、を含む。例えば、本発明の態様では、
図4〜
図6に示したように、流れスリーブ406に設けられた2列の穴に沿って配置された、移行部分416における36個の穴から成る3つの列がある。このようなパターンは、所望のレベルまで燃焼ライナ402へと供給される空気流の量を設定するために、開口428を通る空気流とスロット426を通る漏れ空気とを提供する。開口428はさらに、開口428間の許容可能な弦長さを維持しながら、燃焼ライナ402を冷却するためにできるだけ速く空気を導入するように配置されている。さらに、クロスフロー効果は、燃焼ライナ402に衝突して、燃焼ライナ402を冷却する冷却空気の効率を減じる恐れがあるので、開口428は、クロスフロー効果を最小とし、燃焼ライナ402に最終的に均一な流れを提供するように、互い違いに配置されている。
【0020】
圧縮可能なシール410の態様に応じて、複数の軸方向スロット426は、複数の列の開口428に交差していてよい、又は交差していなくてよい。開口428は、移行部分416に、様々な形式で、即ち、移行部分416のパンチング、EDM、又はレーザ切断のような形式で設けることができる。当業者には理解されるように、開口428の直径は変更可能であり、燃焼ライナ402への所望の質量流量、必要な冷却、環状通路408内のクロスフロー効果の関数である。
【0021】
流れスリーブ入口リング424への圧縮可能なシール410の正確な嵌め合いに応じて、空気流がそこを通過できるように開かれたままの有効面積は変更可能である。例えば、本発明の通常の嵌め合いの態様では、シールを通るように開かれている流れ面積の総量は、総面積の約0.55%である。しかしながら、より小さいシール直径又はより大きな入口リング424直径といったよりルーズな嵌め合い状態では、圧縮可能なシールを通る総流れ面積(漏れ)の量は、約2倍〜1.11%である。圧縮可能なシール410は、流れスリーブ入口リング424と締まり嵌めを形成することができるように、第2の環状部分414が好適には、直径において0.020インチまで大きなサイズとなるように寸法設定されている。
【0022】
圧縮可能なシール410の嵌め合いはさらに、流れスリーブのために熱的に自由な構造支持体を提供する。圧縮可能なシール410は、熱伸長による拘束を誘発することなく、真円の嵌合面以外にも適用可能にする支持体を提供する。特に、圧縮可能なシールと流れスリーブとの間の構造的な相互作用は、ハードウェアの音響的反応に抵抗することによって音響的減衰を提供する。
【0023】
圧縮可能なシール410は、様々な材料及び方法により製造することができる。例えば、圧縮可能なシール410は概して、単一の材料シートから製作され、このシート材料は、切断され、圧延され、溶接され、所望の直径となるように形成される。利用可能なタイプのシール材料は、インコネル718及びハステロイXであり両者ともニッケル基合金であるが、このような材料に限定されるものではない。図示した態様では、圧縮可能なシール410は約0.060インチの厚さを有している。しかしながらシール厚さは、シール410に加えられる予荷重量を変更するために変化させることができる。選択的にその他の材料を使用することができるが、これらの材料は、所望の材料特性に関して僅かに劣るだろう。選択された材料は、軸方向スロット426の必要な圧縮のため、いくらかの可撓性又はばね性を有していなければならない。
【0024】
次に
図9を参照すると、ガスタービン燃焼器への冷却流体流を調整する方法900が開示されている。この方法900は、燃焼ライナと流れスリーブとの間に延在する、複数の開口を有したシールを設けるステップ902を有している。ステップ904では、空気のような冷却流体が、シールを横切るように方向付けられる。ステップ906では、所定の量の空気が、燃焼ライナと流れスリーブとの間に位置する通路へと入る。次いでステップ908では、所定の量の空気の一部が、燃焼ライナの後端部を冷却するように方向付けられる。ステップ910では、残り全ての空気又はその他の流体が、燃焼ライナの外部通路に沿って送られ、燃焼ライナの入口端部に向かって方向付けられる。
【0025】
作動中、圧縮空気は、エンジン圧縮機から放出され、1つ以上の燃焼ライナ402と流れスリーブ406とが位置しているプレナム内へと方向付けられる。次いで圧縮空気は、移行部分416に設けられた複数の開口428を通って燃焼システム内へと引き込まれる。開口428は所望の圧力降下を発生させるサイズとされており、付加的に、ライナ面への衝突効果により燃焼ライナに沿った熱勾配を減じることができるサイズとなっていてもよい。より具体的には、本発明の態様では、各開口428のサイズは、ライナ402との関連に基づき決定される。各開口428の環は、開口中心線に関してライナ402の表面に投影される。この投影部の下流の表面積は、開口428を出る流れが利用することができる一般的な面積を形成する。製造誤差又は流れスリーブに対するライナの整合誤差に基づく流れ変化を最小限にするために、そして最終的に開口428が流れを確実に制御するために、この投影面積は、各開口428の面積の約2.5倍である。
【0026】
上述したように、圧縮空気の一部は、燃焼ライナ402の後端部418に向かって下流に引き込まれ、通路420内へと入り、ここで燃焼ライナ後端部418を冷却するために使用される。しかしながら圧縮空気の大部分は、上流で燃焼ライナ402の入口に向けられる。この圧縮空気は流れスリーブ406と燃焼ライナ402との間へと方向付けられ、環状通路408を通る。圧縮空気は、空気が上流を通って入口端部に向かうとき、燃焼ライナ402の壁を冷却する。圧縮空気の冷却効率を向上させるために、燃焼ライナ402は、一般的にトリップストリップと呼ばれる複数の熱伝達装置を含んでいてもよい。熱伝達装置は、燃焼ライナ壁に複数の隆起縁を有しており、この隆起縁は、圧縮空気流内へ延在しているので、流れを迂回させ、これにより圧縮空気の熱移送効果を向上させる。
【0027】
流れスリーブ入口リング424と圧縮されたシール410における摩耗を最小限にするために、圧縮可能なシール410の第2の環状部分414と流れスリーブ入口リング424の内径領域とはそれぞれ、面硬化コーティングのような塗布された摩耗低減コーティングを有することができる。従って、コーティングに摩耗が生じ、構成部品自体には摩耗は生じない。
【0028】
本発明の選択的な態様が
図10及び
図11に示されている。即ち、本発明の択一的な態様では、ガスタービン燃焼器用のシーリングシステム1000が設けられている。シーリングシステム1000は、ガスタービン燃焼器の軸線(図示せず)に沿って位置する燃焼ライナ1002を有している。流れスリーブ1004は、燃焼ライナ1002の半径方向外側に位置していて、これらの間には環状通路1006が形成されている。
【0029】
シーリングシステム1000はさらに、第1の壁1010と、この第1の壁1010の半径方向外側に位置する第2の壁1012とを有した移行ダクト1008を有している。移行ダクト1008は燃焼ライナ1002に係合し、燃焼ライナ1002の後端部は、移行ダクト1008の第1の壁1010に摺動可能に係合している。シーリングシステム1000はさらに、第1の環状部分1016と第2の環状部分1018とを有した圧縮可能なシール1014を有している。圧縮可能なシール1014は、第1の環状部分1016に沿って流れスリーブ1004に取り付けられている。圧縮可能なシール1014を取り付ける手段は、溶接又はろう接を含んでいてよい。溶接に関しては、圧縮可能なシール1014は、シールの外周のまわりに間隔を置いて配置される抵抗スポット溶接により、又は手動のTIG溶接により、又はその他類似の溶接技術により溶接することができる。
【0030】
図10に示したように、圧縮可能なシール1014の第2の部分1018は、移行ダクト1008の第2の壁1012に接触している。第2の部分1018は湾曲した後端部1020を有していて、この湾曲した形状は、圧縮可能なシール1014と移行ダクト1008の第2の壁1012との間の係合を容易にする助けとなる。即ち、第2の部分1018の形状は、第2の部分1018の直径が、第2の壁1012の入口の直径と比べて僅かに小さいようなサイズとなっている。
【0031】
図10及び
図11を参照すると、圧縮可能なシール1014はさらに複数の穴1022を有している。複数の穴1022は、圧縮可能なシール1014を通る冷却流体の流れを調整する手段を提供する。複数の穴1022の正確なサイズ及び形状は、シールを通る所望の冷却流に応じて変更可能である。しかしながら本発明の態様では、複数の穴1022は、円形の形状であって、約0.100〜0.500インチの範囲の直径を有している。
【0032】
図10及び
図11に示したように、本発明の態様では、圧縮可能なシール1014はさらに複数の軸方向スロット1024を有している。軸方向スロット1024は、圧縮可能なシール1014の後端部から前方に向かって複数の穴1022へと延在しており、穴1022と交差している。
図10に示したように、第2の環状部分1018は、湾曲した後端部1020と移行部分1026とを有している。上述したように、移行部分1026と湾曲した後端部1020とは、移行ダクト1008の第2の壁1012に加えられる一定の圧力を保証するようなサイズで構成されている。
【0033】
複数の穴1022と軸方向スロット1024とは、圧縮空気のような冷却流体を通路1006へと方向付ける経路を提供している。穴1022は、冷却流体の大部分を通路1006へと供給するようなサイズとなっている。しかしながら複数の軸方向スロット1024も、流れスリーブ1004が移行ダクト1008の第2の壁1012に取り付けられているとき、最終的なサイズに応じていくらかの冷却流体を提供することができる。
【0034】
選択的に、圧縮可能なシール1014は、
図12及び
図13に示したように逆方向に向けられていてもよい。即ち、シール1014は、
図10及び
図11に示したような圧縮可能なシールと同じ一般的な特徴を含むが、
図12及び
図13の圧縮可能なシール1014は、
図10及び
図11の構成のシールに対して逆に向けられている。より具体的には、第1の環状部分1016が、移行ダクト1008の第2の壁1012の外面に取り付けられている。この場合、圧縮可能なシール1014は、流れスリーブ1004に向かって前方へと延在していて、圧縮可能なシール1014の第2の部分1018は、湾曲した後端部1020付近で流れスリーブ壁1004に接触している。圧縮可能なシール1014は、移行ダクト1008の第2の壁1012にろう接又は溶接のような手段により取り付けられている。
【0035】
現時点で好適な実施の形態として知られるものについて、本発明は説明されているが、本発明は、開示された実施の形態に限定されるのではなく、反対に、以下の請求項の範囲の様々な変更及び同等の配列を包含することが意図されている。本発明は、全ての観点から制限的ではなく例示的である特定の実施の形態に関して説明されている。
【0036】
前記説明から、本発明が、システム及び方法にとって明白でかつ固有である他の利点とともに、全ての目的及び課題を達成するために十分に適応されたものであることが分かる。ある特徴及び準組合せは利用でき、他の特徴及び準組合せを参照することなく使用されてよいことが理解されるであろう。これは、請求項の範囲によって及び請求項の範囲において考慮される。