【実施例】
【0126】
以下の実施例により、低摩擦コーティングを備えるガラス製容器の種々の実施形態をさらに明確化する。実施例は例示的性質のものであり、本開示の主題を限定するものとして理解されるべきではない。
【0127】
実施例1
ガラスバイアルをSchott Type 1Bガラスから形成し、ガラス組成をCorning,Incorporatedに譲渡された2012年10月25日に出願され、「Glass Compositions with Improved Chemical and Mechanical Durability」と題された米国特許出願第13/660894号明細書の表1の「Example E」のとおり特定した(本明細書以降において、「基準ガラス組成物」という)。これらのバイアルを脱イオン水で洗浄し、窒素で通風乾燥させ、APS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液で浸漬コーティングをした。APSコーティングを対流オーブン中において100℃で15分間かけて乾燥させた。次いで、これらのバイアルを、15/85トルエン/DMF溶液中のNovastrat(登録商標)800ポリアミド酸の0.1%溶液、または、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の0.1%〜1%ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミド酸溶液(Kapton前駆体)中に浸漬した。コーティングされたバイアルを150℃に加熱し、20分間保持して溶剤を蒸発させた。その後、コーティングされたバイアルを予熱した加熱炉中に入れることにより、コーティングを300℃で30分間硬化させた。硬化の後、Novastrat(登録商標)800の0.1%溶液でコーティングしたバイアルは視認可能な色を有していなかった。しかしながら、ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’オキシジアニリン)の溶液でコーティングしたバイアルは、色が視覚的に黄色であった。両方のコーティングが、バイアル−バイアル接触テストで低い摩擦係数を示した。
【0128】
実施例2
Schott Type 1Bガラスバイアルから形成したガラスバイアル(入手状態/未コーティング)および低摩擦コーティングでコーティングしたバイアルを比較して、擦傷による機械的強度の損失を評価した。コーティングされたバイアルは、先ず、基準ガラス組成物から製造したガラスバイアルをイオン交換強化することにより製造した。イオン交換強化は、100%KNO
3浴において450℃で8時間かけて行った。その後、これらのバイアルを脱イオン水で洗浄し、窒素で通風乾燥させ、APS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液で浸漬コーティングをした。APSコーティングを対流オーブン中において100℃で15分間かけて乾燥させた。次いで、これらのバイアルを、15/85トルエン/DMF溶液中のNovastrat(登録商標)800ポリアミド酸の0.1%溶液に浸漬した。コーティングされたバイアルを150℃に加熱し、20分間保持して溶剤を蒸発させた。その後、コーティングされたバイアルを予熱した加熱炉中に入れることにより、コーティングを300℃で30分間硬化させた。次いで、コーティングされたバイアルを70℃の脱イオン水中に1時間浸漬し、空気中に320℃で2時間加熱して実際の処理条件をシミュレートした。
【0129】
Schott Type 1Bガラスから形成した未擦過バイアル、ならびに、イオン交換強化およびコーティングされた基準ガラス組成物から形成した未擦過バイアルを、水平圧縮テストにおいて破壊に対してテストした(すなわち、プレートをバイアルの上部に置くと共にプレートをバイアルの下部に置き、両方のプレートを一緒に押して破壊時の負荷荷重を荷重計で測定した)。
図12は、基準ガラス組成物から形成したバイアル、コーティングされた擦過状態の基準ガラス組成物から形成したバイアル、Schott Type 1Bガラスから形成したバイアル、および、擦過状態のSchott Type 1Bガラスから形成したバイアルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じる破壊確率を図示する。未擦過バイアルの破壊荷重がワイブルプロットで図示されている。次いで、Schott Type 1Bガラスから形成したサンプルバイアルおよびイオン交換強化されコーティングされたガラスから形成した未擦過バイアルを
図9のバイアル重畳治具に配置してバイアルを擦過して、0.3mmの直径を有する接触領域でこすりあわすことでバイアル間の摩擦係数を測定した。テスト中のバイアルに対する荷重は、UMTマシンで加え、24N〜44Nの間で変化させた。負荷荷重および対応する最大摩擦係数は、
図13に含まれている表に報告されている。未コーティングのバイアルについては、最大摩擦係数は0.54〜0.71で変化させ(
図13において、それぞれ、バイアルサンプル「3&4」および「7&8」として示されている)、一方で、コーティングされたバイアルについては、最大摩擦係数は0.19〜0.41で変化させた(
図13において、それぞれ、バイアルサンプル「15&16」および「12&14」として示されている)。その後、スクラッチしたバイアルを水平圧縮テストにおいてテストして未擦過バイアルに対する機械的強度の損失を評価した。未擦過バイアルに加わった破壊荷重は
図12のワイブルプロット中に図示されている。
【0130】
図12に示されているとおり、未コーティングのバイアルは擦傷後には強度が顕著に低下し、一方で、コーティングされたバイアルは、擦傷後の強度の低下は比較的軽微であった。これらの結果に基づくと、バイアル重畳擦傷後の強度の損失を軽減するためには、バイアル間の摩擦係数は、0.7もしくは0.5未満、または、さらには0.45未満であるべきであると考えられている。
【0131】
実施例3
本実施例においては、複数の組のガラス管を4点曲げでテストしてそれぞれの強度を評価した。基準ガラス組成物から形成した1組目の管を入手状態(未コーティングで、非イオン交換強化済)で4点曲げにおいてテストした。基準ガラス組成物から形成した2組目の管を、100%KNO
3浴中において450℃で8時間イオン交換強化した後4点曲げにおいてテストした。基準ガラス組成物から形成した3組目の管を、100%KNO
3浴中において450℃で8時間イオン交換強化し、実施例2において記載のとおり0.1%APS/0.1%Novastrat(登録商標)800でコーティングした後に、4点曲げにおいてテストした。コーティングされた管をまた、70℃脱イオン水中に1時間浸し、空気中で320℃で2時間加熱して実際の処理条件をシミュレートした。これらのコーティングされた管をまた、曲げテストの前に、30N荷重下で
図9に示すバイアル重畳治具において擦過した。基準ガラス組成物から形成した4組目の管を、100%KNO
3浴中において450℃で1時間イオン交換強化した後に4点曲げにおいてテストした。これらの未コーティングのイオン交換強化管をまた、曲げテストの前に、30N荷重下で
図9に示すバイアル重畳治具において擦過した。Schott Type 1Bガラスから形成した5組目の管を、入手状態(未コーティング、非イオン交換強化済)で4点曲げにおいてテストした。Schott Type 1Bガラスから形成した6組目の管を、100%KNO
3浴中において450℃で1時間イオン交換強化した後に4点曲げにおいてテストした。テスト結果は、
図14に示されているワイブルプロットで図示されている。
【0132】
図14を参照すると、擦過しておらず、基準ガラス組成物から形成し、イオン交換強化した2組目の管は、壊れる前に最も高い応力に耐えた。擦過前の0.1%APS/0.1%Novastrat(登録商標)800でコーティングされた3組目の管は、未コーティングの擦過していない同等の物(すなわち、2組目の管)と比して強度のわずかな低下を示した。しかしながら、コーティング後に擦過に供したにもかかわらず強度の低下は比較的軽微であった。
【0133】
実施例4
2組のバイアルを調製し、医薬品充填ラインに通した。感圧テープ(富士フイルム株式会社から市販されている)をバイアルの間に差し込んで、バイアル間、ならびに、バイアルと器具との間の接触/衝撃力を測定した。1組目のバイアルは、基準ガラス組成物から形成し、コーティングされていないものであった。2組目のバイアルは、上記のとおり、基準ガラス組成物から形成し、約0.25の摩擦係数を有する低摩擦ポリイミド系コーティングでコーティングされたものであった。感圧テープを、バイアルを医薬品充填ラインに通した後に分析したところ、2組目のコーティングされたバイアルは1組目の未−コーティングのバイアルと比して応力の2〜3倍の低減が示すことが実証された。
【0134】
実施例5
3組の4つのバイアルの各々を調製した。すべてのバイアルは、基準ガラス組成物から形成した。1組目のバイアルを、実施例2において記載のとおり、APS/Novastrat(登録商標)800コーティングでコーティングした。2組目のバイアルを、トルエン中の0.1%DC806Aで浸漬コーティングした。溶剤を50℃で蒸発させ、コーティングを300℃で30分間硬化させた。バイアルの各組を管中に入れ、空気パージ下に320℃で2.5時間加熱して、実験室の環境においてバイアル吸着された微量の汚染物を除去した。次いで、サンプルの各組を管の中でさらに30分間加熱し、脱ガスした揮発物を活性炭素吸着剤トラップで捕集した。トラップを30分間かけて350℃に加熱して捕集した材料をすべて脱着させて、これをガスクロマトグラフィ−質量分光計に供給した。
図15は、APS/Novastrat(登録商標)800コーティングに対するガスクロマトグラフィ−質量分光計出力データを示す。
図16は、DC806Aコーティングに対するガスクロマトグラフィ−質量分光計出力データを示す。0.1%APS/0.1%Novastrat(登録商標)800コーティングまたはDC806Aコーティングから脱ガスは検出されなかった。
【0135】
1組の4つのバイアルを、メタノール/水混合物中の0.5%/0.5%GAPS/APhTMS溶液を用いる結束層でコーティングした。各バイアルは、約18.3cm
2のコーティングした表面積を有していた。溶剤を、120℃で15分間かけてコーティングされたバイアルから蒸発させた。次いで、ジメチルアセタミド中の0.5%Novastrat(登録商標)800溶液をサンプルに適用した。溶剤を150℃で20分間かけて蒸発させた。これらの未硬化のバイアルを上記の脱ガステストに供した。これらのバイアルを空気流(100mL/min)中で320℃に加熱し、320℃に達したら、脱ガスした揮発物を15分間毎に活性炭素吸着剤トラップで捕集した。次いで、トラップを30分間かけて350℃に加熱して捕集した材料をすべて脱着させて、これをガスクロマトグラフィ−質量分光計に供給した。表1は、サンプルを320℃に保持していた時間区分にわたる捕集した材料の量を示す。時間ゼロは、サンプルが最初に320℃の温度に達した時間に相当する。表1に見られるとおり、30分間加熱した後、揮発物の量は100ngの機器の検出限界未満に低下する。表1にはまた、コーティングした表面1平方センチメートルあたりの揮発物の損失が報告されている。
【0136】
【表1】
【0137】
実施例6
複数のバイアルを、カップリング剤を伴って、および、伴わずにケイ素樹脂またはポリイミド系の種々のコーティングを伴って調製した。カップリング剤が用いられる場合、カップリング剤は、APSの前駆体であるAPSおよびGAPS(3−アミノプロピルトリアルコキシシラン)を含んでいた。外側コーティング層は、Novastrat(登録商標)800、上記のポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’オキシジアニリン)、または、DC806AおよびDC255などのシリコーン樹脂から調製した。APS/Kaptonコーティングは、APS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液、および、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中のポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミド酸(Kapton前駆体)の0.1%溶液、0.5%溶液または1.0%溶液を用いて調製した。また、Kaptonコーティングを、カップリング剤を伴わずに、NMP中のポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’オキシジアニリン)の1.0%溶液を用いて適用した。APS/Novastrat(登録商標)800コーティングを、APS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液および15/85トルエン/DMF溶液中のNovastrat(登録商標)800ポリアミド酸の0.1%溶液を用いて調製した。DC255コーティングを、トルエン中のDC255の1.0%溶液を用いて、カップリング剤を伴わずにガラスに直接適用した。APS/DC806Aコーティングを、先ず水中のAPSの0.1%溶液を、次いで、トルエン中のDC806Aの0.1%溶液または0.5%溶液を適用することにより調製した。GAPS/DC806Aコーティングを、カップリング剤として水中の95重量%エタノール中のGAPSの1.0%溶液を、次いで、トルエン中のDC806Aの1.0%溶液を用いて適用した。カップリング剤およびコーティングを本明細書に記載のディップコーティング方法を用いて適用し、適用後にカップリング剤を加熱処理し、適用後にケイ素樹脂およびポリイミドコーティングを乾燥および硬化させた。コーティングの厚さを用いた溶液の濃度に基づいて推定した。
図17中に含まれる表には、種々のコーティング組成物、推定コーティング厚、および、テスト条件が列挙されている。
【0138】
その後、バイアルのいくつかをコーティングの損傷をシミュレーションするためにタンブラーにかけ、他のものを
図9に示すバイアル重畳治具において、30Nおよび50N荷重下で擦傷に供した。その後、すべてのバイアルを、バイアルに0.5mLの塩化ナトリウム溶液を充填し、次いで、−100℃で凍結させる凍結乾燥(凍結乾燥プロセス)に供した。次いで、凍結乾燥を20時間かけて−15℃、減圧下で行った。これらのバイアルを光学品質保証器具で、および、顕微鏡下で検査した。凍結乾燥によるコーティングに対する損傷は観察されなかった。
【0139】
実施例7
3組の6つのバイアルを調製して、未コーティングのバイアルおよびDow Corning DC 255 シリコーン樹脂でコーティングしたバイアル摩擦係数に対する荷重を増加した場合の影響を評価した。1組目のバイアルはType 1Bガラスから形成し、未コーティングのままとした。2組目のバイアルは、基準ガラス組成物から形成し、トルエン中のDC255の1%溶液でコーティングし、300℃で30分間硬化させた。3組目のバイアルは、Schott Type 1Bガラスから形成し、トルエン中のDC255の1%溶液でコーティングした。各組のバイアルを
図9中に図示したバイアル重畳治具に配置し、同様にコーティングしたバイアルに対する摩擦係数を、10N、30Nおよび50Nの静荷重下での擦傷の最中に測定した。結果が
図18に図示にて報告されている。
図18に示されているとおり、コーティングしたバイアルは、ガラス組成物に関係なく同一の条件下で擦過した場合に、未コーティングのバイアルと比してかなり低い摩擦係数を示した。
【0140】
実施例8
3組の2つのガラスバイアルをAPS/Kaptonコーティングと共に調製した。先ず、バイアルの各々を、APS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液中で浸漬コーティングした。APSコーティングを対流オーブン中において100℃で15分間かけて乾燥させた。次いで、これらのバイアルを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の0.1%ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミド酸溶液(Kapton前駆体)に浸漬した。その後、コーティングされたバイアルを300℃に予熱した加熱炉中に30分間入れることによりコーティングを硬化させた。
【0141】
2つのバイアルを
図9中に図示したバイアル重畳治具に配置し、10N荷重下で擦過した。擦傷法を同一の領域に対してさらに4回繰り返し、摩擦係数を擦傷の各々について測定した。これらのバイアルの擦傷の間を拭き、各擦傷の開始点を未だ擦過されていない領域に配置した。しかしながら、各擦傷は同一の「トラック」上を移動した。同一の手法を30Nおよび50Nの荷重について繰り返した。各擦傷の摩擦係数(すなわち、A1〜A5)が、各荷重に対して
図19に図示されている。
図19に示されているとおり、APS/Kaptonコーティングしたバイアルの摩擦係数は、すべての荷重でのすべての擦傷について一般に0.30未満であった。この実施例は、カップリング剤で処理されたガラス表面上に適用された場合のポリイミドコーティングに係る擦傷に対する向上した耐性を実証するものである。
【0142】
実施例9
3組の2つのガラスバイアルをAPSコーティングと共に調製した。バイアルの各々をAPS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液中で浸漬コーティングし、対流オーブン中で100℃で15分間加熱した。2つのバイアルを
図9中に図示したバイアル重畳治具に配置し、10N荷重下で擦過した。擦傷法を同一の領域に対してさらに4回繰り返し、摩擦係数を擦傷の各々について測定した。これらのバイアルの擦傷の間を拭き、各擦傷の開始点を未だ擦過されていない領域に配置した。しかしながら、各擦傷は同一の「トラック」上を移動した。同一の手法を30Nおよび50Nの荷重について繰り返した。各擦傷の摩擦係数(すなわち、A1〜A5)が、各荷重に対して
図20に図示されている。
図20に示されているとおり、APSのみでコーティングしたバイアルの摩擦係数は、一般に、0.3より高く、度々0.6、または、それ以上に達している。
【0143】
実施例10
3組の2つのガラスバイアルをAPS/Kaptonコーティングと共に調製した。バイアルの各々を、APS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液中で浸漬コーティングした。APSコーティングを対流オーブン中で100℃で15分間加熱した。次いで、これらのバイアルをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の0.1%ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミド酸溶液(Kapton前駆体)に浸漬した。その後、コーティングされたバイアルを300℃に予熱した加熱炉に30分間入れることによりコーティングを硬化させた。次いで、コーティングされたバイアルについて、300℃で12時間、発熱物質除去(加熱)を行った。
【0144】
2つのバイアルを
図9中に図示したバイアル重畳治具に配置し、10N荷重下で擦過した。擦傷法を同一の領域に対してさらに4回繰り返し、摩擦係数を擦傷の各々について測定した。これらのバイアルの擦傷の間を拭き、各擦傷の開始点を既に擦過した領域に配置し、各擦傷を同一の「トラック」上で実施した。同一の手法を30Nおよび50Nの荷重について繰り返した。各擦傷の摩擦係数(すなわち、A1〜A5)が、各荷重に対して
図21に図示されている。
図21に示されているとおり、APS/Kaptonコーティングしたバイアルの摩擦係数は、10Nおよび30Nの荷重で導入した擦傷について、一般に均一であり、およそ0.20以下であった。しかしながら、負荷荷重が50Nに増やされると、各連続する擦傷について摩擦係数が増加し、5番目の擦傷は0.40よりわずかに小さい摩擦係数を有していた。
【0145】
実施例11
3組の2つのガラスバイアルをAPS(アミノプロピルシルセスキオキサン)コーティングと共に調製した。バイアルの各々を、APSの0.1%溶液中で浸漬コーティングし、対流オーブン中で100℃で15分間加熱した。次いで、コーティングされたバイアルについて、300℃で12時間、発熱物質除去(加熱)を行った。2つのバイアルを
図9中に図示したバイアル重畳治具に配置し、10N荷重下で擦過した。擦傷法を同一の領域に対してさらに4回繰り返し、摩擦係数を擦傷の各々について測定した。これらのバイアルの擦傷の間を拭き、各擦傷の開始点を既に擦過した領域に配置し、各擦傷は同一の「トラック」上を移動した。同一の手法を30Nおよび50Nの荷重について繰り返した。各擦傷の摩擦係数(すなわち、A1〜A5)が、各荷重に対して
図22に図示されている。
図22に示されているとおり、12時間発熱物質除去したAPSコーティングしたバイアルの摩擦係数は、
図20に示されているAPSコーティングしたバイアルよりも顕著に高く、コーティングされていないガラスバイアルにより示される摩擦係数と同様であり、これにより、バイアルが擦傷のために機械的強度を顕著に失った可能性があることを示している。
【0146】
実施例12
Schott Type 1Bガラスから形成した3組の2つのガラスバイアルを、Kaptonコーティングと共に調製した。これらのバイアルをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の0.1%ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミド酸溶液(Kapton前駆体)に浸漬した。その後、コーティングを150℃で20分間乾燥させ、次いで、コーティングされたバイアルを300℃に予熱した加熱炉に30分間入れることにより硬化させた。
【0147】
2つのバイアルを
図9中に図示したバイアル重畳治具に配置し、10N荷重下で擦過した。擦傷法を同一の領域に対してさらに4回繰り返し、摩擦係数を擦傷の各々について測定した。これらのバイアルの擦傷の間を拭き、各擦傷の開始点を未だ擦過されていない領域に配置した。しかしながら、各擦傷は同一の「トラック」上を移動した。同一の手法を30Nおよび50Nの荷重について繰り返した。各擦傷の摩擦係数(すなわち、A1〜A5)が、各荷重に対して
図23に図示されている。
図23に示されているとおり、Kaptonの摩擦係数は、コーティングしたバイアルは一般に最初の擦傷の後に増加し、カップリング剤を伴わずにガラス上に適用されたポリイミドコーティングの劣った耐摩耗性を実証していた。
【0148】
実施例13
実施例6のAPS/Novastrat(登録商標)800コーティングしたバイアルを、凍結乾燥後に、30N荷重で
図9に示すバイアル重畳治具を用いて摩擦係数についてテストした。摩擦係数における増加は凍結乾燥後に検出されなかった。
図24は、凍結乾燥の前後におけるAPS/Novastrat(登録商標)800コーティングしたバイアルに対する摩擦係数を示す表を含む。
【0149】
実施例14
基準ガラス組成物バイアルを、実施例2において記載のとおりイオン交換し、コーティングした。コーティングされたバイアルを以下のプロトコルを用いてオートクレーブに供した:100℃での10分間水蒸気パージ、続いて、20分間の停止時間(ここで、コーティングされたガラス製容器100は121℃環境に曝露される)、続いて、121℃での30分間の処理。オートクレーブバイアルおよび非オートクレーブバイアルに係る摩擦係数を30N荷重で
図9に示すバイアル重畳治具を用いて測定した。
図26は、オートクレービングの前後におけるAPS/Novastrat(登録商標)800コーティングしたバイアルに対する摩擦係数を示す。摩擦係数における増加はオートクレービング後に検出されなかった。
【0150】
実施例15
3組のバイアルを調製して、バイアルに対する損傷を軽減するコーティングの効力を評価した。1組目のバイアルを、ポリイミド外側コーティングで、後に中間体カップリング剤層でコーティングした。外側層はNovastrat(登録商標)800ポリイミドからなり、これは、ジメチルアセタミド中のポリアミド酸の溶液として適用し、300℃に加熱することによりイミド化した。カップリング剤層を、1:8比のAPSおよびアミノフェニルトリメトキシシラン(APhTMS)で構成した。これらのバイアルを320℃で12時間の発熱物質除去に供した。1組目のバイアルと同様に、2組目のバイアルを、中間体カップリング剤層と共にポリイミド外側コーティング層でコーティングした。2組目のバイアルを320℃で12時間の発熱物質除去に供し、次いで、121℃で1時間オートクレーブに供した。3組目のバイアルは未コーティングのままとした。次いで、バイアルの各組を、30N荷重下でバイアル重畳摩擦テストに供した。バイアルの各組に係る摩擦係数が
図27に報告されている。各バイアルに生じた損傷(または、損傷が存在しないこと)を示すバイアル表面の写真もまた
図27に示されている。
図27に示されているとおり、未コーティングのバイアルは、一般に、約0.7を超える摩擦係数を有していた。未コーティングのバイアルではまた、テストの結果、視覚的に知覚可能な損傷が生じた。しかしながら、コーティングされたバイアルは、視覚的に知覚可能な表面損傷をまったく伴わずに0.45未満の摩擦係数を有していた。
【0151】
コーティングされたバイアルをまた、上記のとおり発熱物質除去、オートクレーブ条件、または、両方に供した。
図25は、バイアルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じる破壊確率を図示する。発熱物質除去バイアルと発熱物質除去およびオートクレーブバイアルとの間で統計的な差異は見られなかった。
【0152】
実施例16
ここで
図28を参照すると、バイアルを3種の異なるコーティング組成物と共に調製して、適用したコーティングの摩擦係数に対するシランの異なる比の効果を評価した。第1のコーティング組成物は、1:1比のGAPS対アミノフェニルトリメチルオキシシランおよび1.0%Novastrat(登録商標)800ポリイミドからなる外側コーティング層を有するカップリング剤層を含んでいた。第2のコーティング組成物は、1:0.5比のGAPS対アミノフェニルトリメチルオキシシランおよび1.0%Novastrat(登録商標)800ポリイミドからなる外側コーティング層を有するカップリング剤層を含んでいた。第3のコーティング組成物は、1:0.2比のGAPS対アミノフェニルトリメチルオキシシランおよび1.0%Novastrat(登録商標)800ポリイミドからなる外側コーティング層を有するカップリング剤層を含んでいた。すべてのバイアルを320℃で12時間の発熱物質除去に供した。その後、バイアルを、20Nおよび30Nの荷重下でバイアル重畳摩擦テストに供した。各バイアルに対する加わった平均垂直力、摩擦係数、および最大摩擦力(Fx)が
図28において報告されている。
図28に示されているとおり、芳香族シラン(すなわち、アミノフェニルトリメチルオキシシラン)の量を減らすことで、バイアル間の摩擦係数、ならびに、バイアルに生じる摩擦力が増加する。
【0153】
実施例17
Type 1Bイオン交換ガラスから形成したバイアルを、シランを様々な比で有する低摩擦コーティングと共に調製した。
【0154】
サンプルを、1:8の比を有する0.125%APSおよび1.0%アミノフェニルトリメチルオキシシラン(APhTMS)から形成したカップリング剤層、および、0.1%Novastrat(登録商標)800ポリイミドから形成した外側コーティング層を含む組成で調製した。適用したコーティングの熱安定性を、発熱物質除去の前および後におけるバイアルの摩擦係数および摩擦力を測定することにより評価した。具体的には、コーティングしたバイアルを30Nの荷重下でバイアル重畳摩擦テストに供した。摩擦係数および摩擦力を測定し、これが時間に対して
図29にプロットされている。2組目のバイアルを320℃で12時間の発熱物質除去に供し、30Nの荷重下での同一のバイアル重畳摩擦テストに供した。摩擦係数は発熱物質除去の前後において共に同一のままであり、これは、コーティングが熱的に安定であったことを示していた。ガラスの接触領域の写真もまた示されている。
【0155】
サンプルを、1:8の比を有する0.0625%APSおよび0.5%アミノフェニルトリメチルオキシシラン(APhTMS)から形成したカップリング剤層、および、0.05%Novastrat(登録商標)800ポリイミドから形成した外側コーティング層を含む組成で調製した。適用したコーティングの熱安定性を、発熱物質除去の前および後におけるバイアルの摩擦係数および摩擦力を測定することにより評価した。具体的には、コーティングしたバイアルを30Nの荷重下でバイアル重畳摩擦テストに供した。摩擦係数および摩擦力を測定し、これが時間に対して
図37にプロットされている。2組目のバイアルを320℃で12時間の発熱物質除去に供し、30Nの荷重下での同一のバイアル重畳摩擦テストに供した。摩擦係数は発熱物質除去の前後において共に同一のままであり、これは、コーティングが熱的に安定であったことを示していた。ガラスの接触領域の写真もまた示されている。
【0156】
図38は、1:8の比を有する0.125%APSおよび1.0%アミノフェニルトリメチルオキシシラン(APhTMS)から形成した低摩擦コーティング、ならびに、0.1%Novastrat(登録商標)800ポリイミドから形成した外側コーティング層(
図38において「260」で示されている)、ならびに、1:8の比を有する0.0625%APSおよび0.5%アミノフェニルトリメチルオキシシラン(APhTMS)から形成した外側コーティング層、ならびに、0.05%Novastrat(登録商標)800ポリイミドから形成した外側コーティング層(
図38において「280」で示されている)を伴うバイアルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じる破壊確率を図示する。ガラスの接触領域の写真もまた示されている。データは、破壊荷重が、未コーティングの未スクラッチサンプルからコーティングした発熱物質除去およびスクラッチサンプルに対して一定のままであることを示しており、コーティングによる損傷からのガラス保護が実証されている。
【0157】
バイアルを、シランの様々な比を有する低摩擦コーティングと共に調製した。サンプルを、1:1の比を有する0.5%Dynasylan(登録商標)Hydrosil 1151および0.5%アミノフェニルトリメチルオキシシラン(APhTMS)から形成したカップリング剤層、ならびに、0.05%Novastrat(登録商標)800ポリイミドから形成した外側コーティング層を含む組成で調製した。適用したコーティングの熱安定性を、発熱物質除去の前および後におけるバイアルの摩擦係数および摩擦力を測定することにより評価した。具体的には、コーティングしたバイアルを30Nの荷重下でバイアル重畳摩擦テストに供した。摩擦係数および摩擦力を測定し、これが時間に対して
図39にプロットされている。2組目のバイアルを320℃で12時間の発熱物質除去に供し、30Nの荷重下での同一のバイアル重畳摩擦テストに供した。摩擦係数は発熱物質除去の前後において共に同一のままであり、これは、コーティングが熱的に安定であったことを示していた。ガラスの接触領域の写真もまた示されている。これは、アミノシルセスキオキサンなどのアミノシランの水解物は、コーティング配合物においても有用であることを示唆している。
【0158】
適用したコーティングの熱安定性を一連の発熱物質除去条件についても評価した。具体的には、Type 1Bイオン交換ガラスバイアルを、1:1比のGAPS(0.5%)対アミノフェニルトリメチルオキシシラン(0.5%)を有するカップリング剤層、および、0.5%Novastrat(登録商標)800ポリイミドからなる外側コーティング層を含む組成で調製した。サンプルバイアルを以下の発熱物質除去サイクルの1つに供した:320℃で12時間、320℃で24時間、360℃で12時間、または、360℃で24時間。次いで、摩擦係数および摩擦力をバイアル重畳摩擦テストを用いて測定し、
図30に示されているとおり、各発熱物質除去条件について時間に対してプロットした。
図30に示されているとおり、バイアルの摩擦係数は発熱物質除去条件と共に変化することはなく、これは、コーティングが熱的に安定であったことを示していた。
図40は、360℃および320℃での様々な熱処理時間後の摩擦係数を図示する。
【0159】
実施例18
バイアルを、実施例2において記載のとおり、APS/Novastrat 800コーティングでコーティングした。コーティングしたバイアルの光透過率、ならびに、未コーティングのバイアルの光透過率を、400〜700nmの一連の波長で分光測光計を用いて測定した。測定は、ビームが低摩擦コーティングを2回通過(容器への入射時に1回、次いで、出射時)するよう容器壁部に対して垂直に光ビームが指向されるよう行われる。
図11は、400〜700nmの可視光スペクトルで測定されたコーティングされたバイアルおよび未コーティングのバイアルに対する光透過率データを図示する。線440はコーティングされていないガラス製容器を示し、線442コーティングされたガラス製容器を示す。
【0160】
実施例19
バイアルを、0.25%GAPS/0.25%APhTMSカップリング剤および1.0%Novastrat(登録商標)800ポリイミドでコーティングし、320℃で12時間の発熱物質除去の前および後において光透過率についてテストした。未コーティングのバイアルもまたテストした。結果が
図46に示されている。
【0161】
実施例20
ポリイミドコーティングの均一性を向上させるために、4gのトリエチルアミンを1Lのメタノール中に添加し、次いで、Novastrat(登録商標)800ポリアミド酸を添加して0.1%溶液を形成することにより、Novastrat(登録商標)800ポリアミド酸をポリアミド酸塩に転換させ、ジメチルアセタミドと比して蒸発が顕著に速い溶剤であるメタノール中に溶解させた。
【0162】
メタノール/水混合物中の1.0%GAPS/1.0%APhTMSおよびメタノール中の0.1%Novastrat(登録商標)800ポリアミド酸塩から形成した1Bイオン交換バイアル上のコーティング。コーティングされたバイアルを360℃で12時間の発熱物質除去に供し、非発熱物質除去サンプルおよび発熱物質除去サンプルを、バイアル重畳治具において10、20および30N垂直荷重でスクラッチした。10N、20Nおよび30Nの垂直力ではガラスの損傷は観察されなかった。
図1は、360℃で12時間の熱処理後のサンプルに対する摩擦係数、加わった力および摩擦力を示す。
図42は、サンプルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じる破壊確率を図示する。統計的に、10N、20Nおよび30Nでの一連のサンプルは相互に区別可能であった。低荷重破壊サンプルはスクラッチから離れた基点から壊れた。
【0163】
図43〜45にそれぞれ示されているとおり、コーティング層の厚さを偏光解析法および走査電子顕微鏡検査(SEM)を用いて推定した。コーティング厚測定用のサンプルをケイ素ウェハ(偏光解析法)およびスライドガラス(SEM)を用いて作製した。この方法は、シルセスキオキサン結束層について55〜180nmおよびNovastrat(登録商標)800ポリアミド酸塩について35nmと様々な厚さを示す。
【0164】
実施例21
プラズマクリーニングしたSiウェハ片を、75/25メタノール/水vol/vol混合物中の0.5%GAPS、0.5%APhTMS溶液を用いて浸漬コーティングした。コーティングを120℃に15分間曝露した。コーティング厚を偏光解析法を用いて測定した。3つのサンプルを調製したところ、厚さは、それぞれ、92.1nm、151.7nmおよび110.2nmであり、標準偏差は30.6nmであった。
【0165】
スライドガラスを浸漬コーティングし、走査型電子顕微鏡で試験した。
図43は、1.0%GAPS、1.0%APhTMSおよび0.3%NMPのコーティング溶液中に、8mm/sの引き上げ速度で浸漬し、150℃で15分間硬化した後のSEMイメージスライドガラスを示す。コーティングは約93nm厚であるように見える。
図44は、1.0%GAPS、1.0%APhTMSおよび0.3%NMPのコーティング溶液中に、4mm/sの引き上げ速度で浸漬し、150℃で15分間硬化した後のSEMイメージスライドガラスを示す。コーティングは約55nm厚であるように見える。
図45は、0.5Novastrat(登録商標)800溶液のコーティング溶液中に2mm/sの引き上げ速度で浸漬し、150℃で15分間硬化し、320℃で30分間熱処理した後のSEMイメージスライドガラスを示す。コーティングは約35nm厚であるように見える。
【0166】
比較例A
Type 1Bガラスから形成したガラスバイアルを、固形分含有量が約1〜2%であるBaysilone MのBayer Silicone水性エマルジョンの希釈コーティングでコーティングした。これらのバイアルを150℃で2時間処理して、表面から水を留去させて、ポリジメチルシロキサンコーティングをガラスの外表面に残留させる。コーティングの公称厚は約200nmであった。1組目のバイアルを未処理状態(すなわち、「素コーティングバイアル」)のままとした。2組目のバイアルを280℃で30分間処理した(すなわち、「処理済バイアル」)。各組からのバイアルのいくつかを、0から48Nに線形に増加する荷重で、およそ20mmの長さのスクラッチをUMT−2摩擦計を用いて加えることにより先ず機械的にテストした。スクラッチを摩擦係数および形態学について評価して、スクラッチ手法がガラスに損傷を与えたか、または、コーティングがスクラッチによる損傷からガラスを保護したかについて判定した。
【0167】
図33は、素コーティングバイアルに対する、加えたスクラッチの長さ(x座標)に応じる摩擦係数、スクラッチ侵入度、加わった垂直力および摩擦力(y座標)を示すプロットである。
図33において図示されているとおり、素コーティングバイアルは、約30Nの荷重以下でおよそ0.03の摩擦係数を示していた。データは、およそ30N未満では、COFは常に0.1未満であることを示している。しかしながら、30Nを超える垂直力では、スクラッチの長さに沿ったガラス割れの存在によって示されているとおり、コーティングは破損し始める。ガラス割れはガラス表面損傷を示しており、その損傷の結果によりガラスが破損する傾向が高まる。
【0168】
図34は、処理済バイアルに対する、加えたスクラッチの長さ(x座標)に応じる摩擦係数、スクラッチ侵入度、加わった垂直力および摩擦力(y座標)を示すプロットである。処理済バイアルについては、負荷荷重がおよそ5Nの値に達するまで摩擦係数は低いままであった。この時点でコーティングは破損し始め、荷重の増加に伴って生じた大量のガラス割れから明らかであるとおり、ガラス表面が激しく損傷していた。処理済バイアルの摩擦係数は約0.5に増加した。しかしながら、コーティングは熱曝露後には30Nの荷重でガラスの表面を保護することができず、コーティングは熱的に不安定であったことが示された。
【0169】
次いで、20mmスクラッチの全長にわたって30N静荷重を加えることによりバイアルをテストした。素コーティングバイアルの10個のサンプルおよび処理済バイアルの10個のサンプルを、20mmスクラッチの全長にわたって30N静荷重を加えることにより、水平圧縮においてテストした。素コーティングサンプルではスクラッチで破損したものはなかったが、一方で、10個の処理済バイアルのうち6個がスクラッチで破損し、処理済バイアルでは残留強度が低下していたことが示された。
【0170】
比較例B
Wacker Silres MP50(製品番号60078465番ロット番号EB21192番)の溶液を2%に希釈し、これを基準ガラス組成物から形成したバイアルに適用した。これらのバイアルは、コーティング前に、先ずプラズマを10秒間印加することによりクリーニングした。これらのバイアルを315℃で15分間乾燥させて水をコーティングから留去させた。1組目のバイアルは「素コーティング」状態に維持した。2組目のバイアルは250℃〜320℃の範囲の温度で30分間した(すなわち、「処理済バイアル」)。各組からのバイアルのいくつかを、0から48Nに線形に増加する荷重で、およそ20mmの長さのスクラッチをUMT−2摩擦計を用いて加えることにより先ず機械的にテストした。スクラッチを摩擦係数および形態学について評価して、スクラッチ手法がガラスに損傷を与えたか、または、コーティングがスクラッチによる損傷からガラスを保護したかについて判定した。
【0171】
図35は、素コーティングバイアルに対する、加えたスクラッチの長さ(x座標)に応じる摩擦係数、スクラッチ侵入度、加わった垂直力および摩擦力(y座標)を示すプロットである。素コーティングバイアルはコーティングに対する損傷を示したが、ガラスに対する損傷は示さなかった。
【0172】
図36は、280℃で処理した処理済バイアルに対する、加えたスクラッチの長さ(x座標)に応じる摩擦係数、スクラッチ侵入度、加わった垂直力および摩擦力(y座標)を示すプロットである。処理済バイアルは、約20Nを超える負荷荷重で顕著なガラス表面損傷を示した。ガラス損傷に対する荷重閾値は、熱曝露温度の上昇に伴って低下し、コーティングは高い温度で劣化したことが示された(すなわち、コーティングは熱的に不安定)こともまた判定した。280℃未満の温度で処理したサンプルは30Nを超える荷重でガラス損傷を示した。
【0173】
比較例C
基準ガラス組成物から形成したバイアルを、水中で2%固形分に希釈したEvonik Silikophen P 40/Wで処理した。次いで、サンプルを150℃で15分間乾燥させ、その後、315℃で15分間硬化させた。1組目のバイアルは「素コーティング」状態に維持した。2組目のバイアルは260℃の温度で30分間処理した(すなわち、「260℃処理済バイアル」)。3組目のバイアルは280℃の温度で30分間処理した(すなわち、「280℃処理済バイアル」)。これらのバイアルを、
図9に示されているテスト治具を用いて30Nの静荷重でスクラッチした。次いで、これらのバイアルを水平圧縮においてテストした。260℃処理済バイアルおよび280℃処理済バイアルは圧縮で損傷し、一方で、16個の素コーティングバイアルのうち2個がスクラッチで損傷した。これは、コーティングは高温への曝露で劣化しており、その結果、コーティングは30N荷重から表面を十分に保護しなかったことを示す。
【0174】
前述の記載に基づいて、コーティングされたガラス製物品の種々の態様が本明細書に開示されていることがここで理解されるべきである。第1の態様によれば、コーティングされたガラス製物品は:第1の表面を備えるガラス本体、および、ガラス本体の第1の表面の少なくとも一部分に位置された低摩擦コーティングを備え、低摩擦コーティングはポリマー化学組成物を含み、ここで:コーティングされたガラス製物品は、少なくとも約260℃、または、さらには280℃の温度で30分間熱的に安定である。熱的に安定であるという用語は、(1)低摩擦コーティングを備える外表面の一部分の擦過領域の摩擦係数が、特定の高温への30分間の曝露および30N荷重下での擦傷の後に0.7未満であり、観察可能な損傷を有さず、ならびに、(2)水平圧縮におけるコーティングされたガラス製物品の残留強度が280℃の高温への30分間の曝露および30N荷重下での擦傷後に約20%を超えて低下しないことを意味する。この第1の態様のいくつかの実施形態において、コーティングされたガラス製物品を通した光透過率は、約400nm〜約700nmの波長についてコーティングされていないガラス製物品を通した光透過率の約55%以上である。この第1の態様のいくつかの実施形態において、低摩擦コーティングは、約10℃/分の昇温速度で150℃から350℃の温度に加熱された場合、その質量の約5%未満の質量損失率を有する。
【0175】
第2の態様において、コーティングされたガラス製物品は、第1の表面を備えるガラス本体、および、ガラス本体の第1の表面の少なくとも一部分に位置された低摩擦コーティングを備え、低摩擦コーティングは:ポリマー化学組成物と、第1のシラン化学組成物、その加水分解物またはそのオリゴマーであって、第1のシラン化学組成物が芳香族シラン化学組成物であるもの、ならびに、少なくとも第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物のオリゴマー化から形成される化学組成物の少なくとも一方を含むカップリング剤とを含み、ここで:第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物は異なる化学組成物であり、コーティングされたガラス製物品は少なくとも約260℃の温度で30分間の間熱的に安定であり、コーティングされたガラス製物品を通した光透過率は、約400nm〜約700nmの波長についてコーティングされていないガラス製物品を通した光透過率の約55%以上であり、ならびに、低摩擦コーティングは、約10℃/分の昇温速度で150℃から350℃の温度に加熱された場合、その質量の約5%未満の質量損失率を有する。
【0176】
第3の態様において、コーティングされたガラス製物品は、第1の表面を備えるガラス本体と、ガラス本体の第1の表面の少なくとも一部分に位置された低摩擦コーティングを備え、低摩擦コーティングは:1種または複数種のシラン化学組成物のオリゴマーを含むカップリング剤であって、オリゴマーがシルセスキオキサン化学組成物であり、シラン化学組成物の少なくとも1種が少なくとも1つの芳香族部分および少なくとも1つのアミン部分を含むカップリング剤と、少なくとも第1のジアミンモノマー化学組成物、第2のジアミンモノマー化学組成物および二無水物モノマー化学組成物の重合から形成されるポリイミド化学組成物とを含み、ここで、第1のジアミンモノマー化学組成物は第2のジアミンモノマー化学組成物とは異なるものである。
【0177】
第4の態様において、コーティングされたガラス製物品は、第1の表面を備えるガラス本体、および、ガラス本体の第1の表面の少なくとも一部分に位置された低摩擦コーティングを備え、低摩擦コーティングはポリマー化学組成物を含み、ここで:コーティングされたガラス製物品は少なくとも約300℃の温度で30分間の間熱的に安定であり、および、コーティングされたガラス製物品を通した光透過率は、約400nm〜約700nmの波長についてコーティングされていないガラス製物品を通した光透過率の約55%以上である。
【0178】
第5の態様において、コーティングされたガラス製物品は:第1の表面を備えるガラス本体および第1の表面の裏側の第2の表面を備え、ここで、第1の表面はガラス製容器の外表面であり、および、低摩擦コーティングはガラス本体の第1の表面の少なくとも一部分に結合しており、低摩擦コーティングはポリマー化学組成物を含み、ここで:コーティングされたガラス製物品は少なくとも約280℃の温度で30分間の間熱的に安定であり、および、コーティングされたガラス製物品を通した光透過率は、約400nm〜約700nmの波長についてコーティングされていないガラス製物品を通した光透過率の約55%以上である。
【0179】
第6の態様において、コーティングされたガラス製物品は:第1の表面を備えるガラス本体、および、ガラス本体の第1の表面の少なくとも一部分に結合した低摩擦コーティングを備え、低摩擦コーティングは:ガラス本体の第1の表面に位置されたカップリング剤層であって、カップリング剤を含むカップリング剤層を含み、カップリング剤は:第1のシラン化学組成物、その加水分解物またはそのオリゴマーであって、第1のシラン化学組成物が芳香族シラン化学組成物であるもの、および、少なくとも第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物のオリゴマー化から形成される化学組成物、カップリング剤層上に位置されたポリマー層であって、ポリイミド化学組成物を含むポリマー層の少なくとも1つを備え、ならびに、ここで:第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物は異なる化学組成物であり、コーティングされたガラス製物品は少なくとも約280℃の温度で30分間の間熱的に安定であり、および、コーティングされたガラス製物品を通した光透過率は、約400nm〜約700nmの波長についてコーティングされていないガラス製物品を通した光透過率の約55%以上である。
【0180】
第7の態様において、コーティングされたガラス製物品は:第1の表面を備えるガラス本体、ガラス本体の第1の表面の少なくとも一部分に結合された低摩擦コーティングを備え、低摩擦コーティングは:カップリング剤を含むカップリング剤層であって、カップリング剤が1種または複数種のシラン化学組成物のオリゴマーを含み、ここで、オリゴマーがシルセスキオキサン化学組成物であり、ならびに、シラン化学組成物の少なくとも1種が少なくとも1つの芳香族部分および少なくとも1つのアミン部分を含むカップリング剤層と、ポリマー層であって、少なくとも第1のジアミンモノマー化学組成物、第2のジアミンモノマー化学組成物および二無水物モノマー化学組成物の重合から形成されるポリイミド化学組成物を含み、ここで、第1のジアミンモノマー化学組成物が第2のジアミンモノマー化学組成物とは異なるものであるポリマー層と、カップリング剤層の化学組成物の1種または複数種と結合したポリマー層の化学組成物の1種または複数種を含む界面層とを含む。
【0181】
第8の態様は、第1〜4、6または第7の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで:ガラス本体は第1の表面の裏側の第2の表面を備えるガラス製容器であって、および、第1の表面はガラス製容器の外表面である。
【0182】
第9の態様は、第1〜第7の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、コーティングされたガラス製物品は医薬品パッケージである。
【0183】
第10の態様は、第9の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、薬品パッケージは医薬品組成物を含む。
【0184】
第11の態様は、第1〜第7の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、ガラス本体はイオン交換ガラスを含む。
【0185】
第12の態様は、第1〜第5の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、低摩擦コーティングは:ガラス本体の第1の表面に位置されたカップリング剤層であって、カップリング剤を含むカップリング剤層、および、カップリング剤層上に位置されたポリマー層であって、ポリマー化学組成物を含むポリマー層を含む。
【0186】
第13の態様は、第6または第12の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで:低摩擦コーティングは、カップリング剤層とポリマー層との間に位置された界面層をさらに備え、界面層は、カップリング剤層の化学組成物の1種または複数種と結合したポリマー層の化学組成物の1種または複数種を含む。
【0187】
第14の態様は、第1〜第7の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、低摩擦コーティングを備えたコーティングされたガラス製物品の一部分の摩擦係数は、同一のガラス組成物から形成されたコーティングされていないガラス製物品の表面の摩擦係数の少なくとも20%未満である。
【0188】
第15の態様は、第1〜第7の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、低摩擦コーティングを備えたコーティングされたガラス製物品の一部分は、オートクレーブ条件への曝露後に、約0.7以下の摩擦係数を有する。
【0189】
第16の態様は、第1〜第7の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、低摩擦コーティングを備えたコーティングされたガラス製物品の一部分は、コーティングされたガラス製物品が水浴中に約70℃の温度で1時間浸漬された後に約0.7以下の摩擦係数を有する。
【0190】
第17の態様は、第1〜第7の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、低摩擦コーティングを備えたコーティングされたガラス製物品の一部分は凍結乾燥条件への曝露後に、約0.7以下の摩擦係数を有する。
【0191】
第18の態様は、第1、4または第5の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、低摩擦コーティングは、カップリング剤をさらに含む。
【0192】
第19の態様は、第18の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カップリング剤は:第1のシラン化学組成物、その加水分解物またはそのオリゴマー、および、少なくとも第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物のオリゴマー化から形成される化学組成物の少なくとも一方を含み、ここで、第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物は異なる化学組成物である。
【0193】
第20の態様は、第19の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物は芳香族シラン化学組成物である。
【0194】
第21の態様は、第18の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カップリング剤はシルセスキオキサン化学組成物を含む。
【0195】
第22の態様は、第21の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、シルセスキオキサン化学組成物は芳香族部分を含む。
【0196】
第23の態様は、第22の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、シルセスキオキサン化学組成物はアミン部分をさらに含む。
【0197】
第24の態様は、第18の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カップリング剤は:第1のシラン化学組成物と第2のシラン化学組成物との混合物、ならびに、少なくとも第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物のオリゴマー化から形成される化学組成物の少なくとも一方を含み、ここで、第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物は異なる化学組成物である。
【0198】
第25の態様は、第24の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物は芳香族シラン化学組成物である。
【0199】
第26の態様は、第18の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物は芳香族シラン化学組成物である。
【0200】
第27の態様は、第2、6または第26の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物は少なくとも1つのアミン部分を含む。
【0201】
第28の態様は、第2、6または第26の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物は、芳香族アルコキシシラン化学組成物、芳香族アシルオキシシラン化学組成物、芳香族ハロゲンシラン化学組成物または芳香族アミノシラン化学組成物である。
【0202】
第29の態様は、第2、6または第26の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物は、アミノフェニル、3−(m−アミノフェノキシ)プロピル、N−フェニルアミノプロピル、または、(クロロメチル)フェニル置換アルコキシ、アシルオキシ、ハロゲンまたはアミノシランからなる群から選択される。
【0203】
第30の態様は、第2、6または第26の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物はアミノフェニルトリメトキシシランである。
【0204】
第31の態様は、第2、6または第26の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カップリング剤は:第1のシラン化学組成物と第2のシラン化学組成物との混合物であって、第2のシラン化学組成物が脂肪族シラン化学組成物である混合物、および、少なくとも第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物のオリゴマー化から形成される化学組成物の少なくとも一方を含む。
【0205】
第32の態様は、第31の態様のコーティングされたガラス製物品を含む、ここで、第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物のモル比は約0.1:1〜約10:1である。
【0206】
第33の態様は、第31の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物は少なくとも1つのアミン部分を含む芳香族アルコキシシラン化学組成物であり、および、第2のシラン化学組成物は少なくとも1つのアミン部分を含む脂肪族アルコキシシラン化学組成物である。
【0207】
第34の態様は、第31の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物は、アミノフェニル、3−(m−アミノフェノキシ)プロピル、N−フェニルアミノプロピル、または、(クロロメチル)フェニル置換アルコキシ、アシルオキシ、ハロゲンまたはアミノシラン、その水解物もしくはそのオリゴマーからなる群から選択され、また、第2のシラン化学組成物は、3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル、ビニル、メチル、N−フェニルアミノプロピル、(N−フェニルアミノ)メチル、N−(2−ビニルベンジルアミノエチル)−3−アミノプロピル置換アルコキシ、アシルオキシ、ハロゲンまたはアミノシラン、その水解物もしくはそのオリゴマーからなる群から選択される。
【0208】
第35の態様は、第31の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物は少なくとも1つのアミン部分を含み、および、第2のシラン化学組成物は少なくとも1つのアミン部分を含む。
【0209】
第36の態様は、第31の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物はアミノフェニルトリメトキシシランであり、および、第2のシラン化学組成物は3−アミノプロピルトリメトキシシランである。
【0210】
第37の態様は、第3または第7の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、オリゴマーは、少なくともアミノフェニルトリメトキシシランから形成される。
【0211】
第38の態様は、第3または第7の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、オリゴマーは、少なくともアミノフェニルトリメトキシシランおよびアミノプロピルトリメトキシシランから形成される。
【0212】
第39の態様は、第3または第7の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のジアミンモノマー化学組成物はオルトトリジンであり、第2のジアミンモノマー化学組成物は4,4’−メチレン−ビス(2−メチルアニリン)であり、および、二無水物モノマー化学組成物はベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物である。
【0213】
第40の態様は、第1、2、4または第5の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、ポリマー化学組成物はポリイミド化学組成物である。
【0214】
第41の態様は、第1、2、4または第5の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、ポリマー化学組成物は:少なくとも2つのアミン部分を含む少なくとも1種のモノマー化学組成物と、少なくとも2つの無水物部分を含むと共にベンゾフェノン構造を有する少なくとも1種のモノマー化学組成物との重合から形成されるポリイミド化学組成物である。
【0215】
第42の態様は、第41の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、少なくとも2つの無水物部分を含むモノマー化学組成物はベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物である。
【0216】
第43の態様は、第1、2、4または第5の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、ポリマー化学組成物は、少なくとも:第1のモノマー化学組成物であって、少なくとも2つのアミン部分を含む第1のモノマー化学組成物と、第2のモノマー化学組成物であって、少なくとも2つのアミン部分を含む第2のモノマー化学組成物と、第3のモノマー化学組成物であって、少なくとも2つの無水物部分を含む第3のモノマー化学組成物との重合から形成されるポリイミド化学組成物であり、ここで、第1のモノマー化学組成物は第2のモノマー化学組成物とは異なるものである。
【0217】
第44の態様は、第43の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第3のモノマー化学組成物はベンゾフェノン構造を有する。
【0218】
第45の態様は、第44の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第3のモノマー組成物はベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物である。
【0219】
第46の態様は、第43の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のモノマー化学組成物は2つの芳香族環部分を含む。
【0220】
第47の態様は、第46の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のモノマー化学組成物の2つの芳香族環部分は互いに直接結合している。
【0221】
第48の態様は、第47の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第2のモノマー化学組成物は2つの芳香族環部分を含み、第2のモノマー化学組成物の2つの芳香族環部分はアルキル部分と結合している。
【0222】
第49の態様は、第48の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のモノマー化学組成物対第2のモノマー化学組成物のモル比は、約0.01:0.49〜約0.40:0.10である。
【0223】
第50の態様は、第46の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のモノマー化学組成物の2つの芳香族環部分はアルキル部分と結合している。
【0224】
第51の態様は、第46の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のモノマー化学組成物はトリジン構造を含む。
【0225】
第52の態様は、第51の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のモノマー化学組成物はオルトトリジンである。
【0226】
第53の態様は、第51の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のモノマー化学組成物は4,4’−メチレン−ビス(2−メチルアニリン)である。
【0227】
第54の態様は、第51の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のモノマー化学組成物はオルトトリジンであり、および、第2のモノマー化学組成物は4,4’−メチレン−ビス(2−メチルアニリン)である。
【0228】
第55の態様は、第46の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第2のモノマー化学組成物は芳香族環部分を含む。
【0229】
第56の態様は、第1〜第55の態様のいずれかのコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、低摩擦コーティングは、約10℃/分の昇温速度で150℃から350℃の温度に加熱された場合、その質量の約5%未満の質量損失率を有する。
【0230】
第57の態様において、基材用の低摩擦コーティングである低摩擦コーティングは:ポリイミド化学組成物と、第1のシラン化学組成物、その加水分解物またはそのオリゴマーおよび第2のシラン化学組成物、その加水分解物またはそのオリゴマーの混合物であって、第1のシラン化学組成物が芳香族シラン化学組成物であり、および、第2のシラン化学組成物が脂肪族シラン化学組成物である混合物、ならびに、少なくとも第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物のオリゴマー化から形成される化学組成物の少なくとも一方を含むカップリング剤とを含み、ここで:コーティングされたガラス製物品は少なくとも約260℃の温度で30分間の間熱的に安定であり、コーティングされたガラス製物品を通した光透過率は、約400nm〜約700nmの波長についてコーティングされていないガラス製物品を通した光透過率の約55%以上であり、および、低摩擦コーティングは、約10℃/分の昇温速度で150℃から350℃の温度に加熱された場合、その質量の約5%未満の質量損失率を有する。
【0231】
第58の態様は、第57の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、ガラス本体はイオン交換ガラスを備える。
【0232】
第59の態様は、第57の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、ポリイミド化学組成物は:少なくとも2つのアミン部分を含む少なくとも1種のモノマー化学組成物、および、少なくとも2つの無水物部分を含むと共にベンゾフェノン構造を有する少なくとも1種のモノマー化学組成物の重合から形成される。
【0233】
第60の態様は、第57の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、ポリイミド化学組成物は、少なくともベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、オルトトリジンおよび4,4’−メチレン−ビス(2−メチルアニリン)の重合から形成される。
【0234】
第61の態様は、第57の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物は少なくとも1つのアミン部分を含む。
【0235】
第62の態様は、第57の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、第1のシラン化学組成物はアミノフェニルトリメトキシシランであり、および、第2のシラン化学組成物は3−アミノプロピルトリメトキシシランである。
【0236】
第63の態様において、コーティングされたガラス製容器の製造プロセスは:複数のガラス製容器をカセットに積載するステップ、カセットおよび複数のガラス製容器を溶融アルカリ塩浴中に浸漬するステップ、カセットおよびガラス製容器を溶融アルカリ塩浴から取り出すステップ、カセットおよび複数のガラス製容器を水浴中に浸漬して残存するアルカリ塩をガラス製容器から除去するステップ、ガラス製容器を脱イオン水で洗浄するステップ、ならびに、ガラス製容器を低摩擦コーティングでコーティングするステップを含む。
【0237】
第64の態様は、第63の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カセットおよび複数のガラス製容器は、溶融アルカリ塩浴中に浸漬される前に予熱される。
【0238】
第65の態様は、第63の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、溶融アルカリ塩浴は、約350℃以上および約500℃以下の温度の100%KNO3である。
【0239】
第66の態様は、第63の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カセットおよびガラス製容器は、ガラス製容器の表面において約100μm以下の層厚および300MPa以上の圧縮応力を達成するのに十分な保持時間の間、溶融アルカリ塩浴中に保持される。
【0240】
第67の態様は、第65の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、保持時間は30時間未満である。
【0241】
第68の態様は、第63の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カセットおよびガラス製容器が溶融アルカリ塩浴から取り出された後、カセットは水平軸について回転されてガラス製容器中の溶融塩が空にされる。
【0242】
第69の態様は、第63の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カセットおよびガラス製容器は、カセットが回転されるに伴って、溶融アルカリ塩浴の上方で吊り下げられる。
【0243】
第70の態様は、第63の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カセットおよびガラス製容器は、水浴中に浸漬される前に冷却される。
【0244】
第71の態様は、第63の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、水浴は第1の水浴であり、カセットおよびガラス製容器は、第1の水浴中に浸漬された後に第2の水浴中に浸漬される。
【0245】
第72の態様は、第63の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ガラス製容器を脱イオン水中で洗浄するステップの前に、ガラス製容器をカセットから取り外すステップをさらに含む。
【0246】
第73の態様は、第63の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、ガラス製容器を低摩擦コーティングでコーティングするステップは、コーティング溶液をガラス製容器に適用するステップを含む。
【0247】
第74の態様は、第63の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、ガラス製容器を低摩擦コーティングでコーティングするステップは:カップリング剤をガラス製容器の外表面に適用するステップ、および、ポリマーコーティングをガラス製容器のカップリング剤の上に適用するステップを含む。
【0248】
第75の態様は、第74の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カップリング剤およびポリマーコーティング溶液は、ガラス製容器に浸漬コーティングされる。
【0249】
第76の態様は、第74の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カップリング剤およびポリマーコーティング溶液は、ガラス製容器に噴霧コーティングされる。
【0250】
第77の態様は、第74の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カップリング剤およびポリマーコーティング溶液は、ガラス製容器上にミスト化または霧化して適用される。
【0251】
第78の態様は、第74の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カップリング剤およびポリマーコーティング溶液は、任意の溶液転移技術(スワブによる塗布、ブラシによる塗布、印刷、ローラによる塗布等)によりガラス製容器に移される。
【0252】
第79の態様は、第74の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、適用したカップリング剤を伴うガラス表面は、ポリマーコーティング溶液が適用される前に加熱処理される。
【0253】
第80の態様は、第79の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、適用したカップリング剤を伴うガラス表面は、ガラス製容器をオーブン中で加熱することにより加熱処理される。
【0254】
第81の態様は、第74の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ポリマーコーティング溶液がガラス製容器に適用された後に、ポリマーコーティング溶液を硬化するステップをさらに含む。
【0255】
第82の態様は、第74の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カップリング剤および/またはポリマーコーティングは熱硬化される。
【0256】
第83の態様は、第74の態様のコーティングされたガラス製物品を含み、ここで、カップリング剤および/またはポリマーコーティングはUV光で硬化される。
【0257】
ここで、本明細書に記載の低摩擦コーティングを備えるガラス製容器は低摩擦コーティングを適用することにより機械的損傷に対する向上した耐性を示し、従って、ガラス製容器は高い機械的耐久性を有するものであることが理解されるべきである。この特性により、ガラス製容器は、特に限定されないが、医薬品パッケージ材料を含む種々の用途における使用にきわめて好適となる。
【0258】
特許請求されている主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に種々の変更および変形を加えることが可能であることは当業者に明らかであろう。それ故、変更および変形が添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に含まれる場合に限り、本明細書は、本明細書に記載の種々の実施形態の変更および変形を包含することが意図される。