【実施例】
【0312】
実施例は、単なる例示目的のために提示され、決して、本発明のいかなる態様の範囲を限定することを意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して、正確性を確保するための努力がなされているが、いくらかの実験誤差および偏差は当然考慮されるべきである。
【0313】
別様に指示されていない限り、種々の方法は、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、および薬理学の従来の方法を当技術分野の技術の範囲内で採用することができる。そのような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、T.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H. Freeman and Company, 1993);A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition);Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2
nd Edition, 1989);Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.);Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3
rd Ed. (Plenum Press) Vols A and B(1992);Current Protocols in Molecular Biology (2002- ; Wiley; Online ISBN: 9780471142720; DOI: 10.1002/04711142727);Current Protocols in Immunology (2001- ; Wiley; Online ISBN: 9780471142737; DOI: 10.1002/0471142735)を参照されたい。
【0314】
概略的な材料および方法
血液採取およびPBMCの単離
すべてのヒトサンプルは、インフォームド・コンセントの後にかつ治験審査委員会(IRB)によって認可されたヒト対象プロトコールの下で採取された。血液は、ヘパリンチューブ(Beckton Dickinson and Company、カタログ#BD366664)またはCPTチューブ(Beckton Dickinson and Company、カタログBD362761)内に採取された。ヘパリンチューブの処理には、1mlの血液を微量遠心チューブに移し、12,000rpmで3分間スピンダウンし、血漿を採取し、-80℃で凍結し(抗体反応性について後で試験するために)、残りの血液をFicollに積層し、ヘパリンチューブに対してSX4750 Swinging Bucket Rotor を用いてBeckman Coulter Allegra X-15R卓上遠心機で、最小加速でかつブレーキを使用せずに、室温で20分間遠心分離し、末梢血単核細胞(PBMC)層を採取した。あるいは、CPTチューブを、最小加速でかつブレーキを使用せずに、室温で1,500gで20分間直接遠心分離し、PMBC層を採取した。次いで、採取したPBMCを使用前にPBSで2回洗浄した。
【0315】
PBMCを、将来の使用、およびB細胞、メモリーB細胞、形質芽球、形質細胞、または他のB細胞集団の単離のために凍結してもよい。PBMCを凍結するための一つの方法は、クライオバイアル内で90%ウシ胎仔血清(FBS)および10%ジメチルスルホキシド(DMSO)中にPBMCを再懸濁する工程、次いでバイアル内に含有された細胞をMr. Frosty(Sigma C1562-1EA)内で-80℃にて一晩凍結させる工程を伴う。次いで、凍結した細胞のバイアルを長期保存のために液体窒素中に移しておき、個々のB細胞の単離のためにおよび対合した免疫グロブリン遺伝子についての高性能配列決定のために、後日融解させることができる。融解した細胞は、細胞凝集を防ぐために、1回目の選別の終わりまで、通常25μg/ml(Sigma D4513)の過剰のDNase Iを含有している培地中でインキュベートした。
【0316】
細胞および細胞亜集団の単離および濃縮
形質芽球。いくつかのサンプルに対して、まず、改変したPlasma Cells Isolation Kit II(Miltenyi 130-093-628)を用いることによって、PBMCを形質芽球について濃縮した。これは任意の工程である。これは、後の選別に対してより少量の総細胞をもたらし、より短い選別時間につながった。これは、複数のサンプルを同日に、単一細胞に選別する必要がある場合に主に使用された。異なるキットを用いて、異なるB細胞集団を濃縮することも可能である(下記を参照されたい)。5×10
7個のPBMCごとに、細胞を200μLの氷冷MACSバッファー(0.5%FBSを含むPBS)中に懸濁した。50μLの非形質細胞ビオチン抗体カクテルを添加し、細胞を冷蔵庫内(4℃)で10分間インキュベートした。100μLのMACSバッファー、100μLの非形質細胞マイクロビーズカクテル、および50μLのCD56マイクロビーズを添加し、冷蔵庫内でさらに10分間インキュベートした。次いで、細胞を7mLのMACSバッファーで洗浄し、4℃にて300gで5分間遠心分離し、500μLのMACSバッファー中に再懸濁し、磁場中で平衡化LSカラムにかけた。カラムを4×3mLのMACSバッファーで洗浄し、濃縮した細胞は陰性画分にあった。
【0317】
メモリーB細胞。CD19+マイクロビーズ(Miltenyi 130-050-301)およびCD27+マイクロビーズ(130-051-601)を用いて、細胞の選別前にメモリーB細胞を濃縮し、選別時間を短縮してもよい。Memory B-cell isolation kit(Miltenyi 130-093-546)等の他の濃縮方法を、それらがCD19
+CD27
+細胞を濃縮するという条件で用いてもよい。5×10
7個のPBMCごとに、300μLの氷冷MACSバッファーを再懸濁のために用いる。次いで、100μLのCD19マイクロビーズおよび100μLのCD27マイクロビーズを添加し、サンプルを4℃で15分間インキュベートする。次いで、細胞を7mLのMACSバッファーで洗浄し、4℃にて300gで5分間遠心分離し、500μLのMACSバッファー中に再懸濁する。次いで、細胞を磁場中で平衡化LSカラムに通し、2×3mLのMACSバッファーで洗浄する。次いで、LSカラムを磁場から取り出し、細胞を5mLのMACSバッファーで洗い出して、濃縮した細胞を溶出する。
【0318】
総B細胞。CD19+マイクロビーズ(Miltenyi 130-050-301)を用いて、細胞の選別前に総B細胞を濃縮し、例えば選別時間を短縮してよい。他の濃縮方法を、それらがCD19
+細胞を濃縮するという条件で用いてもよい。5×10
7個のPBMCごとに、400μLの氷冷MACSバッファー中に細胞を再懸濁する。100μLのCD19+マイクロビーズを添加し、冷蔵庫内(4℃)で15分間インキュベートする。次いで、細胞を7mLのMACSバッファーで洗浄し、4℃にて300gで5分間遠心分離し、500μLのMACSバッファー中に再懸濁する。次いで、細胞を磁場中で平衡化LSカラムに通し、2×3mLのMACSバッファーで洗浄する。次いで、LSカラムを磁場から取り出し、細胞を5mLのMACSバッファーで溶出し、濃縮した細胞を得る。
【0319】
他の細胞タイプ。必須というわけではないが、所望の細胞集団のMACS濃縮は、選別時間を短縮することができる。形質細胞、他のB細胞集団、および非B細胞集団を含む他の細胞集団も、適切な試薬を用いたMACSまたは他のシステムを用いて濃縮してよい。例えば、CD3+マイクロビーズを用いて総T細胞を濃縮してよく、CD8+およびCD4+マイクロビーズを用いて、それぞれエフェクターT細胞およびヘルパーT細胞を単離してよい。CD45ROマイクロビーズを用いてメモリーT細胞を単離してよく、CD8+またはCD4+ビーズと併用して、それぞれメモリーエフェクターまたはメモリーヘルパーT細胞を単離してよい。
【0320】
単一細胞選別
MACS濃縮は選別に必要でないが、形質芽球に対するMACS濃縮を実施して、選別時間を短縮してもよい。PBMCがMACS濃縮を受けている場合、濃縮されていないPBMCのアリコート(約100万個の細胞)も並行して分析し、サンプル中のベースラインの形質芽球のパーセンテージを決定することが可能である。形質芽球を選別するために、暗所にて氷上で20分間、50μLのFACSバッファー(PBSまたは2%FBSを含むHBSS)中で、メーカー推奨の容量のCD3-V450(BD 560365)、IgA-FITC(AbD Serotec STAR142F)、IgM-FITC(AbD Serotec STAR146F)またはIgM-PE(AbD Serotec STAR146PE)、CD20-PerCP-Cy5.5(BD 340955)、CD38-PE-Cy7(BD 335808)、CD19-APC(BD 340437)、およびCD27-APC-H7(BD 560222)で細胞を染色した。いくつかの細胞は、代わりに、IgM-FITCとともにIgG-PE(BD 555787)、CD138-PE(eBioscience 12-1389-42)、またはHLA-DR-PE(BD 555812)で染色されてもよい。形質芽球、メモリーおよびナイーブB細胞の同時選別のために、以下の染色スキームを用いた:IgD-FITC(Biolegend 348205)、IgG-PE(BD 555787)、CD20-PerCP-Cy5.5、CD38-PECy7、IgM-APC(BD 551062)、CD27-APC-H7、IgA-ビオチン(AbD Serotec 205008)、その後にストレプトアビジン-eFluor710(eBioscience 49-4317-82)およびCD19-BV421(Biolegend 302233)が続く。メモリーB細胞は、CD19
+CD27
+IgG
+またはCD19
+CD20
+IgG
+のいずれかとしても選別されており、ナイーブB細胞は、CD19
+IgD
+IgM
+として選別されている。IgA
+形質芽球も選別されており、CD19
+CD20
−CD27
+CD38
++IgA
+IgM
−として定義される。細胞表面マーカーを用いてB細胞または他の細胞集団を表現型で同定可能であり、集団を単一細胞に選別できるのであれば、他の細胞表面マーカーを用いてもよい。下記を参照されたい。次いで、細胞を2mLのFACSバッファーで1回洗浄し、FACSに適した容量で再懸濁した。まず、細胞をBD Aria IIで5mL丸底チューブ内に選別した。典型的には、1回目の選別から80%超の純度が達成された。2mM dNTP(NEB N0447L)、5μMオリゴ(dT)
20VN、およびRNase阻害剤である1単位のRibolock(Fermentas EO0384)を含有している6.65μLの低張バッファー(10mM Tris-HCl pH7.6)を含有している96ウェルPCRプレートの1段目の11個の列に単一細胞を選別した。陰性対照として、最後の列を細胞を欠いているままにした。IgG
+形質芽球に対して、ゲーティング(細胞の選別)戦略には、CD19
+CD20
−CD27
+CD38
++IgA
−IgM
−を用いた。選別したプレートを、アルミニウム製プレートシーラー(Axygen PCR-AS-600)でシールし、直ちにドライアイスで凍結させ、-80℃で保存した。
【0321】
単一細胞選別のゲーティング戦略
B細胞。B細胞に対して、ゲーティング手法は、以下のマーカー:IgM、IgG、IgA、IgD、CD19、またはCD20のうちの1つまたは複数に関する選別を含む。総IgG
+B細胞に対して、ゲーティング手法は、IgG
+に関する選別を含む。総IgA
+B細胞に対して、ゲーティング手法は、IgA
+に関する選別を含む。総IgM
+B細胞に対して、ゲーティング手法は、IgM
+に関する選別を含む。
【0322】
活性化B細胞。活性化B細胞には、それらの膜抗原受容体のその同種抗原への結合を介して刺激されているB細胞、および/または同じ高分子抗原に由来するエピトープを認識するT細胞からのT細胞支援を受けているB細胞が含まれる。細胞サイズの増大(例えば、「芽球B細胞」;下記を参照されたい)、1種もしくは複数種の細胞表面マーカーの発現、1種もしくは複数種の細胞内マーカーの発現、1種もしくは複数種の転写因子の発現、細胞周期の休止(G0)期から出ること、細胞周期を進行させること、サイトカインもしくは他の因子の産生、および/または1種もしくは複数種のある特定の細胞表面マーカー、細胞内マーカー、転写因子、もしくは他の因子の下方調節を含む多様な特性によって、活性化B細胞を同定することができる。活性化B細胞を同定する一つの方法は、CD19または免疫グロブリン等のB細胞マーカーの検出を、細胞のサイズもしくは体積の増大、細胞表面活性化マーカーCD69、または細胞透過性アクリジンオレンジによるDNA染色もしくは別の細胞周期分析に基づく細胞周期の進行等の活性化のマーカーと組み合わせることである。
【0323】
芽球B細胞。「芽球B細胞」とは、休止B細胞と比較して活性化しているかつサイズが増大しているB細胞である。芽球B細胞には、形質芽球集団ならびに活性化B細胞の他の集団が含まれ、芽球B細胞は、物理的に休止B細胞よりもサイズが大きい。細胞の直径、細胞の体積、電気インピーダンス、FSC、FSCパルスの積分(エリア)(FSC-A)、FSCの高さ(FSC-H)、前方散乱パルスの幅(FCS-W)、側方散乱(SSC)、側方散乱パルスの領域(SSC-A)、側方散乱の高さ(SSC-H)、側方散乱の幅(SSC-W)、自己蛍光、および/または細胞サイズの他の測定法に基づき、それらが物理的により大きいことに基づくB細胞のゲーティング(選択)を含むいくつかの異なる手法を用いて、芽球B細胞を単一細胞に選別することができる。
【0324】
フローサイトメトリーにおいて、前方散乱(FSC)は、細胞の流れに沿った光線を用いて測定され、各細胞の比例的サイズおよび直径に関する情報を提供する。FSCを用いて、休止B細胞のFSC中央値よりも大きいFSC、例えば休止B細胞よりも5%大きい、休止B細胞よりも10%大きい、休止B細胞よりも15%大きい、休止B細胞よりも20%大きい、休止B細胞よりも30%大きい、休止B細胞よりも40%大きい、休止B細胞よりも50%大きい、休止B細胞よりも60%大きいFSC-AまたはFSC-Hを有するB細胞を選択することができる。特定サイズの校正ビーズを分析することによって、FSCを用いて、校正ビーズと比較したB細胞の相対的サイズを決定することができる。そうすることによって、特異的にゲートをかけることができ、それにより約8μm、>8μm、>9μm、>10μm、>11μm、>12μm、>13μm、>14μm、>15μm、>16μm、>17μm、>18μm、>19μm、または>20μmの直径を有するB細胞を選択することができる。
【0325】
細胞サイズの別の測定法は、細胞体積である。細胞体積に対する「究極の判断基準」は、電子的測定に基づくCoulterの原理を用いる(Tzur et al, PLoS ONE, 6(1): el6053. doi:10.1371/journal.pone.0016053, 2011)。インピーダンスによって細胞体積を測定する装置において、液滴の帯電および偏向による選別の方法が最初に用いられたが、現在市販されているフローサイトメーターは、光学的な測定を行うだけである。FSC測定は、粒子と流体との間の屈折率によって影響を受け得るが、細胞サイズを査定するために、FSC測定、とくにFSC-A(FSC積分エリア)が一般に用いられる(Tzur et al, PLoS ONE, 6(1): el6053. doi:10.1371/journal.pone.0016053, 2011)。FSC-W、SSC、および450/50-A自己蛍光を含む光学的パラメーターを組み合わせることによって、体積予測が改善され得ることを示している者もいる(Tzur et al, PLoS ONE, 6(1): el6053. doi:10.1371/journal.pone.0016053, 2011)。
【0326】
例えば、サイズの増大に基づく活性化B細胞の選択は、CD19等のマーカーを用いてB細胞を同定すること、およびFSCまたはFSC-Aによってサイズを査定することによって達成され得る。サイズの査定のための他のB細胞マーカーおよび/またはパラメーターは、本明細書において記載されている。
【0327】
形質芽球。形質芽球の単離に対して、ゲーティング手法は、CD19
+CD38
++B細胞に対する選別を含む。IgG
+形質芽球の単離に対して、ゲーティング手法は、CD19
+CD38
++IgA
−IgM
−B細胞に対する選別を含む。IgA+形質芽球の単離に対して、ゲーティング手法は、CD19
+CD38
++IgA
+B細胞に対する選別を含む。IgM+形質芽球の単離に対して、ゲーティング手法は、CD19
+CD38
++IgM
+B細胞に対する選別を含む。加えて、他のゲーティング戦略を用いて、本明細書において記載される方法を実施するのに十分な数の形質芽球を単離することができる。また、以下のマーカー発現パターン:CD19
low/+、CD20
low/−、CD27
+、およびCD38
++を用いて、形質芽球を単離した。これらすべてのマーカーの使用は、概して単一細胞選別から最も純度の高い形質芽球集団をもたらすが、上記マーカーのすべてを用いる必要があるわけではない。例えば、以下のゲーティング戦略:より大きな細胞に対する高い前方散乱(FSC
hi)、FSC
hiCD19
low細胞、FSC
hiかつCD27
+、CD38
++、またはCD20
−細胞を用いて、形質芽球を単離してもよい。これらのマーカーまたは他のB細胞と形質芽球とを区別し得ることが見出されている他のマーカーのいずれかの組み合わせは、選別された形質芽球の純度を一般的に増大させるが、しかしながら、上記マーカー(FSC
hiを含む)のいずれか1つは、より低い純度ではあるが、単独で他のB細胞と形質芽球とを区別することができる。
【0328】
メモリーB細胞に対して。IgG
+メモリーB細胞に対して、ゲーティング手法は、CD19
+CD27
+IgG
+またはCD19
+CD20
+IgG
+に対する選別を含む。IgA
+メモリーB細胞に対して、ゲーティング戦略は、CD19
+CD27
+IgA
+またはCD19
+CD20
+IgA
+を含む。IgM
+メモリーB細胞に対して、ゲーティング戦略は、CD19
+CD27
+IgM
+またはCD19
+CD20
+IgM
+を含む。
【0329】
他の細胞タイプに対して。B細胞、T細胞、または他の細胞集団が、細胞マーカーを用いて表現型で同定可能である限り、それを単一細胞選別することができる。例えば、T細胞はCD3
+またはTCR
+として同定され得、ナイーブT細胞はCD3
+CD45RA
+として同定され得、メモリーT細胞はCD3
+CD45RO
+として同定され得る。エフェクターおよびヘルパーT細胞は、それぞれCD3
+CD8
+およびCD3
+CD4
+として同定され得る。メモリーヘルパーT細胞に対して、CD3
+CD4
+CD45RO
+等のマーカーの組み合わせを用いることによって、細胞集団をさらに細分することができる。
【0330】
単一B細胞由来の対合した軽鎖および重鎖免疫グロブリン遺伝子の配列決定
アダプター分子を用いた逆転写
単一細胞を選別したプレートを氷上で融解し、使用前に短時間遠心分離した。プレートを、サーマルサイクラーにおいて55℃3分間、42℃2分間、および4℃無期限でインキュベートした。プレートを再度短時間遠心分離し、エアロゾルの形成を避けるために慎重に開封した。1μLの10μM溶液の適切なアダプター分子(各アダプター分子は、概してサンプル同定領域(サンプルID)を有する)を各ウェルに添加し、すべての陰性対照ウェル(RNA保存バッファーのみ、または非B細胞を含有している)は同一のアダプター分子を受理した。0.75μLのH
2O、1μLの10×M-MuLV RTバッファー(NEB B0253S)、0.6μLの50mM MgCl
2を含有している2.35μLの混合物、0.25μLのRibolock(40U/μL)、および0.125μLのSuperscript III(200U/μL)(Invitrogen 18080-085)を添加し、ピペッティングによって混合した。プレートを短時間遠心分離し、サーマルプレートシェーカーを用いて42℃で120分間〜8時間インキュベートし、次いで-20℃で保管した。反応後、すべてのウェルからのRT産物を微量遠心チューブにプールした。次いで、プールしたRT産物を、約0.1%の8-ヒドロキシクロロキンを含むフェノール-クロロホルム-イソプロピルアルコール(Sigma 77617)で抽出し、次いでgel-lock phaseチューブ(5 PRIME 2302820)でのクロロホルム抽出で抽出した。次いで、Amicon Ultra-0.5 30kDa(Millipore UFC503096)またはUltra-0.5 100kDa(Millipore UFC510096)を用いた14000gでの5分間のスピン、それに続くTE(1mM EDTAを含む10mM Tris-HCl pH7.6)を用いた14000gでの5分間のスピン、およびEB(Qiagen 19086)を用いた14000gでの最後の5分間のスピンによって、RT産物を濃縮および脱塩した。Amicon Ultraカラムを新しい遠心分離チューブに反転させ、1000gで2分間遠心分離することによって、RT産物を溶出した。この時点で、RT産物を-20℃または-80℃で保管した。
【0331】
タッチダウンPCR
454シークエンシングラン1および2に対して、タッチダウンPCR法を以下のように用いた。PCRラン3および4におけるいくつかのサンプルに対して、PCR法を変更し、対合した重鎖および軽鎖の数の増大につなげた。この変更は、以下の「非タッチダウンPCR」のサブセクションに詳述されている。
【0332】
第1のPCRおよび第2の、ネステッドPCRの両方に対して、提供されているGCバッファー中でPhusion Hot Start II DNA polymerase(NEB F-549L)を用いた。IgGに対する、プライマーおよびアダプター分子を表1に示す。サンプルID配列を表2に示す。プレートID配列を表3に示す。
図3および9も参照されたい。反応条件には、25μLの最終容量中に、1.8mMのMgCl
2最終濃度、200μM dNTP、すべてのプライマーに対して0.2μM、0.2UのPhusionポリメラーゼ、添加物として種々の量のDMSO、および2μLの鋳型が含まれた。第1のPCRについて、λおよびκ軽鎖、ならびにγ重鎖を異なるウェル中で増幅させており、DMSOをそれぞれ8%、5%、および10%の最終濃度で用いる。第1のPCRに用いた順方向プライマーは、FWロングプライマー1およびFWショートプライマー1であった。FWロングプライマー1は、アンプリコン領域(アンプリコン)の5'末端にプレート同定領域(プレートID)を付加するため、異なるプレートIDを含有しているFWロングプライマー1が、異なるサンプルに添加された。κ、λ、およびγ鎖を増幅するために用いた遺伝子特異的逆方向プライマーは、それぞれκGSP1、λGSP1、およびγGSP1であった。第1のPCRに対するサイクル条件には、98℃30秒間での初期変性工程、それに続く98℃10秒間、72℃25秒間の2サイクル;後続のアニーリング工程に対して0.5℃の降下を有する、98℃10秒間、71.5℃〜68.5℃15秒間、および72℃20秒間の7タッチダウンサイクル;98℃10秒間、68℃15秒間、および72℃20秒間の30サイクル;それに続く72℃5分間での最終伸長;ならびに4℃無期限での保持が含まれた。第1のPCRからの産物をTE中に100倍希釈し、2μLを、第2の、ネステッドPCRに用いた。第2のPCRについて、すべてのサンプルにおいて添加物として5%DMSOを用いた。順方向プライマーはFWプライマー2であり、逆方向プライマーはRVプライマー2およびGSPロングプライマー2であった。κGSPロングプライマー2、λGSPロングプライマー2、およびγロングプライマー2を用いて、それらそれぞれのアンプリコンを増幅した。GSPロングプライマー2もアンプリコンの3'末端にプレートIDを付加するため、プレート特異的プレートIDを有する異なるGSPロングプライマー2が、プールされた各プレートサンプルに添加された。第2の、ネステッドPCRに対するサイクル条件には、98℃30秒間の初期変性工程、98℃10秒間、67℃15秒間、および72℃20秒間の30〜40サイクル、それに続く72℃5分間の最終伸長、ならびに4℃無期限での保持が含まれた。
【0333】
非タッチダウンPCR
非タッチダウンPCRについて、別様に記述されていない限り、条件はタッチダウンPCRと同一であった。第1のPCRのサイクルパラメーターは、95℃5分間の初期変性、98℃30秒間、62℃30秒間、72℃30秒間の15〜25サイクル、72℃5分間の最終伸長、および4℃無期限での保持であった。第1のPCRは、3遺伝子すべての特異的逆方向プライマーであるκ、λ、およびγ定常領域逆方向プライマーを、それぞれ0.2、0.2、および0.24μMで併用した多重PCRであった。用いた他のすべてのプライマーは、タッチダウンPCRにおけるものと同じであった。遺伝子特異的プライマーは、タッチダウンPCRで用いたものであってよく、第1のPCRに適するように設計されたもののうちのいずれか1つであってもよい(表6)。DMSOを5%の最終濃度で用いており;0.1mg/mlのBSA(NEB B9001S)およびET-SSB(NEB M2401S)をPCR反応に1:100で添加してもよい。第1のPCRの間、80または90μlの総反応容量に4〜6μlのcDNA鋳型を用いた。各PCR1反応を8または9個の10μl反応物に分け、それぞれ異なるウェル中で起こした。PCR後に、第1のPCRを再度プールし、TE0.1中に100×で希釈し、2μlを第2のPCRに用いた。第2のPCRは、各遺伝子特異的プライマーに対する別々の反応であり(多重でない)、反応混合物は、以下の:第2のPCRに機能するように設計された遺伝子特異的定常領域プライマーのいずれかを用いてよく(表6)、プライマーをすべてにわたって0.2μMもしくは0.4μMのいずれかで用いた、または遺伝子特異的プライマーを0.2μMで用いかつ残りを0.4μMで用いたという点を除いて、タッチダウン第2のPCRと同一であった。0.1mg/ml BSAを反応に添加しており、ET-SSBも1:100で用いてよい。第2の半ネステッドPCRのサイクルパラメーターは、95℃5分間の初期変性、98℃30秒間、67℃30秒間、72℃30秒間の20〜35サイクル、72℃5分間の最終伸長、および4℃無期限での保持であった。非タッチダウンPCRについて、第1のPCRおよび第2のPCRに対する組み合わせたPCRサイクルの総数は、典型的には50〜60サイクルであった。PCRサイクルを受けているプールされた異なるウェルは、妥当な量のDNA産物(典型的には、1〜12ng/μl)を得るのに異なるサイクルの数を用いる傾向があるため、各第2のPCRに対して4種の異なるPCRサイクル、例えば23、26、30、および33サイクルを実施し、5μlを2%アガロースゲルで泳動し、比較した。PCR産物の量の定性的判定に基づき、第2のPCRサイクル数のうちの1種からのPCR産物のみを、454シークエンシングランの調製における各プールされたウェルの第2のPCRに用いた。
【0334】
ヒトにおける他の免疫グロブリン重鎖、マウスにおける免疫グロブリン重鎖および軽鎖、ならびにヒトおよびマウスにおけるTCR鎖のPCRについて、PCR条件は、第1のPCRが多重でないという点を除いて上記の非タッチダウンPCRのセクションと同一であり、各cDNAは個々に増幅される。表10および11における以下の3'プライマーを、PCR1および2に用いる。
【0335】
454 XLR70シークエンシングランのための調製
第1のおよび第2の454ランについて、454 Titaniumシークエンシングラン用の配列決定プライマー(それぞれ、Titanium Primer AおよびB)を、第1のPCRおよび第2の、ネステッドPCRの間、アンプリコンに添加した。5μLの各アンプリコンを、質量DNAラダー(Fermentas SM0383)とともにアガロースゲルで泳動し、画像を撮影し、バンド強度を分析し、AlphaFC Imagerソフトウェア(Cell Biosciences)で定量化した。κ、λ、およびγアンプリコンのそれぞれの5ngを別々にプールし、0.8%アガロースゲルで泳動し、GelGreen(Biotium 41005)で可視化した。適切なサイズ(κおよびλに対しては約600bp、ならびにγに対しては約750bp)のバンドを切り出し、わずかな改変を含むメーカーの指示書に従って、MinElute Gel Extraction kit(Qiagen 28606)を用いて精製した。要するに、アガロースゲルを加熱することなくQGバッファーに溶かし、さらなるQG洗浄工程を行う。PE洗浄バッファーによって5分間静置させ、その後スピンした。さらなるPE洗浄工程も実施した。サンプルを25μLのEBバッファーで溶出した。454での第2のランのために、DNA容量:ビーズ容量について1:0.65の比率を用いて、サンプルをSPRIビーズでも1回浄化した。DNA濃度をPicogreen DNA assay kit(Invitrogen P11496)で決定し、γ:κ:λのDNA濃度が2:1:1になるようにサンプルをプールした。プールしたサンプルは、>0.5ng/μLの濃度であり、454シークエンシングのために454 DNAシークエンシング機器に送った。
【0336】
第3のおよび後の454シークエンシングランについて、プロトコールを変更した。アンプリコンをさらに別々にプールして、各PCR反応からのDNA量を標準化したが、メーカーの指示書に従って、まずSPRIビーズによるクリーンアップを行い、小さなDNA断片を除去した。アンプリコンを3%アガロースゲルで泳動し、適切なバンドを切り出し、以前のようにMinElute Gel Extraction kitを用いて精製した。その後、アンプリコンにSPRIビーズによるもう2ラウンドのクリーンアップを行い、さらにより小さなDNA断片を除去し、Picogreenで定量し、Nanodropで品質チェックをして、OD260/280比が>1.8であることを確認し、1μlをゲルで泳動して、小さなDNA断片が存在しないことを確認した。λおよびκアンプリコンを1:1の比率でプールし、γをそのままで用いた。次いで、454の指示どおり、DNAを1×10
9コピーに希釈し、1cpbでのemPCRのために配列決定機器(Roche)に送り、picotiterプレートの一方の領域におけるγ重鎖およびもう一方の領域におけるプールされた軽鎖を配列決定した。
【0337】
454 XL+シークエンシングランのための調製
現在のところ、454 XL+シークエンシングランは、XLR70ランに用いられたLib-Aシークエンシングキットをサポートしていない。現在のところ、XL+は、一方向配列決定であるLib-Lキットのみをサポートしている。本発明者らのプロトコールを適合させてXL+シークエンシングを行うために、XLR70ランに対するプロトコールに従うが、ゲルによるクリーンアップ工程の後、各アンプリコンは(κ、λ、およびγ)は、Lib-L AおよびBアダプターにそれぞれ5サイクルの長さを付加した2種の別々のPCRを受けた。PCR条件は以下のとおりである:5×GCバッファーおよび最終濃度5%のDMSOとともに、Phusionポリメラーゼを用いる。プライマーを0.2μMで用いる。0.1mg/ml BSAを反応に添加する。PCRのサイクルパラメーターは、95℃5分間の初期変性、98℃30秒間、67℃30秒間、72℃30秒間の20〜35サイクル、72℃5分間の最終伸長、および4℃無期限での保持である。各アンプリコンに対して、2種のPCR:一方のPCRにおいて5LIB-LAおよび3LIB-LB、ならびにもう一方のPCRにおいて5LIB-LBおよび3LIB-LAを行う。各アンプリコンが、5'-LibA-アンプリコン-LibB-3'または5'-LibB-アンプリコン-LibA-3'のいずれかになるように、アダプターを添加する。これらのアンプリコンは、5'末端におけるLibA「A」または「B」アダプター(および3'末端における相当する「B」または「A」アダプター)のいずれかを有し、双方向配列決定が可能となる。次いで、新たなLib Aアダプターを有するアンプリコンは、3ラウンドのSPRIビーズによるクリーンアップを受け、その後XLR70ランに対するプロトコールに従って、DNAを定量かつ品質チェックし、その後それを1×10
9コピーに希釈し、1cpbでのemPCRおよび配列決定のために454シークエンシング機器(Roche)に送る。
【0338】
PacBioシークエンシングランのための調製
PacBioシークエンシングランについて、上記のタッチダウンPCRを採用した。「454 XLR70ランのための調製」に関する上記のセクションのとおり、DNAのプールおよびクリーンアップを行った。配列決定要件に十分なDNA(500ng)を得るために、最低1μgのDNAをゲルおよびSPRIクリーンアップのためにプールした。Picogreen定量および1×10
9への希釈は、それはPacBioシークエンシングに必要でないため、行われなかった。第2のPCRから不十分なDNAが得られた場合には、第2のPCRおよびプール工程を、十分なDNAが得られるまで繰り返した。最低500ngのクリーンアップDNAを、配列決定のためのPacBioシークエンシング機器に送った。
【0339】
他の配列決定手法
本明細書において開示される方法は、454またはPacBioシークエンシングに依存しない。λおよびκ軽鎖は約600bpであり、γ重鎖は約700bpである。ゆえに、一般的に所望されることは、順方向および逆方向の配列決定の読み取りが、軽鎖(LC)のおよそ600bpの配列(正確な配列の長さは5'非翻訳領域(UTR)の長さに依存する)および重鎖(HC)のおよそ700bpの配列の全体の再構築を可能にするのに十分なだけ重なり合うような、より長い配列決定の読み取りを有し得る能力である。したがって、少なくとも約350〜400bpの配列決定の読み取りをもたらし得、それによって配列のアセンブリに用いられる重複を達成し得る任意の配列決定技術を利用することができ、およそ600〜700+bpの読み取りを可能にする配列決定技術は、順方向(Fw)プライマーだけを用いてシークエンスすること(5'末端からの配列決定)を可能にする。
【0340】
配列
上記のランに対する配列データを関連機器から受け取り、以下に記載されるように処理した。
【0341】
配列の命名
配列決定の読み取りに対応する配列表中の各配列、配列のアセンブリ、または配列からのアミノ酸翻訳は、識別子を有する。そのような各識別子は、ピリオド「.」によって分かれた9つのフィールドを有する。フィールドは1〜9の番号を付されており、以下の情報を与える。:
1.読み取りID。読み取りを判定するために用いられる配列決定技術に関連したソフトウェアによって割り当てられる読み取りID、または配列が生の読み取りでない場合には「NA」。
2.プレート番号。配列が関連付けされているプレート番号。対応する生物学的サンプル情報のために、表12(サンプルマッピングの表に対するプレート)を参照されたい。
3.サンプルID。配列が関連付けされているウェルを示すサンプルID。サンプルIDの数は、1、89も含めて1〜89の間である。サンプルIDとウェル名との間の対応のためには、表2を参照されたい。
4.ウェル名。配列が関連付けされているウェルを含有しているウェル名。ウェル名は、通常の96ウェルプレートの名称、例えばD07に対応する。ウェル名およびサンプルIDは、プレート上の特定のウェルを指定する同等の手段である。
5.コンティグID。コンティグIDは、既定のアセンブリおよび鎖タイプと、ウェルに関連付けされた異なる配列とを区別する。
6.プラットフォーム。プラットフォームのフィールドは、配列の由来となる配列決定技術を示す。プラットフォームに関して可能な値は、454、サンガー、およびPacBioである。
7.鎖タイプ。鎖タイプのフィールドは、配列が、重鎖抗体配列のセット、軽鎖抗体配列のセット、または重鎖および軽鎖抗体配列の両方を含有しているセットに関連しているかどうかを示す。可能な値は、「heavy」、「light」、または「CMB」である。
8.ランID。特定のプラットフォームでの読み取りのセットに対する識別子。
9.配列タイプ。配列のタイプ。可能値は、配列決定技術による生の読み取りに対する「生(raw)」、アセンブルされた読み取り(配列のアセンブリのセクションを参照されたい)に関して、「nb」、「urt」、「multim50」、「zerom50」、もしくは「pb」、または種々のntアセンブリコンセンサス配列に由来するアミノ酸配列に関して、「nb-aa」、「urt-aa」、「multim50-aa」、「zerom50-aa」、もしくは「サンガー-aa」である。
【0342】
分析のための配列の調製
454シークエンシングから産出されたデータを、454 GS FLXデータ分析ソフトウェアによって分析し、フィルターを通過した質の高い配列を戻した。454 GS FLXデータ分析ソフトウェアによって用いられたデフォルトのアンプリコンフィルターは厳密であるため、十分な長さの読み取りを得るためにはフィルターの厳密性を緩和する必要があり得る。一つの方法は、454技術会報APP No. 001-2010における提案に従うことである。アンプリコンフィルターの<vfScanAllFlows>を「TiOnly」から「False」へ変更することは、フィルターを通過した良質な配列の大幅な増大につながり得る。別のオプションは、<vfTrimBackScaleFactor>をより低い数字へ変更することである。454のラン1では標準的なショットガン処理を用い、ラン2では<vfScanAllFlows>を「False」へ変更し、ラン3および4では標準的なアンプリコンパイプライン処理を用いた。
【0343】
Pacific Biosciencesシークエンシングから産出されたデータを、関連する品質スコアを含むCircular Consensus SequenceとしてPacific Biosciencesから受け取った。
【0344】
ウェルへの配列の割り当て
サンプル由来のcDNAを、454またはPacific Biosciencesシークエンシング技術のいずれかを用いて配列決定した。読み取りは、その配列タイプが「生」である配列表中のものである。配列決定の読み取りを分析し、供給源のプレートおよびウェルに割り当てるかまたは破棄した。
【0345】
読み取りに対するプレートおよびウェルの割り当ては、定型的表現(regular expression)を用いて、観察された読み取り配列を可能性のあるプレート同定領域、ユニバーサルプライマー領域、およびサンプル同定領域の配列と比較することによってなされた。表13、14、および15に列挙された定型的表現を用いて、3つの段階で比較を行った。
【0346】
段階1は、可能性のあるプレート同定領域の分析であって、表13における「プレート同定領域の定型的表現」の欄に列挙された定型的表現のすべてに対して読み取りがチェックされ、配列の最初のヌクレオチドから合致が始まることを必要とした。合致が見出されなかった場合、読み取りを破棄し、プレート/ウェルの割り当てを、もしあれば、次の利用可能な読み取りを用いて処理を継続した。合致が見出された場合、配列に、そのプレートIDとして「プレートID」の欄から対応するIDを割り当てた。プレートの定型的表現に合致する読み取りのヌクレオチドを、後の照合段階の間およびアセンブリの間の使用のために記録した。
【0347】
段階2は、ユニバーサルプライマー領域の分析であって、「ユニバーサルプライマーの定型的表現」である:
に対して読み取りがチェックされ、読み取りの合致が、プレートの定型的表現に合致する最後の読み取りヌクレオチドに続いて最初のヌクレオチドから始まることを必要とした。読み取りがユニバーサルプライマーの定型的表現に合致しなかった場合、読み取りを破棄し、プレート/ウェルの割り当てを、もしあれば、次の利用可能な読み取りを用いて処理を継続した。そうでなければ、ユニバーサルプライマーの定型的表現に合致する読み取りのヌクレオチドを、後の照合段階の間およびアセンブリの間の使用のために記録した。
【0348】
段階3は、可能性のあるサンプル同定領域の分析であって、表14における「サンプル同定領域の定型的表現」の欄に列挙された定型的表現のすべてに対して読み取りがチェックされ、合致が、ユニバーサルプライマーの定型的表現に合致する最後の読み取りヌクレオチドに続いて最初のヌクレオチドから始まることを必要とした。合致が見出されなかった場合、読み取りを破棄し、プレート/ウェルの割り当てを、もしあれば、次の利用可能な読み取りを用いて処理を継続した。合致が見出され、かつサンプルIDの欄が1つの識別子のみを含有していた場合、読み取りのサンプルIDを、サンプルIDの欄に見出されたIDであるように割り当てた。サンプルIDの欄が1つを上回る識別子を含有していた場合、それらの識別子を「サンプルID候補」として見なした。次いで、表15の「サンプルID」の欄における対応するサンプルIDのうちの少なくとも一つがサンプルID候補に合致する、表15の「サンプル同定領域の定型的表現」の欄に列挙された定型的表現のすべてに対して、読み取りが順次チェックされた。読み取りが定型的表現に合致し、かつ合致が、ユニバーサルプライマーの定型的表現に合致する最後の読み取りヌクレオチドの後の最初のヌクレオチドから始まる場合、サンプルID候補からの右端の識別子を読み取りのサンプルIDとして割り当てた。そうでなければ、右端の識別子をサンプルID候補のリストから削除し、いずれかの合致が見出されるまでサンプルID候補のより小規模なリストを用いて処理を繰り返し、または表15における定型的表現のリスト中に合致する定型的表現が見出されない場合には、最後のサンプルID候補(すなわち、サンプルID候補の元のリストにおける左端)を読み取りに対するサンプルIDとして割り当てた。
【0349】
プレートIDおよびサンプルIDの割り当て処理の間に破棄された読み取りは、配列表に含めなかった。
【0350】
配列のアセンブリ
ウェルと関連付けしたサンプルIDに割り当てたすべての配列読み取りをアセンブルして、コンセンサス配列を見いだした。これらのコンセンサス配列は、選別された細胞において発現した重鎖および軽鎖のmRNA配列に相当する。
【0351】
Newbler 2.5(ラン1および2)、ならびに他の配列に対してNewblerバージョン2.6および/またはMiraバージョン3.4.0を用いて、配列をアセンブルした。
【0352】
「454」のプラットフォームフィールド、「混合(mixed)」の鎖タイプのフィールド、「1」または「2」のランID、および「nb」の配列タイプを有するリスト中の配列は、Newblerを用いたアセンブリから生じるコンティグである。これらの配列をアセンブルするために、各ヌクレオチドに対する配列および品質スコアの両方を含有している、454シークエンシングからのsff出力ファイルを、Biopythonパッケージおよび上記に記載されるそれらの化合物バーコード(サンプルID+プレートID)に従って細分された配列を用いて、Python内に読み取り、別々のsffファイルに出力した。次いで、これらのファイルを、sfffile(GS FLXデータ分析ソフトウェアによって提供される)によって、「-force」、「-cdna」、および「-urt」のオプションを用いた、GS FLXデータ分析ソフトウェア一式に提供されている配列アセンブラであるNewblerによって理解されるファイル見出しを有するsffファイルに再解析(reparse)した。次いで、Newblerによって、順方向の読み取りを共有の化合物バーコードとアセンブルした。逆方向の読み取りは3'プレートIDのみを有するため、異なる細胞由来の順方向および逆方向配列の読み取りの間で配列アセンブリが起こり得る可能性がある。この潜在的な課題を回避するために、まず、アセンブルされた順方向およびアセンブルされていない逆方向の読み取りの両方の重鎖および軽鎖V(D)J使用法を、HighV-QUEST(http://imgt.cines.fr/HighV-QUEST/index.action)を用いて同定することができる。次いで、配列をそれらのV(D)J使用法に従ってさらにグループ化し、その後、同じV(D)J使用法を共有するアセンブルされた1種の順方向の読み取りおよび逆方向の読み取りを用いてNewblerで再度アセンブルすることができる。これを、アセンブルされたすべての順方向の読み取りに対して繰り返すことができる。ヌクレオチドのミスマッチに寛容であるために配列アセンブリを行うこともでき、それによって同じV(D)J使用法を共有する異なる細胞由来の順方向および逆方向の読み取りのアセンブリを防ぐことができる。このように、異なる細胞由来の非常に類似した配列間の逆方向の読み取りの不適切な配列アセンブリを大幅に避けることができる。
【0353】
「454」のプラットフォームフィールド、「heavy」または「light」の鎖タイプのフィールド、「3」または「4」のランID、および「nb」の配列タイプを有するリスト中の配列は、454読み取りのアセンブリから生じるコンティグであり、コマンドライン:runAssembly -cdna - o output seqs.fastaqであって、seqs.fastqが単一ウェルのFastQフォーマットに編集された読み取りを含有したこのコマンドラインでNewblerを実行する。
【0354】
Newblerが正確に1種の重鎖コンティグまたは正確に1種の軽鎖コンティグを生み出さない、ランID 3またはランID 4の読み取りに対する任意のウェルを、miraでアセンブルすることによって再分析した。「454」のプラットフォームフィールド、「heavy」または「light」の鎖タイプのフィールド、「3」または「4」のランID、および「multim50」または「zerom50」の配列タイプを有するリスト中の配列は、これらのアセンブリから生じるコンティグであり、このコマンドライン:mira --project=seqs -- job=denovo,est,accurate,454 454_SETTINGS -ED:ace=yes -AL:egp=no -CL:pvlc=yes --fastq - notraceinfoでmiraを実行する。
【0355】
seqs_in.454.fastqと名付けられたファイルは、単一ウェルのFastQフォーマットに編集された読み取りを含有していた。
【0356】
上記のアセンブリコマンドを用いることによってNewblerもmiraもコンティグを生み出さない、ランID 3またはランID 4の読み取りからのウェルに対して、異なるNewblerコマンドを実行した。「454」のプラットフォームフィールド、「heavy」または「light」の鎖タイプのフィールド、「3」または「4」のランID、および「urt」の配列タイプを有するリスト中の配列は、これらのアセンブリから生じるコンティグであって、Newbler は、コマンドライン:runAssembly -cdna -ud -urt - o output seqs.fastaqであって、seqs.fastqが単一ウェルのFastQフォーマットに編集された読み取りを含有したこのコマンドラインで実行された。
【0357】
「PacBio」のプラットフォームフィールド、「heavy」の鎖タイプ、および「pb」の配列タイプを有するリスト中の配列は、PacBioプラットフォームからの読み取りのアセンブリから生じるコンティグであり、コマンドライン:mira --project=seqs -- job=denovo,est,accurate,454 454_SETTINGS -ED:ace=yes -AL:egp=no -CL:pvlc=yes --fastq - notraceinfoでmiraを実行する。
【0358】
seqs_in.454.fastqと名付けられたファイルは、単一ウェルのFastQフォーマットに編集された読み取りを含有していた。
【0359】
アミノ酸配列
「454」のプラットフォームフィールドおよび「nb-aa」、「urt-aa」、「multim50-aa」、または「zerom50-aa」の配列タイプを有するリスト中の配列は、「配列のアセンブリ」において記載される、454読み取りのアセンブリのヌクレオチド配列を翻訳することによって決定されるアミノ酸配列である。
【0360】
「PacBio」のプラットフォームフィールドおよび「pb-aa」の配列タイプを有するリスト中の配列は、「配列のアセンブリ」において記載される、Pacifc Biosciences読み取りのアセンブリのヌクレオチド配列を翻訳することによって決定されるアミノ酸配列である。
【0361】
「サンガー-aa」の配列タイプを有するリスト中の配列は、サンガー配列決定によって決定される読み取りを直接翻訳することによって決定されるアミノ酸配列である。
【0362】
他の配列決定データ分析オプション
上記に記載されるデータ分析のワークフローを用いて、各細胞の重鎖および軽鎖配列を正確に決定することができる。しかしながら、この情報は、本発明者らの「選択スクリーニング」手法(「発現したヒト抗体のスクリーニング」を参照されたい)に絶対に必要なわけではない。選択スクリーニングが機能するために、本発明者らは、まず、対になる抗体配列を、それらの重鎖V(D)J使用法および軽鎖VJ使用法に基づき、クローンファミリーにクラスター化する。したがって、本発明者らは、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の完全配列を必要とせず、V(D)J使用法を決定するのに十分な配列情報を使用することができる。したがって、本発明者らは、配列決定エラーを許容することができ、454または他の任意の配列決定技術によって産出されるより低品質な読み取りを使用することができる。すべての配列はアセンブルされる前にそれらの化合物バーコードに従ってまずグループ化され得るため、順方向の読み取りの配列アセンブリは概して問題とはならない。各化合物バーコードは1個のサンプル/細胞に由来するため、同じ化合物バーコードを有する各免疫グロブリン鎖に対して、1種のみの「正しい」配列が存在する。すべての配列決定エラーが同じ塩基で起こることはあり得ないため、次いで、異なる鎖における配列決定エラーを平均することができ、コンセンサス塩基配列を選ぶことが最も正確な配列を与えるということを意味する。曖昧な場合には、高いphred品質スコアを有する塩基が、一般的にその代わりに選出される。454は、より高品質な読み取りのみが残るまで3'末端からの配列読み取りを取り除くため、これは非常に短い読み取りをもたらし得る。本発明者らの方法を用いると、本発明者らは、より低品質な読み取りを許容することができ、それによって454によって産出されるより非常に長い読み取り(400〜500bp)を用いることができる。これらのより長い読み取りを用いて、本発明者らは、順方向の読み取りと逆方向の読み取りとのアセンブリを必要とすることなく、V(D)J使用法を同定することができ、それによっていくつかの局面において3'プレートIDを必須でないものにする。さらには、454シークエンシングの最新世代は、746bpの平均および800bpの様式に至るまで配列決定することができる。ゆえに、順方向と逆方向の読み取りとのアセンブリはもはや必要でないため、順方向の読み取りだけからの配列決定は、重鎖および軽鎖免疫グロブリンのアンプリコン全体を網羅するのに十分であり得、いくつかの局面においては3'プレートIDを必須でないものにもし得る。
【0363】
抗体の選択およびクローニング
アセンブリの後、重鎖および軽鎖の配列を分析して、特徴付けのための抗体を選択した。予測されるV(D)J生殖系列使用法および抗体配列に由来する進化樹の調査に基づいて、抗体を選択した。選択された抗体をクローン化し、発現させ、異なるアッセイで特徴付けした。
【0364】
V(D)J割り当て
抗体鎖の配列を生殖系列配列の既知のアレルについてのデータベースと比較し、かつ抗体に用いられた生殖系列アレル、どのように生殖系列配列が再結合したか、および生殖系列と比較した抗体における突然変異を予測するソフトウェアであるV-QUEST(Brochet, X. et al., Nucl. Acids Res. 36, W503-508 (2008))を用いて、ラン1および2からの重鎖および軽鎖配列を分析した。表18は、さらなる特徴付けに選出された抗体に対するV-QUEST V(D)J割り当ての結果を示しており、ラン1およびラン2からの他のすべてのアセンブリに対して、同様に同じデータが得られた。V-QUESTに類似したソフトウェアであるSoDA(Volpe, Cowell and Kepler, Bioinformatics (2006) 22 (4): 438-444)を用いて、ラン3およびラン4からのいくつかの配列を分析した。
【0365】
患者のゲノムを配列決定する場合、ゲノム配列データをVDJ割り当て分析のための生殖系列配列として用いることができ、患者の抗体配列における体細胞超変異を確実に同定し得る能力をさらに改善する。
【0366】
進化樹およびクローンファミリー
ラン1および2からの重鎖の成熟ペプチドに対応するヌクレオチド配列を、それらが由来する患者に対応するセットに分割した。これら個々のセットから、ソフトウェアclustalx2(Larkin MA, Blackshields G, Brown NP, Chenna R, McGettigan PA, McWilliam H, Valentin F, Wallace IM, Wilm A, Lopez R, Thompson JD, Gibson TJ, Higgins DG. (2007) Bioinformatics, 23, 2947-2948)を用いて、すべてのパラメーターに対するデフォルト設定を用いてアラインメントおよび樹を作り出した。
【0367】
患者由来の配列の進化樹を、個々のクローンファミリー由来の配列のセットからも構築することができる。ファミリーに対する推定先祖抗体の重鎖および軽鎖配列を推論し、それらがすでにセット内にない場合には、配列のセットに加えることができる。セットに対する進化樹を、例えば最大節約法、最大尤度法(Maximum Likelihood)、または任意の適当なアルゴリズムを用いて構築することができ、先祖抗体の配列において樹を根付かせる(root)ことができる。樹が重鎖および軽鎖の共進化を表すように、重鎖のみ、もしくは軽鎖のみに基づいて、または好ましくは個々の重鎖および軽鎖に同時に基づく樹を構築することによって、樹を構築することができる。
【0368】
抗体選択
各患者に対して、ラン1またはラン2の配列から築かれた樹と合わせてV-QUEST結果の表を再検討した(TreeViewXで見た:http://darwin.zoology.gla.a.c.uk/~rpage/treeviewx)。V-QUESTに基づき、代表的な配列を選択して、存在するVDJの異なるファミリーを網羅し、樹上の対応する配列を調査して、分岐群を代表するものであると思われる配列を選出した。典型的には、各分岐群から1種の配列が選択された。選択された配列のいくつかは、多くのメンバーを有するファミリーに由来したが、いくつかは、わずかなメンバーまたは1つのメンバーを有するファミリーからも選択された。選択された配列を表18に記載する。表18における各抗体について、「抗体」の欄は、配列表中の配列と関連付けされた名称のコンティグIDフィールドにおける「−」の後の文字列と同じである。
【0369】
クローン化された軽鎖および重鎖免疫グロブリンペアのクローニングおよび発現
ベクター
一方のシステムは、InvitrogenのベクターpcDNA3.3およびpOptivecから改変された、ネオマイシンおよびジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を選択可能なベクターシステムである。代替的システムは、増幅可能で選択可能なマーカーがグルタミン合成酵素(GS)であるLonza GSシステムである(下記を参照されたい)。免疫グロブリンのκ軽鎖、λ軽鎖、およびγ重鎖をコードする配列を、ベクター内に挿入する。Kozakコンセンサス配列およびリーダー配列はクローン内にすでに存在しており、ゆえにベクター内に遺伝子操作される必要はない。5'-隣接制限部位および1つまたは複数の他の内部制限部位を含有するように、定常領域を合成する。多様な免疫グロブリン重鎖および軽鎖のクローニングを容易にするために、クローン自体が制限部位を含有せず、したがって内部で切断されない可能性を増大させる、多数の制限部位を有するインサートを遺伝子操作する。インサートは、インサート領域の5'末端および定常領域内に遺伝子操作された2つの異なる制限部位において、2つの異なる8塩基カッター制限部位を有する。5'制限部位は、両方の軽鎖に対してFseIおよびPacIであり、γ重鎖に対してAscIおよびAsiSIである。定常領域内に遺伝子操作された制限部位自体は、両方の軽鎖に対してNheIおよびXhoIであり、γ重鎖に対してEcoRIおよびSacIIである。制限部位を含有している定常領域インサートの配列について、表16を参照されたい。次いで、第1のPCR反応からの重鎖または軽鎖クローンを、クローン内に組み入れられる5'隣接制限部位を有するクローニングプライマーを用いて、PCRの第2のラウンドに供する。ここでは相補的末端を有し、かつT4 DNAリガーゼを用いて一緒にライゲーションされる発現ベクターおよびクローンを切断するために、適切な制限酵素を用いる。InvitrogenおよびLonza GSベクターシステムの両方は、増幅可能な選択マーカーを含有している。このマーカーは、InvitrogenシステムにおいてDHFRであり、Lonza GSシステムにおいてGSである。適切な選択因子(DHFRに対するメトトレキサートおよびグルコース合成酵素(GS)に対するL-メチオニンスルホキシイミン)からの選択圧の下で、選択マーカーに連結された遺伝子をそれとともに増幅する。より多コピーの免疫グロブリン遺伝子を用いると、より多量の抗体の分泌がある。これは、抗体を中和するための後のインビボスクリーニングのために、大量の抗体を精製する必要がある場合に有用である。
【0370】
クローニングおよび発現
胚中心の成熟の間、最も高い親和性の形質芽球が選択されると仮定して、本発明者らは、最も高い親和性のクローンファミリーは最も多数のクローンも有すると予想する。さらには、各クローンファミリー内で最も高い親和性のクローンは、そのファミリー内で最も高頻度なクローンでもあると考えられる。これらの仮定に基づいて、本発明者らは、いくつかの局面において、各患者サンプル由来の5つの最大クローンファミリーから最も高頻度なクローンを発現させることを選ぶ。それぞれ単一細胞を含有している同じプレートからのすべてのサンプルが一緒にプールされている、第1のPCR cDNAからクローンを増幅する。順方向プライマーは、サンプルIDを含有しており、したがってその特定のサンプルIDでバーコードされたDNAのみを増幅する。サンプルIDは、互いの間にヌクレオチドの相違を含有しているため、これは非常に特異的である。いくつかのサンプルIDは、同一のクローニング順方向プライマーを有し得、これらのプライマーによって増幅されたクローンは、後に細菌のコロニー選択によっても互いに区別されるはずである。順方向および逆方向プライマーの両方は、κ、λ、またはγ定常領域をすでに含有しているベクター内にクローンを組み込む(一列に並んだコーディングフレームとともに)ことを可能にする隣接制限部位(第一および第二の制限部位領域)を含有している。クローニングプライマー配列について、表4および5を参照されたい。軽鎖を改変型pcDNA3.3内にかつ重鎖を改変型pOptivec内にクローニングする、または両方の鎖をLonza GS二重発現ベクター内にクローニングする。哺乳類細胞を、免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子をコードする別々の発現ベクターで二重にトランスフェクトする、または重鎖および軽鎖遺伝子の両方を含有している二重発現ベクターを単独でトランスフェクトする。次いで、分泌された抗体を含有している上清を回収し、所望の特性についてスクリーニングする。
【0371】
ある場合には、DNA合成、ならびに制限酵素および標準的な分子生物学を用いて、適切な定常領域を含有しているベクター内に合成されたDNAを組み入れることによって、Ig遺伝子の可変領域をクローン化してよい。合成の間、突然変異誘発が所望される場合を除いて、アミノ酸配列が変更されない限りは正確なヌクレオチド配列に従う必要はない。このことは、より高い発現レベルをもたらし得るコドン最適化を可能にする。このことは、クローニングのための、制限部位における付加も可能にする。5' UTRおよびバーコード配列等の翻訳されない配列は合成される必要がなく、リーダー配列も、より高い発現レベルで知られる他のシグナルペプチド配列と交換されてよい。これらは、高性能な読み取りと非常に異なり得るIgヌクレオチド配列をもたらすが、発現した場合には同一のアミノ酸配列を与える。
【0372】
ある場合には、逆転写の間に付加されるサンプルIDバーコードアダプターは、制限酵素部位をすでに組み入れていてよい。このことは、PCRアンプリコンプールにおいて、サンプルIDバーコードの3'制限部位を有するアダプターをもたらす。クローニングプライマーを用いたクローニングの間、サンプルIDバーコード配列に相補的である5'プライマー、および鎖特異的3'プライマー(κ、λ、およびγ鎖に対する)を用いて、プレート特異的アンプリコンプールから所望のアンプリコンを増幅する。3'プライマーは、3'制限部位を付加する。5'プライマーはウェルIDバーコードの3'制限部位をすでに含有しているため、5'プライマーは制限部位を付加する必要がない。この増幅の後、定常領域インサートを含有しているベクター内へのライゲーションのために、制限酵素を用いてアンプリコンを切断する。制限酵素消化の間、バーコードおよびユニバーサル配列等の、Ig遺伝子配列の5'末端へ付加された配列は、それらが5'制限部位の5'であるため切断される。
【0373】
クローニングおよび発現のための代替的方法
別の局面において、DNA合成、ならびに制限酵素および標準的な分子生物学を用いて、適切な定常領域を含有しているベクター内に合成されたDNAを組み入れることによって、Ig遺伝子の可変領域をクローン化してよい。合成の間、突然変異誘発が所望される場合を除いて、アミノ酸配列が変更されない限りは正確なヌクレオチド配列に従う必要はない。このことは、より高い発現レベルをもたらし得るコドン最適化を可能にする。このことは、クローニングのための、制限部位における付加も可能にする。5' UTRおよびバーコード配列等の翻訳されない配列は合成される必要がなく、リーダー配列も、より高い発現レベルで知られる他のシグナルペプチド配列と交換されてよい。これらは、高性能な読み取りと非常に異なり得るIgヌクレオチド配列をもたらすが、発現した場合には同一のアミノ酸配列を与える。
【0374】
別の局面において、逆転写の間に付加されるウェルIDバーコードアダプターを、制限酵素部位にすでに組み入れてよい。このことは、PCRアンプリコンプールにおいて、ウェルIDバーコードの3'制限部位を有するアダプターをもたらす。クローニングプライマーを用いたクローニングの間、ウェルIDバーコード配列に相補的である5'プライマー、および鎖特異的3'プライマー(κ、λ、およびγ鎖に対する)を用いて、プレート特異的アンプリコンプールから所望のアンプリコンを増幅する。3'プライマーは、3'制限部位を付加する。5'プライマーはウェルIDバーコードの3'制限部位をすでに含有しているため、5'プライマーは制限部位を付加する必要がない。この増幅の後、定常領域インサートを含有しているベクター内へのライゲーションのために、制限酵素を用いてアンプリコンを切断する。制限酵素消化の間、バーコードおよびユニバーサル配列等の、Ig遺伝子配列の5'末端へ付加された配列は、それらが5'制限部位の5'であるため除去される。
【0375】
Lonzaベクター内への重鎖および軽鎖のクローニング
免疫グロブリン定常領域のクローニング
LonzaとのStanford Universityのアカデミックライセンス契約によって、Lonzaベクターを入手した。κおよびλ軽鎖をpEE12.4ベクター内に挿入し、γ重鎖をpEE6.4ベクター内に挿入した。重鎖および軽鎖配列を2つの工程でクローン化した:まず、後に免疫グロブリン鎖の5'末端(リーダーおよびV(D)J配列)が続く定常領域をクローン化した。定常領域インサートは、Integrated DNA Technologies(IDT)によって遺伝子合成され、遺伝子最適化および制限部位の組み入れに適したサイレント突然変異を含有していた。IDTから、IDTの所有物であるpIDTSmartベクター内のインサートを入手した。インサート配列は表17にある。IgG1をγ重鎖定常領域として用いた。κ、λ、およびγ鎖に対して、用いたアレルは、それぞれKm3、Mcg
−Ke
−Oz
−、およびG1m3であった。定常領域をLonzaベクター内に組み入れるために、LonzaベクターおよびpIDTSmart-定常領域インサートを、dam
−dcm
−コンピテント大腸菌内にすべて個々に形質転換し、メーカーの指示書に従って、Qiagen miniprep kitを用いてプラスミドを精製した。次いで、HindIIIおよびBclIを用いて、プラスミドを37℃で1時間消化し、150Vで、1時間1.2%アガロースゲルで泳動した。消化されたLonzaベクターおよび定常領域インサートを、ゲル精製し、T4 DNAリガーゼを用いて、3:1のインサート:ベクターの比率で室温にて10分間ライゲーションした(Km3またはMcg
−Ke
−Oz
−軽鎖とpEE12.4、およびG1m3γ1重鎖とpEE6.4)。次いで、T4 DNAリガーゼを70℃で8分間不活性化し、標準的な分子生物学の技術を用いて、5μlのライゲーション混合物をヒートショックコンピテントTOP10細胞内に形質転換した。コロニーを拾い、サンガー配列決定によって挿入を検証した。
【0376】
免疫グロブリン可変領域のクローニング
次に、λまたはκ軽鎖のいずれかを含有しているpEE12.4を、AscIおよびXmaIを用いて37℃で5時間消化し、ゲル精製した。γ1重鎖を含有しているpEE6.4を、AscIおよびAgeIを用いて37℃で5時間消化し、ゲル精製した。ウェルID特異的順方向プライマーおよび定常領域特異的逆方向プライマー(表4および5)を用いて、第1のPCRの特異的プレートIDの100倍希釈物から、選択されたアンプリコンを選択的に増幅した。順方向プライマーは、プライマーの5'末端にAscI制限部位を有し、かつ逆方向プライマーは、軽鎖および重鎖プライマー定常領域プライマーに対して、それぞれXmaIまたはAgeI制限部位を含有していた。98℃30秒間での初期変性、ならびに98℃10秒間、68℃15秒間、および72℃20秒間での35〜45サイクルを用いてPCRサイクルを行った。最終伸長は、72℃5分間および4℃無期限での保持状態であった。PCR産物を、メーカーの指示書に従って、Millipore製のPCR
u96 ultrafiltration plateを用いて精製した。この後、軽鎖に対してAscIおよびXmaIを用いて、ならびにγ1重鎖に対してAscIおよびAgeIを用いて、PCR産物を37℃で3時間二重消化した。次いで、消化された産物を、gelgeen(Biotium)を含む2.5%低融点アガロースで泳動し、青色光の下で可視化した。適切なサイズにおいてバンドを含有しているゲル薄片を切り出した。ゲル薄片を65℃で溶かし、定常領域インサートを含有している適切に消化されかつAntarcticホスファターゼ(NEB)処理されたLonzaベクターを添加し、およびT4 DNAリガーゼと室温で1〜3時間インキュベートすることによって、インゲルライゲーションを実施した。次いで、ヒートショックコンピテント細菌を形質転換し、アンピシリン寒天上にプレーティングした。1つの構築物につき6個のクローンを拾い、2×LB(2×濃縮したLuria-Bertani培養液)中で増殖させた。メーカーの指示書(www.millipore.com/techpublications/tecg1/tn004)に従って、MilliporeのMultiscreen 96-well filter plateを用いてミニプレップを実施して、プラスミドDNAを得た。95℃5分間の初期変性、および95℃1分間、50℃2分間、72℃1分間の40サイクル、および72℃5分間での最終伸長、および4℃無期限での保持を用いて、コロニーPCRを実施した。適切なインサートを有するクローンを、サンガー配列決定のためにSequetech, Mountain View, CA, USAに送った。IMGT HIGHV-Questを用いてクローンのVDJ同定を行い、正しいクローンを、細菌ストック(15%グリセロールを用いて-80℃で保存)およびプラスミドの両方として保管した。
【0377】
293Tにおけるモノクローナル抗体の発現
メーカーのプロトコールに従って、Lipofectamine 2000を用いて、対になるpEE12.4-軽鎖およびpEE6.4-重鎖構築物の一過性の二重トランスフェクションを行った。48ウェル、24ウェル、6ウェル、60mmディッシュ、および100mmディッシュでトランスフェクションを行っている。簡潔には、下流のプロテインA精製工程において、ウシIgGと分泌されたヒトIgGとが競合するのを防ぐために、DMEM+10% ultralow IgG FBS(Invitrogen)中で293T細胞を培養した。293T細胞を20継代培養し、その後液体N
2から新たなアリコートを融解し、使用した。48ウェルプレートのトランスフェクションについて、前日に8×10
4個の細胞を各ウェルに播種し、翌日約90%コンフルエントまで増殖させた。50ngの各重鎖および軽鎖構築物を、50μlの最終容量で、Optimem培地中でインキュベートし、Lipofectamine 2000も別々に50μlのOptimem培地とインキュベートした。両方のインキュベーションは5〜25分間であった。次いで、Lipofectamine 2000と構築物とを穏やかにピペッティングすることによって混合し、20分間インキュベートし、その後293T細胞に添加して穏やかに混合した。翌日培地を交換し、培養上清を1日おきに(例えば、月曜日、水曜日、および金曜日)2週間回収した。他のサイズのトランスフェクションに対して、以下の量の構築物およびLipofectamine 2000を用いた:24ウェルプレートのトランスフェクションに対して、100ngの各構築物を1.25μlのLipofectamine 2000とともに用いた。60mmディッシュに対して、625ngの各構築物を12.5μlのLipofectamine 2000とともに用いた。100mmディッシュのトランスフェクションに対して、3μgの各構築物を37.5μlのLipofectamine 2000に用いた。
【0378】
抗ヒトIgG ELISA
ある場合には、サンプルについてヒトIgG ELISAを行って、培養上清中の発現したIgGの量を定量し、抗体の量を標準化した後に、培養上清を下流での適用に直接用いた。抗ヒトIgG ELISA定量キットをBethyl Laboratoriesから購入し、メーカーの指示書に従って実施した。簡潔には、100μlの捕捉抗体をNunc Maxisorpプレートに4℃で一晩コーティングし、PBST(0.05%Tween20を含むPBS)で5回洗浄した。ウェルをPBS中1%BSAで室温にて1時間ブロッキングし、次いでPBSTで5回洗浄した。次いで、ウェルを、キットからの適切な標準希釈物または希釈した培養上清とともに室温で1時間インキュベートし、次いでPBSTで5回洗浄した。100μlの希釈したHRP検出抗体を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートし、次いでPBSTで5回洗浄した。50μlのTMB基質溶液を添加し、反応を50μlの停止溶液で停止させた。吸光度をSpectraMax M5分光光度計で450nmにて読み取り、4パラメーター曲線を用いて検量線を産出した。抗体を、防腐剤として0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS中で4℃にて保管した。
【0379】
プロテインAによる発現したモノクローナル抗体のIgG精製
他の場合には、まず抗体を培養上清から精製し、使用前にBCAを用いて定量した。簡潔には、培養上清を1週間に3回、50mlチューブ内に2週間回収し、プロテインAによるIgG精製まで、添加剤としての0.1%アジ化ナトリウムとともに4℃で保存した。培養上清をスピンダウンし、静かに注いで任意の細胞の凝集体を除去した。1M pH9.0 Trisを培養上清に添加して、pH指標片によって判定されるpHが7.5〜8.0の間であることを確認した。Protein A plus agaroseビーズ(Pierce)をPBSで2回洗浄し、その後400μlの50%スラリーを培養上清に添加し、回転装置上で4℃にて一晩インキュベートして、ビーズのさらなる混合を確実にした。培養上清を1000gで5分間スピンし、ビーズをチューブの底から5ml重力流(gravity flow)カラム内へピペッティングで移すことによって、ビーズを回収した。ビーズを4×2mlのPBSで洗浄し、その後低pHの溶出バッファーである、2×1.5mlのIgG溶出バッファー(Pierce)を用いてAmicon-4 100kDa濃縮カラムへ溶出した。溶出された抗体を400μlの1M Tris pH8.0で直ちに中和した。次いで、Amicon-4 100kDa濃縮器において1000gで10分間スピンすることによって抗体を濃縮し、その後に2mLのPBS洗浄、および0.1%アジ化ナトリウムを含む2mlのPBS洗浄が続いた。抗体濃度をBCAアッセイによって決定し、0.5mg/mlに調整した。Protein A Plus Agaroseを、1×2mlのPBS、3×2mlのIgG溶出バッファーでの洗浄、および0.1%アジ化ナトリウムを含む3mlのPBSでの洗浄によって再生し、4℃で保管した。最高5回までカラムを再生することができる。
【0380】
発現したヒト抗体のスクリーニング
抗体−抗原結合についてのスクリーニング
まず、選択された抗体(上記のクローニングおよび発現のセクションを参照されたい)を、関心対象の抗原に結合し得るその能力についてスクリーニングし、次いでクローンファミリー全体の抗体を発現させ、抗原を遮断または中和し得るその能力についてスクリーニングする(下記の「機能的スクリーニング」を参照されたい)。まず、関心対象の抗体を含有している上清中のIgG濃度をIgG ELISAによって決定し、それによって抗体−抗原結合スクリーニングにおいて、各サンプルに対して同じ量のIgGを用いることができる。他の場合には、IgGを、プロテインAアガロースビーズを用いて上清から精製し、標準物質としてウシ免疫グロブリンを用いたBCAアッセイで定量した。次いで、抗体のスクリーニングにおける使用前に、精製したIgGを同じ濃度に標準化した。抗原に結合する抗体をスクリーニングするために、本発明者らは、間接的ELISAを実施する。96ウェルプレートを関心対象の抗原で一晩コーティングし、次いで過剰な抗原を洗い流す。次いで、関心対象の抗原を含有している上清をウェルに添加し、4時間インキュベートし、その後にウェルを洗浄する。陽性対照として、抗原に特異的である既知の量の市販抗体(ヒト以外の種由来)を、抗原を含有している別々のウェルに添加する。陰性対照として、無関係な抗原に特異的な市販抗体を、関心対象の抗原を含有している別々のウェルに添加する。次いで、HRP結合二次抗体をウェルに添加し、30分間インキュベートし、余剰分を洗い流す。次いで、テトラメチルベンジジン(TMB)をプレートに添加し、陽性対照のウェルにおいて発色が観察されるまで反応を進行させる。次いで、反応を酸で停止させ、吸光度を測定する。特異的ウェルの上清は、それらがもたらす吸光度の読み出しが、陰性対照におけるものより有意に高い場合、関心対象の抗原に結合する抗体を含有していると見なされる。
【0381】
Fluzone ELISA
3株の不活性化ウイルスであるA/カリフォルニア/7/2009株、A/パース/16/2009株、B/ブリスベン/60/2008株からなる、Fluzone由来の2010/2011季節性インフルエンザワクチンを志願者に投与した。結合活性を有する発現した抗体についての初期スクリーニングとして、Fluzone ELISAを行って、ワクチンを接種された志願者に由来するモノクローナル抗体が、インフルエンザワクチン自体に結合するかどうかを判定した。FluzoneワクチンをpH9の炭酸塩バッファー中に100×で希釈し、室温で1時間または4℃で一晩のいずれかでNunc Maxisorpプレートにコーティングした。次いで、プレートをPBST(0.05%Tween20を含むPBS)で5回洗浄し、1%BSAを含むPBSで室温にて1時間ブロッキングした。次いで、100μlの100ng/mlの発現したインフルエンザ抗体を室温で1時間ウェルに添加し、その後PBSTで5回洗浄し、かつ希釈したHRP検出抗体(Bethyl LabsのヒトIgG ELISA定量キットから)を室温で1時間添加した。プレートをPBSTで5回洗浄し、50μlのTMB基質を添加した。最高30分間まで発色を進めさせ、その後50μlの停止溶液で反応を停止した。プレートをSpectroMax M5分光光度計で450nmの吸光度で読み取った。本アッセイに用いた抗体を表19に記載する。主たる表である表18において、抗体の配列を参照することができる。
【0382】
インフルエンザ抗体親和性についての表面プラズモン共鳴による判定
ProteOn表面プラズモン共鳴バイオセンサー(BioRad Labs)を用いて、モノクローナル抗体(mAb)のHA分子への結合を25℃で分析した。インフルエンザワクチンを接種されたドナーの形質芽球由来の発現したインフルエンザモノクローナル抗体(pH4.5酢酸バッファー中に25nM)を、試験用フローセルにおいて、800共鳴単位(RU)の標的密度で、EDAC-NHS化学反応を用いたアミン結合でGLCセンサーチップに結合させた。未反応の活性エステル基をエタノールアミンで抑制した。精製された組換えヘマグルチニンH3(HA(ΔTM)(H3N2/パース/16/2009))およびH1(HA(ΔTM)(A/カリフォルニア/07/2009)(H1N1))を、Immune Technology Corp.(New York, NY)から購入し、空のバッファー対照とともに、100、50、25、12.5、6.25nMに希釈し、120秒間の接触時間および2000秒間の解離時間で、30μL/分の流速で注入した。結合反応速度論およびデータ分析を、BioRadのProteON managerソフトウェアを用いて実施した。HAはいくつかの反復単位からなるため、二価分析物(bivalent analyte)アルゴリズムを用いて、親和性測定結果を算出した。適合させた曲線の正確性を、各適合度(goodness of fit)のx2値が最大結合値(Rmax)の10%を下回ることをチェックすることによって検証した。本アッセイに用いた抗体を表20に記載する。主たる表である表18において、抗体の配列を参照することができる。
【0383】
RA抗原マイクロアレイでのRA抗体の反応性
抗原をマイクロアレイに焼き付ける(print)ために、抗原をリン酸緩衝食塩水で0.2mg/mLに希釈し、ArrayIt NanoPrint Protein LM210システムを用いて、ArrayIt SuperEpoxyスライドに接着させた。スライドを、疎水性マーカーパップペンで印付けし、3%ウシ胎仔血清および0.05%Tween20を含むPBS中で、30rpmで穏やかに揺すりながら、4℃で一晩ブロッキングした。30rpmで穏やかに揺すりながら、4℃で1時間、アレイを400μLの40μg/mLモノクローナル抗体でプローブした。次いで、アレイを洗浄し、1:2500に希釈したCy3結合抗ヒトIgG/IgM二次抗体中で、30rpmで穏やかに揺すりながら、4℃で45分間インキュベートした。もう1回の洗浄後、GenePix 4300Aマイクロアレイスキャナを用いてスライドをスキャンした。GenePix 7ソフトウェアを用いて、各特質(feature)およびバックグラウンドの蛍光強度中央値を見出した。
【0384】
データを分析するために、バックグラウンドの蛍光強度を各特質から差し引き、各アレイでの4つの抗原特質の中央値として表現した。強度中央値を、10を底として対数変換した。これらの値を、Clusterソフトウェアを用いて階層的クラスター分析に供して、互いの類似性に基づいて抗原を配置した。Java(登録商標) TreeViewソフトウェアを用いて、関係性をヒートマップとして表示した。本アッセイに用いた抗体を表21に記載する。主たる表である表18において、抗体の配列を参照することができる。
【0385】
抗ヒストン2A ELISA
ヒストン2Aに対する抗体の検出のために、直接的ELISAを用いた。マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorp)を、炭酸塩バッファー中20μg/mlの濃度の100μlの組換えH2Aでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有しているPBS中でブロッキング後、RA患者由来の抗体を、希釈バッファー(0.1%BSAおよび0.1%Tween-20を含有しているPBS)中に15μg/ml〜250μg/mlの量設定で用い、100μl/ウェルでプレートに二つ組で添加し、室温で2時間インキュベートした。次いで、モノクローナルの西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒト抗体の1:5,000希釈物とともに、サンプルを室温で1時間インキュベートした。反応を、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン基質(TMB)(Sigma-Aldrich)の適用によって15分間進め、50μlの2N H2SO4の添加によって停止させた。抗体の相対的定量化を、既知の血清反応陽性RA血清を陽性対照として用いて、450nmでの光学的濃度測定によって実施した。本アッセイに用いた抗体を表22に記載する。主たる表である表18において、抗体の配列を参照することができる。
【0386】
抗CCP2 ELISA
メーカーの指示書(Eurodiagnostica, Malmo, Sweden)に従って、抗CCP2 ELISAを実施した。要するに、RA患者由来の抗体を、希釈バッファー(0.1%BSAおよび0.1%Tween-20を含有しているPBS)中でおよそ125μg/mlに希釈し、あらかじめブロッキングされている市販のCCP2 ELISAプレートに100μl/ウェルで添加し、室温で2時間インキュベートした。次いで、モノクローナルの西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒト抗体の1:5,000希釈物とともに、サンプルを室温で1時間インキュベートした。反応を、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン基質(TMB)(Sigma-Aldrich)の適用によって15分間進め、50μlの2N H2SO4の添加によって停止させた。抗体の相対的定量化を、業者によって提供される標準物質および既知の陽性RA血清を用いて、光学的濃度測定によって実施した。本アッセイに用いた抗体を表22に記載する。主たる表である表18において、抗体の配列を参照することができる。
【0387】
抗リウマチ因子ELISA
リウマチ因子(RF)に対する抗体の検出のために、マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorp)を、炭酸塩バッファー中10μg/mlのウサギIgGでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有しているPBS中でブロッキング後、RA患者由来の抗体は希釈バッファー(0.1%BSAおよび0.1%Tween-20を含有しているPBS)中5μg/mlであり、100μl/ウェルでプレートに二つ組で添加し、室温で2時間インキュベートした。次いで、モノクローナルの西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒト抗体の1:5,000希釈物とともに、サンプルを室温で1時間インキュベートした。反応を、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン基質(TMB)(Sigma-Aldrich)の適用によって15分間進め、50μlの2N H2SO4の添加によって停止させた。抗体の相対的定量化を、2種の既知のRF+対照血清を陽性対照として用いて、450nmでの光学的濃度測定によって実施した。本アッセイに用いた抗体を表23に記載する。主たる表である表18において、抗体の配列を参照することができる。
【0388】
肺癌組織アレイ上での肺腺癌患者由来の抗体の免疫組織化学
2つの異なるタイプの組織マイクロアレイ用スライドをUS Biomaxから購入した。それらは、VLC 12およびBS0481であった。スライドには、肺腺癌を含む多様な肺癌腫組織の中心部、および正常な肺組織対照も含まれる。スライドを、クエン酸pH6.0抗原回復バッファー中で95〜99℃にて40分間加熱し、その後室温まで冷却させた。スライドを、0.02%Triton-Xおよび0.6%H
2O
2で20分間前処理した。次いで、スライドを、TBST(0.05%Tween20を含むTBS)中10%正常ヤギ血清で2時間ブロッキングし、その後100μg/mlのF(ab)ヤギ−抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch)中で4℃にて一晩さらにブロッキングした。次いで、メーカーの指示書に従って、スライドはアビジン/ビオチンブロッキング(Vector Laboratories)を受けた。次いで、スライドを5または10μg/mlの発現した肺抗体中で室温にて1時間インキュベートし、TBSTで3×5分間洗浄し、次いでビオチン化ヤギ抗ヒト二次抗体と室温で20分間インキュベートした。次いで、スライドをTBSTで3×5分間洗浄し、調製したVectastain ABC試薬と室温で30分間インキュベートした。次いで、スライドを3×5分間のTBSTで洗浄し、Vector Red(Vector Laboratories)で染色し、発色の進行を光学顕微鏡で追跡した。適切な染色時間の後、反応を蒸留水で停止させ、ヘマトキシリンで対比染色した。スライドを水溶性封入し、BX-51顕微鏡で撮影した。本アッセイに用いた抗体を表24に記載する。主たる表である表18において、抗体の配列を参照することができる。
【0389】
肺腺癌患者由来の発現した抗体の肺癌細胞株への結合についてのフローサイトメトリーによる判定
用いた肺癌細胞株は、A549、H226、H441、H23、H1975、H1437、H2126、H1650、およびH2009であった。陰性対照として、HEK 293T細胞も用いた。2mM EDTAを含み、Ca
2+およびMg
2+を含まないPBS中で細胞を37℃で1時間インキュベートすることによって、細胞を剥離した。これは、細胞を剥離するためのトリプシン処理または他の任意のタンパク質分解性消化でなされ得る細胞表面抗原に損傷を与えるのを防ぐためである。細胞をFACSバッファーで1回洗浄し、その後50μlのFACSバッファー(2%FCSを含むHBSS)中に懸濁し、10μg/ml、3μg/ml、1μg/ml、0.2μg/mlの発現した肺抗体とインキュベートして用量を設定した。最適濃度は、0.2〜1μg/mlの範囲であることが見出された。したがって、それ以降、1μg/ml、0.5μg/ml、0.25μg/mlの肺抗体を用いた。肺抗体を4℃で30分間インキュベートし、その後96ウェルプレート中で2×200μlのFACSバッファーで洗浄した。次いで、抗ヒトIgG-PEを添加し、暗所にて4℃で15分間インキュベートした。次いで、サンプルを2×200μのFACSバッファーで洗浄し、200μlのFACSバッファー中に再懸濁し、BD LSR IIまたはLSR Fortessaで分析した。生/死の染色として、Sytox blueを用いた。本アッセイに用いた抗体を表24に記載する。主たる表である表18において、抗体の配列を参照することができる。
【0390】
ブドウ球菌フローサイトメトリー
固定した黄色ブドウ球菌粒子(Wood株)をInvitrogenから入手した。Wood株は、該細菌の一部によって最小限のプロテインAを発現する株である。粒子を、50μlのFACSバッファー中に10×10
6細胞/50μlで懸濁し、ブドウ球菌個体に由来する10μg/ml、5μg/ml、または1μg/mlの用量設定の、発現した抗体と、4℃で1時間インキュベートした。次いで、固定したブドウ球菌粒子をFACSバッファーで2回洗浄し、その後抗ヒトIgG-FITC抗体と暗所にて4℃で15分間インキュベートした。次いで、粒子を1mlのFACSバッファーで洗浄し、BD LSR IIまたはLSR Fortessaでの分析のために200μlのFACSバッファー中に再懸濁した。本アッセイに用いた抗体を表25に記載する。主たる表である表18において、抗体の配列を参照することができる。
【0391】
機能的スクリーニング
受容体−リガンド相互作用に対する遮断抗体
抗体を、リガンド−受容体相互作用(例えば、サイトカイン−受容体相互作用)を遮断し得るその能力についてスクリーニングするために、本発明者らは、293T細胞に適切な受容体をコードするベクターをトランスフェクトする。これらの293T細胞は、NF-κB依存的ルシフェラーゼレポーターも安定的にトランスフェクトされており、それによってこれらの安定的にトランスフェクトされた293T細胞は、NF-κBが活性化された場合にルシフェラーゼを発現する。次いで、本発明者らは、トランスフェクトした293T細胞を、抗体候補の存在下または非存在下において適切なリガンドとともに培養する。最後に、293Tルシフェラーゼ依存的発光を測定することによって、細胞をルシフェラーゼ発現についてアッセイする。リガンドとその受容体との間の相互作用、例えばIL-17AとIL-17Rとの間の相互作用は、NF-κBを活性化する。遮断抗体は、リガンド−受容体結合によってNF-κBシグナル伝達を妨げ、それによってルシフェラーゼの発現を無効にする。リガンド−受容体相互作用がNF-κBを活性化しない場合には、他の転写応答エレメント、例えばAP-1応答エレメントなどを用いて、ルシフェラーゼ遺伝子のプロモーターを駆動する。
【0392】
サイトカイン機能を阻害し得るまたは機能的アッセイを阻害し得る能力についての抗体のスクリーニング
機能的アッセイを用いても、患者血清におけるまたはクローン化され発現させた抗体における抗サイトカイン抗体についてスクリーニングすることができる。この手法では、発現したヒト抗体を、サイトカインまたは細胞性応答の他の免疫仲介因子誘導を阻害し得るその能力について試験する。
【0393】
細菌、ウイルス感染した細胞、寄生生物、または癌細胞を標的とする抗体
細菌、ウイルス感染した細胞、寄生生物、または癌細胞を殺傷するまたは中和する抗体についてスクリーニングするために、本発明者らは、適切な細胞タイプを、熱で不活性化されていない血清(補体因子を含有している)とともに、抗体の存在下または非存在下のいずれかで培養する。抗体が中和抗体である場合、それは、細菌、他の微生物、または癌細胞をオプソニン化し、細胞死を誘導する膜侵襲複合体(MAC)を形成する補体成分を活性化する。中和を試験するために、本発明者らは、生細胞と死細胞とが異なるフルオロフォアで染色される蛍光性live/deadアッセイ(Invitrogen)を実行する。フローサイトメトリーを用いることによって、生細胞および死細胞のパーセンテージについて細胞をアッセイすることができる。最大パーセンテージの死細胞をもたらす抗体は、インビボスクリーニングにおいてさらに分析されることになる優れた中和抗体候補であると考えられる。
【0394】
ウイルスを中和する抗体
ウイルスを中和する抗体をスクリーニングするために、本発明者らは、標準的なプラーク減少アッセイまたは他のインビトロ細胞感染アッセイを実施する。中和抗体は、細胞のウイルス感染を減少させると予想される。次いで、抗体候補をインビボモデルにおいて試験する。
【0395】
インフルエンザマイクロ中和アッセイ
Fluzone ELISAに結合活性を示したいくつかの発現したインフルエンザ抗体を、マイクロ中和アッセイのために、外部のCRO, Virapur, LLCに送った。簡潔には、100μg/mlから始まる2倍希釈の各抗体と、等量のおよそ100 TCID
50感染単位の力価測定したストックウイルスとを、96ウェルプレートのウェル中に四つ一組で混合した。ウイルス/抗体溶液を2時間インキュベートし、次いで80%コンフルエントのMDCK細胞を含有している96ウェルプレートに混合物を移した。細胞、抗体、およびウイルスを37℃でさらに2時間インキュベートし、その後ウイルスを除去し、単層をすすぎ、ウイルス増殖培地を各ウェルに添加した。72時間後、インフルエンザウイルス感染の存在についてウェルを顕微鏡で観察した。本アッセイに用いた抗体を表26に記載する。主たる表である表18において、抗体の配列を参照することができる。
【0396】
ブドウ球菌阻害アッセイ
対数増殖期にある黄色ブドウ球菌を用いた。それらを96ウェルのポリプロピレンプレートに添加し、ブドウ球菌患者由来の抗ブドウ球菌抗体を10μg/mlで添加した。Baby rabbit complement(Cedarlane)をメーカー推奨の量で添加し、徹底的に混合した。プレートを37℃で45分間インキュベートし、その後1:10、1:100、および1:1000に希釈し、5%TSA血液寒天プレートにプレーティングし、一晩増殖させた。翌日、細菌CFUをカウントし、一覧にした。本アッセイに用いた抗体を表27に記載する。主たる表である表18において、抗体の配列を参照することができる。
【0397】
ブドウ球菌感染した患者に由来する抗体を用いたブドウ球菌抗原の免疫沈降
1×Haltプロテアーゼ阻害剤とともに100ng/mlのリソスタフィンを含むB-Per Bacterial Protein Extraction Reagent(Pierce)を用いて、室温で30分間黄色ブドウ球菌を溶解することによって、ブドウ球菌タンパク質溶解物を作製し、微量遠心機にて15000rpmで遠心分離することによって不溶性画分を分離した。プロテインG Dynabeadsと室温で1時間インキュベートすることによって、溶解物をあらかじめ浄化した。室温で1時間インキュベートすることによって、ブドウ球菌患者に由来する5μgの抗体をプロテインG Dynabeadsに結合させた。次いで、プロテインGに結合した抗体を、あらかじめ浄化したブドウ球菌溶解物と4℃で一晩インキュベートした。次いで、ビーズをPBST(0.1%Tween20を含むPBS)で3回洗浄し、5×reducing lane sample buffer(Thermo Scientific)と95℃で5分間加熱し、その後4〜12%Criterion Bis-TrisゲルでSDS-PAGEにかけた。RAPIDStain Reagent(Calbiochem)でタンパク質を可視化した。本アッセイに用いた抗体を表28に記載する。主たる表である表18において、抗体の配列を参照することができる。
【0398】
ペプチドの質量分析による同定
関心対象の染色されたタンパク質バンドを、ゲルから切り出し、10mM DTTおよび100mMヨードアセトアミドを含有している10mM炭酸水素アンモニウム中に浸し、100%アセトニトリルで処理し、次いで10%アセトニトリルを含有している10mM酢酸アンモニウム中0.1mgトリプシン(Sigma-Aldrich)を用いて37℃で一晩消化した。以前に記載しているように(Lopez-Avila V, Sharpe O, Robinson WH: Determination of ceruloplasmin in human serum by SEC-ICPMS. Anal Bioanal Chem 2006, 386:180-7.)、Agilent 1100 LC systemおよびAgilent XCT Ultra Ion Trap(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を用いることによって、トリプシン処理したタンパク質をLCMSで同定した。タンパク質を同定するために用いたペプチドの検出のために、SpectrumMillソフトウェア(Agilent)を用いることによって、LCMSデータをSwissProtまたはNCBInrデータベースに対してスキャンした。本アッセイに用いた抗体を表29に記載する。
【0399】
実施例1:個々のB細胞由来の対合した重鎖および軽鎖配列についての高性能配列決定
本発明者らは、プレート内の同じウェルを起源とする配列を一義的に同定するために、配列に化合物バーコード(サンプルID+プレートID)を付加する方法を開発した。本発明者らは、この手法を用いて、個々のB細胞由来の対合した重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子を配列決定した。血液、バルク末梢血単核細胞(PBMC)、バルクB細胞、形質芽球、形質細胞、メモリーB細胞、または他のB細胞集団から、個々のB細胞をフローサイトメトリーによって選別することができる(
図1)。
【0400】
まず、96ウェルPCRプレート内にB細胞を単一細胞に選別し、1列のウェルを陰性対照として空のままにした。逆転写(RT)の間、異なるサンプルIDバーコードを含有しているオリゴヌクレオチドは異なるウェルへ添加された。mRNAの逆転写後、MMLV H
−逆転写酵素は、鋳型を切り替え、オリゴヌクレオチドを転写し、それおよびサンプルIDを第一鎖cDNAの3'末端内に組み入れる(
図2a)。次いで、1プレート由来のすべてのcDNA(サンプルIDでバーコード化された)をプールし、2ラウンドのPCRに供した。PCRの間、5'隣接バーコード配列を有するPCRプライマーを用いることによって、アンプリコンの5'および3'末端に、454シークエンシングプライマー(第一および第二の配列決定領域)およびプレートIDが付加された。ここでは、異なるプレート由来のアンプリコン(アンプリコン領域)は、n個の異なるプレートIDを有し、プレートIDおよびサンプルIDを含む化合物バーコードは、配列を特定細胞から来たものとして配列を一義的に同定し、配列決定した重鎖および軽鎖遺伝子のペア形成を可能にする(
図2b〜c)。
【0401】
図3は、用いた一般的方法論および関連配列を記載している。プライマーおよびアダプター分子を表1に示す。サンプルID配列を表2に示す。プレートID配列を表3に示す。クローニングプライマーを表4に示し、クローニング順方向プライマーの3'配列を表5に示す。
【0402】
本発明者らは、予想されるサイズ:κおよびλ軽鎖に関して約600bp、ならびにγ重鎖に関して約700bpの、PCR産物を得た(
図4a)。次に、本発明者らは、サンガー配列決定のために材料を送った。本発明者らは、NCBI BLASTによってκ、λ、およびγ鎖として同定される配列を得た(データ示さず)。DNAクロマトグラムのさらなる調査によって、サンプルIDバーコードから始まるいくつかのピークの混合が示され、本発明者らが、RTの間に異なるウェル中の細胞由来のcDNAにサンプルIDを上手く付加し、かつそれらをその後の2ラウンドのPCRで上手く増幅させたことを示した(
図4b)。3'末端からのサンガー配列決定鎖も、異なる細胞由来の遺伝子の増幅により、VJ結合部から始まるいくつかのピークの混合を示し、それは、異なるVおよびJ遺伝子の挿入および欠失およびランダム組換えの結果としてVJ結合部の後で異なった。さらには、本発明者らが、ウェルA1サンプルIDに特異的なクローニングプライマーを用いてPCRを実施した場合、本発明者らは、いくつかのピークの混合よりもむしろ単一ピークを獲得し、本発明者らが、実際にプール内の特異的細胞から配列を増幅することができることを示した(
図4c〜d)。
【0403】
実施例2:形質芽球の単一細胞選別のためのゲーティングスキーム
本実験のために、形質芽球をCD19
+CD20
−CD27
+CD38
++として定義した。
図22は、96ウェルプレート内への単一形質芽球細胞のフローサイトメトリーによる選別のためのゲーティングスキームを示している。
【0404】
上記のように、単一PBMCを調製し、染色した。まず細胞に、それらのFSCおよびSSCプロファイルに基づきゲートをかけた(データ示さず)。次いで、CD19
+B細胞の生細胞にゲートをかけ(左パネル)、CD20
−B細胞にさらに絞り込み(左から2番目のパネル)、CD27
+CD38
++細胞に純化した。IgG
+形質芽球は細胞表面IgGを発現しないため、これにより、IgG
+形質芽球をIgA
−およびIgM
−として判定した。この集団は、96ウェルプレート内に選別された単一細胞であった。
【0405】
実施例3:形質芽球は免疫学的負荷を受けている対象に存在する
形質芽球は、一般的に健常ドナーにおいてB細胞の約0.15%を占めるが、感染症(例えば、黄色ブドウ球菌およびクロストリジウム・ディフィシル感染症)、進行を伴わない癌(例えば、介入(肺腺癌患者の場合には化学療法、および転移性黒色腫患者の場合にはイピリムマブ療法)後に活性B細胞応答に関連した長期非進行者になった患者の肺の転移性黒色腫および転移性腺癌)、およびワクチンの接種(例えば、インフルエンザ)を含む多様な免疫学的負荷を受けている対象においては、約3.3%〜16.4%に及び得る。
【0406】
図23は、対合した抗体レパートリーの高性能配列決定および活発な液性応答抗体レパートリーの特徴付けのために、形質芽球が広範囲な対象に存在していたことおよびそれらから入手可能であったことを示している。このことは、本明細書において開示される方法論を用いて、重鎖および軽鎖(H&L)の進化樹を獲得することができ、かつ該方法論は、この情報を用いて、例えば:a)新規な抗原の発見;b)ワクチン設計の情報を与えること、例えば、免疫システムを用いて、公知および新規の抗原のどちらが関心対象の病原体または標的のオプソニン化および食作用および/または殺傷/阻害に有用でありそうかを本発明者らに知らせること、かつ任意で、それをワクチン設計に導入すること;c)例えばワクチンから、中和モノクローナル抗体を作製すること;d)結合モノクローナル抗体を作製すること;e)微生物病原体に対する抗体を作製すること;ならびにf)癌に対する抗体を作製すること、のために抗体をクローン化および/または発現させることができることを実証している。これらの例を、以下により詳細に記載する。
【0407】
実施例4:CCP+RAにおける疾患活動性は循環形質芽球と相関している
本発明者らの方法を、同定可能なペアの免疫グロブリン遺伝子の配列決定に用いることができるということが示されているため、本発明者らは、本発明者らの方法を用いて、CCP+RA患者における形質芽球の抗体レパートリーを調べた。本発明者らは、同意したRA患者から血液サンプルを入手し、フローサイトメトリーによって形質芽球を染色した(
図5a)。循環形質芽球を、総PBMCについてのパーセンテージとして表した。本発明者らは、CCP+RA患者が、CCP−RA患者よりも有意に高い末梢血形質芽球パーセンテージを有することを見出した(
図5b)。さらには、CCP−患者においてはそうではないが、CCP+患者における形質芽球パーセンテージは、疾患活動性と相関していた(r=0.35およびp=0.028)(
図5c)。
【0408】
実施例5:形質芽球は抗CCP抗体を産生した
CCP+患者は、疾患活動性と相関した形質芽球パーセンテージを有するが、これらの患者は、循環形質芽球パーセンテージを上昇させた進行中の感染症または他の因子を有し得る。CCP+患者における循環形質芽球の特異性を判定するために、患者由来のRosetteSepで濃縮したB細胞を、10%FBSを補充したRPMI中で培養した。形質芽球が抗体を分泌する唯一の細胞であるために(不活性なままの他のB細胞とともに)、抗IgM、IL-6、BAFF等の他の培地サプリメントを用いなかった。形質芽球のみが抗体を産生することを確認するために、本発明者らは、形質芽球のサンプルの一部を枯渇させた(
図5d)。次いで、B細胞を7日間培養し、その後上清を回収し、それをLuminexペプチドアレイにかけた。アレイは、シトルリン化ペプチドに対する抗体反応性をアッセイする。抗体反応性は、モックを枯渇させたB細胞の上清と比較して、形質芽球を枯渇させたサンプルの上清において消失しており、形質芽球が相当量の抗シトルリンペプチド自己抗体を分泌することを示唆した(
図5e)。さらには、各サンプルに対して60を上回る平均蛍光強度(MFI)を有するペプチドがカウントされた場合、循環形質芽球パーセンテージと抗体が反応するペプチドの数との間に強い相関が見出された(r=0.90およびp=0.0139)。60というMFIが選出され、これは、このMFIを下回る場合に、ペプチド反応性の99%超を、形質芽球を枯渇させたサンプルの上清に収めるためであった。
【0409】
実施例6:454シークエンシングおよび配列の分析
上記のように、患者由来の形質芽球を96ウェルプレート内に単一細胞選別し、これらのRNAを逆転写し、それらが上記のようにサンプルID(サンプル同定領域)およびプレートID(プレート同定領域)バーコードを含有するように、材料および方法のセクションにおける「タッチダウンPCR」に従ってPCR増幅した。
図3を参照されたい。次いで、454 DNAシークエンシング機器(DNA Sequencing Center, Brigham Young Universityおよび454 sequencing center, Roche)からcDNAの配列を獲得した。
【0410】
ショットガンパイプラインを用いた第一の454シークエンシングランから配列を獲得した。454 GS FLXデータ分析一式の修正したアンプリコンフィルターを通して、第二の454シークエンシングランから許容される品質の配列を獲得した。<vfScanAllFlows>が「false」に設定され、かつ<vfBadFlowThreshold>が「6」に変更されるように、アンプリコンフィルターを修正した。第三および第四のランからの配列は、標準的454アンプリコンフィルターを用いて獲得された。次いで、材料および方法における「ウェルへの配列の割り当て」のセクションに記載されるように、フィルターを通過した配列を処理し、材料および方法における「配列のアセンブリ」に記載されるように、各ウェル内の配列を個々にアセンブルした。次いで、アセンブルした配列をIMGT HighV-Questを用いて解析して、用いられたVDJ領域の同定を得た。
【0411】
配列アセンブリおよびV(D)J使用法の同定後、ClustalXを用いて、配列をクローンファミリーにクラスター化した(
図6)。あるいは、順方向および逆方向の読み取りの両方を用いて、配列をアセンブルすることができる。この場合、上記のように、細分された順方向配列がまずアセンブルされる。次いで、HighV-QUEST、ならびにプレートIDおよびV(D)J使用法に従った順方向および逆方向配列のサブセットを用いて、順方向および逆方向配列のV(D)J使用法が同定され、Newblerを用いて順方向および逆方向配列がアセンブルされる。免疫グロブリンは非常に類似しているため、配列のより小さなサブセットからのアセンブリによって、異なる細胞由来の配列が間違って対合されるという潜在的な問題は回避される。
【0412】
実施例7:進化樹への配列のクラスター化
末梢血単核細胞(PBMC)を、示された診断を有するまたはワクチン接種後のヒト対象から単離した。形質芽球を96ウェルプレートにおける個々のウェル内に単一細胞選別し、各ウェルにおいて単一細胞サンプルを作り、次いで各ウェルにおけるmRNAを逆転写し、次いでウェル内容物をプールし、2ラウンドのPCRに供して、免疫グロブリン重鎖および軽鎖cDNAを増幅した。材料および方法のセクションにおける「タッチダウンPCR」および「非タッチダウンPCR」にそれぞれ記載されるように、逆転写によって、各単一サンプルから産出されたすべてのcDNAに同定サンプルIDが付加され、第一ラウンドおよび第二ラウンドのPCRによって、あらゆるアンプリコンにプレートID、次いで454 Titanium Primer AおよびBが付加された。
図3に概略的方法論の概要を示す。プールしたアンプリコンを454シークエンシング技術で配列決定し、上記のように、許容される品質の読み取りを獲得した。材料および方法における「ウェルへの読み取りの割り当て」および「配列のアセンブリ」のセクションに記載されるように、読み取りをウェルに割り当て、アセンブルした。次いで、アセンブルした配列におけるV(D)JセグメントをHighV-QUESTを用いて同定した。次いで、アセンブルした配列と合致する化合物バーコードとを単にまとめることによって、共有の化合物バーコードを有する同定された重鎖および軽鎖を対合させることができる。
【0413】
個々のヒト対象由来のアンプリコンを、これらのV(D)Jセグメントに基づいてクラスター化し、同じV(D)Jセグメントを表す配列を、同じクローンファミリーからのものとして分類した(
図7)。各円グラフは、同一のV(D)J遺伝子セグメントを発現している個々のヒト対象由来の個々の形質芽球に由来するクローンのパーセンテージ(すなわち、各クローンファミリー中のクローンのパーセンテージ)を表す。ヒト対象には、敗血症(2人の対象)、関節リウマチ(3人の対象)、肺癌(1人の対象)、およびインフルエンザに対するワクチン接種後(1人の対象)の人が含まれた。急性(敗血症およびインフルエンザワクチン)および慢性(関節リウマチおよび肺癌)の症状を経験している対象の両方の形質芽球からクローンファミリーを単離することができることを示すために、これらの対象を選出した。
【0414】
図7の個々のヒト対象由来の免疫グロブリン重鎖V(D)J配列を、ClustalXを用いてクラスター化し、Treeviewを用いて根付いていない放射状の樹として示した(
図8)。各放射状の樹は、個々のヒト対象に由来する重鎖配列を表す。各放射状の樹に対して、末端側の終端は固有の配列を表す。主要な枝は、クローンファミリーを表し、より小さな枝は、結合部多様性(P-ヌクレオチドもしくはN-ヌクレオチドの付加、またはヌクレオチドの欠失)、体細胞超変異、および親和性成熟によって生じた突然変異によって互いに異なるクローンサブファミリーを表す。
【0415】
実施例8:抗体のクローニング、発現、および精製
上記の材料および方法のセクションに記載されるように、選択されたすべての抗体をクローン化し、発現させ、かつ単離した(Lonzaベクター内への重鎖および軽鎖のクローニング;293Tにおけるモノクローナル抗体の発現;抗ヒトIgG ELISA;およびプロテインAによる発現したモノクローナル抗体のIgG精製のセクションを参照されたい)。次いで、以下に論述されるように、精製した抗体をさらなる調査に用いた。
【0416】
実施例9:インフルエンザワクチン接種後の対象由来の抗体の特徴付け
上記のように、インフルエンザワクチンを投与されたヒト由来の抗体を選択し、単離した。以下のさらなる特徴付けのために選択された抗体を、適切なセクションにおいて示す。
【0417】
Fluzone ELISA
3株の不活性化ウイルスであるA/カリフォルニア/7/2009株、A/パース/16/2009株、B/ブリスベン/60/2008株からなる、Fluzone由来の2010/2011季節性インフルエンザワクチンを志願者に投与した。結合活性を有する発現した抗体についての初期スクリーニングとして、上記のようにFluzone ELISAを実施して、ワクチンを接種された志願者に由来するモノクローナル抗体が、インフルエンザワクチン自体に結合するかどうかを判定した。31種のうち14種の抗体がFluzone ELISAに結合し(
図26)、続いてこれらのうちのサブセットを選択し、表面プラズモン共鳴を用いてヘマグルチニンへの結合活性について試験した。Fluzone ELISAによって特徴付けされた抗体は、:Flu14〜Flu23、Flu25〜Flu27、Flu29、Flu30、Flu34、Flu35、Flu37、Flu39〜Flu41、Flu43〜Flu46であった。S1およびS2を陰性対照として用いた。
【0418】
インフルエンザ抗体親和性についての表面プラズモン共鳴による判定
上記のように、ProteOn表面プラズモン共鳴バイオセンサー(BioRad Labs)を用いて、モノクローナル抗体(mAb)のHA分子への結合を25℃で分析した。Fluzone ELISAに結合した14種の抗体のうち、10種はH3に結合し、1種はH1に結合したが、3種は結合しなかった(
図27)。非結合物のうちの1種、H1結合物、および4種の他のランダムに選出したH3結合物を選択し、受託試験機関(CRO)に送って、マイクロ中和アッセイにおいて中和活性を試験した。SPRによって特徴付けされた抗体は、:Flu14〜Flu22、Flu26、Flu29、Flu34、Flu35、Flu46であった。
【0419】
インフルエンザマイクロ中和アッセイ
上記のように、Fluzone ELISAにおいて結合活性を示した発現したインフルエンザ抗体の一部を、マイクロ中和アッセイのために、外部のCRO, Virapur, LLCに送った。アッセイの結果は、以前のアッセイにおいてH1に結合した抗体はH1を中和し、一方で以前のアッセイにおいてH3に結合した抗体はH3を中和することを示した。非結合物は、インフルエンザウイルスを中和しなかった(
図28)。マイクロ中和アッセイによって特徴付けされた抗体は、Flu15、Flu16、Flu18、Flu19、Flu20、Flu21であった。
【0420】
CDRのバリエーション
上記のように、インフルエンザ抗体を獲得した。
図25は、明確にするために引き伸ばした部分的系統樹を示している(a)。クローンファミリーがはっきりと見え、影付きのクローンファミリーは、灰色の囲みで示される割り当てられたV(D)Jを有する。重鎖および軽鎖に対するCDR(囲み領域)にわたるアミノ酸配列を、それぞれ
図25(b)および(c)に示し、鎖間でいくつかの残基の相違を示している。
【0421】
上記のこれらの結果は、本明細書において記載される組成物および方法を用いることによって、進化樹を獲得することができることを実証している。本明細書において記載される組成物および方法を用いることによって、急性症状を経験している対象の形質芽球等の活性化B細胞から、完全なヒトモノクローナル抗体を単離することができる。本明細書において記載される組成物および方法を用いることによって、これらの完全なヒトモノクローナル抗体は、中和抗体でもあり得る。結果は、本明細書において開示される組成物および方法を用いて、外来抗原を標的とするmAbを単離することができることも実証している。
【0422】
実施例10:RAを有する対象由来の抗体の特徴付け
上記のように、関節リウマチ(RA)に罹患しているヒト由来の抗体を選択し、単離した。以下のさらなる特徴付けのために選択された抗体を、適切なセクションにおいて示す。
【0423】
RA抗原マイクロアレイでのRA抗体の反応性
材料および方法における「RA抗原アレイでのRA抗体の反応性」のセクションに記載されるように、RA患者に由来する抗体をRA抗原アレイ上にプローブさせ、蛍光をGenePix機でスキャンした。Java(登録商標) TreeViewソフトウェアを用いて、同定された関係性をヒートマップとして表示した(
図37)。本アッセイによって特徴付けされた抗体は、:RA1、RA2、RA3、RA4、RA8〜RA13、RA16、RA19、RA22、およびRA23であった。Flu14およびFlu26を陰性対照として用いた。
【0424】
抗ヒストン2A ELISA
材料および方法のセクションにおける「抗ヒストン2A ELISA」に記載されるように、H2Aに対する抗体の検出のために、直接的ELISAを実施した。
図35aは、試験した各抗体に対して検出された吸光度値を示している。
図35aにおいておよび以下の抗CCP2 ELISAにおいて特徴付けされた抗体は、:RA1、RA2、RA4〜RA16、RA19、RA23〜RA24であった。
図36は、30μg/mlの抗体を用いた別の独立したELISAでの、選択された抗体(RA1、RA2、RA8、RA9)を示している。
【0425】
抗CCP2 ELISA
材料および方法のセクションにおける「抗CCP2 ELISA」に記載されるように、抗CCP2 ELISAを実施した。
図35bは、試験した各抗体に対して検出された吸光度値を示している。
【0426】
抗リウマチ因子ELISA
RA患者に由来する抗体を直接的ELISAにおける一次抗体として用い、抗ヒトIgG-HRPを二次抗体として用い、TMB基質を用いて可視化した。材料および方法のセクションにおける「抗リウマチ因子ELISA」に記載されるように、リウマチ因子(RF)に対する抗体の検出のために、抗RF ELISAを実施した。
図34は、RA2およびRA3抗体が反応性を示したことを示している。ここで特徴付けされた抗体は、:RA1〜RA6、RA8〜RA12、RA14であった。
【0427】
上記のこれらの結果は、本明細書において記載される組成物および方法を用いることによって、慢性症状を経験している対象の形質芽球等の活性化B細胞から、抗体を単離することができることを実証している。結果は、本明細書において開示される組成物および方法を用いて、自己抗原を標的とするmAbを単離することができることも実証している。
【0428】
実施例11:肺癌を有する対象由来の抗体の特徴付け
上記のように、転移性肺腺癌に罹患している長期非進行のヒト由来の抗体を選択し、単離した。このヒトは、転移性肺腺癌を発症し、癌に屈すると予想されたが、化学療法の後、この患者は、全末梢血B細胞の3.1%を占める形質芽球と関連した、4年を超える長期非進行の状態に入った。この患者における末梢血形質芽球レベルの上昇は、進行中の免疫応答が、この女性の長期非進行に寄与している可能性があることを示した。下記のさらなる特徴付けのために、以下の抗体:LC1、LC5〜LC7、LC9〜LC18を選択した。Flu16を陰性対照として用いた。
【0429】
肺癌組織アレイ上での肺腺癌患者由来の抗体の免疫組織化学
材料および方法のセクションにおける「肺癌組織アレイ上での肺腺癌患者由来の抗体の免疫組織化学」に記載されるように、2つの異なるタイプの組織マイクロアレイ用スライドを用いた免疫組織化学を実施した。本発明者らの結果は、発現した抗体のうちの1種が肺腺癌に結合することを実証した(
図32)。
【0430】
肺腺癌患者由来の発現した抗体の肺腺癌細胞株への結合についてのフローサイトメトリーによる判定
材料および方法のセクションにおける「肺腺癌患者由来の発現した抗体の肺癌細胞株への結合についてのフローサイトメトリーによる判定」に記載されるように、種々の肺癌細胞株への抗体の結合を実施した。本発明者らの結果は、1種の抗体が肺腺癌細胞株に結合すること、かつ肺腺癌に特異的であり得ることを示した(
図33)。
【0431】
上記のこれらの結果は、本明細書において記載される組成物および方法を用いることによって、癌等の慢性症状を経験している対象の形質芽球等の活性化B細胞から、抗体を単離することができることを実証している。結果は、本明細書において開示される組成物および方法を用いて、自己抗原を標的とするmAbを単離することができることも実証している。
【0432】
実施例12:黄色ブドウ球菌感染症を有する対象由来の抗体の特徴付け
抗生物質の非存在下において感染症の免疫介在性制御を有する慢性黄色ブドウ球菌性骨髄炎を有するヒトを含む、黄色ブドウ球菌感染症を有するヒトを、そこから末梢血形質芽球を染色しかつ選別する、末梢血の供給源として用いた。バーコード化、454シークエンシング、およびバイオインフォマティクス分析を用いたcDNA処理によって、黄色ブドウ球菌に対して効果的な免疫応答を開始しているヒトにおける抗体レパートリーの進化樹を作り出した。上記のように、黄色ブドウ球菌感染症に対して効果的な免疫応答を開始しているヒト由来の抗体を選択し、単離した。以下のさらなる特徴付けのために選択された抗体を、適切なセクションにおいて示す。
【0433】
ブドウ球菌フローサイトメトリー
材料および方法における「ブドウ球菌フローサイトメトリー」のセクションに記載されるように、抗ブドウ球菌抗体を用いて、固定した黄色ブドウ球菌を染色した。本発明者らの結果は、S6およびS11抗体が、黄色ブドウ球菌の表面に結合すること、かつオプソニン化の候補であり得、黄色ブドウ球菌の食作用および殺傷/阻害をもたらし得ることを示した(
図29)。本アッセイにおいて特徴付けされた抗体は、:S1〜S4、S6〜S13であり、陰性対照としてのF26を含む。
【0434】
ブドウ球菌阻害アッセイ
材料および方法における「ブドウ球菌阻害アッセイ」に記載されるように、対数増殖期にある黄色ブドウ球菌を抗ブドウ球菌抗体と組み合わせて、抗体の阻害活性を判定した。本発明者らの結果は、クローン化されかつ発現させた抗体のいくつかが、黄色ブドウ球菌に対して強力な殺傷/阻害活性を呈したことを実証している(
図30)。本アッセイによって特徴付けされた抗体は、S6およびS9であり、陰性対照としてのLC1を含む。
【0435】
ブドウ球菌感染した患者に由来する抗体を用いたブドウ球菌抗原の免疫沈降
材料および方法の「ブドウ球菌感染した患者に由来する抗体を用いたブドウ球菌抗原の免疫沈降」に記載されるように、抗体を用いて、種々のブドウ球菌抗原候補を免疫沈降した。次いで、以下に記載されるように、質量分析を用いて、免疫沈降されたタンパク質を同定した。本アッセイによって特徴付けされた抗体は、S1〜S13であった。
【0436】
ペプチドの質量分析による同定
材料および方法の「
ペプチドの質量分析による同定」に記載されるように、関心対象の染色されたタンパク質バンドを選択し、質量分析に供した。結果は、S4抗体に対する推定結合標的として、フェノール可溶性モジュリンα1ペプチドまたはδ溶血素のいずれかを同定した。これは、本明細書において開示される方法を用いて、新規な抗原の発見を果たすことができることを実証している(
図31)。本アッセイによって特徴付けされた抗体は、S4であった。
【0437】
上記のこれらの結果は、本明細書において記載される組成物および方法を用いることによって、細菌感染症等の急性症状を経験している対象の形質芽球等の活性化B細胞から、抗体を単離することができることを実証している。結果は、本明細書において開示される組成物および方法を用いて、外来抗原を標的とするmAbを単離することができること、かつ選択された抗体に結合される抗原の身元を決定することができることも実証している。
【0438】
実施例13:芽球細胞および形質芽球の特徴付け
上記のように、進行中の免疫応答によって活性化されるB細胞由来の免疫グロブリン配列を用いて、進行中の免疫応答の進化樹を作り出すことができる。この進化樹は、典型的には、複数の線の先祖由来の活性化B細胞を表す複数のクローンファミリーを特徴とする。ナイーブB細胞由来の配列は、一般的に、それらは活性化されておらず、したがって活性のある進行中の免疫応答に対して全くかほとんど情報を提供しないため、そのような進化樹を作り出すために用いられ得ないと考えられる。活性化B細胞は、まず、活性化されかつサイズがより大きな芽球細胞になる。次いで、これらの芽球細胞は、メモリーB細胞または形質細胞のいずれかへ進む。ヒトにおいて、メモリーB細胞および形質細胞は免疫応答によって生じるが、それらは、以前の免疫学的発作に対する応答によって生じているメモリー細胞および形質細胞の大きなプールをつなぎ合わせ、最近または以前の免疫応答に対して、メモリーB細胞と形質細胞とを区別するのを困難にする。したがって、ヒトにおいて、芽球細胞は、進行中の免疫応答の進化樹を獲得するための配列決定の好ましい候補である。しかしながら、制御された条件で飼育される研究動物(例えば、マウス)において、それらは清潔な環境で飼育されているため、芽球B細胞、メモリーB細胞、および形質細胞はすべて、進化樹を獲得するための配列決定の候補であり、それらは、任意の主要な免疫学的負荷を以前に経験しているメモリー細胞または形質細胞の大きな集団を有しないはずであるため、厳しい免疫応答後、とくに追加免疫注射後に、大部分のメモリーB細胞および形質細胞が発作に対抗することを可能にする。
【0439】
ヒトにおいて、T細胞に対してと同様に、進行中の免疫応答の進化樹を獲得するための配列決定に好ましい細胞は、芽球T細胞であると考えられる。マウスに対して、活性化T細胞、芽球T細胞、およびメモリーT細胞はすべて、進化樹を獲得するための配列決定の好ましい候補である。
【0440】
芽球B細胞は、典型的なB細胞よりも大きいことが公知である。休止B細胞はそのうちの1種である小リンパ球のサイズは、典型的にはサイズが6〜8μmの間である。芽球リンパ球(T細胞およびB細胞)は、典型的にはサイズが8〜14μmの間である。(
図41、Tzur et al, PLoS ONE, 6(1): e16053. doi:10.1371/journal.pone.0016053, 2011;Teague et al, Cytometry, 14:7 2005も参照されたい)。形質芽球は、以下の発現パターン:CD19
low/+、CD20
low/−、CD27
+、およびCD38
hiを有し得る。これらのマーカーのすべての使用は、単一細胞選別に対して最も純度の高い集団をもたらすが、形質芽球を単離するために、上記マーカーのすべてを用いる必要があるわけではない。
【0441】
図39に例示されるように、より大きな細胞に対してFSC
hiを用いることによって、形質芽球にゲートをかけることができ、37%純度の形質芽球集団をもたらす。FSC
hiCD19
hi細胞にゲートをかけることによって、72%の形質芽球純度が与えられる。FSC
hiおよびCD27
+、CD38
hi、またはCD20
−にゲートをかけることによって、それぞれ44%、80%、および71%の形質芽球純度が与えられる。これらのマーカーまたは他のB細胞と形質芽球とを区別し得ることが見出されている他のマーカーのいずれかの組み合わせを用いて、選別された形質芽球の純度を増大させることができるが、しかしながら、これらのマーカーのいずれか1つは、より低い純度ではあるが、単独で他のB細胞と形質芽球とを区別することができる。
【0442】
実施例14:配列決定および分析のための代替的プラットフォーム
材料および方法における「タッチダウンPCR」に記載される方法を用いたPacBioシークエンシングランのために、単一プレートのプレート44からの重鎖の読み取りを調製して、γ重鎖cDNAを増幅した。48回の第2のPCRを行って、PacBioランに対して十分なDNAを得た。「PacBioシークエンシングランのための調製」に記載されるように、DNAのプールおよびクリーンアップを行った。準備および配列決定のために、DNAをPacBioに送った。CCSの読み取りをPacBioから入手し、材料および方法における「ウェルへの配列の割り当て」および「配列のアセンブリ」に従って、ウェルに割り当て、アセンブルした。割り当ての結果は
図38にある。これは、本発明者らの方法および組成物が、高性能配列決定に対して、プラットフォーム特異的でないことを示している。
【0443】
実施例15:454 XL+ランでの配列決定および分析
「454 XL+シークエンシングランのための調製」に記載される方法に従うことによって、配列決定を454 XL+ランに適合させることができる。454 XL+シークエンシングランは、現在のところ、Lib-L化学反応のみをサポートしており、一方で本発明者らの454 XLR70ランはLib-A化学反応を利用するため、これを行う必要がある。XLR70ランでのアンプリコン配列決定のために、典型的なLib-A化学反応よりもLib-L化学反応が好まれる状況にも、一般的にこれを適合させることができる。「ウェルへの配列の割り当て」および「配列のアセンブリ」に記載される方法に従って、454 XL+ランからの読み取りをさらにウェルに割り当て、アセンブルすることができる。454フィルタリング後のXLR70およびXL+ランからの読み取りを同一の形式で用いることができ、すなわちクローニングおよび発現のための下流での抗体の選択、ならびに抗体の機能的特性のアッセイを、
図6および9のとおりにさらに進めることができる。
【0444】
実施例16:対合した免疫グロブリン遺伝子のクローニング
各クローンファミリーは同じエピトープを認識し、かつ各ファミリー内の配列の差異は体細胞超変異が原因であると仮定して、本発明者らは、まず、関心対象の抗原に結合する抗体のスクリーニングのために、各クローンファミリーのうちの最も高頻度なクローンをクローン化し、発現させることができる(
図6)。胚中心における親和性の成熟および選択の間、最も高い親和性で抗原に結合する中心細胞は、生存因子を求めて他の中心細胞と競合するため、本発明者らは、最も高頻度なクローンを用いる。したがって、本発明者らは、最も高頻度なクローンが最も高い結合親和性も有すると予想する。いったんクローンが抗原に結合し得る抗体として同定されると、次いでクローンファミリー全体からの代表的な対合した免疫グロブリン配列をクローン化し、発現させ、かつ中和抗体であることについてスクリーニングする(
図6)。この過程は、クローンファミリー内に含有されている抗体のスペクトルを表す特異的クローンの結合および機能的特性についての直接的な試験および比較を可能にするために、クローンファミリー内の複数のサブクローンを表すまたはクローンファミリー内の異なるアイソタイプの抗体をコードする配列のクローニングおよび発現を伴ってよい。次いで、治療用ヒト抗体としての開発のためのさらなる特徴付けおよび考察のために、所望の結合および機能的特性を呈する特異的クローンを選択する。
【0445】
ファミリー(または関心対象の他の任意の抗体セット)からクローニングの候補を選択するための代替的手法は、抗体についての系統樹(phylogenetic tree)(クローンファミリーの場合、生殖系列配列で根付いた)を築くことである。そのような樹における葉ノードは、抗体ファミリーメンバーに相当する。次いで、樹の最上部から降下し、下部に最大数の葉ノードを有する枝を常に選び(同点の場合にはランダムに選び)、次いで葉の上部の最後のノードにおいて、最大数の突然変異を有する葉を選ぶ、または同点の場合にはランダムに選ぶことによって、クローニングの候補を選択する。次いで、必要に応じて、所望の数に到達するまで以下のように候補を繰り返して選択することによって、さらなる候補を選択することができる。樹におけるあらゆるノードに対して、ノードの子孫である葉のいずれも選択されなかった場合、子孫である葉の数をカウントする。最大のそのようなカウントを有するノードに対して(同点の場合にはランダムに選ぶ)、降下は、最大数の子孫葉ノードを有する枝を常に選ぶ(枝間で同点の場合にはランダムに選ぶ)。次いで、葉の上部の最後のノードにおいて、最大数の突然変異を有する葉を選ぶ、または同点の場合にはランダムに選ぶ。
【0446】
抗体のファミリー(または関心対象の他の任意の抗体セット)から候補を選択するためのさらに別の手法は、生殖系列と比較して少ない数の非サイレント突然変異によって抗体を列挙し、かつリストから順々に選択し、それによって最も進化している抗体を選ぶことである。
【0447】
実施例17:ヒト抗体候補の恒久的トランスフェクションおよび発現
所定のサンプルIDに特異的なクローニングプライマーを用いることによって、配列のプールしたプレートから所望のクローンを選択的に増幅する;これらのプライマーは、クローン内に異なる5'および3'制限部位も組み入れる。次いで、ベクター内にクローンを挿入するために、制限部位を用いる。増幅したクローンは、部分的定常領域配列のみを含有し得るため、ベクターは、増幅したクローンをオープンリーディングフレームに挿入するのに必要とされる適切な制限部位を有するκ、λ、またはγ定常領域のいずれかをすでに含有している。クローンは可変配列を有するため、制限酵素によってその後切断されるであろう、クローン自体にも存在する制限部位の潜在的問題を回避するために、複数の制限部位をベクター内に遺伝子操作する。これにより、できる限り多くのクローンを挿入することが可能となる。用いるベクターは、異なる哺乳類用選択可能マーカーを有する2種の別々のベクター(遺伝子操作された制限部位を有する定常領域遺伝子を含有している、改変型Invitrogen pcDNA3.3またはpOptivecベクター)、または両方の遺伝子を含有している二重発現ベクター(Lonza GSシステム;pEE6.4およびpEE12.4)のいずれかである。定常領域インサートの配列について、それぞれ表16および17を参照されたい。pOptivecにおけるジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)またはLonza GSシステムにおけるグルタミン合成酵素(GS)等の選択マーカーは増幅可能であり、大量の抗体を必要とするさらなるスクリーニング(例えば、インビボスクリーニング)のための、遺伝子増幅および効率的な抗体の産生を可能にする。一方のベクターに軽鎖およびもう一方のベクターに重鎖を有する(改変型pOptivecおよびpcDNA3.3)、または両方の遺伝子を含有している二重発現ベクター(Lonza GSシステム)での二重トランスフェクションのいずれかを用いて、哺乳類細胞をトランスフェクトする。
【0448】
改変型Invitrogenベクター。ベクターは、異なる哺乳類用選択可能マーカーおよび遺伝子操作された制限部位を有する2種の別々のベクターである。pcDNA3.3は、選択可能マーカーとしてネオマイシン耐性遺伝子を有し、pOptivecは、DHFR選択可能マーカーを有する。ジェネティシンによる選択下で、CHO DHFR細胞に改変型pcDNA3.3およびpOptivecを同時トランスフェクトする。DHFRのコピーを含有している、pOptivecをトランスフェクトされたDHFR細胞のみが生存し、pcDNA3.3におけるネオマイシン耐性遺伝子はジェネティシンに対する耐性を与える。これにより、両方のベクター(一方のベクターに軽鎖およびもう一方のベクターに重鎖を含有している)を上手くトランスフェクトされた細胞の選択が可能となり、したがって機能的免疫グロブリンを産生する。
【0449】
Lonza GSシステム。Lonza GSシステムは、pEE12.4およびpEE6.4ベクターを利用する。pEE12.4ベクターは、増幅可能な選択マーカーとしてGS遺伝子を含有しており、pEE6.4は、補助的ベクターである。軽鎖をベクターの一方に、重鎖をもう一方のベクター内にクローニングする。その後、両方のベクターを制限酵素で切断し、一緒にライゲーションして、別々のプロモーター上に重鎖および軽鎖遺伝子の両方を発現し得る1個のベクターを形成する。したがって、1個のベクターから両方の遺伝子の発現を可能にする、二重発現ベクターシステムである。メチオニンスルホキシイミンの選択下で、CHO細胞に二重発現ベクターをトランスフェクトする。ゆえに、トランスフェクトされた細胞を選択する。
【0450】
遺伝子増幅
ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)およびGSの両方は、増幅可能な選択マーカーである。それぞれ増大する量のメトトレキサートおよびメチオニンスルホキシイミンからの選択圧の下で、DHFRおよびGS遺伝子を含有しているゲノム領域を複製しているトランスフェクトされた細胞株は、選択用試薬に対して、より耐性があるため生存する。挿入された重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子等の選択マーカー付近の遺伝子も増幅され、免疫グロブリンのより多くの遺伝子コピーおよびより大きな産生率をもたらす。インビトロスクリーニング(下記を参照されたい)において中和特性を有することが見出されている抗体を産生するクローンを増幅し、それによって後のインビボ調査のためのより多くの抗体を獲得することができる。
【0451】
実施例18:発現したヒト抗体の特異性の同定
抗体スクリーニングは、2つの段階で生じる。本発明者らは、新規な「選択的スクリーニング」過程を利用しており、そこで本発明者らは、まず、中和抗体についてのスクリーニングに用いられる適切なクローンファミリーを選択する。本発明者らは、抗原に結合し得るその能力について、各クローンファミリーのうちの最も高頻度な1〜3個のクローンをスクリーニングする。フローサイトメトリーを用いて細胞に結合する抗体を同定してもよいが、本発明者らのスクリーニングは、典型的には間接的ELISAの形態をとる。これは、まず適切な抗原をELISAプレートに結合させる工程、次いで発現した抗体を含有している上清とともにそれをインキュベートする工程を含む。特異的二次抗体によって、抗原に結合する抗体を検出する。
【0452】
いったん結合抗体が同定されると、「選択スクリーニング」というスクリーニング段階において、そのクローンのクローンファミリー全体をクローン化し、発現させる。クローンファミリーにおけるすべての抗体は同じエピトープに結合すると予想されるが、それらは、抗原結合の親和力の点でおよび抗原上でのそれらの位置決めの点でわずかに異なる可能性があり、その相違は結合特性および/または抗体の中和力に影響を及ぼし得、ゆえに、ほとんどの場合には、いくつかの異なる抗体(それらのCDR3領域に小さな相違を持っている)を発現させ、結合および中和特性についてスクリーニングする。
【0453】
特異的リガンド/受容体ペアを標的とする抗体を中和するために、まず、293T細胞に、NF-kB転写応答エレメントに連結させたルシフェラーゼ遺伝子を含有しているプラスミド等のシグナル伝達経路レポーター構築物を安定的にトランスフェクトする。トランスフェクトされた細胞におけるNF-kBの活性化によって、その活性をルシフェラーゼアッセイで判定することができるルシフェラーゼの発現が誘導される。これは、リガンド−受容体結合によって活性化されたNF-kBシグナル伝達を測定する。ほとんどのシグナル伝達経路がNF-kBを活性化するため、NF-kBは、シグナル伝達の選択肢である。他のシグナル伝達経路をアッセイするために、ルシフェラーゼ遺伝子のプロモーター領域は、例えばAP-1に対するもの等の適切な転写結合部位を含有している。次に、293T細胞に標的受容体をトランスフェクトする。次いで、96ウェルプレートにおいて、293T細胞をリガンドおよび関心対象の結合抗体とともにインキュベートする。24時間または48時間後、ルシフェラーゼアッセイを行って、ルシフェラーゼ遺伝子の発現を判定する。中和抗体を含むウェルは、全くルシフェラーゼ発現を有しないか、最小量しか有しない。NF-kBシグナル伝達経路におけるリン酸化シグナル伝達タンパク質についてのウェスタンブロッティングによって、結果を検証する。中和抗体は、リガンド−受容体のシグナル伝達を妨げ、その結果としてシグナル伝達タンパク質のリン酸化を無効にする。
【0454】
癌抗原および細菌抗原等の生細胞上に存在する抗原に対して、インビトロ中和アッセイは、生/死細胞を検出するアッセイの形式をとり、高性能な形態で行われ得る。96ウェルプレートにおいて、癌細胞または細菌を抗体候補とともにインキュベートする。次いで、生細胞と死細胞とを区別し、かつフローサイトメトリーに適合する染色を各ウェルに適用することができる。生細胞および死細胞を異なるフルオロフォアで染色し、フローを用いて生細胞および死細胞のパーセンテージを与えることによってスクリーニングする。インビトロスクリーニングを通過する抗体を、次いでそれらの中和活性についてインビボでスクリーニングする。
【0455】
標準的なプラーク中和アッセイを用いて、ウイルスインビトロ中和アッセイを実施してよい。プラーク中和アッセイを96ウェルプレートで行うことによって、各ウェルを、顕微鏡を用いて撮影することができ、プラークカウントを画像分析ソフトウェアで自動化することができる。中和抗体は、プラーク形成を減少させる。次いで、これらの抗体を、中和活性についてインビボでさらにスクリーニングする。
【0456】
ELISA(実施例7)およびフローサイトメトリー(実施例9および10)を用いた結合活性についての成功したアッセイについて、実施例9のセクション「Fluzone ELISA」、実施例11のセクション「フローサイトメトリーによる...」、および実施例12のセクション「ブドウ球菌フローサイトメトリー」を参照されたい。中和活性を有する抗体についての成功したアッセイについて、実施例9のセクション「インフルエンザマイクロ中和アッセイ」を参照されたい。
【0457】
実施例19:1ウェルあたり1個を上回る細胞を用いたB細胞の配列決定
複数のB細胞を有する個々のサンプルを、容器内で別々に逆転写する。逆転写によって、すべての第一鎖cDNAにサンプルIDおよび5'ユニバーサルプライマー領域が付加される。1セットの容器のすべての容器からのcDNAをプールし、2ラウンドのPCRを受けさせる。工程は、材料および方法における「タッチダウンPCRおよび非タッチダウンPCR」、「454 XLR70シークエンシングランのための調製」に記載されるとおりである。プライマーに対する配列も
図9に示す。留意すべきは、どの遺伝子が増幅されるかにかかわらず、順方向プライマーは一定のままであることである(b)。RTおよび2回のPCRの後、すべての容器セットからのアンプリコンをプールし、454シークエンシングする。配列のウェルへの割り当ておよび配列のアセンブリは、材料および方法における「ウェルへの配列の割り当て」および「配列のアセンブリ」に記載されるプロトコールに従う。プレートIDおよびサンプルIDの組み合わせによって、同じサンプルを起源とする配列の同定が可能となる。
【0458】
たとえ1ウェル内に複数の細胞が存在するとしても、本発明者らは、個々の重鎖と軽鎖とを対合させることができる。共通の祖先に由来するB細胞からの重鎖は、軽鎖がそうであると考えられるように、クローン的に関連していると考えられる。したがって、本発明者らは、ウェルにわたる相関関係を観察することによって、重鎖クローンファミリーを軽鎖クローンファミリーに関連付けすることができる。いったんクローンファミリーの重鎖とクローンファミリーの軽鎖との間に関連付けが確立されると、重鎖クローンファミリーのメンバーである重鎖、および軽鎖クローンファミリーのメンバーである軽鎖を選択することによって、各ウェルにペアを割り当てる。1例の重鎖ファミリーおよび1例の軽鎖ファミリーのみが1ウェル内に存在する場合、ペアの選択は一義的である。どの重鎖および軽鎖が互いに関連しているかを判定した後、進化樹を描くことができ、抗体をそれらの機能的特性についての下流での特徴付けのために選択することができる。
【0459】
実施例20:1ウェルあたり1個または複数個の細胞を用いたB細胞の配列決定
いくつかのプレートにおいては1ウェルあたり1個のB細胞に、他のプレートにおいては1ウェルあたり複数のB細胞に、サンプルを選別することができ、その上、重鎖および軽鎖を、1個を上回るB細胞を有するそれらのウェルに対してさらに対合させることができた。本発明者らは、上記の実施例9のインフルエンザワクチン接種患者から産出された配列を調査し、いくつかのウェルは、1個を上回る別個の重鎖配列アセンブリまたは1個を上回る別個の軽鎖配列アセンブリが観察された。RT、PCR、配列決定、ならびに配列のウェルへの割り当ておよび配列のアセンブリは、上記の実施例9におけるプロトコールに従った。どの重鎖および軽鎖が互いに関連しているかを判定するために、すべての重鎖をグループ化することによって、同じVおよびJ遺伝子使用法を有する、ならびにV遺伝子セグメントの終わりとJ遺伝子セグメントの始まりとの間に同じ数のヌクレオチドを有するクローンファミリーに重鎖を割り当てた。すべての軽鎖をグループ化することによって、同じVおよびJ遺伝子使用法を有する、ならびにV遺伝子セグメントの終わりとJ遺伝子セグメントの始まりとの間に同じ数のヌクレオチドを有するクローンファミリーに軽鎖を割り当てた。まず、重鎖および軽鎖の間の対関係を、1個のウェルを共有している(すなわち、同じ化合物バーコードを有している)それらに基づき、正確に1種の重鎖および1種の軽鎖を有するウェルに割り当てた。次いで、重鎖クローンファミリーと軽鎖クローンファミリーとのそれぞれの可能性のある対合に対して、スコアをコンピューターで計算した。重鎖ファミリーおよび軽鎖ファミリーのメンバーが1個のウェルを共有する回数をカウントすることによって、スコアを決定した。次いで、各重鎖ファミリーを、最も高いスコアが達成された軽鎖ファミリーに関連付けし、または1個を上回る軽鎖ファミリーで最も高いスコアが達成された場合には、重鎖ファミリーを軽鎖ファミリーに関連付けしなかった。次いで、全体的に最も高いスコアの重鎖ファミリーから始め、かつペアを割り当てているファミリーの中を1ウェルずつ進み、次いで次の重鎖ファミリーに継続することによって、個々の重鎖および軽鎖を対合させた。所定の重鎖ファミリーに対して、各ウェルに対して、重鎖ファミリーのメンバーである1種の重鎖がウェル内に存在した場合、そのウェルからの、重鎖ファミリーの関連付けされた軽鎖ファミリーに属する軽鎖を、該重鎖のペアであるように割り当てた。1種を上回るそのような軽鎖が存在した場合、ペアを割り当てなかった。すべてのファミリーおよびそれらのファミリー内のすべての鎖が検討されるまで、重鎖と軽鎖とを関連付けするこの過程を継続した。所定の重鎖または軽鎖に対して、該過程によって1個を上回る対合の候補がもたらされた場合、両方の重鎖および軽鎖を破棄した。進化樹を対合した鎖から作り出し、抗体をそれらの機能的特性についての下流での特徴付けのために選択した。進化樹の一部を
図25Aに示す。
【0460】
実施例21:ヒトモノクローナル抗体を産出するための、選別された形質芽球の使用
急性、亜急性、または進行中の循環形質芽球の産出をもたらす最近または現在の症状を有する対象から、末梢血(全血または末梢血単核細胞(PBMC))に対してフローサイトメトリーを実施して、形質芽球集団を同定する。次いで、このB細胞の集団を、RNAse阻害剤とともに低張バッファーを含有しているウェル内にフローサイトメトリーによって単一細胞として選別する。選別された細胞をこの時点で凍結するか、または直ちにRT-PCRに用いてcDNAを生成することができる。RTの間、ウェル特異的サンプルIDアダプターオリゴヌクレオチドを、反応に添加する。これらのアダプターは、異なるウェルを起源とするものとして配列を同定し得るウェル特異的バーコード配列(サンプルID)を有する。MMLV H
−逆転写酵素の3'テーリングおよび鋳型切り替え活性を利用することによって、サンプルIDを第一鎖cDNAの3'末端に付加する。各プレート由来のcDNAを一緒にプールする。第一ラウンドのPCRの間、プレート特異的FWロングプライマー1は、アンプリコンの5'末端にプレートIDを付加する。ゆえに、異なるプレートIDを有するFWロングプライマー1を、各PCR産物に同定バーコード配列を与える異なるプレートに添加する。遺伝子特異的逆方向プライマーを用いて、κ、λ、およびγ鎖を増幅し、それらは、それぞれκGSP1、λGSP1、およびγGSP1である。これらのプライマーは、免疫グロブリン遺伝子の定常領域に結合する。第一ラウンドのPCR由来の産物を希釈し、第二のネステッドPCRに用いる。FWプライマー2を順方向プライマーとして用い、逆方向プライマーのκ、λ、およびγGSPロングプライマーを用いて、それらそれぞれのアンプリコンを増幅する。注目すべきは、各プレートに対するGPSロングプライマー2は、各プレートに対する各アンプリコンの3'末端に共有のプレートIDを付加し、ゆえにそれぞれは、最後には2個のプレートIDおよび1個のサンプルIDバーコードを有して終わる。RT、第1のPCRおよび第2のPCRについてのさらなる詳細は、材料および方法における「非タッチダウンPCR」に見出される。次いで、「454 XLR70シークエンシングランのための調製」に詳述される方法に従って、複数のプレートをプールし、かつ高性能454 DNAシークエンシングに供し、材料および方法における「ウェルへの配列の割り当て」および「配列のアセンブリ」に詳述される方法に従って、個々の配列を、どの重鎖および/または軽鎖が各ウェルから得られるかについての識別子として働くそれらのバーコードで同定し、ゆえに同じ初期細胞に由来する個々の可変重鎖および軽鎖を合致させるためのガイドを提供する。次いで、進化樹を描き、クローニング、発現、および機能的活性の判定のために抗体を選択する(
図6〜8を参照されたい)。
【0461】
次いで、実施例8にあるように、所望の特性についてのスクリーニングのために、起源の特定細胞由来の重鎖および軽鎖遺伝子候補をクローン化し、発現させる。いったん安定的または一過的にトランスフェクトされると、対合した重鎖および軽鎖の発現は、最初に選別された細胞の特異性を再現するモノクローナル抗体の産出をもたらす。次いで、関心対象の標的抗原に対する抗原特異性、ならびに適切な機能的アッセイによる機能性を含むがそれらに限定されない所望の特性について、分泌された抗体を含有している上清をスクリーニングする。
図9および6は、それぞれ、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
図26〜27は、インフルエンザワクチンを接種されたヒト由来の単一細胞選別された形質芽球から、ヘマグルチニンに対するヒトモノクローナル抗体を獲得するために、本明細書における組成物および方法を用いて、どのようにこれを行ったかを実証している。
【0462】
実施例22:ヒトモノクローナル抗体を産出するための、選別された偏りのないまたは抗原特異的なメモリーB細胞の使用
関心対象の抗原への暴露が確認されたかまたは疑われる対象から、末梢血(全血または単離末梢血単核細胞、PBMC)に対してFACSを実施して、メモリーB細胞集団(CD19
+CD20
+CD27
+として定義される)を同定する。加えて、メモリーB細胞表面マーカーを用いておよびフルオロフォア結合抗原(CD19
+CD20
+CD27
+抗原
+)を用いて末梢血またはPBMCを染色することによっても、関心対象の抗原に対して特異的なメモリーB細胞を選別することができる。次いで、この細胞の集団を、ウェル内に単一細胞または複数の細胞のいずれかとしてFACSによって選別する。実施例21に詳細に記載される過程を繰り返して、454シークエンシングから配列をバーコード化し、配列を獲得し、ウェルに配列を割り当て、配列をアセンブルする。HighV-QUESTを用いて、VDJ遺伝子使用法を同定し、実施例8にあるように、クローニングおよび発現のために、進化樹上の各クローンファミリーのいくつかのメンバーを選択する。実施例8に詳述されるように、クローニングおよび発現を行う。いったんトランスフェクトされると、対合した重鎖および軽鎖全体の発現は、最初に選別された細胞の特異性を再現するモノクローナル抗体の産出をもたらす。関心対象の標的抗原に対する抗原特異性、ならびに適切な機能的アッセイによる機能性について、抗体を含有している上清をスクリーニングする。
図9および6は、それぞれ、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
図26〜27は、進化樹からの選択されたクローン化され発現させた抗体の機能的特徴付けから、ヒトモノクローナル抗体を獲得する別の例を提供している。
【0463】
実施例23:ヒトモノクローナル抗体を産出するための、選別された偏りのないまたは抗原特異的な総B細胞の使用
関心対象の抗原への事前の曝露が確認されたかまたは疑われるかあるいは曝露がないかにかかわらない対象から、末梢血(全血または単離末梢血単核細胞、PBMC)に対してFACSを実施して、CD19
+B細胞集団を同定する。次いで、この細胞の集団を、ウェル内に単一細胞または複数の細胞のいずれかとしてFACSによって選別する。実施例21に詳細に記載される過程を繰り返す。実施例21に詳細に記載される過程を繰り返して、454シークエンシングから配列をバーコード化し、配列を獲得し、ウェルに配列を割り当て、配列をアセンブルする。HighV-QUESTを用いて、VDJ遺伝子使用法を同定し、実施例8にあるように、クローニングおよび発現のために、進化樹上の各クローンファミリーのいくつかのメンバーを選択する。いったんトランスフェクトされると、対合した重鎖および軽鎖の発現は、最初に選別された細胞の特異性を再現するモノクローナル抗体の産出をもたらす。関心対象の標的抗原に対する抗原特異性、ならびに適切な機能的アッセイによる機能性について、発現した抗体を含有している上清をスクリーニングする。
図9および6は、それぞれ、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
図26〜27は、進化樹からの選択されたクローン化され発現させた抗体の機能的特徴付けから、ヒトモノクローナル抗体を獲得する別の例を提供している。
【0464】
実施例24:ヒトモノクローナル抗体を産出するための、形質細胞の使用
関心対象の抗原への事前の曝露が確認されたかまたは疑われるかあるいは曝露がないかにかかわらない対象から、末梢血(全血または単離末梢血単核細胞、PBMC)または骨髄細胞に対してFACSを実施して、CD138
+形質細胞集団を同定する。次いで、この細胞の集団を、ウェル内に単一細胞または複数の細胞のいずれかとしてFACSによって選別する。実施例21に詳細に記載される過程を繰り返して、454シークエンシングから配列をバーコード化し、配列を獲得し、ウェルに配列を割り当て、配列をアセンブルする。HighV-QUESTを用いて、VDJ遺伝子使用法を同定し、クローニングおよび発現のために、進化樹上の各クローンファミリーのいくつかのメンバーを選択する。いったんトランスフェクトされると、対合した重鎖および軽鎖の発現は、最初に選別された細胞の特異性を再現するモノクローナル抗体の産出をもたらす。関心対象の標的抗原に対する抗原特異性、ならびに適切な機能的アッセイによる機能性について、発現した抗体を含有している上清をスクリーニングする。
図9および6は、それぞれ、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
図26〜27は、進化樹からの選択されたクローン化され発現させた抗体の機能的特徴付けから、ヒトモノクローナル抗体を獲得する別の例を提供している。
【0465】
実施例25:ヒトモノクローナル抗体を産出するための、芽球B細胞の使用
関心対象の抗原への事前の曝露が確認されたかまたは疑われるかあるいは曝露がないかにかかわらない対象から、末梢血(全血または単離末梢血単核細胞、PBMC)に対してFACSを実施して、FSC
hi芽球B細胞集団を同定する。芽球細胞は活性化B細胞であり、したがって抗原に対して応答している、かつ活発に増殖している細胞である。これらのB細胞はクローンファミリーからなり、それらの対合した重鎖および軽鎖を用いて、進化樹を獲得することができる。CD69
hiおよびCD44
hi等のB細胞活性化の他のマーカーも併用してよい。加えて、活性化され、増殖しており、かつ細胞周期にある細胞を判定するために、SYTO Blue(Invitrogen)等の細胞透過性DNA染色を用いて染色され得るDNA内容物も併用して、芽球B細胞を描出してよい。次いで、この細胞の集団を、ウェル内に単一細胞または複数の細胞のいずれかとしてFACSによって選別する。実施例21に詳細に記載される過程を繰り返して、454シークエンシングから配列をバーコード化し、配列を獲得し、ウェルに配列を割り当て、配列をアセンブルする。HighV-QUESTを用いて、VDJ遺伝子使用法を同定し、クローニングおよび発現のために、進化樹上の各クローンファミリーのいくつかのメンバーを選択する。いったんトランスフェクトされると、対合した重鎖および軽鎖の発現は、最初に選別された細胞の特異性を再現するモノクローナル抗体の産出をもたらす。関心対象の標的抗原に対する抗原特異性、ならびに適切な機能的アッセイによる機能性について、発現した抗体を含有している上清をスクリーニングする。
図9および6は、それぞれ、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
図26〜27は、進化樹からの選択されたクローン化され発現させた抗体の機能的特徴付けから、ヒトモノクローナル抗体を獲得する別の例を提供している。
【0466】
実施例26:モノクローナル抗体を産出するための、マウスB細胞の使用
マウスに関心対象の抗原を負荷し、かつ追加免疫注射を数回与えてもよく、その後マウスを屠殺してマウスB細胞を獲得する。マウスB細胞は、血液から、脾細胞から、または骨髄から獲得され得る。フローサイトメトリーを実施して、CD19
+またはB220
+B細胞を獲得する。次いで、このB細胞の集団を、RNAse阻害剤とともに低張バッファーを含有しているウェル内にフローサイトメトリーによって単一細胞として選別する。選別された細胞をこの時点で凍結する、または直ちにRT-PCRに用いてcDNAを生成することができる。材料および方法における「非タッチダウンPCR」に詳述されるように、RT、第1のPCRおよび第2のPCRを実施する。マウス遺伝子特異的プライマーは表11に見出され、RTおよびPCRに用いた他のプライマーは表1に見出される。次いで、「454 XLR70シークエンシングランのための調製」に詳述される方法に従って、複数のプレートをプールし、かつ高性能454 DNAシークエンシングに供し、材料および方法における「ウェルへの配列の割り当て」および「配列のアセンブリ」に詳述される方法に従って、個々の配列を、どの重鎖および/または軽鎖が各ウェルから得られるかについての識別子として働くそれらのバーコードで同定し、ゆえに同じ初期細胞に由来する個々の可変重鎖および軽鎖を合致させるためのガイドを提供する。次いで、進化樹を描き、クローニング、発現、および機能的活性の判定のために抗体を選択する。
【0467】
クローニングのための配列を、人工的DNA合成によって獲得することができ、またはクローニングプライマーを用いた第1のPCR産物から増幅することができる。順方向クローニングプライマーは、サンプルID特異的であり、かつアンプリコンのプールから特異的配列を増幅することができる。次いで、クローニングプライマーによって導入されるものに対する相補的制限部位を含有している発現ベクター内に、各重鎖および軽鎖に対する配列をクローニングする。ベクターは、重鎖または軽鎖定常領域のいずれかも含有しており、その(一列に並んだリーディングフレーム)中に重鎖または軽鎖配列をクローニングして、抗体全体を産生する。次いで、重鎖または軽鎖クローンのいずれかを含有しているベクターを、哺乳類発現システム内に二重トランスフェクトする、あるいは両方のアンプリコンを、哺乳類細胞内への単一トランスフェクションを可能にする二重発現ベクター内にクローニングすることができる。
【0468】
次いで、上記のように、所望の特性についてのスクリーニングのために、起源の特定細胞由来の重鎖および軽鎖遺伝子候補を発現させる。いったん安定的または一過的にトランスフェクトされると、対合した重鎖および軽鎖の発現は、最初に選別された細胞の特異性を再現するモノクローナル抗体の産出をもたらす。次いで、関心対象の標的抗原に対する抗原特異性、ならびに適切な機能的アッセイによる機能性を含むがそれらに限定されない所望の特性について、分泌された抗体を含有している上清をスクリーニングする。
図9および6は、それぞれ、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
図26〜27は、進化樹からの選択されたクローン化され発現させた抗体の機能的特徴付けから、モノクローナル抗体を獲得する別の例を提供している。
【0469】
実施例27:モノクローナル抗体を産出するための、マウス形質細胞の使用
マウスに関心対象の抗原を負荷し、かつ追加免疫注射を数回与えてよく、その後マウスを屠殺してマウスB細胞を獲得する。典型的には脾細胞および骨髄が用いられるが、マウス形質細胞は、血液から、脾細胞から、または骨髄から獲得され得る。フローサイトメトリーを実施して、CD19
low/−B220
low/−CD138
+形質細胞を獲得する。次いで、この形質細胞の集団を、RNAse阻害剤とともに低張バッファーを含有しているウェル内にフローサイトメトリーによって単一細胞として選別する。選別された細胞をこの時点で凍結する、または直ちにRT-PCRに用いてcDNAを生成することができる。材料および方法における「非タッチダウンPCR」に詳述されるように、RT、第1のPCRおよび第2のPCRを実施する。マウス遺伝子特異的プライマーは表11に見出され、RTおよびPCRに用いた他のプライマーは表1に見出される。次いで、「454 XLR70シークエンシングランのための調製」に詳述される方法に従って、複数のプレートをプールし、かつ高性能454 DNAシークエンシングに供し、材料および方法における「ウェルへの配列の割り当て」および「配列のアセンブリ」に詳述される方法に従って、個々の配列を、どの重鎖および/または軽鎖が各ウェルから得られるかについての識別子として働くそれらのバーコードで同定し、ゆえに同じ初期細胞に由来する個々の可変重鎖および軽鎖を合致させるためのガイドを提供する。次いで、進化樹を描き、クローニング、発現、および機能的活性の判定のために抗体を選択する。
【0470】
クローニングのための配列を、人工的DNA合成によって獲得することができ、または、実施例26に記載されるように、クローニングプライマーを用いた第1のPCR産物から増幅することができる。次いで、上記のように、所望の特性についてのスクリーニングのために、起源の特定細胞由来の重鎖および軽鎖遺伝子候補を発現させる。いったん安定的または一過的にトランスフェクトされると、対合した重鎖および軽鎖の発現は、最初に選別された細胞の特異性を再現するモノクローナル抗体の産出をもたらす。次いで、関心対象の標的抗原に対する抗原特異性、ならびに適切な機能的アッセイによる機能性を含むがそれらに限定されない所望の特性について、分泌された抗体を含有している上清をスクリーニングする。
図9および6は、それぞれ、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
図26〜27は、進化樹からの選択されたクローン化され発現させた抗体の機能的特徴付けから、モノクローナル抗体を獲得する別の例を提供している。
【0471】
実施例28:モノクローナル抗体を産出するための、偏りのないまたは抗原特異的なマウスメモリーB細胞の使用
マウスに関心対象の抗原を負荷し、かつ追加免疫注射を数回与えてもよく、その後マウスを屠殺してマウスB細胞を獲得する。マウスメモリーB細胞は、典型的には脾細胞またはリンパ節から獲得され得る。フローサイトメトリーを実施して、CD19
+またはB220
+およびCD38
+IgG
+メモリーB細胞を獲得する。CD45RO等の他のマーカーも用いてよい。抗原特異的メモリーB細胞を、フルオロフォア結合抗原を用いて染色することによって可視化し、選別してもよい。次いで、このメモリーB細胞の集団を、RNAse阻害剤とともに低張バッファーを含有しているウェル内にフローサイトメトリーによって単一細胞として選別する。選別された細胞をこの時点で凍結する、または直ちにRT-PCRに用いてcDNAを生成することができる。実施例26にあるように、RT、第1のPCRおよび第2のPCRを実施し、その後に配列決定、ウェルへの配列の割り当て、および配列アセンブリが続く。次いで、進化樹を描き、クローニング、発現、および機能的活性の判定のために抗体を選択する。
【0472】
クローニングのための配列を、人工的DNA合成によって獲得することができ、または、実施例26に記載されるように、クローニングプライマーを用いた第1のPCR産物から増幅することができる。次いで、上記のように、所望の特性についてのスクリーニングのために、起源の特定細胞由来の重鎖および軽鎖遺伝子候補を発現させる。いったん安定的または一過的にトランスフェクトされると、対合した重鎖および軽鎖の発現は、最初に選別された細胞の特異性を再現するモノクローナル抗体の産出をもたらす。次いで、関心対象の標的抗原に対する抗原特異性、ならびに適切な機能的アッセイによる機能性を含むがそれらに限定されない所望の特性について、分泌された抗体を含有している上清をスクリーニングする。
図3および9は、それぞれ、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
図26〜27は、進化樹からの選択されたクローン化され発現させた抗体の機能的特徴付けから、モノクローナル抗体を獲得する別の例を提供している。
【0473】
実施例29:モノクローナル抗体を産出するための、マウス短寿命形質芽球の使用
マウスに関心対象の抗原を負荷し、かつ追加免疫注射を数回与えてもよく、その後マウスを屠殺してマウスB細胞を獲得する。マウス短寿命形質芽球は、典型的には脾細胞から獲得され得る。これらの形質芽球は、CD19
low/−B220
low/−およびCD22
lowまたはCD11c
+として、ならびにCD138
+としても様々に記載されている。フローサイトメトリーを実施して、形質芽球を獲得する。次いで、この形質芽球の集団を、RNAse阻害剤とともに低張バッファーを含有しているウェル内にフローサイトメトリーによって単一細胞として選別する。選別された細胞をこの時点で凍結する、または直ちにRT-PCRに用いてcDNAを生成することができる。実施例26にあるように、RT、第1のPCRおよび第2のPCRを実施し、その後に配列決定、ウェルへの配列の割り当て、および配列アセンブリが続く。次いで、進化樹を描き、クローニング、発現、および機能的活性の判定のために抗体を選択する。
【0474】
クローニングのための配列を、人工的DNA合成によって獲得することができ、または、実施例26に記載されるように、クローニングプライマーを用いた第1のPCR産物から増幅することができる。次いで、上記のように、所望の特性についてのスクリーニングのために、起源の特定細胞由来の重鎖および軽鎖遺伝子候補を、それらを用いて発現させる。いったん安定的または一過的にトランスフェクトされると、対合した重鎖および軽鎖の発現は、最初に選別された細胞の特異性を再現するモノクローナル抗体の産出をもたらす。次いで、関心対象の標的抗原に対する抗原特異性、ならびに適切な機能的アッセイによる機能性を含むがそれらに限定されない所望の特性について、分泌された抗体を含有している上清をスクリーニングする。
図9および6は、それぞれ、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
図26〜27は、進化樹からの選択されたクローン化され発現させた抗体の機能的特徴付けから、モノクローナル抗体を獲得する別の例を提供している。
【0475】
実施例30:モノクローナル抗体を産出するための、マウス芽球B細胞の使用
マウスに関心対象の抗原を負荷し、かつ追加免疫注射を数回与えてもよく、その後マウスを屠殺してマウスB細胞を獲得する。マウス芽球B細胞は、典型的には脾細胞から獲得され得る。芽球細胞は活性化B細胞であり、したがって抗原に対して応答している、かつ活発に増殖している細胞である。これらのB細胞はクローンファミリーからなり、それらの対合した重鎖および軽鎖を用いて、進化樹を獲得することができる。芽球B細胞をFSC
hiとしてゲートをかけてよく、かつCD44
hiCD69
hi等の細胞表面マーカーによってさらに同定してもよく、芽球B細胞は増殖しているため、SYTO Blue等の細胞透過性DNA染色によって染色されるDNA内容物を増大させていることによって、それらを細胞周期に入っていると同定してもよい。フローサイトメトリーを実施して、芽球B細胞を獲得する。次いで、この形質芽球の集団を、RNAse阻害剤とともに低張バッファーを含有しているウェル内にフローサイトメトリーによって単一細胞として選別する。選別された細胞をこの時点で凍結する、または直ちにRT-PCRに用いてcDNAを生成することができる。実施例26にあるように、RT、第1のPCRおよび第2のPCRを実施し、その後に配列決定、ウェルへの配列の割り当て、および配列アセンブリが続く。次いで、進化樹を描き、クローニング、発現、および機能的活性の判定のために抗体を選択する。
【0476】
クローニングのための配列を、人工的DNA合成によって獲得することができ、または、実施例26に記載されるように、クローニングプライマーを用いた第1のPCR産物から増幅することができる。次いで、上記のように、所望の特性についてのスクリーニングのために、起源の特定細胞由来の重鎖および軽鎖遺伝子候補を発現させる。いったん安定的または一過的にトランスフェクトされると、対合した重鎖および軽鎖の発現は、最初に選別された細胞の特異性を再現するモノクローナル抗体の産出をもたらす。次いで、関心対象の標的抗原に対する抗原特異性、ならびに適切な機能的アッセイによる機能性を含むがそれらに限定されない所望の特性について、分泌された抗体を含有している上清をスクリーニングする。
図9および6は、それぞれ、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
図26〜27は、進化樹からの選択されたクローン化され発現させた抗体の機能的特徴付けから、モノクローナル抗体を獲得する別の例を提供している。
【0477】
実施例31:偏りのないまたは抗原特異的なヒトIgA+B細胞からのモノクローナル抗体の獲得
関心対象の抗原への事前の曝露が確認されたかまたは疑われるかあるいは曝露がないかにかかわらない対象から、末梢血(全血または単離末梢血単核細胞、PBMC)に対してまたは骨髄に対してFACSを実施して、IgA
+B細胞を単離する。これらのB細胞は、メモリーB細胞、形質細胞、または形質芽球であってよい。これらのIgA
+B細胞は、IgA
+B細胞を染色するフルオロフォア結合抗原を用いて抗原陽性B細胞を選別することによって、抗原特異的であってもよい。次いで、この細胞の集団を、ウェル内に単一細胞または複数の細胞のいずれかとしてFACSによって選別する。実施例21に詳細に記載される過程を繰り返して、454シークエンシングから配列をバーコード化し、配列を獲得し、ウェルに配列を割り当て、配列をアセンブルし、PCRに用いたIgA定常領域特異的プライマーは表10にある。HighV-QUESTを用いて、VDJ遺伝子使用法を同定し、実施例8にあるように、クローニングおよび発現のために、進化樹上の各クローンファミリーのいくつかのメンバーを選択する。関心対象の標的抗原に対する抗原特異性、ならびに適切な機能的アッセイによる機能性について、発現した抗体を含有している上清をスクリーニングする。
図9および6は、それぞれ、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
図26〜27は、進化樹からの選択されたクローン化され発現させた抗体の機能的特徴付けから、ヒトモノクローナル抗体を獲得する別の例を提供している。
【0478】
実施例32:偏りのないまたは抗原特異的なヒトIgM+B細胞からのモノクローナル抗体の獲得
関心対象の抗原への事前の曝露が確認されたかまたは疑われるかあるいは曝露がないかにかかわらない対象から、末梢血(全血または単離末梢血単核細胞、PBMC)に対してFACSを実施して、IgM
+B細胞を単離する。これらのB細胞は、メモリーB細胞、形質細胞、または芽球B細胞であってよい。これらのIgM
+B細胞は、IgM
+B細胞を染色するフルオロフォア結合抗原を用いて抗原陽性B細胞を選別することによって、抗原特異的であってもよい。次いで、この細胞の集団を、ウェル内に単一細胞または複数の細胞のいずれかとしてFACSによって選別する。実施例21に詳細に記載される過程を繰り返して、454シークエンシングから配列をバーコード化し、配列を獲得し、ウェルに配列を割り当て、配列をアセンブルし、PCRに用いたIgM定常領域特異的プライマーは表10にある。HighV-QUESTを用いて、VDJ遺伝子使用法を同定し、実施例8にあるように、クローニングおよび発現のために、進化樹上の各クローンファミリーのいくつかのメンバーを選択する。関心対象の標的抗原に対する抗原特異性、ならびに適切な機能的アッセイによる機能性について、発現した抗体を含有している上清をスクリーニングする。
図9および6は、それぞれ、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
図26〜27は、進化樹からの選択されたクローン化され発現させた抗体の機能的特徴付けから、ヒトモノクローナル抗体を獲得する別の例を提供している。
【0479】
実施例33:偏りのないまたは抗原特異的なマウスIgA+B細胞からのモノクローナル抗体の獲得
マウスに関心対象の抗原を負荷し、かつ追加免疫注射を数回与えてもよく、その後マウスを屠殺してマウスIgA
+B細胞を獲得する。これらのB細胞は、メモリーB細胞、形質細胞、形質芽球、または芽球B細胞であってよく、典型的には脾細胞から獲得され得る。これらのIgA
+B細胞は、IgA
+B細胞を染色するフルオロフォア結合抗原を用いて抗原陽性B細胞を選別することによって、抗原特異的であってもよい。次いで、このIgA
+B細胞の集団を、RNAse阻害剤とともに低張バッファーを含有しているウェル内にフローサイトメトリーによって単一細胞として選別する。選別された細胞をこの時点で凍結する、または直ちにRT-PCRに用いてcDNAを生成することができる。実施例26にあるように、RT、第1のPCRおよび第2のPCRを実施し、その後に配列決定、ウェルへの配列の割り当て、および配列アセンブリが続き、PCRに用いたIgA定常領域特異的プライマーは表11にある。次いで、進化樹を描き、クローニング、発現、および機能的活性の判定のために抗体を選択する。
図9および6は、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
【0480】
実施例34:偏りのないまたは抗原特異的なマウスIgM+B細胞からのモノクローナル抗体の獲得
マウスに関心対象の抗原を負荷し、かつ追加免疫注射を数回与えてもよく、その後マウスを屠殺してマウスIgM
+B細胞を獲得する。これらのB細胞は、メモリーB細胞、形質細胞、形質芽球、または芽球B細胞であってよく、典型的には脾細胞から獲得され得る。これらのIgM
+B細胞は、IgM
+B細胞を染色するフルオロフォア結合抗原を用いて抗原陽性B細胞を選別することによって、抗原特異的であってもよい。次いで、このIgM
+B細胞の集団を、RNAse阻害剤とともに低張バッファーを含有しているウェル内にフローサイトメトリーによって単一細胞として選別する。選別された細胞をこの時点で凍結する、または直ちにRT-PCRに用いてcDNAを生成することができる。実施例26にあるように、RT、第1のPCRおよび第2のPCRを実施し、その後に配列決定、ウェルへの配列の割り当て、および配列アセンブリが続き、PCRに用いたIgA定常領域特異的プライマーは表11にある。次いで、進化樹を描き、クローニング、発現、および機能的活性の判定のために抗体を選択する。
図9および6は、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
【0481】
実施例35:ヒトT細胞からの1種を上回る配列の配列決定
急性、亜急性、または進行中の循環T細胞の産出をもたらす最近または現在の症状を有する対象から、末梢血(全血または末梢血単核細胞(PBMC))に対してフローサイトメトリーを実施して、関心対象のT細胞を同定する。このT細胞の集団は、活性化T細胞または芽球T細胞であってよい。活性化T細胞を、CD44
hi、CD69
hi、CD154
+、CD137
+、またはそれもそれらのサイズもしくはFSC
hiによって描出され得る活性化T細胞である芽球T細胞を用いて同定してよく、かつSYTO Blue等の細胞透過性DNA色素を用いて細胞周期にあると同定してもよい。活性化T細胞は、クローンファミリー内に同一のファミリーメンバーを有する、進化樹にその後クラスター化され得るクローンファミリーからなっているはずであり、それを用いて、下流の機能的分析のためのクローンを選択することができる。次いで、T細胞を、RNAse阻害剤とともに低張バッファーを含有しているウェル内にフローサイトメトリーによって単一細胞として選別する。選別された細胞をこの時点で凍結する、または直ちにRT-PCRに用いてcDNAを生成することができる。TCR遺伝子をバーコード化するRTおよびPCRは、材料および方法における「非タッチダウンPCR」に詳述されており、配列決定準備は、材料および方法における「454 XLR70シークエンシングランのための調製」に詳述されており、かつウェルへの配列の割り当ておよび読み取りのアセンブリは、材料および方法における「ウェルへの配列の割り当て」および「配列のアセンブリ」に詳述されており、TCR遺伝子特異的プライマーは表10に見出される。次いで、進化樹を構築し、次いで、所望の特性についてのスクリーニングのために、起源の特定細胞由来の遺伝子候補を選出して、クローン化し、発現させる。クローニングのための配列を、遺伝子合成するまたはクローニングプライマーを用いた第1のPCR産物から増幅することができる。サンプルIDバーコード配列に特異的な順方向クローニングプライマーを有することによって、クローンのプールから特異的クローンを単離することができる。逆方向クローニングプライマーは、適切な遺伝子に対して相補的である。順方向および逆方向プライマーの両方は、ベクター内にクローン(一列に並んだコーディングフレーム)を組み込むための隣接制限部位を含有している。細胞に、それぞれが関心対象の遺伝子、例えばT細胞のα鎖およびβ鎖のいずれかを含有している2種の発現ベクターを二重にトランスフェクトする、または関心対象の遺伝子の両方を発現する二重発現ベクターを単独でトランスフェクトする。
【0482】
いったん安定的または一過的にトランスフェクトされると、関心対象の遺伝子を発現させ、所望のスクリーニングを用いて機能特性についてスクリーニングすることができる。
【0483】
実施例36:マウスT細胞からの1種を上回る配列の配列決定
マウスに関心対象の抗原を負荷し、かつ追加免疫注射を数回与えてもよく、その後マウスを屠殺してマウスT細胞を獲得する。T細胞はCD3
+であり、ヘルパーT細胞はCD4
+であり、細胞傷害性T細胞はCD8
+である。このT細胞の集団は、メモリーもしくは活性化T細胞、または芽球T細胞であってよい。メモリーT細胞はCD45RO
+として同定され得る。活性化T細胞を、CD44
hi、CD69
hi、またはそれもそれらのサイズもしくはFSC
hiによって描出され得る活性化T細胞である芽球T細胞を用いて同定してよく、かつSYTO Blue等の細胞透過性DNA色素を用いて細胞周期にあると同定してもよい。繰り返しの抗原曝露後、清潔な環境で飼育されたマウスにおけるこれらすべてのT細胞は、次いで進化樹として示され得る大部分のクローンファミリーを有するはずであり、次いでそれを用いて、クローニングおよび発現および下流の機能的分析のためのTCRを選択することができる。
【0484】
T細胞を、RNAse阻害剤とともに低張バッファーを含有しているウェル内に、上記で提案されるマーカーを用いたフローサイトメトリーによって単一細胞として選別する。選別された細胞をこの時点で凍結する、または直ちにRT-PCRに用いてcDNAを生成することができる。TCR遺伝子をバーコード化するRTおよびPCRは、材料および方法における「非タッチダウンPCR」に詳述されており、配列決定準備は、材料および方法における「454 XLR70シークエンシングランのための調製」に詳述されており、かつウェルへの配列の割り当ておよび読み取りのアセンブリは、材料および方法における「ウェルへの配列の割り当て」および「配列のアセンブリ」に詳述されており、TCR遺伝子特異的プライマーは表11に見出される。次いで、進化樹を構築し、次いで、所望の特性についてのスクリーニングのために、起源の特定細胞由来の遺伝子候補を選出して、クローン化し、発現させる。クローニングのための配列を、遺伝子合成するまたはクローニングプライマーを用いた第1のPCR産物から増幅することができる。サンプルIDバーコード配列に特異的な順方向クローニングプライマーを有することによって、クローンのプールから特異的クローンを単離することができる。逆方向クローニングプライマーは、適切な遺伝子に対して相補的である。順方向および逆方向プライマーの両方は、ベクター内にクローン(一列に並んだコーディングフレーム)を組み込むための隣接制限部位を含有している。細胞に、それぞれが関心対象の遺伝子、例えばT細胞のα鎖およびβ鎖のいずれかを含有している2種の発現ベクターを二重にトランスフェクトする、または関心対象の遺伝子の両方を発現する二重発現ベクターを単独でトランスフェクトする。
【0485】
いったん安定的または一過的にトランスフェクトされると、関心対象の遺伝子を発現させ、所望のスクリーニングを用いて機能特性についてスクリーニングすることができる。
【0486】
実施例37:サンプルからの1種を上回る配列の配列決定
関心対象の核酸を含む単一サンプルを同定する。単一サンプルは、単一細胞または細胞の一集団を有し得る。サンプルを、RNase阻害剤とともに低張バッファーを含有しているウェル内にフローサイトメトリーによって単一細胞として選別することができる。選別された細胞をこの時点で凍結する、または直ちにRT-PCRに用いてcDNAを生成することができる。次いで、このB細胞の集団を、RNase阻害剤とともに低張バッファーを含有しているウェル内にフローサイトメトリーによって単一細胞として選別する。選別された細胞をこの時点で凍結する、または直ちにRT-PCRに用いてcDNAを生成することができる。材料および方法における「非タッチダウンPCR」に詳述されるように、RT、第1のPCRおよび第2のPCRを実施する。次いで、「454 XLR70シークエンシングランのための調製」に詳述される方法に従って、複数のプレートをプールし、かつ高性能454 DNAシークエンシングに供し、材料および方法における「ウェルへの配列の割り当て」および「配列のアセンブリ」に詳述される方法に従って、個々の配列を、どの重鎖および/または軽鎖が各ウェルから得られるかについての識別子として働くそれらのバーコードで同定し、ゆえに同じ初期細胞に由来する個々の可変重鎖および軽鎖を合致させるためのガイドを提供する。次いで、進化樹を描き、クローニング、発現、および機能的活性の判定のために抗体を選択する。
【0487】
次いで、所望の特性または他の必要性についてのスクリーニングのために、起源の特定細胞由来の遺伝子候補を選出して、クローン化し、発現させる。クローニングのための配列を、遺伝子合成するまたはクローニングプライマーを用いた第1のPCR産物から増幅することができる。サンプルIDバーコード配列に特異的な順方向クローニングプライマーを有することによって、クローンのプールから特異的クローンを単離することができる。逆方向クローニングプライマーは、適切な遺伝子に対して相補的である。順方向および逆方向プライマーの両方は、ベクター内にクローン(一列に並んだコーディングフレーム)を組み込むための隣接制限部位を含有している。細胞に、それぞれが関心対象の遺伝子のいずれかを含有している2種もしくはそれを上回る発現ベクターをトランスフェクトする、または関心対象の遺伝子を発現する1種の発現ベクターを単独でトランスフェクトする。
【0488】
いったん安定的または一過的にトランスフェクトされると、関心対象の遺伝子を発現させ、所望の場合にはスクリーニングすることができる。
図9および6は、本方法を実施するための概略的方法論の一例を提供している。
【0489】
実施例38:DNA合成による免疫グロブリンV(D)J領域のクローニング
発現ベクター内へのクローニングのために、所望の免疫グロブリン重鎖および軽鎖V(D)J領域をDNA合成によって人工的に産出することができる。合成に用いられる配列は高性能454配列に直接由来してよく、あるいは関心対象のサンプル由来の重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするcDNAを、個々のサンプルまたは配列のさらなる検証のためにプールしたサンプルから再び配列決定してよく、この配列を用いて、選択された軽鎖および重鎖V(D)J領域を合成する。DNA合成、ならびに制限酵素および標準的な分子生物学を用いて、適切な定常領域を含有しているベクター内に合成されたDNAを組み入れることによって、Ig遺伝子の可変領域をクローン化してよい。合成の間、突然変異誘発が所望される場合を除いて、アミノ酸配列が変更されない限りは正確なヌクレオチド配列に従う必要はない。このことは、より高い発現レベルをもたらし得るコドン最適化を可能にする。このことは、クローニングのための、制限部位における付加も可能にする。5' UTRおよびバーコード配列等の翻訳されない配列は合成される必要がなく、リーダー配列も、より高い発現レベルで知られる他のシグナルペプチド配列と交換されてよい。これらは、高性能な読み取りと非常に異なり得るIgヌクレオチド配列をもたらすが、発現した場合には同一のアミノ酸配列を与える。
【0490】
一態様において、増幅したクローンをオープンリーディングフレームに挿入するのに必要とされる適切な制限部位を有するκ、λ、γ、または他の重鎖アイソタイプの定常領域のいずれかをすでに含有しているベクター内に、増幅したV(D)J領域を挿入する。別の態様において、可変領域全体を、定常領域を用いて遺伝子合成してよく、かつ発現および抗体特性についての下流の機能的試験のために、発現ベクター内にクローニングしてよい。
【0491】
実施例39:サンプル同定アダプターにすでに存在する制限部位を用いることによる免疫グロブリンV(D)J領域のクローニング
別の局面において、逆転写の間に付加されたサンプルIDアダプターにすでに組み入れられている制限部位を用いて、所望の免疫グロブリン重鎖および軽鎖V(D)J領域をクローン化することができる。このことは、PCRアンプリコンプールにおいて、ウェルIDバーコードの3'制限部位を有するアダプターをもたらす。クローニングプライマーを用いたクローニングの間、ウェルIDバーコード配列に相補的である5'プライマー、および鎖特異的3'プライマー(κ、λ、およびγ鎖に対する)を用いて、プレート特異的アンプリコンプールから所望のアンプリコンを増幅する。3'プライマーは、3'制限部位を付加する。5'プライマーはウェルIDバーコードの3'制限部位をすでに含有しているため、5'プライマーは制限部位を付加する必要がない。この増幅の後、定常領域インサートを含有しているベクター内へのライゲーションのために、制限酵素を用いてアンプリコンを切断する。制限酵素消化の間、バーコードおよびユニバーサル配列等の、Ig遺伝子配列の5'末端へ付加された配列を、それらが5'制限部位の5'であるように切断する。
【0492】
実施例40:対合した免疫グロブリン重鎖および軽鎖V(D)J領域のクローニングが後に続く、一方のみの免疫グロブリン鎖(重鎖または軽鎖)の配列決定によるクローンファミリーの同定
mRNAから抗体の重鎖および軽鎖を逆転写し、各サンプルから産出されたcDNAに別個のサンプルIDを組み入れ、かつ増幅PCRのためにサンプルcDNAをプールする。免疫グロブリンcDNAを増幅し、454高性能シークエンシングを用いて免疫グロブリン重鎖または軽鎖のいずれかを配列決定し、かつ同じゲノムによりコードされるV(D)Jセグメントの使用を示す免疫グロブリン重鎖V(D)Jまたは軽鎖V(D)J配列のそれらの使用に従って、配列をグループ化する。バイオインフォマティクスを用いて、関心対象のクローンファミリーを同定し、次いで配列決定および/またはクローニングのために、同じサンプル由来の所望の免疫グロブリン軽鎖および重鎖V(D)J領域を選択的に増幅する。PCR増幅について、順方向プライマーはサンプルIDを含み、逆方向プライマーは軽鎖または重鎖定常領域に特異的である。プライマーによって、アンプリコン内に制限部位を組み入れることができる。次いで、重鎖または軽鎖定常領域をすでに含有している適切な発現ベクター内に、アンプリコンを挿入することができる。次いで、抗体を発現させ、所望の特性についてスクリーニングすることができる。
【0493】
実施例41:サンプルIDのみ(およびプレートIDなし)を用いた、抗体のクローニングおよび発現のための、免疫グロブリン重鎖および軽鎖V(D)J配列決定からのクローンファミリーの同定
各サンプルにおけるmRNAから抗体の重鎖および軽鎖を逆転写し、各サンプルから産出されたcDNA内に別個のサンプルIDを組み入れる。各サンプルIDは、少なくとも6ヌクレオチド長かつ1塩基対相違であり、4096個の別個でありうるサンプルIDをもたらす。別個のサンプルIDを各サンプルに用い、固有のサンプルIDによって、異なるサンプルに由来するcDNAが同定され、かつ個々のサンプルにおいて発現した2種またはそれを上回るcDNAの対合した配列決定およびクローニングが可能となる。454高性能シークエンシングに必要とされるTitaniumアダプターAおよびBを付加するPCRを用いて、重鎖および軽鎖アンプリコンを増幅し、次いですべてのサンプルを配列決定のために送る。材料および方法における「ウェルへの読み取りの割り当て」および「配列のアセンブリ」のセクションに従って、配列をウェルに割り当て、アセンブルする。V(D)J割り当てをHighV-QUESTを用いて行い、それらのV(D)J使用法に基づきクローンファミリーにグループ化する。次いで、選択したクローンを、クローニングプライマーを用いて特異的に増幅し、これはアンプリコン内に制限部位を付加もする。次いで、所望の特性についてのスクリーニングのための抗体の発現のために、適切な重または軽定常領域をすでに含有している発現ベクター内に、アンプリコンをインフレームで挿入する。
【0494】
実施例42:ユニバーサルプライマー配列にライゲーションすることによる、対合した配列のクローニング
mRNAから抗体の重鎖および軽鎖遺伝子を逆転写し、新たに合成されたcDNAにアダプター領域およびサンプルIDバーコードからなる3'配列を付加する。次いで、サンプルを一緒にプールし、T4 DNAリガーゼおよび5'リン酸化アンチセンス用ユニバーサルプライマーオリゴヌクレオチドを用いて、第1の鎖cDNAの3'末端にユニバーサルプライマー配列を付加する。あるいは、ユニバーサルプライマー配列にライゲーションする前に、第二鎖cDNA合成を行って、mRNA/cDNA混成物の代わりに二本鎖cDNAを獲得してよい。次いで、2ラウンドのPCRを実施して、cDNAを増幅し、かつプレートIDならびに454シークエンシングのためのTitaniumプライマーAおよびBを付加する。あるいは、PCRの間に組み入れる代わりに、T4 DNAリガーゼを用いることによって、DNAライゲーションによってプレートIDおよびTitaniumプライマーを付加してもよい。454シークエンシングの後、配列をアセンブルし、クローンファミリーを同定する。クローンファミリーから選択されたクローンを、アンプリコンに制限部位を付加するクローニングプライマーを用いて、特異的にクローニングしてよい。次いで、適切な重鎖または軽鎖定常領域をすでに有している発現ベクター内に、配列をインフレームで挿入する。次いで、抗体を発現させ、所望の特性についてスクリーニングする。
【0495】
実施例43:免疫グロブリン重鎖および軽鎖の逆転写(RT-GSP)のための遺伝子特異的プライマーの試験
重鎖および軽鎖遺伝子の逆転写において、プライマーとして、オリゴ(dT)の代わりにRT-GSPを用いた。次いで、PCRでcDNAを増幅し、アガロースゲル上で可視化した。RT-GSPプライマーは、IgKC_v3(a)、レーン1〜4において(b)、それぞれIgLC_v5、IgLC_v6、IgLC_v7、およびIgLC_v8であり、レーン1〜4において(c)、それぞれIgHGC_v10、IgHGC_v11、IgHGC_v13、およびIgGC_v15であり、ならびにIgHGC_v16(d)であった。プライマー名におけるKC、LC、およびGCは、プライマーが、それぞれκ鎖、λ鎖、およびγ重鎖に特異的であることを示す。ゲル写真における白いバンドは、無関係なレーンを切り取った場所を示す。
図10および表6を参照されたい。
【0496】
実施例44:アダプター領域配列の試験
3'末端側の終端にユニバーサルプライマー領域およびアダプター領域を含むオリゴヌクレオチドを用いて、RNAを逆転写した。次いで、順方向プライマーとしてユニバーサルプライマー領域配列を、かつ逆方向プライマーとして遺伝子特異的配列を用いて、cDNAを増幅した。増幅した産物をアガロースゲル上で可視化した。アダプター領域は、G(a)、レーン1および2において(b)、それぞれGGGGGおよびrGrGrGからなる。rGは、DNAヌクレオチドの代わりにRNAヌクレオチドを示す。
図11および表6を参照されたい。
【0497】
実施例45:ユニバーサルプライマー配列の試験
3'末端側の終端にユニバーサルプライマー配列およびアダプター領域を含むオリゴヌクレオチドを用いて、RNAを逆転写した。次いで、ユニバーサルプライマー領域に相補的な順方向プライマー、および遺伝子特異的配列に相補的な逆方向プライマーを用いたPCRによって、cDNAを増幅した。Univ_seq_4(a)、univ_seq_5(b)、およびuniv_seq_f(c)。ゲル写真における縦の白いバンドは、無関係なレーンが切り取られている場所を示す。そうでないレーンは、同じゲル写真に属する。
図12および表6を参照されたい。
【0498】
実施例46:第1のPCR反応のための遺伝子特異的プライマー配列の試験
第1のPCR反応における配列の増幅において、遺伝子特異的プライマーを用いた。第1のPCR反応または後続の第2のネステッドPCRの産物のいずれかをアガロースゲルで泳動し、可視化した。用いた逆方向プライマーは、レーン1〜3(a)において、それぞれIgKC_v4、IgLC_v5、IgHGC_v13であり、レーン1〜3(b)において、それぞれK_GSP1、L_GSP1、G_GSP1であり、レーン1〜2(c)において、それぞれK_GSP1c、L_GSP1cであり、G_GSP1(d)であり、レーン1〜2(e)において、それぞれL_GSP1d、G_GSP1gであり、レーン1〜4(f)において、それぞれG_GSP1h、G_GSP1k、L_GSP1f、L_GSP1gであり、G_GSP1d(g)であり、レーン1〜8(h)において、それぞれ L_GSP1h〜oであり、レーン1〜6において、それぞれG_GSP1m〜qおよびG_GSP1tであった(プライマー名におけるK、L、およびGは、プライマーが、それぞれκ、λ、およびγ免疫グロブリン定常領域に特異的であることを示す)。各ゲルは、左側のレーンマーカーから始まり、サンプルレーンが続く。同じゲル写真上のレーン間の白い棒は、間にある無関係なレーンが切り取られている場所を示す。
図13を参照されたい。また、
図43において、より多くのプライマーを試験した。これらのプライマーを第1のPCRに用い、次いで表1からのプライマーを用いて第2のPCRを行い、PCR産物を2%アガロースゲルで泳動し、画像を撮った。第1のPCRに用いたプライマーは、それぞれκGSP1、κGSP1e、κGSP1f、λGSP1、λGSP1x、およびλGSP1yである。また、用いた配列について表6を参照されたい。
【0499】
実施例47:第2のPCR反応のための遺伝子特異的プライマー配列の試験
第2のPCR反応における配列の増幅において、遺伝子特異的プライマーを用いた。PCR産物をアガロースゲルで泳動し、可視化した。用いた逆方向プライマーは、レーン1〜3(a)において、それぞれK_GSP2、L_GSP2、G_GSP2であり、レーン1〜3(b)において、それぞれK_GSP2v2a、K_GSP2v2b、L_GSP2v2であり、レーン1〜4(c)において、それぞれK_GSP2v2c、K_GSP2v2c、G_GSP2v2c1、G_GSP2v2c2であり、レーン1〜3(d)において、それぞれK_GSP2v2d〜fであり、レーン1〜3(e)において、それぞれK_GSP2v2g、L_GSP2v2d、およびG_GSP2bであった。プライマー名におけるK、L、Gは、それらが、それぞれκ、λ、およびγ免疫グロブリン定常領域に特異的であることを示す。各ゲルは、左側のレーンマーカーから始まり、サンプルレーンが続く。同じゲル写真上のレーン間の白い棒は、間にある無関係なレーンが切り取られていることを示す。
図14および表6を参照されたい。
【0500】
実施例48:他のヒト可変領域遺伝子のための遺伝子特異的プライマー配列の試験
遺伝子特異的逆方向プライマーを用いて、第1のPCRおよび第2のPCRを行い、産物を2%アガロースゲルで泳動し、撮影した。レーンは、左から:(a)マーカー、μ、α定常領域、TCRα、および(b)マーカー、TCRβである。用いた3'プライマーの配列は表10にある。同じゲル写真上のレーン間の白い棒は、間にある無関係なレーンが切り取られている場所を示す。
図44を参照されたい。
【0501】
実施例49:マウス可変領域遺伝子のための遺伝子特異的プライマー配列の試験
第1のPCRおよび第2のPCRを行い、産物を2%アガロースゲルで泳動し、撮影した。レーンは、左から:(a)マーカー、κ、λ、λ、λ、λ軽鎖、およびμ重鎖である。4つのλレーンは、用いられたプライマーのこの組み合わせ:マウス_λ_GSP1aとマウス_λGSP2a、マウス_λ_GSP1aとマウス_λGSP2b、マウス_λ_GSP1bとマウス_λGSP2a、およびマウス_λ_GSP1bとマウス_λGSP2aを有した。(b)マーカーおよびα重鎖。(c)それぞれmo_g12_GSP2dおよびmo_g12_GSP2eを用いた第2のPCRに関するγ1、2a、2c重鎖、マーカー。(d)それぞれmo_g3_GSP2d、mo_g3_GSP2eを用いた第2のPCRに関するγ3重鎖、続いてそれぞれmo_g2b_GSP2d、mo_g2b_GSP2eを用いた第2のPCRに関するγ2b重鎖、続いてマーカー。(e)マーカー、TCRα。(f)マーカー、TCRβ。同じゲル写真上のレーン間の白い棒は、間にある無関係なレーンが切り取られている場所を示す。
図45および表11を参照されたい。
【0502】
実施例50:一方の末端におけるバーコードでの抗体重鎖および軽鎖の連結ペアの産出
図1に示されるように、血液、バルク末梢血単核細胞(PBMC)、バルクB細胞、形質芽球、形質細胞、メモリーB細胞、または他のB細胞集団から、個々のB細胞をフローサイトメトリーによって選別することができる。B細胞を96ウェルPCRプレート内に単一細胞選別し、陰性対照として、ウェルの1列を空のままにする。
図17は、関心対象の2種のポリヌクレオチド配列を連結させ、一方の末端にバーコードを付加するために用いられ得る方法についての概略的方法論を記載している。
【0503】
メーカーの推奨に従って、市販のone-step RT-PCRキット(例えば、Qiagenのone-step RT-PCRキット)を用いて、単一工程の多重重複−伸長RT-PCRを実施することができる。この特定の実施例では、逆転写反応等のポリヌクレオチド合成反応を用いて、mRNAサンプルからcDNA鋳型を産出する。
図17を参照すると、RT-PCR反応のための順方向遺伝子特異的プライマーは、制限酵素部位(RE1)、配列決定プライマー部位、およびバーコードを含有しており、関心対象の第一のcDNAにこれらのエレメントを付加する。2種のさらなるプライマー(RE3を含有していると示される)は、相補的な重複−伸長テールを有する。PCR反応におけるこれらのプライマーの使用は、増幅の間に関心対象の2種のcDNAがアニールしかつ連結するのを可能にする、重複伸長テールを保持する関心対象の2種のcDNAをもたらす。示された例では、LCおよびHC鎖が一方の末端におけるバーコードで物理的に連結している、表示された構造の生成物が産出されると考えられる。
【0504】
RE1およびRE2制限部位を用いて、配列決定のための適当なベクター内にPCR産物をクローニングすることができる。
【0505】
実施例51:内部バーコードでの抗体重鎖および軽鎖の連結ペアの産出
図1に示されるように、血液、バルク末梢血単核細胞(PBMC)、バルクB細胞、形質芽球、形質細胞、メモリーB細胞、または他のB細胞集団から、個々のB細胞をフローサイトメトリーによって選別することができる。B細胞を96ウェルPCRプレート内に単一細胞選別し、陰性対照として、ウェルの1列を空のままにする。
図18は、関心対象の2種のポリヌクレオチドを間に位置するバーコードで連結させるために用いられ得る方法についての概略的方法論を記載している。抗体重鎖および軽鎖のために用いられ得るプライマーおよびオリゴヌクレオチドを表30に示す。RTオリゴヌクレオチドには、AsiSIおよびPacI制限部位が含まれる。サンプルID配列を表2に示す。
【0506】
図18に示される方法は、cDNA合成反応の間の逆転写酵素の3'テーリングおよび鋳型切り替え活性に依存する。合成されたcDNAに付加された3'Cテールを、重複伸長配列およびバーコードを保持するアダプター分子のアニーリングに用いることができる。2つのタイプのアダプター分子を用いて、2種のcDNAを連結させる。重複伸長およびバーコード配列を保持する第一のアダプターを、第一のcDNAに付加する。バーコード配列のない、重複伸長の逆相補体を保持する第二のアダプターを、第二のcDNAに付加する。逆転写酵素の鋳型切り替え特性によって、これらの配列は、それらそれぞれのcDNAの3'末端に付加される。
【0507】
図18に示されるように、PCR反応において、相補的な重複伸長配列はアニールし、アニール部位から対応するDNAの鎖が合成される。外部プライマーを用いた後続のラウンドのPCRは、連結したcDNA分子の増幅をもたらす。
【0508】
増幅反応のためにまたは後にライゲーションにより、プライマー内に組み入れられる適切な制限部位の付加および配列決定プライマー部位の付加によって、配列決定のための適当なベクター内にPCR産物をクローニングすることができる。
【0509】
実施例52:ユニバーサル配列重複−伸長プライマーを用いた、2種の内部バーコードでの抗体重鎖および軽鎖の連結ペアの産出
図1に示されるように、血液、バルク末梢血単核細胞(PBMC)、バルクB細胞、形質芽球、形質細胞、メモリーB細胞、または他のB細胞集団から、個々のB細胞をフローサイトメトリーによって選別することができる。B細胞を96ウェルPCRプレート内に単一細胞選別し、陰性対照として、ウェルの1列を空のままにする。
図19は、関心対象の2種の連結したポリヌクレオチドの間に2種の内部バーコードを導入するために用いられ得る方法についての概略的方法論を記載している。抗体重鎖および軽鎖のために用いられ得るプライマーおよびオリゴヌクレオチドを表31に示す。RTオリゴヌクレオチドには、AsiSIおよびPacI制限部位が含まれる。サンプルID配列を表2に示す。
【0510】
図19に示される方法は、cDNA合成反応の間の逆転写酵素の3'テーリングおよび鋳型切り替え活性に依存する。本実施例において、オリゴ(dT)によりプライムされた(primed)cDNAに付加された3'Cテールを、接続されるcDNAのそれぞれへの、ユニバーサル配列およびバーコードを保持するアダプター分子のアニーリングに用いることができる。逆転写酵素の鋳型切り替え特性によって、これらの配列は、それらそれぞれのcDNAの3'末端に付加される。
図19に示されるように、外部のLCおよびHC特異的プライマーと組み合わせて、相補的な重複−伸長配列を保持するユニバーサル配列に対するプライマーを用いた後続の重複−伸長PCRは、LCがHCにそれらの間の2種の内部バーコードで連結している構造体をもたらす。
【0511】
増幅反応のためにまたは後にライゲーションにより、プライマー内に組み入れられる適切な制限部位の付加および配列決定プライマー部位の付加によって、配列決定のための適当なベクター内にPCR産物をクローニングすることができる。
【0512】
実施例53:重複−伸長アダプターを用いた、2種の内部バーコードでの抗体重鎖および軽鎖の連結ペアの産出
図1に示されるように、血液、バルク末梢血単核細胞(PBMC)、バルクB細胞、形質芽球、形質細胞、メモリーB細胞、または他のB細胞集団から、個々のB細胞をフローサイトメトリーによって選別することができる。B細胞を96ウェルPCRプレート内に単一細胞選別し、陰性対照として、ウェルの1列を空のままにする。
図20は、関心対象の2種の連結したポリヌクレオチドの間に2種の内部バーコードを導入するために用いられ得る別の方法についての概略的方法論を記載している。抗体重鎖および軽鎖のために用いられ得るプライマーおよびオリゴヌクレオチドを表32に示す。RTオリゴヌクレオチドには、AsiSIおよびPacI制限部位が含まれる。サンプルID配列を表2に示す。
【0513】
図20に示される方法も、cDNA合成反応の間の逆転写酵素の3'テーリングおよび鋳型切り替え活性に依存する。本実施例において、遺伝子特異的プライマーを用いて合成されたcDNAに付加された3'Cテールを、接続されるcDNAのそれぞれへの、自己相補的またはパリンドローム的な重複−伸長配列およびバーコードを保持するアダプター分子のアニーリングに用いることができる。逆転写酵素の鋳型切り替え特性によって、これらの配列は、それらそれぞれのcDNAの3'末端に付加される。後続のLCおよびHC cDNAに付加された重複−伸長配列のアニーリングによって、それらは重複の部位において一つに連結される。
図20に示されるように、LCおよびHCに対する外部プライマーを用いた重複−伸長PCRは、LCがHCにそれらの間の2種の内部バーコードで連結している構造体をもたらす。
【0514】
増幅反応のためにまたは後にライゲーションにより、プライマー内に組み入れられる適切な制限部位の付加および配列決定プライマー部位の付加によって、配列決定のための適当なベクター内にPCR産物をクローニングすることができる。
【0515】
実施例54:バーコードを付加する異なる方法に関する調査
本発明者らは、バーコード配列を含むオリゴヌクレオチドを用いた逆転写または増幅反応の過程の間に、バーコード配列を付加し得る様々な方法を調査した。本発明者らは、バーコードの付加を、それらを遺伝子特異的プライマー(GSP)内に、および鋳型切り替えによってcDNAの3'末端に付加され得る1個または複数のGを含有しているオリゴヌクレオチド内にそれらを組み入れることによって試験した。文献および本発明者らの科学的知識に基づき、本発明者らの予想は、本発明者らは、5'バーコード化オリゴヌクレオチドまたは3'バーコード化GSPを用いて、cDNAを効果的にバーコード化することができるであろうというものであった。
【0516】
図21に実証されるように、1μgの総PBMC RNAおよび0.5μMのuniv_seq_2鋳型切り替えオリゴ、ならびにその第一の部分が固定化_PCR3配列であり、かつ最後の8bpのAACAATACがバーコードである付加的5'隣接配列を有する0.1μMのIgKC_v3 GSP(レーン1〜2)およびIgLC_v5 GSP(レーン3〜4)を用いて、RTを実施した。RT反応を、Nucleo TraPCR(Macherey-Nagel)を用いてクリーンアップし、50μlの最終容量に溶解した。後続の各PCR反応において、5'プライマーとしての内部5' V
K(レーン1)もしくはV
L(レーン3)プライマー、またはUniv_seq_2(レーン2および4)のいずれか、および3'プライマーとしての固定化_PCR3とともに、この反応の2μlを用いた。留意すべきは、V
KプライマーはκV遺伝子1および2に特異的であり、V
LプライマーはλV遺伝子2に特異的であるということである。配列は表33にある。見て分かるように、レーン2および4におけるPCR産物はスメアとして泳動された。対照的に、内部5'プライマーは別個のバンドを産生し(レーン1および3)、プライマーペアが機能すること、ならびにレーン1および3に示されるスメア形成が、プライマーの設計不備に起因するものではあり得ないことを示した。univ_seq_2および3'バーコード化GSPを用いたPCR増幅の間にスメアが得られた場合、全長逆転写されたすべてのcDNA配列にオリゴヌクレオチドが付加されたため、このことは、バーコード化GSPを用いた逆転写が、RT反応において、非特異的にプライムされた核酸配列をもたらすことを示唆している。本発明者らの結果は、5'ユニバーサル配列アダプターおよび3'バーコード化プライマーの使用が、B細胞または他の細胞によって発現される免疫グロブリンまたは他の遺伝子のバーコード化しかつ特異的な増幅のための優れた戦略ではないことを示唆している。
【0517】
後から考えると、用いたDNAおよび分子反応のいくつかの生物学的特性が、本発明者らの結果に寄与している可能性がある。逆転写は、通常、42℃または56℃等の低温で実施される。プライミング特異性を促進するために、プライマーのTmよりほんのわずかに下の温度でアニーリング工程が通常実施されるPCRとは異なり、逆転写酵素は高温で不活性化されるため、逆転写に対してこれを行うことはできない。したがって、プライマーのTmよりも非常に低い温度で反応は進行するため、RTの間に用いられる遺伝子特異的プライマーは、典型的には関心対象の遺伝子にあまり特異的でない。そのような状況において、プライマーは、いくつかのミスマッチを有する標的外のmRNA配列にも結合し得、ミスプライミングが生じる。バーコードをGSPに付加する場合、プライマーは、後続のPCRにおける使用のためのバーコードの5'固定化配列を有している必要もある。これに依ってプライマーが非常に長くなり(約60nt)、さらにはるかに高頻度のミスプライミングを有するプライマーをもたらす。しかしながら、PCRの間の特異的増幅は、通常、非常に遺伝子特異的な順方向プライマーを用いることによってなお達成され得、レーン1および3に示されるように、プライマーペアの一方のメンバーが特異的である限り、通常、特異的増幅は存在し得る。
【0518】
鋳型切り替え技術を用いてアダプターを付加する場合、このアダプターは、合成されて一本鎖cDNAを形成するすべてのmRNAに付加される。上述のように、とりわけRT酵素のSuperscript IIIは56℃でその鋳型切り替え活性を喪失し、かつ逆転写は42℃で進行するため、バーコード化GSPは相当量のミスプライミングを有すると考えられる。すべての免疫グロブリン遺伝子をPCR増幅し得る能力を喪失し(ゆえに、可変V遺伝子のために、複数の縮重5'プライマーを用いた多重PCRに訴える必要がある)、そうでなければ3'バーコードを喪失すると考えられるため、特異的なネスト5'または3'プライマーを用いることはできない。したがって、TdTテーリングまたは平滑末端クローニング等の5'アダプターを付加する他の方法によってもアダプターは無差別的に付加されるため、バーコード化GSPは、鋳型切り替えにより付加されたアダプターまたは他の任意の5'アダプターとの使用に適さない。したがって、内部3'プライマーまたはネステッドもしくは半ネステッドPCR増幅戦略も必要とされ、バーコード化3'GSPは、B細胞または他の細胞からの遺伝子を特異的に増幅するこれらの戦略の使用を可能としない。本発明者らの結果に基づき、本発明者らがバーコード化GSPは上手く機能しないと考える多くの同じ理由で、バーコード化オリゴ(dT)も上手く機能しないであろうとも予想されるであろう。これらの理由には、B細胞または他の細胞からの遺伝子の特異的増幅に、内部3'プライマーまたはネステッドもしくは半ネステッドPCR増幅戦略を使用し得ないことが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0519】
対照的に、本発明者らの結果(他の実施例を参照されたい)は、バーコード配列と、逆転写反応の間に産出されるcDNAの3'テールにアニールするアダプターとを含むプライマーを用いた逆転写反応の過程の間のバーコード配列付加の優位性を実証している。そのような態様において、アダプター配列は、バーコード配列を含んでよく、抗体重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を標識するために用いられ得る。ゆえに、本明細書において開示されるように、鋳型切り替えまたはcDNAをテーリングする他の任意の方法によって、5'配列自体についての事前の情報のないPCR増幅に用いられ得る配列が付加され、抗体レパートリーの効率的かつ偏りのない発現が可能となる。さらには、この手法によって、抗体に加えてタンパク質をコードする共発現させる他の遺伝子のレパートリーを獲得することが可能となる。さらに、鋳型切り替えアダプターを用いる手法は、複数のV遺伝子を増幅するために縮重順方向プライマーのセットを用いる、当技術分野において開示される方法よりも明白な利点を有する。公知の5'プライマーセットは、:a)レパートリーのほとんどを網羅するが全体を網羅しない;b)ヒト集団における公知のV遺伝子バリアント(多型)を今のところ網羅することができない;およびc)広範な体細胞超変異(SHM)を受けている抗体配列を効果的に増幅することができない可能性があるため、これらの方法は抗体レパートリー全体を確保することもできない。SHMの作用の例について、Scheid et al., Sciencexpress, 14 July 2011を参照されたい。
【0520】
したがって、発現させる遺伝子、例えば抗体重鎖および軽鎖のライブラリーの調製のための鋳型切り替えアダプターの使用は、特定の遺伝子ファミリーおよび共発現させる他の遺伝子の偏りのない発現を可能にすることによって、当技術分野において公知の他の方法よりも明白な利点を提供する。TdTテーリングおよび平滑末端ライゲーション等であるがそれらに限定されない他の任意の方法を用いて付加された鋳型切り替えアダプターまたは5'アダプターの使用は、また、上述の理由で、バーコード化3'GSPまたはバーコード化オリゴ(dT)よりもむしろバーコード化5'アダプターの使用により適合する。
【0521】
実施例55:フローサイトメトリーでの前方散乱および/もしくは側方散乱による、ならびに/または他の細胞表面マーカーを併用した形質芽球の選別
形質芽球は、活性化されている芽球B細胞であり、増幅している/増幅中であり、かつ親和性成熟を受けている。形質芽球は、活発な免疫応答を示し、本明細書における方法および組成物を実践することによって、それが感染症、ワクチン、自己免疫、または癌抗原であろうとなかろうと、関心対象の標的抗原に結合する抗体のクローンファミリーに関する進化樹のバイオインフォマティクス的構築が可能となる。
【0522】
形質芽球は、芽球B細胞であり、かつ休止B細胞より大きい(
図40A〜B)。したがって、それらの前方散乱および側方散乱特性を用いたフローサイトメトリーでそれらを選別することができる。
図40cに示されるように、形質芽球は、休止CD20
+B細胞より1.04〜1.16倍大きいFSC-W中央値とともに、他のCD20
+B細胞のFSC-A中央値よりも約1.29〜1.66倍大きいFSC-A中央値を有する。形質芽球は、また、95%信頼区間で判定される、単球の0.85〜0.98倍であるFSC-A中央値、および単球の0.92〜1.02倍であるFSC-W中央値を有する。FSC-AおよびFSC-Hは、同じ値を与えるように校正されたフローサイトメーターで測定されるため、ここでFSC-AおよびFSC-Hは置き換え可能でありかつ同等である。SSC-A(およびSSC-H、尺度により)およびSSC-Wに対して同様に、形質芽球は、CD20
+B細胞の0.74〜2.56倍および単球の0.21〜0.84倍であるSSC-A中央値、ならびにCD20
+B細胞の1.01〜1.20倍および単球の0.82〜1.03倍であるSSC-W中央値を有する。休止リンパ球はサイズが同様であるため、B細胞に対する形質芽球の割合は、リンパ球に対するものを表している。
【0523】
形質芽球を同定するための代替的手法は、CD20
+B細胞または単球のFSCまたはSSC中央値に対して、形質芽球の20
thパーセンタイルのFSCまたはSSCを用いることであり(
図44D)、CD20
+B細胞に対するFSC-A(FSC-W)中央値の1.04〜1.50倍(1.02〜1.11倍)、および単球に対する0.70〜0.88倍(0.88〜1.00倍)である。形質芽球は、CD20
+B細胞に対するSSC-A(SSC-W)中央値の0.67〜1.89倍(0.99〜1.11倍)、および単球に対する0.20〜0.62倍(0.77〜0.99倍)である20
thパーセンタイルのSSC-A(SSC-W)を有する。これらの数字によって、形質芽球の80%を包含しかつ他のリンパ球を除外するゲーティング・カットオフが可能となる。これによって、単色または二色の染色と合わせてFSC(および/またはSSC)を用いて、単一細胞選別形質芽球の状態の形質芽球にゲートをかけることが可能となる。そのような組み合わせには、FSC
hiCD19
low(
図39b)、CD19
+FSC
hi(
図39c)、CD19
+FSC
hiCD20
−(
図39d)、CD19
+FSC
hiCD38
hi(
図39e)、およびCD19
+FSC
hiCD27
+(
図39f)が含まれてよい。次いで、選別された細胞は、材料および方法における「非タッチダウン」PCRにあるように実施されるバーコード化のためのRT、PCRを受けてよい。配列決定、クローニング、および発現のための下流の調製は、実施例6および8にあるとおりである。留意すべきは、与えられた割合は、95%信頼区間、つまり割合の95%がこの範囲内に入らなくてはならない信頼区間のものであることである。
【0524】
実施例56:マイクロ流体装置等の任意のふるい装置上でのサイズによる形質芽球の選別
形質芽球は、活性化されている芽球B細胞であり、増幅している/増幅しているところであり、かつ親和性成熟を受けている。形質芽球は、活発な免疫応答を示し、本明細書における方法および組成物を実践することによって、それが感染症、ワクチン、自己免疫、または癌抗原であろうとなかろうと、関心対象の標的抗原に結合する抗体のクローンファミリーに関する進化樹のバイオインフォマティクス構築が可能となる。
【0525】
形質芽球は、芽球B細胞であり、かつ休止B細胞より大きい。形質芽球およびCD20
+B細胞をFACSにより選別し、トリパンブルーで染色して死細胞を排除し、倍率200倍で撮影した。52個の形質芽球および51個のCD20
+B細胞を撮影し、細胞エリアをImageJで測定した。撮影された形質芽球は、直径が7.8〜13μMの間、面積が48〜121μM
2の間、および体積が251〜996μM
3の間であった。CD20
+B細胞は芽球になっておらずかつより小さく、大多数は、直径が6〜8μM、または50μM
2より小さく、または268μM
3より小さく、51個のうちの4個の細胞のみがそれよりも大きい(
図41)。直径が8μMまたは面積が50μM
2または体積が268μM
3より大きいまたは小さい細胞を分離し得る任意のふるい装置は、捕捉された形質芽球の96%を有して、CD20
+休止B細胞から形質芽球を分離し得、かつ休止B細胞の92%をふるいにかけて除き得る。そのような装置は、8μMの穴径を有する微細なふるい、または直径が8μMもしくは面積が50μM
2もしくは体積が268μM
3より大きい細胞のみが通過するのを可能にするもしくは妨げる、水路を有するマイクロ流体装置であってよい。次いで、1ウェルあたり1個のみまたは数個の細胞が存在するように、これらの細胞をマイクロ流体装置におけるアクチュエーター/ポンプによってウェル内に選別することができ、次いで、材料および方法における「非タッチダウン」PCRにあるように、同じ濃度の試薬を用いて、バーコード化のためのRT、PCRを実施してよい。配列決定、クローニング、および発現のための下流の調製は、実施例6および8にあるとおりである。
【0526】
実施例57:抗黄色ブドウ球菌抗体は、好中球細胞株による黄色ブドウ球菌の食作用を増進する
黄色ブドウ球菌感染に対して効果的な免疫応答を開始している黄色ブドウ球菌感染症を有するヒト、例えば抗生物質療法を必要とせずに黄色ブドウ球菌を一掃するヒトを、末梢血の供給源として用い、そこからの末梢血形質芽球を染色し、選別する。形質芽球を単一細胞選別し、材料および方法における「非タッチダウンPCR」に詳述されるようにバーコード化し、材料および方法における「454 XLR70シークエンシングランのための調製」に詳述されるように配列決定のために調製する。進化樹をバイオインフォマティクスにより構築し、各クローンファミリーのいくつかの厳選した代表物を選択し、実施例8にあるように、組換え抗体としての発現のためにクローン化する。約5%プロテインA陽性である黄色ブドウ球菌Wood株を、5%トリプチケースソイ寒天(TCA)血液寒天上にプレーティングし、コロニーを増殖させ、ストックとして4℃で保管する。別のコロニーを拾うことによって、このストックを週に1回新たにする。1mLのこのストックを用いて植菌し、およそ中間対数増殖期に相当するOD550=0.5まで黄色ブドウ球菌を増殖させる。黄色ブドウ球菌を、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で室温にて15分間軽く固定し、ハンクス平衡塩液(HBSS)で1回洗浄し、その後1μM CFSEで室温にて15分間染色する。次いで、固定した細菌を洗浄し、10μg/mlの発現した組換え抗黄色ブドウ球菌抗体、または陰性対照としての10μg/mlの発現した抗インフルエンザウイルス抗体とともにインキュベートする。次いで、細菌を2回洗浄する。好中球細胞株のHL-60を、25μMレチノイン酸で96時間活性化し、96ウェルプレート中で300rpmにて穏やかに振とうさせながら、標識され固定された細菌と37℃で45分間1:1〜1:100でインキュベートする。次いで、HL-60を2回洗浄し、フローサイトメーターで分析する。HL-60におけるCFSE標識化の量は、食作用を受ける黄色ブドウ球菌の量の指標である。いくつかの発現した抗黄色ブドウ球菌抗体は、ブドウ球菌細胞表面タンパク質に結合し、細菌をオプソニン化し、食作用の増大につながると考えられる。
【0527】
実施例58:抗黄色ブドウ球菌抗体は、好中球を介した黄色ブドウ球菌の殺傷を増進する
上記の関連実施例にあるように、黄色ブドウ球菌感染症を効果的に制御しかつ/または一掃し得たヒトを選択し、上記の関連実施例にあるように、形質芽球を単離し、配列決定およびクローニングおよび発現のために、単一細胞選別した。黄色ブドウ球菌臨床分離株を5%TCA血液寒天上にプレーティングし、コロニーを増殖させ、ストックとして4℃で保管した。別のコロニーを拾うことによって、このストックを週に1回新たにした。1mLのこのストックを用いて植菌し、およそ中間対数増殖期に相当するOD550=0.5まで黄色ブドウ球菌を増殖させた。次いで、黄色ブドウ球菌を、2μg/mlの発現した抗黄色ブドウ球菌抗体とともに4℃で30分間インキュベートし、その後2回洗浄した。HL-60好中球細胞を、25μMレチノイン酸で96時間活性化し、96ウェルプレート中で300rpmにて振とうさせながら、幼仔ウサギ補体および黄色ブドウ球菌とともに37℃で45分間1:1〜1:100の比率でインキュベートした。次いで、HL-60細胞を迅速に氷上に置き、3回洗浄して、緩く接着した黄色ブドウ球菌を除去した。次いで、細胞外黄色ブドウ球菌を連続希釈し、5%TSA血液寒天上にプレーティングし、37℃で一晩培養した。翌日、コロニーをカウントして、コロニー形成単位(CFU)の数を判定した。特異的抗黄色ブドウ球菌組換え抗体によるCFUの減少(黄色ブドウ球菌とのインキュベーション後)は、それらの抗体が、HL-60細胞による黄色ブドウ球菌の、食作用の増進を仲介すること、および殺傷すること、または増殖を低下させることに有効であったことを実証している(
図46)。
【0528】
実施例59:マウスモデルにおける、発現した抗黄色ブドウ球菌抗体を用いた、黄色ブドウ球菌に感染したマウスの治療
実施例58にあるように、インビトロの殺傷活性、増殖低下活性、または結合活性を実証している抗黄色ブドウ球菌抗体は、インビボでの活性も有し得る。殺傷活性を有する抗黄色ブドウ球菌抗体を、実施例55〜58にあるように、ブドウ球菌感染症を制御し得る、黄色ブドウ球菌に感染したヒトから単離する。マウスに、致死量の黄色ブドウ球菌を与え、次いで対照抗体、または実証された殺傷活性、増殖低下活性、もしくは結合活性を有する組換え抗黄色ブドウ球菌抗体で処理する。マウスは、それらがKaplan-Meier生存試験によって判定される、より長い生存または感染症の重症度の低下を有した場合、保護されると見なされる。それによって、黄色ブドウ球菌感染症の重症度を制御するまたは低下させる、ヒトに由来する抗黄色ブドウ球菌抗体を、黄色ブドウ球菌に対する受動的保護を与え得るその能力について評価する。
【0529】
実施例60:ワクチンを開発するための効果的な抗黄色ブドウ球菌免疫応答の抗原標的の使用
殺傷活性、増殖低下活性、または結合活性を示す抗黄色ブドウ球菌抗体によって標的とされる黄色ブドウ球菌抗原は、黄色ブドウ球菌ワクチンの優れた候補である。それらの特異的抗原に対して強い応答を起こすワクチン接種者は、保護され得または黄色ブドウ球菌による感染症の重症度の低下を示し得る。殺傷活性、増殖低下活性、または結合活性を有する抗黄色ブドウ球菌抗体を、殺傷活性、増殖低下活性、または結合活性を有する抗黄色ブドウ球菌抗体を、実施例55〜58にあるように、黄色ブドウ球菌感染症を制御し得る、黄色ブドウ球菌に感染したヒト、および質量分析を用いて同定されるそれらの標的抗原から単離する。マウスにモックベクターをワクチン接種するか、または黄色ブドウ球菌抗原候補をワクチン接種し、次いで、2ヶ月の期間にわたり2回追加免疫する。黄色ブドウ球菌抗原候補を、個々にまたは組み合わせてマウスを免疫してよい。抗黄色ブドウ球菌抗原抗体の力価をELISAによって確認する。次いで、マウスに致死量の黄色ブドウ球菌を接種する。マウスは、それらがKaplan-Meier生存試験によって判定される、より長い生存を有した場合、黄色ブドウ球菌に対して保護されると見なされる。したがって、これらの選択された黄色ブドウ球菌抗原に対する免疫は、保護を与えまたは感染症の重症度を低下させ、本明細書における組成物および方法がワクチン設計に役立ち得ることを示す。
【0530】
実施例61:ヒトにおける、インビボでの殺傷活性、増殖低下活性、または結合活性を有する組換え抗黄色ブドウ球菌抗体を用いた、黄色ブドウ球菌に感染したヒトの治療
実施例55〜59にあるように、黄色ブドウ球菌感染症を制御し、かつインビトロおよびインビボでの殺傷活性、増殖低下活性、または結合活性を示すヒトに由来する抗体を用いて、黄色ブドウ球菌に感染した患者を治療し得る。実施例55〜59にあるように、抗体を獲得し、インビトロおよびインビボでの殺傷活性について試験する。製造管理および品質管理に関する基準(Good Manufacturing Practice)(GMP)で製造された抗黄色ブドウ球菌モノクローナル抗体を、黄色ブドウ球菌に感染したヒト、とくにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)または薬物耐性黄色ブドウ球菌の他の株に感染した患者に静脈内または皮下に与え、有効性について抗生物質単独と比較してもよい。患者が侵襲性黄色ブドウ球菌感染症に対して保護され、より重症度の軽い黄色ブドウ球菌感染症を有し、かつ/または抗生物質のみを与えられたもしくは抗生物質を与えられなかった患者よりも迅速に回復した場合、抗黄色ブドウ球菌抗体は治療的有用性を有すると見なされる。組換え抗黄色ブドウ球菌抗体を、感染症の重症度を低下させるため、および/または感染症の一掃を増進するために、活動性黄色ブドウ球菌感染症を有する患者に治療的に与えることができ、ならびに腎不全のために血液透析を受けている患者、入院中の患者、または黄色ブドウ球菌もしくはMRSAに対してスクリーニング陽性を有する患者等の危険性の高い患者集団に予防的に与えることができる。
【0531】
実施例62:ヒトにおける、防御免疫を与えるための、同定された黄色ブドウ球菌抗原を用いた黄色ブドウ球菌ワクチン接種
インビボで殺傷活性または結合活性を示す抗黄色ブドウ球菌抗体によって標的とされ、かつマウスモデルにおいてワクチンを接種された場合に、黄色ブドウ球菌接種に対する保護を与える黄色ブドウ球菌抗原は、ヒトにおける予防的ワクチンの優れた候補であり得る。実施例55〜58および59にあるように、抗黄色ブドウ球菌抗体を、黄色ブドウ球菌感染症を制御するヒトから得てクローン化し、発現させ、かつインビボでの殺傷活性、増殖低下活性、または結合活性についておよびマウスにおけるワクチン候補として試験する。次いで、殺傷活性、増殖低下活性、または結合活性を有する抗黄色ブドウ球菌抗体の標的である黄色ブドウ球菌抗原を含有している黄色ブドウ球菌ワクチンをヒトに与える。偽薬が対照である。黄色ブドウ球菌感染症の発生率または重症度についてコホートを追跡する。ワクチンは、それが、偽薬コホートと比較して、ワクチンを接種されたコホートの黄色ブドウ球菌感染症の発生率または重症度を低下させた場合、成功したと見なされる。
【0532】
実施例63:保護の関連要因としての、黄色ブドウ球菌ワクチン候補によって誘導される免疫応答のモニタリング
実施例62にある黄色ブドウ球菌ワクチン候補を用いたヒトの免疫後、関心対象の標的黄色ブドウ球菌抗原に対する堅牢なクローンファミリーが引き出されたかどうかを判定することによって、ワクチン応答をモニターすることができる。ワクチン接種後7〜14日の間血液を採り、形質芽球を単一細胞選別し、材料および方法における「非タッチダウンPCR」および「454 XLR70シークエンシングランのための調製」に詳述されるようにバーコード化し、454シークエンシングする。進化樹を描き、次いで、実施例8にあるように、各クローンファミリーの2〜3個のメンバーをクローン化し、発現させ、かつ関心対象のブドウ球菌抗原へのそれらの結合についてELISAで試験する。本発明者らは、ワクチンにより誘導される強い抗黄色ブドウ球菌免疫応答を有するヒトは、効果的なヒト免疫応答において標的とされる黄色ブドウ球菌抗原に対する大きなクローンファミリーを示すであろうと予想する。そのような手法は、黄色ブドウ球菌ワクチンの保護の関連要因を提供する潜在性を有し、そうすることで、臨床試験および開発が簡素化されるのを可能にする。この抗体および/またはTCR免疫レパートリーのモニタリングによって、ワクチン候補が有効性を提供するであろう可能性の迅速な査定が可能になると考えられる。
【0533】
実施例64:組換え抗肺腺癌抗体を用いた、肺腺癌を有するマウスの治療
細胞表面タンパク質または他の肺腺癌タンパク質に結合する抗肺腺癌抗体は、肺腺癌細胞に対する毒素を標的とするための、または肺腺癌細胞によって発現される他の分子を標的とするためのキャリアとして有用であり得る。実施例11にあるように、細胞表面結合活性を有する抗肺腺癌抗体または他の肺腺癌抗原を、長期非進行の肺腺癌の癌患者から単離する。ヌードマウスに、H1650肺腺癌細胞株を皮下注射し、腫瘍を1週間成長させる。次いで、抗肺腺癌抗体を、細胞結合ドメインでありかつジフテリア毒素を細胞内に入れるRドメインを欠いているジフテリア毒素等の毒素に結合させる。したがって、Rドメインを欠いているジフテリア毒素は、抗体が結合しかつジフテリア毒素負荷物を送達する肺腺癌細胞のみに致死的である。Rドメインのないジフテリア毒素に結合させた対照抗体を対照として用いる。対照におけるよりも腫瘍量がより大幅に減少した場合、肺腺癌抗体は、腺癌細胞を殺傷するためのその負荷物を上手く送達していると見なされる。あるいは、ある場合には、組換え抗体自体が、(結合させた毒素の非存在下において)腫瘍細胞の殺傷を仲介することができ得る、または腫瘍細胞の増殖を阻止することができ得る。
【0534】
実施例65:発現した抗肺腺癌抗体を用いた、肺腺癌患者の治療
細胞表面抗原に結合する抗肺腺癌抗体は、肺腺癌細胞に対する毒素を標的とするためのキャリアとして有用であり得る。実施例11にあるように、細胞表面結合活性を有する抗肺腺癌抗体を、長期非進行の肺腺癌の癌患者から単離する。GMPモノクローナル抗体または他の抗肺腺癌モノクローナル抗体を、肺腺癌患者、とくに生検された腺癌細胞が、該モノクローナル抗体によって標的とされる高レベルの細胞表面抗原を発現した患者に静脈内または皮下に与えてよい。肺腺癌抗原に対する組換えモノクローナル抗体、またはそれらが由来するクローンファミリーの他のメンバーを用いて、個々の患者の肺腺癌の生検標本を免疫組織化学的に染色し、腫瘍抗原の発現レベルについての情報を得ることができ、この情報を用いて、個々の患者がこのモノクローナル抗体を用いた療法に応答する可能性があるかどうかを判定することができる。抗肺腺癌抗体を、細胞結合ドメインでありかつジフテリア毒素を細胞内に入れるRドメインを欠いているジフテリア毒素等の毒素に結合させることができる。したがって、Rドメインを欠いているジフテリア毒素は、抗体が結合しかつジフテリア毒素積載物を送達する肺腺癌細胞のみに致死的である。化学療法の標準的治療を比較群の治療に用いる。患者がより長く生存し、または再発もしくは進行の前により長い時間を呈した場合、抗腺癌抗体は、それらの積載物を送達しておりかつ治療的有用性を有すると見なされる。あるいは、ある場合には、肺腺癌抗原に対する組換え抗体自体が、(結合させた毒素の非存在下において)腫瘍細胞の殺傷を仲介することができ得る、または腫瘍細胞の増殖を阻止することができ得る。
【0535】
実施例66:ヒトにおける、同定された抗原を用いた、肺腺癌の治療用ワクチン接種
抗肺腺癌抗体によって結合される細胞表面抗原を治療用ワクチンに用いて、確立された肺腺癌を治療し得、または肺腺癌の発症から保護し得る。実施例11にあるように、細胞表面結合活性を有する抗肺腺癌抗体を、長期非進行の肺腺癌の癌患者から単離し、免疫沈降または免疫ブロットおよび質量分析を用いて、標的抗原を同定する。ワクチン接種者に、関心対象の肺腺癌抗原を含有しているワクチンまたは対照ワクチンを与える。次いで、コホートを追跡調査し、ワクチン接種者の肺腺癌の発症率または進行を追跡する。標的抗原をワクチン接種されたヒトが、標準的治療の比較群と比較して、生存を延長しているかまたは再発までの時間を伸ばしている場合、ワクチンは成功したと見なされる。
【0536】
実施例67:応答の有効性に対する肺腺癌ワクチン接種の免疫モニタリング
実施例66にある肺腺癌ワクチンを用いたヒトの免疫後、ワクチン内の関心対象の腺癌抗原に対する堅牢なクローンファミリーが引き出されたかどうかを判定することによって、ワクチン応答をモニターすることができる。ワクチン接種後7〜14日の間血液を採り、形質芽球を単一細胞選別し、バーコード化し、材料および方法における「非タッチダウンPCR」および「454 XLR70シークエンシングランのための調製」に詳述されるように454シークエンシングを実施する。進化樹を描き、次いで、実施例8にあるように、各クローンファミリーの2〜3個のメンバーをクローン化し、発現させ、かつ関心対象のブドウ球菌抗原へのそれらの結合についてELISAで試験する。本発明者らは、強い免疫応答を有するヒトは、関心対象の肺腺癌抗原に対する大きなクローンファミリー、および/または関心対象の腺癌抗原に対する多くのクローンファミリーを有するであろうと予想する。この免疫モニタリングによって、本発明者らは、ワクチン候補の有効性を迅速に予測することが可能となる。
【0537】
実施例68:逆転写の間の鋳型切り替えのためのSuperscript IIIの使用
本発明者らの方法では、逆転写の間に、サンプル同定領域およびアダプター領域が付加される。これは、RNase H
−逆転写酵素の3'テーリング活性および鋳型切り替え活性を利用する。最も頻繁には、Superscript II(Invitrogen)等の逆転写酵素が、その作用温度である42℃で用いられる。50℃の推奨作用温度を有する、熱安定性のために遺伝子操作もされているSuperscript III等のMMLV H
−逆転写酵素は、3'テーリング活性を有さず、したがって鋳型切り替え能を有しないことが報告されている(http://tools.invitrogen.com/content/sfs/ProductNotes/F_Superscript%20III%20Enzyme%20RD-MKT-TL-HL0506021.pdf?ProductNoteId=36)。しかしながら、
図42において、本発明者らは、Superscript IIIが3'テーリング活性および鋳型切り替え活性を有することを示した。この特性は、Superscript IIIに対して推奨される逆転写温度の50℃では弱く、なぜSuperscript IIIの3'テーリング活性が以前に報告されていないかを説明し得る。しかしながら、RT温度を50℃から45.5℃へ、42℃へ下げたのにつれて、3'テーリング活性および鋳型切り替えは有意に増大する。本発明者らは、熱安定性のために遺伝子操作されているすべてのMMLV RNase H
−逆転写酵素は、より低い作用温度、すなわち42℃〜50℃の間で3'テーリング活性も有すると予想する。
【0538】
実施例69:メモリーB細胞および形質細胞の応答、ならびに特異的組織へのホーミングに関連した抗体を同定するための、共発現した遺伝子の分析
本明細書における方法および組成物によって記載されるように、個々のウェルに選別されたB細胞、T細胞、または他の細胞によって産生されるすべてのcDNAのバーコード化により、形質芽球、他のB細胞、T細胞、および他の細胞における遺伝子共発現についての単一細胞レベルでの特徴付けが可能となる。これにより、メモリーB細胞、形質細胞、メモリーT細胞、エフェクターT細胞の特異的タイプ(例えば、Th1、Th2、Th17、またはT-調節性T細胞)に分化するように誘導されているか、または特異的組織もしくは部位(例えば、消化管、皮膚、または脳)へホーミングするように誘導されているB細胞およびT細胞によって発現された特異的抗体およびTCRを同定するための、共発現した遺伝子の使用が可能となる。特異的サンプルにおける個々の細胞または細胞の収集物によって産生されるすべてのcDNAのバーコード化により、そのような特異的遺伝子の共発現を特徴付けするための、第1のPCRおよび第2のPCRの両方に対するさらなる3'PCRプライマーの使用が可能となる。5'プライマーは、可変領域遺伝子を増幅するために用いられたものと同じままである。さらには、共発現した遺伝子の分析により、クローンファミリーの親和性成熟と、メモリーB細胞、短寿命形質芽球、および長寿命形質細胞へのB細胞の分化(表34)、調節性T細胞(Treg)もしくはTh1、Th2、Th17細胞へのナイーブもしくはメモリーT細胞の分化(表35)、または特異的部位へのB細胞もしくはT細胞のホーミングに関連した遺伝子の共発現との間の関係性についてのバイオインフォマティクス分析が可能となる。そのような分析は、効果的な免疫応答を仲介する決定的な抗体またはTCRをさらに突き止めることができる。
【0539】
例えば、免疫応答を開始している個体に由来するPMBCを用いて、形質芽球を単一細胞選別する。本明細書における方法および組成物を用いて、異なる組織への形質芽球のホーミングに関連する遺伝子の共発現を分析する(表36を参照されたい)。データセットのバイオインフォマティクス分析により、異なる身体的位置での分泌に関連する抗体が同定される。次いで、実施例8にあるように、インビトロのスクリーニングアッセイにおける特徴付けのために、これらの抗体遺伝子を組換えによって発現させる。
【0540】
本発明の様々な局面の精神および範囲から逸脱することなく、形式および詳細における様々な変更がそこでなされ得るということは、関連技術分野における当業者によって理解されるであろう。
【0541】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用するとき、文脈上そうでないことが明白に指示されていない限り、単数形の「一つ(a)」、「一つ(an)」、および「この(the)」は、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0542】
本明細書の本文中で引用されるすべての参考文献、発行済み特許、および特許出願は、あらゆる目的で、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0543】
(表1)プライマーおよびアダプター分子
*サンプルID配列については、表2を参照されたい。プレートID配列については、表3を参照されたい。κGSP 2s、λGSP 2s、およびγGSP 2sは、それらがプレートID配列を有しないという点を除いて、κ、λ、およびγGSPロングプライマー2と同一である。XL+ランを行う場合、またはTitanium LibA化学反応を用いてXLR70ランを行う際に順方向プライマーの読み取りのみが所望される場合、プレートID配列は必要でない。
**プライマー配列は、IMGTデータベース(http://imgt.cines.fr/)に見出されるすべての異なる定常遺伝子バリアントを増幅し得るように設計された。
【0544】
(表2)サンプルID
【0545】
(表3)プレートID
【0546】
(表4)クローニングプライマー
*クローニング順方向プライマーは、5'隣接制限部位から始まり、3'末端のサンプルID配列で終わる。これにより、クローニングプライマーが、異なるウェルの起源を有する配列を区別し、かつ特異的サンプルID配列を有するアンプリコンを選択的に増幅することが可能となる。したがって、それぞれが特定のサンプルIDに特異的である、複数のクローニング順方向プライマーが存在する。クローニング順方向プライマーの3'配列は、ウェルIDに相補的であり、表5に提示されている。「Clon」から始まる名称を有するプライマーは、順方向プライマーである。「K」、「L」、または「G」から始まる名称を有するプライマーは、それぞれκ、λ、およびγ鎖に特異的な定常領域である逆方向プライマーである。逆方向プライマーの名称は、プライマーが組み入れるであろう制限部位も意味する。最後に、「DHFR」または「Lonza」は、定常領域プライマーが、それぞれ、付加された定常領域インサートを有する、pcDNA3.3およびpOptivecのベクターセットに対するものか、またはpEE12.4およびpEE6.4のLonzaベクターに対するものかを意味する。
【0547】
(表5)クローニングプライマーのウェル特異的配列
【0548】
(表6)
【0549】
(表7)
【0550】
(表8)
【0551】
(表9)XL+シークエンシングのための、アダプターにライゲーションするためのプライマー
【0552】
(表10)他のヒト遺伝子に対する3'プライマー
【0553】
(表11)マウス遺伝子に対する3'プライマー
*λGSP1aおよびGSP1bを50:50で混合して、λGSP2aおよびλGSP2bも50:50で混合して、IMGTに見出されるすべてのλ定常領域アレルを増幅することができる。すべてのγGSP1dも均等に混合して、すべてのγ1、2a、2b、2c、および3定常領域アレルを増幅することができる。γGSP2dも50:50で混合して、ならびにγGSP2eも50:50で混合して、IMGTデータベースに見出されるすべてのγ1、2a、2b、2c、および3定常領域アレルを増幅することができる。
【0554】
(表12)患者参照のためのプレート
【0555】
(表13)
【0556】
(表14)
【0557】
(表15)
【0558】
(表16)DHFRベクターであるpcDNA3.3およびpOptivecに対する定常領域インサート配列
【0559】
(表17)Lonzaベクターに対する定常領域インサート配列
【0560】
(表18)発現したすべての抗体
*V-QUESTによって与えられるVDJ識別
【0561】
(表19)Fluzone ELISAに用いた抗体
【0562】
(表20)表面プラズモン共鳴に用いた抗体
【0563】
(表21)RA抗原アレイに用いた抗体
【0564】
(表22)ヒストン2A ELISAおよびCCP ELISAに用いた抗体
【0565】
(表23)RF ELISAに用いた抗体
【0566】
(表24)肺癌組織IHCおよび肺癌細胞株のフローサイトメトリーに用いた抗体
【0567】
(表25)黄色ブドウ球菌表面染色に用いた抗体
【0568】
(表26)マイクロ中和アッセイに用いた抗体
【0569】
(表27)ブドウ球菌阻害アッセイに用いた抗体
【0570】
(表28)ブドウ球菌IPに用いた抗体
【0571】
(表29)ブドウ球菌質量分析に用いた抗体
【0572】
(表30)
【0573】
(表31)
【0574】
(表32)
【0575】
(表33)
【0576】
(表34)メモリーB細胞、短寿命形質細胞、長寿命形質細胞、および抗体分泌細胞へのB細胞分化に関連して共発現した遺伝子
【0577】
(表35)Treg、Th1、Th2、Th17細胞へのT細胞分化に関連して共発現した遺伝子
【0578】
(表36)特異的組織への形質芽球ホーミングに関連して共発現した遺伝子
【0579】
一般的な参考文献