(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703582
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】石をクリンプする方法
(51)【国際特許分類】
A44C 27/00 20060101AFI20200525BHJP
G04B 19/10 20060101ALI20200525BHJP
G04B 45/00 20060101ALI20200525BHJP
A44C 17/02 20060101ALI20200525BHJP
A44C 5/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
A44C27/00
G04B19/10 B
G04B45/00 E
A44C17/02
A44C5/00 C
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-189738(P2018-189738)
(22)【出願日】2018年10月5日
(65)【公開番号】特開2019-84344(P2019-84344A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】17200360.0
(32)【優先日】2017年11月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ブルバン,ステュース
(72)【発明者】
【氏名】グロッセンバッハー,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】マルタン,ジャン−クロード
(72)【発明者】
【氏名】スパソフ,ヴラディスラフ
(72)【発明者】
【氏名】バロン,セシル
(72)【発明者】
【氏名】ブラゼル,リオネル
(72)【発明者】
【氏名】カロ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジェルネ,シリル
(72)【発明者】
【氏名】ローペル,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】オーデ,アフマド
(72)【発明者】
【氏名】シュプリンガー,ジーモン
【審査官】
村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−031100(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0066310(US,A1)
【文献】
実開平08−001297(JP,U)
【文献】
特開2003−248068(JP,A)
【文献】
特開2007−247067(JP,A)
【文献】
特開2005−290428(JP,A)
【文献】
特開平6−240487(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル(3)、クラウン(4)、ガードル(5)及びパビリオン(6)があるようにカットされた石(1)をセッティング台(2)上に組み付けてアセンブリーを作る方法であって、
(a)中に前記石(1)が配置される少なくとも1つの凹部(10)が形成された基材(8)を用意するステップであって、前記凹部(10)が、前記基材(8)と前記石(1)の間の少なくとも前記ガードル(5)の近傍及び前記ガードル(5)に隣接している前記クラウン(4)と前記パビリオン(6)の領域(4a、6a)の近傍に、周部自由空間(12)を形成するように構成しており、前記周部自由空間(12)は、導電性の表面を有する底部(14)に接している、ステップと、
(b)前記周部自由空間(12)内にて電気めっきを施すことによって、少なくとも前記ガードル(5)の近傍及び前記ガードル(5)に隣接している前記クラウン(4)と前記パビリオン(6)の領域(4a、6a)の近傍に、金属層(36)を堆積させて、前記ガードル(5)を前記金属層(36)内に閉じ込めて、前記セッティング台(2)を形成するステップと、
(c)前記石(1)とそのセッティング台(2)を前記基材(8)から解放するステップと
を有し、
前記基材(8)とその凹部(10)は、
(d)導電性の表面層(16)を有する基材(8)を用意し、前記基材(8)に少なくとも1つの貫通穴(18)を形成するステップと、
(e)前記基材(8)を感光性樹脂層(20)によって覆い、前記基材(8)の平面内における寸法が前記石(1)の前記ガードル(5)の寸法よりも大きい空洞(22)をフォトリソグラフィーによって前記感光性樹脂層(20)内に形成するステップと
によって作られ、
前記空洞(22)には、前記貫通穴(18)に対応する中央開口(24)と、及び樹脂製の側壁(26)及び前記貫通穴(18)のまわりの前記基材の前記導電性の表面層(16)によって占められた底部(14)に接している周部領域とがあり、
前記凹部(10)を形成する前記空洞(22)と前記貫通穴(18)の寸法は、前記石(1)の前記パビリオン(6)が前記貫通穴(18)内に部分的に収容されて、前記空洞(22)の前記中央開口(24)の前記周部に載るように選ばれ、
前記貫通穴(18)よりも上の前記パビリオン(6)の残りは、前記ガードル(5)に隣接している前記パビリオン(6)の領域(6a)を定めて、前記ガードル(5)に隣接している前記パビリオン(6)の前記領域(6a)から少なくとも前記ガードル(5)に隣接している前記クラウン(4)の領域(4a)のレベルまでの前記石(1)の残りは、前記空洞(22)内に収容され、前記石(1)と前記空洞(22)の壁(26、14)の間に前記周部自由空間(12)形成する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記空洞(22)と前記貫通穴(18)の寸法は、前記石(1)の前記パビリオン(6)が前記貫通穴(18)内に実質的に完全に収容されて、前記ガードル(5)に隣接している前記パビリオン(6)の領域(6a)が前記ガードル(5)のすぐ下のみに延在し、前記ガードル(5)に隣接している前記クラウン(4)の領域(4a)が前記ガードル(5)のすぐ上にのみ延在するように選ばれ、
これによって、前記石(1)と前記空洞(22)の壁(26、14)の間の、実質的に前記ガードル(5)の近傍及び前記ガードル(5)に隣接している前記クラウン(4)と前記パビリオン(6)の前記領域(4a、6a)の近傍にて、前記周部自由空間(12)を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凹部(10)の高さは、前記石(1)の前記テーブル(3)が前記凹部(10)を越えるような大きさである
ことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の方法
【請求項4】
前記ステップ(a)と前記ステップ(b)の間に、前記石(1)の向きを変えるステップ(f)を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(f)は、前記石(1)の前記テーブル(3)を、前記石(1)をその凹部(10)内に再配置する再配置デバイス(28)に接触させることを伴う
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(f)と前記ステップ(b)の間に、前記石(1)の前記パビリオン(6)を前記貫通穴(18)内にセッティングするステップ(g)を有する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(g)の後に、前記再配置デバイス(28)を取り除くステップ(h)を有する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)の間に堆積される金属層(36)は、ニッケル、金、銀、白金、ロジウム、パラジウム、銅及びこれらの合金からなる群から選ばれる材料で作られている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(e)は、所望のセッティング台(2)の輪郭に対応するマスクを通してネガ型の感光性樹脂層(20)に紫外線照射し、前記感光性樹脂層(20)の非照射部分を取り除いて前記セッティング台(2)の輪郭に対応する輪郭を有する空洞(22)を得ることを伴う
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記基材(8)は、ケイ素、セラミックス、ガラス及び石英からなる群から選ばれた材料をベースとしている
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
計時器又は装飾品の部品の要素上に石(1)をクリンプする方法であって、
請求項1〜10に記載の方法を使用して得られた石(1)とそのセッティング台(2)のアセンブリーを、前記計時器又は装飾品の部品の要素に加えられたセッティング(38)上に又は前記計時器又は装飾品の部品の要素上に直接、組み付ける
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜10に記載の方法を使用して得られたセッティング台(2)上に組み付けられた少なくとも1つの石(1)を有する計時器又は装飾品の部品の要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブル、クラウン、ガードル及びパビリオンがあるようにカットされている石をセッティング台上に組み付けてアセンブリーを作る方法に関する。本発明は、さらに、前記方法によって得られた石及びそのセッティング台を計時器又は装飾品の部品の要素にクリンプする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貴石、準貴石又は合成石を爪、粒又はレールを用いてクリンプすることができることが知られている。ダイヤモンドやエメラルドのような天然石を爪によってセッティングに組み付けることによる伝統的なクリンプには、一般的に、石の大きさの約5/100の寸法制御が必要となる。このために、この種のクリンプは、大量生産された廉価な石のクリンプとは相互利用性が良くない。このような石の精度は、約1/100であって高いためである。このような石は、例えば、合成されたダイヤモンド、ジルコン、ルビーである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ダイヤモンドやエメラルドのような天然石が用いられる場合に遭遇する不可避な寸法的なばらつきが許容されるような石をクリンプする方法を提案することによって、この課題を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このために、本発明は、まず、テーブル、クラウン、ガードル及びパビリオンがあるようにカットされた石をセッティング台上に組み付ける方法に関する。これは、
(a)中に前記石が配置される少なくとも1つの凹部が形成された基材を用意するステップであって、前記凹部が、前記基材と前記石の間の少なくとも前記ガードルの近傍及び前記ガードルに隣接している前記クラウンと前記パビリオンの領域の近傍に、周部自由空間を形成するように構成しており、前記周部自由空間の底部には、導電性の表面がある、ステップと、
(b)前記周部自由空間内にて電気めっきを施すことによって、少なくとも前記ガードルの近傍及び前記ガードルに隣接している前記クラウンと前記パビリオンの領域の近傍に、金属層を堆積させて、少なくとも実質的に前記石の前記ガードルのまわりにて前記ガードルを前記金属層内に閉じ込めて、前記セッティング台を形成するステップと、
(c)前記石とそのセッティング台を前記基材から解放するステップと
を有する。
【0005】
特に有利な形態において、前記基材とその凹部は、
(d)導電性の表面層を有する基材を用意し、前記基材に少なくとも1つの貫通穴を形成するステップと、
(e)前記基材を感光性樹脂層によって覆い、前記基材の平面内における寸法が前記石の前記ガードルの寸法よりも大きい空洞をフォトリソグラフィーによって前記感光性樹脂層内に形成するステップと
によって作られ、
前記空洞には、前記貫通穴に対応する中央開口と、及び樹脂製の側壁及び前記貫通穴のまわりの前記基材の前記導電性の表面層によって占められた底部に接している周部領域とがあり、
前記凹部を形成する前記空洞と前記貫通穴の寸法は、前記石の前記パビリオンが前記貫通穴内に部分的に収容されて、前記空洞の前記中央開口の前記周部に載るように選ばれ、
前記貫通穴よりも上の前記パビリオンの残りは、前記ガードルに隣接している前記パビリオンの領域を定めて、前記ガードルに隣接している前記パビリオンの前記領域から少なくとも前記ガードルに隣接している前記クラウンの領域のレベルまでの前記石の残りは、前記空洞内に収容され、前記石と前記空洞の壁の間に前記周部自由空間を形成する。
【0006】
本発明に係る方法によって、凹部の寸法、より詳細には、貫通穴の寸法、を石の寸法的なばらつきに適応させるように選ぶことができるようになる。
【0007】
本発明は、さらに、前記アセンブリーを有する計時器又は装飾品の部品の要素上に石をクリンプする方法に関する。これは、前記方法を使用して得られた石とそのセッティング台を、前記計時器又は装飾品の部品の要素に後で加えられたセッティング上に、又は前記計時器又は装飾品の部品の要素上に直接、組み付ける。
【0008】
本発明は、さらに、前記方法を使用して得られセッティング台上に組み付けられた少なくとも1つの石を有する計時器又は装飾品の部品の要素に関する。
【0009】
添付の図面を参照しながら下において例として提供される説明を読むことによって、さらなる特徴や利点についても明確になるであろう。なお、このような例には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る石をセッティング台上に組み付けてアセンブリーを作る方法の順次的なステップの1つを示している平面図である。
【
図2】本発明に係る石をセッティング台上に組み付けてアセンブリーを作る方法の順次的なステップの1つを示している断面図である。
【
図3】本発明に係る石をセッティング台上に組み付けてアセンブリーを作る方法の順次的なステップの1つを示している断面図である。。
【
図4】本発明に係る石をセッティング台上に組み付けてアセンブリーを作る方法の順次的なステップの1つを示している断面図である。。
【
図5】本発明に係る石をセッティング台上に組み付けてアセンブリーを作る方法の順次的なステップの1つを示している断面図である。。
【
図6】本発明に係る石をセッティング台上に組み付けてアセンブリーを作る方法の順次的なステップの1つを示している断面図である。。
【
図7】
図7a〜7cは、本発明の方法によって得られた石及びセッティング台の様々な変種の平面図である。
【
図8】石と、セッティングにマウントされたセッティング台を示している断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜6及び8を参照して説明する。本発明は、テーブル3、クラウン4、ガードル5及びパビリオン6があるようにカットされている石1をセッティング台2上に組み付けてアセンブリーを作る方法に関する。このような石は、好ましくは、ダイヤモンドやエメラルドのような天然石であり、このような石の寸法は、1つ1つの石ごとに異なることができる。このような石が、天然か合成であるかにかかわらず、他のタイプであることができることは明らかである。また、このような石のために本発明に係る方法を有利に用いることができる。
【0012】
本発明に係る石1をセッティング台2上に組み付けてアセンブリーを作る方法の第1のステップ(a)は、中に前記石1が配置される少なくとも1つの凹部10がある基材8を用意することを伴う。この凹部10は、基材8と前記石1の間の少なくとも石1のガードル5のまわりに、周部自由空間12を形成しており、この周部自由空間12の底部14に導電性の表面16があるように構成している。「ガードルのまわり」とは、少なくともガードル5の近傍及びガードル5に隣接しているクラウン4とパビリオン6の領域4a及び6aの近傍に、周部自由空間12が位置していることを意味している。
【0013】
より詳細には、基材8とその凹部10は、好ましいことに、下記ステップ(d)及び(e)にしたがって作ることができる。
【0014】
ステップ(d)は、導電性の表面層16を有する基材8を用意し、前記基材8に少なくとも1つの貫通穴18を形成することを伴う。組み付けられる1つの石1に対して1つの貫通穴18が形成される。好ましいことに、基材8は、例えば、ケイ素、ガラス、セラミック又は石英ベースのものである。例えば、マイクロエレクトロニクス用のケイ素ウェハーを使用することができる。例えば、導電層16は、クロム、チタン、金又はこれらの組み合わせのPVD(物理蒸着)によって得ることができる。他の適切な導電層も使用できる。貫通穴18は、例えば、レーザアブレーションによって、基材8上に形成することができる。好ましいことに、基材の表面上の貫通穴18の分布は、特に、凹部の寸法、セッティング台の形などに応じて最適化され、基材8の表面上にて貫通穴の数が最大になるようにされる。
【0015】
図1に示しているように、ステップ(e)は、基材8を感光性樹脂層20で覆い、そして、フォトリソグラフィーによって前記感光性樹脂20内に空洞22を形成することを伴い、下で説明するように、前記空洞22と貫通穴18は、中に石1が配置される凹部10を形成する。空洞22は、導電層16まで空にされる。
【0016】
基材8の平面内における貫通穴18の寸法は、石1のガードル5の寸法(一般的には「直径」と呼ばれる)よりも小さく、基材8の平面内における空洞22の寸法は、石1のガードル5の直径よりも大きい。したがって、基材8の平面内における空洞22の寸法は、貫通穴18の寸法よりも大きく、そして、空洞22には、貫通穴18に対応する中央開口24があり、周部領域には、樹脂製の側壁26と底部がある。この底部は、すなわち、貫通穴18のまわりにて基材8の導電層16によって占められる底部14である。したがって、
図2に示しているように、凹部10は、基材8に垂直な平面内にT字形の断面を有する。
【0017】
特に有利な方法において、ステップ(e)においては、SU8樹脂のようなネガ型の感光性樹脂20を用い、所望のセッティング台の輪郭に対応するマスクを介して感光性樹脂層20に紫外線を照射し、輪郭が前記所望のセッティング台の輪郭に対応している空洞22を得るように感光性樹脂層20の非照射部分を取り除く。このようなフォトリソグラフィ法は、当業者にそれ自身知られており、さらに詳しい説明を必要としない。
【0018】
基材8とその凹部10が作られた後は、本発明に係るアセンブリーを作る方法のステップ(a)は、形成された凹部10のそれぞれに石1を設置するように進む。
【0019】
凹部10を形成する空洞22と貫通穴18の寸法は、石1のパビリオン6が貫通穴18内に部分的に収容されて、空洞22の中央開口24の周部に載るように選ばれる。貫通穴18の上のパビリオン6の残りがガードル5に隣接しているパビリオン6の領域6aを定め、これによって、ガードル5に隣接しているパビリオン6の領域6aから、少なくともガードル5に隣接しているクラウン4の領域4aのレベルまでの石1の残りが空洞22内に収容されて、石1と、空洞22の壁、すなわち、側壁26と底部14、の間に、周部自由空間12を形成する。
【0020】
特に好ましい形態において、空洞22と貫通穴18の寸法は、石1のパビリオン6が貫通穴18内に実質的に完全に収容され、ガードル5に隣接しているパビリオン6の領域6aがガードル5のすぐ下にのみ延在し、ガードル5に隣接しているクラウン4の領域4aがガードル5のすぐ上にのみ延在して、
図3に示しているように、石1と、空洞22の壁、すなわち、側壁26と底部14、の間の実質的にガードル5のまわりのみ、すなわち、ガードル5の近傍であってガードル5の両側のすぐ近くにのみ、周部自由空間12を形成する。また、
図3に示しているように、凹部10、具体的には、空洞22、の高さは、石1のテーブル3が、前記凹部10、具体的には、空洞22、を越えるようにされる。この目的に合うように、樹脂層20の厚みが選ばれる。
【0021】
用意することができる唯一の石の正確な寸法が、ガードル5の「直径」と高さであるので、石1が正確に設置されない可能性があり、石1のテーブル3が十分に平坦であることが確実ではない。
【0022】
この場合、本発明に係るアセンブリーを作る方法は、ステップ(a)とステップ(b)の間に、石の向きを変えるステップ(f)を有することができる。
図4を参照すると、このステップ(f)は、好ましいことに、石1のテーブル3を、石1をその凹部10内に再配置するように構成している再配置デバイス28に接触させることができる。このような再配置デバイス28は、例えば、変形可能なシートやフォーム材32で覆われた剛性プレート30を有する。このような変形可能なシートやフォーム材32によって、石1の高さを補正することが可能になる。再配置デバイス28は、シート又はフォーム材32が、基材8にある対応する凹部10内に配置された石のテーブル3に接触させられて、前記石の向きを変え、石1のテーブル3を平坦にするように構成している。
【0023】
再配置デバイス28を取り除く前に、ステップ(f)とステップ(b)の間に、石1のパビリオン6を貫通穴18内にセットするステップ(g)を設ける必要があることがある。このステップ(g)によって、再配置デバイス28が取り除かれた後にも、凹部10内における石1の正確な配置を維持することが可能になる。
【0024】
ステップ(g)は、例えば、貫通穴18の開いた入口を通して、石1のパビリオン6のまわりに、石1を凹部10内にセットすることを可能にする保持用の接着剤34を導入することを伴う。石1と中央開口24の間に間隙がある場合に保持用の接着剤34が空洞22に入ることを防ぐために、最も狭いギャップをも満たすことはない十分に粘着性がある保持用の接着剤を用いることができる。また、保持用の接着剤34を堆積させる前に、空洞22の側において、石1と中央開口24の間にあるあらゆるギャップをふさぐことができる。このために、空洞22の側にあるこのようなギャップ内に、(例えば、溶解によって)容易に取り除くことができる樹脂をスプレーすることができる。また、石1を設置する前に、ケイ素基材8上に約50μmのインジウム層を堆積させることができる。インジウム層には、テーブル3を平坦にするように石の向きを変えるステップ(f)の間に変形し、その後に、空洞22の中央開口24の近傍にてシールを提供することができるという利点がある。
【0025】
ステップ(g)の後に、本発明のアセンブリーを作る方法の実装を継続することができるようにするために再配置デバイス28を取り除くステップ(h)が続く。
【0026】
上記のステップ(a)にしたがって基材8と石1の間の少なくともガードル5の近傍及びガードル5に隣接しているクラウン4とパビリオン6の領域4a、6aの近傍にて周部自由空間12を形成することによって、石1が基材8にある凹部10内に配置されると、本発明に係るアセンブリーを作る方法は、ステップ(b)を実行するように進む。このステップ(b)は、導電層16によって占められた前記周部自由空間12の底部14から前記周部自由空間12に電気めっきを施すことによって、ガードル5の近傍及びガードル5に隣接しているクラウン4とパビリオン6の領域4a、6aの近傍にて、金属層36を堆積させて、前記ガードル5を前記金属層36内に閉じ込めて、
図6に示しているように、少なくとも実質的に石1のガードル5のまわりに、セッティング台2を形成する。石1のガードル5がセッティング台2を形成する金属層36内に閉じ込められるので、石1は、そのセッティング台2に堅く接続されるようになる。
【0027】
ステップ(b)にて堆積する金属層36は、好ましくは、ニッケル、金、銀、白金、ロジウム、パラジウム、銅及びこれらの合金からなる群から選ばれる材料で作られる。
【0028】
電鋳の条件、特に、槽の組成、システムの幾何学的構成、電圧及び電流密度は、電鋳の分野において周知な技術にしたがって、電着される各金属又は合金に対して選ばれる(例えば、L.J. Durneyによって編集されVan Nostrand Reinhold Company Inc., N.Y. USAによって1984年に出版されたDi Bari G.A.著の"Electroforming" Electroplating Engineering Handbook, 4th Editionを参照)。
【0029】
セッティング台2の大きさは、基材8の平面内における、貫通穴18と空洞22の寸法によって、また、電気めっきのパラメーターにしたがって堆積される金属層36の高さによって、定められる。
【0030】
好ましくは、これらのパラメーターは、実質的に、ガードル5の近傍及びガードル5の両側のすぐ近くにおいてのみ延在するクラウン4とパビリオン6の領域4a、6aの近傍においてのみ、金属層36が堆積され、これによって、
図8に示しているように、セッティング台2が実質的にガードル5のまわりにおいてのみ配置される。セッティング台2は、ガードル5に隣接しているクラウン4とパビリオン6の領域4a及び6aをわずかに越えるが、クラウン4とパビリオン6の本質は自由なままである。
【0031】
以下のステップ(c)は、セッティング台2上に組み付けられた石1を基材8から解放することを伴う。このために、ケイ素基材8と保持用の接着剤34が、溶解によって取り除かれる。例えば、ケイ素を溶かすように85℃に加熱された20%の水酸化カリウムKOHや工業溶剤を、接着剤を溶かすために使用できる。
【0032】
本発明に係るアセンブリーを作る方法によって、石1の寸法に適合する、様々な直径を有する貫通穴18を基材8に形成することによって、石1の寸法的なばらつきに適応させることができる。
【0033】
図7a〜7cは、セッティング台2上に組み付けられた石1のいくつかのバリエーションを示している。これらは、所望のセッティング台の輪郭に対応する様々なフォトリソグラフィー技術の露光マスクを用いることによって得ることができる。
【0034】
セッティング台2上に組み付けられ前記のように解放された石1を、本発明に係るクリンプ方法において使用することができる。
【0035】
図8に示しているように、このような石を計時器又は装飾品の部品の要素上にクリンプする方法は、上記のアセンブリーを作る方法にしたがって得た石1とそのセッティング台2をセッティング38上に組み付けることを伴う。そして、セッティング38が計時器又は装飾品の部品の要素に加えられる。
【0036】
別の変種において、上記のようなアセンブリーを作る方法によって得られた石1とそのセッティング台2を、計時器又は装飾品の部品の要素上に直接マウントする。
【0037】
セッティング38上に又は直接計時器又は装飾品の部品の要素上への石1を支持するセッティング台2の組み付けは、クリッピング、圧迫、クリンプ、接着剤接着などによって行うことができる。
【0038】
計時器又は装飾品の部品の要素は、例えば、表盤、ベベル、ロータリーベベル、ケースミドル部、ケースのホーン、リュウズ、針、インデックス、リンク又は他の腕輪要素、ペンダント要素、リング、カラーなどであることができ、また、クリンプすることができる任意の計時器/装飾品の装飾要素であることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 石
2 セッティング台
3 テーブル
4 クラウン
5 ガードル
6 パビリオン
8 基材
10 凹部
12 周部自由空間
14 底部
16 導電性の表面層
18 貫通穴
20 感光性樹脂層
22 空洞
24 中央開口
26 側壁
28 再配置デバイス
36 金属層
38 セッティング