特許第6703596号(P6703596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学東セロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6703596-半導体ウェハ加工用粘着性フィルム 図000003
  • 特許6703596-半導体ウェハ加工用粘着性フィルム 図000004
  • 特許6703596-半導体ウェハ加工用粘着性フィルム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703596
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】半導体ウェハ加工用粘着性フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20200525BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   H01L21/304 622J
   H01L21/304 631
   H01L21/68 N
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-509076(P2018-509076)
(86)(22)【出願日】2017年3月21日
(86)【国際出願番号】JP2017011134
(87)【国際公開番号】WO2017169958
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-70945(P2016-70945)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】栗原 宏嘉
(72)【発明者】
【氏名】福本 英樹
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−177542(JP,A)
【文献】 特開2007−070491(JP,A)
【文献】 特開2010−163587(JP,A)
【文献】 特開2014−024206(JP,A)
【文献】 特開2015−119106(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/132852(WO,A1)
【文献】 特開2011−210944(JP,A)
【文献】 特開2009−260332(JP,A)
【文献】 特開2012−193317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられた紫外線硬化型の粘着性樹脂層と、を備え、半導体ウェハの表面を保護または半導体ウェハを固定するために用いられる粘着性フィルムであって、
前記粘着性樹脂層は紫外線硬化型粘着性樹脂を含み、
下記の方法で測定される、紫外線硬化後の前記粘着性樹脂層表面の飽和帯電圧Vが2.0kV以下であり、
下記の方法で測定される、紫外線硬化後の前記粘着性樹脂層の表面のタック力が0.1N/cm以下である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
(方法)
前記粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量1080mJ/cm照射して前記粘着性樹脂層を光硬化させる。次いで、印加電圧10kV、試料と電極との距離20mm、25℃、50%RHの条件下で前記粘着性樹脂層の表面に電圧の印加を30秒おこない、JIS L1094に準じて前記粘着性樹脂層の表面の飽和帯電圧(V)を算出する。
(方法)
前記粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量1080mJ/cm照射して前記粘着性樹脂層を光硬化させる。次いで、測定装置としてプローブタックテスターを用いて、直径5mmのプローブと前記粘着性樹脂層の表面とを10mm/秒の速度で接触させ、0.98N/cmの接触荷重で10秒間接触させた後、10mm/秒の速度で前記プローブを前記粘着性樹脂層の表面から垂直方向に剥離する方法で前記粘着性樹脂層の表面のタック力を測定する。
【請求項2】
基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられた紫外線硬化型の粘着性樹脂層と、を備え、半導体ウェハの表面を保護または半導体ウェハを固定するために用いられる粘着性フィルムであって、
前記粘着性樹脂層は紫外線硬化型粘着性樹脂を含み、
下記の方法で測定される、紫外線硬化後の前記粘着性樹脂層表面の飽和帯電圧Vが2.0kV以下であり、
下記の方法で測定される、紫外線硬化後の前記粘着性樹脂層の表面の飽和帯電圧をVとしたとき、V/Vが5.0以下である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
(方法)
前記粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量1080mJ/cm照射して前記粘着性樹脂層を光硬化させる。次いで、印加電圧10kV、試料と電極との距離20mm、25℃、50%RHの条件下で前記粘着性樹脂層の表面に電圧の印加を30秒おこない、JIS L1094に準じて前記粘着性樹脂層の表面の飽和帯電圧(V)を算出する。
(方法)
前記粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量200mJ/cm照射して前記粘着性樹脂層を光硬化させる。次いで、印加電圧10kV、試料と電極との距離20mm、25℃、50%RHの条件下で前記粘着性樹脂層の表面に電圧の印加を30秒おこない、JIS L1094に準じて前記粘着性樹脂層の表面の飽和帯電圧(V)を算出する。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
下記の方法で測定される、紫外線硬化後の前記粘着性樹脂層の表面のタック力が0.1N/cm以下である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
(方法)
前記粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量1080mJ/cm照射して前記粘着性樹脂層を光硬化させる。次いで、測定装置としてプローブタックテスターを用いて、直径5mmのプローブと前記粘着性樹脂層の表面とを10mm/秒の速度で接触させ、0.98N/cmの接触荷重で10秒間接触させた後、10mm/秒の速度で前記プローブを前記粘着性樹脂層の表面から垂直方向に剥離する方法で前記粘着性樹脂層の表面のタック力を測定する。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
バックグラインドテープである半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
前記半導体ウェハの表面にはバンプ電極が形成されている半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
前記飽和帯電圧Vの半減期が100秒以下である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
前記粘着性樹脂層の厚みが5μm以上550μm以下である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか一項に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
前記粘着性樹脂層は、前記基材層側から帯電防止層および粘着性層をこの順番に有する半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
前記帯電防止層は導電性高分子を含む半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【請求項10】
請求項8または9に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
前記粘着性層は紫外線硬化型粘着性樹脂およびイオン性添加剤を含む半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【請求項11】
請求項8乃至10いずれか一項に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
前記粘着性樹脂層は、前記基材層と前記帯電防止層との間に凹凸吸収性樹脂層をさらに有する半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【請求項12】
請求項8乃至11いずれか一項に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
前記粘着性層の厚みが30μm未満である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【請求項13】
請求項8乃至10いずれか一項に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
前記粘着性樹脂層は、前記基材層と前記帯電防止層との間に凹凸吸収性樹脂層をさらに有し、かつ、前記粘着性層の厚みが30μm未満である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【請求項14】
請求項8乃至13いずれか一項に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
前記帯電防止層の厚みが0.01μm以上10μm以下である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【請求項15】
請求項1乃至14いずれか一項に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
前記紫外線硬化型粘着性樹脂は分子中に光重合性炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系粘着性樹脂を含む半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ加工用粘着性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の中で、半導体ウェハを研削や切断する工程においては、半導体ウェハを固定したり、半導体ウェハの損傷を防止したりするために、半導体ウェハに粘着性フィルムが貼り付けられる。
このような粘着性フィルムには、一般的に、基材フィルムに紫外線硬化型の粘着性樹脂層を積層させたフィルムが用いられている。この粘着性フィルムは紫外線を照射することで、粘着性樹脂層が架橋して粘着性樹脂層の粘着力が低下するため、半導体ウェハから粘着性フィルムを容易に剥離することができる。
【0003】
一方で、このような粘着性フィルムを用いた半導体装置の製造工程では、半導体ウェハから粘着性フィルムを剥離する際に剥離帯電と呼ばれる静電気が発生してしまう場合があった。このようにして生じた静電気によって半導体ウェハに形成した回路が破壊されたり(静電破壊)、半導体ウェハに形成した回路へ埃等の異物が付着してしまったりする場合があった。
特に、近年の半導体ウェハの高密度化・配線の狭ピッチ化に伴って、半導体ウェハはこれまで以上に静電気による影響を受けやすくなってきている傾向にある。
こうした事情に鑑みて、近年、半導体装置の製造工程において半導体ウェハの固定や損傷の防止のために使用する粘着性フィルムについても、帯電防止性能をさらに向上させることが要求されている。
【0004】
このような半導体ウェハ加工用粘着性フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2011−210944号公報)に記載のものが挙げられる。
【0005】
特許文献1には、基材フィルムと光硬化型の粘着剤層から構成される粘着テープであって、上記基材フィルムの少なくとも片面に導電性高分子を含有する帯電防止層、上記帯電防止層上にベースポリマーの分子内に光硬化性不飽和炭素結合を含有する粘着剤層を有し、紫外線硬化前後の上記粘着剤層側の表面抵抗率が1×10〜5×1012Ω/□であり、粘着剤層の厚みが20〜250μmであり、粘着テープをシリコンミラーウエハに貼合した場合の粘着剤層の紫外線硬化後の90度引き剥がし粘着力(JIS Z 0237に準拠;剥離速度は50mm/min)が、0.15〜0.25N/25mmであることを特徴とする帯電防止性半導体加工用粘着テープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−210944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記背景技術の項に前述したように、近年、半導体ウェハ加工用粘着性フィルムの静電気対策という観点について要求される技術水準は、ますます高くなっている。
本発明者らは、特許文献1に記載されているような従来の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムに関し、以下のような課題を見出した。
まず、本発明者らは、特許文献1に記載されている粘着性フィルムは、半導体ウェハから粘着性フィルムを剥離した際に、半導体ウェハの回路形成面に粘着性フィルムの粘着成分が残りやすい、すなわち糊残りが発生しやすく、半導体ウェハ表面への耐汚染性に劣ることを知見した。
さらに、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載されている粘着性フィルムにおいて、糊残りの発生を抑制するために紫外線の照射量を増加させて粘着剤層の架橋度を高めると、糊残りの発生が抑制されて半導体ウェハ表面への耐汚染性が改善される一方で、今度は帯電防止性が悪化することが明らかになった。
つまり、本発明者らの検討によれば、従来の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムには、半導体ウェハ表面への耐汚染性と帯電防止性との間には、トレードオフの関係が存在することが明らかになった。すなわち、本発明者らは、従来の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムには、半導体ウェハ表面への耐汚染性および帯電防止性をバランスよく向上させるという観点において、改善の余地があることを見出した。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、半導体ウェハ表面への粘着性と耐汚染性とのバランスに優れるとともに、半導体ウェハから剥離する際に発生する静電気の量を抑制でき、品質に優れた半導体部品を安定的に得ることが可能な半導体ウェハ加工用粘着性フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、基材層と、基材層の一方の面側に設けられた紫外線硬化型の粘着性樹脂層と、を備える粘着性フィルムにおいて、高い紫外線量で光硬化させた粘着性樹脂層の飽和帯電圧という尺度が、半導体ウェハ表面への耐汚染性と帯電防止性とを両立させるための設計指針として有効であるという知見を得た。
そして、本発明者らは上記知見を元にさらに鋭意検討した結果、高い紫外線量で光硬化させた粘着性樹脂層の飽和帯電圧を特定値以下とすることにより、上記トレードオフの関係を改善でき、半導体ウェハ表面への耐汚染性および帯電防止性をバランスよく向上できることを見出して、本発明を完成させた。
【0010】
本発明によれば、以下に示す半導体ウェハ加工用粘着性フィルムが提供される。
【0011】
[1]
基材層と、上記基材層の一方の面側に設けられた紫外線硬化型の粘着性樹脂層と、を備え、半導体ウェハの表面を保護または半導体ウェハを固定するために用いられる粘着性フィルムであって、
上記粘着性樹脂層は紫外線硬化型粘着性樹脂を含み、
下記の方法で測定される、紫外線硬化後の上記粘着性樹脂層表面の飽和帯電圧Vが2.0kV以下である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
(方法)
上記粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量1080mJ/cm照射して上記粘着性樹脂層を光硬化させる。次いで、印加電圧10kV、試料と電極との距離20mm、25℃、50%RHの条件下で上記粘着性樹脂層の表面に電圧の印加を30秒おこない、JIS L1094に準じて上記粘着性樹脂層の表面の飽和帯電圧(V)を算出する。
[2]
上記[1]に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
バックグラインドテープである半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
上記半導体ウェハの表面にはバンプ電極が形成されている半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
[4]
上記[1]乃至[3]いずれか一つに記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
下記の方法で測定される、紫外線硬化後の上記粘着性樹脂層の表面のタック力が0.1N/cm以下である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
(方法)
上記粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量1080mJ/cm照射して上記粘着性樹脂層を光硬化させる。次いで、測定装置としてプローブタックテスターを用いて、直径5mmのプローブと上記粘着性樹脂層の表面とを10mm/秒の速度で接触させ、0.98N/cmの接触荷重で10秒間接触させた後、10mm/秒の速度で上記プローブを上記粘着性樹脂層の表面から垂直方向に剥離する方法で上記粘着性樹脂層の表面のタック力を測定する。
[5]
上記[1]乃至[4]いずれか一つに記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
下記の方法で測定される、紫外線硬化後の上記粘着性樹脂層の表面の飽和帯電圧をVとしたとき、V/Vが5.0以下である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
(方法)
上記粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量200mJ/cm照射して上記粘着性樹脂層を光硬化させる。次いで、印加電圧10kV、試料と電極との距離20mm、25℃、50%RHの条件下で上記粘着性樹脂層の表面に電圧の印加を30秒おこない、JIS L1094に準じて上記粘着性樹脂層の表面の飽和帯電圧(V)を算出する。
[6]
上記[1]乃至[5]いずれか一つに記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
上記飽和帯電圧Vの半減期が100秒以下である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
[7]
上記[1]乃至[6]いずれか一つに記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層の厚みが5μm以上550μm以下である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
[8]
上記[1]乃至[7]いずれか一つに記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層は、上記基材層側から帯電防止層および粘着性層をこの順番に有する半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
[9]
上記[8]に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
上記帯電防止層は導電性高分子を含む半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
[10]
上記[8]または[9]に記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性層は紫外線硬化型粘着性樹脂およびイオン性添加剤を含む半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
[11]
上記[8]乃至[10]いずれか一つに記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層は、上記基材層と上記帯電防止層との間に凹凸吸収性樹脂層をさらに有する半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
[12]
上記[8]乃至[11]いずれか一つに記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性層の厚みが30μm未満である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
[13]
上記[8]乃至[10]いずれか一つに記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層は、上記基材層と上記帯電防止層との間に凹凸吸収性樹脂層をさらに有し、かつ、上記粘着性層の厚みが30μm未満である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
[14]
上記[8]乃至[13]いずれか一つに記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
上記帯電防止層の厚みが0.01μm以上10μm以下である半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
[15]
上記[1]乃至[14]いずれか一つに記載の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムにおいて、
上記紫外線硬化型粘着性樹脂は分子中に光重合性炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系粘着性樹脂を含む半導体ウェハ加工用粘着性フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体ウェハ表面への粘着性と耐汚染性とのバランスに優れるとともに、半導体ウェハから剥離する際に発生する静電気の量を抑制でき、品質に優れた半導体部品を安定的に得ることが可能な半導体ウェハ加工用粘着性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0014】
図1】本発明に係る実施形態の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
図2】本発明に係る実施形態の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
図3】本発明に係る実施形態の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリルまたはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0016】
図1〜3は、本発明に係る実施形態の半導体ウェハ加工用粘着性フィルム100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る半導体ウェハ加工用粘着性フィルム100(以下、「粘着性フィルム100」とも示す。)は、基材層10と、基材層10の一方の面側に設けられた紫外線硬化型の粘着性樹脂層20と、を備え、半導体ウェハの表面を保護または半導体ウェハを固定するために用いられるものである。そして、粘着性フィルム100において、粘着性樹脂層20は紫外線硬化型粘着性樹脂を含み、下記の方法で測定される、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の飽和帯電圧Vが2.0kV以下である。
(方法)
粘着性樹脂層20に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量1080mJ/cm照射して粘着性樹脂層20を光硬化させる。次いで、印加電圧10kV、試料と電極との距離20mm、25℃、50%RHの条件下で粘着性樹脂層20の表面に電圧の印加を30秒おこない、JIS L1094に準じて粘着性樹脂層20の表面の飽和帯電圧(V)を算出する。
【0017】
上述したように、近年、半導体ウェハ加工用粘着性フィルムの静電気対策という観点について要求される技術水準は、ますます高くなっている。特に、高密度の回路を配した半導体ウェハの高密度回路上に、はんだバンプや銅ピラーバンプ等のバンプ電極が形成された半導体ウェハを用いる場合は、静電気が原因で半導体ウェハに形成したバンプ電極を含む回路の破壊(ショート)が起きやすくなってきている傾向にあるため、このような要求がより顕著になっている。
このため、帯電防止性により優れた半導体ウェハ加工用粘着性フィルムを実現することが求められていた。
【0018】
ここで、本発明者らは、特許文献1に記載されているような従来の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムに関し、以下のような課題を見出した。
まず、本発明者らは、特許文献1に記載されている粘着性フィルムは、半導体ウェハから粘着性フィルムを剥離した際に、半導体ウェハの回路形成面に粘着性フィルムの粘着成分が残りやすい、すなわち糊残りが発生しやすく、半導体ウェハ表面への耐汚染性に劣ることを知見した。
さらに、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載されている粘着性フィルムにおいて、糊残りの発生を抑制するために紫外線の照射量を増加させて粘着剤層の架橋度を高めると、糊残りの発生が抑制されて半導体ウェハ表面への耐汚染性が改善される一方で、今度は帯電防止性が悪化することが明らかになった。
つまり、本発明者らの検討によれば、従来の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムには、半導体ウェハ表面への耐汚染性および帯電防止性との間には、トレードオフの関係が存在することが明らかになった。すなわち、本発明者らは、従来の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムには、半導体ウェハ表面への耐汚染性および帯電防止性をバランスよく向上させるという観点において、改善の余地があることを見出した。
【0019】
本発明者らは、従来の半導体ウェハ加工用粘着性フィルムに関する上述した知見を踏まえ、半導体ウェハ表面への耐汚染性および帯電防止性をバランスよく向上できる半導体ウェハ加工用粘着性フィルムを実現するために、鋭意検討を重ねた。その結果、上記の方法で測定される、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の飽和帯電圧Vが、半導体ウェハ表面への耐汚染性と帯電防止性とを両立させるための設計指針として有効であるという知見を得た。
そして、本発明者らは上記知見を元にさらに鋭意検討した結果、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の上記飽和帯電圧Vを2.0kV以下とすることにより、上記トレードオフの関係を改善でき、半導体ウェハ表面への耐汚染性および帯電防止性をバランスよく向上できることを初めて見出した。
すなわち、本実施形態に係る半導体ウェハ加工用粘着性フィルム100は、上記層構成とすることで、半導体ウェハ表面への粘着性と耐汚染性とのバランスに優れるとともに、半導体ウェハから剥離する際に発生する静電気の量を抑制でき、品質に優れた半導体部品を安定的に得ることができる。
【0020】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の飽和帯電圧Vは2.0kV以下であるが、好ましくは1.5kV以下であり、さらに好ましくは1.0kV以下であり、特に好ましくは0.5kV以下である。紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の飽和帯電圧Vを上記上限値以下とすることにより、半導体ウェハ表面への耐汚染性および帯電防止性のバランスをより一層良好なものとすることができる。
紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の飽和帯電圧Vの下限値は、例えば、0.01kV以上であり、好ましくは0kVである。
【0021】
本実施形態において、例えば、粘着性樹脂層20を構成する各成分の種類や配合割合、粘着性樹脂層20の層構成等を適切に調節することにより、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の飽和帯電圧Vを上記上限値以下に制御することが可能である。
これらの中でも、例えば粘着性樹脂層20中のイオン性添加剤の含有量や、粘着性樹脂層20における帯電防止層20bの有無、帯電防止層20bの位置、粘着性層20aの厚み等が、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の飽和帯電圧Vを所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
例えば、粘着性樹脂層20中のイオン性添加剤の含有量を増やしたり、帯電防止層20bを設けたりすると、飽和帯電圧Vを低下させることができる。
また、粘着性樹脂層20に凹凸吸収性樹脂層20cを設け、粘着性層20aの厚みを薄くすることにより、半導体ウェハとの粘着面(すなわち粘着性樹脂層の表面)と帯電防止層20bとの距離を小さくすることができ、その結果、飽和帯電圧Vを効果的に低下させることができる。
【0022】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、下記の方法で測定される、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の表面の飽和帯電圧をVとしたとき、V/Vが好ましくは5.0以下であり、より好ましくは3.0以下であり、さらに好ましくは2.5以下である。V/Vが上記上限値以下であると、半導体ウェハから剥離する際に発生する静電気の量をより安定的に抑制でき、品質に優れた半導体部品をより安定的に得ることができる。
(方法)
粘着性樹脂層20に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量200mJ/cm照射して粘着性樹脂層20を光硬化させる。次いで、印加電圧10kV、試料と電極との距離20mm、25℃、50%RHの条件下で粘着性樹脂層20の表面に電圧の印加を30秒おこない、JIS L1094に準じて粘着性樹脂層20の表面の飽和帯電圧(V)を算出する。
【0023】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の飽和帯電圧Vの半減期が、好ましくは100秒以下であり、より好ましくは50秒以下であり、さらに好ましくは30秒以下であり、よりさらに好ましくは10秒以下であり、特に好ましくは1秒以下である。
ここで、飽和帯電圧Vの半減期とは、飽和帯電圧Vの測定において、粘着性樹脂層20の表面への電圧の印加を終了してから帯電圧の値が半分に低下するまでの時間をいう。
本実施形態に係る粘着性フィルム100は、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の飽和帯電圧Vが上記上限値以下であるため、このような短い半減期を実現でき、帯電防止性に優れた粘着性フィルム100とすることができる。
【0024】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、下記の方法で測定される、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の表面のタック力が0.1N/cm以下であることが好ましく、0.05N/cm以下であることがより好ましく、0.01N/cm以下であることがさらに好ましい。
紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の表面のタック力が上記上限値以下であることにより、半導体ウェハ表面から粘着性フィルム100を剥離することがより容易になり、半導体ウェハ表面へ粘着性樹脂層20の一部が残ってしまうことや、粘着性フィルム100の剥離により半導体ウェハに不具合が発生してしまうこと等をより一層抑制することができる。
(方法)
粘着性樹脂層20に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量1080mJ/cm照射して粘着性樹脂層20を光硬化させる。次いで、測定装置としてプローブタックテスター(例えば、「TESTING MACHINES Inc.社製プローブタックテスター:モデル80−02−01」)を用いて、直径5mmのプローブと粘着性樹脂層20の表面とを10mm/秒の速度で接触させ、0.98N/cmの接触荷重で10秒間接触させた後、10mm/秒の速度で上記プローブを粘着性樹脂層20の表面から垂直方向に剥離する方法で粘着性樹脂層20の表面のタック力を測定する。
【0025】
本実施形態に係る粘着性フィルム100全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスから、好ましくは20μm以上1000μm以下であり、より好ましくは50μm以上500μm以下である。
【0026】
本実施形態に係る粘着性フィルム100は、半導体装置の製造工程において、半導体ウェハの表面を保護したり、半導体ウェハを固定したりするために用いられ、より具体的には半導体装置の製造工程の一つであるバックグラインド工程において半導体ウェハの回路形成面(すなわち回路パターンを含む回路面)を保護するために使用するバックグラインドテープとして好適に用いられる。
ここで、貼り付ける対象の半導体ウェハが表面にはんだバンプや銅ピラーバンプ等のバンプ電極が形成された半導体ウェハの場合、半導体ウェハから粘着性フィルムを剥離する際に発生する静電気が原因で半導体ウェハに形成した回路が破壊されるという静電破壊等が起きやすいが、本実施形態に係る粘着性フィルム100を用いることによって、このような表面にバンプ電極が形成された半導体ウェハに対しても静電破壊等をより確実に抑制することが可能となる。
【0027】
本実施形態に係る粘着性フィルム100を適用できる半導体ウェハとしては特に限定されず、シリコンウェハ等が挙げられる。
【0028】
次に、本実施形態に係る半導体ウェハ加工用粘着性フィルム100を構成する各層について説明する。
【0029】
<基材層>
基材層10は、粘着性フィルム100の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
基材層10は、半導体ウェハを加工する際に加わる外力に耐えうる機械的強度があれば特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
上記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ブテン)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタアクリレート;ポリ塩化ビニル;ポリイミド;ポリエーテルイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンエーテル等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、透明性を良好にする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される一種または二種以上がより好ましい。
【0030】
基材層10は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層10を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、基材層10の機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
【0031】
基材層10の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは20μm以上300μm以下、さらに好ましくは25μm以上150μm以下である。
基材層10は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0032】
基材層10の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。こうすることで、基材層10に透明性を付与することができる。そして、基材層10の全光線透過率を上記下限値以上とすることにより、本実施形態に係る粘着性フィルム100において基材層10側から紫外線を照射することで、粘着性樹脂層20へより効果的に紫外線を照射することができ、紫外線照射効率を向上させることができる。なお、基材層10の全光線透過率は、JIS K7105(1981)に準じて測定することが可能である。
【0033】
<粘着性樹脂層>
粘着性樹脂層20は、基材層10の一方の面側に設けられる層であり、半導体ウェハ加工用粘着性フィルム100を半導体ウェハに貼り付ける際に、半導体ウェハの表面に接触して粘着する層である。
【0034】
粘着性樹脂層20は、紫外線硬化型粘着性樹脂を必須成分として含む粘着性層20aを少なくとも備える。
また、粘着性樹脂層20は、後述する帯電防止層20bおよび凹凸吸収性樹脂層20cから選択される1層以上をさらに備えることが好ましく、帯電防止層20bおよび凹凸吸収性樹脂層20cの両方をさらに備えることが好ましい。
【0035】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、粘着性樹脂層20の厚みは通常5μm以上550μm以下であり、好ましくは10μm以上400μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上300μm以下、特に好ましくは50μm以上250μm以下である。粘着性樹脂層20の厚みが上記範囲内であると、半導体ウェハ表面への粘着性と、取扱い性とのバランスが良好である。
【0036】
(粘着性層)
粘着性層20aは、紫外線硬化型粘着性樹脂を必須成分として含む紫外線硬化型粘着剤により形成された層である。
紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。
(メタ)アクリル系粘着剤は、紫外線硬化型粘着性樹脂として(メタ)アクリル系粘着性樹脂を必須成分として含んでいる。シリコーン系粘着剤は、紫外線硬化型粘着性樹脂としてシリコーン系粘着性樹脂を必須成分として含んでいる。ウレタン系粘着剤は、紫外線硬化型粘着性樹脂としてウレタン系粘着性樹脂を必須成分として含んでいる。
これらの中でも粘着力の調整を容易にする観点等から、(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル系粘着剤としては、分子中に光重合性炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系粘着性樹脂と、分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物と、光開始剤を含み、必要に応じて架橋剤により上記(メタ)アクリル系粘着性樹脂を架橋させて得られる粘着剤を例示することができる。
【0038】
分子中に光重合性炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系粘着性樹脂は、具体的には次のようにして得られる。まず、エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーを共重合させる。次いで、この共重合体に含まれる官能基(P)と、該官能基(P)と付加反応、縮合反応等を起こしうる官能基(Q)を有するモノマーとを、該モノマー中の二重結合を残したまま反応させ、共重合体分子中に光重合性炭素−炭素二重結合を導入する。
【0039】
上記エチレン性二重結合を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルモノマー、酢酸ビニルの如きビニルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン等のエチレン性二重結合を有するモノマーの中から、1種又は2種以上が用いられる。
【0040】
上記官能基(P)を有する共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、Nーメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。これらは1種でもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。上記エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーの割合は、前者70〜99質量%に対し、後者30〜1質量%が好ましい。さらに好ましくは、前者80〜95質量%に対し、後者20〜5質量%である。
上記官能基(Q)を有するモノマーとしては、例えば、上記官能基(P)を有する共重合性モノマーと同様のモノマーを挙げることができる。
【0041】
エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーとの共重合体に、光重合性炭素−炭素二重結合を導入する際に反応させる官能基(P)と官能基(Q)の組み合わせとして、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジル基、水酸基とイソシアネート基等、容易に付加反応が起こる組み合わせが望ましい。又、付加反応に限らずカルボン酸基と水酸基との縮合反応等、光重合性炭素−炭素二重結合が容易に導入できる反応であれば如何なる反応を用いてもよい。
【0042】
分子中に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としては、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。分子中に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物の添加量は、上記(メタ)アクリル系粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは5〜18質量部である。
【0043】
光開始剤としては、ベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いてもよい。光開始剤の添加量は、上記(メタ)アクリル系粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜15質量部であり、より好ましくは5〜10質量部である。
【0044】
上記紫外線硬化型粘着剤には架橋剤を添加してもよい。架橋剤として、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。上記紫外線硬化型粘着剤は、溶剤タイプ、エマルションタイプ、ホットメルトタイプ等の何れでもよい。
【0045】
架橋剤の含有量は、通常、架橋剤中の官能基数が(メタ)アクリル系粘着性樹脂中の官能基数よりも多くならない程度の範囲が好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。
(メタ)アクリル系粘着剤中の架橋剤の含有量は、粘着性樹脂層20の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系粘着性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0046】
本実施形態に係る紫外線硬化型粘着剤は、紫外線硬化型粘着性樹脂に加えて、イオン性添加剤をさらに含むことが好ましい。これにより、粘着性樹脂層20の帯電防止性を向上させることができる。
イオン性添加剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、イオン液体等が挙げられる。粘着性樹脂層20の帯電防止性をより向上できる観点からカチオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一種が好ましく、カチオン性界面活性剤がより好ましい。
【0047】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド、ジバルミチルベンジルメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルベンジルメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては第4級アンモニウム塩またはアミン塩型を挙げることができ、第4級アンモニウム塩が好ましい。
中でも、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドが好ましい。
【0048】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩等);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルスルホコハク酸ジナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩;スルホン酸塩または硫酸エステル基と重合性の炭素−炭素(不飽和)二重結合とを分子中に有する界面活性剤等が挙げられる。
【0049】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物等のポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物等が挙げられる。
【0050】
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0051】
これらのイオン性添加剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
紫外線硬化型粘着性樹脂中のイオン性添加剤の含有量は、紫外線硬化型粘着性樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0052】
粘着性層20aは、例えば、基材層10や帯電防止層20b、凹凸吸収性樹脂層20c等のその他の層上に粘着剤塗布液を塗布することにより形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜200℃の温度範囲において、10秒〜10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80〜170℃において、15秒〜5分間乾燥する。架橋剤と(メタ)アクリル系粘着性樹脂との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40〜80℃において5〜300時間程度加熱してもよい。
【0053】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、粘着性層20aの厚みは100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm未満であることがさらに好ましく、25μm以下であることがよりさらに好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。これにより、粘着性樹脂層20の表面と帯電防止層20bとの距離を小さくすることができ、その結果、粘着性フィルム100の帯電防止性をより良好にすることができる。
粘着性層20aの厚みの下限値は特に限定されないが、粘着力を良好にする観点から、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、3.0μm以上がさらに好ましく、5.0μm以上が特に好ましい。
【0054】
(帯電防止層)
粘着性樹脂層20は、帯電防止層20bをさらに備えることが好ましい。これにより、粘着性樹脂層20の帯電防止性を向上させ、半導体ウェハから粘着性フィルム100を剥離する際に発生する静電気の量をより抑制することができる。
【0055】
本実施形態に係る半導体ウェハ加工用粘着性フィルム100において、粘着性樹脂層20が帯電防止層20bをさらに備える場合、図2に示すように、基材層10側から帯電防止層20bおよび粘着性層20aをこの順番に有することが好ましい。これにより、粘着性フィルム100の粘着性を維持したまま、剥離時に発生する静電気の量をより抑制することができる。
【0056】
帯電防止層20bを形成する材料は、帯電防止層20bの表面抵抗値を低下させて剥離に伴う静電気の発生を抑制する観点から、導電性高分子を含むことが好ましい。
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリピロール系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリ(p−フェニレンビニレン)系導電性高分子、ポリキノキサリン系導電性高分子等が挙げられる。
光学特性や外観、帯電防止性、塗工性、安定性等のバランスが良好であるという観点からポリチオフェン系導電性高分子が好ましい。ポリチオフェン系導電性高分子としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリチオフェンが挙げられる。
これらの導電性高分子は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
帯電防止層20bを形成する材料は、例えば、ドーピング剤、バインダー樹脂等をさらに含むことができる。
ドーピング剤は、ドーパントとして機能して、導電性高分子に導電性をより確実に付与(ドーピング)するものであって、例えば、スルホン酸系化合物が挙げられる。
【0058】
スルホン酸系化合物は、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸等が挙げられる。導電性高分子の溶解性や水分散性を向上させる観点から、ポリスチレンスルホン酸やポリビニルスルホン酸が好ましい。
スルホン酸系化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
このようドーピング剤を添加することにより、導電性高分子とスルホン酸化合物とが一部反応してスルホン酸塩を形成し、このスルホン酸塩の作用により帯電防止層20bの帯電防止機能がより一層向上する。
ドーピング剤の配合割合は、導電性高分子100質量部に対して、例えば、100〜300質量部である。
導電性高分子とドーピング剤との組み合わせとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)との組み合わせが帯電防止性により優れるため好ましい。
【0060】
帯電防止層20bを形成する材料は、皮膜形成性や密着性の向上等を向上させる観点から、バインダー樹脂をさらに含んでもよい。
バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
バインダー樹脂は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。バインダー樹脂の含有量は、例えば、導電性高分子100質量部に対して10〜500質量部である。
【0061】
帯電防止層20bの厚みは、帯電防止性能の観点から、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.01μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上1μm以下であることがさらに好ましい。
【0062】
(凹凸吸収性樹脂層)
粘着性樹脂層20は、凹凸吸収性樹脂層20cをさらに備えることが好ましい。
これにより粘着性フィルム100全体の凹凸吸収性が向上し、半導体ウェハの凹凸形成面(例えば、回路形成面(すなわち回路パターンを含む回路面))の凹凸(バンプを含む)に追従し、半導体ウェハの凹凸形成面と粘着性フィルム100との密着性を向上させることができる。さらに半導体ウェハを加工する際に加わる外力等によって半導体ウェハの表面に形成された電極が割れることを抑制することができる。
【0063】
本実施形態に係る粘着性フィルム100において、粘着性樹脂層20が帯電防止層20bおよび凹凸吸収性樹脂層20cをさらに備える場合、図3に示すように、粘着性樹脂層20は、基材層10と帯電防止層20bとの間に凹凸吸収性樹脂層20cをさらに有する構成とすることが好ましい。
これにより、粘着性フィルム100の凹凸吸収性を良好にしつつ粘着性層20aの厚みを薄くすることができるため、粘着性樹脂層20の表面と帯電防止層20bとの距離を小さくすることができ、その結果、粘着性フィルム100の帯電防止性をより良好にすることができる。
【0064】
凹凸吸収性樹脂層20cの密度は、機械的強度と凹凸追従性とのバランスの観点から、800〜990kg/mが好ましく、830〜980kg/mがより好ましく、850〜970kg/mがさらに好ましい。
【0065】
凹凸吸収性樹脂層20cを構成する樹脂は、凹凸吸収性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、オレフィン系樹脂、エチレン・極性モノマー共重合体、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、オレフィン系樹脂、エチレン・極性モノマー共重合体が好ましい。
【0066】
オレフィン系樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンおよび炭素数3〜12のα−オレフィンとを含むエチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンとを含むプロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・環状オレフィン共重合体等が挙げられる。
エチレン・極性モノマー共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体等が挙げられる。
凹凸吸収性樹脂層20cを構成する樹脂は単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0067】
エチレン・α−オレフィン共重合体における炭素原子数3〜12のα−オレフィンは、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられ、好ましくはプロピレン、1−ブテン等である。
【0068】
これらの中でも、貼り付け時の凹凸追従性に優れる点で、低密度ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・炭素原子数4〜12のα−オレフィンの三元共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体;プロピレン・1−ブテン・炭素原子数5〜12のα−オレフィンの三元共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体等が好ましく、エチレン・プロピレン共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0069】
凹凸吸収性樹脂層20cの厚みは、半導体ウェハの凹凸形成面の凹凸を埋め込むことができる厚みであれば、特に制限されないが、例えば、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上400μm以下であることがより好ましく、30μm以上300μm以下であることがさらに好ましく、50μm以上250μm以下であることが特に好ましい。
【0070】
本実施形態に係る粘着性フィルム100は、各層の間に接着層(図示せず)を設けていてもよい。この接着層によれば、各層の間の接着性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る粘着性フィルム100は、離型フィルムをさらに積層させてもよい。
【0071】
次に、本実施形態に係る半導体ウェハ加工用粘着性フィルム100の製造方法について説明する。
【0072】
本実施形態に係る半導体ウェハ加工用粘着性フィルム100は、従来の製造方法とは異なるものであって、製造条件を高度に制御する必要がある。すなわち、以下の2つの条件に係る各種因子を高度に制御する製造方法によって初めて、上述した紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の飽和帯電圧Vが、上述した特定の条件を満たす粘着性フィルム100を得ることができる。
(1)粘着性樹脂層20を構成する各成分の種類や配合割合
(2)粘着性樹脂層20の層構成
【0073】
上述した紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の飽和帯電圧Vが、上述した特定の条件を満たす粘着性フィルム100の具体的な構成としては、例えば、以下の例1〜例3が挙げられる。ただし、本実施形態に係る粘着性フィルム100はこれらの構成に限定されない。
【0074】
(例1)本実施形態に係る粘着性フィルム100において、粘着性樹脂層20が、イオン性添加剤を含有する粘着性層20aと、凹凸吸収性樹脂層20cとを有し、帯電防止層20bを有さない粘着性フィルム。
例1の場合、粘着性層20aの厚みが5.0μm以上50μm以下であることが好ましく、粘着性フィルム100の帯電防止性をより良好にすることができる観点から、5.0μm以上30μm未満であることがより好ましい。また、例1の場合、紫外線硬化型粘着性樹脂中のイオン性添加剤の含有量が紫外線硬化型粘着性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0075】
(例2)本実施形態に係る粘着性フィルム100において、粘着性樹脂層20が、イオン性添加剤を含有しない粘着性層20aと、帯電防止層20bと、凹凸吸収性樹脂層20cとを有する粘着性フィルム。
例2の場合、粘着性層20aの厚みが5.0μm以上30μm未満であることが好ましい。これにより粘着性樹脂層20の表面と帯電防止層20bとの距離を小さくすることができ、その結果、粘着性フィルム100の帯電防止性をより良好にすることができる。
【0076】
(例3)本実施形態に係る粘着性フィルム100において、粘着性樹脂層20が、イオン性添加剤を含有する粘着性層20aと、帯電防止層20bと、凹凸吸収性樹脂層20cとを有する粘着性フィルム。
例3の場合、粘着性層20aの厚みが5.0μm以上50μm以下であることが好ましく、粘着性フィルム100の帯電防止性をより良好にすることができる観点から、5.0μm以上30μm未満であることがより好ましい。また、例3の場合、紫外線硬化型粘着性樹脂中のイオン性添加剤の含有量が紫外線硬化型粘着性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
また、粘着性樹脂層20の表面と帯電防止層20bとの距離が比較的大きい場合、粘着性層20aおよび凹凸吸収性樹脂層20cの両方にイオン性添加剤を配合することが好ましい。なお、粘着性層20aの厚みが30μm未満と薄い場合でも、粘着性層20aおよび凹凸吸収性樹脂層20cの両方にイオン性添加剤を配合してもよい。
【0077】
ただし、本実施形態における粘着性フィルム100は、上記2つの条件に係る各種因子を高度に制御することを前提に、たとえば、製造装置の温度設定等の具体的な製造条件は種々のものを採用することができる。言い換えれば、本実施形態における粘着性フィルム100は、上記2つの条件に係る各種因子を高度に制御すること以外の点については、公知の方法を採用して作製することが可能である。以下、上記2つの条件に係る各種因子を高度に制御していることを前提に、粘着性フィルム100の製造方法の一例を説明する。
【0078】
まず、基材層10の一方の面に凹凸吸収性樹脂層20cを押出しラミネート法によって形成する。次いで、別途用意した離型フィルム上に所定の導電性材料を塗布し乾燥させることによって、帯電防止層20bを形成し、この帯電防止層20bを凹凸吸収性樹脂層20c上に積層する。次いで、帯電防止層20b上に粘着剤塗布液を塗布し乾燥させることによって、粘着性層20aを形成し、粘着性フィルム100が得られる。
また、基材層10と凹凸吸収性樹脂層20cとは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の基材層10とフィルム状の凹凸吸収性樹脂層20cとをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0079】
次に、本実施形態に係る半導体ウェハ加工用粘着性フィルム100を用いた半導体ウェハの裏面研削方法(バックグラインドとも呼ぶ。)の一例について説明する。本実施形態に係る半導体ウェハの裏面研削方法は、半導体ウェハの裏面を研削する際に、本実施形態に係る半導体ウェハ加工用粘着性フィルム100をバックグラインドテープとして用いることに特徴がある。
【0080】
まず、粘着性フィルム100の粘着性樹脂層20から離型フィルムを剥離し、粘着性樹脂層20の表面を露出させ、その粘着性樹脂層20上に、半導体ウェハの回路形成面を貼り付ける。次いで、研削機のチャックテーブル等に粘着性フィルム100の基材層10を介して半導体ウェハを固定し、半導体ウェハの裏面(回路非形成面)を研削する。研削が終了した後、粘着性フィルム100は剥離される。半導体ウェハの裏面の研削が完了した後、粘着性フィルム100を剥離する前にケミカルエッチング工程を経ることもある。また、必要に応じて粘着性フィルム100の剥離後に、半導体ウェハ表面に対して、水洗、プラズマ洗浄等の処理が施される。
【0081】
このような裏面研削操作において、半導体ウェハは、研削前の厚みが、通常500〜1000μmであるのに対して、半導体チップの種類等に応じ、通常100〜600μm程度まで研削される。必要に応じて、100μmより薄く削ることもある。研削する前の半導体ウェハの厚みは、半導体ウェハの直径、種類等により適宜決められ、研削後のウェハの厚みは、得られるチップのサイズ、回路の種類等により適宜決められる。
【0082】
粘着性フィルム100に半導体ウェハを貼り付ける操作は、人手により行われる場合もあるが、一般に、ロール状の粘着フィルムを取り付けた自動貼り機と称される装置によって行われる。
【0083】
裏面研削方式としては、スルーフィード方式、インフィード方式等の公知の研削方式が採用される。それぞれ研削は、水を半導体ウェハと砥石にかけて冷却しながら行われる。裏面研削終了後、必要に応じてケミカルエッチングが行われる。ケミカルエッチングは、弗化水素酸、硝酸、硫酸、酢酸等の単独若しくは混合液からなる酸性水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液からなる群から選ばれたエッチング液に、粘着性フィルム100を貼着した状態で半導体ウェハを浸漬する等の方法により行われる。該エッチングは、半導体ウェハ裏面に生じた歪の除去、ウェハのさらなる薄層化、酸化膜等の除去、電極を裏面に形成する際の前処理等を目的として行われる。エッチング液は、上記の目的に応じて適宜選択される。
【0084】
裏面研削、ケミカルエッチング終了後、粘着性フィルム100は半導体ウェハ表面から剥離される。この一連の操作は、人手により行われる場合もあるが、一般には自動剥がし機と称される装置により行われる。
【0085】
粘着性フィルム100を剥離した後の半導体ウェハ表面は、必要に応じて洗浄される。洗浄方法としては、水洗浄、溶剤洗浄等の湿式洗浄、プラズマ洗浄等の乾式洗浄等が挙げられる。湿式洗浄の場合、超音波洗浄を併用してもよい。これらの洗浄方法は、半導体ウェハ表面の汚染状況により適宜選択される。
【0086】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0088】
粘着性フィルムの作製に用いた材料の詳細は以下の通りである。
【0089】
<基材層>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)
【0090】
<凹凸吸収性樹脂層形成用の樹脂>
凹凸吸収性樹脂1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(密度:960kg/m、三井デュポンポリケミカル社製「エバフレックスEV150」)
【0091】
<帯電防止層形成用の材料>
帯電防止層形成用材料1:ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を含む導電性材料(ナガセケムテックス社製、商品名:デナトロンP−504CT)
【0092】
<イオン性添加剤>
イオン性添加剤1:テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(日油社製、商品名:ニッサンカチオンM−100)
【0093】
<光開始剤>
光開始剤1:ベンジルジメチルケタール(BASF社製、商品名:イルガキュア651)
【0094】
<粘着層用塗布液1>
アクリル酸n−ブチル77質量部、メタクリル酸メチル16質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル16質量部、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5質量部を混合した。これを、トルエン20質量部、酢酸エチル80質量部が入った窒素置換フラスコ中に、撹拌しながら85℃で5時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌して反応させた。反応終了後、この溶液を冷却し、これにトルエン10質量部、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製、製品名:カレンズMOI)7質量部、およびジラウリル酸ジブチル錫0.02質量部を加え、空気を吹き込みながら85℃で12時間反応させ、重合性炭素−炭素二重結合が導入された粘着剤ポリマー1溶液を得た。
この溶液に、共重合体(固形分)100質量部に対して光開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASF(株)製、イルガキュア651)7質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名:オレスターP49−75S)2質量部、1分子内に重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM−400)12質量部、イオン性添加剤1:テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(日油(株)製、カチオンM−100)0.5質量部を添加し、粘着層用塗布液1を得た。
【0095】
<粘着層用塗布液2>
イオン性添加剤1を添加しない以外は粘着層用塗布液1と同様にして粘着層用塗布液2を得た。
【0096】
<粘着層用塗布液3>
アクリル酸エチル48質量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル27質量部、アクリル酸メチル20質量部、メタクリル酸グリシジル5質量部、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5質量部を混合した。これを、トルエン65質量部、酢酸エチル50質量部が入った窒素置換フラスコ中に、撹拌しながら80℃で5時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌して反応させた。反応終了後、この溶液を冷却し、これにキシレン25質量部、アクリル酸2.5質量部、およびイオン性添加剤1:テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド0.5質量部を加え、空気を吹き込みながら85℃で32時間反応させ、重合性炭素−炭素二重結合が導入された粘着剤ポリマー3溶液を得た。
この溶液に、共重合体(固形分)100質量部に対して光開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASF(株)製、イルガキュア651)7質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名:オレスターP49−75S)2質量部、1分子内に重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM−400)12質量部を添加し、粘着層用塗布液3を得た。
【0097】
[実施例1]
基材層となるポリエチレンテレフタレートフィルム上に、凹凸吸収性樹脂層となる凹凸吸収性樹脂1を厚さ195μmで押出しラミネートして2層の積層フィルムを得た。
次いで、得られた積層フィルムの凹凸吸収性樹脂層に、粘着層用塗布液1を塗布した後、乾燥させて、厚み10μmの粘着性層を形成し、粘着性フィルムを得た。
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0098】
[実施例2]
基材層となるポリエチレンテレフタレートフィルム上に、凹凸吸収性樹脂層となる凹凸吸収性樹脂1を厚さ195μmで押出しラミネートして2層の積層フィルムを得た。
次いで、別途用意した離型フィルム上に帯電防止層形成用材料1を塗布し乾燥させることによって、帯電防止膜を形成し、この帯電防止膜を凹凸吸収性樹脂層上に積層することにより、厚さ0.1μmの帯電防止層を形成した。
次いで、得られた積層フィルムの帯電防止層上に、粘着層用塗布液2を塗布した後、乾燥させて、厚み10μmの粘着性層を形成し、粘着性フィルムを得た。
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0099】
[実施例3]
基材層となるポリエチレンテレフタレートフィルム上に、凹凸吸収性樹脂層となる凹凸吸収性樹脂1を厚さ195μmで押出しラミネートして2層の積層フィルムを得た。
次いで、別途用意した離型フィルム上に帯電防止層形成用材料1を塗布し乾燥させることによって、帯電防止膜を形成し、この帯電防止膜を凹凸吸収性樹脂層上に積層することにより、厚さ0.1μmの帯電防止層を形成した。
次いで、得られた積層フィルムの帯電防止層上に、粘着層用塗布液1を塗布した後、乾燥させて、厚み10μmの粘着性層を形成し、粘着性フィルムを得た。
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0100】
[実施例4]
粘着層用塗布液1を粘着層用塗布液3に変更し、かつ、粘着性層の厚みを40μmにした以外は実施例3と同様にして粘着性フィルムを得た。
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0101】
[実施例5]
粘着層用塗布液3を粘着層用塗布液1に変更した以外は実施例4と同様にして粘着性フィルムを得た。
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0102】
[比較例1]
粘着層用塗布液1を粘着層用塗布液2にした以外は実施例1と同様にして粘着性フィルムを得た。
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0103】
[比較例2]
帯電防止層を形成しない以外は実施例4と同様にして粘着性フィルムを得た。
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0104】
<評価>
(1)飽和帯電圧の測定
粘着性フィルム中の粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製UVX−02528S1AJA02)を用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量1080mJ/cm照射して粘着性樹脂層を光硬化させた。次いで、測定装置としてシシド静電気社製スタティックオネストメーターH−0110−S4を用いて、印加電圧10kV、試料と電極との距離20mm、25℃、50%RHの条件下で粘着性樹脂層の表面に電圧の印加を30秒おこない、JIS L1094に準じて粘着性樹脂層の表面の飽和帯電圧(V)および飽和帯電圧Vの半減期をそれぞれ算出した。
また、紫外線量を200〜540mJ/cmに変更する以外は、上記飽和帯電圧(V)の測定と同じ手順で、粘着性樹脂層の表面の飽和帯電圧および飽和帯電圧の半減期をそれぞれ測定した。
【0105】
(2)タック力の測定
粘着性フィルム中の粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cmで紫外線量1080mJ/cm照射して粘着性樹脂層を光硬化させた。次いで、測定装置としてプローブタックテスター(「TESTING MACHINES Inc.社製プローブタックテスター:モデル80−02−01」)を用いて、直径5mmのプローブと粘着性樹脂層の表面とを10mm/秒の速度で接触させ、0.98N/cmの接触荷重で10秒間接触させた後、10mm/秒の速度でプローブを粘着性樹脂層の表面から垂直方向に剥離する方法で粘着性樹脂層の表面のタック力を測定した。
また、紫外線量を200〜360mJ/cmに変更する以外は、上記タック力の測定と同じ手順で、粘着性樹脂層の表面のタック力をそれぞれ測定した。
【0106】
(3)帯電防止性の評価
粘着性フィルムの帯電防止性は以下の基準で評価した。
〇:飽和帯電圧Vが2.0kV以下で、かつ、飽和帯電圧Vの半減期が100秒以下であるもの
×:飽和帯電圧Vが2.0kVを超えるか、あるいは飽和帯電圧Vの半減期が100秒を超えるもの
【0107】
(4)半導体ウェハ表面への粘着性の評価
半導体ウェハ表面への粘着性は以下の基準で評価した。
〇:紫外線を照射しなかった粘着性樹脂層(すなわち、紫外線量が0mJ/cmのもの)のタック力が10N/cm以上
×:紫外線量を照射しなかった粘着性樹脂層のタック力が10N/cm未満
【0108】
(5)半導体ウェハ表面への耐汚染性の評価
半導体ウェハ表面への耐汚染性は以下の基準で評価した。
〇:紫外線量1080mJ/cm照射で光硬化させた粘着性樹脂層のタック力が0.1N/cm以下
×:紫外線量1080mJ/cm照射で光硬化させた粘着性樹脂層のタック力が0.1N/cmを超える
【0109】
【表1】
【0110】
紫外線硬化後の粘着性樹脂層表面の飽和帯電圧Vが2.0kV以下である実施例1〜5の粘着性フィルムは半導体ウェハ表面への粘着性と耐汚染性とのバランスに優れるとともに、帯電防止性にも優れていた。すなわち、本実施形態に係る半導体ウェハ加工用粘着性フィルム100によれば、半導体ウェハから剥離する際に発生する静電気の量を抑制でき、品質に優れた半導体部品を安定的に得ることができることが理解できる。
これに対し、紫外線硬化後の粘着性樹脂層表面の飽和帯電圧Vが2.0kVを超える比較例1〜2の粘着性フィルムは半導体ウェハ表面への粘着性と耐汚染性とのバランスには優れていたが、帯電防止性が劣っていた。
【0111】
この出願は、2016年3月31日に出願された日本出願特願2016−070945号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3