(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6703630
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20200525BHJP
C22C 38/54 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
C22C38/00 301B
C22C38/54
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-20495(P2019-20495)
(22)【出願日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年3月1日
(31)【優先権主張番号】201811462079.4
(32)【優先日】2018年11月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】507393540
【氏名又は名称】武▲漢▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 学
(72)【発明者】
【氏名】李 勇
(72)【発明者】
【氏名】李 健
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲華▼春
(72)【発明者】
【氏名】敬 仕▲ユイ▼
(72)【発明者】
【氏名】夏 彩▲イン▼
【審査官】
鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−144837(JP,A)
【文献】
特開2001−131682(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101660102(CN,A)
【文献】
特開2001−073066(JP,A)
【文献】
米国特許第05573605(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 − 38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C:0.04〜0.11%、
Si:0.50%以下、
Mn:0.10〜0.60%、
P:0.03%以下、
S:0.01%以下、
Ni:0.40%以下、
Cr:1.90〜2.60%、
V:0.20〜0.30%、
Nb:0.02〜0.08%、
Mo:0.05〜0.30%、
W:1.45〜1.75%、
Ti:0.01〜0.06%、
B:0.001〜0.012%、
Al:0.03%以下、
N:0.01%以下を含み、
C含有量とB含有量が下記の(1)式を満足し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼。
[%B]>−1.2×[%C]2+0.30×[%C]−0.01・・・・(1)
【請求項2】
さらに、前記耐熱鋼におけるC含有量は0.04〜0.08%であることを特徴とする前記請求項1に記載の耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼。
【請求項3】
さらに、前記耐熱鋼におけるB含有量は0.004〜0.01%であることを特徴とする前記請求項1に記載の耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼。
【請求項4】
さらに、前記耐熱鋼におけるB含有量は0.006〜0.01%であることを特徴とする前記請求項1に記載の耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼。
【請求項5】
さらに、前記耐熱鋼におけるC含有量とB含有量が下記の(2)式を満足することを特徴とする前記請求項1に記載の耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼。
[%B]>−1.4×[%C]2+0.35×[%C]−0.0115・・・・(2)
【請求項6】
さらに、前記耐熱鋼にB含有量は0.004〜0.01%はであることを特徴とする前記請求項2に記載の耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼。
【請求項7】
さらに、前記耐熱鋼におけるB含有量は0.004〜0.008%はであることを特徴とする前記請求項2に記載の耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼。
【請求項8】
さらに、前記耐熱鋼におけるC含有量は0.04〜0.08%であり、C含有量とB含有量が下記の(2)式を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする前記請求項1に記載の耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼。
[%B]>−1.4×[%C]2+0.35×[%C]−0.0115・・・・(2)
【請求項9】
さらに、前記耐熱鋼におけるB含有量は0.004〜0.01%であることを特徴とする前記請求項8に記載の耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼。
【請求項10】
さらに、前記耐熱鋼におけるB含有量は0.006〜0.01%であることを特徴とする前記請求項8に記載の耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱鋼に関する。具体的に高強度、低合金耐熱鋼に関し、耐再熱割れ性(reheat cracking)性に優れ、溶接後の熱処理又は高温条件下で、粗粒熱影響部(coarse grain heat affected zone)に発生する粒界割れ感受性が低い。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電による環境汚染を減すために、効果的でクリーンな超(超)臨界火力発電ユニットの開発は必要である。現在、主に蒸気の温度と圧力を上げることにより、火力発電所の効率を向上させる。そのためには材料の耐高温高圧性能に対する要求が高まり、ボイラパラメータ改善のニーズを満たすために、高強度グレードの耐熱鋼の開発が求められる。
【0003】
現在、ボイラー鋼の開発には2つの方向があり、一つはフェライト耐熱鋼で、もう一つはオーステナイト系耐熱鋼である。オーステナイト系耐熱鋼と比べて、フェライト耐熱鋼は、低コスト、低熱膨張率で、熱伝導率、耐熱疲労性に優れるなどの利点を有するため、超(超)臨界火力発電ユニットで広く使用されている。フェライト耐熱鋼の開発は主に2のメインラインに分けられる。一つは、主に耐熱合金元素におけるCrの含有量を徐々に上げ、適切な熱処理の後、安定した焼戻しマルテンサイト系組織を形成する。例えば、T/P91、T/P92、T/P122、E911など、Cr含有量が9〜12%である中耐熱鋼が挙げられる。もう一つは、低Cr含有量を維持し、V、Nb、Mo、Wなどの合金元素を添加し、適切な熱処理後に安定したベイナイト系組織を形成し、例えば、T/P23、T/P24などCr含有量が2.25%である新型低合金耐熱鋼である。フェライト耐熱鋼の開発の一つとして、新型低合金ベイナイト系耐熱鋼の高温クリープ強度は、伝統的な低合金耐熱鋼と比べて大幅に向上している。例えば、日本住友商事と三菱重工業が開発したW含有2.25Cr−1.6WVNb鋼(T23)、ドイツVallourec & Mannesmann Tubesが開発したMo含有2.25Cr−1MoVTi鋼(T24)が挙げられ、600℃のクリープ破断強度は、従来の2.25Cr−1Mo鋼(T22)の1.8倍に達し、T/P91鋼に近い。新型低合金耐熱鋼はまた、炭素含有量を削減したため、溶接性も大幅に向上している。超(超)臨界ボイラー水壁(water wall)、過熱器や再熱器などの部品の製造に好適である。ヘッダー、主蒸気管など、大口径厚肉パイプの製造にも使用可能である。
【0004】
しかしながら、近年、T23などの新型低合金耐熱鋼は顕著な再熱割れ傾向を有し、再熱割れに起因する多くの漏洩事故を起こしてしまい、装置の安全・安定な運転を妨害し、巨大な経済的損失をもたらした。再熱割れとは、金属材の溶接継手部が、溶接後の熱処理又は高温条件下で、応力解放により粗粒熱影響部(CGHAZ)で発生した粒界割れを指す。溶接後の熱処理割れまたは応力除去割れとしても知られる。溶接状態のT23及びT24鋼の熱影響部硬さは、350HV以下に控えることができる。小径パイプ(肉厚δ≦10mm)を溶接する場合、溶接後の熱処理をしないでも冷間割れ(Cold crack)も発生しない。ただし、高温条件下では、依然として再熱割れが発生する可能性がある。顕著な再熱割れ傾向は、T23やT24などの新型低合金耐熱鋼の使用を制限するボトルネックの問題となっている。
【0005】
Cr−Mo、Cr−Mo−Vなどの低合金鋼は再熱割れ傾向を有する関連研究は、前世紀の60年代から報告されてきた。低合金耐熱鋼再熱割れのメカニズムに関して広く研究されており、耐再熱割れ性を有する様々な低合金耐熱鋼が開発されている。従来技術には下記の技術が挙げられる。優れた耐クリープ脆化(creep embrittlement)及び耐再熱割れ性を有する高温高圧容器用鋼であって、Cr、V、Bなどが再熱割れへの悪影響を抑制するためにCa、Mg及び希土類元素を添加する。S、Al、Caの含有量を制御することにより、優れた耐再熱割れ性を付与するCr−Mo鋼がある。あるフェライト−ボイラー鋼は、抵抗溶接によって、溶接シームが優れた耐再熱割れ性能を有する。一種の特殊な強度、靭性、耐冷間割れ性、再熱割れ性に優れたCr−Mo鋼板がある。上記鋼はいずれも伝統的な低合金耐熱鋼であり、圧力容器または低パラメータを有する亜臨界及び臨界火力発電ユニットに応用できる。しかし、超(超)臨界ユニット用新型低合金耐熱鋼T23に対して、Cr含有量が高く、W、V、Nb及びTiの析出強化元素を追加したため、再熱割れ傾向はより深刻である。W含有Cr−Mo型低合金耐熱鋼について、「耐熱鋼」が開示されており、%N≦%Ti+5(%B)+0.004との関係を満たし、かつ、平均粒子径が110μmより小さいとき、再熱割れを防止できる。しかし、近年では、上記の関係を満たすT23鋼が依然として顕著な再熱割れ感受性を有することが見出された。研究によれば、このような多成分(multi−compound)強化新型低合金耐熱鋼の再熱割れの発生メカニズムは伝統的な低合金耐熱鋼と異なり、「耐熱鋼」中に記載したNが粒界で偏析するによるものではない。
【0006】
また、ほかのいくつかの再熱割れ防止の方法又は措置が提案されている。例えば、従来技術において、具体的に溶接前又は溶接後冷却前、溶接シーム隣接エリアの局部を、400℃以上の温度(好ましくは600℃)に加熱する溶接シーム再熱割れの除去方法がある。再熱割れを防ぐために、予め表面に再熱割れ防止溶接ビードを設置しておき、すべての溶接ビードを完了したら、固定溶接を一回実行する。しかも、溶接止端部(weld toe)に生じたノッチによるノッチ感受性を防止できる。熱影響部を大きな冷却速度で冷却し、マルテンサイトの含有量を80%以上にさせることにより、焼鈍工程中において熱影響部を軟化し易くさせることにより、再加熱割れの発生を防止する。溶接すべきチューブソケット・フィレット(tubesocket fillet)、溶接止端部に対して多層盛溶接する(multi−pass weld)ことにより、チューブソケット・フィレットの再熱割れを防止する方法であって、ヘッダーのチューブソケット・フィレットの再熱割れを効果的に防止できる。スポット溶接板材の継手の再熱割れを解消する方法であって、主に、溶接後の熱処理前に金型による継手溶接部及びその周辺エリアに対して球面プレスによって残留応力を除去することであり、球面プレスは、金型とスポット溶接継手との接触面が球面又は球面に近い曲面であることをいう。さらに、予熱温度を向上させ、多層溶接ビード又は焼戻し溶接ビードを採用し、または中間処理を増やすなどの方式で再熱割れを抑制する過酷な溶接プロセスを取ることも提案されている。しかしながら、これらのプロセスは、工程、労働強度、生産コストを大幅に増加させる一方、再熱割れの効果も満足できず、課題を根本から解決していない。
【0007】
この問題を解決するために、本発明は、耐再熱割れ性新型W含有低合金耐熱鋼を提供し、T23鋼の優れた高温クリープ強度を保持するとともに、その粗粒熱影響部は耐再熱割れ性を有し、500〜750℃の範囲内に、溶接後の熱処理又は使用中において、再熱割れに対して感受性が低い。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、従来技術に存在する問題を解決するために、下記の発明を提出する。
質量%でC:0.04〜0.11%、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜0.60%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:0.40%以下、Cr:1.90〜2.60%、V:0.20〜0.30%、Nb:0.02〜0.08%、Mo:0.05〜0.30%、W:1.45〜1.75%、Ti:0.01〜0.06%、B:0.001〜0.012%、Al:0.03%以下、N:0.01%以下を含み、CとB含有量が下記の(1)式を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼である。
[%B]>−1.2×[%C]
2+0.30×[%C]−0.01・・・・(1)
【0009】
さらに、前記耐熱鋼におけるC含有量は0.04〜0.08%であり、前記耐熱鋼におけるB含有量は0.004〜0.01%である。
【0010】
さらに、前記耐熱鋼におけるC含有量は0.04〜0.08%であり、前記耐熱鋼におけるB含有量は0.004〜0.008%である。
【0011】
さらに、前記耐熱鋼におけるB含有量は0.004〜0.012%である。
【0012】
さらに、前記耐熱鋼におけるB含有量は0.006〜0.010%である。
【0013】
さらに前記耐熱鋼におけるCとB含有量が下記の(2)式を満足する。
[%B]>−1.4×[%C]
2+0.35×[%C]−0.0115・・・・(2)
【0014】
質量%でC:0.04〜0.08%、Si:0.50%以下、Mn:0.10−0.60%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:0.40%以下、Cr:1.90〜2.60%、V:0.20〜0.30%、Nb:0.02〜0.08%、Mo:0.05〜0.30%、W:1.45〜1.75%、Ti:0.01〜0.06%、B:0.001〜0.012%、Al:0.03%以下、N:0.01%以下を含み、CとB含有量が下記の(2)式を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼である。
[%B]>−1.4×[%C]
2+0.35×[%C]−0.0115・・・・(2)
【0015】
さらに、前記耐熱鋼におけるB含有量は0.004〜0.01%である。
【0016】
さらに、前記耐熱鋼におけるB含有量は0.006〜0.01%である。
【0017】
次に本発明の鋼における各化学成分の作用とその限定理由を述べる。化学成分の%は、質量%を意味する。
【0018】
<C:0.04〜0.11%>
Cは製鋼時、炭化物を形成し、高温強度を高めるのに寄与する元素である。なお、また焼入れ性の向上やフェライトの生成防止にも役立つ。従って、C含有量は、少なくとも0.04%でなければなりない。しかしながら、Cが多すぎると溶接熱影響部の硬さが増し、冷間割れ、特に再熱割れに対する感受性を増大させる。なお、C含有量の高い鋼は、高温で長時間使用されると脆化する。これらの理由から、C含有量の上限は0.11%とする。さらに望ましい上限は0.04〜0.08%である。
【0019】
<Si:0.50%以下>
Siは、製鋼時に脱酸元素として添加されるが、鋼の耐酸化性、耐高温腐食性の改善にも有効な元素である。しかし、Siを過剰に含有すると、高温での長時間使用時にクリープ塑性及び靱性の低下を招く。そのため、Si含有量の上限は0.50%とする。下限は不可避的不純物のレベルでもよいが、脱酸の効果を確保するためには、0.10〜0.30%が望ましい。
【0020】
<Mn:0.10〜0.60%>
Mnは、Siと同様に脱酸元素として添加される。しかし、過剰に含有するとクリープ脆化及び靱性の低下を招く。そのため、Mn含有量は0.60%以下とするが、脱酸元素効果を確保するために望ましいのは0.20〜0.50%である。
【0021】
<P:0.03%以下>
Pは、鋼中に残存する不可避的不純物元素であり、多量に含有すると再熱割れを発生させる。そのため、P含有量は0.03%以下とする。Pは低いほど望ましいので下限は特に設けないが、極度の低減はコスト増を招くため、0001〜0.01%であるのがこのましい。
【0022】
<S:0.01%以下>
Sは、Pと同様、鋼中に残存する不可避的不純物元素であり、CGHAZ(溶接熱影響部,溶接HAZ)で偏析しやすく、再熱割れを招く。そのため、S含有量は0.01%以下とする。Sも低いほど望ましいので下限は特に設けないが、Pと同様に極度の低減はコスト増を招くため、0.002〜0.006%であるのが好ましい。
【0023】
<Ni:0.4%以下>
Niは、オーステナイト系生成元素であり、δフェライト相の生成を抑え、組織の安定性を確保する。しかし、Niを過剰に含有すれば、高温での使用中に塑性を低下させるため、Ni含有量の0.4%以下とする。
【0024】
<Cr:1.90〜2.60%>
Crは、高温での耐酸化性、耐高温腐食性及び高温強度を確保するために必須の元素である。しかし、過剰の添加は炭化物の粗大化を招き、かえって高温強度を低下させるとともに、靱性の低下を招く。そのため、Cr含有量は、1.90〜2.60%とする。
【0025】
<V:0.20〜0.30%>
Vは、鋼中で微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度を高めるのに寄与する。しかし、過剰のVの添加は、炭化物成長速度の増大、急速な炭化物の凝集、粗大化を招き、分散強化が急速に消えて、かつ靱性の低下を招く。また、Vの過剰添加は、溶接後の熱処理時の結晶内の炭窒化物の析出密度を増大させ、再熱割れ感受性を増加する。そのため、V含有量は0.20〜0.30%とする。
【0026】
<Nb:0.02〜0.08%>
Nbは、鋼中で微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度を高めるのに寄与する元素である。そのためには、0.02%以上の添加が必要である。しかし、過剰のNb添加は炭化物成長速度を向上させ、急速な炭化物の凝集、粗大化を招き、分散強化が急速に消えてかつの低下を招く。そのため、Nb含有量は、0.02〜0.08%とする。
【0027】
<Mo:0.05〜0.35%>
Moは、マトリックスの固溶強化作用を増加するとともに、炭化物となって析出し、クリープ強度を高めるのに寄与する元素である。また、Pとの親和性が強く、粒界に偏析するP量を低減させるため、再熱割れ感受性の低減に寄与する。少なくとも0.05%以上の含有が必要である。しかし、過剰の添加は、長時間の使用後には靱性を低下させるので、その上限は0.35%とする。
【0028】
<W:1.45〜1.75%>
Wは、Moと同様に鋼のマトリックスを固溶強化するとともに炭化物を生成し、クリープ強度を高めるのに寄与する元素である。その効果を得るためには、少なくとも1.45%以上含有させる必要がある。その反面、過剰の添加は、使用中の粗い金属間化合物を生成し、靱性の低下を招くため、その上限は1.75%とする。
【0029】
<Ti:0.01〜0.06%>
Tiを添加することにより、Nを固定し、NとBの結合を防止することができる。この点で、焼入れ性(hardenability)が向上し、フェライトの出現により、室温で引張強さを減らして下さい、室温引張強度の低下を防止する一方、高温での粒界強度と塑性を増強する。しかし、Ti含有量が多すぎると強度及び靭性が低下し、再熱割れ感受性も上昇する。このため、Ti含有量の範囲は0.01〜0.06%である。
【0030】
<B:0.001〜0.012%>
Bは、クリープ強度及びクリープ破断塑性を向上させることができる。さらに、溶接後の熱処理中に、CGHAZ粒界でのB偏析は、粒界塑性を増大させ、炭化物の析出成長及び粗大化を抑制し、粒界が弱くなるのを防ぎ、再熱割れ感受性を低下させる。その効果を得るためには、B含有量及びC含有量は、[%B]>−1.2×[%C]
2+0.30×[%C]−0.01を満たさなければならない。好ましくは、B含有量及びC含有量が、[%B]−1.4×[%C]
2+0.35×[%C]−0.0115を満たせば、よりよい耐再熱分解性能を達成する。過剰なB含有量は鋼の熱間加工性を著しく劣化させ、また焼戻し脆性を引き起こす可能性がある。総合的に考慮すると、B元素の含有量は、好ましくは0.001〜0.012%、より好ましくは0.004〜0.010%、更に好ましくは0.006〜0.010%である。
【0031】
<Al:0.03%以下>
Alは、脱酸剤として添加される元素である。しかし、過剰の添加はクリープ塑性及び靱性の低下を招くため、Alの上限は0.03%とする。
【0032】
<N:0.01%以下>
Nがマトリックスに固溶すれば、靱性とクリープ強度を妨害する。また、過剰のNはBと多量の化合物を形成し、Bの役割の発揮に不利である。Nの含有量は0.01%以下とする。
本発明は下記の利点を有する。
【0033】
C元素とB元素の含有量のみを調整することによって、低合金耐熱鋼の再熱割れを抑制する目的を達成することができ、耐再熱割れ性W含有高強度低合金耐熱鋼を提供する。過酷な溶接工程などにより再熱割れを防止する方式と比べて、再熱割れ感受性課題を解決し、生産コストを増しておらず、結果はより信頼性がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は2.25Cr−1.6WVNbNB鋼におけるM
23C
6とMX型炭化物が炭素含有量との関係である。
【
図3】
図3はインプラント試験(Implant Test)と試験片の形状である。
【
図4】
図4は模擬熱サイクル曲線(heat cyclecurve)及び試験片の形状及び寸法である。
【
図5】
図5は本発明に係る耐熱鋼の実施例におけるB含有量とC含有量との関係を示すグラフである。そのうち、1:ベースプレート、2:インプラント、3:加荷(ローディング)の方向
【発明を実施するための形態】
【0035】
次は実施例に、添付の図面を参照しながら、本発明についてさらに具体的に説明される。
【0036】
本発明は耐再熱割れ性新型低合金耐熱鋼を提供することを目的とする。新型低合金耐熱鋼の優れた高温クリープ強度及び低い溶接冷間割れ感受性を維持するとともに耐再熱割れ性を大幅に向上させる。該鋼は超(超)臨界火力発電所で完全、安定に応用できる。
【0037】
化学成分は低合金耐熱鋼再熱割れ感受性への影響は最も大きい。C及びW、Mo、V、Nb、Tiなどの合金元素はいずれも再熱割れ傾向を増加するが、耐熱鋼に対して、W、Moがマトリックスに固溶し、固溶強化を提供し、V、Nb、Tiなどは微細分散炭窒化物を形成して析出強化を提供するため、材料高温クリープ強度を向上させるための重要な要素である。十分な高温クリープ強度を得るために、所定量の上記合金元素の追加は必要である。本発明者らは新型低合金耐熱鋼T23の再熱割れ発生メカニズムを研究するとき、精錬技術の開発とともに、新型耐熱鋼の不純物元素の含有量は低い範囲に控えることができることは、再熱割れ発生の主な要因ではなくなることを確認した。合金炭化物は、溶接後の熱処理過程における析出は再熱割れ的発生に顕著な影響を及ぼす。これは過去に強調されている不純物元素が伝統的な低合金耐熱鋼の粒界析出凝集、粒界弱化による再熱割れ発生という考えと異なり、それによって耐再熱割れ性新型低合金耐熱鋼の開発に新しいアイデアを提供する。
【0038】
本発明者はT23鋼CGHAZ再熱割れメカニズムを研究した上で下記のものを見出した。
(1)CGHAZの炭化物は溶接過程にほとんどはマトリックスに溶解し、溶接後の熱処理過程に、粒界にFe、Cr、W、Moなどの元素を含有するM
23C
6型炭化物を析出し、急速に成長し、粗大化し、粒界間の結合を低下させる。
(2)粗大化した粒M
23C
6型炭化物は短時間内に多量に析出すれば、近傍のマトリックス合金元素の希釈を招き、軟化エリアを形成し、応力の作用により、歪みを優先的にここに凝集する。
(3)インコヒーレント(incoherent、非整合)のM
23C
6型炭化物は粒界において、更にクリープキャビティの核生成(creep cavity nucleation)を促進し、粒界の弱化をさらに加速させる。
(4)短時間の溶接後の熱処理過程に、結晶内に析出した炭化物は主にM
23C
6及びM
7C
3であり、そのサイズはわりに小さく、所定の強化作用を有し、結晶内強度を向上させる。
(5)結晶内強度が高く、粒界が明らかに弱化され、溶接応力及び熱応力の作用により、粗粒部粒界が優先的に変形し、キャビティ(cavity)を形成し、凝集してクレイズ(craze)を形成し、最終的に拡張して粒界破壊(Intergranular fracture)を招く。
【0039】
Cr、W、Moなどの元素により形成した炭化物は該種類の耐熱鋼再熱割れへの影響が相対的に大きく、逆に、V、Nb、Tiなどの元素が再熱割れへの影響がわりに小さい。従って、再熱割れを抑制する観点から言えば、主にCGHAZ粒界及び結晶内のM
23C
6型炭化物の析出を制御することである。炭(C)はM
23C
6の形成の必需元素であり、鋼材の含炭量が高ければ高いほど、CGHAZは溶接後の熱処理過程において、より多くの炭(C)は炭化物を形成する。従って、炭含有量を制限することは、CGHAZ炭化物の析出量を制限することができる。
図1はThermo−calcソフトウェアで典型的なT23鋼において、M
23C
6及びMX炭化物含有量が炭素含有量に相応の変化を示した(そのうち、合金系の総量は1mol、計算時にM
6C相の形成は抑制され、準安定状態(Metastable Materials)の結果が得られる)。これから分かるように、MXとM
23C
6相の含有量はC含有量の増加と共に直線的に増加した。しかしながら、M
23C
6相の含有量の増幅は明らかにMX相より大きい。C含有量が0.02%を増加するごとに、1molの鋼におけるM
23C
6型炭化物は約0.003mol増加するのに対して、MX相は約0.0002モルだけ増加し、これは前者の1/10未満である。即ちC含有量を低減すれば、M
23C
6型炭化物の含有量を大幅に低減することができる。しかし、MX型炭化物への影響がわりに小さく、MX相は主な析出強化相であり、高温クリープ強度の維持にとって非常に重要であり、炭素(C)量を適切に制御することがそれに対する影響は小さく、依然として結晶中のMX相の強化効果を維持でき、高温クリープ強度を確保できる。従って、粒界炭化物の含有量を低減し、CGHAZ溶接後の熱処理過程に粒界弱化を低減する考えから、炭含有量を適切に制限することは好適である。
【0040】
さらに、粒界炭化物による粒界弱化は、そのサイズと分布に係る。粗炭化物はコヒーレンスを低下させ、しかも、粒界近くのマトリックス合金元素の深刻な希釈を引き起こし、粒界の弱化を激化させる。微細炭化物によるコヒーレンス性低下と元素希釈は比較的に軽い。T23鋼は再熱割れに対して感受性が極めて高いのは、そのCGHAZは溶接後の熱処理中に、粒界で析出したM
23C
6型炭化物は凝集粗大化しやすいからである。B元素は鋼において粒界空孔(vacancy)に偏析しやすく、不純物元素の偏析を抑制し、粒界の活性化エネルギーを低下させ、粒界を浄化し、粒界を強化し、粒界の可塑性を高める。BはまたM
23C
6相に入ることができ、より安定したM
23(C、B)
6相を形成し、粗大化を抑制する。Bの添加量は鋼中のC含有量に係る。C含有量が高いほど、M
23C
6相の凝集粗大化を抑制するために、より多くのBを添加する必要がある。従って、本発明の主な思想は、鋼のC含有量及びB含有量を制御することである。この設計は、溶接後の熱処理中において、粒界に析出するM
23C
6型炭化物の数及びサイズを減少させ、粒界塑性を増大させ、粒界強度と結晶内強度との間の差を減少させ、ひいて再熱割れの発生を抑制することができる。次はいくつかの実施例のデータから得られた
図5を採用して、C含有量に対して、鋼中に存在するB含有量と、再熱割れ発生との間の関係を示す。
図5において、横軸は、本発明又は比較例における鋼のC含有量を示し、縦軸は前記鋼におけるB含有量を表す。白丸(○)は再熱割れが発生していない鋼を示し、黒丸(●)は再熱割れが発生した鋼を示す。該図から確定できるように、前記C含有量[%C]とB含有量[%B]との関係が、以下の式を満たす場合、即ち、[%B]>−1.2×[%C]
2+0.30×[%C]−0.01・・・・(1)、
再熱割れを防ぐことができる。
【0041】
表1に示した化学組成を有する鋼を製造する(総量が最大0.04%であるSn、AS、Sb、Bi及びPbなどの不純物を含有する)。電気アーク炉及び二次精錬処理(external refining)を採用してかつ真空脱ガス処理を採用し、又はエレクトロスラグ再溶解法を採用してビレットが得られる。熱間鍛造で棒材を製造し、仕様は55mm×55mm×800mmである。穿孔と熱間圧延により様々な種類のパイプが製造される。チューブの外径は、38.1mmから63.5mmまでの複数のサイズを含む。肉厚は4.5mmから10mmまでの複数のサイズを含む。
【0042】
板材とパイプ材に対して焼ならしと焼戻し熱処理を施す。焼ならし温度(normalizing temperature)は1060℃であり、2時間保温する後に空中冷す(air cooling)。焼戻し温度は760℃であり、1時間保温する後、炉中冷却する(furnace cooling)。
図2に示すように、本発明の鋼のミクロ組織はフルベイナイト系である。
【0043】
試験片によって試験して、再熱割れ感受性を評価する。本発明は3つの方法を採用して再熱割れ感受性を評価する。即ち水壁(water wall)、ヘッダーチューブソケット上のT23管継手の溶接後熱処理試験、インプラント試験(Implant Test)及び模擬粗粒部短期間高温クリープ破断試験である。
【0044】
実際の継手溶接熱処理試験のプロセスは下記の通りである。実際の生産条件に基づいて鋼管を溶接し、溶接後、730±10℃、0.5時間の熱処理を行い、残留応力を除去する。熱処理後の継手に対して、磁性粒子及びX線で探傷(crack detection)し、継手表面及び内部にひび割れの有無を検出する。
【0045】
インプラント試験のプロセスは下記の通りである。
図3に示したインプラント2及び底板1の試験片を加工し、インプラント2を底板1の中心孔1に取り付け、底板に一つのビードを施す。溶接後のインプラント及び底板を24時間置いて、冷間割れの影響を排除する。のちに、それをインプラント試験機に取り付け、試験温度に加熱し、15分間保温し、次いで一定の初期応力をかけた。破裂時間(t
f)で再熱割れ感受性を判断する。t
f<24時間ととき感受性が高い;t
f>24時間のとき感受性が低い。破裂時間が短ければ短いほど、再熱割れ感受性が高い。
【0046】
短時間高温クリープ破断試験工程は、
図4に示す試験片を加工し、真ん中の10mmの範囲をゲージ長(Gauge Length)とし、熱シミュレータ上で粗晶部の溶接模擬試験を完了する。溶接シミュレーションの熱サイクル曲線が
図3に示したように、シミュレート溶接のプロセスは、TIG溶接、100℃で予熱、入熱は25kJ/cm。冷却後、試験片を温度500〜750℃に加熱し、5秒間の保温後、破断するまで0.5mm/minという一定のひずみ速度で引き伸ばして、破断後の断面収縮率を測定した。破断試験片の断面収縮率(Z)の大きさに基づいて、普通、下記の基準に従って材料の再熱割れ感受性の大きさを判断する。
【0047】
1)感受性が極めて高い:Z<5%
2)感受性が高い:5%<Z<10%
3)わずかな感受性を有する:10%<Z<20%
4)感受性が低い:Z>20%
【0048】
本発明において、全ての試験温度おいて、Zが20%以上であれば割れるが、ほかの場合は割れである。表1(表1−1、表1−2)は実施例の鋼の化学成分(重量%)である。
【表1-1】
【表1-2】
【0049】
用意した鋼では、1〜13#は比較例であり、その成分は殆どT23の規定範囲に入る。B及びC含有量は[%B]>[%B]>−1.2×[%C]
2+0.30×[%C]−0.01の関係を満足していない。
図2から分かるように、1〜3#はパイプ継手溶接後の熱処理に割れてしまう。4−6#はインプラント試験によって評価すると、広い熱処理温度範囲内で再熱割れ感受性が高い。7−9#はインプラント試験及び模擬粗粒部短期間クリープ破断試験によって評価する。広い熱処理温度範囲内で再熱割れ感受性が高い。10#はパイプ継手溶接後の熱処理で割れてしまい、かつ模擬粗粒部短期間クリープ破断試験によって評価すると、550〜750℃で再熱割れ感受性が高い。11〜13#は模擬粗粒部短期間クリープ破断試験によって評価すると、所定の熱処理温度範囲で、いずれも再熱割れ感受性が高い。上記3種の試験法でこれらの鋼が高い再熱割れ感受性の傾向を有すると評価する。溶接後の熱処理又は使用過程で粗粒部に再熱割れが発生しやすく、耐再熱割れ性能に劣る。
【0050】
14〜32#は、本発明に基づいて設計された鋼であり、その組成は[%B]>−1.2×[%C]
2+0.30×[%C]−0.01の関係を満足している。14〜16#は実際の継手溶接後の熱処理試験過程において割れが生じなかった。非破壊検査により、継手の表面層及び内部にも割れが見つからない。17〜18#は実際の継手が溶接後の熱処理試験中に割れておらず、非破壊検査で判明したように、継手の表面層及び内部に割れは生じなかった。インプラント試験を採用して評価すると、広い熱処理温度範囲(500〜750℃)内で再熱割れに対する感受性が低い。19−20#はンプラント試験を採用して評価すると、500〜750℃の温度範囲内で再熱割れに対する感受性が低い。21−32#は模擬粗粒部短期間クリープ破断試験を採用して評価すると、500〜750℃の温度範囲内で再熱割れに感受性が低い。これは、成分が本発明の鋼が粗粒部の再熱割れ感受性が低く、溶接後の熱処理又は使用過程で、粗粒部の再熱割れは発生せず、耐再熱割れ性に優れていることを表す。
【0051】
試験材料は棒材とさまざまなパイプ材で構成されている。
鋼の組成が[%B]>−1.2×[%C]
2+0.30×[%C]−0.01の関係を満たす限り、耐再熱割れ性に優れる。満足しない場合、耐再熱割れ性に劣る。本発明は、材料成形方法に影響されていないことが明白である。表2は鋼の再熱割れ評価試験結果である。
【表2】
【0052】
本発明の保護範囲は上記実施形態に限定されず、本発明の範囲及び精神から逸脱しない限り、当業者は本発明に対する様々な修正及び変形を行うことができる。そのような修正及び変形が本発明の特許請求の範囲内及びその同等の技術の範囲内に入る限り、本発明の意図もそのような修正及び変形に含まれている。
【要約】 (修正有)
【課題】耐再熱割れ性に優れ、溶接後の粒界割れ感受性が低い、高強度低合金耐熱鋼の提供。
【解決手段】化学成分は質量%で:C:0.04〜0.11%、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜0.60%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:0.40%以下、Cr:1.90〜2.60%、V:0.20〜0.30%、Nb:0.02〜0.08%、Mo:0.05〜0.30%、W:1.45〜1.75%、Ti:0.01〜0.06%、B:0.001〜0.012%、Al:0.03%以下、N:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。本発明の耐熱鋼は優れた耐再熱割れ性を持ち、超(超)臨界火力発電ユニット、高温部品に応用できる。
【選択図】
図1