(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の原理の理解を促進するために、次に、図面に例示された実施形態を参照し、特定の言語を使用して、これを説明しよう。しかしながら、これによって本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるだろう。
【0011】
注射器がシリコーン処理された後、注射器はかなりの期間にわたって保管され得る(注射器は典型的に針端部を上にし、フランジ端部を下にして保管されるが、本開示の態様は、フランジ端部を上に、針端部を下にして保管される注射器、またはそれらの間の任意の向きに適用可能である)。この保管時間中、シリコーンが重力下で頂部から底部にドレインするにつれてシリコーンの初期分布が変化し得る。そのような変化は、注射器の長期間の性能を制御しなければならない場合に理解することができる。本開示は、注射器中のシリコーンドレナージを調査するために使用されている現在の経験的方法を促進するために使用される遠心分離アプローチを記載しており、これは現在完了するのに何年もかかる。一形態では、遠心分離機を使用してシリコーン処理注射器のエージングを促進する方法が記載されている。実際のエージングと遠心分離によるエージングシミュレーションとの基本的な予測関係は関連している。遠心分離法を適用することは、空の状態での長期保管後の注射器機能の変化を迅速にシミュレートするのに有用である。
【0012】
例として、注射器は、単独で薬剤送達装置として使用されてもよく、またはペン型注射器、注入ポンプ、および自動注射器などの投薬量を設定および送達するために使用される別の装置と組み合わせて使用されてもよい。薬剤は、このような薬剤送達装置によって送達され得るタイプのうちの任意のものであってよい。注射器は、空の状態で、または薬剤と共に提供されてもよい。「薬剤」という用語は、インスリン、インスリンリスプロまたはインスリングラルギンなどのインスリン類似体、インスリン誘導体、ダラグルチドまたはリラグルチドなどのGLP−1受容体アゴニスト、グルカゴン、グルカゴン類似体、グルカゴン誘導体、胃抑制ポリペプチド(GIP)、GIP類似体、GIP誘導体、オキシントモジュリン類似体、オキシントモジュリン誘導体、治療用抗体、および上記の装置による送達が可能な任意の治療薬を含むがこれらに限定されない1つ以上の治療薬を指す。装置で使用されるような薬剤は、1つ以上の賦形剤と共に処方されてもよい。装置は、一般に上述した様式で患者、介護者、または医療専門家によって、人に薬剤を送達するように操作される。
【0013】
例示的な注射器10を
図1に示す。注射器10は、開口した近位フランジ端部12と遠位針端部14との間に長手方向軸LAを中心として延在する注射器本体11を含む。押し子ロッドおよびピストンアセンブリ15は、開口したフランジ端部12を通って本体11の円筒状外筒16に装着することができる。フランジ端部12は、注射器外筒16の外径を超えて半径方向外側に突出するように示されている。ピストン20が、外筒16の内面22に沿って密封可能かつ摺動可能に配設されている。押し子ロッドシャフト25は、ピストン20に連結された細長い部材である。押し子ロッドシャフト25は、フランジ端部12を超えて近位方向に突出し、注射器外筒内でピストン20と針端部14との間に画定されたチャンバ28から薬剤を分注するようにピストン20を外筒16内で遠位方向に移動させるために、伸長位置(
図1に示す)から遠位方向に押されるようになっている。円筒状外筒16は、フランジ端部12から、円筒状外筒16よりも小さい縮小断面積の注射器ハブ32に至る移行部すなわち肩部30まで延在する。フランジ端部12は、円筒状外筒部16よりもさらに半径方向外側に突出してもよい。注射器本体11は、ガラス製であってもよく、その近位端部にプラスチックフランジを有するガラス外筒など、少なくとも部分的にガラス製であってもよく、または注射器操作に適したポリマー製であってもよい。
【0014】
注射器ハブ32は、それから遠位方向に延びる針を含んでもよく、または取り付け可能な針アセンブリ(図示せず)を受容するようになっていてもよい。肩部32に沿った注射器外筒16の遠位端部は、チャンバ28と流体連通する通路38を含む。細長い針カニューレ35(破線で示す)は、その近位端部40と遠位端部42との間にそれを通って延びる管腔を含む。針カニューレ35の近位端部40は、針管腔をチャンバ28と流体連通状態にするように、通路38を介して注射器外筒16の遠位針端部14に連結されている。図示する例では、針カニューレ35は、接着剤または他の取り付け手段を使用して注射器本体11にしっかりと取り付けられている。他の例では、針は、恒久的に針カニューレに取り付けられ、注射器の針ハブ32の周りに摩擦的に取り付けられる針取り付けハブなどを介して、注射器本体11に取り外し可能に取り付けることができる。本開示において、注射器の試験は、押し子およびピストンアセンブリ15および針35を省略して、注射器10の注射器本体のみを含む場合があり、それがこれらの要素が破線で示される理由である。
【0015】
注射器内のシリコーンドレナージの試験を促進するための例示的な方法は、重力を重力よりも大きい遠心力で置き換えるための方法として遠心分離を使用することである。遠心力によるシリコーンドレナージは、重力によるドレナージと強く相関することがあり、遠心分離試験は、長期間の重力試験を置き換えるために使用することができ、試験を数年から数時間に変える可能性がある。この目的のために、重力および遠心力下の両方のドレナージを可能にする数学的モデルを作成し、遠心分離注射器シリコーンドレナージ試験からの一組の試験データを分析するために使用した。このモデルは、数値的に解くことができる準線形一階偏微分方程式(PDE)を導く。
【0016】
注射器外筒内の落下する薄膜流ドレナージのための数学モデルを開発した。このモデルを構築するのに含まれる主な仮定は以下の通りである:(1)膜は、流体力学に対する連続体アプローチが適用可能になるのに十分厚い。例えば、連続体仮説が有効であるためには、1μm(ミクロン)の値が液体系の典型的な長さスケールの下限として与えられてもよい。試験は1ミクロン未満で示されているものの、Hunter, S.C., 1976, “Mechanics of Continuous Media”, Ellis Horwood Limited Publisher, ISBN85312-042-0を参照されたい。反対に、注射器内のシリコーン膜は1μmよりはるかに小さい可能性があるので、そのような薄膜への連続体アプローチの拡張の有効性は、例えば
図12に示すようにモデル結果を実験結果と比較したときに決定した。(2)膜厚が薄い。これは速度が小さく、レイノルズ数が低くなることを意味し、下方向の速度勾配が小さくなることを意味する。(3)注射器が空であるか液体で満たされているかにかかわらず、シリコーン層の外側表面の摩擦はゼロである。前者の場合、外側のシリコーン表面は空気と接触しており、後者の場合、シリコーン層は液体製品材料と接触している。(4)表面張力の影響は無視することができる。本開示は、表1において以下の命名法を使用する。
【表1】
【0017】
開発されたモデルは、
図2に示すように、注射器外筒16の壁16Aに沿って配設された初期サイズδ
0(z)の膜50を有する注射器10などの、円筒形状の注射器からの重力誘起ドレナージおよび遠心力誘起ドレナージの両方の場合をカバーしている(Holland、F.A.、1973、「Fluid Flow for Chemical Engineers」、Edward Arnold Ltd、ISBN0−7131−3301−5を参照されたい)。
【0018】
一般に、フィルム50の初期厚さは注射器外筒16の長さに沿って変化するが、
図2ではそれは一定の初期厚さとして示されている。z方向は、重力および遠心力と同じ方向で下方向とすることに留意されたい。チャンバ28を取り囲む注射器外筒16が完全な円筒形、すなわち
図2に示すように円筒状座標(z、r、θ)の使用を可能にする一定の内径Dを有するという仮定。しかしながら、デカルト座標などの任意の座標慣行が使用されてもよい。モデル内のどの従属変数も角度(θ)の関数ではないと仮定する。時間0(ゼロ)において、膜50は重力/遠心力の作用下で下方にドレインし始める。速度は軸方向(z)と半径方向(r)の両方向に発生する。膜50が最初は薄膜であると仮定すると、発生する速度は小さくなり、したがって膜のレイノルズ数は小さくなる。これらの条件下では、流れは非常に急速に「発達」するので、r方向の速度は0(ゼロ)であると仮定する。さらに、z速度の方程式では、慣性項もz方向の圧力勾配と同様に無視することができると仮定することができる。そのため、z方向の速度はrの関数にすぎず、安定にとどまる。ただ1つの速度成分u
zが存在するので、速度は、それがどの速度成分を指すのかについての混同が存在し得ないので、uと呼ばれる。これらの仮定を使用して、(Navier−Stokesの式から)z方向の運動量バランスは次のように単純化することができる。
【数2】
式中、μは液体の動粘度であり、ρは液体の密度であり、gは重力/遠心力である。重力流の場合、g(z)は定数gであるが、遠心分離流の場合、g(z)は次のように表される。
【数3】
式中、r
Cは遠心分離機アームの半径であり、ωは遠心分離機の角速度(ラジアン/秒)であり、zは遠心分離機アームの端部からの注射器に沿った距離を表す。
【0019】
速度uがrのみの関数であることを考えると、式(A.1)は偏導関数ではなく通常の導関数で書くことができる。これにより、次のようになる。
【数4】
【0020】
α(z)の方程式は次のように書くことができる。
【数5】
【0021】
式中、βは遠心力の影響を表し、β=0は流れが重力下にあることを示し、β=1は流れが遠心力下にあることを示す。式(A.3)と(A.4)を組み合わせ、組み合わせた式を積分し、式(A.6)と(A.7)に示す境界条件を適用する。以下では、方向αに対する加速度αの明示的な依存性を仮定し、したがってα(z)は単に加速度αと書く。
【0022】
式(A.3)を2回積分して、適切な境界条件が適用されると、密度、加速度、粘度、および層厚の関数としての速度の式を得ることができる。ここで、境界条件は以下のとおりである。
【数6】
式中、C
1は積分定数である。C
1は、膜50の境界における剪断応力がゼロであるという、速度uの境界条件のうちの1つから求めることができる。数学的にこれは次のように変換される。
【数7】
式中、Dはチャンバ28を取り囲む注射器外筒16の内径であり、δはフィルム50の厚さである。
【0023】
第2の境界条件は、ガラス注射器外筒の内面に液体の滑りが存在しないことである。これにより、次のようになる。
【数8】
【0024】
式(A.3)を積分し、式(A.6)および(A.7)の境界条件を適用すると、次のようになる。
【数9】
【0025】
rの関数としての速度プロファイルは既知であるので、膜50の流量は厚さがδのときに計算することができる。z方向の流量Qは次の式で与えられる。
【数10】
【0026】
式(A.9)に式(A.8)を代入すると、次のようになる。
【数11】
【0027】
式(A.10)の積分は次のように評価することができる。
【数12】
ここで、無次元変数γの定義により、式(A.7)を参照されたい、γ<1。
【0028】
流量Qの方程式が膜厚δの関数として提供されたので、zの関数としての膜厚δの非定常状態の進展を評価することができる。zとz+Δzとの間のスライスにわたる非定常状態の質量バランスは、次のように書くことができる。
【数13】
【0029】
スライス内の体積ΔVは、次のように与えられる。
【数14】
【0030】
式(A.13)は、次のように単純化することができる。
【数15】
【0031】
式(A.12)に式(A.14)を代入すると、次のようになる。
【数16】
【0032】
式(A.26)の両辺をΔzで割り、極限をΔz→0とすると、次のようになる。
【数17】
これは次のように単純化することができる。
【数18】
【0033】
膜厚δ<<注射器外筒の内径Dであるので、式(A.17)は、次のようにさらに単純化することができる。
【数19】
式中、Qは式(A.11)で与えられる。ここで、別の無次元ψを導入するのが便利である。
【数20】
【0034】
ここで、式(A.18)は次のようになる。
【数21】
【0035】
式(A.20)にQについて式(A.11)を代入すると、次のようになる。
【数22】
【0036】
式(A.21)は次のように整理することができる。
【数23】
【0037】
式(A.22)では、Ψがzの関数であり、s(ψ)もzの関数であるという事実。式(A.22)における通常の導関数は、式(A.4)および(A.21)から求めることができる。
【数24】
【数25】
【0038】
s(ψ)およびその導関数の式は、膜厚δ<<内径Dであり、したがってΨ<<1であるため、簡略化することができる。関数ln(1−x)は次のように展開することができる。
【数26】
【0039】
s(ψ)とその導関数の式の全ての項を展開すると、次のようになる。
【数27】
【数28】
【0040】
これらの式は、式の先頭の項を使用して次のように単純化することができる。
【数29】
【数30】
【0041】
式(A.22)に代入して単純化すると、次のようになる。
【数31】
【0042】
モデルの最後のステップは、zをL
f(
図4に示すように、膜厚測定が始まる遠心分離機の中心に最も近い先端から注射器の他端部までの長さ)およびモデルの総時間範囲t
fで正規化することによって、方向zおよび時間tにおいて無次元化することである。これは、モデル方程式の最終形になる。
【数32】
式中、zとtは無次元のzおよびt変数であり、モデルは0≦z≦1と0≦t≦1から実行される。無次元z形式のα(z)の方程式は次のようになる。
【数33】
また導関数については、次のようになる。
【数34】
【0043】
モデル方程式(1.0)の導出に関する詳細は、方程式A.1〜A.33に与えられている。
【数35】
【0044】
モデルの最後のステップは、zをLf(膜厚測定が始まる遠心分離機の中心に最も近い先端から注射器の他端部までの長さ)およびモデルの総時間範囲tfで正規化することによって、zおよびtにおいて無次元化することである。無次元のzおよびtは、数学モデル方程式の最終形になる。
【数36】
【0045】
モデルは、0≦z≦1および0≦t≦1から実行される。無次元z形式のα(z)の方程式は次のようになる。
【数37】
また導関数については、次のようになる。
【数38】
【0046】
式(2.3)では、導関数はzの無次元形式ではなく、元のzに関するものであることに留意されたい。したがって、L
fは式(2.3)には現れない。式(2.1)のモデルの形式は、波速度V
Wが次式で与えられる波動方程式の形式である。
【数39】
【0047】
したがって、シリコーンが注射器外筒に沿って移動する速度は、t
f、シリコーン密度ρ、重力下にあるときの加速度g、および遠心力下にあるときのr
cに正比例する。波速度は内径Dとωの二乗に比例する。波速度はL
fに反比例する。これら全ての変数は所与の構成に対して一定であり、したがってこれらの変数はエージングシミュレーションのために遠心分離されている注射器の波速度を変化させないであろう。変化する変数はzおよびφである。zが増加するにつれて波速度は増加し、これは遠心力に対するより長い半径を反映する。重力であるか遠心力駆動であるかにかかわらず、φが二次式的に減少するにつれて波速度も減少する。この目的のために、シリコーンの移動が進行するにつれて、φの値は低下する傾向がある。φが低下する速度はφそれ自体に依存するので、運動が開始すると、φの最大の変化はより早期に起こる。
【0048】
このモデルはまた、重力と遠心流の間で同じ効果を見るために、時間をどのように調整するべきかを示す。重力流t
fgおよび遠心流t
fcとしてのt
fの値を示すt
fcとt
fgとの比は次式で与えられる。
【数40】
【0049】
式(2.5)では、0≦z≦1であることを思い起こして、zの値が選択されなければならない。式(2.5)において調整を行うためにzが=0に設定されると、シリコーン層全体に対する遠心力が過小評価されるため、重力下の時間と等価な遠心分離時間が過大評価されることになる。zが1に設定される場合は反対のことが起こる。遠心力の依存性がzにおいて線形であると仮定すると、使用するzの最良の値は0.5に近い可能性がある。波速度が線形的にφの値に依存している場合、使用する最良の値は正確に0.5になるであろう。以下の例では、z=0.5がz=0またはz=1より良好であるという主張がテストされる。パラメータT_Fctを定義し、式(2.5)を以下のように書き換えるために使用することができる。
【数41】
【0050】
T_Fct=0.0がLow状態と呼ばれることになり、T_Fct=0.5がMid状態と呼ばれることになり、T_Fct=1.0がHigh状態と呼ばれることになる。エージング時間が注射器に沿った対応する点と一致するように、先端(T_Fct=1.0)、中間(0.5)、およびフランジ(0.0)の点が供されるこれらの条件。
【0051】
ここで式(2.1)および(2.2)に提示されたモデルを用いたシミュレーションは、遠心力下の注射器における実験的ドレナージを再現した。
【0052】
このモデルはまた、重力および遠心力の下での流体の流れの第一原理に基づいて、式(2.6)を用いて所与の量のシリコーンドレナージに必要な時間を調整することが可能であることを示す。シミュレーションでは、上記のLow、Medium、およびHighの3つの条件のうち、シリコーン流の最も正確な調整はT_Fct=0.5の値によって生成されることが示されている。この一致点は、この公式を使用してオペレータの選択で変えることができる。注射器の挙動の異なる側面を理解する必要がある場合は、さまざまな点を一致させることが好ましい場合がある。一例は、それが生み出すより高い滑り力または自己注入装置で観察され得る注射時間の増加のために、先端のより薄いシリコーン層がより懸念される可能性がある場合のばね駆動自動注射器の使用であり得る。その場合は、この点により良好に一致するように0のT_Fctを選択する方がよいであろう。
【0053】
遠心力は遠心分離機の中心からの距離の一次関数であるが、重力による加速度は事実上定数であるので、遠心分離機アーム長と注射器外筒長との比が小さいと正確な調整につながる。本明細書に記載のシステムは、この比が少なくとも4:1であるシステムを指す。
【0054】
当業者であれば、上述の重要な仮定に基づいてモデルを開発するために他のアプローチを適用して同様のモデリング結果を達成することができ、その一方で、原則は重要な仮定およびモデル開発に続くステップで概説されるアプローチに基づくことに留意されたい。例えば、デカルト座標を使用し、フィルムが非常に薄いので流れは円筒状ではなく平面状であると仮定してモデルを作成することができる。この場合、式(A.3)は次のようになる。
【数42】
ガラス面がy=0に対応すると仮定すると、(A.6)および(A.7)と等価な2つの境界条件は次のようになる。
【数43】
y=0でu=0 (B.3)
【0055】
ここで、式(B.2)および(B.3)は、円筒状座標モデルにおける(A.6)および(A.7)と等価である。
【0056】
2回積分して境界条件を適用すると、式(A.8)と等価になる。
【数44】
【0057】
式(A.10)と等価なのは、次のとおりである。
【数45】
【0058】
積分を評価すると、(A.11)と等価な結果が得られる。
【0059】
【数46】
(A.14)に記載されている体積スライスは次のようになる。
【数47】
【0060】
これは、式(A.18)がここで正確に同じであることを意味する。
【数48】
【0061】
平らな幾何形状が仮定されるので、無次元項Ψはそれほど意味がない。したがって、式(2.4)と等価なものは、以下のようにΨではなくδに関して表示される。
【数49】
【0062】
δ(z、t
0)の最初に知られているシリコーン分布が与えられると、式(3.0)を時間的に数値的に積分してδ(z、t)についての関係を得ることができる。
【0063】
〔実施例〕
予備試験では、本明細書に記載のもののような構成の一組の20個の注射器を2つの群に分けた。第1の群をサンプル1〜10と呼び、第2の群をサンプル11〜20と呼んだ。サンプル1〜10を2年の重力流に相当する時間にわたって遠心分離し、サンプル11〜20を1年の重力流に相当する時間にわたって遠心分離した。シリコーンを含む層フィルムを、RapIDとも呼ばれる機器を使用して空のプレフィルド注射器中の噴霧されたシリコーンオイル層の厚さ分布を特性評価する分析方法などの様々な試験方法を使用して遠心分離前後に測定した。測定装置は、1mmの増分で0〜49mmのz距離で厚さを報告した。各z点において、装置は円周に沿って9つの点を測定する。これら9つの点を平均して各z点における平均シリコーン層厚さを得た。
【0064】
試験には任意の遠心分離機システムを使用することができる。一例では、遠心分離機システム100は、
図3Aに示すような、Jouan KR4−22(S/N403100041)遠心分離機を含む。遠心分離機システム100は、注射器を保持するように構成された1つ以上の固定具バケットを含む。さらに
図3Bを参照すると、システム100は、回転軸RAを中心として延在するシャフト123を中心としてシステムハウジング122に対して回転可能なロータ120を含む。シャフト123は、電気モータのようなモータ駆動装置(図示せず)から延びてそれに連結されている。一例では、ロータ120は、
図5〜
図6に示すような注射器固定具バケットが受容されている間隙126によって互いに半径方向に離間して配設された複数のロータアーム121を備えた星型構成を有する。一例では、区画128は、隙間126内でハウジング内にそれぞれ形成され、そのような区画128は、固定具バケットを受容するようにサイズ決定および形状決定される。
図4では、ロータアーム121は、少なくとも4:1(遠心分離機ロータアーム長/注射器外筒長)の、サンプル試験注射器10’の長さLfに対する回転軸RAからの長いアーム長LRを有する。少なくとも4:1の比を使用すると、一致点から離れてシリコーンプロファイルの忠実度を向上させることができる。一例では、遠心分離機システム100の遠心分離機ロータ120は、6つのバケット125を受容するのに十分な数の区画を有することができるが、任意の数のバケットを含めることができる。各区画128は、例えば
図5〜
図6に示されるように固定バケツを受容して注射器10’を適切な向きおよび位置に保持するようにサイズ決定および形状決定されてもよい。
【0065】
遠心分離機システム100のロータ120の動作特性、すなわち一定であるか可変であるかにかかわらず速度、または他の特徴は、システムハウジング122内に収容されることを示すために破線で示されているシステムコントローラ130によって制御される。システムコントローラ130は、内部メモリ134(例えば、内部フラッシュメモリ、オンボード電気的消去可能およびプログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)など)と電気的に通信する少なくとも1つのプロセッサ132、および電圧源などの電源を含む。システムコントローラ130は、遠心分離機と一体化され、回転速度および動作時間などの遠心分離機の動作を制御するために本明細書に記載された動作を実行するように動作可能な制御論理を含む様々な動作センサ136に連結され得る。プロセッサ132は、遠心分離機の始動および停止を含む、本明細書に記載の動作を実行するように動作可能な制御論理を含む。これまでに説明したシミュレーションを実行するために加速度および時間を適切に制御するのであれば、他の制御機構を選択することができることに留意されたい。
【0066】
一例では、遠心分離機システムは、本体と、モータによって中心軸を中心として本体に対して回転可能なロータと、ロータに関連付けられたコンパートメントと、コンパートメント内に所定の向きに配置されたシリコーンの膜を有する1つ以上の注射器であって、注射器のフランジ端部が注射器の針端部よりも中心軸から遠く離れて配設されている、1つ以上の注射器と、モータに動作可能に連結されたコントローラであって、コントローラは所定のG速度で遠心分離機運転時間(tfc)にわたって注射器の遠心分離を作動させるように構成され、シミュレーション時間はtfg/tfc=((r_C+zL_F)ω^2)/g)と表され、式中、tfgはシミュレートされるべき重力ドレナージ時間であり、tfcはロータアーム長rc、一致点z、注射器の長さLFを有する遠心分離機システムにおける速度ωでの遠心分離機運転時間であり、gは重力による加速度である、コントローラと、を含む。一例では、ロータアーム長と注射器長との比は、4:1以上である。所定のG速度は一定または可変である。zLfの積にT_fct係数を掛けることができ、ここでT_fct係数は0〜1の値である。一例では、T_fct係数は0.5である。システムは、注射器を所定の向きに保持するように構成されたバケット固定具を含んでもよく、区画はバケット固定具を受容するように構成される。バケット固定具は、注射器の外筒を受容するようにサイズ決定されかつ注射器のフランジ端部を受容しないようにサイズ決定された直径を有する複数の保持セルを画定する本体と、本体の対応する保持セルと同軸に整列された複数の凹部を画定するベースプレートであって、凹部の各々は、保持セルの直径よりも大きくサイズ決定されかつ注射器のフランジ端部を受容するようにサイズ決定された直径、および注射器のフランジ端部の厚さを捉えるようにサイズ決定された深さを有し、ベースプレートは、本体の下端部にしっかりと取り付けるための取り付け特徴部を含む、ベースプレートと、を含んでもよい。
【0067】
固定具バケットアセンブリ200の例示的な実施形態を
図5〜
図6に示す。固定具アセンブリ200は、それぞれ本体の長さL、本体の幅W、および本体の高さHを画定する本体側部212a〜dを一般に有する立方体形状の本体210を含む。固定具本体210は中実であってもよく、またはその側部はキャビティ220を画定してもよい。
図5は、取り外し可能な基部230が下端部227から取り外された状態の、直立位置にあるバケット本体210の上端部225の上端部斜視図において示す。
図6は、基部230が取り外された状態の、バケット本体210の反対側の下端部227を下端部斜視図で示す。バケット本体210は、本体210の上端部225と下端部227との間に少なくとも部分的に延びる複数の保持セル235を含み得る。保持セル235は、示されている5×8のパターンを含む任意の配置にすることができる。保持セル235は、上端部と下端部との間に孔を機械加工することによって、または鋳造プロセスによって形成することができる。保持セルは、
図4および
図8に示すように、一般的な注射器形状と同様に成形することができる。すなわち、図示するように、注射器形状は、注射器の針端部に関連付けられた端部または縮小断面積(または縮小する断面積)、注射器外筒に関連付けられた一定断面積の中間直線領域、および注射器のフランジ端部に関連付けられた拡大断面積を含む。保持セル235の下端部239は、バケット本体210の下端部227と関連付けられており、注射器のフランジ端部12の断面積を受容するようにサイズ決定された円錐テーパ面を画定することができる。図示するように、セル235の各々は、フランジ端部が直径12bだけ注射器外筒を超えて半径方向外側に突出するように示されているので、注射器外筒を受容するがフランジ端部は受容しないようにサイズ決定することができる。テーパ面は、フランジ端部の厚さ(
図1において厚さ12aとして示されているに適応する様式で角度付けされているので、フランジは本体210の下端部227によって画定される平面状表面を超えて突出しない。基部230は、全ての保持セル235を覆うようにサイズ決定される。図示するように、基部230は、基部およびバケット本体のそれぞれのねじ付き開口部231A、231Bと整列して、機械的締結具(図示せず)によってバケット本体に連結することができる。図示するように、バケット本体210は、上端部225に装着されたハンドル237を含む。一例では、ハンドル237は、図示するように、上端部225に連結された2つの取り付け端部と、本体210の上端部225によって画定される平面状表面と平行に離間した関係で2つの取り付け端部の間に延びる部分とを有するU字形本体を有する。
【0068】
注射器は、フランジ端部がロータの中心から離れるように保持セル235内に配置される。固定具バケット内の注射器の配置は
図4に示されている。
図7〜
図9は、ここでは200’と呼ぶ固定具バケットアセンブリの別の実施形態を示す。
図7において、ここではバケット本体210’と呼ぶバケット本体の下端部227’に対向する、ここでは基部230’と呼ぶ基部の他の例の上面251は、取り付けられると、固定具バケットアセンブリ200’のバケット本体に形成された対応する保持セルと整列して配置された複数の凹部252を画定する。明瞭にするために、取り付け特徴部は基部230’から省略されている。
図8において、凹部252と注射器を受容する保持セル235の端部との界面の断面図。凹部の断面積または直径(DR)は、セルの断面積または直径(DH)より大きくてもよい。凹部の深さ(DT)と凹部の直径(DR)との組み合わせは、注射器10’のフランジ12’がその中にぴったりと嵌合することを可能にするようにサイズ決定される。この目的のために、
図9に示すように、注射器10’の針端部14がバケットの下端部227’に対してよりもバケット本体210’の上端部225’に近接するように、ベースプレート230’を取り外した状態で、注射器10’は、下端部227’からセル235内に所定の向きで挿入される。注射器フランジの断面積または直径(
図1の直径12b)は、フランジがバケット本体210’の下端部227’から外側に突出するように、セルの断面積または直径(DH)よりも大きい。この目的のために、注射器フランジ12’の下面260は、保持セル235と本体210’の下端部227’との交差部を画定する角縁部262と係合可能である。全ての注射器を挿入した後(一部のセルを空のままにしておくことができる)、ベースプレート230’をバケットの下端部にしっかりと取り付けることができる。例えば、機械的締結具をバケットの下端部とベースプレートとの間に使用することができる。ベースプレート230’は、遠心分離機の動作中に注射器を固定具バケット内で固定位置で確実に保持するために、注射器フランジ12’と縁部262との間に増大した圧力を加えるように構成されてもよい。
【0069】
図4に示すように、固定具バケット200または200’は、注射器の注射器フランジ端部12または12’が遠心分離機の回転軸RAから最も遠くなりフランジ端部に向かってのドレナージを可能にするように、遠心分離システム100のロータ120のロータアーム121に固定される。複数のバケットをシステムの対応するアームに固定することができる。遠心分離システム100は、所定のG速度(または半径方向の加々速度)で、意図されたシミュレーションのために選択された期間にわたって作動される。意図されたシミュレーション期間が経過した後に遠心分離が終了する。遠心分離後、注射器の1つ以上の注入機能パラメータを評価する。
【0070】
空のプレフィルドシリコーン処理注射器のためのシリコーンドレナージ速度を促進するための1900と呼ぶ試験方法の一例を
図19に示す。この方法は、以下のステップの1つ以上を含み得る:(a)シリコーンの膜を含む注射器を所定の向きで遠心分離機システムの遠心分離機ホルダ内に配置するステップ(ステップ1910)。1つの好ましい向きは予想される保管の向きに対応する。典型的な「針上向き」の保管の場合、この向きは、針端部が加速度から離れるように配設される(言い換えれば、注射器フランジ端部が針端部よりも遠心分離機の中心軸から遠い)向きに対応する。本明細書に記載されるように、他の注射器の向きが採用されてもよい。(b)注射器を含む遠心分離機システムの遠心分離ホルダの遠心分離を所定のG速度で意図されたシミュレーション期間にわたって作動させるステップ(ステップ1920)。(c)意図されたシミュレーション期間が経過した後に注射器を含む遠心分離ホルダの遠心分離を終了するステップ(ステップ1930)。(d)経過期間後に、シリコーン層依存特性などの注射器の1つ以上の注入機能パラメータを評価するステップ(ステップ1940)。別の例では、シリコーン処理注射器は非架橋シリコーン処理注射器である。別の例では、経過時間は次のように表される。
【数50】
式中、t
fgはシミュレートされるべきで重力ドレナージ時間であり、t
fcはアーム長r
c、一致点z、注射器長L
Fを有する遠心分離機システムにおける速度ωでの遠心分離機運転時間であり、gは重力による加速度である。他の例では、当該パラメータは、ゆるみ力(break-loose force)、滑り力(glide force)、総シリコーン含有量、シリコーン層プロファイル、自己注入装置注入時間、またはそれらの任意の組み合わせのいずれか1つを含む。
【0071】
ステップ1940における評価は、注射器を充填(これは、任意選択的に、注射器のゆるみおよび押し子滑り力を評価するための空気であり得る)および押し込み、次いでゆるみ力および滑り力を決定するために適切な固定具および力変位試験台で試験することによって達成され得る。適切な説明は、ISO11040に見出すことができる。シリコーン含有量は、シリコーンを除去するための溶媒抽出前および溶媒抽出後の両方において空の注射器を重量測定で計量することを含む任意の関連する分析方法によって達成することができる。あるいは、溶媒を収集してアッセイし、抽出されたシリコーンの量を決定することもできる。シリコーン層プロファイルを決定するために、空のプレフィルド注射器中の噴霧されたシリコーンオイル層を特性評価するための分析方法を、例えば、PDA J Pharm Sci Technol.2018 May-Jun;72(3):278-297.doi:10.5731/pdajpst.2017.007997.Epub 2018 Jan 17などを参照して、使用してもよい。
【0072】
この方法の利点の1つは、臨床試験のための促進データの提供である。別の利点は、医薬品申請のためのより良好な、より高速なデータセットを可能にすることである。結果は容器のエンクロージャシステムまたは潤滑プロファイルの変更につながる可能性がある。試験方法は、重力による引っ張りの長期効果をモデル化するための遠心分離の使用を提供する。
【0073】
方法1900などの例示的な試験方法は、遠心分離システム100を用いて実行される。この方法を適用して得られたデータの一例が
図10に示されており、これは、サンプル4について、2年相当にわたる前後のシリコーン層プロファイル、ナノメートル単位のシリコーン層厚さ対ミリメートル単位のz方向の距離を示す。第1の曲線1000は初期(遠心分離前)のシリコーンプロファイルであり、第2の曲線1010は2年相当にわたる遠心分離後(後)のシリコーンプロファイルである。試験構成では、位置z=0は、測定が、この場合はRapIDにより、開始される注射器の開口端部にある。RapIDでは、測定は、フランジの内側約1mm(
図10のグラフの「ゼロ」)からフランジの内側50mm(グラフの49mmの点)までである。針端部はここでは50mmの方に向いており、フランジ端部はここではゼロの方に向いている。記号Ψは選択された点におけるシリコーン層の厚さを注射器の半径で割ったものであり、この慣行を、上記式を脱寸法化するための便利な方法として使用してモデルを一般化する。注射器外筒は長さ54.5mmであるが、測定装置(RapID)はz=49mmの位置にしか移動できない(針端部において)。試験結果におけるzの指定は、モデルにおいて使用されているものとは反対であり、モデルにおけるz=0は試験結果においてz=49mmである端部を表す。
図10では、シリコーンは負のz方向に流れる。注射器は(この例では)針側を上にして保管されるので、これは遠心力の方向が重力と同じ方向であることを意味する。
【0074】
初期プレシリコーン層、ナノメートル単位のシリコーン層厚さ対ミリメートル単位のz方向距離を、サンプル11〜20については
図11に示し、サンプル1〜10については
図12に示す。これらのチャートの両方は、
図11のグラフ領域1100および
図12のグラフ領域1200においてそれぞれ、より大きいz値(針端部に近い)でサンプル間のばらつきが小さいこと、ならびに
図11のグラフ領域1110および
図12のグラフ領域1210においてそれぞれ、z=0(フランジ)端部でサンプル間のばらつきがより大きいことを示している。初期シリコーン分布データを、遠心分離後および通常重力下での等価保管時間後の最終分布を予測するモデルへの入力として使用した。
【0075】
モデルのパラメータ指定
上記の幾何学的情報を用いると、遠心加速度と重力による加速度との比に基づいて、重力落下時間1年および2年に相当する遠心分離時間を求めることができる。遠心時間の計算結果を表2に示す。
【表2】
【0076】
遠心分離加速度に使用される半径は(rC+T_Fct×Lf)である。表2に示す3組の計算が存在する。第1の組は、計算に使用するzの代表値がz=0(T_Fct=0.0)であると仮定している。結果は、1年については6.26時間の遠心分離時間を使用すべきであり、2年については12.51時間にするべきであることを示している。遠心分離加速度計算の代表点としてT_Fct=0.5の値を使用すると、これらの時間はそれぞれ5.59時間および11.17時間になる。最後に、T_Fct=1.0の値を遠心分離加速度計算の代表点として使用すると、これらの時間はそれぞれ5.07時間および10.09時間になる。
【0077】
結果
一般的な遠心分離の結果は、本明細書に記載の方法を用いて実証することができる。表3に示すように、結果は次のカテゴリを使用して決定および特性評価することができる。
【表3】
【0078】
図13は、針端部が0で上に向きフランジ端部が1である、1300行目での注射器サンプル4に沿ったシリコーン層(Psi、Ψ)の初期プロファイルを示す。
図14は、t=0(1400行目)の間の等間隔時間についてのこの初期プロファイル(Psi)とt=1秒(1410行目)についてのシリコーン層の最終プロファイル(Psi)との間のモデル結果を示す(時間はt=1sが2年に相当するように調整される)。
【0079】
図14の結果は、モデルのいくつかの特徴を示している:(a)モデルはシリコーン層プロファイルを滑らかにする傾向がある。2年後、元のプロファイルの全ての屈折点は消失した。(b)プロファイルへの影響は、プロファイルが大きいほど、後の時間よりも早い時間により大きい。これは、
図14の連続したプロファイル間のギャップが、早い時間よりも後の時間により小さいという事実によって理解することができる。波速度はシリコーン層の大きさの二乗に依存するので、これは以前に予測された。
図14の破線の楕円1420、1430はこの違いを示している。
【0080】
各サンプルについて、以下のチャートを見ることができる。
図15では、重力ドレナージ(1510行目)、ならびにLow(T_Fct=0.0)(1520行目)、Mid(T_Fct=0.5)(1540行目)、およびHigh(T_Fct=1.0)(1530行目)の等価遠心分離時間計算を使用した遠心分離ドレナージについて、シリコーン層の無次元厚さΨ(Psi)の予測値が示されている。これらのチャートは、重力ドレナージの場合の一般的な傾向が遠心分離ドレナージの場合によって再現されていることを示している。したがって、モデル予測は、長期間にわたる重力ドレナージの影響を模擬するための短期間にわたる遠心分離の使用を支持する。
【0081】
図16は、遠心分離の終了時(1600行目)における注射器の中心線に沿ったシリコーン層Ψの無次元厚さの試験結果と、Low(T_Fct=0.0)(1610行目)、Mid(T_Fct=0.5)(1620行目)、およびHigh(T_Fct=1.0)(1630行目)の等価遠心分離時間計算を使用したシリコーン層の無次元厚さΨのモデル予測とを比較したものである。このチャートは、測定システムが最後まで延びることができないため、不正確さが存在する初期領域を除いては、モデルと試験結果との比較が良好であることを示す。この領域内にはシリコーンが存在する可能性が高く、シリコーンはz=0で測定される領域に流れ込むことになるため、ここでは試験結果はモデルが予測する値よりも高いと予想される。
【0082】
次のセクションでは、全てのサンプルにわたる結果の概要を検討する。
図17は、Low(T_Fct=0.0)(1700行目)、Mid(T_Fct=0.5)(1710行目)、およびHigh(T_Fct=1.0)(1720行目)の3つの等価時間における重力および遠心分離のモデル結果間の平均二乗誤差を示す。このグラフは、3つの選択肢のうち、注射器の中点を使用して代表的な遠心力を計算する(等価遠心分離時間を計算するために)ことが、経時的なシリコーン含有量の減少と一致させるための好ましい選択肢の1つであることを示す。他の装置または特性の場合、他の特性を評価するためには0〜1の間の他の一致点がより望ましいことがあり、選択される一致点も用途に依存し得る。
【0083】
図18は、20個の全てのサンプルについてのモデル予測と試験結果との間の平均二乗誤差を示す。
図18のこのグラフから、以下の所見を述べることができる。モデル誤差は、1〜10のサンプル組(2年シミュレーション)と11〜20のサンプル組(1年シミュレーション)の間で一貫している。すなわち、全ての1年サンプルはほぼ同じ平均二乗誤差を有し、全ての2年サンプルはほぼ同じ平均二乗誤差を有する。モデル予測は、1年目のサンプル11〜20よりも2年目のサンプル1〜10に関して、試験結果とかなり良好に一致する。これは、ドレナージが長時間続くにつれてモデル予測がより良好になることを示している。これは、より長時間ではより多くのシリコーンがドレインされ、層の厚さが時間とともにそれほど変化しないという事実による可能性が高い。異なるT_Fct値(Low、Mid、High)の平均二乗誤差間の差はサンプル間の変動よりも小さいため、このデータから、どのT_Fctの値が等価遠心分離時間の計算に使用するのに最適な値であるか結論を下すことはできない。
図18のデータは、本明細書で論じられているように、これをより良好に示している。モデル予測と2年後の試験結果の一致は非常に良好である。既に論じたように、z=0に近い領域は、この領域が測定装置が測定することができないz<0のシリコーン層によって供給されるので、うまく適合しない。
【0084】
遠心分離機を用いて注射器内のシリコーン層のドレナージをモデル化してドレナージを促進し、特に長期間にわたって実験と合理的に良好に一致する結果を得ることが可能である。またこのモデルは、注射器に沿った加速度のばらつきの影響を最小化するのに十分大きい半径を有する遠心分離機を用いた予測結果が、等価遠心分離時間を用いて重力ドレナージ下で得られた結果と同様であることを示していることを考えると、等価ドレナージ時間にわたって運転される遠心分離機を使用してシリコーンドレナージの促進試験を行うと重力下のドレナージが再現されると結論を下すことができる。さらに、その結果は、注射器からのシリコーンドレナージを経時的に推定するために使用する最良の点は、注射器長に沿った中間点で遠心力を一致させることによって得られること、ならびに関心のある注射器特性の特定の組み合わせ(シリコーン層の厚さ、滑り力など)および特定の用途(すなわち、手動プレフィルド注射器、自動注射器、またはボーラス注射器)には他の一致点がより適切であり得ることを示している。
【0085】
以下のものの使用法を明確にし、ここに公衆に通知すると、「<A>、<B>、...および<N>の少なくとも1つ」、または「<A>、<B>、...<N>、またはそれらの組み合わせの少なくとも1つ」、または「<A>、<B>、...および/または<N>」という文言は、本出願人によって最も広範な意味で定義され、本出願人によって反対の主張が明示的になされない限り上記または下記のいかなる他の暗黙の定義にも取って代わり、A、B...およびNを含む群から選択された1つ以上の要素を意味する。言い換えれば、この文言は、要素A、B、...またはNの1つ以上の任意の組み合わせを意味し、任意の1つの要素のみ、またはその1つの要素と、列挙されていない追加の要素も含み得る他の要素の1つ以上との組み合わせを含む。
【0086】
様々な実施形態を説明してきたが、さらに多くの実施形態および実装が可能であることが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書に記載の実施形態は例であり、唯一の可能な実施形態および実装ではない。さらに、上述の利点は必ずしも唯一の利点ではなく、記載された利点の全てが各実施形態で達成されるとは必ずしも予想されない。
【0087】
以下の態様を含むがこれらに限定されない様々な態様が、本開示において記載されている。
【0088】
1.シリコーン処理注射器のシリコーンドレナージ速度を促進するための試験方法であって、シリコーンの膜を含む注射器を所定の向きで遠心分離機システムの遠心分離機ホルダ内に配置するステップであって、注射器は針端部と反対側のフランジ端部とを含み、フランジ端部を含む注射器の所定の向きは針端部より遠心分離機システムの中心軸から遠く離れて配設されているか、または針端部はフランジ端部より遠心分離機システムの中心軸から遠く離れて配設されている、ステップと、注射器を含む遠心分離機システムの遠心分離ホルダの遠心分離を所定のG速度で所定の期間にわたって作動させるステップと、期間が経過した後に注射器を含む遠心分離ホルダの遠心分離を終了するステップと、経過期間後に注射器の1つ以上の注入機能パラメータを評価するステップとを含む、試験方法。
【0089】
2.注射器の膜は非架橋シリコーンを含む、態様1に記載の試験方法。
【0090】
3.経過時間は、(t)=[(意図されたシミュレーション時間)(重力による加速度)]÷[(遠心分離機の回転速度の二乗)(ロータハブの中心から注射器外筒上の一致点までの距離)]として表される、前述の態様のいずれか1つに記載の試験方法。
【0091】
4.遠心分離機システムのロータアームの長さと注射器の外筒の長さとの比は4:1以上である、前述の態様のいずれか1つに記載の試験方法。
【0092】
5.パラメータの1つはゆるみ力を含む、前述の態様のいずれか1つに記載の試験方法。
【0093】
6.パラメータの1つは滑り力を含む、前述の態様のいずれか1つに記載の試験方法。
【0094】
7.パラメータの1つはシリコーン含有量を含む、前述の態様のいずれか1つに記載の試験方法。
【0095】
8.パラメータの1つはシリコーン層プロファイルを含む、前述の態様のいずれか1つに記載の試験方法。
【0096】
9.パラメータの1つは当該注射器の注入時間を含む、前述の態様のいずれか1つに記載の試験方法。
【0097】
10.所定のG速度は一定である、前述の態様のいずれか1つに記載の試験方法。
【0098】
11.所定のG速度は可変である、前述の態様のいずれか1つに記載の試験方法。
【0099】
12.シリコーン処理注射器のシリコーンドレナージ速度を促進するための試験方法であって、シリコーンの膜を含む注射器を所定の向きで遠心分離機システムの遠心分離機ホルダ内に配置するステップであって、注射器は針端部と反対側のフランジ端部とを含み、フランジ端部を含む注射器の所定の向きは針端部より遠心分離機システムの中心軸から遠く離れて配設されるかまたは針端部はフランジ端部より遠心分離機システムの中心軸から遠く離れて配設される、ステップと、注射器を含む遠心分離機システムの遠心分離ホルダの遠心分離を所定のG速度で所定の期間(tfc)にわたって作動させるステップであって、期間(tfc)は、
【数51】
と表され、式中、t
fgはシミュレートされるべき重力ドレナージ時間であり、t
fcはロータアーム長r
c、一致点z、注射器の長さL
Fを有する遠心分離機システムにおける速度ωでの遠心分離機運転時間であり、gは重力による加速度である、ステップと、期間が経過した後に注射器を含む遠心分離ホルダの遠心分離を終了するステップとを含む、試験方法
【0100】
13.遠心分離機システムのロータアームの長さと注射器の外筒の長さとの比は4:1以上である、態様12に記載の試験方法。
【0101】
14.所定のG速度は一定である、態様12〜13のいずれか1つに記載の試験方法。
【0102】
15.所定のG速度は可変である、態様12〜13のいずれか1つに記載の試験方法。
【0103】
16.経過時間後に注射器の1つ以上の注入機能パラメータを評価することをさらに含む、態様12〜15のいずれか1つに記載の試験方法。
【0104】
17.パラメータの1つはゆるみ力、滑り力、シリコーン含有量、およびシリコーン層プロファイルの少なくとも1つを含む、態様16に記載の試験方法。
【0105】
18.パラメータの1つは注射器の注入時間を含み、注射器は自動注射器とも呼ばれる自己注入注射器装置であり得る、態様16に記載の試験方法。
【0106】
19.遠心分離機システム用の注射器試験装置であって、注射器は、外筒直径と外筒直径よりも大きいフランジ端部直径とを有する外筒を有し、装置は、本体であって、本体の上端部と下端部との間に延在する複数のセルを画定し、セルの各々は注射器の外筒を受容するが注射器のフランジを受容しないようにサイズ決定された直径を有する、本体と、複数の凹部を画定するベースプレートであって、凹部の各々は、本体の対応するセルと同軸に整列して配置され、凹部の各々は、セルの直径より大きくサイズ決定された直径、および注射器のフランジの厚さを捉えるようにサイズ決定された深さを有し、ベースプレートは、本体の下端部にしっかりと取り付けるための取り付け特徴部を含む、ベースプレートと、を備える、注射器試験装置。
【0107】
20.保持セルの各々は注射器形状構成を有する、態様19に記載の注射器試験装置。