(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6703659
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】乳歯の保管方法および乳歯保管キット
(51)【国際特許分類】
B65D 85/00 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
B65D85/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-124197(P2019-124197)
(22)【出願日】2019年7月3日
【審査請求日】2019年7月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】719004256
【氏名又は名称】西嶋 育子
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 育子
【審査官】
吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−10814(JP,U)
【文献】
特表2017−512613(JP,A)
【文献】
実開平6−68622(JP,U)
【文献】
実公平2−30064(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/00
A61C 13/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に可塑性を有する硬化性の充填剤を注入した後、当該充填剤が完全に硬化する前に、その上面の略全体を覆うことが可能な歯列乃至歯茎形状をくり抜いているガイド板を載置し、当該ガイド板で覆われていない前記歯列乃至歯茎形状部分に乳歯を植設することを特徴とする乳歯の保管方法。
【請求項2】
ガイド板を載置し、当該ガイド板を押下することにより、くり抜いた空隙から、可塑性を有する硬化性の充填剤を当該ガイド板よりも上方に盛り上がらせて歯茎を模した形状にせしめ、この上部に乳歯を植設する請求項1記載の乳歯の保管方法。
【請求項3】
乳歯の歯冠内の空洞部または歯冠底部の窪みにピンを固定して植設する請求項1〜2のいずれか1項記載の乳歯の保管方法。
【請求項4】
硬化性の充填剤が完全に硬化する前に植設する請求項1〜3のいずれか1項記載の乳歯の保管方法。
【請求項5】
容器を内箱とし、これに嵌合する外箱を蓋として設ける請求項1〜4のいずれか1項記載の乳歯の保管方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の乳歯の保管方法を可能とする、少なくとも容器、ガイド板から構成される乳歯保管キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳歯の保管方法および乳歯保管キットに関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、抜けた乳歯を、上の歯は床下に、下の歯は屋根に向かって抛り投げ、生え替わってくる歯が丈夫であることを祈る風習がある。しかし、近年の住宅様式の変化や都市部での過密化に伴い、この風習も過去のものになりつつある。一方、子供の成長の記念として乳歯を保存する親御さんが増えている。乳歯が抜ける度に小さな容器に保存していくのであるが、最終的には、抜けた歯がひと纏まりになるだけで面白みにかける。
【0003】
このため、近年、乳歯ケースあるいは乳歯ボックスといったものが市販されている。例えば非特許文献1は、ケース内部に歯の数に応じた窪みを設け、抜けた歯の箇所に応じた窪みに歯を入れていく乳歯ケースを開示する。特許文献1は、半球体の上顔ケースと下顔ケースの歯に相当する部分に透明なケースを複数個設け、当該透明ケースに歯を収納するものである。特許文献2は、上下の歯列に対応するように抜歯収納凹部を設けた小箱を開示する。特許文献3は、容器内部にユーティリティワックス等を充填し、乳歯を差し込んで並べて保存する容器を開示する。特許文献4は上歯茎模型と下歯茎模型に複数の植設孔を形成し、それぞれの植設孔に対応する人造乳歯を植設した乳歯保管装置で、当該人造乳歯を抜けた乳歯と取り換えて保管するものである。
【0004】
しかし、非特許文献1のように市販されているもの、および、特許文献1、特許文献2の乳歯ケースは乳歯を固定するものではない。特許文献3は乳歯を固定するものだが歯列形状に並べて固定するものではない。また、歯冠が短く、小さな乳歯を固定するにはユーティリティワックス等に深く差し込む必要があり、歯の形態や美観を損なうことが推察される。特許文献4は歯列形状に並べて固定するものだが、種々形状の人造乳歯を植設する必要があるため煩雑であり、また、取り換えるときに、人造乳歯と実際の抜け落ちた乳歯との形状の差異により歯並びに不調和を生じやすく、歯茎との隙間を充填する接着剤が美観を損ねやすい。
【0005】
特許文献5は、抜けた乳歯を乳歯が生えていた状態で、歯茎台に配列する乳歯の歯並び模型を開示する。しかし、乳歯が全て生え揃ったときの歯・歯茎型を歯科用印象材で作成しておく必要があり(段落0006)、計画的な準備が必要であるし、工程が煩雑であり現実味に欠ける(実施例)。また、自然脱落した乳歯は歯根が吸収されているため、固定は不安定なものになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−154819号公報
【特許文献2】特開2002−145369号公報
【特許文献3】特開2008−189387号公報
【特許文献4】実用新案登録第3199927号公報
【特許文献5】特開平8−123319号公報
【非特許文献1】Hugkum はぐくむ、令和元年5月13日、インターネット<https://hugkum.sho.jp/22103>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
抜けた乳歯を、ただ保存するのではなく、できるだけ乳歯列の形状を再現でき、美観があり、かつ手軽に実施できる乳歯の保管方法および乳歯保管キットを提供することを課題とした。
【0008】
すなわち本発明は、1)容器内に可塑性を有する硬化性の充填剤を注入した後、当該充填剤が完全に硬化する前に、その上面の略全体を覆うことが可能なガイド板(但し、当該ガイド板は、歯列乃至歯茎形状をくり抜いている)を載置し、当該ガイド板で覆われていない前記歯列乃至歯茎形状部分に乳歯を植設することを特徴とする乳歯の保管方法。2)ガイド板を載置し、当該ガイド板を押下することにより、くり抜いた空隙から、可塑性を有する硬化性の充填剤を当該ガイド板よりも上方に盛り上がらせて歯茎を模した形状にせしめ、この上部に乳歯を植設する1記載の乳歯の保管方法。3)乳歯の歯冠内の空洞部または歯冠底部の窪みにピンを固定して植設する1〜2記載の乳歯の保管方法。4)硬化性の充填剤が完全に硬化する前に植設する1〜3のいずれか1記載の乳歯の保管方法。5)容器を内箱とし、これに嵌合する外箱を蓋として設ける1〜4のいずれか1記載の乳歯の保管方法。6)1〜5のいずれか1記載の乳歯の保管方法を可能とする、少なくとも容器、ガイド板から構成される乳歯保管キット。を骨子とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、できるだけ乳歯列の形状を再現できる状態で手軽に保管することができる。また、その方法を実現するためのキットを安価に提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】容器に充填剤を注入した後、ガイド板を載置し、押下し、充填剤を盛り上げたことを示す模式図である。
【
図4】ピンを固定した乳歯を示す図面代用写真である。
【
図5】乳歯を植設した後の状態を示す図面代用写真である。
【
図6】本発明の方法により作成した乳歯保管ケース(蓋をしている)の図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
【実施例】
【0012】
先ず、容器として、直方体のケースを用意した(
図1)。容器形状は必ずしも直方体である必要はなく、円形、ハート形など任意である。これに可撓性シートとして市販の食品包装用ラップ「サランラップ」(旭化成株式会社 登録商標)を敷き、硬化性充填剤として、市販の紙粘土を用い、容器のほぼいっぱいに充填した。 紙粘土は、正確には、合成樹脂粘土というべきもので、所謂100均で入手したものである。硬化性充填剤は、可塑性があれば任意のものをを用いることができ、硬化の前後で容積の変化が少ないものが好ましい。
【0013】
なお、ケース上蓋を設ける場合を考慮し、必ずしも容器いっぱいに充填する必要はない。また、可撓性シートは後で紙粘土が乾き易いように容器外部に取り出し易くするためのものであり、その使用は任意である。本実施例では、その目的に叶うよう、十分な大きさにした(図示せず)。なお、可撓性シートは最終的には除去する。
【0014】
次に、その上面の略全体を覆うことが可能なガイド板を載置した。当該ガイド板は、1mm厚の歯茎色のアクリル板をレーザー加工機にて標準的な乳歯列乃至歯茎形状にくり抜いたものを用いた(
図2)。なお、後述するが、ガイド版を取り外し易くするためにガイド板の両端に小さな隙間を設けた(
図2)。
【0015】
次に、当該ガイド板で覆われていないくり抜いた前記歯列形状乃至歯茎形状部分、すなわち、ガイド板のくり抜き部から表面に歯列形状乃至歯茎形状に露出する充填剤部分に乳歯を植設すればよいが、本実施例では、ガイド板を上から手で押下し、くり抜いた空隙から充填剤を、当該ガイド板の面よりも上方に少し盛り上がらせて歯茎を模した形状にした(
図3)。なお、
図3においては、
図2で示したガイド版を取り外し易くするために設けた小さな隙間は図示していない。
【0016】
当該歯茎を模した形状の歯茎台、又は、前記したガイド板で覆われていないくり抜いた歯列形状乃至歯茎形状部分に乳歯を植設するのだが、予め乳歯へピンを固定しておいた。乳歯へのピンの固定は、乳歯の歯冠の空洞部又は歯冠底部の窪みに接着剤を充填し、ピンとして直径1mm長さ約20mmのアルミ線を固定した(
図4)。接着剤の種類は任意であるが、本実施例では、ゼリー状の瞬間接着剤を用いた。また、本実施例では、固定後に乳歯表面にマニキュアを塗布した。乳歯は中が空洞であるため脆くて割れやすく、乳歯表面の破折、劣化を防ぎ強度を高めるためである。マニキュア塗布により見栄えも良くなる。マニキュアに限らず透明な表面コーティング剤を用いることができる。その後、ピンを埋め込み易い長さ、例えば10〜15mmに短く切断した。
【0017】
前記歯茎台が硬化する前に、前記のピンを固定した乳歯を、乳歯が生えていた位置に相当する箇所にピンを突き刺して、植設した。その際、歯茎台は完全には硬化していないため、乳歯がやや歯茎台に埋まる程度に乳歯を上から押さえることにより歯茎台が乳歯底部の形状にあわせて変形、密着し、より本物感を出すことができる(
図5)。
【0018】
水分を蒸発させて硬化させるタイプの充填剤を使用する場合などは、必要に応じ、ラップごと容器外に取り出して充填剤の乾燥を速めることができる。また、ガイド板を取り外して硬化を速めることができる。ガイド板は、設けた小さな隙間を利用すると取り外しを楽に行うことができる。
【0019】
必要に応じ、容器を内箱とし、これに嵌合する外箱を蓋として設けることができる。本実施例では、容器にぴったり嵌合する蓋の上面に写真を添付できるようにした(
図6)。そうすることにより、保管性と思い出としての価値が高まる。
【0020】
以上のように、本発明により、比較的簡便に乳歯を見栄えよく保存することができる。容器およびこれに合うガイド版を準備しておけば所謂100均などで入手できる材料を用いて安価に実現可能である。従って、少なくとも容器、ガイド板から構成される乳歯保管キットを提供することの意義は大きい。
【要約】
【課題】 抜けた乳歯を、ただ保存するのではなく、できるだけ乳歯列の形状を再現でき、美観があり、かつ手軽に実施できる乳歯の保管方法および乳歯保管キットを提供することを課題とした。
【解決手段】 容器内に可塑性を有する硬化性の充填剤を注入した後、当該充填剤が完全に硬化する前に、その上面の略全体を覆うことが可能なガイド板(但し、当該ガイド板は、歯列(歯茎)形状をくり抜いている)を載置し、これを押下することにより、くり抜いた空隙から当該充填剤を当該ガイド板よりも上方に盛り上がらせて歯茎を模した形状にせしめ、この上部に乳歯を植設することを特徴とする乳歯の保管方法。
【選択図】
図5