特許第6703672号(P6703672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6703672検査対象品の欠陥検出方法、その装置及びそのコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6703672
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】検査対象品の欠陥検出方法、その装置及びそのコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20200525BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20200525BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G01N21/88 J
   G06T7/00 610
   G06T1/00 300
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-131324(P2019-131324)
(22)【出願日】2019年7月16日
【審査請求日】2019年12月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519117709
【氏名又は名称】株式会社テクムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】石黒 貴之
【審査官】 中澤 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−114927(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/118305(WO,A1)
【文献】 特開平8−152309(JP,A)
【文献】 特開2005−339180(JP,A)
【文献】 特開2017−166929(JP,A)
【文献】 特許第4657869(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G06T 1/00−9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割するステップと、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定ステップと、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定ステップと、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定ステップと、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換ステップと、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成ステップ、とを含む検査対象品の欠陥件検出方法であって、
前記処理対象ブロック特定ステップは、
前記原画像においてm×n(m、nは2以上の自然数)の領域からなる前記処理対象ブロックを特定する主処理対象ブロック特定ステップと、
前記原画像において前記処理対象ブロックを前記mの並び方向に領域単位で偏移させて第1補完ブロックを形成する第1補完ブロック形成ステップと、
記原画像において前記処理対象ブロックを前記nの並び方向に領域単位で偏移させて第2補完ブロックを形成する第2補完ブロック形成ステップと、を備え、
前記欠陥特定ステップは、
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する主欠陥特定ステップと、
前記第1補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する第1の補完的な欠陥特定ステップと、
前記第2補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する第2の補完的な欠陥特定ステップと、を含み、
前記座標変換ステップは、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完な欠陥特定ステップでそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する、
検査対象品の欠陥検出方法。
【請求項2】
前記検査結果作成ステップでは、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完な欠陥特定ステップでそれぞれ特定され、前記原座標に変換され欠陥において、確率の最も高いものを選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検査結果作成ステップでは、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完な欠陥特定ステップでそれぞれ特定され、前記原座標に変換された欠陥の座標より、前記原座標において欠陥座標のアンド集合若しくはオア集合を作成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1補完ブロック形成ステップでは前記第1補完ブロックを回転させ、前記第2補完ブロック形成ステップでは前記第2補完ブロックを回転させる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記処理対象ブロック特定ステップにおいて、m、n=2のとき、m側へ1つの領域分偏移させた前記第1補完ブロック90度回転させ、n側へ1つの領域分偏移させた第2補完ブロックを270度回転させ、m側とn側へそれぞれ1つの領域分偏移させた第3補完ブロックを180度回転させ、それぞれ得られた回転補完ブロックに対して前記欠陥特定ステップを実行する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割するステップと、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定ステップと、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定ステップと、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定ステップと、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換ステップと、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成ステップ、とを含む検査対象品の欠陥件検出方法であって、
前記処理対象ブロック特定ステップは、
前記原画像において前記処理対象ブロックを特定する主処理対象ブロック特定ステップと、
前記処理対象ブロックを基準に該処理対象ブロックの少なくとも一つの領域を共有する補完ブロックを形成する補完ブロック形成ステップと、を備え、
前記欠陥特定ステップは、
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する主欠陥特定ステップと、
前記補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する補完的な欠陥特定ステップと、を含み、
前記座標変換ステップは、前記主欠陥特定ステップ及び前記補完的な欠陥特定ステップでそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する、
検査対象品の欠陥検出方法。
【請求項7】
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割する願画像分割部と、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定部と、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定部と、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定部と、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換部と、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成部、とを含む検査対象品の欠陥件検出装置であって、
前記処理対象ブロック特定部は、
前記原画像においてm×n(m、nは2以上の自然数)の領域からなる前記処理対象ブロックを特定する主処理対象ブロック特定部と、
前記原画像において前記処理対象ブロックを前記mの並び方向に領域単位で偏移させて第1補完ブロックを形成し、記原画像において前記処理対象ブロックを前記nの並び方向に領域単位で偏移させて第2補完ブロックを形成する補完ブロック形成部と、を備え、
前記欠陥特定部は、
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する主欠陥特定ステップと、
前記第1補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する第1の補完的な欠陥特定ステップと、
前記第2補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する第2の補完的な欠陥特定ステップと、を実行し、
前記座標変換部は、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完的な欠陥特定ステップでそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する、
検査対象品の欠陥検出装置。
【請求項8】
前記検査結果作成部は、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完な欠陥特定ステップでそれぞれ特定され、前記原座標に変換された欠陥において、確率の最も高いものを選択する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記検査結果作成部は、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完な欠陥特定ステップでそれぞれ特定され、前記原座標に変換された欠陥の座標より、前記原座標において欠陥座標のアンド集合若しくはオア集合を作成する、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記補完ブロック形成部は、前記第1補完ブロック及び前記第2補完ブロックを回転させる、請求項7〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
処理対象ブロックがm×nの領域からなるとき、前記前記補完ブロック形成部は、m側へ1つの領域分偏移させた前記第1補完ブロック90度回転させ、n側へ1つの領域分偏移させた第2補完ブロックを270度回転させ、m側とn側へそれぞれ1つの領域分偏移させた第3補完ブロックを180度回転させ、
前記欠陥特定部は、得られた回転補完ブロックに対してそれぞれ欠陥の材料とその確率を特定する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割する願画像分割部と、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定部と、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定部と、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定部と、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換部と、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成部、とを含む検査対象品の欠陥件検出装置であって、
前記処理対象ブロック特定部は、
前記原画像において前記処理対象ブロックを特定する主処理対象ブロック特定部と、
前記処理対象ブロックを基準に該処理対象ブロックの少なくとも一つの領域を共有する補完ブロックを形成する補完ブロック形成部と、を備え、
前記欠陥特定部は、
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する主欠陥特定ステップと、
前記補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する補完的な欠陥特定ステップと、を実行し、
前記座標変換部は、前記主欠陥特定ステップ及び前記補完的な欠陥特定ステップでそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する、
検査対象品の欠陥検出装置。
【請求項13】
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割する願画像分割部と、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定部と、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定部と、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定部と、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換部と、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成部、とを含む検査対象品の欠陥件検出装置に用いられるコンピュータ用のプログラムであって、
前記処理対象ブロック特定部は主処理対象ブロック特定部及び補完ブロック形成部を備え、
前記主処理対象ブロック特定部に、前記原画像においてm×n(m、nは2以上の自然数)の領域からなる前記処理対象ブロックを特定させ、
前記補完ブロック形成部に、前記原画像において前記処理対象ブロックを前記mの並び方向に領域単位で偏移させて第1補完ブロックを形成させ、記原画像において前記処理対象ブロックを前記nの並び方向に領域単位で偏移させて第2補完ブロックを形成させ、
前記欠陥特定部に
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する主欠陥特定ステップと、
前記第1補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する第1の補完的な欠陥特定ステップと、
前記第2補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する第2の補完的な欠陥特定ステップと、を実行させ、
前記座標変換部に、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完的な欠陥特定ステップでそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換させる、コンピュータプログラム。
【請求項14】
前記検査結果作成部に、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完な欠陥特定ステップでそれぞれ特定され、前記原座標に変換された欠陥において、確率の最も高いものを選択させる、請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記検査結果作成部は、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完な欠陥特定ステップでそれぞれ特定され、前記原座標に変換された欠陥において、欠陥座標のアンド集合若しくはオア集合を作成させる、請求項13に記載のプログラム。
【請求項16】
前記補完ブロック形成部に、前記第1補完ブロック及び前記第2補完ブロックを回転させる、請求項13〜15に記載のプログラム。
【請求項17】
処理対象ブロックがm×nの領域からなるとき、前記前記補完ブロック形成部に、m側へ1つの領域分偏移させた前記第1補完ブロック90度回転させ、n側へ1つの領域分偏移させた第2補完ブロックを270度回転させ、m側とn側へそれぞれ1つの領域分偏移させた第3補完ブロックを180度回転させ、
前記欠陥特定部に、得られた回転補完ブロックに対してそれぞれ欠陥の材料とその確率を特定させる、
請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割する願画像分割部と、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定部と、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定部と、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定部と、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換部と、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成部、とを含む検査対象品の欠陥件検出装置に用いられるコンピュータ用のプログラムであって、
前記処理対象ブロック特定部は主処理対象ブロック特定部及び補完ブロック形成部を備え、
前記主処理対象ブロック特定部に前記処理対象ブロックを特定させ、
前記補完ブロック形成部に、前記処理対象ブロックを基準に該処理対象ブロックの少なくとも一つの領域を共有する補完ブロックを形成させ
前記欠陥特定部に
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する主欠陥特定ステップと、
前記補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する補完的な欠陥特定ステップと、を実行させ、
前記座標変換部に、前記主欠陥特定ステップ及び前記補完的な欠陥特定ステップでそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換させる、
コンピュータ用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査対象品の欠陥検出方法、その装置及びそのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品、例えばオーリングではその表面に小さな傷、凹凸その他の変形(以下、欠陥と総称する)があるとその性能が著しく低下する。
そこで従来では、オーリングを出荷する前に、画像処理技術を利用してその欠陥を検出していた。
画像処理の一例として、ディープラーニングによりニューラルネットワークに学習させる機能を適用した所謂AI処理装置を用いるものがある。
欠陥の検査の精度を上げるため、検査対象を撮影した画像は複数のブロックに分割されて、ブロックごとに欠陥の有無が検査される。
本願発明に関連する技術を示す先行文献として特許文献1及び特許文献2を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4657869号公報
【特許文献2】特開2017−166929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査対象の撮影画像を複数のブロックに分割し、分割されたブロックごとにAI処理することで、欠陥の検査に高い精度が確保される。
しかし、自動車に使用されるオーリングなどの精密部品は人命に関わるため、高精度な欠陥検出手法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、かかる課題に対応するものであり、その第1の局面は次のように規定される。即ち。
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割するステップと、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定ステップと、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定ステップと、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定ステップと、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換ステップと、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成ステップ、とを含む検査対象品の欠陥件検出方法であって、
前記処理対象ブロック特定ステップは、
前記原画像においてm×n(m、nは2以上の自然数)の領域からなる前記処理対象ブロックを特定する主処理対象ブロック特定ステップと、
前記原画像において前記処理対象ブロックを前記mの並び方向に領域単位で偏移させて第1補完ブロックを形成する第1補完ブロック形成ステップと、
記原画像において前記処理対象ブロックを前記nの並び方向に領域単位で偏移させて第2補完ブロックを形成する第2補完ブロック形成ステップと、を備え、
前記欠陥特定ステップは、
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する主欠陥特定ステップと、
前記第1補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する第1の補完的な欠陥特定ステップと、
前記第2補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する第2の補完的な欠陥特定ステップと、を含み、
前記座標変換ステップは、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完な欠陥特定ステップでそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する、
検査対象品の欠陥検出方法。
【0006】
このように規定される第1の局面の欠陥検索方法によれば、欠陥特定ステップにおいて、処理対象ブロックに対する主欠陥特定ステップに加えて、補完ブロックを利用して補完的な欠陥特定ステップが実行される。その結果、有効領域に対する欠陥検査が、補完的な欠陥特定ステップを実行した数だけ、多く実行されたこととなる。処理対象ブロックに含まれる有効領域は、第1補完ブロックや第2補完ブロックでは、ブロック全体において相対的に異なる位置に存在するので、AI処理においては、異なる対象となるからである。
【0007】
有効領域に映り込んでいる検査対象品の部分に欠陥があったとき、AI処理装置への入力態様が異なる(ブロックにおける相対的な位置が異なる)と、その確率に変化が生じる。この場合、最も高い確率の欠陥を採用することができる(第2の局面)。
なお、各ブロックにおいて特定された欠陥の座標は、原画像における原座標(絶対座標)に変換され、その座標が重複するものは同じ欠陥を指すものと考えられる。第2の局面では、各ブロックで検出された欠陥の座標が原座標において重複したとき、最も確率が高いものを採用することとした。
【0008】
他方、各ブロックで検出された欠陥の座標が原座標において重複したとき、重複したもののアンド集合又はオア集合を作成して、それを欠陥の座標とすることができる(第3の局面)。なお、アンド集合は、各ブロックにおいて特定された欠陥の座標の集合体に対応する原座標の座標の集合体の重複部分を指す。アンド集合では、各ブロックにおいて欠陥として特定されたもののなかで最も高い確率のもの(欠陥)を採用することができる。
オア集合は、各ブロックにおいて特定された欠陥の座標の集合体に対応する原座標の集合体の外郭で規定される。その確率は、各ブロックにおける欠陥の確率の平均を採用することができる。
【0009】
この発明の第4の局面は次の様に規定される。
第1〜第3のいずれかに規定の方法において、前記第1補完ブロック形成ステップでは前記第1補完ブロックを回転させる、前記第2補完ブロック形成ステップでは前記第2補完ブロックを回転させる。
このように規定される第4の局面の欠陥検査方法によれば、各補完ブロックに含まれる有効領域は、処理対象ブロックとの比較において、ブロックにおける相対的な位置に変化がつけられたことに加えて、補完ブロックを回転することにより、AI処理装置への入力態様に更に変化を与えられる。
【0010】
なお、処理対象ブロックが2×2の領域からなるときは、例えば横方向(m側)へ1つの領域分偏移させた第1補完ブロックを時計方向へ90度回転させ、縦方向(n側)へ1つの領域分偏移させた第2補完ブロックを同じく270度回転させ、横縦側へそれぞれ1つの領域分偏移させた第3補完ブロックは同じく180度回転させ、それぞれのブロックに対して欠陥特定処理を実行する(第5の局面)。これにより、ブロックに含まれる有効領域をAI処理装置へ入力する際の態様に均一かつ規則的な変化を与えることができる。
各補完ブロックを回転するときの回転中心は特に限定されるものではないが、ブロックの中心とすることが好ましい。
【0011】
以上を敷衍して、第6の局面は次のように規定される。即ち、
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割するステップと、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定ステップと、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定ステップと、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定ステップと、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換ステップと、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成ステップ、とを含む検査対象品の欠陥件検出方法であって、
前記処理対象ブロック特定ステップは、
前記原画像において前記処理対象ブロックを特定する主処理対象ブロック特定ステップと、
前記処理対象ブロックを基準に該処理対象ブロックの少なくとも一つの領域を共有する補完ブロックを形成する補完ブロック形成ステップと、を備え、
前記欠陥特定ステップは、
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する主欠陥特定ステップと、
前記補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する補完的な欠陥特定ステップと、を含み、
前記座標変換ステップは、前記主欠陥特定ステップ及び前記補完的な欠陥特定ステップでそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する、
検査対象品の欠陥検出方法。
【0012】
この発明は装置の発明として次のように規定することもできる。
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割する願画像分割部と、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定部と、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定部と、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定部と、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換部と、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成部、とを含む検査対象品の欠陥件検出装置であって、
前記処理対象ブロック特定部は、
前記原画像においてm×n(m、nは2以上の自然数)の領域からなる前記処理対象ブロックを特定する主処理対象ブロック特定部と、
前記原画像において前記処理対象ブロックを前記mの並び方向に領域単位で偏移させて第1補完ブロックを形成し、記原画像において前記処理対象ブロックを前記nの並び方向に領域単位で偏移させて第2補完ブロックを形成する補完ブロック形成部と、を備え、
前記欠陥特定部は、
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する主欠陥特定ステップと、
前記第1補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する第1の補完的な欠陥特定ステップと、
前記第2補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する第2の補完的な欠陥特定ステップと、を実行し、
前記座標変換部は、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完な欠陥特定ステップでそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する、
検査対象品の欠陥検出装置。
このように規定される第7の局面の発明によれば、第1の局面に規定の発明と同じ効果が得られる。
【0013】
この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、
第7の局面に規定の装置において、前記検査結果作成部は、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完な欠陥特定ステップでそれぞれ特定され、前記原座標に変換された欠陥において、確率の最も高いものを選択する。
このように規定される第8の局面の発明によれば、第2の局面の発明と同じ効果が得られる。
【0014】
この発明の第9の局面は次のように規定される。即ち、
第7の局面に規定の装置において、前記検査結果作成部は、前記主欠陥特定ステップ、前記第1の補完的な欠陥特定ステップ及び前記第2の補完な欠陥特定ステップでそれぞれ特定され、前記原座標に変換された欠陥の座標より、前記原座標において欠陥座標のアンド集合若しくはオア集合を作成する。
このように規定される第9の局面の発明によれば、第3の局面の発明と同じ効果が得られる。
【0015】
この発明の第10の局面は次のように規定される。即ち、
第7〜9のいずれかの局面に規定の装置において、前記補完ブロック形成部は、前記第1補完ブロック及び前記第2補完ブロックを回転させる。
このように規定される第10の局面の発明によれば、第4の局面の発明と同じ効果が得られる。
【0016】
この発明の第11の局面は次のように規定される。即ち、
第10の局面に規定の装置において、処理対象ブロックがm×nの領域からなるとき、前記前記補完ブロック形成部は、m側へ1つの領域分偏移させた前記第1補完ブロック90度回転させ、n側へ1つの領域分偏移させた第2補完ブロックを270度回転させ、m側とn側へそれぞれ1つの領域分偏移させた第3補完ブロックを180度回転させ、
前記欠陥特定部は、得られた回転補完ブロックに対してそれぞれ欠陥の材料とその確率を特定する。
このように規定される第11の局面の発明によれば、第5の局面の発明と同じ効果が得られる。
【0017】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割する願画像分割部と、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定部と、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定部と、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定部と、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換部と、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成部、とを含む検査対象品の欠陥件検出装置であって、
前記処理対象ブロック特定部は、
前記原画像において前記処理対象ブロックを特定する主処理対象ブロック特定部と、
前記処理対象ブロックを基準に該処理対象ブロックの少なくとも一つの領域を共有する補完ブロックを形成する補完ブロック形成部と、を備え、
前記欠陥特定部は、
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する主欠陥特定ステップと、
前記補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する補完的な欠陥特定ステップと、を実行し、
前記座標変換部は、前記主欠陥特定ステップ、及び前記補完的な欠陥特定ステップでそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する、
検査対象品の欠陥検出装置。
【0018】
この発明はプログラムの発明として次のように規定することもできる。
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割する願画像分割部と、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定部と、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定部と、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定部と、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換部と、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成部、とを含む検査対象品の欠陥件検出装置に用いられるコンピュータ用のプログラムであって、
前記処理対象ブロック特定部は主処理対象ブロック特定部及び補完ブロック形成部を備え、
前記主処理対象ブロック特定部に、前記原画像においてm×n(m、nは2以上の自然数)の領域からなる前記処理対象ブロックを特定させ、
前記補完ブロック形成部に、前記原画像において前記処理対象ブロックを前記mの並び方向に領域単位で偏移させて第1補完ブロックを形成させ、記原画像において前記処理対象ブロックを前記nの並び方向に領域単位で偏移させて第2補完ブロックを形成させ、
前記欠陥特定部に
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定させ、
前記第1補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定させ、
前記第2補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定させ、
前記座標変換部に、前記主欠陥特定ブロック、前記第1補完ブロック及び第2補完ブロックについてそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換させる。
コンピュータ用のプログラム。 このように規定される第13の局面の発明によれば、第1の局面に規定の発明と同じ効果が得られる。
【0019】
この発明の第14の局面は次のように規定される。即ち、
第13の局面に規定のプログラムにおいて、前記主欠陥特定ブロック、前記第1補完ブロック及び第2補完ブロックについてそれぞれ特定され、前記原座標に変換された欠陥において、確率の最も高いものを選択させる。
このように規定される第14の局面の発明によれば、第2の局面の発明と同じ効果が得られる。
【0020】
この発明の第15の局面は次のように規定される。即ち、
第7の局面に規定のプログラムおいて、前記主欠陥特定ブロック、前記第1補完ブロック及び第2補完ブロックについてそれぞれ特定され、前記原座標に変換された欠陥の座標より、前記原座標において欠陥座標のアンド集合若しくはオア集合を作成させる。
このように規定される第15の局面の発明によれば、第3の局面の発明と同じ効果が得られる。
【0021】
この発明の第16の局面は次のように規定される。即ち、
第13〜15のいずれかの局面に規定のプログラムにおいて、前記補完ブロック形成部に、前記第1補完ブロック及び前記第2補完ブロックを回転させる。
このように規定される第16の局面の発明によれば、第4の局面の発明と同じ効果が得られる。
【0022】
この発明の第17の局面は次のように規定される。即ち、
第16の局面に規定のプログラムにおいて、処理対象ブロックがm×nの領域からなるとき、前記前記補完ブロック形成部に、m側へ1つの領域分偏移させた前記第1補完ブロック90度回転させ、n側へ1つの領域分偏移させた第2補完ブロックを270度回転させ、m側とn側へそれぞれ1つの領域分偏移させた第3補完ブロックを180度回転させ、
前記欠陥特定部に、得られた回転補完ブロックに対してそれぞれ欠陥の材料とその確率を特定させる。
このように規定される第17の局面の発明によれば、第5の局面の発明と同じ効果が得られる。
【0023】
この発明の第18の局面は次のように規定される。即ち、
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割する願画像分割部と、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定部と、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定部と、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定部と、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換部と、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成部、とを含む検査対象品の欠陥件検出装置に用いられるコンピュータ用のプログラムであって、
前記処理対象ブロック特定部は主処理対象ブロック特定部及び補完ブロック形成部を備え、
前記主処理対象ブロック特定部に前記処理対象ブロックを特定させ、
前記補完ブロック形成部に、前記処理対象ブロックを基準に該処理対象ブロックの少なくとも一つの領域を共有する補完ブロックを形成させ
前記欠陥特定部に
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定させ、
前記補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定させ、
前記座標変換部に、前記主欠陥特定ブロック及び前記補完ブロックについてそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換させる、
コンピュータ用のプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は本発明の実施形態の欠陥検出装置の機能ブロック図である。
図2図2は欠陥検出装置の動作を示すフローチャートである。
図3図3は検査対象であるオーリングの撮影画像(原画像)にグリッドを付して領域に分割した状態を示す。
図4図4はオーリングが映り込んでいる有効領域にマーク(図中で薄墨色)を付した状態を示す。
図5図5は処理対象ブロックを示す模式図である。
図6図6は補完ブロックを示す模式図である。
図7図7は回転させた補完ブロックとその回転規則を示す模式図である。
図8図8は欠陥検出装置のハード構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施形態に基づき更に詳細に説明する。
図1は実施の形態の欠陥検出装置1の機能を示すブロック図である。
この欠陥検出装置1のカメラ3は例えばCCDデバイスを備え、検査対象をその背景とともに撮影する。
撮影された画像(原画像)は原画像保存部4に保存され、原画像分割部5により原画像は複数の領域に分割される。領域の大きさや形状は任意に選択できるが、グリッド(格子)状にすることが好ましい。
有効領域特定部7では、検査対象が映り込んでいる領域にフラグをたててこれを有効領域とする。換言すれば、背景のみの領域を不活性化して後の画像処理の対象としないようにする。
【0026】
処理対象ブロック特定部8の主処理対象ブロック特定部9は、例えば縦(2)×横(2)の4つの領域の塊のように、原画像から複数の領域(相互に連続したもの)を選択し、少なくとも1つの有効領域が含まれるものを処理対象ブロックとする。なお、処理対象ブロック特定部9で特定された処理対象ブロックに基づき、補完ブロック形成部10は、所定のルールに基づき補完ブロックを形成する。処理対象ブロックと補完ブロックとは領域の数およびその並び方において同一とすることが好ましいが、領域の数や並び方に変化をつけることもできる。
欠陥特定部13はAI処理部131を含む。処理対象ブロック特定部9で特定された処理対象ブロック及び補完ブロック形成部10で形成された各ブロックが欠陥特定部13のAI処理部131へ入力される。AI処理部131は汎用的なニューラルネットワーク用いており、欠陥の有無の判断のため、十分な教師データが読み込まれているものとする。
この例では、AI処理部としてドスパラ社製のBTO Core−i9−9940X、メモリ64GBを用い、AI用のソフトウエアとしてテクムズ社のDEEPS AI Inspectionを用いた。ブロック単位で欠陥の無い教師データが5000枚、欠陥のある1000枚の教師データが読み込まれるものとする。その他、GPUとして Nvidia社製 GeForce RTX 2080 Ti を用いている。
【0027】
欠陥特定部131へ入力されたブロックの画像、即ち処理対象ブロックの画像及びその補完ブロックの画像がAI処理部131で処理されて、欠陥が検出されたとき(所定の確率より高いもの)は、その欠陥の座標とその確率がブロックデータ保存部15の欠陥座標保存部151と欠陥の確率保存部153にそれぞれ保存される。
【0028】
ブロックデータ保存部15に保存される欠陥の座標は、ブロック毎に定められた座標である。そこで、座標変換部17は、原画像の原座標保存部11に保存されている原座標と処理対象ブロック特定部9によるブロック特定のルール及び補完ブロック形成のルールを参照して、ブロックデータ保存部15の欠陥座標保存部151に保存されている欠陥の座標を原画像の原座標に対応つける。このようにして原座標に変換された欠陥の座標は原画像データ保存部21の欠陥座標保存部211に保存される。それとともに、欠陥の確率がブロックデータ保存部15の欠陥の確率保存部153から原画像データ保存部21の欠陥の確率保存部213にコピーされる。
【0029】
原画像の全域をカバーするように主処理対象ブロックを特定して、さらにそれらの補完ブロックを形成して、各ブロックにつきAI処理を実行し、原画像の全域において欠陥の座標とその確率を特定し、原画像データ保存部21に保存する。
原画像データ保存部21においては、各ブロックにおいて特定された欠陥の座標が重複して保存される。換言すれば、各ブロックのデータが原座標に変換されて、それぞれ保存されている。
【0030】
検査結果作成部23は、原画像データ保存部21に蓄積されたデータを参照して検査対象品の検査結果を作成する。
検査結果として、例えば所定の確率以上の欠陥が存在したときは、検査対象品はNGとして、例えば製造ラインから除去する。
【0031】
次に、図2を参照して、製造ラインを流れるオーリングを検査対象の例として、欠陥検出装置1の動作を説明する。
ステップ1では、カメラ3により、オーリング100を撮影する。このとき、背景は白色など明るい色として、黒色のオーリング100とのコントラストを大きくしておくことが好ましい。
この撮影によりオーリング100とその背景の原画像が得られ、原画像保存部4に保存される。
撮影された画像(原画像)の例を図3に示す。
【0032】
ステップ3では、原画像保存部4に保存された原画像が原画像分解部5により、図3に示すように点線で示すグリッドより100個の領域(m0,n0)〜(m9,n9)に分割される。ここで、分割とは、画像処理対象を構成する領域を指定することをいう。
なお、原画像の座標(原座標)は、例えば領域(m0、n0)の左上端を原点として、画素に応じて付されて、原画像の原座標保存部11に保存される。
【0033】
ステップ5では、有効領域特定部7が、領域ごとにオーリング100が映り込んでいるか否かを判断する。オーリング100が映り込んでいる領域が有効領域となる。
図4の例では有効領域にマークした。例えば、領域(m4,n1)、領域(m2,n2)……が有効領域である。
ステップ7では、処理対象ブロック特定部8の主処理対象ブロック特定部9が処理対象ブロックを特定する。この例では、図5に示すように、原画像の左端上から、順次、図示右方向に4つの領域からなるブロックを特定する。図面上、各ブロックに数1,2,3…を付してある。
【0034】
ここで処理対象となるブロックは、有効領域を少なくとも1つ含むブロックである。
したがって、ステップ7において、主処理対象ブロック特定部9により有効領域を少なくとも1つ含むブロックが処理対象ブロックとして特定される。図5の例において数値をふったブロックでは、ブロック3、6が該当する。
これにより、処理対象の数を削減できる。
更にステップ8では、補完ブロック形成部10により補完ブロックが形成れる。図6に補完ブロックの例を示す。図6において、第1補完ブロックは、処理対象ブロック3をm方向(図示右方向)へ1領域分偏移させたものである。同じく第2補完ブロック2は、処理対象ブロック3をn方向(図示下方向)へ1領域分偏移させたものである。第3補完ブロック3は、処理対象ブロック3をm、n方向へそれぞれ1領域分偏移させたものである。
【0035】
ステップ9では、ステップ7で特定された処理対象ブロック3と補完ブロック形成部10により形成された第1〜3補完ブロックとが、欠陥特定部13のAI処理部131においてAI処理される。
なお、この例では、第1補完ブロックには、有効領域が含まれていないので、AI処理を省略可能である。
換言すれば、このステップ9では、オーリング100が映り込んだ有効領域を含む処理対象ブロックが特定されたことをトリガとして、当該処理対象ブロックを基準にしてAI処理が計4回実行される。そして、AI処理されるブロックは、当初処理対象として特定された処理対象ブロックに加え、これを基準にして加工形成したものである。図6の例では、基準となるブロック(処理対象ブロック)から、m方向、n方向へそれぞれ1単位の領域偏移するようにこれを加工形成して補完ブロックとしている。
ステップ7で特定された処理対象ブロックがP領域(m方向、3≦P)×Q領域(n方向、3≦Q)から構成されるときは、m方向、n方向へそれぞれ2単位以上の領域分を偏移させて補完ブロックを形成することもできる。
【0036】
加工形成された補完ブロックに更に加工を加えることもできる。例えば、補完ブロックを所定のピッチで回転させる。回転の角度(ピッチ)は、360度を補完ブロック数+1で除した角度であり、回転中心は補完ブロックの中心点とすることが好ましいが、特にこれに限定されるわけでない。
図7の例では、補完ブロックを各補完ブロックの中心点を中心にして回転させて回転補完ブロックを形成している。回転角度のピッチは時計周り方向で90度である。
なお、第1補完ブロック1は、これに有効領域が含まれていないので、回転対象から外すことができる。
このようにして得られた回転補完ブロックはステップ9においてAI処理される。
【0037】
AI処理の結果はブロックごとにブロックデータ保存部15に保存される(ステップ11)。より具体的には、欠陥の確率が所定値(例えば80%)以上のものを欠陥と判定して、処理対象となったブロックの座標を欠陥座標保存部151に保存し、それにリンクして、欠陥の確率が欠陥の確率保存部153に保存される。
【0038】
ブロックデータ保存部15の欠陥座標保存部151に保存されている欠陥の座標は、各ブロックの独自の座標である。例えば、処理対象ブロックであれば領域(m4,n0)の左上端部を原点として処理対象ブロックの座標は規定され、第2補完ブロックであれば領域(m4,n1)の左上端部を原点として補完ブロックの座標が規定される。
そこで、ステップ13において、各ブロックで特定された欠陥の座標を統合するため、各ブロックの座標を原画像の原座標((m0,n0)の左上端を原点とする))に変換する。
これにより、各ブロックにおいて欠陥があると特定された座標は、ブロック毎に原座標に変換されて、原画像データ保存部21の欠陥座標保存部211に保存される。
なお、欠陥の確率保存部153に保存されていた各欠陥の確率は、これがリンクされた欠陥座標が原座標に変換されたとき、当該リンクを維持して原画像データ保存部211の欠陥の確率保存部213に保存される。
【0039】
なお、上記のようにブロックの座標を原画像の座標に変換する際、座標変換部17は原画像の原座標保存部17の座標に関するデータと、処理対象ブロック特定部8によるブロックの特定ルールとを参照する。なお、補完ブロックについては、補完ブロック形成部10による補完ブロック形成のルールが参照される。
【0040】
検査結果作成部23は原画像データ保存部211の欠陥座標保存部211に保存されている欠陥座標と、同じく欠陥の確率保存部213に保存されている欠陥座標の確率とに基づき、欠陥有無及びその確率や欠陥の位置を特定し、検査結果として出力する。
ここに、原画像データ保存部21には各ブロックからのデータが独立して保存されているので、原座標データからみたとき、一つのブロックからのデータでは欠陥有りと判定された座標が他のブロックからのデータでは欠陥無し、と判定されることがある。
このような場合、安全率を高める見地から、当該座標には欠陥ありと判定することができる。換言すれば、原座標の各座標に対応する各ブロックからのデータにおいて、欠陥として最も高い確率を採用する。
勿論、各ブロックからのデータにリンクされた確率の平均を演算して、欠陥の有無を判定することもできる。
更には、各ブロックからのデータにおいてすべて欠陥有りと判定された座標のみ欠陥ありとすることもできるし(アンド集合)、各ブロックからのデータのひとつでも欠陥ありと判定された座標を欠陥あり(オア集合)とすることもできる。
このように、検査結果作成部23は、検査対象や検査目的に応じて、任意のルールに従って、検査の結果を作成することができる。
【0041】
この欠陥検査装置1のハード構成を図8に示す。
演算部300はCPU301、ROM303及びRAM305を備え、システム全体の制御をつかさどる。それとともに、原画像分割部5、有効領域特定部7、処理対象ブロック特定部8、欠陥特定部13、座標変換部17及び検査結果作成部23として機能する。ROM303は、演算部300を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリを含む。RAM305は、キーボード等の入力装置330を介して利用者により予め設定された各種設定値を読み出し可能に格納したり、CPU301に対してワーキングエリアを提供したりする。演算部300を制御する制御プログラムはROM303に限らずRAM305や第1記憶装置311及び第2記憶装置313に格納されていてもよい。
CPU301はニュートラルネットワーク処理に適したものが好ましく、ROM303若しくは第1及び第2記憶装置311,313はディープラーニング時に用いる大量のデータを保存できる容量を持つものとする。
【0042】
第1記憶装置311は原画像保存4、原画像の原座標保存部11として機能する。第2記憶装置313はブロックデータ保存部15及び原画像データ保存部21として機能する。
これら第1及び第2の記憶装置311,313はハードメモリやフラッシュメモリなど、サーバシステムのメモリ装置の一部の領域を利用することが好ましい。
なお、データを一時的に保存する、いわゆるバッファメモリには、演算部のRAMの一部領域を利用できる。
出力装置320はディスプレイや音声出力装置であり、入力装置330は音声入力部や、ディスプレイに重ねて配置されるタッチパネル式のキーボートやマウスなどが該当する。また、入力装置330はAI処理のための教師データ(画像データ)を入力できるものとする。
カメラ3には汎用的はCCDカメラを用いることができる。その解像度や焦点深度などのカメラのスペックは任意に設定可能である。
コンピュータを構成する各装置はシステムバス340で連結されている。
【0043】
本発明の効果を確認するため、下記の実験を行った。
検査対象:ゴム製品(長径約4cm)
カメラの解像度:2048x1536
グリッドの数(m=13、n=10)
処理対象ブロック:(m=2、n=2)
補完ブロック:図6のように3つを形成
教師データの数 (正=5,000、誤=1,000)
AIソフト:テクムズ社 DEEPS AI Inspection
PC:ドスパラ社製BTOパソコン(Core−i9−9940X,メモリ64GB,GPU:Nvidia社製 GeForce RTX 2080Ti)
検査対象: 正常品22枚、異常品74枚
欠陥の見落としや誤って欠陥と判断した、いわゆる精度は97.92%であった。
他方、上記実験において、補完ブロックを形成しないときの精度は94.79%であった。
【0044】
以上の結果を踏まえ、本発明は次のように敷衍することができる。
背景と供に検査対象を撮影した原画像を複数の領域に分割するステップと、
該分割された領域において前記検査対象が映り込んでいるか否かを判断し、該検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定ステップと、
前記原画像より選択された複数の領域からなり、少なくとも一つの前記有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定ステップと、
特定された処理対象ブロックに対しAI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥が存在したとき処理対象ブロックにおける該欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定ステップと、
欠陥特定ステップで得られた欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する座標変換ステップと、
該原座標における欠陥の座標とその確率に基づき、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成ステップ、とを含む検査対象品の欠陥件検出方法であって、
前記処理対象ブロック特定ステップは、
前記原画像において前記処理対象ブロックを特定する主処理対象ブロック特定ステップと、
前記処理対象ブロックを基準に該処理対象ブロックの少なくとも一つの領域を共有する補完ブロックを形成する補完ブロック形成ステップと、を備え、
前記欠陥特定ステップは、
前記処理対象ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する主欠陥特定ステップと、
前記補完ブロックにおける欠陥の座標とその確率を特定する補完的な欠陥特定ステップと、を含み、
前記座標変換ステップは、前記主欠陥特定ステップ及び前記補完的な欠陥特定ステップでそれぞれ特定された欠陥の座標を前記原画像の原座標に変換する。
検査対象品の欠陥検出方法。
【0045】
この発明は、上記発明の実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…欠陥検出装置
3…カメラ
5…原画像分割部
7…有効領域特定部
8…処理対象ブロック特定部
9…主処理対象ブロック特定部
10…ブロック加工形成部
13…欠陥特定部
15…ブロックデータ保存部
21…原画像データ保存部
23…検査結果作成
131…AI処理部
【要約】      (修正有)
【課題】AI技術を用いた高精度の欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】分割するステップと、検査対象が映り込んでいる領域を有効領域とする有効領域特定ステップと、少なくとも一つの有効領域を含む処理対象ブロックを特定する処理対象ブロック特定ステップと、AI処理を実施して欠陥の有無を検出し、欠陥の座標とその確率を特定する欠陥特定ステップと、座標変換ステップと、欠陥の検査結果を作成する検査結果作成ステップ、とを含む検査対象品の欠陥件検出方法であって、原画像においてm×n(m、nは2以上の自然数)の領域からなる処理対象ブロックを特定するステップと、第1補完ブロック形成ステップと、第2補完ブロック形成ステップと、を備え、欠陥特定ステップは、主欠陥特定ステップと、第1の補完的な欠陥特定ステップと、第2の補完的な欠陥特定ステップと、を含み、座標変換ステップは、特定された欠陥の座標を原画像の原座標に変換する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8