【実施例】
【0019】
図1は本発明の電力貯蔵用フライホイール装置の実施例、
図2はそのロータユニットである。
軸16は円筒形状のフライホイール11の貫通穴11aに相通され、両端に自律分散式転がり軸受15が組み込まれている。軸16の両端は自律分散式転がり軸受15の内輪内径から突出し、この部分を円筒形状の減圧容器10の側板10a、10bに形成された凹部10cに嵌合させることにより、フライホイール11を減圧容器10に対し回転自在に支持している。同時に軸16は、減圧容器10が減圧された時に両側板が受ける大気圧に抗する作用も有している。
【0020】
フライホイール11の片端面にリング状の短絡コア14が固着その上に軸16方向の磁束密度の高いハルバッハ配列の複数極の永久磁石12が固着されている。減圧容器の永久磁石側側板10aは導電率の低い樹脂材料としている。
軸16の一端は逆止弁17が設けられ、そこから両端の自律分散式転がり軸受近傍に給油穴18が連通している。減圧容器10の側板10aは外部から逆止弁を開放して自律分散式転がり軸受に潤滑剤を補給するための穴19が開口している。減圧容器内の気密は、減圧時に永久磁石側側板10aが大気圧により軸16の一端に押し付けられることによって確保される。
【0021】
位相検出手段13はフライホイールの角度位相を随時無線手段により電動発電機制御ユニット3に出力している。ロータユニット1は2列4個あり、右列が1Raと1Rb、左列が1Laと1Lbとなっている。ステータユニット2の複数のコイル21は、ロータユニット1の永久磁石12の配列に対応して配置されている。
【0022】
電動発電機制御ユニット3は、ロータユニットとステータユニットをフライホイールへのエネルギー蓄積時は電動機として、エネルギー放出時は発電機として機能させるべく、位相検出手段13から得られるロータ位相に同期させてコイル21への通電切替えを行う。トラバースユニット4は伸縮軸41と反転軸42からなり先端にステータユニットがセットされる。
【0023】
次に作用を説明する。
図1に示す第一の相対位置Aは、ステータユニット2のコイルへの交流電圧の印加により生成される回転磁界の中心を、ロータユニット1Raの永久磁石12の回転中心と略一致させると共に、コイル21と永久磁石12のギャップを縮小して電磁誘導を強めた位置である。この位置からエネルギーを蓄積する場合、電動発電機制御ユニット3は、供給される電力に応じてステータユニット2への励磁周波数を増加させることによりロータユニット1Raのフライホイール11を加速させる。
【0024】
速度上昇によって所定エネルギーが蓄積されたらトラバースユニット4は第二の相対位置B(エネルギー非授受時の定位置)に移動する。即ち、トラバースユニットの伸縮軸41を縮め(図示aの動作)ステータユニット2とロータユニット1Ra間のギャップを拡大して電磁誘導を弱めた後、ステータユニットの永久磁石面が上面となるまで、反転軸42を90°回転(図示bの中間)させコイル21と永久磁石12の電磁誘導を最小化する。
ハルバッハ配列の磁石は軸方向の磁束密度を高くしているので、ギャップ拡大動作のみでの電磁誘導の最小化は、伸縮軸41やその占有スペースの大型化を招くが反転軸42によりコイルの巻回面を永久磁石の磁力線方向と平行にすることにより効果的に電磁誘導を最小化している。これによりロータユニットが作る回転磁界による鉄損、ロータユニットの速度低下を最小限とする。電動発電機制御ユニット3はこの状態でステータユニットの回転磁界生成を休止することが出来る。
【0025】
エネルギー蓄積を継続する場合、トラバースユニット4は反転軸42をさらに90°回転させた後、電動発電機制御ユニット3がロータユニット1Laの位相検出手段13の情報によりコイル21への印加電圧の周波数と位相を調節してロータユニット1Laの永久磁石と同期させつつ、トラバースユニット4の伸縮軸41を伸ばし(図示cの動作)ステータユニット2とロータユニット1Laのギャップを縮小して電磁誘導を強め、供給される電力に応じて電動発電機制御ユニット3からの指令によりロータユニット1Laのフライホイールの速度を上げる。
ロータユニット1Raは蓄積エネルギーを放出するときまでコンベア(図中不記)により図の上方へ移動し、代わってエネルギーが放出されているロータユニット1Rbがこの位置に待機する。
【0026】
エネルギーを放出する場合は、トラバースユニットがステータユニットを、エネルギー蓄積済みのロータユニットに近接して電磁誘導を強めることにより、永久磁石が作る回転磁界によりステータユニットのコイルが発電する。
また、エネルギー蓄積中の一時的なエネルギー放出をおこなう場合、ロータユニットを切り替えず、電動発電機制御ユニット3の回路切り替え(ステータユニットを電動機から発電機に切り替え)で対応する。これは公知の短周期蓄電用フライホイール装置の作用である。
【0027】
なお、待機状態に入る際に、ステータユニットのコイル21に永久磁石を減磁させるタイミングで大電流を流す、あるいは外部から永久磁石12にレーザーを照射する、等の手段によって永久磁石12を減磁して、待機中の鉄損をより減らすことも可能である。この場合はエネルギー授受開始時にコイル21に永久磁石を着磁させるタイミングと極性の大電流を流すことで永久磁石12の磁力を回復させる。
【0028】
また、トラバース操作の間ステータユニットはロータユニットと結合されないためにエネルギー授受が出来ないが、系統電力等のニーズによりこれが不都合である場合は、別途トラバース操作中の電力を蓄えるキャパシタ等の小型蓄電ユニット(図中不記)へ回路を切り変える機能を電動発電機制御ユニット3に追加することができる。
【0029】
エネルギー蓄積体であるフライホイール11を含まないステータユニット2は小型軽量であるので、ロータユニット1Raから1Laへ電磁誘導対象の切り換えを比較的短時間で行うことができる。よって前記小型蓄電ユニットはロータユニットよりも小規模なもので良い。
一方コンベア(図中不記)によるロータユニット1の入替えは、重量物であるフライホイールを含むので時間を要するが、ロータユニット1Raから1Rbへの入替えでは、反対側のロータユニット1Laの蓄積エネルギーがゼロになるまでの間に完了すれば良いので、この入替え装置は汎用コンベアーが適用できる。
【0030】
図3は本発明の電力貯蔵用フライホイール装置の第二実施例である。
図1との相違点を以下に列挙する。このロータユニット1のフライホイール11は回転軸を鉛直方向としている。10個のロータユニットはトラバースユニット4の周囲に配置されているが、通常第二の相対位置B(エネルギー非授受時の定位置)は空きスペースとしており、エネルギー非授受時のステータユニットは通常ここに位置する。トラバースユニットは2つのアーム4Ra、4Rbを持ち、その各々に伸縮軸4Za,4Zbを持つ。伸縮軸の先端にはロータユニット1との電磁誘導において、発電機での効率を最大化したステータユニット2a、及び電動機での効率を最大化したステータユニット2bが装着されている。
【0031】
本構成によれば、通常時のエネルギー放出時は発電機での効率を最大化したステータユニット2aを使用し、通常時のエネルギー蓄積時は電動機での効率を最大化したステータユニット2bを使用することによりエネルギー授受における損失を低く抑えられる。また時間当たりエネルギー授受量をより大きくしたい場合はこれら2種類のステータユニットを同時にエネルギー蓄積、またはエネルギー放出に使用することで達成される。
【0032】
また、2個のステータユニットの定格出力は同じである必要はない。例えば放電出力を急峻に変化させたい場合は発電機として最適化されたステータユニット2aのみ大型とすることが出来る。その場合、電動機用である小型のステータユニット2bは小電力用としてロータユニット駆動を効率化することが出来る。
さらに緊急的な時間当たりエネルギー放出量の増大対策として、既設のトラバースユニット4とは別に、予備のステータユニット2をフォークリフト(図中不記)等によってロータユニットと電磁誘導させるとも可能である。その際のフォークリフトはトラバースユニット4である。