特許第6703700号(P6703700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6703700プッシュ型流体圧シリンダ及びリンク式クランプ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703700
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】プッシュ型流体圧シリンダ及びリンク式クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20200525BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   F15B15/14 380A
   F15B15/14 380B
   F15B15/14 315
   B23Q3/06 302F
   B23Q3/06 302B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-131579(P2016-131579)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2018-3958(P2018-3958A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】596037194
【氏名又は名称】パスカルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 卓也
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−152877(JP,A)
【文献】 特開平10−61609(JP,A)
【文献】 特開昭61−59007(JP,A)
【文献】 特公昭47−26630(JP,B1)
【文献】 特開2009−2524(JP,A)
【文献】 特開2015−223647(JP,A)
【文献】 実公昭38−23205(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
B23Q 3/06
F15B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力用ロッドが伸長する側へ駆動可能なプッシュ型流体圧シリンダにおいて、
シリンダ本体と、
シリンダ本体内に仕切り壁を挟んで直列状に形成された複数のシリンダ孔と、
前記複数のシリンダ孔のうちの前記出力ロッド側の主シリンダ孔に収容された主ピストン及びこの主ピストンに固定された前記出力用ロッドとを含む主ピストン部材と、
前記主シリンダ孔以外の副シリンダ孔に収容された副ピストンと、この副ピストンから仕切り壁を貫通して前記出力ロッド側へ延び且つ主ピストン又は副ピストンに当接可能な副ロッドとを含む1又は複数の副ピストン部材と、
前記シリンダ本体に形成された第1流体圧ポートから延びるように前記シリンダ本体の壁部内に形成されて主シリンダ孔のうちの出力ロッドと反対側の第1流体圧作動室に連通された第1流体通路と、
前記副ピストン部材に貫通状に形成され且つ前記第1流体圧作動室を副シリンダ孔のうちの出力ロッドと反対側の第2流体圧作動室に連通させる1又は複数の第2流体通路と、
を備えたことを特徴とするプッシュ型流体圧シリンダ。
【請求項2】
前記シリンダ本体に形成された第2流体圧ポートから延びるように前記シリンダ本体の壁部内に形成されて主シリンダ孔のうちの出力ロッド側の第3流体圧作動室に連通された第3流体通路を備えたことを特徴とする請求項1に記載のプッシュ型流体圧シリンダ。
【請求項3】
前記シリンダ本体の壁部内に形成され且つ前記第3流体通路から延びて副シリンダ孔のうちの前記出力ロッド側の第4流体圧作動室に連通された第4流体通路と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載のプッシュ型流体圧シリンダ。
【請求項4】
前記シリンダ本体の壁部内に形成され且つ副シリンダ孔のうちの出力ロッド側の第4流体圧作動室を外界に連通させる連通孔を備えたことを特徴とする請求項2に記載のプッシュ型流体圧シリンダ。
【請求項5】
前記シリンダ本体は、主シリンダ孔を形成する第1シリンダ本体と、副シリンダ孔を形成する第2シリンダ本体とを有し、第1シリンダ本体の第1端部側部分に第2シリンダ本体の第2端部側部分を螺合にて締結する締結機構を有し、
前記仕切り壁は第1,第2シリンダ本体とは別体に形成され、この仕切り壁の外周部は第1,第2シリンダ本体の間に挟着されたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のプッシュ型流体圧シリンダ。
【請求項6】
前記副シリンダ孔を2つ設け、前記副ピストン部材を2つ設けたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のプッシュ型流体圧シリンダ。
【請求項7】
請求項1のプッシュ型流体圧シリンダを有し、前記出力ロッドの外端部にピン結合されたクランプアームと、このクランプアームの途中部をクランプ本体に連結するリンク部材とを備えたことを特徴とするリンク式クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュ型流体圧シリンダ及びリンク式クランプ装置に関し、複数の受圧ピストンを介して出力増大が可能で、流体圧通路の構成を簡単化したプッシュ型流体圧シリンダ及びリンク式クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の流体圧シリンダは、シリンダ本体内に1つの受圧ピストンを設ける構造であるため、その出力増大を図るには、受圧ピストンを大径化したり、流体圧を高める必要がある。そこで、特許文献1には、シリンダ本体内に仕切り壁で仕切った4つのシリンダ孔を直列的に形成し、これら4つのシリンダ孔内に夫々ピストンを収容し、シリンダ本体のロッド側端壁と、複数のピストンと、複数の仕切り壁とを貫通する連続した1本の出力ロッドを設けた流体圧シリンダが記載されている。この流体圧シリンダでは、4つのシリンダ孔に夫々2つの流体圧ポートを形成している。
【0003】
特許文献2の流体圧シリンダ装置は、シリンダチューブと、シリンダチューブのシリンダ孔に収容された大径ピストン(内側カバー)と、この大径ピストンから上方へ延びる中空ロッドとを有し、この中空ロッド内に収容された内側ピストンから大径ピストンを貫通して第1圧力室に延び且つシリンダチューブのヘッド側端壁に固定された内側ロッドとを有する。第1圧力室から中空ロッド内の第2圧力室に流体圧を供給する連通通路が形成され、第1圧力室の流体圧で大径ピストンを上方へ駆動すると共に第1圧力室から連通通路を介して第2圧力室に流体圧を供給して中空ロッドを上方へ駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−323306号公報
【特許文献2】特開平10−61612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の流体圧シリンダでは、4つのシリンダ孔に夫々2つの流体圧ポートを形成しているため、流体圧ポートの数が多くなり、流体圧供給用の配管やホース類の接続個所も多くなるため、流体圧供給・排出のための構成が大型化し複雑化する。
【0006】
また、連続した1本の出力ロッドを採用し、この出力ロッドを4つの受圧ピストンに連結するため、出力ロッドとピストンの連結構造が複雑化し、部品数が多くなり、製作コストが高価になる。
【0007】
特許文献2の流体圧シリンダ装置では、中空ロッドの内径がシリンダチューブの内径よりも小さくなるため、出力増大の面で不利である。
本発明の目的は、流体圧供給・排出のための構成を簡単化でき、出力増大の面で有利なプッシュ型流体圧シリンダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のプッシュ型流体圧シリンダは、出力用ロッドが伸長する側へ駆動可能なプッシュ型流体圧シリンダにおいて、シリンダ本体と、シリンダ本体内に仕切り壁を挟んで直列状に形成された複数のシリンダ孔と、前記複数のシリンダ孔のうちの前記出力ロッド側の主シリンダ孔に収容された主ピストン及びこの主ピストンに固定された前記出力用ロッドとを含む主ピストン部材と、前記主シリンダ孔以外の副シリンダ孔に収容された副ピストンと、この副ピストンから仕切り壁を貫通して前記出力ロッド側へ延び且つ主ピストン又は副ピストンに当接可能な副ロッドとを含む1又は複数の副ピストン部材と、前記シリンダ本体に形成された第1流体圧ポートから延びるように前記シリンダ本体の壁部内に形成されて主シリンダ孔のうちの出力ロッドと反対側の第1流体圧作動室に連通された第1流体通路と、前記副ピストン部材に貫通状に形成され且つ前記第1流体圧作動室を副シリンダ孔のうちの出力ロッドと反対側の第2流体圧作動室に連通させる1又は複数の第2流体通路とを備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項2のプッシュ型流体圧シリンダは、請求項1の発明において、前記シリンダ本体に形成された第2流体圧ポートから延びるように前記シリンダ本体の壁部内に形成されて主シリンダ孔のうちの出力ロッド側の第2流体圧作動室に連通された第3流体通路を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項3のプッシュ型流体圧シリンダは、請求項2の発明において、前記シリンダ本体の壁部内に形成され且つ前記第3流体通路から延びて副シリンダ孔のうちの前記出力ロッド側の第4流体圧作動室に連通された第4流体通路とを備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項4のプッシュ型流体圧シリンダは、請求項2の発明において、前記シリンダ本体の壁部内に形成され且つ副シリンダ孔のうちの出力ロッド側の第4流体圧作動室を外界に連通させる連通孔を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項5のプッシュ型流体圧シリンダは、請求項1〜4の何れかの発明において、前記シリンダ本体は、主シリンダ孔を形成する第1シリンダ本体と、副シリンダ孔を形成する第2シリンダ本体とを有し、第1シリンダ本体の第1端部側部分に第2シリンダ本体の第2端部側部分を螺合にて締結する締結機構を有し、前記仕切り壁は第1,第2シリンダ本体とは別体に形成され、この仕切り壁の外周部は第1,第2シリンダ本体の間に挟着されたことを特徴としている。
【0013】
請求項6のプッシュ型流体圧シリンダは、請求項1〜4の何れかの発明において、前記副シリンダ孔を2つ設け、前記副ピストン部材を2つ設けたことを特徴としている。
【0014】
請求項7のリンク式クランプ装置は、請求項1のプッシュ型流体圧シリンダを有し、前記出力ロッドの外端部にピン結合されたクランプアームと、このクランプアームの途中部をクランプ本体に連結するリンク部材とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明(プッシュ型流体圧シリンダ)によれば、第1流体圧ポートから第1流体圧通路を介して主シリンダ孔のうちの第1流体圧作動室に流体圧を供給すると、その第1流体圧作動室の流体圧は第2流体圧通路から副シリンダ孔のうちの出力ロッドと反対側の第2流体圧作動室に導入される。
【0016】
副ピストン部材の副ロッドは主ピストンに当接可能であるため、副ピストン部材に作用する流体力が主ピストン部材に伝達され、出力ロッドは主ピストンと副ピストンに作用する流体力で伸長側(クランプ駆動側)へ駆動されるから、流体圧シリンダの出力増大を図ることができる。
【0017】
主ピストン部材と副ピストン部材とを別体に構成し、副ロッドは主ピストン又は副ピストンに当接可能であるため、副ピストン部材を他の部材に連結する必要がなく、副ピストン部材に関連する構造が簡単化する。
しかも、第1流体通路をシリンダ本体の壁部内に形成するため、また、第2流体通路を副ピストン部材内に形成するため、流体圧を供給、排出する流体通路の構成が小型、簡単化し、製作コストを低減できる。
【0018】
請求項2の発明によれば、主シリンダ孔のうちの第3流体圧作動室に流体圧を供給する第3流体通路をシリンダ本体の壁部内に形成するため、流体圧を供給、排出する流体通路の構成が小型、簡単化し、製作コストを低減できる。
【0019】
請求項3の発明によれば、第3流体通路から副シリンダ孔のうちの第4流体圧作動室に流体圧を供給する第4流体通路をシリンダ本体の壁部内に形成するため、流体圧を供給、排出する流体通路の構成が小型、簡単化し、製作コストを低減できる。
【0020】
請求項4の発明によれば、副シリンダ孔のうちの第4流体圧作動室を外界に連通する連通孔(呼吸孔)を設けるため、第4流体圧作動室に流体圧を供給、排出する流体通路を省略できる。
【0021】
請求項5の発明によれば、第1シリンダ本体の第1端部側部分に第2シリンダ本体の第2端部側部分を螺合にて締結する締結機構を設け、シリンダ孔を仕切る仕切り壁は第1,第2シリンダ本体とは別体に形成され、この仕切り壁の外周部は第1,第2シリンダ本体の間に挟着されたため、第1,第2シリンダ本体を連結する構成と、前記仕切り壁を取り付ける構成が簡単化し、製作コストを低減できる。
【0022】
請求項6の発明によれば、副シリンダ孔を2つ設け、副ピストン部材を2つ設けるため、流体圧シリンダの出力を、副シリンダ孔と副ピストン部材を設けない場合と比べて約3倍に増大させることができる。
【0023】
請求項7の発明(リンク式クランプ装置)は、請求項1のプッシュ型流体圧シリンダを有し、前記出力ロッドの外端部にピン結合されたクランプアームと、このクランプアームの途中部をクランプ本体に連結するリンク部材とを備え、プッシュ型流体圧シリンダの出力でワークを強固にクランプすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1のリンク式クランプ装置(クランプ状態)の断面図である。
図2図1のリンク式クランプ装置(アンクランプ状態)の断面図である。
図3】実施例2のリンク式クランプ装置(クランプ状態)の断面図である。
図4】実施例3のリンク式クランプ装置(クランプ状態)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
尚、以下の記載中の「油圧」は、油の圧力ではなく、圧縮油を意味する。
【実施例1】
【0026】
図1図2に示すように、リンク式クランプ装置1は、クランプ本体2と、このクランプ本体2に形成したプッシュ型油圧シリンダ3と、クランプアーム4と、リンク部材5とを備えている。このクランプ装置1は、このクランプ装置1に属さないベース部材6に固定される。クランプ本体2は、ベース部材6の装着穴6aに挿入される下部本体2bと、ベース部材6の上面に外周部が当接される上部本体2aとを有する。上部本体2aが複数の縦向きのボルト(図示略)によりベース部材6に固定される。
【0027】
油圧シリンダ3は、クランプ本体2と共通のシリンダ本体10と、仕切り壁11と、このシリンダ本体10内に形成された複数のシリンダ孔12と、主ピストン部材13と、副ピストン部材14と、第1〜第4油圧作動室15〜18と、第1,第2油圧ポート19,20と、第1〜第4油圧通路21〜24などを有する。尚、仕切り壁11はシリンダ本体10の一部を構成するものである。
【0028】
主ピストン部材13は、主ピストン25と、この主ピストン25から上方へ延びシリンダ本体10の外部へ突出する出力ロッド26とを有する。出力ロッド26の外端部(上端部)は、クランプアーム4の端部に紙面直交方向向きのピン27でピン結合されている。
【0029】
シリンダ本体10の上端の左端部には、上方へ突出したリンク連結部10cが一体形成され、リンク部材5の上端部はクランプアーム4の途中部に紙面直交方向向きのピン28でピン結合され、リンク部材5の下端部はリンク連結部10cに紙面直交方向向きのピン29でピン結合されている。クランプアーム4の左端部の下端にはクランプ対象物(ワークW)の上面を下方へクランプする出力部4aが形成されている。
【0030】
上記のクランプ装置1でワークWをクランプする際には、主ピストン部材13と副ピストン部材14を油圧により図1のように上方へ駆動し、ピン28を支点として出力部4aを下方へ駆動する。クランプ解除する際には、主ピストン部材13と副ピストン部材14を油圧により図2のように下方へ駆動する。
【0031】
次に、プッシュ型油圧シリンダ3の詳細な構造について説明する。
複数のシリンダ孔12は、シリンダ本体10内に仕切り壁11を挟んで直列状に形成されている。複数のシリンダ孔12は、上部の出力ロッド26側の主シリンダ孔12aと、この主シリンダ孔12a以外の副シリンダ孔12bとを含む。副シリンダ孔12bは主シリンダ孔12aよりも僅かに大径に形成されている。但し、主シリンダ孔12aと副シリンダ孔12bを同径に形成してもよい。
【0032】
仕切り壁11は、主シリンダ孔12aと副シリンダ孔12bの間を仕切るものである。 主ピストン25は、主シリンダ孔12aに摺動自在に収容され、主ピストン25の下側(出力ロッド26と反対側)に第1油圧作動室15が形成され、主ピストン25の上側(出力ロッド26側)に第3油圧作動室17が形成されている。主ピストン25の外周部にはシール部材30が装着されている。出力ロッド26は、主ピストン25に固定され且つロッド側端壁10aの貫通孔10bを挿通して上方へ延びている。出力ロッド26の外周側をシールするシール部材31とスクレーパー32が貫通孔10bの内周部に装着されている。
【0033】
副ピストン部材14は、副ピストン33と、副ピストン33に固定されて上方へ延びる副ロッド34とを有する。副ピストン33が副シリンダ孔12bに摺動自在に収容され、副シリンダ孔12bにおいて副ピストン33の下側(出力ロッド26と反対側)には第2油圧作動室16が形成され、副ピストン33の上側(出力ロッド26側)には第4油圧作動室18が形成されている。
【0034】
副ピストン33の外周部にはシール部材35が装着されている。副ロッド34は、副ピストン33の中心部から上方(出力ロッド26側)へ延び、仕切り壁11の中央部の貫通孔11aを挿通して第1油圧作動室15に突入している。この副ロッド34の上端部は、主ピストン25の下面に当接可能に構成されている。即ち、主ピストン25が上昇するとき副ピストン33は上記の当接状態又は分離状態で上昇する。但し、副ピストン33は主ピストン25に当接状態を維持しつつクランプ状態になる。
また、主ピストン25が下降するとき副ピストン33は上記の当接状態又は分離状態で下降する。仕切り壁11の貫通孔11aの内周部にはシール部材36が装着され、仕切り壁11の外周部にはシール部材37が装着されている。
【0035】
シリンダ本体10は、主シリンダ孔12aを形成する第1シリンダ本体10Uと、副シリンダ孔12bを形成する第2シリンダ本体10Vとを有し、仕切り壁11は第1,第2シリンダ本体10U,10Vとは別体に形成されている。第1シリンダ本体10Uの下端部側部分10Ua(第1端部側部分)に第2シリンダ本体10Vの上端部側部分10Va(第2端部側部分)を螺合にて締結する締結機構40が設けられている。
【0036】
下端部側部分10Uaの内周面は、第2シリンダ本体10Vの内径よりも大径に形成され、その内周面の下部には雌ネジ孔40aが形成されている。上端部側部分10Vaの外周面は、上記の内周面に内嵌され、上端部側部分10Vaの下部に形成された雄ネジ部40bが上記の雌ネジ孔40aに螺合されている。
【0037】
上端部側部分10Vaは下端部側部分10Uaよりも短く形成され、下端部側部分10Uaの上端部の内周側には環状段部41が形成され、仕切り壁11の下部の外周部11bが環状段部41に係合され、仕切り壁11は第1,第2シリンダ本体10U,10Vの間に挟着して固定されている。
【0038】
第1,第2油圧ポート19,20は、紙面直交方向にシフトした位置に形成され、第1,第2油圧ポート19,20は、ベース部材6の内部に形成された2つの油圧通路6bにより油圧供給源(図示略)に夫々接続されている。
第1油圧通路21は、シリンダ本体10に形成された第1油圧ポート19から延びるようにシリンダ本体10の壁部内に形成されて第1油圧作動室15に連通されている。
【0039】
第2油圧通路22は、副ピストン部材14の副ピストン33と副ロッド34に貫通状に形成され、この第2油圧通路22により第1油圧作動室15が第2油圧作動室16に連通されている。尚、副ロッド34の上端部には、第2油圧通路22に連通する複数の溝22aが形成されているため、副ロッド34の上端が主ピストン25に当接しても第2油圧通路22が閉塞されることはない。
【0040】
第3油圧通路23は、シリンダ本体10に形成された第2油圧ポート20から延びるようにシリンダ本体10の壁部内に形成されて第3油圧作動室17に連通されている。
第4油圧通路24は、シリンダ本体10の壁部内に形成され且つ第3油圧通路23から延びて第4油圧作動室18に連通されている。
【0041】
次に、以上のプッシュ型油圧シリンダ3の作用、効果について説明する。
ワークWをクランプする際には、図1に示すように、第1油圧ポート19から第1油圧通路21を介して第1油圧作動室15に油圧を供給する。すると、第1油圧作動室15内の油圧は第2油圧通路22から第2油圧作動室16に導入され、主ピストン部材13と副ピストン部材14が油圧で出力ロッド26が伸長する側へ駆動され、副ピストン33に作用する油圧力が副ロッド34を介して主ピストン25に伝達され、出力ロッド26は主ピストン25に作用する油圧力と副ピストン33に作用する油圧力で伸長側(クランプ駆動側)へ駆動されてワークWをクランプする。
【0042】
ワークWのクランプを解除する際には、図2に示すように、第1,第2油圧作動室15,16の油圧を排出しながら、第2油圧ポート20から第3,第4油圧通路23,24へ油圧を供給する。すると、主ピストン部材13と副ピストン部材14が下降し、出力ロッド26が退入方向へ移動するため、クランプアーム4が上方へ揺動し、クランプ解除状態となる。
【0043】
上記のように、主ピストン25に作用する油圧力と副ピストン33に作用する油圧力とで出力ロッド26をクランプ方向へ駆動できるため、油圧シリンダ3の出力を、副シリンダ孔12bや副ピストン部材14を設けない場合と比べて約2倍に増大することができる。しかも、第2油圧作動室16の内径を第1油圧作動室15の内径よりも大きくすることができるので、出力増大を図る上で有利である。
【0044】
主ピストン部材13と副ピストン部材14とを別体に構成し、副ロッド34を主ピストン25に当接させて油圧力を伝達させる構成にしたため、副ピストン部材14を他の部材に連結する必要がなく、副ピストン部材14に関連する構造が簡単化する。
【0045】
第1油圧通路21をシリンダ本体10の壁部内に形成するため、油圧を供給、排出する油圧通路の構成が小型、簡単化し、製作コストを低減できる。しかも、第2油圧通路22を副ピストン部材14内に形成するため、シリンダ本体10側に油圧通路を設ける必要がないから、第2油圧作動室16を第1油圧作動室15よりも大径にすることができる。
【0046】
第3油圧作動室17に流体圧を供給する第3油圧通路23をシリンダ本体10の壁部内に形成するため、また、第3油圧通路23から第4油圧作動室18に油圧を供給する第4油圧通路24をシリンダ本体10の壁部内に形成するため、油圧を供給、排出する油圧通路の構成が小型、簡単化し、製作コストを低減できる。
【0047】
第1シリンダ本体10Uの下端部側部分10Uaに第2シリンダ本体10Vの上端部側部分10Vaを螺合にて締結する締結機構40を設け、シリンダ孔12を仕切る仕切り壁11は第1,第2シリンダ本体10U,10Vとは別体に形成され、この仕切り壁11の外周部11bは第1,第2シリンダ本体10U,10Vの間に挟着されているため、第1,第2シリンダ本体10U,10Vを連結する構成と、仕切り壁11を固定する構造が簡単化し、製作コストを低減できる。
【実施例2】
【0048】
図3に示すリンク式クランプ装置1A及びプッシュ型油圧シリンダ3Aの基本構造は、実施例1のものと同様であるので、同じ構成に同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0049】
前記第4油圧通路24が省略され、その代わりに、第4油圧作動室18を外界に連通させる連通孔42(呼吸孔)がシリンダ本体10と仕切り壁11の壁部内に形成されている。そのため、第4油圧作動室18に油圧を供給、排出する油圧通路を省略できる。
【実施例3】
【0050】
図4に示すリンク式クランプ装置1B及びプッシュ型油圧シリンダ3Bのうち、実施例1のものと同様ものについては同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0051】
油圧シリンダ3Bのシリンダ本体10B(クランプ本体2B)は、主シリンダ孔12aを形成する第1シリンダ本体10Uと、第1副シリンダ孔12bを形成する第2シリンダ本体10Wと、第2副シリンダ孔12cを形成する第3シリンダ本体10Xと、主シリンダ孔12aと第1副シリンダ孔12bの間を仕切る第1仕切り壁11と、第1,第2副シリンダ孔12b,12cの間を仕切る第2仕切り壁11Aとを備えている。
【0052】
第1シリンダ本体10Uの下端部側部分10Uaは、第2シリンダ本体10Wの上端部側部分10Waに外嵌され、下端部側部分10Uaに上端部側部分10Waを螺合にて締結する第1締結機構40が設けられている。実施例1と同様に、第1仕切り壁11の外周部11bは環状段部41に係合され、第1仕切り壁11は第1,第2シリンダ本体10U,10Wの間に挟着されている。
【0053】
第2シリンダ本体10Wの下端部側部分10Wbは、第3シリンダ本体10Xの上端部側部分10Xaに外嵌され、下端部側部分10Wbに上端部側部分10Xaを螺合にて締結する第2締結機構40Aであって、実施例1の締結機構40と同様の第2締結機構40Aが設けられている。実施例1と同様に、第2仕切り壁11Aの外周部11bは環状段部41Aに係合され、第2仕切り壁11Aは第2,第3シリンダ本体10W,10Xの間に挟着して固定されている。
【0054】
主ピストン部材13、第1副ピストン部材14、第1〜第4油圧作動室15〜18、第1〜第3油圧通路21〜23が、実施例1と同様に設けられている。第2副ピストン部材14Aの第2副ピストン33Aは、第2副シリンダ孔12cに収容され、その第2副ロッド34Aは第2仕切り壁11Aの貫通孔11aを挿通して第2シリンダ孔12b内に突出し、第1副ピストン33の下面に当接可能になっている。第2シリンダ孔12c内で、第2副ピストン33Aの下側に第2油圧作動室16Aが形成され、第2副ピストン33Aの上側に第4油圧作動室18Aが形成されている。
【0055】
第2副ピストン部材14Aには、第2油圧作動室16,16Aを連通させる第2油圧通路22Aが形成されている。また、第4油圧作動室18を外界へ連通させる連通孔43が第1仕切り壁11と第1シリンダ本体10Uに形成され、第4油圧作動室18Aを外界へ連通させる連通孔43Aが第2仕切り壁11Aと第2シリンダ本体10Wに形成されている。
【0056】
ワークWをクランプする際に、第1油圧通路21から第1油圧作動室15に油圧を供給すると、第1油圧作動室15内の油圧が、第2油圧通路22を通って第2油圧作動室16に導入され、第2油圧作動室16内の油圧が、第2油圧通路22Aを通って第2油圧作動室16Aに導入される。それ故、主ピストン部材13に作用する油圧力と第1,第2副ピストン部材14,14Aに作用する油圧力により出力ロッド26をクランプ方向へ駆動することができる。
【0057】
それ故、このプッシュ型油圧シリンダ3Bでは、第1,第2副シリンダ孔12b,12cと、第1,第2副ピストン部材14,14Aを設けない場合と比べて油圧シリンダ3Bの出力を約3倍に増大させることができる。その他、実施例1の油圧シリンダ1と同様の作用、効果が得られる。
【0058】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1)前記実施例の油圧シリンダは、油圧(圧縮油)により駆動される場合を例にして説明したが、油圧に限らず、加圧エアやその他の加圧流体により駆動される流体圧シリンダにも本発明を同様に適用することができる。
【0059】
2)前記実施例はリンク式クランプ装置を駆動する油圧シリンダを例として説明したが、本発明のプッシュ型流体圧シリンダは、リンク式クランプ装置以外の種々の用途に適用することができる。
【0060】
3)前記主ピストン部材において、主ピストンと出力ロッドを一体構造としたが、これらを別部品で構成し、出力ロッドの基端部を主ピストンに種々の連結機構で連結する構造でもよい。このことは、副ピストン部材についても同様である。
【0061】
4)本発明のプッシュ型流体圧シリンダは、出力ロッドが伸長する際の駆動力を増大させるように構成した流体圧シリンダに好適であるが、本発明のプッシュ型流体圧シリンダは、複動型流体圧シリンダにも適用可能であり、スプリングで復帰する単動型の流体圧シリンダにも適用可能である。
【0062】
5)その他、当業者ならば、本発明の趣旨を逸脱することなく前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のプッシュ型流体圧シリンダは、出力ロッドを伸長させる際の駆動力を増大させる種々の用途の流体圧シリンダに利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1,1A,1B リンク式クランプ装置
3,3A,3B プッシュ型油圧シリンダ
10,10B シリンダ本体
10U 第1シリンダ本体
10V,10W 第2シリンダ本体
10X 第3シリンダ本体
10Ua,10Wb 下端部側部分
10Va,10Wa,10Xa 上端部側部分
11,11A 仕切り壁
12 シリンダ孔
12a 主シリンダ孔
12b,12c 副シリンダ孔
13 主ピストン部材
14,14A 副ピストン部材
15 第1油圧作動室
16,16A 第2油圧作動室
17 第3油圧作動室
18,18A 第4油圧作動室
19 第1油圧ポート
20 第2油圧ポート
21〜24 第1〜第4油圧通路
22A 第2油圧通路
25 主ピストン
26 出力ロッド
33,33A 副ピストン
34,34A 副ロッド
40,40A 締結機構
42,43,43A 連通孔
図1
図2
図3
図4