【実施例1】
【0026】
図1、
図2に示すように、リンク式クランプ装置1は、クランプ本体2と、このクランプ本体2に形成したプッシュ型油圧シリンダ3と、クランプアーム4と、リンク部材5とを備えている。このクランプ装置1は、このクランプ装置1に属さないベース部材6に固定される。クランプ本体2は、ベース部材6の装着穴6aに挿入される下部本体2bと、ベース部材6の上面に外周部が当接される上部本体2aとを有する。上部本体2aが複数の縦向きのボルト(図示略)によりベース部材6に固定される。
【0027】
油圧シリンダ3は、クランプ本体2と共通のシリンダ本体10と、仕切り壁11と、このシリンダ本体10内に形成された複数のシリンダ孔12と、主ピストン部材13と、副ピストン部材14と、第1〜第4油圧作動室15〜18と、第1,第2油圧ポート19,20と、第1〜第4油圧通路21〜24などを有する。尚、仕切り壁11はシリンダ本体10の一部を構成するものである。
【0028】
主ピストン部材13は、主ピストン25と、この主ピストン25から上方へ延びシリンダ本体10の外部へ突出する出力ロッド26とを有する。出力ロッド26の外端部(上端部)は、クランプアーム4の端部に紙面直交方向向きのピン27でピン結合されている。
【0029】
シリンダ本体10の上端の左端部には、上方へ突出したリンク連結部10cが一体形成され、リンク部材5の上端部はクランプアーム4の途中部に紙面直交方向向きのピン28でピン結合され、リンク部材5の下端部はリンク連結部10cに紙面直交方向向きのピン29でピン結合されている。クランプアーム4の左端部の下端にはクランプ対象物(ワークW)の上面を下方へクランプする出力部4aが形成されている。
【0030】
上記のクランプ装置1でワークWをクランプする際には、主ピストン部材13と副ピストン部材14を油圧により
図1のように上方へ駆動し、ピン28を支点として出力部4aを下方へ駆動する。クランプ解除する際には、主ピストン部材13と副ピストン部材14を油圧により
図2のように下方へ駆動する。
【0031】
次に、プッシュ型油圧シリンダ3の詳細な構造について説明する。
複数のシリンダ孔12は、シリンダ本体10内に仕切り壁11を挟んで直列状に形成されている。複数のシリンダ孔12は、上部の出力ロッド26側の主シリンダ孔12aと、この主シリンダ孔12a以外の副シリンダ孔12bとを含む。副シリンダ孔12bは主シリンダ孔12aよりも僅かに大径に形成されている。但し、主シリンダ孔12aと副シリンダ孔12bを同径に形成してもよい。
【0032】
仕切り壁11は、主シリンダ孔12aと副シリンダ孔12bの間を仕切るものである。 主ピストン25は、主シリンダ孔12aに摺動自在に収容され、主ピストン25の下側(出力ロッド26と反対側)に第1油圧作動室15が形成され、主ピストン25の上側(出力ロッド26側)に第3油圧作動室17が形成されている。主ピストン25の外周部にはシール部材30が装着されている。出力ロッド26は、主ピストン25に固定され且つロッド側端壁10aの貫通孔10bを挿通して上方へ延びている。出力ロッド26の外周側をシールするシール部材31とスクレーパー32が貫通孔10bの内周部に装着されている。
【0033】
副ピストン部材14は、副ピストン33と、副ピストン33に固定されて上方へ延びる副ロッド34とを有する。副ピストン33が副シリンダ孔12bに摺動自在に収容され、副シリンダ孔12bにおいて副ピストン33の下側(出力ロッド26と反対側)には第2油圧作動室16が形成され、副ピストン33の上側(出力ロッド26側)には第4油圧作動室18が形成されている。
【0034】
副ピストン33の外周部にはシール部材35が装着されている。副ロッド34は、副ピストン33の中心部から上方(出力ロッド26側)へ延び、仕切り壁11の中央部の貫通孔11aを挿通して第1油圧作動室15に突入している。この副ロッド34の上端部は、主ピストン25の下面に当接可能に構成されている。即ち、主ピストン25が上昇するとき副ピストン33は上記の当接状態又は分離状態で上昇する。但し、副ピストン33は主ピストン25に当接状態を維持しつつクランプ状態になる。
また、主ピストン25が下降するとき副ピストン33は上記の当接状態又は分離状態で下降する。仕切り壁11の貫通孔11aの内周部にはシール部材36が装着され、仕切り壁11の外周部にはシール部材37が装着されている。
【0035】
シリンダ本体10は、主シリンダ孔12aを形成する第1シリンダ本体10Uと、副シリンダ孔12bを形成する第2シリンダ本体10Vとを有し、仕切り壁11は第1,第2シリンダ本体10U,10Vとは別体に形成されている。第1シリンダ本体10Uの下端部側部分10Ua(第1端部側部分)に第2シリンダ本体10Vの上端部側部分10Va(第2端部側部分)を螺合にて締結する締結機構40が設けられている。
【0036】
下端部側部分10Uaの内周面は、第2シリンダ本体10Vの内径よりも大径に形成され、その内周面の下部には雌ネジ孔40aが形成されている。上端部側部分10Vaの外周面は、上記の内周面に内嵌され、上端部側部分10Vaの下部に形成された雄ネジ部40bが上記の雌ネジ孔40aに螺合されている。
【0037】
上端部側部分10Vaは下端部側部分10Uaよりも短く形成され、下端部側部分10Uaの上端部の内周側には環状段部41が形成され、仕切り壁11の下部の外周部11bが環状段部41に係合され、仕切り壁11は第1,第2シリンダ本体10U,10Vの間に挟着して固定されている。
【0038】
第1,第2油圧ポート19,20は、紙面直交方向にシフトした位置に形成され、第1,第2油圧ポート19,20は、ベース部材6の内部に形成された2つの油圧通路6bにより油圧供給源(図示略)に夫々接続されている。
第1油圧通路21は、シリンダ本体10に形成された第1油圧ポート19から延びるようにシリンダ本体10の壁部内に形成されて第1油圧作動室15に連通されている。
【0039】
第2油圧通路22は、副ピストン部材14の副ピストン33と副ロッド34に貫通状に形成され、この第2油圧通路22により第1油圧作動室15が第2油圧作動室16に連通されている。尚、副ロッド34の上端部には、第2油圧通路22に連通する複数の溝22aが形成されているため、副ロッド34の上端が主ピストン25に当接しても第2油圧通路22が閉塞されることはない。
【0040】
第3油圧通路23は、シリンダ本体10に形成された第2油圧ポート20から延びるようにシリンダ本体10の壁部内に形成されて第3油圧作動室17に連通されている。
第4油圧通路24は、シリンダ本体10の壁部内に形成され且つ第3油圧通路23から延びて第4油圧作動室18に連通されている。
【0041】
次に、以上のプッシュ型油圧シリンダ3の作用、効果について説明する。
ワークWをクランプする際には、
図1に示すように、第1油圧ポート19から第1油圧通路21を介して第1油圧作動室15に油圧を供給する。すると、第1油圧作動室15内の油圧は第2油圧通路22から第2油圧作動室16に導入され、主ピストン部材13と副ピストン部材14が油圧で出力ロッド26が伸長する側へ駆動され、副ピストン33に作用する油圧力が副ロッド34を介して主ピストン25に伝達され、出力ロッド26は主ピストン25に作用する油圧力と副ピストン33に作用する油圧力で伸長側(クランプ駆動側)へ駆動されてワークWをクランプする。
【0042】
ワークWのクランプを解除する際には、
図2に示すように、第1,第2油圧作動室15,16の油圧を排出しながら、第2油圧ポート20から第3,第4油圧通路23,24へ油圧を供給する。すると、主ピストン部材13と副ピストン部材14が下降し、出力ロッド26が退入方向へ移動するため、クランプアーム4が上方へ揺動し、クランプ解除状態となる。
【0043】
上記のように、主ピストン25に作用する油圧力と副ピストン33に作用する油圧力とで出力ロッド26をクランプ方向へ駆動できるため、油圧シリンダ3の出力を、副シリンダ孔12bや副ピストン部材14を設けない場合と比べて約2倍に増大することができる。しかも、第2油圧作動室16の内径を第1油圧作動室15の内径よりも大きくすることができるので、出力増大を図る上で有利である。
【0044】
主ピストン部材13と副ピストン部材14とを別体に構成し、副ロッド34を主ピストン25に当接させて油圧力を伝達させる構成にしたため、副ピストン部材14を他の部材に連結する必要がなく、副ピストン部材14に関連する構造が簡単化する。
【0045】
第1油圧通路21をシリンダ本体10の壁部内に形成するため、油圧を供給、排出する油圧通路の構成が小型、簡単化し、製作コストを低減できる。しかも、第2油圧通路22を副ピストン部材14内に形成するため、シリンダ本体10側に油圧通路を設ける必要がないから、第2油圧作動室16を第1油圧作動室15よりも大径にすることができる。
【0046】
第3油圧作動室17に流体圧を供給する第3油圧通路23をシリンダ本体10の壁部内に形成するため、また、第3油圧通路23から第4油圧作動室18に油圧を供給する第4油圧通路24をシリンダ本体10の壁部内に形成するため、油圧を供給、排出する油圧通路の構成が小型、簡単化し、製作コストを低減できる。
【0047】
第1シリンダ本体10Uの下端部側部分10Uaに第2シリンダ本体10Vの上端部側部分10Vaを螺合にて締結する締結機構40を設け、シリンダ孔12を仕切る仕切り壁11は第1,第2シリンダ本体10U,10Vとは別体に形成され、この仕切り壁11の外周部11bは第1,第2シリンダ本体10U,10Vの間に挟着されているため、第1,第2シリンダ本体10U,10Vを連結する構成と、仕切り壁11を固定する構造が簡単化し、製作コストを低減できる。
【実施例3】
【0050】
図4に示すリンク式クランプ装置1B及びプッシュ型油圧シリンダ3Bのうち、実施例1のものと同様ものについては同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0051】
油圧シリンダ3Bのシリンダ本体10B(クランプ本体2B)は、主シリンダ孔12aを形成する第1シリンダ本体10Uと、第1副シリンダ孔12bを形成する第2シリンダ本体10Wと、第2副シリンダ孔12cを形成する第3シリンダ本体10Xと、主シリンダ孔12aと第1副シリンダ孔12bの間を仕切る第1仕切り壁11と、第1,第2副シリンダ孔12b,12cの間を仕切る第2仕切り壁11Aとを備えている。
【0052】
第1シリンダ本体10Uの下端部側部分10Uaは、第2シリンダ本体10Wの上端部側部分10Waに外嵌され、下端部側部分10Uaに上端部側部分10Waを螺合にて締結する第1締結機構40が設けられている。実施例1と同様に、第1仕切り壁11の外周部11bは環状段部41に係合され、第1仕切り壁11は第1,第2シリンダ本体10U,10Wの間に挟着されている。
【0053】
第2シリンダ本体10Wの下端部側部分10Wbは、第3シリンダ本体10Xの上端部側部分10Xaに外嵌され、下端部側部分10Wbに上端部側部分10Xaを螺合にて締結する第2締結機構40Aであって、実施例1の締結機構40と同様の第2締結機構40Aが設けられている。実施例1と同様に、第2仕切り壁11Aの外周部11bは環状段部41Aに係合され、第2仕切り壁11Aは第2,第3シリンダ本体10W,10Xの間に挟着して固定されている。
【0054】
主ピストン部材13、第1副ピストン部材14、第1〜第4油圧作動室15〜18、第1〜第3油圧通路21〜23が、実施例1と同様に設けられている。第2副ピストン部材14Aの第2副ピストン33Aは、第2副シリンダ孔12cに収容され、その第2副ロッド34Aは第2仕切り壁11Aの貫通孔11aを挿通して第2シリンダ孔12b内に突出し、第1副ピストン33の下面に当接可能になっている。第2シリンダ孔12c内で、第2副ピストン33Aの下側に第2油圧作動室16Aが形成され、第2副ピストン33Aの上側に第4油圧作動室18Aが形成されている。
【0055】
第2副ピストン部材14Aには、第2油圧作動室16,16Aを連通させる第2油圧通路22Aが形成されている。また、第4油圧作動室18を外界へ連通させる連通孔43が第1仕切り壁11と第1シリンダ本体10Uに形成され、第4油圧作動室18Aを外界へ連通させる連通孔43Aが第2仕切り壁11Aと第2シリンダ本体10Wに形成されている。
【0056】
ワークWをクランプする際に、第1油圧通路21から第1油圧作動室15に油圧を供給すると、第1油圧作動室15内の油圧が、第2油圧通路22を通って第2油圧作動室16に導入され、第2油圧作動室16内の油圧が、第2油圧通路22Aを通って第2油圧作動室16Aに導入される。それ故、主ピストン部材13に作用する油圧力と第1,第2副ピストン部材14,14Aに作用する油圧力により出力ロッド26をクランプ方向へ駆動することができる。
【0057】
それ故、このプッシュ型油圧シリンダ3Bでは、第1,第2副シリンダ孔12b,12cと、第1,第2副ピストン部材14,14Aを設けない場合と比べて油圧シリンダ3Bの出力を約3倍に増大させることができる。その他、実施例1の油圧シリンダ1と同様の作用、効果が得られる。
【0058】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1)前記実施例の油圧シリンダは、油圧(圧縮油)により駆動される場合を例にして説明したが、油圧に限らず、加圧エアやその他の加圧流体により駆動される流体圧シリンダにも本発明を同様に適用することができる。
【0059】
2)前記実施例はリンク式クランプ装置を駆動する油圧シリンダを例として説明したが、本発明のプッシュ型流体圧シリンダは、リンク式クランプ装置以外の種々の用途に適用することができる。
【0060】
3)前記主ピストン部材において、主ピストンと出力ロッドを一体構造としたが、これらを別部品で構成し、出力ロッドの基端部を主ピストンに種々の連結機構で連結する構造でもよい。このことは、副ピストン部材についても同様である。
【0061】
4)本発明のプッシュ型流体圧シリンダは、出力ロッドが伸長する際の駆動力を増大させるように構成した流体圧シリンダに好適であるが、本発明のプッシュ型流体圧シリンダは、複動型流体圧シリンダにも適用可能であり、スプリングで復帰する単動型の流体圧シリンダにも適用可能である。
【0062】
5)その他、当業者ならば、本発明の趣旨を逸脱することなく前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。