(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6703705
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】骨盤固定具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/02 20060101AFI20200525BHJP
A61F 5/05 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
A61F5/02 K
A61F5/05
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-4991(P2019-4991)
(22)【出願日】2019年1月16日
【審査請求日】2019年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】513133907
【氏名又は名称】JMR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519016114
【氏名又は名称】船曵 知弘
(74)【代理人】
【識別番号】100140394
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 康次
(74)【代理人】
【識別番号】100084102
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】笹崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】船曵 知弘
【審査官】
小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第00/045756(WO,A1)
【文献】
特開2016−077314(JP,A)
【文献】
特開平11−146890(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0071776(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0173932(US,A1)
【文献】
特表2013−501535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01−5/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臀部に対応する形状を有した主帯部と、
前記主帯部の左右両側の上位置から外方へ延びた第1側帯部と、
前記主帯部の左右両側の下位置から外方へ延びた第2側帯部と、
第1側帯部間に設けられ、これらを分離自在に連結する第1装着ベルトと、
第2側帯部間に設けられ、これらを分離自在に連結する第2装着ベルトと、
とを備えた骨盤固定具であって、
第1・第2側帯部間には、第1隙間を有した第1開口部が形成され、
第1・第2装着ベルト間には、第1隙間以上の第2隙間を有した第2開口部が形成され、かつ、
第1開口部は、前記主帯部に向かって区画されたコの字状を成し、
第1隙間は、第1開口部の開口端から内奥部に亘って一定であり、
前記骨盤固定具を怪我人に装着した際に、前記怪我人の鼠径部が、正面視で第1・第2開口部の範囲に入る、
ことを特徴とする骨盤固定具。
【請求項2】
第1隙間は、7〜10cmの範囲である、
ことを特徴とする請求項1に記載の骨盤固定具。
【請求項3】
前記主帯部を、クッション材を内装した帆布で形成すると共に、外面をビニール被覆してなる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の骨盤固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救急医療搬送に適する骨盤固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨盤を固定するために腰部をホールドする医療コルセットが知られている(特許文献1)が前記コルセットは、基本的に腰部を正常位置に保持するためのもので、救急搬送等においては、特許文献2に開示されているように怪我人を包んで移動する多機能敷布が開示されている。しかし骨盤損傷や骨盤出血が疑われる怪我人の緊急搬送において、骨盤を素早く整復固定する必要がある。非特許文献1には、このような緊急用の骨盤固定具が開示されている。
【0003】
非特許文献1に開示されている骨盤固定具は、幅広の腰部外側(臀部)を覆う抱持帯に折返し連結する緊締バンドを備え、骨盤を確りと固定できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−209050号公報。
【特許文献2】特開2014−128406号公報。
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】アコードインターナショナル株式会社<緊急ケア用品:骨盤固定>[2018年12月21日検索]、インターネット(URL:http://www.accord-intl.com/products/care/samsling.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
骨盤固定具が救急ケア用品として使用される状況は、例えば交通事故や災害時であり、使用対象者が外傷と共に身体内にも損傷を受けている可能性も高い。上記の非特許文献1に解されている骨盤固定具は、腰部の中心を囲繞するように装着されるので、緊急搬送後にカテーテルを使用する必要が生じた場合に、カテーテルの挿入箇所である鼠蹊部がバンドで覆われているために、当該固定具を外して所定の医療処置(カテーテル挿入による検査・治療)を施す。
【0007】
しかし骨盤固定具を外してしまうと、骨折している骨盤がずれてしまう虞がある。そこで本発明は装着した状態でカテーテル処置を行うことが可能な新規な骨盤固定具を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る骨盤固定具は、臀部に対応する形状の主帯部の両側上下に、腰部側面の上下位置と対応する側帯部を延設形成すると共に、上下の各側帯部間を連結着脱自在に設けてなるものである。
【0009】
従って主帯部で装着対象者(怪我人等の搬送対象者)の臀部を覆い、装着対象者の前面で側帯部間を緊締連結すると、装着対象者の臀部は固定具で押さえられ、骨盤が安定するので、当該状態で救急搬送が可能となり、特にカテーテル処置が必要な場合は、本固定具を外すことなく、鼠蹊部の範囲の衣類を切除して当該箇所を露出させ、骨盤を安定した状態でカテーテルによる医療処理が可能となる。
【0010】
また本発明に係る骨盤固定具は、左右の側帯部間の連結に、ベルト部と脱着可能な連結部材で構成した装着ベルトを採用し、前記連結部材がベルト折返し部を備えると共に、一方側の側帯部に連結したベルト部を、前記連結部材の折返し部に挿通して、ベルト部の折返し端側を止着するようしてなるものであるから、固定具装着による骨盤固定を確実に且つ素早く行うことができる。
【0011】
さらに本発明に係る骨盤固定具は、特に前記一方側のベルト折返し止着構成を採用した際に、一方側のベルト部の端部と、他方側の側帯部又は前記側帯部に連結したベルト部とに、緊締用の引手部を付設してなるものであるから、固定具装着をより素早く行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成は上記のとおり、腰部の側面から前面を開口した状態で腰部に装着できる骨盤固定具で、固定具を装着したままで怪我人(固定具装着者)に対してカテーテル処置を施すことができものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した骨盤固定具は、主帯部1と側帯部2と装着ベルト3で構成され、主帯部1と側帯部2は、帆布を重ね合わせて縫合して形成したもので、装着ベルト3は側帯部2に延設したものである。
【0015】
主帯部1は、臀部に対応する大きさ形状で例えば一辺26〜30cmの略正方形状で、内部に薄いクッション材を内装し、外面をビニール11で被覆してなるものである。
【0016】
側帯部2は、主帯部1と連続する帆布で主帯部1の上下左右に延設したもので、各上下の側帯部(左上21,右上22と左下23,右下24)の間は、7〜10cmの間隔Aを形成する。
【0017】
装着ベルト3はベルト部(短ベルト部31と長ベルト部32)と周知構造の差込み連結される連結部材(連結受部33と挿入連結部34)で構成され、左右の側帯部(21と23、22と24)を連結するものである。
【0018】
左側の側帯部21,23には、それぞれ短ベルト部31を逢着すると共に、短ベルト部31の先端に連結受部33を設ける。特に短ベルト部31を逢着するに際して、端部をループ状に形成して引手部aとする。
【0019】
右側の側帯部22,24には、長ベルト部32を逢着すると共に、前記長ベルト部32を挿入連結部34の折返し部341に挿通しておく。
【0020】
またベルト止着は、右側の側帯部22,24の外面に面ファスナー221,241を設け、長ベルト部32の端部外面にも面ファスナー321を設けると共に、前記面ファスナー形成箇所の内面はループ状に形成して引手部bとする。
【0021】
而して上記の骨盤固定具は、怪我人Xの緊急搬送時に主帯部1を怪我人Xの臀部の下に敷き、連結部材(連結受部33と挿入連結部34)を連結し、引手部a,bを以て強く引き、面ファスナー(221,241と321)を連結して装着ベルト3を固定する。
【0022】
前記の本固定具を怪我人Xに装着することで、怪我人Xの腰部全体は固定具で確りと抑えられ、骨盤が安定した状態で救急搬送を行うことができる。
【0023】
更に緊急搬送後に怪我人Xがカテーテル医療処置が必要となった時には、本固定具を外すことなく、鼠蹊部と対応する範囲Bの衣類を切除して当該箇所を露出させ、骨盤を安定した状態でカテーテルによる医療処理が可能となるものである。
【符号の説明】
【0024】
1 主帯部
11 ビニール
2 側帯部
21,23 左側の側帯部
22,24 右側の側帯部
221,241 面ファスナー
3 装着ベルト
31 短ベルト部
32 長ベルト部
321 面ファスナー
33 連結受部
34 挿入連結部
341 折返し部
a,b 引手部
A 間隔
B 範囲
X 怪我人
【要約】
【課題】 怪我人等の緊急搬送に際して使用する骨盤固定具において、装着した状態でカテーテル処置を行うことが可能とする。
【解決手段】臀部に対応する形状の主帯部1の両側上下に、腰側面の上下位置と対応する側帯部21,22,23,24を延設形成すると共に、上下の各側帯部間をベルト部(短ベルト部31と長ベルト部32)と脱着可能な連結部材(連結受部33と挿入連結部34)で構成した装着ベルト連結し、特に挿入連結部34がベルト折返し部341を備えると共に、右側の側帯部22,24に連結した各長ベルト部32を、折返し部341に挿通して、長ベルト部の折返し端側を止着するようにした。
【選択図】
図3