特許第6703708号(P6703708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703708
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】光信号処理装置および光信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 4/04 20060101AFI20200525BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20200525BHJP
   H04B 10/61 20130101ALI20200525BHJP
【FI】
   G01J4/04 Z
   H04J14/02
   H04B10/61
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-14631(P2016-14631)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2017-133969(P2017-133969A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年11月19日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久利 敏明
(72)【発明者】
【氏名】坂本 高秀
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/027895(WO,A1)
【文献】 特表2012−515468(JP,A)
【文献】 特開2010−028470(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0086204(US,A1)
【文献】 特開平05−014280(JP,A)
【文献】 特開2014−016197(JP,A)
【文献】 特開2010−171788(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02348651(EP,A1)
【文献】 米国特許第07116419(US,B1)
【文献】 特開2012−141264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 4/00 − 4/04
H04B 10/00 −10/90
H04B 14/02
H04J 14/02
G01M 11/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の変調信号を異なる波長に多重して伝送されてきた受信光を電気的横波成分と磁気的横波成分に分岐させる第1偏光分離器と、
前記受信光の前記多数の変調信号それぞれに対応する多波長の参照光を発生する参照光発生器と、
前記参照光を電気的横波成分と磁気的横波成分に分岐させる第2偏光分離器と、
分岐された受信光と参照光の電気的横波成分どうしを合波して干渉させた干渉成分から各波長の偏光軸における同相成分と直交成分を生成する第1光コヒーレント検波器と、
分岐された受信光と参照光の磁気的横波成分どうしを合波して干渉させた干渉成分から各波長の偏光軸における同相成分と直交成分を生成する第2光コヒーレント検波器と、
前記第1光コヒーレント検波器により生成された各波長の偏光軸における同相成分と直交成分をディジタルデータに変換する第1変換部と、
前記第2光コヒーレント検波器により生成された各波長の偏光軸における同相成分と直交成分をディジタルデータに変換する第2変換部と、
変換された前記各波長それぞれの偏光軸の成分毎のディジタルデータを、前記各波長それぞれに対応するチャネルそれぞれの第1および第2複素信号に分離する分離部と、
前記分離部により分離された前記チャネルそれぞれの第1および第2複素信号から個々のチャネルの変調信号の偏光状態を示す情報を生成する多チャネル解析部と
を具備することを特徴とする光信号処理装置。
【請求項2】
前記参照光発生器は、
前記多数の変調信号に対応し、強度が一定であり、各変調信号毎に所定波長分オフセットした波長成分を有し、前記波長成分どうしが互いに干渉性を有する参照光を発生することを特徴とする請求項1記載の光信号処理装置。
【請求項3】
前記多チャネル解析部は、
前記第1複素信号をあるチャネルにおける前記偏光軸の同相成分のものとし、前記第2複素信号を前記偏光軸に直交する成分のものとし、前記第1複素信号の電力と前記第2複素信号の電力との和をストークスパラメータS0、前記第1複素信号の電力と前記第2複素信号の電力との差をストークスパラメータS1、前記第1複素信号の複素共益と前記第2複素信号の乗積の実部の2倍をストークスパラメータS2、前記第1複素信号の複素共益と前記第2複素信号の乗積の虚部の2倍をストークスパラメータS3として偏光状態を示す情報を求めることを特徴とする請求項1または請求項2いずれか記載の光信号処理装置。
【請求項4】
前記多チャネル解析部は、
前記第1複素信号をあるチャネルにおける前記偏光軸の同相成分のものとし、前記第2複素信号を前記偏光軸に直交する成分のものとし、前記第1複素信号に対するある一定時間の平均の電力と前記第2複素信号に対するある一定時間の平均の電力の和をストークスパラメータS0、それらの差をストークスパラメータS1、前記第1複素信号の複素共益と前記第2複素信号の乗積に対するある一定時間の平均の実部の2倍をストークスパラメータS2、前記乗積に対するある一定時間の平均の虚部の2倍をストークスパラメータS3として偏光状態を示す情報を求めることを特徴とする請求項1または請求項2いずれか記載の光信号処理装置。
【請求項5】
多数の変調信号を異なる波長に多重して伝送されてきた受信光を電気的横波成分と磁気的横波成分に分岐させ、
前記受信光の前記複数の変調信号それぞれに対応する多波長の参照光を発生し、
前記参照光を電気的横波成分と磁気的横波成分に分岐させ、
分岐された受信光と参照光の電気的横波成分どうしを合波して干渉させた干渉成分から各波長の偏光軸における同相成分と直交成分を生成し、
分岐された受信光と参照光の磁気的横波成分どうしを合波して干渉させた干渉成分から各波長の偏光軸における同相成分と直交成分を生成し、
生成した電気的横波成分および磁気的横波成分それぞれの成分の各波長の偏光軸の同相成分と直交成分をディジタルデータに変換し、
変換した各波長の偏光軸の同相成分と直交成分のディジタルデータを、前記各波長それぞれに対応するチャネルそれぞれの第1および第2複素信号に分離し、
分離した前記チャネルそれぞれの第1および第2複素信号から個々のチャネルの変調信号の偏光状態を示す情報を生成する
ことを特徴とする光信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば光通信に用いられる光信号処理装置および光信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光の干渉性を応用した技術は、通信、計測、観測など、さまざまな分野での活用が期待されている。特に、光通信の分野におけるコヒーレント技術は、西暦2000年代に入り、ディジタル信号処理技術を適用することで光コヒーレント検波の技術の有用性が再認識され、西暦2012年には世界初の100Gb/s伝送用のディジタルシグナルプロセッサ(以下「DSP」と称す)が商品化されるなど、その技術は目覚ましい発展を遂げている。その後も、コヒーレント技術を例えば光ファイバ通信へ応用するなどの研究開発が発展・拡張の一途をたどっている。
【0003】
光ファイバを介した通信においては、一つの伝送路(例えば1本の光ファイバケーブル)に、異なる波長の信号を伝送することで、情報の伝送容量を格段に高めることができるため、同技術は今後の活用がますます期待される。
【0004】
光ファイバを介した通信において光コヒーレント検波を行う上では、光ファイバを通じて受信される光の偏光状態(SOP:state of polarization)がそのシステム性能を左右するため、SOPを解析する必要がある。
【0005】
光の偏光状態を解析する従来の技術としては、例えば直交する2つの軸および45度傾いた軸において観測される直線偏光の強度と、直交する2つの軸間に光ハイブリッドカプラなどで90度の位相差をつけて45度傾いた軸において観測される直線偏光の強度とを用いて受信光の偏光状態を解析する光学的手法による技術がある(例えば非特許文献1参照)。
【0006】
従来、光ファイバ通信において、一つの波長の光信号に対してSOPを解析する技術はあるが、多波長の光信号に対してSOPを解析する技術は今のところ知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】サイバネット「第6回:偏光を計算するために、3−1ストークスパラメータ」、インターネット<URL:http://www.cybernet.co.jp/codev/lecture/optics/opt06/opt06.html#0>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術は、光学的手法により偏光状態を解析していたため、以下に示すような問題がある。すなわち、受信光の偏光状態を測定するために受信光の一部または全部を必要とする、干渉波生成のための光検波器までの経路上で偏光状態が変化するなど、光信号の受信条件が少し変わるだけで偏光状態が変わってしまい、正しい解析結果が得られない、通信装置などの受信機で受信される微弱な受信光では偏光状態の測定が困難である、などといった問題があった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、光ファイバなどの光伝送路を介して受信される多波長の信号それぞれの偏光状態を解析することのできる光信号処理装置および光信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の光信号処理装置は、多数の変調信号を異なる波長に多重して伝送されてきた受信光を電気的横波成分と磁気的横波成分に分岐させる第1偏光分離器と、前記受信光の前記多数の変調信号それぞれに対応する多波長の参照光を発生する参照光発生器と、前記参照光を電気的横波成分と磁気的横波成分に分岐させる第2偏光分離器と、分岐された受信光と参照光の電気的横波成分どうしを合波して干渉させた干渉成分から各波長の偏光軸における同相成分と直交成分を生成する第1光コヒーレント検波器と、分岐された受信光と参照光の磁気的横波成分どうしを合波して干渉させた干渉成分から各波長の偏光軸における同相成分と直交成分を生成する第2光コヒーレント検波器と、前記第1光コヒーレント検波器により生成された各波長の偏光軸における同相成分と直交成分をディジタルデータに変換する第1変換部と、前記第2光コヒーレント検波器により生成された各波長の偏光軸における同相成分と直交成分をディジタルデータに変換する第2変換部と、変換されたそれぞれの偏光軸の成分毎のディジタルデータを、多数のチャネルそれぞれの第1および第2複素信号に分離する分離部と、前記分離部により分離された多数のチャネルそれぞれの第1および第2複素信号から個々のチャネルの変調信号の偏光状態を示す情報を生成する多チャネル解析部とを具備することを特徴とする。
【0011】
実施形態の光信号処理方法は、多数の変調信号を異なる波長に多重して伝送されてきた受信光を電気的横波成分と磁気的横波成分に分岐させ、前記受信光の前記複数の変調信号それぞれに対応する多波長の参照光を発生し、前記参照光を電気的横波成分と磁気的横波成分に分岐させ、分岐された受信光と参照光の電気的横波成分どうしを合波して干渉させた干渉成分から各波長の偏光軸における同相成分と直交成分を生成し、分岐された受信光と参照光の磁気的横波成分どうしを合波して干渉させた干渉成分から各波長の偏光軸における同相成分と直交成分を生成し、生成した電気的横波成分および磁気的横波成分それぞれの成分の各波長の偏光軸の同相成分と直交成分をディジタルデータに変換し、変換した各波長の偏光軸の同相成分と直交成分のディジタルデータを、多数のチャネルそれぞれの第1および第2複素信号に分離し、分離した多数のチャネルそれぞれの第1および第2複素信号から個々のチャネルの変調信号の偏光状態を示す情報を生成することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一つの実施の形態のマルチコヒーレント偏光アナライザの構成を示す図である。
図2】マルチコヒーレント偏光アナライザに入力される受信光(観測波)の各チャネルの変調信号を示す図である。
図3】マルチトーン参照光発生器により発生されるマルチトーン参照光(基準波)を示す図である。
図4】マルチチャネルアナライザの構成の一例を示す図である。
図5】光コヒーレント検波器から出力される同相成分Ichの一例を示す図である。
図6】光コヒーレント検波器から出力される直交成分Qchの一例を示す図である。
図7】マルチチャネルアナライザの構成の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1は一つの実施の形態のマルチコヒーレント偏光アナライザを示す図である。
図1に示すように、第1実施形態のマルチコヒーレント偏光アナライザは、偏光ビームスプリッタ1、3、基準光発生器2、光コヒーレント検波器4e、4m、アナログ/ディジタル変換部7e、7m(以下「A/D変換器7e、7m」と称す)、デマルチプレクサ8、マルチチャネルアナライザ9などを有する。
【0014】
このマルチコヒーレント偏光アナライザには、光ファイバケーブルが透過可能な波長域(例えば波長が1200nm〜1700nmなど)において異なる波長に変調信号を多重(波長分割多重)して伝送してきた光が受信される。この光を受信光Ssという。本実施形態では、通信方式として波長分割多重通信(WDM:Wavelength Division Multiplex)を用い、変調方式として例えばQPSK方式やBPSK方式等を用いるものとする。
【0015】
受信光Ssは、偏光状態(SOP)が未知の多波長信号ある。波長は、一対一の関係にある周波数に言い換えてもよい。また、光ファイバ通信以外に適用する場合には、上記の波長域を超えて適用が可能である。
【0016】
図2に示すように、受信光Ssには多数の変調信号ch1、ch2、ch3…chnが含まれている。変調信号ch1の中心周波数はfcs1、変調信号ch2の中心周波数はfcs2、変調信号ch3の中心周波数はfcs3、変調信号chnの中心周波数はfcsnである。
【0017】
偏光ビームスプリッタ1は、受信光Ssを電気的横波成分(TE成分)TEsと磁気的横波成分(TM成分)TMsに分岐させる第1偏光分離器である。
【0018】
基準光発生器2は、受信光Ssの各変調信号に対応する多波長の参照光(マルチトーン参照光MTlo)を発生するマルチトーン参照光発生器である。マルチトーン参照光MTloはローカル光または局部発振光などともいう。基準光発生器2は、受信光Ssの多数の変調信号の波長に対応した多数の参照光を発生する。
【0019】
マルチトーン参照光MTloは、各変調信号毎に所定波長分オフセットした波長成分を有し、各波長成分どうしが高い干渉性(コヒーレンス)を有する。
【0020】
図3に示すように、マルチトーン参照光MTloは、全ての波長で偏光状態(SOP)がそろった多波長搬送波、つまり線スペクトルP1…Pnである。
【0021】
線スペクトルP1…Pnは強度が一定であり、線スペクトル毎に中心周波数fcs1…fcsn(中心波長に相当)から所定波周波数分Δf1…Δfnオフセットした位置に周波数fcl1…fclnを持つ信号である。
【0022】
つまりマルチトーン参照光MTそれぞれの周波数fcl1〜fclnは、検波出力後の中間周波数fif1〜fifn毎の成分が互いに干渉し合わないようオフセットして設定されている。
【0023】
このように強度が一定の多数の線スペクトル(光周波数コム)を生成する技術は、例えば特開2007−248660号公報などに、単一の変調器を用いて平坦なスペクトル特性を有する光周波数コムを発生する光周波数コム発生装置の技術が開示されており、この技術を利用するものとする。
【0024】
マルチトーン参照光MTloは、基本的に、その偏光状態(SOP)が直線偏光であり、次段の偏光ビームスプリッタ3によって電気的横波成分(TE成分)TEloと磁気的横波成分(TM成分)TMloに電力等分される。
【0025】
マルチトーン参照光MTloのSOPと、次段の偏光ビームスプリッタ3によって分離されるTE成分とTM成分への電力比率が既知である場合には、前述したような光学的処理を次段の偏光ビームスプリッタ3の前段で行うか、後述のマルチチャネルアナライザ9において既知の情報を用いた処理を行ってもよい。
【0026】
偏光ビームスプリッタ3は、基準光発生器2から入力されるマルチトーン参照光MTを電気的横波成分TEloと磁気的横波成分TMloに分岐させる第2偏光分離器である。
【0027】
偏光ビームスプリッタ3は、光学素子により偏光分離するものの他、同一偏光において電力分離し、分離したマルチトーン参照光MTのそれぞれを偏光制御器により、電気的横波成分TEloと磁気的横波成分TMloに偏光を調整するものであってもよい。
【0028】
光コヒーレント検波器4eは、第1光コヒーレント検波器であり、90°光ハイブリッドカップラと2つのフォトディテクタを有している。90°光ハイブリッドカップラは、分岐された各波長毎の受信光Ssと参照光のTE成分TEs、TEloどうしを合波して干渉させた干渉成分から各波長の偏光軸における同相成分であるIch成分とこれと直交する直交成分であるQch成分とを生成する。フォトディテクタは、通常の単一のフォトディテクタのほか、バランスドフォトディテクタ(差動型の2つのフォトディテクタの組み合わせ)も含む。
【0029】
2つのフォトディテクタのうち一つのフォトディテクタはIch成分を電気信号Icheaに変換し変換部7eへ出力する。他の一つのフォトディテクタはQch成分をアナログの電気信号(以下「アナログ信号」と称す)Qcheaに変換し変換部7eへ出力する。
【0030】
図5に光コヒーレント検波器4eの90°光ハイブリッドカップラにより生成されるIch成分の一例を示す。
【0031】
検波出力の中間周波数fif1〜fifnは、fifn=fcln−fcsn[n=1,2,3…N]で表される。検波波出力の中間周波数fif1〜fifn毎の成分は、互いに干渉し合わないようマルチトーン参照光MTそれぞれの周波数fcl1〜fclnが設定されている。これにより、周波数チャネル(fif1〜fifn)毎の分離、偏光解析が可能になる。
【0032】
光コヒーレント検波器4mは、第2光コヒーレント検波器であり、90°光ハイブリッドカップラと2つのフォトディテクタを有している。
【0033】
90°光ハイブリッドカップラは、分岐された各波長毎の受信光Ssと参照光のTM成分TMs、TMloどうしを合波して干渉させた干渉成分から各波長の偏光軸における同相成分であるIch成分とこれと直交する直交成分であるQch成分とを生成する。
【0034】
フォトディテクタは、通常の単一のフォトディテクタのほか、バランスドフォトディテクタ(差動型の2つのフォトディテクタの組み合わせ)も含む。
【0035】
2つのフォトディテクタのうち一つのフォトディテクタはIch成分を電気信号Ichmaに変換し変換部7mへ出力する。他の一つのフォトディテクタはQch成分をアナログの電気信号(以下「アナログ信号」と称す)Qchmaに変換し変換部7mへ出力する。
【0036】
図6に光コヒーレント検波器4mの90°光ハイブリッドカップラにより生成されるIch成分の一例を示す。
【0037】
A/D変換器7eは、光コヒーレント検波器4eにより生成された各波長の偏光軸成分のアナログ信号(同相成分Icheaと直交成分Qchea)をそれぞれディジタル信号に変換しディジタルデータIched、Qchedとしてデマルチプレクサ8に出力する。
【0038】
換言すると、A/D変換器7eは、入力されるアナログ信号Ichea、QcheaをディジタルデータIched、Qchedに変換しデマルチプレクサ8に出力する。
【0039】
ディジタルデータIched、QchedはTE成分どうしの干渉成分の偏光軸成分のディジタルデータである。
【0040】
すなわちA/D変換器7eは、光コヒーレント検波器4eにより生成された各波長の偏光軸における同相成分と直交成分をディジタルデータに変換する第1変換部である。
【0041】
A/D変換器7mは、光コヒーレント検波器4mにより生成された各波長の偏光軸成分のアナログの電気信号(同相成分Ichmaと直交成分Qchma)をそれぞれディジタル信号に変換しディジタルデータIchmd、Qchmdとしてデマルチプレクサ8に出力する。
【0042】
換言すると、A/D変換器7mは、入力されるアナログ信号Ichma、QchmaをディジタルデータIchmd、Qchmdに変換しデマルチプレクサ8に出力する。
【0043】
ディジタルデータIchmd、QchmdはTM成分どうしの干渉成分の偏光軸成分のディジタルデータである。
【0044】
すなわちA/D変換器7mは、光コヒーレント検波器4mにより生成された各波長の偏光軸における同相成分と直交成分をディジタルデータに変換する第2変換部である。
【0045】
デマルチプレクサ8は、各A/D変換器7e、7mによりそれぞれ変換されるディジタルデータIched、Qched、Ichmd、Qchmdを、複数のチャネルch1、ch2、ch3…chnそれぞれの複素信号e1、e2に分離する。
【0046】
それぞれの複素信号は、上記中間周波数を有する複素信号であるほか、上記中間周波数と同じ周波数だけ低域に周波数変換された複素等価低域信号であってもよい。
【0047】
複素信号e1は偏光軸と同相の成分に対するチャネルの複素信号であり、e1+je1で表せる。複素信号e2は偏光軸に直交する成分に対するチャネルの複素信号であり、e2+je2で表せる。
【0048】
マルチチャネルアナライザ9は、デマルチプレクサ8により分離された多数のチャネルch1、ch2、ch3…chnそれぞれの複素信号e1、e2から個々のチャネルの変調信号の偏光状態を示す情報を生成する解析部である。
【0049】
個々のチャネルの変調信号の偏光状態を示す情報は、例えばストークスパラメータS0、S1、S2、S3などで表現される。各ストークスパラメータS0、S1、S2、S3の生成の仕方については、後述する図4および図7の説明で詳述する。
【0050】
図4に示すように、マルチチャネルアナライザ9は、二乗器91、92、複素共役算出部93、乗算器94、実数成分演算器95、虚数成分演算器96、減算器97、加算器98を有する。
【0051】
二乗器91は、入力された複素信号e1の複素数の絶対値を2乗して電力を求める。二乗器92は、入力された複素信号e2の複素数の絶対値を2乗して電力を求める。
【0052】
複素共役算出部93は、複素信号e1の複素共役e1を算出する。乗算器94は、複素信号e1の複素共益e1と複素信号e2とを乗算する。
【0053】
実数成分演算器95は、乗算器94による算出結果(乗積)の実部を2倍、つまり2・Re[e1・e2]を求め、ストークスパラメータS2として出力する。
【0054】
虚数成分演算器96は、乗算器94による算出結果(乗積)の虚数部を2倍、つまり2・Im[e1・e2]を求め、ストークスパラメータS3として出力する。
【0055】
減算器97は、複素信号e1の電力|e1|と複素信号e2の電力|e2|とを減算して互いの差|e1|−|e2|であるストークスパラメータS1を出力する。
【0056】
加算器98は、複素信号e1の電力|e1|と複素信号e2の電力|e2|とを加算して互いの和|e1|+|e2|であるストークスパラメータS0を出力する。
【0057】
続いて、このマルチコヒーレント偏光アナライザの動作を説明する。
多数の変調信号を異なる波長に多重した光信号が送信機から光ファイバを通じて伝送され、このマルチコヒーレント偏光アナライザに受信される。
【0058】
マルチコヒーレント偏光アナライザでは、受信光Ssが偏光ビームスプリッタ1に入力される。
【0059】
第1偏光ビームスプリッタ1では、受信光Ssは電気的横波成分TEsと磁気的横波成分TMsに分岐され、電気的横波成分TEsが光コヒーレント検波器4eに出力され、磁気的横波成分TMsが光コヒーレント検波器4mに出力される。
【0060】
一方、基準光発生器2では、複数の変調信号それぞれに対応する波長の異なる多数のマルチトーン参照光MTloが発生されて偏光ビームスプリッタ3に入力される。
【0061】
偏光ビームスプリッタ3では、マルチトーン参照光MTloが電気的横波成分TEloと磁気的横波成分TMloに分岐されて、電気的横波成分TEloが光コヒーレント検波器4eに出力され、磁気的横波成分TMloが光コヒーレント検波器4mに出力される。
【0062】
光コヒーレント検波器4eでは、分岐して入力された受信光Ssとマルチトーン参照光MTloの電気的横波成分どうしTEs、TEloが合波されて干渉成分が生成され、生成された干渉成分から各波長の偏光軸における同相成分のアナログ信号Icheaと直交成分のアナログ信号Qcheaが生成され、A/D変換器7eに出力される。
【0063】
光コヒーレント検波器4mでは、分岐して入力された受信光Ssとマルチトーン参照光MTloの磁気的横波成分どうしTMs、TMloが合波されて干渉成分が生成され、生成された干渉成分から各波長の偏光軸における同相成分のアナログ信号Ichmaと直交成分のアナログ信号Qchmaが生成され、A/D変換器7mに出力される。
【0064】
A/D変換器7eでは、光コヒーレント検波器4eから入力された電気的横波成分TEs、TEloの干渉成分の各波長の偏光軸における同相成分のアナログ信号Icheaと直交成分のアナログ信号QcheaがディジタルデータIched、Qchedに変換されて、デマルチプレクサ8に出力される。
【0065】
A/D変換器7mでは、光コヒーレント検波器4mから入力された電気的横波成分TMs、TMloの干渉成分の各波長の偏光軸における同相成分のアナログ信号Ichmaと直交成分のアナログ信号QchmaがディジタルデータIchmd、Qchmdに変換されて、デマルチプレクサ8に出力される。
【0066】
デマルチプレクサ8では、変換して入力されたそれぞれの偏光軸成分毎のディジタルデータIched、Qched、Ichmd、Qchmdが、多数のチャネルch1、ch2、ch3…chnそれぞれの複素信号e1、e2に分離されて、マルチチャネルアナライザ9に出力される。
【0067】
マルチチャネルアナライザ9では、デマルチプレクサ8により分離して入力された多数のチャネルch1,ch2,ch3…chnそれぞれの複素信号e1、e2から個々のチャネルの変調信号の偏光状態を示す情報(ストークスパラメータS0、S1、S2、S3)が生成されて出力される。
【0068】
このようにこの実施形態のマルチコヒーレント偏光アナライザによれば、以下のような効果が得られる。
【0069】
すなわち、ある偏光軸に対して波長分割多重された受信光Ssの偏光軸成分と、波長分割多重されたマルチトーン参照光MTloの偏光軸成分とを用いて光コヒーレント検波を行い、光コヒーレント検波後に現れる偏光軸成分のアナログ信号Ichea、Qchea、Ichma、QchmaをディジタルデータIched、Qched、Ichmd、Qchmdに変換し、デマルチプレクサ8によるディジタル処理でそれぞれのチャネルch1、ch2、ch3…chnの複素信号e1、e2に分離し、分離した複素信号e1、e2をチャネル毎に演算処理して、チャネル毎のストークスパラメータS0、S1、S2、S3を出力するので、光ファイバケーブルを介して受信される多波長の受信光Ssの偏光状態(SOP)をチャネル毎に解析することができる。
【0070】
これにより、高価な測定器でなくても通信装置などの受信機にこの機能を組み込むことが可能になる。また受信光Ssそのものの偏光状態を解析するので、解析結果を用いた受信光Ssのさまざまに処理(偏光分離や偏光ダイバーシティなど)が可能になる。
【0071】
この他、複数の波長チャネル間の相対的な偏光状態(SOP)を知ることができるので、伝送路上におけるSOP変動の波長依存性を観測できるなど、学術的な面での波及効果が大きい。また、原理的にはSOPを随時観測できるため偏光変調方式(特に復調技術)への応用など、技術的な派生にも期待できる。
【0072】
さらに本技術はディジタルコヒーレント検波との高い親和性を有することから、信号の復調と同時にSOPを観測できるため、予等化や偏光補償、偏光多重の効率化などへの応用も期待できる。
【0073】
また、この実施形態の構成要素をディジタルコヒーレント通信用のLSIに組み込むことで、システム性能の改善に貢献でき、これにより質の高い通信インフラを提供することができる。
【0074】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0075】
上記の図4に示したマルチチャネルアナライザ9の構成例は複素信号e1、e2にノイズ(雑音)が載っていない場合、つまりノイズ(雑音)を考慮しない場合の例であり、実際には、マルチチャネルアナライザ9に入力される複素信号にはノイズ(雑音)が載ってくる可能性が高く、ノイズ(雑音)が載った複素信号r1、r2の場合の構成例を以下に示す。なお図4に示した構成と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略するものとする。
【0076】
すなわち、図7に示すように、この例のマルチチャネルアナライザ9は、集合平均計算器99a、99b、99cを有する。なおこの例では、複素信号r1、r2に載るノイズ(雑音)をガウス雑音と想定する。
【0077】
集合平均計算器99aは、二乗器91の前段に設けられる。集合平均計算器99aは、入力される複素信号r1に対してある一定時間における平均E[r1]を算出し二乗器91に出力する。
【0078】
集合平均計算器99bは、二乗器92の前段に設けられている。集合平均計算器99bは、入力される複素信号r2に対してある一定時間の平均E[r2]を算出し二乗器92に出力する。
【0079】
集合平均計算器99cは、乗算器94と実数成分演算器95および虚数成分演算器96との間に設けられている。集合平均計算器99cは、乗算器94による算出結果(複素信号e1の複素共益e1と複素信号e2との乗積)に対してある一定時間の平均E[r1・r2]を算出し実数成分演算器95および虚数成分演算器96にそれぞれ出力する。
【0080】
この例のマルチチャネルアナライザ9では、集合平均計算器99aを二乗器91の前段に設け、集合平均計算器99bを二乗器92の前段に設け、集合平均計算器99cを乗算器94と実数成分演算器95および虚数成分演算器96との間に設けることで、それぞれの入力信号を平均化した上で電力または各成分を求める。これにより、雑音の影響を少なくした偏光解析結果を得ることができる。
【0081】
上記実施形態に示したデマルチプレクサ8およびマルチチャネルアナライザ9を少なくとも含む各構成要素を、通信端末のメモリ、またはコンピュータのハードディスク装置などのストレージにインストールしたプログラムで実現してもよく、また上記プログラムを、通信端末またはコンピュータが読取可能な電子媒体:electronic mediaに記憶しておき、プログラムを電子媒体から通信端末またはコンピュータに読み取らせることで本発明の機能を通信端末またはコンピュータが実現するようにしてもよい。
【0082】
電子媒体としては、例えばCD−ROM等の記録媒体やフラッシュメモリ、リムーバブルメディア:Removable media等が含まれる。さらに、ネットワークを介して接続した異なるコンピュータに構成要素を分散して記憶し、各構成要素を機能させたコンピュータ間で通信することで実現してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1,3…偏光ビームスプリッタ、2…基準光発生器、4e,4m…光コヒーレント検波器、7e,7m…アナログ/ディジタル変換器(A/D変換器)、8…デマルチプレクサ、9…マルチチャネルアナライザ、91,92…二乗器、93…複素共役算出部、94…乗算器、95…実数成分演算器、96…虚数成分演算器、97…減算器、98…加算器、99a,99b,99c…集合平均計算器。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7